金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第1回)議事録
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1.日時:
令和6年9月25日(水曜日)12時00分~14時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用
金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第1回)
【森下座長】
チャイムも鳴りまして定刻になりましたので、ただいまより資金決済制度等に関するワーキング・グループの第1回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、お集まり頂き誠にありがとうございます。
私は当ワーキング・グループの座長を務めさせて頂きます、上智大学の森下です。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、当ワーキング・グループについて御説明したいと思います。当ワーキング・グループは、資料1にありますとおり、本年8月26日に開催されました金融審議会総会・金融分科会合同会合におきまして、送金・決済・与信サービスの利用者、利用形態の広がりや新たな金融サービスの登場を踏まえ、利用者保護等に配慮しつつ、適切な規制のあり方について検討を行うことという、大臣からの諮問を受けて設置されたものです。皆様から御意見を頂きつつ、幅広い観点から議論を進めてまいりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、会議の運営と議事の公開、そして議事録の取扱いについて、まず、お諮りをさせて頂きたいと思います。会議は、本日のようにオンライン会議を併用した開催とさせて頂き、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂きたいと思います。また、議事録は発言者の氏名を記載し作成の上、後日、金融庁のウェブサイトに掲載をさせて頂きたいと考えております。
以上のような取扱いとさせて頂きたいのですが、皆様方、そういうこととさせて頂くということで御了解頂けますか。
(「異議なし」の声あり)
【森下座長】
ありがとうございます。それでは次に、事務局よりメンバーの皆様の御紹介をお願いいたします。
【三浦信用制度参事官】
ありがとうございます。信用制度参事官の三浦でございます。本日はよろしくお願いいたします。
それでは、このたびワーキング・グループの委員に御就任頂きました方々を御紹介させて頂きます。今、画面に映っている資料2のメンバー名簿順に、まず、伊藤亜紀様です。
井上聡様です。
岩下直行様です。本日はオンラインで御参加頂きます。
小川恵子様です。
長内智様です。
加藤貴仁様です。本日はオンラインで御参加頂きます。
神作裕之様です。
河野康子様です。
坂勇一郎様です。本日はオンラインで御参加頂きます。
杉浦宣彦様です。本日はオンラインで御参加頂きます。
堀天子様です。本日は途中から、かつオンラインで御参加頂く予定となっております。
松元暢子様です。
また、本日は御欠席ですが、永沢裕美子様にも委員をお引受け頂いております。オブザーバー及び事務局につきましては、時間の都合もございますのでメンバー名簿をもって御紹介に代えさせて頂きます。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
次に、今後、私が何らかの事情で会議に参加できないような場合に備えまして、座長代理をお願いしたいと思っております。大変恐縮ではございますけれども、座長代理は神作委員にお願いできればと考えておりますけれども、いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【森下座長】
では神作委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【神作座長代理】
よろしくお願いいたします。
【森下座長】
それでは、ここでメディア関係者の方々は御退席をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
【森下座長】
それでは、議事に移ります。本日は事務局より御説明した上で、全体について、まとめて委員の皆様より御意見や御質問を頂く流れで進めさせて頂きます。本日は初回の会合ですので、諮問事項や当ワーキング・グループの検討課題をめぐって、幅広い観点から御意見を頂戴したいと考えております。
それでは、まずは事務局より説明をお願いします。
【三浦信用制度参事官】
金融庁信用制度参事官の三浦でございます。本ワーキング・グループは、先ほど座長から御紹介頂いた諮問内容にあるとおり、フィンテックをはじめとする金融ビジネスについて、利用者・利用形態の広がりや新たなサービスが次々と登場してくる中、そうしたビジネスが健全に発展していくためにあるべき規制について御議論頂くことを主眼としており、論点は多岐にわたります。そこで第1回目の本日は総論回として、資金決済や暗号資産等の各分野における論点を幾つか紹介するとともに、第2回目以降の各論回で議論する代表的なテーマについても紹介させて頂きたいと思います。
さて、今ちょうど画面に投影されている資料3ですが、スライド3及びスライド4につきましては、8月26日に開催された金融審議会総会の資料そのものですので詳細な説明は省きますが、本日は、まずスライド4に記載された6つの論点につきまして、スライド6以降で御説明させて頂きます。
それでは、スライド6をお願いいたします。こちらは、足元のキャッシュレス決済の浸透状況というところで、足元、キャッシュレスが急速に浸透しており、国民生活のインフラへと成長してきています。
次、スライド7をお願いいたします。こちらでは、資産保全に関する現行の規制について紹介しております。資金決済法においては、資金移動業者が破綻した際に利用者までお金が還付されるまでの手続について規定されておりますが、最終的には供託という形で国が各利用者に対して還付手続を実施することとしております。したがって、ちょうど下の図の一番左にあるとおり、最低限どうしても170日という期間を要する制度となっております。こちらは国がしっかり還付手続を実施するということで、利用者に確実に資金をお返しする観点で重要な制度である一方、資金移動業者ということもあり、少額の利用が想定される中、ここまで時間をかけてやるべきなのかというような論点も同時にございます。そういったところから、一番右にございますとおり、金融商品取引法では信託契約に基づき分別管理をして還付していくような方法もありますところ、どのような制度が考えられるかというところがポイントかなと考えております。
なお、注にございますとおり、前払式支払手段につきましても、基準日未使用残高1,000万円超の場合はその2分の1の額を保全することとなっておりますが、保全方法及び破綻時の返還方法については同様となっております。
次のスライド、8ページにつきましては、こちらはペイロール、賃金のデジタル払いについて記載してございます。本日は、こちらのペイロールの仕組みについて説明することが目的ではなく、このペイロールにつきましては、仮に資金移動業者が破綻してしまった場合は6営業日以内に弁済を保証することを求めているような仕組みになっております。
それでは次のページ、スライド9をお願いいたします。こちらは収納代行になります。典型的な国内で行われる収納代行のサービスにつきましては、下の図のとおりでございます。我々は、例えばコンビニ等々の収納代行業者に代金をお支払いしていますけれども、かつて2019年12月の金融審議会のワーキング・グループの報告においては、こうした典型的な収納代行については、為替取引に関する規制を適用する必要性は必ずしも高くないと整理されたところでございます。
より具体的には右下の点線の四角囲いにありますとおり、「債権者が事業者や国・地方公共団体であり」「かつ債務者が収納代行業者に支払いをした時点で債務の弁済が終了し、債務者に二重支払の危険がないことが契約上明らかである場合には」となっております。こうした整理を受けまして、資金決済法におかれましても一部の収納代行、具体的には債権者が個人であるものについては為替取引に該当することが法文上、明晰に規定されているようなところであります。併せて、今後とも収納代行をめぐる動向に着目しつつ、例えば新しいサービス、新しい形態が出てきたときには、またその都度、為替取引に関する規制を適用する必要性の有無を判断していくことが適当と整理してございます。
こうした中、足元、新しく出てきているクロスボーダーのサービスについて説明しているのが次のスライド10でございます。スライド10にお進みください。これが様々な目的で国境を超えた送金を行うクロスボーダーの収納代行サービスが登場しているというようなことでございまして、上の図にあるとおり、国内から海外へというパターンもあれば、下の図にあるとおり、海外から国内へというようなものもございます。
クロスボーダーで国境をまたぐ資金決済ということになりますと、国内にて完結するサービスと比較し、例えば国外の送金システムの利用による支払い遅延等のリスクがあったり、あと、内外で当然ルールが違い、法律が違いますので、例えば国内では支払ったことになっていても、海外で何かの手違いで支払われていないとなった場合、国内の支払った者の債務はすでにあるのか、ないのかというようなところで、トラブルになる可能性というのもあるのかなと考えてございます。
こうしたクロスボーダーのサービスを提供している方々につきましては、資金移動業登録を受けることなく事業を行っている場合もあるようなところで、こうした状況について、どのように考えるかというようなところでございます。
それでは、次のスライド11をお願いします。ここから先は暗号資産になります。左の図では、国内の取引金額等とビットコイン価格の推移というようなところで、足元2024年6月時点では国内取引金額は約1.6兆円となっており、現物が約1兆円、証拠金取引が約0.6兆円となっております。ビットコイン価格も上下の振れはありますけれども、2024年3月末ではおよそ約1,080万円と過去最高値を更新、2024年6月末の国内口座数は約1,040万口座となっており、利用者は拡大している状況でございます。同時に、2024年8月末時点では国内に暗号資産交換業者は29業者あるような状況でございます。
こうした状況を踏まえて、スライド12をお願いいたします。スライド12では、FTX事案の経緯が記載されております。2022年11月にFTX Japanの親会社、FTX Tradingが破綻したことを受けて、財務局が金商法に基づきFTX Japan社に対して国内資産保有命令を発出しました。その結果、同社の資産の国外流出を防止できたと考えております。
一方、これはたまたまFTX Japanが暗号資産の証拠金取引、デリバティブをやっていたため金商法上の登録があったことから、こうした命令が打てたのですが、資金決済法単独ではこうした国内資産保有命令は措置されていないような状況でございます。したがって、もしも彼らが現物しか扱っておらず、資金決済法上での登録のみであったら、国内資産保有命令は打てなかったと考えております。こうした状況を踏まえれば、事業者の破綻時に暗号資産の国外流出を防止するような観点でどのような措置を打てばいいかというところが議論のポイントなのかなと考えております。
次のスライド13はステーブルコインについてです。ステーブルコインの規模自体は2020年以降、急速に拡大しているような状況でございます。そちらが左のグラフです。右の円グラフでは、暗号資産等の市場に占める割合が8%というような状況になっているようなものでございます。
次のスライド14をお願いします。こうした中、特定信託受益権型のステーブルコインにつきましては、発行見合い金の全額について同じ通貨建ての要求払いの預貯金での管理が求められているような状況でございます。こちらは、ステーブルコインの価格安定性、流動性に配慮したものとなっていますが、ただ一方で、海外では裏付け資産について一定の条件を課した上で、預金以外での資産での運用を認めているような例もございます。アメリカ、欧州、英国、シンガポール、それぞれ若干の違いはあれど、そのようになっておりますが、こうした状況を踏まえて今後、日本での特定信託受益権型のステーブルコインの扱いについて、どのように考えていけばいいかというところが議論のポイントになるかと思っております。
