店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(第5回)議事録

平成30年5月30日
 
 

【池尾座長】  
 メンバーの方、全員おそろいになりまして、定刻ですので、ただいまから、店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会第5回会合を開催いたしたいと思います。皆様には、ご多用中のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、ご連絡です。この検討会はオープンで行っておりますが、記者の方々も含めまして、動画とか静止画の撮影及び録音等はご遠慮いただきたいと考えておりますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に移らせていただきます。
 本日は、先般実施しました資料1、「『店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会』に係る意見募集の結果」と、資料2、「討議資料」としてまとめていただいているものを事務局よりご説明いただいた後、討議を行いたいと思っております。
 それでは早速でございますが、事務局より資料のご説明をお願いします。
 
【御友市場業務監理官】  
 私から、資料のご説明をいたします。資料1をおめくりください。当検討会についての意見募集結果の概要でございます。
 この意見募集は、個人投資家を含め、幅広い利用者の意見を踏まえて議論を進める観点から、5月8日から18日の10日間、実施されました。その結果、合わせて345件のご意見が寄せられまして、そのうち、個人からのご意見が342件、法人からのご意見が3件ございました。
 主な意見につきましては、本検討会のテーマでございます店頭FX業者の決済リスクへの対応策の検討に資すると考えられるものを取り上げさせていただいております。特にレバレッジ倍率に関しましては、非常に多くのご意見をいただきました。そのほか、店頭FX業者の決済リスクへの対応に直接は関係のないご意見は本資料からは省略させていただいておりますが、いただいたご意見につきましては全て目を通しております。
 主な意見といたしまして、1点目が自己資本・ストレステストの拡充につきまして、店頭FX業者の決済リスクへの対応策を強化するのであれば、自己資本の強化・カバー先の分散・厳しいストレステスト等で対応すべきというご意見。
 取引データの報告制度に関しまして、配信レート等の不透明さが問題であるならば、報告の強化や情報開示の強化などを行うべき。
 ロスカット制度他につきましては、投資家保護の観点からは、ロスカットルールの厳格化が目的に即している。または、投資家の損失を抑えるため、業者が投資家の損失補塡をするゼロカット制度の導入が望ましいというご意見がございました。
 2ページ目、レバレッジ倍率につきましては、レバレッジ倍率を引き下げれば、東京外国為替市場の出来高の多くを占めるカバー取引量も減少し、同市場の衰退につながる。流動性の低い不安定な通貨に係る取引については規制を強化すべきではないか。現状の25倍ですら、諸外国と比較すると低い。さらなるレバレッジ倍率の引下げは、投資家の海外逃避を促進し、国内の業者の衰退を招く。10万円程度の少額の資金でも投資を楽しめるのが魅力であるのに、レバレッジを引き下げられると、これができなくなり、納得できない。働くことが難しく、やむを得ずFXで生計を立てている。レバレッジ倍率が引き下げられると、追加の資金が必要になり、これまでどおりの取引ができなくなるため、大変困るというようなご意見でございます。
 その他といたしまして、全ての店頭業者にNDD(Non Dealing Desk)方式を強制すれば、未カバーポジションによる決済リスクが低減するのではないかといったご意見がございましたので、ご紹介いたします。
 次に、資料2としてお手元にあります討議資料について、ご説明させていただきます。本資料は、これまで本検討会において行われてきたメンバーの皆様のご意見、ご議論、事務局や関係者、オブザーバーの皆様方からの説明、ヒアリング等をもとにいたしまして、店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する論点を整理したものでございます。時間の関係上、要点のみ、ご説明させていただきたいと思います。
 1番目は店頭FX取引の規制に関する経緯でございますが、これは事実関係でございますので説明は割愛させていただきまして、2ページ目、リーマン・ショック後の国際的な規制の動向も事務局説明等でご説明いたしました部分でございますので割愛させていただきます。
 3ページ目からでございますが、店頭FX取引の外国為替市場及び金融システムに対する影響でございます。まず、市場規模として、店頭FX取引の年間取引規模は、レバレッジ規制を導入した2010年度の2,000兆円程度から、2016年は5,000兆円程度まで拡大し、また、建玉残高で見ても、2010年度末の2.9兆円から、2016年度末では5.3兆円と増加している。
 2番目の丸で、こうした店頭FX取引規模の増加を受けて、東京外国為替市場においては、当市場のスポット取引額のうち、店頭FX市場のカバー取引額が2~3割程度を占める状況となっており、東京外国為替市場における流動性供給に一定の役割を果たしている。
 決済リスクの店頭FX業者全体への波及経路に関しまして、1つ目の丸で、他方、店頭FX業者の決済リスク管理が不十分な状況では、急激な相場変動が起きた場合、未収金や未カバーポジションなどによる損失の発生により決済不履行に陥るなど、業者の財務が悪化するおそれがある。さらに、LG(信用状)につきまして、一部の業者の財務が悪化した場合に、当該業者のLGに係る銀行与信の縮小が他の業者のLGに係る銀行与信に波及するなど、店頭FX業者全体の信用力の低下を招くこととなれば、カバー取引のコストが上昇し、さらに各業者の財務が悪化するという悪循環が生じる可能性がある。
 次の丸でございますが、また、近年、大手の店頭FX業者においては、プライム・ブローカー(PB)の活用により、カバー取引の管理コストの低減を図ることが一般的となっていますけれども、仮に限られたPBがカバー取引を独占、寡占する状態となれば、当該PBに問題が生じた場合には、店頭FX市場全体に大きな影響が出る可能性も考えられる。
 4ページ目は、外国為替市場及び金融システムに対する影響としまして、上記のように、店頭FX業者全体の信用力の低下と各業者の財務の悪化の悪循環が生じた場合等においては、店頭FX市場の収縮により、カバー取引の規模も大幅に減少し、東京外国為替市場の流動性に多大な影響を及ぼすこととなり、市場における安定的な価格形成が阻害されるなど、カバー取引先金融機関だけでなく、他の市場参加者にも影響を及ぼす可能性がある。
 次の丸で、このように、店頭FX業者の決済リスク管理を不十分のままにしておけば、急激な相場変動等が生じた場合に、外国為替市場や金融システムにも影響を及ぼし、システミックリスクにつながる可能性も考えられるのではないか。
 価格形成に対する影響としまして、なお、店頭FX取引は、短期的な相場変動と反対方向のポジションをとる「逆張り取引」が多く、基本的には「円売り・外貨買い」であるため、こうした取引特性が急激な相場の変動や円高の進行を抑制する要因として働いているとの指摘もある。
 他方、円高急進時には、強制ロスカット取引の執行により、「円買い・外貨売り取引」が瞬時に急増することにより、短期間に円高方向への急激な動きを増幅するリスクがあるとの指摘にも留意が必要ではないか。
 続いて、5ページ目をご覧ください。店頭FX業者の3つのリスクと対応状況としまして、1つ目の丸では、事務局からご説明したような3つのリスクが書いてございます。
 最後の丸でございますけれども、店頭FX業者の3つのリスクに関しては、2016年より自主規制として店頭FX業者のストレステストが実施されておりますけれども、カバー取引先の破綻リスクについて、G-SIFIsに関するリスク量が考慮されていないのではないか。未収金発生リスク及びカバー取引先の破綻リスクについて、建玉残高が少なくなる1日の取引終了時点における建玉残高から算出することで十分か。実施頻度が少ないのではないかといった指摘があります。
 6ページ目で、さらに、店頭FX業者の決済リスク管理のレベルはさまざまであり、業者の中には、ストレステストの結果に応じた自己資本の確保等が十分に行われていないところがあるのではないかとの指摘があるということです。
 7ページ目、店頭FX業者の決済リスク管理の強化に向けた対応策でございます。こういった様々なリスクを抱えていますけれども、店頭FX業者の決済リスク管理の強化に向けた対応を考えるに当たっては、個々の対応策を適切に組み合わせ、1つのパッケージとして考える必要があるのではないか。
 また、対応策を実行に移していく際には、業界内の実情に詳しい自主規制機関による主体的・機動的な取組みや、各業者によるみずからのビジネスモデルに沿ったベストプラクティス実現に向けた努力が望まれるが、対応策の実効性を確保するためには、基本的な枠組みについては、当局の規制・監督による対応が必要ではないかとしてございます。
