令和3事務年度 第1回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1. 日時:

令和3年12月20日(月曜)15時00分~16時00分

2. 場所:

オンライン会議

3. 議事概要:

1.開会

(金融庁)

〇 書面・押印・対面の見直しに関しては、昨事務年度に、「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」(以下「検討会」)を設置し、計9回開催した。その中で、現状及び課題の把握、それらに対する考えられる対応について議論し、2020年12月に「書面・押印・対面手続の見直しに向けた論点整理」(以下「論点整理」)を取り纏めて公表した。この「論点整理」を踏まえ、金融庁では、関係する府令や監督指針の改正、届出のオンライン受付を可能とするためのシステム対応を行ったところ。参加いただいている預金取扱金融機関、証券、生命保険、損害保険の各業界においても、「論点整理」の方針に則り、各種取組を進めていただいているものと承知している。

  そうした状況を踏まえ、今事務年度の「検討会」においては、各業界における取組の進捗状況をフォローアップさせていただくため、アンケート調査を行うとともに、法人インターネットバンキング(以下、IB)の利用促進や地方税統一QRコードの活用開始等、早急な対応を要する課題についての意見交換、他省庁との関連施策の情報共有等を取り上げる予定。今事務年度の「検討会」でも活発な議論を行っていただければ幸い。

 

2.預金取扱金融機関業界における書面・押印・対面手続の見直しの進捗状況等

書面・押印・対面手続の見直しの進捗状況等について、全国銀行協会より資料1、全国信用金庫協会より資料2、全国信用組合中央協会より資料3に沿って発表した後、資料1(右下11頁)に対して金融庁より補足説明。

 各協会からの発表内容の概要については、以下の通り。
(全国銀行協会)

個人顧客との取引:オンライン手続きの提供は、多くの手続きが各行で提供済みであるが、比較的低い提供率の住宅ローン申込についても、一部手続きのオンライン手続きの導入等により進展した。また、Web通帳サービスについては、明細照会可能期間の延伸、スマホアプリによる提供の進展が見られた。

 法人顧客との取引:オンライン手続きの提供は、通帳サービスを除き低水準だが、エレクトリックバンキング(以下、EB)の申込み等で進展があった。

なお、法人IBは、総契約件数は前年度比+10%の増加があったこと、(全法人顧客における契約率ではなく)融資先における契約率の場合、60%以上の銀行が半分程度を占めることが判明した。従って、複数の金融機関に口座を保有する法人顧客は、頻繁に取引が行われる口座でEBを利用している等の推測が得られた。その他、各行からは、EBのさらなる利用拡大に向けた取組みの参考となる事例や、eKYC等の場面における取組事例が寄せられた。

・当局との手続きの見直し状況については、65%がすべてまたは大半の電子化への対応が進んでいると回答。公的個人認証サービスについては約7割の銀行が検討したことがなく、導入に関すコストや導入効果に関する課題認識が挙げられた。

・全銀協における取組みにおいては、会員に求める各種手続きの見直しとして、電子証明の導入等で約9割の見直し済である。また、手形小切手の電子化、税・公金の収納の電子化も取組みを継続している。
 

(全国信用金庫協会)

・信用金庫は、相互扶助を基本理念とし、「協同組織性」、「地域性」、「中小企業専門性」の3つ特性を備えており、face to faceの関係性を生かして、金融サービスを提供している。そうした中、顧客利便の向上等の観点からデジタル化のニーズが高まっており、様々な取組みが進んでいる。

・この対応にあたっては、業界の各関連組織が信用金庫の取組みをサポートしており、具体的には、

預金関連:「しんきんバンキングアプリ」をはじめとして各種アプリの提供等
決済関連:手形・小切手の電子化やQRコードを活用した地方税収納への対応
融資関連:「WEB完結ローン」の提供
その他 :タブレットを活用した「営業店窓口支援システム」の提供
     フィンテック企業とのAPI連携支援、「しんきんdirect」の提供

 等を通じて、顧客や信用金庫ニーズを踏まえた様々なサービスメニューを提供している。
そのほかに、全信協においては、業界の各関連組織の開発案件の情報共有・相互連携の為の「連絡調整会議」の設置・運営するとともに、信金中金においては「イノベーションハブ」という部門を昨年4月に新設して取組みを進めているところ。

・今般のアンケート結果から見た取組み状況としては、

個人向け:口座開設やEB(IBを含む)利用申込といった各手続きで昨年よりも対応する信用金庫の数が増加している。

法人向け:通帳サービスは増加傾向だが、EB(IBを含む)のWEB上での利用申込手続機能は微増にとどまる。ただし、法人のEB(IBを含む)の契約件数は、2020年度末から2021年6月末までに10%以上の伸びで、契約率でも融資先の法人の契約率だと、28.7%となっている。

