平成14年1月21日
金融庁

企業会計審議会第15回第一部会議事録について

企業会計審議会第15回第一部会(平成13年12月14日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

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総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第15回第一部会議事録

日時:平成13年12月14日(金)午後2時00分~午後4時03分

場所:中央合同庁舎第4号館11階共用第一特別会議室

○斎藤部会長

それでは定刻になりましたので、ただいまから第15回の第一部会を開催いたします。

委員の皆様には、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

本日は、パーチェス法に係る論点についてご報告をいただいた後、意見交換を行う予定にいたしておりますが、今後の審議の進め方について、まず事務局から説明をお願いいたします。

○辻前企業会計専門官

今後の部会の審議についてですが、基本的に、論点整理に提示されておりました個々の論点について、ご審議をお進めいただくことになろうかと思われます。

そのような観点から論点整理全体をみてみますと、最初に会計処理方法の定義が取り上げられておりまして、パーチェス法、プーリング法がそれぞれどのような方法か検討する必要があるとされております。そこで、パーチェス法の定義のあたりからご審議いただいてはいかがかと考えた次第ですが、パーチェス法ののれんの論点に関連する部分については、論点整理の段階でも分けておりましたし、一時にご審議いただくには分量が多すぎるのではないかと考えられましたので、パーチェス法の検討をその1とその2の2つに分割いたしまして、論点整理の後半で取り上げられておりましたのれんとのれんに関連する無形資産などの論点については、パーチェス法のその2として回を改めることといたしまして、本日と次回につきましてはパーチェス法その1とそれ以外のところを中心にご審議いただくような見積でご準備させていただきました。

また、論点整理そのものから審議を開始するのは少し効率的ではないと思われましたので、論点整理のお手伝いをいただいた経緯から、松岡委員の方に本日の審議用に論点の整理をお願いしております。

非常に簡単ではありますが、当面の進め方としては以上であります。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

ただいまの事務局の説明につきまして、ご質問等はございますでしょうか。

それでは、最初に、松岡委員から、「パーチェス法の検討その1」についてご報告をお願いいたします。よろしくどうぞ。

○松岡委員

それでは、よろしくお願いいたします。

まず最初にお断り申し上げさせていただきますが、これからのお話といたしましては、パーチェス法と持分プーリング法との使い分けの妥当性ですとか、取得企業の識別方法等についての議論については、全く考慮しておりません。そのような検討は先ほど事務局の方からご説明がありましたように次回以降に委ねるということにさせていただきまして、本日は、仮にパーチェス法を適用すべき場合を想定した上で、その場合のパーチェス法とはどのようなものであるべきであって、また、そのような適用に当たって検討すべき論点としてはどのようなものが考えられるかなどについてお話をさせていただくものでございます。

それでは、お手元に配布させていただきました「パーチェス法の検討1」のレジュメに従いまして、順次お話をさせていただきたいと思います。

まず大まかな目次といたしましては、1ページ目に記載のとおり、まず非常に重要である定義からお話をさせていただきます。その次に、基本的な考え方。そして、皆様にイメージをより持っていただくために具体的な会計処理方法といたしまして設例でお話をさせていただいた上で、パーチェス法の定義で私の方である程度幾つかにまとめておりますので、そのまとめた小さな項目に従うような形で4番、5番、6番というような順でお話をさせていただきます。そして最後に、そのようなロジックでは必ずしも補い切れない点といたしまして、7番の「株式の連続購入による場合の少数株主持分等の測定方法」ですとか、それ以外に検討すべきではないかと思われる項目についてお話をさせていただきたいと思います。

それでは、レジュメをめくっていただきまして、まず「パーチェス法の定義」についてお話をさせていただきます。この点につきましては、先に公表されております「論点整理」の中でも、「かつ」、「または」というような形で、非常に重要ではないかと取り上げられていた論点かと考えております。また、以前の部会でも議論となりましたように、皆様がパーチェス法という言葉を念頭に置いて議論する場合には、やはり共通認識が非常に重要ではないかというようなご指摘も多数ございましたので、まずそちらの方から入らせていただきたいと思います。

パーチェス法とは、まずマル1被結合会社の資産・負債を公正価値で受け入れ、かつ、マル2取得対価を公正価値で評価するとともに、株式を交付した分はすべて拠出資本の増加として処理し、マル3受け入れた被取得企業の純資産の公正価値に対する取得企業の取得割合相当額と取得対価との差額を正又は負ののれんとする方法である、このように位置づけられるのではないかと考えております。

今申し上げましたようなパーチェス法の基本的な考え方がどのようなものであるかといいますと、ここでは、仮にある企業結合が取得に該当する場合、取得対価の形態の如何を問わず――すなわち、現金であるか、あるいはほかの資産を引き渡すのか、あるいは負債を引き受けるのか、株式を発行するのか、そのような取得の対価の形態の如何を問わず、その取引は基本的には購入取引であって、交換対象財貨のうち流動性がより高い財の公正価値をもって取得対価とすることが合理的であると考えられているようでございます。したがいまして、取得に該当する合併の場合、イメージといたしましては、株式を対価とした買収であると位置づけられるのではないかと思います。

続きまして、具体的な会計処理に移らせていただきます。まず、取得企業は取得日から被取得企業の業績を損益計算書に取り込むとともに、被取得企業の資産・負債及びその取得によって生じた正又は負ののれんを貸借対照表上認識すると、そのようなものが具体的な会計処理でございます。

次に、ポイントとなります取得日及び支配の定義についてでございますが、ここに記載させていただいております内容は、主に現行の国際会計基準22号に倣った形となってございます。読ませていただきますと、「取得日とは、被取得企業の純資産及び事業に対する支配が取得企業に事実上移転した日であり、ここでいう支配とは、ある企業の活動から便益を享受するためにその企業の財務及び経営方針を左右する権限である」とされてございます。

参考までに、支配につきましては、米国基準においてもほぼ同様の内容ではないかと考えられますが、取得日につきましては米国基準では少し表現が相違しておりまして、具体的には、「取得日とは、通常、資産を受け取り、かつ、ほかの資産を引き渡すか負債を引き受けるか、持分証券を発行する日を言う」とされてございます。今申し上げました取得日の定義の文言上の相違が、後にお話しさせていただきます、株式を発行して企業結合を実行した場合において、その取得対価を測定する際にどの時点での株価を用いるべきかという論点に関連してくるのではないかと思われますので、ひとつのポイントではないかと考えてございます。

それでは、イメージをより明確に持っていただくために、設例1「パーチェス法の適用事例」についてお話をさせていただきたいと思います。

資料をごらんください。またここで断らせていただきますと、あくまで測定日の株価総額ですとか合併後議決権所有割合は記載はしておりますが、これは全くの参考程度でございまして、これをもってさまざまな論点を論じようというような趣旨は全くございません。

まず、合併時合併当事会社の貸借対照表について、仮定を設けさせていただいております。単位は億円でございまして、記載のとおり、A社とB社、各簿価と、それに対応する時価を記載してございます。また、発行済株式総数については、A社が40億株、B社が30億株。先ほど申し上げましたように、株価としてどの時点を用いるべきかということについては論点があろうかと思いますので、ここでは単に測定日の時価とさせていただいておりまして、A社は600円、B社は1,000円であったと、合併比率はA株式1株に対してB株式0.6株を割り当てるというような全くの仮定に基づいてございます。

ここでは、次に、B社を取得企業、A社をいわゆる被取得企業という前提を置いてございます。そうしますと、まず取得対価といたしましては、A社株式40億株に対しまして合併比率が0.6でございます、それにB社株式の測定日の株価1,000円を掛けまして、2兆4,000億となります。これは下に記載の「注記」のところに算式を書いてございますが、取得対価は2兆4,000億。また、被取得企業でありますA社、ここでも識別可能な資産・負債は合併時のA社の貸借対照表上に認識されているもののみであるという簡単な仮定を置いてございまして、それに従って処理をするというような前提に立っております。

そうしますと、まず、A社の資産・負債は公正価値で受け入れますので、「合併後存続会社B/S」のパーチェス法のA社の欄をみていただきたいと思いますが、A社の資産・負債とも公正価値は時価で記載されております。受け入れ純資産の公正価値額は、47兆から46兆を差し引きまして1兆円でございますので、それに対応する取得対価が先ほど申し上げましたように2兆4,000億、したがいまして、のれんとしてその差額1兆4,000億円が存続会社ののれん欄に記載されるということになってございます。

ここでは、参考までに、プーリング法を適用した場合のB/Sも右側に記載させていただいておりまして、存続会社の数値をみていただくとおわかりになりますように、パーチェス法では取得対価がすべて拠出資本とされていることと、プーリング法では、A社の利益剰余金が基本的にはそのまま引き継がれることから、存続会社の利益剰余金が大きく相違している。パーチェス法では1兆でございますが、存続会社では4兆と、大きく相違していることがみてとれるかと思います。

続きまして、レジュメの方に戻らせていただきたいと思います。

先ほどのパーチェス法の定義のところで私が申し上げましたように、まずマル1被取得企業の資産・負債を公正価値で受け入れる、このような観点からどのような論点があるかと考えたものがこの4番でございます。ここでは、無形資産ですとか、リストラ引当金等のように、のれんと密接に関連する項目については次回以降の議論に委ねるということでございまして、主要な項目のみに関して簡単に記載させていただいております。