次、スライド15、立替サービスに移ります。立替サービス、本当に様々な形態がありますが、一般的には「利用者から依頼を受けて事業者が資金を立て替えた上で、後から利用者に対して立替金を請求するサービス」と考えてございます。ただ一方で、こちらは必ずしも貸金業法や資金決済法で通常想定される取引というものではないようなこともあり、それぞれのケースに応じてどういった法律の当てはめがあるのかということを判断していくような状況でございます。
下の2つの例、給与前払いサービスと請求書支払い代行サービスにつきましては、かつて私ども、金融庁に問合せ等がありましたもので、それぞれグレーゾーン解消制度、ないし、ノーアクションレター制度に基づいて照会があったものです。例えば左側の給与前払いサービスは貸付けに該当しない一方で、右側の請求書支払い代行サービスは貸付けに該当する旨、回答しているところでございますが、このように立替サービスといってもその形態によって法的位置付けが異なるようなこともあり、どのように整理していくのかというようなところがポイントになるのかなと考えております。
次、スライド16、外国の金融機関等のシンジケートローン参加についてでございます。こちら、外貨建てのシンジケートローンの組成につきましては、ちょうど右側の棒グラフにありますとおり、一定程度ニーズがあり、日本企業による外貨調達ニーズに応える選択肢の一つであると考えております。一方、日本国内の金融機関が組成するシンジケートローンに、日本で特にビジネスをやっていない、つまり、外国銀行としての免許なりを持ってビジネスをやっていない外国銀行が参加者として参加するような場合においても、貸金業法上、登録をして、日本国内に支店ないし営業所を設置していないといけないような状況になっていて、こちら、規制の重さと実際やろうとしていることのバランスについて様々な御意見があるところ、どのように考えるべきか、というところが議論のポイントかなと考えております。
それでスライド17以降が今、私から説明いたしました6つの論点について、具体的に御議論頂きたい事項としてまとめたものでございます。先ほどの説明と重なるところはありますが、一番上の送金分野、資金移動業のところでは、破綻時の利用者資金の還付手続には最低約170日の期間を要するというようなところ、より迅速に資金の還付を行うため、供託手続のみならず、銀行や信託会社から直接利用者に対して資金返還を行うことを認めるかどうかについて、どのように考えるのかというようなところでございます。
音声の不良により、少々お待ちください。
失礼いたしました。音声が復活したようなので、説明を続けます。
1つ目からやり直します。こちらにつきましては、資金移動業の破綻時には最低約170日、要するのですが、より迅速な還付という観点から、ほかの選択肢を認めることについてどのように考えるかというような点でございます。
2つ目はクロスボーダー収納代行でございまして、このようなビジネスをやっていらっしゃる方の中には、資金移動業登録を受けることなく提供しているケースもあるところ、クロスボーダーならではのリスクを踏まえて、為替取引に関する規制を適用することについて、どのように考えるかというようなところでございます。
3つ目、暗号資産につきましては、現物のみを扱う業者が破綻した場合は国内資産保有命令を発出することができないような状況を踏まえて、国内の利用者財産の返還を担保するための規制のあり方について、どのように考えるかという点でございます。
4つ目、ステーブルコインにつきましては、ステーブルコインの裏付け資産について、海外では一定の条件を課した上で預金以外の資産での運用を認めている例もある一方、日本においては預貯金のみでとなっているところ、どのように考えればいいかというような点でございます。
その他に行きまして、5つ目、立替サービスについては貸付けや送金と類似の効果があることを踏まえ、こうした立替サービスと貸金業者による与信や資金移動業者による送金との関係をどのように考えるか。
最後の6つ目、外国銀行等のシンジケートローン参加について、外貨建てのシローンの組成については日本企業による外貨調達ニーズに応える選択肢の一つではあるようなところ、一方で、こうしたサービスを提供するには貸金業法上の登録をして、日本国内に支店、営業所等を設置することが求められている現行の規制についてどう考えるかという点でございます。
まだ、音声が不調になっているようなので少々お待ちください。
それでは、スライド20をお願いいたします。こちら、スライド20につきましては、第2回以降の各論回で具体的に議論をさせて頂くということで、今現在、事務局におきまして実態把握や論点整理をしているところでございますが、本日は頭出しということで5つ紹介させて頂きますと、1つ目が第一種資金移動業の滞留規制のあり方、2つ目が前払式支払手段の寄附への利用、3つ目が暗号資産に係る事業実態を踏まえた規制のあり方、4つ目が銀行によるステーブルコインの発行、5つ目が特定信託受益権型のステーブルコインにおけるトラベルルールの適用についてでございます。こちらにつきましては、第2回の各論回以降でより深度ある議論ができるように、我々として準備をしているところでございます。
スライド21以降につきましては、これまでの閣議決定や私どもの金融行政方針で関係あるところを抜粋したものでございます。
資料の説明は以上になります。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明を踏まえまして委員の皆様に御討議を頂きたいと思います。なお、本日は初回の会合ですから、諮問事項や当ワーキング・グループの検討課題を含め、幅広い観点から御意見を頂戴したいと思います。また、説明に対する御質問がありましたら併せて御発言頂ければと思います。
まず、本日御欠席の永沢委員から御意見を頂いているということですので、事務局から御紹介させて頂きます。
【三浦信用制度参事官】
では、引き続きまして資料4に記載しております永沢委員からの意見書につきまして、簡単に紹介させて頂きます。
まず、先ほど資料3のスライド18以降に関係するところですけれども、資金移動業につきましては、かなり多くの消費者が利用しているサービスに成長しているようなことを踏まえ、銀行や信託銀行から直接利用者に対して資金返還を行う方法が、現行の方法と比べて資産保全の程度が劣らないことを御説明頂くことが必要であるとの御意見を頂いております。
クロスボーダーの収納代行につきましては、資金移動業に類似した業務を行っている場合には利用者保護の観点から資金移動業としての登録を求め、資産の保全等を義務づけるべきというような意見を頂いているところでございます。
暗号資産交換業者につきましては、利用者保護の観点から資金決済法においても国内資産保有命令を出せるよう、措置することに賛成するような御意見を頂いております。
2枚目に進みまして、その他、今後の審議事項に追加して頂きたい事項として、BNPLと呼ばれている立替サービスについての検討、更に、翌月一括払いのクレジットカード決済について資金決済法等で利用者保護を図ることについて検討することをご希望される旨の御意見を頂いております。詳細につきましては、資料4を御覧頂ければと思います。
説明は以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、委員の皆様方から御意見、御質問をお伺いできればと思います。御発言を希望される際には、対面で御出席されている方におかれましては机上の名札を縦にして頂き、オンラインで参加されている方におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てに発言がある旨の御入力を頂ければ、それを確認して指名をさせて頂きたいと思います。
なお、限られた時間で可能な限り多くの方に御発言を頂きたいと考えておりますので、お一人当たり5分程度で御発言を頂ければと思います。それでは、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】
弁護士の伊藤と申します。本日は、このような機会を頂きましてありがとうございます。初回ですので総論として基本的な考え方を述べさせて頂いた後に、各論の論点について簡単にコメントしていきたいと思います。
今回のワーキング・グループの対象となっているのは、主に資金決済法を含めた決済制度で、この決済制度というのは、ここ数年、新しいサービスがどんどん増えて、それに伴って改正が繰り返されてきた結果、いささか複雑な枠組みになっていると実感しております。例えば、消費者からみて、どのサービスがどの制度で保護されているのかというのは違いが非常に分かりにくい。また、事業者が新規のサービスを検討するときに、どの法規制がかかり得るのかという判断がとても難しくなってきているという実感がございます。
この現状を踏まえ、私の前提となる基本的な考え方を2つ挙げさせて頂きます。1つ目は、制度の対象となる事業者、それからサービスの線引きを可能な限り明確にしていきたいと考えています。これは、消費者、事業者双方にとっての予測可能性という意味で非常に重要だと考える次第です。
2つ目は、保護すべき利益が何か、立法事実が何かというのを、当たり前のことですけど丁寧に検討し、納得感のある制度を目指していきたいなと思っています。
以上2点を前提にしまして、以下、各論は簡単に4点ほど申し上げさせて頂きます。まず1点目、18ページの資金移動業の還付手続について、この還付手続の検討には、前払式支払手段も含まれるのでしょうかという御質問でございます。7ページでは、※印で前払式支払手段についても触れておられますので、検討対象が両方なのかどうかということです。
この還付手続については、還付を受ける人や金額を特定し、確実に返していくのが一番大事というのは論をまたないと思います。これに加えて今回、早期に返還していくことも目指していくと。これは当然のことと考えておりまして、特にここに異論があるわけではございません。ただ、現行の資金決済法の還付手続を考えてみますと、申出の期間をできるだけ長く取ることによって確実に利用者に返していくという考え方と理解しておりますので、これに加えて早期返還というのをどうやってバランスをとって反映していくのか、いま一度議論させて頂ければと考えております。
続きまして、2点目です。クロスボーダーの収納代行についてです。収納代行の法制度は、今、極めて複雑な制度になっているという思いがございます。資料のとおりの海外と法制度が異なるといった問題点は理解しておるのですが、もう少し実態、どんなサービスが広まっていて、そこでどのような問題があるのかというところを私自身も勉強していきながら、そして教えて頂きながら各論のところで議論を深めていきたいと考えています。
3点目は、ステーブルコインについてでございます。まず、18ページの裏付け資産の件に限って言えば、個人的には必ずしも裏付け資産を預金だけに限定する必要はないのではないかと今のところ考えております。ただ、一定の条件についてどうするんだということになると、この論点の背景、国内発行の電子決済手段なるものをどう位置づけていくかというところを並行して考えていかなければいけないと思っています。
前回の改正時、電子決済手段ができたときの議論を振り返ってみたのですが、おそらく、まだ見えないところが多い中で、安全性についてはとても慎重な議論がなされたものと理解しています。その後、今見えてきた部分、例えば、具体的なビジネスの芽も見えてきて、また、世界のステーブルコインとも連携、関係性を有していくと思いますので、そこの関係性を踏まえた議論をしていきたいなと思っている次第です。
最後4点目は立替サービスについてです。この論点は、法律構成が多岐にわたり、スキームが複雑なものが本当にたくさんございます。よって、法規制のありようによっては線引きがすごく難しくて、予測可能性という意味で大きな課題を抱えた論点だなと思っています。ですので、規制が個別事案ごとにならないように、可能な限り類型化した上でしっかり議論をさせて頂きたいと考える次第です。
以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。1点御質問があったと思いますが、資金移動業の部分についていかがでしょうか。
【三浦信用制度参事官】
今、伊藤委員から御質問ありました前払式につきましても議論の対象になるかというような点につきましては、事務局としては議論の対象になると考えてございます。もちろん、委員の方々から議論する必要はないとなれば不要でしょうし、議論の対象とするようにとのことであれば対象にするということかと思います。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは神作委員、お願いします。
【神作座長代理】
御指名ありがとうございます。学習院大学の神作でございます。18ページと19ページの各論点について、一言ずつ発言させて頂きます。
