平成14年7月30日
金融庁

企業会計審議会第21回第一部会議事録について

企業会計審議会第21回第一部会(平成14年7月5日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

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企業会計審議会第21回第一部会議事録

平成14年7月5日(金)午後4時00分~午後5時54分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○斎藤部会長

定刻になりましたので、ただいまから第21回の第一部会を開催いたします。

皆様方には、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

当部会におきましては、前回までの審議においてパーチェス法とプーリング法のそれぞれについて意見交換を実施し、また、前回は特に商法に関係する論点について、時間をとって意見交換を行ったところであります。

これまでの審議は、パーチェス法とプーリング法の使い分けに関する審議は個々の方法の論点の検討が一段落してからということで進めてまいりましたけれども、今回を含めてこれから何回かを使いまして、パーチェス法とプーリング法の取り扱いについて意見交換を行っていくことにしたいと思います。

そこで、これから検討すべき選択肢としては、プーリング法が適用される局面を限定した上でプーリング法とパーチェス法を組み合わせる案と、米国基準などのようにパーチェス法に一元化する案が考えられようかと思います。これらについて、議論の材料となるように、市川委員に簡単な整理をお願いしておりますので、そのご報告をいただいた後に意見交換をお願いしたいと思います。

それでは、市川委員からご報告をお願いいたします。

○市川委員

市川です。よろしくお願いします。

私、論点整理が出た後から幹事に就任したものですから、それ以前の議論につきましては、少しわからない状況でありましたので、一応、論点整理後に審議を行った中の資料に基づきまして、簡単ではございますが、今回のテーマである組み合わせのペーパーを作成させていただきました。

今、部会長より説明ありましたとおり、大きく二つの組み合わせがあろうかなと思います。一つがパーチェス法とプーリング法の組み合わせ、もう一つは一本化のもの、大きくこの二つについての議論になるのかなとは思いますけれども、それ以外に、1ページの一番最後の備考欄に、フレッシュ・スタート法も一応掲げております。

実際、論点整理後におきまして、このフレッシュ・スタート法につきましては具体的な論点等の議論はなかったかと思いますけれども、論点整理でこのような方法があることが明示されておりますし、また、山田委員等の国際会計基準に関する資料の中で指摘されている個所もございましたので、それに基づきまして、一応、フレッシュ・スタート法についてご紹介させていただきました。

今回の資料の作成の仕方ですが、総括表ということで、1ページは組み合わせの論点を大きく掲げた後、2ページ以降、組み合わせと一本化の論点と、プーリング法、パーチェス法の主な論点を比較形式で掲げております。

この中で、前回、神田先生の方から商法上の具体的な解釈も示されましたので、そのようなことも折り込みながら要約している次第でございます。

4ページ以降に、パーチェス法とプーリング法を適用した場合の違いを具体的に明確にしようということから、図形式ないしは表形式でいくつか設例を設けております。具体的なイメージを持っていただきたいという趣旨ですので、後ほどこの点も含めて解説させていただければと思います。

6ページ、7ページは参考として識別基準ということで、国際会計基準22号の概要でございますとか、また、米国基準SFAS141番の取得企業の識別に関する第15項から第19項につきまして、翻訳を載せさせていただいております。国際会計基準22号に関しましては、第2回の部会資料に基づいて作成させていただいております。

それでは、1ページに戻っていただきまして、まず、組み合わせの点につきまして説明させていただきます。

まず最初の組み合わせ、パーチェス法とプーリング法を組み合わせる方法ですけれども、ここに書いてございますとおり、適用する局面が違うということです。原則パーチェス法で、プーリング法を適用できるというような位置づけではありません。状況によって使い分けるべきということでございます。具体的に申し上げますと、括弧にございますとおり、取得企業を識別できる場合にはパーチェス法を適用しなければならないということでありまして、また逆に、識別できない場合にはプーリング法を適用しなければならない。適用する局面が違うということでございます。

そのような意味からしましても、現行、時価以下主義ということで、ある程度幅広いプーリング法がわが国の会計実務の中では認められているのかなとは思いますが、その点は、ある程度線引きされるかというような考え方に基づいているところでございます。

取得企業を識別できない場合ということで、具体的に想定することはできないわけですけれども、例えば、※にございますが、国際会計基準22号のように、ある程度規模が同列の会社同士が、という形で具体的に基準化されるようなことになりますと、実際のプーリング法の適用はかなり限定されるのかなと思います。ただ、最近の日本の状況を考えてみますと、これまではライバル企業同士の合併等々の再編は考えられなかったかと思いますけれども、グローバル化した中で考えますと、従来はライバル企業だった者同士が一緒になるといったようなことも、最近よくみられるところでございます。ところが、長い歴史の中で、このような状況は極めて例外的にしか起こらないのかなと個人的には思いますので、実際問題プーリング法の適用は、かなり限定されることになるかと思っています。

プーリング法とパーチェス法の適用の組み合わせについての主な意見でありますけれども、実際問題、取得企業が識別できないような状況が想定される以上は、残すべきではないのかということになろうかと思います。

もう一つの方法でありますけれども、米国基準等のような形でパーチェス法に一本化したらどうかということでございます。これは「すべての場合にパーチェス法を適用すべき」というような基準になろうかと思います。

主な意見でありますけれども、取得企業を識別できないような場合というのは極めて例外的な場合でありましょうから、そのような例外的な状況を想定して、あえてパーチェス法以外の方法を用意する必要はないのではないかというような意見が一つ。

もう一つは、そもそも企業結合の中で、例えば合併ないしは子会社株式の取得といったような状況において、プーリング法を適用することを認めてしまいますと、本来、取得取引であるけれども、プーリング法を適用することにより適正表示を損なうといったようなことから比較可能性が損なわれることが問題視されるわけでありますから、そのようなプーリング法の乱用を排除することにより、逆に一本化した方が比較可能性が高まるのではないかといったような意見もあろうかと思います。

以上が大きく二つの方法ですが、備考欄にございますフレッシュ・スタート法について、簡単にご紹介させていただきます。

論点整理にありました定義を最初の点に掲げていますけれども、被結合会社の資産と負債の評価替えを結合会社の側にも適用し、結合会社の資産・負債を結合時に評価替えする方法ということです。取得された被取得企業の資産・負債の時価評価のみならず、取得する方の資産・負債も時価評価をしますという方法です。

これにつきまして、二つ目の点でございますけれども、取得企業を識別できない企業結合、上記でいうところのプーリング法を適用する局面でありますけれども、この場合には、むしろ当事者双方を公正価値で測定するフレッシュ・スタート法が適切であると考えるボードメンバーが多いというような記述が第18回部会の山田委員の資料にございまして、国際的には今後、検討すべき論点に位置づけられているという旨のご紹介があったところでございます。

ただ、実際問題、フレッシュ・スタート法をわが国の制度上、適用できるのかということですけれども、前回の逆取得のケースで神田先生から、商法上の資産評価規定を前提とすれば、逆取得の場合において、いわゆる商法上の存続会社について資産・負債を時価評価する余地はないんですよというお話もございましたので、実際問題としてフレッシュ・スタート法を考えた場合には、ここにございますとおり、新たに設立される会社、例えば論点整理にありました新設合併といったケース、このような会社に限定されるのではないかとは思います。今後、検討する論点ということは確かにございますが、現行の制度を考えた場合には、実際の適用は、新たに設立される会社に限定されるということがいえるのかと思います。

したがいまして、2ページ以降具体的に説明する中では、パーチェス法とプーリング法を組み合わせる場合と、一本化の場合の二つについて、それぞれの論点をピックアップさせていただきました。

2ページをお開きいただきたいと思います。

パーチェス法とプーリング法の主な論点として、被結合会社の資産・負債の評価の論点と、相手勘定の増加資本の処理の論点、さらに被結合会社の当期損益の引き継ぎの論点、最後にのれんの処理と大きく四つ掲げております。

プーリング法とパーチェス法を掲げてみますと、「同左」というように並んでおりませんから、すべて異なっているといえるわけです。したがって、ある局面でパーチェス法を適用するのか、プーリング法を適用するのかによって、結局、出てくるところの財務諸表の数字が大きく異なってくるといえようかと思います。

また、当然のことながら、パーチェス法とプーリング法の組み合わせの中でいうパーチェス法と、一本化のパーチェス法は変わりませんという意味で、ここは「同左」となっております。

まず、資産・負債の評価に関してでございますが、プーリング法は簿価のまま引き継ぎ、パーチェス法は時価に評価替えして引き継ぐという方法です。

二つ目、増加資本に関しましては、プーリング法は資本構成をそのまま引き継ぎ、パーチェス法の場合には拠出資本として処理し、そのとき交付株式の時価により測定します。

三つ目、被結合会社の当期損益の引継ぎに関しまして、プーリング法は期首から反映し、パーチェス法の場合には取得した後から反映します。

のれんの処理についてですけれども、プーリング法は認識しません。パーチェス法は差額のれんという形で認識するというわけであります。

この点、具体的に図でみていきたいと思います。

4ページをお願いします。

まず最初に、被結合会社の資産・負債の評価ということで、×0年度の図を掲げております。被結合企業の個別財務諸表における表示が資産100、資本100であったと想定します。まず左側のルート、これはプーリング法による場合の資産・負債の状況でございますけれども、資産・負債とも簿価引継ぎになりますので、簿価純資産の100がそのまま来る。資本もそのまま構成を引き継ぐということなので、100、100といった形で全く一致した格好になっているわけであります。