記載のとおりでございますが、簡単に申し上げます。マル1市場性のある有価証券については、市場価格で評価をする。マル2市場性のない有価証券については、入手可能な合理的な情報を加味して見積もった価値として評価を行う。マル3受取債権については、必要な見積回収不能額・回収費用を控除して、適切な利率を用いた割引現在価値とする。マル4棚卸資産につきましては、まず製品・商品については見積売価から処分費用・正常利益を控除した額とする、仕掛品については見積売価から今後完成までに要する費用・処分費用・正常利益を控除した額とする、材料につきましては再調達原価とする。マル5土地・建物については、市場価値。マル6退職給付の純債務につきましては、退職給付債務の現在価値、いわゆるPBOから制度資産の公正価値を控除した額として認識を行う。また、マル7繰延税金資産・負債につきましては、結合後における今後の合理的な予想に基づく額を認識する。マル8買入債務・借入金等については、適切な利率を用いた割引現在価値とする。このようなことが基本的には国際的にほぼ共通の目安となっているようでございます。

次に、レジュメには記載してございませんが、非常に重要な論点ではないかと思われる配分期間/アロケーション・ピリオドについて、少し補足説明をさせていただきたいと思います。

皆さんご承知のとおり、パーチェス法のもとでは、取得対価を取得した被取得企業の資産・負債に対して、取得日現在の公正価値に基づいて基本的には配分する必要がございます。ここで言います配分期間とは、米国基準のもとでは、企業結合において取得した資産、引き受けた負債の公正価値を識別・測定するのに必要な期間であると定義されておりまして、そのような配分期間は――場合によっては当然のことですがさまざまであろうと予測されますが、その配分期間は、通常、企業結合が完了してから1年を超えてはならないとされております。一方、現行の国際会計基準では、取得後開始する初めての会計期間末までということでございますので、文言からすると、国際会計基準の方が幾分余裕がある可能性があるのではないかと考えられます。

以上申し上げましたように、配分期間内の識別可能資産あるいは負債に対する公正価値をより合理的な情報等に基づきまして修正した場合には、国際会計基準においても、米国基準におきましても、そのような修正に伴いましてのれん又は負ののれんを修正するというような会計処理になっているようでございまして、その点は共通でございます。また、配分期間が経過した後の今申し上げましたような修正につきましては、識別可能な資産・負債は修正いたしますが、それに伴ってのれん又は負ののれんを修正するようなことはしなくて、その修正額は期間損益として認識するという点におきましても、米国基準と国際会計基準も共通の処理となっているようでございます。

それでは、レジュメをまためくっていただきまして、非常に重要な論点と思われます5番の「株式交付による取得対価の測定方法」について、お話をさせていただきたいと思います。

まず1点目の株価の測定日でございますが、これにつきましては複数の考え方があるようでございます。まずひとつとして、各交換日及び取得日を原則とするが、特定日の株価が信頼できないような場合には、結合条件公表日の前後一定期間の株価を考慮するというような考え方があるようでございまして、これは現行の国際会計基準がとっている考え方のようでございます。もうひとつの考え方といたしましては、結合条件公表日の前後一定期間の株価とするというような考え方があるようでございまして、これは米国基準がとっている考え方でございます。もしかしたらもうひとつの考え方なのかもしれませんが、日本公認会計士協会から公表されております『研究報告第6号』では、結合条件公表日の直前数日の株価とすると記載されておりますので、もしかしたら3つの考え方があるのかもしれません。

ここでは、補足的に、米国基準で議論されております株価の測定日について、簡単に紹介させていただきたいと思います。

FAS141号のパラグラフB-97の記載内容を引用してご紹介させていただきますと、FASBは、FAS141号が企業結合を実行するために発行した持分証券を評価するために用いるべき、すなわち、測定日に関しては矛盾する指針をAPB16号から引き継いでいることを認識していると記載されてございます。141号のパラグラフ22に引き継がれております旧APB16号のパラグラフ74におきましては、「取得条件の合意公表日前後の合理的な期間における相場変動は、発行した有価証券の公正価値を決定する際に考慮されねばならない」と記載されてございます。しかしながら、一方で、141号のパラグラフ49に引き継がれております旧APB16号のパラグラフ94におきましては、「被取得企業の取得コストは取得日現在で決定されねばならない」とされてございます。また、パラグラフ48におきましては、先に申し上げましたように、「取得日は、資産を受け取り、かつ、ほかの資産を引き渡し、負債を引き受け、もしくは持分証券を発行した日である」と定義してございます。すなわち、取得コストは持分証券を発行した日において測定しなければならないとする一方で、株式を発行して実行する企業結合においてはそのような取得条件の合意公表日前後の合理的な期間における相場変動に基づいて決定しなければならないというような規定が再考されることなく引き継がれているわけでございます。

したがいまして、FASBといたしましては、パーチェス法適用に関連した論点を扱うプロジェクトまで、今申し上げました明らかな矛盾点の解決を先延ばしする決定を下したとされております。結果として、現状では、EITF99-12がそのまま生きてございますので、米国基準においては、現在は、先ほど申し上げましたように、基本的に、結合条件公表日の前後一定期間の株価を用いるというような実務になっているようでございます。

それでは、次に、株式の連続購入による取得の場合についてでございますが、そのような場合の取得対価は、各交換日の株価で算定した公正価値の総額とされるということでございます。

また、取得企業が被公開企業である場合、どのような論点あるいは考慮すべき点があるのかと申し上げますと、恐らく3つぐらいあるのではないかと考えられます。ひとつ目といたしまして、まず、同業で類似の特徴を有する公開企業の株価、交換比率決定時の各種データ等利用可能な合理的な情報を十分に考慮する。これは大前提でございます、交換対象の財貨のうちより流動性の高い財の公正価値をもって評価するということから考えますと、ある意味当然のことかなとも思われますが、一方が非公開企業でございますので、当然、取得の対価であります株価については時価がないという場合でございますので、今言ったような点を考慮するということだろうと考えております。逆に、取得企業が非公開企業で被取得企業の方が公開企業であるような場合もあろうかと思いますが、そのような場合、公開企業である被取得企業との株式交換等によるというようなときには、被取得企業側の株価も参考とされる。被取得企業も非公開企業のときには株価が両社ともないわけでございますので、信頼に足る第三者による企業評価額もそのような場合には参考とされ得るのではないかと考えてございます。

4番目といたしましては、取得対価以外の取得に直接要した費用の取扱いでございまして、これにつきましても当部会で今までいろいろご議論があったように記憶してございますが、国際的には、取得を実行するために鑑定士等へ支払った手数料等は原則として取得対価に含めるという取扱いのようでございますが、一般管理費、あるいは、そのような特定の取得に直接ひもつけられないような費用は発生の都度期間費用とされることになっているようでございます。

それでは、次ページに移らせていただきます。次に、「条件付取得対価の会計処理」について、お話をさせていただきます。

条件付取得対価の内容についてでございますが、これは、取得契約の中で、将来期間におきまして特定の利益水準が維持されるか、あるいは達成されるか、もしくは取得対価として発行した有価証券自体の時価が維持されるかなどによって、取得対価の修正を認める内容のものでございます。

取得日において取得対価の修正可能性が高く、その修正額を信頼性をもって見積もれる場合においては、取得日においてその見積修正額を取得対価に含めるとされております。そして、見積事象が確定した時点で取得対価を修正する。結果として、正又は負ののれんも修正するというようになろうかと考えます。

ここで少し補足させていただきますと、今申し上げた内容は基本的に国際会計基準の規定を念頭に置いたものでございますが、厳密に申し上げますと、米国基準でありますFAS141号における規定ぶりとは表現上相違がございます。米国基準におきましては、取得日時点で決定可能な未決対価に関しては取得対価に含める。そこで言う未決対価、決定可能なものはどのようなものかといいますと、基本的に、通常は、偶発事象が起こり対価が発行されるか、または発行し得る時点で認識すべきであるとされてございます。したがいまして、今申し上げましたような表現上の相違が実質的にどの程度相違をもたらすのかについては必ずしも明確ではございませんが、規定ぶりだけについて申し上げれば、今のような相違があるということでございます。

続きまして、逆に、取得日において取得対価の修正額を信頼性をもって見積もれない場合はどのような処理になるのかといいますと、まず2つの場合に分けられます。ひとつは、被取得企業の取得後の業績水準の達成如何にかかわるときは、信頼性をもって見積もれるようになった時点で取得対価を修正する、そして結果としてのれんも修正する。取得対価を修正する場合でございます。業績水準の如何にかかわるときには、取得対価を修正する。もうひとつの場合といたしましては、取得対価として当初発行した株式の価値、その価値を保証すべく株式を追加発行するというような場合については、追加発行対価については当然にその発行時の公正価値で認識することになりますが、当初発行対価についても追加対価発行時の公正価値まで減額する結果、結果的には、当初の取得対価総額自体は修正されない。取得資産・負債の評価額も修正されないといったような取扱いになっているようでございます。

