金融仲介の改善に向けた検討会議(第17回)議事要旨

議事要旨

1.日時:

平成31年2月26日(火曜日)午前10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議題:

・金融仲介に係る今事務年度の取組みについて
・「健全性政策基本方針」について
・「早期警戒制度の見直し」について

4.議事内容:

長尾内閣府大臣政務官の挨拶

  •  ○ 日本経済の先行きについては、雇用・所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されている。そうした中にあっても、各地域には経営改善や事業再生、事業承継等に関する支援を必要とする企業が数多く存在している。
  •  ○ こうした中、金融機関には、地域企業の真の経営課題を的確に把握すること、把握した課題の解決に向けて、役に立つアドバイスやファイナンスを提供することなど、金融仲介機能を十分に発揮すること、地域経済の生産性向上を図り、ひいては地域経済の発展に貢献することが求められており、これらは金融機関自身にとっても、持続可能なビジネスモデルを構築していく上で大変重要なことだと認識している。
  •  ○ 金融庁としても、地域企業や経済の生産性向上に向けて、地域金融機関に期待されている役割等を地域企業等との対話等を通じて、きめ細かく把握をし、それらをもとに地域金融機関の経営陣と深度のある対話を行うなど、金融仲介機能の発揮を促進する取り組みを進めている。
  •  ○ 地域金融機関が将来にわたって十分に金融仲介機能を発揮していくためには、将来にわたる収益性や健全性を確保する必要がある。そのため、金融庁では将来にわたる収益性や健全性に深刻な課題を抱える金融機関に対しては、課題解決に向けた早め早めの経営改善を促す観点から、早期警戒制度の見直しを検討している。
  •  ○ 本日の検討会議では、これらの金融庁における取り組みについて、有識者の皆様にご議論を頂きたい。

長尾内閣府大臣政務官の挨拶後、事務局による説明が行われ、以下のような議論が行われた。(○:メンバーの発言、●:当庁の発言)