初めに資金移動業関連ですけれども、資金移動業者が供託、履行保証金保全契約または履行保証金信託契約により保全している資産の還付手続に、現状では170日以上というかなり長い期間を要するという御説明を頂きました。手続的な手当てはしっかりなされているものの、利用者の利益という観点からは、保証金保全契約や履行保証金信託契約の相手方である銀行や信託会社から、直接利用者に対して資金返還を行うことによって期間がより短くなれば、利用者保護がより高まり、選択肢も増え、適切だと思われます。
仮に、その場合の手続や未達債務に係る債権者の優先弁済権の法的性質など、法的に不明な点や曖昧な点があり、かえって手続が遅延したり、戻ってくるべき財産に不足が生じたりすることがないよう、このような観点に留意しながら検討を進めて頂くのがよろしいかと存じます。
次に、クロスボーダーの収納代行について申し上げます。クロスボーダーの収納代行は最高裁判所の為替取引の定義、すなわち隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受け、これを引き受けることに該当するのが通常であると思われます。クロスボーダーの場合には、国内送金に比べてリスクが明らかに大きくなることにも鑑みて、基本的に為替取引に該当する点から出発して、規制の必要性やあり方について議論していくのが良いのではないかと考えております。
次に、暗号資産の現物取引のみを扱う業者の破綻の場合にも、スライド11ページに御説明頂きましたように、実際に現物取引が量的にも割合的にも大きいことを考慮すれば、国内資産保有命令を出せるように措置することが必要であると思われます。なお、必要に応じて、履行保証暗号資産等に対する利用者の優先弁済権のエンフォースメントに係る手続等を明確化することについても、併せて検討する余地もあるように思われます。
次に、特定信託受益権、すなわち、第3号電子決済手段につきましては現在、要求払い預金での運用に限定されておりますが、現行法は電子決済手段の価値の安定性や流動性を極めて高いレベルで確保していると評価できると思われます。電子決済手段のステーブル性を確保するためには、もちろん要求払い預金以外の資産も考えられるわけですけれども、まずは確実なところから特定信託受益権をスタートし、利用の実態等を見ながら信頼性を高め、その後、様子を見つつ管理、運用方法を徐々に拡張していくことも考えられるように思われます。いずれにせよ、議論の対象にすることには異論はございません。
次に、19ページでございます。立替サービスにつきましては、バイナウペイレーターなどで実際に深刻な問題が生じている、あるいは生じつつあると思われますけれども、少なくとも私は実態をよく知らず、実態について教えて頂ければ大変ありがたいと存じます。後払いに係る立替サービスの主たる問題は、消費者である利用者が過剰債務を負ったり、あるいは詐欺的な取引に巻き込まれたりすることだと拝察しております。この問題は主として、消費者保護法的な民事法上の規律によって解決するのが一番大事だと思われますけれども、資金供与ないし信用供与の機能が認められる一定の場合には貸金業法の適用が解釈論上も問題になり得ると思われます。いずれにしても、議論することに賛成でございます。
もし、立法論的な規制、立法的な規制が必要だということになった場合には、立替払い委託構成のほか、債権の売買ですとかリースなどの様々な法律構成によっても同等の経済的効果が得られる可能性があるため、例えば一部のファクタリングやファイナンスリースについても視野に入れて、横断的、機能的な規制に穴が生じないように考えるとともに、もし規制を導入する場合には、例えば金融商品取引業者などのように業者に種別を設けて、貸金業法の規制を柔構造化するようなことも検討に値するように思われます。この論点は、かなり時間をかけて議論する必要があるのではないかと思われます。
最後に、外国金融機関等のシンジケートローンへの参加につきましては、貸金業法の見直しだけではなく、同様の規定がある外国銀行についての銀行法上の取扱いも併せて検討し、それぞれの法律において支店・営業店の設置義務が課されている根拠や、その利害得失などについて一緒に検討すれば大変有益なことと思います。
以上でございます。どうもありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、次に河野委員、お願いします。
【河野委員】
日本消費者協会の河野と申します。このワーキングが設置された理由と、その検討の必要性については、時宜を得たものだと理解しております。デジタル技術を用いた金融サービスの進展によって、送金・決済・与信サービスでは既存のありようから大きくフィールドが広がって、想定を超えるスピードで社会システムとして機能している実感がございます。こうした新たな金融サービスの登場に対して、その恩恵を受けつつ、リスクも引受けざるを得ない利用者保護というのを今回の検討では視野に入れて頂いて、適切な規制のあり方について御検討頂けることは、消費者としてはとてもありがたいと思っております。
今回は、個別の論点というよりは、全体感について受け止めをお伝えしたいと思っております。気になる点が幾つかございまして、既に多くのユーザーに使われている金融サービスが全く初めというのものというのはなくて、今回論点に挙げられている金融サービスというのは既に認知されているものが対象となっていますけれども、各検討課題の粒度が大分違うのではないかなと思っております。また、検討課題と挙げられた要因ですけれども、どのような問題について、主に誰から指摘をされているのか。例えば、金融庁様に設置されている金融サービス利用者相談室でのデータ分析から、これは対策が急務だよねとピックアップされたのか、それともフィンテックのビジネスをされている金融関係の事業者の皆さんから、現状では、ビジネスにとって少し支障があるよねという御指摘があったのか、また、国内をにらんでの必要性なのか、グローバルでの課題なのかなど、複数ある検討課題の緊急性ですとか、それから重要性というのが横並びで今は提示されていますので、いま一つ分かりにくいのかなと思ったところでございます。
その上で、課題ごとに規制強化、それから規制の緩和、運用や解釈の整理など、対応策も多様だと思っております。そうした今回検討すべき対策が、私たち利用者や、それから業界の皆様、それから社会全体にもたらすアウトカム、効果についても予見性を持って、この場で議論して頂ければありがたいと思います。対策のみならず、どういう実効性を持って社会に浸透していくのかと、その視点もぜひ留意して議論を進めて頂きたいと思ったところです。
私たちは利用者ですけれども、当然フィンテックビジネスの拡大によって社会全体がしっかりと経済的に繁栄していくことを同時に望んでいるものですから、そういった視点からも今後の検討が、利害がぶつからないようにというか、利害を上手に調整していくような形で進めて頂ければと思っております。
先般、私のところにも届きましたけれども、2024年度金融行政方針にお示し頂いたとおり、国内外の経済社会の構造上の変化や金融経済情勢等の不確実性の高まりを展望しつつ、金融行政の施策、手法を不断に見直し、改革を迅速に進めていく中での今回の課題というのは重要だと思っておりますので、このワーキングが円滑に進められていくことを期待しておりますし、私も消費者として頑張って参画していこうと思っております。
ということを伝えた上で、利用者に対して適宜適切な情報提供や、当然、時代に即した金融教育と、時代のスピードに負けないような社会全体の金融リテラシー向上への配慮というのも忘れないでいって頂ければと思っているところでございます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。
そうしたら、ここでかなり前からお待ち頂いている3人、オンラインの方で岩下委員、加藤委員、坂委員の順番で御発言頂けますか。
それでは、まず岩下委員、お願いします。お待たせしました。
【岩下委員】
ありがとうございます。念のため、画像なしで、そのほうが安定すると思いますので、お話をさせて頂きたいと思います。
本日初回ということで総論的なお話をさせて頂きたいわけですが、私の立場としては、今回の議論の中で、伝統的金融からさらに発展したフィンテック事業者的な人たち、キャッシュレス決済とかの様々な規制の緩和というか、自由化を段階的にやってきたわけで、その主戦場が資金決済法だと思うんですが、こちらの領域での規制緩和というのはぜひ大いに進めるべきだという立場です。
ただ、広義の金融サービスには3階層あると思っていまして、伝統的金融の次にフィンテック事業者が居て、そのさらに外側、伝統的金融から遠いところに分散型金融と言われる領域があります。典型的には暗号資産であるとか、あるいは暗号資産を基盤とする様々なプロダクト、中には暗号資産っぽくない、例えばフィアットカレンシーと等価であるとうたっているステーブルコインとかですね。実はこの分散型金融の世界のプロダクトは、暗号資産の生み出す利益というか、値上がり益が得られることから拡大しているわけです。けれども、一方で金融と呼ぶにはあまりに不安定性であり、それ自体が持っている特性から、アンチマネロンとか、テトリスト・ファイナンシングへの対応の弱さというものがどうしても出てしまいます。そういう意味では、新規参入のうち、伝統的金融の仕組みをきちんと使うようなフィンテック事業者の領域であれば、規制緩和をして大いに活性化していくべきであると思います。他方、分散型金融の領域に入ってしまうものについては、一般的利用者が他の伝統的金融と勘違いして使ってしまって不利益を被ることがないように、これをしっかりと区分しておくべきであるという、そういう考え方を申し述べたいと思います。
今回の資料でいきますと資料のページ番号3ページ、今日御説明なかったところですけど、こちらの右から2段目の暗号資産のところに幾つか過去の年表がございます。こちらで例えば2014年のマウントゴックス事件、2018年のコインチェック事件、2022年のFTX事件、2024年のDMMビットコイン事件などが書かれているわけですが、これらの事件のどれ一つをとってみても監督当局としては大変に苦労した、どう解決すればいいのか分からないということで、大変つらかった事件だと思います。
なぜこういう事件が起こったときにつらかったかというと、特に2018年に起きたコインチェック事件の時に痛感したんですが、580億円が盗まれてしまい、しかも盗まれてしまった資金が明らかにこのアカウントに残されていることが分かっているにもかかわらず、それを取り返すことができなかったんですね。分散型金融は、既存の社会秩序を維持するためのコンプライアンスがきちんと達成されないという問題を持っています。それを金融と位置づけるのが大変つらかった覚えがございます。
今日の資料でも大変特徴的なのは、資料でいうと後に飛びますが13ページでございます。13ページにステーブルコインのグラフがございますが、このグラフのうち、過去のピークとして2022年4月の数字があります。ここにぴょこんと濃い赤色でTerraClassicUSDというステーブルコインが書かれているんですが、この半年ぐらいでばっと拡大して、これが一気にゼロになるということが2022年の5月、僅か2年ちょっと前に起きたわけであります。
これはステーブルコインですから、1コイン1ドルというようなフィアットカレンシーとリンクしている前提で取引されていて、しかも、それを使うことによって分散型金融に参加できて、そうすると非常に高い金利であるとか、収益性が見込まれるようなものだと当時は喧伝されていたわけですね。ところが、実際に何が起こったかというと、このタイミングでビットコインの相場が下落しましたと。そのときに、ステーブルコインが、それを1コイン1ドルだと思っていた銀行預金のようなものと思っていたものがゼロになってしまうことが実際に起こったわけですね。これがかなりの規模で起こりました。
ところが、規制されていない、誰からも監督されていない、通常の上場企業のガバナンスとか、そういう枠組みも受けていないところが発行しているステーブルコインが実に今、全体で1,500億ドル、これは銀行券で例えますとイギリス1国が発行している紙幣全体を上回るような量でありますので、そういう状況が今、発生してしまっているわけです。
これらのものが次のページ、14ページの記述で見ると、各国ある程度、これが存在していることを認めて、一定の条件の下にこれの参入を許す、日本の国内にも持ち込もうという議論がございます。ただ、これは通常の銀行と銀行周辺業の間での縄張り争い的な規制緩和をするか、しないかという争いとは次元の違う、ある意味では全く未知の領域からの新規産業でありまして、しかも、それらのものが寄って立っているものが極めて脆弱というか、何が起こるか分からない世界であります。しかも、一朝事が起こったときに、先ほどのコインチェック事件のように当局側は全く手の出しようがないという、そういう状況でございますので、これらのものに投資をする人たちというのを別に止める気はありませんが、それが、一般の利用者が通常の金融として入ってくることは、これは何としても食い止めたほうが金融の安定性という視点からよいのではないかと考えられます。
