令和3事務年度 第4回「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事概要

1. 日時:

令和4年4月7日(木曜)15時00分~16時30分

2. 場所:

オンライン会議

3.  議事概要:

1.法人インターネットバンキングの利用促進に向けた参考事例

法人インターネットバンキング(以下、法人IB)の利用促進に向けた参考事例について、全国銀行協会(以下、全銀協)より資料1に沿って発表した。概要は以下のとおり。
(全国銀行協会)

・法人IBの導入・利用など取引の電子化については、事業者における利便性・生産性向上はもちろんのこと、金融業界にとっても事務負担・コスト削減やリスク軽減に寄与するため、かねてより業界として積極的に推進してきた。昨年12月に公表された規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」において、法人IBの利用促進に関する言及があり、事業者のDXにおいて重要な位置づけと改めて認識したところ、本日は参考事例を紹介する。

周知強化策:顧客の属性等に応じて手法を工夫しつつ、法人IBの存在自体やこれを通じて可能となる取引について積極的に周知を行う事例がみられた。

・地域企業からの依頼を受け、商工会議所・法人会と連携のうえ、地元の地方銀行が勉強会の講師として登壇。勉強会では、約束手形等の利用廃止を巡る政府の動向および手形・小切手の代替手段として、電子記録債権、法人カードと併せて、法人IBの商品性、導入メリット、セキュリティ等を説明。

・全銀協として、リーフレット「小切手の電子化で仕事がもっとラクになる!インターネットバンキング活用ガイド」を作成。

利便性向上策:利用者のニーズを取り込みながら、より便利で簡単なUI/UXを目指す事例がみられた。

・企業の販売・仕入管理および電子商取引と財務会計、給与計算、経費精算等の機能を、法人IB等の銀行決済機能と一体のサービスとして取引先である中小企業等に提供。

・法人向けWeb通帳の提供を開始。PDFやCSVファイルをダウンロードすることにより入出金の明細を参照。期間は最大10年、利用料金は無料。

導入支援策:導入のきっかけ作りとして、体験版(デモサービス)の提供や、顧客目線でのサポート体制充実を図る事例や、アンケートを通じて顧客ニーズを吸収し、丁寧な説明を行って導入を提案する事例がみられた。

・コールセンターにおいて、電話応対だけでは分かりにくい操作説明が可能となるよう、センター内に遠隔操作ツールを導入するとともに、オペレーター(行員を養成。電話対応と兼務)を配置。

・手形・小切手機能の全面電子化や顧客のデジタル化の促進を企図して、営業店経由で「手形・小切手の取扱い状況」、「法人IBの導入予定」、「社内のDX化に関する改善要望」等に関する顧客アンケート調査を実施。アンケート回答をもとに法人IB、でんさい未導入の顧客に原則として支店長帯同で往訪し、ニーズを吸い上げつつ、サービス内容を丁寧に説明し、導入を提案。

経済効果改善策:各銀行の営業戦略にもとづき、キャンペーンの実施や基本料金無料プランの導入を図る事例がみられた。

その他施策(人材育成ほか):各銀行の営業戦略や顧客の属性等に応じて、法人IBの導入提案に係る人材育成、他店優良事例の行内展開、人事評価制度への反映等をする事例がみられた。 

・営業店の担当者が単独でニーズ確認・案内・促進ができる体制を構築するため、本部専門部署において、オンライン研修・eラーニングや、活動時における着眼点、トークスクリプト等をまとめたマニュアル(「概要編」、「お客さま対応編」、「事務編」)を作成。営業店での活用を促すとともに、営業店からの「お客さまとの提案で使える資料が欲しい」「相談窓口が欲しい」等の要望にも適宜対応。本部と営業店が双方向で連携しながら導入・利用を促進。

