金融仲介の改善に向けた検討会議(第18回)議事要旨

議事要旨

1.日時:

令和元年5月31日(金曜日)午後15時30分~17時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議題:

・「金融仲介の取組状況を客観的に評価できる指標群(KPI)」について
・「金融仲介に係る今事務年度の取組み」について(「プログレスレポート」構成(案))

4.議事内容:

事務局による説明に続いて、以下のような議論が行われた。(〇:メンバーの発言、●:当庁の発言)

  •  ○ 企業アンケート結果を見ると、これまで金融庁が取り組んできた事業性評価の方向性には確かな手応えが見えてきたと感じる。
  •  ○ 地域金融機関によるビジネスに関し、規制緩和されたからといってケイパビリティの無い領域に足を踏み入れてしまうと失敗する可能性が高いと考える。まずは足許の自らのビジネスモデルを構築し、その上でケイパビリティのある領域から徐々にビジネスを広げていくことが重要ではないか。
  •  ○ 複数の金融機関を一つの場に集め「深度あるグループディスカッション」形式で共通の課題を議論し合うのも効果的な施策と考える。地域銀行は地元が主なビジネスの場であることから、(グループの組み合わせとして)広域であれば、互いに競合し合わない関係の中で似通ったマーケット環境同士で議論し合えるなどのメリットが多く、有益かつ実現可能性が高いのではないか。
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  •  ○ 地域生産性向上支援チームが把握した、「単純で簡単なアドバイスもない」「企業支援はコンサル任せ」「資料を入手しても経営危機に気づかない」「ノルマによって金融機関職員の離職を誘発している」という地域の企業や支援団体の声については、まさにそのとおりであると強く感じている。
  •  ○ 多くの地域金融機関は、経営陣の意識変化がないと感じている。例えば、生じた経営上の課題に対し、経営陣はそれがどれほど根深い問題なのか、構造的な問題を抱えているのかも含め、その真因と解決策を究明する必要があるが、現実では抽象的な議論に留まっているようなところが見受けられる。また、経営陣には執行と経営の区別がついていないようなところが多いと感じる。
  •  ○ 更には、仮に経営陣が問題の本質を理解したとしても、その意識を下の階層まで浸透させていくということについても課題を感じている。気づきを持っていたり、問題意識が高い優秀な人材を集中的に育成し、組織の軸に据えて、そこから行内を変えていくという取組みが必要である。
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  •  ○ 近年では、ほとんどの地域銀行がコンサルティング業務を経営計画の中心に据えており、取り組むべきことは行内の職員も顧客も分かっているにも関わらず、うまくいっていない地域銀行が多い。この原因は、形式主義・ルールベース・横並び意識に囚われた経営を行っている経営者にあると思う。今後、金融庁はこうした観点も含め、経営者との深度ある対話を行ってほしい。
  •  ○ その際、ファクトとしては、地域銀行の“ヒューマンアセット”を見て頂きたい。早期警戒制度に関する監督指針の改正案や健全性政策基本方針のディスカッションペーパーには人材や人的資源に関する記載が盛り込まれているが、これは大きなポイントで、例えば有価証券運用にせよ融資先の発掘にせよ、うまくいくためにはヒューマンアセットが重要。行員は資産であるという視点を大切にする経営者でなければ金融仲介機能を発揮していくのは難しい。
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  •  ○ 企業アンケート調査の結果について説明頂いたが、地域金融機関による事業性評価の取組成果が出てきていることは間違い無いと思う。ただし、事業性評価は、ややもすると取り組みやすい先を中心に行い、本来取り組まなければならない、例えば格付けが低いような先などは後回しにされている面もあるのではないかとも感じる。
  •  ○ 地域銀行の経営陣との対話において、地域銀行からは地域銀行が提出した資料ではなく、当局が分析・作成した資料を基に対話を行っている事例について「気づきが多い」と聞いているため、このやり方は徹底して行った方がよい。
     
