金融仲介の改善に向けた検討会議(第15回)議事要旨及び配布資料

議事要旨

1.日時:

平成30年11月13日(火曜日)15時00分~16時35分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議題:

「平成30事務年度における地域金融行政の進め方」について

4.議事内容:

遠藤金融庁長官の挨拶

  •  ● 地域金融機関の金融仲介機能の発揮に向けた取組みについては、これまで委員の皆様方から貴重なご意見を頂きながら、金融庁としても様々な施策や枠組みを構築してきた。
  •  ● 今事務年度は、これらの枠組みや施策を総動員して実行に移すフェーズであると認識している。金融仲介機能の十分な発揮を通じて、地域企業・地域経済の生産性向上という大目標に向けてしっかりと歩みを進めてまいりたい。
  •  ● これらの枠組みや施策の例としては、まずは金融仲介機能のベンチマーク(以下、「ベンチマーク」)が挙げられる。ベンチマークは策定・公表から2年超が経過し、手元には3期分の指標が集まったことから、分析指標としての有用性がかなり向上したと考えている。加えて、企業アンケート調査にも3年連続で取り組んでおり、調査結果からは、金融機関による取組姿勢に一定の改善の兆しが窺える。これらを用いることで各金融機関の金融仲介の取組みの進捗状況に関して分析することが可能となったことから、これらを基にして地域金融機関とより踏み込んだ議論ができるようになるのではないかと考えている。
  •  ● 今事務年度は、地域の実態をよりきめ細かく把握し、地域金融機関の経営陣と深度ある対話の実践に取り組んでいきたいと考えており、その手段の1つとして、地域生産性向上支援チームを組成した。地域の実態を当庁としても把握し、把握した実態と地域金融機関が認識している状況とをすり合わせながら、単に地域金融機関の取組みに関する議論に止まらず、顧客企業への金融サービスを通じた地域経済の活性化や地域企業の生産性向上にどのような意識を持ちながら取り組んでいるのかについても議論していきたい。
  •  ● 金融仲介に関する対話やモニタリングの手法については、金融庁としても開発してきたが、未だ確立したものがあるというわけではない。さらに言えば、根本の「望ましい金融仲介のあり方とは何か」という問いに答えることも容易なことではない。
  •  ● 今事務年度は、こうした課題の解決に皆様方のご意見を十分に参考にさせて頂きながらチャレンジしていく年としたい。様々な施策を通じて、金融仲介に関する対話やモニタリング手法を確立するとともに、有識者や業界団体のご意見を伺いながら、望ましい金融仲介のあり方を突き詰めて考えていきたい。地域の実態を踏まえた、手ざわり感のある意見交換を委員の皆様ともさせていただきたい。
     

事務局による「平成30事務年度における地域金融行政の進め方について」の説明に続いて、以下のような議論が行われた。(○:メンバーの発言)
 

