第6回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1.日時:

令和2年9月29日(火)10時00分~11時30分

2.場所:

オンライン会議

3.議事概要:

 

(日本証券業協会)

〇 本年7月1日、協会内に「証券業界における書面・押印・対面手続きの見直しに関するワーキング・グループ」を設置し、9月15日に第一次取りまとめを行った。あらゆる手続きのペーパーレス化・押印レス化を検討し、顧客との間の書類のほか、社内手続きに要する書類についても、電子化・押印レス化に取り組む。

 

〇 検討の方向性としては、証券業界は、業容、会社規模が個社によって大きく異なり、電子化の進捗状況も個社によって様々であることから、第一次取りまとめの事例を参考に、各社、対応可能なところから、業務の見直し、効率化を図ることとしている。それにあたっては、顧客の理解をどのように得ていくかが重要になるとともに、費用対効果を踏まえた経営判断が重要となる。また、当然のことながら、見直しによって、投資家保護のレベルが落ちることがないようにすることが大前提である。

 

〇 証券業界は、これまでも、進展するIT技術を活用しながら、書面・押印・対面手続きの削減や、電子化・簡略化に取り組み、紙資源や電力の使用量削減を通じて、CO2排出量削減をはじめとした、地球環境の保全に取り組むとともに、テレワークをはじめとする先進的な働き方改革や、女性活躍にも取り組みSDGsの達成に努力してきた。また、今般、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、「証券業界における新型コロナウィルス感染予防対策ガイドライン」を作成し、個々の会員の事業形態や、実情等を踏まえた、感染予防に努めつつ、工夫を凝らしながら、業務の継続について、適切な対応に努めてきた。

 

〇 そうした中、テレワークの推進に向け、行政手続きに関するもの及び民民間の商慣行等による手続きに関するものについて、ともに書面・押印・対面による仕事の在り方を見直すため、官民が連携して、取り組みを進めるとして、政府を挙げて検討されている。証券業界としても、書面・押印・対面を要する業務の更なる見直しを図ることにより、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立を、持続的に可能とすることに貢献していく。

 

〇 証券業界においては、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、インターネット・電話によるリモート勤務を利用し、職員の出勤を必要最小限度に抑え、感染症拡大の防止に最大限協力を行いつつ、投資者の売買取引について、円滑かつ速やかに執行されるよう、万全を期す等、事業を継続することで、わが国の重要なインフラの一つである証券市場の継続的かつ安定的な機能維持に努めてきた。また、証券業界では、証券業界ガイドラインを策定し、引き続き、業務の継続について、適切な対応に努めるとともに、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立を持続的に可能としていくことへの貢献を目指している。

 

〇 証券業界ガイドラインにおいては、感染拡大防止のために講じるべき具体的な対策の一つとして、テレワークやサテライトオフィスでの勤務等、様々な勤務形態の検討を通じ、通勤頻度を減らし、公共交通機関の混雑緩和を図ることが挙げられている。しかし、現実には、書面・押印・対面を必要とするため、テレワークでは完結できず、オフィスへの出勤を余儀なくされる業務が存在することが判明した。このため、官民一丸となって、書面・押印・対面を要する手続きを見直す取り組みを推進するという規制改革推進会議において示された、基本的な考え方は、証券業界においても実感を伴って共有するところであり、金融庁での検討会の議論に、本協会が参加することを契機として、証券業界における書面・押印・対面手続きを要する業務を洗い出し、これらの削減や、電子化・簡略化を行うために、ワーキング・グループを設置した。

 

〇 証券業界における取組推進について説明する。ワーキング・グループ各委員から、取り組み事例のアンケートを行うとともに、数社からその取り組み事例の紹介を行った。お客様に対する事務手続きでは、個人のお客様向けに、本人確認から口座開設までの一連の手続きを、インターネットを活用した方法と、対面のタブレットを活用した二つの方法で、実現しているケースが紹介された。ある事例では、本人確認をeKYCで行い、かつ、印鑑レスで完結させ、証券口座は開設時には、マイナンバーの取得が義務付けられているため、安全管理措置を十分に施しながら、機能構築が行われていた。属性変更など、各種契約変更手続きでは、比較的件数の多い住所変更、税関連の特定口座開設等、オンラインやタブレットを活用して対応が行われている事例が紹介された。この手続きについても、本人確認をeKYCで行い、かつ、印鑑レスで完結させる工夫がされていた。報告・レポートの手続きでは、オンラインで目論見書、契約締結前交付書面等の電子的交付や、取引交付書、取引残高報告書等の電子的交付に関する取り組みが紹介されていた。

 

〇 今後取り組みが必要な領域については、法人口座開設のオンライン化や、個人口座開設・本人確認のオンライン利用率の向上を図りたいという意見があった。また、属性変更等の各種変更手続きについては、オンライン手続きの利用率の向上とオンラインやタブレットを活用した手続きの種類の拡大を進めている。例えば、株式配当金の受け取り方法の変更など、様々な手続きについて、各社ごとに優先順位を設け、セキュリティに万全を期しながら、対象となる手続きの範囲を拡大していく計画を立てて進めている。報告・レポートでも、オンラインの利用率を向上させていきたいという意見があった。さらに、各種レポートの作成や定型業務をRPA化する取り組みや、チャットボットによる問合せ対応を導入した事例の紹介もあった。

