貸金業制度等に関する懇談会(第2回)議事要旨

1.日時

平成17年4月27日(水)14時00分~16時07分

2.場所

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.議題

○ 参考人からのヒアリング

(日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会)
宇都宮健児弁護士、木村達也弁護士、三木俊博弁護士、新里宏二弁護士

○ 質疑応答

4.議事要旨

宇都宮弁護士から、自己破産の現状、多重債務者の現状、ヤミ金融の現状、被害実態について報告。

  • バブル崩壊後右肩上がりで個人の自己破産申立件数は増えている。2003年は約24万件だが、2004年は減少して約21万件となったものの、いずれも10年ぐらい前と比べたら高水準。

  • 日弁連消費者問題対策委員会が裁判所の破産記録を調査してまとめた破産記録調査(2002年)をみると、破産原因は、生活苦・低所得、病気、失業、給料の減少、事業資金、保証債務等となっており、大半は不況等を反映。また、生活苦型、不況を反映した破産原因が増加傾向。一般に消費者金融などを利用している人は、ギャンブルとか遊興費が多いとの報道があるが、それぞれ0.81%、2.9%となっており、かつ減少傾向にある。

  • 破産申立者の年齢構成は、中高年あるいは家庭を持った一家の支柱となっている者の破産が大半を占めている。

  • 基本的に消費者金融の支払いは手取りの中で払っていくため、手取月収が非常に重要だが、破産申立者の手取月収の分布は、月収20万円以下が80%以上を占め、相対的に低所得層が多くを占めている。

  • 破産申立者の職業は給与生活者が一番多いが、無職が26.63%となっている。また、年金生活者、生活保護受給者の割合が調査の度に増えている。

  • 破産申立者の家族構成をみると、8割は家族を抱えている。

  • 負債額200~500万円が全体の約4割を占めているが、負債額が1,000万円を超える層もかなり存在。債権者数の構成は、一番多いのが10名以上20名未満で、次が10名未満。

  • 複数の消費者金融やクレジットを利用して返済困難に陥る多重債務者が多く存在し、一般的な推計では150万とか200万人と言われている。

  • 多重債務者は、自分の収入では返済困難に陥っており、返済のための借入れを繰り返している。私に手紙を送ってきた高校の先生は、5年前消費者金融で30万円借り、返済が困難になって気が付いたら1,372万円借りており、学校にも取立てが来たとのこと。月々の支払いが60万円から70万円必要になるが、この先生の手取月収はおそらく20数万円で当然足りない。

  • 現在の多重債務者は、消費者金融だけでなく、信販系や銀行系のクレジットカード会社からのキャッシングにより返済のための借入れを行っているが、適用金利は大体が年間25~29.2%。

  • 29.2%で100万円借りた場合、最初の1ヶ月分の金利は24,333円、200万円借りると48,666円、300万円だと72,999円。東京では手取り20万円程度でも、家賃が6~7万円、生活費が10万円ぐらいかかるため、毎月の返済可能な額は約4万円。200万円借りると金利も払えなくなる。3年で元利金を完済する場合の毎月の返済額は、100万円の場合は約42,000円、200万円の場合は約84,000円、300万円の場合は約126,000円。手取りが20万円程度であれば100万円借りてもかなり生活が苦しくなる。

  • 例えば、200万円借りた人が金利等の返済が不可能になり、他の消費者金融やクレジットカードのキャッシングを年間29.2%で利用した場合、3年で475万円、6年で1,129万円に膨れ上がる。返済のための借入れを通じて多重債務者が大量に生み出されており、相談窓口にアクセスできないまま自殺する人も多い。

  • 我が国の年間の自殺者総数は2003年が約34,000人。この中でバブル崩壊後に急激に増えているのは、経済・生活苦による自殺者で2003年は8,897人。交通事故で亡くなる人よりも経済・生活苦で亡くなる人が多い。

