貸金業制度等に関する懇談会(第10回)議事要旨

1.日時

平成18年2月15日(水)10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.議題

○ 参考人等からのヒアリング

  • 木下盛好 アコム(株) 社長
  • 髙橋亘 NIC会会長
  • 河野聡 弁護士

○ 討論

4.議事要旨

「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(案)」の公表について、事務局から説明

  • 先月13日の最高裁判決を踏まえ、内閣府令改正案をパブリックコメントに付した。

  • 第一に、みなし弁済の要件となる受取書面に記載すべき契約年月日や貸付金額等を契約番号等でもって代替できるとした内閣府令が法律の委任を超えていると判断されたので、当該規定を削除し、法律どおり契約年月日や貸付残高を記載することとした。

  • 第二に、契約書面に期限の利益喪失特約があり、それがグレーゾーン金利にまで及んでいる場合、事実上、グレーゾーン金利の支払いを強制していることになるので、みなし弁済の要件として任意性を欠くと判断された。契約書面そのものが要件を欠くとされたわけではないが、みなし弁済が否定された以上、今後とも期限の利益喪失特約を設けるのであれば、それは利息制限法の範囲内だけにおいて有効であるということを、契約書面に明記させる必要があると行政府として判断したもの。

資料10-1に基づき、事務局から説明

  • 前回の懇談会で業者のビジネスモデルの検証の必要性について多くの意見があった。図を使って借り手と貸金業者の関係を示したが、消費者と事業者の需要に応じて、いろいろな業態・信用供与の態様があることがわかる。

  • 貸金業者の総残高47兆円のうち、事業者向け27兆円、消費者向け20兆円で、業態別にみると、事業者向けローン業者が22兆円、消費者向けローン業者が11兆円、信販・クレジット・リースなどローン以外の業態が事業者及び消費者に対して12兆円。

  • 本日は、消費者向けローン業者の大手を代表してアコム(株)の木下社長に、日賦を含む中小を代表してNIC会の髙橋会長に後ほど報告していただく。

  • 本日のメインテーマは過剰貸付防止のための規制等のあり方であるが、既にこれまでにもメンバーから様々なご意見をいただいている。そのいくつかを紹介すると、年収以上の債務を負うと自己破産に至りやすい、現在の大手消費者金融会社の申し合わせだけでは防止できていない、リボルビング方式が多重債務の一因になっているのでは、信用情報の交流が必要である、CMが原因で過剰に借りてしまっている、等々である。

資料10-2-1、10-2-2、10-2-3に基づき、事務局から説明

  • 過剰貸付けの禁止については、貸金業規制法13条1項に定められているが、これは、立法時、定量的な基準を策定するのは困難であること、消費者与信に関する他の法律においても訓示規定とされていたことなどを考慮し、処分規定を設けず訓示規定として定められたもの。

  • この規定の運用にあたっては、4項目のガイドラインが設けられているが、特に、無担保、無保証、簡易な審査にかかる1社当たり50万円又は年収の10%以下という目処が新規借入者にかかる重要な基準として各業者に採用されていると承知している。

  • ガイドラインにおいては、この他にも、押し貸しの禁止、借入意思の確認、信用情報機関の利用が定められており、これらを基に監督・検査に当たっている。訓示規定であり、行政処分対象にはならないが、違法事実があれば検査で指摘し、改善を指導している。

  • ただし、近時、検査・監督を続ける中で、以下3つのような問題事例が顕著になっている。

  • 第一に、融資量維持を図るために、完済を拒否したり、業者が一方的に貸付限度額を引き上げる事例。

  • 第二に、有担保融資というだけで、債務者に担保を換価する明確な意思があることを確認せずにその返済能力を超える貸付けを行っている事例。

  • 第三に、保証人の返済能力を十分に精査していない事例。

  • これらは現行法に抵触する恐れのある事例であるため、当懇談会での制度論の議論とは別に、監督上の対応を検討することが必要と考えている。

  • 次に、ビジネスモデルに関して、財務資料の分析等により、貸金業者の収益サイド、費用サイドの計数をいくつか示す。

  • まず、消費者金融業界というのは、規模の格差が非常に大きい。また、昔ながらの対面で、元利均等払いの証書貸付けを行う会社がある一方で、装置を導入してリボ取引を行う会社があり、それぞれ業務内容が異なっている。

  • 財務局登録業者から財務資料を提出していただき、規模とビジネスタイプ別にデータを整理した。まず、規模として大手、中堅、小規模に分類し、中堅業者の亜種として、リボルビング取引与信ではなく対面与信で元利均等貸付けを行っている会社を一社挙げ、主にこの4つに分類した。小規模については、5社中4社が非リボを主力商品としているので、ノン・リボ、非リボと考えていただきたい。以下、この4分類に基づいて分析結果を説明する。ただし、統計的には有意であるとは言えない点に、ご留意いただきたい。

  • 営業収益の貸付残高比は、4つのタイプでそれほど違いはないが、営業費用の貸付残高比は大きく異なっており、利益率の有意な差となっている。

  • 4つの業態の顧客の属性について。全国貸金業協会連合会の「貸金業白書」によると、大手業者における新規顧客の他社借入件数は、原則3社までとする申し合わせがあることから、少ない(3社以下が80%)。

  • 中堅規模の業者においては、他社借入件数が大きく、これは対面与信を採用している企業でも同じ。一般に消費者金融を初めて利用する人は、まず大手から借り、追加資金需要が発生すると中小からの借入に移行すると言われるが、それを反映しているのではないか。

  • 貸付残高10億円以下、特に3千万円以下の零細業者では、他社借入件数が少なくなっているが、これは地域密着型の営業を行っている結果が反映されているのではないか。

  • 営業費用の分析について、大手業者は総費用が小さくなっており、スケートメリットによるものと考えられる。一方、中堅規模の場合、機械化を要するリボ型の業者は、機械化費用を含む「その他費用」が大きく、「人件費」が小さい。一方、対面与信型の業者では、人件費の割合が大きい。これは、リボ形式を取らない小規模業者でも同じ傾向。

