第4回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1.日時:

令和2年7月31日(金)10時30分~12時00分

2.場所:

オンライン会議

3.議事概要:

 

(中小企業庁)

〇 中小企業でもテレワークが進んでいる。今年の3月と比べると、5月から6月にかけて、テレワークの実施率は増加している。しかし、その後の実施率は低下していると思われ、本質的にはテレワークを実施する体制が整備されていないため、その点が課題である。現在の中小企業の経営環境を見ると、消費税率の引き上げに伴い、軽減税率が導入され、2023年10月にはインボイスの導入が予定されるなど、制度変更が相次いでおり、さらに、5Gの実用化もいよいよ本格化する中で、中小企業もデジタル化によって、生産性を向上させることが必要である。

 

〇 生産性の高い中小企業はIT投資等に積極的に取り組んでおり、そのような企業は、一人あたりの賃金が高い傾向があることも分かっている。中小企業のIT利活用の実態に関してみると、インターネットバンキングの利用率が直近では8割近くになっている。クラウドサービスについても、活用が進んでいる。中小企業でも活用がしやすいITツールが普及している状況が見て取れる。中小企業のデジタル化の促進要因としては、安価で使いやすいクラウドサービスが普及したことに加えて、デジタル化ツールの多様化が進展したことに伴い、中小企業も大きなコスト負担やノウハウを必要とせずにデジタル化による生産性向上が可能になったということが言える。さらに、IT活用によって、経営状況が可視化され、そのデータをAI等で分析することで、最適な経営判断と資源配分が可能になった。また、単一ではなく、複数の基幹業務を丸ごとデジタル化し、部門間または企業間でデータ連携させることも生産性向上に資する。

 

〇 中小企業のデジタル化における課題としては、費用対効果とリテラシーの2つの問題がある。中小企業は、IT導入の効果が見えにくく、コスト負担が大企業と比べて相対的に高くなるという課題がある。また、AIやIoTを導入するにしても、ノウハウが不足しており、導入が進まないという課題もある。

 

〇 IT活用における意思決定プロセスを分析すると、次のようになる。まず、ITの必要性を認識する「認知」の段階があり、次にどのような解決方法が適しているのかを選択する「評価」の段階、そして、ツールを決定し、導入計画を立て、実際に実行し、その後継続して利用する、という段階を経るが、そのうちどこで中小企業がドロップアウトしてしまうのかを分析したところ、そもそも解決策としてIT化を選ばない中小企業が60%以上を占めており、最初のITの必要性を認識する「認知」の段階でつまずく中小企業が多いということが分かった。したがって、この段階で改善策を打てると、中小企業が「認知」の次の段階に進めるため、そこに対策を打つことが必要であると考えている。

 

〇 中小企業がITに関して誰を相談相手にしているのかを調べたところ、ITベンダーや経営者仲間に相談するという中小企業は多かったが、金融機関に相談するという中小企業は2.4%と少なかった。よって、中小企業に対して、金融機関から経営改善のための方策としてITの活用を勧めていただくと、この数字が高くなる余地は十分にある。

 

〇 個別の中小企業にヒアリングをしたところ、書面・押印・対面手続きの見直しに関して中小企業から次のようなコメントがあった。まず、金融機関の訪問営業を評価する声が多かったが、一方で、金融サービスの電子化に関する情報提供はあまりないというコメントがあった。具体的には、地元の金融機関がIBの機能追加や変更があると、個別に訪問説明に来てくれることを評価する一方、契約時に訪問してくれるので、電子契約の必要性を感じていないとのコメントもあった。一方、電子契約や全銀EDIシステム(ZEDI)に関して、金融機関から情報提供を受けたことがないというコメントがあった。取引先の中小企業に対して、金融機関からより積極的に情報提供し、ITツールや電子化された金融サービスの紹介を行うことで、中小企業のIT活用の促進が期待される。これに関しては、具体的には、預金データと連携したクラウド会計を導入して、使いやすくなったため、ほかの中小企業にも情報提供をし、活用を促してほしいという声も聞こえてきた。また、金融機関の業務の電子化を促進することを求める声も聞こえてきた。具体的には、金融機関の中には、電子メールでやり取りができない金融機関があり、連絡手段が電話等に限られるという金融機関もあるとのことだった。また、決算情報をデータで提出しようとしたときに、印刷して提出してほしいといわれた、などの声も聞かれた。金融機関の中でも電子化すると、中小企業や中小企業を支援している支援機関・専門家とのインターフェースが電子化してより効率化が進むと思う。このように、地域の中小企業のIT活用が進展することにより、地域経済の生産性が全体として向上するのみならず、金融サービスの効率・付加価値の向上も期待される。ZEDIを活用するなど、取引のデジタル化が進むと、金融機関の中に取引データが行き交うため、それを活用したトランザクションレンディングといった付加サービスの創出にもつながると考えている。

 

