店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(第3回)議事録

平成30年3月29日
 
 

【池尾座長】  
 それでは、そろそろ定刻になりましたので、ただいまより店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会、第3回会合を開催いたしたいと思います。皆様にはご多用中のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、参考人をお呼びしていますので、まず初めに、本日の会合に参考人としてご参加いただく方を事務局よりご紹介していただきます。お願いします。
 
【御友市場業務監理官】  
 それでは、私からご紹介いたします。メンバーの皆様方の右側に、順にお座りいただいております。
 まず、あおい法律事務所の荒井哲朗様。
 続きまして、神戸大学大学院経済学研究科の岩壷健太郎様でございます。
 
【岩壷参考人】  
 岩壷です。よろしくお願いいたします。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。
 それでは、議事に移らせていただきます。本日は、前回会合に引き続きまして、関係者からのヒアリングを行いたいと思います。それで、まずは本日のヒアリングに先立ちまして、前回のヒアリングの際にいただいたご質問に対する補足を、事務局、金融先物取引業協会の山崎オブザーバー、セントラル短資FXの松田オブザーバーからいただきたいと思います。その後で、まず岩壷教授、それから荒井弁護士とオブザーバーの星野さんから順にご説明をいただき、討論はまとめて最後にさせていただくということにしたいと思います。
 それでは、早速でございますが、事務局から、まずご質問に対する補足説明をよろしくお願いいたします。
 
【御友市場業務監理官】  
 資料1、事務局説明資料をご覧下さい。店頭FX取引に関する各国の規制動向に関するものでございます。
 1ページ目をお開きください。アメリカの現行規制の概要でございます。まず、資本要件としまして、2,000万ドルに、顧客の預託した金額の5%から1,000万ドルを控除した額を加えた額が最低資本金となっております。
 2点目、レバレッジ規制については、以下に書かれております主要通貨は50倍、その他の通貨は20倍となっております。
 3点目、ストレステストについては半月に1回以上、極端であるが起こり得る条件下で実施するということが決められております。
 4点目が前回までいろいろご議論があった報告制度です。日次で注文・約定に関するデータを全米先物協会(NFA)に報告することが義務づけられております。NFAはどのような分析を行っているかというのが(参考)にありまして、1点目が、注文受付時間と取引成立時間の差(約定の遅延度合)、2点目が、注文時に顧客に表示された価格と注文が取引プラットフォームに到達したときの価格の間の相違(スリッページ)がどの程度の頻度で生じるか、3点目が、提示価格が情報ベンダー等の市場価格と乖離していないか、提示スプレッドが他の業者の提示しているスプレッドと乖離していないか、4点目が、ロスカット注文や追証の判定が行われる価格が、他の業者での価格と乖離していないか、といった分析を、日次で実施しているというものでございます。
 2ページをご覧下さい。次は欧州でございます。現行の資本要件として、自己勘定におきまして取引を行う、つまり、自己でポジションを抱える業者につきましては、最低資本金が73万ユーロ(約9,600万円)となっております。
 それ以下は、欧州証券市場監督機構(ESMA)の提案がなされている内容でございます。レバレッジ規制については、主要通貨は30倍、その他の通貨は20倍。ロスカット制度については、有効証拠金が当初証拠金の50%以下になった場合、建玉ごとに強制決済される仕組み(Margin close-out rule)を義務づけることとしております。
 次に、未収金発生リスクへの対応でございますけれども、口座ベースで顧客の預託した証拠金を上回る損失を顧客に生じさせない仕組み、ネガティブ・バランス・プロテクション(Negative Balance Protection)というものを義務付けているということでございまして、ドイツ、フランスにおいては類似の制度が既に導入されてございます。
 ドイツの例では、ちょうど昨年の8月より実施されておりまして、一般顧客に対して差し入れられた証拠金を超えて支払い義務を課す可能性のある証拠金取引の販売等を禁止するものであります。2015年初のスイスフラン・ショックで一般顧客が多額の損失を被ったことから導入されました。規制の内容の検討においては、日本を初め諸外国のレバレッジ規制やロスカット規制等の制度も参考にしたとのことです。その後、一般顧客の保護という観点を重視して、追加的な損失のリスクのある商品を禁じるという制度を設けております。基本的に証拠金を超えて損失が発生するリスクは業者側に移転されることとなっているのですが、リスク管理の具体的な手段というのは、業者側の判断に任せられておりまして、業者側はリスク管理の手段として、例えばマージンコール、ポジションの強制解約、証拠金率の引上げ(レバレッジの引下げ)、証拠金とは別の最低拠出金の導入、提供する商品についてボラティリティーの低い商品に絞り込むというような、独自の対応をしているということを聞いております。
 3ページをご覧ください。英国でございます。英国の金融行為規制機構(FCA)の規制案でございまして、欧州案と類似している点、違う点とあるのですが、資本要件(現行)は欧州と同じでございます。
 レバレッジ規制案については、取引経験が1年未満の者については、主要通貨25倍、その他通貨20倍。1年以上の者については、主要通貨50倍、その他通貨40倍となっております。
 ロスカット制度案については、顧客の純担保額が当初証拠金額の50%を下回った場合に、建玉ごとに強制決済させる仕組み(Margin close-out requirement)を義務づけております。
 あと2点、特典の禁止案ということで、顧客が口座を開設したり取引を行うに当たり、これを促進するような特典の提供を禁止しています。また、リスクの喚起案ということで、顧客口座の損益割合についての公表を含むリスクについての注意喚起を義務づけるということとしております。
 最後、4ページ目、韓国でございます。レバレッジ規制は一律10倍。ここには載っておりませんが、資本要件として、最低資本金は20億ウォン(約2億円)ということでございます。それから、ストレステストも年2回実施しているようでございます。投資家に対して、損失口座比率等についての情報を含む取引リスクに関する報告を義務づけており、高価な景品が支給される大会の開催等、過度な特典を伴う投資家の勧誘を制限してございます。
 それから、資料として付けてはおりませんが、日本の規制はどうなっているかということでございますが、お手元の第1回の金融庁資料の1ページにございますが、資本要件については、最低資本金が5,000万円でございます。
 レバレッジ規制については、個人であれば一律25倍、法人については通貨ペアごとに相場の変動率に応じてレバレッジの条件が変動するようになっております。
 ロスカット制度については、ロスカットルールの整備・遵守を法令で義務づけておりまして、具体的なロスカット水準を金融先物取引業協会の規則で定めております。具体的な水準は第2回の金融先物取引業協会の資料の24ページに載っております。欧州で導入が検討されているネガティブ・バランス・プロテクションルールについては、日本では設けられておりません。
 次にストレステストについては、第2回の金融先物取引業協会の資料の35ページにストレステストのことが書かれておりますが、年に1回以上実施することとなっております。
 報告制度につきましては、報告義務はございませんが、約定価格や配信レートの保存が業者に対し義務づけられております。
 それから、法令で不招請勧誘の禁止がございまして、顧客の求めがない電話・訪問等による取引の勧誘行為が禁止されております。また、リスク喚起についても法令で定められておりまして、元本超過損が生じるおそれのあることを記載した書面を事前交付することを義務づけてございます。
 以上でございます。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、金融先物取引業協会の山﨑オブザーバーからお願いします。
 
【山﨑オブザーバー】  
 それでは、ご説明申し上げます。資料2をご覧ください。
 このご説明に先立ちまして、前回、私の発言で1点訂正がございます。FX業者の業態についての説明で、先物専門会社から証券会社へ業態変更した会社の例といたしまして、GMOクリック証券の名前を挙げましたが、これは私どもに認識の誤りがありまして、GMOクリック証券は協会加盟当初より証券会社としてご登録をいただいておりました。お詫びし、訂正させていただきます。
 続きまして、ご質問いただきました点について、お手元の資料に沿って回答させていただきます。2ページをご覧ください。これは共通テストとヒストリカルシナリオを一部取り入れたテストを比較した結果です。未カバーリスク、未収金発生リスクとも120%割れの業者は16社の中ではおりません。ただし、カバー取引先破綻リスクは、G-SIFIsの破綻を見ない場合は1社だったのに対し、見た場合は5社が120%を割っております。第2回目の共通テストの結果は、さらに詳しく説明をいたします。
 3ページをご覧いただきたいと思います。ご質問のありました大手業者とその他の業者のリスク管理状況につきまして、共通ストレステストの結果をもとにご説明申し上げます。この表は、共通ストレステストの結果を分類したものでございます。詳細については、注意書きの1、2で記載しております。補足でございますが、マリーとは、業者が一時的にでも市場リスクをとることで、顧客同士の売り買いを相殺する取引でございます。また、数字はストレステストの結果、最大損失額を加味すると、自己資本規制比率が120%割れとなる業者数をあらわしております。
 また、常に最大損失となるように、建玉に対して不利な方向にストレスをかけております。顧客建玉の一部についてカバー取引を行い、未カバーポジションがあるとした場合、顧客建玉、カバー建玉、未カバーポジションのそれぞれに損失が発生するストレスをかけております。そのため、未カバーポジションとカバー建玉にかけるストレスは、基本的には同じ方向になります。ただ、顧客建玉については個々の建玉をネットした結果、その逆の方向にストレスをかけております。いずれも最大損失となるような仕組みをとっております。さらにドル/円取引で、ドルが下落する方向にストレスをかけた場合、ユーロ/ドル取引でユーロ買い、ドル売り建玉がある場合でも、ドル下落とはせず、やはり損失が発生する方向であるユーロ安・ドル高にストレスをかけ、通貨間の相関は無視しております。
 このような前提で、この表をご覧いただきたいと思っております。上位10社では、2社がマリーなしのビジネスモデルを採用しております。これはいずれも同一グループの関連会社から配信を受けている業者でございます。また、前回資本金5,000万円程度でリスク管理を含めたこの業務ができるのかというご質問をいただいております。規模が大きくない業者は、システムの初期コストをできるだけ低く抑えようとしております。その1つの方法として、重量制課金の採用があります。業者は業務を開始するに当たり、自らシステムを開発するのではなく、プラットフォーム提供会社からシステムの提供を受けます。そして、システムを利用した分の料金だけを提供会社へ支払うという仕組みになっております。また、市場リスクを取らないなど、管理項目も減らしております。未収金管理も提供を受けたプラットフォームに組み込まれており、人手をかけずに日常の業務をこなしているようでございます。業者の規模に応じたリスク管理が可能であるか、ということに対しましては、このように対応しているということでございます。
 また、ストレステストの結果を見る限りでは、この上位10社、その他34社とも極端なシナリオを採用しても、未カバーリスク、未収金リスクによる損失で120%を割った会社は少数でございます。ただし、カウンターパーティーリスクはG-SIFIsの破綻リスクを見た場合には、上位10社中5社、その他34社中14社が120%を割っております。G-SIFIsの破綻リスクを見ない場合と比べると、数値は増えております。今後は、信用度の高いG-SIFIs1社への集中の是非を含め、業者とカバー先との関係を多角的に検討して、ストレステストの高度化を検討していきたいと考えております。
 また、前回ご質問いただきました信用エクスポージャーのリスクをストレステストでどのようにカバーしているかという質問でございますが、これは最大損失額に含め、自己資本規制比率がどのように変化するかによって捉えているということでございます。また、今回は間に合いませんでしたが、金融庁の要請を受けまして、ストレステストの頻度など、より詳しくリスク管理の実態をご報告するためにアンケートを実施いたします。次回、その結果を提出させていただきたいと思っております。
 4ページをご覧いただきたいと思います。協会では、各種自主規制や統計情報の拡充など、投資家保護に係る自主規制を重点的に進めてきました。近年では、FX取引業者の体制の健全化に取り組んでおります。特に2015年の金融モニタリングレポートを契機とし、金融庁と詳細な調整を行いながら、ストレステストなどのリスク管理の高度化を自主規制により進めております。こちらにご紹介しておりますのは、リスク管理にかかわる協会規則でございます。データ保存以外は、昨年施行したものでございます。ここはまだ緒についたばかりで不十分な点もあろうかと思います。今後もその精緻化について引き続き取り組んでいくところであり、今回の検討会でのご議論も踏まえつつ、スピード感を持って対応していきたいと考えております。
 例えば、ストレステストの精緻化に関しては、本協会のワーキンググループにおいて並行して議論しております。夏前を一応の目途に、取りまとめを目指しているところでございます。また、ストレステストの結果の開示につきましては、まずストレステストの高度化が優先されると考えております。その上で、他の金商業団体の動向も参考として判断することになるかと考えております。本件も、アンケートの項目に入れ込みまして、第4回検討会で、現時点の各社の対応について回答させていただきたいと考えております。
 最後に、5ページをご覧ください。こちらは協会監査で、リスク管理等に関する不備を指導した主な事例でございます。リスク管理のみならず、その周辺事項も記載をさせていただきました。自主規制を進めておりますが、やはり業者の誤解、認識不足は多々あり、監査で得た結果を、監査対象会社はもちろん、他の業者にも共有させていただくように努めております。
 以上でございます。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、セントラル短資FXの松田オブザーバーからお願いいたします。
 
