平成13年4月23日
金融庁

企業会計審議会第16回第二部会議事録について

企業会計審議会第16回第二部会(平成13年4月6日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第16回第二部会議事録

日時:平成13年4月6日(金)午後1時30分~午後3時40分

場所:中央合同庁舎第4号館10階共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第16回第二部会を開催いたします。

早速、議事に入りたいと思います。本日は前回に引き続きまして監査基準の改訂案の草案につきまして御検討いただくこととしたいと考えております。本日は前回の部会での御意見を踏まえまして、目的、一般基準及び実施基準の草案を修正した部分と報告基準の草案について御検討いただきたいと思います。

なお、本日資料としてお配りいたしましたものは、いまだ検討途中のものでございますので委員限りとさせていただきたく、本日は種々御意見をいただければと思います。

それではまず、事務局から前回お示しいたしました草案の修正について御説明いただきまして、検討してまいりたいと思います。その後で報告基準の草案を御検討いただくことといたしたいと思います。

まず、事務局から前回お示ししました草案の修正について御説明いたします。それでは、お願いいたします。

○多賀谷課長補佐

それでは、お手元の資料に基づきまして前回御議論いただきました目的、一般基準、実施基準までのところを修正いたしましたものを御説明させていただきます。

まず、監査基準第一、目的でございますが、前回の御検討によりまして2カ所ほどここで修正させていただいております。

第1点は「経営者の作成した財務諸表」というところで、企業の財務諸表という言い方が漠然としているということで作成は経営者に責任があるという二重責任の原則が明確になるようにという御意見を踏まえてこの言葉を追加してございます。

もう1つは3行目の企業の財政状態、経営成績に加えてキャッシュ・フローの状況等という、この「キャッシュ・フローの状況」というのを含めております。これも前回御意見がございましたように基本財務諸表としてキャッシュ・フロー計算書が入ったこと、現在の監査基準にもこの旨が明確にされていることから入れた方がいいのではないかということでございました。

ただ、備考にございますようにあくまでもどのような財務諸表が開示され、どのような財務諸表が監査対象となるのかというのは法令の枠組みにより変わるわけでございますので、ここは「等」をつけておりまして、1つの例示ということでございます。この点につきましては前文で説明を付してはどうかということでございます。現在のところ、この「等」には何が入るかということは特定されておりませんが、今後、財務諸表の形態なり新たな財務諸表が将来入る、あるいは現在の財務諸表の形が変わることもあるかもしれませんので「等」ということで、ここはこの3つだけということではなくてこのようなものという感じになっております。

他の点につきましては表現が若干わかりにくいという御意見がございましたが、一応前回のままという形になっております。

第二、一般基準でございます。

1でございますが、これも実務経験に「等」をつけてございます。実務経験といいますとまさに行って監査という経験をしてということだけですが、現実にはそれも含めて例えば研修とか自己研鑽ということも当然入るわけですので、一応「等」をつけてある。ここでは具体的にこれ以上は書いてございませんが、実際に公認会計士協会では継続的な研修という制度も取り入れられているということでございますので、それも踏まえて「等」ということになっております。

2は特に変わっておりません。ただ、ここは前回の部会の後に御意見を頂戴しておりまして、文章的に「監査人は、監査を行うに当たって、常に公正不偏の態度を保持し」というので止まっておりますので、この文章全体の「してはならない」という語尾との整合性が誤解されないかどうか。「保持し」というのは保持するということ、後段は「外観を有してはならない」ということですので、「保持してはならない」と掛からないようにという御指摘がございました。

3も変わっておりません。「懐疑心」については正当な注意の一つであるということで、国際的調和の観点からこれを特に強調するという趣旨を前文で説明することになろうかと思います。

4の不正・違法行為に関しましては、前回御指摘もございましたように2行目の後半で「財務諸表に重要な虚偽な表示が行われる可能性を考慮」ということで、これは従来の案では「行われること」、「認識しなければならない」という表現になっていたわけですが、これでは必ず虚偽表示が行われるととられる。また、「認識する」というのと「留意する」というのは関係がわからないということもございましたので、「可能性を考慮する」、考慮するということは当然それを常に考慮していくということであります。そこで、「また」以下の留意しなければならない、違法行為についての「留意」ということと言葉を変えてございます。

5の文書化につきましては特に変更はございません。

2ページ目の6でございますが、監査の質の管理についても特に変更はございません。備考にございますように監査人という言葉の使い方につきましては、ここでは事務所としての監査人という意味もございますので、この点については前文で説明を加えていきたいということであったかと思います。

7の守秘義務も変えておりません。この用語はどうしても他に適当なものがないということでそのままにしてございます。

3ページは実施基準でございますが、ここはかなり変わっているところがございます。

まず、一の基本原則でございます。これは下線を付した部分ですが、リスク・アプローチの構造に関する記述でございます。前回の案では基本原則の次の監査計画の箇所にこのようなことが書いてあったのですが、これは基本的な問題であるので基本原則にした方がいいのではないかという御意見を受けまして一に移しております。内容的には特に変わっておりません。文言としては2行目でございますが、「監査リスクを合理的に低い水準に押さえる目的で」としていたのを「ために」としまして、「固有リスクと統制リスクを暫定的に評価して発見リスクの水準を決定し、監査上の重要性を勘案した上で監査計画を策定し、これに基づき監査を実施しなければならない」としております。

また、監査計画につきましては「立案」を「策定」とした方がいいのではないかという御意見がありましたので、現在の段階では「策定」に統一しておりますが、この辺はまた御議論いただければと考えております。

また、備考の2番目でございますけれども、言葉遣いでございます。監査を実施する、あるいは監査の実施ということは広義には当然、監査計画あるいは監査契約から監査がすべて終了して監査報告書を出すところまでの全体が含まれるわけですが、監査基準の作成に当たってはその手続を明確にするという便宜上、計画と実施を分けさせていただいております。そこで、ここでも文章的に「監査計画を策定し、これに基づき監査を実施しなければならない」ということで、監査計画を策定したまでのところと、その監査計画に従って監査を具体的に行う、計画に基づく監査を行うという部分を分けるような感じにしてあります。以下、監査の実施という場合にはこのように監査計画を受けて行われる実施の部分と解釈していただければと考えております。

また、前回御説明したところでございますが、固有リスクなり統制リスクなり発見リスクといった意味は前文等で説明する必要がある。また、内部統制の意義につきましても前文等で説明するということになっております。

2は監査要点に適合した監査証拠を入手するという趣旨でございますが、この監査要点の中身は前回の案では監査の実施の箇所に書いてありました。これは監査要点という言葉が初めて出てくる箇所が基本原則でございますので、こちらに移しております。

そこで、ここに記載してある監査要点のことでございますが、「実在性」は実際にあるかないか、「網羅性」はすべてが網羅されているかどうかということです。「権利と義務との帰属性」は「権利と義務」としていたのですが、わかりにくい。資産と負債とかいろいろあると思うのですが、「権利と義務の帰属性」ということで、例えば企業の手元にないけれども権利としてあるものもあるでしょうし、逆に手元にはあっても自らのものではないものもある。すなわちそういうものの帰属の適切さ、実在性が物理的な実在性ということであるとすれば、企業に帰属しているかどうかという帰属性を言っております。

それから、「評価の妥当性」、「認識する期間の適切性」は従前はいわゆる費用配分なり期間の損益計上ということが主でございました。認識する期間というのはわかりにくいかもしれませんけれども、いわゆる期間配分、費用と収益がその期間に配分されているかということでございます。それから「表示の妥当性」、これらが監査要点として立証すべきものになる。これに適合した監査ですが、立証すべき、立証するにふさわしいというのでしょうか、十分かつ適切な監査証拠を入手して意見を形成していくという手続の概念を明らかにしております。

3でございますが、これは前回案の2の後段を独立させております。「適切な監査証拠を入手し」となっている入手するにはどういうことをやるのかということですが、どういうことをやるかという点についてはこれまでの御議論でも監査技法というのでしょうか、例えば「立会」をしなさいというような細かいことは書かないということで、もう少し基本的な概念ということで統制評価手続と実証手続ということが国際的にも示されているので、これをここでも使っております。しかしながら、これを言葉だけで使いますと若干わかりにくいということがございますので、説明を加えるような文章にしております。

また、3の1行目の後段の「原則として」というところからですが、「試査に基づき」ということで「試査」という言葉をここで使うことにしております。これは監査報告書の記述においては国際的にも「試査に基づき」、テストベースでやったということを書くことになろうかと思いますので、報告基準の検討と合わせましてこちらに「試査に基づき」というのを入れさせていただいております。それで統制リスクを評価するために行う手続と、監査要点の直接的な立証のために行う実証手続を実施しなければならないということになっております。

不正への対処は特に変わっておりません。

それから、企業の存続能力です。ここは「企業の存続」という表現をしていたのですが、前回の御意見で「存続」というのはただあればいいという意味になるのではないか。やはり事業が継続しないことが基本であって、例えば清算手続なり更生手続をしていても企業自体は法律的には存続している場合があるので、そこは誤解がないようにという御指摘がございましたので、「企業の事業が継続すること」と修正しております。

4ページでございますが、監査計画の策定でございます。ここは先ほど申し上げましたが、「立案」を「策定」というふうに項目を変えております。また、リスク・アプローチの構造部分は基本原則へ移動しましたので、1は非常に簡単になっております。

2は内容的にはそんなに変わっておりませんが、従前ですとこれを評価しなさいというのがずっと入っていて、リスクを評価するというのが何カ所にもあるのでどういう評価をどこでするのかがわかりにくいということがございました。そこで、2とその後の3は順番等も考えまして、まず、「評価をすること」は基本原則に入っているので、その評価をするためにはこれこれのことに関する情報を入手して、その影響を考慮しなさいというふうに文章の表現を変えております。