 (1)ストレステストを通じた自己資本の拡充としまして、自己資本の充実は、店頭FX業者が損失を抱えた場合の手当てとして、3つのリスクのいずれにも対応可能であり、決済リスク管理を向上させる上で、汎用性が高く、優先度の高い対応策と考えられるのではないか。
 2番目に、自己資本の充実について、FMI原則の趣旨に鑑みれば、相場変動に係る未収金の発生リスクにとどまらず、カバー取引先の破綻リスク、未カバーポジションに伴うリスクも含め、極端であるが、現実に起こり得る市場環境を前提にして、自己資本がどれだけ必要かを測る必要があるのではないか。そのため、厳格かつ適正なストレステストを実施し、その結果を必要となる自己資本に反映させていくことが必要ではないか。
 具体的には、店頭FX業者が既に実施しているストレステストについて、以下の点に沿って、厳格化、適正化を図る必要があるのではないかということで、①、②、③とございます。
 ①顧客未収金の発生リスクといたしまして、現状、建玉残高が少なくなる1日の取引終了時点の建玉残高に基づき算出しているが、取引が最も活発に行われている時点におけるリスクを織り込むため、これを日中最大の建玉残高を勘案して算出する必要があるのではないか。
 現状、損失額から控除する証拠金額は、業者が顧客から実際に預かっている証拠金額としているが、このうち、契約上必要な証拠金を超える部分は顧客が任意に引き出すことが可能である。このため、ストレステストの厳格化の観点から、取引所(清算機関)のストレステストにおける証拠金額の取扱いも参考に、損失額から控除する証拠金額を契約上必要な証拠金額とする必要があるのではないか。これは各店頭FX業者が自主的に契約上の証拠金率を引き上げ、リスク量を引き下げるインセンティブとなるものではないかということでございます。
 ②カバー取引先の破綻リスクに関しまして、現状、建玉残高が少なくなる1日の取引終了時点の建玉残高に基づき算出しているが、顧客未収金の発生リスクと同様、カバー取引が最も活発に行われている時点におけるリスクを織り込んで算出する必要があるのではないか。
 これまでのストレステストにおいては、最大カバー取引先の破綻リスクを見てきたところ、これがG-SIFIsであればリスクをゼロとしてきましたけれども、G-SIFIsのリスクも適正に勘案する必要があるのではないか。
 3番目に清算機関による債務引受けが行われた取引については、清算機関が十分な財務資源を有していることから、ストレステスト上、リスク量をゼロとすることができるのではないか。また、このような取扱いとすることは、リスク削減のため、清算機関の活用を促すことにもつながるのではないかということでございます。
 ③ストレステストの実施頻度といたしまして、常時、リスクを把握する観点から、現状の年1回から毎日とする必要があるのではないか。
 9ページ目でございますが、ストレステストの結果、自己資本規制比率が一定の比率を下回る店頭FX業者については、現状、基本的に各社の自主的な対応に委ねていますけれども、当局が自己資本の積増しまたは契約上の証拠金率の引上げ(レバレッジの引下げ)等を通じたリスク量の削減を求めていく必要があるのではないかということです。
 ※印ですけど、ストレスシナリオについては、当局による監督上は、FMI原則と同様、現実に起こり得る市場環境を前提としたヒストリカルシナリオを原則とすることが考えられるのではないかということでございます。
 (2)取引データ報告制度の充実については、店頭FX業者と顧客との利益相反関係に基づく不公正取引の防止とともに、決済リスク管理の強化を図る観点から、各業者に対して、日々の取引データについて、自主規制機関及び当局への報告を義務付けてはどうか。
 すなわち、店頭FX取引では、顧客と業者が利益相反の関係にあることから、取引の公正性・透明性の確保が課題となっており、取引データの報告制度の充実による取引の監視体制の強化は、投資家保護の向上や適正な価格形成につながるものと考えられるのではないか。
 加えて、自主規制機関が、平常時・相場変動時を通じて、店頭FX業者によるロスカット実施も含めた取引の監視体制を整備することは、自主規制機関による業界全体の決済リスクの把握能力の向上に資すると考えられるのではないか。
 さらに、自主規制機関による監視が強化されれば、監視の対象となる各業者においても、適正なロスカット制度の執行が促されるなど、決済リスク管理体制の強化につながるのではないか。
 「なお」以降は、米国の制度のことが記載されております。
 10ページ目、こうした取組みを参考に、我が国においても、自主規制機関における対応が必要ではないかということになってございます。
 11ページ目に、(3)といたしまして、証拠金率(レバレッジ倍率)について。リーマン・ショックを踏まえた国際的な議論において、取引所(清算機関)に対しては、「極端であるが、現実に起こり得る市場環境」のもとで想定される損失をカバーできる財務資源の備えが求められている。仮に主要通貨別に1985年以降の最大の相場変動率を前提として、未収金の発生リスクを証拠金のみによってカバーするとすれば、大半の通貨ペアにおいて、レバレッジ倍率は現行の25倍を下回る水準となる。
 2番目に、証拠金率の引上げ(レバレッジ倍率の引下げ)による決済リスクへの対応については、未収金リスクへの確実な備えとして必要があるとする意見や、取引規模を抑えるために必要であるとする意見のほか、投資家保護の観点から肯定的な意見があった。
 他方、店頭FX業者の決済リスクの管理という観点から見た場合、業者の自己資本が充実し、未収金を吸収できる十分な財務基盤を備えることとなれば、必ずしも現状以上の証拠金規制は必要ないとの意見、また、ボラティリティーの異なるさまざまな通貨に対し、一律の証拠金率を設定することは、理論的な裏付けが難しいとの意見があった。
 したがって、まずはストレステストを通じた自己資本の充実等を通じて、高度なリスク管理体制の構築を確実に進めることとし、その効果を評価した上で、なお、証拠金規制を含めた他の方策の採用が必要であると判断された場合には、再度、検討することとしてはどうかというものでございます。
 12ページ、(4)その他の対応策として4つ挙げております。
 1つ目は未カバーポジションの情報開示といたしまして、店頭FX業者がカバー取引を行うことなく、自己で抱える未カバーポジションについては、業者がみずから設定する未カバーポジションの上限額に大きな差が見られ、上限額が1,000億円を超える水準となっている業者もある。未カバーポジションは、へッジされていないエクスポージャーであり、相場が急変動すれば、保有する店頭FX業者は直接的にその影響を受け、多大な損失を被る可能性もある。店頭FX業者の決済リスクへの対応という観点から、情報開示等が必要ではないか。
 ロスカット監視間隔の短縮については、ロスカット制度に係る監視間隔については、店頭FX業者間で開きがあり、顧客の証拠金維持率が100%以下となった場合において、常時監視を含め、1分以内の間隔で監視を行う者が大半を占める中、自主規制で最低ラインとされている5分超10分以内の間隔で対応を行っている者もある。ロスカット制度は、相場変動による顧客の損失を証拠金の範囲内に抑える効果があり、店頭FX業者の決済リスク管理の上でも有効であると考えられるため、業界全体として、監視間隔の短縮を進めていくべきではないか。
 3番は相場急変時の対応としまして、一部の店頭FX業者においては、重大な政治・経済イベント前に、顧客の保有建玉上限の引下げや証拠金率の引上げについて、自主的、機動的に対応する措置を既に導入している。こうした措置は、相場の急変によりリスクが高まる可能性が把握できた時点で、あらかじめ、これを低減するものであり、各業者の決済リスク管理上、必要であれば、適切な対応がとられていくべきではないかということでございます。
 最後、13ページ目ですが、顧客の損失を限定する規制としまして、ドイツ及びフランスでは、顧客の預託した証拠金を上回る損失は店頭FX業者に転嫁する規制(Negative Balance Protection)が導入されておりまして、我が国においても導入を検討すべきとの意見。他方、この規制については、顧客は証拠金を上回る損失が発生しても、それを負う必要がないことから、顧客が損失の可能性を顧みずに、リスクの高い投資を行うこと(モラルハザード)を誘引してしまうといった指摘のほか、未収金を負うことを嫌う店頭FX業者が恣意的なスプレッドの拡大等によりロスカットを発動させるインセンティブが増してしまうのではないかといった指摘もあり、導入については、なお慎重な検討が必要ではないか。
 その他検討すべき点はあるかということでございます。
 以上でございます。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、討議に移りたいと思います。どなたからでも結構ですので、ご意見あるいはご質問等がございましたら、お願いしたいと思います。
 それでは、上柳メンバーから順にお願いします。
 