  • 夜逃げをする場合は基本的に住民票を移せず、パートやアルバイトといった不安定な職種に就いている。健康保険に加入できないため病気等の場合には全額自己負担となり、重い病気や怪我をした時に治療が受けられない。また、身も心もズタズタになってホームレスになる人がいる(全国で25,000人)が、法律相談をしたところ大体8~9割が借金の相談。

  • 多くの多重債務者は、弁護士会とか司法書士界等の適切な相談窓口を知らない。学校ではほとんど教えていない。相談窓口を知らない多重債務者を食い物にする紹介屋、買取屋、整理屋、提携弁護士等が横行。最近の特徴は、この整理屋とか紹介屋にNPO法人が多く、チラシを配付したり、多重債務者にダイレクトメールを送っている。弁護士会は2000年に広告を解禁したので、電車の中で『債務整理をやります』という広告が見られるが、その多くは提携弁護士のもので、そこに相談し被害に遭う人が増えている。

  • 多重債務者が生み出される要因は、高金利、過剰融資、過酷な取立てで、現在に至るまで本質的には変わっていない。今は公定歩合が年間0.1%、銀行の約定平均金利は1.7%、預金金利は普通預金が0.001%の低金利にも関わらず、25~29.2%の高金利で貸付けを行っている。

  • 金融庁の事務ガイドラインでは、無担保無保証で貸付ける場合の目処は、1業者あたり年収の1割か50万円以下と定められているが、消費者金融大手5社の消費者向平均貸付残高は全て50万円以上で過剰融資となっている。

  • 現在の貸金業規制法では、調停申立てをして法的手続をとった場合、債務者本人に対し取立てしてはならないが、厳しい取立てを行った大手消費者金融の支店が業務停止になっている。

  • 大手消費者金融が法律上支払義務のない第三者に請求を行い業務停止となっているなど、親族などに請求する第三者請求が横行している。

  • 大阪高裁の平成11年の判決では、大手消費者金融の従業員が、債務者が借金を払わないためアパートから引きずり出し、「お前が払えないなら他から借りて返せ」と迫る。そして、近くの酒屋等で借金を申し込ませて、断られると頼み方が悪いと土下座を強要し、暴行した事件があった。

  • 商工ローンや大手消費者金融の取立ての模様が録音されたテープを持っているが、ヤミ金融業者と変わらない厳しい取立てを行っている。

  • ヤミ金融業者とは、無登録かつ出資法違反の高金利で貸付ける業者が多い。貸付金利は10日で3割~5割が多く、1日20割という業者もいる。通常は1ヶ月に1回の返済だが、10日毎、1週間に1回支払い要求される。

  • ヤミ金融業者には、都(1)業者(登録して3年未満の東京都知事登録の業者)が多い。貸付対象は4人の内3人が多重債務者、1人が自己破産者という構成で、名簿屋から多重債務者の名簿を入手して探している。

  • ヤミ金融業者を知った経緯はダイレクトメール、ファックス、電話勧誘で合計約75%。ダイレクトメールは、例えば1人に41通も来る例もある。

  • ヤミ金融業者はほとんどが東京の都心に事務所を構え、マンションの1室に10台ぐらい電話を並べて朝から晩まで怒鳴っており、本人が払えないと家族、親族、勤務先、ひどい場合は周りの住民から取り立てる。

  • ヤミ金融はグループ化されており、10日目が支払日だとその前の7日目とか8日目にどさっとダイレクトメールを送り、債務者の中には5分おきに電話を受ける人もいる。嫌らしい取立てとしては、ヤミ金融から借入れした都内のタクシーの運転手が運転免許証のコピーを取られ、返済が滞ると顔写真を入れたチラシを作られて、自宅周辺に数百枚貼られたという例がある。お悔やみ電報もよく使われており、その電報代も債務者に廻している。

  • 犯罪なので警察がしっかり取締まれば無くなるはず。ヤミ金融対策法施行と併せて、五菱会を摘発して解散に追い込み山口組総本部の捜査が行われた。その結果、暴力団は一斉にヤミ金融から手を引き、一部は振込み詐欺に移行。