・こうした中、法人IBや電子記録債権(でんさい)の利用促進は、顧客の意向を踏まえて進める必要があるが、1.導入メリットへの理解向上、2.ITリテラシーの問題、3.基本的なインフラの問題(機器・回線などの基本設備の有無)等の問題に対応する必要があるので、各金庫の創意工夫のもと、導入支援やニーズ喚起等の取組みが進められている。

・なお、信用金庫と全信協間の多くの恒常的に発生する業務手続きは、従来より概ね電子化されており、今後は、協会主催の会議や説明会も、その内容に応じて、WEB会議・対面会議などを活用して、効率的な業務運営を行っていく予定。

 
(全国信用組合中央協会)

・信用組合は、相互扶助・人間関係を重視した金融機関で、顧客との対面取引を基本とするリレーションシップバンキングを実践している。また、ほぼすべての信組が、信組共同センターに加盟して、共同のシステムを利用しているところ。

・こうした中、アンケート調査結果において、
預金口座開設:一部の組合で一部手続きがオンライン化されているところであり、

通帳サービスの提供:半数弱が提供済みで、その数はこの1年間に増加している。なお、この大半は、インターネット・バンキングの利用によるものである。

IBのオンライン申込:申込みは書面ベースの受付であり、対面取引を基本としていること等を踏まえ、オンライン申込のシステム化はハードルが高いものと思料。

 といった状況が判明した。

・なお、信用組合業態全体の取り組みとして、インフラ整備として、口座開設アプリ、口座管理アプリ「しんくみアプリ with CRECO」、オープンAPI連携機能等の開発・提供を行ってきたところであり、今後も信組共同センターの次期システムで、外部IB・APIサービスとの接続を担う「IB/API連携基盤」等のオープン系基盤の構築等で一層のデジタル化を推進する。

 
(金融庁)

・金融庁の電子申請・届出システム等について、全国銀行協会からの貴重なご意見に感謝。金融庁は、金融庁電子申請・届出システムの運用を本年6月から開始・運用するとともに、金融庁業務支援統合システムに関しても、次期システムへの更改に着手しているところ。頂いたご意見については、システム上の制約、セキュリティ上の問題等があり、必ずしも全てを反映することは出来ない点をご理解いただきたい。また、金融庁電子申請・届出システム等の一本化については、重要な課題と認識しており、今後検討していきたい。
 

3.質疑応答

(金融庁)

〇 個人顧客を対象とした預金口座開設手続について、今回のプレゼンにより、オンラインでの提供状況が漸増していると理解。他方、「論点整理」で対応が必要とされた、利用率向上に向けた顧客への利用促進は図られているのか。
 「論点整理」では、好事例の業界内での幅広い共有により、継続的なUI/UXの改善、利便性・安全性についての顧客への周知が示されているが、業界としての対応状況如何。

(全国銀行協会)

〇 個人顧客によるオンラインでの口座開設手続の利用状況の具体的なデータは持ち合わせていないが、コロナ禍による顧客の行動様式の変化で、オンラインでのニーズが高まり、利用促進が図られているものと考えている。スマホアプリでの口座開設も増加している印象。
 業界内の周知状況に関して、「検討会」の模様や「論点整理」について、協会の役員会を含む関係会合で報告し、会員宛に資料を通知している。UI/UXの改善は、個別銀行で取組んでおり、例えば操作性の改善や簡素化を図っている。全銀協のウェブサイトにおいては、IB等の利便性、来店なしで手続きできることをPRしているほか、金融犯罪への対応やセキュリティの注意喚起を通じ、安全性の周知を行っている。

 
(金融庁)

〇 信用金庫について、個人顧客を対象としたWEB通帳やWEBローンの提供はある程度進んでいる一方、「スマホ口座開設アプリ」を利用する金庫数は2割程度にとどまっている。どのような要因が考えられるか。

(全国信用金庫協会)

〇 明確な要因は不明だが、地域密着の金融機関であり、従前より対面取引を重視し、顧客からも期待されてきたため、取引開始時の口座開設の局面では、まずは来店することが考えられる。コロナの流行などの経験を踏まえ、今後のデジタル化の重要性は認識している。

 
(金融庁)

〇 法人顧客を対象としたオンラインサービスの提供率は微増しているものの、引き続き低水準との印象。既にサービスを提供している金融機関の取組事例の共有や、オンライン完結型本人確認方法の活用等の状況如何。

(全国銀行協会)

〇 取組事例としても、先述のとおり、関係会合での報告や会員宛の資料通知により「論点整理」を周知することで、登記情報提供サービスを利用して登記情報を取得することで法人の本人確認を行う事例、マネロン等の観点から対面手続を残しつつも最小限にとどめている事例を紹介した。
 法人口座開設に係る本人確認については、不正口座開設防止の観点から、顧客の複数回の来店を要し、銀行にとっても審査に伴う業務負荷がかかる。オンライン化の検討ハードルが個人口座開設に比べて高い中、一部手続からのオンライン化等、各銀行において創意工夫が図られていると理解。

