平成13年5月28日
金融庁

企業会計審議会第8回第一部会議事録について

企業会計審議会第8回第一部会(平成13年4月27日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

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企業会計審議会事務局


企業会計審議会第8回第一部会議事録

日時:平成13年4月27日(金)午後4時01分~午後6時03分

場所:中央合同庁舎第4号館10階共用第一特別会議室

○斎藤部会長

それでは、定刻になりましたので、これより第8回第一部会を開催いたします。委員の皆様にはお忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

議題に入ります前に、当部会の委員に交代がありましたので御紹介いたします。今月19日付で原田委員が企業会計審議会幹事を退任され、後任として始関正光氏が企業会計審議会幹事に就任され、当部会に所属されることになりました。始関氏は本日は欠席されております。席上に新しい名簿を配付しておりますので、どうか御確認ください。

前回御説明いたしましたように今回の部会からこれまでのヒアリングや皆様の御意見を踏まえて論点整理を行っていきたいと思いますけれども、本日と次回はお手元にお配りしてあります資料をもとに論点整理に向けて御議論いただきたいと考えております。これまでの部会では、時間の関係から議論を途中で打ち切らざるを得なかった面もあったかと思います。本日はそのような議論につきましても時間をとって意見交換をしていただきたいと考えております。

特に前回の大日方委員の御報告は、今回以降の審議のために基本的な論点を整理していただいたという点で重要な御報告でございます。前回御欠席の方もおられたところでありますし、何よりも論点整理に向けた今後の議論との連続性という点でその趣旨を確認しておく必要があろうかと思われます。そこで、大日方委員にはお手数をおかけいたしますけれども、ここで簡単に前回の御報告の要約を御説明いただきまして今回以降の議論につないでいただきたいと存じます。

それでは大日方委員、よろしくお願いいたします。

○大日方委員

東京大学の大日方でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

前回の私の御報告では柱が3つの部分に分かれております。一番最初は持分プーリング法とパーチェス法の定義を確定するという柱でございまして、これは持分プーリング法あるいはパーチェス法といったときに絶対に欠かすことのできない必須の条件、会計制度はこれだけはやらなければいけないというものと、多少のバリエーションを認めてもいいもの、本質と本質でないものを分けることを念頭に置きまして論点として第1番目に置いてあります。もちろん会計処理のバリエーションはいろいろ生じるわけですが、それだけではなくて幾つかの派生論点もこの定義に関わらせて整理することができるのではないかという点でこの問題を整理しております。やや形式的に申しますと、仕訳の上で借方側に着目するか貸方側に着目するか、あるいは両方を同時に定義の中に盛り込んでしまうかという点で幾つかの定義の仕方があるだろうということでございます。これが1番目の柱です。

2番目の大きな論点はプーリング・パーチェスというものの実質にもう少し踏み込んで考えてみようということです。「使い分け」と書いてありますが、ここでは使い分けの規準は一切触れておりませんで、正確に言うと使い分け以前にそれぞれがどういう方法なのかという基本的な考え方を確認しようということです。ここでのキーの概念は「持分の継続」と「事業の取得」ということですが、「持分の継続」という概念は基本的な概念であるのですけれども、若干の注意が必要なのは、パーチェス法であってもフェアバリューで評価するのは被合併会社の方であって、合併会社の方では「持分の継続」という考え方に立って簿価をそのまま継承しているという意味で、「持分の継続」という考え方を否定するか否定しないかという形でプーリングとパーチェスが分かれるのではなくて、どの範囲まで「持分の継続」を認め、どの範囲を認めないかという、ある意味で程度の問題によって持分プーリング法とパーチェス法が分かれるという点には御注意いただきたいと思います。

「事業の取得」はパーチェス法固有の考え方でありますが、他の会計基準と整合的にパーチェス法を考えるということを教科書的な記述ではありますけれども書いてあります。これはどういうことかといいますと、最近、FASBあるいは海外の動向などを聞いておりますと、パーチェス法についてすべて一たん時価発行増資をして払い込まれた現金で現金買収をするという形で株式交換による企業結合を分解してしまうのですけれども、それはある程度ゴールが決まった上での説明の便宜でありまして、学問の世界ではそれが当然ということではなくて、パーチェス法の会計処理の考え方は基本的には金銭を介在させない非貨幣取引、非金銭取引であって、それであるが故にその時点でフェアバリューで測定するという考え方であります。ここでは使い分けの具体的なことについては立ち入っておりませんけれども、プーリングとパーチェスはAPBのように最初から使い分けられるべき方法というのではなくて、プーリングにしろパーチェスにしろ、すべての株式交換による企業結合に妥当する方法であるわけです。ただし、いずれもある側面を強調してある側面を無視するというか、軽視するために両者それぞれに一長一短があるということの確認にとどめております。

3番目がのれんの会計処理ですが、企業結合に当たってのれんの会計処理を会計基準としてどこまで組み込むか。それ自身が1つの論点でありまして、そののれんの計上だけを企業結合会計でやり、その後の償却等々の処理については独立に定めることも当然に考えられるわけですが、多くの場合、基本的には合併によって生じてくることから、のれんの会計処理も企業結合会計の中で論じるのが一般的な方向でありまして、その点について3番目に検討してあります。多少先走っているという御批判があるかもしれませんけれども、特にパーチェス法の一元化あるいは範囲拡大と同時にのれんの償却問題が出てきております。ここでも御報告があったと思いますが、直近のFASBの提案ですと、通常はのれんを償却しないでおいて、減損テストにかけて減損分だけ処理していくという処理になりますが、それが果たして理論的に問題がないのかということを主たる問題意識として議論してあります。もちろんよく話題になる負ののれん等についても避けられない論点ですので書いてございますけれども、繰り返しになりますが、ここでの主たる意識は非償却がいいかどうかという点に問題意識が集中しております。

最後のところは柱というよりも入口なのか出口なのかがわかりにくいのですけれども、企業結合の会計基準の守備範囲といいましょうか適用範囲をめぐる問題が、多少あります。

以上です。

○斎藤部会長

どうもありがとうございました。ただいまの、あるいは前回の大日方委員の御報告につきまして特に御注意いただきたい点を私からも1点付言させていただきます。

御承知のように企業結合の会計というときには大体がプーリング対パーチェスという2つの会計方法の対立から話を始めることが多いわけでありますけれども、大日方委員の御報告はむしろ両者の共通点から話を始めておられるというところに御注意いただきたいと思います。つまり、合併当事会社の少なくとも一方は従来からの簿価を承継するわけであります。それがなぜかということを突き詰めることを通じてプーリングとパーチェスの使い分けが必要かどうかを考えていこうという基本的な図式になっていることは特に御注意いただきたいと存じます。

それでは、ただいまの大日方委員の御報告といいますか前回の報告の趣旨の確認につきまして、もし御質疑があれば承りたいと存じます。

○中島委員

部会長からの御説明でプーリングとパーチェスを対比させて検討されていることはよくわかりましたが、今までの議論の過程あるいはアメリカの公開草案などの議論の過程では公正価値プーリング法が出ておりましたね。私自身も別に公正価値プーリング法がいいと思っているわけでは全くありませんし、実際にそれが制度として使われているところがないということは実務の上でも相当無理がある方法だろうと思うのですけれども、一方でアメリカあるいはG4+1の報告書の中でパーチェス法1本に絞っていく過程での論拠といいますか、その1つは結局、取得者が識別できるようなものはパーチェス、取得者が識別できないようなものは本来はプーリングではなくて公正価値プーリングが適切な会計処理の方法だと。けれども、それは実務上とても無理なので、あるいはいろいろ弊害があるのかもしれませんが、比較考量の上でパーチェス法1本に統合してしまうという論理の運びだと思います。

そういうことからしますと、もし将来なぜ日本が持分プーリング法を残したんだと。先走り過ぎているかもしれませんけれども、そう聞かれたときに、それに対してこういう場合は公正価値プーリングよりもむしろ持分プーリング法だと理論的にも言えることは非常に大事ではないかと思うわけです。その辺のところをもう少しかみ砕いて御説明いただけないでしょうかというのが1点です。

もう1つは確認ですけれども、「使い分けるとしたときの規準は、政策的な判断によって決める以外にない」とありますけれども、ここでおっしゃっておられる「政策的な判断」というのは例えば数値を30にするか40にするかとか、20年にするか40年にするかは理論的に答えが出てくるものではなくて割り切りといいますか、決め方の問題だという意味で何か別の政策的なところ、方向へ誘導するためにその規準をつくっていくということではないと理解しているのですけれども、それでよろしいでしょうか。その2点をお願いいたします。

○大日方委員

まず1番目の御質問からお話しさせていただきますが、パーチェス法においてなぜ被合併会社の資産負債をフェアバリューで評価するかという論理を考えてみたときに、そのときに買ったのだから買ったときのフェアバリューでついている。これは原価か時価かというのではなくて、普通の取得原価主義会計の枠内でやっている行為そのものと何も異ならないという理解に立っております。その論理を公正価値プーリングとかフレッシュ・スタート法に拡大しようとしても、お互いがお互いを取得し合うという混乱したというか、錯綜した議論をする以外にはパーチェス法の拡大という形では正当化できないということ。それから、両当事会社がともに会社を解散もしくは清算(liquidation)した上で新設合併をする場合には当然、設立時のフェアバリューということになるので、それは使い分け云々の問題ではなくて、これもまた取得原価主義の枠内において既存の論理と整合的に全面的にフェアバリュー評価になるわけです。