  • ヤミ金融のほとんどは暴力団の資金源。その資金源を断つために、暴力団を相手に集団訴訟をしているが、現在は犯罪者集団が得た犯罪収益をどのようにして被害者に返すか頭を悩ませている。

  • 弁護士会への相談件数は、平成14年、15年をピークにやや減っており、ヤミ金融の相談件数も減っている。財務局への苦情相談も減っており、全国のヤミ金融の半分が都イチ業者(東京都知事登録番号が(1)の業者)であり、その監督官庁である東京都への苦情も大幅に減少。

  • 一時、ヤミ金融が増えたのは出資法の上限金利を下げたからという議論が行われたが、これは全く違っており、ヤミ金融は金融とは言えない犯罪者集団であり、断固として規制して取締りを強化すれば根絶できる。

新里弁護士

  • 商工ローン大手は社員に厳しいノルマを課していた。刑事事件の判決でノルマが犯行を惹起した背景となっていると認定された。また、保証人に対して全くリスクを開示しておらず、保証人被害が目立った。

  • 昨年2月の最高裁判決は貸金業規制法第43条のみなし弁済の適用の有無が争われた事件で、みなし弁済規定の厳格適用の初判断を下した判決である。利息制限法の暴利行為規制の重要性を再確認したもの。

  • 今問題となっているのは、公正証書による差押え。契約の際に複写式で密かに取得した公正証書作成委任状等で、商工ローンに関係する司法書士事務所で公正証書を作成し差押えを行う。債務不存在の訴訟を提起した後に商工ローン大手が差押えした事件があったが、不法行為であるとして損害賠償の訴訟を提起し商工ローン大手が認諾した。日弁連は公証人法を改正すべきとの意見書を採択。

  • 全国の中小企業の会計分析の結果、支払っていける金利は年利10%程度にすぎないとの分析結果が出ていて、商工ローンの金利は中小事業者を破綻に至らせ、保証人に被害を拡大するもの。

  • 大手消費者金融は盗聴事件にとどまらず、役員が支店長にノルマの達成を強いる「バキ」(罵声と檄の合成語)を行っている。業務停止等を受けた支店があり、刑事事件になってコンプライアンス委員会ができたにも関わらず今でもこのような事態。

  • 消費者金融業界は、大手5社でも700億円程度の広告費を支出し、テレビ・新聞にCMを流し、マスメディアが問題点を指摘できない状況。批判記事には多額な損害賠償を請求。日弁連は、利息制限法に違反する消費者金融のテレビCMの中止を求める意見書を発表。

  • フランスにおいては、消費者法典に定める金利規制法により、3ヶ月ごとに発表される市場金利を元にその3分の4倍以上になった場合は暴利貸借利率となり、違反すると刑罰が科せられる。ドイツでは法律による金利規制はないものの、判例により市場平均金利の2倍を越えると暴利行為として無効との法理が確立。日弁連は、2000年に調査に赴いたが、日本で言うヤミ金融等の被害は発生していなかった。

  • 日弁連は本年3月、韓国の消費者金融の状況を調査。韓国は1997年に金融危機に見舞われ、IMF体制のもと1998年1月に当時金利の民事・刑事のルールを定めた利子制限法(年25%、廃止の2ヶ月前40%)を廃止したが、サチェと呼ばれる私金融が急増。99年に景気対策及び脱税防止の観点からクレジットカードの利用が奨励され、カードの決済に困る人に対しても金利規制の無くなったサチェが、年200~300%、1,000%、2,000%を超える高利で貸付けし、信用不良者が急増。現在、韓国の就業人口の5人に1人にあたる約370万人の信用不良者が存在。身体放棄書なる書面をサチェに差し入れ、支払えない場合女性なら売春を強要され、男性なら臓器売買の対象となり、また強制労働を強いられる悲惨な事態も発生。

  • 韓国では警察による摘発が困難であったため、2002年に、日本の貸金業規制法と出資法が合体したような貸付業法が制定された(上限金利は年66%)。しかし適用範囲が狭く、現在でもサチェの貸出金利の平均は200%を超える。