【松田オブザーバー】  
 前回、プライムブローカー(PB)制度やレター・オブ・ギャランティー(LG)の利用が決済リスク、あるいは再保証リスクを集中させてはいないかといった趣旨のご質問があったと理解しておりますので、ビジネスモデル面で共通するところがございますオブザーバー2社を代表しまして、私から資料3に基づいてご説明します。
 ます1ページの図でございますが、PB利用の意義は、取引に伴います債権債務や管理すべき相手先の数を大幅に絞り込むことで、手間、コスト、そしてリスクを抑えるということにあります。強調したい点は、我々2社ともPBを1先だけにせず、3先から5先に分散しておりますことと、地域的にも、例えば当社の場合、3つの先をアメリカ、イギリス、そして欧州大陸に分散しているということです。
 リスク管理の観点から見ますと、次の2ページでございますけれども、PBサイドは業者に対しまして、自身の体力に応じたポジション枠を設定して、不断にモニタリングを行いながら、精緻なリスク管理を行っておられると認識しています。業者側も同様に、PBのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格ですとか、あるいは株価をリアルタイムでモニターしながら、必要に応じてPB間でポジションを移動したりすることで、仮に1つのPBが破綻しても、大きな混乱をもたらさないための弾力的な対応ができるようにしています。
 次に3ページですけれども、今度はLGでございます。PBに差し入れる担保として、現金またはLGという選択肢がある中で、コスト面でどちらが有利かは一概には言えませんけれども、我々2社としましては、この4にありますとおり、万が一のPB破綻時に現金が戻ってこないリスクですとか、あるいは銀行の信用力を借りて、長期的にまとまったロットの資金を調達できるということを考えますと、LGのメリットが大きいものと認識しています。このページの2のとおり、LG発行は基本的にもっぱら邦銀メガ3行が担っているわけですけれども、これらの銀行も、与信業務の一環として、当然ながら財務制限条項を設けた上で、日常的に業者の業況をモニターしておられます。仮にLG発行銀行、つまり3メガのいずれかが破綻した場合に備えて、業者としては先のPBの破綻のケースと共通する代替手段を想定しているところでございます。
 最後に5ページですけれども、前回、自己資本との関係で議論がございました。それについて一言申し上げます。先ほど協会からも説明がありましたとおり、店頭FX業者のビジネスの態様は、取引の規模、あるいは顧客の特性、商品性などに大きな幅がございまして、システムを内製化しているか、外注しているかによりましても、必要な資本は大きく異なると考えられます。自己資本額を仮に純資産額というふうに捉えまして、取引高の上位10社と、それから当社、合計11社の状況を見てみますと、この中にはFX専業でない業者も含んでおりますけれども、純資産が一番少ない業者で40億円程度、最大は1,800億円程度ということで、実際には制度上求められております額の80倍から3,600倍となっている点をお伝えしたいと思います。
 以上です。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、以上で前回のヒアリングの補足説明は終わりにさせていただいて、これから本日のヒアリングに移りたいと思いますが、もう既に時間が大分押しております。全体の時間が限られておりますので、十分な時間を確保できない点はちょっとお許しいただきたいと思います。まず、岩壷さんからご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【岩壷参考人】  
 神戸大学の岩壷と申します。資料4をご覧ください。私は、金融先物取引業協会のアドバイザーとして、また東京金融取引所の研究会の委員として、これまで規制の分析や投資家行動の分析を行ってまいりました。その縁もありまして、こちらにお招きいただきました。今日は、金融庁から与えられたお題が幾つかございまして、それに沿ってお話しいたしたいと思います。
 まず、最初は3ページをご覧になってください。デリバティブの機能に関してですけれども、金商法の世界では、外国為替証拠金取引(FX取引)はデリバティブ取引と規定されております。デリバティブには3つの機能がございます。1つはヘッジ機能、2つ目は価格発見機能、3つ目に資産形成機能でございます。ヘッジ機能につきまして、FX取引と紐づけてお話しさせていただきますと、例えば、海外資産の購入に当たって、例えば、アメリカのダウを買いたいという際には、同時に為替のリスクも発生します。円高ドル安になってしまうと、為替で損をするということが発生します。そういうときに、FX取引は低コストで為替リスクのヘッジが可能です。ドル売り円買いポジションをとると、為替ニュートラルなポジションをとることができるというメリットがございます。
 2つ目に、価格発見機能でございます。これはデリバティブ市場があるおかげで、市場価格が資産のファンダメンタル価値を反映する適正な価格になり得るという話でございます。想像していただきたいのは、例えば原油の市場ですと、スポット市場もあるのですけれども、先物というデリバティブ市場が非常に大きく、そちらのほうの取引が大きいので、スポットの価格もそれに従って適正な価格が付けられております。これは後々三菱東京UFJ銀行の星野さんのほうからお話があると思いますけれども、FX業者のカバー取引額というのは非常に大きなものでございまして、それが銀行のスポット取引の31%、銀行等の対顧客取引だと60%と非常に大きなシェアを占めております(2015年4月時点)。こういった証拠金取引の流動性が、東京外国為替市場におきまして非常に大きな影響力を持っておりまして、そのため適正な価格がつけられているのではないかと考えられます。具体的には、個人投資家は逆張り志向が強くて、過度に進んだ相場の流れを緩和する効果があるというふうにも言われております。これは1つの価格発見機能の証左であるというふうに言われております。
 3つ目が、資産形成機能でございます。FX取引はゼロサムゲームでございますので、ゼロサムというのは、儲かる人もいれば、その反対の人もいるという市場でございます。そのために、資産形成機能はない、一方で株式の市場では、配当があってプラスサム市場であるから、そこでは資産形成機能があるというふうに考えられている方もおられると思うのですが、それは必ずしも正しくはございません。それを説明したいと思います。4ページをご覧ください。
 こちらの左側の表は、金融先物取引業協会が2015年から店頭FX業者から情報を集めまして、儲かっている口座と、損をしている口座の割合を公表しております。この儲かっている、儲かっていないという点に関しましては、実現損益、評価損益の増減額、それからスワップポイントの損益を合計したものでございまして、非常に精緻な数字でございます。
 これを見ますと、時々四半期ベースで見まして30%ぐらいの儲かっている人、反対でいうと、70%ぐらいの損している人と読めますけれども、大体40から50%ぐらいの投資家は利益を上げているというふうに見られます。
 これに対しまして、株式については、日証協が正確な個人投資家の収益に関するデータを公表しておりませんので正確なことは言えないのですけれども、日証協が実施しておりますアンケートというのがございまして、そこに過去1年間振り返って、あなたはどのぐらい利益をあげましたかというような項目がございます。細かく500万円以上とか、いろいろな値段の区分けがございまして、そこに丸をつけるというようなアンケートですけれども、ここの中で、無回答及び取引なしを除外して、プラスの収益を上げている回答数、ほぼゼロの回答数、それからマイナスの収益を上げている回答数を合計して、足して100になるように計算し直したのが右の図でございます。年代がちょっと左側と右側でずれていまして、2010年から2015年までになっていますけれども、これを見ますと、大体ご承知のとおり、2013年のアベノミクスが始まったころから収益が上がっています。
 ここの数字を比較して、FXと株のどちらが儲かるかどうかということではなくて、大体の儲かっている人の割合というのを比べていただきますと、それが大差がないということが言えると思います。もちろんFXと株式では、保有期間が違います。概して株式は保有期間が長くて、アンケートによりますと、大体平均10年以上持っているという方が多いので、この年に利益を上げたかどうかというのは分からないというのはありますし、またアンケートというので、回答数が300、400ぐらいということで非常に少ないですので、店頭FXほど精緻な数字ではございませんけれども、ここで申し上げたいのは、プラスサムだから、もしくはゼロサムだからということではなくて、実際の儲かっている人、儲かっていない人というのを比べますと大差がないということでございます。その意味において、株式において資産形成機能があるならば、FX取引においても資産形成機能があると言っても過言ではないと思っております。
 その次、5ページのほうにまいりまして、今度は私が行った顧客の取引データを用いたFX投資家の収益に関する分析のお話をさせていただきます。ここでは金融取引先物業協会の店頭会員企業の顧客データから、毎月1,000口座をランダムに抽出して、2015年をサンプル期間として分析を行った結果をお話しさせていただきます。
 前月末にポジションを持っていない、それから、月1回以上取引したという投資家を分析対象といたしまして、各投資家のそれぞれのポジションの保有期間というのを、左側にありますように4分類いたしました。スキャルというのは非常に短期トレード、1時間以下のトレードのことをスキャルピングというんですけれども、スキャルというふうに呼んでいます。その次に、デイトレというのは1日以下の保有期間のトレード。それから、1週間以内のスイング、1カ月以内のロングというふうに分類しまして、それぞれの取引の保有期間に当てはめたときに、ある個人投資家Aさんが、その取引の回数の5割以上がこの4分類のうちのどれかに当たっている場合には、その当該分類を投資家Aさんの保有期間というふうに決定します。これによって、投資家間の比較をしたいと思っています。