ところが、両当事会社がともに liquidation もしないで、つまり存続しているときに、特にパーチェス法でいうと合併会社側は「持分の継続」という考え方に立ってフェアバリューで評価替えしないのですけれども、それをあえて否定してフェアバリューで評価することは論理としてかなり見つけにくいのではないかという感じがしているわけです。ここではフレッシュ・スタート法なり公正価値プーリングを批判することが目的ではないのですけれども、仮にそのときに合併会社側の資産、つまり従来は持分が継続しているために評価替えしないと考えられてきた部分もフェアバリューで評価替えするとなりますと、その論理は今度はかなり危ない面を持っておりまして、大規模な設備投資あるいは大規模な取得をしたならば今まで持っている資産をフェアバリューで評価替えしなければいけないのではないか、あるいは株主構成が大幅に変化した、つまり第1順位の大株主が変化して株主間の変化が起きたならば、ビジネスの上で何も変化がなくてもフェアバリューで評価替えしなければいけないのではないかという方向へ、つまりフレッシュ・スタート法の論理を整合的に展開すると、常に何か事あるたびにフェアバリューで評価替えするというところに行きかねない、あるいはそういうところに道をつけかねないという点で論理的には怪しいと申しましょうか、危ない面を持っているわけであります。

その点については公正価値プーリングとかフレッシュ・スタート法を積極的に支持すると申しましょうか、賛成される方の論拠をちゃんと聞いてからでないと十分な分析ができないのですけれども、単純に買った側がわかっていれば片方だけがフェアバリューだし、わからなかったら両方フェアバリューというのだと積極的な根拠は余りないというのが、意見まで明確な形ではありませんが、私が今考えていることでございます。

2番目につきましては中島委員がおっしゃったとおりで、量の線引きについては決め手はなくて、それはその時々のいろいろなニーズなり事情なりを考慮して決めざるを得ないのであって、そこを先見的・理論的に量的な大きさの規準について何も言えることはないという意味です。もちろん政策的な誘導を兼ねて、いわゆる学問的な言い方をすると経済的帰結などと申しますけれども、会計基準が持つ経済的帰結に向けて誘導すべきだということではございませんで、決め手がないので先見的に決めざるを得ないという意味でございます。

○中島委員

大日方委員の資料の一番下に「フレッシュ・スタート法は新設合併に限定されるか?」と書いてあって、もちろん大日方委員もここで新設合併はフレッシュ・スタート法だとおっしゃっておられるわけではないと思いますけれども、新設合併かどうかというのは法律的な側面で、恐らく経済的実態としては企業のいろいろな判断で新設合併という道を選ぶ場合もあれば吸収合併という道を選ぶ場合もあると思いますので、その辺はどうお考えになったのでしょうか。

○大日方委員

ここで言っている新設合併は法律上のものでして、つまりこれに当たっては両当事会社が liquidation するという前提です。したがいまして、liquidation している以上、従業員は一たん解雇されておりますから、例えば退職金負債のようなものは存在していないわけです。引き継ぎようがないわけです。税効果のような会計上の擬制も存在しようがない世界が前提になっております。繰り返しになりますけれども、それは方法の選択でなくて、必然的にフェアバリューでやる以外になくて、そういう合併形式が一体あるのかないのかはわかりませんけれども、それと同じようなものが事実上あるということになると少し考えますが、包括承継されることが企業結合とか合併の本質だと思っておりますので、そこに liquidation はないと思っております。したがって、通常のいわゆる日常用語で言う合併においてフレッシュ・スタート法が問題となる可能性はものすごく特殊なケースに限定されてしまうのではないかというイメージを持っております。

○斎藤部会長

恐らく今の論点は一言で言えば liquidation をして新設合併するという特定のケース以外だと、フレッシュ・スタートを持ち込んだ場合にはパーチェスのロジックと矛盾する可能性が高い。すべてをフレッシュ・スタートに変えてしまえば別ですけれども、パーチェスを残しておいてフレッシュ・スタートを入れることはお互いのロジックが矛盾してしまう可能性があるというところが一番のポイントではないかと思います。ほかに御質問はないでしょうか。

○西川委員

前回の御説明の中だったと思うのですけれども、プーリングは本来、相対規模は問わないという御説明があったと思うのですが、逆にIASなどを見ますと、いきなり相対的規模でプーリングなのかを判断しようとしている。ここで言っている継続性規準と同じ意味かどうかわかりませんけれども、継続性もいきなり規模で判断しようとしている。その背景には多分、総株主という概念があるのかなという感じはするんです。ただ、総株主といってもいろいろな人が持っているものを1つに見るという考え方はおかしいのではないかということもあり得るかもしれないのですけれども、そのようなことと前回御説明いただいたプーリングは本来、相対規模は問わないということが関係しているのかどうかをお聞きしたいのですが。

○大日方委員

私は国際会計基準の考え方をよく理解しておりませんので、関係ということについて十分なお答えはできないのですけれども、持分プーリング法は生まれた当初、基本的にすべての合併のケースに使われていて、使い分けが問題になるようになったのは一種の特殊事情下におけるアメリカでの基準設定における判断だったわけです。むしろ規模云々の問題を問わないというのがプーリングの意味のはずなのであって、つまりプールされているわけですから、前回の繰り返しになりますけれども、持分関係の変化は企業外部の問題である。そこで仮にダイリューションが起こっても、例えば持分比率が急に減ってしまって自分の取り分が減っても、それは会計上の損益でもないし、株主にとって富の変化はあるにしても、株主に帰属させるような利益あるいは持分の変動を会計上記録しないのが基本的な考えではないか。

前回も例で申し上げましたけれども、時価以下で新株を発行した場合にダイリューションしているわけですけれども、その部分は費用に計上することを通常しないわけです。これは古くから行われておりますし、現在でも持分関係の変動によるダイリューションがあったときに会計上、資本・利益の変化を記録するという案が出ておりません。これは単純に個人的な感想ですけれども、プーリングについて、対等だったらプーリングで、大きな格差があったら使えないこと自身が一定の時代制約のもとにおいて形づくられた先入観と言うと言い方がきついのですけれども、かぎ括弧つき持分プーリング法の特殊な観念ではないかと思っております。

○西川委員

政策的な判断によって決める以外にないという結論のつけ方が仮に論点整理の基礎をなす部分だとしますと、もちろんいろいろ議論すればするほどそういうことになっていくのかもしれないのですけれども、飛躍してしまうのではないかなという感じがして、政策的でないような判断ができるといいますか、いきなり政策的な判断に話を持っていくのはどうかなと考えたということでございます。

○大日方委員

むしろ私は研究者として使命を全うするとしたら、ないものはないと言う以外にないのであって、これに理論的根拠をつけてくれと言われれば無理であります。したがって、ここは持分プーリング法とパーチェス法が同一ベクトル上の反対の考え方であるというなら話は非常に簡単ですけれども、異なる次元の考え方なので、非常に問題がややこしくなっているわけです。どちらかが優位だというのではなく、全く異なっているのでどちらかに軍配を上げることはできないわけでして、それはもちろん99対1でも全然構わないのですが、そこは理論的には決めようがないという感じでおります。

○斎藤部会長

大日方委員の議論を受け止めるときに恐らく2つの側面がありまして、プーリングの考え方を理屈の上で突き詰めていったらどうなるかというのが1つの点ですね。その局面では恐らく規模の問題というのは関係ない要素だろう。つまり、例えば株主間の富の分配というのは従来は会計の仕組みの外側でとらえられてきましたし、リスクプロファイルが変わることは直ちには会計上の成果に影響しないというのが会計の基本的な仕組みであるわけです。その観点に立てば、プーリングのロジックを突き詰めたときには持分関係の変化とかリスクプロファイルの変化、あるいは規模の大小という問題は関係のない事象になるだろう。

ただ、そうはいっても、その考え方でいわば次元の異なったプーリングとパーチェスという2つの方法を使い分けるという具体的な基準の話になったときには使い分けの規準がプラクティカルには何か必要でありますので、それは決めざるを得ない。しかし、決めるときに、それを合理的に決める理屈は実は存在しない。だから、それを決めるときには何らかの、ここでの言葉を使えば政策的な判断によって決めるしかないのではないでしょうかということです。ですから最終的な基準設定、基準を決める局面において西川委員がおっしゃるような、例えば規模等を使ったプーリングとパーチェスの使い分けまでを全面的に否定している議論ではないと私は受け取っております。

ほかに御発言はございますでしょうか。

○山田委員

今の論点と絡むと思うのですが、「持分の継続」という概念についてもう少し御説明いただきたいのです。部会長の御説明にもありましたように投資のリスクないし株主間における富の配分は現行の企業会計で直接とらえる枠組みになっていないことは一応理解できるのですが、「持分の継続」という考え方がプーリングでは合併する両当事者間に適用され、パーチェス法でも合併会社には持分の継続があるという御説明が一応あった上で、事業の取得の側面を優先する。すなわち被合併会社の持分の継続を無視する程度ないし範囲をどう考えるかというように次に論を進められているのですが、この「持分の継続」ということと「事業の取得」との関係をもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。