  • 金利の自由化は、富裕層には低利を、低所得者には支払い困難な暴利をもたらす。多重債務の問題は人としての生活と命の問題。借金で自殺する必要のない社会を、本懇談会でもその視点を入れた検討をお願いしたい。

木村弁護士

  • なけなしの所得しか得られない若者や低所得者がサラ金のソフトなイメージ広告に踊らされている。毎月金利のみで15,000円を支払い続けている人が1,500万人、これは労働者4人の内の1人に当たる。それも利用者1人平均で3~4年間、長い人は10年間も支払い続けており、当然貧困階層に落ち込む。借入れが200万円以上の人は完全な破綻状態であり、将来の堅実な生活設計は立たない。サラ金は日本社会の貧困層の拡大に大きな影響。

  • 経済界は消費者金融の規模の大きさや、経済効果、経済成長に目を向けがちであるが、多重債務に陥った1人1人の生活実態や多重債務や支払不能が原因となって発生している事件・事故、家庭崩壊、学校教育の荒廃、職場の荒廃、公的扶助・延滞税金の増加など、行政負担の増大などについても詳しく調査頂きたい。こうした多重債務の影響はこれまで行政が本格的に調査したことがなく、また、業界側は実態を公表しないので、破産状態の人数など信頼するに足る資料はない。

  • 「消費者金融」と呼ばれる金融業は20年前に「庶民金融」と呼ばれていたものであり、質屋が時代の流れの中で業態を変更してきたもの。庶民金融は本質的に生活のつなぎ資金を小口・短期で借りるものであり、決して「消費者金融」ではない。日弁連は25年前、小口金融業法案を発表して法規制を求めたが、そこでは2年以内50万円以内、若しくは年収の1割以内と定めていた。大手消費者金融の利用者層は切羽詰った資金需要者であり、貸付手法、債権回収の手法も全く従来通りに、タオルをきつく絞って返済させる庶民金融そのものであって、経済的に余裕ある階層が主体的・合理的な計算の下で賢明な消費生活プランのため、オートローン・学費ローン・住宅ローン・旅行ローンなど、利用目的を定めた消費者ローンを選択するというようなものではない。

  • 庶民金融は借金返済・生活費不足・病気・失業など、切羽詰まって借金せざるを得ない人達が利用する金融で、利用者側に借りる・借りない、借受条件の有利不利など選択の余地は全くない。庶民金融と公的融資、公的扶助とは密接不可分に関係しているが、これまであまり論じられたことはない。「サラ金が公的扶助の肩代りをしている」という現実。

  • 業界の自主規制、業界団体の自主性に任せることは無理であり、サラ金の健全化にはかなり厳しい法規制と警察当局の取締りが不可欠。

  • 借主・利用者側も高利で借りざるを得ない個人や中小零細事業者であり、一般的に法的知識、契約意識が低く、違法行為に対する抵抗能力が低く、常に泣き寝入りをすることを常態とする階層の人達。庶民金融に競争原理など働く余地が無い。まずこの人達を大切に守ることが求められている。

  • 本来、公的扶助、公的融資制度がその役割を十分果たしていればともかく、未だ不十分なため、以前は質屋が、現在はサラ金がその役割を果たしている。しかし、これはあくまで小口・短期のつなぎ融資としての存在であって、今日の大手消費者金融は高金利・大口(50~100万円)・長期(平均3年半、長期10年以上)が常態となっていて、本来の姿を大きく逸脱。以前は小口・短期の融資なら手間暇・コストがかかるだろうとして銀行融資に比して少々の高金利もやむを得ないと考えてきたが、融資ノウハウの蓄積、一定の不良債権率の織り込み等により、無審査同然で機械的に50万円を融資している実態。事業資金融資の場合の返済能力審査などに比較してコストは少なく、大手消費者金融に高金利を認める必要性は全く無い。