今度は右側のルートですね。パーチェス法による場合でございますけれども、もう箱の大きさが変わっております。左側の受入純資産サイドの方でございますけれども、簿価純資産100に資産の含み益60が乗っかっております。具体的に引き継いだ、識別可能な具体的な引継資産の時価評価金額は、合計で160ということを想定いたします。

問題は、その貸方項目なんですね。資本を交付株式の時価200で評価しているということです。

この基本的な考え方の違いについて説明させていただきますけれども、基本的に企業結合というくくりで、例えば子会社株式を旧株主から買い取った場合、それと子会社の純資産を合併等によって引き継ぐ、その場合には実際、キャッシュで買うのではなくて自社の株式で取得するといった形になると思いますが、そのような子会社株式の取得の話と合併というものを企業結合という形でくくってしまいますと、結局のところ、両者とも結果は同じにならなければおかしいことになりますから、実際問題、現金で取得した場合の投資額と同じように、合併の場合も交付した株式の時価で、現金で買った場合にはいくらなんだといった投資額を測定する必要があるかと思います。したがって、増加資本に関しましては、交付した株式の時価で測定するということで、この点、現金で取得する場合と同じようにとの配慮からこのような測定があるのかなというように、個人的に理解しているところでございます。

したがって、増加資本のところが200となって、時価純資産の方で160になりますから、差額として40が出ることになります。これが前回も議論ありました差額のれんということになると思います。

差額のれんを認識するということは、何を隠そう、これは交付した株式の時価と受け入れた資産の時価はイコールだということで、等価交換を擬制しているのだと思います。等価交換を前提にしたところで初めて差額のれんが計算できると思います。

このように考えますと、プーリング法では認識されていなかった子会社・被結合企業の含み損益でありますとか、のれんが一気に貸借対照表に顔を出すということがパーチェス法の場合にはあり得るということです。

そうしますと、その後の損益計算に影響を与えることになりますので、5ページをお開きいただきたいと思います。

先ほどの資産の時価評価金額、資産含み益60、これは土地の含み益だと想定した上で、その後の損益計算について説明させていただきます。もし仮に、これが、例えば減価償却資産についての損益も含んでいたということであれば、その後の損益計算は、何ものれんの償却だけではなくて、そのような減価償却資産の償却費にも影響を及ぼしますが、ここでは話を簡単にするため、のれんの償却にのみ着目して設例を設けている次第であります。

まず、×1年度でございますけれども、前提といたしまして、被結合企業の部門が稼いだ利益を10といたします。そして左側にプーリング法、右側にパーチェス法の場合の例を掲げておりますが、一番上の部門利益10は、これはどの場合も変わりません。

のれんの償却費でございますけれども、プーリング法はもともとのれんを認識しませんから「-」のままです。ところが、パーチェス法の場合には、のれんは先ほど説明しました40として認識されています。そして非償却としますと、結果的にはプーリング法と同じということで、税後の利益は10になるわけです。

ところが、その下の未償却残高をみていただきますと、のれんの残高が40あるということですね。損益計算書だけみますと、プーリング法の結果と非償却の結果は一致するといえますけれども、貸借対照表の資産との関連から、例えば資産の利益率でございますとかそのような比率の中では、プーリング法の結果とパーチェス法の結果、非償却の場合ですけれども、異なってくるといえようかと思います。ただ、P/Lだけをみてしまいますと、非償却の場合とプーリング法は極めて一致しているということがおわかりいただけるかなと思います。

右側の方、償却のグループでございますけれども、片や20年償却、片や10年償却を例にとります。のれんを償却する場合、非常に難しい点が、何年で償却しますかということかと思います。実際問題、先ほどの差額で計算するんだということになりますと、何が入っているかわからないということでありますので、なるべく早く償却してしまおうというようなことが実務上の配慮としてあると思います。

そうしますと、実際問題、企業の体力に応じてということになりますので、全く同じような状況にもかかわらず、ある会社は10年償却、ある会社は20年償却といったようなことも当然想定されるわけです。それを示すがために、ここで10年償却の場合と20年償却の場合を例にとってみたわけですけれども、10年償却をとった会社は、のれんの償却費は40÷10で4になります。片や20年償却をとった会社は、その半分の2になります。全く状況が変わりませんけれども、のれんの償却が違うということで、結果として10年償却の純利益は6、20年償却の会社は8になりまして、10年償却をとった会社の方が損益が悪くみえるといえようかと思います。この点は償却期間の見積もりの困難性に由来するわけですけれども、このように、償却する場合であっても企業間比較ないしはそのような比較可能性は完璧ではないといえるかと思います。

×1年度を超えて5年たちました。×5年度のところをみていただきたいのですが、ここで稼いだ利益に多少に翳りがみえてきた。今まで10稼いでいたけれども、8になったということですね。その後もう少し怪しくなってきたぞということで、のれんの価値を評価したところ、30でしたということを前提といたします。

そういたしますと、当初ののれんの原価が40で価値が30ですから、10へこんでいることになるわけであります。したがって、非償却の場合でも減損処理ということで、10の償却費が出てくることになりますので、結果として純利益はマイナス2、赤字になってしまうということがいえるわけです。これまでは全く償却していなかったわけですね。前期まではずっと10、10、10で来たのですが、5年目になって急に赤字になってしまう。投資家にしてみたら「騙された」といった感じになるのかなと思いますけれども、減損処理であるがゆえに、このような処理にならざるを得ないかと思います。

パーチェス法の20年、10年の場合でございますけれども、ちょうど20年の場合には、償却残高30とのれんの価値が一致しますので、この場合は減損処理がないわけであります。さらに10年の場合にはもっと償却が進んでいますから、全く減損処理は関係ないということになっています。

一番下、×11年度でございますけれども、部門の稼いだ利益は、同じく8でありますが、11年目ということで、10年償却組に関しましては償却は終わっています。したがって、損益計算書だけみていきますと、プーリング法の結果の8と全く一緒ということになるわけであります。

非償却の場合には、相変わらず償却しませんから未償却残高は30残っていますし、20年償却の場合には当初の予定どおり18残っているということになります。

ここでプーリング法の場合の8と10年償却の場合の8、この場合、結果としてどこが異なっているかと申しますと、資本の部の留保利益が異なっているんですね。結局のところ、仮に毎期10ずつこの部門が稼いでいたことを前提としますと、400利益を稼いでいたことになります。したがって、プーリング法の場合にはその利益が丸々留保利益を構成しているわけですけれども、10年償却の場合には、のれんの部分はもう投資の内数でありますから、それを引いた残りが利益という形で表示しますので、留保利益はその分、低くなっているといえるわけであります。損益計算書上は一緒に見えても、資本の部の留保利益の金額はのれんの償却だけ食い込んでいますよ、差があらわれていますよということがいえるかと思います。

以上、のれんの償却をとってみても、プーリング法とパーチェス法、パーチェス法の中でも非償却、何年で償却するのかで、いろいろな数字が出てくることがおわかりいただけるかと思います。

それでは、2ページに戻っていただきまして、2.主な問題点等というところをごらんいただきたいと思います。

取得企業の識別関係ということで申し上げれば、まず、パーチェス法とプーリング法を組み合わせる選択肢をとった場合には、そもそも取得企業を識別できない場合、プーリング法を適用する場合を具体的に明確にしなければならないわけですけれども、それが難しいということが、まずここでいえるかと思います。

一本化の場合でございますけれども、どのような局面、どのような場合におきましても必ず取得者を判定しろということになりますので、「どのような場合でも必ず取得企業を識別しなければならないことの困難性」ということで、いずれも困難がつきまとうということがいえるかと思います。

2番目、過年度決算の修正再表示。これはプーリング法特有の論点になりますけれども、前回、神田先生からもございました計算書類の確定の話ですね。過去に遡って修正する場合には、商法上、再確定手続の検討が必要ですよというお話でしたので、その点をここで明記させていただいた次第であります。プーリング法がなければ、ここはもう「検討するに足らず」ということになろうかと思います。

ほかに、のれん関係で申し上げれば、先ほどの設例にもございましたとおり、非償却という考え方についての検討がぜひとも必要かと思います。償却した上で減損なんだということも、これまでの審議からしますと、一番よいのではないかという話もなくはないのですが、逆に日本基準が一番厳しくなるといった余地もございますから、この点、検討が必要かと思います。

次に3ページ、これものれん関係の論点になります。

前回、神田先生からもご説明ございましたが、商法上、5年を超えるのれんの償却期間が認められるためには、改正を検討する必要があるとのお話でしたので、この点も明記させていただいております。

ただ、5年を超える償却期間を定めた場合には、逆に配当規制をかけるべきではないかというお話もありましたので、配当規制も含めて検討が必要とされているかと思います。

そして三つ目、負ののれんの話ですが、これにつきましても前回、神田先生が、受入純資産に反映される以上は、商法上は全く問題ないというような話をされていました。逆に申し上げれば、受入純資産に反映されない負ののれんですね、いわゆる取得時に、異常な利益として損益処理してしまうといった選択肢を会計上、採用した場合には、商法上は受入純資産に反映されないものということで、自動的に資本準備金として処理される余地が当然、今のところあるのか、したがって、この辺の不整合をどう解決すべきか検討する必要があるかと思います。

