平成13年5月18日
金融庁

企業会計審議会第17回第二部会議事録について

企業会計審議会第17回第二部会(平成13年4月27日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

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総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第17回第二部会議事録

日時:平成13年4月27日(金)午後1時27分~午後3時37分

場所:中央合同庁舎第4号館10階共用第一特別会議室

○脇田部会長

それでは、定刻になりましたので、第17回第二部会を開催させていただきます。

初めに、委員の方に異動がございましたので御報告を申し上げます。お手元に名簿をお配りしてあると思いますが、4月10日付で須田美矢子氏が委員を退任されました。また4月19日付で原田晃治氏が幹事を退任され、始関正光氏が幹事に就任されております。以上、御報告を申し上げます。

それでは、これより議事に入りたいと思います。

本日は前回の部会での御意見を踏まえ、報告基準も含めまして修正した部分につき御検討いただきたいと思います。そこで、前回の御審議を踏まえ起草メンバーで草案を修正いたしましたので、本日はまずこれを事務局から御説明いただきます。次に、新たな報告基準によれば監査報告書はどのような形になるのであろうかという例文を作成してみましたので、これにつきまして髙山委員に御説明いただきたいと思います。その後、さらに皆様で御議論いただくこととしております。また本日、前文の草案をお配りしておりますけれども、時間が残りましたらその概要を説明していただき、次回に御審議いただければと考えております。

なお、本日資料としてお配りいたしましたものも検討中のものでございますので委員限りとさせていただきたく、本日はいろいろと御意見をいただければと思っております。

それではまず、事務局から前回お示ししました草案の修正につきまして説明していただくこととしたいと思います。監査の目的の部分につきましては前文の説明も合わせて紹介をいただきたいと思います。それでは、説明をお願いいたします。

○多賀谷課長補佐

それでは、御説明申し上げます。資料1に基準の草案、資料2といたしまして前文の草案を御配布させていただいております。

初めに改訂案の第一、目的でございますが、第1パラグラフは特に修正しておりません。第2パラグラフにつきましては、なお御議論のあるところでございます。この第2パラグラフの趣旨につきましては、論点整理の御議論からしまして適正意見には重要な虚偽の表示がないということが含まれていることを明確にすることが趣旨でございます。それと合理的保証という表現をどう考えるということがもう1つの御議論になっているところでございますので、また整理して御議論、御検討いただければと思います。この目的につきましては前文の3ページに説明がございますので、資料2の3ページも御覧いただきたいと思います。

基準の方は第2パラグラフの最後の部分の表現を少し変えております。読み上げますと、「財務諸表が適正である旨の監査人の意見は、財務諸表には、全体として重要な虚偽の表示がないということについて、絶対的ではないが、合理的な範囲で保証できるとの自らの判断を表明したものである。」という形に修正されております。この点につきましては監査の目的の前文で留意点を幾つか挙げておりまして、そこでも言及しております。(3)に同じような旨を書いてございます。

そして、(4)に合理的な範囲については「監査が対象とする財務諸表の性格的な特徴や監査手続の適用上の特性などの条件がある中で、職業的専門家としての監査人が一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って監査を実施して得た心証の程度を意味すること。」としてございます。ここは最後に基本的には表現の問題になろうかと思いますが、全体的な認識といたしまして合理的な保証というのはいわゆる assurance でございますが、ギャランティ的なものではないということ。それから、この文意は先ほども申し上げましたように本旨は重要な虚偽の表示がないということが意見の中に入っていることを明らかにしておこうということが最初の意図でございました。

また、その文章を表現する中で合理的な範囲で保証できるという表現が加わったということでございまして、この合理的な範囲で保証できるということについては前文の説明の(5)にございますが、「財務諸表が適正でないという意見も、財務諸表が重要な虚偽の表示を含むことについて合理的な範囲で保証できると判断したうえで形成された意見であること」。すなわち合理的保証ということについては適正か不適正かということにかかわらず監査人の意見という意味での合理的な保証ということを言っておりまして、監査基準の方の目的では適正ということを言うためには重要な虚偽の表示がないことは含まれていますということを強調しようということでございます。2つの意味が入ってしまっている点が少しわかりづらいかもしれませんので、また御検討いただければと思います。