○大日方委員

プーリングとパーチェスという仮定について共通項があるとしたら、そこには争いがないということはよろしいでしょうか。つまり、合併会社については簿価を継承するというのがプーリングとパーチェスの共通項であるわけです。そうすると、争いがあるのは被合併会社についてフェアバリューで評価するか、簿価を引き継ぐかということになります。そのときに被合併会社の資産について事業の取得という形で、その側面を優先させると当然パーチェスになり、それは同時に被合併会社の持分の継続を無視することになるわけです。その程度ないし範囲というのは、いろいろなケースがあったときに無視されていいケースと無視されてはいけないケースがあるのではないか。つまり、常に持分の継続を無視してはいけないというと、逆にプーリングを全面的に強制することになるのですが、そうはいっても実態上は取得が形を変えただけのものもあるのかもしれないわけです。そうすると、無視が許される程度と無視できない程度が恐らく使い分けの量的大きさにある程度ヒントを与えるかもしれないという形で考えております。もちろんどちら側からアプローチするかということにもよるのですけれども、しばしばプーリングを制約するという観点からすると、対等であれば無視するのは大き過ぎるのではないか。だから対等合併のようなものについてはプーリングがいいのではないか。逆に被合併会社の規模がかなり小さければ、それは買い取ったと見ていいのではないかという形で議論されるのですけれども、多分それが一面的なのかもしれないと思われるわけです。

ここではきちんと書いていないのですけれども、事業の取得という形で見るのが正しいというように逆の面からアプローチしたときに通常の投資規模から考えて、年間の設備投資規模と比べてそう大きくはないというのであれば取得だと。ところが、年間の設備投資の規模から考えたら、とてもではないけれども通常の現金支出で賄えるような大きさではなかったということであれば、それは現金買収というか取得以上の何者かが含まれていて、それは株式交換で初めて結合できているとも言えるわけです。つまり、どちら側からアプローチするかで残されるというか、優先されるものと切り捨てられ無視されるものが決まってくるわけですが、その辺はここでは決め手がないということを確認しているわけです。どちらかを優先すると必ずどちらかが切り捨てられてしまうので、必ずしも今あるような使い分け論でプーリングを限定的に考える必然性がないということがここで言いたかったことです。

○山田委員

今の説明の中で私がよく理解できないのは、持分の継続ということをどういうクライテリアないしは規準をもって判定しようとしているのかというところがよく見えないわけです。つまり、合併会社と被合併会社が一緒になりました、そのときに持分が継続するということはどういうことを意味しているのかということです。ですから、合併してしまえば当然、御指摘があるように投資のリスクが変わってきますので全体としてでき上がったもののリスクは変わってしまうわけですけれども、そのときに持分の継続と言える状態というのは何が継続すれば持分の継続と言えるのかというところが大日方先生の御説明の中で私にとっては余りクリアでなかったものですから、そこを知りたかったんです。

○大日方委員

恐らく山田委員のイメージの中では規模規準とか継続性規準のクライテリアと結びついてしまって持分の継続と定義されていると思うのですが、株式交換であれば持分は常に継続しております。

○山田委員

そうしますと、株式交換だと持分は継続しますが、現金だと持分は継続しないということですか。

○大日方委員

そうです。その分、持分を現金に転換して流動化してしまって―― liquidation してしまっているので、それは残余財産を分配されたのと同じですから。ただ、持分を持っている、株式を持っているときは、支配できているわけで、それが従前の持分と交換されているので、それが継続しているという意味です。

○山田委員

もう1点、そうすると現金なのか株式交換なのかというある意味での形式で、余り形式論に陥るつもりはないのですけれども、そこが1つの決め手ということで理解してよろしいですか。

○大日方委員

決め手というのがよくわからないのですが、持分の継続というのは株式を通じてビジネスをコントロールする。間接的に具体的な資産負債を支配するということが持分で、法律上はそこに議決権とか云々がありますけれども、専ら利益の計算という形では経済的な実質に目を向けるとすれば株式という所有を通じてビジネスのコントロール権を持つことが持分であって、それが株式交換であればそのまま包括的に継承されているということです。ただし、現金がなくては株主が売ったのと等しいわけなので、そこは継続しなくなってしまうということです。

だから、アメリカで使い分けの議論になるときに問題になってきたのが、例えば5割くらいを現金で――通常は端数の合併交付金から始まるわけですが、端数だけではなくて半分ぐらい現金で半分は株式でとか、あるいはワラント債プラス株式といったときに、現金を払ったのか持分証券を渡したのかというのがわからなくなってくるので、プーリングとパーチェスをめぐる濫用問題がどんどん出てくるのですけれども、基本的には現金をもらっていれば持分は中断というか終了してしまっていて、持分証券になっていれば継続しているとお考えいただいて結構です。

○斎藤部会長

よろしゅうございますか。繰り返し申し上げますけれども、今の議論は例えばプーリングの理屈それ自体を抽象的に突き詰めるとそういう話になるということを言っているわけであって、通常、会計基準をどうするかという場で議論になるのはそうではなくて、もし仮にプーリングが認められるとすればどういう状況でそれを適用しましょうかという使い分けの規準の話になってまいりますので、そこはワンクッションある。いわば次元が違う議論だということに御注意いただきたいと思います。

ほかに御発言はございますでしょうか。

○黒川委員

今の持分の継続という点はやはりいろいろ考えるところがあると思います。今、大日方先生に集中していて申し訳ないのですけれども、ちょっと考えておかなくてはいけない問題があるものですから1つ。

持分の継続と言った場合にその中身ですけれども、今御回答があったのは資源の喪失の有無というのでしょうか、現金でやっていれば現金を喪失するという観点があるわけです。だから逆に現金で購入しておけば、現金を払うという意味での資源の喪失という側面も逆に現金での買収の場合にはあるわけです。あとは先ほどから言っているリスクと便益の交換というようによく言われている持分と言われているものがあります。もう1つ念頭に置かなくてはいけないのは人格としての持分権者が継続するかどうかです。同じ人が持っているかどうか。

3番目の持分権者の継続というものを我々が持分の継続と呼んだときに頭に浮かべるか浮かべないかというのが結構大きな問題ではないかと思うのですけれども、これについて先ほどから大日方先生がおっしゃっている持分の継続といったときに持分権者、同じ人が交換で取得するのだから、または同じ人格として同じ人が合併の存続会社の方に、例えば吸収合併であれば存続会社の方の株主になりますということを念頭に置かれているのかどうか教えていただけますか。

○大日方委員

非常に難しい問題ですけれども、しばしば持分プーリング法を説明するときには企業の背後にいる株主の行為に還元して議論し、一方でパーチェスの場合には株主というよりは合併会社側の企業が事業を拡大する企業の次元で議論を通す。企業の次元で議論するのと株主に帰着させて議論するというのが合併では常に錯綜してしまって、それが異次元の会計処理を生んでいます。持分の継続といった場合は当然そこに株主を念頭に置いているのですけれども、継続するときには人が入れ替わらないで、これはアメリカ的な発想ですけれども、よく言う後になってから被合併会社株主から自社株買いをしない――そうすると手放したことに等しくなってしまうわけですが、その株券に抽象化されている持分ではなくて同一主体が持分を持ち続けることをインプリシット――そんなに明示的には意識していないと思いますが、インプリシットに意識して継続ということを呼んでいるのではないかと考えております。

○黒川委員

その議論はあります。そのときに今度は、問題は持分の継続の本質を喪失すると人としての人格の承継、同一人物が同じ株式を持っているのが重要な要件だということですけれども、そうだとしますとパーチェスと持分プーリングの同じ状況と先ほど御説明があった取得側の会社の持分は本当に継続しているのか。そうすると、取得側の会社の株主は売買できないのか。要するに、市場において同じ人物がずっと持っているわけではないわけです。常に入れ替わっているわけです。要するに会社からすれば確かに株券は発行されていますけれども、取得している・投資している株主の観点が今出てきましたので言いますと、投資している株主は市場において売買で入れ替わっているわけであります。ですから、パーチェスであろうと持分プーリングであろうと、持分が継続していると称される会社の持分の中の人格が常に同じである保証は全然ない。そういう問題があるので、通常は持分権者の継続を念頭に置いてしまうのですけれども、今の論拠があるものですから大変難しくなるというか、矛盾してしまう点があります。

○斎藤部会長

御質問がわからないのですけれども、持分の継続というときに持分権者が変わらないということをイメージすることはないと思います。黒川先生がおっしゃるように会社の株主は年中かわっているわけですけれども、株主が変わっているからといって別に持分が継続していないとは誰も考えないわけでありまして、株主の変動というのは持分の継続という議論とは関係がない話ではないかと思われますけれども。