【上柳メンバー】  
 ありがとうございます。
 資料2でいいますと11ページのところですけれども、証拠金率(レバレッジ倍率)について、このペーパーでは、すぐには具体的な引下げに至らないという趣旨の文章になったことについて、残念に思います。
 11ページの3つ目の丸のところに、例えば、「必ずしも現状以上の証拠金規制は必要ないとの意見」と指摘してありますけれども、そもそも、特に店頭取引については、具体的なストレステストの結果がない。年に1回とかいうものしかなくて、この指摘のようなことは言い切れないのではないか。必要だということの立証もできていないという見方もあるかもわかりませんが、少なくとも、現状以上の証拠金規制は必要ないとは言えないと思います。
 それから、異なる通貨ペアについて、一律の証拠金率の設定がしにくいのではないかとの指摘があります。これも理屈的にはそのとおりかとは思いますけれども、通貨ペアごとに工夫するということもあり得るかと思います。10倍、一律にするというのは、これも平均的にはそのぐらいでいたし方ないかなと考えました。比較するのは不適切かもしれませんけれども、同じ金融商品だとした場合、株式の信用取引の倍率と比べても、かなり、現状は高過ぎるのではないかという意見を持っております。
 特にそう思いましたのは、今日、資料1でご報告いただきました意見の中に、2ページのレバレッジ倍率の4つの目の矢でしょうか、「投資を楽しめるのが魅力である」というものがあります。投資ではなくて、投機ではないかと思います。それを楽しまれるのはあり得ることだとは思いますけれども、市場なり参加者がどのような認識をお持ちなのか、まだ不安に思っております。
 ましてや、その次の矢の「やむを得ずFXで生計を立てている」、こういう方がいらっしゃることも認識はしたいとは思いますけれども、やはり、生計を維持するようなものではないということは、当局や協会からも指摘する必要があると思います。勧誘がない場合に適合性原則の適用があるかどうかという議論はあるわけですけれども、一般的な啓蒙も含めて、対応が必要だと思います。
 そういう点から言うと、少なくとも資料2の12ページに掲げていただいた3つの点はぜひ実施する必要があります。あわせて、資料2の8ページの③になりますが、ストレステストについて、常時リスクの把握と、それに基づいた自己資本の確保ということについて、当局のきっちりした監視も含めて、絶対に実現されなければいけないと思います。最後にいたしますが、9ページの(2)の日々の取引データの保存及び報告もマストだと思います。このあたり、どのぐらいのペースで確実にできるのかどうか、座長がもし適切だと思われたら、どこかの時点で協会のお覚悟のほどを聞いていただきたいのと、それから、当局のコミットメントをいただければと思います。
 以上、意見です。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。
 では、勝尾メンバー、お願いします。
 