また、「暫定的に評価する」ことについてはもう少し適切な表現ができないかという御意見を頂戴したのですが、なかなかうまい表現がございませんので「暫定的に」という言葉はそのままにしてございます。ディスカッションにつきましても入れたらどうかという御意見がございましたが、ディスカッションについても必ずしも評価する場面だけでなくて現実的にはいろいろなところで必要に応じて行うことが必要になるだろうということでございますので、これを1つの重要な手法であるということで前文等で対応してはどうかということでございます。

3は基本的には余り変わっておりません。ただ、「監査計画を策定し、実施すべき監査手続、実施の時期及び範囲を決定しなければならない」という文章になっております。

4は情報技術(IT)の部分です。従前は「情報技術が監査リスクに及ぼす影響」となっていたのですが、国際的にも今この点はいろいろ議論されているということでございまして、必ずしもリスクというよりは監査全体に及ぼすいろいろな面の影響が重要ではないかということでございましたので「監査に及ぼす影響」と修正しております。

5は文言の修正でございます。1カ所だけ「重要な疑義を抱かせる事象」となっておりましたのを、重要な疑義という表現はどうだろうということで「疑義を抱かせる重要な事象」というふうに文章を訂正しております。

6は監査をしていく中で監査計画を修正する必要があるときに修正するということですが、監査の実施のところに書いてあったものを監査計画の一番最後につけまして、計画を立てたけれども、それでやってみたらば状況が変化した、あるいは新しい事象が発生した場合には監査計画を修正して、ここに戻って監査計画をつくって、また実施してくださいという意味で場所を移しております。

次に、三の監査の実施です。監査要点の中身は先ほど申し上げましたように基本原則の方に移動しましたので、ここではそもそも実施というのはどういうことから始めるのかという枠組みを示すことを考えております。

最初はもちろん通常行われるであろう場合ですが、「統制評価手続により統制リスクを評価し、統制リスクの水準が暫定的に評価した水準と同程度かそれ以下であると判断される場合には、監査計画において策定された実証手続を実施し」、これは要は監査計画が適切に運用できる場合にはその計画に従った監査を続ける。それから、監査計画を立てたけれども、実際に個々の事象なり事業なり立証のポイントの統制リスクを評価してみたらば違っていた、あるいはある事業については統制リスクが非常に高かった場合には発見リスク、つまり監査の漏れをなくするためには当初計画された手続を修正して、より詳細な手続が必要になるだろうということでございます。

2は前回の3が繰り上がっているところでございます。これは統制リスクが非常に高い、あるいは内部統制がない場合には統制評価手続をしないで実証手続を行うという趣旨でございます。

3は会計上の見積りの合理性を判断するということで、そこで経営者が行った見積りの方法の評価や監査人の行った見積りや実績との比較をしてくださいと。従前は事後的な評価をするということだったのですが、事後的にというと前の期の監査をやり直すのかという感じもありますので、見積りや実績との比較という形で修正しております。

5ページでございますが、4の不正・誤謬を発見した場合。これは監査計画を修正するという形になっていたのですが、そこは適宜、監査人の判断で、例えば誤謬の兆候であれば監査手続をもう少し追加して、それが本当に不正なのか誤謬なのか確認するとか、そこは監査人の判断が入るところだろうということでございますので、「適宜、監査手続の追加又は監査計画の修正を行い」と直しております。

5の修正は先ほどと同じように重要な事象というところを合わせております。

そして、5の下から2行目でございます。「当該疑義を解消させるための対応及び経営計画等の合理性を検討し」は従前、妥当性となっていたのですが、やはり経営判断に踏み込むような問題が生ずるという御指摘がございましたので、「合理性を検討する」ということに変更・修正しております。

6は「経営者は」というのが2行目の後半に入っております。これは誰が出したのかわからないので、文章を整えるために「経営者は」という主語をここに置いております。

四の他の監査人等の利用ですが、ここは「てにをは」が若干変わっております。

1、2は同じでございまして、3は非常に長い文章でございましたので、文章を区切りまして2段階のような形にしてございます。すなわち内部監査の方法及び計画が信頼できるかどうかを評価した上でということがありまして、そして内部監査の結果を利用できると判断した場合にはという文章につなげております。

前回御検討いただいた部分の修正は以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

前回の審議における委員の皆様方の貴重な御意見を踏まえ、またその後、文書でも御意見をお寄せいただきまして、ありがとうございました。それらの御意見を踏まえまして山浦委員、友永委員にも御協力いただきまして私どもで修正を進めてまいりました。その結果でございます。

それでは、その後の報告基準の審議もございますが、その前にここで区切りまして皆様方の御発言をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○内藤委員

それでは、質問させていただきたます。だんだんと基準として非常に整合的で、かつ内容的にも基準間の独立性が保たれ、そして無矛盾な基準になってきているので、御努力に敬意を表したいと思うんです。また、大変時間をかけて練られた内容について少しケチをつけるような質問もあるかもしれませんが、それはお許しいただきたいと思います。時間を節約するということで、一度に全部問題点だけを申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。

7つばかりお願いしたいのですが、まず、前回問題となりました1ページの目的にキャッシュ・フローの状況を入れていただいたのは非常によかったと思うのですが、これが入ってまいりますと、以前の「財政状態及び経営成績等」と書いてあった場合には「等」の中身がキャッシュ・フローの状況を指しているというのがすぐわかるわけですが、これが入ったときに「等」をつけますと、多賀谷課長補佐から今説明がありましたことによると新たな財務諸表とか、財務諸表の内容が変わったときにそれにしかるべく内容が入ってくるからという御説明だったのですが、その前に一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠してという条件がついていますので、企業会計の基準に準拠して作成されたものについて財務諸表が何を表しているのかということになると思うんです。そうすると、そのレベルで見たときに財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況と同等レベルの内容を「等」でもって想起・想像することは非常に難しいと思うんです。そういうときに「等」を入れてしまうと解釈の問題で後々に非常に問題を残すのではないか、あるいは監査人の責任をこの「等」をもって過大に追及することが生まれる可能性がここに出てくるのではないかという危惧を持つのですが、それはいかがでしょうかというのがまず1つ目です。

2つ目は3ページにまいりまして、監査要点を実施基準の基本原則の2番目に持ってきていただいて立証すべき内容を挙げていただいたのは大変いいかと思うのですが、その中の言葉の問題です。「認識する期間」というのはわかりにくいかもしれませんがという御説明がありましたが、やはりわかりにくいのではないでしょうか。これはこれまで「期間帰属」という言葉でその内容が特定化されるので、これは元の「期間帰属」のままの方がいいのではないでしょうかということです。

その基本原則の5、継続企業の前提のところで企業の存続という表現が存在していればよいという感じになるという指摘があって「企業の事業が継続することを前提」という表現に直されたわけですが、こういう表現になりますと、逆に企業の事業という中で個々の特定の事業が継続するというふうに非常に細かい些細なことのように見えてしまわないか。国際的にといいますか諸外国、ゴーイング・コンサーンの監査をやっている国々ではこれまで「継続企業としての存続可能性」、すなわち"an ability to continue as a going concern"という言葉で表現していますように「継続企業としての存続可能性」を前提とするという旨を出された方がよりよいのではないかと考えます。

次に第4点目ですが、これも非常に細かいことです。4ページの二の監査計画の策定の3番目の基準「監査人は、企業の内部統制の状況を把握して・・」の2行目に「監査要点等に応じた統制評価手続と実証手続に係る監査計画を策定し」、ここに監査要点等の「等」がついているんです。では、この「等」は一体何を意味しているのか。以前は監査要点というのは非常に限定的にありましたので、ほかにもあるという意味で監査要点等の「等」は意味があったと思うのですが、今回は前段で既に監査要点の中身はいろいろあるという規定の仕方になっていますので、ここは「等」を取るべきではないでしょうかということです。

5つ目は4ページの監査計画の策定の5番目で、先ほど申し上げた点とも関係しています。「企業の事業の継続に疑義を抱かせる重要な事象又は状況」は以前の「重要な疑義を抱かせる事象又は状況」という言葉を変えられたのですが、変えるとどんな小さな疑義も抱かせるような重要な事象であれば全部気にしないといけないというふうに意味が変わってこないかなと思うんです。もし重要な疑義という言葉がないとすると、それは相当程度の疑義を抱かせるような事象、状況という意味ですので、重要という言葉がよくなければ「相当程度の疑義を抱かせる事象又は状況の有無を確める」という方が意味が的確になるのではないでしょうか。だから、せっかく変えられたのですが元に戻すといいますか、いろいろなリスクがあるのですけれども、どんな小さなリスクまでも気にするということではなくて、継続企業としての存続可能性に重大な疑義、相当程度の疑義を抱かせるという表現を出すべきではないでしょうかということです。それが5点目です。

6点目は監査の実施の1番目のところで統制リスクの評価について、計画時における暫定的な評価の問題と監査実施における統制評価手続による統制リスクの評価の問題と非常に細かくといいますか、プロセスをきっちり押さえられた規定になっていまして、これは非常に好ましいと思います。しかし、ここで統制リスクに関してここまで具体的・明確に規定することになりますと、3ページの基本原則の1では「固有リスクと統制リスクを暫定的に評価して発見リスクの水準を決定し、・・これに基づき監査を実施しなければならない」という大原則を決めてあります。そういたしますと、発見リスクが最終的にどうなったかという規定を設けないと監査の実施のところが完結しないのではないかと思うんです。ですから、発見リスクの目標値を最初に定めて、それに基づいて監査計画を策定し、そして監査手続を実施し、その結果、発見リスクは目標値の範囲内におさまっているかどうかという事後的な評価をする。それは、すなわち表現の問題になってくると、これらの監査手続を実施した結果、合理的な基礎が得られていないと判断した場合には実証手続を追加して行わなければならないといった基準をこの監査の実施のところに設けてくる必要が出てきているのではないかと思うのですが、それはいかがでしょうかということです。

