金融仲介の改善に向けた検討会議(第12回)議事要旨

議事要旨

1.日時:

平成30年3月14日(水曜日)9時45分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議題:

「地域金融の課題と競争のあり方」について

4.議事内容:

日本銀行金融機構局による「金融機関の競争に関する分析」の説明、事務局による「地域金融の課題と競争のあり方」の説明に続いて、以下のような議論が行われた。(○:メンバーの発言、●:当庁の発言)

  •  ○ 金融産業政策的な観点からすると、地域銀行の合併によって、従来の低金利競争から付加価値の高い金融サービスへと競争軸を移行させる方向に持っていくことができるのであれば、本件は、金融庁が目指している望ましい競争環境の実現に資する、すなわち競争促進的な側面を持ち得ると解釈できるのではないか。
  •  ○ 「金融機関にコミットしてもらって金融庁がモニタリングをする」という考えは、金融行政の新しいツールとも言える。これを条件とすることで、金融庁は競争軸を移行させるための新しい方法論を得ることになるのではないか。
     
  •  ○ 銀行については「intermediate level of competition」が良いというIMFのワーキングペーパーでの指摘が取り上げられているが、それはどの業態でも言えることで、「intermediate level」の程度をどこに設定するかということが問題なのではないか。
  •  ○ 競争政策上の地域の設定について視野を広げることが必要である。「東北」「九州」といったレベルに視野を広げて物事を考え、地域に行政の主体性を与えるぐらいのことを行っていく中で解決していく問題ではないか。
  •  ○ 金利低下の要因は、競争環境だけではなく、実需がないところに融資を行おうとする経営を行っていることも大きいと考えている。
  •  ○ 経営統合を前向きに考えると、それを逃げ道にしてビジネスの改善を疎かにする経営が横行するリスクが常にある。統合を進めるにあたって何を目的にするかをきちんと議論させ、方針決定させるモニタリングを行ってくことが重要である。
     
  •  ○ 日本銀行の異次元緩和により銀行は有価証券運用による利益確保が難しくなったため、全国的にも県域を越えて貸出を伸ばす動きが加速したと考える。
  •  ○ 長崎県の優良企業に話を聞くと、当事行が合併を公表したことにより、将来的に1行取引となることを避けたいと考える企業や、銀行の優柔不断なスタンスに嫌気がさして他県の金融機関との取引を開始したと聞いている。
  •  ○ 数字として企業動向に表れてくるのはほとんど優良企業の動きである。銀行がレイジーバンク化しているため、ミドルリスク層が議論から抜け落ちている。ミドルリスク層は、企業間信用で凌いでいる状況であるが、長崎県の一番の問題はそうした層の受け皿がないということである。
  •  ○ 競争政策の議論においては、ミドルリスク層の受け皿の有無が重要である。地域銀行が合併して1行になるといっても、優良企業は、県外であろうがどの金融機関とも取引できることから、本件の議論とは関係のない話である。
  •  ○ 信用金庫や信用組合のようにシェアードサービスをしっかり行っている地域金融機関は、顧客接点を維持し、身の丈にあった経営を行えば、十分に存続できるはずである。
  •  ○ 長崎のように様々な事情で信用金庫、信用組合が実質1~2機関になってしまった地域においては、究極的には協同組織金融機関の再構築を行わなければ、議論は進まないのではないか。
  •  ○ 信用金庫は大きくなっていくことが当然の流れとしてとらえられているが、寧ろ小さくても各地域に作っていかなければならないし、そのためにもシェアードサービスをしっかりやることが重要である。
  •  ○ 長崎においては、ミドルリスク層を誰が対応するのかが問題である。日本政策金融公庫の国民生活事業はそれなりに対応しているようだが、外国人株主が多いメガ型の地銀傘下の銀行は過疎地やミドルリスク層への対応がどうしても厳しくなる。
  •  ○ 当事行の一方は、合併により生じる500人の余力をミドルリスク層や離島などに振り向けると言っているが、株主サイドから見ると、リストラ又は福岡での営業に振り向けるべきとなる。これは株式市場の論理からは当然の話である。
  •  ○ 今から信用金庫を作れるわけではないので、当該行にミドルリスク層・離島などへの対応をさせるしかないが、行政として対応を考えるべきである。
  •  ○ 協同組織金融機関は小さいからだめということではなく、シェアードサービスをしっかりすれば、中途半端な地域銀行よりも遥かに効率的である。我が町の金融機関を再構築し、ネットワークを作るべきではないか。
     