  • 費用の中で貸倒費用の占める割合が非常に大きいが、これも4つのタイプで異なる。同じリボ型でも中規模業者の方が大手よりも貸倒費用が大きい。一方、同じ中堅規模の中では、対面型よりもリボ型の業者の貸倒費用が大きい。また、小規模業者では貸倒費用が更に小さくなっており、対面与信管理により延滞等が防止されている面が伺える。

  • 負債に対する自己資本の比率については、貸金業者は一般の金融機関に比べて高いが、上場している大手業者は、直接金融市場でも間接金融市場でも優位な資金アクセスを有する。

  • 小規模業者については、親会社からの金融支援もあり金融機関「等」からの借入が量・金利の両面で実力よりも有利に見えている点に留意する必要がある。

  • 大手業者は、約10年前から約定金利を20%台に引き下げており、平成12年6月の出資法上限金利引下げの影響は受けていない。以後、約定金利は緩やかに低下している。

  • 次に、中規模業者は出資法上限金利引下げの影響を大きく受け、約定金利が最も顕著に急速に低下している。これは対面与信型の業者でも同様。

  • 小規模業者では、平成12年度当時においても約定金利が30%以下となっているが、これは規模や業務内容に応じたものか、あるいは、サンプルのバイアスかは不明。

  • いずれにしても、規模間の約定金利の格差は急速に縮小してきている。

  • なお、「約定金利」は実際に利用者に貸し付けている金利。一方、「貸付金利」はあくまでも財務諸表上の概念。つまり、延滞債権等が発生すると、その利息収入については、財務諸表上は保守的に計上することになり、こうした計算上の利息収入を貸付残高で割ったものが平均貸付金利。

  • 平均貸付金利は大手業者のディスクロージャー資料に記載されているが、低下しているのは不良債権拡大によるところが大きい。平均約定金利はそれほど低くなっていない。

  • 借入残高の合計を見ると、平成14年度以降、大手・中堅共に安定推移。一方、小規模業者の残高が落ち込み、商売がシュリンクしている。なお、大手業者は12年度から13年度にかけて大きく貸付残高を伸ばしているが、この時期は、ある大手業者の公表レポートによれば、消費者金融大手4社は、2000年から2001年にかけての主要テレビ局のCM解禁に合わせ、新規顧客と融資残高の積極拡大を進めることで大量の顧客獲得に成功した、と記されている。この時期は各社が「初めての方キャンペーン」というものを開始した時期であり、それにも符合する。

  • 顧客数についても、中堅以下は貸付残高総額と同じような動きがあるが、大手については貸付残高が一定である一方、顧客数が減少。これも同レポートによれば、拡大路線の結果、貸倒れが増えたことへの反動として、与信基準を引き締め、新規の成約率を下げたとされる。

  • 一件当たり平均残高については、リボ取引中心の大手及びリボ型中堅においては高水準であり、かつ残高は次第に増えている。一方、ノン・リボ業者の貸付残高は低水準であり、比較的安定して推移している。大手業者の方が良い顧客を掴んでいるから大口与信を行うことができると結論付けるのは若干短絡的。同じ中堅でもリボとノン・リボとでは1件当たりの残高に相当の差があり、リボ取引の特性と考えるべきではないか。

  • また大手については、新規顧客が伸びない中で、リボ取引が長期化すると1件当たりの融資額が増える傾向にある、という見方ができるのではないか。

  • 平成12年の出資法上限金利引下げの影響については、業者が与信を絞らざるを得なくなり、顧客をヤミ金融市場に追いやったとの主張がよくなされるが、実際に業者がどのように対応したか中小業者からヒアリングを実施したところ、必ずしも単純にそうとは言い切れないのではないかと思われる。

  • 上限金利引下げの対応として、約定金利の引下げに伴い与信基準(他社借入許容件数)を引き下げた業者も確かに複数ある。また、こうしたグループの中には、新規成約率が急激に落ち込み、大手に合併されていった中小業者も確かにある。

  • 他方で、約定金利の引き下げにあたり、トータルの金利収入を維持するため、むしろ与信基準を緩め、他社借入許容件数や貸付限度額を増やして、新規貸付額を増額した業者も複数あった。

  • このため、必ずしも上限金利引下げを受けて、業者が単一の方向(リスク許容度を下げる方向)に動いたと言い切ることはできないのではないか。無理な融資基準の緩和が貸込みを生み債務者の破綻リスクを高め、結果として債務者がヤミ金融業者の市場へと向かったということはあったかも知れないが、それはむしろ個別業者の営業姿勢という要素が加わっての問題であり、上限金利引下げの直接の影響とは言えないのではないか。

  • リボ型の大手及び中堅における貸倒費用の動きは、破産申立て件数の推移に似た動きを示す一方、ノン・リボ、対面型の業者及び小規模業者は必ずしもそうではない。また、貸倒費用の水準はリボ型の方が相当程度高くなっており、貸倒れについて考える場合には、借入総量や融資方法の影響についての考察が必要。

  • 貸倒れを単純に多重債務者の破綻と捉えて良いかという問題がある。しかし、一般に借り手は大手から入り、追加資金需要を賄うため中小に下りていくとされていることも勘案すると、借り手において債務依存は大手からの借入の中で醸成され、取引を短期で打ち切れずに中小からの借入にまで進むようになると破綻リスクが増す、という仮説を立てることもできるのではないか。ただし、これを解明するには以下の4点についての分析が必要。

  • 第一に、一定期間リボ取引を行っている債務者がどのような返済プランを立てているのか、すなわち債務の一定部分が債務者の感覚の中で根雪のようになっていないか。第二に、大手業者がどのようなポリシーで顧客の途上与信管理を行っているか。例えば、アメリカでは今般の破産法改正に伴い大手カード業者が自主的に毎月の最低支払率を2%から4%に上げているが、日本のリボ業者が最低支払率についてどのようなポリシーを持っているのか。こういうことも含め、どのような与信管理をしているのか。第三に、顧客はいかなる資金需要のために中小業者から追加借入を行うのか。第四に、中小業者は他社借入件数の多い顧客に貸し付ける際、その返済可能性をどのように診断しているのか、という4点について知る必要がある。

