経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議(第10回)議事要旨及び資料

議事要旨

  経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議第10回会合については、新型コロナウイルス感染症の国内感染拡大防止の観点から、非対面での電話会議にて開催した。

1.日時:

令和2年5月20日(水)10時00分~11時10分(電話会議)

2.議事内容:

 事務局からこれまでの議論を踏まえて作成された報告書(案)が提示され、全体として論点や方向性が適切に反映されたものとして支持する意見が多く表明された。また、報告書(案)の表現や追加すべき視点、今後の検討に当たって留意すべき事項等について、以下のような議論が行われた。最後に、本日の議論を踏まえた修正を座長が確認した後、当有識者会議の報告書として公表することについて了承された。

  •  ○ 第1の柱については細かく丁寧に記載されているが、将来的に議論が必要な第2、第3の柱については記載が少ないとの印象を受ける。第2、第3の柱も重要と考えており、今後十分な検討を行っていくとのメッセージを追記してはどうか。
  •  ○   報告書(案)p.7の「3.2) 制度の導入に当たり留意すべき点」について、これまで本会議でも情報提供の観点のみならず、情報を受け止める側の消費者やマーケットの理解度の向上にも配慮すべき、との議論があったことを踏まえ、市場関係者等の理解の浸透や向上といった観点を追加してはどうか。
  •  ○ 報告書(案)p.7の「3.2)①保険会社の経営行動への影響」について、これは経済価値ベース指標の変動性が要因ではなく、外部の方々がその変動性を正しく理解していない場合に起こるものだと理解している。また、別の副作用として、形式的な使い方をした場合に、保険会社におけるリスク管理の高度化が停滞する可能性があると指摘されているが(同p.9)、これも外部の方々の正しい理解により、杞憂になるのではないか。そうした意味でも、市場関係者等の理解の浸透や向上といった観点を追加することには賛成である。
  •  ○ 報告書(案)p.11の「今後の検討の進め方」については、保険会社としてもタイムラインを念頭に置いた上で、よりよい規則、規制、基準にするための検討に貢献していきたいと考えている。
  •  ○ 報告書(案)p.12に「2022年頃を一つのマイルストーンに設定して、制度の基本的な内容(特に標準モデルの考え方)を暫定的に決定することを目指すべきである」との記載があるが、「暫定的に決定」との点に関しては、技術的な側面に留まらないものが含まれる可能性があるのではないか。制度導入を前提とした技術的な仕様の検討だけでなく、ICSの動向も踏まえ、制度をどのような形にするかも今後の論点だと思う。
  •  ○ 報告書(案)p.12の脚注19で新型コロナウイルスの影響について言及されており、何か問題が起きれば対処するプロセスが生じることは仕方がないが、なるべく制度導入を遅らせたくないというのが我々の総意である中で、予めそれを許容するかのような記載をすべきかは疑問。
  •  ○ 新型コロナウイルスの影響については、現時点では不透明な点が多々あるため、こうした注記を付すこと自体は良いと思う。一方で、関係者の負担等にも留意する必要がある、との記載ではタイムラインを伸ばしても良いとのニュアンスが出てしまうため、必ずしも全体のタイムラインは遅らせるものではないが、状況は注視する、との表現にするのが良いのではないか。
  •  ○ 報告書(案)p.17の保険負債の割引率について、スプレッドの上乗せに関してこれまであまり議論ができていないが、スプレッドの上乗せを認めると、保険負債が小さくなるという点で資本は増えるものの、リスク・リターン・資本の整合的な管理とのERMの観点からは注意が必要である。保険負債を小さく見積もると、仮に資産運用で無リスク金利以上のリターンを獲得しても、負債の価値の上昇分と相殺されてしまうなど、逆に経営を苦しくするとの観点もある。そのため、第1の柱で活用すべきかとの議論と、第2の柱など、本来これが理論的に適切かとの議論とは上手く分けて整理する必要があると思う。