○黒川委員

私も同感です。それを今言ったわけです。

○斎藤部会長

そうすると、御質問のポイントはどういうことでしょうか。

○黒川委員

先ほど大日方先生が被合併会社の持分の継続という問題について、その要件は何であったのだろうかということを私は質問して、それに対して同じ持分権者が継続して持っているということをインプリシットだけれども念頭に置かれていると私の耳には聞こえたものですから、今のことを話したわけです。

○斎藤部会長

もしかしたら回答の際に誤解があったのではないかと思いますので、大日方委員にもう一遍回答していただきたいと思います。

○大日方委員

合併に際して持分権者が入れ替わることが起きるのか起きないのかというのは私はよくわからないのですが、合併は持分権者が入れ替わらないと私は思っています。つまり合併の場面で何が起きているかという議論ですから、私は持分権者が一定だということを念頭に置いているのですけれども、黒川先生の論理はかなり飛躍されていると思うのですけれども、持分が継続しているときに評価替えしないということは継続しなかったらば評価替えしていいということを必ずしも意味しておりませんから、それは別の論理によって評価替えしないこともあるわけです。ですから、合併のときには合併という行為によって持分権者は入れ替わってしまうのかといったときに、私は入れ替わらないだろうというつもりでお答えをしているわけです。

通常の場合は当然、流通しているのですから入れ替わるわけですが、それは当然に会計とは基本的に余り関係のないことなので。ですから、斎藤先生がおっしゃっているのはまた違う意味だと思いますけれども、合併のときに入れ替わるか入れ替わらないか、入れ替わることを前提にするという状況が私はよくわからないのですけれども。

○黒川委員

私は入れ替わることを前提とは言っていません。要するに、先ほどから存続会社あるいは取得会社と一応ひとまず称されている方では持分権者の継続はないわけですね。それは斎藤先生と全く同感です。先ほどから合併のときの持分の継続はどういう意味だったのだろうかという御質問がいろいろあり、持分権者の合併における継続を重視するかどうかという点が論点としてあったので、御質問したということです。

○斎藤部会長

御回答はありますか。

○大日方委員

持分の継続といったときにこれは別に合併だけに限らない話で、そのときに必ずしも株主に還元しないで相変わらず企業単位で見たままで持分の継続を言う。つまり、その間に株主が入れかわっても全然構わない。例えば同一種類資産を同一用途に使っているような場合の交換というのはずっと継続している――だから、そこに評価替えは起こらないと言っているときには、そこで言う持分の継続というのはある意味でかなりジェネラルな概念ですけれども、それは株主の入れ替わりを許した上での――かなり抽象化されてしまっていますけれども、持分とその支配下にあるビジネスが変わらないという意味で、――合併の場合にはたまたま株主は入れ替わるというよりは同じ人が引き換えに持つので――ジェネラルな言い方をさせていただくと持分の継続のときにはかわっても構わないということです。

○黒川委員

その辺は大変難しいところなのです。ただ、先ほどから大日方先生もおっしゃったように自己株式を認めてしまったら同じだということにも関係するのですけれども、要するに自己株式の取引は少しずれますよね。ですから合併の瞬間ではなくて、ある一定期間の前後、それも「エイヤッ」と決めるのでしょうけれども、例えば1年間とか1カ月とか、その前後においては少なくとも被合併会社、吸収されている方の株主は持分を継続して売ってはいけない、ほかの人にも売ってはいけないというようなこともあり得ることはあり得る。要するに持分プーリングが許される状況というのは、合併のときには普通のほかの状況で持分の継続と言っている言葉とは違って、合併のときには特に持分権者の継続、ずっと持っていることを要件にして持分プーリングを定義するということもあるわけです。そうすると具体的に規準として、例えばある一定期間の株式の売却制限条項みたいなものを付して、付した場合には論理的に持分プーリングと認めることにもなろうかということを私は念頭に置いて発言したわけです。

○大日方委員

それが論点になるということは承知しております。

○斎藤部会長

ほかに御発言はございますでしょうか。

○中島委員

少し教えていただきたいのですけれども、「減損処理にあたって、のれんを優先的に切り下げるのは、通常の償却をしない処理と整合的であるのかなど、さらに難しい問題がある」とのことですが、これは減損処理に当たってのれんを配分した資産グループについて減損が出てきたときに、のれんをまず優先的に切り下げるというのはのれんの資産性とか何かについてやや疑問があると考えていることと、のれんを償却しないでバランスシートに載せておくことは矛盾しているのではないかという趣旨と理解してよろしいでしょうか。

○大日方委員

おっしゃるとおりです。つまり優先順位が一番疑わしい部分というか、減損に当たってはあっては困る部分から切り下げるという発想に多分立っていると思うのですが、そういうことであればできるだけ早目に償却した方がいいという発想になるのが何となく私では普通の感じで、従来の普通の償却をしているという状況でのれんを先に減損させるところまでだったらわかりやすかったんです。減損の方はそれでよかったのですが、今度は合併の方で、そちらが変わってしまったときに違和感が多少残っているということです。

○中島委員

ありがとうございました。

○斎藤部会長

ほかに御発言はないでしょうか。

私から余計なことを言う必要もないのですけれども、合併におけるのれんの非償却という議論をするときには、本来は連結のれんの償却問題との関係をきちんと考えなければいけないと思うんです。つまり、合併のれんを償却しなくていいのだったら連結のれんも償却しないということになりかねないわけでありますけれども、そもそも連結とは何かというと、基本的には投資勘定を投資先のバランスシートに入れ換えるということでありますので、その場合に出てくる差額が連結のれんです。それは連結の本質である投資勘定を投資先の簿価に入れ換える作業の邪魔になるから償却しているわけでありまして、それを償却しないということは連結の持っている仕組みそのものの根幹に触れる議論になってくる可能性があるのです。本来はそれとの関わりで合併のれんの償却・非償却ということも議論しなければいけないわけでありますけれども、当面のFASBの議論では差し当たって合併のれんだけの話がされているような印象もあるということで、そこは本当はもっと深く考えなければいけない議論だと私は思っています。

ほかに御発言はないでしょうか。

○黒川委員

今のところは大変興味深く先生の御説を伺ったのですけれども、もう少し教えていただけますか。

要するに連結のれんのところ、特に連結調整勘定という買い入れのれんの部分の理解ですけれども、その場合に一応は連結グループ外から連結グループ全体として買ったというような理解はできないのですか。例えば現金で買ってしまったときに外部の人には多目に払ってしまったという、それを連結グループ全体で持っているという理解と先生の今おっしゃったことは矛盾しますか。

○斎藤部会長

必ずしも矛盾はしないと思います。

○黒川委員

そうすると、何も非償却を擁護するつもりはないのですけれども、その連結グループ全体として連結外から買ったときののれんの中身がそのときにたまたま減価しない、あるいは償却になじまないということであれば、貸借対照表上にずっと載っているという論拠もあり得ることでしょうか。

○斎藤部会長

それは無形資産を買ったと考えた方がいいと思います。のれんではないと思います。のれんというのは基本的に投資勘定と投資先のいわば資本勘定との差額ですね。それはなぜ償却するかという仕組みの話からすれば、基本的には投資勘定を投資先の簿価に入れ換える邪魔になっているだけですね。それは最終的に消さないと、連結が投資先の簿価で投資を評価するという仕組みにならない。

○黒川委員

そうすると、のれんの中身を識別していって無形資産と称せられるものが識別できて、それを選り分けて、その分は識別した。さらに、それでも識別できなかったものを先生はおっしゃっていると理解してよろしいのですか。

○斎藤部会長

基本的にはそういうことです。

それでは、御意見はまだいろいろ残っていると思いますけれども、後ほどの意見交換の場に譲っていただきたいと思います。

次に、お手元の資料についてでありますけれども、これは論点整理に向けての全くのたたき台として本日の審議用に事務局に準備を依頼したものであります。論点整理にはこれからの議論も反映させる必要がございますし、資料自体の構成として見たときも未整理な部分が残っております点をあらかじめ申し上げておきます。このたたき台につきまして事務局から簡単に御説明をお願いいたします。

○辻前企業会計専門官

それでは、お手元の資料を御覧ください。これは最初に書いておりますように討議用に作成したものでございまして、論点整理そのものではないという点に御注意いただきたいと思います。基本的に前回お出しいたしました資料をつくり直したものでございます。

最初の1.検討の経緯ですが、ここについては特に説明することはございません。

2.企業結合の会計についてもできておりませんが、基本的には用語の説明なども含めまして企業会計自体についてある程度体系的に説明して、その基本的な論点をここで整理してはいかがかと考えております。

3.基本的な論点と検討の方向は、皆様からいただきました御意見のうち会計基準に直接関係すると思われるものを過去の議事録から抜粋して、さらにグループ化した上で整理したものでございます。基本的に似たような御意見は1つで代表することにいたしまして組み合わせて、なるべく1行におさめようと工夫いたしましたので、御発言の趣旨と多少ずれているとお感じになられる点もあろうかと思います。また、言葉遣いも全体を見まして修正を入れておりますので、元の御発言と多少変わってきているかと思います。極力いろいろな意見を取り上げるという観点から作成いたしましたので、これから重複を避けるための整理とか用語の整理が必要になってくるであろうと考えております。