木下アコム(株)社長から報告

  • 本日は、前回の懇談会で、吉野座長が説明した論点整理を踏まえ、事務局から提示された検討課題に、メンバーの方から質問のあったビジネスモデルを含めて説明する。前回17年5月27日の説明内容と重複する点もあるがご容赦いただきたい。

  • 貸金業者の大多数は、貸金業規制法1条にあるとおり、資金需要者の利益の保護を図り、国民経済の適切な運営に資することを目的に、適正な業務運営を常に心がけ、実践すべく努力しており、一部違法業者の行為をもって業界全体の問題と考えていただきたくない。

  • 金融商品としては、販売対象、担保・保証人の有無、契約形態、目的などが様々であることから、貸出金利・金額や事務など一律に規定するのは無理がある。

  • 当社を含め多くの消費者金融業者が取り扱っている中心的な商品は「無担保・無保証ローン」。無担保・無保証とは、有担保・有保証商品のような保全策を一切持たず、返済が不能となった場合のリスクは、すべて消費者金融業者が負うことになり、これが無担保無保証商品の最大の特徴。

  • 業者が負うリスクの顕在化の結果が「貸倒れ」であり、当社では年間約1,000億円、大手5社で数千億円規模。ビジネスモデルの前提として、商品設計の骨格が「無担保・無保証」であることを理解いただきたい。

  • 無担保・無保証商品は、資金需要者にとっては、以下のようなメリットがある。(1)担保(主に不動産)がなくても融資を受けられる、(2)担保を差し出していないので、万一返済が困難になっても担保権を実行されない(住居を取られることはない)、(3)有担保の場合は、登記等により、第三者に借入の事実を知られるが、それを回避できる、(4)有保証の場合は、万一返済不能になった時は保証人に迷惑をかけるが、それがない。

  • 他方、資金需要者にとってのデメリットとしては、住居を取られることや保証人に迷惑をかける心配がないため、借り過ぎや返済にルーズになり易いという危険性がある。

  • 貸し手にとってのデメリットは、(1)審査技術が確立されていない場合には、高いリスクを負う可能性がある、(2)自社の新規融資時には十分な信用力があったとしても、後の収入減少や借入の増加、ヤミ金融に騙された時などにリスクを負う、など。

  • リボルビング契約の最大の特徴は、契約極度額という借入可能額を最初に締結すること。契約極度額は、顧客の申し込んだ金額と業者の与信額のいずれか小さい方。顧客の信用力に変化がない限り、この極度額の範囲で借入が可能で、業者はこの額まで貸し付けることを顧客にコミットする。顧客は、契約極度額の範囲内であれば繰り返し利用ができる。返済は、ミニマムペイメント(最低支払額)以上であれば、返済額(追加返済)は自由。利息は、日割りで計算され、借りた翌日に全額返済する場合は、1日分の利息を支払っていただく。

  • カードとATMを利用したリボルビング契約商品は「借金漬けを起こし多重債務化の温床となる」との批判を受けることがあるが、この商品は、顧客自身でコントロールできる点が特徴。

  • 新規契約時の与信審査の目的は、「生活苦、浪費者」への貸付けの回避、「健全な借り手」にいくら利用していただけるかの検討にある。この審査をクリアした利用者は、その後は基本的にはカードとATMを使い、自分の判断で借入・返済を行い、取引は都合の良い場所で行える。

  • 取引にかかるコスト(例えば、提携ATMの使用料など)は、全て当社の負担。提携先ATMで借入が行われた場合、1万円で170円、3万円で310円を、入金の場合は3万円未満で200円、3万円以上で400円を提携先に支払っている。

  • 顧客は都合の良い時に全額返済し、契約を解約すれば取引は終了する。なお、多くの利用者は、完済後も契約をそのままにしてカードを保有し、必要な時に再度利用している。以上が取引の主な流れ。

  • 借入希望者全員に融資している訳ではなく、消費者金融連絡会の5社ベースでは申込者のうち41%の方とは契約できない状況。当社から断ることもあるし、希望額にそえず顧客から辞退することもある(資料10-4-2 P7図表10)。

  • 当社を利用している方々は、一般的な日本の消費者像であり、特殊な層に偏っている訳ではない。新規の平均借入金額は17万円弱であり、既存客の借入額の平均と比較すると低い。契約当初は、顧客の状況にもよるが、基本的に当社における貸出上限金利(27.375%)で契約している。

  • リスク・ベースド・プライシングの概念が日本の金融システムにおいても導入され、我々消費者金融専業者の提供する主な商品が、利息制限法を超える任意ゾーンで設定されていることから、「ハイリスク層」へのサービスと定義づけられている。当社では、「ハイリスク=多重債務者」という認識はしていない。無担保・無保証で「信用」だけを頼りにする商品であるからこそのハイリスク層と捉えている。

  • 無担保・無保証の消費者金融商品においては、最初から返済するつもりがない人や返済にルーズな人も混在しているかもしれないが、一定の収入があり、定量的には返済能力があると判断された人には与信するのが基本であり、性善説をとっている。初めての客には、基本的に貸出上限金利で取引しているが、一定の取引期間における取引内容をみた上で、定性的にも信用できると判断されれば、低金利商品への切替えを行う。この結果、貸出平均金利は23%台となっている。当社では、20%以下の残高比率は13.3%。また、大手の平均金利は、年々低下傾向にあり、上限金利だけで貸付けを行っているわけではない。

  • 消費者金融会社は、契約の際、全ての客に同一の上限金額を設定するのではなく、信用力に応じた返済可能な上限金額を設定している。リスクを最小限に抑えるのがビジネスの基本であり、与信に際しては個人信用情報機関への照会や、本人申告情報の妥当性チェックなどを経て、コンピュータ与信判断と最終与信決裁者による決裁を行っている。

