金融仲介の改善に向けた検討会議(第20回)議事要旨

議事要旨

1.日時:

令和元年10月24日(木曜日)午前10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

3.議題:

・今事務年度の実践と方針の紹介とプログレスレポート公表の報告について
・企業アンケート調査の分析結果について
・今事務年度の検討会議の議論の方向性(ビジネスモデル全体の議論へ)
・メンバーの交代について

4.議事内容:

遠藤金融庁長官の挨拶

  •    ●   金融庁は、今年、「実践と方針」の中で、持続可能なビジネスモデルの構築を後押しするためのパッケージ策を打ち出している。地域金融機関としても、自らを取り巻く環境が厳しいものとなっており、自らがどのような形でビジネスモデルを構築するのかを真剣に考えなければならないということを自覚し、動き始めていると思われる。
  •    ●   今後、地域金融機関においては、これらのパッケージ策を一つの材料として、持続可能なビジネスモデルを検討してもらうことになる。この点については様々な議論があり得ると思われるので、金融庁としても、地域金融機関と直接議論を行うとともに、色々な知見・経験を有している委員の皆様に様々な議論をいただきたい。

遠藤金融庁長官の挨拶後、事務局による説明が行われ、以下のような議論が行われた。(○:メンバーの発言、●:当庁の発言)

