金融経済教育懇談会(第3回)議事要旨

1.日時

平成17年4月25日(月)18時00分~20時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁 庁議室

3.主な議題

  • 金融庁アンケート結果等の説明。

  • 金融広報中央委員会より「金融教育ガイドブック」及び「自己診断:身近で役立つおかねの知識」等についての説明。

  • 横山委員より高等学校における経済教育の実態について意見発表。

  • 島田委員より中学校における金融経済教育の現状について意見発表。

  • 西村委員より初等中等教育における金融経済教育について意見発表。

  • 文部科学省より学習指導要領等についての説明。

  • 自由討議

【意見の概要】

(初等中等教育における金融経済教育の意義・ねらい)

  • 少子高齢社会、自力救済型社会への移行、金融商品の多様化・高度化、IT化の下での購買手段の変容などバブル崩壊後の加速度的な環境変化の中で、自立した個人として判断し意思決定する能力を育てることが社会的要請となっている。

  • 単にお金の価値や物の大切さを認識させるにとどまらず、社会経済環境の変化に対応して、たくましく生きる力を育むこと、つまり金銭管理・金融行動を通じての意思決定能力や、社会認識を通じて市場への影響力を行使できる能力を養うことが、学校における金融経済教育のねらいとなるべき。

  • 金融経済教育の実践には、生活自立力、社会認識力、意思決定力、キャリア(適切な職業観)の形成といった能力の開発が期待される。

(初等中等教育における金融経済教育の現状)

  • 高校における金融経済教育の実態を見ると、

    (1) 普通科と専門学科、さらに普通科の中でも大学進学が多いがどうか等で学校による違いが大きい。

    (2) 教える機会としては、主に公民科の現代社会と政治経済、家庭科、商業科があるが、特に公民科では、現代社会は1年生が履修することが多いが経済の内容は少ない、他方、政治経済は3年生で履修することが多いが、現代社会に比べ受験に使う生徒が少ないため勉強されない、といった問題がある。また、教える側の問題として、法学部出身者が多く、経済学部出身者が少ない事情もある。

    (3) 現代社会、政治経済の授業実態としても、指導すべき内容が学習指導要領で規定されている中、時事問題を扱おうとすると授業時間はさらに足りなくなる。順番として政治が先に来て、経済は駆け込みになりやすく、内容も個人の資産管理や投資まで触れるのは難しい。外部からの教材・資料は内容もよく数も豊富であるが、活用するのが難しい。

  • 高校の先生の意識を推測すると、(1)学校ではお金儲けの話はタブーであり、リスクのある株・債券等は駄目、起業よりは大学が大事、(2)公平・平等といった価値観が優先し、汗水流し苦労した者=努力した者が評価されるべき、(3)汗水流して得るお金が正しく、労働なしにお金を得ることは不正、といった意識が根強い。

  • 中学校での金融経済教育の現状も先生によって温度差があり、授業方法も様々である。公民的分野の授業時間が95.5~105時間から85時間に減っており内容の精選が必要。そのような中だが、社会科はノートに書いて覚えることだと思っている生徒に対し、実践で工夫している先生は多い。消費生活や会社作りのシュミレーションゲーム、さらに実際のディーラーを呼んできて話を聞くなどの実践例がある。苦労して調べものをしたり、体験、議論した内容は生徒の記憶にも残る。

(初等中等教育における金融経済教育の課題)

  • 学校における金融経済教育推進に向けた課題としては、(1)その定義づけ、体系化、(2)学習指導要領への明確な位置付け、(3)関係機関によるコンソーシアムの設立、(4)海外の事情の研究、紹介、(5)米国を参考にした推進法の検討、が挙げられる。

  • 学習指導要領では、例えば、中学校社会科公民的分野では「市場経済の基本的な考え方」、「金融の働き」を、高校「政治・経済」では、「市場経済の機能と限界」、「資金の循環と金融機関の働き」を理解させることを求めている。ここで書かれていることは、応用・発展が利くような基本的なものの見方、考え方であり、これを具体的に教育現場でどのように発展させていけるかについては学習指導要領の「解説」を含めて読むことが必要。学習指導要領に示された基本さえ押さえれば、具体的な教材・方法については現場の裁量が大きく、多様なやり方が工夫されてよい。その意味で金融広報中央委員会が今回新たに作成した実践事例集は評価できる。

  • 学習指導要領の説明を聞き、現在でも、金融や経済の関係でかなり踏み込んだことが書かれていることを理解した一方、現場で実践する段階との深いギャップを感じた。その要因は何なのか真剣に考える必要がある。

  • 中教審の議論では、指導要領に盛り込むべき内容について、金融以外の各方面からも強いニーズがあることを実感している。教育現場へのアンケートでは、指導要領が制約との声を聞くが、現実には、指導要領を読んでいない先生も多い。いい教材がほしいという声も聞くが、現実にはたくさんある。実態の分析をしっかりする必要。

  • これから「貯蓄から投資」への流れを作っていかなければならないが、現在の教育現場の実態を踏まえると、現行の教育課程に金融経済教育を加えることには無理があり、むしろ(1)教員養成の改善、(2)研修を通じた必要性の認識、指導方法の改善、(3)ローリターン・ローリスクのもの、地球環境等別の付加価値を付けたものからスタートして投資を体験、慣れさせる、といったことを通じた教員の意識改革から始めるべき。また、根本には社会保障を通じたナショナルミニマムの底上げがないと投資意欲は増さないのではないか。

