第1回金融危機対応会議議事録

1. 開催日時 平成15年5月17日(土)18時30分~19時00分
2. 場所 官邸大会議室
3. 出席議員
議長   小泉 純一郎   内閣総理大臣
議員   福田 康夫   内閣官房長官
  平沼 赳夫   財務大臣臨時代理
  竹中 平蔵   金融担当大臣
  福井 俊彦   日本銀行総裁
  高木 祥吉   金融庁長官
4. 議事次第
議題1   金融危機対応会議の法令上の位置づけについて(説明事項)
議題2   金融危機対応会議会議規定(決定事項)
議題3   預金保険法102条第1項に基づき、りそな銀行について同項1号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことについて(諮問事項)
5. 議事内容
  • (竹中議員)  ただいまから、第1回金融危機対応会議を開催致します。はじめに本会議の議長である内閣総理大臣からご発言をいただきたいと思います。

  • (小泉議長)  我が国の金融システムについては、「金融再生プログラム」及び「改革加速のための総合対応策」に掲げた施策を迅速かつ着実に実行に移すことにより、16年度には不良債権問題を解決し、その一層の強化を目指しているところであります。また、主要各行においては資本増強などの取り組みに努めており、金融システム全体が大きく揺らぐ状況にはないと考えられます。

    こういう状況ではありますが、今般、りそな銀行の15年3月期決算における同行の自己資本比率が健全行の国内基準である4%を下回る2%程度に低下すると報告がありました。現時点で同行の預金流出や市場性資金の調達困難といった事実が認められる状況にはありませんが、政府としてこのような状況を放置したのでは、我が国、及び同行が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずることが懸念されるところであります。

    本日は、このような状況を踏まえ、りそな銀行に対する公的資本増強の必要性について審議を行うべく金融危機対応会議を招集したものであります。よろしくご審議をお願いします。

  • (竹中議員)  本日は、内閣総理大臣から諮問いただきました、りそな銀行に対する資本増強の必要性の認定について審議を行うこととしております。これに先立ちまして、まず「議題1.金融危機対応会議の法令上の位置付けについて」及び「議題2.金融危機対応会議会議規程」につきまして、併せてお諮りしたいと存じますが、説明は省略いたします。決定事項である会議規程につきまして特段のご意見がなければ、原案通りとさせていただきたいですが、よろしゅうございましょうか。

    (「異議なし」の声あり。)

  • (竹中議員)  そのようにさせていただきます。続きまして、内閣総理大臣から諮問いただきました、りそな銀行に対する資本増強の必要性の認定についての審議に移ります。まず、金融庁から説明をお願いします。

  • (金融庁)  説明をさせていただきます。はじめに資料5をお出しいただきたいと思います。資料5の2ページでございます。まず、りそな銀行の概要につきましてご説明を申し上げます。

    株式会社りそな銀行は、総資産額31.7兆円、貸出金20.7兆円、いずれも15年3月1日のりそな銀行への再編時の数字でございます。こうした規模の我が国第6位の資産規模の銀行であり、いわゆる4メガに続く規模の主要銀行グループであります、りそなグループの中心となっている銀行であります。

    また、りそな銀行は、地域に密着したリテール業務に注力をしておりまして、中小企業及び個人向け融資の比率が14年9月末で76.1%となっております。これは主要行平均の61.4%を大きく上回っております。さらに、りそなグループは大阪府、埼玉県等に厚い顧客基盤を持っておりまして、15年3月末現在で133の地方公共団体の指定金融機関ともなっております。

    次に、15年3月期の決算につきまして、ご説明を申し上げます。りそな銀行及びりそなホールディングスは、本日の午前中に取締役会を開催いたしまして、15年3月期決算の承認をいたしましたが、それぞれの自己資本比率が健全行の国内基準4%を下回る見込みとの連絡を受けました。これに対しまして、速やかに銀行法第24条などに基づく報告徴求を行いましたところ、不良債権処分損の増大、監査法人の監査の過程における繰延税金資産計上の厳格化などにより、りそな銀行の当期損失は5,830億円となるとの報告になっております。これは資料4の一番最後の6ページでございます。6ページ下から4行目、りそな銀行の当期損失でございます。

