金融仲介の改善に向けた検討会議(第16回)議事要旨

議事要旨

1.日時:

平成31年1月21日(月曜日)9時00分~10時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議題:

・金融仲介の発揮状況に関する「見える化」の進め方について
・企業アンケート調査について(平成29年度調査の振り返りと30年度調査の方針)
・金融庁における地域銀行のモニタリング態勢の変更について

4.議事内容:

事務局による説明に続いて、以下のような議論が行われた。(○:メンバーの発言、●:当庁の発言)

  •  ○ 金融庁が地域金融機関と対話する際には、我々が共通言語と考えている「経営」や「戦略」といった言葉が何を意味しているかということをまずは確認しないと、話がすれ違う可能性がある。例えば、銀行の中期経営計画を見たときに「戦略」という言葉は躍っているが、内容を見ると実は戦略になっているものはほとんどない、ということがある。地域金融機関の経営者は、経営環境が変化している中で、どちらに舵を切るべきか、もしくは、今、行内にどのような構造的な問題があるのか、という経営に関する議論をせずに、(経営の話をしているつもりで実は、)細かい執行の話ばかりをしている経営者が多い印象がある。
  •  ○ 具体的な対話に当たっては、銀行のボードが金融仲介機能のベンチマーク(以下、「ベンチマーク」)の結果を見ながら何を議論しているのか、ということを考えながら対話した方がよい。恐らく、ボードが機能している銀行であれば、ベンチマークが示唆しているものは何か、当行にどのような経営課題があるのかということを推察し、それを構造化した上で、当行として何をすべきかという議論をしているはずである。
  •  ○ 経営について議論せずに、細かい執行の話ばかりをしている経営者が多い、という他メンバーの意見について、それは金融機関に限った話ではなく、日本の企業社会の深刻な問題だと思っている。事務ができる人は多くいるが、ものを考えられる人が本当に少ないと感じている。
  •  ○ 日本の高度経済成長期の教育、あるいは社会人や企業の人材教育の弊害だと思うが、新卒で採用して、平等に様々な業務を経験させる中で、業務教育はされるが、経営教育が全くされていない。業務教育の中で優れた結果を出してきた人材が役員になり、そうした人材は、業務の話はできても、経営という概念そのものが分かっていないという印象がある。
  •  ○ オーナー企業の経営者の場合、引退してもその財産価値を毀損しないように長期的に経営を考える。他方、銀行に限らず、一般企業の場合は、経営者に任期があるため、経営者自身も社長という業務執行を頼まれているだけなのではないか、と感じることが多い。そうしたことから、経営者には、まず、経営と執行を分け、長期的に考えるように言っている。
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  •  ○ 共通KPIについては、昨年6月の金融仲介の改善に向けた検討会議で議論があったと記憶しているが、その際には、ベンチマークによる対話を積み上げてきた中、そこに横串を入れて見るというのは屋上屋を重ねることになるのではないかと率直に思った。
  •  ○ 金融仲介機能の発揮状況について横串を入れることについては、金融機関側から、地域特性や規模の違い等を理由として、横並びでの比較は困難という意見が出てくると思うので、非常に難しいと思う。
  •  ○ 地域特性など横串が入れづらいところについては、企業アンケート調査でカバーできると思う。地域特性の差異に関わらず、顧客からの評価が低い金融機関は仲介機能が十分に発揮できていないのだろう。そういう意味で、比較可能性というのは様々な方法で担保できるので、共通KPIで下手に横串を刺すことになっては良くない。まずは共通ベンチマークを時間軸・時系列で見ることが重要ではないか。
  •  ○ 経営に問題があることにより、多くの早期退職者が出て、ヒューマンアセットの崩壊が起きている金融機関があると聞く。今回の議題ではないが、早期警戒制度等を考えるにあたり、ヒューマンアセットの問題は非常に重要と考えており、金融庁のモニタリングにおいてもヒューマンアセットがどうなっているか、ということに踏み込んでいただきたい。
  •  ○ 経営トップがスタッフを集めて経営戦略を伝達した後、それを活発に議論して活性化しようという動きはなかなか生まれてこない。特に金融機関については、経営のトップ層が執行権限をスタッフに下ろしても、下ろされたスタッフは自分の権限という認識をなかなか持たず、上の様子を見ながら仕事をしているように感じる。
  •  ○ 地域銀行の共通ベンチマークは約9割開示されているとのことだが、顧客側は金融機関が開示していることをおそらく知らないのではないか。顧客が開示されていることを認識している状況にしなければ、他行と比較できるよう「見える化」するのは難しいのではないかと思う。
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  •  ○ 地域銀行の共通ベンチマークが約9割開示されているとのことだが、まだ開示していない銀行は、どのような考えでいるのかと驚いている。
  •  ○ KPIの一般論ということで申し上げたい。地域金融機関は、KPIを様々な場面で作って活用しているが、数値自体が目的化していないかと心配している。KPIの策定のプロセスが非常に重要であって、そこで捨てられた議論や、数字に表れていない背景をどれだけ意識するかが重要だと思う。
  •  ○ 更に、KPIの策定にあたって込められた精神や背景を、一般行員にまで伝える努力や工夫をしているかが重要であり、そのような点を対話の中で見ていく必要があるのではないかと思う。
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  •  ○ 金融仲介機能の発揮度を「見える化」するにあたって、地域の多様性や業務の複雑性を考えると、共通KPIの設定により、金融機関の行動を歪めるおそれが高いと思う。むしろ地域銀行の金融仲介は、自由度の高いベンチマークによる定量評価を活用しながら、定性的に評価していくべきものではないか。
  •  ○ ベンチマークについては、金融機関や指標によって掲載されている場所が違い、どこに開示されているのか分からないという問題がある。ベンチマークを設定したときの目的の1つが、顧客に地域の金融機関を見てもらう、取引のない金融機関がどのような取組みをしているか知ってもらう、ということであったはず。しかし、現状では探すのも大変であるため、せっかく開示するのであれば、金融機関はより分かりやすいところに掲載すべきと考える。