次に、一般基準に移ります。一般基準につきましては特に修正はございません。資料1の2ページをめくっていただきまして、ここまでが一般基準でございます。備考の方の「前文で説明」というのはまた後で時間があれば御説明させていただきます。

資料1の3ページが実施基準でございます。実施基準は若干の修正をしております。 基本原則の2の備考にございます監査要点の例示の中で「認識する期間」の適正性という表現について御指摘がございましたが、現段階では修正しておりません。期間配分のみならず、その認識の時点とか金額の適切性ということを意味する表現として適当な表現があるかどうかという点があるのかと存じます。

基本原則の5でございますが、企業の継続能力に関しまして「企業の事業が継続すること」という従前の表現を今回変えております。これは企業が営む事業の一部が継続しないと捉えられるのではないかという御指摘がございましたので、ここでは「企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提」ということで企業全体の事業活動が継続しているかどうかという表現に修正しております。これも御指摘がありましたが、このような表現で個々の事業ではなく事業全体という意味を表すとともに、単に企業が存在しているだけの場合は継続性がないということで除かれることを意味できるのではないかと考えております。

次に監査計画の策定でございますが、1枚めくっていただきまして4ページでございます。下線のところでございますが、監査計画の4は「監査手続の策定」となっておりましたのを「監査の実施」と修正しております。

次の5でございますが、これも先ほど御説明いたしました継続能力の箇所の修正で、以下「継続企業の前提」という表現で短くしておりますので、その表現に合わせております。その上でこの前御指摘がございました「重要な疑義」か「重要な事象」かということで、ここでは「重要な疑義を抱かせる事象又は状況」に改めております。以下、同様のところは同じように改めております。

次の三、監査の実施でございます。

ここは4ですが、「不正又は誤謬とその兆候」になっておりました。ただ、兆候というのは非常に広い、企業の中で何が不正や誤謬の兆候に当たるのかというのはどうも漠然としているのではないか。それから、兆候を発見したといっても、それは兆候ですから当然それが不正や誤謬につながるのかどうか、なるのかどうかという判断、評価という段階も入る。そうなりますとかなり複雑な構造になってしまうのではないかということで、この点は兆候というのを削除しております。当然、監査手続の中では見ていただいているものでございますので、ここでは不正・誤謬を発見した場合というふうに、そういうものが発見されたことについて述べる。この場合には「適宜、監査手続を追加して十分かつ適正な監査証拠を入手」するということでございます。

また、ここで監査計画を修正するという記述をしておりましたが、これは同じ4ページの上の方の6に監査計画の修正について記述がございます。ここで当初の状況が違っていた、例えば不正や誤謬が非常に多く出るような状況にあるということであれば、当初、監査を計画する段階の状況把握が違っていたのではないかという点で監査計画の6の方で計画の修正をすることにつながるのかなということでございます。それで4の方は少しすっきりして、このように監査手続の中で不正又は誤謬を発見した場合には追加手続をして、それが最終的に財務諸表に与える影響をチェックしていただきたいということに修正しております。

ここまでが実施基準の修正でございまして、次の5ページは先ほどの文言を修正した以外は特に修正はございません。

6ページ、報告基準でございます。これは前回御議論いただきまして種々御意見をいただきましたので、かなり修正してございます。

まず、基本原則の3でございます。備考にございますが、「十分かつ適切な監査証拠に基づき意見を形成する」というところは削除してございます。そこで文章が少しすっきりしています。監査証拠を集めて評価し意見を形成していくという監査の過程につきましては実施基準で記述されておりますので、少しダブるのではないか。報告基準としてはこれを削除して、そのような監査証拠の評価を通じて全体として意見を形成する合理的な基礎を得るということでその意見を表明しましょうということをここで記述すれば足りるのではないかということでございます。