先ほど申し上げましたとおり、会計上は増加資本につきまして、交付した株式の時価で固定するわけですが、商法上は、あくまでも受入純資産を対価として株式が発行されるということなので、まず受入純資産ありきというようなことになっている以上、この点の整合性を検討すべき論点ということで、ここで書かせていただいております。

逆取得に関しましては、冒頭申し上げたとおり、現行の商法の資産評価規定を前提としますと、存続会社の資産・負債の時価評価をする余地はないということなので、この場合には個別上は不可能、連結上のみ可能ということになろうかと思います。

最後に、その他ということで、国際的調和に関してでございますけれども、プーリング法とパーチェス法を組み合わせるものに関しましては、プーリング法が残るといった点について国際的に調和しないといえましょうし、逆に一本化に関しましては、プーリング法がなくなることについて国際的に調和するのかなと、あくまでも現時点でありますけれども、このようなことがいえようかなと思います。

簡単ではございますが、以上で説明を終了します。

○斎藤部会長

大変ありがとうございました。

ただいまの市川委員のご報告につきまして、まず、ご質問等ございましたらご発言ください。

ご質問がなければ、すぐに意見交換に入りたいと思います。特に順番等を設けませんので、ご意見のある方はご自由にご発言いただきたいと思います。

○中島委員

少し感想めいた話を一、二させていただきたいと思います。

たしかこの部会の非常に初めの段階で、私は、パーチェス法に一本化するというアプローチは随分強引な印象を受けるというような趣旨のことを申し上げた記憶があるんですね。パーチェス法というのは本来、一方(取得企業)が他方を取得するという場合の会計処理ですから、それを取得企業が決められないようなケースに適用するというのは、やはり随分強引といいますか、割り切った処理だなという印象を受けました。

今でもその点は変わらないわけですが、今日お配りいただいた資料の最後に、SFAS141のパラグラフ15が出ていますけれども、ここに書いてあるものをみると、どうも論理が逆ではないかという印象を受けるわけですね。パーチェス法によって会計処理される、したがって、すべての結合取引において取得企業が識別されるということですから、何か論理が逆立ちしているような印象も受けるわけです。

ただ、このアプローチがどうして出てきたかという背景のようなものを考えてみますと、多分このような処理を、取得企業が識別できないようなケースというのは非常に限られている、そうざらにあるものではないんだという判断というか、認識というものが多分、まずあるんだろうと思うんですね。もう一つは、やはりアメリカでそのような識別規準を設けようとして、長年にわたってさんざん苦労してきたけれども、あまり満足できるような結果が得られなかった。多分そのような歴史、苦い経験のようなものがあって、このような基準が出てきているんだと思うんですね。

つまり、理屈の問題というよりは、非常に実践的な配慮が勝った基準であると。要するに、非常に数が少ないのだから、ある程度無理があることを承知して、そこのところをパーチェス法で処理しても、全体としてみればよい結果が得られるのではないか、そのような考え方であるということであれば、それはそれなりに理解できるような気がするわけですね。

では、日本の場合、これからどうなのかというところですが、私は、そこのところは、取得企業がプーリング法の対象になるようなケースがどの程度の範囲のものなのかということに結局はかかってくるのではないかという気がするわけですね。この部会でも、そこのところをできるだけ幅広く考えて、弾力的にというようなご意見の方ももちろんありましたけれども、たしか、私は前々回申し上げましたけれども、やはりそこのところは取得企業を識別できないようなケースということで、かなり限定されたもの――市川委員のご説明にもありましたけれども、非常に限られた範囲のものになって来ざるを得ないのではないか、また、そうあるべきなのではないかなと思うんですね。

そうしますと、もしその前提が正しければ、パーチェス法一本にするにしても、あるいはプーリング法とパーチェス法の二本立てにしても、実質的な差はかなり限られたものになってくるのではないかという感じがするわけですね。

そのような状況で、海外といいますか、国際的な方は、この部会の議論が始まった当時はアメリカはまだ公開草案の段階で、その帰趨もよくわからない、相当難航しているというような話もありましたけれども、その後、基準化されたわけですし、それから、山田委員の報告ですとIASBの方もパーチェス法一本にするという方向が固まってきているということですから、そのような状況のもとで、あえて日本が国際的な流れと違うような基準を設けることがよいのかどうか、やはりよくよく考えた方がよいのではないかという印象を持っているわけですね。

実質的な差はないといっても、やはり形の上ではかなり、枠組みとしてはかなり違ったものになるわけですから、そのことが海外からどのように受けとめられるのかということと、そのようなものを残す以上、実際、われわれには経験がないわけですけれども、その運用の仕方いかんでは実質的にもかなり差が出てくる可能性がある。そのような可能性も含めて、海外でどのように評価されるかという問題もあると思いますので、そのようなことをあれこれいろいろ考えますと、私としては、やはりここで最初の方にパーチェス法とプーリング法の組み合わせが書いてありますけれども、それに絞ってしまうのではなくて、パーチェス法に一本化するというアプローチも一つの有力な選択肢として、今後、議論を続けていった方がよいのではないか、そのように思っています。

○山田委員

中島委員から、かなり包括的な全体像をつかまえるご発言がありましたので、私は、もう少し限定された、ゲリラ的な質問をしたいと思います。

基本的にパーチェス法とプーリング法を組み合わせるという最初の選択肢をお考えになっているときに、資料の6ページに、識別基準ということでIASの基準が挙げられているわけですけれども、特にbの一番下に三つほど挙がっておりますが、現行のIAS22号において、このような三つのメルクマールを実は持っておりまして、特に、実際、私が昨年IASBの場で日本の実態を報告するに当たって、いろいろ調べましたときに、やはり公正価値、例えば株価総額がほぼ同じケースをみつけるのは非常に難しかったということがございます。特に日本の場合は、業界内での結合、再編といいますか、そのようなことが起こることになりますと、例えば三位と四位の会社が一つになるケースとなりますと――二位と六位でもいいのですが、現実には、現在のIAS22号のものをあてたとしてもかなり限定されることになりますが、市川委員の方では、この辺についてはどの辺のレベルをお考えなのか。

私は、少なくとも現行の22号を適用すれば、ほとんどのケースがプーリング法以外になってしまうのではないかという認識を持っていますが、その辺、いかがでございましょうか。

○市川委員

具体的なイメージは特にございませんが、ただ、山田委員がおっしゃるとおり、このIAS22号の書き振りから考えて、それに大きく劣らないと考えますと、ほぼ一致しているというレベルの、かなり限定的な解釈というように理解している次第です。

ですから、前にも議論があったのかもしれませんけれども、税務でいう1対5などの話は、私は個人的にはもう論外かなと思っております。

○山田委員

少なくともパーチェス法とプーリング法の組み合わせということになると、私としては、IASは国際的な現在あるスタンダードですので、IASの状況をクリアすることは最低限ではないかと思いますが、それを現実にあてはめると、先ほど中島委員からのご指摘もありましたように、ほとんど該当するケースが起こらないのではないかという印象を持っております。

○斎藤部会長

それは、現在該当するケースがないというご指摘ですか。つまり、IASの基準がこれまでこうあったわけなので、これが初めから絵空事であったというご批判ではないわけですね。

○山田委員

そうではございません。そのような観点はないかと思います。

○梅山委員

今の時価総額の話ですが、確かに、今スポットをとってみれば、例えば銀行業界をみても相当時価総額に差があるケースもありますし、また、ほとんど同じような時価総額になっているケースも、現時点でみればあると思うんですね。なおかつ将来についてみれば、これは全く株価についてはだれも予想できないわけで、時価総額が逆転するケースもあり得ると思いますが、そうした場合に、どのようなスパンで時価総額を比較するのか、ないしは、今のお話ですと時価総額が同水準ではないとプーリング法は認められないというお話ですが、将来のことを考えると、やはり同じような時価総額もあり得るし、ある一定のスパンをとれば、それと遜色ないような時価総額の水準もあるかと思いますので、それについてはもう少し可能性をみてみる必要があるのかなと思います。

○八木委員

この件については、われわれ経済界の方でも結構いろいろ意見交換してきまして、この検討もいよいよ最終段階に来たなという感じを受けておりますが、ただいま中島委員からも一つのご意見が出て、われわれは、まだプーリング法というものの必要性、可能性というようなものをもう少し検討してみたいなというのが、まとめた上での意見なんでございますが、ここでいろいろな方式を決めていく上で、やはり日本の経済界で仕事をしていく上で、考えなければならない面がいくつか出てくると思うんですね。ほかの国ではあまり大きな問題でなくても、やはり日本でやっていると、そこの要素まで考えないと、特にこれからのいろいろな厳しい世の中を生きていく上で、会計という尻尾が企業経営という、ライオンか象か知りませんが、それを振り回すようなことになってもならないなという感じもあるものですから、二、三申し上げたいと思います。