 1カ月以上の取引ももちろんございますけれども、1カ月以上の取引になりますと、同じマクロ環境のもとで投資家間の比較ができないということで、1カ月を超える長期のポジションは分析の対象から外しています。こちらの右側の表を見ていただきたいのですけれども、まずに注目していただきたいのは、この4つのスキャル、デイトレ、スイング、ロングという投資家の分類の割合ですけれども、スキャル、1時間未満の短いトレードをしている人が56%、デイトレが30%、スイングが9%、ロングが5%というような割合になっております。半数以上の投資家が、スキャルピングと呼ばれるような非常に短いトレードをしているということがここから伺えます。
 月間収益率の平均値と中央値は一番右のほうを見てください。全体的に見ますと、中央値は正ですけれども、平均値はマイナスになっています。皆さんご存じのとおり、中央値というのは、収益が儲かっている人から損している人まで一列に並べたときに、ランキングしたときに真ん中にいる人が儲かっているかどうかというのをあらわしています。これはプラスになっていますので、半数以上の口座を持っている投資家が儲かっているということをあらわしています。ただし、平均値はマイナスですので、儲かっている人は多いけれども、損している人のほうがより収益性が悪いので、そこに引っ張られてマイナスになっているというふうな解釈ができます。ただし、この数値というのは、月によってもちろんプラスになったりマイナスになったりします。月によってはどの投資家もマイナスのときもございまして、この数値自体が重要なのではなくて、どちらかというと投資家間の違いというのに注目したいと思っています。
 それを見ますと、明らかにスキャル投資家はロング投資家よりも収益率が悪い。長期で持つほど収益がよくなって、短期で持つほど収益が悪くなっているということが言えます。これはサンプルを変えてやっても同じ結果が出ます。ロバストな結果です。収益はいろいろと変わるのですけれども、レベル自体は変わるのですけれども、相対的な比較はいつでも同じようにスキャルが悪いということがわかっています。
 額が正でわりと大きな値が出ているのですけれども、これは儲かっている人はすごく多く儲かっていますので、毎月500万とか1,000万とか儲けている人は結構いるわけですね。そういう人が引っ張るので平均値は高くなっていますので、中央値のほうを見ていただきますと、中央値は収益率の中央値と大体同じように、スキャルではマイナスでデイトレ、スイング、ロングでプラスになるというような結果になっています。
 次に、儲かっている上位10%の人をサンプルしてみますと、この割合というのが、スキャルとかデイトレ、短期の人が増える。これはなぜかというと、短期トレーダーというのは平均的には収益率が悪いのですけれども、非常に分散が大きくて、儲かっている人と儲かっていない人のぶれが大きいということが言えます。
 次のページ、6ページを見ていただきますと非常にわかりやすいと思うのですけれども、横軸が収益率になっていまして、縦軸がニューヨーククローズでのレバレッジ倍率ですけれども、短期トレーダーほど収益のぶれが大きいということがわかります。長期トレーダー、ロングになるほど収益のぶれが少なくなってくるということが言えます。この図でさらにレバレッジとの関係は推計式が書かれていますけれども、レバレッジの係数は0.33、もしくは0.36、大体0.3ぐらいですけれども、これは例えば10倍のレバレッジを持っている人が11倍になると、その分だけ収益率が0.33%下がるということをあらわしています。いずれの投資家も、大体同じ係数でやりまして、同じぐらいレバレッジを上げると収益が下がるということが言えます。
 では、ここから何がわかるか。特に半数以上を占めていますスキャルパーと言われる短期トレーダーについてお話ししたいのですけれども、短期投資は資金をリスクにさらす期間が短くて変動率も低いので、収益を上げるために日中のレバレッジを高くとって、反対にオーバーナイトのレバレッジは低い傾向がございます。これはやった方はすぐわかると思うのですけれども、長期投資の場合は、日足とか四時間足の場合には、わりとトレンドが見えやすい、出やすいのですけれども、一方、短期では上がったり下がったりしますので、これは収益を上げるには、高度な投資スキルが必要となってきます。専業トレーダーにスキャル投資家が多いように、非常に短期でレバレッジをかけて投資をするということは、収益を上げられるということで人気がある投資手法となっています。
 先ほどお見せしましたように、スキャル投資家は平均的には収益が悪いということをお話ししたのですけれども、新しく投資をし始めた人というのは短期投資に偏りがちで、高度なスキルが必要であるにもかかわらず、未熟な投資家がスキャルに多くて、あまり利益を上げられずに市場から退出していくことがあります。したがってグループ全体としては、平均的な収益率が低いという可能性もありますので、もうちょっと詳しく、どのぐらいの期間、投資家として技術を高めてきたかということを勘案した上での比較が必要かなと思っております。
 以上の分析をもとにして、8ページですけれども、レバレッジ規制がもし強化されたならば、こういった投資家にどのような影響が出るのかということを考えたいと思います。第1回目の検討会での金融庁の資料には最大相場の変動をカバーするようなレバレッジは、平均8.7倍ということが書かれてありました。現状、レバレッジ25倍の上限のもとで、自分の持っているポジションに比べて損が膨らみますと、有効証拠金と言われる証拠金の時価評価が下がっていきますので、レバレッジの実質の倍率が上がっていくのですけれども、大体どこの業者もそれが12.5倍に達すると、アラートメールというメールが届くようになっています。仮に、8.7倍のレバレッジが上限になってしまいますと、実質4.35倍よりも高いレバレッジをとっている投資家に影響が出ます。これは2回目の検討会でGMOクリック証券の資料にありましたけれども、かなり多くの投資家がこの影響を受けるというふうに考えられます。
 もしレバレッジ倍率の規制が強化されまして、レバレッジ以外の投資手法が変わらないという想定にしますとどういう影響が出るかというと、レバレッジの低下によって、プラスの収益を上げている投資家の収益率は低下し、マイナスの収益率は改善するということになります。つまり、いずれもポジションが減りますので、収益率の絶対値が下がるということになります。
 このとき単にレバレッジ倍率を下げるだけじゃなくて、何かしら投資手法を変えるのではないかということが考えられます。先ほど申し上げましたように、スキャル投資家は平均的な収益率が悪いので、ロングに変わるならば収益率が上がるのではないかというふうに考えられます。しかし、短期投資と長期投資とでは求められる投資スキルが異なります。例えば短期の場合ですと、テクニカル分析や値動きの癖を理解して投資をします。一方、長期の場合はファンダメンタル分析が必要かもしれません。こういうふうに、求められているスキルが違うので、儲かっているスキャル投資家が、その投資スキルを封印して長期投資家に変わるということは考えにくいのではないかと思っています。むしろレバが下がったことに耐えることができない投資家は、海外FXや法人化、それから仮想通貨取引へと取引の場を移す可能性も考えられます。
 株式や商品先物とかに比べますと、FXというのは、もともとの価格変動率が低いので、レバレッジをかけることで収益性を高めている商品でございます。レバレッジ規制が強化されると、金融商品としての価値が大幅に低下します。それによって、店頭FX市場の取引高は減少し、東京市場の流動性の低下、さらには税収の減少につながりかねません。海外FXや仮想取引と、規制の手が届かない市場に国内投資家を向かわせるということは、投資家保護の観点から見ても問題というふうに言えます。
 10ページですけれども、そもそもレバレッジ規制がプルーデンス政策として正当化されるのかということをちょっと考えたいと思います。検討会では、金融システムの安定化のためのプルーデンス政策を考えておられると思うのですけれども、プルーデンス政策は、基本的にはほぼ金融機関に対する規制でございまして、銀行の規制でいうと、融資先企業の行動に影響を与えるというような規制というのは、大口信用供与規制というのがあるんですけれども、それのみでございます。FX業者では、大口信用供与規制に関するものは、特定の顧客に対して建玉の上限を設ける。つまり、保有建玉上限というのがあるのですけれども、どこの業者でもそういった上限が設定されております。レバレッジ規制というのは、こういった大口投資家だけじゃなくて小口投資家も含めて投資行動を制限することになりますので、ヘッジ需要や資産形成の需要を制約することになりかねません。金融システムの安定化を目的とするならば、レバレッジ規制でなくても自己資本や保険、それからモニタリングで対応が可能というふうに考えております。
 こういった万一の事態にどう備えるかというようなプルーデンス政策というのは、将来起こるかもしれない大きな病気に対してどうするかということに似ています。対処法としては、1つは医療保険に入ること、それから、2つ目に貯蓄をすること、3つ目に定期的な検診をすることだと思います。もちろん定期的な検診、モニタリングテストをするというのは当然として、保険をどれぐらいかけるのか、それからどのぐらい自己資本を持つのかというようなことは非常に微妙な問題で、どういった将来設計を考えるかということに依存しておりますけれども、保険のかけ過ぎはいけないように、規制によって未収金リスクをゼロにするというのは弊害も生じます。
 これが11ページですけれども、果たして未収金リスクをゼロにするような規制を考える必要があるのかということを、ちょっとお話ししたいと思います。
 