【勝尾メンバー】  
 ご報告ありがとうございます。
 まず、ストレステストを通じた自己資本の拡充、それから、取引データの報告制度の充実といった、内容に賛同しております。
 その上で、3点申し上げます。
 第一に、ストレステストの内容につきまして、取引所のストレステストとは同一の内容ではないと存じますけれども、厳格性や適正性について、少なくとも同等のレベルが保たれたストレステストの内容となっていることが必要であると考えます。
 第二に、規制に関する制度の施行後において、ストレステストの実施状況と、自己資本の積増しや契約上の証拠金率の引上げ等を通じたリスク量の削減等の実行状況について、継続的に監視する仕組みが必要であると考えます。
 第三に、取引データの報告制度の充実による監視体制の強化の実効性を確保するには、自主規制機関の人員等の体制強化が不可欠であると考えます。
 以上です。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございます。
 では、永沢メンバー、お願いします。
 
【永沢メンバー】  
 ありがとうございます。事務局の皆様には、これまでの議論を討議資料案として取りまとめていただき、ありがとうございました。
 結論から申しますと、私は、まとめていただきました案に賛成でございます。店頭FX取引の外国為替市場及び金融システムに対する影響について、3ページから4ページにかけて整理いただきました。店頭FX業者の決済リスク管理が不十分であることに起因する為替市場や金融システムの混乱の発生を、金融行政は予測しきちんと備えるべきと私は考えます。
 また、この検討会でのヒアリングを通じて、多くの方が、業者のリスク管理体制が不十分な業者が市場に参加している現状が心配になったのではないでしょうか。少なくとも、私は懸念を深めた一人です。5ページから6ページにかけて、業者の問題点について具体的なご指摘をいただきましたが、これらの点にどうスピード感を持って対応し解決していくかが課題となると考えます。
 7ページ以降に、リスク管理の強化に向けた対応策の考え方をまとめていただいております。私も途中でいろいろ申しましたが、レバレッジ規制1つに頼るのではなく、その前にやれることがあるとも思っており、例えば、ストレステストの実施の頻度を上げ、また、厳正かつ適正にそのテストを行っていただくことがまずは必要で、その結果、自己資本が足りない事業者が出てくることが予測されますが、そのような場合には、9ページの一番上になりますけれども、当局が自己資本の積増しを求め、それができないようであれば、その事業者に対して、証拠金率の引き上げを監督官庁として指示するというアクションが迅速にとられるべきであると考えます。
 また、リスクのカバーに関連しては、実施フェーズもリスクはゼロではないと思いますし、清算機関の設立は、業界全体で早急に取り組んでいただく必要があると思いました。
 それから、9ページの、日々の取引データの自主規制機関及び当局への報告の義務付けという提案に賛成いたします。個人と事業者が相対で取引することに、利益相反や情報格差があるのではないかという問題意識を今でも持っておりますが、個人投資家の方々から意見を直接いただき、それほど心配する必要がないのかもしれない、自己責任を全うできる方が参加している市場なのかもしれないと思いつつ、それでもやはり、価格形成の公正さというのは、市場にとって一番に大切にしなくてはいけない価値であり、行政は、その価値を保護し推進すべき役割を担っていると思います。そのためにも、監視の目がこの市場に対してきちんと入ることは必要ではないかと考えます。
 それから、レバレッジ倍率を引き下げるべきかどうかについては、個人の投資家を中心に342件もの意見が寄せられたということです。私のところにも、いくつかの意見を頂戴しておりまして、なるほどと思う意見もございました。個人的には、レバレッジ規制は投資家保護に資する規制と考えておりますけれども、先ほども申しましたように、ほかに代替し得る方法がないかどうか、まずは検討することが必要と思います。
 というわけで、11ページの最後にありますように、事業者におかれましては、ストレステストを通じた自己資本の充実などを求め、高度なリスク管理体制の構築を進めることに、まずは取り組んでいただきたいという考えに賛成いたします。
 そして、そうした取組みの効果を評価した上で、議論を再開すべきかどうかを判断するという提案に賛成いたします。どんな場合に議論を再開するかは、明記しておいたほうがよいようには思います。難しいことかもしれませんが、何となく終わってしまうということのないように、検討が再開されることも必要なのではないかと思っております。
 そして、誰が警告を鳴らすかということになりますが、FX業界の関係者以外の金融の専門家の目がこの市場に入るようにすることも大切だと思っております。店頭FX市場の規模が5,000兆円になっているということを、私の周囲の金融の専門家の方でご存知ない方が案外多くて驚きました。金融庁は毎年、金融レポートを公表されていますが、FX取引市場に関する記述をもっと充実いただき、ほかの金融業界の専門家の目に触れるようにしていただくことも必要なのではないかと思います。
 12ページの未カバーポジションの情報開示ですが、店頭FX取引の愛好家の方々におかれましては、事業者に開示を進めるよう求めていただくことをお願いしたいと思います。投資家にとって決済リスクはあるよりもないほうがいいはずであり、投資家が、決済リスクの低減に真面目に取り組んでいる事業者を選択できるよう、選択に必要な情報開示を求めていくことが進めば、決済リスクの低減に真面目に取り組んでいる事業者を育てることにつながり、結果的に良質な店頭FXを育てることになるのではないでしょうか。
 13ページのNegative Balance Protectionについては、私は、後半部分に書かれている理由から、慎重であるべきではないかと考えます。
 最後になりますが、正直申しまして、FXや仮想通貨のような短期の取引には、私は否定的な立場ではありますが、どのようなスタイルの投資であれ、他人に迷惑をかけない限りは尊重されるべきとも思っております。ただし、自分たちのことを一般の個人と呼ばせていただきますが、FX取引を行わない一般の個人も、この低金利下で、やむを得ず投資信託や外貨建て終身保険を通じて為替リスクを負っているわけで、そうした一般の個人に店頭FX市場の決済リスクが波及し、日本発の第2のリーマン・ショックが引き起こされるようなことは決してあってはならないと思います。そうした決済リスクは、FX取引を通じて利益を得られている方々の間で未然に防いでいただきたいと思いますし、当局には、そうしたリスクが一般の個人に波及することのないよう、こうした事業者に対する適切な監督をお願いいたします。
 以上でございます。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 ほかのメンバーの方で、いかがでしょうか。
 それでは、黒沼先生、お願いします。
 