7つ目も細かいことですけれども、4ページの監査計画の策定の4番目に情報技術の問題がございまして、そこで「監査手続を策定しなければならない」という文言が出てきます。それから、5ページの上から2行目は監査の実施の4番目の基準になりますが、その2行目に「監査手続の追加」という言葉が出てまいります。そうすると、実施すべき監査手続の内容については後でまた出てくるのですけれども、独立して監査手続を策定する、あるいは追加するという文言がこの2カ所に出てくるんです。ここで言っている監査手続というのは3ページの監査証拠の入手のところですね。基本原則の3番目の規定に基づくと、監査手続は監査証拠を入手するための手段だと考えると統制評価手続と実証手続だけのように読めてしまうのですが、そうした場合に後ろは監査手続とするのではなくて、その中身である両者なのか実証手続なのかを明示した方がいいのではないでしょうか。

たくさんで恐縮ですが、以上7つ申し上げました。よろしくお願いいたします。

○脇田部会長

整理していただいて、ありがとうございました。1つ1つについてはそれぞれ御議論いただきたいと思いますけれども、7つございまして、1番のキャッシュ・フローの状況の後の「等」につきましては御意見も当然でございますので、この点はまた検討させていただきたいと思います。

2番は3ページの期間帰属、この監査要点のところから議論させていただきたいと思いますが、この点について山浦委員から御発言いただけますか。3ページの監査要点のところでございまして、今の御指摘は「認識する期間の適切性」という表現はわかりづらいのではないか、「期間帰属」の方がよろしいという内藤委員の御発言でした。

○山浦委員

確かにそうなんです。随分議論したところですけれども、ここで当初用いていました「期間帰属」は一般によく使われる言葉で、我々がイメージしているのはカットオフですね。カットオフに加えて先ほど多賀谷課長補佐から御説明があった原価配分も中にイメージした言葉として、これを日本語でどう表現するか。

2つ問題があって、1つは「権利と義務の帰属性」というのがその前にありますけれども、従前は「権利と義務」。ただ、「権利と義務」というのがどうも法律用語くさいし、これが監査要点としてどう関係するのかという議論をまずしまして、「権利と義務」の何を監査人が要点として、その監査手続を実施する、適用するのかという目標としての表現を考えているうちに、やはり企業にとっての「権利と義務の帰属性」という言葉が一番いいだろうと。そうすると、従来使っていました「期間帰属」という言葉はよく使われるけれども、カットオフという概念を本当に「期間帰属」という言葉でもって理解していただけるかどうか。それから、先ほどの原価配分の適切性という意味でも理解してもらえるかどうか。

そうしたことをあれこれ議論するうちに、「帰属」という言葉を2つ並べるのはどうもわかりにくいだろう、この「期間帰属」を別の表現にすればいいのではないか。「権利と義務の帰属性」の「帰属」と一たん決めまして、この言葉の使い方としてはいいのではないか。そうすると、後ろの方の「期間帰属」の「帰属」を別の言葉にする必要があるのではないかと考えて、表現を「認識する期間」に変えたんです。例示ではあるのですけれども、監査要点の中身については監査計画を策定するときの非常に大事な概念でありますので、これがもし誤解を与えるということであれば変える必要もあるかと思います。いずれにしても、こういった言葉を使うことにした経緯は今のような議論です。

○脇田部会長

ありがとうございました。

内藤委員、今御議論はございますか。よろしければどうぞ。

○内藤委員

表現の問題ということですので、ある程度お任せしないといけないかなと思いますけれども、「認識する期間」では内容がわからないので、何かもう少し工夫していただきたいと思います。

○脇田部会長

わかりました。山浦委員、また御協力をお願いいたしたいと思います。

3番目の点は3ページの5番、企業の存続能力もしくは継続企業の前提の「企業の事業が」という表現です。これは前回も御指摘いただきましたし、また私どもの起草メンバーでも大変議論いたしました。どのように表現したらよろしいか、それから日本語としてのなめらかさ、その意味、御指摘いただいたところも実はその議論の中にございました。この点については引き続き検討させていただきたいと思っております。

その次は4番目でございますが、それは4ページのところです。この点につきましても先ほど多賀谷課長補佐から御説明いただいたように、委員からも御指摘がありましたけれども、「重要な」ということ文章のつながり。この点についてもかなり議論いたしましたので、また今日の内藤委員からの御指摘も受けてさらに検討させていただきたいと思っております。

その次に、5番目の点は監査要点のところです。これは4ページの監査計画の策定の3番でございますけれども、「監査人は、企業の内部統制の状況を把握して統制リスクを暫定的に評価し、財務諸表項目自体が有する固有リスクも勘案した上で、監査要点等」を何にするか、どういう意味になるべきかという点については友永委員から御説明いただきたいと思います。御議論をよろしくお願いしたいと思います。

○友永委員

この部分は前の監査要点の方に「等」をつけております点との比較において、ここについての議論は前に持っていった後ではやっていないように私は記憶しております。これを当初つくった段階では実証手続の方は直接監査要点への対応があるけれども、統制評価手続をどういう形で実施するのかといった点において監査要点に直接結びつけた形ではなく、内部統制をどのようにデザインされているのか、あるいはオペレーションがどうかといったことを仲介させて見ていくことがあるので「等」を入れようということになったように記憶しております。

○脇田部会長

内藤委員、その点につきましていかがでございましょうか。

○内藤委員

そういう趣旨であれば、これは「監査要点等に応じた監査計画を策定し」というふうに読んでいたんです。手続に係るのであればそういうことも可能かと思いますが、そうだとすると、これは別に「監査要点等に応じた」という言葉がなくてもいいのではないかと思います。

○脇田部会長

それでは、今の点は特に友永委員に御協力いただいて策定している部分でございまして、今の御意見を踏まえてこの点ももう一度起草メンバーで検討させていただきたいと思っております。

それでは、6番目は4ページの三、監査の実施の1番でございます。発見リスクの評価についての総括的なと申しますか、そういったまとめ的な評価の結果もしくは監査計画策定とのつながりという面で発見リスクに関する規定が必要なのではないかという点でございます。この点についても非常に議論が行われたところでございますので、山浦委員に御意見をいただきたいと思います。

○山浦委員

今回の監査基準改訂の1つの大きな目標は現在一般に国際的に使われておりますリスク・アプローチの仕組みを明らかにするという趣旨で、そういう目的も今回の基準改訂の大きな目標であったわけですけれども、それをかなり書き込む形で進めてまいりました。その1つの現れが前回に比べてもう一歩踏み込んだ三の監査の実施の1の箇所です。

確かに内藤委員が今御指摘のところですけれども、最終的に一巡した評価手続の結果として発見リスクが――それに係る監査人が評価をして、そしてもし必要であれば手続のレベルをもう少し強いものにするとか、いわばリスク・アプローチのサイクルの締め括りのところが足りないという御指摘だと思うんです。確かにそう言われればそうかと思います。この点については起草メンバーの方でも議論しましたけれども、もう一度改めてこれをさらにもう1つ書き込むかどうかは議論したいと思っております。

○脇田部会長

ありがとうございました。

内藤委員からの御指摘は山浦委員から今御発言がありましたように貴重な御意見ですので、さらに検討させていただきたいと思います。

もう1つの監査手続の最後でございますけれども、これは例えば二の監査計画の策定における4のところ等につきまして監査手続という言葉が2カ所出てくる。これにつきまして前の大原則の方が統制評価手続と実証手続という2つのことから成り立っているので、この辺との関わりはどうなっているかという御指摘をいただきまして、私もこの点はもう少し詰めて検討しなければいけないと思いましたので、貴重な意見としてさらに検討させていただきます。

どうもありがとうございました。

それでは続けて渡辺委員、御発言をどうぞ。

○渡辺委員

1ページの第一の目的のところです。「経営者の作成した」という言葉が入って、上の方は非常にわかりやすくなったと私は思います。前段の方で経営者が作成した財務諸表を――できれば私はここに「独立した」と入れていただきたいのですが、それは別にして独立した監査人の方が監査するんですと。後段の方で監査人の方は合理的な範囲でこれは正しいと思ったら適正意見を表明するというのが監査の目的として最初に書いてあって非常にすっきりしているというか、わかりやすいと思うんです。

ただ、前回申し上げた点をもう一度申し上げたいのですけれども、「合理的な保証を与えるできるとの監査人の判断を表明したものである」というのはやはりわかりにくくて、実際的に御質問すれば日本の会計監査の適正意見というのは適正性についての合理的な保証を与えているのでしょうか。それとも与えていなくて、与えることができるとの監査人の判断を表明したものにすぎないのでしょうか。もし合理的な保証を与えるのであれば、この後ろについている曖昧になってわかりにくくなっている部分を取ってしまう方が非常にすっきりしたものになると思います。ですから、意見、御質問としては、この第2パラグラフは適正性についての合理的な保証を与える趣旨なのか、日本の場合は明確に与えるのではなくて後ろについている判断の表明にすぎないのかということと、もし与えるということであればすっきりと与えると記述すべきではないかと思います。

○脇田部会長

ただいま大変重要な御指摘で、前回も渡辺委員からの御指摘として伺っておりました。この点、山浦委員から御発言いただきたいと思います。

○山浦委員

前回の渡辺委員の御指摘と先ほどの御指摘は同じ御指摘だと思うんです。それは我々も随分考えたのですけれども、reasonable assurance(合理的な保証)は、監査というのはあくまでも制約を受けた手続の範囲で得た証拠をもとにして監査人が心証を形成する。その心証を形成するときに合理的な基礎を得ることができたという判断をもとにして監査人は最終的な意見を形成して、これを表明するといった仕組みをとっております。