・行内ポータルサイト内に設けた専用のページを通じて、定期的に手触り感のある他店の優良事例や推進の切り口等を、活動の気付きとなるよう発信。

・今後の展望として、各銀行においては、これらの事例も参考としながら、法人IBのさらなる導入・利用促進に向けて、営業戦略や顧客属性なども踏まえた効果的な取組みを継続し、業界団体においては、引き続き、会員の積極的な取組みを後押しすべく、必要な情報を提供していきたい。また、会員銀行へのヒアリングを通じて、小規模な事業者が抱えている課題認識として「費用対効果」や「ITリテラシー不足」を想定したところ、中小企業側の視点から見た利用状況および課題認識に関する実態把握の結果も踏まえつつ、官民一体となった解決策の検討・実行に向け、引き続きご支援いただきたい。

 

2.トラストを確保したDX推進サブワーキンググループの検討動向 

トラストを確保したDX推進サブワーキンググループ(以下、トラストSWG)の検討動向について、デジタル庁より資料2に沿って発表した。概要は以下のとおり。
(デジタル庁)

・トラストSWGでは、デジタル庁のデータ戦略の中でもトラスト基盤の構築を検討している。2019年にG20でDFFTが提唱されたところ、単にデータを自由流通させるのみならず、データに信頼性を持たせることが目的。トラストサービスも電子署名やeシール等のデジタルツールの活用が進む中、どのように電子文書の真正性や非改ざん性を担保できるのか、様々な手続をデジタル完結させるためにどのようにトラストサービスの活用を促進していくべきか等を昨年11月より議論しており、今年6月末に取り纏めを予定している。

・トラストSWGの議論に活用するため、国内企業と国内個人を対象にアンケート調査を実施。概要を紹介する。

-トラスト確保のニーズが確認された主なユースケースとしては、「行政」、「金融・保険」、「情報通信」、「不動産」、「医療・福祉」、「運輸・郵便」の業種/分野でのユースケースや、海外連携が必要なものとして業種共通の社外取引(受発注書の取り交わし、契約書の取り交わし、請求書の接受等)や、各業種固有の手続き等が挙げられた。

-トラストサービスへの課題意識としては、認知/理解不足、企業間での共通化の難しさの他、事業者/サービス選定の難しさ(「どのトラストサービス事業者を使えば適切かわからない」等)が挙げられた。

・トラストSWGでは、Identificationのアシュアランスレベルの整理にも着手。行政手続を中心に、海外における整理状況(EUにおけるeIDAS、アメリカにおけるNIST SP800-63等)を参照したうえで、日本の実情に応じた、Identificationのアシュアランスレベルとユースケースのマッピング案が提案された。これを踏まえ、既存の「行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」(以下、「行政手続におけるガイドライン」)の改訂の際に、最新のユースケース等をインプットする予定。

・トラストサービスの信頼性を評価する基準及び適合性評価のあり方については、例えば、国の果たすべき役割や、基準が担保すべき内容、Identificationのアシュアランスレベルとの関係性等、考慮すべき課題や論点が多岐にわたることが指摘された。

・トラストSWGの議論と関係として、デジタル臨時行政調査会(以下、デジタル臨調)の動向を紹介。デジタル原則の1つに「デジタル完結・自動化原則」があり、書面、目視、常駐、実地参加等を義務付ける手続や業務を見直すため、法令・通知通達等を点検している。デジタル原則の実現におけるトラストサービスの活用可能性として、例えば受講修了証等のデジタル発行を可能にするにあたり、電子署名やeシールを活用して真性正及び非改ざん性を担保することが考えられる。

・今後について、専門的な議論に限定せず、利用者目線の議論も踏まえた政策立案が必要だと認識。また、デジタル臨調の規制見直し集中改革期間を控えているところ、デジタル臨調へのインプット、例えば行政手続をデジタル完結させるために必要となるトラストサービスのガイドライン策定等を通して、デジタル原則の実現に貢献していきたい。

 

3-1.質疑応答(法人インターネットバンキングの利用促進に向けた参考事例) 

(金融庁)

〇 地域金融機関がグループ会社やシステムベンダーと連携してITコンサルティングサービスの提供や会計システムの導入支援等に取組んでいる事例があると承知。事業者に対して法人IBを含むITツールの利用を促しているような参考事例があれば共有いただきたい。

(全国銀行協会)