【池尾座長】  
 大分時間押しておりますので手短にお願いします。
 
【岩壷参考人】  
 すみません、あと5分ぐらいいいですか。
 
【池尾座長】  
 もう20分しゃべっていますので。
 
【岩壷参考人】  
 すみません、あと少しで終わりにします。
 1回目の検討会で、金融庁の資料からロスカット規制というのは、店頭FX業者が価格を提示できないことによって機能しなくなる恐れがあるということが指摘されました。しかし、未収金リスクは完全に防ぐことができるのです。これはなぜかというと、店頭業者はずっと価格を配信し続けることさえすれば、投資家にとって不利な価格であれ、ロスカットに追い込むことができますので、実質証拠金がゼロを割り込む前に投資家の投資行動をストップすることができる。つまり、未収金が発生しないわけです。
 じゃあなぜ店頭業者はそういったレート配信を発し続けないのかといいますと、1つ目に、投資家に非常に不利なレートを提示するということは、投資家からの信用をなくし、訴訟リスクが増えるということ。それから、2つ目に、こういった配信停止するような状況というのは、価格変動が激しいですので、カバー先からのレートも悪いということで、顧客取引を行ったときに生じる業者のポジションというのをうまくカバーできない、つまり損失が増えることがあるということがあります。3つ目に、今度カバーせずに自分でポジション持った場合には、未カバーポジションリスクが高まるというようなことがございまして、これらを総合的に勘案して、店頭業者というのは価格の配信停止を決めているわけです。
 つまり、配信停止を止めさせる、つまり未収金リスクをなくすということが、必ずしも是ではありません。銀行規制でいうと、銀行の破綻を防ぐために、何も不良債権ゼロを目指すことはないのです。自己資本から補塡可能であるならば、未収金があったとしても、それは許容すべきであるというふうに考えています。
 同じような議論で、ネガティブ・バランス・プロテクションというのがございまして、欧州のほうで導入が検討されているわけですけれども、これは顧客保護に資すると考えられがちですけれども、それはとんでもない間違いでございまして、こういう規制があると、業者は未収金を出さないようにロスカットをつけにいく。悪いレートを出し続けて、投資家にリスクを転嫁するような行動をとるようになります。これは非常によくない。投資家のほうも、ネガティブ・バランス・プロテクションがあるおかげで、未収金が発生しても払わなくてもいい、業者から請求されないわけですので、投資家にモラルハザードが生じて、よりリスクをとるというようなことも考えられます。規制があるおかげで、こういった弊害が出るということは十分に勘案しなければいけないと思っております。
 12ページ、13ページは金融先物取引業協会からいただいたスイスフランショックとBrexitのときの店頭業者及びくりっく365の配信停止時間の分布です。金融庁の資料にあった業者では50分の配信停止でしたけれども、実はスイスフランショックのときでも、3つのスイスフランに関する通貨で、およそ業者の40%から45%は5分以内の配信停止でした。つまり、金融庁の資料にあった50分の配信停止というのは、中央値、平均値から比べてもかなり長いものを取り上げられたようです。Brexitに関しては、かなり短くて、最大の配信停止は3分33秒でした。Brexitとか米国大統領選のような選挙というのは、事前に日にちがわかっていますし、最悪どういう状況かというのは想定して万全の体制で業者もカバー先も構えていますので、未収金が発生するリスクは非常に少ないわけです。
 どういうときに未収金が発生しやすいかというと、よくリーマンショックみたいなものを言われることがあるんですけれども、リーマンのときというのは、実はあまり混乱はなかった。こういうふうに民間のイベントでも予兆があるときというのは、配信に関する影響はあまりありません。むしろ問題が発生するのは政府の政策変更、つまりスイスフランショックみたいな、突然為替政策が変更され、それによって市場が混乱するというときでございます。これはメジャー通貨ではあまり考えられませんので、実はそれほどイベントとして問題になることは多くないと考えています。
 最後14ページですけれども、証拠金取引というのは、いろいろな特徴がございます。株と違って少額から投資できるとか、取引コストが少ない、それから資本効率が非常に高くて24時間開いているので、株と違って夜間取引でき、兼業トレーダーに向いております。それから、情報を得やすいというようなことがありまして、これまで主には若い人、30代から40代を中心に、サラリーマントレーダーたちがFXを行ってきました。非常に低コストで取引できるようになった業者の企業努力や、20年近くにわたってレバレッジ規制とかロスカット規制という規制の改革を行ってきた人たちの努力のおかげで市場が発達してまいりました。こういったFX取引市場が健全な市場として発展していけるように、規制のあり方を検討していただければありがたいと思っております。
 ありがとうございました。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、荒井弁護士から、同じくご報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
【荒井参考人】  
 資料5を簡潔なものにさせていただいておりますのは、私がお話しさせていただくのは、具体的な事案に即したものですので、なかなかレジュメにし難かったということでございます。従って口頭で補足しながらご説明申し上げます。
 多少失礼な言い方かもしれませんが、FX取引というものは、現在でもなお健全な金融商品としてはまだ発展途上にあるというふうに思っております。それは取引の不透明性が多く残されているというところにあると考えております。その不透明さというのは、取引が短期間で反復されて、レートも著しく短期間で変わります。その記録が訴訟等にならなければ開示されないということから、多くの顧客の検証にさらされないという状況のまま取引がされているというところにあると思います。
 私が取り扱った訴訟等の事案を紹介させていただきますと、まず少し古い事案ですが、ロスカットが発動せずに業者が朝になって気がついたという事例でして、判決が実務家の間ではよく見られているものでございます。裁判所の判断は、業者が本件ロスカット時において用意していたコンピューターシステムは、その取引環境に照らして不十分なものであったといわざるを得ないと。これはもちろん金先法改正後のことでございますので、そういうシステムの不備というものが多い業者がまだたくさんございました。
 最近でございますけれども、ここ数年の事案ですが、トレール注文とロスカットに係るものですが、取引手法として雇用統計等が出ますと相場が上下、いずれかに大きく動くということが予想されます。そういう場合に、売買双方の注文を出しておいて、加えて双方のポジションに最初にトレール注文を入れておくとすると、相場が短期間に急変した後、落ちつく傾向がございますので、一方は切られて、一方の残ったポジションについて利益を最大化すると。そのためにレートを追尾していって、反対注文の決済注文の価格を随時更新していくトレール注文というものを入れるということでございます。あらかじめ設定した幅の下落があったのにトレール注文の約定処理は開始されたのですが、約定しなかった。約定しない間の期間内にロスカットラインに達して、ロスカットのほうが先に発動してしまってロスカットをされたという事案でございます。
 当該業者はロスカットシステムとその他の約定処理のシステムを2系統にしておられたようで、その2系統のうち、ロスカットの処理のほうが進んでしまった結果、通常、本来であればトレール注文に係る反対注文が既に約定処理には入っているわけなので、約定処理が完了する、9秒間かかったらしいのですが、それさえなければ反対売買されているわけです。つまり、ロスカットラインに達していない状況で、注文の約定処理が完了しないというときに、ロスカットのほうが後に割り込んできたのに、それが先に発動してしまって完了してしまったということがございました。これもシステムの不合理だと思いますが、和解により損害の大部分を業者側に支払ってもらったということでございます。
 こういう訴訟で難しいのは、やはり秒速よりも短い価格変動を追わなければいけないというところと、業者内のシステムが外部からは見えにくいというところにございますので、いろいろなものからこちらが推測を働かせて情報を提供してもらうというところで、真相解明していくということになります。これは取引履歴の不明瞭さというものを示す1つの典型的な事例であると思います。
 付言しますと、この業者の場合には、約定処理が開始された場合、約定処理が完了するのがいくら遅れようとも、約定処理が始まったときのレートで約定させるんだということを内々では決めていたらしいですが、外部に対してはそれを約款等ではうたっていなかったということで、取引の仕組み自体も外部からわかりにくいということがございます。
 もう一つ、最近のものですけれども、これもロスカットにかかわるものですが、NDDをとっているという業者は多くございまして、インターバンク直結であるということを取引の公正性、透明性の前提としております。顧客もそれを期待して、NDDの業者を選ぶ。NDDというのはインターバンク直結であって、インターバンクから飛んできたレートをそのまま顧客に出す、多少の調達コストはございますでしょうけれども、そういうことをしているというのですが、実際NDDは一般にそう考えられ、業者もその認識を前提として顧客を誘引している。ところが実際には、インターバンク直結ではない。インターバンク参加者からレートの配信を受けているというのはそうかもしれませんが、インターバンク参加者であるメガバンクから、インターバンク取引とは異なった対FX業者に対するレートの配信を受けているという場合が往々にしてございます。
 そうなってきますと、これはインターバンク直結というのではなくて、インターバンク参加者である銀行からレートをもらっているというだけに過ぎませんので、それも事前には説明がされていないので、こういうところでも不透明感は著しいところがあるのではないかと思っております。
 あと私が接しました事例といたしましては、FX取引はカバー取引の態様等にもよると思いますが、基本的には相対の取引で、業者と顧客の利害が対立しますので、業者側がロスカットを広げるというようなことがまま見られるところでございました。レートを見てみますと、わずか1秒足らずの間に2円スプレッドが開くと。2円広げられると、大体の人がロスカットにいくので、ビットアスク両方が広がってしまうとどうしようもないというのがあります。それから、取引所取引においても、マーケットメーカーは顧客の状況を把握しておりますので、レート提示に影響してくることが考えられまして、かつてのランド円の問題のときには、裁判所のほうでマーケットメーカーの1社については、価格提示についての過失があるというような判断もされているところでございます。
 それから、スプレッドが今、0.3銭固定というようなところも多くございます。これは自己ポジションをどう持っているかというところにもかかわってくるかもしれませんが、0.3銭では利益が出ないということで、顧客の損を自社の利益とするという動機づけがあろうかと思います。そういうことから、スプレッドが通常は0.3銭固定でやっておられますが、雇用統計のときとかに瞬間的ではございますけれども、著しくスプレッドが、これは今回の事象と総合しても開き過ぎなんじゃないかというようなことがございます。
 それから、スリッページも、私も取引を体感し、あるいは多くのスキャルパーの取引を見たりしますと、スリッページが悪いほうにしかいかないと、よいほうにスリッページはしないと、これは多くのFX取引のヘビーユーザーの実感するところであると思います。
 それから、NDDなので、ビットアスクが逆転する、逆スプレッドが生じるということをうたい文句にしている業者も、スプレッドが逆になっていますので、買って落とし、買って落としてやれば必ず利益が積み上がるわけですが、そういうことを繰り返したものに対して、後でバッドティックであるとして利益を支払わないという例も、これは頻繁に見られます。
 それから、このような業者につきましては、いずれの問題も弁護士の介入により事なきを得はしましたけれども、顧客みずからではいかようにもし難いというような問題があるのではないかと思います。
 決済リスクとの関係の問題でございますけれども、決済リスク、古い時代ではありますけれども、当然金商法改正後の事案で、FX取引は、為替変動リスク以外のリスクというものは解消されたというような時期でございました。その時期でも、業者が顧客からの預かり金をカバー先に預託することによって管理をしていたと。ですが、その関連会社から注文を受けて、証拠金を得ずにその取引を出して、その取引が大損して、結局預託してあった証拠金がほぼゼロになったということで、破産の申し立てがなされてから金融庁さんによって業務停止の行政処分がなされるというような状況に至ったということが、一応健全な取引であるというふうに保証されるに至った後にも、複数件生じてございます。
 それから、話を少し変えますけれども、我が国はなぜかわかりませんが、レバレッジが高いのを好む傾向が多いように思われます。法人取引は多くの場合、そのFX取引をするために一般個人が法人をつくって法人取引をしていると。それから、投機的行為に親和性の強いものが、なぜか日本人には多いような気がしております。そうしますと、決済リスクとの関係でレバレッジ規制を強化するということにしますと、我が国において登録を得ていない海外業者、先ほどご紹介いただいたような国々ではなく、マルタとかそういうところに本社を置くようなところでは、高いところでは4,000倍とかいうようなのがあって、それから、いわゆるゼロカット、未収金リスクを海外ですから、業者のほうも負えないということでゼロカットでやると。そういうところに複数の口座を開いて、片方には売り、片方には買いを金曜日に立てておけば、土日に何か起こって、月曜日の朝、どちらかはゼロカットでとられるけれども、どちらかは大きな利益が出るというようなことが既に流行しております。
 それから、レバレッジが低くなれば、やっぱり高いところにいくということで、海外業者とのトラブルが一層増すだろうと思いますが、海外業者は金融庁のほうで登録を得ずに営業行為をしているということでされてございますけれども、インターネットサイトを開くと、その人の検索の行動にもよるかもしれませんが、海外FX業者の広告はバナー広告等にも出ています。こういう状況を見ますと、一般投資家は、投機家は、海外FXはみんながやっていることだというような感覚を持つのは必然のことだろうと思いますので、広告規制、なかなか難しいところはあるでしょうけれども、検索サイトその他に対しても、何らかの手当をしなければならないのではないかと思っております。
 進行に協力させていただいて、この辺で終わります。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、三菱東京UFJ銀行の星野オブザーバーからご報告をお願いします。
 