 

〇 各社の取り組み事例についてアンケートを行ったところ、委員各社で実施済み・実施予定・検討中の取り組みとして延べ62項目が寄せられた。主な事例としては、顧客受入帳票の顧客押印欄を削除したケースや、電話による事務手続きを導入したケース、顧客から受け入れる確認書に電子サインを導入したケース、社内資料の原則書面配布を廃止したケース、社内の承認業務を電子化したケース、顧客注文対応に関する書類管理を紙からメールに切り替えたケースがあった。

 

〇 これまでも、証券業界としては、書面・押印・対面を要する業務の削減や、電子化・簡略化に取り組み、業務の効率化を図ってきたが、依然として、見直し対象として考えらえる手続きが残っており、委員各社にアンケートを実施した結果、延べ236項目が寄せられた。これを大まかに分類すると、次のようになる。一つは、税制関係の手続きである。これについては、税制改正要望として、当局に働きかけていきたい。そのほか、専用端末の操作についても、延べ18項目あった。これについては、当該担当者の自宅等、オフィス以外からの接続を許容してもらいたいというものであった。これらの専用端末に係るシステムを管理している関係機関に対し、一定の条件が付く可能性を視野に入れつつ、リモート接続が許容される余地があるかどうか協議を行うこととする。その他の手続きとしては、200項目程度あったが、分類としては、金融商品取引業に関係し、根拠が法令にある手続き、例えば、市場関係者である取引所、振替機関、自主規制機関、投資者保護基金等への届出関係等である。これらの分類毎に、適宜必要に応じ、関係団体と相談し、検討を進めてまいりたい。

 

〇 本協会が会員に求めている手続きについては、メール等の電子的な手段によることで、原則として書面や対面を必要としていない。しかし、現在も書面・押印を求めているものが94項目あった。これらの中には、周辺の制度や、慣行の変更を待たなければならないものが多いが、見直しが可能と思われる手続きについては、協会としても、検討を進めていく。

 

〇 証券戦略会議においては、「今般取り組むべき課題は、実務に即した部分が多いと言えるが、それを実務レベルだけの取組みに委ねたのでは進捗することは難しく、経営トップが強力なイニシアティブを発揮して取り組むことが重要となる性格の問題であると言える。また、平時にはなかなか着手できず、先送りしがちな性格の問題でもあると言える。本会議としては、このような問題の性格を踏まえ、さらなる顧客利便性向上の観点からも、今回の危機を、これらの課題を解決する好機と捉えて、証券業界を挙げていま取り組むべきであり、会員各社がスピード感を持って全社を挙げてこれらの課題への取組みを推進していくべきと考える」と決議した。

 

(金融庁)

〇 証券業界の前向きな取り組みに感謝する。

 

〇 証券業界内でも、電子化の進捗状況は、個社ごとに様々であるとの指摘があるが、電子化が進んでいない証券会社には、どのような課題があるのか。また、証券業界内で、電子化に関するノウハウを伝え、支援する枠組みや取り組みはあるのか。

 

(日本証券業協会)

〇 電子化が進んでいない証券会社の課題については、現状、把握に努めているところである。ワーキング・グループでは、中小に分類される会社にも参加していただき、それらの現状や課題を紹介いただいているところである。

 

〇 電子化の支援に関しては、先進事例を紹介しながら、各社の現状や課題を認識していただき、底上げしていただくという取り組みを行っている。そして、今回、証券業界として取りまとめを発表したところ、中小の証券会社から、他社において、これほど電子化が進んでいるとは知らなかった、という声をいただいている。取りまとめ結果を紹介していくことで、電子化の必要性について、気づきの機会を提供していきたいと考えている。

 

(日本投資顧問業協会)

〇 資料に記載のあるホールセール向けのデジタル化が難しいという点の根拠を教えてほしい。

 

〇 また、資料には、会員会社が貴協会に提出する入会申請書、脱退申請書、加入内容変更申請書について「一部オンライン化可能」との記載があるが、このように、電子化が可能であるものと不可能であるものはどのような基準で線引きがされているのか。

 

(日本証券業協会)

〇 法人を相手方として取引をする場合には、相手方の取引担当者となる人がその権限を有するかという点が重要になるが、人事異動による権限の変更や、複数の取引担当者がいる場合等に応じてID・PWを管理する必要が生じるなど、顧客法人毎の権限をシステムに反映することが現時点で難易度が高いという点が、ホールセール向けのデジタル化が難しいということの背景である。

 

〇 入会申請書、脱退申請書については、一つの会社につき何度も提出をお願いするものではない。頻度が高くなく、協会の入会・脱退という重要な性質のものであることから、書面でいただくようにしている。

 

〇 一方、事業報告書等の添付書類については、デジタルでの提出を可能とする取扱いを考えている。

 