そのような視点から、今回の幾つかの諮問事項について、基本的には国内での様々な競争の条件であるとか、あるいは競争の活性化といったような観点から自由化を進めるべきものというのは多々あると思いますので、それはぜひ進める方向で取り組んで頂いて、ただし、この種の極めて問題の多い海外で組成された分散型金融の世界のプロダクトが国内の金融に交じってしまうことを、これはできるだけ排除して、それはそれできちんと区分した形で管理していくことが大事なのかと考えます。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、加藤委員お願いします。
【加藤委員】
加藤でございます。私も岩下委員に倣いまして、画面はオフでコメントさせて頂きます。私からは、資料の18ページから19ページにかけて掲げられております事項の幾つかについて、基本的な考え方、視点のようなものをコメントしたいと思います。
まず最初に、資金移動業における利用者資金の返還については、この資料にもありますとおり、見直しの余地が非常に大きいように思われます。ただ、その際には現行法の手続において利用者の利益がどのように保護されているのかを確認しておく必要があると思いました。現在の仕組みは、利用者は資金決済法に基づき履行保証金に対して優先弁済権を持っていることを前提にした上で、個々の利用者が個別的に優先弁済権を駆使することは費用負担の問題があり期待できないため、集団的な権利行使の機会を与える仕組みであると評価できます。そして、この権利を行使するかどうかについては利用者の判断に委ねていることが前提になっていると思います。
さらに、これは資金移動業についてというよりも、むしろ前払式支払手段の場合に大きな問題になるかと思いますけれども、例えば商品券のように事業者が今、誰が本当の権利者かを把握していない場合もあるかと思います。誰が権利者かということを把握できないとなりますと、こういった利用者の資金の返還手続の中で、より一層追加的な手続が必要になってくると思います。
さらにもう一つ、最終的に供託の手続に一本化して利用者資金の返還を行うことも現行法の特徴かと思いますけれども、その前提は資金移動業者が利用者から受け入れた資金を保全する方法が複数存在しており、かつ、それを自由に組み合わせる、第三種資金移動業については、やや例外がありますけれども、自由に組み合わせることができる、この点も前提とされていることを考える必要があると思います。
次に2点目は、暗号資産交換業者が利用者のために管理する暗号資産の返還についてです。こちらにつきましても、暗号資産交換業者は顧客のために分別管理する暗号資産に対して優先弁済権を有することが資金決済法において認められております。しかし、優先弁済権の対象となる暗号資産が暗号資産交換業者から流出すると、優先弁済権の対象となる財産は減少しますが、資金決済法63条の19の2の第2項によって民法333条が準用される結果、その流出を妨げる手段は利用者には存在しないと解されているのではないかと思います。
暗号資産交換業者が利用者のために暗号資産を管理する方法について、自らが秘密鍵を管理するウォレットでの管理を認めるのであれば、少なくともそのようなウォレットで管理されている暗号資産が社外に流出し、利用者が損害を被ることを妨げる仕組みは非常に重要であるように思います。国内資産の保有命令も、そのような仕組みの一つとして位置づけることができるように思います。
次に、特定信託受益権の発行見合い金の保全方法について、岩下委員が御指摘された問題、すなわち、特定信託受益権を含むステーブルコインが分散型金融への入口となっている点をどのように考慮するかも問題となり得ます。ただ、現行法上、資金移動業者も電子決済手段を発行することができ、この場合は利用者から受け入れた資金を信託した上で、その運用益を資金移動業者が収受する仕組みを利用可能となっています。そういった仕組みとのバランスも考えざるを得ないように思います。
さらに、この特定信託受益権の発行見合い金の保全方法を見直す際には、特定信託受益権の受益者が受託者から迅速に額面額で償還を受けることができるかが非常に重要であることは言うまでもありません。その一方、現在、海外で流通しているステーブルコインでは、発行者から償還を受けるというよりも仲介業者に売却をするなどセカンダリーマーケットでステーブルコインを現金化するほうが一般的ではないかと思っております。その結果、特定信託受益権も含むステーブルコインについては市場と市場価格が非常に重要であり、市場価格が額面価格から乖離することが問題になるのだと思います。
ただ、市場価格の額面価格からの乖離を規制によって防止することがステーブルコインの商品設計の中で可能なのか、そもそも規制の目的とする必要があるのかを考えてみる必要はあると思います。
最後に、外国銀行などのシンジケートローン参加についても1点コメントをいたします。こちらは非常に細かい論点のように思われますが、もう少し一般的な枠組みで考えることもできるように思います。すなわち、シンジケートローンに参加することのみを根拠に外国の金融機関などに営業所などの設置を求めた上で銀行業の免許、または貸金業の登録を要求することが過剰規制にならないか、リスクに対応した規制になっていないのではないかが問われているからです。
このような問題が生じている背景としては、銀行業や貸金業に関する規制については金融商品取引業や資金移動業と比べて、規制の柔構造化がそれほど進展していないことが背景にあるのかと思います。もちろん、各事業者が提供する金融の機能に応じて望ましい柔構造化のあり方は異なると思いますが、この外国銀行などのシンジケートローンの参加について議論する際には、規制の柔構造化という観点からの分析も行うことが有益ではないかと思いました。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは坂委員、お願いいたします。
【坂委員】
坂です。よろしくお願いします。私も皆様に倣って音声のみで参加をさせて頂きます。私から、主として立替サービスと収納代行についてお話をしたいと思います。
まず、立替サービスの規制のあり方についてですけれども、3点申し上げます。1点目ですけれども、このような課題では同一の機能、同一のリスクのサービスには同一ルールを適用する機能別、横断的な規律という視点が共通の認識かと思います。そこで着目すべき機能とリスクですけれども、貸金業法との関係では、信用供与機能と過剰与信や高金利によるリスク等が、資金決済法上の資金移動業との関係では、資金移転の機能とマネロン対策も含めたオペレーショナルリスクが着目点となろうかと思います。係る観点から法形式に関わらず、経済的、実態的な検討がされるべきです。
2点目ですけれども、給与前払いサービスについてです。資料15ページの左側のサービスですけれども、ここでの経済実態としては労働者への信用供与が行われており、また、そのコストも労働者が負担しております。経済的な余裕の少ない労働者により利用されるであろうことや、労働者が繰り返し利用する可能性があることに鑑みますと、過剰与信や実質的に高金利負担となるリスクが存在します。したがって、これを貸付けに該当しないとする評価は疑問であり、むしろ一般的には貸金業に該当すると考えるべきではないかとも考えます。個別に該当しないとする場合があり得るとしても、過剰与信や実質的な高金利負担のリスクが損しない場合に限定されるべきです。当該の金融庁の回答も、当該照会事案について一定の留保をつけている点は留意すべきだと思います。なお、このサービスについては、労働法上、賃金の全額払いの原則等への抵触も慎重に検討すべきと考えます。
3点目ですけれども、消費者相談の現場では、BNPLと呼ばれる後払い決済サービスが問題となっております。かねてより過剰与信の入り口となり得ることが指摘をされ、悪質加盟店により悪用されるリスクが高く、現に詐欺的な定期購入商法において悪用されている実態があります。地方の消費者保護条例に基づいて決済事業者に指導が行われる事態も生じており、現場からはその法規制を求める声が上がっております。BNPL、後払いサービスも信用供与機能を果たすものであり、過剰与信防止等の必要があります。また、貸金と送金サービスの組合せによっても同様の機能を提供でき、あるいは現在のサービスをそのように評価することも考えられるところです。
BNPLは本来、割賦販売法の規制枠組みによるべきと考えられますけれども、現状、同法による規制はされておりません。規制の隙間が生じないようにするためにも、縦割りの規制ではなく貸金業法を信用供与の一般法と位置づけて、割賦販売法等の規制対象となっていない信用供与機能を貸金業法の規制枠組みで捉えることを検討すべきだと思います。BNPLも係る観点から、実態把握と海外の規制動向も踏まえた検討すべきと考えます。
次に、クロスボーダーの収納代行についてですけれども、現状、マネロン対策上、喫緊の課題となっております。海外関連の投資被害事案においては、1,000億円を超える資金が海外に流出し、その行方の把握が困難な事態も生じています。金融庁の報告書では、オンラインカジノや風俗関連事業等、法律や公序良俗に反するサービスを提供している事業者による悪用が懸念されております。
手短に4点述べさせて頂きます。第1に、今やマネロン対策は為替取引規制の重要な要素となっており、規制の範囲もその実効を図る観点から明確化していく必要があります。第2に、マネロン対策の実行のためには事業者に対し、参入規制の下で体制整備を求め、継続的な監督と行政処分等のサンクションを確保することが必要です。第3に、送金代行型の収納代行はクロスボーダーだけではなく国内送金も規制の対象と明確化する必要があります。クロスボーダー送金も段階的に国内送金を介して海外に出ていく場合があり、係る場合、国内送金部分を規制対象とする必要があります。また現状、多くの詐欺的取引被害において、収納代行が悪質な主体によって規制や責任を免れる便利な口実として使われている実態も生じています。近時、大規模なマネロンシステムを運営していた主体の刑事摘発が行われていること等に鑑みても、国内送金を含めた対応が喫緊の課題と考えます。
第4に、収納代行については、支払人は二重払いのリスクを負わないとされておりますが、受取人は収納代行業者の破綻リスクを負担し、保護されません。例えば、資料の10ページの下の例の受取人ということになろうかと思います。今後、送金サービスが一層拡大していくであろうことに鑑みますと、受取人の資産保護もより一層確保すべきであると考えます。
最後に、規制の用いられ方について一言なんですけれども、我が国では事業者からは規制を回避する方向での議論が行われる傾向が強いように思われます。海外ではむしろ、サービスの健全な発展、利用者保護に尽力する事業者を支援し、公正な競争条件を確保するための手段として議論される場合が多いように思います。我が国においても係る観点からの検討が必要と考えます。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、また対面に戻りまして井上委員、よろしくお願いします。
【井上委員】
ありがとうございます。弁護士の井上です。よろしくお願いいたします。
近年、暗号資産ですとかステーブルコインですとか、新しい決済制度に関する法整備がなされてきたと思うんですけれども、今回取り上げられている論点を拝見しまして、そういったトピック毎の新しい法整備というよりは、一定程度整備された様々な決済分野に関して、現在出てきている不都合に対応する必要があちこちで生じており、それを広く取り上げて頂いている感じがいたします。広範囲にわたる意欲的なテーマの取り上げ方だと思っておりまして、検討中とされている論点も含めて、できる限り俎上にのせて頂ければと思います。それとともに、優先順位を意識しながら議論できればと思います。
個別の論点について少しコメント差し上げたいのですが、まず1点目、送金分野に関して、資金移動業者の破綻時において銀行や信託会社から直接利用者に対して返還を行う、これは現在の状況に鑑みると早期に返還するニーズがあるのはそのとおりだと思います。ただ、もう既に意見が何人かの方々から出ましたけれども、安全性あるいは利用者の特定といったことに不備が生じてはいけないと思います。