【黒沼メンバー】  
 基本的に事務局で提示された案に賛成でございます。
 FX業者の決済リスクへの対応策として、レバレッジ倍率の引下げも視野に入れた議論を行ってきたわけですけれども、レバレッジ倍率の引下げよりも、まず、ストレステストを通じた自己資本の充実が重要であるという観点に立って、その中で幾つものアイデアを盛り込んでいただいたと思います。細かいところも含めて、事務局の提示された案に賛成いたします。
 特に、ストレステストを通じて自己資本が不足していると見られる業者に対しては、9ページにあるように、当局が自己資本の積増しや契約上の証拠金率の引上げ等を通じたリスク量の削減を求めていくという点が示されていて、これは高く評価できますので、ぜひ、実施していただきたいと思います。
 それから、取引データの報告制度の充実という点についても、決済リスクへの対応策ということだけではなくて、利益相反関係に基づく不公正取引の防止ということも視野に入れて、この制度を整備し、これについては自主規制機関において、いわば実力を蓄えていただいて、適正な取引が健全に行われるように、自主規制のレベルを引き上げていただきたいと考えております。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、坂メンバー、お願いします。
 
【坂メンバー】  
 ありがとうございました。
 討議資料の項目にしたがって、幾つか意見を述べさせていただければと思います。
 まず、7ページの1つ目、2つ目の丸についてですけれども、この2つの観点は極めて重要だと思います。若干の付言をさせていただきますと、1つ目の丸につきましては、1つのパッケージとして、バランスのとれた規制が必要であると思いますし、そのバランスを考えるときには、規制の実効性ということも十分勘案する必要があるのだろうと思います。
 それから、2つ目の丸につきましては、自主規制と、それから、当局の規制・監督の役割分担、これは非常に大事なところかと思いますけれども、適切な方向性を示していただいているのではないかと思います。加えて、自主規制あるいは行政規制・監督の改善や高度化を可能にするようなフィードバックという観点も、今後、より重要になっていくのではないかと思っています。
 次に、7ページから9ページにかけてのストレステストと自己資本の拡充という点についてですけれども、全体として、記載されている対応は必要と思います。日中最大値をとることですとか、あるいは毎日のストレステストをきちんと見ていくということは、むしろ、当然、要請されるところではないかと思います。
 8ページの②の3つ目の矢羽根に示されている点についてですけれども、清算機関のリスク管理やテールリスクへの対応が適切に行われていることを前提とできれば、カバー取引先の破綻リスクはゼロとすることもできようかと思います。店頭デリバティブの管理のあり方について、方向性としては、清算機関の活用が推進されるべきと考えておりますけれども、清算機関がカバー先として利用されるためには、利用促進に向けた清算機関や関係者の工夫といいますか、尽力というのも求められるように思われます。
 それから、9ページの1つ目の丸ですけれども、自主規制機関の役割、取組みを尊重しつつも、最終的には当局がきちんと対応できるということが必要であり、こうした仕組みというのは、ぜひとも必要かと思います。制度の具体化、運用に際しては、当局が迅速に状況を把握し、対応できるよう、配慮をお願いしたいと思います。
 ※印ですけれども、当局の監督についてはヒストリカルシナリオを原則とするという方向性については賛成ですけれども、サンプル期間としては、十分な期間を確保する必要があろうかと思います。基本的には、取引所に倣った期間のとり方が必要なのではないかと思います。
 なお、取引所では、ヒストリカルシナリオに加えて、第2回会議の取引所の資料の4ページに記載されていたかと思いますけれども、仮想シナリオについても、その必要性があるかどうかについては検討が必要なのではないかと思います。
 なお、自己資本規制比率については、第1回の会議において、店頭FX業者のリスクを適切に把握できているかという問題提起がされていたかと思います。ストレステストのあり方やその結果の検証の中で、必要に応じて、さらに検討を図ることも必要かと思います。
 次に、9ページから10ページの取引データの報告制度についてですけれども、この制度も、ぜひ必要だと思います。決済リスクの点に鑑みますと、店頭FX業者の抱えるリスクというのは、顧客との取引の傾向あるいはカバー取引のあり方により左右されるところがあると思います。例えば、短期の高レバレッジの取引を多く行う業者と、中長期の低レバレッジの取引を多く行う業者では、業者のリスクのあり方は異なると考えられますし、また、フルカバーに近いカバー取引を行う業者と極めてカバー率が低い業者では、当然、業者の抱えるリスクが異なってくると思います。リスク管理能力を高めていくため、その前提となるリスク把握能力を高める取組みを業界として進めていくということは、極めて重要だと思います。
 報告制度の整備には、相応の費用といいますか、コストが必要になるものと思われますけれども、これはいわば店頭FX取引において提供するサービスをより洗練されたものとするための投資という側面もあるものですから、ぜひ積極的な位置付けをお願いしたいと思います。
 他方で、ITの進歩によって、低コストで整備の工夫を図るということもあり得るように思われます。低コストで充実した報告制度を構築するように、ぜひ、尽力をお願いしたいと思います。
 また、報告された情報について、適正な形における一般への開示、それから、個別顧客への開示のあり方も非常に重要かと思います。この点についても、ぜひお願いしたいと思います。
 それから、証拠金率の規制については、未収金リスクに対する対応の観点及び間接的に店頭FX業者の破綻等のリスクを低減させる観点から、重要な手段とは思います。ただ、今回のご提案にありますとおり、方向性として、リスク把握能力の向上、それから、リスク管理能力の高度化を図るということであれば、まず、それを図るというのも1つのあり方かとは思います。
 それから、12ページの未カバーポジションの情報開示についてですけれども、未カバーポジションは、店頭FX業者と顧客との利益相反関係を先鋭化するものであり、また、店頭FX業者の破綻リスクを高めるものであることから、個人的には、本来、その抑制が図られるべきものと思います。直接、その抑止を図る規制を入れない場合であっても、情報の開示というのは必要不可欠と思います。
 最後に13ページのNegative Balance Protectionで、先ほど永沢委員からは慎重にというご意見がありましたけれども、私は、当面、欧州で導入の試みがあるということですので、その状況も見てということかと思いますけれども、ぜひ、将来的には導入を検討すべき課題かと思っております。
 以上です。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。いかがですか。
 では、松井メンバーお願いします。
 