同じく基本原則の5でございますが、審査について記述がございます。従前は自らの意見が適切かどうかを確めるためとなっていたのですが、「一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に」というのを入れまして文章を修正しております。これは監査手続まで個々に審査するという意味ではございませんが、最後に監査報告書を単に見るというだけにとられないように、当然のことながら監査基準に従って適切に監査が行われた結果、形成された自らの意見が適切であるかどうかを審査するということを意味しております。意見形成の背景を踏まえた審査ということになろうかと思います。

ここにつきましては、意見表明に関する審査という部分も表現を修正しております。前回、実際は監査の実施過程においても今は実務で適宜審査が行われているという御指摘がございました。そういった全体としての監査の管理につきましては一般原則の監査の質の管理のところでカバーする。基準の上ではそのような棲み分けといいましょうか、整理になるかと思います。ここではそういう中で意見表明の前には審査を受けることが"must"であるということを申し上げるということでございます。ですから、そのほかに監査法人なりマニュアルなり管理の中で適切に適宜審査をしてはいけないということではございませんので、最後にこれは"must"の部分ですということでございます。

それから二、監査報告書の記載区分でございます。

1は前回と同じでございますが、監査報告書の記載区分は大きく3区分になるということでございます。ただ、その作成日付、監査人の氏名についての文章は削除してございます。この点については前文で若干言及することが必要になると思いますが、監査基準の上でどういう名前を書きなさいというのは基準とは趣旨が異なるということで削除してございます。

2は追記情報の性格について監査人の判断で記載するものであるという趣旨から、このように表現を変えてあります。追記情報がある場合ということで、監査人の判断として強調することが適切であるという判断が入るということでございます。したがいまして、もちろん任意の記載という形になります。この内容につきましては報告基準の最後に7のところで例示するという形になっております。

7ページ目でございますが、三の無限定適正意見の記載事項。ここは三、四、五とありますが、意見の内容にかかる部分になります。

従前の案ではそれぞれの意見ごとにこれこれを記載しなければならないという形の文章になっておりました。内容としましてはそれぞれの意見の判断も含めた表現となっておりましたが、文章的には記載しなければならないという語尾でございましたので、記載事項を示しているのかということにもとり得るような感じがございました。そこで、今回の報告基準では判断基準をなるべく示すという趣旨から文章を分けまして、第1パラグラフで意見の判断を示して、第2パラグラフでその意見における記載事項を示すというように文章を区切っております。そうしまして、三では何らの除外事項がない場合の意見を無限定適正意見と呼ぶというふうにしております。従前はここに2、3というのがついておりまして、限定意見の場合は修正するとか入っていたのですが、そういう意味からそれぞれの意見の箇所に分けましてそれぞれ記載しております。

それから、前回の案では(2)実施した監査の概要のところに他の監査人の監査結果を利用した場合の記述がございました。これはここではないのではないかという御指摘もございましたので、別の箇所に範囲の限定のところに内容も変えて記述を改めて移しております。

次に四、意見に関する除外事項でございます。ここは従前は五としておりまして、四が範囲の限定でしたが、やはり意見を表明するというのが基本でございますので、適正意見の次には適正でない場合の意見ということで、こちらの基準を先にして範囲の限定に関する意見差控等を五ということで順番を入れ換えております。

この四でございますが、1は財務諸表の表示に不適切なものがあるとき。ここで「無限定適正意見を表明できない場合」を入れて、不適切なものがあれば無限定適正意見は表明できない。その場合に全体として虚偽ではないという場合には除外事項を付した意見を出すというのを第1パラグラフにしまして、除外事項がある意見を出す場合には三で言っております「無限定適正意見の記載事項を修正し、財務諸表に対する意見において、当該除外した事項及びその影響額を記載しなければならない。」ということで無限定適正意見を下敷きとしつつ、この場合にはここに修正した記載をしてくださいという書き方になっております。

