令和3事務年度 第3回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1. 日時:

令和4年3月4日(金曜)17時00分~18時00分

2. 場所:

オンライン会議

3.  議事概要:

1.公的個人認証サービスのユースケースについて

公的個人認証サービスのユースケースについて、デジタル庁より資料1に沿って発表した。概要は以下のとおり。
(デジタル庁)

・本日ご参加の皆様においては、新型コロナ感染症の影響による社会環境や顧客ニーズの変化に対応するため、新たなオンラインサービスの提供や既存サービスの見直し等に取り組まれているとお伺いしているところ、(マイナンバーカードの電子証明書を活用した)公的個人認証サービスを非対面取引における本人確認手段の1つとして活用をご検討いただきたいという思いから、本プレゼン資料を作成した。

・2021年秋のアンケート調査では、「活用するために必要なコスト(費用対効果)が算出しづらい」、「制度面・機能面がよくわからない」ということが、公的個人認証サービス導入における課題であると認識した。これは、第1回、第2回の検討会で各協会から示された課題と同じものと理解している。デジタル庁としては、金融庁とともにこれらの課題への対応として、次の3つの対応を検討中。

・公的個人認証サービスの積極的な情報発信の継続、事業者ニーズを踏まえた既存資料の見直し及び新たな資料公表

・事業者参加の意見交換会やピッチコンテスト等の説明会の枠にとどまらない官民連携イベントの開催

・マイナンバーカードの普及と利便性向上に加え、事業者からの具体的な意見等募集し、制度面・機能面での改善に向けた取組の継続

・オンライン口座開設等における本人確認方式としては、「自撮り方式(写真付き本人確認書類の画像と顧客本人の容貌の画像送信により本人確認を行う)」と、「JPKI方式(マイナンバーカードの署名用電子証明書と電子署名が行われた特定取引等の情報送信により本人確認を行う)」があるが、スマホによるオンライン口座開設またはアカウント開設時に自撮り方式とJPKI方式の両方を提供している銀行および資金移動事業者より、公的個人認証サービスのメリット等を取材し、まとめたのでご紹介させていただくもの。

公的個人認証サービス活用のメリット
顧客メリット:
・署名用電子証明書の基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)取得で、入力/選択項目が削減。

・「写真付き本人確認書類の画像」と「容貌画像の送信」の不要で、本人確認書類提出が容易になる。

事業者メリット:

・入力等の不備件数が、顧客側の入力項目削減や、「写真付き本人確認書類」及び「容貌画像」の送信不要により削減(差戻し割合が、15%程度(自撮り方式)から、ほぼ0%(JPKI方式)になった。)

・1件あたりの事務コストが、顧客への不備連絡や、本人確認書類の真贋性判定の目視チェック等事務(例:運転免許証等の偽造改竄)の削減により、下がった。(1取引あたり約3倍の事務効率を実現し、システム投資額に対して約2倍の事務コストが削減できた。)

・事務効率化で申込件数増加にも対応可能となり、機動的なキャンペーン実施が可能となった。
 
公的個人認証サービス導入の目的・経緯
目的:顧客の利便性向上や事務負担軽減・効率化のため。
経緯:マイナンバーカードの普及が進み、投資対効果が見込めたため。
 
サービス実装に当たって工夫を要したこと

・署名用電子証明書の有効性確認画面をシームレスに表示させるようにした。また、署名用電子証明書から読み取る情報について、顧客が安心して利用できるよう、説明文を工夫した。

・署名用電子証明書の暗証番号が顧客の手元にないこと等を想定し、手続途中でJPKI方式から自撮り方式へ変更しやすい画面導線とした。

・署名用電子証明書の住所、氏名はひとつながりで保存されているが、当社の顧客データベースでは住所は都道府県・市区町村・丁目・番地、氏名は姓・ミドルネーム・名ごとに分割して管理しているので、適切に区切る必要があった。

 
認識している課題

・公的個人認証サービスに利用にあたり、マイナンバーが事業者に提供されるとの思い込みがある顧客が一定程度存在する

・署名用電子証明書のパスワード忘れや、パスワードの入力間違えによるロック等で、手続の途中で離脱してしまう顧客の割合が想定よりも多い。

・郵便番号、氏名のフリガナ、在留資格の有無が連携ですることにより、公的個人認証サービスを利用した不正利用対策のさらなる強化が実現できる。

 