【星野オブザーバー】  
 三菱東京UFJ銀行の星野でございます。よろしくお願いします。
 それでは、資料の6、2ページ目をご覧ください。私のほうからは、この目次の2と3、FX取引の価格発見機能、そして決済リスクへの影響について述べたいと思います。
 その前に、まず証拠金取引の東京市場でのプレゼンスについて若干コメントをしたいと思いますので、3ページ目をご覧ください。左図の青いライン、これが店頭FX取引のシェアですが、協会からもご報告がありました通り、出来高ベースでは東京市場の二、三割の取引が証拠金取引という状況です。またここにはお示ししておりませんが、日本ではいわゆるヘッジファンドであるとか、機関投資家の占める取引割合というのがあまり高くありません。そのかわりに個人の外貨預金であるとかFX取引が活発であるという構図になっております。例えば、欧米では、市場取引の40%から50%が機関投資家の取引ですが、本邦では10%から20%です。一方で本邦の個人投資家の市場シェアは20~30%である一方で、欧米では10%であり、何が個人の取引と定義するのかという問題もありますので、アップル・トゥ・アップルではない可能性はありますが東京市場の構造特徴として興味深い点です。
 さて価格発見機能をご説明します。4ページをご覧ください。価格発見機能に関し、FX取引には相場の変動を抑える方向と、それから、加速させる方向の2つがあると考えております。まず抑える方向の動きです。FX取引は小口かつ大量というのが特徴で、1件当たりの価格スプレッドは非常にタイトに取引されています。したがって、FX取引は日中の流動性の源泉にもなっております。真ん中のポンチ絵をご覧いただきたいのですが、いわゆる輸出業者であるとか輸入業者であるとかという実需の取引のプレーヤーしかいない場合は、大きくスプレッドが開くわけですが、そこに我々金融機関、銀行が入ってマーケットメーキングをし、さらにはFX業者が入ってくることで、東京市場、特にドル円市場の分厚い流動性を生み出しているということは事実だろうと思います。
 左の下の図をご覧いただきたいのですが、我々金融機関のマーケットメークと言われているビジネスも、10年前とはその仕組みが大きく変化してきており、かつては輸出業者、輸入業者、投資家のフローを受けると、そのほとんどはインターバンク市場でカバーされていましたが、現状はそういった輸出業者、輸入業者のフローから生じる市場リスクをFXのフローとネットアウト(マリー)させインターバンクに出ていかない、こういう構造がかなり膨らんでいます。ここでお示しするデータは、我々三菱東京UFJ銀行の例ですが、2014年時点では40%ぐらいだったものが、今は90%程度がインターバンクに出されることなく、行内でマリーされているということでございます。
 また、先ほどもご説明がありましたが、FX取引のフローというのはカウンタートレード、いわゆる逆張りが多いという特徴があり、相場の大きな変動を押さえ込む効果があるのも特徴です。ただ一方で、基本的に建玉が外貨買いになりますので、円高急進時には強制ロスカットの執行によって円高方向の値動きが増幅されるリスクがあるというのは考えておかなければならなりません。5ページをご覧ください。
 左に、1日のうちの値動きが大きかった主要なイベントというのを一覧にしましたが、Brexitのようなイベントやリーマンショックのような金融危機の際に起こる相場の急落に加えて、2010年以降、突然相場が急落するという事象が散見されるようになっております。2010年5月6日に米株が急落し、あわせてドル円も急落しましたが、これ以降フラッシュクラッシュという言葉が一般的になりました。こうしたフラッシュクラッシュの要因はいろいろと分析されていますが、取引の電子化が進み、アルゴリズム化されたプログラム売買では一瞬のうちに同方向の売り買いが行われ、相場が動き出した際に人間では捉えきれないような流動性の空白を生じ、さらに値幅が大きくなるというメカニズムが働いていると考えられます。ユーロ/スイス、スイスショックも、こうしたアルゴリズム売買による影響が大きかった例です。
 こうした相場の変動を増幅させる可能性がFX取引、特に強制ストップロスにあるということは間違いないだろうと考えております。ただ、実際にはこういったフラッシュクラッシュも、複合的要因で起こるということが各種調査からわかっており、例えば左の一番下、9のポンドの急落がありますが、これに関しては、我々東京の外国市場委員会でも分析をしましたし、最終的にはBISがレポートを出しているのですが、ポンドをめぐるネガティブなニュースであるとか、オプションに絡んだストップロス、経験の少ない人間ディーラーの操作、こういったものがきっかけとなり、相場変動を増幅させた可能性がまとめられています。そして、それらに加えてFX取引の売りも1つの要因であった可能性があるということが明示もされています。
 フラッシュクラッシュの背景には何かのきっかけがあるわけですがそれ自体が相場を急変させる訳ではなく、もっと複雑にいろいろな状況が絡んでクラッシュが起こっているのだろうと私も考えております。いずれにしろ、イベントの前にポジションが偏りますと、思惑が外れた場合、強制ストップロスが想定どおりに執行されない、つまりスリッページが非常に大きくなるリスクがありますので、我々もできるだけ前広にイベントリスクの大きさに関する情報を提供して、過度にポジションが傾くことのリスクを周知するように、こういったことには心がけています。
 では、6ページ目をご覧ください。ここからは決済リスクに与える影響になります。検討会で議論されている決済リスクを整理しますと、狭義の決済リスクである外為決済リスク、カウンターパーティーリスク、市場リスク、この3つがあると思っております。もっと広くリスクということでは、オペレーションリスクやコンプライアンスリスクがあるわけですが、ここでは決済リスクに限定します。まず外為決済リスクというのは何かというと、例えばドル円で取引して、決済日に東京時間に円を払ったけれども、ニューヨーク時間になってドルをもらえないというような元本リスクでございます。実はこの外為決済リスクが為替取引のリスクの中では一番大きなリスクであり、我々が一番注意しているものであります。但しFX取引の場合は、基本的に決済日に外貨の決済が発生しないような仕組みになっておりますので、このリスクというのは無視し得ると考えております。
 次にカウンターパーティーリスクに関しては、カバー先、それから個人向けの双方に対してそれぞれがデフォルトした際のポジション再構築コストを負うリスクです。これまでも何度か説明がありましたように、カバー先に対してはPBの利用であるとかCDSによる予兆チェックであるとか、個人に対しては証拠金のやりとりと強制ストップロスの仕組みを導入することでリスクの軽減に各社が取り組んでいると認識しております。
 最後に市場リスクですが、これは未カバーリスクがさらされる相場変動リスクで、ポジションリミットの設定やモニタリングを各社で導入していると認識しております。
このように、各主体でリスク管理を行っていると認識していますが、何点か注意点を申し上げたいと思います。
 7ページをご覧ください。まずPBです。PB取引は、銀行が主にヘッジファンドを対象として、90年代に流動性の確保、カウンターパーティーリスクの管理、決済リスクの管理を集約して、オペレーション効率を上げるというサービスの提供として始まったものですが、2000年代に入って店頭FX取引においてもヘッジファンド同様のメリットがあるということで、PBサービスが広がっています。
 具体的には左上Aの通常の取引に対し、BがPB取引のワークフローになります。FX業者とカバー先銀行は取引を締結するたびに、その取引をPB、これは銀行ですが、PB行につけかえていくことになります。PB行はFX業者とカバー先金融機関との間に入り決済を肩がわりしていく仕組みです。PB行はカウンターパーティーリスクを減じるために証拠金を徴求したり、LGを徴求したりしています。これも先ほどご説明がありましたが、FX業者は1つのPBに対して複数のカバー先銀行とPB契約を結ぶことで流動性を確保しています。
 このように、PB取引は、FX業者にとっては、各種リスクの低下、利便性の向上という目的で行われておりますが、一方でリスクとしては、PBの業務縮小、撤退リスクが常に存在しているということだろうと思っております。実際に過去に撤退するPB行というのもございまして、図表2にありますとおり、カバー取引額に占めるPBの利用割合は低下しています。
 次に、PB行側、金融機関のほうから見たFX業者のリスク管理、これを8ページ目でご説明します。現在、グローバルなPB行で、FX業者向けのサービスを行っているのは四、五行ということだと思いますが、グローバルにしっかりと業務展開を行っており、きめ細かな管理を行っていると認識しております。左にありますとおり、こういった細かいコミュニケーションをとりながら、リスクの管理をしているということです。
 こうしたリスクの管理の内容、質を更に高めるためにも、右下にあるポイントが重要であると考えております。 金融機関ではご存じのとおり、最近ガバナンスやコンプライアンスリスクの管理がかなり厳しくなっているわけでありますが、同様のリスク管理を、今後FX業者にも求めていくということになると思われます。昨年5月にはグローバルコード・オブ・コンダクトが発行されております。これは為替の世界でグローバルに初めて、「行動規範を1つにしましょう」ということで作ったものです。これを参考にしながら、管理の強化を図っていただけたらと考えております。これが一つ目。
 2つ目は、未カバーポジションの取扱いです。今でも未カバーポジションは開示されているわけですが、より透明性を高めるということで、もう少し頻度の高いポジションの開示ですとかポジションリミット管理手法の開示をPB行が求めているということです。ポジションに関しては、先日、あまり大きくないというご認識もありましたが、我々の立場で申し上げますと、かなり大きいというのが認識です。したがって、このあたりも今後検討いただきたいポイントです。
 先ほどもスプレッドの話が出ましたが、スプレッドを原則固定と謳っているFX業者は多いと思います。しかしながらスプレッドは、マーケットのボラティリティーと極めて密接に関係しているものであり、昨今の過剰流動性相場、要はボラティリティーが低い相場では良いのですが、ボラティリティーが上がったときに、我々カバー先金融機関のスプレッドはそれに応じて広がりますので、スプレッドを固定するFX業者の未カバーポジション保有のリスクが非常に高くなるであろうと認識しております。こういったところも、経営の安定性という点で今後注意していただきたいと考えます。
 最後に9ページ目をご覧下さい。短時間の急激な相場変動が、強制ストップロスや未カバーポジションに与える影響について少し考えてみたいと思います。例えば先ほど2016年10月7日、ポンドの急落の話をしましたが、これが左側にあるチャートでありまして、数分で9%ポンドが急落したというケースです。右側がユーロ/スイスのケースで、数分で30%の下落が生じたというケースです。前回協会からご説明がありました通り、未収金発生のメカニズムは左チャートのすぐ上にある三つになりますが、このうちの2つ目、流動性枯渇がスイスフランやポンドのケースで起こっていました。
 例えば、図表1、ポンドのケースでは、ポンドの主要インターバンク市場であるロイター社のマッチングデータを使っていますが、この期間中数秒間分だけではありますが、買値が建っておりません。インターバンク市場でも、数秒間は買値が建っていないのです。ユーロ/スイスのケースでは約数分間分買値が建っていない。こういったときに、我々マーケットメーカーも、なかなかプライスの提示というのが難しい状況が訪れます。強制執行が想定通りの値段で執行できないときに個人からの未収金が発生するのか、それをポジションとしてFX業者の方が持つのかという問題はありますけれども、大きな損失につながるリスクというのは、こういったところであるということです。
 相場のマイクロストラクチャーの分析もかなり進んでおり、マーケットメーカーのリスクアピタイトも戻ってきていますので、ユーロ/スイスのようなケースは減っていることは間違いないと思います。ただ、今後グローバルに過剰流動性が減少していく世界を我々も想定しておりますので、こういったときにフラッシュクラッシュが出現し、想定外の損失が発生するようなリスクについては、常に見ておかねばならないと感じております。
 以上でございます。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、討論に移りたいと思います。ちょっと今日だけでは議論しきれないと思いますが、会議は今日だけではありませんので、別に時間切れで打ち切るつもりはないですが、今日に関しては、あまり余裕がないかもしれませんが。それでは、どなたからでも結構ですので、何かご質問、御意見ありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。じゃ、上柳さん。
 
