第2回証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会議事要旨

1.日時:平成18年3月27日(月曜日)18時00分~20時00分

2.場所:中央合同庁舎第4号館4階 共用第四特別会議室

3.議題:

  • 第1回懇談会の論点整理及び追加的な意見交換
  • 発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮について

4.議事内容:

  • 第1回懇談会の論点整理について事務局より報告。
  • 発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮についての主な論点について事務局より説明。

主な意見は以下のとおり

【第1回懇談会の論点整理及び追加的な意見交換】

倫理規定等のあり方について(誤発注に乗じた取引等の防止)

  • 日本における倫理規定として「信義則違反」があるが、その意味合いは「詐欺」、「不穏当」といったネガティブなものであり、信義則の促進といったポジティブな側面が強調されない。

  • 規制ではなく前向きの倫理規範というものを自主的に定めるのがよいのではないか。

各社のポジションリミット、リスクリミットの妥当性について

  • リミットの設定はあくまで各社の判断で行うべきもので一律とすることはできないが、リミットの作り方については共通の考え方を定めることは可能ではないか。

  • 全体のリミットの他に個別銘柄ごとのリミットを設けることによって、誤発注に乗じた大量のポジションをとって利益を得ることが難しくなるとともに、証券会社のリスク管理の面で有効なのではないか。

  • 海外のグループ会社からの発注を合せて大量発注を行うというケースは現実的でないので、ポジションリミットについて考えるとき、グローバルカンパニーであることを特別考慮する必要はないのではないか。

担保代用有価証券の銘柄分散等について

  • 担保代用有価証券の掛目については、現状においても各社上限の範囲内で見直しを行っており、大きな問題は生じていないが、銘柄分散は投資家、証券会社のリスクを軽減するものであり、積極的に取組むべき。

  • 1株当たりの金額が一定額を下回った場合は適格担保から外す等担保掛目変更のルールを制定し、顧客に明示する等銘柄分散を補足するような担保の取り方も考えるべき。

その他

  • 売買単位が多いことに加え、銘柄ごとの株価が余りに大きく乖離していることも誤発注の原因の一つになっていると考えられる。株式分割を利用するなどして株価を一定の範囲(例えば1万円以内)に抑えるようにすべきではないか。

日本証券業協会コメント

第1回懇談会の論点については、既に改正案をパブリックコメントに付しているものも含め、当協会の規則で対応、あるいはさらに検討を行っていく等の対応を行っていきたい。

【発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮について】

引受審査の強化

審査項目、内容の見直し

(日本証券業協会規則等の見直し、評価基準の設定について)

  • 新興企業が初めて上場するケースについては最近の問題点を踏まえた審査の見直しは必要であろうが、一方で過度な規制が行われることにより、問題のない発行体の資金調達が円滑に行かなくなる様なことは避けるべきで、問題点を見極めた見直しをすべき。

  • 個人投資家におけるIPO人気が高まっている中で機関投資家とは異なり十分な情報を持たない個人投資家の保護の観点からもこの時期のルールの見直しというのは必要と考える。

  • 証券取引所、引受証券会社によって審査基準の水準にばらつきがあるのは問題である。

(MSCB等についての審査及び利用の基準、行為規範について)

  • 投資家サイドからすると、株主価値の希薄化のおそれがあるなど問題のある発行形態である。

  • MSCBについては私募によるのが一般的なので、公募の場合における元引受証券会社としての重い責任は負わないことになるが、私募であっても分売が行われる場合は引受審査体制の厳格化が必要ではないか。

  • 財務リストラ等により株主資本は毀損したものの、日々の利益が出る水準までは回復できたので、あとは株主資本さえ増強すれば健康となれる企業群があるが、こうした産業再生的なケースでは十分な資金が公募増資では集まりにくいきらいがあり、MSCBは有効なファイナンスの手段である。

  • MSCB自体が問題なのではなく、むしろどのような発行体や投資主体に使うのが適切なのか、購入した証券会社や投資家が株式市場でどのような行為をするのが適正なのか、そこを問うべきなのではないか。

  • MSCBが成長過程、再生過程にある企業の資金調達手段として使われることを考えると、引受け手は発行企業の大きな信用リスクを負うのであって、それ故高い利益を得られる可能性がある、と考えるべきなので、そのリスクを株式の空売りによりヘッジすることが問題ではないか。

  • 株主価値の希薄化については、ニューヨーク証券取引所には一定以上の希薄化が生じる場合には株主総会の決議を必要とするルールを定めている例があり、一定の歯止めをかけることは可能。

引受審査体制

  • 数合わせ的な組織論から入るべきではなく、社内規定、マニュアルの整備、引受部門から独立した部門によるけん制が働いているかといった体制面に着目すべき。

  • 証券会社は引受審査をしっかりする必要がある一方で引受についての営業的な側面もあることから、この利益相反関係をどう処理するかの検討が必要ではないか。

その他

  • 引受審査が厳しい証券会社は発行体からは必ずしも好まれないという実態を改善していく必要がある。

  • 上場申請会社の業務状況や資金使途等の重要な変更が生じた場合には、証券会社は引受けを原則中止すべきであり、原則に従わない場合には変更の理由を説明すべき。

  • 例えば、上場廃止が続出する取引所、主幹事を行った発行体が不祥事を起こした証券会社は評判という観点からいずれも競争上不利となるのが健全な競争で、このような競争が機能するための措置の検討が必要である。

  • 発行体について、上場申請取引所の変更、主幹事会社の交代といった上場プロセスについて目論見書等で開示させることによりけん制効果が期待できるが、具体的に何を開示させるかは検討が必要である。

  • 引受審査強化の観点から、引受における製販分離のルール化の検討も必要ではないか。

適切な発行条件の設定

  • 自由市場原則が何より重要であり、価格決定のメカニズムに行政の介入はあってはならない。

  • 発行価格がその後しばらくの流通市場における価格水準と同じになるのが適正という考え方はとるべきではない。

  • 公開価格と初値の乖離率は、発行金額が小さければ大きくなり、大きければ小さくなる傾向が昨年あった。個人のネット投資家の需要は、それが集中すれば小規模の売出し案件については価格高騰に結びつくが、大規模な売出し案件の初値を左右するまでには至らないからだ。引受業者は大規模な案件も小規模な案件も同じプロセスで価格決定しており、加熱した短期需要をあてにして、プロセスを変えるのは適当ではない。

その他

  • 引受審査の万全を期すために、証券会社は、発行会社の監査法人に対してコンフォートレターの発行を求めたり、公正慣習規則に基づいて監査意見形成についての説明を監査法人に要請するが、大手監査法人は、自らの法的リスクを軽減するために、監査意見書を超える情報提供については慎重になっている。これは引受審査だけでなく、取引所審査にも悪影響を与えている。これによって発行体の円滑な資金調達が阻害されることのないよう発行体、証券会社、監査法人がバランスの取れた責任分担でどう進めるべきか考える必要がある。

  • 引受審査において証券会社に重い役割を期待する場合、対応できる証券会社が限られ、引受の分野で寡占化が進む懸念があり、競争原理が働かず、結果として発行体側の不利益につながる懸念がある。

  • 特に新興市場においては、流通市場での取引はほとんどが個人投資家であるにもかかわらず、発行市場における個人投資家への配分が少ないので、個人投資家がIPO銘柄に殺到し、価格が暴騰するという構図になっており、こうした状況にはメスをいれるべき。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局証券課市場機能支援室
(内線3379,3312,3314)本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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