その一つは、やはり土地の評価という問題があるんですね。

パーチェス法の時価評価に関して、日本の企業の人と話していると、やはり土地の問題がまず最初に出てまいります。何が時価と取得原価で大きく変わるかというと、土地の要素なんですね。ところが、この土地はもう例の固定資産の部会でも何度も議論されましたように、評価の手法が非常にたくさんあって、市場価値のほかに、再評価法とかいろいろあって、これを会計上どのように整理していくかというのは大きな問題だと思うんですね。

ここで一番苦しいのは、たしか固定資産会計のときに、われわれの議論は、なるべく高く評価してくださいといったようなスタンスでものを申し上げた。今度は、いろいろ議論していくと、事業用の工場の土地などは、今、売ろうとすると、例えば周辺の取引価格では売れっこないんですね。特に古くからあるところは「汚れているんじゃないか」なんていわれて。その際のことを考えると、なかなか、まして事業を継続するので、統合とかいろいろやっていく上で、その土地をすぐ売るというものでもないわけなので、さあ、そのようなときにどのような評価をつけるかというのは、現実の問題としていろいろございまして、やはりこの土地の問題を一回きちっと整理しておく必要があるなというのが一つでございます。

それから、よくここで議論になる対等合併ということですけれども、まだわれわれ経営者の感覚では「対等」という観念、「対等合併」という観念はあるんですね。ただ、このような企業文化が今後とも継続していくのか、また継続させるべきかというのは、また少し別の議論であって、今いろいろ現実の場で出てきている欠点とか失敗とか、いろいろなことがございますけれども、そのようなものはもちろん、これから議論しなければならないものはさて置き、会計の変化が企業の経営判断に大きな影響を及ぼしていってしまうというのは避けて、やはり企業経営の別のスタンスからその辺を見定める必要があるのではないかという感じがしております。

とにかく、取得企業はどちらなんだと決めるので、先ほど市川委員の論文の最後のページの、株の時価が大きい方が取得企業だという、これも結構乱暴な決め方だというのが実感としてあるわけなんですね。ですからもっと違う、現実的な判断というのは当然あるわけなので、そのような感じがしております。

それから、これは耳にタコだと思いますけれども、企業再編という問題では、これからまだしばらくは日本経済は厳しいので、やはり商法の方からも税法の方からもいろいろなアプローチがあって、われわれの再編する作業というものが非常にやりやすくなったといいますか、そのような時代になっております。これについては、まだしばらくかかる、われわれの大きな問題だと思うので、これが進まなくなるようなことだけはしたくない。このような配慮をぜひお願いしたいなということですね。

それから、先ほど来の、のれんの話ですが、万国共通だと思いますが、とにかくのれんの発生は避けたいというのが仕事をやっていての、これはもう洋の東西を問わないわれわれ共通の願望だと思うんですね。そのようなことで、連結も個別も同一の会計基準を採用しなければならないという前提で考えますと、のれんの会計処理というのは最終的には、償却と減損と併用すべきか、あるいは本当に減損だけなのか、この二方式の選択があり得るのか、そのようなことはわれわれとしては、やはり二方式の選択を受け皿として用意せざるを得ないのではないかなというように現実的には思っております。

それから、やはりここへ踏み切るに際しては、当然のことながら、経過措置というものがあると思うので、いずれにしても時間をかけた対応が必要ではないか。

これも先ほど来お話のあったプーリング法について、例えば要件を厳しくしていくということは当然やむを得ないことだと思っておりますが、ただ、これを全く廃止してしまうまでには一定の準備期間が要るのではないかと思うわけであります。

さらに二、三つけ加えますと、これも土地と並んで日本独特の問題点だと思いますが、商法、証取法の二元規制の緩和。これも前に私は、ここでも申し上げたかと思いますが、要するに、われわれ企業は、単にこれは連結だけでやればよいのだ、個別は個別だけでやればよいのだというようには割り切れないわけなので、当然、買った会社についてのバランスシートは、商法上は、これはもう個別の、時価評価前のB/Sで計算処理をずっと継続的につくっていかなければならない。連結の方は当然、時価でやっていく。このようなことがずっと続くわけですし、それから税務は、もちろんこれは平成13年の改正がありましたけれども、これもまた時価または簿価主義ということで、いうなれば三通りのB/Sをずっとつくり続けるというややこしい話、これはほかの国ではなかなか考えられない話ではないかと思うので、この辺ももう少し切り込んでいく必要があるのではないかと思っております。

そのようなことで、これはただ単に国外でエクイティ・ファイナンスなどをやる会社だけの問題ではないと思っておりますので、そのような意味で、実務の観点から、ぜひまたそこら辺、ある程度論点を絞りながらのディスカッションが必要ではないか、このように思っております。

○西川委員

いろいろなことではなくて一つだけ。よくわからないのは、パーチェス法かプーリング法かというのは一種の事実認定だと思いますが、その認定が何かというと、取得企業を識別できるか、できないかということだと思うので、その事実認定自体、不自然なものでもないし、現実に取得企業を識別できない場合が、まれかどうかは別にしてあるというときに、どうしてもプーリング法を排除すべきだという理屈がよくわからないということが、とりあえずあります。

○山田委員

その議論についてはアメリカ、それからG4+1でも随分出ていますが、よくいわれるのは、現在のアメリカの基準でも、それからIASBの基準でも、本当にまれなケースで取得者が特定できないような場合に、パーチェス法が必ずしも適用できないケースがあるのではないかということを否定はしていません。その上で、過去のいろいろな経緯をみますと、プーリング法を残しておくことがいろいろな意味の乱用につながる。つまり、どんなに規準をつくっても、その規準そのものをいろいろな形で広げるような動きが起こり得るということから、そのような過去のいろいろな経験の中で、数が少ないのであれば、むしろそのような余地を排除してしまった方がいいのではないかというのが、少なくとも海外で今まで起こっている流れではないかと思います。

○西川委員

アメリカではそのような乱用があったということですけれども、IAS22号の適用で乱用があったかというような検討がなされたかどうか。

○山田委員

22号の適用に関して乱用があったかどうかという調査は、私の知る限りではないと思いますが、ただ、FEEとかヨーロッパにおいてプーリング法が適用されたケースとかパーチェス法が適用されたケースというような報告は、多少出ております。

その中で、今、手元に資料がございませんけれども、ヨーロッパで比較的プーリング法が多く利用されているのは、ノルウェーとフランスです。ドイツは戦後一件あったかどうか、ほとんど皆無だと聞いております。

フランスでプーリング法を主張しているものの多くは、米国におけるプーリング法の今までの緩い適用との関係で、フランス企業が不利になるというような流れの中でいわれているケースが多いと聞いております。したがって、22号に限っていえば、この適用の実態についての明確な調査報告はございません。

別の観点について続けてもよろしいでしょうか。この議論で私が一つ気になっているのは、連結のところでは、基本的には子会社を取得した時点で子会社の資産・負債を時価で評価するという基準が既に入っていると思いますが、そうしますと、同じ企業結合のあり方として、組織形態のとり方いかんによっては、つまり子会社という形でやりますと、基本的にはパーチェス的な処理以外に選択の余地がない。ところが、実際に、ここでは合併というようなケースをとりますと、そのときはプーリング法とパーチェス法の併用ができるということになると、会社形態の選択のいかんによっては、ある意味では操作性が生まれる、ないしは合併のケースと連結のケースでの首尾一貫性という論点が一つあるのかなと思っております。

○斎藤部会長

よく理解できないご議論ですが、連結に該当するケースの企業結合は、全部パーチェスですよ。連結と同等の、連結に該当するような合併を行えば、これはプーリング法の余地は多分、出てこないのではないでしょうか。

○山田委員

そう思います。ですから今、指摘したかったポイントは、先ほどの指摘と同じなのですが、もしもプーリング法を残すとすれば、その適用される規準がどの程度厳しくなるかによって、そのいかんによっては多少操作性が出るという点です。

○斎藤部会長

連結の場合には、取得企業は識別できるんですね。

○小宮山委員

何人かの方がいわれたように、恐らくプーリング法に該当するケースはほとんどないだろうと思うんですよね。あとはプーリング法というか、取得企業を識別できない場合のルールを残す必要があるのかどうかという判断なんだろうと思うんですね。多分、残したことが国際的にどうみられるかという話との兼ね合いで決めていくのだろうと思いますけれども。

それと、ここで話している取得企業を識別できる場合、できない場合というのは、基本的に今まで資本関係が全くなかった会社を取得するとか、合併するとか、このような話を恐らく想定されているんだろうと思います。ただ、議論していますと、常に親子会社の合併とか企業間の持分の組みかえとか、全く違う企業間での合弁事業とか、このような話がこの審議会でたくさん出てくるのですが、そのような場合に該当する事例として、プーリング法的な、プーリング法といってよいのかよくわかりませんけれども、そのような部分の規定を残しておく必要性は、また別途あるのかなとは思います。

