金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第4回)議事録

  • 1.日時:

    令和6年11月7日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所:

 中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室 ※オンライン併用
 

金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第4回)
 
 

【森下座長】 
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより資金決済制度等に関するワーキング・グループの第4回会合を開催します。皆様、御多忙のところ御参加頂きありがとうございます。

 本日の会合も、前回に引き続き、オンライン会議を併用した開催とし、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂いております。

 また、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させて頂く予定ですので、よろしくお願いいたします。

 ただいまより議事に移ります。本日は、事務局より御説明をした上で、全体について、まとめて委員の皆様より御意見や御質問を頂くという流れで進めさせて頂きます。

 それでは、まず事務局より御説明をお願いします。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】 
 事務局の資料の説明をさせて頂きます。

 まず1ページ、目次でございます。今回はクロスボーダー収納代行、前払式支払手段の寄附への利用、暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対する資産の国内保有命令の3点を御議論頂きたいと考えております。

 3ページでございます。これまで同様、第1回のワーキング・グループで頂いた主な御意見を掲載させて頂いております。時間の関係で詳細は割愛させて頂きます。

 4ページ以降が、1つ目のテーマでありますクロスボーダー収納代行についてでございます。

 5ページ、まずは2019年のワーキング・グループでの収納代行に関する議論を御紹介する資料でございます。第1回のワーキング・グループで使ったものを再掲しております。右下の四角のところでございますが、収納代行のうち、債権者が事業者や国・地方公共団体であり、かつ債務者に二重支払いの危険がないことが契約上明らかである場合には、為替取引の規制を課す必要は必ずしも高くないとされました。逆にそうでないものについては規制の必要があるということで、法改正が行われた次第でございます。

 6ページでございます。その法改正の際、附帯決議を衆参両院から頂いております。収納代行に関しては、継続して実態把握に努め、利用者保護の観点から制度整備の在り方について引き続き検討を行うこととの内容でございます。

 7ページでございます。今回はクロスボーダーの収納代行について御議論頂きたいと考えております。まず収納代行について、2019年のワーキング・グループにおいては、金銭債権を有する債権者から委託または債権譲渡を受けて債務者から資金を収受し、当該資金を直接輸送することなく債権者に移転させる行為を典型的なものとしており、今回も引き続きこの考え方を踏襲してはと考えております。

 クロスボーダーの収納代行は、こういった行為を国境を挟んで行うものを想定しております。下の図のように、支払人が日本にいる場合、受取人が日本にいる場合の両方が考えられます。支払いを受ける事業者には受取人から代理受領権限が与えられていることが多いと認識しております。

 8ページでございます。第1回のワーキング・グループにおきまして、本件について実態も踏まえて議論すべきであるという御指摘を頂いたことを踏まえ、事務局のほうで、個別事業者に対するヒアリング等を通じて調査をいたしました。現時点では、注も含めて、4つのパターンが確認されているところでございます。

 1つ目が、取引仲介プラットフォームの運営者、資金の流れは、国内から国外、国外から国内の両方が想定されるところでございます。主な内容といたしましては、自身の運営するプラットフォーム上で取引される商品・サービスの代金の受取りを売主に代わって実施するサービスで、宿泊予約プラットフォームなどが例として挙げられます。支払人、受取人ともに個人、法人両方があり得て、1件当たりの取引額は数百円から数十万円と聞いております。

 2つ目が、こういったプラットフォームを含めて、海外のEコマースのサイトで日本にいる個人が買物をするときに、その商品購入を代行する、もしくは商品購入自体は本人がやるが、購入代金を日本国内で売主に代わって受け取るようなサービスがございます。これは国内から国外への資金の流れでございまして、主な支払人は個人、受取人は法人、1件当たりの取引額は、こちらも数百円から数十万円と聞いております。

 3つ目が決済代行、国外から国内への資金の流れとありますが、例えば、インバウンドの旅行者が日本で買物をするときに、海外の決済手段を日本の加盟店で使う、その精算金の受取りを加盟店に代わって行うサービスがあると承知をしております。支払人は決済手段発行者等の法人、受取人は加盟店というスキームで、法人間の決済であるため、1件当たりの取引額も数万円から数千万円と、上の2つに比べて高額となっております。

 最後にある注書きでございますが、直接ヒアリングできたわけではございませんが、海外のオンラインカジノや出資金詐欺等の事案において、収納代行と称する送金スキームが用いられる場合もあると承知をしております。

 9ページでございます。クロスボーダー収納代行に対する規制の必要性に関する資料でございます。9ページは総論的な議論、次のページで個別のリスクを議論しております。

 クロスボーダーの収納代行業者は、実質的に銀行や資金移動業者等の行う国際送金と同様の機能を果たしていると考えられますが、我が国においては金融規制は必ずしも課されておりません。そうした中、FSBという国際基準設定主体が、現在、クロスボーダー送金に関する勧告を検討しており、市中協議が終わったところでございます。詳細は下の四角にございますが、Same activity, same risk, same regulationsの原則に基づき、銀行・ノンバンクの活動に関し、リスクに比例した形で規制し、規制の整合性を改善すべきという内容が盛り込まれております。

 3つ目のポツですが、そもそも国際送金には統一的なルールがなく、複数の法域に所在する事業者間の協力により成立している中で、国際送金の安全性、確実性を確保し、国内の利用者を守るために、事業者に適切な規律を及ぼすことが重要と考えられます。

 10ページでございます。クロスボーダー収納代行において考えられるリスクを4点記載しております。

 1点目、支払人の二重払いのリスクでございます。国内外に複数の仲介者が介在するため、各ステップで適切に代理受領権の設定がなされているか、なされていない可能性があるのではないか。仮に契約上、代理受領権が設定されていたとしても、紛争が生じた場合、国際私法の問題、つまり準拠法をどことするか必ずしも定かではない場合がある中で、当該代理受領権の設定が有効と判断されるかが不確実と考えられます。また、海外で裁判を提起された場合に、その対応等で支払人が負担を強いられる可能性もある点にも留意が必要と考えられます。クロスボーダー収納代行業者が資金移動業登録を取る場合には、一定の財産的基礎を求めていくこと等を通じ、支払人の二重払リスクを軽減させていくことが可能と考えられます。

 2点目が資金決済の遅延等のリスクです。クロスボーダー収納代行では、法域をまたがって複数の者が資金決済に関与するため、国内のみで完結する収納代行業者と比較して、資金決済の遅延等が発生するリスクが高いと考えられます。このリスクに関しては、資金移動業登録を求めて、事業者に体制整備義務や委託先管理義務を課すことを通じ、軽減することが可能と考えられます。また、資金決済の遅延等が発生した場合、当局から、早期の原因究明や、必要な場合には是正措置を求めていくことも可能となります。

 3点目、利用者情報保護上のリスクでございます。収納代行業者が扱う利用者情報には、個人情報や経済的価値が高い情報が含まれます。こうした情報が越境移転した場合、移転先の情報保護法制の在り方によっては利用者の情報が保護されないリスクがございます。もちろん個人情報については、収納代行業者も含めて、個人情報保護法により規制されているものの、クロスボーダー収納代行業者が資金移動業登録を取れば、金融分野におけるガイドラインが追加的に適用されて、個人データの越境移転の際に追加的な取組みを促すことが可能となります。また、個人情報に該当しない情報を含めて、資金決済法に基づく安全管理措置の対象とすることが可能となります。

 4点目、詐欺、マネー・ローンダリング等の不正利用のリスクでございます。詐欺や違法賭博における送金に関して、クロスボーダー収納代行が悪用されることがございます。資金移動業の登録がなされていれば、犯罪収益移転防止法の適用を通じて監視を及ぼすことが可能となります。また、外為法、国外送金等調書法といった国際送金を行う業態に課される規制も適用されることとなります。

 11ページは参考資料でございます。資金移動業の登録を行った場合に課せられる主な規制をまとめております。点線より上では資金決済法上の規律を、下では資金決済法以外の規律を掲載しております。

 12ページでございます。クロスボーダー収納代行においては、国内外に複数の仲介業者が介在することが想定される中で、誰を規制の対象とすべきかを検討する必要がございます。※書きにある為替取引の判例上の定義を踏まえまして、クロスボーダー収納代行の依頼を引き受けた者を為替取引の行為者とし、資金移動業登録を求めることが考えられます。他方、この行為者から業務の一部の委託を受けて、行為者の指導・監督の下に、事務の一部を行うに過ぎない者は、資金移動業登録が不要とすることが考えられます。

 下の図でございますが、この考え方を当てはめますと、まず、上の海外から国内への送金の流れの場合、国内の受取人から依頼を受けた国内事業者が資金移動業登録を取ることになります。下の国内から海外への送金の流れでは、海外事業者が、仮に日本国内を含めた資金移動の依頼を受けている場合は資金移動業の登録が求められますが、一般には日本国内における送金行為について、改めて海外事業者から国内事業者に依頼していると判断できる場合が多いと考えております。この場合、赤い点線のある国内事業者に登録が求められることになります。この国内事業者から委託を受けて支払人から資金を受け取る者は登録不要となります。

 13ページ以降は、2つ目のテーマである前払式支払手段の寄附への利用についてでございます。

 14ページでございます。まず、前払式支払手段の種類をお示ししております。2つの区分がございまして、左半分では財産的価値の記録方法に応じた分類、紙型、IC型、サーバ型、右半分では価値の電子的な移転が可能かどうか、可能である場合、番号を通知する形なのか、アカウントがあって残高を譲渡する形なのかといった形で区分されます。

 15ページでございます。このように様々な種類のある前払式支払手段でございますが、特にコロナ以降、キャッシュレスが進展する中で、前払式支払手段の発行額は、足下で年間約30兆円まで至っております。

 16ページでございます。この前払式支払手段を寄附に使いたいという要望が寄せられております。下の大きな囲みのところでございますが、今年、地方分権改革に関する提案の中で、前払式支払手段による地方自治体や、法律に基づいて設置された認可法人、特に公益性が高いと考えられる公益法人への寄附を可能としてほしいという要望を頂いているところでございます。当庁の回答内容でございますが、一番下の文の後段にあるとおり、社会的なニーズや課題等も踏まえながらよく見極めていきたいと回答させて頂いております。

 17ページでございます。寄附がどの程度行われているかを示した資料でございます。内閣府の2023年の調査では、年間寄附金額について、左側の図でございますが、1万円未満が個人では約6割、世帯では約5割を占めております。寄附を行う方法としては、右側の図ですが、募金箱での現金の寄附に次いで、クレジットカードやポイント、電子マネーの利用が多く、前回調査2019年の13.7%から22.2%に大きく増加しております。