・「活用するために必要なコスト(費用対効果)が算出しづらい」、「制度面・機能面がよくわからない」とお悩みであれば、ぜひ参考とされたい。
 

2.融資契約手続に伴う抵当権設定登記申請の電子化の状況

融資契約手続に伴う抵当権設定登記申請の電子化の状況について、日本司法書士会連合会より資料2に沿って発表した。主な概要については以下のとおり。
(日本司法書士会連合会)

・不動産取引では、不動産の売主と買主間にて仲介契約書、売買契約書、重要事項説明書等、金融機関と買主間にて金銭消費貸借契約書、抵当権設定契約書と、多くの書類が取り交わされる。司法書士は、登記申請手続を行う前に不動産売買や抵当権設定等の実体確認、契約当事者の本人確認、実態上の契約締結意思、登記申請意思の確認、書面押印された印影と印鑑登録証明書の印影とが一致するか等の確認を行う。登記申請手続では申請書をオンライン送信後、印鑑登録証明書等添付書類を郵送または持参する半オンライン申請が大多数。

・不動産業者ではeKYC等のオンライン本人確認手法の採用が普及、またデジタル社会形成法の整備により重要事項説明書等の電子化も実現が進みつつある。そうした中、重要事項説明ひいては売買契約自体のオンライン化実現時には、売買契約書等に不動産の売主と買主の双方の電子署名を付す必要性が生じると考えられる。

・金融機関ではオンラインでの金融サービス提供を進めているところ、金銭消費貸借契約書及び抵当権設定契約書のオンライン化、またオンラインでの本人確認も普及が想定される。そうした中、抵当権設定契約のオンライン化実現時には、抵当権設定契約書等に買主と抵当権設定者双方の電子署名を付す必要性が生じ、また融資のデジタル化の普及とともに権利保全の観点から登記申請手続でもオンライン化が加速すると考えられる。

・登記申請手続のデジタル化が実現したとしても、登記の実体及び依頼者本人の意思等は司法書士が職責として確認すべき事項である。その際、書面手続では、登記関係書類に押印された印影と印鑑登録証明書の印影が一致するかを肉眼で確認する。一方、オンライン手続では、添付情報等に付された電子署名が依頼者本人のものか、電子証明書が失効していないか等を確認することになる。オンライン手続は上記の点を確認後、申請情報及び添付情報をオンラインで送信するという流れ。ただし、添付情報や委任情報には、原則としてマイナンバーカードによる電子署名が必要である点に留意しなければならない。

・令和3年2月15日に「日司連公的個人有効性確認システム」の運用開始により、マイナンバーカードの署名用電子証明書を用いた世界最高レベルでのオンラインでの本人確認を実現した。具体的には、司法書士が本システム上にて依頼者が読み込んだマイナンバーカードの署名用電子証明書の有効性及び委任情報や添付情報等に埋め込まれた電子証明書と予め確認した電子証明書の一致性を自動で検証することが可能となった。登記申請に必要な委任情報や添付情報等に対し、システム上で電子署名を付与することができればシームレスな登記申請が実現可能になるものと思われる。

・登記申請手続には原則として個人の場合はマイナンバーカードの署名用電子証明書、法人の場合は商業登記による電子証明書が必要である。従って、今後、金融業界にてシステムを設計・構築する際には、売買契約や抵当権設定契約の局面で登記申請手続に使用できない電子署名・電子証明書は避けていただく等、登記申請手続を見据えた仕様をご検討いただきたい。

・オンラインでの融資契約にて公的個人認証サービスを活用する場合、電子署名時点の電子証明書の有効性検証を長期にわたって行うことが求められるが、電子署名法施行規則では電子証明書の有効期限は最長でも5年とされている。法的紛争発生時に電子証明書が失効している可能性もあるため、電子証明書が失効した際の取扱いについて実務上の指針を示すことご検討いただければ幸いである。また、PAdES(PDF長期署名)、CAdES(CMS長期署名)、XAdES(XML長期署名)処理を行うことできるか法令上不明点があるところ、整理を行っていただきたい。

※PAdES処理等を行うためには署名用電子証明書失効情報(失効していないことの情報)の提供が必要であるが、署名検証を実施した者以外の第三者に対して失効情報(失効していないことの情報)を提供できるかどうかに不明点がある。

 システム障害が発生した際、オンライン申請を行った者が不利益とならないような措置を講じていただきたい。具体的な例としては、10時に抵当権設定登記をオンライン申請後、システム障害が発生し受付されない状態が継続されたとする。その後、同日11時に同一物件に対し別の登記が書面で申請され受付けられた場合、仮に11時になされた書面申請が対抗関係で優先するとなると、オンライン申請がためらわれてしまう。
 