それに加えて、もう一つ気になっているのが、現在は、銀行や信託会社を利用する場合も最終的には供託制度に載せて還付するということなので、銀行あるいは信託会社がやるべき事務の中身は、保全していたお金を一括して供託するということですが、それに代えて非常に多数の少額の資金を直接銀行あるいは信託会社から返すとすると、事務内容としては大きな違いが生ずる、膨大な事務を要することになりますので、果たしてコストがどのような形で分担されるのだろうということです。もし選択肢を増やしても、業者にとってコストのかかる選択肢だとすると、利用されないだけで終わってしまう可能性もありますので、提案されているような直接返還の仕組みを設けるとしても、そのようなコストの分担も併せて検討し、利用される制度になるように考えなければいけないと思います。
2点目のクロスボーダー収納代行については、規制が必要である、現状を放置できないのはそのとおりだと思っておりまして、とりわけマネロン、犯罪利用といった観点からは何らかの措置がすぐにでも必要だと考えています。ただ、その一方で、どういった規制を及ぼすべきなのか、どういった範囲で規制を及ぼすべきなのかについては考えてみる必要があります。
どういった規制を及ぼすべきかについては、資金移動業者に対する規制と同じ規制を及ぼすべきかどうか、ということです。資金移動業者は、資金移動の仲介者である収納代行業者の破綻を懸念する場合には必要な規制だと思います。
他方で、受領側が大企業あるいは国、地方公共団体で、支払い側が支払った時点で債務が消滅する収納代行を取り上げるとしますと、資金移動業者と同じ資産保全の必要性は相対的に小さいかもしれず、犯罪利用の問題が大きいということであれば、むしろクロスボーダー収納代行業者を犯収法における特定事業者に指定するやり方もあるはずです。
もう一つ考えなければいけないのは、国内の収納代行業者との関係で、どういった範囲で規制を及ぼすべきかです。収納代行は、現時点で、国内で相当程度広がっているビジネスだと思いますが、今、坂委員からの御指摘もありましたように、業者によっては問題になる事例があるかもしれません。そうすると、収納代行を一律、為替取引と扱って規制するべきなのか、クロスボーダーだけを取り上げるとすれば、どういう理由でクロスボーダーの場合だけ為替取引になるのかといった観点も含めて、どのような規制をどの範囲で及ぼすかを考える必要があると思います。
3点目は、暗号資産等の分野ですが、国内資産保有命令について、現物取引しかやっていない業者についても措置が必要だというのは、そのとおりだと思います。
4点目のステーブルコインの裏付け資産については、預金だけでなければいけないとは思いませんけれども、しかし安全性に問題が生じてはいけませんし、実際上、ステーブルコインの価値が額面価格から乖離するのは、裏付け資産に不安があるからだと思いますので、緩和するとしても、信用リスクの点で、あるいは流動性リスクの点で、どのような程度、どのような範囲でということを慎重に考えるべきだと思います。
5点目の立替サービスについては、先ほど既に議論がございましたけれども、与信業者であれば与信業者としての適切な規制が必要になるわけで、だとすると受信側である資金移動業者に対する規制をそのまま持ち込むのとは違った発想が必要になり、そうすると貸金業か、割販法なのかが問題になりますけれども、貸金業については次の点に関して意見を申し上げますが、そのままの規制を及ぼすことには慎重でなければいけないと思います。
最後の外国銀行等のシンジケートローン参加、これは現在、不都合が指摘されている問題で、確かにこういった場合に貸金業登録を受けて国内に拠点を置けということになると、事実上、こういったビジネスは進まないということだと思いますが、私は、そもそも貸金業法の現在の規制をそのまま維持すること自体に問題があると考えております。現在、貸金業法は、借入人が個人であれ、大企業であれ、基本的には適用があって、その適用内容、規制内容も一律にかなり厳しいもので、柔構造化が進んでいないという御指摘があったところです。
そうだとすると、今、たまたま不都合が生じている外国銀行等のシンジケートローン参加だけを許す、あるいは規制を緩和するということではなくて、本来的には、一定規模以上の法人向け貸付けについて、そもそも今のままの規制でいいのか、あるいは外貨建ての貸付けについて今のままの規制でいいのか、あるいはクロスボーダーの場合に規制の適用範囲をどう考えるのか、幾つかの観点から柔構造化、あるいは一部については、もはや貸金業規制から外すことも含めて考える時期に来ているのではないかと思います。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは小川委員、お願いします。
【小川委員】
公認会計士の小川でございます。金融テクノロジーの進化をいかに推進するかは、我が国にとって重要な戦略の鍵になると思っていますので、今回委員として参画させて頂いたことを非常に光栄に思っています。
今回の特徴としては、サービスの多様化でリスクも非常に多様化をしていること、リスクの拡散が国境を容易に越え、そのスピードが極めて早いことだと考えています。さらに、分散化が進むほど、一方で信頼できる金融基盤というものが、当該新ビジネス市場の成長に、より強く求められていくものと思っています。なので、今回の議論の中で何を優先していくべきなのか。利用者の利便性、サービスの多様化による経済の発展というのはもちろんですが、一方で、確実な安全性ある社会基盤、金融基盤をつくることがあって初めて発展していくだろうと考えています。以上、総括でございます。
次に、今回一つ一つ頂いた宿題について、少しコメントさせていただきます。
まず、資金移動業について、ここは2つ論点があると思っています。現在、債権者申出の期間は60日、最終配当まで110日、合わせて170日を短くできないかという議論と、銀行、信託銀行から、直接債権者に支払えるかといった議論。両者それぞれ分けて議論すべきではないかと思っています。
銀行への供託の場合、これは保全契約として、業者としては手元流動性を確保できるという利点がある。信託の場合は信託財産となる。今後、それぞれが直接債権者に支払うとなると、先ほどもコメントがありましたように、銀行、信託銀行は、誰に対し、いつ、いくら支払うべきか、適時、確実に把握、管理する必要があります。これは金融機関にとってシステム対応含めて極めて重要な影響、重い課題になってくる。そして当該コストは、最終的には消費者への負担として跳ね返ってくるだろうと思っています。
信託契約の場合、当該少額かつ変動する供託相当額について、実際、当該預かり金をどこまで分別管理していくのか。現在、債権者からの申し出があって、初めてお金をお支払いするといった仕組みになっているかと思いますが、当該管理にも当然コストがかかってくる。また、銀行保全契約の場合には、実質的な保証に近い形になってくるかと思われますが、そうなると当然、そこに事業者のクレジット(信用)コストが保証料の中に入り、今まで事務代行手数料的だったものが、そういった新たなコストも消費者に跳ね返ってくるだろうと思っています。また、従来の供託金支払いの手続きと、今後、銀行、信託銀行から直接支払う手続きが共存する場合、相互に整合性がとれるのかといった問題もありますし、実際に今のルールとして、債権者からの申入れがあって初めてということになると、その方以外の方の供託金相当額が銀行や信託銀行にお金として残ってしまう。それをどう取り扱うのかといった論点もあると思っています。なので、一つ一つ丁寧に議論すべき論点があると感じているところでございます。一つずつ整理し、最終的に本当に利用者が170日から短くすることによって得られるベネフィットを分析し、コスト負担を増額してまで得られるベネフィットがどの程度あるのか確認し、議論していくことが極めて重要かなと思っています。
それからクロスボーダー収納代行について、頂いた資料の10ページに分かりやすい図があります。先ほどからの御意見にもありましたが、当然、利用者保護、利便性のほかに、アンチマネーロンダリング、ひいては安全保障といった問題をきっちりと考えていかなければならないと思っています。例えば10ページの上の図、このようにシンプルなケースだけだとよいのですが、実務では、例えば国内から海外事業者に流れた後に、そこからものすごく多くの複数の先が存在するケース、あるいは、枝分かれ還元など複雑化し、悪意も含め一切追いきれない、コントロールできない状況も想定されます。すごく早いスピードで多様なビジネスが日々生み出されている現状を理解する必要があります。
こうした状況下で、日本国としてどこまできっちりとそれを追いかけられる仕組みを作り得るのか。ボーダーレスが急速に進む中、それが日本だけで本当にできるのかといった話もあるかと思います。また、行政間でも、アンチマネーロンダリング対応等、いかにコラボレーションしていくのかといったところもあります。過去は例えば、ある国で汚染されたお金で、いったん高額な絵画を購入し、当該絵画が国境を渡って現地で絵画を売ることで再度現金化しロンダリングされていく、あるいは、高額な保険契約を締結し、保険金の受取人を海外在住者にするといった形でロンダリングさせて国境を超えるといったケースなど、皆様のほうがお詳しいと思います。デジタルアセットなどを通し、デジタルデータが一瞬にして形を変えて、世界にこうしたリスクが拡散し得るなども考慮し、深い議論が必要かなと思っています。
その下の10ページの逆側が、今度は逆に日本の方が受取人になりますが、例えば、海外で業者の倒産事故があった場合、国内の受取人に対する保全、これをどこまで担保し、誰にその責任を負わせるのか。国内事業者が海外事業者の破綻分のリスクも全部背負うのかどうか、それがコストに見合うのかどうかといったところもきっちりと議論していく必要があるかなと思っています。
もう一つの宿題が暗号資産ですね。FTX Japanの大きな破綻は、確か、あのときは金商法上のデリバティブ商品として保全することができたかと記憶していますが、金商法に今あるもの以外、すなわち、既存の一種、二種でカバーしていないものについて、どこまで取り込み、保存強化するのかが、今回議論と考えています。FTX Japanのケースも現物取引だったとすると、既存の規制では保全できない、といった問題がある。では、二種は違うかと思いますが、これを一種に入れるのか、あるいは改めて三種を作るのか否かといった議論になるかと思いますが、一種になるとどうしてもこの分野の新しい参入者としては、極めてハードルが高く、その対応だけで下手すると赤字になり得る。そういった経済実態もあります。なので、運用のスピード、新規参入者の参入障壁にならない形で、一方で、どこまできっちりと保全を確保し、消費者保護を考え、信頼ある金融基盤を作っていくのかといったところはしっかり議論をしていく必要があると思っています。
次にステーブルコインについてですが、どういった形で、裏付け資産を設定していくのかということかと思います。既に何名かの委員もおっしゃられていますが、いかに流動性を担保できるのか、元本保証商品を条件とするのか、その保証する主体の信頼性をいかに評価していくかが、議論になってくると思います。
典型例としては国債だと思いますが、国債は金利動向で時価が変わります。なので、時点、時点の資産、アセットの時価が変動する、こうした時価変動をどう捉えるのかといった問題も議論する必要があると考えています。他国事例を参考にしながら、あとは汎用性をどこまで持たせていくかの議論だと認識しています。また、その取引自身の規模も考慮し、どこまでそれを認めていくのかもポイントだと感じています。
最後に、事前立替についてです。まずは、給与の前払いについてですが、給与というのは役務の提供への支払いになりますから、当該債権は、労働の対価として、提供時に発生していくものと考えます。したがって、月初一旦これは一時立替金との整理は、一定合理性があると考えています。2つ目の請求書払いについては、商品や、サービスの提供時に、債権が確定しますので、支払期日までの間の、ファクタリングに近いと考えています。その期間について、金利手数料を取って融通するといった経済実態を踏まえ、貸付けとの整理については合理性があると考えます。
一方で、前払い給与の場合、前払いの期間がどれだけ長いかといったところはあると思います。例えば4月1日から4月30日の給与分を4月1日に前払いするのと、1年先想定される給与も前払いするのは当然異なり、後者には信用供与という実態が認められると考えます。したがって、一律整理ではなく、やはり経済実態に合った形での整理が必要なのかなと思っています。
長くなりましたがお返しします。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは長内委員、お願いします。
【長内委員】