【松井メンバー】  
 ありがとうございます。まず、事務局の皆様が大変丁寧にこの討議資料をまとめてくださったことに敬意を表したいと思います。
 私も皆様と同じく、今回のご提案については、基本的に賛成でございます。これまでここで行ってきた議論を踏まえて、非常にバランスのとれた結論を提示してくださっていると思います。また、できるところから段階を踏んで対応していくというのも、現実的な非常によいご提案ではないかと思います。
 個別に見ていきますと、例えばストレステストについては、実効性を確保するために厳格化していくでありますとか、あるいは取引データ報告制度を充実していくでありますとか、これについても問題ないのではないかと思います。
 基本的な考え方として、これを拝見していますと、やはり、各業者あるいは業界に、より高度に機能を発揮してもらうということが期待されているように読めまして、それは結局、長い目で見ると、個々の店頭FX業者の信用力を上げていくことにもつながりますし、業界の信頼度を上げていくことにもなりますので、中長期的にこの業界を成長させる、あるいは取引を健全化する、そして、さまざまなリスクを低減するということにつながるのだろうと理解しております。
 また、清算機関については、現時点で取り組んでいる業者はないということですけれども、検討会として、ここに参入してくる業者が出ることを促していくというところも、なかなかおもしろいアイデアだと思っています。
 その上で、1点だけ質問させていただきたいのですが、7ページの5.店頭FX業者の決済リスクの管理の強化に向けた対応策の2つ目の丸に、当局に関する記述がございまして、今後の対応の上で、「基本的な枠組みについては、当局の規制・監督による対応が必要ではないか」ということで、ここは当局の役割が少し強目に書かれています。通常考えていくと、例えば、先ほど申し上げたように、まずは各業者に自主的に対応してもらう。それでもうまくいかない場合は、業界あるいは自主規制機関のようなところで対応していく。それでもうまくいかない場合には当局が強い規制をかけていく。むしろ、当局の規制というのは補充的に出てくるのが自然なのかなと思ったのですが、基本的な枠組みを当局が出しますと示されていまして、なかなか強い考え方が示されているところかと思うんですけれども、この考え方はどういうところから出てきているのか、少しお知らせいただけるとありがたいと思った次第です。よろしくお願いいたします。
 
【中島審議官】  
 まとめて一通りいいですか。
 
【池尾座長】  
 では、その辺りは後ほど。
 
【松井メンバー】  
 はい、よろしくお願いします。
 
【池尾座長】  
 私も意見はありますが。
 では、弥永先生。
 
【弥永メンバー】  
 ありがとうございます。私も既に他の委員の先生方がおっしゃったこととほとんど重なっているとは思いますけれども、この討議資料は、非常によくまとめていただいていると思います。
 やはり、決済リスクへの対応という観点から、直接的に効果があるだろうと思われるストレステストの洗練、強化を取り上げていただいている点は、とても適切であると考えております。
 また、データ報告制度は、自主規制機関や当局による適切なアクションを可能にするのみならず、店頭FX業者の方々にとっても適切な行為を行うインセンティブを与えることになると思います。とりわけ、店頭FX業者さんの取締役会においても、このような制度が入ってきますと、やはり、決済リスク管理体制あるいはその運用状況を意識的にモニターすることにつながると考えられる点は、非常に高く評価できると思っております。
 もっとも、坂委員もご指摘されていましたけれども、データ報告制度は、直感的に考えると、かなりのコストを要するものと思われます。9ページに挙げられていますように、アメリカでは、このような制度を導入するにあたって、規制の目的とコストを何らかの形でバランスさせているのだろうと思われます。アメリカなどの経験から学んで、一定のレベルの規制の実効性を担保し、それは前提とした上で、どうやったら低いコストで合理的、効率的に行えるのか、コストエフェクティブに行えるのかということを、とりわけ、自主規制機関としては検討していただくとよいのではないかと感じました。
 私は、先ほど松井メンバーがおっしゃっていた点についても、金融庁が非常に積極的にこれに取り組もうとしている姿勢がここにあらわれているなと思いました。やはり、自主規制機関が会員の方々に非常に積極的にあることを推奨していこうというときに、金融庁が後ろ楯になってやってくださるのだろうと私はこのとりまとめを見て思いました。松井メンバーのご質問に対してどのようなお答えがあるのか、伺ってみたいと思います。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございます。メンバーの方々からは一通りご意見をいただきましたが、どうしましょう。
 