〇 中小企業向けのIT活用支援策として、中小企業の生産性革命推進事業を行っている。ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金を一体的に運用している。この事業の中心となる補助事業については、通年で公募し、3~4か月おきに複数の締め切りを設けることで、中小企業が十分な準備の上、都合のよいタイミングで申請し、事業を実施することが可能になっている。金融機関には中小企業にこれらの施策を紹介していただきたい。

 

〇 ZEDIを活用し、中小企業も付加価値のある金融サービスを使えるようにしていきたいと考えている。その際に、金融機関に支援いただく際に、金融機関を支援する策として、「ビジネスモデル構築型」という支援策を設けている。30者以上の中小企業に対して、新たなビジネスモデルを、IT等を活用して提供するような計画を作り、ご支援いただく際に、補助スキームとして上限1億円で支援するという支援策である。

 

(全国銀行協会)

〇 中小企業に聞き取り調査をしたとのことだが、何社に聞き取りをしたのか。

 

(中小企業庁)

→ 15社に聞き取り調査をした。地域は様々で、東北地域から九州地域まで、幅広くヒアリングをし、偏らないように聞き取り調査を行った。首都圏の中小企業はコストに敏感な回答が多く、インターネットバンキングを通じて複数行と取引している場合だと、一番手数料の安いインターネットバンキングに資金を移して決済しているという声が聞かれるなど、ITリテラシーの高い企業は、金銭面にも敏感になるのだと感じた。地域の中小企業だと、地域がそもそも現金社会で、金融機関も現金で集金に来るという状態なので、自社だけデジタル化すると却って効率が悪くなるという声も聞かれた。

 

(規制改革推進室)

〇 末尾の中小企業に対する聞き取り調査の資料中に「売掛債権の消込に苦労している」という趣旨の記載があるが、売掛債権の消込とZEDIとの関係について具体的に教えてほしい。

 

(中小企業庁)

→ 2018年12月までは、旧来の全銀システムが運用されていたが、そのシステムでは、入金の際にもらえるEDI情報は桁数が20桁に限られていて、どこから入金があったかということや、どのような取引の入金かということしかわからなかった。よって、月末締めで翌月払いの場合、その間の相殺金額が入金されていると、それを追うことは困難であった。経理の担当者は、入金された金額を見て、その金額になるような取引の組み合わせを、自分の帳簿から手作業で探し出さなければならなかった。これが、ZEDIになると、商流の情報をデジタルで、入金時に一緒に送ることができるので、月末締め翌月払いで、相殺金額しか入金されない場合でも、入金時に取引に関するデータを付して送ってくれる。取引明細に関するデータが付されて入金がされるというイメージである。さらに手元に電子データを持っていると、対応したソリューションが出てくれば、自動的にマッチングして消込をしてくれるので、経理の作業が楽になる。しかし、これは、取引先と金融機関の双方がZEDIのシステムに対応しないと、実現しない。せっかくZEDIというシステムが始まっているので、それを高度活用するための環境づくりを金融機関に取り組んでもらいたいという声が聞かれた。具体的には、取引先の大企業に、中小企業とZEDIを使うことを推奨するなど、中小企業からは声がけしにくい大企業に対して、金融機関から声がけをお願いいしたいという意見をいただいた。

 

(全国銀行協会)

〇 ZEDIをより活用するためには、取引の川上にいる大企業がまずZEDIを導入することが有効だと考えている。これまでも、40社程度の大企業を訪問し、ZEDIの説明をし、活用を推奨してきた。大企業へのアプローチを今後も継続し、面として、中小企業に広がるように今後も活動していきたいと考えている。

 

(中小企業庁)

→ 非常にありがたい取り組みだと考えている。可能であれば、中小企業庁も連携して、一緒に中小企業側も取り組むように働きかけていきたい。

 

(規制改革推進室)

〇 ZEDIを大企業に推進する際に制度上障壁になっていることはあるか。例えば、確定日付の通知を内容証明郵便で送らないといけないとか、そういう煩雑な手続きなどはあるのか。

 

(全国銀行協会)

→ そういった問題というよりも、大企業になると、大企業の中の商慣行があるので、大企業全体の枠組みの中でZEDIを共有していかないと、広がらないという現実がある。大企業全体のビジネスの在り方を変えていかないといけない点が、説明をしても、なかなか普及しないことの要因だと思う。

 

(金融庁)

〇 金融機関における電子化を進める際に、取引相手である中小企業との手続きを電子化するために、どのようにITツールを導入するかという点が課題になると思う。金融機関において中小企業に対するITツールの紹介やその導入支援については、現在の業務の中で、どれほどの比重を占めているか。あるいは、これからどれほど取り組んでいこうと考えているのか。

 

(全国銀行協会)

→ 銀行の外回りをしているRMは、インターネットバンキングの普及については、相当プライオリティ高く取り組んでいる。

 

ー了ー

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課(内線3387)

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