第8回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1.日時:

令和2年10月21日(水)10時30分~12時00分

2.場所:

オンライン会議

3.議事概要:

 

(生命保険協会)

〇 生命保険会社と顧客の接点となるチャネルは、各社のビジネスモデルに応じて、「営業職員チャネル」、「代理店(銀行窓販)チャネル」、「代理店(一般代理店)チャネル」、非対面チャネルとしてのコールセンターなどの「通信販売チャネル」など様々存在し、今後も多様化が進む見込み。

 

〇 生命保険は、加入から支払いまで長期に渡る契約の中、新契約・保全・支払(請求)において様々な手続きが発生するが、チャネルによって手続きの仕方が異なる。

 

〇 各社におけるデジタル化に係る直近の取組みについて、会員の42社を対象にアンケートを実施したところ、デジタル化の取組状況は次の通りであった。
・新契約時の手続きに関しては、全てのチャネルにおいて、半数以上の会社で「オンライン完結」または、タブレット等を用いた「電子手続き」が可能。特に通信販売チャネルでは、半数以上で「オンライン完結」が可能。
・保全時の手続きに関しては、発生頻度が高く、比較的シンプルな手続き(住所・電話番号の変更、加入内容の確認)については、全てのチャネルにおいて約7割の会社でオンライン完結が可能だが、本人確認等が必要な多少複雑な手続きは、チャネルごとのばらつきが存在。
・支払時の手続きに関しては、医師の診断書なしで領収書等の写しのみで給付可能な簡易請求については、全てのチャネルで、半数以上の会社が「オンライン完結」・「電子手続き」を導入済みまたは検討予定となっている。他方、その他の支払請求については、支払請求が保全の請求よりも必要書類が多いため、検討予定や未実施が多いが、今後対応が進んでいく領域である。

 

〇 アンケート結果を踏まえると、各社において、優先度の高い手続きから順次効率化・簡素化を推進しており、デジタル化についても取り組みが相応に進んでいる。

 

〇 新型コロナウイルスの感染拡大も契機として、社会的なニーズがさらに高まっているので、各社の「検討予定」の割合が多い手続きについても、今後デジタル化が進展していく見込み。

 

〇 生命保険業界で、デジタル化の取組みを継続して進めるため、生命保険協会内に「生命保険手続きのデジタル化推進ワーキング・グループ」を設置し、直近の取組状況を把握するためのアンケートの実施やそのフィードバックを行い、各社に気づきを与え、さらなる取組み促進につなげているところ。今後、課題領域の先進事例の共有や取組状況の再確認を行う予定である。

 

(明治安田生命)

〇 明治安田生命保険相互会社の営業職員チャネルにおける書面・押印レス等の取り組みについて、紹介させていただく。これまでも「事務サービス改革」のなかで、ペーパーレス化の推進や押印の廃止をはじめとした取り組みを進めてきており、今年度よりスタートしている「基幹機能・事務『大』改革」でデジタル化をより一層進めていく予定。改革の効果発現に向け、2019年より各種端末の新端末への入替えや、営業職員3万人に対する社用スマートフォンの配付等のインフラ整備を行い、手続きの電子化や書類の電子データ化をつうじて、迅速性・簡便性をより向上させた。こうした取組みの結果、新契約以外の保全や支払の手続きにおいても電子手続きが可能な範囲が順次拡大しており、現在の改革を経て、大半のご請求手続きを電子化する予定である。

 

〇 主だった取組についてご紹介すると、次の通りである。
・新契約時の取組みに関しては、2016年に申込書類の電子化・電子サインの導入を行なった。その後、対象手続きを拡充し、2019年9月に保険設計書の社用スマートフォンによるLINE送付、11月に決済端末を用いたキャッシュカードによる口座振替申込を開始。
・非対面での新契約手続きとしては、コロナ対応として、既存顧客に対する保障や保険料の見直し・コンサルティングを趣旨とした、書面郵送で完結する手続きを5月から開始。来年度からは既存顧客だけでなく、新規顧客に対しても、WEBをつうじた非対面でのお手続きを可能とする予定。
・保全時の取組みに関しては、2013年から手続書類の電子化を開始し、以降、対象となる手続きを順次拡大してきた。あわせて、社用スマートフォンによる提出書類(免許証等)のカメラ撮影を展開し、従来必要としていた原本コピー提出の書面レス化を実施。また、2019年9月には、電子署名の代わりに暗証番号入力による手続きを可能とした。
・非対面での手続きについては、2012年4月から開設しているご契約者専用WEBサイトでの手続きの対象を順次拡大しており、引き続き、さらなる利便性の向上とセキュリティー強化の対応を同時並行で進めていく。
・支払時の取組みに関しては、2019年9月より給付金請求の電子手続きを開始、電子サインを導入することで、署名・押印レスを実現。また、領収証は社用スマートフォンによるカメラ撮影を利用し、書面レス化を実現した。併せて、2019年11月から、ご契約者専用WEBサイトからの給付金請求を可能とし、非対面でのご請求手続きを開始した。