続きまして、7番、「株式の連続購入による場合の少数株主持分等の算定方法」について、お話をさせていただきます。

まずポイントといたしましては、少数株主持分の性格に関してでございます。これにつきましては、資本の一部あるいは負債またはいずれでもないというようなカテゴリーがあろうかと思いますが、まず資本の一部だと考えているのは、FASBにおける連結プロジェクト及び資本と負債との区分プロジェクトでございます。また、IASBにおいても企業結合プロジェクトの担当スタッフの推奨案といたしましては、資本の一部ではないかという方向性のようでございます。また、資本の一部でも負債でもないという立場に立っておりますのが、わが国の連結原則と現行の国際会計基準27号でございます。そのように少数株主持分の性格については複数の考え方があるということでございます。

次に、そのような持分等の当初の算定方法に関してでございますが、全面時価評価法と呼ばれるものと、部分時価評価法と呼ばれるものとがございます。わが国の連結原則と現行の国際会計基準は、全面時価評価法、部分時価評価法、いずれの方法も認めてございます。ただし、現行の国際会計基準におきましては部分時価評価法が標準処理とされてございます。米国基準におきましては、その点について明示されてございませんが、実務上は部分時価評価法が支配的のように伺っております。ただし、IASBの企業結合プロジェクトの最新案では、全面時価評価法のみとする方向のように伺ってございます。

次に、段階法と一括法と呼ばれる方法に関してでございますが、現行国際会計基準も米国基準も、原則といたしまして段階法を採用しております。一方、わが国の連結原則におきましては段階法と一括法の双方が認められてございますが、基本的に全面時価評価法と段階法との組み合わせはないのではないかと考えます。

それでは、ここで、現行の国際会計基準22号のもとでの少数株主持分等の当初の測定方法事例について、設例2を用いまして簡単にお話をさせていただきたいと思います。

設例2をごらんください。まず前提条件といたしましては、企業Aは企業Bの発行済株式総数の80%を現金2,700で取得した。取得日における企業Bの識別可能純資産の簿価及び公正価値は、それぞれ、2,000、3,000であったと前提を置きます。

まず、標準処理の場合でございますが、のれんは取得対価2,700から企業Bの識別可能純資産の公正価値に対する企業への取得割合相当額2,400を控除した額であります300となります。一方、少数株主持分は企業Bの識別可能な簿価純資産額2,000に少数株主持分割合20%を乗じた額の400となります。以上の結果から、連結財務諸表上認識される企業Bの識別可能純資産額は2,800と算定されることになります。

一方、認められる代替処理におきましては、のれんについては標準処理と同様に300と算定されます。少数株主持分については企業Bの識別可能時価純資産額3,000に少数株主持分割合20%を乗じた額であります600となります。その結果、連結財務諸表上認識される企業Bの識別可能純資産額は3,000と算定されることになります。

今申し上げました結果を表にしたものがその下に記載されてございます。コメント欄をみていただきたいと思いますが、全面時価評価法と部分時価評価法のいずれを採用するかによって、識別可能純資産及び少数株主持分の金額が相違することになります。また、部分時価評価法のもとでの識別可能純資産額は2,800――標準処理でございますが、その2,800のうち親会社持分に帰属する部分は2,400、その部分については時価をベースに算定されておりまして、少数株主持分に帰属する部分400は簿価をベースにしてそれぞれ算定されているということでございます。

それでは、最後に、「その他の検討項目」といたしまして、レジュメの方に戻らせていただきたいと思います。

まず1点目といたしまして、資本の増加額の取扱いに関してでございます。一番最初に申し上げましたパーチェス法の定義では、株式を発行した分についてはすべて拠出資本とするというようなお話をさせていただいたかと思いますが、個別財務諸表上も資本の増加額のすべてを拠出資本とすることを強制するかどうかということは論点となるのではないかと考えます。

次に、いわゆる逆取得の取扱いに関してでございますが、連結財務諸表上は、個別財務諸表上の会計処理の如何を問わず、会計上の取得企業すなわち商法上の消滅会社が、会計上の被取得企業すなわち商法上の存続会社に対してパーチェス法を適用するような処理になるのではないかと考えられます。また、ここに記載はございませんが、共同持株会社を設立したような場合につきましては、恐らく連結財務諸表上は子会社のひとつを取得企業とみなしましてパーチェス法を適用することになるのではないかと考えられますが、もしかしたら議論の余地があるところかもしれません。

続きまして、少数株主持分等の当初認識における測定方法についてでございますが、それにつきましては、連結原則では、全面時価評価法と部分時価評価法のいずれかに基づき測定されることになってございます。しかしながら、この点については現行の国際会計基準では明示されていないようでございますし、米国基準でありますFAS141号ではパーチェス法を適用するとしか規定されておりません。したがいまして、そのような具体的な会計処理については、企業結合プロジェクトの第2フェーズで検討される予定であるということでございますので、そのような動向も加味する必要があるのではないかと考えます。

また、正又は負ののれんの会計処理につきましては、今後慎重な議論が必要かと思いますが、株価を用いて取得対価を測定するという限りにおいては、測定日の如何を問わず取得企業の自己創設のれんの一部が結果として資産計上されてしまう可能性があるのではないかと思いますので、そのような本来ののれんではない要素が、結果として多額に資産計上されてしまうようなことがないように何らかの措置が必要ではないかと考えられます。

最後に、抱合株式ですとか、取得した自己株式の会計処理もこのパーチェス法と関連いたしまして検討する論点として挙げられるのではないかと考えてございます。

簡単ではございますが、私の方から「パーチェス法の検討1」ということで想定される論点についてお話をさせていただきました。

○斎藤部会長

松岡委員、大変ありがとうございました。

それでは、ただいまのご報告についてご質問なりご意見等がございましたら、どなたからでもご自由にご発言ください。

どうぞ、黒川委員。

○黒川委員

それでは、聞き漏らした点もあるので、配分期間についてお尋ねしたいのですが、このIASBとFASBの取扱いが少し異なっていたという点をもう一言つけくわえてお話をしていただきたいのと、この配分期間における財務諸表の位置づけ――わが国ですと確定という問題もあるのかないのかよくわかりませんけれども、この辺について教えていただければと思います。

○斎藤部会長

松岡委員、どうぞ。

○松岡委員

それでは、まず1点目でございますが、まず米国基準におきましては、配分期間については、原則といいますか、通常は企業結合が完了した時点から1年は超えてはいけない。したがいまして、例えば3月決算会社で完了日が12月末だと仮にいたしますと、翌年度中の12月までには基本的に配分を終えなければならないというようになるのではないかと考えております。それに対しまして国際会計基準の方は、取得後開始する初めての会計期間が終了するまでということでございますので、先ほどの例で申し上げますと、ある会計年度の12月の末に取得が終わったとすると、翌年度の会計期間末までということですので、先ほどの例で申し上げれば3月決算ですので、3カ月間ほど国際会計基準の方が余裕があるような規定ぶりになっているのではないかと考えます。

2点目につきましては、恐らく念頭に置かれておりますのは、例えば3月決算の会社で企業結合の取得日が期末直近だったような場合には、規定で配分期間として認められておりますのは、公正価値を測定したり識別可能な資産・負債をしっかり認識するためにはそれなりの時間が必要であるというような趣旨からもともと認められているのでしょうから、そのような場合には当然実務上間に合わないわけでございます。そのような場合の開示事例等につきましては、現在は私は詳細に自信を持ってお答えできませんので、後日確認した後でよろしければ詳細に、もし差異があるようであればその点も踏まえてご報告させていただきたいと考えております。

○斎藤部会長

黒川委員、よろしゅうございますか。

ありがとうございました。

ほかにご発言はございますでしょうか。

大日方委員、どうぞ。

○大日方委員

6ページの株価の測定日のところなのですが、交付株式のフェアバリューを決める上で非常に難しいと思うのですが、合併の場合、通常の時間的な流れから言いますと、合併合意があって、合併条件、合併比率の合意があって、ここで言うような取得あるいは合併登記による法律上の移行という時間的手順を踏むと思いますが、会計上これは、パーチェスで言う購入あるいは取得という観点から言うと、先渡契約になっていて、事実上の物件の引渡しよりも前にその物件の取引価格の合意があるという状況になっているわけです。

このときに、一般的に先渡契約の会計処理というのは、すなわち投機、スペキュレーションであれば、合意時点の取引価格で記録して、実際に現物が引き渡されるときまでの損益を――そのときに認識するか繰り延べるかはともかくとして、マーク・トゥー・マーケットするわけですが、ところがそれはスペキュレーションの場合に限られていて、通常の事業上の物件については、先渡契約であれば、移転日のフェアバリューではなくて、契約日、取引価格合意日の合意価格が事実上の取引対価として認識されるのが原則であるというように私は思うのです。

