第5回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1.日時:

令和2年8月19日(水)14時30分~15時30分

2.場所:

オンライン会議

3.議事概要:

 

(三井住友銀行)

〇 当行では、事務・サービス改革により、銀行店舗・事務のあり方を抜本的に見直しており、新型店舗では、デジタルチャネルの充実を通じて銀行取引のデジタル化を推進している。さらに、個人向け・法人向けのインターネットバンキングの活用を推進しており、法人向けインターネットバンキングサービスであるWeb21ライトについては、月額手数料を無料とし、広く活用いただくことができるようにしている。

 

〇 当行では電子署名法準拠のリモート型電子署名を活用し、融資の契約プロセスを電子化している。これにより、お客様は銀行への往訪や書類への記入、押捺を負担することなく契約を締結することが可能である。取引実績は、2017年度から2020年7月にかけて、約10倍に伸びている。

 

〇 押印に代わる本人の意思確認の手段として、電子サインサービスを提供している。これは、筆圧や書くスピード等の情報を電子的に保存・登録し、取引時に、サインの電子データを照合し、本人確認と取引意思確認を実施することも可能になっている。

 

〇 以上、電子署名を活用した融資契約プロセスの電子化や電子サインサービスについては、個別の銀行で閉じるつもりもなく、可能な限り多くの方に利便性を提供したいと考えている。既に完成しているサービスでもあるため、共同利用するなどしていけたらよいと考えている。ご興味のある場合には、お声がけいただきたい。

 

(三菱UFJ銀行)

 

〇 銀行界の方向性として、あらゆる取引の電子化を目指し、書面・押印・対面取引の見直しに取り組んでまいりたいと考えている。電子化するにあたっては、それぞれの銀行のステージに応じて、電子化ラインナップを拡充し、全国銀行協会がそれを支援し、業界横断的に電子化を推進してまいりたい。

 

〇 各銀行が提供する個別のサービスごとに対応の方向性を整理する。インターネットバンキングといった、大部分の銀行が電子化サービスを提供しているサービスについては、更なる利便性向上や顧客への周知により利用者拡大を図るといった取り組みが必要であると考えている。一方、個人向け口座開設や法人融資契約等、一部の銀行が電子化サービスを提供している、あるいは電子化サービスの提供が限定的であるサービスについては、先進事例を業界横断的に展開することにより、導入促進を図ることが必要であると考えている。

 

〇 銀行界と関係当事者の皆様と協働して解決したい課題として、各銀行が提供する個別サービスについても整理を行った。書面押印が必要な取引は多岐にわたっており、銀行界だけで解決することは困難であるため、関係者の皆様のご協力を仰ぎながら解決に向けて取り組んで参りたい。そのうちの一つを挙げると、監査法人に提出する銀行取引の残高証明書がある。銀行が毎年企業の決算期に書面で作成して郵送で監査法人に提出している。例えば、今年の4月から5月にかけて、緊急事態宣言下であったにも関わらず、企業の決算期に重なったため、多くの銀行員が、このために出社することになった。これについては、残高証明のやり取りが紙ベースであることが、問題の原因であると認識しているため、日本公認会計士協会様とも協議させていただきながら、電子化のルートの構築やフォーマットの統一について協議を行っているところである。

 

〇 当行の電子化に向けた取り組みも紹介する。まず、Biz LENDINGについて紹介する。Biz LENDINGは申込から借入実行まで、ペーパーレス、来店レスでオンライン完結する、非対面型の資金調達サービスであり、最大1000万円までの資金調達が可能である。コロナ禍において、利用実績も増えてきている。Biz LENDINGは、Web上でお客様(借主)と銀行(貸主)が合意し、銀行がお客様に金銭(貸付金)を入金することにより、要物契約である金銭消費貸借契約の成立条件を満たしている。すなわち、電子署名は使用していない。このような対応は、少額・短期の融資を迅速に行うというBiz LENDING固有の商品特性を考慮したリスク判断に基づいて実現している。

 

〇 さらに、保証協会に提出が必要な書類の準備のWEBサポート機能を約1カ月で構築する取り組みも行った。新型コロナ感染拡大に伴う中小企業の資金繰り懸念、無担保無利子融資制度により信用保証協会付き融資の申込みが急増している。こうした中で、保証協会に提出が必要な書類の不備発生率は約8割であり、不備に伴う郵送の往復に時間がかかる要因になっている。一方、全国の保証協会で異なる書式が用いられているために、地域で業務を統一することができず、電子化の制約となっている。そこで、個別行としてできる範囲の対応として、お客様と当行の間で保証協会への提出書類を整えるまでのフローを5月25日からオンライン化した。画像のアップロードとチャットにより書類確認・不備解消を行い、結果として、郵送による不備解消よりも早期に完了を実現した。今後は、協会へ申込書を提出するフローをオンライン化すること等が当面の課題であると認識している。

 

〇 続いて、全国銀行協会による業界横断的な電子化に向けた取り組みを紹介する。全国銀行協会では、銀行窓口において、取引量が多い代表的な書面・押印・対面取引の電子化を推進している。具体的には、手形・小切手機能の電子化と税・公金の収納の効率化・電子化を推進している。これらは、銀行独自の努力では電子化が実現できない領域であるため、全国銀行協会として電子化に取り組むべく、検討を進めている。これらが実現すると、書面・押印・対面取引の大幅な削減につながるが、関係者も多いことから、この場で説明することで、実現に向けたご協力をお願いしたいと考えている。

 