 18ページでございます。寄附についてどのように対応するか、その案でございます。

 「基本的な考え方」でございます。主要なキャッシュレス手段である前払式支払手段を通じた寄附を可能とすることは、公益増進の観点から意義が認められるところでございます。他方、前払式支払手段の用途拡大の要望は、これまでも寄附に限らずございました。こうした要望については、極めて限定的にしか認めてまいりませんでした。これは、前払式支払手段の寄附等への利用を自由に認めた場合、銀行や資金移動業者が行う為替取引規制の潜脱になり得るという点が懸念されていたからでございまして、今回もその点を十分に踏まえる必要があると考えております。また、前払式支払手段の寄附への利用を認めた場合、寄附スキームを悪用したマネー・ローンダリングや詐欺を誘発するおそれがあることにも留意が必要と考えております。こうした点を踏まえますと、寄附をすべからく認めるということではなく、寄附金受領者や金額に一定の制限を課した上で認めてはどうかと考えております。

 具体的な対応案ですが、寄附金受領者については、要望を踏まえますと、国、地方公共団体、法律に基づいて設置された認可法人を対象とすることが考えられます。他方、所得税法上の寄附金控除の枠組みが別にあり、これを参考に、さらに広げる余地があるか、委員の皆様の御意見を頂戴したいと考えております。上限額については、年間寄附金額が1万円未満が過半であること、一般的な交通系ICカードのチャージ上限額が現状2万円であることを考えますと、1回当たり1~2万円とすることが考えられます。

 このように、相手先を絞り、金額も制限することで、マネー・ローンダリングや詐欺のリスクは軽減できたとしても、何者かが寄附金受領者になりすまして寄附を募るといったリスクは排除できないと考えられます。こういったなりすましのリスクについては、既存の法令の中で、例えば、発行者による加盟店の管理、払戻しが一定の場合を除いて禁止されていること、また、昨年導入されました高額電子移転可能型前払式支払手段について課される犯罪収益移転防止法上の義務を通じて対応を図っていくことが考えられます。

 19ページでございます。こちらは参考資料でございまして、上の四角で、過去のワーキング・グループ報告書での前払式支払手段と為替取引に関係する記述の抜粋、下で寄附金控除の対象の一覧をお示ししております。

 20ページ以降が、3番目のテーマであります暗号資産交換業者等に対する資産の国内保有命令に関してでございます。

 21ページでございます。第1回の資料でもお示しした暗号資産の国内の取引金額やビットコインの価格、交換業者の数の推移等をお示ししたものでございます。時間の関係で詳細は割愛させて頂きます。

 22ページ、こちらも第1回で似た資料をお示しいたしました。2年前のFTX破綻の際、当庁は金融商品取引法に基づき、FTX Japan社に対して資産の国内保有命令を発出いたしました。これは、同社が暗号資産のデリバティブ取引を行い、金融商品取引業登録を取っていたため可能でございました。一方、資金決済法においては、資産の国内保有命令は措置されておりません。全事業者のうち半数以上は暗号資産の現物取引のみを行っており、こうした事業者が破綻した場合、資産の国外流出を防止できないおそれがございます。

 23ページでございます。現行の規制での資産の管理の方法についてまとめております。下の表の下線部ですが、暗号資産については、国内での管理は要件となっておりません。昨年導入された電子決済手段等取引業者に関しても、顧客の電子決済手段について、信託での管理であれば国内となりますが、それ以外の方法の場合は国内管理は要件となっておりません。

 24ページでございます。FTX破綻の際の教訓や、暗号資産等の管理に関する規制の状況を踏まえますと、金融商品取引業者に対する資産の国内保有命令の規定を参考に、資金決済法においても暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対する資産の国内保有命令を規定することが考えられるところでございます。

 最後に、御議論頂きたい事項でございます。26ページでございます。それぞれ2点ずつ、合計6点ございます。

 クロスボーダー収納代行について、資金移動業者の登録を受けることなく提供している場合があるが、二重払いのリスクや資金決済の遅延リスク等に対処する観点から、為替取引規制を適用することについてどう考えるか。規制を適用する場合、クロスボーダー収納代行の依頼を引き受けた者を規制対象とすることをどう考えるか。

 前払式支払手段の寄附への利用について、まず、これを認めることについてどう考えるか。認める場合、寄附金受領者や上限額の限定方法についてどう考えるか。寄附スキームを悪用したマネー・ローンダリングや詐欺等の悪用リスクを軽減するために、追加的に措置を講ずることが考えられるか。

 暗号資産交換業者等に対する資産の国内保有命令では、グローバルに活動する暗号資産交換業者が破産した場合等に国内利用者の資産の返還を担保するため、資産の国内保有命令を発出できるようにすることについてどう考えるか。同様の考え方に基づいて、電子決済手段等取引業者についても国内保有命令を導入することについてどう考えるか。

 以上でございます。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明を踏まえまして、委員の皆様に御討議を頂きたいと思います。御発言を希望される際には、対面で御出席されている方におかれましては机上の名札を縦にして頂き、オンラインで御参加の方につきましては、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てに発言がある旨御入力頂ければ、確認しまして、私が指名させて頂きます。

 なお、限られた時間の中で、可能な限り多くの方に御発言を頂きたいと考えておりますところ、1人当たり5分程度で御発言を頂ければと思っております。この点に関してですけれども、やはりどうしても正確にお考えをお伝えになりたいと思うと、ちょっと長くなりがちな部分もあるかと思いますけれども、後のほうで御発言をされる方の時間を削るというのもよろしくないと思いますし、皆様のお昼の時間に食い込むというのもあまりよろしくないと思いますので、ぜひ御協力を頂ければと思っております。

 それでは、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

 それでは、坂委員、お願いします。

【坂委員】 
 ありがとうございます。私のほうからは、主としてクロスボーダー収納代行について、事務局資料を参照しながら意見を述べたいと思います。

 まず、資料8ページのクロスボーダー収納代行の例について2点です。

 1点目ですが、マネロン等の点で重大な問題となっているのは、欄外の注記にある海外オンラインカジノや海外出資金詐欺等の事案です。こちらは1件当たりの送金額が数十万円から数百万、数千万に上り、1事案当たりの総額が数十億円から1,000億円を超えるものもあります。今回の制度見直しでは、こうした事案に的確に対応できる必要があります。

 2点目ですが、海外ECに関して、本年7月、韓国の大手ECモールサイトが、経営難から売上代金の売主への送金を停止し、売主が未発送商品の発送を停止、決済代行会社が顧客への送金を停止したという事案が報告されています。これはECサイトにおける規制のない決済サービス一般の問題ですけども、かかる事態がクロスボーダーで生じるときには、決済サービスとの関係でも利用者の救済は困難が伴うことを指摘しておきたいと思います。

 次に、10ページについては、全般的に、適切に実情及び問題点を取りまとめて頂いております。(4)について若干補足させて頂きますと、投資詐欺事案では、被害者救済、事態解明のために、決済事業者に送金先情報を求めることがあります。この点、クロスボーダー収納代行事案では、国内の収納代行業者が送金先情報を持っていないという事案や、言語や制度の壁等によって海外の収納代行業者への調査を断念せざるを得ない事案も生じております。こうした実情は、詐欺やマネロンの摘発をも困難としているものと考えられます。

 そこで、資料12ページですけども、現状のその問題状況に鑑みますと、クロスボーダーの収納代行に資金移動業者としての登録を求めることは喫緊の課題であり、全体として賛成します。この点に関し、12ページの下の図を参照しながら3点、規律の実効を確保する観点からコメントしたいと思います。

 1点目、海外事業者についてですけども、スキームを構築し、顧客に対して資金移動の責任を負担するのが海外事業者である場合は、当該海外事業者に登録を求める必要があります。この点、海外事業者が登録しない場合には、銀行法違反として刑罰の対象となり、国内事業者等の関与者はその共犯として刑事責任を問われることになります。この点については厳正な法執行を求めたいと思います。

 第2に、海外事業者の直接の相手方である国内事業者、12ページの下の図では「資金移動業者登録(ケース・バイ・ケース)」と書かれている国内事業者ですけども、こちらについては、一般にクロスボーダーの代理受領の成立が法的に極めて不安定であることや、国内事業者が資金移動の重要な役割を担うということに鑑みますと、当該事業者を規制・監督する必要性が高く、実質的に国内から海外送金を新たに受けているものとして登録を求めるべきと考えます。そして、この点に無用な争いが生じることがないよう、原則を具体的に明確化しておくことが必要と考えます。

 他方、国内事業者が登録海外事業者の業務の一部を受託して、その監督の下で業務を行う場合、例外的に登録を要しない場合があり得ます。かかる場合には、我が国に国内営業所と国内代表者を有する登録海外事業者が国内事業者に対する指導・監督を行う、この指導・監督が実効的に行われることが必要です。この点については、当局に十分なモニタリングと監督を求めたいと思います。

 第3に、12ページの下の図の支払人の直接の相手方となる国内事業者ですけども、かかる国内事業者は、実態に鑑みますと、受取人からの代理受領権が適切に設定されていないものが多いと考えられます。かかる場合は、当該国内事業者は違法に為替取引を行うものとなり、ここも厳正な法執行を求めたいと思います。

 最後に、前払式支払手段について一言ですけども、寄附金受領者を限定し、上限額を設定する提案に賛成いたします。現状では、提案以上に寄附金受領者の範囲を広げることには慎重であるべきと考えます。また、なりすましへの対応としては、高額電子移転可能型前払式支払手段の要件のうち、1か月当たりの累計利用額30万円の引下げを検討すべきというふうに考えます。

 以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。それでは、他の委員の皆様、いかがでしょうか。

 それでは、小川委員、お願いします。

【小川委員】 
 ありがとうございます。今の委員の御意見に基本的に賛成でございます。

 まず、最初のテーマについて、2点述べさせていただきます。まず1点目ですが、例えば12ページは、非常にシンプルな絵になってございます。一方、10ページの一番下に、「資金の追跡が困難」という言葉があります。実態は、この12ページのようにシンプルではなくて、複雑な実務があると考えています。その場合、今の案は、十分なのかどうか、いま一つ、実態の分析が必要ではないかと思っております。

 それから2点目、これは少し中長期的ですが、御承知のように、国際銀行間ではSWIFT(Society for worldwide interbank Financial Telecommunication)という銀行間の国際送金や決済に利用されるネットワークがあり、コンプライアンスといった目的も果たしています。現在、国際規格、ISO20022について目下取組中だと思います。やはり追随可能性を担保するには、もはや人の目では難しく、デジタルで実現する必要がある。こうした観点からも、国際規格への提言といったところも、一定必要になってくると考えます。

 それから、2つ目の前払式支払手段の寄附利用についてですが、これも賛成で、寄附する側の幅が広がるものと期待できます。私は、社会福祉法人の児童養護施設について、30年近く、監事という立場で関与してございますが、寄附金を広く募ることが非常に昨今難しく、若い人にもどのように広げていくべきか、という点が議論になっています。こうした社会福祉法人等の団体に対する寄附にも範囲を広げるべきと考えます。所得税法上の寄付金控除対象の寄付のうち、どこまで入れるかといった議論について、しっかり定義づけていくべきと考えます。