「合理的な保証を与える」というダイレクトな表現になりますと、今の監査のプロセスというか心証形成のプロセスが必ずしもうまく表現されないという危惧を抱きまして、これはどうも取れない。やはり監査人としては自分の監査行動、監査手続を実施して、そして各種の証拠を得て、その証拠をもとにして合理的な基礎を形成して、それをもとにして財務諸表の適正性について判断を下して、その判断を監査人の意見として表明するという、確かに一般の方からわかりにくい仕組みであるかのように思えますけれども、監査人側からするとそれ以上には踏み込んでいけないというか、踏み込むことができないプロセスだと思うんです。今のような監査人の心証形成のプロセスをこういう短い文章で表現すればやはりここまでではないかということです。これで渡辺委員に御理解いただけたかどうか、これについては友永委員にも補足していただきます。

○友永委員

ここは私も異論があるところです。合理的な保証を与えるというのは人に対して与えるという文言でございまして、ISA(国際監査基準)では、「ISAに準拠した監査は全体として財務諸表に重要な虚偽記載がないという合理的保証を提供するように」としているといった表現はございます。ただ、こういった監査人の意見との関係においては監査人が形成した心証といいますか、自分自身に合理的な保証を得たという心証といった意味で使われているということで、余りにダイレクトに自分の意見が外部に対して合理的な保証を与えるものだというニュアンスにとられることは非常に危険だろうと私は思っております。前回も申し上げましたけれども、合理的な保証を与えるように意図されている制度だということは前文にお書きいただいて、ここはやはり監査人の心証という意味で合理的な保証を与えるという言い方をもう少し変えていただきたいというのが私の意見でございます。

○渡辺委員

監査というのは最終的には利用者のためにやっていただいている制度ではないかと私は思うのですが、今のお話ですと要するに合理的な保証は与えていないということでしょうか。

○友永委員

合理的な保証を与えるように計画して実施しているものだということは言えるわけですけれども、その中で監査人が自分自身が虚偽の表示がないということについて合理的な心証を得たといった結論として監査意見を表明するといったロジックだろうと思うんです。それと監査というものが財務諸表の信頼性に対してある種の保証を与えるような制度だということとはちょっと違うのではないか。SASもISAも専らこういった監査意見という意味での文章の中ではそういった心証の意味に使っていると申し上げたわけです。

○渡辺委員

多分、心証という意味は私の素人なりの解釈では意見というところに含まれていて、要するに科学的な何らかの結果ではなくて、制約の中で自分が集めてきた証拠をもとにつくり上げた心証をもとにオピニオンを出しているんですという筋立てだろうと思うんです。それはその意見の中に入っているわけですから、私は合理的な保証を与えるということでいいのではないかというか、利用者から言うと要するに監査とは何なのだろう。合理的な保証あるいは心証に基づく、前にあってもいいと思うのですが、心証形成に基づく合理的な保証を与えないのであれば何のためにやっていただいているのかという気がいたします。

○脇田部会長

今、この辺は監査の本質、監査に対する理解という問題に非常に基礎的な問題でございます。御指名して恐縮ですけれども、お聞きになっていて内藤委員は御意見をお持ちか、よろしければ御発言いただければと思います。

○内藤委員

御指名ですので申し上げたいと思うのですが、渡辺委員はまさしく本当に本質論を言っているのだと思うんです。財務諸表監査の目的、この目的のところには非常に狭い意味での目的を書いてありまして、よく一般的に言う目的というと何のためにやっているんですかという意味で議論しますね。そのレベルになると合理的な保証を与えるためにやっている。それが最終的には我々の限られた資源が有効に配分されることを保証するために監査制度がインフラストラクチャーとしてあるということになるわけです。だから、この目的のところでそのあたりをどの意味で書くかによって変わってくると思うんです。

第2パラグラフとして合理的な保証を与えるものであると書いてしまうと、ここで言っている目的の意味が今言ったような目的の階層下のうち、またずれてくるんです。私はそういう問題があるのではないかと思うんです。だから、そうであると監査の目的は「判断した結果を意見として表明し、合理的な保証を与えることである」としなければならないと思います。ただ、そこまで言うことが今できるかどうかというのは我々の監査という行為が自然科学に基づく行為ではなくて、経済社会の中での社会科学としての保証しかできないんです。だから、絶対的な証拠に基づいて何か意見を言うこと、保証を与えるところまではいきませんので、そういう意味で合理的な保証という表現になるのでしょうけれども、だから逆に合理的な保証が意見として表明することの意味になっていると思うんです。

だから、何のためにするのかと言われれば合理的な保証を与えるためにやっている。しかし、合理的な保証を与えるために渡辺委員が考えるような合理的な保証を与えるというレベルまで監査人が意見を表明できるかといったら、いろいろな前提条件があってそこまでの絶対的な証拠を入手できないから意見として表明というふうにとどめているわけです。だから2段階というんですか、目的のレベルに応じた表現になっているので、この意味ではこの表現に整合性があると思いますけれども、渡辺委員が表現されたような合理的な保証を与えるということを目標としている旨は前文で何か説明した方がいいのではないかと思います。

以上です。

○脇田部会長

突然に御指名して大変申し訳ありませんでしたけれども、御意見をいただきましてありがとうございました。この点につきましては大変基本的なことでございますので、ほかに御意見がございましたらどうぞ御発言いただきたいと思います。

○宮島部会長代理

法律家からこれを見ると、果たして同じなのか違うのかということを私たちが決めて、要するに責任を追及されたときに保証したということと保証ができますという判断を意見として表したということで、投資家から見て責任を追及するときに同じか違うのかということが出てくるのではないかと思うんです。そんなときに保証を与えられるという意見を表明したことによっても責任は同じように出てくるのではないかというのが今お聞きした範囲での話だと思うんです。そうすると、表現の問題としてどちらでも構わない、いずれにしても責任を追及されることは出てくるだろうと思うんです。そんな印象を持ってお聞きしていたのですけれど。

○脇田部会長

ありがとうございました。

○渡辺委員

宮島先生の御意見をお聞きして私は意を強くしたのですが、同じであれば普通の人が読んでわかる、監査人の方も緊張感が走るようなすっきりした表現にした方がいいと思います。

○脇田部会長

ほかに御発言はございますでしょうか。

○加藤委員

多分これもエクスペクテーション・ギャップの1つだと思うのですが、監査人と財務諸表を利用する人との間での思惑の違いがあると思うんです。私はここだけ議論していても両者に納得いくような結論というか、思いがなかなか出てこないと思いますので、結局これは報告基準というか、どういう監査意見の表明をするのか。その辺とも絡んできますので、これはとりあえずこのままにしておくとして全体、特に報告基準を審議した上でまたここに戻る方がいいような気がするのですけれども。

○脇田部会長

進め方について御示唆いただきまして、ありがとうございました。

この点について今、内藤委員が挙手なさったのでどうぞ。

○内藤委員

法律の議論として意見を表明していることと合理的な保証を与えるというふうに書くことは結果として同じである。これは確かにそういうふうに思うんです。だとすると、それは意見として表明するということで事足りていることで、それが合理的な保証につながるという説明文にすぎないと思うんです。もし合理的な保証を与えると書くのだとしますと、合理的な保証とは何かということをここに明記することが出てきます。そのときには意見として表明することが合理的な保証とイコールだとすると、その合理性というものが何を意味しているかということになってくると思うんです。全然ないということを100%保証しているんですかという話になってくると思うんです。そういう表現をしたくてもできないと思うんです。

それは裁判になったときに、もしそれを立証しようとしても多分できない。それが監査行為の本質だと思うんです。だからそれをするけれども、これは微妙な表現というか、わかりにくい表現かもしれませんけれども、そういう意見として表明することの意味をここで説明しているものと理解しておいた方が、監査理論の水準からしても実務の水準からしても世界的に見てもこのレベルにしか止まっていないのではないかと思うんです。目的はあくまでも意見を表明することで、保証を与えることまでは行きにくいのではないかと考えています。もし保証を与えるということの裏づけがきっちり科学的に証明できるのであればそういう表現を用いればいいですが、なかなかそこまではできていないというのが学界の理解ではないかと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、いろいろ御発言いただきまして伺いました。ただ、これは基本的に目的とありますように監査の本質に非常に関わる問題であり、加藤委員の今の御指摘のように期待ギャップということにもつながり、そういう点では渡辺委員の御発言は非常に大きな意味を持っております。また、友永委員は監査人の立場からの御意見もありますし、そういったことも踏まえてさらに検討したいと思います。私も議論に参加したいところでございますが、今日は咳き込んでしまうものですから議論に参加しないことにいたします。

○伊藤委員

学者の先生方のお話はいろいろ拝聴してよくわかるのですけれども、実務家の我々としましては、前々から申し上げていますように、第二部会での議論の前提として我々実務界ではレジェンド・クローズがつけられていて、SEC基準以外の会社は一律付けられているわけです。これは何も日本全体の問題ではなくて企業とファームとの問題かもしれませんけれども、一律に全部付いているということは何らか日本の監査基準に関して問題があるし、それを無くすために担保しなければいけない。

そうすると、先ほどの先生方の御議論でどこまで組み込むかというのはいろいろあるのですけれども、とにかく日本としてはどの基準に踏み込んでいくのか。最終的にですが、ここでの文章が要するに世界のファームにおいて十分に理解され、そのとおり実行するかどうかは別として――実行するかどうかはそれぞれの監査人であり、その企業の経営者の問題かもしれませんけれども、少なくとも基準というのは世界的にどういう水準を我々がねらっていこうとしているのか、そこはよく理解していただかないと。あるいは、我々実務家に対してもよく説明していただきたいということが重要だと思います。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。