そうしますと、それを合併に当てはめますと、事実上資産・負債の取引対象物件が移転するのは登記等による法律上の発効日ですけれども、フェアバリューの測定日は、原理原則から言うと、合併合意もしくは合併条件――合併比率が決まらないと計算のしようがないので、合併比率が決まってそれが公表されたときの株価であり、かつ、資産・負債の方のフェアバリューもそのときのフェアバリューでないと、通常で言う先渡契約の会計処理とは整合しないと思われます。そうでないと、合併に当たって、スペキュレーションでないにもかかわらず取引対価合意後生じた価格変動の損益を――この場合は非常に複雑ですけれども、のれんに押し込んだり、あるいは、自己資本というか資本をマーク・トゥー・マーケットしかねない事態に陥りますので、その点をぜひご検討いただきたいと思います。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

今の問題について、どなたかご発言はございますでしょうか。

西川委員、どうぞ。

○西川委員

私は余り整理はできていないのですが、全体の対価については合意時点でよいと思いますが、個別の資産については現実に中身が変わっていることがあるので、ないものを合意日の公正価値で評価するというわけにはいかない。そうすると、どうしても中身については取得日によらざるを得ないということになるのですけれども、その間の負債がのれんに押しつけられているのかどうかというあたりが非常に難しいところだと思います。一応のれんに押しつけられるとすればその間の損益という部分だろうと思うのですけれども、それ以外の資産の中身が変わっているのは余り影響はないかもしれない。そうすると、損益の動きはある程度合意の時点でのれんに織り込んであると考えれば、一応個別の中身と全体の価格が整合してくるのではないかと考えました。実際にそうかどうかということはあるのですが、ひとつの割り切りとしてはそのようなことを考えないと解決しないのではないかと思います。

○斎藤部会長

ご発言はございますでしょうか。

大日方委員、どうぞ。

○大日方委員

確かにおっしゃるとおり、具体的な資産・負債の個々のフェアバリューを合併条件が決まったときに双方ともに熟知していて、その後ある意味で確定しているかと言われるとそれは確定していないので、それはたとえ後からであっても判明しないわけですから、それで記録するというのは無理だと思うのですが、ただ、原理原則と実務上の便宜という点は分けておいていただきたいと思われるわけです。つまり、原理原則はあくまでも交換契約時のフェアバリューで記録するのがパーチェス法の原理原則であって、それが可能であれば――株価の方は可能ですから、これは原理原則どおりやる。要するに、できないものについてはできるだけそれに近い便宜的手段をとるということであれば話はわかるわけです。ところが、最初から資産・負債が便宜で決まっている、取得日で確定しないとわからない、あるいは、さらに先ほどの配分期間を経てみないとわからないと、そちら側に引きつけてその交付対価である株価のフェアバリューもあわせるべきだというのは多少筋が違っているのではないかという気がしますので、やはり原理原則と実務上の便宜という点は分けて規定をしていただきたいと思います。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

ご発言はございませんか。

黒川委員、どうぞ。

○黒川委員

今の大日方委員にフォローのような感じになるのかもしれませんが。

先ほどの私の配分期間の問題もそうで、最終的に修正されることがあった場合、途中段階の財務諸表がどのような状況を示しているのかということにも関係すると思います。それで、多分、大日方委員のおっしゃったように、この合併比率を決めるという段階ではそこまでの情報で双方の企業を評価して対価というものを決めているわけですが、やはりそれは非常に重要な情報であるし、その時点でそれぞれの企業を評価し、株主に対してもそういう説明をして、株主の利益もそこである意味で確定しているというようなことを考えるわけですね。そうすると、その後の修正というのはその後の情報による修正というように受け取るのか、あるいは、そうではなくて、実は後になって判明した後が本当の対価であったのかと、そのような話だろうと思います。要するに、どこが重要な問題であったのか、その後は、後から判明した情報の修正と認識するのか、あるいは、そうではなくて、最終的に配分期間が終わった段階で本当の取引が行われたのかというようなことだろうと思います。

大日方委員は、初めのところが大事だとおっしゃったわけですが、私も今の段階では、株主に対する利益擁護を、あるいは利害調整という点から考えても、初めの段階、要するに、合併比率とか企業評価の段階が非常に重要なところであったのではないかと思うわけであります。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

関連してほかにご発言はないでしょうか。

この問題はもし必要なら後で戻っていただくとして、他の論点でご発言はございますか。

黒川委員、どうぞ。

○黒川委員

7ページに「条件付取得対価の会計処理」が書いてございます。これがなぜこのように詳しく書いてあるかというと、今の問題にかかわると思うのです。要するに、合併対価の決定という問題があって、非常にそこが重要であるがために、何か後日修正ということがあり得る、あるいはあるだろうというときに備えて、いろいろな条件をつけて契約を双方の株主間でしているのだろうと思います。多分、米国ではそういうことに非常に気をつけてこのような条件をたくさんつけているのだろうと思うわけです。したがって、この点についてもどのような条件がついているのか、あるいは、全く条件がないような契約が本当にあるのだろうかという点についてもし事例がございましたら、次回でもお示ししていただければと思います。

○斎藤部会長

現時点で回答される準備はおありでしょうか、松岡委員。

○松岡委員

個別具体的な事例をお話しするのは現状では無理でございますので、次回にさせていただきたいと思います。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

ほかにご発言はございませんか。

大日方委員、どうぞ。

○大日方委員

ここで報告されているパーチェス法は、恐らくは、必ずしも被結合会社が消滅してしまうようなケースに限らず、その子会社として据え置かれるところも含んでいる。つまり、そのような意味では一種合併のある領域も含んでいると思われるのです。2ページのところですけれども、これは後々明らかになるのだと思われるので、本日お答えいただかなくてもいいのですが、基本的な考え方のところで取得ということが出てくるわけですが、これは日常的な意味なのかもしれませんけれども、その次の3ページでは、支配ということが出てくるわけです。常識的に言うと、取得しても支配しないというケースがあるとすると――支配の狭い概念かもしれないのですけれども、仮に取得しても支配しないという形態があり得るとすると、取得日及び支配の定義から漏れるものがそれなりにあるということになるので、この取得と支配というのを多少整理していただかないと。つまり、取得しても支配に該当しないケースがこの支配の定義とか取得日を確定できないということになりますので、少し整理をしていただかないとわかりにくいかなという感じがします。

○斎藤部会長

予想される問題についてもう少しエラボレートしていただけませんでしょうか。

○大日方委員

この場合、ここで言うパーチェス法は、極端な言い方をしますと、連結の範囲に入ってくる限り、例えば20%でもここで言うパーチェス法の適用があるのかないのかわからないわけですが、とにかく株式というものを買いさえすればというか所有さえすれば取得ということに該当する。ところが、いわゆる支配というのは、通常の意味だとしますと、意思決定権限をコントロールするということですから、単なる持株基準でいえば50%超というところになるわけです。そうすると、取得したけれども支配しないケースというのが当然20%以上50%以下のところで一応存在していて、そうすると取得日とか支配の定義のところがわかりにくくなってしまうわけです。つまり、そこのところをきちんと整理しないと、取得だったら取得一本で言葉として整理できないものか、あるいは、支配だったら支配一本で整理できないものかというところを考えているわけです。私自身も今のところ別に考えていないのですけれども、できれば少ない方で用語を統一していただいたらと。

○斎藤部会長

わかりました。

黒川委員、どうぞ。

○黒川委員

今のところで、段階的取得という言葉が出てきますよね。ですから、そこで考えると、段階的取得で例えば20%、5%とかで取得をしていって、しかしそれで例えば持株基準でいけば50%を超えた段階で支配と、このような使い分けをしているのでょうか、あるいは、ここではそういう使い分けをしていないのでしょうか。ここでの取得の使い方について確認したいのですけれども。

○斎藤部会長

松岡委員、ご発言はありますか。

○松岡委員

私がここでイメージしておりますのは、3ページ目の「取得日及び支配の定義」に書いている額面どおりでございまして、取得日とは云々と書いておりますが、支配が取得企業に事実上移転した日が取得日だと、そういう意味でございます。支配については、先ほども申し上げましたように、ここでの表現は現行の国際会計基準に倣っているということでありまして、私の記憶に間違いがなければですが、米国基準におきましては、基本的には持株基準で50%超と現在の規定でもうたわれている箇所がある一方で、同様に、事業体に対して経営方針を事実上左右できるような場合も支配しているというような、両方の表現があったかと思います。基本的には、取得日は支配自体が事実上移転した日ということでございまして、一方、ご指摘がありましたが、2ページ目のこの企業結合が取得に該当するときの「取得」というのは、逆に言うと、当然に連結の範囲に入ってくるというような意味で私の方ではここでは使わせていただいてございますが、大日方委員のご指摘の趣旨はよくわかりましたので、いい方法があるかどうか検討させていただきたいと思います。

○斎藤部会長

黒川委員、よろしゅうございましょうか。

○黒川委員

よくわかりました。

○斎藤部会長

ほかにご発言はないでしょうか。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

今日のこのご説明の趣旨ではないかもしれませんが、実務面からみて、もし基本的なアイデアがあれば教えていただきたいのですが。

4ページ目に例えば「適切な利率」という言葉が使われています。さらにその下で、「正常利益を控除する」というこの「正常利益」とか、この「適切な利率」というのはその後の5ページでも使われています。それから、5ページで、例えば、土地などを取得する場合の「市場価値」というのもあります。市場価値も、売却価値、処分価値、使用を続ける価値、いろいろなものがあるのですけれども、そういうものは――今日の議論の趣旨ではないかもしれないのですが、もし基本的なアイデアのようなものがおありでしたら教えていただきたいと思います。

