令和3事務年度 第2回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1. 日時:

令和4年1月31日(月曜)16時00分~17時00分

2. 場所:

オンライン会議

3. 議事概要:

1.各業界における書面・押印・対面手続の見直しの進捗状況等

 書面・押印・対面手続の見直しの進捗状況等について、生命保険協会より資料1、日本損害保険協会より資料2、日本証券業協会より資料3に沿って発表した。

各協会における主な進捗と今後の課題等については、以下の通り。

(生命保険協会)

・生命保険会社とお客さまとの接点のあり方には、チャネルに応じて様々な形態が存在するが、営業職員チャネルや銀行窓販チャネル、来店型保険ショップ等を含む一般代理店チャネルの比重が高まっており、今後もチャネルの多様化が進展する見込み。また、生命保険は、長期にわたる契約で、各局面(新契約時・保全時・支払(請求)時)において非定期的・断続的に手続きが発生するが、顧客利便の一層の向上に向け、各社で創意工夫し、手続きの効率化・簡素化を推進してきたところ。

・直近の取組状況に関するアンケート結果では、

新契約時:営業職員チャネルでは、多くの企業でオンライン完結の対応が進められており、「契約申込」等ではすべての企業でオンライン完結または電子手続きが可能。
通信販売チャネルでは、半数以上がオンライン完結で、対応可能な会社数は増加。
代理店チャネルでも、多くの企業でオンライン完結が可能とされており、一般代理チャネルでは対応可能な会社数が大幅に増加し、一般代理店チャネル・窓販代理店チャネルともに約半数以上がオンライン完結または電子手続きが可能となっている。

保全時:営業職員チャネル・通信販売チャネル・代理店チャネルでは、「住所・電話番号の変更」といった比較的シンプルな手続きは7割以上がオンライン完結可能。ただし、「受取人等の変更」といった続柄確認や本人確認等が必要となる手続きについては、オンライン完結・電子手続きの実施にばらつきがある状況。

支払時:営業職員チャネル・通信販売チャネル・代理店チャネルでは、オンライン完結の対応を行う会社数が増加しており、「簡易請求」は7割以上が電子手続きを導入済みまたは検討予定としている。その他の手続きは、検討予定や未実施が多いが、これは、保全の手続きに比べ、必要書類が多いことが要因として考えられるが、検討予定としている会社が多く、これから検討が進んでいくことが期待される。

・また、金融庁の電子申請・届出システムへの対応は、半数がすべてまたは大半の手続きがシステムに対応済みであり、e-Gov・金融庁業務支援統合システムにおいては、7割以上が、すべての手続きについてシステム対応済みとなっている。なお、意見・要望としては、システムの一元化や、アプリ更新の際の周知等に関するものがあった。

・公的個人認証サービスについては、提供している会社は2割程度で、検討しているサービスは一定数あるとの結果であった。懸念点として多く挙げられたのは、効果やメリットが見出しにくいことや、費用対効果が算出しづらい等の点であった。

(その他、各手続局面における主なデジタル化の取組事例や、住友生命における個社事例について説明があった。)

・なお、生命保険協会におけるデジタル化に係る取組みについては、2020年より「生命保険手続きのデジタル化推進ワーキング・グループ」を設置し、アンケート結果のフィードバックなどを行いつつ、ワーキング・グループで「デジタル化推進にかかる基本方針」を決議するなど、業界全体で取組みを推進している。

 
(日本損害保険協会)

・損保業界における書面・押印・対面の見直しは、顧客の利便性向上と損害保険会社社員の働き方改革に資する取組みであるとともに、コロナ禍を契機に、これまで以上に速いスピードで進捗すると思われる社会や顧客のニーズ変化等を踏まえつつ、今後も関連する取組みを推進する。

・そうした中、直近の取組状況に関するアンケート結果では、全体的な取組状況として、昨年に比べて、個人向け商品の契約に関する各種手続きは、全ての場面で「非対面・非書面完結」の会社数が増加。法人向け商品も同様に全ての場面で「非対面・非書面完結」または「対面・非書面完結」が増加している。
契約に関する各種手続きは、特に新規契約時の「非対面・非書面完結」の増加が顕著。昨年度から今年度にかけ、電話募集で対応可能な商品や手続きが増加している。

