「金融所得課税の一体化に関する研究会」(第2回):    議事要旨

  • 1.日時:令和3年5月25日(火)13時00分~14時00分

  • 2.場所:オンライン開催

  • 3.議事内容:

冒頭、事務局から、金融所得課税の一体化の方向性、今後の取り組むべき課題及び税制改正の論点について説明。その後、参加者との意見交換を行った。
 主な発言は、以下のとおり。

(総論)

○ 金融所得課税の一体化の中で、デリバティブまで損益通算を拡大していくことは基本的に賛成。

○ 社会の格差の問題が世界的な課題である中、社会にとってプラスになる制度改正に資するのかは問題提起をしたい。若い方を含め、誰もが資産形成をしやすい環境を整備するための簡素、中立、公平な制度設計を目指すべきではないか。

○ 包括的所得概念に基づけば、時価課税が正しいだろう。実現主義が問われる時に最も問題になるのは、評価の問題と納税資金の問題。この2点がクリアできれば、時価課税の方が租税理論的には正しいが、執行上の問題が出てくる。

○ 金融所得課税の一体化は、本法ではなく、措置法の話。そうであれば、実体法的には政策上の理由が大事になる。政策上の理由が立てば、デリバティブの時価評価課税及び損益通算はあり得るので、政策上の理由がどれだけ立つかということになると思う。

(損益通算の範囲について)

○ デリバティブの投資対象として外貨や商品等が考えられる中、全てのデリバティブ取引について損益通算を認めるのは、問題があると考えられるため、当面、有価証券関連のデリバティブ取引に限定して損益通算を認めるか検討してはどうか。

○ 全体としては、ステップ・バイ・ステップで進めていくのではないか。対象とするデリバティブをどう広げていくかについては、整理する必要。

○ 店頭デリバティブは価格の客観性に問題の生じるケースがあると思う。取引所取引で、価格の客観性があるものを、損益通算の対象として認めていくのがよいのではないか。

(デリバティブの時価評価課税について)

○ 納税義務者が都合よく損益通算を操作することが認められてはいけないため、事前に損益通算の届出をした者は、それを取りやめる場合、一定の期間内、ポジションが確定する前に届出をして取りやめるといったルールが必要である。

○ デリバティブ取引をしている個人に対し、一律に時価評価を適用する場合、ポジションがプラスであれば、現金で納税をしなければならない。余剰の現金を持っていない者も個人の場合にはあることを考えると、デリバティブの時価評価を事前に届け出た者のみ損益通算を認めるということで十分ではないか。

○ 税の原則から言えば、選択制は課題が多い。全ての投資家に損益通算を認める一方、時価評価を課すという流れではないか。

○ 時価評価課税の選択制というのは、事前にといっても、租税回避が起こる可能性が排除できないのでは。

○ 租税回避の措置として、デリバティブ取引を時価評価で課税するべきであり、選択制でなく、基本的には一律であるべき。将来的な方向で言えば、色々な資産を含め、時価評価で損益を認識して課税すべきではないか。

○ 日本には、同族会社や組織再編税制に限った否認規定がある。同じような否認規定を金融取引にも入れるという流れがあってもいいのではないか。

(特定口座の利用について)

○ 特定口座については、全て金融機関で処理できるなら取引も正確でよいが、実務上の問題があるのであれば、個人投資家が確定申告を行うという方法でも良いのではないか。

○ 個人投資家の利便性を損なわない観点から、特定口座でデリバティブ取引を扱うことができるようにすることは必要。金融機関は、その対応を考えるべき。

○ 特定口座を利用しないと、幅広い層ではなく、活発に金融取引を行っている富裕層を中心に優遇を与えるだけになってしまうおそれ。

○ 特定口座は、日本の素晴らしいツール。その活用は、個人投資家の育成という観点からもマストであると思う。金融機関にもっと知恵を出してもらうべきではないか。

  
―― 了 ――
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課

(内線2859、2990)

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