3-1.質疑応答(公的個人認証サービスのユースケース)

(全国銀行協会)

〇 全国銀行協会では昨年11月にデジタル庁と公的個人認証サービスに関する説明会を開催。今後とも公的個人認証サービスの制度周知に協力する所存。

   金融機関ではプラットフォーム事業者に委託する形でみなし署名検証者として制度活用が一般的だが、プラットフォーム事業者との相対契約によってはサービス導入の費用対効果を一概には言えないのではないか。(資料1の5ページ)

(デジタル庁)

〇 ご指摘のとおり、プラットフォーム事業者ごとに導入費用が異なるが、各業界団体向け説明会にて事業者より「定量的なメリットがわかりにくい」との意見が多く寄せられたことから、より具体的な事例を発信することで、「定量的なメリット」を試算するための材料となるのではないかと考え、今回のユースケースをご紹介した。公的個人認証サービスについて、事業者の皆様に認知していただくべく、引続き情報発信を続けていくので、今後もご連携をお願いしたい。
 

(全国信用組合中央協会)

〇 信用組合も口座開設アプリを提供するが、手続途中での離脱率の高さが一番の課題。JPKI方式の活用で離脱率が大幅に低下するならJPKI導入の検討も進むと思料しているので、可能な範囲で、JPKI形式での離脱率を開示いただけるとありがたい。

(デジタル庁)
〇 離脱率については数字を持ち合わせていない。今後の情報発信の参考とさせていただく。

(金融庁)

〇 公的個人認証サービスが活用できる局面として口座開設時の本人確認以外に想定される局面はあるか。

  また、行政手続では住民票等の原本送付を求める手続があり、完全オンライン化の妨げになっている。公的個人認証サービスの活用による基本4情報取得で住民票等の原本送付も不要になる可能性について、お考えをお伺いしたい。

(デジタル庁)

〇 前者については、例えば、オンライン口座へのログイン認証で、マイナンバーカードの利用者証明の活用があろう。当該利用者証明は令和4年度にスマホ搭載予定で、生体認証の導入も検討しているところ。その他では、銀行のキャッシュカードとマイナンバーカードを一体化することも技術上可能と思料。また、事業者へのヒアリングでは、運転免許証等の真贋確認は事務負担が大きいとの意見があったが、例えば窓口で公的個人認証サービスを用いた本人確認ができるようになれば真贋確認の事務負担は軽減されるのではないか。

   行政手続で住民票等の送付を求める理由が、実在性と本人性の確認であるならば、公的個人認証サービスの活用によって住民票等の原本送付も不要となるものと思料。

(金融庁)

〇 行政機関が事業者等に対し住民票提出を求める手続は、「住民票又はこれに代替するもの」と法令で規定。「又はこれに代替するもの」に公的個人認証サービスが含まれるか当庁含め各事業所管省庁でも整理の必要があるところ、今後ともデジタル庁とご連携させていただきたい。

3-2.質疑応答(融資契約手続に伴う抵当権設定登記申請の電子化の状況)

要望に対する回答
(全国銀行協会)

〇 ご発表資料は、当協会の関係会合で配布報告させていただく。ご要望は、シームレスなデジタル化という方向性では一致するが、協会から個別の銀行が導入するシステムの具体的な仕様について指示する立場にないことはご承知いただきたい。

(デジタル庁)
〇 ご意見として承る。

(金融庁)

〇 融資契約を書面で締結する場合、印鑑証登録証明書等を付すると承知。契約締結後実印が変更され印鑑登録証明書に変更が生じた場合、実務上、変更後の印鑑登録証明書等を求めるのか。書面にて行う場合に契約締結時点で有効性が担保されているということで実務上特段求めていないということであれば、電子証明書の長期の有効性検証は不要ではないか。

(全国銀行協会)

〇 業界統一的なルールがないが、契約当時の実印が変更された際に、契約の有効性を継続させるため、印鑑登録証明書を再度顧客から取得することはないと承知。

(日本司法書士会連合会)

〇 電子署名付与時点での電子証明書の有効性確認が可能であること、及びハッシュ値等の保存による文書の長期検証が可能であることが担保されていれば問題ない。

   しかしながら、例えば相続手続等で10年前に電子署名を付与した遺産分割協議書に基づく相続登記申請手続を依頼された場合、実際に登記申請手続を行うときは電子証明書が失効していることが想定される。このような事例における取扱いの整理について問題意識がある。

ー了ー

お問い合わせ先

監督局総務課

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)(内線3387、3308)

サイトマップ

ページの先頭に戻る