  •  ○ 従来型の商業銀行の業務はコモディティ化が進んでおり、完全に代替可能な定型化された事業になっているように思う。
  •  ○ 地域金融機関は、顧客との距離が近いことが強みだったが、その間にフィンテック企業が参入しており、地銀の強みを活かせなくなりつつある。フィンテック企業の参入による影響は軽微だと言う地域金融機関も存在するが、異業種がITをレバレッジにして固定費を使うことなく新規参入する形はイノベーションジレンマの典型的なパターンであり、実は時間的余裕はなく、早期に手を打つ必要がある。
  •  ○ 地域金融機関としては、顧客との距離が近いからこそ提供可能なサービスというものを突き詰めて考える必要があり、スイッチングコストのある事業性評価などを行うことが重要であると思う。実際、事業性評価を丁寧に行っている金融機関は、顧客と深い関係を構築しており、融資を含む他の既存の業務についてシナジー効果が発生しているという印象を強く持っている。
  •  ○ 当局としても、地域金融機関でしかできないサービスを実現する組織的な能力をどのような時間軸でどのように構築していくのかというところについて、深い対話を実践する必要があると思う。
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  •  ○ 従来、日本の社会全体において、経営陣がミクロな部分にリソースを割いていたが、その結果、ミクロな部分しか思考できない社会となってしまっている。しかしながら、経営陣がマクロな視点で将来を予測し、考えていかないことには、社会変革の波に対応できない。
  •  ○ 地域金融機関においても、経営陣は、10年後、20年後を想定して今後社会で何が起こるのかについて認識・議論を行い、将来を予測し、自行の金融サービスを考え、これを組織全体に浸透させるべきである。
  •  ○ このようなマクロな視点を取り入れず、ただミクロな部分にリソースを割き続けていると、勘の鋭い優秀な人材が他に流出する可能性もある。将来、銀行という形にとらわれなくてもよいと思うが、雇用が守られ、ステークホルダーが幸せになり、生き残ることができてよかったと思えるような金融マンの育成を進めていただきたい。
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  •  ○ 企業アンケートが始まった当初は金融庁と企業との間に距離があり、企業の本音が正しく伝わっていなかったというところがあったが、今回の企業アンケートを見ると、企業の意思が明快になったというのは非常に意義があったと思う。
  •  ○ 地域金融機関の業務は、トランザクションバンキングとリレーションシップバンキングの2つに分けて考えることが重要である。現在、地域金融機関は、目先の利益を追いかけてトランザクションへの比重を高めている。しかしながら、トランザクションは、都市型の銀行のモデルであり、地域金融機関はリレーションを重視しなければならない。
  •  ○ 地域金融機関の取組みの中で、コンサルという言葉が頻出しているが、この言葉は少し目線が高いと思われる。地域金融機関は、顧客と一緒に考えて時間をかけて解決する伴走支援が求められており、検査監督においてもこの点にかかる対話を行って欲しい。
  •  ○ 金融庁のあり方の変化について、「過去から未来」、「形式から実質」、「部分から全体」という3つのキーワードがある。この内、「過去から未来」と「部分から全体」については形が見えてきている。しかしながら、「形式から実質」については、金融機関側の問題だと考えられるが、コンプライアンス、ガバナンス、リスク管理やリレーションシップバンキングまでも形式化が加速しており、むしろ悪化していると言える。今後の探究型対話においては、このような形式化を指摘し、改善させることが一番重要であると思う。
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  •  ○ 企業アンケートにおいて、アンケートを提出した企業は3割となっているが、おそらく銀行との関係性を大事にしている企業が回答しており、そうではない企業は回答しないように思われる。そうだとすると、アンケートを提出した企業の約半数が銀行の取組みを評価しているものの、中小企業全体からすると、まだわずかな数字になるように思う。もっとも、このようなアンケート自体は、金融機関が自身で気付かない部分も出てくるはずなので、細部にわたって行ってもらいたいと考えている。
  •  ○ 銀行については、都市型の銀行と地方型の銀行を分けて考える必要がある。キャッシュレス化が進む中で、金融機関は、店舗や人員を維持することができない、又は維持する必要がないという時代へと変容している。しかしながら、現状としては、金融機関のあり方が全体として変わっていない。
  •  ○ 特に地域金融機関では、店舗の必要性が低下しているにもかかわらず、税・公金の社会インフラとしての機能として、店舗を置かなければならないという状況となっている。このような状況では、規制緩和を進めるなどして、店舗を中心に様々な取組みを行うことができるというようにする必要があると思われる。
  •  ○ ガバナンスについては、社外取締役の役割にもある程度限界があるため、やはり経営陣のトップ層のスタンスが重要である。金融庁においては、経営陣のトップ層との対話を通じてガバナンスの実態を認識させるようにして欲しい。
  •  ○ 日本は中小企業で成り立っているということが言われるが、今後、中小企業がどうなるか相当厳しい時代になると思われる。このような時代の変化の中では、国の中長期行政策も含めた連携が必要であり、金融機関が各々の地域で独自性を発揮しながら変革していくことができればと思う。
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  •  ○   地域金融機関は、カネだけでなくヒト・モノ・情報(知恵・知識)の仲介機能を発揮していく必要があるが、そのプロセス(M&A、廃業支援、事業承継等)の中でどう収益化していくかが重要である。カネのところではエクイティとデットの使い分けの巧拙が重要である。
  •  ○   地域金融機関は、従来のコマーシャルバンクから、インベストメントバンク(プロフェッショナルなエリートゲーム)とトランザクションバンク(デジタライゼーションによる効率化ゲーム)に分けていく必要がある。もはや規制の制約は無いのでできるはずである。
  •  ○   インベストメントバンクとトランザクションバンクに分けた場合、前者にはコンサルティングファームのような考え方や能力を持つ人材が必要であり、後者は伝統的な預取でありインフラとして徹底的な効率化とコスト削減が適当である。組織文化を含めて大きな変革となるので相当うまく分ける必要がある。