  • 今日、これだけ巨大かつ多数の利用者を抱える消費者金融がどれだけの社会的有用性、存在意義があるのか。多人数が必要とし、利用しているから社会的に有用性があるのだという反論が貸金業界側から出されているが、果たしてこの業態を必要悪として彼らの貸付残高の膨張に任せて良いのか。銀行・保険会社が有する国民の預金をローン・クレジット会社に回し、ローン・クレジット会社を肥大させ、これらと共同して高金利・高手数料を徴取し、更に国民を疲弊させるという構図がみえている。

三木弁護士

  • 消費者信用の対象が企業ではなく一般消費者であり、それが企業の生産活動の中で利用されるのではなく消費者の家庭生活の中で費消されていくもの。消費者信用は消費者の家庭生活に役立ち豊かにするものでなければならず、消費者の家庭生活を圧迫し歪めていくものであってはならない。科学的、経済合理的なコスト論は適正金利論にとっては二義的である。正当な市場金利との連動性も不可欠であり、固定的なものでは対応できない。

  • アメリカの金利規制は各州によって行われるが、連邦最高裁の判決(マーケット事件)により、連邦の許可を得た銀行は本店設置州の金利規制に従って全国で営業できる「金利の輸出」を開始。各州は、金利規制を緩やかにしてそこに企業を誘致し、業者のほうもそこに本店を移転して緩やかな規制で全国で営業できるということになった。

  • アメリカにもサラ金のようなものがあるが、消費者金融の大半は、クレジットカードによるローン。金利の輸出、金利の自由化が行われたことから、クレジットカードの与信額が極めて大きくなり、個人破産が激増するという結果が現れた。FDIC(連邦預金保険公社)の論文では、金利の自由化によって、クレジットカードの利用可能性は大きく広がる一方、平均的なクレジットの質は悪くなって、個人破産の継続的な増加がもたらされた。カナダでも同じことが起きているとある。

  • この論文が書かれた1978年段階ではアメリカの個人破産件数は100万件と言われたが、2003年には人口2億5千万人に対し150万件に増加。日本では、人口約1億3千万人に対して20数万件の破産でアメリカのほうが激しい。

  • この論文は、これまでは厳しい金利規制によって消費者信用へのアクセスが限定されていて個人破産の水準が低いことが特徴であった社会が、金利自由化によって消費者信用にアクセスしやすく個人破産の水準が高いことが特徴となる社会へと、大きく変わったとしている。アメリカのように破産者を増大させてはいけない。

  • アメリカでは、サラ金とかヤミ金に対応するものは、ペイデイローンと呼ばれるもので、給料日から給料日まで短期で貸すという意味でつけられた名称だと思うが、それが高金利の許される州に銀行と手を組んで設立され、他の州の金利規制の上限よりも高い金利で貸付けている。

  • 日弁連では、統一消費者信用法の制定を主張している。上限金利を規制(貸付信用と販売信用で共通)することだが、(1)過去の国内銀行貸出約定平均金利に連動する「連動制」の採用と、(2)上限金利は、過去10年間の平均金利に6%を上乗せした数値にしてはどうかということ。

  • 利息制限法制定時の「国内銀行証書貸付平均金利」12.045%を基に、利息制限法の上限金利を20%、18%、15%と設定した。最近の平均金利を5.539%とすると、利息制限法制定当時との差は6.506%。日弁連は10万円未満14%、10万円以上100万円未満12%、100万円以上9%を試案として提案。上限金利も固定することなく、政令等で見直してゆく。臨時金利調整法の仕組み(日本銀行の意見を経て政府が金利を決定)が良いのではないか。

  • 更に上限金利を実効性あらしめるためには民事的に無効にすることと刑事罰によって担保することが重要である。その他、過剰与信の規制、個人保証の規制、販売信用における共同責任を主張。

  • 五菱会事件において法の不備的な問題が明らかになった。五菱会のヤミ金融による利得が、すべて国に没収されず、被害者に配分される手続きがないために、犯罪利益がまた犯罪者のもとに戻ってしまうおそれがある。