 
(金融庁)

〇 法人IBについて、「論点整理」では銀行業界側と顧客側それぞれの課題への対応策が示された。本日のプレゼンでは銀行業界側の課題への対応事例が幾つか挙げられているが、顧客側の課題への対応状況は如何か。「論点整理」に記載されている、ITコンサルティングの実施を通じた顧客企業のデジタル化推進の一環としての法人IBの促進、法人IBのメリットの説明強化等で、参考事例があれば紹介いただきたい。また、業界内でそうした参考事例は幅広く共有されているのか。

(全国銀行協会)

〇 資料1(右下8頁)に周知強化の事例を掲載しており、共有に関しては、本日の模様や資料も関係会合での報告や会員宛の資料通知を予定している。ITコンサルティング等の対応策については、銀行業界として、以前より生産性向上や人手不足対策の観点から推進してきたうえ、直近ではコロナ禍への対応のため取組んでいる。また、銀行法改正による環境整備もあったところ、引き続き法人IB含むデジタル化促進に向けて取組を推進してまいりたい。

(金融庁)

〇 法人IBについて、規制改革推進会議でも利用促進に係る議論があったところ、好事例を前広に共有いただく機会の設定等も検討いただきたい。

 
(金融庁)

〇 信用金庫・信用組合について、オンライン化促進にむけた、協会によるアプリ開発に感謝。個々の信用金庫や信用組合がアプリを通じたサービスを提供できるよう、協会はどのような働きかけを行っているのか。

(全国信用金庫協会)

〇 昨年、「論点整理」を理事長クラスの会議で報告して全金庫に通知している。アプリ導入は個別金庫の経営判断に委ねており、各金庫は顧客ニーズを踏まえて判断するため、協会から各金庫に対しては、アプリ導入を強く要請することはなく、好事例の共有により、事業の生産性や効率性の向上に寄与することを示していきたい。

(全国信用組合中央協会)

〇 四半期に一度開催している信用組合が集合する会議にて機能を説明したり、業域・職域の組合もあることから業態別の説明会を開催するなどといった周知活動を行っている。今後IBを提供する組合数を伸ばしていくための啓蒙活動が重要だと認識。

 

4.事務局からの説明

金融庁より、資料4に沿って法人IBに関する規制改革推進会議における議論状況等を説明。
 

5.閉会

(金融庁)

〇 「論点整理」の公表時点から比較して、デジタル化に着実な進展がみられたことを確認できたこと、業界団体の皆様の努力に感謝。次回以降、証券、生命保険、損害保険の業界団体に取組の進捗状況等についてプレゼンをして頂く予定である。また、今事務年度の「検討会」ではプレゼンの機会がない業界からの構成メンバーにおいても、他業界から共有された取組について、可能なものは取り入れ、デジタル化を推進いただけると幸い。
金融機関と法人・個人顧客間の手続について、デジタル化の推進を検討する場合、行政機関と民間事業者間の手続、業界団体と会員間の手続と異なり、従前の慣習や文化に根差したもの、顧客保護の観点から必要なものもあり、単純に切り分けられない部分があることも理解。一方で、コロナ禍を契機としたデジタル化の推進は、政府の「成長戦略実行計画」等にも掲げられており、「新しい資本主義実現会議」における緊急提言の中でも中心的な課題になっているため、今後も政府として推進していくことになる。
 法人IBの関係では、「論点整理」を取り纏めた時点と比較して、よりスピード感のある対応が業界団体に求められていると認識している。先程の事務局からの説明のとおり、規制改革推進会議において取り上げられたところであり、詳細な実態把握、目標設定、目標を達成するための行動計画、利用促進策への対応が今後必要になる。金融庁としても、実態把握や適正な目標設定について、既に検討を開始している。一方で、政策として求められているものは、法人顧客と金融機関、即ち民間同士の取引に係ることなので、政府として手が打てることには限界があり、目標が掲げられたときの達成に向けた動きに関して、事業者側の業界団体と預金取扱金融機関側の業界団体が果たしていく役割は大変大きい。政府からの実態把握や目標設定を待たずに、業界団体としてどういう行動計画を作るべきか、どういう利用促進策がとれるのか、という検討を開始いただきたい。デジタル化や効率化の推進にあたり、民間同士の慣習や文化に根差したものであったとしても、行政や業界団体は時に強いリーダーシップをもって必要な変革を推進することが求められる。業界団体においても、一層の努力をお願いしたい。次回以降も、デジタル化促進に向けた闊達な議論を行っていただければ幸い。

ー了ー

 
お問い合わせ先

監督局総務課

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)(内線3387、3308)

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