  •  ○ 金融仲介機能の十分な発揮を促していくため、地域金融機関との深度ある対話とそれに向けた取組みについて、ぜひ頑張っていただきたい。その際には、金融庁と財務局との間で「深度ある対話とは何か」という共通理解・目線合わせが重要である。また、地域金融機関の頭取と深度ある対話ができる人材の確保という観点からは、教育も重要ではあるが、外部人材の採用も含めて検討するなど、新たな視点からの取組みも必要と考える。
  •  ○ フィンテックが地銀業界に与える影響について、地銀は、様々な企業とのアライアンスによりフィンテックに取り組んでいるものの、結局はバリューチェーンをアンバンドルされて、いいところを全部持っていかれてしまうのではないかと懸念している。
  •  ○ 最近のフィンテック事業者は管理会計や確定申告等、利便性の高いBtoBサービスを提供しており、おそらく多くの地銀も利用していると思うが、そこで得ている顧客接点に関する情報の所有権はどうなっているのか。顧客フロントの情報が全部とられてしまって、最後、付加価値を取りに行こうと思ったときに地銀が動き得る余地が狭くなってしまうということはないか。
  •  ○ キャッシュレス化が進んでいくと、このような流れはおそらく加速するだろう。その結果、地銀のバリューチェーンが完全にアンバンドルされて、地銀業界のサービスがコモディティ化されてしまい、最終的に下請になっていくというシナリオも有り得る。
  •  ○ フィンテックが進むこと自体は良いことだが、それが地銀業界や産業構造にどのような影響を与えるのかについて、当局で検討した方が良いのではないか。
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  •  ○ 地銀において顧客本位の活動や本業支援を行うことに対する障害となっている重要な課題の1つに、現在の地銀の評価指標が数値目標に重点を置きすぎていることがあると感じている。仮に、銀行の上層部が素晴らしい経営理念を唱えていたとしても、定量評価を中心にした目標の達成に重点を置く役員も多く、営業現場まで行き亘りづらい状況にある。
  •  ○ この原因は銀行のコストにあると考えている。コストが高いうえに、下げることができないでいるため、顧客本位の取組みに舵を切った場合に、トップラインが崩れひいては赤字になってしまうのではないかと経営陣が疑心暗鬼になり恐怖心を持っている。したがって、口では色々言っても、本質的には、従来の営業手法からの脱却が全く図れていないと感じている。
  •  ○ そのため、顧客本位の取組みに本格的に舵を切り、トップラインが少々崩れてしまったとしても踏みとどまれるよう、地銀はコスト面を改善させることが必須だと思っている。地銀のコスト削減余地は相当あると見ている。また、日本の産業全体の生産性が低い中にあって、地銀は他の産業と比較してさらに生産性が低いと感じている。したがって、人件費も含めて、抜本的なコスト削減をしていかなければならないと思う。物件費やシステムに関する固定化されてしまっているコストをどうするかも大きな課題である。
  •  ○ 地銀で働く者の大多数は、今後、日本の経済や地域経済が悪化していくことは理解しているが、悪化のスピードは緩やかであり、当面このままでも経営に致命的な影響が出るようなことは起きないと強く信じている。つまり、今やっていることを大きく変えなくとも、自分が働いている間は、別に困らないのではないかという考えが染み付いていると感じる。地銀の改革においては、このような背後にあるメンタリティについて理解しないとなかなか進まないのではないかと危惧している。
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  •  ○ 今事務年度は、時間軸を意識したモニタリングをしていくという説明があったが、地銀の中間決算を見ると、土俵際と感じる地銀が多く、今後、健全性の改善に向けて比較的短い時間軸を意識した対応が必要となる銀行が増えていくと感じている。
  •  ○ 金融庁も限られた人員での対応となるため、オンサイトモニタリング・オフサイトモニタリングを使い分ける必要があり、健全性に関するオンサイトモニタリングについては、これらの銀行に対して集中的に対応すべきと考える。比較的体力のある地銀の健全性については、長い時間軸を意識して金融仲介機能の発揮を促していく中で確認するのがよいのではないか。
  •  ○ 健全性に関するモニタリングに当たっては、財務データのみではなく、例えばコンティンジェンシープランに顧客本位の業務運営の観点が含まれているか等、市場環境・経済環境の急激な変化への対応についても、フォワードルッキングに見ていく必要がある。
  •  ○ 金融庁のこれまでのモニタリングは、プルーデンスに偏ってしまっているようにも見えており、今事務年度の方針説明でもあったように、ぜひ金融仲介と健全性のバランスのとれたモニタリングをしていただきたい。