質疑応答の概要は以下のとおり。

(質問)

  • 現在の出資法上限金利(29.2%)は貸倒れコストや調達コストが含まれている一方、銀行系の貸付金利のレベル(15~18%)をみても、ドイツ、フランスなどに比べて非常に高い。この中身についてどう考えているか。

  • 経済原理で言うと、上限金利を下げれば、借り手の需要も増えるのではないか(29%なら借りたくないが、もっと下がれば借りたい)。また、無理なく返済できる金利水準の議論においては、単に金利水準だけではなく可処分所得との関係も考慮する必要。金利が下がっても可処分所得の低い人が長期に借り続ければ同じような問題が起きるのではないか。

  • 被害の原因が、高金利、過剰融資、過酷な取立て、という話があったが、大手の平均貸付金利をみてみると、20~22%ぐらいであり、29%より低い。中小業者の方が大手より高い金利を設定しているのが現状ではないか。借入れが増えて大手から借りられない者が、中小の方に移っていくというのが構図だと聞いている。金利が本当に問題の焦点なのか。

  • 貸し手側の金利と借り手側の金利は違う。本日のプレゼンテーションは、借り手側からの金利の話が中心。貸し手側から言えば、調達金利、事務コスト、貸倒リスクを全部加えなくてはいけない。おそらくそれらを加えると大手とか中小によって、顧客層によっても違ってくるのではないか。

(回答)

  • 多重債務者は、消費者金融だけでなくて銀行からも借りているし、クレジットカードのキャッシングもしており、統一的な規制が必要。貸金業規制法からは銀行の貸出しは排除されており、銀行法には消費者保護規定がほとんどないという問題がある。銀行系の消費者金融は、利息制限法の上限金利ギリギリで貸付けているが、貸付金額によっては、消費者の収入や可処分所得が低い場合に返済困難に陥ることになる。

  • 利息制限法は明治10年に制定され、昭和29年に現在の姿になったが、当時の銀行の貸出約定平均金利の動きを反映。一方、現在の金利は相当下がっており、利息制限法の金利はかなり割高な水準。銀行はゼロ金利で調達しているので、貸出しに際しては低金利の商品を開発・提供できるのではないか。

  • 弁護士が相談を受ける多重債務者の場合は、大手消費者金融の上限金利で借りている人がほとんどで、24~25%で借りている人はあまりいない。

  • 支払いが伸びると延滞金になってしまい、返済に窮することになる。延滞金で儲けることが、世界的にも貸金業界の定説となっている。約定金利が低くても延滞金を常態化させることで実質的に高利が取れる。

  • 銀行系や銀行自身が消費者金融を始めているが、信用情報機関の情報がかなり完備してきており、債務者がどのような状況にあるかが一目瞭然であるにもかかわらず、新たに自社分の融資を追加させていくという姿勢は問題がある。多くの債務者は借金返済のために新たな借金をしているというのが、日弁連の破産記録調査などからみても明らか。貸主側が貸さないようにして多重債務者の発生を防止するといった基本的な視点が必要。

  • 基本的に消費者側の問題については、学校での消費者教育が重要である。しかし、消費者の教育では今すぐ具体的な対応ができず限界がある。利用者の知識もばらつきがあり、問題解決のためには貸す側の問題をきちんとコントロールしていく以外にない。

  • 低利融資になればなるほど貸す側は与信審査に慎重にならざるを得ないが、高利だと貸倒れコストも含んでいるので審査もかなりいい加減なものになっている。無人契約機による大手消費者金融の審査は、収入は自己申告制であり、どの程度のチェックがされているか不透明。

  • 少なくとも弁護士が把握している多重債務者は、破産記録に出てくるような人達。破産記録は、給与明細などを全部添付した資料なので、かなり正確に破産者の収入を知り得るが、金利が下がれば下がるほど、金融業者の方が慎重にならざるを得ない人達である。

以上

問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3567、3553)
本議事要旨は、暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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