【中島審議官】  
 ありがとうございます。この討議資料をまとめるに当たって、議事録をもう1回チェックしながら、何とかここまでまとめてきたということで、今日もまた幾つか新しい視点もいただきましたので、さらにブラッシュアップしていきたいと思っております。
 いただいた質問の中で、上柳先生から、今後、どういうペースで進めていくのかというところがございました。とりあえず、事務局としては、今回はこの討議資料をまとめるのに全力を傾注してきたということで、最後の質問にも関係いたしますけれども、一つ一つの項目、例えば、どれは自主規制で、どれは監督指針、どれは法令レベル、具体的には、内閣府令になると思いますが、ある程度切り分けをしながら、基本的な考え方は、ここに書いてありますように、実務に関するようなことはできるだけマッチした規制ルール、そうはいっても、大枠として押さえが必要だと思う部分は監督指針や内閣府令に落とし込んで、できるだけ、単に自主規制機関任せということにならないようにしていきたいと思っています。そのペースもスピード感を持ってということで、報告書がまとまり次第、次のステップに進みたいと思っています。
 今回、何でそこまで、金融庁がやっているという点については、まさに最初に書いてある問題意識の通りです。FX取引の規模のみならず、その影響というのは、今のグローバルな金融マーケットの中では、我々、常に相場が変動するときには、今でも個社については相当程度気を遣いながら見ているというのが実情であります。そういう意味では、我々としては、非常に関心を持っているということで、この検討会も開き、この報告書も取りまとめているということであります。
 それから、勝尾先生から、今回のストレステストの水準は、取引所と比較してどういうレベルかという点については、この討議資料は、取引所と同レベルにするという考え方でまとめております。ストレステスト自身はもちろん同等レベルですけれども、その後の対応のところでは、例えば取引所であれば、自己資本ということではなくて、財務資源をそのために割り当てるとか、事後にも徴収する、そこは取引所、清算機関ですので、さらなる手厚い規制が入っておりますけれども、ストレステストに関して言えば、取引所と同等レベルとしたいと思っております。
 そのほか、何かお答え漏れの部分があれば、追加でご質問いただければと思います。
 
【池尾座長】  
 基本的に、経済学的に言うと、市場の失敗が存在するということが考えられる際には、ある種の公的な介入というのは当然のことだという話だと思います。ただ、市場が失敗するから、政府が出ていくといっても、政府も失敗するかもしれないので、政府の失敗の可能性も考えておかなければいけない。特に金融の場合は、政府というか、監督当局が直接やるというよりは、自主規制機関に実務に近いところで対応してもらうというやり方をとるのが基本的な枠組みになると思っています。
 それでは、オブザーバーの方で、特に金融先物取引業協会は非常に大きな役割を期待されていて、他方、現状において、協会が動員できる人的資源とか予算は限られており、今後、役割に応じた体制整備も求められていると思います。体制整備に当たっては、業界の方々にもきちんと協力いただいて、それなりの資源を協会が獲得できるように、業界全体としてやっていただきたいなと思いますが、先ほど、決意表明という話もありましたよね。
 まず、山﨑さんからご発言いただければと思いますが。
 
【山﨑オブザーバー】  
 まず初めに、メンバーの皆様から貴重なご意見をいただきまして、ほんとうにありがとうございます。私ども、多大な覚悟を持って進めていきたいと思っております。
 また、今、お話を承る中におきまして、既に私の頭の中は、報告書を頂戴した後、どういうふうにやっていくかということばかりが気になってくるところでございます。私ども自主規制機関として、2点ほど申し上げたい点がございます。これはぜひお聞きいただきたいと思ってございますが、今回の対応策というのは、多分にシステムの変更ないしは新設というものを伴うものと考えております。そうなってまいりますと、大手の業者でも、開発には、かなりの負担、時間が生じることが想像できるわけでございます。それを考えますと、中小の業者に至るまで着実に実施していただくためには、当局にも、ある程度の時間等のご配慮をいただきたいと考えているところでございます。
 また、2点目でございますが、先ほどメンバーの方からもご発言を頂戴いたしましたが、報告制度はリテール向けの店頭取引においては、初めての制度になるのではないかなと考えております。そのため、自主規制機関としましては、やはり実効性のあるもの、先ほど池尾座長のお話にもございましたように、会員の方から会費としていろいろなものを頂戴して実行していくわけでございますので、やはり、納得感をいただくためにも、費用対効果というものを考えて、調査、検討、そして設計を行って、速やかに実効性のある制度を構築していきたいと考えております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。
 ほか、オブザーバーの方で、ご発言を希望される方。
 どうぞ。
 
【星野オブザーバー】  
 2点述べさせていただきます。
 まず、7ページの2つ目の丸ですけれども、「各業者によるみずからのビジネスモデルに沿ったベストプラクティス実現」という話について、ぜひ、FX業界版のコード・オブ・コンダクトのようなものの作成をご検討いただけないかと思っております。OTC(店頭)の為替の世界というのは、現在、グローバルで、いわゆるホールセールのマーケットのコード・オブ・コンダクトというのをつくっており、かなり詳細なものをつくっております。多くのFX業者の方にもサインしていただいております。一方で、ホールセールのものですから、リテールのマーケットに向けたルールづくりにはなっておりません。したがって、かなりの部分は参考にできると思いますし、FX業者のコード・オブ・コンダクトの作成のようなことをご検討いただけたらと思っております。また、コード・オブ・コンダクトのようなものを作成することによって、9ページのデータの報告の話について何をやっていいのか、何をやってはいけないのか、これをある程度明確にしないと、データを集めても意味がありませんので、そういった意味でも役に立つと思っております。
 それから2点目ですが、8ページの矢羽根の3つ目、「清算機関による債務引受けが行われた取引について」という話が出てきます。これも当然のことながら、清算機関に清算集中させることのメリットはございます。一方で、私のプレゼンさせていただいた中にも含みましたけれども、為替のリスクにおいて一番大きなリスクというのは、元本の決済リスクです。清算集中をさせたときに、元本の決済リスクが表に出てくると、より大きなカウンターパーティーリスクをなくすことによって、逆に大きな元本決済リスクを生むというリスクはあります。当然、これを消す仕組みを考えることはできるわけですが、そういった仕組みも一緒に考えながら、清算集中というものを進めていっていただきたいと思っています。
 以上です。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。
 メンバーの方、発言は必ずしも1回限りということではありませんので、もし追加のご意見があれば、ご自由にお願いしたいと思いますが。
 どうぞ。
 