今日は大体皆様方の御発言をいただきました。大変基本的な問題でございますので、今後もさらに検討させていただきたいと思います。先ほど申しましたように私も参加したかったのですが、今日は咳き込みまして参加できません。この点については引き続き私どもでも検討いたしますし、御意見を交わしてまいりたいと思います。

○加藤委員

基本的なことをお聞きしたいのですが、もし論点整理のときと変わっていると私の理解が違っているので確認したいんです。論点整理の中には監査基準等の構成については現在と同じということで、論点整理では監査基準、監査実施準則、報告準則と、準則もつくるようになっていたのですが、この基本姿勢がもし変わっていないとすると、監査実施準則とか報告準則もこれからここで審議するのかどうかということです。というのは、今いただいている草案を見ますと現在では基準と準則の両方に入っているものが一緒になっているような感じがします。

○脇田部会長

その点については審議の当初の頃にこの審議の方向づけを決めさせていただきました中でこういう体系に改めるということを御了承いただいたかと思いますが、この点については事務局からもう少し御説明させていただきます。

○多賀谷課長補佐

枠組みをどこまで維持するかという問題で、最初に準則ということでしたが、案を作っていただいたときにどこまでが準則かというのはなかなか分けづらい。やはり基本的なものと実施と報告という枠組みは維持する。つまり、欧米のようにばらばらには出さない。そういう体系は維持するというところまではした上で準則の位置づけがますます曖昧になって、特に公認会計士協会の実務指針が非常に充実してきた中では曖昧になってきておりますので、基準という枠組みの中に入れる。準則という分けはしないということで、大きな体系の中の小分けはなくしたということで御了解いただいているところです。

○脇田部会長

当初そのように御了承いただいた上で審議に入っておりまして、一般基準、実施基準、報告基準、そしてその中を基本原則と各基準という形で展開し、そして公認会計士協会における監査基準書等に体系化していくという方向とさせていただいております。

引き続きまして、初めてでございますけれども、報告基準につきまして御紹介させていただきます。まず、事務局から説明させていただきます。

○多賀谷課長補佐

報告基準も分量が随分ございまして、資料の6ページ以下でございます。今日は初めて御審議いただくということでございますので、読み上げながら簡単にポイントだけ御説明させていただきたいと思います。

第四、報告基準、一が基本原則でございます。

1としまして「監査人は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、すべての重要な点において、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等を適正に表示していると認められるかどうかについて意見を形成し、表明しなければならない」。これは意見表明の対象ですので、今御議論いただきました目的の繰り返しということになっております。

2は「監査人は、財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して適正に表示されているかどうかの判断に当たっては、経営者が採用した会計方針が、企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうかのみならず、その適用の方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうか並びに財務諸表の表示方法が適切であるかどうかについての評価も行わなければならない。」となっております。

ここは適正性の判断基準でございますが、会計基準への準拠性、それから継続性、これは従来からあったわけでございます。論点整理で実質判断というのが入っているわけですが、実質判断という言葉ですと極めて種々の意味が出てきます。これまでも御議論いただきましたように会計基準や法令等を逸脱するというか、そういう場合も含まれるのかどうかという御議論もございました。そこは広い意味での会計基準の範囲内で、むしろ個々の取引などが適切に会計基準にフィットしているのか、選択されているのかというレベルの問題としてまずきちんと見ていくということで、実質判断という言葉を直接使わないでこのようなそれを支える考え方、ここで言う実質判断を支える具体的な表現をとっております。

どういう場合がというのはすべての場合は考えつかないのですが、極めて単純なことを言えば、例えば手形というのは形としては同じでも金融手形と商業手形がある。それは取引の実態に応じて会計処理が当然違ってくるということが非常に単純なこととしてあると思いますし、昨今では複雑な金融取引なりデリバティブ等、あるいは親子会社間の取引等もありますので、こういう会計事象や取引を適切に事実認定して会計基準に当てはめていくというところでの実質的な判断はますます重要になってくると考えられるのではないかと思います。

3ですが、「監査人は、十分かつ適切な監査証拠に基づき、監査リスクを合理的に低い水準に抑えた上で意見を形成するに足る合理的な基礎を得ることができたとの判断により意見を形成し、表明しなければならない」。ここは実施基準を受けているわけですが、リスク・アプローチという枠組みの中で十分な監査手続によって合理的な基礎を得た上で意見を表明しなさいということでございます。

4は「監査人は、重要な監査手続が実施できなかったこと等により、自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得られないときは、意見を表明してはならない」。これは3の裏返しでございます。十分な基礎が得られないときは意見を表明してはならないということを明確にしてあります。

5ですが、「監査人は、意見の表明に先立ち、自らの意見の形成が妥当であるか否かを確めるため、適切な審査を受けなければならない」。これは品質管理とも関係しますが、現在の基準でもあります審査を受けるということを明確にしたものでございます。

二は監査報告書の記載区分、ここは監査報告書の形式といいましょうか、様式でございます。「監査人は、監査報告書において、その作成日並びに監査人を明らかにし、監査の対象となった財務諸表の範囲等、実施した監査の概要、財務諸表に対する意見及び監査人が追記する情報を明瞭かつ簡潔に記載しなければならない。また、意見を表明しない場合には、その旨を監査報告書に記載しなければならない。」ということで、監査報告書の基本的な構成を書いてございます。

なお、監査人の名称をどのような形で明らかにすることについては御議論もまだいろいろありますし、今後変化する可能性もありますので、単に「監査人を明らかにし」という表現にとどめております。また、意見を表明しないことが監査報告書を出さないというふうに誤解されないように念のため意見表明をしない場合にも監査報告書に書くということを付け加えております。

7ページの三、監査報告書の記載事項でございます。ここは大きく分けまして1と2がございまして、1が要は無限定適正意見の場合。大半の会社はこれですから、この書き方で基本的な標準的記載を書きまして、2でいろいろな除外事項がある場合にはその下の四とか五の規定によって標準的な記載が修正されますという枠組みを示しております。

1、「監査人は、監査の範囲及び財務諸表に関して意見の対象から除外すべき事項がない場合には、次の記載をしなければならない」。

(1)が監査の対象となった財務諸表の範囲等、「監査対象となった財務諸表の範囲及び期間、財務諸表の作成責任は経営者にあること、監査人の責任は独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにあること」。

(2)が実施した監査の概要、「監査は試査を基礎として行われていること、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査が行われたこと、監査は財務諸表全体の表示を検討するとともに、経営者による会計方針の選択、経営者によって行われた見積りの評価も対象としていること、重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証を含め意見表明のための合理的な基礎を得たこと、他の監査人によって行われた監査の結果を利用している場合には、その旨。」、これはこのままの文章を書けということではなくて、こういうことを書いてくださいということでございます。ただ、ここで他の監査人の監査結果への依拠というのは、その依拠した結果が意見にも影響することもあるのですが、そこら辺の関連をどう考えるかという問題が若干残されております。

(3)として財務諸表に対する意見でございます。「経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、すべての重要な点において、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等を適正に表示していると認められること」。(3)の表題は「に関する事項」と書いてありますが、これは訂正をお願いします。財務諸表に関する意見でございます。

2ですが、「監査人は、除外事項がある場合には、実施した監査の概要及び財務諸表に対する意見に関する記載は、四(範囲の制約を受けた場合)及び五(意見に除外事項がある場合)の規定により修正して記載しなければならない。」ということでございまして、限定意見、不適正意見、意見差控についてはこの標準的記載が修正されることになります。

四でございますが、範囲の制約を受けた場合。

1、「監査人は、重要な監査手続を実施できなかったこと等により、十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった場合において、その事実が意見の表明ができないほど重要(かつ広範囲)ではないと判断して適正である旨の意見を表明する場合には、その事実を記載し、当該事実が影響する事項を意見の対象から除外している旨の意見を表明しなければならない」。ここでは監査意見を形成できないほどではないけれども、何らかの制約があった場合ということでございます。この重要な監査手続を実施できなかったこと等の「等」ですが、これは偶発事象が含まれるという解釈でいいかどうか、あるいは未確定事項との関係をどうするかという問題があろうかと思います。

2でございますが、「監査人は、重要な監査手続を実施できなかったこと等により、財務諸表に対する意見表明のための合理的な基礎を得ることができなかった場合には、その事実を記載し、意見を表明しない旨を記載しなければならない」。これは意見差控でございますが、「意見差控」という表現は用いておりません。出せるのに出さないというニュアンスがあるという御指摘がございましたので、そういう熟語は使っておりません。

8ページでございます。五、意見に除外事項がある場合。

1、「監査人は、経営者が採用した会計方針及びその適用方法、財務諸表の表示に関して不適切なものがあり、その影響が財務諸表を全体として不適正とするほどに重要でないと判断したことにより、その事項を除外した上で適正である旨の意見を表明する場合には、除外した事項及び影響額を記載しなければならない。」、いわゆる限定意見です。全体としては不適正というレベルではないけれども、何らかの問題があった場合の限定意見でございます。

2、「監査人は、経営者が採用した会計方針及びその適用方法、財務諸表の表示に関して著しく不適切なものがあり、財務諸表が全体として虚偽の表示に当たると判断した場合には、財務諸表が不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない。」、ここが不適正意見の場合の規定でございます。ただ、これは無限定適正意見を最初に置いておきまして、その範囲とか手続に制約があった場合、それから会計方針などに誤りがあった場合という程度によりまして意見差控あるいは限定になる場合と不適正意見になる場合という構造になっております。