【上柳メンバー】  
 プレゼンテーションありがとうございました。岩壷先生とは幾つか議論したいところもあるのですが、そういう場ではないと思うので、確認を1つだけさせていただければと思います。
 FXの収益と株相互間の取引との収益を比べられた表がありましたけれども、岩壷先生の資料、4ページですね。この左側の店頭FXのところの下の注で、いわゆる実質的な増減がなかった口座数を除くということで、これは私の理解では、無理矢理右側の株式の表と対比させるとしたら、この真ん中のほぼゼロというところが左側の表ではなくなっていると考えてよろしいでしょうか。それがもしよければ、大体ざっくりでいいですけれども、その実質的な増減のなかった口座数というのは、取引全体を何で見るかって難しいと思いますけれども、ざっくり言って何割ぐらいがこの注記の対象になっているのかというのを伺えればと思います。
 それからもう一つ、荒井弁護士に、これも質問1つだけにさせていただきますけれども、いろいろスリッページの問題とか、プライスが提供されなかったというような事例を挙げておられたのですが、後で弁護士として受任されて、そういう事実をどうやって解明できるのか。私の感じだと、事務局からご紹介ありました、アメリカみたいにどこかでデータがちゃんと管理されていて、それを訴訟で利用できないと意味がないのかもわかりませんが、というようなことでないとなかなか難しいのではないかと思いますけれども、現状でどういう工夫をされたのか、あるいは改善点があるようであれば教えていただきたいと思います。以上です。
 
【池尾座長】  
 お願いします。
 
【岩壷参考人】  
 店頭FXのこの表の口座の増減がなかったというのは、わりと多くの口座で、口座を持っているけれども、中にお金、証拠金が入っていない、もしくはあったとしても取引してないという口座は結構多くあります。これは山﨑さんにお伺いしたほうが早いと思いますけれども、それを省いているということです。右側のほうの株式については、アンケートのほうで無回答、それから、今年取引がなかったという項目がありまして、これを省いています。つまり、ほぼゼロというのは、取引してないのではなくて、取引した結果ほぼゼロというようなことなので、若干2つが違うということです。よろしいでしょうか。
 
【上柳メンバー】  
 そうすると、店頭FXではほぼゼロという、そういう意味での、取引はしていたけれども、損得はあまりなかったという括りはあまりないと。
 
【岩壷参考人】  
 厳密に店頭FXの場合は数字が出てきますので、ゼロの場合はゼロで、プラスとマイナスと分けるのですけれども、アンケートのほうは、このほぼゼロはどういうふうに解釈しているのか本人に聞かないとわからないですけれども、大体ゼロというような、そういう項目があるということです。

【池尾座長】  
 よろしいですか。じゃあ荒井さん、お願いします。
 
【荒井参考人】  
 事案を解明するのは相当困難でございまして、訴訟は求釈明というものがございまして、事実関係を明らかにするために、訴訟の相手方に釈明の証拠を求めるというものでございます。ある価格で約定したということの本来の主張立証責任というのは事業者側にあるものと思います。ですので、レートの推移等を求釈明によって明らかにし、膨大な量になるわけですが、そこで足りないものについて再度開示を求め、再度開示を求めという、それだけで2年ぐらい費やすということで、情報等で分析しながら、さらに不足している情報を得たいと。
 やはりその中ではこういうレートのつながりは、ここのところが不合理があるのではないかというところは、我々は言ってみれば素人でございますから、やはり係争業者さんではない、他のFX業者さんのところに複数ヒアリングにいきまして、事情をいろいろお伺いさせていただくというようなことで、情報をどのようなものをどういうふうに探知していけばいいかというような助言を得たりしてやっております。
 
【池尾座長】  
 それでは勝尾さん。
 
【勝尾メンバー】  
 ご報告ありがとうございます。それでは、まず質問からさせていただきます。
 荒井弁護士のご説明にございました、おそらく2の3つ目の不透明性が生じる要因のところのご説明だったかと思いますが、店頭FX業者には顧客の損を自社の利益とするインセンティブが存在する、そういう仕組みであるというご説明がございましたが、もう少し詳細にこの点について説明していただければと思います。これが1点目です。
 2点目の質問は、金融庁の資料の1ページ、アメリカの概要で、報告制度というものがございます。この報告制度の取り扱いについて、イギリスも含めまして、欧州ではどうなっているのかというのをお聞かせいただきたいと思います。
 続きまして、岩壷教授に対して質問させていただきたいのですが、2点ございまして、1つ目が、8ページでございます。8ページの最後に、実質レバレッジの低下によってプラスの収益が低下し、マイナスの収益は改善し、絶対値が減少するというご説明の箇所で、おそらく私の理解が追いついていないのですけれども、その前の6ページの月次ダミーの分析のところでは、レバレッジの増加によって収益率が下がるということがマイナスの0.33、0.3136ということから読み取れるので、このグラフというかこのダミーの係数だけ見ますと、レバレッジと収益率というのは負の相関があるように見えるわけですね。なので、8ページのご説明と矛盾しているようにみえます。そこはおそらく私の理解不足ですので、ご教示いただけますと幸いです。
 それが1点目で、もう一つございまして、11ページ、中黒2つ目に、未収金リスクを完全に防ぐことは可能というご説明のところで、店頭FX業者が価格を提示し続けることができればという条件が課されています。これについて、三菱東京UFJ銀行の星野オブザーバーの資料の9ページによりますと、フラッシュクラッシュの例が挙げられていますが、インターバンクでもポンドで4秒間ビットが存在せず、ユーロ/スイスレートでも270秒間ビットがないと先ほどご説明でして、このようなマーケットでもビットが存在しないケースがあるということになりますと、そういう場合であっても価格を提示し続けるということを条件とするのはどのような意味があるのかという疑問を持ちました。現実にそういったマーケットがワークしていないというケースがあり得る場合に、価格を提示し続けるという条件についてどのようなことを想定されているのかということを、お聞きしたいというのが質問です。
 質問は以上です。続いて意見を2点だけ申し上げます。報告制度につきまして、先ほどの金融庁のご説明ですと、日本ではデータの保存が義務づけられているのみということでございました。これが日本の制度であるとすれば、アメリカにおける制度内容とは大きな差があると個人的には感じておりまして、先ほどの荒井弁護士のご説明などによりましても、例えば価格操作の防止ですとか、取引の不透明性の解消、あるいは非対称なスリッページの発生の防止ということのために、報告制度の充実というのは喫緊に求められる事項ではないかと思います。日本でも、米国並みというのはかなり大変なこととは思いますけれども、いずれにしても保存の義務づけのみという日本の制度のあり方を考え直して、充実させるべきではないかと考えております。
 2点目はストレステストにつきまして、頻度を上げるという方向性でご検討くださっているということで了解ですが、取引所と店頭FXのストレステストの内容を整合させる必要があるかどうかということも含めて、やはりもう少し議論したほうがよろしいのではないかと思いました。それに関連しまして、PBに関しては、やはりリスク分散じゃなくてリスク移転ならびに集中であるというふうに理解いたしました。以上です。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、荒井弁護士、お願いできますか。
 