ただ、親子間の合併とかそのような事例ですと、もともと個別財務諸表で持分法が適用されていないという日本特有の問題がありますので、同じプーリング法といっても別の配慮をする必要が出てくる。基本的に親子間の合併で何が出てくるかというと、子会社の剰余金なり欠損金なりが子会社の株式の償却損益という形で出てくる。もう一つは、途中で買った会社ですと、償却されていない連結調整勘定の影響が一遍に出てくる。この処理を別途考える必要があるのかなと、もしプーリングという方法を共通支配下の合併とかそのような場合に残したとしても、その分の規定は必要かなというようには思います。

○山田委員

これはわからないので教えていただきたいのですが、連結財務諸表について、米国で上場している企業に対して、日本でも米国基準で登録することが、今度、恒久的な制度として認められたと思います。その際、このようなケースが毎年あるかどうか、よくわからないのですが、本来は取得者が特定できないけれども、米国基準だとどちらかを買った方にしなければならない。したがって個別ではプーリング法的な処理が行われているというようなときに、日米の会計基準の差というようなことについては、何かリコンサイルするような、つまり日本国内において今の状態だと、何か比較可能性が保たれないケースが、まれにですけれども、あるかもしれないような気がしますが、その辺はどのような形になっているのでしょうか。

○多賀谷課長補佐

先般の連結財務諸表規則の改正で、その趣旨が導入されたわけでございますが、その際には日米の――日米と単純にいってしまいますけれども、日米の差については、定性的なことが中心になると思いますが、当然違いがあればそれは開示されることになっております。

○山田委員

それは、あくまでも定性的なレベルにとどまるということですか。

○平松課長補佐

別に定性的なことに限っているわけではないのですが、定量的な面でも、そのようなかなり大きな差異があるようなケースであれば、それは個々に判断されて開示されることもあり得る。それぞれ細かい面までは詰まっていないのですが、実務的には、そのようなことになると思います。

○山田委員

しつこいようですけれども、確認です。そうすると、今のような特殊なケースですと、米国基準の連結に注記がつく。そのような要請の中で調整という名の注記が付される可能性があるということですか。

○平松課長補佐

そうです。重要な項目につきまして、重要な差異がある場合には注記がつく可能性を否定はしていないということです。

○小宮山委員

山田委員が質問したので、非常に特殊なケースでプーリング法があるのかなというケースがございまして、別に私は、特定業種の肩を持って発言しているわけでは全然ないのですが、二、三日前に保険会社の合併の公告が出ていましたけれども、保険会社の保有者というのは保険契約者ですから、恐らく合併すると、相互の権利は全く同じ形で引き継がれるのかなという気が少ししています。そうすると、まさに持分の共有そのものなのではないかという気がしまして、あれをパーチェス法しかないと書くと非常におかしなことになるのかなと、別に特定業種の肩を持っていっているわけではないのですが、そのようなケースというのはあり得るのかなという気が少ししました。

○辻山委員

そこまでフォローできていないものですから少し観点を変えて、一つ質問をさせていただきたいのですが、先ほど市川委員のレジュメの中に負ののれんが出てまいりましたけれども、国際会計基準では、フェーズ1で、リストラクチャリングに伴う引当金の負債計上が否定されたと伺っておりますが、負ののれんが認識された場合に、これは合併後の扱いはどうなるのでしょうか。

○斎藤部会長

国際会計基準の方で、ですね。

○山田委員

まず、リストラ引当金については、今ご指摘のとおりの扱いでございます。

負ののれんについては、計算して一たん負ののれんが出たときには、もう一度対価の――取得した識別可能資産・負債の割り振りを見直して、要は、間違いがあったのではないかということで、もう一回それを見直しなさいと、その上でまだ負ののれんが出ているのであれば、それは収益として計上するという扱いで、今、公開草案の準備をしております。

○斎藤部会長

先ほど市川委員のご説明の中にあったくだりですね。商法の扱いとの関係で論点が提示されると思います。

○辻山委員

今日の市川委員のご説明で大分論点が明確になってきたのではないかと思いますが、結局、冒頭で中島委員からご発言ありましたように、理屈としてはどう考えても、実態としてプーリング法に該当するといいますか、識別できない合併のケースはあり得る。今の小宮山委員のご指摘の保険の場合以外でも、事実としてはある。その中で、それが少ないから全部パーチェス法にしてしまうということについては、国際的な調和との関係で、そちらを選ぶとしても、理屈で、少ないから全部やめてしまえということにはならないのではないかということが一点です。

ですから、もし乱用を防ぐということで、国際的な調和もにらんでパーチェス法一本にする道を選択するということが、場合によってはあり得るとしても、これはもう少し実態的なことが明らかになってからだと思いますけれども、その理屈というのは、国際的な調和ということ以外にないのかなという感じがするんですね。

もう一つ、その場合に、では、国際的に調和化するから償却についても減損処理だけにするんだということになりますと、これはもういかにも乱用を防ぐからという、国際的なパーチェス法一本に絞った、その理屈もないところで決まってきた基準を日本が飲むことになって、パーチェス法一本にするということは、乱用を防ぐという一種のある大義があったとしても、パーチェス法にした上で減損だけにするというところに基準が固まっていった背景として、現在の国際会計基準並びにFASBの説明ですと、のれんの償却には情報価値がない、その一点を繰り返しているわけですけれども、これは事実をみれば、米国の会計基準の公開草案でも、当初は償却が提案されていた。これが政治的な過程で減損一本になったことは明らかなわけですから、それを国際的調和化ということで、のれんを減損するというところもセットでそのまま日本が受け入れるということは、あり得ないのかなという感じがいたします。

もしそうすると、今後はどこか強いところで基準を決めてもらって、それを受け入れればよいという構図になりかねないので、強いいい方をすればですね。その点は慎重に検討する必要があるのかなという感じがいたします。

○伊藤委員

私も今の辻山委員の意見に賛成ですが、つまり、パーチェス法かプーリング法かの論議とのれんの償却の問題を、常にセットで考える必要はないのではないか。やはりアメリカの今の会計不信に対する原因といったところも、基本的には、やはりのれんの強制償却に追い込まざるを得なかったという、ITバブルの経営の実態面から出てきていると私は思います。

やはり会計というのは、大変恐縮ですが、会計理論だけが先行するのではなく、八木委員からも話がございましたけれども、やはり経営というものの実態を踏まえて会計というものも考えていかなければならないわけです。ただ、われわれは、経営のわがままを通すということでは決してないんですね。しかしながら、アメリカの今の会計基準の決め方というのは、必ずしもそうではない面もあるということです。ここはやはりわれわれが今まで長々とこの検討をしてきたということをもう一度踏まえて、その方向を正しいと思ってやるべきではないか。

大変抽象的ないい方になりましたけれども、そうしないと、斎藤部会長もそうですし、八木委員もそうですし、辻山委員もそうですし、IASBでいろいろ皆さんが過去、ご説明してきたこととの関連性もあるということをよくご認識いただいて、ご協力をいただければ大変ありがたいと思います。

○山田委員

先ほどの辻山委員のIASBの議論について、若干補足させていただきますと、IASBの中で、この前の4月に、プーリング法を廃止し、のれんについては償却をしないという方向に大体なったわけですけれども、その中で数人、意見を留保している方がおられる中では、やはりのれんの減損処理に関して留保されている方が多い。中には減損処理のルールが非常に緩いというようなご指摘をされている方もいますし、やはり償却をすべきだと、特にアメリカのケースですと、企業結合がうまくいけば100年たってものれんがずっとB/Sに残り続けるわけですけれども、そのようなケースをアナリストなどに聞きますと「いや、いいんだ。とにかく数字がどこにあるかがわかれば、われわれはそれを調整する」というような主張をされていて、ここにもアナリストの方がいらっしゃるのですが、そこで止まってしまうんですね。では、償却したらなぜ悪いのか。「いや、償却していてもいいんだけれども、どうせ調整する」。情報価値がないと先ほど辻山委員がおっしゃいましたけれども、どうもFASBも、その辺はあまり説得力のない論理に乗っかっているのかなと私は強く感じております。

○斎藤部会長

ほかに、ご発言ないでしょうか。

ちなみに、先ほど伊藤委員から、この間IASBに対して私なり、辻山委員なり、そして八木委員なりがご発言をしてきたこととの関係というご発言がございましたけれども、それは差し当たり無視していただいても構いません。むしろ私が部会長として危惧しておりますのは、この審議会でいろいろ議論してきて、その結果がすべて公開されている。それとの関係はきちんと考えて、どちらの結論に行くにしても世間から十分信頼されるような結論を出していただきたい。そのようなことを特に申し上げたいと思います。

○梅山委員

産業界の再編が今後どう進むかわかりません。これで終わりなのか、今後も出てくるのかわかりませんが、今のパーチェス法の一本化の中で、まれなケースだからやめてしまえというのが国際的な流れだということですが、まれなケースだから企業財務に与える影響が小さいのかというと、必ずしもそうではないと思うんですね。この間、金融業界で起こったライバル同士の合併というのは、株式時価総額が数兆円の企業の合併ですし、将来これが起こるかどうか全くわかりませんけれども、起こった場合の影響というのは相当インパクトが大きい。したがって、まれなケースですけれどもインパクトは極めて大きということも、やはり考える必要があるのかなと思っております。