六、継続企業の前提。

1、「監査人は、企業の事業の継続に疑義を抱かせる重要な事象又は状況が存在している場合において、経営者がその疑義を解消するに足る合理的な経営計画等を提示し、かつ、それらの事象や状況及び経営者の経営計画等が適切に表示されていると判断して財務諸表が適正である旨の意見を表明する場合には、それらの事象や状況及び経営者の経営計画等の表示の事実について情報を追記しなければならない。」となっております。

2、「監査人は、企業の事業の継続に疑義を抱かせる重要な事象又は状況が存在している場合において、経営者がその疑義を解消するに足る合理的な経営計画等を提示せず、あるいはその事象や状況に関する財務諸表の表示が適切でないと判断した場合には、その事実を除外して適正である旨の意見を表明するか、又は、その事実を記載して、財務諸表が不適正である旨の意見を表明しなければならない」。

3としまして「監査人は、企業の事業の継続に疑義を抱かせる重要な事象又は状況が存在している場合において、企業の事業の継続を前提として財務諸表を作成することが適切でないと判断した場合には、企業の事業の継続を前提とした財務諸表については不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない。」となっております。

いわゆるゴーイング・コンサーンに関するところですが、これを六として分けましたのは、通常のレベルの監査判断とは別のものであるということが前提でございます。したがいまして、大半の会社はゴーイング・コンサーン自体に問題がなければ、この六の規定全体が関係ない。したがって、何の記載も行われない。当然でございますが、それが前提であります。ですから六の規定が適用されるのは、まず監査計画なり監査実施の段階で企業の事業継続に疑義を抱かせる重要な事象が存在しているところが判断された上でございます。そういうことがある会社について、さらにこの3つのパターンがあるということを言っております。

大部分は1になると思いますが、現在の特記事項などで書かれているのも大半は1。すなわち、そういう事象があることについて経営者がその疑義を解消する経営計画を提示していて、それが記載されている。その記載の仕方も適正あるいは合理的である場合には当然、適正意見を出す。適正意見を出すのですが、そういう事実が財務諸表等に注記されているわけですから、それを追記情報としてこういうことが書いてありますということを監査報告書でも繰り返して追記していただく。ただし、これは当然、監査人の意見ということではなくて情報提供ということでございます。

2は経営者の計画に合理性があるかないかを検討したときに経営計画がないとか提示されない、あるいは書いてあることに合理性がないとか、いろいろ問題があった場合にはその程度に応じて限定付きの適正意見を出すか、あるいは不適正意見を出すかという判断をしてくださいということになります。

3は事業の継続が見込めない、そういう状況で、なお継続企業を前提として財務諸表を作っていたのであれば、それは不適正になりますという念押しになろうかと思いますが、そういう3つのパターンを書いてございます。

したがいまして、現在の枠組みに当てはめますとゴーイング・コンサーン問題がある企業については1で納まっているというのが基本だと思うのですが、中には2のような状況の企業もあったのではないか。それが今の特記事項という枠組みでは1のような状況で企業の存続に問題がない場合、あるいは問題がある会社も混在して特記事項に書かれている。そうなりますと、読み手はどういうレベルのことを書いてあるのかがよくわからない。これからは、まず監査人として事業継続には経営者の判断に合理性があると判断した場合だけが追記情報になる。ですから、ここに書かれるのはそういう判断を受けた上での会社だけである。現在の特記事項の中で、例えば実際には破綻してしまったような企業は今後ここではなくて監査意見として書いていただく。意見の中に限定事項があるとか、不適正である、それはこういうことであると書かれるということで、現在混在しているものを整理するという形になろうかと思います。

最後の9ページでございます。七、監査人の追記情報。

これは現在の特記事項という名前を追記情報としております。これは監査人が書くということでございます。「監査人は、財務諸表の利用者の判断を誤らせないようにするため、意見とは異なることを明確にして、監査意見から除外した事項以外の事項のうち次に掲げる情報を追記しなければならない」。(1)が正当な理由による継続性の変更、(2)が適正意見におけるゴーイング・コンサーンの追記情報、ただいま説明しました六の1でございます。(3)が重要な偶発事象及び後発事象、(4)が監査報告書を添付した財務諸表を含む文書に財務諸表の情報内容と重要な不整合がある場合、(5)その他どんなものがあるかということですが、これはあくまでも意見ではないということ。除外した事項以外の事項というのは文章がわかりにくいのですが、要は問題がない部分について書いてくださいということです。除外した事項というは何らかの問題があって意見から除外しているわけですから、それは意見に書く。問題がないところについても、こういう事柄については特に追加して記載していただきたいという構造になっております。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいま報告基準案につきまして詳細に御説明いただきましたが、この点について先ほど申し上げましたように検討中のものでございますので、本日、委員の皆様方からの御発言を受けましてさらに検討を加えていきたいと思っております。ただ、内容的にここも大変多くの問題点、新しい視点その他を含んでおりますので、どうぞ活発に御発言いただければありがたいと思います。御発言がございましたらどうぞ。

○加藤委員

幾つかあるのですが、とりあえず先ほどの合理的な保証との関連性だけをとりあえずコメントしたいんです。

例えば6ページの一、基本原則の中の意見表明の基礎というところでは意見表明を形成するには合理的な基礎がなければいけない、意見差控をする場合も合理的な基礎が得なければ意見を表明しなければならないということで、この合理的な基礎を得ることが意見表明できるかできないかということになると思うんです。7ページにいきまして、三の監査報告書の記載事項の(2)では後段の方で重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証を含め意見表明のための合理的な基礎を得たこととなっているわけです。ですから、この位置づけは合理的な保証というのはあくまでも意見表明するための合理的な基礎の一部でしかないという表現になっているわけです。

ここを見ますと、また一番最初に戻りまして目的のところの先ほどの合理的な保証と矛盾するような気がするんです。後ろの方の報告基準のところでは合理的な保証というのはあくまでも意見表明するための合理的な基礎の一部であると言っているのに、一番最初の方の目的は合理的な保証を与えることそのものが目的だという表現になっていると思うんです。ですから、この辺は目的と報告基準との間での整合性がないような気がするんです。

○脇田部会長

ただいま御指摘いただいた点については、もしよろしければ山浦委員に御発言いただければと思います。

○山浦委員

合理的な基礎という"reasonable basis"と"reasonable assurance"はどう違うかについて自分なりには整理していたつもりですけれども、加藤委員がおっしゃるような、特に7ページの「重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証を含め意見表明のための合理的な基礎」という表現からすると、合理的な保証というのは合理的な基礎を得ることの概念の一部ではないかという御指摘です。確かにそういう解釈をされるのはまずいことではないかと思います。いずれにしても検討中ですけれども、その点については目的の表現も含めまして検討をさらに加えていきます。

○脇田部会長

今、山浦委員から私に代わって御発言いただいたのですが、今検討中の中で確かに目的のところで先ほど渡辺委員より御発言があったことから端を発しております一連の問題については今の加藤委員の整合性の問題等も含めて検討をさらに加えてまいりたいと思っております。

○山浦委員

その上でもう1つ。目的の表現を合理的な保証を与えるという直接的な表現に変えますと、今考えております報告基準の枠組みが基本的に壊れてしまうんです。

監査論の研究者として監査とはどういうものか、確かに利用者サイドからすると保証してほしいという御趣旨だと思うのですけれども、やはり監査という行為のプロセスの中では保証を与えるという直接的な表現ではなくて、心証を形成して、その形成した心証を意見として表明するという枠組みはどうしても堅持したい。これは私自身、この点については改めて強調しておきたい。その上で今回の報告基準の枠組みをつくっているつもりであります。

○脇田部会長

今御発言いただいたところは非常に重要なことでございます。ただ、監査基準というものは多くの啓蒙的な役割も果たさなければなりません。そういう点で先ほど伊藤委員からも御発言があったのですが、多くの方々の納得を得ていただくという表現あるいは記述、内容の表記が必要でございますので、この点についてただいまの御議論を踏まえた上で基準の文章づくりの中でさらに工夫を加え、御理解を得られるように整理していきたいと思っております。

そのほかに御発言はございますでしょうか。

○加藤委員

あと幾つかコメントがあるのですが、6ページの基本原則の事前の審査のところです。この書き方が適切な審査を受けなければならないという表現になっているのですが、これだけだと外部の審査なのか監査人の内部の審査なのかがどうもはっきりしないということです。というのは、現在の監査実施準則では監査人が適当な審査機能を備えなければいけないという書き方になっていまして監査人の内部の審査機能ということがはっきりしているのですが、こういう書き方ですと外部なのか内部なのか。今は外部の公認会計士協会のピアレビューもありますから、そういう意味では外部の審査もあるのですが、ここは監査意見を述べるに際してということですから、あくまでも内部の審査機能を指していると思うのですが、その辺が明確になるような表現をする必要があるのではないかということ。

それから、この審査のことを報告基準の中に書いてあるのですが、先ほど計画と実施を分けるとも書いてあったんです。この審査というのは計画の段階から審査を受ける必要がありまして、実際に実務では監査計画も審査を受けているということで、この報告基準の中に審査がいきなり出てくるというのが――じゃあ、計画の段階とかは審査は要らないのかという危惧も出てきますので、この辺の表現あるいは場所等についても御検討いただけたらと思います。

同じ6ページの監査報告書の記載区分です。作成日について備考のところには何も書いていないのですが、論点整理の中では作成日について検討する必要があるのではないか。特に監査が終了した日をもって署名日にすることを検討するべきではないかということが論点整理に入っていましたが、その辺を御検討された結果、作成日が今までと何か違うのか同じなのかということをお聞きしたいということです。