  •  ○ 報告書(案)p.19のMOCEについて、議論を尽くせなかった部分であるが、MOCEは保険負債の一部であり、所要資本からは控除しないとの方向性は良いと思う。MOCEを控除すると楽になるとかそうした一方的な観点ではなく、リスク・リターン・資本をどう整合的に考えるかとの観点でまず原則をきちんと整理しておく方が良いと思う。そうした観点から、パーセンタイル法の問題点として、リスク・リターン・資本の関係が明確でない点が挙げられているが、こうした部分は今後の検討課題になるかもしれないため、今後積極的に整理を進めていくべきである。
  •  ○ 報告書(案)p.25のユーステストに関して、取締役や経営陣に関する記載があり、確かに全員が細部まで理解することは困難だと思うが、経営陣等に関しても内部モデルに関する相応の理解が必要であるという点は改めて確認させて頂きたい。
  •  ○ 他のメンバーから発言のあったスプレッドに関して、確かにこれまで技術的な議論はしてこなかったが、ここには重大な論点があり、スプレッドに可変なものを入れてしまうと、リスク管理が難しくなるため、ESRの制御との観点からは障害があると思う。
  •  ○ 報告書(案)p.22の内部モデルについて、グローバルにICSが適用される状況において、特にIAIGになる会社に関しては、国際規制と国内規制が同じであって欲しいため、国内における内部モデルの議論については、ICSにおける議論の動向も踏まえながら、今後検討を進めるべきである。
  •  ○ 報告書(案)p.13の標準モデルの具体的な仕様の検討には、新型コロナウイルスの状況等も踏まえると、特に2020年3月末基準で仮に経済価値ベース規制を導入した場合どのようなことが生じていたかは、フィールドテスト(FT)を通じて確認・検証していくことが重要である。また、保険負債の発生リスクをどう見積もるか、資産側のスプレッドの拡大をどう評価するか等の論点について、妥当性をどう証明するかも大事な論点であるため、FTの中でしっかり確認していくべきである。
  •  ○ 報告書(案)p.32の「第2の柱に関する取組みは、第1の柱の導入を待たずに早期に開始」という点は是非実行して頂きたい。リスク管理の高度化という観点では、第1の柱の効果は限られており、第2、第3の柱が機能するかがより重要と思われる。報告書(案)p.9の「保険会社の創意工夫や主体的なリスク管理の高度化を促進できる制度とは何か」との問いに対する答えが、第2、第3の柱なのかもしれないが、本会議では十分な議論が尽くせなかったため、今後、議論の深堀を進めていくべきである。
  •  ○ 報告書(案)p.38で実質資産負債差額について言及されているが、実質資産負債差額は、経済価値では即時全件解約を想定したストレステストを意味するため、経済価値ベースのERMに真剣に取り組むなら大きな障害になるはずである。
  •  ○ 2025年をターゲットに準備を進めていく上では、現行ソルベンシー・マージン規制のような経済価値とは逆に動く規制を守りながら経済価値を目指していく、というのは上手くいくのかとの懸念があり、現行規制の中でも、経済価値に誘導できるものがあれば柔軟に検討すべきである。
  •    ○ 経済価値との考え方からは、実質資産負債差額はない方が良いと思う一方、非常にマーケットが大きく動くような状況、例えば、金利が今後上昇し、その後下降するといった状況になった時に、本当に経済価値ベースの指標だけでいいのかも議論のポイントだと思う。移行過程ということかもしれないが、多面的な見方は必要だと思う。
  •  ○ 今後について、金融庁と保険会社の対話が重要であることは言うまでもないが、様々な論点について外部のステークホルダーと対話しつつ検討を進めることも重要であるため、その旨をより明確に記した方が良いと思う。
  •  ○   日本の国債市場にも40年債はあるが、生命保険会社の保険負債は非常に長期であり、それ以上に負債のキャッシュフローは発生するため、もっと長いツールがあればより保険会社としては円滑に経済価値ベースに取り組みやすくなる。資本市場の整備に向けた働きかけも必要だと思う。
 

以上
 

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