 一方、寄附を受ける側の決算処理等にも影響がある点は合わせて考えていくべきものと考えます。例えば、社会福祉法人でも、同じ寄付金の受領でも、決算書上、現金処理か、前払金処理。結果として、決算書上の開示も変わってきます。繰越しの資金剰余額の上限額等への影響も考慮する必要があると考えます。また、受領者は、寄付者が所得税の税額控除を受けるために、寄附金受領証明書となる領収書を発行する必要があります。前払式支払手段による寄付も、当該領収書発行の対象とすることを明言していく必要があると思っています。

 所得税法上の寄附金控除以外にも、神社への祭礼金などの記載もある法人税法上の寄附金の取扱いの問題もあります。そもそも法人税の対象法人に適用する否かといった問題はありますが、仮に適用があり得るとする場合には、法人税法上の指定寄附金に該当するのか否か、寄附金控除額にも影響しますので、検討の余地がでてくるものと考えます。

 最後に、暗号資産交換についてですが、これも賛成でございます。では実際に、法律的にどのように整理するべきか、資金決済法として取り扱うべきか、金商法として取り扱うべきかといった議論があるかと思います。暗号資産の魅力というのは、資金決済手段というよりも、むしろ値動き、投資的な意味合いといったところを利用者も期待しているものと考えます。この点を踏まえると、有価の資産と考え得る点から、金商法の制度対象になるのではないかと、個人的には思っています。ただ、既存の金商法をそのまま適用するには、非常に厳しくコストもかかる点を踏まえ、新しく新種の三種を考えるべきか議論があるところだと思います。

 金商法への対応という点からは、当然コストもかかってきますので、一定程度の淘汰もあり得ると思います。やはり、市場の信頼、安定性が担保されれば、より市況も活況になっていくものと思います。市場の信頼性が高まれば、さらに、投資家がより魅力を感じ得るように、税法上の恩典についても、議論すべきと考えます。総合課税なのか、もしくは申告分離なのか、確定申告における繰越欠損、損失の繰延べ得るかといった議論も合わせて考えていく必要があるかと思います。

 以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、神作委員、お願いいたします。

【神作委員】 
 学習院大学の神作でございます。御指名ありがとうございます。3つの論点について、一言ずつコメントさせて頂きたいと思います。

 初めに、クロスボーダー収納代行への規制についてでございます。収納代行の確立した定義というのはないとは思いますけれども、スライドの7ページに記載されておりますように、金銭債権を有する債権者から委託または債権譲渡を受けて債務者から資金を収受し、資金を直接輸送することなく債権者に移転させるもの、と理解する場合には、そのような収納代行というのは、為替取引の意義について判示した最決平成13年3月12日に照らせば、原則として基本的に為替取引に該当する可能性が高いと思われます。最決平成13年3月12日の判旨部分につきましてはスライドの12ページに引用して頂いておりますけれども、ここでは、約定に基づいて隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを用いて資金を移動することが為替取引に該当すると判示されておりまして、収納代行は基本的にはこの定義に含まれ得ると考えられるからです。

 為替取引に係るサービスと申しますのは、より一般的に申し上げますと、弁済の対象である債務の発生原因である基本契約の当事者ではない第三者が決済に係るサービスを提供するものだと思いますけど、この者が金銭、電子マネー、預金等の支払手段を支払人から受取人に移転するということを補助し、またはそのような状態に置くためのサービスを提供することであると一般的に言えるのではないかと思います。

 しかしながら、2019年12月の金融審議会決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループの報告では、収納代行であって、2つの要件、まず第1に、債権者が事業者または国、地方公共団体であって、第2に、債務者に二重払いの危険がないことが契約上明らかである場合には、為替取引に関する監督法上の規制を適用する必要性は高くないといたしまして、規制を見送っております。しかし、これは為替取引該当性をアプリオリに否定したものではなくて、リスクベース等のアプローチから規制の必要性が高くないとしたものと理解しております。

 顧客から依頼された資金移動に係るサービスが円滑かつ確実に提供されないリスクがあるということは一般的には否定することが困難であり、決済が人々や企業等の社会経済生活にとって日常的に発生する必須の活動であるということを考慮するならば、資金移動に係るサービスが約定どおり円滑に提供されないというリスクというのは、決して軽視することはできないと考えます。金銭債権の債権者が弁済の代理受領権を収納代行者に付与するということによって、二重払いのリスクを低減ないし除去するということは一定程度可能であると思いますけども、この点についても、先ほど事務局から御説明がありましたように、債務者がそれにもかかわらず紛争に巻き込まれるおそれはありますし、そもそも代理受領権の設定自体が争いの対象になるということもあり得ると思います。そのほか、スライドの10ページに適切に指摘されておりますように、様々なリスクが生じ得るところです。とりわけ、詐欺やAML等の不正利用のリスクや、その防止のための適切な監視の必要性は、前述したワーキング・グループの報告書が公表された2019年当時に比べて確実に高まっていると考えられます。

 今申し上げました様々なリスクは、基本的には国内の収納代行についても妥当すると考えておりますけれども、しかし、リスクの大小に応じて規制をしていくということは考えられることでございますので、一般的に言えばクロスボーダーのほうがこれらのリスクが大きくなると考えられることから、例えば、今回はクロスボーダーの収納代行に限って規制の対象にするということには、一定の合理性があるように思われます。

 以上に述べたような観点から、収納代行は為替取引に基本的に該当するという点から出発し、リスクベース・アプローチによって、前述した各種のリスクが高く規制の必要性が高いと判断される場合には、資金移動業規制を適用するという考え方に賛成いたします。為替取引の業務を行う者からその業務の一部の委託を受けて、行為者の指導・監督の下に収納代行の一部を行うものや、あるいは支払サービス業者同士の間、またはその代理人、またはその支店の間で自己の計算でなされる業務、あるいは同一の企業グループ内または信用経済上結びついた一定の特定グループの構成員の間で行われる場合など、適切な適用除外を設けるということによって、過剰規制になることがないような配慮をすることは必要であると思われます。

 なお、仮に、ある収納代行サービスが収納代行者から金銭債権の債権者に対する信用供与の機能を果たしているのであれば、場合によっては貸金業法の適用というのもあり得るでしょうし、貸金業法の柔構造化によって、例えば、金銭債権の売買の構成を取ったような場合などには、貸金業法の枠内で緩やかなタイプの規制を適用する余地があるという可能性については第1回の本ワーキング・グループで既に述べたところでございますので、本日は省略させて頂きます。

 第2に、前払式支払手段の寄附への利用について申し上げます。前払式支払手段による決済は、「物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合」に限定されております。これは、前払式支払手段については、従来の規制の沿革や経緯などから、資金移動業や銀行業の規制の対象外とされており、これらの規制の潜脱になる危険性に配慮しているためであり、一定の合理的な限定であると考えられます。

 しかし、寄附に係る支払いにつきましては、寄附の相手方と金額を限定することによって、前払式支払手段による寄附を認めることに賛成いたします。寄附文化を定着させ、それにより公益を推進していくということは、日本にとって現在必要かつ喫緊の課題であると認識しております。広く普及している前払式支払手段による寄附を認めることは、そのような寄附文化の醸成に大きく寄与し得ると考えるからです。

 他方、前払式支払手段による寄付には、詐欺リスクやマネー・ローンダリングリスク等があるということを考慮し、やはり適切な限定を課すということが必要と考えられます。寄附金受領者の範囲を厳格に限定するのであれば、寄附金金額については1~2万円よりも高くするということも考えられる一方、寄附金受領者の範囲を緩めるにつれて寄附金額を制限していくといった関係にあると考えております。

 なお、現在でも前払式支払手段により、国税、地方税及びふるさと納税を支払うということは可能であるとの見解が金融庁から示されておりますけれども、寄附の支払いを一般的に認める場合には、こういった納税との整合性の取れた形で、税金の支払いの場合も含めて考え方と規制を整理することが望ましいと考えます。

 さらに、これは長期的な将来的な課題になるかと思いますけれども、前払式支払手段に係る規制と資金移動業に係る規制については、同一の規制が実現していない側面があると思われますので、将来的には両規制の整合性を図るということが課題になると考えております。

 最後に、暗号資産交換業・電子決済手段等取引業における資産の国内保有命令について申し上げます。グローバルに業務を展開する暗号資産交換業者等が破綻した場合に、国内利用者の資産の返還を担保する必要性があり、また実際にそのような事態が生じ得るということは、これまでの経験から明らかなところです。私も、先ほどの御発言にもありましたように、できる限り速やかに資産の国内保有命令を発出することができるよう、必要な法令改正等をすべきであると考えます。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、永沢委員、お願いします。

【永沢委員】 
 御指名ありがとうございます。私も3点、本日の論点3点について意見を述べさせて頂きますが、全て事務局の御提案に基本的に賛成でございます。

 まずクロスボーダー収納代行への規制について、ここは私は法律のことはよく分かりませんので、このクロスボーダー収納代行に対して規制を入れるべきだという必要性について述べさせて頂きたいと思います。

 10ページに事務局からリスクについて示して頂きましたけれども、消費者の立場からしますと、3番と4番は特に重要と思います。この点に関しまして、直接資金決済法の領域かどうか、私は自信がないのですが、最近起きておりますこと、消費者団体のほうでいろんな活動をしている中で気づいていることをお伝えしたいと思います。

 クロスボーダー取引に関して、昨今、ECマーケットでの買物をする方が増えておりますが、海外のECマーケットもあり、消費者には、そのECマーケットが国内業者か海外業者かの区別は難しい状況です。加えて、海外のECマーケットの中に非常に悪質なものが混在しているという現状がございます。所属する消費者団体にて先月10月に広告調査を実施しましたが、SNSを通じて誘導されるサイトの中には大変悪質な販売店が存在していることが分かりました。詐欺と言っても過言ではないような販売店がECマーケットに混在しており、海外にはECマーケットそのものが詐欺的と言えるものもある状況が見えてきました。そして、そこで決済手段として収納代行を利用することを強く勧めていることもわかりました。悪質事業者は収納代行は規制がないことを理解した上で、決済手段に収納代行を利用するように勧めているのではないだろうかと推察しています。

 事実を確実につかんでいるわけではないのですが、事務局資料の、例えば8ページの注にありましたように、多くの人が、この領域で問題が起きていることは感知しており、また実際に詐欺的な取引の被害に遭っている人がいるであろうということも感知している状況なのに、例えば、消費者相談の現場で困っておりますのは、国内に手がかりがないというところでして、これが非常に問題となっています。当局が事業者について何らかの情報を把握頂いておれば、このような事態となった際の解決にも役立つのではないかと期待をしているところです。資金決済法の本来の目的とは直接関係ないところですけども、先日のBNPLと同様で、キャッシュレスと称して新しい決済手段が多様化し広がる中、また、インターネット取引の利用が広がる中で、現状、規制がないところや、あるいは甘いところに落とし穴が空いていて、消費者が被害に遭うという状況が生じており、利用者保護が難しくなっているという状況を考えますと、クロスボーダー収納代行に対して規制を導入する必要性があるのではないかと考えます。