それから、「監査人を明らかにし」という表現です。備考の中では確かに署名等については明確にしないということですから、監査法人だけが署名するのか関与社員が署名するのかについては明確にしないということでいいのですけれども、この文章だけだと監査人を明らかにするというのはただ名前をどこかに書けばいいとか、あるいは監査法人の名前を書いてあるレターヘッドを使えばいいということで、この文章からだと署名とかサインとか捺印というものが一切この表現からは出てこないということです。それはどうなんでしょうかということ。

それから、7ページの三、監査報告書の記載事項の(3)です。ここでは準拠性のことに触れているのですが、継続性のことには何も触れていない。継続して適用されているかどうかということについては触れるように書いていないわけです。私が想像したのは、後ろの方へいきますと9ページの七の(1)の追記情報の中に正当な理由による継続性の変更とありますから、変更した場合だけ追記情報として書くということは正当な理由によって変更した場合のことをここに書くということで、正当な理由によって変更した場合は監査意見の中に特に出てこないということなのかどうか、この辺が明確でないので教えていただきたいんです。

たくさんあって申し訳ないのですが、8ページです。六、継続企業の前提の1のところでゴーイング・コンサーンに関して何か疑義があった場合に監査人としてはそういう疑義を解消するに足る合理的な経営計画等を提示しということは監査人に提示するということだと思うのですが、その次の「かつ、それらの事象や状況及び経営者の経営計画等が適切に表示されている」というのは、適切に表示されているということがどこに表示されているのかがよくわからないのですが、多分、財務諸表に表示されているということだと思うんです。ただ、その場合ただ表示ということになると財務諸表本体に表示するのか脚注に表示するのか、その辺もよくわからないので、もし私の理解が正しければ適切に財務諸表に注記されているという「注記」を入れた方がいいのではないかと思います。

そこから2行下がりまして、「それらの事象や状況及び経営者の経営計画等の表示の事実について情報を追記しなければならない」。これは先ほどの追記情報のことを指されていると思うのですが、ここも例えば監査報告書に追記しなければならないということだと思うんです。もしそうであれば、その辺を明確にされた方がいいのではないかという気がします。

もう1つですが、9ページにいきまして七の(2)です。適正意見におけるゴーイング・コンサーンに追記情報という「ゴーイング・コンサーン」という言葉がたしかここで初めて出てくると思うんです。それまではこういう言葉が一度も出てこなくて「継続企業の前提等」という言葉を使っておりまして、ここでいきなり「ゴーイング・コンサーン」という言葉が出てくるのはどういう関係かなと思いました。

以上です。

○脇田部会長

御指摘いただきまして、ありがとうございました。

8個ほどだと思いますが、時間の都合もございまして、今日ここで御議論することはできませんが、まず6ページのところで御指摘いただきました審査につきましては確かに明確にする必要があるということについては検討させていただきます。

それから、規定の場所です。確かに貴重な御指摘でございまして、審査を受けなければならないという規定の場所につきましても今後もう一度検討いたします。

3番目は作成日、これは確かに論点整理でも議論されておりましたし、公認会計士審査会の論点整理にもあったかと思いますが、確かにもう少し詰めて議論し、それを何らかの形で表す。あるいは公認会計士協会の監査基準書に委ねるのか、この点も検討させていただきます。

それから、「監査人を明らかにし」はまさに検討中でございます。苦肉の策の表現でございまして、そのように御理解いただきたいと思います。

5番目として、7ページのところです。これまでは必ず会計基準準拠性、継続性、遵守性と分けて書いておりましたけれども、ここでは今御指摘のとおりに会計基準への準拠性というところで包括する形をとりまして、要するに正当ならざる理由の変更については違反として指摘される、正当な理由による変更は追記事項とするという構想を持っております。この点についてもまた御意見を伺うかと思いますが、そのように考えております。

8ページにございました六の継続企業の前提につきましては友永委員、山浦委員に御協力いただきまして何回も書き直したところでございます。これにも苦渋な点が出ておりましていろいろ省略したり、あるいは書き足したりしておりまして、例えば内容が不明確である、どこに表示されるかということについてもう少し明確にすべきだという点もこれからの中で検討いたします。それから、これは追記情報ということになっておりますけれども、監査報告書というふうに明確にした方がよろしいのではないかという御指摘でございまして、この点も当然もう少し検討させていただきます。

最後のゴーイング・コンサーンにつきましては、この趣旨を文章とするということでございます。御指摘のようにゴーイング・コンサーンという言葉は統一して、これに関わる趣旨を表す表現として統一いたしますので、これから整理させていただきます。

本当は御議論を申し上げたいのですけれども、時間が迫っておりますので、以上を私からお答えさせていただきました。

山浦委員、何か補足していただくことがございましたらどうぞ。

○山浦委員

1カ所だけ、8ページの継続企業の前提の1の箇所で加藤委員が御指摘のところですけれども、例えば注記しているかどうかという具体的な表現を入れた方がいいのではないか。実は継続企業の問題については財務諸表規則等の関係もありまして、こちらの監査基準で踏み込むことができないんです。したがいまして、先ほどの財務諸表に適切に表示されている「財務諸表に」というのは御指摘のとおりだと思うんです。それは入れる方向で検討したいと思うのですけれども、具体的な記載方法については触れることができないということです。

○脇田部会長

ありがとうございました。以上でございます。

どうぞほかに御発言ください。

○渡辺委員

今、加藤委員の御質問でそういうことなのかと気づいたんです。会計基準を変更した場合に継続的な比較可能性があるかどうかというのは言ってみれば会計の大前提だと思うのですが、今の案だと正当な理由があれば前年度との比較可能性がなくなっても適正なものだと認めるということでしょうか。

それから、商法の計算期間の改正がいろいろ進んでいて、1つの方向としては公開会社については証取法の規定をそのまま持ってきて商法と分離するという案になりつつあるようです。もしそうなった場合には改訂規定の方でいわゆる確定決算基準とか、そういうものが自由になって過年度修正情報が自由に出てくる。そういうものをにらんだ上でこういう規定になっているのかということを御質問したいと思います。

○脇田部会長

私からお答えいたします。

正当な理由による変更というのは国際的にもそうですけれども、要するに会計基準に違反しているわけではありません。それは期間比較可能性ですので、むしろ期間比較可能性という面から財務情報の期間比較を維持するという点での追加情報だと考え、監査人としては変更が粉飾目的であるかどうか、利益操作であるかどうかということに判断の基本がある。それがもし利益操作目的であるようならば、ほかにもあるかと思いますが、止むを得ざるもの、その辺の判断を会計士がするという流れがございました。ただ、日本ではこれまで他の流れとは異なって正当な理由による変更も意見のところで書くという方向をとっていたわけですが、それは国際的な流れということと、なぜ正当な理由による変更をここに書くのかということはずっと批判されてきたのですけれども、日本も今回そういった流れに則して進めていこうという考え方をとっております。ですから、今の諸規定の変更との関わりではありません。

○渡辺委員

そうすると、期間比較不可能な去年の財務諸表と今年の財務諸表が開示されて、それでも立派な開示ですということを認めるということでしょうか。

○多賀谷課長補佐

それはそれぞれの財務諸表が適正かどうかという判断でございますので、どういう財務諸表が開示されるべきかという議論とは――開示されるものは指定されて、あるいは経営者に作ってくださいという枠組みがあって、その中でそれが適正であるかどうかを判断していただくということでございます。

それから、継続性の変更の期間比較の注記というのは経営者の責任でするわけですから、財務諸表でされるわけです。それをもう一度繰り返してもらう。繰り返して、そういう正当な場合でもなお監査報告書にも書いていただくということでございます。ただ、それを限定ということになると、正当な理由があるのも限定で、正当でない理由のものも限定でというのは監査人の判断が曖昧になるのではないかということでございます。正当な理由というのは会計基準に従っているわけですから、それは従っているかどうかということが意見表明の趣旨でございます。

○脇田部会長

今の期間比較についての情報的な欠陥・欠落についてはむしろここでは追記情報として付加するという方向をとっているわけです。それがこれまで一般に行われてきたところです。日本の方が異例であったわけです。あくまでも今御説明がありましたように、つまり監査人がそこで監査意見の中で指摘しますと、たとえ正当な理由によるものでも「ノー」という判断をしたようにとられてしまうわけです。正当な理由による変更というのは会社が相当の理由があって変更したわけですから、当然、会計基準に準拠した上での変更でありますから、それは会計基準違反ではないわけです。監査意見の中で述べますのは、会計基準に違反したものについて指摘するわけですから。期間比較の可能性は情報の価値を高めるということですから、例えば海外では企業が自ら10年間さかのぼって変更した新しい会計基準でつくり直すことで期間比較を補足なさることが行われておりますが、それはむしろ開示の問題としてお考えいただくということであります。

○若杉会長

単なる言葉遣いの問題ですが、よく間違えるのは今問題になっている9ページの七の追記情報の1の正当な理由による継続性の変更という「継続性の変更」というのはよく使うのですけれども、会計方針の変更なんです。ですから、正当な理由による会計方針の変更は継続性に何ら違反するものではないということですから、継続性ではなくて会計方針にした方がいいと思うんです。こういう使い方をする場合がよくありますけれども。

○脇田部会長

今御指摘いただいたところは確かに考慮させていただきます。

○松野委員

今のところに関してですけれども、具体的に言うと現状ある何号限定という概念がなくなるということでよろしいですか。

もう1つ、追記情報で正当な理由による継続性の変更は情報を追記する、事実のみを書くということですね。意見ではないということ。ここでは正当だかどうかというのは記載しないことになるんですか。

○脇田部会長

山浦委員、これについて補足していただけますか。

○山浦委員

理由は書くことになります。ただ、この理由については財務諸表の注記事項として経営者側で会計方針の変更の事実とその理由は書くはずので、あえて監査人としてそれが正当と認められるという判断は別個に書くのではないかと思います。このあたりの問題について、また追記情報のところは先ほど部会長から御指摘があったように今はいわばメモ書きみたいな扱いにしておりますので、具体的に記載する中身はこれから詰めたいと思います。