    また、資料4の1ページをお開きいただきたいと存じます。ここにございますように、この決算によります自己資本比率は単体で2.3%、連結で2.1%、この一番下の欄でございます。また、りそなホールディングスの自己資本比率は連結で3.8%になるとの報告になっております。このため、本日午後4時に、銀行法第26条第1項などに基づく早期是正措置命令を発出したところでございます。

    りそな銀行は、本日午後5時半に、業績予想修正を発表するとともに、今後の対応として、代表取締役の退任などによる経営刷新、大幅な給与水準の引下げ、人員削減などのリストラ等を行うことを発表いたしました。さらに、仮に金融危機対応会議が開催され、公的資本増強にかかる認定が行われる場合には公的資本増強を申請したいとの考え方が表明されております。

    次に、この公的資本増強の関連で預金保険法第102条発動の要件等についてご説明を申し上げます。資料8の一番最初のページをお出しいただきたいと存じます。預金保険法102条がここに掲載されております。預金保険法第102条第1項においては、「我が国又は当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議の議を経て、当該措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことができる」とされております。

    現時点におきましては、りそな銀行に関して預金の流出や市場性資金の調達困難といった事実は認められません。しかしながら、冒頭ご説明したりそな銀行の実態を踏まえますと、今回の事態を放置した場合には預金保険法第102条第1項に規定する「信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれ」があると認められます。

    また、102条1項には第1号から第3号までの措置が定められております。りそな銀行は、同法に定められております第2号措置または第3号措置の対象となる金融機関とは認められません。このため、りそな銀行については同法に定めます第1号措置として、公的資本増強を講じる必要性についてご審議をお願いできればと存じます。

    最後に、資本増強の額につきましては、当会議でのご審議を経て、必要性の認定をいただいた後、りそな銀行の申請を踏まえ後日決定することとなりますが、預金者、取引者、市場の懸念不安を払拭し、信用秩序の維持を確保する観点から、りそな銀行に関しては10%を十分上回る自己資本比率の確保が必要ではないかと考えております。以上でございます。

  • (竹中議員)  それでは、ただいまの金融庁の説明を踏まえまして、ご質問、ご意見をいただきたいと存じます。財務大臣臨時代理の平沼大臣、お願いします。

  • (平沼議員)  塩川財務大臣がサミット財務大臣会議にご出張の間、臨時代理を務めています平沼でございます。一言申し上げたいと思います。

    本件につきましては、預金保険法第102条第1項第1号の規定に基づき金融危機を未然に防止する観点から、予防的に資本増強の措置を行うものであり、我が国の金融システムの安定確保に向けた我が国政府の断固たる姿勢を内外に示すものであります。

    財務省といたしましては、関係省庁等と連携をしながら市場に動揺が生じないよう、万全を期すとともに金融システムの安定確保に務めてまいりたい。このように考えております。以上でございます。

  • (竹中議員)  ありがとうございました。日本銀行福井総裁、お願いします。

  • (福井議員)  福井でございます。りそな銀行の自己資本比率が監督上の基準でございます4%を大幅に下回ったということから判断いたしまして、日本銀行の目で見ましても、同行につきましては、早急に資本基盤の抜本的な拡充を図らなければ、同行が預金者や市場からの信認を維持することは困難と見られます。しかしながら、現状におきましては、同行が自力で十分な資本調達を行うことも、困難と考えられます。

    この間、日本の金融システムを見ますと、不良債権問題や株価の下落などを背景といたしまして全般になお厳しい状況が続いております。このため市場や預金者は金融機関の経営動向に非常に敏感になっております。また、企業金融の面から見ましても金融の円滑確保ということが強く求められている状況でございます。