 それから、2番目の前払式支払手段の寄附につきましては、これは私も大賛成でございます。少額のお金を寄附として人の前で出すというのは結構恥ずかしいもので、そういう意味では、現金を人前に出さずに寄附できるということは大変ありがたいことだと思います。例えば、日本赤十字社が赤い羽根共同募金をなさっていますが、あのような場面でお札を1,000円出すのか100円玉を出すのか悩みますし、結構恥ずかしい思いがしますけれども、そういう場面で、こういうツールを使ってさりげなくチャリンとやれるならば、これまでよりも寄付する人は増えるのではないかと思います。そういった意味で、少額寄付の背中を押せるのではないかと、消費者感覚で思っておるところです。

 では、どこまで広げるのかというところですけども、私は、いわゆる電子マネーと言われるものや、スマホQRの決済でやれるもの、資料で言えば14ページの上の段「価値の電子的な移転・譲渡不可」に記載されている領域にとどめるべきであろうと考えます。

 といいますのは、資料の下の領域につきましては、世界的にギフトカード詐欺というものが大変深刻な問題になっております。ギフトカードを発行する事業者が困るぐらい被害が多い状況に現状がありますし、何よりも、寄附というのは寄付をしようと思った時に寄付ができた、その瞬間の思いや感覚が大事なように思います。寄附しようという行為と、それからチャリンと落ちる、決済される時点が同じということが大事なのではないでしょうか。そういう意味でも、私は上の領域だけでいいと思います。

 それから、どの辺りまで対象を広げるかというところですけども、これも事務局案に賛成です。私は公益法人化している消費者団体の代表を務めておりましたので、寄付のお金はのどから手が出るほど欲しいし、公益法人まで広げてほしいと言いたいところですけれども、公益法人につきましては、まさに公益法人改革を進めてきたところで、信頼確保に向けての改革を盛り込んだ改正法が成立したばかりで、来年4月から施行となるところです。改革の中心は、法人のガバナンスでして、まだまだ課題もある状況でございますので、この公益法人改革の成果が見えてくる時期まで待ってでいいのではないかと思います。将来的には公益法人も対象に入れて頂きたいと思いますが、来年とかという段階ですと、まだ時期尚早と考えます。

 それから、最後の暗号資産の交換業者に対する資金決済法での命令を出せるようにするところについては、これも賛成いたします。個人的には、暗号資産には消極的ですが、だからといって、資金移動業者が破綻したときに、日本の利用者の救済が海外の利用者と比べて劣ってしまうようなことが起きてしまうのは、それは日本国民としてどうかと思いますので、海外に見劣りしないような利用者保護を制度的に用意しておいて頂きたいと思います。

 私からは以上でございます。ありがとうございます。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、井上委員、お願いします。

【井上委員】 
 御指名ありがとうございます。私は、2つ目の前払式支払手段の寄附への利用については、一定の範囲に絞って認める方向性に賛成いたしますし、暗号資産交換業・電子決済手段等取引業における資産の国内保有命令についても、その導入に強く賛成いたしますが、クロスボーダー収納代行については、やや異なる観点からコメントを差し上げたいと思います。

 今回の資料7ページによりますと、クロスボーダー収納代行を非常に広く捉えておられます。「収納代行のうち、国内と国外との間で資金移動が行われるもの」を広くつかまえていて、仕組みが複雑かどうか、あるいは受領代理構成が明確かどうかを問わないつかまえ方になっていて、実際に、8ページにおいてもいろんな収納代行が対象になることが分かります。

 そうしますと、9ページにある一般論、すなわち「同じ活動、同じリスクについては同じ規制を適用されるべき」、これには全く異論がないんですけれども、本当に同じ活動と言えるのかについては、資金受領者が事業会社で、受領代理構成が準拠法上明確であるクロスボーダー収納代行は、むしろコンビニの収納代行などの国内収納代行と同じ活動という見方もできるように思います。また、リスクに関しても、事業者のための受領代理に関していいますと、資金移動業一般とはややリスクが異なるのではないか、業者の破綻の場合の利用者保護の必要性が違うんじゃないかという感じもいたします。

 その意味で、この9ページのトップボックスの3つ目の「クロスボーダー収納代行につき適切な規律を設ける」という点について、現在のクロスボーダー収納代行の中に放置できないものがあることは全くそのとおりだと思うんですが、その適切な規律というのが資金移動業規制なのかは、もう一度考えてみてもいいのかなと思っております。

 10ページになりますが、支払人の二重払いのリスクについて、ここに書いてあるように、適切に代理受領権の設定がなされていないとか準拠法が不明確であるとかいう場合は、確かに二重払いのリスクがあると思います。ただ、先ほど申し上げたように、クロスボーダー収納代行を非常に広く捉えているので、そうではないものも今回規制の対象になってしまうのではないでしょうか。すなわち、準拠法に従って有効に受領代理権が付与されている場合まで、本当にこの規制を及ぼすべきなのかは疑問のあるところです。

 逆に言えば、準拠法に従って受領代理権が付与されているかどうかよく分からない収納代行が、クロスボーダーだと、仮にですけれども20%も30%も交じっている、国内だと1%しかないという事実が仮にあるとしても、だからといって残りの、受取側が事業者で、かつ受領代理構成が準拠法上明確である7割、8割の業者に対しても資金移動業者として資産保全その他の規制を及ぼすことが必要なのかには疑問があります。

 他方、国内の収納代行であっても、そのうち仮に1%しかなくても、受領代理構成が不明確であったり、受取側が事業者でなかったりする場合には、先ほど神作先生もおっしゃいましたけれど、むしろ原則として為替取引であるというベースに立って規制を及ぼすべきだと思います。その点で、クロスボーダーか否かという切り口で広く規制対象を切り取ることには、本当に守るべき部分以外の、負荷をかけなくてもいいところに規制の負荷をかけるおそれがあると懸念しております。

 同じように、資金決済の遅延リスクについても、受領代理であれば、債務者が最初の業者に払った時点で免責されることになりますので、その問題はないはずです。もちろん、受取側が遅延リスクを負うことになるわけですけれども、それについては、国内収納代行も同様に、受取側が事業者であれば、その事業者が選択した収納代行業者のリスクを取るという、通常の商取引として説明・許容できる場合もあるのではないかと思われます。また、利用者情報保護上のリスクについては、御説明にもありましたが、一般に個人情報保護法が適用されることは間違いございませんので、その観点で、資金移動業規制がこのために必須なのかもやや疑問を感じているところです。

 そうしますと、現在、立法事実が強くあって放置できないというのは、最後の詐欺、マネー・ローンダリングリスクではないかと個人的には思っておりまして、これについては、対応する必要性が非常に高いわけですが、必ずしも資金移動業規制を及ぼさなくても、例えばではありますが、クロスボーダー収納代行業者を広く犯収法上の特定事業者に指定するなどの方法によって、本人確認を法律の下でしっかりやって頂くことは可能ではないかと思われ、それによって逆に規制が不足する点が本当にどの程度あるのかも含めて御検討頂ければと思っております。

 私からは以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、堀委員、お願いします。

【堀委員】 
 今回御提案頂いている3点について、それぞれ意見を申し上げたいと思います。

 クロスボーダー収納代行については、実態調査を頂きましてありがとうございます。8ページで取り上げて頂いている事例を拝見いたしましたが、表の中で記載を頂いている事例はいずれも問題がない事例ではないかというふうに思っております。クロスボーダーでも、商取引が行われて、そのために、代金の受取りのために収納代行サービスを利用するということは一般的に行われています。越境ECや輸出入取引などの貿易取引でも、クロスボーダーの商取引がございますけれども、代金を海外の事業者が受領して引き渡す、あるいはグループ会社が受領して海外の事業者に引き渡すといったケースが挙げられます。

 ECやサービスプラットフォーマーが代金を受け取るというケースでも、何が販売されて、何の決済代金なのかということは明らかだといえると思います。そうしたプラットフォームで販売や購入を行っているという以上は、支払人も受取人もリスクを引き受けているといえる場面はあると思いますし、詐欺、AMLのリスクというものも、何が売られているのか分からない不正、なりすましの可能性といった点はリスクとしては低く、むしろ加盟店管理をしっかりやって頂くべき問題だというふうに考えております。また、クレジットカードその他の決済手段が利用された場合の決済会社間の決済代行についても、加盟店のために代金を受領して、これを引き渡しているだけということになりますので、表中で書かれているものについてはむしろ問題がないといえる事例なのではないかと思います。

 一方、坂先生ほかからも御指摘がありましたような、脚注に書かれている注の事例「海外オンラインカジノや海外出資金詐欺等の事案において、収納代行と称する送金スキームが用いられる場合もある」という一言でございますけれども、こちらのケースはやはりリスクが高いと思います。こうした事例がどういうスキームになっているのか、この事例を取り締まるためにはどういうような規制体系が必要なのかについて、もっとよく議論をしたほうがいいのではないかと思っております。単にクロスボーダーだから、国境を越えるからリスクが高いというわけではなく、2023年の6月に貴庁から公表されている「マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題」の中でも収納代行におけるリスクというのが掲げられているわけですが、複数の小口送金を収納代行業者間でバルク送金をしたり、その他取引と組み合わせて決済することで外為送金と同様の機能を国内顧客に提供しているケースにおいては、個々の送金人や受取人に関する情報を不透明とするリスクがあると指摘されていると思います。8ページの表で書かれている事例よりももっと複雑なケースではないかと思われます。

 今の資金決済法の2条の2や資金移動業府令の1条の2では、個人が債権者となる収納代行のうち、一定のものが為替取引に該当するとされています。今回、事業者が債権者となるものであったとしても、国境を越える収納代行のうち一定のものが為替取引に該当するとするのであれば、そうしたことは考えられる枠組みだと思いますけれども、問題があるケースを具体的に把握した上で、必要な規制体系を議論するとともに、問題がないケースはむしろ適用が除外されるということが明らかになる必要性があると思っております。

 具体的には、先ほど神作先生からも御指摘ございましたけれども、事業者が受取人になるもので、自らが販売するものを回収するようなケース、グループ会社などが受領して引き渡すようなケース、取引の成立がプラットフォームで行われる場合の商品代金等をプラットフォーム経由で受け取るというような場合、これらの取引に関して、自らあるいはグループ会社が委託した決済事業者が受け取るというようなものは、適用除外として頂くのが相当ではないかと考えております。問題があるケースは、受取人が取引の成立とは関係がなく、決済だけに関与する第三者を連れてきて収納代行とするようなケースだと思いますので、そうしたようなケースをうまく捕捉するような法体系として頂いたほうがいいと考えております。

 また、12ページで規制の枠組みがワークするのかどうかということについて、3点御意見申し上げます。

 1つ目は、海外事業者が海外でライセンスを受けていて適法に業務を行っている場合、日本のグループのエンティティーが委託を受けるというケースもあると思います。この場合、果たして本当にライセンスが必要なのかどうか、また、資産保全等の二重規制が生じることがないのかどうかについては配意する必要性があると考えております。また、国際的な監督当局間の情報連携や、協調した取締りというものも必要になってくると思っております。