  • その結果、貸すことができない「非契約」も発生する。なお、与信審査は、あくまでも新規契約時の信用度審査であり、その時点では、取引過程における失業や病気などのライフイベントの発生、他社からの債務の増加などの信用度の変化まで予想することは極めて困難であり、完全なリスク排除は不可能である。

  • 既に借入が実行されているときは、基本的に業者がリスクを負うため、取引途中での与信審査(途上与信)が重要となる。通常の与信見直しの頻度は、新規契約から3ヶ月の間は毎月、その後も3ヶ月毎に行う。さらに、顧客の状況変化に応じて随時行っている。

  • 延滞者の大多数は、入金日忘れなどが原因であり、電話による期日遅れの通知をすれば請求連絡業務は完結する。

  • 連絡が取れないまま一定期間が経過した場合には封書による連絡を取るが、連絡の時間帯、連絡先やプライバシー保護など、極めて厳しい行為規制があり、違反すれば業務停止など厳しい罰則規定がある。

  • 貸金業規制法による行為規制以外にも、社内規程やマニュアルなど企業内でのコンプライアンスの取決めにより、トラブルが生じない業務を行っている。一部の業者による取立行為の問題をもって、全ての業者が強硬な取立てを行っていると思われるのは誤解。

  • 無担保・無保証商品は、本来、顧客が返済不可能になった場合には、他に保全策がなく貸金業者がリスクを負う商品であり、そのリスクを覚悟できずに強硬な取立てを常態化している業者については、市場から退場してもらうしかない。

  • 業界の自主規制としては、「消費者金融5社連絡会」で貸付けや広告に関する取決めを行っている。啓発活動や消費者教育にも取り組んでいる。

  • 相談窓口の問題については、前回の懇談会で日本クレジットカウンセリング協会の山岸専務理事から、現状のカウンセリング活動の問題点として、(1)大阪等の規模の大きいエリアで活動を広げたいが、弁護士から協力を得られない。(2)遠隔地の相談者の場合、恒常的なカウンセリングを行うことが困難。多くの弁護士を雇うにも、費用の問題もある。といった説明があったが、業者、特に大手業者は、外資企業も含めてカウンセリング相談窓口の拡大に向けた活動を、費用面も含めて積極的に支援すべきと考え、議論している。

  • 次に、消費者金融会社の経営安定性と自由競争を阻害している任意ゾーンの問題(43条の空洞化)について、説明する。

  • 現在、債務整理における、弁護士・司法書士との交渉は、利息制限法に基づく金利を前提に行われ、債務の一部放棄や、取引が長くなれば債務を全額放棄した上で、さらに業者が顧客に入金額を返還することとなる。

  • 最近、最高裁においても、任意ゾーンを認めている43条の適用に関して極めて厳格な判断がされている。これまでの判決等のポイントは、17条・18条書面の記載内容や交付事務、そして任意性の解釈など、貸金業規制法の不明確な点に起因している。現状、司法の場においては、43条は実質的に機能していない条文である。

  • 契約内容を了解の上取引していた客から、ある日突然、「本当は任意の支払いではなかったので、これまでの支払いは無効であり、利息制限法に基づいた債務のみ返済する」「払い過ぎたから返却しろ」という主張をされる。憂慮すべき事例としては、当社とは既に取引を終了している客の代理人から、他での債務整理に伴い、過去当社に返済した内容に基づいて過払いの返還を求めて来るような事態が発生している。

  • 貸金業規制法の不備を利用した債務整理が行われる事態は、普通の状態とは言えない。消費者金融のビジネスモデルを極めて不安定なものとしている要因であり、この任意ゾーン問題の是正なくしては、十分な競争原理を働かせるのは困難。

  • 消費者信用産業の規模は信用供与額が73兆円に達しており、これは民間最終消費支出283兆円の約4分の1に相当し、我が国の国民生活の中で極めて大きな役割を担っている。消費者信用の約半分の規模となる消費者金融を含めた貸金業全体のあり方について検討する本懇談会の重要性は大きく、制度全体が大所高所から論じられると考える。

  • 貸金業者は貸金を通じて、消費者がより豊かに便利に暮らせる手伝いをしたいと考えてきた。現在、およそ2,000万人もの多くの利用者がいる。本懇談会では、この大多数の消費者の利便性・安全性向上のため、教育や悪質業者の識別などの仕組みを作り、市場の競争原理によって自由で公正な市場を実現する「現状にあった法制度のあり方」について、43条問題、交付書面の項目や交付方法なども含めて、長期的な展望に立った検討をお願いしたい。カウンセリングの充実やセーフティーネットの整備といった、救済制度の構築方法についても協力させていただきたい。

髙橋NIC会会長から報告

  • 資料10-5-2は、資金需要の雲から雨が降ってくるイメージ。最初に銀行等の金融機関の桶が待ち受け、その下に大手貸金業者、その下に中小業者、一番下に特例貸金業者の桶がある。金利は下に行くほど高くなるが、このような資金需給の構図が現実にある。

  • 現状は、溢れ出た需要の全てを中小業者が受け取っているわけではない。中小業者の役割は、やはり信用度の小さい顧客にも対応できる点ではないか。一番下の桶で受け取れなかった需要が、違法業者、ヤミの世界に下りていく。

  • 大手業者では、自動契約機での契約が6割超。一方、中小業者(特に、貸付残高10億円未満の業者)では、対面与信(対面契約)が多く、独自の基準を設けて与信。

  • 新規顧客への貸付けに際し、他社借入れ件数などに制限を設けている業者は87%。設けていない業者の中に中小業者が若干いるが、実際には対面与信を行う中で独自のノウハウを駆使している。

  • 貸付けの申込みに対し実際に貸付けを実施した比率は、大手業者では60%を若干超えるが、規模が小さくなれば下がる。10億円未満の業者の場合は、コスト上の問題もあり、22.6%というかなり低い成約率。