 損害サービスに関する各種手続きは、個人向け、法人向けいずれにおいても、「電子的手段を活用した事故報告および保険金請求書類の提出を可能」とする会社数が増加。これは、電話対応が従来から浸透していたが、更に損害報告等の写真等も電子データで受付可能とした取組み等の為と思われる。

 各手続き局面において、

  非対面手続きは、個人向けは高い水準である一方、企業向けについては、リスクの把握等の対応の為、一律での対応は厳しいが、電話募集を可能とするなど、各社の取組みが進んでいる。

  非書面手続きは、Web約款の発行対応をはじめとして、対応可能な会社数が増加した。
 非押印手続きについても、対応可能な会社数が増加した。

・金融庁への各種申請に係る電子化の状況だが、13社が全てまたは大半の申請・届出で電子化対応しており、残りの多くの会社も準備中である。

・損害保険協会が、業界として取組む事例として、保険料控除証明書ハガキの共同発行・マイナンバーポータル連携がある。これは、参加する各社が提供する地震保険等において、保険料控除証明書の発行業務を共同システムで一元化したものであり、保険料控除証明書をハガキや電子データで取得することや、マイナポータル上でのデータ取得が可能となった。

・上記の通り、各社とも取組みを進めており、今後も、アンケート結果のフィードバックによる事例共有を含め、各社の具体的な取組みを進展していく。

 
(日本証券業協会)
・証券業界では、2020年から会議体の設置やその議論の取りまとめ等を通じて、取組みを推進しているところ。
・今回のアンケート結果によると、以下のような結果となった。
これまでの取組み
 電子化された手続きを全て又は多く利用している会員会社が8割弱であったが、セキュリティの確保やコスト面等の影響により、システム対応のばらつきがみられる。日証協の取組みについては、在宅勤務、事務手続き改善、顧客利便性等の観点から評価する声が8割超だが、引き続き、電子化の方式等に関する要望(例えば、電子ファイルがPDFに限定されている等)もあった。
 業務効率化についても、約3割の会員会社で大いに進んだとの結果で、好事例として、あるネット証券では、口座開設コストが8割、委託コストが5割、不備発生率が6割減少し、紙での郵送物が9割減った等も見られた。
 協会等への届出・報告等の各種手続き

   日証協向けの届出・報告等は、電子化措置を行った結果、9割超の会員各社が対応済みとなった。

  複数の当局・団体向けに重複する手続きは、「事業報告書」「モニタリング調査票」が4月から一元化が実現するので感謝。今後もほかの計表について、調整等を進めさせていただきたい。

 顧客との間における各種手続き
 (1)顧客から証券会社への手続き 

  個人顧客への対応においては、対面での営業スタイル等の関係で、電子化・システム化していない会社が多いが、検討中等の段階にある会社も一定数存在している。(昨年度のアンケート調査とは設問が異なるため、一概には比較できないが、)全体として書面レス化は進展が見受けられた。

  法人顧客への対応においては、個人顧客と同様の傾向だが、印鑑登録や取引権限の確認等の為、電子化できていないケースなども見受けられた。(昨年度のアンケート調査とは設問が異なるため、一概には比較できないが、)、全体として書面レス化は若干の進展が見受けられた。

  その他、税法等の定めにより書面手続きが必要なものがある旨のコメントや、マイナポータル対象手続きの拡大等の要望等も各社から寄せられた。

 (2)証券会社から顧客への手続き

  契約締結前交付書面のweb化により一定の効果が得られたが、全体として顧客から電子交付の同意が得られてない傾向が見受けられる。特に、既存顧客は2~3割しか同意が得られておらず、各社とも課題と捉え、手数料の割引等を通じて対応している(新規顧客は7~8割程度同意が得られている)。これらについては、各社の努力だけでは限界があり、法令等の改正も含めた対応が必要となるため、金融審議会等での議論などもお願いしたい。

・公的個人認証サービスの活用については、提供する会社はほぼない状況である。効果やメリットが見出しにくい、費用対効果が算出しづらいという回答が多い。その背景として、マイナンバーカードの普及率や、公的個人認証サービスの利用料等が上げられた。

 
(金融庁)

〇 複数の当局・団体等に重複する手続きに関する一元化についてだが、事業報告書、モニタリング調査票は、ご発表の通り、一元化する予定である。
 その他の報告書等についてだが、決算状況表をはじめとした業務統合支援システムを利用しての提出物については、一元化できるものから、報告先の一元化も含めて、日銀、日証協等の関係機関と相談しつつ、進めていきたい。
 書面の電子交付の同意取得は、当庁で開催する金融審議会等での議論を経て、検討が進んでいくものと承知。