○山田委員

今のことに関して、IASBの方ではそのまれなケースは、とりあえず第1フェーズでは横へ置いておいて、多分今年の秋ぐらいからになるのではないかと思いますが、市川委員の説明の1ページの備考にもございますように、そのようなケースに関してはフレッシュ・スタート――まだこれは議論していないので、皆さんがどのような意味のフレッシュ・スタートがよいといっているのか、よくわからない面があるのですが、大方の方は、そのようなものは新しいエンティティがそこでできたんだということで、両方とも時価でやるのがよいのではないかという感じの議論が進んでおります。

いずれにしても、多分、秋以降にそのような議論が本格化するのではないかと思います。

○辻山委員

先ほど負ののれんについて質問させていただいたのですが、実は、この審議会とは直接関係ありませんけれども、この前IASBの会議でリストラ引当金の話について、かなり議論になりまして、特にドイツから出ている委員、あるいはエストニアの委員からの、なぜフェーズ1で、IASBでリストラ引当金の引当計上を認めないという結論になったのかという質問に対して、委員長の最初の答えは「それは多数決で決まったんだ」という答えだったんですが、さすがにドイツの委員が怒りまして、なぜそのような多数決になったのか答えてくれといいましたら、負債の定義に合わないという、負債の定義を読み上げていました。

その結果、フェーズ1で既に決定済みということですので、先ほど山田委員からご紹介がありましたように、識別できる場合には資産等に割り振られますけれども、それ以外の場合には収益に計上される。その後、実際にリストラ費用がかかってきた場合には、合併後に費用計上されるという事態になるわけですね。これについては、特にドイツは国際的な調和化は十分承知しているけれども、それでもなお、自分たちはこれは理屈上合わないと思うので、いわゆる疑似(quasi)負債として、リストラ引当金の計上はするという決定を行ったんだという報告をされていました。

これは理屈上からいえば、リストラ引当金をなぜ計上してはならないのかというときに、定義に合わないということですから、むしろわれわれが考えるべきことは、合併の費用、合併のコストに何が反映されているのかを考えてみた場合に、リストラ引当金が反映されているのであれば、それは引当計上するのが正しい、まっとうな会計だとすれば、定義を変えればよいのではないかと思いますが、その辺のところがIASBの決定は逆になっている。それに対してドイツなどは、EUで2005年からの導入を決めていても、一部はそのような理屈を通すということをやっているわけですね。

今日、負ののれんに絡んで、その問題が出てまいりましたので、少しご紹介させていただきました。山田委員もそのときいらっしゃいましたけれども。山田委員もこのリストラ引当金について再三反対されているということは、承知しております。

○山田委員 

皆さんも先刻ご承知かもしれませんが、IASBの話が出ましたので、もう少しロジックだけご説明しておきますと、確かに合併の対価の中で、合併後に行われるリストラについてのコストが考慮されているケースがございますので、そうすると、その分だけ費用的に認識されていますので、引当金を立てませんと、その分が益になる。これはそのとおりでございます。

そこで一つ問題になってくるのは、負債は過去の事象の結果として生じる現在の債務であって、その経済的便益が将来出ていくことが確かだ、このような要素を持っているのですが、そのリストラを行うかどうかがその時点でだれの債務なのか、つまり合併される側の企業の債務であれば、当然その合併する企業が負債として引き当てておけばよいわけで、その場合には、当然のことですが、それはそのままいいですよと考えていますが、合併結合後の企業がそのようなことをするということが、どの時点でどう明確になるのか。つまり、合併交渉で価格に反映されているというだけでは十分ではない、負債の要件を満たさない、多くの人がそう考えております。

したがって、現在のIAS22号でも、例外的にリストラ引当金の計上を認めているわけですが、それは負債の定義を合併時点では満たさない。しかし、それから30日だったか何十日だったか、ある一定期間内に、例えば対外公表をし、関係する従業員にそのような通告をすることによって要件を満たした場合には、遡って合併時点で引当金を計上することができるというロジックになっておりまして、一貫して負債の要件を満たしていないということは、現在の22号でも変わっていないのですが、22号は、それに実態を反映した例外を設定していた。そのような例外を極力なくそうというのが今回の決定でございまして、もちろん反対している方もいますが、多数決でそのようなことになった。

逆に偶発負債については、これは期末時点で時価を見積もって、その負債を認識しなさいという全く逆のことになっていまして、例えば係争中の訴訟があるときには、その訴訟――つまり、それは過去の事象としてもう係争が起こっているわけなので、それを公正価値で評価して、当然それは資産・負債のアロケーションに含めるべきだと。現在のルールからいくと完全に逆になるような感じなのですが、それが今の方向でございます。

○大塚委員

私はどちらともまだ決めかねているのですが、差し当たり、例えばこのようなことを考えたらどうかなという気がしているのですが、まず、パーチェス法とプーリング法を組み合わせることを前提にして、ここで一番問題になるのは取得企業を識別できるか、できないか、その規準をつくるということなんですよね。それは、果たして操作性のある規準をわれわれがつくることができるのかどうか、そして、それを乱用されることはまずあり得ない、そのようなものをわれわれがここできちんとできるのであれば、それはそれなりの見識だろうと思うんですよね。

ところが、それができないのであれば、乱用されるような状態のものしかできないのであれば、やはりそれはまた考えざるを得ないのではないか。

そのようなことで、先ほど来、ある人は取得企業が識別できない、ある人はできる、事実認定の規準がどこかわからないのですが、そのようなことをいっていても、いつも同じことの繰り返しになりますので、仮にこれをとるとしたら、どのような規準をつくったらできるのかを考えるのも一つの考え方かなと感じました。少し思いつきのようなことではございますが、意見としていわせていただきました。

○安藤委員

国際会計基準というのか、あるいは米国基準――米国基準と国際会計基準、IASBの新しい基準と米国の基準はだんだん接近していく。これからだんだんそのような方向へ行くと思いますが、今まで、特にここ数年間の企業会計審議会でつくってきた新しい基準で、国際会計基準と不整合というのか、何か違った方向へ行く可能性が出てきたというのは、私の経験では初めてで、今まではなかったんですよね。

ですけれども、これは考えようで、われわれがスタンスを変えているのではなくて、国際会計基準の方が何か強引な手法を持ち込んだために起きてきたというような印象を私は持っているんですね。ということは、これは辻山委員と同じ意見になるかもしれませんけれども、今回譲ってしまうと、次から次へと、つまり今回限り例外的だというならまだしも、これからも同じことが頻発する、少しそれが不気味な気がしますね。

ですから何か、ちょうどIWCですか、国際捕鯨委員会での日本と何とかのような話になっていく。ですから私自身も少し悩んでいるところですが、これからどんどんこのようになっていってしまうと、ですから、日本が正しくて向こうがおかしいんだというのはわかるけれども、これから溝が広がる方向へ行ってしまうのはどうなのかなという、そこですよね。

ただ、いえることは、今回これに日本が合わせて自国の論理を引っ込めてしまうと、次から次へと同じことを繰り返していかざるを得ないという予想もつきますよね。ですから、たまたま企業結合でそのような問題が集約して出てきたのかなというところで、ですから、何もいっていないことになるんですけれども、私自身も非常に悩んでいるところです。

○辻山委員

一つだけ、私のいい方が誤解を招いたかもしれないのですが、結果的に、パーチェス法に一本化することについては一抹のロジックはある。乱用を防止するという意味でですね。なぜパーチェス法に一本化するのかということについては、そのような理屈が考えられるのに対して、パーチェス法に一本化した上で減損だけにするというところについては、いかにも理屈がないという発言ですので、念のため。

○山田委員

何の他意もなく、事実だけ少し、私の感じるところを申し上げたいのですが、2005年にEUがIASを入れる、特に、そのIASの1号から41号を検討したEFRAGが検討の結果、ついこの6月でしたけれども、彼らがエンドースしてもいいよというサゼスチョンを出しておりまして、そのような動きがIASに対する風向きをかなりよくしておりまして、それを受けてオーストラリアが、2005年には会社法・コーポレーションアクトを変更して、IASを今後は強制するというような方向へ動き出しております。

さらに、カナダなどでも、カナダの場合は日本基準はそのまま受け入れてもいいというような方向も少しあるようでございますけれども、そのような方向に少し動きつつあります。FASBの動きは少しわかりませんが、今度、われわれと1年やってきたボブ・ハーツが議長になることによって、多少――今までの何でも書いてあるクックブックタイプから、プリンシプルベースというか、原則をもとにした基準の方向へということを彼が打ち出していることからいきますと、強引だというご指摘はそのとおりだと思いますが、IASに対する風向きは、今のところかなりフェイバーに吹いていると客観的にいわざるを得ないかと思います。

ただ、安藤委員がいわれましたように、現在これだけが突出しているのかというと、業績報告とかいくつかのものがございまして、踏み絵は次々と来そうな感じが少ししております。

その中で、IASB自体があまり驕るといったら何ですが、そのような動きを先取りし過ぎてしまうと、逆に厳しい面になるのかなという危惧を私自身は非常に強く持っていますが、なかなかそのような声が通らないのも事実でございまして、何も意見をいっているわけではないのですが、国際的な動きとしては、そのように今のところはフェイバーな風が吹いていまして、ただ、これも今後の検討いかんによってはどうなるかわからない面が少しあるかなという不安がある、そのようなことでございます。