  •    ○   デジタル革命によって生産性を上げていく流れだと、地域金融機関自体の淘汰再編は避けられない。地域金融機関と地域の中小企業は“鏡”の関係なので、中小企業の新陳代謝を促し(数を減らし)、その分賃金を上げていく必要がある。
  •    ○   地域企業を見るには地道な“分ける化”と“見える化”につきる。何がもうかっていて、何がもうかっていないのか、共有化できるコストや機能は何か、これらの解像度を上げる必要がある。
  •    ○   生産性向上とは結果的にデジタライゼーションに行き着くので、ソフト(人、心情)の手当ても必要となる。そうすると既存のモデルでやってきた人達にストレスがかかるが、例えば地域の中小企業の中で活躍するのもひとつであろう。
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  •    ○   地域の発展のためには都市圏に集中している人材を地域に送り込む必要があるが、地銀がその役割を果たすことができないかと思う。例えば、自らのステータスを活かして信用力(お墨付き)を与えることで、対象者が地域で動きやすい環境を作ることが考えられる。
  •    ○   地銀の発展のためには、経営陣が行員の取組みを適切に評価する仕組みを作る必要がある。
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  •    ○   企業アンケートによると、的確に事業性評価を行うと融資や経営改善支援サービスの提案、特に経営改善支援サービスに対して、企業側の提案の受け入れに結びついてくるとのことであるが、地域銀行間でどの程度のばらつきがあるのかを分析することが重要である。
  •    ○   中小企業に融資をする際には、融資をして一丁上がりで終わりというのではなく、融資はスタートラインであって、金融機関のネットワークを生かした経営改善支援サービスを継続して行うこと、すなわち金融仲介機能の発揮である伴走支援型融資を行うことが、金融機関自らの収益性、つまり健全性の向上にとって非常に重要である。地域銀行間でのばらつき分析に当たっては、事業性評価に基づく融資や経営改善支援サービスの金融仲介機能の発揮が、収益性にどのように、どの程度結びついているのかを是非、金融育成庁の観点から分析していただきたい。
  •    ○  伴走支援型融資の一例として、業務連動型金利を使う金融機関がある。収益が良くない時期に金利を低くし、営業キャッシュフローが増加した際に金利も上げるやり方で、企業と金融機関が「共通価値の創造」である営業キャッシュフローの改善を分かち合う仕組みである。社長のやる気を引き出すことができるし、金融機関も伴走支援のし甲斐がある。
  •    ○   ただ、金融機関が融資をする際には、企業に①誠実さ、②やる気、③キラっと光るもの、の3つが揃っていることが重要である。社長がこの3つの条件を満たしていれば、赤字や債務超過に陥っていたとしても、伴走支援型融資を行うことで持続的なキャッシュフローが生まれる。これが、金融機関の持続可能なビジネスモデル構築にも結びつくし、地域エコシステムの好循環を構築することに繋がる。
  •    ○   中小企業の支援をしていると、「お金を借りている立場は弱い」という話を聞く。これはまさに心理的安全性の問題であり、心理的安全性を確保しないと、金融機関の優越的地位の濫用というような話になってしまう。心理的安全性は「場」づくり、つまり、手段であって、目指すは企業経営者と金融機関との信頼関係の構築である。信頼関係があれば、金融機関は交渉相手ではなく相談相手になる。これを念頭に、上記3条件を満たす社長に伴走支援型融資を行うことが持続可能なビジネスモデルを構築していく上で重要である。
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  •    ○   プログレスレポートに記載された当局と銀行との対話において、「顧客評価が悪いことは薄々認識していたがここまで低い水準にあることは想像していなかった」との発言があったようだが、このような事実を認識してもらうのに企業アンケート調査は役に立っていると感じた。
  •    ○   企業アンケート調査に関し、金融機関が悩みを聞いてくれるか、経営上の課題や評価を伝えてくれるかという点について要注意先において二極化しているが、これが特定の銀行に多い問題なのか、各銀行が取引先を二極化して取り扱うような戦略をとっているのか。つまり、一部の銀行が出遅れているのかというようなことを調査してもらえるとよい。
  •    ○   事業性評価進展先以外の先について取引先の取引継続意向が低いということを強調しているが、多くの金融機関が事業性評価に取り組もうとしていることからすると、事業性評価を適切に行うと取引先の取引継続意向が高くなるということを強調してよいと思う。
  •    ○   優良企業との関係性を強化するには、M&A、人材育成、従業員福祉などの強化が重要であるということを強調してもよいと思う。なお、受けたいサービスはないとの回答が約2割あるが、これは、銀行は大したサービスを提供できないという思い込みが強いためと思われる。この点については、金融仲介機能のベンチマークを利用することで自行の取組みを取引先に伝えることができると思われ、ベンチマークの普及も今後の重要な課題だと感じている。
  •    ○   企業アンケートに回答した取引先は、金融機関と良好な関係を築いているはずであるにもかかわらず、金融仲介機能のベンチマークについて説明や開示を受けていない取引先が約8割いることからすると、ベンチマークが自行の取組みのアピールのツールとして役に立つことを強調できるような結果を示してもらえるとよいと思う。
  •    ○   経営人材の紹介にかかる満足度について、事業性評価進展先とその他の先で差が出ていることから、金融機関が経営人材について踏み込むのであれば、適切に事業性評価を行うことが必要であることが分かると思う。
  •    ○   取引金融機関が貴社の売上や収益、利益の改善に貢献した結果、経営上の課題や悩みを相談するようになったという取引先が29%あることからすると、経営不振の企業が安心感を持って金融機関に相談をするためには、信頼関係の構築が鍵になると思う。
  •    ○   各機関による事業承継に関する支援やサービスに満足しているかというアンケートについて、そもそも引継支援センターや商工会議所が十分に活用されていないという現状がある。このような機関を有効に利用するためにも、メインバンクが連携のハブになるような取組みを行う必要があるのではないかと思う。