 2つ目は、従来の為替取引の考え方を応用すると、受取送金型の依頼者は受取人ということになりまして、受取人が契約者になります。また、海外の事業者を依頼者というふうに構成する場合、この12ページの下の段ですけども、その場合には海外事業者が依頼者となり、契約相手方ということになると思います。支払人は銀行口座を指定されれば振り込めてしまいますので契約関係にはなく、国内事業者のほうで資金移動業登録が必要だということになったとしても、支払人の情報、受取人の情報をどのようにして確認するのかということについては、よく議論していく必要性があると思っております。

 また、10ページ目のとおり、利用者情報の保護の仕方について言及を頂いておりますが、この個人情報保護法と犯収法上の通知義務との関係はどうなるのかということについても配意する必要性があると考えております。銀行で行われている送金も参考に、実務的にも可能で実効的な方法、例えば、銀行送金でも、送金を依頼する場合には黙示の同意があるというように整理頂いているようなケースもあると承知しておりますので、実際に規制が必要だということになった場合でも、その実効的な方法というものを確認していく必要性があると考えております。

 また3点目は、12ページでいわれているような枠組みになった場合、1件当たりの取引金額がどのようになるのかということについては議論が必要ではないかと考えております。8ページ目で実態調査を頂いた1件当たりの取引額目安というのは、数百円などの記載もあるわけですけれども、この1件というのはどのように数えられているのかということについては、もし御説明頂けるようであれば御質問もしたいというふうに思っております。例えば、加盟店が受け取るべき代金が2週間ごと、1か月ごとにプラットフォーマーからまとめて送金されるというような場合を考えていったときに、1回の取引金額というのはもっと大きくなるはずだと考えております。さらに、クロスボーダーで国境を越える金額は、例えば、海外事業者からの依頼で引き渡しますという場合には、1件当たりはまとめて送金されることになりますので、この8ページの金額よりもさらに大きくなると考えております。

 12ページの規制の枠組みでワークさせるためには、1回当たりの送金額というものを過小評価すべきではなく、第一種の受皿となる資金移動業の金額がどのように考えられるのかということも合わせて検討していく必要性があるのではないかと思いますし、もし第一種の資金移動業で、あるいは今の現状の第二種の資金移動業で受け取れないということになってしまいますと、規制対象だということになったとしても、どうしても取引がきちんと登録に向かっていかないことになると思いますので、1件あたりの取引金額については、この12ページでお示し頂いている枠組みの中で、どこの何の金額とするのかということについても議論が必要ではないかというふうに考えております。

 以上がクロスボーダー収納代行でございまして、残りは前払式支払手段の寄附金と国内資産保有命令ですが、基本的には検討の内容に賛成でございます。寄附金につきましては、18ページ目の記載のとおり、問題意識が、不正、なりすましやマネロン、詐欺を誘発するリスクがあるということに配意して対応案として記載頂いていると思いますので、この内容につきまして、もう少し指定者を限定すべきではないか、上限設定すべきではないかという、この2つに関しては、下に書いて頂いている加盟店管理がしっかりとなされていれば、その者に対して寄附が行われるということでありますので、金額や対象者については一定の、発行者のほうの審査に委ねるという考え方もあり得るのではないかというふうに思っているところです。加盟店管理がしっかりできているということが重要であり、それがしっかりとできているということであれば、法律上で何か主体を限定する、上限額を設定するという必要性まではないのかなと思っております。

 また、「一定の場合を除いての払戻し禁止」という記載がございますが、これは何を指しているのか。また、一番下の「高額電子移転可能型前払式支払手段」という記載もあるのですが、これは何を指しているのかということをもし御質問させて頂けるようであれば、お願いしたいと思っております。

 といいますのは、加盟店となれば清算金を受け取れるはずですので、払戻しの問題ではなく、清算金の受領の話になるのかなというふうに思いました。また、譲渡ではなく、利用者も加盟店に対する寄附というような形になるとすると、利用という認識になると思いますので、譲渡という場面ではないように思っております。だからこそ加盟店管理が大事だというふうに考えているわけですけれども、この理解に相違がないかどうかということは、可能であれば御質問させて頂きたいと思います。

 最後の国内資産保有命令を出せるようにするという暗号資産・電子決済手段についての改正の方向性については異存ございません。

 以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。大きく2点ほど御質問があったと思いますけど、規制の枠組みとの関係での取引額をどのように考えるか、今の時点で何か考えている前提のものがあるかという点と、あと、なりすましのリスクとの関係での理解はどうであろうかというふうなことですけども、今の時点で可能な範囲でお願いします。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】 
 ありがとうございます。1点目の御質問につきましては、12ページの資料の、例えば上の図ですと、支払人から複数の線、矢印がございます。このように複数の支払人が海外事業者に対して支払いをして、それをまとめて国内事業者に払うことが想定されるところでございまして、8ページで書いている1件当たりの取引というのは、まさにこの支払人からのそれぞれの個別の線を想定しているところです。

 2つ目の御質問でございますが、まず払戻しの禁止については、現在、前払式支払手段で払戻しが認められている場合は、発行額に対して何%以内といった限定が課されていることを指しております。前払式支払手段を寄附に使うことを認めるときに、どのようなスキームを考えていくかに依りますが、加盟店で受ける場合は、この払戻し禁止規定がどこまで関係するのかという点はおっしゃるとおりでございます。他方、残高を譲渡する形で寄附を受けることが仮に考えられた場合には、この払戻しの禁止規定が関係する場合もあると考えられます。

 あと高額電子移転可能型前払式支払手段については、金額の閾値がありますので、仮に閾値を超えて使おうとする場合には犯収法上の義務がかかってまいりますし、使わないでということになれば一定の金額内での取引に収まるということを想定して書かせて頂きました。

【森下座長】 
 ありがとうございました。ここではよろしいですか。

【堀委員】 
 12ページ目の支払人の支払いというものの1本が1回の金額だということで理解しました。そうしますと、この規制の枠組みで、受取人から送金依頼があり、代理受領権が付与されるという、この上の送金というのが太くなっているので、1回当たりの金額というのはもっと大きくなると理解しましたし、下の図で国内事業者から海外事業者の依頼とこの送金というものもさらに太くなると理解しました。その前提で、第2回で御議論頂いている第一種の資金移動業の滞留規制の問題と、第二種の上限引上げが必要かどうかということを合わせて御議論頂きたいというふうに思っております。

 それから、最後の前払式支払手段の寄附というものが仮に認められたとした場合、その寄附を受ける者が加盟店として位置づけられるものなのか、あるいは利用者間の譲渡で、一定の少額の範囲で払い戻すというような構成になるのかはいずれもあり得るというお立場と、今、御説明を聞いて理解しました。いずれも御回答頂きありがとうございます。

【森下座長】 
 ありがとうございます。

 1件目の金額のところは、8ページの図はそういう理解で書いていますというような御説明で、本当に規制のときにどういう整理が必要かというのは、今後の検討次第ということかと思いますけども、ありがとうございます。

 それでは次に、長内委員、お願いします。

【長内委員】 
 大和総研の長内でございます。

 まず1点目のクロスボーダー収納代行への規制に関しては、消費者保護やマネロン対策などの観点から、必要に応じて適切な形で規制の対象とすることに関しては賛成します。ただ私も、対象の範囲が、一般の立場からすると、なかなか分かりにくいという印象があります。そのため、対象をしっかり定めなければいけないと考えます。

 私からは1点だけ、ちょっと極端なケースを挙げると、例えば、国内事業者で、国内で問題なく収納代行をやっているところが、クロスボーダー収納代行をやったら規制の対象になるべきかという点です。同じ事業者が国内で収納代行をやっている場合と、クロスボーダー収納代行をやっているという場合、利用者からすると、この事業者であれば、どちらでも変わらないと思います。なお、全く同じ事業者でもいいですし、グローバル展開しているグループ会社でもよいのですが、こうした極端な例ですと、利用者からするとそんなに変わらない。けれども、その先が国境をまたぐかまたがないかという違いで規制の有無が変わるというのはなかなか分かりにくいと考えます。いずれにしろ、その規制の対象範囲を明確にしていくという、これまでの委員の方が指摘してきた議論が必要になってくると思います。

 2点目の前払式支払手段の寄附の利用というところに関しては、こちらも基本的に賛成したいということです。ただ、こちらに関しては、細かくなると思うのですが、利用者側の視点でちょっと議論をしたほうがよいのではないかと考えています。今回の焦点になっているのは、いわゆる寄付金受領者側を限定するということですけれども、利用者、寄附をする側からすると、その寄附の行為、いわゆる「寄附の種類」が同じでも使えるものと使えないものが存在します。例えば、我々の世界で、キャッシュレス決済サービスといった場合には、いろいろな決済手段があると思います。分かりやすい例で言うと、例えば、2017年から18年頃にお賽銭をキャッシュレスで行うということがキャッシュレス領域でかなり話題になりました。キャッシュレスと広く捉えて議論してしまうんですけれども、実は、お賽銭に利用できる決済手段とできない決済手段が、規制のほうで定められている形であり、これは利用者からすると非常に分かりにくいです。

 今回の前払式支払手段の寄附への利用というのは、逆に言うと、キャッシュレス決済サービスという広い枠組みの中で公平性を保つ、同じキャッシュレスという枠組みであればどれでも利用できますよという形で考えて、制度を整理する仕方もあります。いずれにせよ、利用者には、ユースケース的な、例えば、今述べたお賽銭みたいな具体例があって、それに対して寄附で利用できるもの、利用できないものという視点も重要です。あと、今年に入ってからは、災害関連で寄附に利用できるもの、利用できないものという観点もあると思います。そういう利用者目線の形で説明していくことも重要になっていくように個人的には考えているところです。

 また、これまでのワーキング・グループの議論にはなかったのですが、今キャッシュレスによる寄附というと、今年の災害の場合にもあったのですが、ポイントによる寄附が存在します。前払式支払手段と資金移動業、あとクレジットであれば割賦販売法になりますし、さらにポイントという形がありますが、利用者からするとキャッシュレスというのは広くまとめて捉えてしまうということになります。特に今、日本ではポイント経済圏という中で、ポイントで寄附というのも動き出していて、このポイントというのは、今は全く議論の対象になっていないということです。受領者の範囲というのは今回頂いた案で特に異論はなく、受領者の視点もありますけれども、寄附の種類によって、そもそも決済手段の公平性という点が、利用者からすると状況が分からない。そのため、神作先生がご指摘されていたような前払式支払手段と資金移動業の、いわゆるsame regulations的な論点もキャッシュレス全体に関して出てくると思います。そうした視点も重要になってくるだろうということが、こちらの2点目に関する追加の指摘になります。

 3点目は、以前私からコメントしましたように、現時点で問題が顕在化していないものの、将来に備えておくというフォワードルッキングな見直しということなので、個人的に賛成したいと考えています。

 以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 ここでオンラインで河野委員、大分お待ち頂いていますので、河野委員、御発言お願いできますでしょうか。