個別に今読み上げていく時間はございませんので、大きな項目のみざっと説明いたします。

3.(1)がわが国の現状と国際的調和ということでして、御意見を数多くいただいたところで大きなテーマであろうと考えましたので、ここに配置しております。

次に、2ページ目の(2)法的形式と経済的実態というテーマです。これも基本的な考え方をどうするかという点でしたので、ここに配置しております。

次に、(3)利用者のニーズと会計処理方法です。利用者の方からもヒアリングを行ったのですが、御意見の内容は非常に幅が広かったととっておりまして、特に会計処理方法を会計基準として選定するとか選択するという観点から直接関係するであろうと思われるような発言をここに並べております。

次に、3ページ目の(4)会計処理方法の整備です。ここは今も御議論になりましたが、例えばパーチェス法や持分プーリング法をどのように選択していくかという点について特に関係する御意見をここに整理しているような形になっております。

次の(5)企業結合に該当しない結合取引の検討方針はまだ用語等を整理しておりませんので、仮にこういう名前でもって御発言を整理しているような形になります。

(6)連結財務諸表と個別財務諸表につきましてもいろいろ御意見をいただいておりますので、こういう形で項目を出しております。

次の(7)コストとベネフィットですけれども、こういったような御発言もありましたので、ここに入れております。

(8)その他でございますけれども、ここまでの(1)から(7)に比べると実務寄りというか具体的な論点ととりましたので、ここにある程度まとめて記載するような形になっております。

<取得と持分の結合の識別基準>についての御発言とか<パーチェス法における取得の対価>をどうするかという御意見、<パーチェス法における資産負債の評価>をどうするかに関係する御意見、次の<のれんの会計>をどう考えるかということに関する御意見、<無形資産の認識>に関する御意見、<リステート(修正再表示)>に関する御意見、<具体的な開示検討項目>としてどういうものが考えられるかという点についての御意見。

それから、4.その他の論点として会計基準本体でカバーするような内容ではないと考えられるものについても御意見をいただいておりますので、ここにその他ということで、(1)は企業結合の財務諸表本体に限られない開示、(2)で商法との関係をどう考えるかについての御意見、税務上の取扱いとの関係をどう考えるかに関する御意見、(4)に個別財務諸表の開示についても御意見がございましたので最後に付け足しているという形になっております。

非常に駆け足でございますけれども、これまで皆様からいただいた御意見の要約ですので余り説明しなくてもおわかりいただけるのではないかと思いまして、簡単な説明のみにいたしました。よろしくお願いします。

○斎藤部会長

御説明、大変ありがとうございました。

残りの時間につきましては特にどの問題からという順番を設けるつもりはありませんので、どこからでも結構でございますし、またどなたからでも結構ですので御自由に御発言ください。

なお、本日は論点整理の議論の初回でもありますので、特に確認したい点や重要と思われる事項についてどうか忌憚のない御意見を承りたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○山田委員

本日のこの資料の性格というか、個別論点ではなくて今後の方向についてお聞きしたいと思います。これは今回冒頭にありましたように論点整理ではなくて発言を整理したものだということで御提示いただいているのですが、今後はこれをベースに何らかの方向性ないしは両論併記的な形の論点整理に進んでいくのかどうか。特にその他の論点の中で、必ずしも企業結合と直接結びつけなくてもいいようなものも一部どこかにあるような感じが私にはしているのですけれども、その辺まで含めたような広い問題提起の論点整理をされるのかという方向性について最初にお聞きしたいと思いました。

○辻前企業会計専門官

まだ整理が進んでいる段階でないので、項目の中身とか位置についてはこれからも検討していきたいと考えております。御意見につきまして両論があるものにつきまして極力両論を併記するような形で考えておりますけれども、皆さん余り御異存がないような点もあるようにお見受けいたしましたので、その点については部会の意見という形にするかどうか、そのあたりも含めて今後御議論いただきたいと考えております。

○山田委員

論点整理というときに、私は例えば最初の国際的調和ということについても――多分これ以外にも意見があるような感じもするのですけれども、それは逆に言うと今日ここでこれをベースに発言させていただければ論点整理の中に含めていただけるという理解でよろしゅうございますか。

○辻前企業会計専門官

これは要約でつくっておりますので、基本的にこれまでに御発言いただいた内容は織り込んでいこうと考えております。ただ、半年前に言った意見と今の意見は違っているとか、今はこう考えるという点があるのだったらなるべく言っていただきたいと考えております。

○山田委員

そうすると今日さし当たりしなければいけないことは、これが過去の発言の累積として妥当かどうかについて意見を述べればいいということですか。つまり、どういう論点で今日これについてこれから議論したらいいのかが私には明確でなかったのでお聞きしたということです。

○辻前企業会計専門官

過去の代表的な御意見という形で書いておりますので、これについてコメントがあるということでしたらこの場で言っていただきたいと思います。過去の御報告につきましてもレジュメは用意しておりますので、今から確認したいという点がございましたら聞いていただいても構わないと考えております。

○斎藤部会長

これは論点整理のたたき台でありまして、いわば論点になりそうなことを一応掲げてあるわけです。ですから、論点についての御意見というのはもちろんこれからいろいろ承っていくわけでありまして、さし当たって今日はこういう論点の設定の仕方で重大な誤解あるいは欠落している部分がないかということを中心に御指摘いただければ大変助かります。

○伊藤委員

私も山田委員と似たようなところが若干あるのですけれども、確かに最後の方の個別財務諸表の開示、それから途中でも出てきます連結財務諸表と個別財務諸表の関係についてお話をいろいろ――確かに御出席のアナリストの方々から個別財務諸表についての開示がもっと欲しいという要望がこれに織り込まれたのかなという感じがするのですけれども、これは企業会計審議会の方向としては、つまり個別財務諸表は今後も連結経営上において極めて重要視し、その開示をもっと明確にしていこうという方向づけの中での論点整理だと考えてよろしいんですか。たまたまそういう発言があったのを記載しているのか、それをお伺いしたい。

○辻前企業会計専門官

確かにおっしゃるとおり異質なのでここに置きまして、最終的に書くかどうかもこれから検討しないといけないとは考えております。これについては反対の御意見があるように伺っておりまして、審議会の方向性としては委員個人の方がおっしゃったことをそのままストレートに採用するわけにもまいりませんので、そのあたりはこれから考えていかないといけないと思っております。そういう点についても御意見をいただきたいところでございます。

○伊藤委員

経団連でよく検討してみたいと思いますけれども、恐らく財界サイドの動きとしては連結を重視していただきたいという要望が非常に強いと思います。これは要望ですけれども、以上を申し上げて、よく検討した上でまた次回にでも御意見させていただきたいと思います。

○中島委員

確かにアナリストの方からこういう意見が出たのは事実で、アナリストの方からすればできるだけ豊富な情報を提供してほしいというのはよくわかるのですけれども、これはやはり制度開示の問題で、何をどの程度出すかというのはコストなども考えて決めるべき話だと思います。2~3年前に連結の問題を議論したときにこれからは連結主体でいきましょう、そのためには連結の情報はできるだけ充実強化するけれども、個別の情報はできるだけ簡素化していきましょうというのが企業会計審議会としての1つの方向性だったのではないかと思います。私ももちろん例えば経営者の討議と分析でもっと企業側が率直に経営の戦略とかを述べた方がいいとか、制度開示以外の場でもっと積極的に情報を提供した方がいいということはあると思いますけれども、やはり制度開示としての問題として考えると、そこに自ずから1つの限界というのですか、仕切りがあるのではないかと思います。

もう1つ申し上げておきたいのは、連結中心にということでやったときにセグメント情報の方はかなり充実強化しているのです。やはり国際的な流れとか何かは連結とセグメントで考えるという方向ではないかと思いますので、私もここにこれが入っているのはやや違和感を覚えるんです。

○斎藤部会長

ありがとうございました。これは論点整理の第1回の資料でありますので、やや広目に網を打っているということでありまして、いろいろ御意見を承って、必要ないところはカットするなり修正するなりという作業がこれから進められていくと考えております。今の伊藤委員、中島委員の御意見は出るべくして出てきた御意見だと私も承ったということです。

ほかに御発言はないでしょうか。

○西川委員

その他の論点の位置づけとしては固定資産のときにあったかと思うのですけれども、今後は論点整理以降は議論しない部分であるという位置づけと考えてよろしいのですか。論点ではあるけれども、要するに企業結合の会計処理そのものの話ではないから第一部会の中で議論することではないと提示するという位置づけになるんでしょうか。

○辻前企業会計専門官

その辺も御意見をいただきたいところではあるのですけれども、基本的には会計基準の審議を進めて、ここまでの論点が非常にたくさんある中でその他をやっているような時間は恐らくないのではないだろうかと考えております。

○斎藤部会長

ほかに御発言はございますか。

○山田委員

1.(1)に絡んで1つ申し上げたいというか、お願いに近いのですけれども、今は御存知のように国際的に国際会計基準委員会を含め企業結合の問題を今後見直していこうということが取り上げられるテーマの1つに実はなっております。