〇 必ずしも地域金融機関に限らないが、ITコンサルティングに係る具体的事例として、事務部門内に営業店BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)推進チームを作り、法人IB等を活用した既存事務のデジタル化に向けたソリューションを提案するというものを把握している。(資料7ページ)

   当協会としては、手形・小切手機能の全面的な電子化、金融EDIの利用促進等にも取り組んでおり、法人IBの普及はデジタル化促進における1つのキーポイントだと感じている。各金融機関の取組みを後押ししていきたい。
(第二地方銀行協会)

〇 地域金融機関として顧客の経理業務の効率化を継続的に促進してきたところであり、促進のための重要なツールとして、法人IBの普及は大切だと考えている。
 

(金融庁)

〇 昨年、「銀行間手数料」の「内国為替制度運営費」への変更に伴い、各行で振込手数料の見直しを行う中で、デジタルシフトを意図してIBのみ振込手数料を下げる事例もあったと承知している。参考事例があれば共有いただきたい。

(全国銀行協会)

〇 今回の資料作成にあたり、手数料に関する参考事例は収集していない。なお、手数料体系は、各行で決定するものなので、事業者団体の立場として対応できない部分もある。
 

(金融庁)

〇 金融機関によって地域性や規模は様々。信用金庫や信用組合をはじめ、小規模事業者を顧客とする金融機関にとって参考となる事例をご紹介いただきたい。

(全国銀行協会)

〇 例えば、でんさいネット主催のオンラインセミナーの共催および参加者フォローの事例を取りあげているが(資料5ページ)、これに関係する取組みとして、各地の信用金庫に、でんさいネットの職員を講師として呼んでいただき、企業向けに説明させていただく機会を頂戴することがある。こうした周知強化策は金融機関の規模によらず取り組みやすいのではないか。

   各金融機関の経営戦略によるところもあるが、今回の参考事例について様々な角度から検討いただくことは可能ではないか。
 

(金融庁)

〇 銀行業界における有用な事例収集に感謝。様々な事業者に法人IBの利用を促進するため、信用金庫や信用組合の業界団体においても個別金融機関へのヒアリングや参考事例の共有をご検討いただけないか。また、参考事例の共有については、銀行、信用金庫、信用組合の業界団体の間での連携も重要になると考える。


(金融庁)

〇 法人IBの利用促進については、今後、金融機関側・中小企業側の双方の視点から実態把握を行い、その結果を踏まえ、当庁と中小企業庁において、法人IBの普及・浸透の進捗を評価するに相応しい指標により目標設定し、金融業界・産業界においては、この設定した目標の達成に向けて、各々、具体的な取組みを進めていただくこととなる。

   金融業界においては、「今後の展望」で触れて頂いているように、本日、紹介頂いた好事例の共有・横展開等を通じて法人IBの利用促進に向けた効果的な取組みを進めて頂きたい。なお、小規模事業者における課題として、月額利用料に見合うだけの取引がない等の指摘があるが、本日の事例紹介にもあったように、サービス内容を限定するなどして月額利用料を無料とするプランを提供している金融機関も複数あると承知しており、こうしたサービス提供は小規模事業者の抱える課題に対応した一例であると思う。(資料11ページ)
 また、手形・小切手の全面電子化に向けた取組みにおいても、法人IBを含む電子的決済サービスの利用促進が重要となってくるものと認識しているので、この取組みのフォローアップの中でも法人IBの浸透・普及の状況をしっかりと評価して頂きたい。
 このほか、中小企業庁では、令和3年度補正予算で所謂「IT導入補助金」の拡充をしており、今後、令和5年のインボイス制度導入を見据えて、その活用促進を図っていくと承知している。金融業界においては、こうした中小企業庁の取組みと連携して、例えば、IT導入補助金の補助対象となっているクラウド会計と法人IBとの連携によるユースケースを分かりやすく事業者に紹介するなど、様々な連携機会を捉えて取組みを進めていただきたい。

 

3-2.質疑応答(トラストを確保したDX推進サブワーキンググループの検討動向)

(金融庁)