【荒井参考人】  
 利害対立というものは、店頭取引でありますから、顧客の損金相当は事業者の利益相当になるという関係にあるということでございます。これはやはりFX取引が為銀主義の放棄をきっかけに為替決済もやってよかろうということで、わっと起こってきた時代に生じた、いわゆる商品先物仲買人から派生してきたような業者さんが始めて、許可制度がないときに、レートが任意につくれるというところもあって、1円もの乖離があるレートでやって、買って落とせば全部損になるというようなことです。そういうときに業者さんとかから聞きますと、FXというのができるようになったということは、ノミ行為を堂々とできることだというふうに、一対一ですので、そういうような話をされていました。
 要するに、顧客の損失が出れば、それは他の顧客との関係は別として、業者の関係では、業者の利益になるわけですから、そこで0.3銭固定の維持の難しさがありながらも、それを維持したりする場合、それから、全顧客のポジションが見えているというような場合には、業者は自社の利益を得るためには顧客にロスカットにかからせるようにスプレッドを開かせてみたり、スリッページを顧客有利にはいかないようにしてみたりというような動機づけが働くということは、これはやむを得ないのではないかということは、他の現在の業者さんとの話の中でも出てきてございます。
 ついでに申し上げますと、先ほどご意見いただいたシステムの話でございますけれども、システムにもスプレッドをわっと開かせるとか、スリッページを逆の方向にはいかないようにするとか、諸々のものは通常のシステムに少しつけ加えれば足りて、その少しつけ加えるのは、そのシステムを見る人が見ればすぐわかるということでございます。ですので、そういうところを見る体制というものが構築されれば、この不透明さとか不健全さとかいうものが、払拭されるのではないかと思います。
 
【御友市場業務監理官】  
 ご質問のありました、欧州において報告制度があるかどうかということでございますけれども、こちらで把握している限りは、現行規制、それからESMAの提案の中には報告制度はございません。米国に無い制度としてネガティブ・バランス・プロテクションというのが入っているということは分かります。これはEUの状況でございますので、個別の国がどうなっているかとか、そういったところの情報はないという状態でございます。
 
【池尾座長】  
 岩壷さん、お願いできますか。
 
【岩壷参考人】  
 6ページのほうの推計式では、レバレッジが上がるほど収益は下がるということを示しています。また、レバレッジ規制を強化するときとするならば、儲かっている人は収益が低下して、マイナスの収益の人の絶対値が減るということは矛盾しているのではないかという意見に関しましては、6ページのほうというのは、儲かっている人も損をしている人も両方入れての話でございまして、儲かっていない人は、その収益率が儲かっている人よりも非常に悪いということと、そういう人はリスクを多くとっているのでレバレッジと収益率はネガティブな関係になっています。
 一方、儲かっている人と儲かっていない人を別々に考えた場合に関しましては、儲かっていない人のケースのほうが大きいですけれども、その人のほうはレバレッジを低くすると収益率のマイナスが減るということが言えます。しかし、儲かっている人のほうも、緩やかですけれども、より儲かっている人のほうがリスクが高いということがありまして、2つ分けた結果ではと全く違うということであります。
 もう一つ質問がありました、銀行のレートが出てないときでも配信し続けることができるかということですけれども、これはこちらに書いてあります、3つ目のリスクになります。店頭業者の中では、非常にカバー率の低い業者もございまして、そういうところは銀行の配信にあまり依存せずにレートを配信しています。もちろんこういった状況ですので、そういうところも未カバーリスクを高めるということについては、非常にリスクが高いと思うので、あまり積極的に配信を進めるということはないですけれども、理論的には配信し続けるということは可能です。それができれば、未収金リスクはゼロにすることができるという話をしました。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。報告制度に関してですけれども、アメリカの報告制度は、我が国よりも充実していることは事実だというふうに思います。私も個人的にはもっと我が国、日本でも報告制度を充実させたほうがいいと思っておりますがそれにはコストがかかる。私の認識だと、アメリカの場合は業者から手数料をとってやっているわけで、だから日本も金先協会が、各社からもっと料金をとって、リアルタイムでのモニタリングサービスとかを提供すればいいのではないかと思ったりしているのですが、そこは検討の課題ということで。
 それでは、永沢メンバー、お願いします。
 
【永沢メンバー】  
 ありがとうございます。まず金融先物取引業協会に質問させていただきます。先ほど、資本規模の小さい事業者はプラットフォーム運営業者を利用されているというお話がありました。具体的にどういうところがそういうプラットフォームを提供されているのか、また、それは1社なのか数社なのかをお聞きできますでしょうか。差し障りのない範囲で結構です。
 それから、先ほどの荒井先生のお話から、裁判所でシステムが不整備という事実認定がなされた場合があったというお話がありましたが、取引のプラットフォーム事業者のシステムに起因するリスクはないのでしょうか。
 また、全体の取引量のどの程度がこのプラットフォーム業者の提供するシステムによって処理――処理という表現がいいのかどうかわかりませんけれども、どの程度このシステムに依存しているのかも、もし分かりましたら教えていただきたいと思います。
 続いて、岩壷先生に質問でございます。私も、先生とは意見が相違するところもあったりしますが、今日は1つ質問のみさせていただきます。先生の資料の1ページ目、最初のところで、FX取引の社会的、経済的意義の第1に挙げておられるのがヘッジ機能ということですが、実際に外貨建て資産を保有している個人がヘッジに店頭FX取引をどの程度利用されているかというデータがありましたら、ご教示いただきたいと思います。
 それから最後に、意見といいますか感想めいたことになりますけれども、金融庁のほうから海外の規制動向の比較をご提供いただきありがとうございました。こうした比較を拝見し、私も、池尾先生や勝尾先生からご指摘がありましたように、報告の制度が充実することが望ましいと思いますし、池尾先生のご提案などはわが国でも検討に値するものではないかと思いました。また、取引の規模とか、参加している投資家のプロフィールとか、どのような事業者で構成されているのか、国によってやはり違いがあるとも思いますが、日本はどの国の事情に近いのかも、今後の検討過程で明らかになり、規制の枠組みについても、どこを参考にすべきかということも見えてくるのではないかと思っておりますが、いずれにしても、まず市場の性格によっても規制の枠組みは違うべきではないかと感じました。
 もう一点、ほんとうにこれは感想ですが、決済リスクをテーマにして議論を進めて今回で3回目となるわけですけれども、荒井先生からのご指摘にもありましたけれども、私は店頭FX取引というところで行われている取引が果たして公正なのかという疑問を抱き始めております。今回の検討会では決済リスクに関してとなっており、取引の公正さは議論のテーマとしては挙がっておりませんけれども、店頭FX取引の問題は、最終的には市場への信頼とか金融制度への信頼の問題になるのではないかと感じ始めております。検討会の最後で議論のテーマとして追加いただけたらと思っているところです。以上でございます。

【池尾座長】  
 山﨑さん、お願いできますか。
 
【山﨑オブザーバー】  
 ご質問いただきありがとうございます。まず一番初めのところ、プラットフォームのお話からさせていただきたいと思っております。これはEビジネス、先ほど三菱東京UFJ銀行の星野オブザーバーもご説明されましたけれども、今、銀行の為替取引、そしてFX取引も、基本的にはコンピューター上でほとんど行って、要するに電子取引というのがほぼ100%に近いということでございます。ですので、プラットフォームをつくるということに一番業者のお金がかかるというところでございます。そのために、このプラットフォームだけを提供する会社というのが、私の知る限りでは、例えばシンプレクスさんとか、カリネックスさんとか、それなりの大手業者が結構長い歴史を持ってこのようなシステムをつくられて、提供されています。また、いろいろと法規制、そして自主規制の変更があるたびに、そのプラットフォームの中を調整して、そのときの規制に合うようにしているようです。
 あともう1点でございますが、私ども、実地監査を行ったときは、必ずシステムがどういうものを使われているか、そして実際そこから配信されているデータ、約定データの提出を受けて、そこで不公正といいますか、たとえば、スリッページに関しましては、2013年に規則を制定しております。どういう規則かといいますと、スリッページの非対称性、先ほどお客様に不利なほうばかりで約定というご指摘もございました。確かにそのようなご指摘もあり、日本だけではなく、海外でも非常に大きな問題になりました。それを受けまして、アメリカも規制をされ、そして日本も規制をするということで、非対称ではいけない。要するに、対称でなければいけないというところを規則化しております。そしてそのようなところを重点的にチェックしております。
 昨年も、これはシステム変更に伴って、以前のシステムはちゃんときっちり対称だったのですが、システム変更したら非対称性になってしまい、それをチェックできなかったという事案がございました。これはあくまでも業者が意図的にやったことではなくて、まさしくシステムのチェック不備とことだったのですが、協会の監査で発見し、処分までしております。
 あと、ご質問いただいた中で、報告というところが先ほどからテーマになっているのですが、NFAに実際に私も訪問したことがございます。私の知る限りではNFAは、基本的に先物取引所のデータを検証しております。もともとそちらの方をやっていたところでございまして、そういうシステムが既にあって、そこに店頭FXのデータも流し込んでやっております。非常に大規模で、先ほど池尾座長からもお話がございましたように、非常にお金がかかることなので、NFAが会員からお金を集めて行うということでございます。
 ちなみに、NFAの予算規模というのは年間90億円程度。当協会は幾らかというとなかなか言いにくいですけれども、すごいなと。私どもはデータ保存ということをいち早く取り入れまして、最低限のデータ保存をさせ、何か必要があるならば、必ず提供しろと。そのような対応でございます。監査に行きましてもデータのチェックができるという体制は、今の段階では十分かどうかはご検討いただきませんといけませんが、このような体制をとっております。以上でございます。
 
【池尾座長】  
 じゃ、岩壷さん、手短にお願いします。
 
【岩壷参考人】   
 ヘッジ機能に関してどれぐらいの人が為替リスクをヘッジしているかということですけれども、実際ヘッジしている割合に関してのデータはございません。ただ、2017年4月に、金融先物取引業協会が金先取引に関する個人投資家の意識調査というアンケートを行いまして、その結果が出ています。証拠金取引を行いたい理由として、一番大きい理由は、ハイリターンが期待できるからというのが54%ですけれども、3番目の理由として、外貨建て資産のヘッジというのが19%ありますので、投資家にとってヘッジニーズというのは確かにあるというふうに言えると思います。
 