【河野委員】 
 河野でございます。御指名ありがとうございました。私から本日の議題3点について、簡単に申し上げたいと思います。

 まず、クロスボーダー収納代行への規制については、適切な規制を設ける必要性は高いと考えますし、事務局提案に賛成いたします。個人の利用者に絞って考えますと、現在提供されている様々なクロスボーダー決済の仕組みを利用することで、従前に比べて格段に利便性が高まりました。旅行・観光分野や、海外に住む家族への送金などにおいては、手続の煩わしさから解放され、時間の短縮につながるなど、IT技術がもたらしたシステムの恩恵を頂いていると思っています。他方、表面上の手続の背後には、どのようなスキームで資金の移動が行われているかは知る由がなく、そのリスクの存在や大きさに気づくこともできません。今後グローバル市場の拡大に伴い、クロスボーダー決済の機会が増えることを考えますと、この機を逃さずに、今回事務局から提案された対策を実行して頂きたいと考えます。法律関係詳細等は私自身は不案内ですので、これまで委員の方々から出された懸念等への対応もお願いしたいと思います。

 2点目の前払式支払手段の寄附への利用を認めることについては、これも事務局の提案どおり、現状よりも対象を拡大するものの、寄附金受領者の限定や金額の制限など、一定の要件を課して利用を認めることに賛成いたします。日本では寄附という資金調達手段の活用が弱く、資金の利用目的に賛同した結果として、一部税制控除というリターンはありますが、さらに公益に資する活動への支援をより円滑に進めるという面から、前払式支払手段は寄附のしやすさを向上させるという点で効果が期待できると思っています。ただし、寄附を受ける側は寄附者名簿を整える必要等がありますので、その点の整理をお願いしたいと思います。また、現状でも詐欺やなりすましは一定数発生していますので、現在の対策の延長線上で強化を図って頂ければと考えています。

 最後に、暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対する資産の国内保有命令については、FTX事件の教訓を生かして、ぜひ両事業者に対して資金の国内保有命令を発出することに賛成いたします。規制導入においては遅きに失しないように、迅速な対応を望んでいるところでございます。

 簡単でございますけれども、私からは以上です。ありがとうございました。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは次に、伊藤委員、お願いします。

【伊藤委員】 
 弁護士の伊藤でございます。私からは、26ページの論点のうち、クロスボーダー収納代行規制と前払式支払手段の寄附への利用の2点についてコメントさせて頂きます。

 まず1点目のクロスボーダー収納代行に対する規制の問題でございますが、第1回目から基本的な考え方として申し上げてまいりましたとおり、保護すべき法益は何か、それに応じた納得のいく法規制か、課題の解決方法として適切な規制なのかという点を考えていきたいと思っています。クロスボーダー収納代行について、これを考える際に、まず保護すべき利益につきましては、10ページで4点、事務局のほうでリスクとして挙げて頂いたと思います。支払人の二重払い、受取人への支払遅延の防止、支払人・受取人の情報保護、そしてマネロンについては末端の支払人から受取人までの不正利用を防ぐと。つまり、クロスボーダー収納代行に係る末端の支払人と、そこから一連の金銭の流れにつながる受取人の利益を保護するということが一番重要な保護すべき利益なのだと理解しております。

 では、この利益に対して課題解決に適した法規制はどうであろうかと考えました。この点、例えば8ページに実際のサービスを挙げて頂いたのですが、これらのうち支払人と受取人の間に入るのが、収納代行業者1社もしくは収納代行業者が何社か連なるような形である場合には、当該クロスボーダーの収納代行、資金決済を担う収納代行業者が資金移動業登録をすることによって、先ほどの課題について実効性のある解決策になろうかと思っております。

 といいますのも、間に入っているのが収納代行業者だけだということになりますと、代理受領したにもかかわらず、持ち逃げしたり、破綻したり、また、支払いが遅延したりするようなリスクや、情報が漏えいするようなリスクについては、当該1社もしくはその委託先といった収納代行事業者に監督が行き渡ることになることによって回避できるのではないかと思われるからです。また、マネロンの問題についても、間に入る1社が支払人の取引時確認をするなど、犯収法や外為法の規律に服することで対応は可能かと考えております。

 他方で、8ページに記載されている収納代行サービスの例ですが、支払人と受取人の間には、クレジットカード払いや銀行振込など、他の決済事業者が入って、また当該決済事業者の間に複数の収納代行業者が連なる形で、多数の当事者が連なって最終的に受取人との間の決済が完了するというケースも多々あると認識しております。そのようなケースの場合には、末端の支払人と受取人の利益というのは、別の決済事業者によって一定程度リスクがカバーされているのではないかと考えております。また、一連の流れの中で、間に入っている収納代行業者のみを資金移動業登録することが、末端の支払人と受取人の保護すべき利益との関係でどこまで実効性のある解決策かというところについて、慎重に検討する必要があろうかと思っております。

 例えば、日本にいる支払人がクレジットカードで支払う選択をした場合に、クレジットカード会社からアクワイアラー、アクワイアラーから包括加盟店、包括加盟店から受取人といったような形で、受取人である加盟店への資金の流れというのが一般に考えられるわけですけれども、その流れの中にも複数の収納代行業者が入ってくる場合がございます。このような場合、保護すべき支払人というのはクレジットカードで支払う支払人でございまして、そういった場合には、既にクレジットカードの仕組みの中で二重払いのリスクというのはある程度軽減されていると考えてもよいのではないかと思います。

 2点目の支払遅延リスクや3点目の情報漏洩リスクについては、一つ一つ申し上げませんが、同様に考えています。また、特にクロスボーダーで問題となるマネロンのリスクについても、一連の流れの中で収納代行業者を規制対象とした場合、例えば、多数の事業者が一連の流れとなっている取引の真ん中に位置する収納代行業者が資金移動業登録をすることによって、犯罪収益移転防止法の特定事業者になった場合どうなるかといいますと、その前後については、為替取引の契約をする相手方として取引時確認を行うなどの対応でマネロンを防ぐ直接の効果があろうかと思うのですが、末端の支払人から受取人までカバーできるものではないのではないかと危惧しております。この点については、既に銀行等の送金で、いわゆるトラベルルールのようなものがございますので、今足りないところがあるのであれば、これを工夫するような形で解決が可能なのではないかと考えております。

 以上の考え方を前提としますと、私は、クロスボーダー収納代行が、銀行や資金移動業者など他の金融機関であるとか決済事業者を介することなく支払人から受取人の間の資金移動を担っている場合には、それを資金移動業登録することというのが妥当な解決策だと考えます。他方で、他の決済事業者、金融機関等が入っている場合には、一定程度保護ができているという領域については、もう少し丁寧に対象、保護すべき利益と見合った対応というのをご検討頂きたいと思います。

 2番目の前払式支払手段の寄附への利用につきましては、基本的に賛成でございます。理屈上は、事務局の資料にもございますとおり、実質的には物品や役務の提供がないのに寄附先へ金銭が支払われることになりますので、送金なのではないか、払戻しの禁止に該当するのではないかといった問題があるとは認識しておりますが、今回は、ニーズがあり、かつ、現状でも税金やふるさと納税では一定程度許容されているという実情もある中で、理屈の問題よりも政策的な判断で範囲を限定した形で許容をしていこうという事務局の御提案と理解しています。その手段として、寄附先あるいは金額を一定程度絞った上で許容していくというのは賛成でございます。

 ただ、ここで申し上げたいのは、寄附だから何でもいいということではないということは当然とする一方で、寄附以外のものであっても、自治体など受取先を限定した場合には、奨学金の返済であるとか、交通違反の反則金であるとか、幾つか公的な支払いというものがあると認識しており、そのようなところも含めて、どういう性質のものが許容されるべきなのかというのを丁寧に見て頂きたいと思います。

 以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは次、加藤委員、お願いします。

【加藤委員】
 ありがとうございます。私も「ご議論いただきたい事項」として挙げられている3点について、それぞれコメントしたいと思います。

 まず、第1点目のクロスボーダー収納代行の規制についてです。事務局資料でクロスボーダー収納代行として整理されている仕組みの中に、規制の必要性が認められる類型が存在するということについては、皆様の御意見も伺いまして、私もあると考えました。それと同時に、そのような類型をどうやってくくり出していくかということについては非常に難しい問題があるとも思いました。事務局資料の10ページでは、クロスボーダー収納代行に存在すると考えられるリスクが挙げられています。クロスボーダー収納代行には様々な類型があるかと思いますが、類型が異なると、この4つのリスクの大小が相当異なると思います。その上で、今回の新しい規制を考える際に、どのリスクに焦点を当てていくかということは、非常に重要であると思いました。

 例えば、事務局資料の8ページに、クロスボーダー収納代行の例を挙げて頂いておりますが、同じページの注では、海外オンラインカジノや海外出資金詐欺などの事案において収納代行と称する送金が用いられている場合があるという御指摘があります。この指摘を中心に考えるのか、それとももう少し広げて、注の上に書かれている例まで広げて考える必要があるのかということを検討していく必要があるのだろうと思いました。

 加えて、仮にクロスボーダー収納代行の一部を資金移動業の対象とするとした上で、現行の資金移動業の規制を適用することによって問題が十分に解決できるのかも考える必要があると思っております。例えば12ページで、受取人の依頼に基づいて国内事業者が海外の支払人から商品やサービスの代金の受領を受けるという例を考えた場合に、私の印象にすぎませんが、資金移動業の規制は順為替というか、送金為替を念頭に置いて、支払人側の利益の保護を中心に考えてきたことが問題になるかもしれません。一方、受取人の依頼による、言わば逆為替というか、取立為替のようなものを念頭に置いて資金移動業の規制が構築されているのかというと、若干検討の余地があると思います。例えば、この場合の受取人の保護を考える際には、未達債務の考え方を少し工夫する必要があるのではないかと思いました。

 次に第2点目、前払式支払手段の寄附への利用についてです。私も少額の寄附の促進は非常に重要であると思っておりますので、賛成いたしたいと思います。これは具体的なスキームの話になってしまうかもしれませんけれども、堀委員がおっしゃいましたように、私も認めるのであれば、寄附受領者は加盟店として受け取るという方式にしたほうがよいと思います。特になりすましへの対応という点を考えるのであれば、やはり前払式支払手段の発行者による加盟店管理の対象とすることが望ましいと思います。また、寄附金受領者を加盟店にしないとしても、寄附金控除の書類のやり取りなどがなされることも考えると、単なる前払式支払手段の譲渡とは異なるように思います。したがって、寄附金受領者を加盟店にしても寄附者に何か不都合が生じるということも考えられないのではないかと思いました。

 若干気になりましたのは16ページで、ふるさと納税としては既に前払式支払手段による寄附行為を受け入れているということですけども、この場合、どういう形で受け入れているのかということは既に問題になっているのではないかと思いました。ふるさと納税の現在のスキームがどうなっているのかということも合わせて考えてみて、それを維持したほうがいいのか、それとも修正したほうがいいのかということも検討する必要があると思いました。