8ページでございますが、2は不適正意見の場合でございます。この場合もパラグラフを2つに分けて前段で不適正である、虚偽の表示に当たる場合には不適正意見を表明しなければならないという判断の文章で区切りまして、「この場合には、無限定適正意見の記載事項を修正し、・・財務諸表が不適正である旨及びその理由を記載しなければならない。」ということで記載の仕方を第2パラグラフという形にしてございます。

次に五、監査範囲の制約でございます。

1、2は備考にございますが、「重要な監査手続を実施できなかったこと等」という「等」を取ってございます。これは前回の御議論でいろいろ御意見もあったかと思うのですが、いわゆる偶発事象や未確定事象をどう考えるか。監査手続ができなかったことと、よくわからない事項が存在していることをどう整理するかという問題が残っておりました。ここにつきましては「等」に入れるのか入れないのかという議論になったのですが、今回の案では未確定事象等がある場合には証拠が集められなかった、あるいは集めようと思ってもできなかったということになれば、これは重要な監査手続を実施できなかったことと同じではないかと考えて「等」を取っております。そのかわり、そういうものがあるときはどういう判断をするのかということがございます。

これまでの御議論あるいは参考人からの意見の中でも未確定事象が存在するということで安易に意見差控ができるのはよろしくないということでございましたので、この点を五の最後に4を加えまして、意見差控の余地はあるとしつつも非常に限定的かつ抑制的に記述しておりまして、慎重に判断しろということを書いてあります。読み上げますと、4は「監査人は、将来の帰結が予測し得ない事象又は状況について、当該事象又は状況の財務諸表に与える影響が複合的かつ多岐にわたる場合には、入手した監査証拠に基づき、意見の表明ができるか否かを慎重に判断しなければならない。」としております。未確定事象とか偶発事象というのは定義自体も大変な御議論になったわけなので、ここでは「将来の帰結が予測し得ない事象又は状況」という形で、そこら辺はいろいろな状況があるだろうと。これは当然、会社というか経営者の方にとっても必ずしも全部が予想できるわけではないということでございます。かつそれが複合的、いろいろな影響が複雑に絡み合うことになりますと、それをすべて合理的に判断できるような監査証拠が集まるかどうか、あるいは集まっているのかどうかという点についてはなかなか難しい問題が起こる余地があります。そこで「意見の表明ができるか否かを」ということで、できない場合もあるということを含めてこのような表現にしております。ただ、慎重に判断してくださいということでございます。

同じく五の2ですが、ここは同じく文章を2つのパラグラフに分けて、判断する部分とその記載の部分に分けているということでございます。

3は他の監査人の監査結果を利用できない場合で、先ほど申し上げましたようにこちらに移して新たな項目を入れております。これは必ずしも常にあるということではないと思いますが、他の監査人の監査結果を利用できないという判断をした場合には自らやらなくてはいけない。当然のことですが、その追加手続ができなかったような場合には範囲の限定ということで「重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断」するということを入れております。

次に、六の継続企業の前提でございます。ここは前回は適正な場合、除外事項がある場合と分けていたのですが、ここではまず最初の1にすべてをまとめております。すなわち、経営者が合理的な経営計画を提示し、それが適切に開示されている場合は無限定適正意見を表明します。これが適切に表示されていないと判断した場合には除外事項を付した意見を表明するか、不適正であるという意見を表明するという判断の基準の全体を1つにまとめております。

その上で9ページでございますが、2は経営者が合理的な経営計画を示さない又は示すことができない場合、監査人としては判断の根拠が得られない。合理的とは思えないような経営計画を示されたり、何も示さないときには判断の根拠が得られないということになるのではないか。そうであるとすれば監査手続が実施できなかった場合と同じということで、これに準じて意見の表明の適否、そもそも意見の表明ができるのかできないのかというレベルの判断をしなさいということでございます。