  • 既存顧客の状況については、規模が小さければ小さい程、貸付平均残高が少ない。10億円未満の業者については、平均残高は26万6千円。

  • コスト構造についてだが、中小業者では手間暇がかかり平均残高も小さいことから、人件費割合は7~8%。大手業者は2.2%で、かなりの差がある。

  • 中小業者からの実際の借入期間をみると、概ね3~4年。元利均等返済方式をとる業者では2~3年。リボを含めて最長でも5年。

  • 過剰貸付けの防止というテーマについて、中小業者の立場から提案させていただく。現在、全国で登録業者が1万5,000社。その中で信用情報センターに加盟している業者は約2,500社、6分の1という状況。過剰貸付防止に係るガイドラインでは、無担保・無保証での貸付けの場合は、信用情報機関を利用することとされているが、実際には6分の1の業者しか利用していない。多くの利用者が関わる無担保・無保証貸付けを行う業者が、当ガイドラインを守っていない。情報センターを使わなければ貸金業を営めないような仕組みにするには、中小業者における安全管理措置、情報の安全管理体制の構築など難しい問題もあるが、何らかの手当てが必要。信用情報機関の利用を登録要件とすることができれば、業界の正常化はより進むはず。

  • 日賦貸金業者については、多くの人に大きな誤解を持たれている。日賦貸金業者というのは、基本的には販売業・製造業・サービス業の3種の業種の中で従業員が5人以下、返済期間が100日以上、集金割合が50%以上、という3つの条件をクリアする必要がある。さらに、日賦業者は他の金融業務は一切できないことになっている。

  • 日賦業者の顧客には、サービス業を中心に月商200万未満の方が多い。具体的にはラーメン屋、スナック、居酒屋、理容室、美容室などの業種が多い。

  • 1社平均約64万円の借入れで、2社程度を利用している。金利や契約内容などの商品性については、経営者の方々には理解していただいている。

  • 一般的な返済パターンとしては、50万円を54.75%で借りた場合、毎日1%の返済をしていくと109日で完済となる。

  • 日賦貸金業者の利用顧客の資金使途と調達先の例についてだが、個人事業主は、事業者としての借入と、個人としての借入の両方を使い分けるケースが若干ある。個人事業主として、商工ローン業者から借りる場合は長期資金が安定的に得られる一方で、不動産担保や人的担保が必要となり、借入はかなり難しい。ただ、実際に商工ローンを日賦の顧客が利用している例は全体の1割程度。

  • 日賦貸金業者の対象は、信用力が少し低い方。日々の売上を担保とした信用貸しが基本であり、毎日の売上を毎日集金に行く。また、日賦貸金業者の利用者のうち約3割が、個人収入を基に消費者金融から借り入れている。

  • 日賦利用者の資金需要としては、例えば、仕入れ代金、従業員給与、家賃等。売上が多ければ借りなくても済むが、売上が足りなければそのような資金需要は必ず発生する。日賦貸金業においては、全般的に信用が小さい顧客が多いため、いきなり大きな与信は無理。

  • 日々の集金の中で、利用者の事業に対する取組みや経営者の資質などのモニタリングが可能。モニタリングの結果、事業に対する積極的な取組みが認められれば、借入れ増額の申込みに応えることになる。利用者は次の資金需要に合わせて返済を行い、積立てを下ろすような感じで、数ヶ月に一度、その枠を使って計画的に利用することができる。

  • 違法業者には、厳しい取締りの実施により退場していただきたい。違法業者が問題を起こしている地域の状況を捉えて、日賦貸金業そのものを否定するのは間違い。法を遵守する業者が提供する商品に対して合理的に判断した需要は数多くあり、それは社会にとって十分必要なものである。

河野弁護士から報告

  • 資料10-6。私は日掛け・保証料被害対策全国会議の事務局長である。当対策会議は2000年4月に弁護団として設立されたが、その後司法書士や被害者の会のメンバーも加わって全国会議になり、日掛けだけではなく保証料の問題にも取り組むということで名称が変わった。

  • 日賦貸金業者は2003年3月時点で全国に1,835業者、うち九州には752社で41%を占める。九州は人口に対する個人の自己破産比率も全国的に上位。

  • 日掛け金融の営業の実態について、本日メンバーに配布した「新版日掛け金融撃退法」という本の一部を抜粋し資料として配布した。日掛け金融による被害の特徴を挙げる。

  • 一つは、暴利被害。年54.75%という金利自体が暴利。

  • 次に、保証料による被害。貸付時に5~10%、切替え時には名目額の3~8%の保証料を徴収している。

  • 違法貸付け、要件を満たさない者への貸付けが行われているケースが多い。主婦、サラリーマン、無職の人への貸付けが横行している。

  • 集金方法の問題もある。まとめ払い、持参払い、振込み入金、それから置き場集金又は差し置き集金といったポストの中にお金を入れる、スナックのカウンターにお金を置きカギを預けておく、といったケースが非常に多い。頻繁な切替え勧誘も問題。

  • 違法な取立ての問題として、暴力的取立て、監禁連れ回し、第三者請求が横行。

  • 2005年6月から9月に、九州四国の各県で、438人からアンケート調査を実施。これは返済困難となり、弁護士事務所あるいは司法書士事務所を訪れた者の調査であるため調査対象範囲は限られるが、対象業者を絞っていない調査という点で価値がある。資料に添付した回答内容は以下のとおり。

  • 保証料を徴収している業者が94.7%。うち57.5%が保証業者への振込みという方法で徴収している。それ以外は貸金業者に保証料を渡す形となっている。全国日賦金融業協会が出している日賦貸金業白書では、調査対象業者は76社ということで範囲は限られているが、信用保証会社の利用は70%と報告されており、かなりの業者が保証業者を利用していることが分かる。

  • 日賦貸金業者の法令違反として、要件を満たしていないものが41%、振込み及び返済金の持参が32.9%。債務の切替え頻度は2ヶ月以内が6割もあり、1ヶ月以内は26.7%と短期間で切替えを行うケースが非常に多い。