○友永委員

1点、字句の問題につきましてはまだ本当に審議中でございますので申し上げることはしないつもりですが、8ページの六の継続企業の前提の2の書き方は2つに分ける必要があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。

まず、そういった疑義を抱かせる重要な事象又は状況が存在していて、かつ経営者が合理的な経営計画を提示せず、提示しないという場合には意見を表明できないことになろうかと思うんです。それから、経営者がそういった経営計画を提示したけれども、その事象や状況に関する財務諸表の表示が適切ではない場合があるはずで、そういった場合にはその表示が適切でないことを除外事項として意見を表明するか、又はその事実を記載して不適正とする場合もあるといった書き方がいいのではないかと思います。

それから、構成の問題としては四に範囲の制約と書いてあるんです。監査範囲の制約だと思うのですが、これが無限定適正意見の後に来ているというのは大変違和感があります。やはり意見として書く場合には除外事項がある場合、五と四は逆さまにする方がいいのではないかと私は思います。

あちこちいって申し訳ないのですが、7ページ目の(2)の実施した監査の概要というところも一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行ったということがまず大前提で、そういった監査は試査を基礎としているとか、いろいろな状況がある。まず試査が出てきているということでここら辺の順番といいますか、ここは議論があるところですけれども、そういうことで行った監査の結果「合理的な保証を含め意見表明のための合理的な基礎を得た」という結論の部分を明確に書き分けるべきではないか。

それから、他の監査人の監査結果を利用する場合をここに入れていただいているわけです。これは主に連結財務諸表においてあるわけですけれども、必ずしもすべてあるわけではございませんので、典型的な無限定適正意見の中に入れて記載するのは余り適切ではないのではないか、別の項をもって記載していただくべきではないかと思います。

まだ文章になっていないので内容について申し上げるわけではないのですが、9ページ目の(3)の重要な偶発事象及び後発事象は今の特記事項と同じと見られる可能性がありますので、そこら辺はこの次の第二部会で十分御審議いただきたいと思っております。

以上です。

○脇田部会長

御指摘いただきまして、ありがとうございました。この点については今後検討させていただきます。

○内藤委員

今の友永委員の御指摘と関連してですけれども、8ページの継続企業の前提は非常にきっちりとした細かい規定が出て、先ほど伊藤先生から御指摘のあったレジェンド問題を解消するには画期的な基準が入ったという評価を受けると思うのですが、その2のところで合理的な経営計画等を提示しない場合には意見を差し控えるというか、意見を表明しないということをおっしゃったわけですが、5ページの上から2つ目の5番、監査の実施の段階におきまして「監査人は、・・経営者が行った評価、当該疑義を解消させるための対応及び経営計画等の合理性を検討しなければならない」ということがありますので、合理的な経営計画を提示しなかっただけではなくて――そこには「合理性」が入っているので両方が含まれているのかもしれないのですけれども、経営者は合理的だと経営計画を思って提示したけれども合理的ではなかったというケースはどうなるのだろうかというのがもう1つあるのではないかと思いました。

それから、財務諸表の表示が適切でないと判断した場合は2つを一文で書いてあるのですけれども、当該事象及び状況の財務諸表への影響を勘案して除外、要するに限定付きの適正意見にするのか不適正なのかという判断基準をここに入れておかないと、どの場合にどうなるのかがこれでは読み取れないのではないでしょうか。

それから、その下の3番目の基準で継続企業の前提として財務諸表を作成することが適切でないと判断したときは不適正という旨が表明されるのですけれども、そういうふうに適切でないと決められるときはこれでいいかと思うのですが、決められないときはどうするのかが基準上では一番重大で、それは7ページの四の範囲の制約を受けた場合の1で重要な監査手続を実施できなかったこと等によりの「等」に偶発事象が含まれるという解釈をもししたとすると、その場合には意見を表明しない――してはならないだったですか。両方ありますけれども、そことの整合性も検討しておかなければならないのではないでしょうかということです。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。今の継続企業の前提に関しての監査意見につきましては友永委員、そして内藤委員からも今御指摘いただいた点を今後の検討の中でもう一度よく考えまして、そして改めてまた示させていただきたいと思っております。

○角田委員

3点、もう一度繰り返しになるかもしれませんけれども確認させていただきたいのは、まず六の継続企業の前提というところで非常に明確化が図られている点は評価したいのですが、現行実務とどのように変わっているのか。つまり、範囲が拡大しているのか、それとも現行実務を明確化したということなのか。多賀谷補佐から御説明がありましたけれどもはっきりしないので、別に今日ということではなくてまたぜひ教えていただきたいということが1点です。

2番目は先ほど御指摘がございましたけれども、2.のところを読みますと、監査人が抱いた疑義に対して財務諸表の作成者がそれを挙証するというのか、証明する、あるいは資料を出してちゃんと説明する義務があると読めるのですけれども、それだけではないのではないでしょうかということ。

3番目は先ほど次回の検討課題ということで挙げられましたけれども、企業の事業の継続という言葉につきまして素人目に見ますと、事業というといろいろな事業をやっている企業があるので、1つの事業を見て判断されるというふうに読まれる可能性もあるのではないかという点を恐れます。その点も考慮してぜひ御検討願いたいということでございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

○伊藤委員

私もよく似ているのですけれども、実際にリスク・アプローチをどういうふうにやっているのか。昨日も実はある監査法人の方々と話をしてリスク・アプローチについて話を聞いたのですが、つまり実際の経営者、我々がある経営判断をもとにやります。これは先行きの経営見通しとか、いろいろな経済環境ということについてのいろいろな御意見を監査人の方々が質問し、我々と話をする。それについて合理的なということを非合理的ではない、つまり現実的ではないということを意味しているのかという感じを覚えたわけですけれども、この合理的にというところがもう少し――この場ではできないのかもわかりませんが、具体的にいわゆる基準書というもの以外に細目が出るのかどうか、それがすぐ実務指針になるのか。先ほどの事業の継続性の問題もあるのですけれども、つまり会社は必ず事業を幾つかやっていますから、その中で根本的にその会社の存続に影響を与えるような大きな事業について問題があるものを中心に書くのかということです。

私は実は昨日も申し上げたのですけれども、経営者の我々が最も企業の存続に影響があると認識しているのと会計士の認識がちょっと違うと思ったのは、我々が最も心配なリスク管理は何かというと、コーポレート・ブランドに対して影響がある場合です。例えば今日の新聞にも幾つか出ていましたけれども、会社の根本的な問題ですね。我々の住友もダンロップという子会社を抱えていますが、タイヤのコーポレート・ブランドに悪質な問題があったとか、ブレーキなども書いていますけれども、そういうものとか幾つかあります。そういうものは本当に致命的なんです。

ところが、会計士の考えておられるのはもちろん会計情報を持って云々だから会計情報においてまず正確性があるかどうか、要するに間違えていないかどうか、あるいはその前提となっている経営判断、景気の見通しとか為替の見通しについて異常なことが行われていないかどうか、先行きをどう見ているか。それは私は普通はないと思うけれども、経営の見方というのはいろいろあるわけです。経営は必ずリスクをかけてやるわけですから。むしろそういうことよりもコーポレート・ブランドに影響するというのは会社として致命的なんです。それは必ずしも数字に現れない、それは会計士の領域ではないと判断するのか。このあたりのことが私は企業の事業の継続云々となるとどういうところまで踏み込むのかについては、また次回で結構ですから教えていただければ結構だと思うんです。

私はこの監査基準を重要視しておりますし、これが極めて立派なものになることを期待して先ほど申し上げましたようなことも我々は期待していますので、実業界、産業界の期待が非常に大きいということを皆さんに御連絡申し上げて、それと大変恐縮ですけれども、産業界のもう1つの不満を申し上げますと、ここで立派な基準を決めても実際の実務指針になったときに何となくそれがずっと変質していくことがないかどうかということを心配しているんです。

今まで決めてきたいろいろな会計基準についても、産業界の経団連サイドでも実務指針になったところになるとどうも違うではないか、本質が変わっていないかという意見を言う人もいます。このあたりについてはこの場でなくて結構ですけれども、もう一遍審議会としてのあり方、今後の企業会計審議会は変わっていくのかもしれませんけれども、どこまでやるのか。具体的にある程度踏み込んだところまで内容をもう少し具体性を持って大きなフレームワークは決めていただくというふうにぜひしていただきたいというお願いです。

この場の雰囲気は若干違うものを申し上げたかと思いますが、ぜひ御理解賜れば大変ありがたい。以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいまの現行実務との相違、比較あるいは提示資料の問題等につきましては今すぐここで御説明することができませんけれども、今後の審議に委ねさせていただきたいと思います。

また、伊藤委員から御指摘いただきました点は今後の事業の継続性に関する判断として非常に大きな意味を持っておりますので、本日の御発言は大変大きな意味を持つと思います。

また、角田委員、伊藤委員からも御指摘いただき、皆様方からもいただいた企業の事業の継続という表現につきましても今後検討させていただきます。

それでは、本日は時間が10分ほど経過してしまいまして大変申し訳ございませんでした。そろそろここで終了させていただきたいと思います。

次回は本日の御意見を踏まえまして草案をさらに修正し、御検討いただくことを予定しております。また、並行してできる限り前文の作成も進めてまいりたいと考えておりますので、前文につきましても全部用意できるかどうかわかりませんけれども、その際御検討いただきたいと思います。

なお、次回は4月27日(金)午後1時30分から開催することを予定しております。詳細は事務局からまた連絡させていただきます。開始時間は本日と同様1時30分となりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日の部会はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。

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