3は当たり前のことですが、継続性がないときは当然、継続性を前提とした財務諸表が不適正であるということを記載しております。現実的には起草メンバーでも検討したのですが、継続性が失われた状態で財務諸表を作成して監査を受けて、これを開示するというのが制度的には極めて稀なことではある。通常そういう状態に至った場合には開示されない、あるいは制度的な開示から離脱してしまうことが普通は起こるのではないかということですが、必ずしも制度の問題ではございませんので、理屈の上では締め括りとしてそこまできちんと明確にしておくということでございます。

最後の追記情報は先ほど御説明しましたようにいずれも適正意見、除外事項がある場合もありますが、いわゆる適正意見の場合に監査人の判断で強調すべき事項がある。こういった場合には意見と区別して記載するということを前提としております。その上で例示として幾つか項目を示しております。文章としても意見とは異なるということを明確にということを主にしておりまして、当然、現在の特記事項ではここら辺が少し曖昧になっておりますので、ここは明確にしております。

なお、この例示ですが、(1)の正当な理由による会計方針の変更はいろいろ御議論もございましたので、当然、正当な理由かどうかという判断は一層厳格にしなければいけない。この辺は前文で言及する必要があると考えております。

また、(2)の継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況に関わる事項は当然、適正である場合になお強調する必要がある場合は書くということでございます。ですから、ここに置きましたので、ここで書いてあっても適正だという前提の上だということがより明確になったと思われます。そのほかの偶発事象や後発事象と同じようにそれぞれ監査人の判断で書いていただき、(1)から(4)は基本的には企業の方で財務諸表の開示があるわけですから、まずそこで開示はされていますので、それをさらに強調するようなものの例になると思います。

(5)は色合いが若干違います。財務諸表は適正であるけれども、それと対比した場合に他のところの記載、有価証券報告書であれば監査の対象となっていない部分の記載内容との間に非常に重要な不整合があるような場合には、監査人の判断でその点について言及することもあるのではないかということで入れてございます。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいま報告基準を中心に御説明いただきましたけれども、これからの議論を進めさせていただくための便宜といたしまして本日は監査報告書の文例を用意いたしました。資料3でございます。これはあくまでも御議論いただくための便宜を図るためにつくりました監査報告書のイメージをお示しししたものでございますので、そのおつもりで御覧いただきたいと思います。これにつきましては髙山委員に御助力いただきましたので、髙山委員から御説明をお願いいたします。

○髙山委員

私からは今回の監査基準の改訂を受けまして現行の監査報告書の文言等がどのようになるのかということにつきまして、お手元に資料3と参考というものがあろうかと思いますが、私なりに文案を作成させていただきましたので、これにつきまして少々お時間をいただいて御報告させていただきたいと思います。

皆様も御承知のとおり、今回の監査基準の改訂の柱の1つに監査報告書の情報提供機能の充実がございます。これは監査報告書の利用者に対して監査に対する理解を一層深めていただくことがその主な内容であると理解しております。そのための基準の指示につきましても現行の報告基準、監査報告準則と比較いたしますと、単なる記載の基準ということではなくして監査人の判断の部分が鮮明になっておりますし、その上でどのような意見を表明するのかということが明示されているものと思われます。この改訂案に従った場合の監査報告書がどのようなものになるのかにつきまして、今、事務局から御説明がありましたようにただ基準だけを見ていますとなかなかイメージできないかと思われますので、実際に監査報告書としたらばどのような表現になるのかということを資料に基づきまして御報告させていただきたいと思います。

なお、初めにお断りしておくのですけれども、今回御報告させていただく内容はあくまでも私の私案でありまして、実際の監査報告書のひな型につきましては今回御審議いただいております監査基準が改訂された後に日本公認会計士協会において適宜対応がなされるかと思われます。これがそのままひな型になることは決してございませんので、その辺は初めにお断りしておきます。

それではまず、資料3の1ページ目を御覧いただきたいと思います。今回の監査基準の改訂案に基づいて監査報告書を作成するとすればどのようになるのかというものをここにお示ししております。向かって左側の四角の中にはその根拠となる規定等についてお示ししております。