その中で2ページの「☆2.」にもありますように「国際的な調和も重要ではあるが、海外とわが国では法制度、商慣習や考え方に違いがあるため、わが国の実態を反映する会計基準を整備する必要がある。」という御指摘があることも私は十分わかっておりますが、逆に言いますと、我が国の法制度、商慣習が非常に特殊であればもちろん違って構わないのですけれども、その中からある種の普遍的なものがあるのであれば、むしろ国際的な基準設定のプロセスの中でぜひこの企業会計審議会からそれなりの提言をしていただくような形でできれば対応いただけないか。これはお願いでございますけれども、そういう中で国際的な基準の検討の中に我が国の視点なりを埋め込んでいただくような体制でぜひ臨んでいただきたい。お願いでございます。

○斎藤部会長

それはよろしゅうございますね。

○伊藤委員

それに対して私も関連したお話ですけれども、ぜひそういうことは進めていただければ大変ありがたい。

ただ、私はやはり日本の力と申しますか、国際的な場における日本の発言力ということを具体的な実行面においてやらなければいけないので、その場合に進め方については単に発信だけではまずいわけです。発信し、かつそれが成果を上げられるような方向も含めて検討しなくてはいけないのではないか。それにはどういうようなアライアンスと申しますか、国際的なアライアンスを組みつつ、我々の意見の成果を実際に上げさせるかということは別途また考えなければいけないと思うんです。単に企業会計審議会だけで決めて、それを言ったら彼らが納得できるかどうかとは違うのではないかと思いますので、政府あるいは民間ベースを含め、みんながその方向に向いていくような形に持っていかないといけないのではないかと思います。

○斎藤部会長

ありがとうございました。ほかに御発言はないでしょうか。

○辻山委員

本日の大日方委員の論点整理とも関わるところですが、2点質問させていただきたいと思います。

1つは確認の意味ですけれども、冒頭で部会長がパーチェスとプーリングの共通点から出発しているところに大日方委員の報告の非常に特徴があるということを指摘されたわけです。その共通点とは何かというと詰まるところ企業結合会計においても取得原価主義会計といいますか、そういう枠組みが一面では堅持されているのかなという感じがします。パーチェスとプーリングには共通点がある、それに対してフレッシュ・スタートはそれとは違うフレームワークだという理解をしています。

そうしますと、このフレッシュ・スタートという考え方は今後もし国際的な調和の上で出てくるとすると日本の企業会計審議会なり基準設定主体において企業結合を考える場合のベースにある考え方と、かなり違ってきて、今後その違いが完全に出発点から違うという整理になっていくのかいかないのか。フレッシュ・スタート法が国際的に基準設定の中でもし出てきた場合に対応をどうするのかというのが第1点目の質問です。

第2点目はそれとも少し関係しているのですけれども、基本的な考え方というのはあくまでも取得原価、買ったものを買った値段で評価していくということですと、例えば自己創設のれんというのはパーチェスの場合に出てきたときには無形のものを買ったものであろう。そういう考え方でいくと、これは資産にあげておいて、それを年々償却していって利益は小さくなっていくという考え方になるのかなと思うのですけれども、ここに3つの考え方が併記されているんです。これは現段階では併記という理解でよろしいのか、それともある考え方をとった場合には当然そこに収束していくであろうということなのかどうか。2点お聞きします。

○斎藤部会長

大日方委員が回答できるとしたら大日方委員の御報告の中でどういう展望を持ってこの話をされたかという主観的な意図を伺うしかないのですけれども、さし当たってそれでいいですか。

○辻山委員

構いません。

それから、できれば基本的な考え方、ベースにある考え方が例えばフレッシュ・スタート法みたいなものが出てきた場合に、現在世界的にも問題になっていますフェアバリューで逐次再評価していく、あるいは機会費用を会計情報自体が開示していく方向と、この企業会計審議会が今後企業結合の会計について整理しようとしているのがかなり違ってくるという感じを持ってしまうのですけれども、この辺について部会長はどのようにお考えなのか。

○斎藤部会長

まず大日方委員、どうぞ。

○大日方委員

のれんの処理については、論点2におきましては何の制約条件も与えないとしたときに考えられる方法、あるいは従来言われてきた方法を単純に並べてあります。論点整理の次元になったときにもこれらを並列的に残しておいて、改めてその他の部分との整合性を問うという作業をした方がいいのではないかという考えです。つまり、明らかにおかしなものも含まれてはいるのですけれども、これを最初から隠してしまうと結論ありきという感じがするので、あえて考えられる方法を一通り列挙してあります。

それと、これは私が答えるのか斎藤先生がお答えになるのかわかりませんが、私の報告では、特に取得原価主義会計という形ではよんでいないのですけれども、今までやってきている会計という形で言い回しているんです。それはどうしてかというと、確かに辻山先生が御指摘のとおりフレッシュ・スタート法が取得原価主義会計から離脱してしまうかもしれないという危険はあるのです。しかし、そう言ってしまうと、はなから門前払いというか、それもまた結論ありきみたいな感じがするのです。つまり論理整合性という形で言うと説明できない形になっておりまして、規定をつくるときに果たして学術的な意味での総称としての取得原価主義、あるいはその枠というイメージがパブリックコメントに付したときに一般にうまく伝わるかどうかということに対して多少の疑問を持っているので、これまでやってきたことと矛盾するかしないかという表現にとどめております。

○辻山委員

どうもありがとうございました。

○斎藤部会長

大変一般的な御議論ですけれども、フェアバリューについては金融商品の領域では十分定着している概念ですから今議論する必要はなくて、辻山委員の御質問は多分、事業用の資産についてのフェアバリュー評価という流れがもし強まったときにそれをどう考えるのかという御質問と理解していいですね。

○辻山委員

はい。

○斎藤部会長

その議論は実は昔からないわけではないんです。例えばイギリスの会社法のように事業用の資産について再評価を認めてきた制度もあるわけです。もちろん再評価益を利益とはみていないわけでありますけれども、ストックの評価という局面に限定すればフェアバリューによる事業用資産の評価という考え方は世界の片隅にはずっとあって、それが決して最近特に広がっているわけではないのです。一部でいろいろな議論がありますけれども、決してそれが制度的な動向として広がっているわけではない。もちろん議論がありますから今後どうなるか全くわからないですけれども、その議論が出てきたときにどうするかというのはこの段階では非常に答えにくいですね。理屈の上でそれに対する反論を出すことは容易でありますけれども、そもそもそういう理屈の問題として出てきているかどうかは疑わしい面がありますので、それは答えにくいというのが第1点です。

もう1点、機会費用という話をされたわけでありますけれども、機会費用とは例えば資本のコストとか、あるいは金融商品について言えば現時点でもし売っていれば幾らの利益が得られたはずだというのが一種の機会費用だと思うのです。企業会計というのは機会費用を計算することはないのです。むしろ実績を測定して、それを機会費用に照らして評価するのが企業会計の役割であります。ですから、しばしば一部の方が企業会計は機会費用を無視しているという批判をするのですけれども、それは間違いでありまして、実績をとらえてそれを機会費用に照らして評価するという仕組みが企業会計であります。ですから、資本のコストに対して自己資本に対する利益ないしは利益率をとらえて、それを評価するという仕組みを持っているわけであります。

金融商品については時価評価した時価の変動分がある意味で機会費用でもあるのですけれども、同時にそれが実績、事実としてのキャッシュ・フローと見られるからこそ時価評価をしているわけであって、それは決して金融商品の会計基準が機会費用による評価を取り入れたのではないということはよく注意する必要があると思うんです。学会の一部に機会費用が会計上の評価に取り入れられているとか取り入れられるべきという議論はありますけれども、それは私は正しくないと思っております。ただ、これも国際的な基準がどうなるかというのは見当がつきませんし、国際的な基準が必ずしもロジカルな整合性を持って出てくるわけではありませんので、おかしなものが出てきたときにどうするかと言われても現時点ではお答えのしようがないというのが私のお答えでございます。

○辻山委員

おっしゃるとおりだと思うのですけれども、そういう議論がこれまで世界の片隅であって、しかし広がっていないということですが、G4+1から出ているフィナンシャルレポーティングでは明確に従来の取得原価主義とかリアライゼーション・マッチング・インカムが否定されています。G4+1の位置づけはわかりませんけれども、もしG4+1がIASCあるいはIASBと密接に連携していくとすると、これは少数意見というよりもむしろマジョリティになっていく。それに対して日本流あるいはアメリカのFASB流の考え方が――その辺が世界的調和を考えていく場合にロジカルな面ではかなり重要な面になってくるという感じがしたものですから、そういう御質問をしたわけです。

○斎藤部会長

そういう流れがあることは私ももちろん承知しておりますが、さし当たってG4+1というのはインフォーマルな組織でありますので、実際にIASBでどういう議論がこれから出てくるのかということを見なければきちんとした議論はできないだろうと思います。そういった意味で今のような議論が出てきた場合については、むしろIASBないしはIASCに出ておられるような方々の御奮闘を御期待申し上げると言うしかないと思います。