大和総研の長内でございます。私は金融分野のリサーチで、その観点からキャッシュレスとかデジタルマネーなどを見ています。そのため、これまでは皆さんの制度や規制に関する議論を受け身でフォローしつつ、それがどのように金融分野等に影響を与えるかのという視点で見てきました。これが多分、他の方と異なる私の強みであり、少し違う視点も含めてコメントさせて頂きたいと思っております。
本日は総論ということなので、まずフィンテックやキャッシュレスにとって、今年は大きな節目の年という話から始めたいと思います。第一に、フィンテックという言葉が世界的に広く使われ始めたのが2014年頃であり、それから大体10年ぐらい経っています。第二に、今回の資料の最後に政府の取組みもありましたが、政府は、今から約10年前の2014年6月に、成長戦略(「『日本再興戦略』改訂 2014」)の中で「キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性の向上を図る」というキャッシュレス化の推進を掲げております。その成果として、6ページ目の図で示されたキャッシュレス決済比率の上昇が挙げられます。現在、政府は2025年6月までにキャッシュレス化比率4割という目標を掲げていますが、恐らく、今年中に4割を前倒しで実現できるのではないかと思っています。
このワーキング・グループの議論の対象としては、基本的に、この図の中で一番多い青の「クレジット」は除かれるため、見た目上、議論の対象となる決済額は小さくなります。ただし、金額でなく件数で見ていくと、実は近年、「コード決済」のところは急速に伸びています。つまり、この図では、見た目上、資金移動業者とか前払式支払手段のところが小さいものの、河野委員からもありましたように、日常的な支払い手段として資金移動業者の提供するコード決済はかなり重要性が高まっているというのが私なりの基本認識です。
これまで私はキャッシュレス関連のリサーチを行ってきましたが、当初は、キャッシュレス決済比率4割という政府目標を期限内に達成できると考えていた人はほとんどいなかったと思います。しかし、現在は前倒しで達成できる見通しであり、当初の予想をかなり上回る形でキャッシュレス化が進展してきたといえます。
その大きな起点の1つになるのが、2020年の新型コロナの影響で消費行動が変わってきたことです。今回、2019年の金融審議会について少し言及されていましたが、2019年以前と現在はかなり状況が変わっていると思います。そして、キャッシュレス決済や送金などの分野でサービスが多様化してきたという流れの中で、いろいろな不都合や課題が出てきており、井上委員もおっしゃったように、それらに対応していく必要性等について、これから議論していくと理解しているところです。
キャッシュレスや広くフィンテックを巡る規制に関して、個人的に大きなポイントとして考えているのが、消費者保護とイノベーションを阻害しない規制という両面を考慮するのが重要ということです。後者は、坂委員も指摘していましたが、公平な競争などが焦点です。海外では、レベル・プレイング・フィールド(Level Playing Field)という言葉でよく出てきます。つまり、すでに複数の委員の方から意見が出ていますが、まず消費者保護をしっかり確保し、その上で、フィンテックの事業者が公正な競争環境の下でビジネスを行い、イノベーションも阻害されない適正な規制を設けるという点について、今後の議論でも考慮すべきというのが私の総論的なものになります。
今回の事務局の説明資料には、丸印で示された検討すべき論点が6つありましたが、大まかにいうと、6つのうち4つが利用者保護に関連するもので、2つが事業者側にメリットがあるものと整理できます。つまり、必ずしも消費者保護に偏っているわけでもなく、事業者の規制緩和のみを優先する形でもありません。このように、消費者と事業者のどちらか一方だけでなく、双方の論点を今回入れて頂いたのは、個人的には良いことだと前向きに捉えています。
消費者保護に関する追加の指摘として、よく利用者保護という話をすると利用者のためだという話になりますが、私は利用者保護をしっかりすることが事業者全体の発展にもつながるという観点で捉えていくのがよいと考えています。
特にキャッシュレス分野のこれまでの様々なビジネスを見ると、キャッシュレス決済サービスがシステム障害とかで止まったり、不正利用などの問題が起こると利用者が伸び悩んで、結果的に事業者全体の発展が阻害される面もあります。つまり、利用者保護の強化というのは、事業者からすると規制が厳しくなり、がんじがらめになるといったイメージを持たれる可能性もありますが、適正な規制を行い、それによって利用者が増えれば、事業者にもメリットがあるというように考えていくのが重要だと思います。
その次に、重要性や緊急性という視点が重要との指摘が他の委員の方からありました。今回の6つの論点のうち、資金移動業に関するものと暗号資産に関するものは、現在問題が顕在化していないものの将来に備えておくというフォワードルッキングな対応になっていると思います。例えば、前者に関して、最低約170日の期間を要するという還付手続が今まで問題になったことはないと理解しています。後者の対応は、FTXの教訓を踏まえて前倒しでやろうというものだと思います。いずれも、現時点ではそれほど問題ないかもしれないが、フォワードルッキングで対応しておこうということであり、このこと自体は全く賛成です。
他方、クロスボーダー収納代行に関するものと立替サービスに関するものは、すでに他の委員の方が指摘されたように、実際に様々な問題が起こっています。つまり、緊急性という観点からは、これから起こり得る問題へのフォワードルッキングな対応より、すでに起こっている問題への対応を優先すべきといった形で整理することもできるのではないかと考えています。長くなりましたが、以上が私の総括になります。
個別論点に関しては、時間も限られますので2つだけ挙げます。1つ目は、「資金移動業」に関する論点についてです。資金移動業については他の委員の方も指摘されたように、利用者保護という観点が重要であり、デジタル給与の議論においては、利用者保護の中でも特に流動性をいかに確保するかという議論に該当するものだと思います。今回示された案は、流動性の向上につながる点で好ましいというのが個人的な意見です。
ただ、デジタル給与払いの議論が行われて以降、いろいろな事業者の人と話をすると、流動性対応のために結構なコストがかかるという問題がよく出てきます。そうしたコストを踏まえると、大手の資金移動業者しか対応しにくいという面があり、デジタル給与払いの取扱業者として申請した事業者も今のところ4者ぐらいと聞いています。流動性対応には実務的なコストがかかるため、中小の資金移動業者ではなかなか対応できないのが実態かもしれません。消費者にメリットがある一方、事業者に過度なコストが発生してしまわないかという点も丁寧に検討していく必要があるのではないかというのが1つ目の指摘になります。
2つ目は、ステーブルコインに関する論点です。海外の事例を日本に持ってくるのはかなり慎重に対応すべきという他の委員の方の指摘について、私も同意見です。ただし、海外のフィンテックの分野では、従来から、滞留資金を運用することによって、それを収益化し、その分、利用者のサービス利用コストを下げるというのが1つのビジネスモデルとして存在していました。当然、利用者にもコスト面などでメリットがあったわけです。一方、それが日本では今までできなかったというのが、多分、今回の問題意識なんだろうと考えています。
また、滞留資金の運用リスクに関しては、運用資産の安全性と満期までの期間という2軸で考える必要があると思います。前者は、運用対象を国債等の安全資産にするということです。しかし、安全資産であっても、満期までの期間に伴うリスクを考慮する必要があります。例えば、安全な資産で運用していてもリスクが顕在化したというのが去年のアメリカの地銀破綻の教訓です。当時、長期金利が上昇、つまり長期国債の価格が下落して含み損が膨らむ中、預金から資金が大量に流出して、地銀の財務状況が急激に悪化したわけです。今回の事務局の説明資料では、資産の安全性というところも重要ですし、さらに満期まで3か月という期間の話も注目すべきポイントだと思います。このようにリスクを細かく見ていった上でも、かなり慎重に検討すべきという点は同意見です。ただし、海外の事例を踏まえると、フィンテックのビジネスモデルという観点から、日本において、滞留資金の運用を可能とすべきか否かについて検討してもよいのではないかと考えています。
ちょうど時間になりましたので、以上になります。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは松元委員、お願いします。
【松元委員】
発言の機会を頂きましてありがとうございます。慶應義塾大学の松元でございます。私からは、18ページの御議論頂きたい事項の6つの事項のうち、3点について発言させて頂きたいと思います。
まず、このクロスボーダー収納代行について、為替取引に関する規制を適用することについてというところですけれども、この点につきまして、先ほどの井上委員のコメントとも重複するところがあるのですが、どういう根拠で、どういう規制をするのかというところが大事になってくるのかなと思いまして、資料でいいますと9ページ、10ページの辺りだと思います。
国が債権者である場合であっても、クロスボーダーの取引の場合であっても、為替取引に当たるという法的な性質自体はあまり変わらないような気がいたしまして、そうだとすると理屈の整理というのもどこかで多分する必要があるので、全体、為替取引については規制をかけるんだけれども、国が例えば債権者のような、特に別に保護する必要がないものについては規制から除くような考え方ももしかするとできるかもしれないと思いますし、どういう根拠で規制をかけるのかということを、まず整理する必要があるのかなと思います。
あともう1点、クロスボーダー収納代行について規制をかけたとして、果たして、今懸念しているような問題が解決するのだろうか。というのも、専門家でないものですから分からないんですけれども、例えば資料の10ページに、国外の送金システムの利用による支払い遅延等のリスクと書かれていますけれども、こういったものというのは、例えばここの資料の10ページというところの国内事業者に仮に資金移動業の登録を義務づけたとしても別に解決しないのではないかと思いまして、今問題になっていることの対応策として、資金移動業登録を義務づけることが解決策になっているのだろうかというのが気になっているところでございます。
以上が1点目でして、2つ目がステーブルコインの論点についてですけれども、このステーブルコインの裏付け資産について、預金以外の資産での運用を認めるかどうかというところで、これを認めるとすると、しっかりリスクとか危険性は考えていかなきゃいけないなというところだと思います。ここのコメントは一言で言うと、そういうふうにしたいような需要がどういう方から、どのぐらいあるのかというところでして、頂いた資料の14ページを見ますと、諸外国の例を見ても恐らく預金以外で運用を認めるといっても、恐らく国債ぐらい、国債ぐらいと言ったらいけないのかもしれないんですけれども、果たしてどうしても預金じゃなくて国債を買いたいんだと言っている事業者の方の意見というのがすごく強いのかどうか。別に強くないなら、あえてそんな危険なことをしなくてもいいのではないかというところもあり、この辺りは事務局に、もし状況が分かれば教えて頂きたいような質問でございます。
それから3点目ですけれども、一番最後の外国銀行等のシンジケートローン参加というところです。ここも井上委員と重複するかもしれないんですが、外国銀行等がシンジケートローンに参加するための規制緩和をする方向性自体はよさそうなんですけれども、果たして、どういう整理でやるのかということでして、これは頂いた資料だと16ページだったと思います。例えば、外貨建てだからというのは、その外国銀行について規制をしないことの理由には別にならないような気がしまして、海外進出をしている日本企業に資金需要があるときというので切るのも、なかなか理屈づけが難しいような気もしております。なので、こういう制度が今、制約になっているという、ここは逆に制度を利用されている方の要望があることはよく分かったのですけれども、果たしてどういう整理で、どういう範囲について規制緩和をしていくのかについて詰める必要があるんじゃないかなと思った次第です。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
【森下座長】
ありがとうございます。2点目のところはまた次回、今後詳しく話すときに御説明頂くようにして頂ければと思います。
それでは堀委員、お願いします。お待たせしました。
【堀委員】
今、私、当てられました、当てて頂きました?