【勝尾メンバー】  
 清算機関に関してですが、その側面も含めまして、今後の取引所の役割ですとか、そういった方向性について、何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思っておりますが。
 
【池尾座長】  
 リクエストがありましたので、お願いできますか。
 
【伊藤オブザーバー】  
 最初に、取引所につきましては、ご承知のように、リーマン・ショックを契機としまして、FMI原則がグローバルに定められて、それに応じて、かなり厳しいリスク管理を徹底してきたということでございます。今回のこの会議を通じて、店頭FX業者の方々がそれに準じたような形でのリスク管理というものが提起されたということで、今回の提案資料も含めまして、市場の決済リスク低減、投資家保護の向上が深まるということで、ぜひ実現していただきたいと思っています。
 その中で、とりわけリスク管理について申し上げますと、私ども、かなりの対応をしてきたわけですが、今、先生のおっしゃっているのは、いわゆる決済リスクを軽減するためのカバー取引先の破綻リスクということだろうと思います。私どもは、清算機関ということで、既に金利スワップについては世界的に清算集中がなされています。一方で、為替のいわゆるスポット取引については規制対象になっていないということで、世界でも今のところは対応されていないわけですが、今回のこの提言等も含めまして、私ども清算機関で何とか清算集中をできる方式、あわせて、先ほど星野さんが言われた元本の決済リスクをできるだけ少なくするような方法で検討できないか、今、まだスタディーの段階ですけれども、検討し始めている状況でございます。これもコストエフェクティブという問題もいろいろございますけれども、何とか秩序あるマーケットをつくるための一助となればということで、私どもも取り組んでまいりたいと思っています。
 
【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。
 どうぞ、松田さん。
 
【松田オブザーバー】  
 協会の意見に補足する形で、業者の覚悟も一言申し上げたいと思います。
 この場でいただきました多角的なご意見を踏まえまして、業者としましても、協会とともに、かねてから、こうした課題に取り組んでおりますストレステストの高度化のためのワーキンググループといった場などにおきまして議論を一層深めることで、リスク管理力を一段と向上させて、そして、市場の発展と安定に貢献してまいりたいと考えております。
 同時に、店頭FX業者としましては、今回、業者が備えることが望ましいと考えております、あるいは考えられておりますリスク管理の枠組みというのは、金商法の対象となる個人向けの金融商品の中でも、相当進んだ、高度で精緻なものになるのではないかと考えております。今後、規制体系を整備していくに当たりましては、商品や業態等の間でも、バランスと平仄が十分とれたものになることを期待したいと思います。
 以上です。
 
【池尾座長】  
 ありがとうございました。
 私は司会役なので、普段は自分の意見はあんまり言わないようにしているのですが、時間的余裕があるようですので、ちょっとだけ発言させていただきます。1980年代から90年代にかけて、金融規制に関する考え方が大きくパラダイム転換したと思います。その背景には、金融活動の高度化、複雑化があって、直接、金融機関の行動等を制約するような形の規制というのが、むしろ弊害とか非効率性を招くほうが多いというので、原則的には、金融機関の活動を自由化する、金融の自由化を進める。しかしながら、行動に対して、きちんと責任をとれる体制は確保してもらうということで、自己資本の充実を求める。裏返して言うと、自己資本が充実していて、行動に対してきちんと責任をとれるような体制にあれば、自由に活動してもらって結構です。自己資本が不足していて、行動に対して責任がとれないような状態にある金融機関とか業者に関しては、活動を制限させてもらいますという考え方に変わった。直接的な規制から自己資本の充実を中核としたような考え方に変わったと思います。
 まさに、今回の場合もその考え方の方向性で対応を検討してきたということになると思います。それで、自己資本の充実というときに、何に対しての充実かというと、リスク量に対する充実ということですから、リスク量の把握が適切かどうかが問題で、リスク量の把握が甘ければ、表面上、自己資本が充実しているように見えても、実態はそうではないということが考えられるわけです。ですから正確で厳格にリスク量を把握した上で、そのリスク量との見合いで自己資本が十分であれば、原則的に、行動について直接的な形の制約を課すのは手控えるという考え方に基づいて対応するということに今回もなったのではないかと思うので、基本的な考え方として、適切ではないかと思っております。
 やっぱり、機械的、一律的な規制というのは、セカンドベースでも絶対あり得なくて、サードか、それ以外に手がないときの最悪の対応だと個人的には思っております。機械的、画一的な対応をすると、頑張って真面目にやっている業者も、それによって制限を加えられて、真面目にやっていてもそういうことになるというのはディスカレッジすることにつながったりするので、やはり、弾力的に、行動に対して自己責任を全うできる状況があるかどうかということを軸に差をつけた対応をするということが考えられていいのではないかということ。今回、自己資本が不十分だと思われた業者に対しては、行動をかなり制限させてもらうことになっていて、十分な自己資本を備えていれば、現状どおりの活動の自由度を保障するという方向性になっているということで、私個人としても、こうした方向性が妥当ではないかと考えております。
 ほか、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。よろしければ、まだ時間的には余裕がありますが、今日の議論を踏まえて、先ほどもありましたが、この討議資料をさらにブラッシュアップさせていただいて、最終的に、この検討会の報告書ということでオーソライズできるようなものにまとめていただくことになります。
 それでは、これで終わりというわけにもいかないと思いますので、次回もう一度、その辺を含めて、事務局より連絡事項がございましたら、よろしくお願いいたします。
 
【御友市場業務監理官】  
 次回の検討会の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
 
【池尾座長】  
 それでは、予定していた時間よりも少し早いですが、本日の検討会につきましては、以上をもちまして終了ということにさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

――了――

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