 3点目の暗号資産交換業・電子決済手段等取引業における資産の国内保有命令につきまして、こちらはFTXグループの破綻事例によって現行法に不十分な点があるということが明らかになっておりますので、賛成したいと思います。その上で、これも制度の具体的な構成の話になってしまいますけれども、暗号資産や電子決済手段の国内の保有とはどういうものなのかということをしっかりと言葉にできるのかということがなかなか難しいと思いました。コールドウォレットの一種であるハードウェアウォレットであれば、そのハードウェアを国内で管理、国内に置いておけということなのかもしれませんけれども、それ以外の形で管理されている暗号資産や電子決済手段の国内保有はどういう状態なのかということを、これは技術的な話も関わってくるかと思いますので、慎重にというか、丁寧に検討を進める必要があるかと思いました。

 私からは以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。ふるさと納税は今どういう整理かというお問合せがあったように思うのですけど。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】 
 ふるさと納税で寄附を認める場合というのは、基本的に地方公共団体が最終的な受領者になりますが、一次的な受領者としては地方公共団体以外も認められていると承知をしております。そういった者が、全てのスキームが我々確認できているわけではないですが、基本的には加盟店の形で受領を受けるという形と承知をしております。

【森下座長】 
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

 それでは、杉浦委員、お願いします。

【杉浦委員】 
 ありがとうございます。まず、今回も3つの論点があったわけですけども、1点目に関して申し上げると、神作委員からもありましたように、まず収納代行の法的定義をどうするかということを、しっかりと議論されたほうがいいんじゃないかなというふうに思っています。この問題は、これまでの間、金融庁も含めて様々なところで議論されてきたわけですけども、様々な背景の下に、為替取引というふうに解釈しないという方向性をつくってきた過去があるのではないでしょうか。その言い方が乱暴だとしても、今日一部の委員からもありましたように、まずは資金移動業者も為替取引をしているとするのか、また、どこまでの範囲をそもそも為替取引と考えるのかということを、それぞれの業者の実態も見ながら検討していくことが必要なのだと思います。

 その上で、一部の委員の方々からも、これがクロスボーダー取引関連ということになったときに、ではクロスボーダー取引に関連する海外の事業者を実際に登録すればいいとか、そういった御意見なんかもあったわけですけども、この議論、ここ最近あった議論ではないですよね。考えてみれば、過去20年以上にわたってこの問題はあったわけです。現実にその時点において議論した段階においても、複数の問題があって、なかなか解決できてこなかった。

 まず1つは、これもまた一部の委員からもありましたけども、そもそも金融の流れと物流サービスの流れが違いますし、そういった海外の事業者、送金業者だとして、そのような業者が収納代行業者を兼ねているわけですが、業者が必ずしも、取引が悪質なものであるとか不正的なものであるということを認識していない(できない)場合があること。そしてあともう一つあるのが、例えばギャンブルなんかの問題がそうですけど、公的なギャンブルというか、カジノなんかを公的に認めている国、例えば典型的な事例がオーストラリアとかがそうですけども、そういう国に関しては、日本では非合法なお金の流れだと分かっていたとしても、そこに関する取引に関しては国内で規制する法がなく、比較的寛容な取扱いをするケースがある。

 そうなってくると、従来からずっと悩ましい問題ですが、二国間などで一時的に監督当局同士、こういった問題が発生しているので、そちらのほうの監督もしっかりやってくださいと、少なくともいうことはできるかもしれないが、収納代行業者がおよそどういった規制の下に入っているのかどうか分かりにくい状態になっている日本の状態というのは、世界的に見ると極めてレアなので、まずそこをどうするかというところを考えないと、それもできません。

 その上で私自身は、隔世の感があると言ったら変ですけども、やっと我が意を得たりというようなものが出てきたというふうに思っているのは、ようやく金融安定理事会による市中協議文書が出て、そして、ようやくご説明いただいたような勧告が出るようになりました。これはなぜそういう形になったかというと、過去においては電子商取引とか、そういったものが少なかった時代から、今二十数年たって、これが当たり前のようになってきた中で、ようやく各国それぞれが、我が国も含めてですけども、抱えている問題が共通化してきたということだと思うんですね。

 やはりそうなると、まず、各国それぞれがお互いに協力し合わないと、この問題を解決できないことは間違いない以上、おそらく少なくともこのFSBの場を通じて、日本としてどうするのか、そして世界のレベルがどうなっているのか、そしてなるべくならこういった問題が速やかに解決するための国際協力関係をどういう形で築いていくのか、そこがとても重要になってくるというふうに考えるわけです。なので、その意味でいうと、先ほどから申し上げていますけども、まず国内においてどういう定義づけにするのか、そして、それをもってして海外でどういうふうに考えてもらうかということを二重に考えていかないといけないかというふうに思っています。

 その上で、その次に前払式支払手段の寄附への利用ということに関して、基本的に反対はする立場ではないです。むしろ賛成なんですけども、ちょっと地域創生とか再生それと流通業とかについても関与している立場で言うと、寄附の現場では、今さら前払式支払手段でという感じなんですよね。コード決済がここまで普及する中、ドラッグストアで物を買うときに、そのついでにコード決済で余計に支払いをして、そして寄附したいとか、そういった人たちもいて、現実的にはそのニーズが結構高いです。今現在、例えばスーパーとかドラッグストアとかがそうですけど、じゃあおつりか何かを寄附してくださいといって、募金箱を置いたりなんかするわけですけども、今もうそもそもそういった場所の決済においてどれだけ現金使っているのということ自体が大分減ってきている中、別の方法での寄附のニーズとか、そういったものもあるわけです。

 ですから、前払式支払手段のみならず、一部の委員からもありましたけども、キャッシュレス寄附ってそもそもどういうふうにするのというところから考えて頂くという考え方が一つはありだと思います。その上で、じゃあキャッシュレス寄附なんだから、だから上限は幾らぐらいにしておくのが一時的な段階としては適当であろうというような考え方はあるのかなと思います。

 その上で、これは金融庁とは全く関係ないお話なのかもしれませんが、寄附の受取手という問題も、寄附を集めている立場からいうとあります。それは何かというと、例えば福島であるとか宮城であるだとか、そういうところで比較的大きな災害が発生しましたとなったときに、それは当然のことながら1つの場所で発生していません。つまり何が言いたいかというと、広域災害といったものが通常のケースになります。そのときに、1つの市町村がとか、県で集めるとしても複数の市町村にまたがっている場合、県が全部のものを一時的に受け取るということが若干県内の調整で困難になって、一般的に県と民間の団体が一緒になってつくっているような組織が受取手になる場合、そのほうがフレキシブルだから、寄附が行き届くからというケースもあったりします。

 なので、一時的な受取手の規制をするという場合のときに、実態的な寄附が幅広くかつ迅速に行く団体がどこなのかという見極めをしながら、この受取手の規制といったものも考えていかなければいけないと思いますが、反面、永沢委員からもありましたように、今まさにそういった団体自体のガバナンス問題が大きな争点になっていていますから、そのガバナンス問題も一方で考えなければいけない。となると、受取り手のその範囲をどこまでにするかというのは、あまり簡単な問題ではないように思っているというところがあります。

 そして、3点目の最後の国内保有命令ですけども、これは先ほども委員からありましたけども、そもそも国内保有って何という問題があって、こういった話は各国のレギュレーターとしても同じ印象を持っていると思いますけども、そもそも国内にどれだけのものがあるのというところが不明確だからこそ、この問題が発生する。少なくとも国内にあるということが分かっているものであるならば、それについてはこういった保有命令が出せることによって一定の解決がするならばいいんですけども、これはおそらく、全体的な仕組みから考えていくと、もしかしたら氷山の一角的なものにすぎないかもしれない。ここもまた、今回のFSBの流れの中に乗っけるかどうかはともかくですけども、やはり各国とも問題視している問題であって、ここも国際協力があって初めて成り立つ問題、初めて消費者保護が1歩なり2歩なり3歩なり大きく踏み出せるところでもありますので、まずここの部分は、賛成ではありますけども、これから先も国際間の協調体制をどうやって取っていくのかということと、それに合わせた規制を組み立てていくということが大きな課題になるというふうに感じております。

 以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 これで委員の皆様から一通り御発言を頂いたかと思いますけれども、例えば、他の委員の方のお話を聞いてさらにもう一言ですとか、あるいはオブザーバーの方からの御発言ですとか、あと15分ほどございますので、いかがでしょうか。

 では、坂委員。

【坂委員】 
 ありがとうございました。先生方の御意見を踏まえて、若干発言させて頂ければと思います。

 1つは、他の金融機関が介在する場合は規制対象としなくてもいいのではないかという御意見があったと思いますが、現在、詐欺等が発生している収納代行事案は、基本的に銀行預金を使ってやっていますので、他の金融機関が介在するようなものを規制対象外とすると、問題事案に対応できないと思います。それから、犯収法での対応をという御意見もありました。基本的に、犯収法の規制対象にするということも必要なんですけども、マネロン等を防ぐための体制整備ですとか監督体制がしっかりできないと、現在の問題状況には対応できないと思います。それから、悪質な主体は基本的に規制の隙間を狙ってきますので、規制対応するときに、できるだけ隙間をつくらないということが重要な観点です。もちろん先ほど来ご議論がありますとおり、いろんなサービスがある中で、例えば、一部を適用除外するということはあり得ると思いますし、規制内容の調整はあり得ると思いますが、現状に対応するためには、規制の隙間をできるだけつくらないことは必要と思います。

 それから、前払式支払手段の関係で加盟店管理のお話がありましたが、現状の加盟店管理は、消費者被害に対応する現場感覚で言うと、クレジットに比べてもかなり脆弱です。前払式支払手段の加盟店管理はむしろきちんと強化をしてほしいという声がかなり強い状況にあり、ここを頼りにして規制を緩和するというのは現実的ではないと考えます。

 それからあと1点だけ、発言の機会がなかったので、ここで一言ですけども、第二種資金移動業の上限額を引き上げるという御意見がありましたが、これには慎重であるべきと考えます。現状の使用額の状況を見る必要はあるかと思いますが、ここを現在の段階で引き上げるということについては慎重であるべきと思います。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、オンラインで新経連さん、あと全国銀行協会さんから御発言の御希望がありますので、その順でお願いします。

【新経済連盟】 
 新経済連盟です。発言の機会ありがとうございます。

 まず、クロスボーダー収納代行について申し上げます。事務局の方に実態把握をして頂いているところだと思うんですけれども、やはりちょっと実態把握がまだ全然足りていないなという印象を持っております。先ほど来いろいろな先生方からも意見がございましたけれども、今事務局から提示されている図、これがあまりにもシンプル過ぎるんですが、この図に従ってしまうと、今行われている○○Payと言われる店頭だったりオンライン決済だったり、あるいは旅行代理店、ECモール、決済代行業者、例えば海外のインバウンドから支払いを受け入れるための店頭決済でしたり、あとクレジットカードのアクワイアラーとか、こういったものが全部この赤枠内に入ってしまうおそれがございまして、しっかりと実態把握をした上で、先ほど来あるとおり、8ページの注書きにある事例の仕組みをちゃんと把握した上で、上との違いがあるのかないのか、あるとしたらどこに違いがあるのかといったことを考えたうえで、対象をかなり限定的に絞るべきだと思っています。