  •  ○ 中小企業の廃業が相次いでいる一方で、こうした廃業に対応する事業承継の推進を含め、中小企業の経営課題に対応するには、金融機関の「ヒト(人材)」が鍵になるが、中堅までの比較的若手の退職者が増加している事実があることを踏まえると、収益性が継続的に低迷する銀行が今後かなり増加するという認識が不可欠と考える。
  •  ○ 金融機関の健全性を評価する際に持つべき視点は、「リスク・アペタイト・フレームワーク」の枠組みであり、金融庁が金融機関の監督・検査における対話をする際にも、その視点を持つことが重要だと考える。
  •  ○ 具体的には、金融庁は、金融機関が、金融仲介機能を発揮できるビジネスモデルを構築できているか、取るべきリスクと回避すべきリスクが明確化できているか、自己資本のみならず企業価値の源泉である「ヒト」(ヒューマン・キャピタル)はどうか、といった点を検証し、経営理念から現場まで「一気通貫」が確保され、PDCAを回すことができているか、という観点で金融機関と対話することが重要だと考えている。
  •  ○ そのためには、金融庁の金融機関に対する事業性評価能力、すなわち、金融庁が金融機関の事業をしっかり理解して、それを評価するという力が問われている。
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  •  ○ 地域生産性向上支援チームの取組みを含め、金融庁における金融仲介に係る取組みの方向性については、強く賛同する。
  •  ○ 地域金融機関と、その経営について、更に芯を食った対話をしていくためには、当局が把握した地域の声などをもとに、“金融機関の職員や営業店等の業績評価の仕組みをどう変えるべきか”、“金融機関の人的なケイパビリティを高めるための方策をどうすべきか”などの踏み込んだ議論をしていただきたい。
  •  ○ また、地域生産性向上支援チームが取り組んでいる地域の産業構造の分析については、現状分析に留まらず、その地域をどうやって生産性が高い産業構造に変えるのか、という視点も持って進めていくべきと考える。
  •  ○ また、銀行との対話においても、変革の視点を持たずに対話すると、既存の行内リソースを前提とした議論となり、現状追認的な結論に陥るおそれがある。頭取等との対話の中では、まずは変革の必要性や、現在は平時か有時かの認識についての議論を行い、その上で他行や他業種に加えて新たに登場するフィンテック等の潜在的な競合とどのように対峙していくのか、ということをしっかり議論していただきたい。
  •  ○ いずれにせよ、やはり人的リソースが重要であり、金融機関との対話の中でも中心の議題として取り上げていただきたい。
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  •  ○ 地域生産性向上支援チームの取組みについて、全体として、金融機関の経営により踏み込んできており、本質に近づいてきていると感じる。
  •  ○ ただ、対話というのは、受け手側が真摯に受け止めて考えなければ形式的な対応に終始する。受け手側が、対話の内容を受けとめて、そこで得た気づきをもとに新たな施策に取り込んでいく、といった認識を持つように当局も働きかけなければならない。そのためには、経営陣の質の向上が必要不可欠であり、業界団体等と連携して経営陣の教育も併せて取り組まないと、様々な対応が進んでいかないだろう。
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  •  ○ 健全性に関して、融資や有価証券などの有形資産の質を高めるためには、その土台にあたるヒューマンアセット(人的資産)という無形資産の質が上がらない限りは実現しないという前提があると考えている。しかし今、金融機関には人が集まらず、ヒューマンアセットが危機的状況に陥っているのではないか。
  •  ○ ヒューマンアセットは経営人材と実動部隊の人材に分けられ、特に、実働部隊の人材については、早期退職や新卒採用の問題など課題が山積だと感じるので、検査・監督でしっかり見て、人材教育だけではなく組織の向上、組織育成のためにどのような対応を行うのか、突っ込んだ対話をしていただきたい。
  •  ○ 業況が悪くて時間の余裕もないところは健全性の課題にまず集中して対応することが考えられる、との事務局説明があったが、地域で存在感のある金融機関に対し、目先の利益を優先するよう促してしまうと、金融排除が加速するという点で危険ではないかと思っている。地域金融機関が利益優先的にならず、健全性と金融仲介機能の発揮のバランスを常に意識するような経営に変えるよう促すべきではないか。
  •  ○ 早期警戒制度の見直しに関する行政対応としては、制度の対象として選定された金融機関へのヒアリングが最も重要である。今後、収益性が継続的に低迷し、早期警戒制度の対象となる銀行が増えていくことが予想されるが、そうした銀行に対しては、将来のビジョンが実質的なものとなっているかを対話で確認する必要があると思う。
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  •  ○ 人口減少など、環境の変化がじわじわと起こる中で、経営者は、自分が経営している間は大丈夫だろうと考えて経営を変化させようとしない、「ゆでガエルの法則」に陥ることが多い。
  •  ○ 「ゆでガエルの法則」から脱却するためには、経営者と現場を含めた組織が、改革的に不連続な変化を起こさなければならない。そのためには、やはり鍵はトップマネジメントであり、現在の経営者を有能にするか、有能な経営者が選ばれるかの選択を、金融庁が強く牽引する必要があるのではないか。
  •  ○ また、日本経済がもう一度持続的な成長の軌道に乗るためには、ローカル経済圏において、グローバル化の恩恵を受けるとともに、デジタルトランスフォーメーションテクノロジーによる生産性の向上が必要であると考えている。特に後者は重要で、ローカル経済圏にイノベーションの波が来たときに、中堅・中小企業がその波をつかめるかどうかで、彼らの生死が分かれてくる。そうした機会を捉え、ローカル経済圏のイノベーションのエンジンとして、地域金融機関がどのように機能し、役割を果たすことができるかが重要だという点を意識していただきたい。
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  •  ○ 事務局説明で、金融仲介機能に関する経営方針を数値目標化し、支店に当該数値目標を課すことで、支店が真に支援が必要な企業を考えることなく取り組みやすい先等に注力してしまっている銀行があるのではないか、という仮説があったが、これは、数値目標を達成すれば評価されてしまう、という銀行の人事評価制度の問題であると思う。
  •  ○ 数年で退任することが決まっている頭取が、人事評価制度を抜本的に見直すことは考えづらく、この問題にどのように対処するのかが重要と感じる。