  • また、15.5%が違法な取立てを受けている。2000年6月頃までに、違法な取立てが横行したため、特例金利が109.5%から54.75%に引き下げられ、集金の要件も100分の70から100分の50以上に緩和される改正が行われ、2001年1月1日に施行された。法改正以降も違法取立てによる損害賠償が認められた判例が多数あり、資料として添付した。債務者を殴る蹴るの暴行を加える、あるいは監禁するといった行為が行われている。

  • 日掛け金融の存在意義についてだが、日賦貸金業者からの借入需要がどの程度あるかということについて検討したい。資料4はおおいた市民総合法律事務所(弁護士3人の中小法律事務所)で扱った法的解決依頼の中で日賦貸金業者に関するものの借入状況。自己破産、個人再生、任意整理の合計420件中、日賦業者から借りている者は30件。また、日賦業者から最初に借りたケースは9件。即ちそれ以外は他の業者から借りた後、日賦業者から借りているということで、返済のための借入で利用する傾向があるのではないか。

  • また、日賦業者を最初に利用した9件のうち、以前自己破産を受けているのが5件。つまり、信用がないため、日賦業者からしか借りられない者が利用しているに過ぎないのではないか。

  • 9件のうち自営業を営んでいないケースが4件で、さらに2件は生活保護を受けている人。日賦貸金業者から借り入れている友人の保証人となったことから、借り入れに至ったというケースが3件で自己の需要のために借りたとは言えないケースである。

  • 日賦業者に対する需要について検討したいが、日賦業者には信用情報機関を利用していない業者が多数ある。

  • 日々収入があるわけではない自営業者が多く利用していることから、負債が増大している。また日々収入がある場合でも、一日の支払金額が少ないために返せるのではないかという錯覚に陥って、実際の一月の支払額では大きいことを十分認識せずに、計画性のない自営業者が借り入れているというケースが多いのではないか。

  • 置き場集金、差置き集金というものが多用されているということは、自営業者、借り手自身が集金による回収を望んでいないことの現れではないか。

  • 事務局からの質問事項に、「団地で広告ちらしを配布する事例があるか」という質問があるが、高齢者の老夫婦などが住んでいる私のマンションでも日掛け金融業者のティッシュが無差別に配られている。自営業者だけに貸していたのでは経営が成り立たないという現状があるので、法律で規定されている条件を満たさない貸付けが横行している。高利のうまみだけを求めて参入する小規模の後発貸金業者が多く、集金体制を整えずに経営を行っているため、法律要件を満たさない貸付けが多く行われているのではないか。

  • 日賦貸金業白書によると、76社(半数は日賦金融業協会に加入している業者)のうち、88%は一店舗しか持たない。正社員数2~5名の業者が46%、パート社員1~5名の業者が42%で、零細化が年々進行している現状にあるとのこと。

  • 髙橋会長の資料10-5-2にも日賦業者の返済モデルが記載されていたが、100日以上日数が過ぎれば過ぎる程、利息の金額が低くなるため、業者が切替えを勧誘する例が多くなる。違法行為が頻繁に起きている要因として、返済困難な場合に集金が直ちに取立てに転換してしまうのは、法の根本的な欠陥があるためではないか。

  • 保証料被害の問題について触れる。短期での切替えの度に提携保証業者の保証を受けさせることで著しい高利を徴収している(添付資料参照)。この2つの事例では、11回、10回の切替え契約が行われているが、切替えまでの期間が100日以内で行われているケースも多い。この中には、実質保証料年率が93.369%のものもある。これに日掛けの年54.75%を足すと150%近い金利を取っている。

  • 保証料問題に対しては規制が十分でない。日掛け金融から中小の貸金業者にまで、こうした保証料の徴収が行われている。日掛け金融の場合は、特に、切替え回数が多く、切替え日数が100日以下であるケースが多い。金利の上限が54.75%であるため、非常に弊害が大きくなっている。

  • 日弁連・九州弁護士連合会では、法改正の度に特例金利廃止を求めてきた。2003年の改正以降も特例金利の廃止についての意見が出されている。例えば九州弁護士連合会の2005年定期大会では特例金利の廃止が決議された。

  • 出資法の上限金利に例外を設ければ、必ず高利のうまみを狙って参入する業者による競争で、要件を満たさない貸付け・集金が横行し、厳格な出資法の規制に綻びが生じる。年54.75%の高金利での借入れは、中小自営業者を直ちに経営破綻に陥らせる。日々の支払いが少額のため幻惑させられるという弊害がある。さらに集金要件については、違法取立てを誘発する弊害がある。日賦貸金業者の集金方法には、社会的ニーズが認められず弊害のみが著しいので、特例金利は廃止すべき。保証料については、出資法の規制に対する明らかな脱法となっており、貸出金利と保証料を合計すると暴利になっている。保証料に関し、出資法の規制を明確化・厳格化すべきである。

法務省刑事局から報告

法務省は、出資法を金融庁と共管しているが、上限金利に関するところの刑事罰則の問題、あるいはこれに関連しての日賦貸金業者に関する問題については、真摯かつ誠実に取り組む考えである。しかしながら、この問題は、貸金業者の実態等にかかわるものであり、これを把握している金融庁等から相談があれば共に協力してこの問題に真摯かつ誠実に取り組んで参りたい。

質疑応答の概要は以下のとおり。

(質問)

木下社長に、資料10-3の過剰貸付防止関係の質問事項、3つ目、5つ目、7つ目に答えていただきたい。髙橋会長には、保証料の問題について、特に保証業者について把握しているのか、日賦業者は信用情報をどの程度利用しているのか、答えていただきたい。

(回答)

  • 日賦業者が九州・沖縄地域に多い理由は、同地域には信用組合などの協同組織金融機関が少なく、昔から事業者に資金がなかなか回らなかったという歴史的背景がある。その結果、頼母子講や無尽が発達し、それらが日賦に変わっていった。