 

(生命保険協会)

〇 生命保険業界の今後の対応としては、各社の創意工夫を前提としつつ更なるデジタル化の推進のために、「デジタル化推進にかかる基本方針」を決議した。
 この中で、優先的に検討する事項として、慣例的な押印実務の廃止や手続き頻度が高く比較的シンプルな手続きのデジタル化を掲げるとともに、これら以外の手続きについても、各社で顧客保護等の観点から従来の手続きにおけるリスク分析を行なったうえで、各社判断のもと優先順位が高いと考える領域から順次デジタル化による効率化・顧客利便向上を進めていくことを掲げている。
 また、現状維持することに合理性が認められるものについても、他社や他業態の事例を参考に、各社で可能な範囲で継続的にデジタル化の検討を行うこととしている。なお、本方針は、「生命保険手続きのデジタル化推進ワーキング・グループ」を通じて推進していく。

 

(日本損害保険協会)

〇 損害保険業界に固有の特徴として、代理店による販売形態(2019年度元受正味保険料割合で91.2%)が中心であることが挙げられるが、それらの代理店には、多様なチャネル(例:自動車販売、不動産販売等)が存在し、お客様と接する場面や保険種目、アプローチ方法等がそれぞれ異なる。
 また、保険種目により、必要な手続きや書類が異なっていることや、契約者・保険会社・代理店以外に(事故を起こしてから関係が生じる)被害者や修理業者など多様な関係者が存在し、各関係者から様々な書類が必要になってくるといった特徴もある。その為、様々な場面、プロセスに応じた、書面・押印・対面レスを考えることが必要であり、各社で創意工夫のもと進めている。
 その取り組みについて、アンケートをとっているが、後程紹介する。

 

〇 損害保険業界としての取組みという点では、保険会社や代理店などを対象にした各社の取組みの支援を中心に取り組んでおり、例えば、業界システムの開発や、代理店が非対面募集(電話募集等)をする際の注意点の整理等の支援を行っている。

 

〇 損害保険業界におけるこれまでの具体的な取組みをご紹介すると、1980年代から共同システムの開発に取り組み、各種事務処理の円滑化・効率化・迅速化を進めてきた(例えば、お客様が自動車保険について保険会社を変更する際の等級情報の確認等)。
 2000年代以降もシステム開発を進め、損害保険代理店試験を紙試験からコンピュータ試験に変更したり、そんぽADRセンターの苦情・相談対応のシステム化(協会コールセンターで受け付けて各社に還元するシステムの開発)といった取組みを進めてきた。その他の例としては、地震保険の損害調査を迅速に行うためのアプリ開発や、共同保険の契約情報交換にブロックチェーン技術を活用する実証実験の実施などもある。

 

〇 以上のとおり、保険業界は、従来、「お客様の利便性向上」や「会員各社の生産性向上」、「ペーパーレス化」を推進してきた(共通化・標準化・共同化)。

 

〇 直近では、2020年7月に、協会内に事務検討特別部会を新設した。その取組みの中で、事務領域の共通化・標準化に関する取組みについてアンケートを実施した。そこで寄せられた書面・押印・対面手続き見直しに関する案件も含め、現在対応を整理中である。

 

〇 書面・押印・対面手続きの見直しに当たっては、消費者との取引のみならず、代理店や行政機関との取引(代理店登録・届出局面のペーパーレス化など)でも見直しを進めていきたい。なお、当該見直しにあたっては、①消費者の利便性、費用対効果の追求、②対面・書面を希望するお客様への配慮といった点にも留意しながら検討を進める方向である。