  •  ○ 企業アンケート調査の結果について、事業性評価に関する成果が上がりつつあることは心強いが、中小企業から話を聞く限りでは、まだまだ取り組む余地が相当あると感じている。
  •  ○ 幾つかの頭取から、健全性こそが大切で、最後はやはり保全が重要、といった話を聞くことがある。しかしながら、企業に対する本業支援による営業キャッシュフローの持続的な改善により信用格付けをランクアップさせ、信用コストが減少することで、健全性にダイレクトに結びつく部分も大きいと考える。地域企業の営業キャッシュフローの持続的な改善が持続可能な地域経済をもたらし、営業基盤がしっかりすると持続可能な地域金融も可能となる。この地域エコシステムの好循環のループを回していくことが重要。その好循環のループを金融庁と財務局のオンオフ一体型でしっかりと後押しをしていく、それが本当に重要だなと思う。このような金融仲介機能の発揮による健全性の維持・確保という観点が重要と考える。
  •  ○ 地域金融機関のトップは、「横並び意識」と「発想の積上げ意識」が強い。新たなビジネスモデルが今、デジタライゼーションの進展など大きな環境変化下で、まさに求められている。それぞれの地域は歴史や風土、産業構造が異なるので、それぞれの金融機関のトップが、確固たる経営理念を軸に、自らの地域における将来のあるべき金融像をデザインし、そこに至るまでに足りないものを引き算で考えてビジネスをデザインし生み出していくことが重要。退職者が多く、人材が足りず、障壁もあるからここまでしかできない、といった積み上げの将来像を描いていても変化するはずがない。金融庁や全国の財務局は探求型対話で頭取の後押しを是非、してほしいと考えている。
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  •  ○ ユニークな経営を行っている金融機関はほとんどが信金・信組で、地域銀行の取組みは規模が大きく作り込まれたものはあるが、ユニークな経営はあまり無いと感じている。
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  •  ○ 地域銀行との探究型対話を進化させていくためには、経営者の資質と覚悟を問うていくということに尽きると考えている。資質は様々なものが求められると思うが、今2つ注目されているものがあり、一つはイノベーションの力、もう一つは人材を育成する力と考えている。
  •  ○ イノベーションの力については、今のコア事業をさらに徹底して強くする一方で、新しい事業をつくり出していく力と考えている。それは、経営者自身や銀行自身だけでなく、顧客に対しても実践できるような力を持つことが求められると考える。そこでの経営者の役割は、シーズがあったときに、ビジネスモデルの構築やスケール化をどのように実現していくのか、そのためにはどういった組織やスキーム、インセンティブでやるべきかなど、新しい事業をつくり出せるような環境整備をすることが非常に重要。
  •  ○ 例えば、事業性評価について言えば、更に効果的・効率的な取組みになるよう突き詰めていく必要があると思う。今後さらに人員が減少する中、顧客の評価は高めつつ、より効率的なものとするにはどうすればよいかということを不断に考え、進化させていかなければならず、これがイノベーションという観点で求められると思う。
  •  ○ 人材を育成する力について、自分(経営者)の後継者の選任基準や、職員の育成方法といった点については、トップの考え方が非常に強く出る話である。若者はトップの考え方を敏感に見ており、その結果として若年層の離職率や採用率で相当差が出てくる。人材を採る力や育てる力こそが企業の競争力に直結するため、探究型対話において今後ますます期待されるテーマである。
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  •  ● 本日議論があった、経営理念をどう考えているのか、それが経営戦略にどう落とし込まれ、実際に組織をどのように動かしているのか、更には置かれた環境でビジネスモデルを如何に構築しているのか、しようとしているのか等の全体的な経営戦略については、当庁も正面から把握していかなければならないと感じ、この1年間、金融庁や財務局幹部によるトップヒアリングという形を中心に、継続的に把握しようとしてきた。
  •  ● 特に、各財務局は従来よりも更に工夫して、主体的に分析し、仮説を立て、それを地域金融機関の経営トップ等に提示して議論を行ったことで、地域金融機関側としても何らかの気づきが得られたのではないかと思う。当庁は、地域金融機関が、その気づきを経営の中にどのように取り入れ、改善なり軌道修正するのかということについて継続的に対話を行い、その結果、各地域金融機関が経営をどのように修正し、地域においてよりよくしていこうとするのか、よりダイナミックに見ていかなければならないと思っている。
  •  ● 人材育成についても意見があった。まさしく重要なテーマであり、当然地域金融機関にも働きかけているが、本日話のあった、組織内での優秀な人材を育成し、彼らを中心に波及的に優秀な人材を増やしていくことについては、有効な手段と考えている。
  •  ● 当庁としても、財務局とともに、自分達なりにその地域の実態を理解し、地域に入り込んだうえで、地域の中で如何にエコシステムが回っているのか、どのような熱量が高い方々がいるのか、その中に地域金融機関の人たちが参加しているのか、仮に参加していない場合は参加できるように我々が橋渡しできないか、というような取組みが重要と考え、1年間活動した。というのも、地域金融機関もその中に組み込んでいかないと、本当の意味で地域の生産性向上とか活性化のために参加する人が育たないのではないかと思っているからである。
  •  ● 今年の取組みは、特に金融仲介を中心に、プログレスレポートのような形で取りまとめたいと思う。このレポートでは、当庁の取組方針やそれに基づいた取組内容、総括を述べるとともに、我々が活動する中で見つけた、面白い取り組みや、経営が上手くいき現場も上手く作用している事例などを工夫して盛り込んで開示していきたいと考えている。各金融機関の方に読んでいただき、本当の経営を真に考える上で役立てて頂ければ幸いである。
  •  ● 当庁としては、行政上のモニタリングと合わせて、地域に入り込み経営陣や現場の方々が地域に対してどのような思いを持って活動しようとしているのか等について把握することに努めてきたが、次のステップとして、当庁として何ができるのか、本日委員の皆様方から頂いた有益なご意見も踏まえながら、この1年間を振り返ってプログレスレポートを取りまとめ、来年も地域金融行政を深めていくために引き続き検討してまいりたい。

以上

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監督局銀行第二課地域金融企画室

 Tel 03-3506-6000(代表) Fax 03-3506-6174 (内線2209、2542)

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