  • 東京都の日賦業者の数が57社であるのに対し、福岡県は78社、九州地区全体で259社、沖縄県だけで247社ある。市場規模、経済規模を考えると圧倒的に多い。昔から日賦業者が九州・沖縄地域に多くその名残が今でも残っているが、それに対する実際の市場規模は小さいため、無理な貸付け、無理な取立、特定金利対象外の者への貸付けが多く起きる。関東エリアや他の地域ではこれらの問題はほとんど起きていない。時間をかけて適正な市場規模になることを望んでいる。

  • 保証会社についてだが、基本的に、顧客の信用力が小さいため連帯保証人を付けるのが一般的だった。ところが切替えの都度、連帯保証人を同席させることに顧客から不満が出て、自然発生的に保証会社ができた。当社の場合、連帯保証人か保証会社を選択していただくが、ほとんどが保証会社を選択する。保証人に気を使うよりも保証会社に保証してもらう方がいいようである。

  • 日賦業者の多くが信用情報機関に加盟していない。加入を義務付けるような方法を模索していただきたい。

  • 信用保証会社に関しては、貸金業者と何らかの関係があると出資法違反に問われる可能性があるので、当社は全く関係のない数社に委託している。

  • 資料10-3の3番目の質問事項、債務者本人からの返済であっても、実質的には親族等が立て替えている例や、他の貸金業者からの借入れで賄っている場合については、本人の申告がないかぎりなかなか把握できない。

  • 情報センター等に3ヶ月ごとに問い合わせを実施して途上与信を行い、立替えを排除しようとしている。

  • 5番目の質問事項については、返済期間の上限ルールとか毎月の最低返済額は、最低返済額を例えば10万円までの借入れに対しては3,000円。10万円を超えて20万円までは6,000円と、借入額に対して大体月間3~6%である。これに対し、貸出上限金利は、当社の場合27.375%だが、これは月利で2.3%であり、これを超え、かつ顧客の負担にならない金額で返済額を設定している。ミニマムペイントどおりに返済した場合、返済期間は、借入額が11万の場合は最短で2年で終わり、20万円の場合は5年3ヶ月となる。20%を超える金利は極めて高く、長期間借りる場合、多重債務の原因になるのではないかとの質問だが、当社の場合、借入残高がある会員280万人のうち、月間で9万人、年間で100万人が完済している。顧客は上手に利用(借入れ)し、返済している。昨年9月末現在で営業貸付金に関し約8,000億円の利用可能額が設定されているが、利用されていない枠もあり、借入残高がある280万人を含め、全部で350万人が自らコントロールしながら健全に利用している。

  • 20%を超える金利が多重債務の原因ではないかという質問に関しては、顧客は返済額のうち利息部分について大体把握した上で生活設計をしている。ところが、それ以外の高額与信の元利均等返済方式の商品、例えば、住宅ローンや車のローン、ボーナス併用払いを抱えている場合に、収入が予定どおりに入らなくなってしまう状況になると、徐々に多重債務に陥っていくケースが非常に多くみられる。金利だけで多重債務が生じるというのは間違いではないか。

(質問)

  • 過剰貸付けをどのように定義しているのか。例えば英国のように総収入の25%以上を消費者信用の返済に充てているとか、住宅ローンを含めて50%充てているとか、収入に対する総借入のような考えがあるのか。ガイドラインの判断基準には、一業者当たりの貸付け限度があるのだが、必ずしも全体を含んでいないのではないか。

  • 資料10-2-2のビジネスモデルの部分だが、この中で中規模業者の経常利益をみると大手とかなり違いがある。現在は非常に低金利だが、市場金利が上がると、例えば1%上がっただけでも利益がなくなるのではないか。金利が上昇した場合や、貸付金利が下がった場合は、どのような対応を取るのか。約定金利は大手、中規模、小規模でさほど違いはないが、顧客属性をみると、中規模では他社借入が多いためリスクが平均的に高いと思うが、これはどのように考えればよいのか。中規模業者が信用リスクに比べて低い金利で貸しているのか、あるいは大手の方が高く貸しているのか。

  • 木下社長にお聞きしたい。金融庁のデータで1件当たりの借入残高が増えつつあるというデータがあったが、これが過剰な貸付けに結びついていないのか。かなりの方が返済しているという話があったが、返済方法の中には、中小業者などから借り入れて返済しているとか、家族が返済しているケースがあるのではないか。返済能力以上に借りてしまい当初想定したような健全な形での返済ができなくなっている割合が増えていないか。

(回答)

  • 過剰貸付けの状況は、収入、所得の伸び率、金利、返済期間などの様々な条件により異なるため、一概に過剰貸付けだと定義することは非常に難しい。

  • 中小業者の場合、上限金利の引下げにより29.2%以下で営業せざるを得なくなり、当時、売上が一気に数10%減ってしまった。実際、今は利益がほとんどない状態であり、これで市場金利が上がれば、完全に逆ザヤに陥ってしまう。

  • 現在、中小業者にとって一番大きな悩みとなっているのが不当利得返還請求である。これにより相当利益を引っ張られているため、将来的に安定した形になるように検討していただきたいというのが中小の最後の望みである。

  • 無担保・無保証で貸付ける場合、契約当初は27.375%だが、取引経過の中でリスクの低い顧客であることが分かると金利を低くしていく。市場には様々な他業態が参入し選択肢が増えているので、今後は全体的な部分で顧客の利益につながるような金利体系ができあがってくるのではないか。

  • 上限金利が40%の時代には、現在の貸付け対象である平均金利が20%台のグループと30数%のいわゆる信用力の低い顧客の2つのグループに貸付けていた。29.2%に上限金利が引き下げられた時に、社内で十分な審査をした結果、このまま信用力の低い顧客に貸し出すことは難しいと判断し、30万人の融資を断った。信用力の低い顧客は、当社から最初に借りたのではなく、幾つか他から借りているケースが多かった。追跡していないので分からないが、非常に危惧しているのは融資を断ったかなりの方がブラックマーケットに行ったのではないかということ。回収の問題で親戚、親からという話があったが、コンプライアンスの観点から、回収を担当する者には、親戚、親も含めて返済する義務はないことを借手に最初に伝えるよう強く指導し、そのためのトレーニングも行っている。

(質問)