〇 まずは、手形・小切手の電子化について説明する。全国銀行協会としては、2019年から5年間で6割削減するという目標を掲げているが、初年度は削減目標を4割下回っている。全国銀行協会では、具体的には、紙の手形を電子記録債権(でんさい)に、小切手をEBによる振込みに移行するという方向で取り組んでいる。電子化の手段自体は用意できているが、削減目標を達成することができていない状況であるため、官民が一体となったオールジャパンでの取り組みが不可欠であると考えている。

 

〇 手形・小切手機能の電子化に向けた課題と足許の取組みについて説明する。少額手形については、コストメリットやインターネットバンキングが必要になる、機能改善が必要である、といった課題がある。また、中小企業への手厚いサポートも必要である。削減対象の8割を占める小切手・その他証券は、関係機関との協働が必要である。

 

〇 続いて、でんさいの普及に向けた三つの施策を紹介する。まずは、料金体系のあり方を検討する必要がある。でんさいへの移行は、利用者の事務負荷や保管コストの削減に加え、紛失・盗難リスクの軽減にもつながる等、利用者にとってメリットが大きいが、手形金額が10万円未満の場合には、印紙税が非課税になることもあり、取扱う手形の金額が少額である場合ランニングコストの削減効果を享受しにくいという課題がある。次に、新たなチャネルを検討していきたいと考えている。中小企業のうち約73%がインターネットバンキングを利用していないのが現状である。したがって、インターネットバンキングがなくてもでんさいを利用することができるような新しいチャネル(例えば、ウェブベースでのチャネルなど)を検討していきたいと考えている。また、機能面の拡充を別途検討していきたいとも考えている。

 

〇 中小企業の生産性向上には、業務プロセスと資金決済の電子化を一体で進めていく必要があると考えている。銀行界としては、金融取引の電子化の側面から、企業の生産性向上を積極的に後押しするべく、国による中小企業向け支援策の活用可否や有効活用の方法等について、関係省庁等とも相談のうえ、検討に着手していきたいと考えている。

 

〇 続いて、電子納付の拡大施策の提言をする。一つ目は、「地方共通納税システム」の活用についてである。このシステムは、昨年10月から稼働しているが、全国全ての自治体・全ての税目が、対象になるため、それらを一度にまとめて電子的手段で納付することが可能になっている。すでに電子納付のインフラは整備されているため、後は活用の問題であると考えている。これを活用していただくことで、納税の非対面化による自治体も含めた社会的コストの削減を実現することができると考えている。

 

〇 二つ目は、「賦課税の納付書に対する全国共通のQRコードの印字」についてである。賦課税の納付書に、全国共通のQRコードを印字するだけで、納税者の対面納付が激減し、自治体の紙削減・DXも進み、社会的コストは大幅に削減されると考えている。

 

(金融庁)

〇 小切手の電子化に関して、銀行が、中小企業の支援を行うケースもあると聞いているが、顧客にITを導入するための支援をした例などはあるか。

 

(三菱UFJ銀行)

→ お客様のでんさいの導入支援などはさせていただいているが、全ての金融機関において、面で支援するというところには至っていない点は課題だと考えている。一方、ITリテラシーの向上に向けた支援はできるが、インターネットバンキングの導入に掛かるコストが大きな課題だと認識している。

 

(金融庁)

〇 Biz LENDING等の電子の取引実績が伸びているとのことだが、そのようなやり取りの中で、顧客からはどのような声が出てきているのか。あるいは、行内から、行内事務が効率化された等の声は聞かれているか。

 

(三井住友銀行)

→ 非対面でできるという点で、顧客からは引き合いが強い。お客様も行内職員もテレワークしながら、契約できるという点でメリットがあるとの声があると認識している。

 

(三菱UFJ銀行)

→ コロナ禍という危機の中で、お客様がすぐに資金を調達することができるというメリットがあるとの声があると認識している。

 

(金融庁)

〇 電子署名法2条に関するQ&Aが公表され、立会人型が認められるなどの動きがあるが、銀行業界としては、電子契約を用いた融資を推進しやすくなるのか。

 

(三菱UFJ銀行)

→ Q&Aの公表により、法的安定性が確保されつつあると認識している。この点、電子署名を活用した融資契約を促進するうえでは有益であると考えている。ただし、判例等でしっかりと法的解釈が明示されることも大切だと思っている。

 

(金融庁)

〇 三井住友銀行様の取り組みの中で、7千人をデジタルアンバサダーに認定したとの記載があったが、これは有効活用されているのか。

 

(三井住友銀行)

→ 1年に2回、自行のデジタルチャネル(インターネットバンキング等)に対する知識を試験し、一定の点数を取り、かつ、その知識をお客様に、デジタルチャネルのご利用をご説明することができるというレベルまで到達した者をデジタルアンバサダーに認定している。お客様が支店にご来店された場合には、デジタルアンバサダーが、支店にご来店いただかなくてもお手続きができる旨をご説明したり、実際に支店に置いてあるタブレットでの手続をお客様に行っていただくサポートをしたりするなど、お客様のご都合に合わせて、デジタルチャネルへの移行を誘導する取組みを行っている。こうした取り組みの成果もあって、インターネットバンキング等のデジタルチャネルの利用が増えている。

 

(金融庁)

〇 手形のランニングコストについて、手形の取引金額が少額である場合には、でんさいの方が、コストが掛かるとの話があったが、手形の保管に掛かるコストや、紛失コストを含めて考えると、手形の取引金額が少額である場合にも、必ずしもでんさいのコストメリットが見合わないというわけではないという理解で良いか。

 

(三菱UFJ銀行)

→ ご認識の通りである。紛失のリスクや管理に掛かるコストを考慮すると、手形の取引金額が少額であっても、必ずしもでんさいのコストメリットが見合わないということではない。

 

ー了ー

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課(内線3387)

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