 8ページの上に挙げられているものは、通常の商慣習において今かなり広く使われているものだと思うんですけれども、そこについては、問題意識として挙げられている10ページに当てはめて考えたときに、支払人の二重払リスクというのは、以前から議論があるというお話もありましたけど、結局そこは今回避できていると思っていますし、資金決済の遅延等リスクも、収納代行業者、これは例えばECモールとかいろいろなものがあるわけですけど、どちらかというと間に業者を入れることで支払いを一本化して、むしろ入金サイクルを一本化して早くすることで、事業者、受取人にとってメリットが大きいようなこともあったりしますので、ここもちょっと違うんじゃないかと思っています。それから3番の利用者情報保護上のリスクも、そもそも資金決済法上の考えるべきことなのかということもありますし、間に入る事業者にわざわざ支払いの情報を渡すことになる危険性もありますので、いまいちつながらないなと思っています。4番に関しては、やはり今どういうところにリスクがあると感じているのか、リスクがあると把握しているのかをきちんと分析した上で、それの実態を細かく把握して対応したほうがいいと思います。

 国内と海外だと海外のほうが複雑みたいなことも書いてあるんですけれども、実はそうではなくて、国内のほうがいろいろな支払手段が発展しておりますので、すごく複雑にいろいろな事業者が絡み合って、ただ、最終的に効率よく受取人が受け取れるように一本化したりということで、それぞれ工夫して今成り立っているものがあります。通常の支払い、先ほど申し上げたようなECモールとか旅行予約とかがそうですけれども、そういったものは逆に、例えば海外の加盟店に支払うときには最後一本化されて、銀行送金ということになったりすることも多いので、そこ自体はシンプルだったりする可能性があります。ですので、実態把握をもう少ししっかりした上で、本当にどこにどういうリスクがあるのかというのをちゃんと振り分けた上で、しかるべきところに適切な範囲で、過剰にならないように規制を検討するという方向にして頂きたいと思います。

 それから、こういったクロスボーダーの決済にはクレジットカードが必ず利用されるわけですけれども、ではクレジットカード決済をそもそもどう考えるのかということに踏み込まずしてこの問題は解決しない気もしますので、そこをどう考えるのかもしっかり検討したほうがいいと思います。それがクロスボーダー収納代行です。

 それから、前払式支払手段の寄附ができるようにということですが、方向性としては賛同するところで、やはりニーズも高まっていますし、寄附文化を広げるためにも重要なことだと思います。ただ、受取人とか加盟店の制限に関しては、複数の先生からもありましたとおり、適切な寄附を広げるという意味で、限定し過ぎるとあまり意味のないものになってしまいますので、ここは慎重に検討して頂ければと思っております。

 それから暗号資産のところですけれども、小川委員からも同じような発言がありましたが、金商法並みの保護制度がもし必要なのであれば、暗号資産も金商法に位置づけられる金融商品なのではないかという観点での検討も必要だと思います。いずれにしても、資金決済法の中で閉じた議論ではなくて、暗号資産の法的位置づけを含めて、金商法も絡めて議論した上で最終的に整理する必要があるのではないかと思います。

 以上です。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、全国銀行協会さん、お願いします。

【全国銀行協会】 
 どうもありがとうございます。三井住友銀行の安地でございます。クロスボーダー収納代行と前払式支払手段による寄附の2点について、少しコメントさせて頂きます。

 クロスボーダー収納代行はリスクへの対応という観点で主に御議論頂いたと思いますが、本質的には健全な越境EC市場を伸ばすことが非常に大事だと思っています。その観点で少し申し上げますと、海外のプラットフォーマーや海外の越境ECが日本に来るときに、本当は日本の決済代行業者(PSP)が入っていれば1つ不安材料が減って、安心に取引できますが、残念ながら、現在の日本のPSP、我々決済事業者を含めて、グローバル対応が遅れています。我が国はPayの種類が多く、ガラパゴス化している中で、包括代理で様々なPayに対応でき、1社で全部取り扱えることを売りにして仕事を取るのが、日本のPSPの特徴です。一方、グローバルのPSPは、グローバルに展開するEC、小売、ブランドに、グローバルに一括で対応できますというようなバリュー・プロポジションで仕事を取って、日本に一緒に入ってきます。

 このため、日本に入ろうと思えばガラパゴス対応が必要なので、日本のPSPがそのようなグローバルなプレーヤーのアクワイアリングもできるよう、本来であれば後押しすべきではないかと思います。逆に言えば、その足枷にならないように御配慮頂けると良いのではないかと思いました。

 2点目の前払式支払手段による寄附は、非常に良いことだと思っています。単なるコメントになりますが、先ほども委員の先生からあったように、ポイントとの親和性が非常に高いと思っていまして、当社の例で言いますと、ポイントを支払いに充当するときに前払式に変換して、支払いに充てています。おそらく他のポイントも同様ではないかと思っています。このため、ポイントではありますが、形式的には前払式、当社はクレジットカードのプリペイドになるので、うまく使えば良いのではないかと思います。

 リスク管理の観点では、これも様々な委員の先生からあったと思いますが、誰かがアクワイアリングしているはずなので、アクワイアラーの加盟店管理が非常に大事になってくると思います。ここでも実績あるPSPが入れば安心ですが、新興の業者が出てきて、自ら単独でアクワイアリングして管理する例もあり、そのような場合にどうしても加盟店管理が甘くなっている可能性が否定できませんので、そこはよく見たほうが良いのではないかと思いました。

 以上でございます。

【森下座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、Fintech協会さんからも御発言の希望を頂いていますので、よろしくお願いします。

【Fintech協会】 
 Fintech協会の落合と申します。私のほうもコメントさせて頂きます。

 まず、クロスボーダー収納代行についてです。今回の資料の中でも、同じ活動、同じリスクについては同じレベルの規制監督が適用されるという議論を御紹介頂いております。資料の5ページの収納代行を念頭に置いた過去の議論の中では、井上先生がおっしゃられたところとも重なる部分あるように思いますが、特に事業者を債権者とするような代理受領の場合には、リスクが遮断されており、規制対象とは必ずしもされていないと認識しております。2019年の前回報告書の16ページ以下でも認めて頂いていたところだと思っております。

 またもう一方、エスクローサービスについても、前回の決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループの中でも、17ページなどにおいて、個人間における物品の売買等の取引に際し、当事者双方の債務の同時履行を図ることにより、当事者間のトラブルの未然防止の機能があり、債権者、債務者双方がその利点を享受しているといったようなことを御紹介して頂いております。今回お示し頂いている類型の中で、プラットフォームのサービスの中にはエスクローと言うべきものもあり得るかと思いましたので、こちらの前回報告のほうで整理をされている内容も踏まえて、ぜひ規制の対象については御議論頂きたいと思っております。

 特にこの際にも議論があったことだったと思いますが、規制対応のコストというのが、必ずしも金融を中心とするわけではない事業者が対応していく場合にかなり大きくなってしまい、結果としてはサービスの提供を中止することにつながる場合もあるように思っております。そうしたときに自ら個人で、特にそういったサービスなく取引に入っていくことになり、CtoCサービスなどの話の際についても議論されたと思いますが、そういった点が出ることは前回の金融審でも議論されたことでもあります。ぜひ今回のクロスボーダーの場合でも、実際に個人が後で個人的に解決しにいくことはなかなか難しい部分もあろうかと思いますので、こういったエスクロー等の機能が提供されることについて、経済的な観点や事業性の観点からもしっかり検証して頂ければと思っております。

 こういった中で、最終的には規制のコストや、先ほどの受領代理によりリスクが合理的に遮断されているかといった点を考慮して、規制対象についてはまず明確にして頂くことが大事かと思います。法令、政省令ともに非常に難しい点が出てくると思いますので、しっかり実態を把握して頂きながら議論を進めて頂きたいと思っております。また、こういった規制対象になる場合でも、銀行、資金移動業者が関与するような場面や、債権者のグループ内での取扱いの場合など、しっかり適用除外についても御整理を頂きたいと思っております。

 第2点といたしましては、前払式支払手段の寄附への利用についてです。利用できる範囲や上限額の設定は、推進の施策でありますので、寄附が実際に推進されるような範囲になっていることが重要ではないかと思います。資料でも御言及頂いておりますが、寄附の対象者としては税制上の優遇を受けられる範囲を御考慮頂いているかと思いますが、本日の御議論でも少しありましたが、例えば震災等の場合でも義援金等に関する税務上の取扱いなど整理されていることもありますし、そういった災害等における助け合いでなどもあると思います。利用できる範囲を考えて頂くに当たり、通常の税法上の一般的な税制のみではなく、臨時の場合にもどう利用できる余地があるのかもぜひ御検討頂きたいと思っております。

 また、上限額につきましてですが、内閣府の2022年度の市民の社会貢献に関する実態調査報告書という、寄附の取組みに関する報告書等がございます。その17ページにおいては、寄付額が0円のものを含めると1万円を下回る統計金額になってございますが、0円のものを除くと大体2万9,449円となっております。世帯ごとにおいては4万2,880円となってございます。一方で年間の寄附回数については、1回のみとする場合が約33.4%ということでありますので、そうすると今後、寄附の増進といったようなことも考えていきますと、5万円程度を想定して頂くこともあり得るのではないかと考えております。他方でリスク管理も非常に重要な点になっておりますので、受領者の加盟店管理の対象としていくといった対策は、必要な対策であると我々としても感じたところです。

 最後に、資産保有命令の点に関してです。これは、利用者保護の観点を最大限図っていくことは重要であると思っております。安心して暗号資産や電子決済手段を利用できる環境にあることは、この分野での利用者拡大や、またFintech協会でも、本日海外のほうに来ておりますが、そういった中で海外の事業者の方からも、やはり日本のしっかりした制度を使って事業の基盤を整えたいというような話に接することなどもあります。利用者の保護拡大と、日本の法制自体がそういった保護を図っていることを、メッセージとしてしっかり出していくことが、最終的に事業者にとっても安心して事業ができる環境を整えていくことにつながる側面があるのではないかと思っております。

 以上でございます。

【森下座長】 
 ありがとうございました。それでは、よろしいでしょうか。

 ほぼ予定の時間となりました。まだ御意見あるかもしれませんけれども、本日はここまでとさせて頂ければと思います。

 本日頂きました御説明や御意見を踏まえまして、今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 最後に、事務局から連絡事項などがありましたらお願いします。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】 
 次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【森下座長】 
 それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了します。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


(参考)開催実績

お問い合わせ先

金融庁 03-3506-6000(代表)

企画市場局総務課信用制度参事官室(内線:3572、3556)

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