  • 現在、経済産業省の産業構造審議会割賦販売分科会で基本問題小委員会が設置されており、クレジットのあり方や割賦のあり方について検討が進められている。個人信用情報機関のあり方については、信用情報の交流など、ここでの検討と重なる部分があるので、ぜひ連動した検討をお願いしたい。資料10-7は、国民生活センターの2005年の消費生活年報の抜粋だが、クレジット会社の与信問題について相談現場から過剰貸付けを防止するための問題提起がなされており参考になる。クレジット会社の与信については過剰与信と次々販売という二つの問題がある。リフォーム詐欺もそうだが、個人信用情報機関がうまく機能していないため、問題が起きている。

  • 資料10-7の最後P97の提言では、過剰与信等の不適正な与信を行わないこと、個人信用情報機関への照会を徹底することとある。個人信用情報機関が機能していないのは大きな問題点で、金融庁管轄では全情連だが、全情連が過剰与信や多重債務防止に関し機能しているかどうかの検討が必要。

  • 新規与信の際の審査は、私も経験してみて、ある程度丁寧にしていると感じたが、途上与信のあり方というのが一番大きなポイントではないか。こちらの資料10-4-2のP10の図をみると、取引状況と信用情報センター情報と顧客状況を総合的に勘案して信用力を判断しているようだが、そのときの判断基準というのは何か。

  • 資料10-2-2のP3をみると、大手の新規顧客の他社借入件数は3社以下が80%を占めるということになるが、中小の場合、その顧客は多くの事業者から借入れしている状況が一目瞭然。8割の人達は3社以下になっている理由として、大手は何か明確な判断基準のようなものを内部で持っていると思うが、それは返済の総額、収入に対する総額のようなものをチェックしているのか、他社からの借入総額なのか、件数なのか。多重債務に陥る場合、8社ぐらいから借り入れている状況があるので、件数で抑えているのかなどの判断基準をぜひ聞かせていただきたい。

  • 新規の顧客が2000年から2004年に非常に増えており、これは特に若い人達を対象にしたCMの影響により20代・30代の男性が増えたと聞いている。また、リボルビング払いの貸付方法が導入されることによって、貸金業者の事業方法が少し変わってきているのではないかと思う。貸金業者全体の中でリボルビングによる貸付件数がどのぐらいの割合を占めるのか教えていただきたい。実際の取引は大体5年くらいが限度という話があったが、いわゆる根雪を抱えた債務者が過剰与信を受け、多重債務に陥っていく過程について、きちんとしたデータはなくとも、意見を聞かせていただきたい。

  • 日賦業者についてだが、地域によっては元々の地元の業者ではなく、他県から、例えば東京から入ってきている事業者が多いと聞く。他県から参入した事業者の割合などが分かれば教えていただきたい。

(回答)

  • 途上与信についてだが、何も起こらなければ与信額を維持する。与信額の増額に関しては、いろいろな要素を加味して行う。当然、他社からの借入件数・借入金額、顧客の収入、支出などを加味した返済可能額から、総合的に判断して与信を見直している。

  • 当社の場合、貸付けのうち98%がリボルビング方式となっている。

  • リボルビング貸付けについては、顧客がコントロールしていく、ということになる。多重債務のような状況になれば、当然与信枠を下げてゼロにするということをしている。

  • 当社は、東京を中心に店舗展開しているが、九州地域には絶対出店しない。他県から来ているケースというのは恐らく九州内の他の県から来ている業者ではないか。

(質問)

  • 木下社長に2点。一つは無担保無保証ということで自らリスクを取っているということだが、消費者金融大手の場合、そのリスクが他の業者に移転しているような印象を受けている。顧客からの返済額の中には、他社からの借入れによって返済を受けている分があると思うが、数字等で把握されていれば教えていただきたい。

  • 2点目は、消費者金融は無担保無保証に加え、小口短期という点が大きな要件だと思うが、それが守られるかぎりにおいては過剰与信を防げると思う。しかし、98%がリボルビングということで、リボルビングによる支払い形態により小口短期という概念が崩れているのではないか。小口短期について、現在どう捉えているのか。リボルビングの場合、借り手がコントロールするということだが、リボ中毒が社会問題になっているので、貸し手責任があると思う。先程のミニマムペイメントにしても、11万円を2年とか5年で返していくというのは短期と思えない。金融では、通常1年未満を短期と捉えているので、その辺についての意見を伺いたい。

(回答)

  • 他社から借入で返済を受けているかについての把握は非常に難しい。他社借入件数等を把握しながら途上与信を行っており、顧客と話合いをすることによって、そういった事例がないよう心がけている。11万円で2年というのもリボルビングの結果であり、例えば10万円借りてもすぐ返す方も多い。

(質問)

  • カウンセリングも行う上で、リボルビング方式による貸付けを行うことは構わないとしても、リボルビングによる返済でなく、早期の返済が可能な場合は、早く返済するように促すことも消費者教育上は必要だと思う。そういったことはしているのか。

(回答)

  • 新規契約等において契約内容等の説明を行う際には、利息の計算方法、返済期日、返済額、返済期間等々の説明を行う。リボの特性についても当然説明を行う。

河野弁護士から補足説明

九州の他県から熊本に日賦貸金業者が進出して来ているという意見があったが、関西方面から多く来ているというのが熊本の人達の意見。東京など九州以外ではあまり被害がないという意見もあったが、先程の判例の中にも神戸の例がある。早稲田大学の調査、これは全国日賦金融業協会に加入している業者68社のアンケート調査で、契約継続中の顧客に対するものだが、それによれば、「ほぼ毎日集金に来ているか」という質問に対し852人中74人、8.7%が「来ていない」と回答している。また、「日賦業者から暴力的な取立を受けたことがあるか」という質問に対して849人中41人、4.8%が「ある」と回答。全国日賦金融業協会に加入している業者の顧客に対するアンケートでこういう結果が出ているということは、被害は決して九州だけの問題ではないのではないか。

以上

問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3567、3553)
本議事要旨は、暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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