【森下座長】
はい、そうですね。お願いします。
【堀委員】
ごめんなさい。オンラインで入っているんですけれども、とても音声が割れていて、あまり聞こえなくて、次回以降の運営についてシステムというか、音声と、あとユーチューブ配信もされて、すごく開かれた会議体ですばらしいなと思っているんですけれども、これだと国民の皆さんは聞こえないと思いますので、システムの運営を見直して頂きたいなというのが最初のお願いでございます。
本日議論されている論点のおまとめ頂いているペーパーについて、途中から入室しましたので誤っているところがあれば申し訳ございませんが、拝見させて頂いて各論点について関心がございます、本日は3点について御意見を申し上げます。
第1に、資産保全方法を信託の方法も認めるというのは、選択肢を増やす方向であれば望ましいと考えます。もともと前払いについては無記名の商品券等もあり、誰が債権者かを特定するために債権申出期間を定めて申し出てもらった上で債権者や債権額を確定し、プロラタ計算する配当手続が必要となるという考え方であると承知しております。資金移動についても、この制度を参考に還付の手続が定められたと承知しております。
しかし、資金移動では全件が本人確認済みであり、金商法や資金決済法の下での顧客のための信託の制度と同様の制度も選択できるのは合理性があり有用だと思います。別途、厚生労働省で制度整備された賃金のデジタル払いでも還付までの時間がかかることから、履行保証金制度とは別に保証が必要とされている点も課題であると感じておりまして、資金決済法で信託制度を選択した場合には二重の保証は不要とすることもできるとすれば、より使い勝手のよい制度となることが期待できます。
第2に、クロスボーダーの収納代行については、例えばアマゾンなどのECサイトでも他国の販売者が日本で販売していることもありますし、日本から海外のサイトで販売することもありますが、こうした物の販売代金の受け取りにも利用されています。Airbnbなど、昨今のプラットフォームを介した役務提供代金の受け取りなどにも利用されており、国内の収納代理と同様、クロスボーダーでも基本的には安全かつ有用な決済手段として利用されています。
また、国際間での決済事業者間での資金の受け取りや商社、メーカー、その他事業者間での取引代金の受け取りなどでも実務的に多用されています。これらのケースでは通常1回の決済代金の金額が100万円を超えるため、第二種資金移動業の下では営むことができず、また、ばらばらと入金されるものは一定の締め日で送金されるとか、顧客のタイミング、為替のタイミングで引き出しに応じているため、第一種資金移動業の厳格な滞留規制の下では営むことができないと承知しております。一部の悪用事例があるとしても、クロスボーダーだから一律にリスクがあるというよりは、国内の収納代行と同様に問題がないケースは引き続き対象外とすること、有益なサービスが営むことができなくなってしまうということにならないよう、利用実態把握を先行してほしいと思います。
具体的には、顧客は誰か、代理受領する商品やサービスの代金にはどのようなものがあるのか、1回の送金額、代理受領してから引き渡すまでの期間、また、なぜ既存の銀行送金や資金移動業送金を用いずに収納代行会社を利用しているのかといった点を利用者側、提供者側、いずれでもよいのでヒアリングやアンケートをとって確認されてはどうかと思います。規制が必要な範囲というものがあるのか、ないのか、具体的に確認するとともに、果たして現在の資金移動業の枠組みで受皿となり得るのか、丁寧な議論をお願いしたいと思っております。
なお、KYC、AML対策を行っている銀行送金であっても犯罪者に利用されてしまうケースはあるのであり、為替取引の規制というよりは振り込め詐欺救済法などの特別法で、被害者への対応をしているという認識でございます。悪用された場合の被害回復をどのように行っていくかという点は、分けて議論したほうがよいと思っております。
最後に、第3に立替サービスについても言及頂いておりますが、昔から企業の代行サービスとして営まれてきたサービスでございます。昨今では請求書インボイスがデータで取り組まれて、納品日や支払日の管理とともに1件1件インターネットバンキングで振り込むのではなくて、まとめて代行して月締めで請求する形で、企業の事務のDX化の流れから非常に伸びてきているサービスであります。企業の支払いについて、これは仕入代金のみならず、給与や報酬等の支払いにも利用されています。立替期間も短期で利用者も必ずしも事務効率化の観点から利用しているのであって、資金融通という観点で利用しているものではないものもございます。
また、債務引受や債権譲渡といった法律構成で支払いを行うことが認められてきたファクタリングや、信用購入あっせんとの違いも整理すべきであると考えます。この点でも、どのようなサービスが現在、提供されているのか、実態把握を先行して頂きたいと思っております。こちらも具体的には顧客は誰か、立て替える商品やサービスの代金にはどのようなものがあるのか、サービスの利用目的はどこにあるのか、1回の立替額、立替えから支払完了までの立替期間、サービス提供者、支払元、支払先との間で契約関係があるのか、ないのか、法律構成はどのようになっているのか、そして、なぜ既存の貸金業者や資金移動業者の送金を用いずに、あるいは銀行送金もかもしれませんけれども、この事業者の立替サービス会社を利用しているのかという点を利用者側、提供側、いずれでも結構ですのでヒアリングやアンケートをとって確認してはどうかと思っております。こちらも規制が必要な範囲があるのか、ないのか、具体的に議論をするとともに、果たして貸金業や資金移動業の現在の規制枠組みで受皿となり得るのか、丁寧な議論をお願いしたいと思っております。
以上となります。
【森下座長】
ありがとうございました。音声の点は次回以降、事務局に御対応頂くようにしたいと思います。
それでは杉浦委員、いかがでしょうか。
【杉浦委員】
ありがとうございます。今日はオンラインという形で発言させて頂きます。私はこのワーキングに関してはある意味、新参者的なところもありますので、とりわけ皆様方のおっしゃられた暗号資産の点とか、資金移動業の点とか、ステーブルコインといったそれぞれの項に関しては、それぞれのお立場によってかなり意見が相違するだろうと考えていて、実際そうだったので、これらの点については、それぞれ取り上げられた時点で私なりの意見を申し上げたほうがいいかなと思いましたので、そういう形にさせて頂きたいと思います。
ただ、全体論として感じたことが一つありますのは、各委員の皆様方からもありましたように、そもそもこの問題点は全体論として金融法制の構造に関わる問題だと思いました。というのは、従来であれば金融法制というのは機能別アプローチといったものが中心になってできていたわけですが、そもそも様々な金融機関さんと様々な金融業者さんが以前は機能別に単一的な業務をやっていたものが、いろんなものが複雑に絡みこんで、一体どんな業務をやっているのか、よく分からないとか、様々なつながりが出てくるなかで、実際、利用者レベルから考えても非常に分かりにくいサービス展開になってきていることは事実です。
そうなってくると、今は割と諸外国で使われているアプローチの仕方の考え方としては、リスクベースドアプローチなんて考え方を諸外国では言葉として言いますけれども、これは一般的には利用されるサービスを金額ベースで基本的にリスクの重さをはかり、金額規制の重さを推しはかっていくような考え方もあったりするわけです。これに関しては、一定の東南アジア諸国や非常にキャッシュレス決済が進んでいる国(幾つか発展途上国でありますが)でも、そのリスクを考える過程の中で、サービス提供している業者さんが金融機関だからOKとか、何らかの保険のようなものをかけていたりとか、そういうことをやることによって、リスクカバーし、一定の消費者保護を図るということをやっているところも少なからずにあると考えて、というのが実態です。
その上で、他に数点申し上げておこうかなと思ったのは、国際間の収納代行の件ですけれども、これについては過去の研究・検討等々から考えても、特別新しい問題だということではなくて、以前からそれなりにあった問題だったはずです。当時の監督当局のアプローチにしても、これは海外の事業者がどのような許認可レベルにあるのかというところが結構大事で、これは、日本国内だけで一生懸命やってもあまり意味がなくて、海外の事業者さんがそもそもどういう規制の下に営業しているのか、そして国によってはかなり緩い規制のところもあることに留意すべきでしょう。
また、さらにいうとクレジットカードに関する規制とも関連しますが、これはアクワイアラーとこういった収納代行・送金業者が一体化しているところもあるので、そうすると、一歩踏み込んでしまうと、海外のアクワイアラー規制とのリンクも関連して考えていく必要があることになっていくのかなと思っています。
これまでの行政のアプローチからすれば、過去においてもこのような局面で、諸外国の政府に対して一定の協力をお願いしたりとか、事件があった場合にこういうことになるのは困るという協議をする、そういった政策的なアプローチもあったはずです。国内から積極的にアプローチをかけていったとしても、最終的には業者に関する海外当局の規制とのイコールフッティングみたいなところが大事になってくるので、その辺りは、またぜひ調査・検討していければよいのかなと思いました。
また、給与の前払いの件ですけれども、「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」の構成員もしつつ、今回のワーキング・グループのメンバーでもある立場から申し上げると、私はやや坂委員と同じような意見で、過去に給与前払い業者で懇談会でも問題になったところは、結果的にはすべて高利貸しだったじゃないかという事例が結構あって、それが、過去の苦い経験というのがあるわけですよね。これが今回は、仕組みや利用方法が発展、移り変わってきた中で変化をしてきたんだということがしっかりと証拠づけられて、ニーズもそれなりにあるんだということの証拠・証明も必要かなと思いました。
最後に、外国銀行のシンジケーションの問題ですけれども、個人的な体験含めて申し上げると、そもそもこういう形でのシンジケートローンの参加というのを求めている外国銀行の数って本当に幾つあるのという疑問点は、正直申し上げてあります。ただ、こういったことに関連して諸外国の法制度の中を見ていくと、貸金業ではなく、どちらかというと銀行法制の中で解決してきている問題でもあるのかなと思います。
また、日本の金融市場の国際化ということをどう考えていくのかということとのつながりでもありますので、積極的に緩和していくということであれば、それは開かれた日本の金融市場をどう考えていくのかというアプローチで考えていくべきでしょうし、でも、そうはいってもよく分からない海外の金融機関が出てくるというのはアウトであって、どの程度のところだったらそもそもよいのかというような、そのさじ加減の部分のところが大事になってくるのかなと思いました。
以上、雑駁でございますけれども、取りあえず本日、私として申し上げておこうかなと思ったことはこれらの点でございました。以上、どうもありがとうございます。
【森下座長】
ありがとうございました。
これで委員の皆様から一通り御発言を頂いたかと思いますけれども、あと、予定の時間まで5分ほどありますけれども、オブザーバーの方からいかがですか。簡潔にお願いいたします。
新経済連盟様、お願いします。
【新経済連盟】
新経済連盟の片岡です。オブザーバーとして参加させて頂いています。短めに3点申し上げます。