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  •  ○ 地銀については、様々な施策を自ら考え、持続可能なビジネスモデルを構築していこうという動きにはなってきているが、金融機関は横並び意識が強く、独自性をなかなか出せないというのが現状である。例えば、事業性評価融資についても、金融緩和や中小企業の経営環境の改善という金融環境も踏まえ、横並びで取り組んでいる印象であり、リスクをとって真剣に取り組んでいるかという点については疑問が残る。
  •  ○ このような中では、ベンチマーク等の指標が策定され、その取組状況が検証できるようになったため、地域金融機関との対話が重要な意味を持つだろう。対話は、トップヒアリングだけではなく、複数のレイヤーで行っていただきたい。
  •  ○ 地域生産性向上支援チームを組成し、地域企業・経済の実態把握をしていくという方針について、地域企業の支援関係者とも対話を行うこととしているが、支援関係者のベースには補助金を使って何かをしようという考え方が根底にはある。したがって、そのような点を変えていかないと、地域の中で何をしていくのか議論や検討をしても、独自性が発揮できない可能性がある。支援チームには期待しているが、このような事情からなかなか難しいのではないか。
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  •  ○ 地銀の人材確保について、これまでは待っていても優秀な人材を確保できていたと思う。しかしながら、現在も年間で12万人もの人材が東京に流れてしまっており、人材の確保に苦戦していると聞く。優秀な人材を確保することは潜在成長力の源泉であり、地銀の頭取にはこのような現状に危機意識を持っていただきたい。
  •  ○ 採用については、都心からUターンで戻ってくる優秀な若手も相当いるので、新卒に拘らずこのような若者の中途採用も積極的に行う等、多様な採用形態を戦略的に採っていかないと地銀は足元から崩れていくだろう。
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  •  ○ 地銀の収益力が落ちているという事務局説明があったが、同時に、地銀・信金の自己資本比率の低下傾向が出始めている。この要因としては、リスクアセットが大きく伸びている割に収益が積めていないことなどが挙げられる。
  •  ○ 金融システムのリスクへの対応とマクロプルーデンスの観点を踏まえたリーマンショック時の反省からは、景気悪化時に備え、好景気時になるべくバッファーを積んでおかなければならないが、自己資本を積めていない現状はこれに反している。早期警戒制度の検討も含め、早期の経営改善を促す施策について考えていくことが重要である。
  •  ○ ベンチマークを開示していない銀行もあるということだが、策定時の趣旨の1つとしては、企業が取引金融機関を選ぶ際の判断基準として、金利以外の指標でも選べるよう、地域金融機関に自発的な開示をしてもらおうというものである。したがって、開示していない地銀があるのであれば、例えば、「Aという指標は開示されていないが、より深いBやCという指標が開示されていてよく理解できた」と企業が思えるような、納得のできる説明が必要ではないか。
  •  ○ ベンチマークを活用した分析について、事業性評価融資に積極的に取り組んでいるにもかかわらず十分に収益が出ていない地銀があるという説明について、今後データが集まってきたらその要因を考えなければならない。例えば、銀行の考える事業性評価が上滑りなものなのかもしれないし、企業側も事業をよく見て貸してもらえたと思っているのに金利が低下しているのであれば、競争環境であるのか、あるいは、金融機関の固定概念で高い金利がとれないと思っているだけなのか、などの要因が考えられる。
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  •  ○ 2期以上連続して本業赤字の地銀の割合が年々上昇し、中には5期以上連続して本業赤字の地銀もあるということであったが、金融機関以外の業態ではあり得ない。公的機構等を活用し、業界全体を変えられるような仕組みをつくる、少なくとも議論をするというタイミングに来ているのではないかと思う。
  •  ○ 金融仲介機能を高めるためには、フィンテックや他業者の参入は歓迎すべきである。それらとの適切な競争により、金融仲介機能が高まっていくという形に持っていかなければならないと考える。
  •  ○ 経営者保証ガイドラインの活用について、保証を徴求する代わりに、担保できるような書類やコベナンツがないとなかなか進んでいかないのではないかと感じている。
  •  ○ 未来投資会議では地域の施策についての検討が行われており、足元では、地方銀行について議論があったようであるが、特殊なスキームをつくるのか、あるいは透明性のあるルールをつくるのか等、どのような動きを見せていくのかについて注視し、施策に反映していただきたい。

以上
 

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