    こうした状況の下で、りそな銀行の過少資本の問題を放置いたしますれば、その営業継続に支障を生じ、同行の多数かつ広域にわたる預金者あるいは借手に甚大な影響を及ぼすだけではなくて、他の金融機関の預金者等にも動揺をもたらしかねない。我が国の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると考えられます。

    我が国の信用秩序維持のため、迅速かつ適切な対応を講じていく必要があるということでございまして、具体的には、預金保険法第102条に基づく措置の発動によって、同行の資本基盤を早急かつ抜本的に強化するとともに、経営を刷新し、預金者等からの信認を万全のものとする必要があると考えられるところでございます。

    現在、同行の資金繰りに特に問題が生じているわけではございませんけれども、日本銀行といたしましても、政府において適切な措置が講じられることを前提に同行の資金繰りの安定に万全に期していくという考えでございます。

    先ほど、財務大臣及び金融庁長官より、日本銀行法第38条に基づく特融発動の要請を頂戴いたしましたけれども、このあと直ちに特融発動を審議するための政策委員会を開催したいと思っております。以上でございます。

  • (竹中議員)  それではただいまのご議論を踏まえまして、お手許の答申案について金融庁から説明をさせていただきます。

  • (金融庁)  資料の6をご覧いただきたいと思います。読み上げさせていただきます。本会議は、平成15年5月17日付で内閣総理大臣より「預金保険法第102条第1項に基づき、株式会社りそな銀行について同項第1号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことについて、審議を求める」との諮問を受け、審議を行った結果、以下のとおり答申する。

    株式会社りそな銀行については、平成15年3月期決算における同行の自己資本比率が健全行の国内基準である4%を下回る2%程度に低下することとなった。現時点で、同行に関して預金の流出や市場性資金の調達困難といった事実は認められないが、このような事態を放置すれば、預金保険法第102条第1項に規定する「信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある」と認められる。

    したがって、株式会社りそな銀行について預金保険法第102条第1項第1号に定める措置を講ずる必要があると判断する。

    また、株式会社りそな銀行が預金保険法第105条第1項の申込みを行うことができる期限については平成15年5月30日とすることが適当と考える。なお、資本増強の具体的内容は、同行の申込みを踏まえて決定されるものであるが、本会議として、同行への資本増強の規模等については、預金者、取引先、市場の不安を払拭する観点から、10%を十分上回る自己資本比率の確保が必要との意見を申し添える。

    本会議としては、株式会社りそな銀行において、預金保険法第102条第1項第1号措置による自己資本の充実と自らの徹底的な経営改革により、健全性の確保、収益力の向上が図られ、我が国の金融システムの安定が引き続き確保されることを期待する。

  • (竹中議員)  それでは、もしよろければ、お手許の答申案を内閣総理大臣からの諮問に対する当会議の答申とすることにしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

    (「異議なし」の声あり)

  • (竹中議員)  それでは、異議なしと認め、そのように決し、諮問についての審議につきましては以上とさせていただきます。

    以上をもちまして、本日の金融危機対応会議を終了いたします。

(以上)


別紙1 PDF内閣総理大臣による諮問(PDF:17K)
PDF平成15年5月17日付諮問に対する答申(PDF:17K)

第1回金融危機対応会議資料

資料1 PDF金融危機対応会議の法令上の位置付けについて(PDF:139K)
資料2 PDF金融危機対応会議会議規程(案)(PDF:50K)
資料3 PDF内閣総理大臣による諮問(PDF:13K)
資料4 PDF資料(PDF:160K)
資料5 PDF参考資料(PDF:315K)
資料6 PDF平成15年5月17日付諮問に対する答申(案)(PDF:37K)
資料7 PDF内閣総理大臣の談話(案)(PDF:42K)
資料8 PDF預金保険法(抄)(PDF:430K)

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