○斎藤部会長

松岡委員、どうぞ。

○松岡委員

私がお答えできる範囲内でという前提でございますが。まずここで書かせていただきました「正常利益」というのは、対象会社あるいは同様の会社が同様の現行の製品の販売過程において、通常の営業努力をしたならば得られるであろうと想定されている利益でございまして、ある製品であれば、例えば粗利が20%ぐらいですと、それが通常の現行の経営努力をした場合に獲得されるということだと仮にいたしますと、見積売価からその販売コストと売価から20%見合いという意味で正常利益を控除したというような概念かと思います。したがいまして、ここで書かせていただいているもので申しますと、製品・商品・仕掛品は、むしろ販売価格から算定しているといいますか、イグジットバリューのような意味でございまして、逆に材料で言っている再調達原価というのは、エントリーバリューといいますか、購入の再調達でございますので、そういうようなイメージでございます。

続きまして、土地・建物の「市場価値」、これはマーケットバリューという意味で市場価値と書かせていただきましたが、実務上は鑑定評価額が用いられる場合が多いように伺っておりますが、その場合の鑑定評価額も、算定方法の前提ですとか、ケース・バイ・ケースでいろいろあるかと思われますので、必ずしもしっかりお答えはできませんが、アバウトに申しますと鑑定評価額というようなイメージの方が多分実態に則しているのではないかなと考えます。

最後に、「適切な利率」でございますが、これについては恐らく、日本の場合には、債権についてなかなか市場が、成熟化の度合いが欧米と比較すると違うかもしれませんが、回収条件あるいはその時点で判断する適切なマーケットの利率に見合った利率で割り引くという意味での「適切な利率」だと私の方ではイメージしております。

○八木委員

ありがとうございます。ついでにもうひとつ。

ここで退職給付純債務のお話がありまして、私は今の説明を伺った限りでは一気に認識するというように承ったのですが、これは数理差異だとか変更差異だとか勤務費用とかで認識していくようなたぐいのものだと思うのですが、例えば8割ぐらい持っているところを 100%まで買い増しするような部分的に買収していくようなケースといった場合には、これは一気に認識するというのと段階を追っていく場合とで説明が難しくなるということはないのかなと漠然と感じたのですけれども、その辺はいかがでございましょうか。

○斎藤部会長

松岡委員、どうぞ。

○松岡委員

非常に難しい問題かと思いますが。例えば、もともと80%所有をしている会社でなくて、単純化して申し上げますと、一切資本関係のない会社を100%取得した場合におきましては、基本的には、買収価格を算定する際に、当然、保険数理上の計算という仮定ではございますが、反映されて金額が決まっているはずでございますので、その場合には満額、保険数理、利差損益等、移行時差異も含めまして、即時ですべて認識するのが経済実態に則しているのではないかと考えますが、一方で、確かにおっしゃられましたように、80%を仮に取得している、もともとの子会社について買いました場合についての取扱いについては、むしろ連結の処理として検討すべきかとも考えておりますので、ここでは具体的なご回答は避けさせていただきたいと思います。

○八木委員

どうもありがとうございました。

○斎藤部会長

ほかに。

山田委員、どうぞ。

○山田委員

2つあって、ひとつは非常に小さな問題なのですけれども。

5ページの今言われたマル8のところの、「買入債務・借入金等」の「適切な利率を用いた割引現在価値」というところで、いわゆる金利リスク以外の信用リスク等々についてはどのようにお考えかというのが1点。

それからもうひとつは、8ページのところにありますが、「少数株主持分の性格」についての記述があるわけですけれども、このプロジェクトは、ここでの議論の中で少数株主持分の取扱いについて何らかのことを考えなければいけないという意味でここにお挙げになられたのか、その辺の意図をお聞きしたいという、2点でございます。

○斎藤部会長

どうぞ、松岡委員。

○松岡委員

個人的な見解という前提でお答えさせていただきますと、まず1点目のご質問でございますが、ここでは、私は、信用リスク等は考慮してございません。私のイメージとしては、基本的に信用リスクは考えておりませんので、どちらかというとリスク・フリー・レートに近いような概念を持っているとお答えさせていただきたいと思います。

2点目の少数株主持分の性格につきましては、必ずしもこの段階でこの企業結合の検討で決定すべきだとは考えてございませんが、連結の処理との整合性などなどを考えますと、将来的には当然検討すべき論点になるのではないかという意味で「その他」の中に入れさせていただいたと――「その他」ではございませんが、そのような認識のもとで記載させていただいたということでございます。

○斎藤部会長

山田委員、よろしいですか。

西川委員、どうぞ。

○西川委員

今の前段のリスク・フリー・レートはないのではないかなという感じがします。やはり購入者のリスク、自分のリスクが入ったレートではないかという感じがします。

○斎藤部会長

まず今の問題点に関連してご発言はありますか。

大日方委員、どうぞ。

○大日方委員

パーチェス法の定義づけに依存しているわけですが、あたかもマーケットから買うのと同じなんだということでパーチェスを位置づけるのであれば、この債務引受は追加的なリスクを負わずに支払うことができるという観点で評価するというのが筋ではないか。流動化マーケットのようなものがあると話はわけがわからなくなるのですけれども、基本的には、債務引受は他の第三者でも十分に引き受けられるという条件だろう。ただし、難しいのは、恐らく松岡委員の頭の中ではデット・アサンプションのようなイメージがあって考えておられるのかわかりませんけれども、ここは両方の説があり得る。取得会社側が自分の債務とした場合での時価評価額という議論もあるかもしれないのですけれども、原理原則はやはりその債務引受をするときの幾らで価額がつくかということを考えるのがいいのだろう。そしてそのときのレートは、リスクフリーなのかどうかはよくわかりませんけれども、マーケットで債務を売っているというと話が面倒臭いのですけれども、それが原理原則だと思われます。

○斎藤部会長

黒川委員、どうぞ。

○黒川委員

今のところは大変興味深い論点で、大日方委員も2つあるだろうとおっしゃったのですが、取得した方の会社のリスクというようなこともやはりあるだろうと思います。ですから、例えば被取得会社の借入金とか仕入債務を取得した段階で、どのように保護されるというか、支払義務が生じているかの契約にもよるかと思いますが、しかし、対第三者的に考えて、合併の場合は法的に一緒になってしまいますから恐らく存続会社がすべて責任を持って支払う義務が生じると思います。その場合には、やはり存続後の会社のリスク、もしリスクを勘案するのであれば、そのようなリスクになるだろう。それから、買収で子会社になっていた場合には、子会社としての法的実態がございますので、以前からの会社のリスク等々で支払義務が存続しているのか、あるいは、連結になって親会社の信用力というもので支払義務等々が決まってくるのかということも関係してくるかと思います。

いずれにせよ、私が言ったのは、もし合併であればかなり取得会社の方が強くなってくるのではないだろうかと、そのようなことも考えられます。したがって、大日方委員が2つあると言ったときに、合併と買収でやはりその形態によって違うこともあり得るかもしれないということと、その債務、借入金、社債等々いろいろなものがあると思いますが、それの個々の契約条件、金融負債の形態、これによって個々が変わる可能性が――細かく検討しようと思えば検討しなければならない問題が出てくるのではないかというような気がしております。

○斎藤部会長

そのご発言は、ディフィーザンスのようなケースはないというご発言ですか。

○黒川委員

いや、それも含めて、合併あるいは買収の包括契約を何か株主間でするときに、ひとつひとついろいろあった場合に被買収企業あるいは被取得企業がどのようなものを持っていて、それについてはどのようなことになるのか。例えば担保付社債のような場合に、担保があった場合に、その担保権はどのように引き継がれてくるのかとか、そういうようなことまでも関係してくるのではないか、あるいは関係してこないのかわかりませんけれども、それも検討する必要が細かくみれば出てくるのかなということでございます。

○斎藤部会長

わかりました。

松岡委員、どうぞ。

○松岡委員

先ほど私自体に言葉足らずな点があったかもしれませんので、誤解のないように申し上げさせていただきたいと思いますが。

基本的に、リスク・フリー・レートがよいというような趣旨で申し上げたのではございません。どういうことかと申しますと、例えば、買収する際に買収資金の調達方法として、株式を発行する場合ですとか、多額の借入を取得企業がして、その調達資金によって買収する場合などなど、恐らくいろいろなところでは、取得企業側の追加の加重借入平均コストですとか、あるいは、いわゆる資本コストが望ましいですとか、いろいろな論点があろうかと思いますが、いわゆる信用リスクを完全に反映したような格好で、被取得企業の例えば格付ですとか取得側の格付、いわゆる信用リスクに見合った率をその場合その場合だけで使うという意味ではなくて、そのような方法ではなくて、ある一定の、当然幅はあろうかと思いますが、リスクフリーに近いようなレートの方が概念的には近いのではないかなという意味でリスクフリーに近いと申し上げたわけでございます。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