○安藤委員

私も変な動きがあって非常に不安を感じているのですけれども、辻山委員が今言われた延長線で話しますと、IAS40号の投資不動産も金融商品以外で初めて時価をやって、最終的には時価と原価の両方、オプションを認める格好になったのですけれども、やはり私も不安を感じます。その点では辻山委員と同じような危機感を持っているのですけれども、これは私の意見です。

○斎藤部会長

よく理解できます。ただ、考えようによっては投資不動産というのは国際基準の概念は非常に広いのですけれども、ぎりぎりと理屈を詰めていけば例えば日本でかつてバブルの時代に土地投機というものがありました。その土地は事業用に使うものでも何でもなくて、単なる投機で持っている。これは実態は金融投資と同じことでありまして、そういうものについて金融投資と首尾一貫した評価の方法がとられることは十分あり得ることで、もしかしたら安藤委員の基本的なお考えと矛盾しないかもしれないのです。ただ、今の問題はそのアイデアが出てくると途端に本来の論拠になってきた基本的な概念から離れて、投資不動産という言葉がひとり歩きをして適当に広がってしまう。その基準設定の過程での非論理性といいますか、無原則性という点の方がむしろ危惧すべき対象ではないかと私は思っております。

ほかに御発言はないでしょうか。

○山田委員

先ほど振られたような感じがしますので、発言させていただきたいと思います。

1つはG4+1は非公式な組織でございますが、一応、解散いたしました。ただ、そこに出ていたカナダの方とかアメリカの方が実質的にIASBのボードに今度入られましたので、逆に言いますと所を変えてIASBで議論が続くことはほぼ間違いないところだと考えております。したがいまして、ある意味では安藤先生の御不安はそんなに外れていない可能性があるとは言えます。

ただ、先ほど伊藤委員からもございましたが、そこで展開されていますいろいろな論理について意見を述べると同時に、それを説得できる論理を我々がどう持ち得て、しかも伊藤委員の御指摘は非常に厳しかったのですが、有効に成果を上げられるかどうかということまでいきますと、これは私一人ということではなくて、新しくできる日本の設定主体とか、日本公認会計士協会、学会等がそれなりの立場でそれなりの検討をして意見を述べていく体制がなければ、その辺は難しいかなと。私は責任を回避するつもりは全くございませんが、日本全体で対応が必要なことを一言だけ言わせていただきます。

○伊藤委員

つまり、企業会計審議会あるいは今後の企業会計主体もそうですが、ここでの議論とか結論を世界に発信していくとすれば、今度は民間主体がプライベートで出したということではなくて本当に日本全体の意向を踏まえ、それを通すということでいかないと私は非常に難しいと思います。特に日本のそういう風土を踏まえての議論をするのであれば、それなりの対応をやらないと結局それは単なるローカルな意見ということになってしまうのではないかと思うということを申し上げておいて、そういう点では今日は御当局もいらっしゃるので、国もそういう点をバックアップしていただかないといけないのではないかということを老婆心ながら申し上げました。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

○神田部会長代理

御質問のような形で一、二コメントさせていただきたいのですけれども、1つは2ページ目にあります法的形式と経済的実態ということで、ここで出された御意見は法的形式よりも取引の経済実態の方を重視すべきではないかという御意見で、私も個人的には全く賛成ですけれども、ここで言います企業結合、結合かそうでないかを経済実態に基づいて識別、区別する基準はどういうものだというお考えだったのかを確認させていただきたいと思います。と申しますのは、ある基準で経済実態に基づいて結合であると決まっても、なおその結合について今度はパーチェスかプーリングかが問題になるということだと私は理解していますので、結合なのかそうでないものかは何を基準に決めるのか。

今日の最初の方の御議論に関連するのですけれども、経済実態でどういう場合が結合で、どういう場合が売却というときに、先ほど持分の継続性というお話がありましたけれども、パーチェスかプーリングかのときにもその規準はあるのかもしれませんが、普通は常識的に考えますと法律家は対価と言っていますけれども、合併する場合であれば対価として株を渡すのか現金を渡すのかというと、現金を渡すと買ったような気がする、結合していない気がするのですけれども、対価として株を渡すと結合している気がする。それは持分の継続という御議論が先ほどありまして、私も実は税の方でこれを散々議論しまして、黒川先生が御指摘になったような持分権者そのものが存続するかどうか。

日本の考え方は釈迦に説法で恐縮ですけれども、税の場合、合併ならその時点で継続あるいは翌日売ってもいいということですけれども、アメリカは合併の場合は翌日売ってもいいけれども、分割の場合は2年間持っていなければいけない。対価として受け取った部分だけで、ほかの株主は翌日すぐ売ってもいいのですが、日本の考え方は翌日売ってもいいけれども、瞬間持っていれば継続であるという考え方をとりました。ただし、事前に売却が予定されている場合はダメ。翌日売ることがわかっていて、それで株を渡したという場合はダメ。簡単に言うと大体そういうふうに整理してきたわけですけれども、そこでも税の観点の方で言えば課税の繰り延べを認めるのか、その時点で税金を払って課税所得を認識するのかということだったんです。

話を戻しますと、結合かどうかを考えるときの対価というか持分の継続性が重要なのか、あるいは最初に出ていましたけれども、大きさというのでしょうか、100の規模の会社と100の規模の会社が一緒になると結合だと。しかし、100の規模の会社が1の規模の会社と一緒になるのは対価として株を渡していても買っているということなのか。抽象的には経済実態というのは非常にそうだと思うのですけれども、会計の見地から見た場合に何を規準に結合とそうでないものをお分けになるのかということをもう少し示していただいた方が少なくとも意見照会するにはわかりやすいように思います。それが第1点目です。

第2点目はその他のところで、私も商法専門ですからちょっとだけ発言させていただきたいのですけれども、その他はやる時間がないだろうということで安心ですが、商法や税法のことが書いてあるんです。

企業会計審議会のスタンスとしては税務上のところに書いてあるとおり「企業会計については企業実態の適切な開示のスタンスからの検討が必要」というのは誠にそのとおりで、ぜひそのようにしていただきたいと思います。それは言葉を変えて言うと、税法がどのような考えに立つにせよ、また商法がどのような考えに立つにせよ、同じ所得とか利益という概念を基礎にしているわけですから、企業会計は企業会計のスタンスから全くばらばらになることは考えられない。今まではくっつき過ぎていたということではないかと思いますので、企業会計は企業会計のスタンスでということでいいと思うのですけれども、商法だけで申しますと、その上の行に「商法は基本的に会計処理に関しては会計慣行にゆだねるべきではないかという意見もある。」とあります。私も基本的にはそういう感じですが、商法は会計処理について2つあります。開示という面もあるのですけれども、配当規制という面もありますので、開示の目的は企業会計と同じですのでいいと思うのですけれども、ここでの御意見あるいは配当規制の方も会計慣行にゆだねて計算された結果に基づいて配当規制をするのがいいかという意味まで含んでいるとしますと異論があり得るところだと思いますので、意見照会するときには少なくともその辺が明らかになるような形でしていただければと思います。

○斎藤部会長

ありがとうございました。前者の取引の経済的実態というときの意味ないし基準について事務局の方で何か御発言はございますか。

○辻前企業会計専門官

論点整理の段階では当然この用語はどういう意味で使っているかを説明しないとわからないということになるので、企業結合の定義をどうするかもいずれ御議論いただかないといけないのです。ただ、これまでの議論ですとIASとか米国の基準で言っているようなものを最大公約数的にとらえて議論していただいたような形になっておりますので、論点整理の段階では余り細かく決め切らないといいますか、それは会計基準を決めるときに決めればよいのではないかとは考えておりますけれども、説明のために必要な部分は当然書くべきだろうと思っております。

神田先生がおっしゃられた商法に関する御意見ですが、多分おっしゃった方は開示の部分が主たる意見であったのではないだろうかと考えておりますので、そのあたりは文章にするならば注意したいと考えております。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

神田先生の御指摘の第2の点、開示の問題と商法の配当規制の問題はもともとロジックが別であります。中には会計上のルールで配当の問題も考えるべきだとおっしゃる方がいるかもしれませんけれども、それは無茶な話だと私は思います。ですから、恐らくここで議論するときには開示の観点に限った話をせざるを得ないと私は思っております。

ほかに御発言はございますでしょうか。

○山田委員

(2)法的形式と経済的実態に関してですが、先ほど斎藤先生からも御指摘があった連結手続と、ここで言っている合併とか株式交換・移転と企業結合というときに対象として考えるのは連結における子会社の取得といったような既に連結原則でカバーされている部分は基本的には今回ここでの検討の対象に入らないという理解でよろしゅうございましょうか。

○斎藤部会長

それはこの審議会の御意見によると思うのですが、今の段階で私がそういうことを言うことが適切かどうかわかりませんが、連結のケースでは既にでき上がっている会計基準はパーチェスです。ですから、それで問題ないケースだと思うのです。もしそれでいいとしますとそれ以上議論してもしようがないと思いますが、そうではなくてそこも含めて議論すべきだという委員の方々の御意見であれば当然議論せざるを得ないと思っております。

○辻前企業会計専門官

これまでお話をお伺いしてきた限りでは今の連結財務諸表原則がおかしいという御意見は余りなかったように思いますので、連結財務諸表原則については特にこの資料の中でも対象という考え方ではつくっておりません。