  •  ○ 金融庁が金融機関と対話を行うことは結構だが、対話を行うのであれば徹底的に行い、意味のあるものとなるようにしていただき、金融機関の経営陣の凝り固まった意識を変革するような、また、人的資源等の話まで踏み込んだ、深度ある対話になるようにしていただきたい。
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  •  ○ 早期警戒制度の見直しについて、将来の収益性・健全性を重視するという考え方については、地域金融機関の現状を鑑みると非常に適切であると考える。
  •  ○ 人的資源について、私が過去に実施した金融機関向けのアンケート調査によると、事業性評価に取り組んでいる金融機関の職員はやりがいを感じており、若手職員の早期退職率が低いという結果だった。したがって、金融仲介機能の質を高めていくことは、人材流出の防止にも繋がると考えている。
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  •  ○ 地銀の置かれている状況として、人の過剰、店舗の過剰、預金の過剰の3つの過剰があると感じるが、この状況を一度リセットして、新しいビジネスモデルを構築する必要があると考える。そのためには、経営トップのビジョン及びリーダーシップから変える必要があると考えている。
  •  ○ 行政は、このような改革を後押しできるような仕組みを用意しなければならないと思う。
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  •  ○ 金融機関のパフォーマンスは、ストックのビジネスが大半を占めていることから、収益が厳しくなってからアクションを起こしても、すぐに改善されるものではない。そのため、早いタイミングで金融機関に対して改善を求める早期警戒制度は、合理的な仕組みであると思う。
  •  ○ 現状の金融機関の問題としては、経営上のパフォーマンスが十分でなくて収益が上がらないという問題のほか、マーケットの問題などの構造的問題も存在していて、金融機関がどのような努力や改革をしても良くならない、という問題があると考える。
  •  ○ これまでは収益が上がっていたため、経営者による「経営逃亡」といった事象は起こっていなかったが、最近、経営者の中には、自行の収益が上がらないことから、自分には経営能力がないため経営を放棄してどこかと合併してしまえばいい、という発想に至る者も出てきており、そのような事象が起こっていると思われる。
  •  ○ 構造的問題については、金融機関の業務の枠組み、業務規制等も含めて変えていくことを視野に入れて議論できるようなモニタリングの指標を導入してみてはどうかと考える。
    具体的には、本業利益の指標を導入して、さらにその本業利益を、金融機関の中心業務であるバンキングによる収益とインベストメントアドバイザリー業務による収益に分けてモニタリングしてはどうかと考える。
  •  ○ 明示的にバンキングによる収益とインベストメントアドバイザリーによる収益を分けてモニタリングすることによって、個々の金融機関の戦略の方向性がはっきりするほか、構造的問題をあぶり出し、金融業の枠組みをどうするかという問題についても積極的な議論ができるのではないかと思う。
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  •  ○ 変革期の戦略は、仮説が如何にロジカルであるかが重要であり、金融機関との対話の際には、戦略の中で何が一番重要で、戦略目標やなりたい姿と具体的なアクションプランとの間にどのような因果関係があるのかについてロジックを問うことが重要である。その上で、ロジックに基づいたそのアクションが、銀行の内部リソースだけでできるものなのか、といった問いを投げかけていただきたい。こうした戦略に関するロジックに基づいた対話こそが深度ある対話の本質と考える。
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  •  ○ 企業のガバナンスで最も重要なことは、有能で強力な経営者が常に選ばれ、その経営者が暴走したら辞めさせることができることであると考える。特に、改革的で不連続な変化を起こすためには、こうした仕組みが銀行に担保されているかどうかが重要ではないか。こうしたことを当局としてどう促していくか、ということも重要であると感じる。
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  •  ○ 早期警戒制度の見直しについて、単なるマネジメント以外に人的資源という要素もカバーされてきており非常に進歩していると感じる。
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  •  ○ 素晴らしい経営者がいて、非連続な改革を行うだけでは解決できない、構造的な問題もあるのではないかと思う。そういった構造的な問題を議論して行くことは不可欠になってきているのではないかと思う。
  •  ○ もちろん、構造的な問題があるからといって、経営者が効率化などの自助努力をしなくていいわけではない。むしろ、これまで以上に自助努力を行っていく必要があると思う。
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  •  ○ 金融庁は、個々の金融機関対応をこれまで主として行ってきているが、地域金融業界をどういう構造に持っていくべきなのか、そうした青写真を描くための議論が必要となってきているのではないかと思う。
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  •  ● 経営トップの経営力やガバナンスについて多くの指摘をいただいたが、金融庁としても同様の問題意識を持っている。数年来、地域金融機関のあり方について様々な問題提起をしてきたが、金融機関による改革の進捗状況は芳しくないと感じている。
  •  ● 金融機関のガバナンスについて、財務局長や当庁幹部が、金融機関の経営トップと、何を経営理念として掲げ、その理念をどのように具体化しようとしているのか、組織をどのように変えようとしているのか、について直接議論する機会を増やしている。
  •  ● 金融仲介や健全性について様々な取組みを進めてきたが、本日のメンバーの皆様からのご意見にもあったとおり、もう一歩踏み込んで、経営トップに対して良い意味でプレッシャーというか”気づき”を与えられるような仕組みも検討していかなければならないと感じた。
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以上
 

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