 

(東京海上日動)

〇 ここからは、会員各社のペーパーレス・非対面の取組み状況を確認したアンケートの結果や各社の取り組みを紹介する。
 個人向けの契約に関しては、新規契約・契約更新・契約内容変更の各手続局面において、非対面・非書面による手続きの完結が比較的高い割合で進んでいる。一方で、企業向けの契約に関しては、個人向けに比べ、非対面・非書面で手続きが完結する割合は低く、やや遅い傾向がある。
 これは、個人向けの契約の場合は、同一の商品を多くの人に提供していることからペーパーレス化・非対面のニーズが高く対応が進んだが、企業向けの契約の場合は、契約者において社内の決裁手続きが必要となることなどから、紙の記録が残っているものと考える。しかし、企業向けの契約においても、コロナ対応のためにペーパーレス化のニーズが高まっており、各社で対応が検討されている。
 保険金支払いの局面においては、個人向けの契約の場合、従来、電話での事故連絡など非対面での手続きが行われてきたが、更に進んだ電子的手続き(web等を活用した事故報告や書類の提出)について一定程度実現されている。企業向けの契約についても、個人向けの契約と同様、非対面で手続きができるケースが多くなっている。
 各手続き局面における非書面・非押印・非対面の現状だが、個人向けでは非対面としてネットやアプリでの対応が進んでおり、非書面と非押印も全体的にかなり進んでいる。なお、企業向けについても、コロナ対応のために各社で検討が開始されていることから今後対応が進んでいくものと考えられる。

 

〇 続いて、東京海上日動火災保険の個社の取組みについてご紹介する。
 新契約手続きにおいては、お客様への説明が多岐にわたるため、従来は対面が主流であった。しかし、昨今のWEB化、ペーパーレス化の流れの中で、お客様のニーズに応じて、例えばタブレットを使う等様々な手法を構築していた。更に直近は、コロナ対応のための非対面化に伴い、オンライン商談手続き(WEB会議で説明し、メールやQRコードで手続きを完了する仕組み)を12月に導入する予定にしている。
 その他のペーパーレス・非対面の取組み推進のためのツールとして、お客様向けアプリであるモバイルエージェントがある。これは、お客様向けの各種サービス機能への入り口を集めたものである。当該アプリは契約者様専用ページ(マイページ)への入り口にもなっており、マイページにログイン後、ご契約者様は、契約変更手続き等を行うことができる。
 保険金請求手続きは、従来は電話・郵送での手続きであったが、WEB上(会社ホームページ、マイページ、モバイルエージェント)での事故連絡や、必要書類のWEBでの提出も可能とするものも用意している。
 こういったことを通じて、書面・押印・対面レスへの取組みを進めている。

 

〇 その他の会員各社の取組みとして、あいおいニッセイ同和損保では、WEB契約手続き時の募集・提案でパーソナライズド動画を利用できるようにしたり、損保ジャパンでは保険金請求手続きをLINEチャットシステムで完結できるようにしたり、三井住友海上はビデオチャットによる損害調査を行えるようにしたりしている。

 

(日本少額短期保険協会)

〇 生保・損保共通で、法人契約の印鑑・書面レスに会員各社が課題を持っており、その要因の一つに「権限者の確認に印鑑が引き続き必要」という事情があるようだが、その対応はどうしているか教えてほしい。

 

(明治安田生命)

〇 法人の実在確認のため、新契約の局面では、押印のある書面を別途提出してもらっている。また、保全時にも押印をいただいており、現状、押印・書面レスの課題となっていることは事実。

 

(生命保険協会)

〇 協会としても、課題意識は持っている。従って、業界としては、プレゼン最終ページに記載の通り、他業態等の先行事例を参考にして、検討を進めていくという姿勢で臨もうと考えている。

 

(日本損害保険協会)

〇 当協会も課題の一つと認識している。現状、どう進めるかにつき検討している段階。より具体的には、押印のある書面ではなく、メールのやり取りなどでも対応できないか等、内部で検討中である。そのために体制を整えることが重要と考えている。

 

(金融庁)

〇 本論点は、保険業界にとどまらず、業界横断的な話のため、銀行業界等からのコメントがあればいただきたい。

 