  •  ○ 同一地域内の経営統合では寡占・独占が問題となるが、従来の県単位のシェアではなく、道州制の様な、より大きな経済単位で検討する必要があるのではないか。
     
  •  ○ 市場競争における競争軸は、時代とともに変化しており、公正取引委員会の完全競争市場に基づく議論ではもはや対応できない。多様化する競争社会に競争政策がいかに対応していくかというのは、極めて現代的な課題であり、一国の経済成長を決定付けるものとなりうる。
  •  ○ 経済圏はビジネスによっては県単位ではなく旧藩単位で考える必要があり、逆にもっと広いものもあり、県単位で貸出金等のシェアを検証することは不適当である。また、過当競争問題は、日本の競争政策における失敗から起こったものであり、企業の体質面の問題として議論することもまた不適当である。
  •  ○ 金融業のみならず、あらゆる業態が公共財的性格を持っている。この性格を無視して競争政策を策定し、完全競争を追及すれば、企業は利益が生まれない地域から撤退してしまうだろう。今後、マクロ経済政策においても必ず同様の問題が起こってくる。公正取引委員会と各官庁は連携して競争政策の策定にあたる必要がある。
     
  •  ○ 県単位の行政が限界に来ており、これをどのように見直していくかが問題である。市町村についていうと、合併により市町村の単位を変えるということはやってきたが、それだけでは追いつかなくなっている。しかし、県も市町村と同じように合併していくかというと、それは相当な体力を使う話であり現実的ではないため、競争政策の内容を時代にあったものにしていくべきである。
  •  ○ 経営統合によってどういうことを目指すのかを押さえておくことが重要であるため、金融庁で事後のモニタリング等を行うことは非常に重要である。
     
  •  ○ 金融機関の参入障壁や参入コストが下がってきていることを競争当局に説明し、参入可能な環境ができていることを世の中にも周知すべきである。
  •  ○ ミドルリスク層に信用保証制度が利用されることが多いが、仮に銀行が無下なことを言ってもそのデータは保証協会に行くため、保証協会と中企庁と金融庁がうまく組めば、銀行の無茶な要求を止められるのではないか。
  •  ○ 各地域で融資謝絶を受けている先にとって地公体の制度融資がセーフティネットとなっているなど、政府系金融機関以外も含め、競争環境を是正できるものがまだかなり用意されている。このほか、金融庁が合併認可を行う際にも、例えば、地域の利益を代表するような社外役員を入れることを条件に認可するということで、制度的に担保することも考えられる。
     
  •  ○ 経営統合により寡占・独占のおそれがある場合、金融庁が事後的なモニタリングを行う施策は、適切な制度設計、監督当局としての適切な関与の下であれば、信頼性が認められ、独禁法の先例(東証・大証の経営統合)や独占禁止法の趣旨に沿うと考える。
     
  •  ○ 借り手である中小企業自らが様々な金融機関に融資条件等を問うことができる方法も必要ではないか。競争状況がどうなっているかを金融機関だけでなく、借り手からも、金融庁にはヒアリングしてほしい。
  •  ○ 経営統合した後も県外からの参入ができるようにしたり、県内でも新規の信金信組を作りたいという要望があれば支援することにより、競争を促すことが必要である。
  •  ○ 各地域でリスクマネーの提供ができなければ、その地域は活性化しない。銀行による貸出だけでなく、ふるさとファンド等のリスクマネーがそれぞれの地域で提供され、それにより新規企業が起こり、その企業の経営が順調にいけば、そこに銀行が貸し出しを行う、というサイクルがうまく機能する市場が必要である。
     
  •  ○ シェアの問題について、県境が曖昧になる中、県単位で考えるべきかが論点になると考えられる。
  •  ○ 地域金融機関は、人口問題といった構造的な要因で利鞘が縮小し、また、マークアップ(金融仲介における価格決定力)も小さくなり、追い込まれた状況にある。こうした現在の我が国の状況と、アメリカ、オランダの統合審査の事例を、どのように照らし合わせていくのかを考えなければならない。
  •  ○ 長崎のマーケットを分析すると、マーケットの規模が小さいことから収益が小さく、事業費とバランスしていない。構造要因である人口減少は今後も続く中、それを差し引いても、合併を検討するいいタイミングではないか。
  •  ○ 民間企業に委ねられていることでもあり、適正な収益を取れないところでいくら頑張れといっても、何もできないのではないか。
     
  •  ○ 経営統合先に対する金融庁による事後のモニタリングについては賛成する。ただし、モニタリング方法については、数字だけではなくガバナンスを重視、抜本的構造改革を踏まえた計画策定、硬直的にならず柔軟に対応、等に留意し、議論すべき。
     
  •  ○ 日本銀行からの報告のとおり、地域金融・金融行政と競争政策の関係は国際的にも議論がある。
  •  ○ 各メンバーの意見を踏まえた上で論点を整理し、報告書としてまとめていく必要がある。引き続きご協力いただきたい。
     
  • 最後に、本日の議論を踏まえた越智内閣府副大臣の挨拶
     
  •  ● 本日、ご指摘いただいた人口減少等の環境変化、デジタル化の環境変化の中で競争政策をどう考えるかについては大きな問題であり、成長戦略の担当として、重く受けとめております。ここでの議論は、地域金融の分野における競争政策のあり方を考え、深めていくという点において、とても重要な意義があります。こうした深いご議論をいただいていることに心から感謝を申し上げたいと思います。

以上

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監督局地域金融企画室

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