 
(金融庁)

〇 当局への書類の提出に係る電子化への取組みにご協力いただき、感謝申し上げる。昨年6月から金融庁電子申請・届出システムの運用が開始したので、是非ともご利用いただきたい。また、金融庁業務支援統合システムについては、現在、次期システムへの更改に向けて準備を行っている。
 金融庁のシステム等に関する意見・要望に関する貴重なご意見に感謝する。他方、システムの仕様上の制約やデジタル庁の所管のGビズID等に関するものもあり、実現できないものも含まれていることを、ご理解いただきたい。また、当庁の提出等に係るシステムの一本化に関するご要望をいただいているが、当庁としても重要なご意見・ご要望であると認識しており、今後も検討して参りたい。

 

3-1.質疑応答 (生命保険業界)

(金融庁)

〇 今後はオンライン完結・電子化している手続きの利用状況(実際にどの程度利用されているか)も把握し、利用率が低調であれば、その向上が実質的なデジタル化の推進の観点から重要と考えるが、生命保険協会としてどう考えているか。

(生命保険協会)

〇 手続きの利用状況については、今回のフォローアップ調査の中で、手続きごとに「利用率」等のベンチマークの設定有無について質問した結果、総じて各社とも様々な取組みを行っていることが確認できた。その利用率の向上については、顧客からの要望や世の中の動向にもよるが、長期間にわたる複雑な契約や、例えば支払手続きのように、遺族の心情等にも配慮する必要がある手続きもあり、オンライン化を望む顧客もいらっしゃれば対面を希望される顧客もいらっしゃる中で、様々な手段を用意したうえで丁寧に対応していく必要があると認識している。お客さまの要望等を踏まえながら創意工夫することを通じて、全体として利用率の引き上げに向けて取り組むことが重要だと認識している。

 
(金融庁)

〇 営業職員チャネルのオンライン完結が昨年から相当程度進んでいるが、営業職員が顧客に直接訪問せず、どのようなコミュニケーション手段を活用しているのか。(資料6ページ)
 通信販売チャネルの方が、営業職員チャネルよりもオンライン化・電子化が進みやすい素地があるように思われるが、「未実施」となっている先が微減に止まっている要因如何。(資料6、8ページ)
 代理店チャネルの中で、一般代理店と窓販でオンライン完結に差異が出ている要因如何(資料7ページ)

(生命保険協会)

〇 営業職員チャネルのオンライン完結については、従来より、例えば顧客の引越し等の事情により遠隔におられる方に対して、郵送や電話等を活用してコミュニケーションを図ってきた。そのうえで昨今の新型コロナ影響等を踏まえ、各社様々なツール等を活用して対応をしているものと認識している。例えば、住友生命では、ZoomやLINE WORKSの導入、PC・タブレット端末等を活用した取組みを行っている。(資料21ページ)
 一般代理店チャネルと窓販チャネルにおけるオンライン完結可能な手続きの進捗状況の差異について、各社においては、お客さまがどの程度オンライン手続きを望まれるのかという点や、自社の経営戦略も踏まえながら対応を進めているものと考えられる。一般論だが、窓販チャネルにおける顧客は、オンラインより書面・対面を望む方の割合が一定多いのではないか。

 
(金融庁)

〇 契約申し込みに比して、解約のオンライン完結・電子化への対応が遅れているようだが、その要因如何。(資料8ページ)

(生命保険協会)

〇 解約に関するオンライン完結・電子手続きの対応状況が、新契約等より遅れているとのご指摘だが、解約については、契約(保障)自体が消滅することに加えて、生命保険契約の場合、改めて同じ内容の契約に加入し直すことは難しいといった特徴がある。すなわち、解約に伴い顧客の不利益が生ずることを顧客に正しく理解いただいたうえで丁寧に手続きを進める必要があると考えられるので、そのような対応が電子化の対応状況にも影響しているのではないか。

 
(金融庁)

〇 契約者専用ページを活用するとかなり広範な手続きについてオンライン化が可能なようだが、これの登録率・利用率の向上は相応に難しい状況なのか。(資料17ページ)