〇 「個人手続きにおけるトラストが必要と考えられるユースケース」として、「国内送金」や「銀行/証券口座開設」等が挙げられている。例えば、国内送金について、デジタル/オンライン完結させる際のトラスト確保とは、具体的にどういうシチュエーションを想定しているのか。(資料18ページ)

(デジタル庁)

〇 資料のグラフについて補足する。アンケート調査の結果として、「国内送金」等の各選択肢について、トラストサービスの利用有無は考慮せず、横軸に「デジタル/オンライン完結での実施経験者率」、縦軸に「1年以内の実施率」をとりプロットしている。このため、国内送金をオンライン完結させるためには電子署名等のトラストが必ずしも必要、という意味ではないと考えている。
 

(金融庁)

〇 書面・押印・対面手続の見直しの取組みを進めるにあたり、民間事業者等と当局の間で行う手続は法律・府令やガイドライン等を当局が見直す一方で、民間事業者等の間での手続は各業界において業界慣行の見直しを検討いただく必要があるため、本検討会を設置し、各業界団体にご参加いただいているという経緯がある。

   デジタル臨調の取組みとして、デジタル原則への適合性について、法律等を総点検するとのことだが、民間事業者等の間での取引を対象にした取組みも今後予定されているのか。

(デジタル庁)

〇 あくまでデジタル臨調と連携する立場としての認識だが、現状、民間事業者等と当局の間で行う手続を中心に議論している様子である。先日、日本経済団体連合会がデジタル臨調への提言を公表し、具体的な法律等を挙げてデジタル完結を可能にするよう要望した。行政機関に対する手続に関する規制に関する要望多かったが、民間事業者等の間での手続という観点では、労働契約や不動産契約に関する規制も一部含まれていた。いずれにせよ、デジタル臨調への要望は、慣行というより具体的な法改正等の規制改革が中心な様子である。


(金融庁)

〇 トラストSWGのアウトプット案として、「行政手続におけるガイドライン」見直しへのインプットが挙げられている。(資料27ページ)

   一方で、民間事業者等の間での手続について、アシュアランスレベルの議論はどのような進捗状況にあるのか。金融業界においても、各種手続をオンライン化していく中で、民間同士での取引の際に、どの認証ツールあるいはどの主体が提供している認証サービスを使うのがアシュアランスレベルの観点から妥当なのか、関心が高いと考えられるところ、今後の見通しがあればご共有いただきたい。

(デジタル庁)

〇 SWG第4回では、eKYCでの本人確認の保証レベルの検討について、DADCより取組状況を説明いただいた。DADCの検討結果を踏まえつつ、マルチステークホルダーモデルの中で、引き続き検討したい。

   また、民間事業者等の間での手続においてもガイドラインやレベル分けが必要ではないかとの問題意識は有しており、SWG第8回では、構成員の意見を聞く予定である。具体的には、アメリカのNIST SP800-63は民間に準用されている部分もあり、「行政手続におけるガイドライン」も民間が参照することも考えられる。


(全国銀行協会)

〇 トラストSWGにはオブザーバーとして参加している。トラストの確保は、銀行業界における書面・押印・対面手続の見直しにおいても、取引相手の実在性、文書やデータの非改竄性や真正性を担保する観点から重要だと考えており、トラストSWGのアンケートに協力した際には、金融機関からも同様の認識が寄せられた。SWGでの議論は、幅広い業種・分野、官民の双方にまたがるものであり、銀行業界にも関連するところ、引き続きフォローのうえ、トラストSWGが取り纏められた際には会員銀行にも情報還元したい。

(デジタル庁)

〇 銀行業界では電子署名やトラストサービスが他業界と比較しても積極的に利用されており、全銀協にはトラストSWGでもプレゼンいただいた。また、今後の金融業界において、例えば為替取引や貿易金融等、トラストサービスを利用することで透明性を向上できる分野があると考えている。引き続き、トラストSWGの場に限らず、業界の課題やニーズについて意見交換したい。

ー了ー

お問い合わせ先

監督局総務課

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)(内線3387、3308)

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