まず一つが、総論として実態把握、分析、それから問題の所在の確認、影響範囲というのはしっかり確認する必要があると思います。特に収納代行の話、立替サービスの話は、皆さんが知らないかもしれないんですけど、ビジネスの裏側で経済を回す土台を支えている仕組みが立替だったり、収納代行を使っている場合がかなりありますので、そこを一方だけ問題視して何かしようとすると、大きな影響が出る可能性がありますので、実態把握、分析は重要だと思っています。例えば10ページにある表も、クロスボーダーで最大の収納代行かつ立替払いは国際ブランドを中心としたクレジットカードの決済なんじゃないかという気もしますけれども、いろんなものに影響が出ますので、実態把握をしっかりやって頂きたいのが一つ。
それから暗号資産に関するものについては、無登録業者の問題とかいろいろありますので、国内外のイコールフッティングという意味でいろいろ検討していって頂きたいなと思うのが一つと、決済手段として見るのか、金融商品として見るのかというのでもだいぶ論点が異なってくると思いますので、金融制度全体としての位置づけというのも忘れずに見ていって頂きたいと思っています。
それから最後にですが、その他の論点に出てきているところも結構、事業者からは重要な論点だと思っていますので、こちらもぜひ検討頂きたいなと思っております。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは国際銀行協会様、お願いします。
【国際銀行協会】
ありがとうございます。今後の委員の皆様方の御議論の参考にさせて頂ければと思いまして、幾つか述べさせて頂きたいと思います。
私どもは国際銀行協会と申しまして、21か国から53の外国銀行、それから証券会社が加盟している組織でございます。今回のお話、シンジケートローンに関するものでございますけれども、端的に申しますと繰り返しになりますけども銀行法との平仄をどのように確保するのかということと、それから既存のプレーヤーとの競争条件のレベルプレイングフィールドをどのように確保するのか、こういったところに非常に関心がございます。
現行制度の下ですと、外国銀行というのは当然、銀行免許を取って日本に支店を設けて営業しております。これに加えまして、海外の拠点との間で媒介を行うことについては2008年に外国銀行の代理業務という制度が導入されておりまして、たとえ在日支店を設けていても銀行免許だけでは足りなくて、海外の本店とか支店とか兄弟銀行を特定した上で認可を取得しなければいけない立てつけになっております。これは融資に限らず、預金、為替、銀行業はもちろんのこと、その他付随業務を含む銀行業務全てについてそういった制度が適用されておりまして、認可が必要だと。これに対して邦銀さんの場合はせいぜい届出で済むと、こういった格差も実はございます。かつ、先ほど申した海外の拠点はどんな拠点でもいいわけじゃなくて、資本関係が50%超ないといけないと、こういった縛りもございまして、非常に厳格な制度の下、私どもは海外の商品、サービスを媒介させて頂いていると、こういった立てつけになっております。
そういったところに来て今回のシローンの見直しのお話というのは、資料を見ますと日本でビジネスを行っていない外国銀行等と書いてあるんですけれども、現行の立てつけに照らすと、これはまさに銀行ビジネスを行っているわけなんですが、そういったことから今回は一歩踏み出して近未来形の規制体系に踏み出していくんだと、こういうお話なのかどうなのか。先ほどの加藤委員、それから井上委員、皆さんがおっしゃっていたように柔構造化というお言葉、いみじくもお使いになっていらっしゃいましたけれども、シローンについてそういった柔構造化を採用するんだと、こういったお話なのかどうか、こういったところに関心がございます。繰り返しになりますけれども、冒頭申し上げたような銀行法上の課題も併せて、ぜひ見直して頂きたいと。端的には例えば50%超、これは当然、見直されるんだろうなと思っております。
具体的な課題を簡潔に申し上げますと、例えば貸手たる銀行って一体、どういったところが想定されているのか、どこの国のどういった銀行なのかとか、借手さんは果たして拠点もないし、名前も聞いたことがないような貸手の銀行を容易に受け入れるんだろうかと、これも重要なポイントかと思います。さらに昨今、マネロン対策等も重要でございますのでデューデリジェンスをどうやってやるのかなと。これ、貸手の銀行から見ても借手の企業ってどういった企業なのかというのをちゃんとデューデリジェンスしなさいというのを、銀行のポリシーで採用しているところがございますので、拠点なしにそういったデューデリジェンスはどうやってやったらいいのかなと、こういったことも課題としてあるのかなと思います。
それから最後に、今回参加の部分についての見直し、シローンに参加するスコープを広げるというお題なんでございますけれども、すなわち国内銀行等が組成するというところが枕言葉になっているんですが、実はシンジケートローンっていろんな多様な形態がございまして、ブッキングの場所も東京じゃなくて海外だったりとか、根拠法も日本法じゃなくて英米法だったりとか、それから実際お使いになる借手も日本の企業さんが海外で設立した現地法人さんが実際はお金を使うんで、お金を出すのも海外の銀行から出すと、要するに日本の国内でフローが発生しないと、こういったパターンもございますので、果たして組成といった場合にどういったスコープで切るのか、こういったところも私どもとしては関心があるところでございます。
以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、オンラインで全国銀行協会様、お願いします。
【全国銀行協会】
全銀協(三井住友銀行)の安地です。総論で1点と、個別で1点、クイックに申し上げたいと思います。
まず、ペイメント中心に、貸金系のサービスや、金融商品系のサービスを網羅的に整理して頂いており、論点も漏れなく挙げて頂いていると理解しております。基本的に、消費者保護やAMLなど、守ることがはっきりしているものについては、その方向で御検討頂ければと思います。また、立替サービスについては、現状、若干漏れがあるところについて、新たに網をかけようと御検討頂くのは違和感ございませんが、先ほどオブザーバーの方からもあったように、既存の業者等への実務的な配慮をお願いできればと思います。これが1点目です。
2点目は、我々金融機関は、決済だけではなかなか採算が取れません。これはフィンテック業者の方々も同様だと思います。そうすると、どうしてもクレジットリスクを取りに行くのは、よくあるビジネス上の発想で、立替や与信系のプロダクトになるということかと思います。その場合には、なかなか取れない深いリスクを取りに行く可能性もございますので、規制ではなくモニタリングや監督上の問題かもしれませんが、業者の健全性、資本の十分性、回収能力等が一つの大きな基準になってくるのではないかと考えております。
以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは信託協会様、お願いします。
【信託協会】
信託協会で業務委員長を務めております、三井住友トラスト・ホールディングスの藤井でございます。信託協会からは2点申し上げたいと思います。
まず、資金移動業者の破綻時の還付手続についてです。本日ご紹介のあった給与のデジタル払いなどが進んでいく中においては、利用者保護に資する枠組みの構築が非常に重要と考えております。今回、資料の中でも信託に係るスキームが例示されております。信託協会としましても、積極的に議論に参加させて頂ければと考えております。一方では、信託を使って資産の保全をする他の制度もありますので、こうしたものを参考にしながら、実効的な制度設計になるように議論をお願いできればと思っております。
また、もう一点、信託型ステーブルコインの発行見合い金の運用方法の柔軟化もテーマに挙がっております。こちらについて、資料に記載がありましたとおり、海外では預金以外での運用が認められております。こうした運用方法の柔軟化というのは、流通促進に向けて重要な論点と考えております。実際には、安全性が同等程度という観点で、国債や定期預金などが追加されうると考えているところでございますけれども、今後、議論をお願いできればと考えております。
信託協会からは以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、日本資金決済業協会様、お願いします。
【日本資金決済業協会】
日本資金決済業協会の長楽でございます。発言の機会を頂きましてありがとうございます。協会事務局としての意見、要望を申し述べさせていただきます。
金融庁から説明がございました資金移動業者の破綻時の利用者資金の還付をより迅速に行うため、信託会社から直接利用者に対して資金返還を行う具体的な方法といたしまして、資料の7ページに記載がある金融商品取引業者等に課されているような利用者資金を分別して管理し、当該資金を信託会社等へ金銭信託し、仮に当該事業者が破綻等した場合には、あらかじめ選任された受益者代理人である弁護士等が信託財産を払い出し、顧客に返還するという方法等について、今後、ワーキング・グループにおいて検討がなされるものと考えられます。
この信託方式に移行することとなった場合でございますが、還付に当たり国が直接関与しないこととなるほか、資金移動業者にとりまして信託会社等に金銭信託を行うための資金調達、資金調達に伴うコスト負担増が発生する場合があるほか、利用者資金の分別管理、信託財産の管理及び分別管理監査に係る新たな事務負担や信託報酬、分別管理監査費用等の新たなコスト負担が発生するなど、資金移動業者の経営、ひいては利用者利便等にも与える影響は大きいものと考えております。
このため、協会におきまして、資金移動業者である会員全社に対し、利用者資金の資産保全方法が供託等から信託方式に移行することになった場合、資金移動業者の経営に与える影響等についてアンケートを行うこととさせて頂きました。アンケート結果及び会員の意見等を踏まえまして、次回のワーキング・グループにおきまして協会事務局の意見、要望を申し述べさせて頂きますので、ぜひとも、その機会を設けて頂きますようお願いいたします。
以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、あとはよろしいでしょうか。予定の時間を多少超過しておりますので、まだ御意見があるかもしれませんけれども本日はここまでとさせて頂ければと思います。
本日頂きました御説明や御意見を踏まえまして、今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。
最後に、事務局から連絡事項などありましたらお願いいたします。
【三浦信用制度参事官】
次回のワーキング・グループの日時につきましては、また委員の皆様方の御都合を踏まえまして、後日、事務局より御案内させて頂きますのでよろしくお願いします。
以上です。
【森下座長】
それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了いたします。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
- お問い合わせ先
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金融庁 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線:3572、3556)