〇 加入内容変更申請書については、提出の頻度が高いわけではないが、電子化について、今後検討していく。

 

(国際銀行協会)

〇 目論見書等の法令上に基づく書類については、電子的交付をするためには、お客様の同意が必要なものがある。貴協会のワーキング・グループにおいては、この点について議論されたか。

 

(日本証券業協会)

〇 弊協会でも、それらの書類については、お客様の同意を得たうえで、電子的交付が可能になるという認識である。この点についても、今後、一歩踏み込んだ改善をしていただきたいという議論をした。

 

(金融庁)

〇 官から民に対する手続、及び民から官に対する手続きについても、今後、当庁としても、電子化を推進すべく検討を進めてまいりたい。

 

(規制改革推進室)

〇 押印を求めている行政手続きは約11,000件あるが、それらを全て電子化するべく、検討を進めてまいりたい。

 

(金融庁)

〇 ホールセールは個人との取引と比べて電子化が進んでいないとの指摘もあるが、書面・押印・対面手続きの見直しという観点からは、証券業界では、電話を活用した取組みが個人に限らず法人でも行われているという理解である。

 

〇 また、書面・押印・対面手続きの見直しにあたっては費用対効果を踏まえた経営判断が重要というお話があったところ、個社の取組みにつき伺うことは恐縮だが、野村證券では、どのような点から電子化に取り組まれたのか、また、効果が大きかった見直しとしてはどのようなものがあったか。

 

(日本証券業協会)

〇 電話で契約が成立する手続きについては、電話を最大限活用している。最近では、電話の内容を録音して、その内容をテキスト化することも可能になっている。よって、電話は現在も活用しているし、今後もさらに活用していきたい。

 

〇 証券業界としては、有価証券そのものを電子化できたことや、保護預かりにおいて通帳に当たる預り証を廃止できたということも実績としてある。よって、業界として、大玉でまだ電子化できていないものはないと理解している。

 

〇 野村證券においては、2カ月に1度デジタル化推進のミーティングを開いており、社長の強いイニシアティブで電子化を推進しているところ。様々な技術を取り入れながら、電子化に取り組んでいる。

 

(規制改革推進室)

〇 一般的に、領収書や内容証明郵便が電子化できないという声があると聞いているが、その点については、どのように考えているか。

 

(日本証券業協会)

〇 ワーキング・グループでは、直接的には「領収書や内容証明郵便が電子化できない」という議論はなかった。

 

〇 しかし、コーポレート業務の領域において書面でのやり取りが残っているため、この点については改善に取り組んでいきたいと考えている。その際は、経済4団体での議論を共有しながら、改善していきたいと考えている。

 

(金融庁)

〇 ホールセールでは電子化が難しい理由として、権限者の特定が難しいという問題が挙げられていたが、これに関しては、既に様々な形で取り組まれており、海外では、権限委任の問題は解決されているのではないか。どのように解決しているのか教えてほしい。

 

(日本証券業協会)

〇 法人のお客様について、機関投資家等は、売買の機会が多いため、特別な処理の仕方(個々に契約して処理するという仕組み)を行っている。

 

〇 それ以外の一般的な法人顧客については、セキュリティ確保や本人確認について、今後社会でどのようなものがスタンダードになるのかを見ながら検討してまいりたい。

 

(全国銀行協会)

〇 証券業界では、有価証券の電子化を実現しており、電子化ができてない大玉の手続きはないというお話があった。一方、銀行業界では、手形・小切手の6割を電子化するという目標を掲げているものの、達成することができていないのが現状である。そこで、有価証券の電子化に成功した背景や成功要因を教えてほしい。

 

(日本証券業協会)

〇 有価証券の電子化は10~20年かけて実現した。当初は、証券会社に保護預かりした紙の有価証券を保振に集めることから始めた。そして、保護預かりの割合が50~60%くらいの割合に到達した時点で、法律上の手当てをいただいた。法律上の手当てをいただいたことにより、残りを一気に集め、電子化した。

 

〇 初めに株券を電子化し、続いて投資信託、債券を電子化するというように順次拡大していった。実施した背景としては、証券会社側からみると、紙の場合は、本物の有価証券かどうかをチェックするなど、事務の負担が大きかったため、業界としてリスクを回避する観点、顧客利便の観点、生産性を向上させる観点から電子化に進んだと考える。

 

(全国銀行協会)

〇 まずは業界の努力で電子化に取り組み、その後法的手当てをいただき、一気に電子化を進めた好事例であると理解した。弊協会としても、その好事例を参考として、引き続き取り組んでまいりたい。

 

(金融庁)

〇 ワーキング・グループの今後の方向性についてはどのように考えているのか。

 

(日本証券業協会)

〇 今回のとりまとめで課題が挙げられたので、電子化をするために交渉する必要がある相手がいる場合には交渉していきながら、網羅的に対応していきたい。

 

〇 電子化を進めていくためには、金融業界の皆様の協力が必要なので、協力をお願いしたい。

 

ー了ー

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課(内線3387)

サイトマップ

ページの先頭に戻る