黒川委員、どうぞ。

○黒川委員

先ほどの大日方委員のところで、大変おもしろい問題なのでさらにもう少し考えたいのですが。

買収とか合併の契約時において、相手の会社の資産とか負債をどのように認識して相手の会社を評価するかと、こういう問題も買収側では当然考えていると思います。要するに、自分の会社の状況と相手の会社の状況を双方それぞれが考えていると思いますが、そのときに、相手の、被買収会社の資産・負債の内容をどのように考えるかといったときに、本当に買ってくると言いましても、買ってきた後の段階で、わが社に取り込んだ段階でどのように支払義務が生じてしまうのかと、そういう観点で相手の会社を取得会社の方は評価しているかもしれない。要するに、相手の会社の今の状況で、例えばバンクラプシーコストがどのくらいあってとかというような状況で買ってくるのか、あるいは、相手の会社を自分のところに取り込んだ段階でどのぐらい支払義務が生じるのかを考えて相手の会社を評価しているのかということにかかわってくるのではないかと思います。

それで、もし仮にわが社の方に取り込んできてどのように支払義務があるのかというように考えて相手の会社を評価しているとするならば、それは取得した会社の方のリスクレートのようなものをもし仮に勘案するのであればそれで評価しているはずだろうと思うので、単純に相手の会社の企業評価をしているときに、相手の会社の現状の状況で評価しているかどうかは実はわからないのではないか。余りこれは議論されていなかった問題ではなかったろうかと、このように今はたと思いついた次第です。

○斎藤部会長

話がすごく難しくなってしまったのですけれども、今、黒川委員がおっしゃられた論点というのは、基本的には合併取得の対価の評価の問題だと思うんですね。しかし、現在論点になっているのは、個別の資産・負債をどのように承継するかということであって、パーチェスの場合はそれをフェアバリュー、マーケットバリューで評価する。したがって、その評価は、現在、取得する会社は、自分が買うから幾らという話ではなくて、マーケットの評価なんですね。そういう観点から引き受ける負債についても考える必要があるということは、やはり注意しなければいけない感じはいたします。

やたらに難しい問題なので、もし補足的にいろいろご発言くださる方がおられたらお願いしたいのですけれども。

北村委員、どうぞ。

○北村委員

私も、今、斎藤先生がおっしゃいましたように、被取得企業の資産・負債の公正価値をどう設定するかということでいろいろな方法があるわけですから、そのように考えるべきだろうと思っております。

それから、もうひとつお伺いしたいのは、割り引く場合の利子率がリスクフリーなのかどうなのかというようなことも出ておりましたが、例えば受取債権の場合には、回収不能額等々を先に控除して割り引く場合といったら、これは恐らくリスクフリーなのかと。そのときに、私が今一番自分の研究テーマとの関係でわからないことは、資産を割り引く割引率と、負債の次の5ページ目の適正な利率の割引率でして、もしこれをリスクフリーでやるのだったらやはり同じ率を持ってこないと――年数等々の関係はありますけれども、そのような考え方でよろしいのでしょうか、それとも、マーケットが違うというように考えるのでしょうか。そこを教えていただきたいと思います。

○斎藤部会長

松岡委員、ご発言はありますか。

○松岡委員

まず、実務上の取扱いといいますか規定ぶりですが、どんな場合も割り引かなくてはならないというような規定にはなってございませんで、基本的には、1年以内ですとか、短期のものについては割り引かなくてもいいですよというようにほぼ規定はなっているかと思います。おっしゃられましたように、回収あるいは支払いのスパンが長いものにつきましては、当然、割引現在価値を使った方がいわゆるフェアバリューに近くなるのは確かなことでございますので、そのような場合には当然に割り引いた方が望ましい。そのような条件のもとで、個人的な見解ですが、必ずしも資産サイドと負債サイドの適切な利率、期間が同じであっても同じものをマストで使用しなければならないというところまでは合理的な理由が見出せないものですから、やはりケース・バイ・ケースかと考えております。

○斎藤部会長

北村先生、よろしゅうございますか。

○北村委員

はい。

○斎藤部会長

ほかにご発言はございますでしょうか。

万代委員、どうぞ。

○万代委員

4、5ページで、特に費用性資産の棚卸資産について、特に正常利益を控除した額をもってフェアバリューと考えるという、なぜ利益を控除していくのかという、その基本的な考え方といいますか、それを教えていただきたいのですが。

○斎藤部会長

松岡委員、どうぞ。

○松岡委員

恐らく日本を除いて欧米の方では、例えば棚卸資産の評価ですと低価法が強制でございまして、低価法の場合に使用する時価の概念としては、いわゆる正味実現可能価額に近いような、あるいは再調達原価が使われているはずでございますので、そのような観点から考えますと、正味実現可能価額ですと正常利益は入っていると考えられるかもしれませんけれども、再調達価額には入っていないわけでございまして、どちらが高いかというのはケース・バイ・ケースだと思うので、正常利益を控除するということが必ずしもそのようなものと矛盾しているとは私の方では考えておりません。

回答になっているかどうかわかりませんけれども、申しわけございません。

○万代委員

なぜそのようなことを言うかといいますと、例えば仕入先から商品1個を仕入れてくれば、これは支出額ですから売価で評価するわけですよね。ところが、仕入先丸ごと買ったというときには売価ではないということですよね。

○斎藤部会長

黒川委員、どうぞ。

○黒川委員

先ほどとの関係もあるのですけれども、これは全く万代委員がおっしゃったように、まさに相手の会社のそのときのマーケットであれば売価になると私も思います。ところが、この例でいくと、売価からまず処分費用を引くと正味実現可能利益、それから利益を引いていますから、どちらかというと再調達時価系統に近くなるはずなんですね。ということは、相手の会社の今言ったマーケットで売るであろう価格ではないわけですよ、要するに、これは取り込んだ後、自分の会社になった後でこれを処分すれば、もうこの評価の段階で利益が出るだろう価格になってしまっているわけですね。

したがって、どこが違ってくるのかというと、のれん部分にこれが入るかどうかにかかわると思います。先ほどの負債の評価もそこだと思います。結局、負債をどのようにするかということと対価との関係でのれんが決まりますから、のれん部分に先ほどの取得した方の会社のリスクが関係するのか、相手の方の会社のリスクが関係するのかが、こことの関係でまた出てくると思います。ですから、この費用性資産の方からみると、何が市場価格といった場合にはどうも相手の会社のエグジットではないようにも思うわけです。そこは関連性のあるところだと少し言いたいところです。

○斎藤部会長

万代委員のお話ですが、今言われているほど多分ここで書かれているのは難しいことではなくて、合併された会社がそのままマーケットで売れば、利益が出ているはずのものを合併してきて取り込んだときにその売値でもって評価したのでは、利益が合併の段階で資本に組み入れられてしまうと、だからその分を評価額で引いているというくらいの簡単な話ではなかったかと私は思っていたのですが、松岡委員、どうですか。

○松岡委員

確かにそう思いますけれども、万代委員がおっしゃられたように、例えば商品を購入、通常の取得・購入と同様にという会計処理を強調いたしますと、通常の商品を買った場合にはその時点での時価のまま認識されると、ただ、企業結合の場合にはそうではないということが一方では事実だということは認識していますけれども、基本的には、その時点での時価で受け入れてしまいますと、取得側の企業が例えばそのまま外部に売った場合に利益は出ないわけですよね。取得とともに、被取得企業側での活動から本来の企業活動であれば実現するであろう利益が取得受け入れ時で、ある意味実現と申しますか、確かに資本に組み入れられてしまうという結果になろうかと思いますので、そのような点も考慮されているのではないかと考えます。

○斎藤部会長

万代委員、よろしゅうございましょうか。

○万代委員

ありがとうございました。

○斎藤部会長

ほかにご発言はないでしょうか。

安藤委員、どうぞ。

○安藤委員

8の「その他の検討事項」で、9ページのマル1の「資本の増加額の取扱い」で「個別財務諸表上も資本の増加額のすべてを拠出資本とすることを強制するかどうか」とありますが、ここをもう少し説明していただけますか。

○斎藤部会長

松岡委員、どうぞ。

○松岡委員

今後どうなるかはわかりませんが、例えば今検討している基準が連結財務諸表上のみに適用されるものになるのか、あるいは個別財務諸表も含んだ形で適用されることになるのかはまだわかりませんけれども、仮に後者になったといたしますと、合併の場合ですと法的にはひとつの企業でございますので、それを強制して、仮に拠出資本としてしまいますと、被取得企業の留保利益を引き継げないということになってしまうわけです。一方、商法の方では、もうご承知のとおり、消滅会社のうち利益剰余金については引き継ぐことができるというような規定がございますので、必ずしもその規定と抵触を来すかどうかはわかりませんが、そのような点ももしかしたら支障を来すかもしれないので、拠出資本、要するに、留保利益としては一切取扱わないということを必ず強制していいのかどうかと、疑問があるという意味で書かせていただきました。

○斎藤部会長

安藤委員、どうでしょうか。

○安藤委員

恐らくパーチェス法の本旨からすれば、これはすべて拠出資本とするというのが本旨だと思いますけれども、今言われた意味はわかりました。現行制度とのギャップというのか、実際に産業界なりのことを考えてというように理解いたしました。