【池尾座長】  
 じゃ、松井さん、お願いします。
 
【松井メンバー】  
 ありがとうございます。時間もありませんので、手短にご質問したいと思います。私から2点ございます。本日も大変勉強になるご報告をいただきましてありがとうございました。
 まず1点目は、岩壷先生にご質問なのですけれども、岩壷先生のお話の中で、レバレッジ規制を強化すると投資行動に影響するということが8ページ、9ページあたりに書いてあります。レバレッジ規制を強化したときに、もちろん当初、絶対額が減りますので、それによってFX取引の社会的、経済的な機能なり、役割というのが量的に阻害されるということはあるだろうと思うのですが、さらに規制の強化によって、質的にも何らかの影響が及ぶのかどうか、このあたり、先生のご見解を伺いたいのが1点でございます。
 それから2点目は、コメントになります。先ほど永沢メンバーからも既にお話があったので、ちょっと繰り返しになってしまうところがあるのですが、3回目までの議論を聞いておりまして、本検討会では、決済システムへの影響というところから議論をスタートさせていると認識しております。他方で、前回松田社長からは、当該システムへの影響というのはどのぐらいあるのかということへの疑問が少し提起されましたし、今日の岩壷先生のご説明の中にも、当該システムへの影響ということについてはかなり懐疑的な意見が出ているように思います。
 そのような中、荒井先生からは、顧客保護という観点から非常に問題があるという指摘を受けております。そうだとすると、今後どういう方向で我々は議論していけばいいのかしらと、ちょっと私としては疑問に思ったところです。この点について何ともしっくりこないところがございまして、これは事務局へのお願いですが、今後の議論の方向性について改めて整理をしていただけるとありがたいなと思っております。もし、顧客保護のような話、あるいは先ほど永沢メンバーがおっしゃった、取引の公正性のような話も検討会の対象なのだとしますと、今日、荒井先生からいただいた幾つかの問題提起というのは、一度、業界の方にお答えいただいたほうがいいのではないかという気もしております。今から検討会の方向性をどう設定するかというのは、多少時機に遅れている感じがないではないのですが、ちょっとそのあたり疑問に思ったものですから、コメントさせていただいた次第です。よろしくお願いいたします。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、岩壷さん。
 
【岩壷参考人】  
 レバレッジ規制が強化されて、質的に何が変わるかというご意見ですけれども、他の金融商品と比べて為替はそんなに変動は実は大きくないので、レバレッジをかけることで商品の魅力が上がっております。レバレッジが厳しくなってくると、商品の価値がなくなってくるというのが一番大きなダメージだと思います。投資家からFXはもう投資する魅力がないというふうに思われて、他のもっとレバレッジの高い商品がいっぱいありますので、もしくは海外FXにいくとか、そういうところにいってしまう。そこが一番大きなダメージだと思います。
 
【池尾座長】  
 それでは、坂さん、お願いします。
 
【坂メンバー】  
 ありがとうございました。まず一言、岩壷先生のご報告について感想ですが、FXの取引を行う顧客、あるいは取引方法については、価格の騰落による投機的な利益を得ることを目的として、短期にハイレバレッジの取引を行うタイプのものと、内外の金利差に基づくスワップポイントの獲得を目指して、長期にレバレッジの低いポジションを持つタイプとの2つがあると思います。今日の先生のご報告は、5ページの記載にも、保有期間を1カ月超えるポジションは対象外とありますので、基本的には前者のタイプの投資分析をされたのかなと、興味深く拝見させていただきました。意見については、また次回以降に述べさせていただければと思います。
 あと質問ですけれども、星野オブザーバーのご報告について幾つか質問させていただければと思います。1つは7ページのところで、7ページの図表1については、PBの仕組みについてわかりやすくご解説いただいたかと思います。この図の中のBの枠内ですけれども、①のカバー取引というのは、これまでのご説明では現物取引ということになって、これがPB取引によってつけかえられるということになろうかと思いますが、つけかえられた後のFX業者とPBとの関係というのは、これは現物取引じゃなくてデリバティブ取引の関係になるのかどうなのかということを確認させていただければと思います。もしデリバティブ取引の関係になるのであれば、FXでいうところのスワップポイントの受け渡しのような処理というのはされるのかどうなのかということを、教えていただければというのが1点目。
 それから、この図の中では、①のカバー取引と、それから③の資金決済というところがあるのですけれども、他方で3ページの図表1を拝見しますと、この中で店頭FX取引のカバー取引額というものがございます。ここで、この3ページの店頭FX取引のカバー取引額に計上されるのは、7ページでいうところの①の部分の金額が計上されるのかというふうに理解したのですが、そこを確認させていただければと思います。それから、これは星野さんにお聞きするのか、どなたにお聞きするのがよいか迷うのですけれども、カバー取引に出される金額についてです。これまでのご報告をお聞きした限りでは、取引終了時点の残高に応じてカバー取引がなされるのかなというふうに理解をしたんですが、そうするとデイトレードで取引額が膨らんだ分については、基本的にはカバー取引に反映されないのか、どうなのかということを疑問に思ったものですから、もしおわかりになれば、そこを教えていただければと。
 それから、このページについては3点目ですけれども、議論に出てきております、業界全体としてのPBへの集中ということに関して、図表2というところに金額等が表示をされています。これを拝見しますと、2017年の4月の段階でも45兆を超える大きな額が計上されているわけですけれども、これに対して何社ぐらいのPBがこれに対応しているのかということと、集中という点では、どの程度集中しているのか、していないのか。また、ここにPBとして対応している金融機関が、日本の銀行なのか、外資系の銀行なのか、もし傾向があるのであれば教えていただければと思います。
 それからすみません、もう一つ、8ページのリスク管理のところですけれども、ここについては2つ教えていただければと思います。1つは、おそらくPBのリスク管理ということで、FX業者のほうから、PBのほうが情報を得ているということがあろうかと思います。未カバーポジションの状況等について、先ほど問題提起がありましたけれども、全体として現状において、PBがFX業者のほうから、どの程度ポジションの状況に関する情報を得ることができているのか、できましたらもう少し教えていただければと。
 それから、最後ですけれども、PBのリスク管理のあり方との関係では、この8ページの左側のところでは、②と③あたりのところに、おそらくその方法が書かれているのではないかと思いますが、③の上限設定というのは、要するに一定額以上は、PBによるカバーを引き受けないということなのかということ。それから、②の強制ポジションのクローズというのは、PBによってカバー取引を強制的に終了するということなのか、このあたりを少し確認させていただければと思います。すみません、長くなりまして。
 
【池尾座長】  
 ほとんど時間がないので、すみませんが手短にお願いします。
 
【星野オブザーバー】  
 ちょっとたくさんありましたので。まず、最初のご質問というのは、PBに持ち込まれたときに、その取引が通常の現物取引でなくなるのではないかということでございますが、これは現物のままでございます。そのままの取引をノベーションするということになりますので、現物ということでございます。 
 
【池尾座長】  
 ちょっと詳細な話も含みますので、次回改めてまとめて説明していただくということでお願いしたいと思います。
 では、黒沼先生。
 
【黒沼メンバー】  
 1点質問させていただきたいと思います。事務局説明資料の2ページに、欧州では未収金発生リスクの対応として、ネガティブ・バランス・プロテクションを義務づける案が出ているという話がありました。ただ、このネガティブ・バランス・プロテクションというのは、未収金は発生しないけれども、顧客に損失を負担させないということなので、業者にリスクが移転するだけなのではないかという感じがします。岩壷先生のご説明の中でも最後に、未収金リスクをゼロにする必要があるかという文脈で、ネガティブ・バランス・プロテクションを導入すると、業者が悪いレートを出し続けて、悪い影響が出るというようなご説明があったのですが、これは、ネガティブ・バランス・プロテクションを入れると、未収金リスクが未カバーポジションリスクにかわるという、そういう理解をすればよろしいのでしょうか。教えていただければと思います。
 
【岩壷参考人】  
 ネガティブ・バランス・プロテクションという規制によって、リスクが投資家から移転された業者はビットアスクを広げてロスカットをつけにいくというインセンティブが働くということが問題なのです。投資家にとってみると、自分の未収金を払わなくて、請求されないので、よりリスクをとって大きなギャンブルをしても、損をすることはないわけです。このような変な行動をとり始めることを懸念しています。
 
【黒沼メンバー】  
 トータルとして、業者のリスクというのは高まると考えたほうがいいのでしょうか。
 
【岩壷参考人】  
 高まるからこそ、業者はそれを避けるために変なレートをつけるかもしれないということです。
 
【黒沼メンバー】  
 わかりました。ありがとうございます。
 
【池尾座長】  
 まあ、リスク負担の配分が変われば、当然ビヘイビア変わるはずなので、それで結果的に全体としてリスクが増えるのか減るのかわからないですね。もっと詳細な分析をしないとわからない。
 ちょっともう時間が来ているのですが、今日の議論の中で、この検討会、決済リスクへの対応ということがメーンテーマなので、少なくとも。システミックなリスクというのを考える際には、何らかの増幅メカニズムみたいなものが働く余地があるのかどうか。悪循環みたいなことが生じ得るのかということで、論点だけ確認しておきたいのですが、星野さんの報告の中で、2点ちょっと関連するところがあったと思います。
 1つは、日本のFXの取引参加者というのは逆張りだから、ローカルには価格変動を縮小する効果が働くけれども、大域的な変動が生じると、もしかするとむしろショックを増幅するような動きになるかもしれないというのが1つと、それから、ちょっと説明されませんでしたけれども、7ページの右下の注の2にありますが、FX業者の財務が悪化すると、LGの発行が行われなくなるということになると、さらにそれによってFX業者の財務的な困難性が増幅するという、その2点ぐらいちょっとシステミックリスクとかかわりのある論点があったかなと思いますので、それだけテイクノートしていただきたいということで。
 それでは、ちょっと時間が過ぎましたが、一応本日の会議は以上ということにしたいと思いますので、事務局から何かご連絡がございましたらお願いしたいと思います。
 
【御友市場業務監理官】  
 次回の検討会の日程につきましては、また皆様方のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。もっと十分意見が言える時間を今後とっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、どうもありがとうございました。これで散会といたします。

――了――

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