  • よその先生が実践した面白い授業の事例を聞いたり勉強したりしても、それを自分の授業として組み替えるのは簡単でない。先生によって授業のスタイルにはかなり個人差がある。生徒がどう反応するかは実際にやってみないと分からない。実際に金融経済教育が大事という雰囲気、土壌を作っていくことが重要である。

  • 先生自身が、ファイナンシャルプラニングは自分の生活に役立つ、あるいは、自分の夢を実現するために必要ということを認識していないのではないか。教育は動機付けと刷り込みだと思う。先生が子供たちに教える時、金融経済教育が自分にどれくらい役立つか分かっていれば、自ずと有意義な授業になるのではないか。そのために、もっと先生が学べるような環境を与えたり、体験できるような場を提供してはどうか。

  • 金融経済教育の有用性を先生自身が学ぶ機会が不足している。例えば、法律や政治を知らなければ新聞の一面が読めないということは皆分かっている。他方、投資について理解できないと恥ずかしいという認識が、果たしてどれくらい先生にあるだろうか。先生の意識を高めなければならないのではないか。

  • ルールは参加者が作るのが民主主義である。良いプレーには皆が拍手し、そこからルールが生まれ育つものであり、その際、レフェリー的な役割を果たすのが先生である。今はルールが変わろうとしている時であり、先生は新たなルールを生徒に伝えていく熱意をもってほしい。

  • 金融経済教育については、教材は積み上げられており、現にかなりのものが動いている。しかし、学校の現場は千差万別であり、意識のある先生や質のいい教材に出会えるとは限らないのが現状。

(初等中等教育における今後の金融経済教育の内容)

  • 学校における金融経済教育の内容としては、金銭管理学習、クレジット学習、投資学習、リスクマネージメント学習などを中心とした金融消費者教育、さらに起業家教育、キャリア教育などを軸とすべき。

(初等中等教育における今後の金融経済教育の方法)

  • 今は昔と違って教育に様々なものが求められている。学校現場から見たら、金融経済教育だけが教育ではない。教育をすべて先生が行なえといわれても、スーパーマンではないから不可能である。専門的なことは専門家や社会人を招いて教える方が有効である。社会人や企業ボランティアを学校に呼びたい。これからは、学校に何をさせるかではなく、学校に何をしてあげられるかが問われている。

  • 制約の中で、学年や教科の壁を越えてどう浸透させていけるかが重要。教育現場にもっと実務家を入れることも必要。

  • 学社融合という言葉がある。学校で無理なら外に出るしかない。教育現場でできることを精選した上、学校でできないことは地域社会の連携に頼るということが必要ではないか。

  • 教材については、既に良いものがたくさん作られている。ただ、それを各団体が学校に送付しても、送る側は一つ送っているつもりかも知れないが、学校にはいろいろな団体から膨大な資料が集まることになり、先生に活用する暇がないため積み重ねるだけになっていることが非常に多い。そんな中で、教材を工夫し、先生にアピールしていくことも重要である。

  • 先生が金融経済という専門領域をイメージできるような教材が少ない。学習指導要領やその解説はどのような内容を教えるか、その解説を記述しているのであり、日々の授業で使う教材までも示してはいない。先生自身が教材を作成し、授業を展開してほしいが、現実には先生をいろいろな形で支援していくことが非常に重要。突き詰めていくと、イメージの湧く、より良い教材を開発し提供することに尽きるのではないか。

  • ルールなり規範なりの大枠を理解することを教えるのは教育の根本であり、大変重要である。一方で、規範というとどうしても包括的、抽象的であり、現場はどう教えてよいか苦しむ。最初から抽象的なカテゴリーに分類するのではなく、具体的事例に即して、帰納的に、何か起きたときそれに対応するための考え方をはぐくませることが重要であり、現場の先生のサポートとなるようなパーツの提供が必要。その意味で今一番有効なのはシュミレーションゲームではないか。

  • 学校における金融経済教育の方法としては、疑似体験、市場見学、生産・販売活動など実践的、体験的に行うことが望ましい。

  • 決定的なのは、学校の現場に時間が足りないということ。教育現場でできるのは、生徒に刺激を与えるところまでである。そのためには、昔の少年雑誌のような「面白くて、易しくて、為になる」、「○○でもわかる」といった教材作りが大事である。

  • メディアの世界では、「本当に分からない人」のことも念頭において表現を工夫しないと、視聴者・聴取者に届かない。「中学生でも分かる」を合言葉にしたニュース番組の変革や、仮に自分が知っていることでも「どういうこと?」と素朴な問いかけをするスタイルはその例。例えばGDPという単語は皆知っていても、その意味をきちんと説明するには工夫が要る。

  • お金のことは、お小遣いをどうする、おやつをどうするといったことから始まって、実は子供にも一番関心のあること。正しいマネー教育をすることで、心も豊かに、財布も健康にする。目線を低く設定し、人生をタフに生きていくための知識が身につくような方向を目指したい。

  • 難しい用語を覚える教育ではなく、中身を限定した上で、体験的に学べる教育でないと生徒は吸収することができない。「会社を作る」から始めるのは無理があり、まずは「会社で働く」ところから始める。ベンチャーや投資教育としては、まず人生にはリスクがあるんだという基本を学ばせる。金融の専門用語はほんの少しにして、典型的な家族が生活設計において直面するような様々な問題を抽出し、日常の生活に引き寄せて認識させるようなストーリーを盛り込んだ教材作りが大切なのではないか。

  • 金融庁のホームページの内容はまだ難しい。

問い合わせ先

総務企画局政策課
Tel  03-3506-6000(代表)
寺門(内3167)
川西(内3168)
本議事要旨は、暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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