(全国銀行協会)

〇 銀行界における法人契約の印鑑・書面レスについては、前回の検討会で三井住友銀行の事例として、電子署名法に則った融資の電子契約サービスをご紹介した。本サービスは、顧客側で責任者を特定していただいた上で、ID・パスワード・電子署名を渡すことで安全性を確保しており、その為のシステム対応もしている。興味がある業界・業者様があれば、ノウハウを共有させていただき、電子契約の推進を図りたい。

 

(日本少額短期保険協会)

〇 損保協会への質問となるが、プレゼン資料の12ページには、個人向け商品の新規契約時の手続きにつき回答者の75%において「非対面・非書面完結」とのことであるところ、この詳細な内訳、どういった契約をどこまで非対面・非書面完結になっているかを伺いたい。

 

〇 また、代理店ビジネスモデルにおける本業の対応と非対面での保険販売の両立につい伺いたい。例えば、自動車保険において、ディーラーは自動車の販売を行いながら、保険の販売もセットで行っているかと思うが、本業の対面での自動車販売と非対面での保険販売を、どう両立しているのかご教授いただきたい。

 

(日本損害保険協会)

〇 75%という数値については、今回のアンケートでは新規契約時の手続きについて「非対面・非書面完結」での対応を用意しているか等の回答を求める方式で実施しているため、ご質問にあるような詳細な内訳については不明である。

 

〇 代理店の本業と非対面等での保険販売の両立は、詳細は確認していないが、各社の経営判断の中での対応となろう。というのも、各社によって事情が異なるためであり、例えば、ダイレクト専門の保険会社であれば、ほとんど非対面・非書面完結を前提とした営業をしていると思う。

 

(金融庁)

〇 保険業界において、保険会社の側では、押印・書面・対面レスの手続きを用意し顧客へ周知しているにもかかわらず、顧客の側でその利用に結びつかないという側面での課題があるとすれば、どのような課題があるかご教授いただきたい。

 

(生命保険協会)

〇 お客様に対する周知等をしても利用につながらないという側面について明確な課題認識は持っていないが、デジタル化の取り組みにおいては、「顧客利便」と「顧客保護」の両方のバランスをどのようにとっていくか、一つ一つの手続において慎重に見極めていくことが重要であると考えている。顧客の性質、例えば長年対面でコミュニケーションをとっていた顧客の場合などは、対面での手続きが必要という場合もある。生保業界においては、営業職員や代理店、通販といった様々なチャネルがあり、会社においてどのようなチャネルを持っているのかという特性に合わせ各社の経営判断のもとデジタル化を進めていくことが大切だと思っている。

 

(日本損害保険協会)

〇 生保協会のご指摘の通りだが、書面・押印・対面の見直しにおいては、周知といった点よりも、顧客のニーズや顧客の効率化の目的といったものに沿った対応をしていくことが重要と認識している。

 

(金融庁)

〇 これまでの検討会では、①銀行業界からは、手形・小切手や税公金支払いといったところで銀行窓口の負担や書面が増えるという問題に対し、手形・小切手であればでんさい・IBの利用拡大策や、税公金の支払いであればその他諸々の取組みが必要との課題、②証券業界からは目論見書等の書面交付について電子交付の方法を用意しているものの未だ書面が残っていることなどが課題として挙げられた。これらの課題として挙げられたものは、金融機関側としては、書面・押印・対面手続の廃止に向けて移行したいができない、金融機関でチャネルは用意しているものの利用されないといった側面での課題として挙げられていると認識している。
 保険業界では、このような側面での課題を有しているというよりも、顧客ニーズや顧客保護等の観点から対面での手続きが必要となり対応をしているものもあり、性質が違うということと理解してよいか。

 

(生命保険協会)

〇 顧客との契約の違いが影響しているものと思料。生命保険の契約は、長い契約となり、年に1回の契約の確認など、能動的に確認する機会も多い。従って、お客様とコンタクトする場面が多いので、そういった場面でご案内しやすいといった肌感覚はある。

 

(日本損害保険協会)

〇 損保会社においては、デジタル化・効率化は必要なものとの前提の元、品質の維持や利便性などの観点からバランスよく追及することが重要であるとの認識である。

 

ー了ー

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課(内線3387)

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