○黒川委員

先ほど西川委員がご質問されていた、IAS22号の問題点が本当にあったのかどうかということ。取得企業が識別できるかどうかという点で、アメリカに比べると非常に精緻であったし、実際に問題が起こる余地がかなり少ないのではないかと思いますが、そのような中で、あえてこの現行のIAS22をまた変えようという、それから、先ほど辻山委員がおっしゃった乱用を防ぐという点には一抹の論理がある、その一抹の論理が本当にあるのかどうかという点をもう少し、山田委員が事情に詳しければ、なぜ今このIAS22が問題になるか、あるいは改定する必要が出てくるのかを教えていただけますか。

○山田委員

何度か申し上げておりまして、皆様ある意味では先刻ご承知で、また、私の理解が間違っているかもしれないのですが、そもそもG4+1の中で、G4+1の国の間で一番会計基準が大きく違っている分野の一つとして、この企業結合が取り上げられたという経緯があったかと思います。その時点ではアメリカは、プーリングに対する世界一緩い規定を持っていた国ということで、G4+1の中ではかなり批判があったと聞いていますが、それを受けて、彼らが自分たちで真剣に検討したところ、今のような基準が一つ出てきた。

その中で、IASBとしても、22号の中に本当にプーリング法を残しておくべきケースがあるのかどうかを考えた上で、プーリング法の存在の必要性をアメリカが見直したこともあって、検討しようということで始まったのが、このプロジェクトなんです。その背後には、会計基準のコンバージェンスという意図もあったかと思いますが、ただ、ではIASBはアメリカ基準と全く同じものをつくっているかというと、決してそうではなくて、減損のルールのところでは使用価値という考え方、回収可能な部分といいますか、米国基準とは少し違った減損の認識の仕方をしておりますし、そのような中で、できるだけ米国基準というか、そのようなものとのコンバージェンスを図るという方向で、なおかつフレームワークにできるだけ沿った形にしようというのが、これまでやってきていることだろうと思います。

○黒川委員

そこで、皆さんご存じのように、やはりG4+1のところに論理がないんですよね。最後のところで、プーリングのものもあるかもしれないけれども、しかし乱用禁止。これはアメリカにおいてはいえるけれども、そこを、例えばそのときアメリカとしては、現行のIAS22を参考にして、そのような方向に持っていくという手もあったかもしれない。アメリカ自身は非常に乱用があるということで禁止の方に持っていったのかもしれませんが、IASはIASとして論理があったわけですから、そうすると、なぜ今度、アメリカの方が違う基準をつくったということで、また変えなければならないのかということは、やはりみんな少し疑問というか、思うところがあると思うんですよね。

ですからコンバージェンスという点で、アメリカが「自分が緩いから」といったときに、なぜ現行のIAS22をあえて変更し、それで今度、IASの方がアメリカの方にコンバージェンスしなければならないのか、その辺の事情は、われわれが知らないような事情を何かご存じでしょうか。

○山田委員

私は、特にそのようなものがあるとは認識しておりません。

○黒川委員

それでは、まだ時間があるようなので、一人一人みんな勝手な意見をいえばいいということのようなので、勝手というのはよくないのですが、意見をということでしたので。

今、私自身は、プーリングという事象は、非常に数少ないかもしれないけれども、論理的にはあると思います。ただ、先ほどから山田委員がおっしゃっているように、やはりフレッシュ・スタート法も論理的にはあり得るんだろうと思うんですね。ですから、今日、市川委員は二つの可能性をおっしゃいましたけれども、私自身はフレッシュ・スタート法も含めて三つの組み合わせといいましょうか、それがあると思っています。自分の意見をいえということであれば、やはりもう一度それをいっておきたいと思います。

ただ、そのときにより混迷の度を深めるのは、識別する規準が、三つ代替案がありますから、二つのものでも、もしパーチェス法とプーリング法を組み合わせた場合にどこで操作的な、うまい識別ができるのかというご意見が大塚委員からありましたけれども、さらに混迷の度合いを深めるということで黙っておこうかと思ったのですが、一応三つは経済的に、実質としてあるのではないかと思います。

○引頭委員

企業を分析する立場からいわせていただきますと、辻山委員がおっしゃったように、パーチェス法にした場合、減損処理一本だけということについては、分析上、やはり不安を感じるところです。

今、ご案内のとおりアメリカの企業が大きくのれんを償却しているわけですけれども、アメリカの減損処理の仕方として、各ビジネスユニットごとに減損テストをしていくということですけれども、その情報は開示されないわけですね。そうした中で、急に大きな減損が生じた場合の対処というのは、やはり難しいのではないかと思います。日本では、まだそれほどのれんが大きいところがありませんので、今は問題ありませんけれども、いずれ企業再編が活発化していった場合には、将来的なことを考えると、仮に減損処理一本にするのであれば、例えばセグメント情報の中で、各セグメントでのれんを開示するとか何かの手当てがなければ、今の減損一本というのは、アナリストにとっては少し厳しいかなと思います。

○斎藤部会長

ほかにご発言ありませんか。

○黒川委員

まだ時間があるということなので、山田委員に集中砲火でかわいそうなのですが、先ほど、実質的にプーリングになるケースはないのではないかと山田委員がおっしゃった。そのときに、6ページの識別規準の時価総額の比ですよね、いわゆる相対的規模の格差の規準というように昔からいわれていたものですけれども、ここをめぐっては、ご存じのように1対9とか1対3と緩くなったり、きつくなったり、いろいろな審議の過程で、アメリカでもAPBのときにもありましたし、そのようなものが存在するのですが、山田委員がこの格差ですね、ほとんど問題ない、皆パーチェスになってしまうよという、そのときの格差が緩いか、どの程度のものを想定しておっしゃっているのか次第でここは変わるんですよね。

ですから、少し教えていただきたいのはそこなのですが、山田委員はこれを、厳密に1対1ならば、例えば、小数点1位は四捨五入するということになれば、1.5対1はだめとか、そのようなこと――要するに、それが1対1になるわけですから、そのようなことをおっしゃっているのか、あるいは本当に1対1.099ぐらいでないとだめとか、その辺、どの程度のニュアンスでおっしゃっているのか教えていただけませんか。

○山田委員

別にパーセンテージをそれほど明確に思っているわけではございません。

ただ、いくつか調べてみますと「これぐらい差があるのにプーリング法なんだ」というものに、もちろん、いつの時点で株価総額をとるかにもよりますので、その辺はいろいろな要素を考慮しなければならないのですが、少なくともこれまで日本に明確なルールがなかったので、そのようなものからみると、緩目にみても随分プーリング法のケースが多いし、私が先ほど申し上げたときは、かなりきつ目にみています。何%といわれると、少しお答えしかねますが、きつ目にみていることは事実です。しかし、1対1でなければならないとは考えておりません。

○黒川委員

そうすると、例えばシティコープとトラベラーズですか、あのときは、ほとんど同じなんですよね。そうすると、あれも該当しないと。先ほど該当するのはほとんどないとおっしゃったんですけれども、あれは、たまたま規模からいってほとんど同じぐらい。それはどのようにお考えになりますか。

○山田委員

規模は一つの視点だと思います。トラベラーズとシティの場合、その後どうなったかわかりませんけれども、何かその後、随分経営陣に動きがあったようにも理解しています。日本のような場合どのようなスパンでみるのがいいのかは、多くの方からご指摘あるように、確かに難しい面があると思いますので、ここの一点をとって、それだけですべてが決まるとも考えてはおりません。

○斎藤部会長

基本的には、これはそのようなケースがないという話ではなくて、無視しようという話だと思うんですね。特にアカデミックサイドの委員はよくご承知と思いますけれども、例えば2年ぐらい前のジャーナル・アカンティング・アンド・エコノミクスというロチェスターで出している有名な雑誌ですけれども、そこに出た三人のアメリカ人の共同論文の中にマージャー・オブ・イークオルズ、日本語に訳すと対等合併というコンセプトがあって、そのケースでパーチェス法を適用したときには、取得側の識別をめぐって結果的には裁定が働くことは指摘されているわけです。事実は事実としてあるわけですが、問題は、アメリカでは、それは無視しようということに決まったということではないかと思うんですね。

先ほど来、黒川委員が指摘しておられる、なぜ現行IAS22をこのような形で改正しなければならないかということも、基本的には、先ほどの山田委員のご説明に尽きているわけであって、アメリカが恐らく実務上、プーリングの乱用に悩んだ。その対応として、もうやめてしまえということになった。そうすると、あとはもうコンバージェンスという錦の御旗のもとにIASがアメリカにすり寄ったというだけのことだと思いますね。

どうでしょうか、ほかにご発言ないでしょうか。

○安藤委員

全然別のことですが、これから企業結合をどう舵取りするかというところで、先ほど斎藤部会長がいわれた点、当審議会の議事は公開されていて、今までの経緯があるということについて。

この審議会の議論が会計理論を反映してなされているという前提でしょうから、それはそれでよいのですが、私は、あまり当審議会の過去の経緯、あるいはもっといってしまえば当審議会のメンツというのか、それはあまり表に出さない方がいいという気がいたします。やはり大事なのは、これからの日本の舵取り、これは行政の一環ですからね、国が誤らないということが一番大事なことで、それには当面の要素は、やはり国際会計基準との調和とか、日本の経済界の実情、それからやはり会計理論、これは学界で必要だと思いますけれども、この審議会のメンツというのは、私はあまり出さない方がよいのではないかと思います。