○斎藤部会長

ほかにご発言はないでしょうか。

山田委員、どうぞ。

○山田委員

このプロジェクトの影響の及ぶ範囲ということでお聞きしたいのですが。

先ほど、今の安藤委員に対する松岡委員の回答にもあるのですが、連結原則に随分関係してくる問題点もあるように思います。例えば、先ほど私が質問しました8ページの7の「少数株主持分の取扱い」ですとか、それ以降にある全面時価評価法とか部分時価評価法、それから段階法等々の問題というのも、ある意味では連結原則の方で既に規定がございまして、例えば既にIAS22号と日本の基準は差異があるわけですけれども、そういう部分を含めて現行の連結原則も当然ここの見直しの範囲として考えているという理解でよろしいのでしょうか。

先ほど大日方委員が最初に言われた合併の話だけなのか、企業結合全般で今のこの議論をみていますと、どうしても連結の問題に触れざるを得ないような気がするのですが、その辺はいかがでしょうか。

○辻前企業会計専門官

連結原則との関係はまだ細かくは考えていないのですが、私どもの方でも山田先生がおっしゃったような点について関係してくることに気がついております。そのあたりはこの場でのご議論で得られた結論によっては当然連結財務諸表原則に触れざるを得ないと考えておりまして、このような形で出させていただいております。

○斎藤部会長

よろしゅうございますか。

○山田委員

はい。

○斎藤部会長

ほかにご発言はないでしょうか。

大日方委員、どうぞ。

○大日方委員

5ページのマル7に「繰延税金資産・負債」というのがございますが、私はよく実務のことがわからないので具体的なイメージがわかないのですけれども、パーチェスですと企業を買うかマーケットで個別に何かを買うかということは同じであるということからすると、このようなものがなぜ出てくるのかよくわからないというのが1点です。

仮にもし税効果が必要な項目があったとしてですが、これを合併の会計処理に織り込んだ場合にはこの額の大小がのれんに影響を与えるわけですが、合併の会計処理に織り込まずに取得後の取得側企業の処理に織り込めば、それはそのまま、税効果ですから、その期の法人税費用に影響を与えるということにもなるわけです。つまり、これは合併処理に織り込むべき事象なのか、切り離して独立に取得後その企業がやるべきものなのか、対象となる具体例がよくイメージできないので確定的なことは言えないのですが、代表例のようなものが今わかりましたらお教えいただきたいのですが。

○斎藤部会長

いかがでしょうか。

○松岡委員

これもお答えになるかどうかわかりませんが、恐らく私が思うに、被取得企業の合併前の貸借対照表上に計上されている繰延税金資産・負債をそのまま引き継ぐですとか、そのようなことではないですよというような注意も含めまして、当然に公正価値で受け入れた後にそれにリンクする形で認識するという程度の内容だと思います。よく説明として使われているのは、被取得企業が多額の繰越欠損金を持っておりまして収益性に欠ける。したがいまして、合併前の被取得企業においては繰越欠損金に対して繰延税金資産が例えば一切計上されていなかったと、そのような企業を収益力のある取得企業が合併した場合には節税効果が当然にありますので、そのような場合には合併後においては繰延税金資産が計上されることになるというような説明パラグラフはよくみかけます。当然ご承知のとおりだと思いますけれども、その程度のお答えしかできません。

○斎藤部会長

よろしいでしょうか。

○大日方委員

今ご説明があったのは、繰越欠損金については恐らく合併対価の算定にも織り込まれていることでしょうから、むしろそれは合併の会計処理に入れないと変なので、そのことはわかります。私が危惧したのは、当然のごとく、繰延税金資産・負債はパーチェス法の場合は引き継がれることはないことはおっしゃるとおりで、もうひとつは、これはまだ将来は全くわからないのですけれども、ディスクロージャー上の合併上の評価額と税務上の評価額が違う場合なんですね。受け入れに当たって、違う形で受け入れなければいけないということが仮にあったとしたときに、それは合併の会計処理でやるのではなくて、合併後、取得企業の側の税効果でやった方がいいのではないかという――確定的なことはわからないのですが、その点について何かいいアイデアがあったら教えていただきたいと思っておるのですが。

○斎藤部会長

必ずしも松岡委員お一人がお答えしなければならないと思っているわけではありませんので。

西川委員、どうぞ。

○西川委員

繰越欠損金は別として、一時差異が引き継がれるケースというのは――余り税法は詳しくないのでわかりませんけれども、あり得る。かつ、この合併という事態で新たに一時差異が発生するということもあり得るということだろうと思いますけれども、一時差異だとか繰越欠損金というもの自体はだれがどう考えても確実に税法と会計の差ということで明らかなもので評価の余地はないだろう。

ところが、会計処理としてはそれを繰延税金資産にするときに、必ず回収可能性を評価しなければならなくなるということがあって、そうすると回収可能性はだれかの回収可能性でないと計算できない、単純に税率だけ掛ければ完全に回収可能だという評価をしたという意味になりますから、そうするとものすごく収益力のあるということを一応前提にしているということになってしまうのだろうと思います。

企業結合の瞬間に発生する一時差異を同時に繰延税金資産に計上すべきかどうかという話は、理屈上はやはり同時に認識すべきだとは思うのですけれども、実務上それがうまくいくかどうかということが恐らくあるのだろうと思います。やりようとしては、さきほどの話に似てくるのですけれども、やはり取得者が取得した後でどのような回収可能性の状態になるかということでしか評価はしづらいのではないか。それ以外はもう完全に仮定だけになってしまって、結局は取得者の中で回収可能性を検討するというようなことになるのではないかと考えます。

○斎藤部会長

小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員

先ほど資産の評価は税と会計では違うという話があったのですけれども、141と142になったのでルールが変わっていますけれども、前のパーチェスとプーリングの世界のときには、最終的な双方の差額というのは税務上ののれんと会計上ののれんにしか行かないんですよね。そうすると、税務上損益に算入されない会計上ののれんの分については、税効果をとらないという考え方になるのだろうと思います。

先ほどから出ている議論は、すべてそののれんに集約されるような議論でして、繰延税金資産・負債についてどのように合理的な予測をするかというのも、今までは繰延税金資産が後で見直されたときはグッドウィルを修正するというような処理が割と簡単にできた部分があるんですね。今度は、もしのれんを最初に固定してしまって、あとは減損処理しか適用しないということになると、非常に不自由な処理が恐らく生じてくるんだろうと思うんですね。この辺によって相当、資産評価の方法もそうだし、割り引く割り引かない、利率に何を使うかという問題もそうだし、要するに、のれんの処理によって逆算的にひもをつける部分が今日の話では非常に多かったような気がいたします。

○斎藤部会長

そうですね。今の繰延税金資産の話は、これはだれが買うかで価値が違っている資産なんですね。ですから、パーチェス法の概念とは本当は合わないんですね。つまり、パーチェスというのは承継する資産・負債についてはマーケットバリュー、フェアバリューで評価をするということであって、フェアバリューというのはだれが買うかで価値が違わないものを言うわけでありますから、本来は、今のような、だれが買うかで価値が違っているものが承継する資産・負債に入り込んでくるということ自体、パーチェス法の概念に無理があるんですよね。しかし、それを計上しなければどこに行くかというと、今、小宮山委員がおっしゃったとおり、のれんに行くしかないわけであって、そののれんの中身――つまり、のれんというのはだれが買うかで価値が違う資産ですから、その中身をどう考えるかというその後に問題になってくるだろうというのは、多分、大日方委員のご指摘の論旨ではないかと思うのですけれども、これも非常に困った悩ましい問題ではありますよね。

ほかにご発言はないでしょうか。

長坂委員、どうぞ。

○長坂委員

これは質問でもないのですけれども、7ページの「条件付取得対価の会計処理」で、当社の事例を思い出したのでお話しします。現金で買収するという事例がありまして、ある一定時点で買収する。その時点の財務諸表上の純資産額が幾らという仮定である金額を決めて取得する。その後、純資産額が正確に出た時点でその差額を調整して買収価額を変えるというような事例があったのですが、それがこのようなものに当たるのかなと考えました。結構その純資産額を確定するのに双方でいろいろあって二、三年かかってしまったのですけれども。

最後に質問なのですけれども、それは先ほどのアロケーションピリオドの1年以内というところにはかかってこなくて、やはり二、三年後に調整するということでよろしいと考えていいのでしょうか。

○斎藤部会長

では、松岡委員。

○松岡委員

そのようなお考えで結構ではないかと思います。アロケーションの方は識別可能な資産・負債でございますので、恐らく今のお話ですと現金での買収価額自体の価額決定の条件として相手先のある特定時点の純資産額が幾らか――逆に言うと、恐らく純資産ですので、それまでの利益といいますか、業績ぐあいによって買収対価を修正するというような契約のように理解しますので、恐らくそういうことでよろしいのではないかと思います。