  •  ○ ベンチマークについては、例えば、高い数値を出していても、企業アンケート調査で顧客評価が低い金融機関については、金融庁がそのベンチマークについて深度ある対話を行い、このような定義はよくないとか、他メンバーが言うように、KPIの数値自体を目的化することなく、銀行としての最終的な目標を達成するのにふさわしいベンチマークの内容にすべき、といったことを伝えてもいいのではないかと思う。
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  •  ○ 他メンバーから話があったが、ほとんどの地域金融機関で経営的な議論・活動がなされていないのではないか、という点については同感。経営者自身が判断を先送りにしており、そこには、現状ではまだ経営が悪くなっていないだろうという楽観的な思い込みがあるのではないかと思う。
  •  ○ 会計上の利益はマイナスという銀行は限られているかと思うが、本業利益については、過半数の地域銀行が既に赤字に転落している。本業利益等を、金融機関経営のKPIという形で明示して、それに基づいて金融機関に対するモニタリングができるような仕組みを検討してみるのも、これからの課題ではないかと思う。
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  •  ○ 他メンバーからの話もあったが、金融仲介機能の発揮度について、比較可能性、客観性という観点もあるが、あまりそこに引っ張られて下手な共通KPIを作るのは良くないのではないかと思う。ベンチマークを積み重ねていき、その趣旨を定着させていくことが大切で、ベンチマークに規模や特性、企業文化など、その他の定性的な要因を入れる、といった議論があってもいいのではないかと思う。
  •  ○ 企業アンケート調査の結果について、出し方にもよるが、積極的に金融機関に還元することも重要なことではないかという印象である。
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  •  ● 共通ベンチマークを開示していない地域銀行があることについては、それなりの理由があり、例えば、経営戦略・経営陣が自社の方針との整合性を説明できないためといった積極的な理由もあれば、テクニカルに数字が計測できないためという技術的な理由を挙げる銀行もある。
  •  ● 地域銀行にベンチマークを100%開示させることに当庁がエネルギーをかける、ということも1つの施策としてあるかもしれないが、ベンチマークの開示をできない、しないことも含めてその金融機関の現状と理解すべきと考える。
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  •  ○ 最近では、経営者が経営を放棄する「経営逃亡」というような事象も出てきているように感じる。
  •  ○ これまでは合併という話が出ると、お互いの覇権争い、といったことでエネルギーを使っていた印象だが、最近では、片方の経営者が経営を放棄して、退職金をもらって出ていくような事象も起こっている。経営者のそのような発想は、従業員や地域の顧客にとってはたまったものではないと思う。
  •  ○ これまでは収益が上がっていたため、経営者による「経営逃亡」といった事象は起こっていなかったが、最近、経営者の中には、自行の収益が上がらないことから、自分には経営能力がないため経営を放棄してどこかと合併してしまえばいい、という発想に至る者も出てきており、そのような事象が起こっていると思われる。
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  •  ● 本日の議論では、経営とは一体何か、経営が本当に行われているのかということが1つのキーワードになっていたと思う。それについても我々は非常に大きな問題意識を持っており、「金融行政のこれまでの実践と今後の方針」において、地域金融機関と経営について議論しようということを大きく打ち出している。
  •  ● 経営に関する議論というのは、例えば、主任検査官が検査の結果を経営陣、経営トップに伝えて様々な項目について事務的に意見交換をするのではなくて、経営のあり方というものに関して、その地域金融機関の経営トップはどう考えているのか、それについて取締役会でどのような議論を行っていて、それを踏まえて、今、どのような方向性にあるのか、ということについて正面から議論することだと考えている。したがって、金融庁としても、それぞれの地域において期待される地域金融機関の役割と、そこで求められている経営とは一体何なのかということについて、様々な分析をもとに、トップ同士で議論をしようと思っている。
  •  ● また、経営戦略を実行するための態勢等については、取締役会、特に社外取締役等を中心として議論させていただき、また、営業現場においては支店長あるいは営業職員とも議論していきたい。さらに、そのような議論の結果を経営トップにフィードバックするというような形で、継続的に議論していかなければならないと思っている。
  •  ● 従来のトップヒアリングは、財務局長が年に1回か2回、経営トップと議論してきたが、これは事前に作成した数多くの質問票に基づき質問を行ってきたもので、これでは全く意味がなく、今後は継続的に議論しなければならないと思っており、財務局長だけではなく、当庁も一体として取り組んでいこうと思っている。
  •  ● 本日ご指摘があったような、ベンチマーク、ヒューマンアセット、本業利益の赤字等に関しても、経営トップとの議論の中で取り上げていきたい。
  •  ● 金融仲介機能の発揮度の「見える化」ということに関しては、本日、いたずらに屋上屋を重ねるような形で新しい定義、共通の定義を使ったKPIをつくるのではなくて、これまで積み重ねてきたベンチマークをさらに深めるべきだ、というご意見をいただいたと認識しているが、我々もそういう方向でやっていきたいと思っている。
  •  ● それとともに、ベンチマークの顧客への周知度合いや、ベンチマークがどこに開示されているかについても、我々が調査して苦言を呈することはしてこなかったので、そのようなことも含めて、顧客に対する本当の見える化が進むよう、取組んでいきたい。
     

以上

 

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監督局銀行第二課地域金融企画室

 Tel 03-3506-6000(代表) Fax 03-3506-6174 (内線2520、5345)

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