斎藤部会長がいわれたことが、これは理論を反映しているんだ、学界を反映しているんだということであれば、私はそれはそれでよいのですが、今までの審議会の経緯というのはあまり表に出さない方が楽なのではないか。そうしないと自縄自縛になって何もできなくなってしまうということで、かつて日本の陸軍が誤ったようなことはやめた方がよいと思います。

○斎藤部会長

おっしゃるとおりでして、私は別に従来の議論が理論の上に組み立てられたとは全く思っていません。この審議会は別に学問をやっているわけではなくて、ビジネスをやっているわけですから、そこにこだわるという意識は全くありません。

私が申し上げたのは、審議会のメンツではなくて、審議会で議論してきたことの積み重ねがありますので、その流れを変えるときには、なぜ変えるのかという理屈をはっきりさせないと説得性がないのではないかということです。私自身は、自分の学問の立場からも、率直にいってしまえば、不謹慎かもしれませんが結果はどちらでもよいわけで、理屈さえきちんと通っていれば、審議会としての社会的な信頼を損なうことはないであろうと思います。

ただ、これまで長々と議論してきながら一朝にしてパッと結論が変わってしまう、それについての合理的な説明の開示もないというのでは、これは学問であろうとなかろうと、やはり社会的な信頼を損なう結果になりかねないと思いますので、その点を申し上げたにすぎません。

○伊藤委員

私もおっしゃることはよくわかるのですが、やはり先ほども出ていたと思いますが、これだけではなくて、これからいろいろな問題が出てくるわけですね。ですから、日本が今まで二年近くもかけて一生懸命議論して、そして、彼らは日本のいいたいことも大体わかっているわけですからね。ですから、ここでわれわれが「では、もうパーチェスの方向に踏み切りますよ」ということであれば、経済の実態というのは変わっていないわけです。経営の実態も変わっていないわけです。したがって、そのあたりのところについての変化を明確にしておかないと、後のIASBとのいろいろな議論をしていく上において、やはり日本での信頼感が徐々になくなると思います。ですから、そこはやはり検討していただきたい。

先ほど斎藤部会長があえておっしゃったのですが、しかし、そうはいっても、やはり斎藤部会長なり皆さんが日本を代表して、少なくともこの企業会計審議会の意向だとか、そのようなものを踏まえてお話になっていますから、もちろん経済界としても、われわれも、先ほど八木委員がいわれたように、われわれも何回かディスカスして意見を統一してきたわけです。しかし、それをいつまでもゴリ押しするつもりは毛頭ないんですよ。

ですから、ここは最終的に、もうそろそろ検討しなければならないのであれば、何らかの形での方向づけを出していただいて、それをそろそろたたくということで、まとめ上げるということでやっていかなければならない。そのあたりのスケジュール等については、今日は出てこないと思いますが、またご披露いただければと思います。

実は私、たまたま来週の月、火とヨーロッパの財界の人との会合がありまして、IASの動きの話をまた聞きますけれども、いずれにしましても、これの方向づけのスケジュール、タイミングというのをどの程度考えておられるのか、もしわかれば教えてほしいと思います。難しい問題でしょうけれども。

○細田参事官

大変恐縮でございますが、このような形で、いろいろな情勢を踏まえて本格的に議論を再開しましたのは今回初めてでございます。本日はこのようにさまざまなご意見をということでございますので、少しまだスケジュールの方は定まっていない状況でございます。

○斎藤部会長

ほかにご発言ないでしょうか。

○中島委員

先ほどから議論を聞いていて、IASBとの関係をどのように考えるかというところが、やはり人によってかなり意見が違うのではないかという感じがするんですね。IASBに入るときに、あまりその辺の議論はされていないわけですけれども、しかし、やはり日本として理事を送り込み、それから産業界と公認会計士協会で相当な金額を出して、財政的にも負担しているわけですね。

そのような中でどのように対応していったらいいのかというのは、先ほどの山田委員の話だと、これからまたいろいろと出てくるということで、かなり悩ましい話ではないかなと。それはどこかの時点で、どのような体制で臨むかというようなことを議論した方がいいのか、それとも個別の問題が出てきたときに、それを処理する中でおのずと一つの方向のようなものが出てくるのか、それはわかりませんけれども、私は個人的に、ある程度、その過程ではもちろん主張すべきところは主張し、議論していかなければならないと思いますけれども、ある程度の方向が出てきたら、やはりそれに合わせる努力をしていくということも一方で必要になってくるのかなという気がしているわけですね。

ただ、辻山委員から「それでは、のれんの減損でもよいのですか」といわれると、そこのところは少し私も、総論と各論と、そこは非常に悩ましいところだと思いますが、そのような感じがします。

○斎藤部会長

多分それはケース・バイ・ケースだと思うんですね。基本的なスタンスは、私は、できるだけ国際的に調和できるものは調和すべきだと思いますけれども、その上でなおかつ調和できないといいますか、議論しなければならない論点があるかどうか、それが基本的な問題だと思いますね。

黒川委員、ご発言ありませんでしょうか。

○黒川委員

私一人しかいわないのですが、やはりフレッシュ・スタート法は、もうだんだんいいたくもなくなってきたんですけれども、先ほどからIASBとの関係とかいろいろありますが、このような効果もあると思うんですね。これが表に出るというのは何ですけれども、区別する規準次第で実際にプーリング法がどのぐらい適用されるのか――残ったとしてですが、あるいはフレッシュ・スタート法もそうですけれども、要するに、運用のところ、細かい指針のところ次第で実際にはかなり変わる話だと思います。

ただ、その上にある基準というようなもののインパクトも、やはり非常に世間的というか、国際的には大きい問題があると思うんですね。ですから戦略的に考える。

そのときに、もちろんプーリング法というのも論理としてはあると思います。でも、同じプーリング法を残すのであれば、そのときに、世界的にいってもまだ非常にしんどいといわれているフレッシュ・スタート法を、もう日本は基準に入れたというような一つのアドバンスというか、一歩進んでいるというところをみせつつ残す。そして、細かいところは識別のところで考えればいいのですから、そのような戦略的思考といいましょうか、要するに、このままパーチェス法とプーリング法を残すということでは、何か日本が遅れているような印象を、本当はそうではないにもかかわらず与える。これは非常にマイナスイメージがあると私は危惧しています。ですから、プーリング法を残すのであればフレッシュ・スタート法も入れて、世界に先がけて「入れたのか」と、そのような効果をねらうというのも一つだろう。

基本的には、非常に基準が安定するというのは、斎藤部会長が先ほどから何度もおっしゃっているように、やはり論理だと思うんですよね。論理がなければだめだと思います。ですから、パーチェス法一辺倒というのは非常に短命だと私は思うんですね。やはり論理的にはきついと思います。ですから、この三つを併用するというのは論理があると私は信じているので、いいのではないか、このようなことです。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

ほかにご発言ないでしょうか。

今日はいろいろご意見を出していただいたわけでありますけれども、今後この審議をどう進めていくか、大変悩ましいところであります。

今日の主立った、方向のはっきりしたご発言、例えば冒頭に中島委員から、プーリング法を非常に限定的に認めるとしても、そのような限定された状況でプーリング法を残した場合とパーチェス法に一本化した場合とでは実質的な違いはほとんどないであろう、そのような実質的な違いはないということを踏まえると、国際的な調和といいますか、コンバージェンスという観点からは、この際、国際会計基準に合わせてパーチェス法に一本化するというのも一つの考え方であるというご指摘がございました。

他方では、八木委員、伊藤委員から経済界のお考えをいろいろお述べいただきまして、そのご意見では、依然としてプーリング法も含めて検討の余地がある、そのようなご主張でございました。

比較的まとめるという観点からご発言いただいたのは、恐らく大塚委員でありまして、いろいろな意見があるわけですから、この際、パーチェス法、プーリング法を使い分けるという前提で、取得側を識別できないケースをオペレーショナルに、明確にクラリファイする努力をまずしてみたらどうか。それが国際的にも十分主張し得るものであれば、それを使えばいいし、それが曖昧な形に終わるのであればほかの方法を考えるべきだというご主張がございました。

黒川委員のご発言は、その二つ方法ではなくて、もう一つ加えて三つにしろ、そのようなご意見でございました。

それらのご意見を踏まえて、今後どのように審議を進め、あるいはその審議のための準備を私どもが進めるかということでございますけれども、特に今後の審議のための準備に関して、委員の皆様方からのサゼスチョンがあれば、ごく短時間ですが、承りたいと思います。

特にご発言ないでしょうか。

だんだん時間が近づいてまいりましたので、特にこの場でご発言をいただけない場合でも、後ほど事務局の方に直接お申し越しいただければ、事務局サイドで準備作業を進めさせていただきたいと思います。

それでは、今日はこの辺で終了させていただきます。

次回の部会につきましては、改めて事務局からご連絡申し上げます。

本日はお忙しいところをまことにありがとうございました。

これで散会させていただきます。

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