(生命保険協会)

〇 対面を要望する顧客も一定いらっしゃるため、そのような顧客の事情にも配慮して、丁寧に対応を進めることが求められている。お客さまのニーズ等も踏まえながら対応していくことが必要ではないか。

 

3-2.質疑応答 (損害保険業界)

(金融庁)

〇 企業向け商品における非対面・非書面完結及び電子的手段を活用した保険金請求等が大きく増加した主な要因如何。(資料5、6ページ)
 また、企業向けの非対面募集において、ネット(アプリ)対応が、個人向けに比べ相対的に少なくなっている要因如何。(資料7ページ)

(日本損害保険協会)

〇 企業向けの保険金請求等で非対面・非書面が進んだのは、損保業界側の努力に加えて、顧客側のコロナ対応としてインフラ整備が進んだこと、非対面・非書面への理解が深まったためと考える。
 企業向けのネット(アプリ)対応が少ない要因として、事例として聞いているのは、企業向けは個別性が高いことや、保険募集の際に、リスクコンサルティングを併せて行っている場合もあり、直接やり取りする必要性があるため。

 
(金融庁)

〇 企業向け商品について、Web約款の発行は一定程度増加したようだが、Web証券については、引き続き、企業側に紙で保有したいというニーズが強いために微増にとどまっているものか。その紙で保有したいニーズの要因は何か。
 マイページの利用も、企業への提供が少ない要因如何。(資料8ページ)

(日本損害保険協会)

〇 Web証券は、顧客側に紙ニーズが大きい。各社の詳細は承知してないが、主たる要因は企業の取引の中で、契約書・証券等の契約関係書類(顧客の利害に関係する書類)はまだ、エビデンスとして紙媒体で求めるニーズが日本では高いものと思われる。
 マイページに利用については、企業向けの商品は個人向けより個別性が高く、商品の複雑性もあるため、企業と保険会社のやり取りは直接を望まれることが多い。なお、その際は電話やオンライン会議ツールなど顧客側の要望に合わせて各社で対応しているものと承知。

 

3-3.質疑応答 (証券業界)

(金融庁)

〇 昨事務年度の論点整理で取り上げられた考えられる対応として、各社における先進事例を参考とした取組状況や、日証協における先進事例の紹介を含む「電子化の必要性について気付きを得る機会」の提供に係る取組が提示されていたが、これらの対応状況如何。その他、オンライン利用率向上に向けた取組状況如何、何か共有に値する優良事例はないか。

(日本証券業協会)

〇 先進事例等の業界内での横連携について、今回のフォローアップアンケート調査を活用し、昨年12月に業界にその結果をフィードバックした(本日のプレゼン資料は、その要約版)。その中で、例えば、ネット証券の事例として、オンライン化により、口座開設のコストが8割、委託コストが5割、不備発生率が6割減少等したことを紹介した。
 また、アンケート調査に基づき、日証協の会議体で更に検討を進めて、各社の好事例、課題を抽出して、議論する予定。

 
(金融庁)

〇 法人顧客向けのデジタル化について、印鑑の登録や取引担当者の本人確認(取引権限の確認)の為、電子化できないとのことだが、取組みが進んでいる先進事例等を把握していれば紹介してもらえないか。(資料10ページ)。

(日本証券業協会)

〇 法人顧客の事例は、業界としても実態を把握する必要性を感じている。法人顧客は、大手証券、外資系証券に多いが、今回の調査では外資系証券で電子化が比較的進んでいないことが判明した。従って、取組みが進んでいる会社の事例を共有しつつ、その他、必要な場合には実務慣行等の見直し等を進めていきたい。顧客向けの働きかけとして、手数料の割引等を含めて、取り組んでいる事例があることを承知。もし証券会社より補足があればお願いしたい。

(野村證券)

〇 当社として電子手続きの推進の為、例えば手数料を割引する以外に、従来画像撮影が必要であった口座開設について、マイナンバーカードを保有している顧客においては、スマートフォンだけで完結できるようにするなどの取組みを行っている。
 法人顧客のデジタル化は、取引が多い顧客の場合、お取引ご担当者が多いこと等により管理が煩雑となることなどを理由に、より電子化が進んでいないのは事実なので、今後改善していく必要性を感じている。

 ー了ー
お問い合わせ先

監督局総務課

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)(内線3387、3308)

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