○山田委員

私が気になりましたのは先ほど斎藤先生が御指摘されたように、いわゆる連結調整勘定の償却という問題とのれんの償却という問題は議論するのであれば同じ俎上で議論すべきなのかすべきではないのかを含めて関連が出てくるのではないかいうことで、その1点については現行の連結と同じ取扱い、連結原則と同じであれば必要ないのかもしれませんが、そこだけは少し関連があるかなということでお聞きしました。

○斎藤部会長

もちろん仮に企業結合の会計基準でのれんの処理が現在の連結基準と違ってくるということになれば、その時点で連結基準の再検討は必要になるかもしれないと思います。

○小宮山委員

今の点ですけれども、恐らくどこか直す点が出てくるだろうと思うのです。確かにパーチェスをとっているという意味では余り直さなくていいかなというところがあるのですが、連結の基準自体が非常に手続的にでき過ぎているのです。余り実質的なことを書いていないという部分がございまして、やっていくと連結の基準に書いていないという問題が出てくる。例えば株式交換の手続の中で仕訳だけを順番に起こすと変な仕訳になることがあるのです。全体を一体として最初と最後を比較して処理した方がいいケースなのです。このような連結基準においては余りカバーされていないような問題があるので、いずれどこか直さなくてはいけないという話にはなるのではないかという気がしています。

○斎藤部会長

そういういずれどこかでというインプルーブメントの問題については連結に限らずほかにもあり得るわけでございますので、それはそれでまた別途に検討して構わないと私は思います。

ほかに御発言はないでしょうか。

○西川委員

外国がいいというわけではないのですけれども、連結財務諸表しかないところでは当然に企業結合会計の中に含まれているわけで、もちろんそれによって仮に今の連結原則に何の矛盾もないとしても包含しておいた方が将来的にはいいのではないかなという感じが直感的にはしています。特に企業結合法制を取り上げたときに必ずしも全部が全部企業結合ではない部分が特に会社分割などではあるわけで、企業結合なのかどうかという議論をするときに、その中で連結も入ってくるとした方が整理しやすいのではないかという感じが直感的にはしているんです。

○斎藤部会長

担当部会長としての利害を申し上げますと、その話を始めますと時間が相当かかると思うのです。もちろん現在の連結基準が新しく想定される企業結合の会計基準と矛盾しているとか重大な点で不合理があるということであれば改めて全体を包含して体系を考え直す必要があるのですけれども、もしそうでないとしたら、さし当たって連結の基準はそのまま置いておいて、まとめやすいところで話をまとめる方が楽なのではないかという感じはいたしますけれども、それは間違っていますでしょうか。

○西川委員

特に株式交換の話あたりは連結の話ですから、そういう意味では連結原則に書かれているのは連結の中の一部の取引を対象にしているという言い方もあり得るわけで、連結原則を直すことを同時にしないといけないから大変だということかもしれないのですけれども、どちらで判断するのだというときに難しい面が出てくるのではないかなという感じがしています。

○斎藤部会長

今後検討させていただきますけれども、当面どうしても考えなければいけないのは企業結合の会計基準と連結の基準とが矛盾してしまうことは避けなければいけない。そこはきちんとする必要があると思うのです。ただ、それ以外については例えば企業分割の場合でも共同新設分割は企業結合、合併と全く同じです。ですから、ほかのところへどんどん広がっていく可能性がありますので、私の省エネ的な対応かもしれませんけれども、戦線は余り拡大しない方がやりやすいのではないかという感じだけ持っておりますが、それは改めて御意見をいただいた上で検討したいと存じます。

○伊藤委員

第一部会の今後のスケジュールにも関連するのですけれども、これは今回と次回とで何らかの形で結論をつけたいということですか、それとも今後のスケジュールはどのようにお考えになっているのか聞かせていただきたいと思います。

○辻前企業会計専門官

次回もこの資料でこのような形で御議論いただきたいと考えているのですけれども、その後はなるべく論点整理のドラフトについて御審議いただいて終わるまでという形で考えております。今は部会を6月まで設定しておりますので、そこまでで終わればそれに越したことはないということです。

○伊藤委員

6月末までにこれをまとめるということですか。

○斎藤部会長

論点整理が終わるということです。それでは若杉会長から御発言がありますので、よろしくお願いいたします。

○若杉会長

非常に重要な問題を長時間にわたりまして御審議いただき、大変ありがとうございます。人によっては1時半からの第二部会にも両方出ていらっしゃる委員の方もいらっしゃるはずで、大変御苦労さまです。

今日は第一部会の審議のあり方を問うような御質問、御意見が出てまいりまして、非常に重要な会議であったと評価しております。我々が今扱っております問題を今後処理し、結論を出していく過程での我々の姿勢についてもまたいろいろ御意見をいただき、第一部会長からお考えを漏らしていただきまして、大変参考になったと思います。

我々の審議会は結局、日本の実践界、理論界の日頃の活躍や研究の成果を踏まえて、委員の皆様方はそれらの各界から代表として出てこられた方々で構成されており、そこでもって日本の会計制度のあり方を決める基準づくりをしているわけです。そういう意味で先ほどどなたかからもお話がありましたように、要するに実践界、理論界それぞれが一生懸命にいろいろ工夫を重ね研究を積んでいって実践の経験を踏まえて、そして初めて審議会として立派な作業ができるわけで、そういう意味ではその基礎にあるそれぞれの筋の努力が何といいましても前提になっていると私も同じように考えております。

私も時々、外国の基準を参考にしながら日本の基準づくりをするだけではなくて日本から国際的な場での基準づくりに対して積極的、建設的な意見をつくって述べるべきだと書いたり言ったりしているのですけれども、それはなかなか大変なことだと思います。我々の学会の状況を見てみますととかく諸外国の、特に先進諸外国の実情を学ぶことは非常に大事なことですけれども、その辺にとどまっていて、その先のもっと積極的な意見を形成して述べるところまでなかなかいきにくい状況にあると思います。しかし、今でもそうでなくてはならないのですけれども、これから我々は外のものを学ぶことに終わっていないで我々独自の物の考え方を形成して外にどんどん発表していく姿勢が必要だと思います。努力というのはそういう姿勢がしっかりしておりませんと結実しないわけですから、そういう心構えが大事だと思います。今日も取得原価が基本であるとか、オポチュニティ・コストの問題も出てきましたけれども、その辺のところは1つのことに目を置かないでかなり柔軟にいろいろ考えていく方がいいのではないかと私は考えております。

私も若い頃はコスト問題をいろいろ勉強して、オポチュニティ・コストからアウトレイ・コストの関係などもいろいろ検討してみてきましたけれども、両者の関係をただ別個なものだとダイコトミー的に分けて考えてしまわないで、両者は非常に密接な関係があるということを私もかつて論文に書いたりしたことがあるんです。そんなことで、これからもいろいろ検討していく上で柔軟な物の考え方をとりながらある一定の方向に収束していくことが大事ではないかと考えております。

先ほど連結基準と今度の企業結合会計の基準とが食い違うおそれがあるのではないかということでいろいろ危惧されているようですけれども、我々の審議会には4つ目の部会としまして企画調整部会がございます。そこでは我々のつくった基準相互間の食い違いを調整したり、あるいは国際基準が変わってきたときにそれに応じた調整を施すという機能を持っております。組織として既にそういうものが動いておりますことをよく御理解いただきまして、そういう問題が起こったときでも柔軟に対応できるということを御理解いただきたいと思います。

先ほど神田副部会長から開示と配当規制の問題がありましたけれども、配当規制の問題は商法独自の問題であって、我々がとやかく言う問題ではないと思います。一種の国家的な政策の問題ですので、それは商法独自の論理でもって処理していただくべきものであって、我々がそれに対して口出しをするべきではないと個人的には考えております。

今日は最初に申しましたように本当にいろいろ重要な問題が提起されまして皆様方の認識が非常に高いことを伺えまして、大変安心いたしております。今後とも我々の体制が続く限り、特にまた我々が今手がけております3つの原則が立派に国際的な場でも通用するようなものとして完成いたすことを念願いたしておりますので、どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。

本日はどうもありがとうございました。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

それでは予定の時刻になりましたので、本日の部会はこれで終了させていただきます。

次回の部会につきましては本日の御議論を引き続きお願いすることを考えております。本日は時間の制限等もあって十分に御発言いただけなかった方もいらっしゃると思いますけれども、また次回よろしくお願いいたします。

その後の段取りといたしましては、論点整理の原案を文章化して御審議いただくことを考えております。ただ、準備の関係もございますので、次回のその次であります6月1日の審議に先立って原案を送付できるように作業を進めていきたいと考えております。その場合、その原案の準備作業でございますけれども、私の希望といたしましては大日方委員、金井委員、松岡委員のお三方にお手伝いをお願いいたしたいと考えております。また、他の委員にも適宜お手伝いをお願いする必要が出てくるかと思いますので、その節はどうかよろしく御高配をお願いいたします。次回につきましては5月18日(金)16時から18時ということで日程を追加させていただきましたので、よろしくお願いいたします。

本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。これで散会いたします。

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