○斎藤部会長

どうぞ、梅山委員。

○梅山委員

先ほど、「公正価値の測定方法」のところで、製品・商品のところは売価から正常利益を控除した額を認識するというお話がありましたが、例えば投資目的の有価証券等についても、これを買収時点で公正価値でもし評価しますと、その間に想定した、ないしは想定できた利益が結局は資本に移ってしまう。いわゆる商品のひとつである有価証券については利益が生じないという格好になるような感じがいたしまして、その辺のところが十分理解できないのですが。

○斎藤部会長

それは時価で評価されている金融商品と考えていいですね。時価で評価され、かつ、時価で損益認識をされている金融商品ですか。

○梅山委員

時価も2つございます。時価で評価して損益にチャージするものと、時価で評価して資本に直接チャージするものがありますが、後者の場合を今私は念頭に置いたのですけれども。

○斎藤部会長

資本に持っていく方ですね。

○梅山委員

はい、そうです。

○斎藤部会長

そうしますとおっしゃるようにリサイクルできなくなりますね。それはそうだと思います。

○梅山委員

それでいいのかなという疑問があったものですから。

○斎藤部会長

せっかく今問題をお出しいただいたのですが、私はこれを言い出しますといろいろ言いたいことはいっぱいある議論なので、大変大事な問題だと思っておりますけれども、どなたかおっしゃってくださる方があれば、ごく短時間でご発言いただいて次へ移りたいと思います。特にないでしょうか。

では、問題提起として承っておくということでよろしゅうございますか。

○梅山委員

お願いいたします。

○斎藤部会長

残った時間が大分少なくなってまいりましたので、今日の「パーチェス法の検討その1」に関する意見交換はこの辺で打ち切らせていただきまして、本日はIASB理事の山田委員が出席されておられますので、お差し支えなければ最近のIASBの審議状況について御説明をお願いいたしたいと思います。

○山田委員

それでは、11月に開催されましたIASBの会議でのビジネスコンビネーションに関するお話をさせていただきたいと思います。

大きくは2つ議論をしまして、ひとつはビジネスコンビネーションの1というものと、もうひとつはビジネスコンビネーションの2でございまして、まずビジネスコンビネーション1の方からお話しいたします。

1は既に数回過去議論しているものでございます。11月に議論をしましたのは3点ほど大きなところでございまして、ひとつは、のれんの減損処理を今のところ検討しているわけですけれども、そのときに見積もったキャッシュ・フローの正しさというか有効だったかどうかを事後的に検証するためのキャッシュ・フロー・テストを入れるべきではないかという主張がございまして、それについて検討しました。すなわち、現在のアメリカの提案の中ではそのようなポイントはないわけですけれども、経営者が予想したキャッシュ・フローに基づいてそのまま減損計算をしてしまうというのは問題ではないかという指摘が一部にあり、それを厳しくというか、事後、アクチュアルに入ってきたキャッシュ・フローで、見積もったキャッシュ・フローがどの程度正確であったかを検証し、その結果を開示させる――必要によっては追加で減損を認識するというようなテストを、減損の兆候があってチェックをしたときから5年間やってはどうかという提案がございまして、かなり具体的な提案がありました。最終的にはこれは要らないということになりまして、そのかわり、キャッシュ・フローをどのような形で見積もったのかという見積りに関する追加的な開示を――見積方針とか、どのような前提を置いたのかというような開示を財務諸表の注記の形でするのがいいのではないかという方向で議論が進んでおります。

もうひとつは、今日も少し議論が出たのですが、企業結合の2当事者が例えば完全親会社をつくって、その親会社のもとにぶら下がるというスキームをつくったときに、一体その下にぶら下がる2社は全部パーチェス法で処理されるべきなのか、そのような仕組みをとったとしても、当事者のどちらか一方は継続企業というかそのまま簿価を引き継ぎ、他方のみを被買収企業とみるのかという見方について議論がされました。オーストラリアの方では、完全親会社をつくって下に2つぶら下がったようなときは、完全親会社は簿価で――簿価というのは実質何もないわけですけれども、下にぶら下がった2つは全部パーチェス法で処理するということがございまして、そういうことが必要ではないかという指摘がありまして検討しました。その結果、議論の方向としては、既存の当事者のどちらかを買収者、どちらかを被買収者とするような処理がいいのではないかということになりました。

3点目は、IAS22号自体の規定の明確化を少しすべきではないかということで、特に問題になったのは、支配を獲得するまでの間に何段階かを経て取得したときの段階取得の会計処理の規定があるのですが、はっきりしていないので少し明確化してはどうかということで、現状のIASの規定の理解をスタッフが書いたペーパーが出まして、それに基づいて議論をして、それでいいのではないかという結論になりました。基本的には、例えば20%を取得し、その後50%を取得して70%になった場合に、その対象の株が取得原価で評価されているか、公正価値で評価されているか、持分法で評価されているかにかかわらず、全部結果は一緒になるような形で処理をするというのが結論でございます。それから、ひとつ違うのは、当初20%を取得し、その時点以後、例えば土地に含み益があって、その含み益が増加したような場合において、50%を買増して支配を取得した場合に、20%の部分に関連する取得以降の評価益については連結上は再評価積立金のような形で、含み益の変動を認識するのではないかという議論がされております。

もう少し細かい改善点もあるのですけれども、大きなところではこのような3点について、ビジネスコンビネーションの1というプロジェクトの中で議論されております。

もうひとつ初めてビジネスコンビネーションの2というプロジェクトについて非常にベーシックなペーパーが出てきたわけですけれども、この第2フェーズはFASBとIASBとが共同プロジェクトという形でプロジェクトを進めようと考えておりまして、実際にペーパーを用意したのはFASBの担当者でございます。基本的にはどのようなスコープでどのようなことを議論するかということでございますけれども、基本的にはパーチェス法の適用に当たっての細かい問題を検討しましょう、それから、ニュー・ベイシス・アカウンティングの可能性について、ニュー・ベイシス・アカウンティングが適用されるべき場合――どのような場合にどのように適用すべきか、このような大きく2点について検討すべきではないかということで、細かくスコープの問題とか、どのような作業原則でやるかというような幾つかの提案がなされて原則的に了解されているのですが、例えばスコープの中には少数株主持分の問題ですとか、現行のIASの段階取得自体も少し見直して、さらに支配獲得後の持分の変動も場合によっては対象にしてはどうか、それから、先ほども議論が出ました、取得資産・負債の測定の問題についても、基本的に、細かいガイダンスを含めて、個々の資産・負債にターゲットを絞ってガイダンスをつくるようなことを考えてはどうかというものが一応対象として提案されております。

また、作業原則といいますか、これは簡単な原則ですけれども、基本的には、ビジネスコンビネーションの会計処理に当たっては、取引では公正価値が等価で交換されたということを大原則にして会計処理の原則を打ち立てていこうということが合意されております。

細かい議論が少しあったのですけれども、基本的にまだ第1フェーズも終わっていない段階で第2フェーズを議論するというのもおかしな状況でございまして、現在、IASBとしては、第1フェーズの公開草案の公開準備を大体来年の3月ぐらいまでをめどにやりたいと考えているのですが――私見ではもう少し遅れるのではないかと思うのですが、そこまでに大体検討を終えたい。当初は年内公開草案というような予定で進んでおりましたが、FASBは141、142を出してもう第2フェーズに実は入っておりまして、IASBが遅れている関係で、第1フェーズも終わらないうちにIASBとしては第2フェーズに引っ張られているというのが議論の現状でございます。結論的には、第1フェーズについては3月を目指して議論を進める、第2フェーズはそれ以降FASBと一緒に議論をしていくという状況でございます。

それから、来週からの会議では3点ほど検討項目がございます。ひとつは、のれんの減損の具体的な会計処理について、142号で言っている二段階の減損の認識をIAS36号の減損の規定との間でうまく整合性をとろうということを検討しているのですが、検討すればするほどなかなか難しい。それで、今回スタッフからは、アメリカの142号と合わせるのは難しいかもしれなので、IASとしては36号を当面の間使うことでどうだろうか、つまり、キャッシュ・ジェネレーティング・ユニットに認識された減損は、最初にのれんから引き落とすというような形での処理を当面続けたらどうかというような提案がなされております。

2点目は負ののれんの処理でございまして、最終的に負ののれんの負債計上は認めないことが過去に決まっておりまして、それをもう少し精緻化してはどうかということで、基本的にはあるテストをして、早めに収益認識をするというような提案がなされております。

3点目が、株式を企業結合の対価として発行した場合の対価の測定日で、本日も松岡委員の方からご説明があったものについて、基本的には合意が成立した日ないしは合併比率等の主要な条件が決まった日と考えていただいていいかと思うのですが、そのような日を用いてその株式の価値を測定しようという方向での議論が予定されております。

以上です。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

なかなかIASも多難でありますけれども、我々もずっとIASを横目でみてエンドレスに議論をしているわけにもいきませんので、着実に公開草案に向けて議論を集約していかなければと思っております。

予定の時間がもう既に参っておりますので、本日の部会はこれで終了させていただきたいと思います。

次回の部会は、1月11日(金)の午後を予定しておりますが、詳細につきましては改めて事務局からご連絡いたします。

本日はお忙しいところまことにありがとうございました。これで散会させていただきます。

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