  •  ○   中小企業の従業員の金融リテラシーは平均的に見ると低く、福利厚生についても大企業に比べると劣っている部分がある。従業員が安心して働くことができる職場を提供するという観点から、地域金融機関が金融リテラシーの向上や福利厚生について貢献できることがあるのではないかと感じている。
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  •    ○   地方が活性化するためには、地方の中堅企業(売上規模50~100億)が育つことが重要であり、その支援を地域金融機関が担うべきだと思われる。
  •    ○   中堅企業でも後継者問題があるが、地域金融機関が株式を保有した上で、ガバナンスを効かせるが日常的な業務については口を出さない、ただ配当はしっかり受け取るというような方針であれば、長期安定の株主となれるのではないかと思う。
  •    ○   中堅企業には、海外戦略やM&Aのニーズがあるため、このようなニーズに応えることができるインベストメントバンクが必要である。このようなインベストメントバンク地域金融機関は限定的だと思うが、それはそれでよい。そうならない地銀については、中堅企業よりも小規模な中小企業をターゲットにすることになり、場合によっては、独占禁止法の適用除外の特例法を追い風にして、再編を進めることもあり得るのではないかと思う。
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  •    ○   地域金融機関の半数以上が本業赤字となっている状況を早期に改善する必要がある。本業の預貸ビジネスは、預貸スプレッドが減少しており改善が困難であることからすると、新しい事業モデルを構築し、持続性のある運営ができるようにしていくべきである。地域金融機関がやるべきような非金融分野で、なおかつ地域金融機関の強みを活かして他の企業にはできないようなビジネスを探す必要があり、それをどのように探すのかということについて議論をし、地域金融機関にも促すことが必要である。
  •    ○   新しいビジネスやサービスを探すとなった場合に、R&Dをやっている地域金融機関はほとんどないが、我々が見たこともないような業務が研究されるかもしれない。地域金融機関で地銀の研究開発の費用をKPIにすることも一案であると思われ、いずれにせよ、我々としても地域金融機関に対してR&Dのようなアプローチを促すべきではないかと思われる。
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  •    ○   地銀の価値観は変わらなければならない時に来ている。長年行ってきた事務代行業に対する付加価値が減る中、経営支援についても、地銀の中で内製化されたものは少ない。こうしたビジネスの形はサスティナブルではない。
  •    ○   このままだと銀行業界は他の業界から参入するだけの魅力のない業界になっていく。今までは社会的なインフラとしての責任を持たせつつ、稼げと相反することを言ってきたが、それを整理する必要があるのでは。地方で公共性の高い役割を持っている地銀と、都心部にあり、そうした役割の薄い地銀を同じカテゴリーで議論するのではなく、分けて考えるべきでは。
  •    ○   地銀の組織に持続性があるかなどの地銀の経営力を評価すべき。地銀の経営資源をどこに配分するかが重要。(持続可能なビジネスを行っていくためには)捨てるものは捨てるべき。もちろん、そういったことをやらない地銀を否定するものではないが。
  •    ○   ビジネスモデルを金融庁が考えるのもいささか時代錯誤かなとも思う。地銀の中でもトップは言われなくてもやっていると思うだろう。そのレベルまでいっていない人をどうするのかというのが課題であるとは思うが、(事業性評価をやり始めて随分経つのに結果を出せていない先に)今更、やれというのもいかがかと思う。
  •    ○   ビジネスモデルの本格的な議論を検討会議で行えるのか。私も含めて、メンバーを替えないと難しいのではないか。
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  •    ○   地域金融機関を一つの塊で考えることは難しく、都市部と地方部というような視点で切り分けて考える必要がある。
  •    ○   今後どのような経営理念を持って取り組んでいくのかということが最も重要である。リーマン・ショックまで金融がやってきたような金融エンジニアリング的なモデルは既に破綻しており、短期的な利潤拡大モデルを掲げるのはベストではなく、バリュー・イコール・プロフィットではないようなモデルを考える必要がある。今まで捉えられていなかったような金融サービスを見直すという視点で、例えば、地域や社会、個人に密着したところにビジネスモデルがあると思われる。地域金融機関からリレーションシップバンキングが儲からないという話を聞いたことがあるが、そこを突破しないことにはどうしようもないと感じている。
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  •    ●   金融庁は持続可能なビジネスモデルを構築すべきであると述べているが、全ての地銀に同じビジネスモデルを目指すよう促しているわけではなく、各金融機関において、自らの特徴を踏まえた上で何ができるかを考えてもらいたいと思っている。例えば、大きな地銀であれば中堅企業を育てることが求められるだろうし、他方で小さい銀行であれば、むしろ信用金庫・信用組合の取組みが参考になるのではないかと思う。 
  •    ●   金融機関との対話においては、どのような経営理念の下にどのような業務をしようとしているのか、それがブレイクダウンした形で職員に伝わっているのか、職員に何を求めているのか、ということを一貫したストーリーとして聞きたいと考えている。金融庁としては、金融機関に何かを押し付けることは考えておらず、このような対話の中で、経営トップに、経営のあり方を考えてもらえればと思っている。
  •    ●   金融庁だけではなく、財務局も含めて全国的にこのような対話ができればよいと考えており、対話のあり方を含め、金融庁にフィードバックいただけるとありがたい。
 

以上

お問い合わせ先

監督局銀行第二課地域金融企画室

 Tel 03-3506-6000(代表) Fax 03-3506-6174 (内線2209、2542)

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