まず、日付、監査人につきましてはただいま御説明がありましたとおり今回の基準の改訂におきましては直接指示されるところが今のところございません。したがいまして、監査証明府令におきまして規定されておりますところから、一応これにより記述しております。これは現行の監査報告書と異なるところはございません。

続きまして導入部分、第1パラグラフになりますが、監査の対象となった財務諸表の範囲について記述しております。これも現行の監査報告書と変わるところはございません。ここで変更されると思われるところといたしましては5行目からの文章でありますけれども、ここでは経営者の財務諸表の作成責任に関する内容と監査人の監査意見の表明の責任を謳っております。特に監査人は独立の立場から意見を表明すると明示させていただいております。これはいわゆる二重責任の原則の関係を示したものになるかと思われます。この文言につきましては現行の監査報告書の上では記述が行われていないところであります。

続きまして監査の概要の部分、第2パラグラフになりますが、ここでは一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施したことを述べております。この部分は現行の監査報告書の上でも同様でありまして、その次からが実際に変わってくる部分だと思われます。具体的にどのようなことが監査の段階で行われているのかということをここで示しております。

若干読ませていただきますが、「監査の基準は、連結財務諸表に重要な虚偽の表示がないかどうかについて合理的な保証を得るために、私たちが監査を計画し、実施することを要求している。監査は、試査により、連結財務諸表の金額及び開示を裏付ける証拠を検証し、連結財務諸表全体としての表示を検討するとともに、会社が採用した会計方針並びに会社が行った会計上の見積りを評価することが含まれている。私たちは、私たちが実施した監査が意見表明のための合理的な基礎を提供していると判断している。」という文言であります。これは改訂案の報告基準の三(2)におきまして指示されている内容を具体的に文章化したものであります。この部分を作成するに当たりまして米国の監査報告書の部分を参考にしましたので、記述の内容も確認しましたところ、ほぼ同様の表現が行われております。我が国の監査報告書においても利用者に対して監査に関する理解を深めていただくためにはこのような指示が必要であろうかと思われます。

そして、監査の結果を次の第3パラグラフに記述することになります。現行の監査報告書においては会計基準の準拠性並びに適用の継続性、表示の規則に対する準拠性という3つの部分が述べられておりますけれども、財務諸表全体に対する意見の表明という監査の目的からは、これらは意見の表明のための監査人の判断の対象であるとは思われますけれども、それについて意見を述べることはせずに財務諸表全体として企業の財政状態等を適正に表示しているか否かについて意見として表明することが改訂案では指示されておりますので、そのような表現を行っております。

以上のような内容を踏まえますと、今御覧いただいております1ページ目の監査報告書のようになるのではないかと考えております。

なお、これと現行の監査報告書を対比したものをお手元のB4のサイズになります参考で作成しておりますので、若干そちらを御覧いただきたいと思います。

下線を引いたところが今御説明いたしました異なる部分を示しております。現行の監査報告書の方は比較するために多少間延びしているところがありますが、これは御了承いただきたいと思います。このように対比して見ていただきますとわかるように、導入部分の第1パラグラフ及び概要部分の第2パラグラフがかなり書き込まれていることが御理解いただけるかと思われます。なお、利害関係についてですけれども、これは現行の監査証明府令において記載が求められている事項でありますので、監査基準における規制の対象ではありませんけれども、一応ここでは記述させていただいております。

資料3に戻っていただきまして2ページ目以降ですけれども、2ページ目は監査の範囲に制約がある場合の限定意見の文例を示しております。

無限定適正意見との違いですけれども、概要部分の第2パラグラフで「下記のとおり、監査が実施できなかった事項を除き、」という一文が挿入され、意見部分の前にその内容が具体的に示されております。今回ここで参考として作成させていただいている部分は、関連会社への投資に関する監査において当該会社の監査済財務諸表が監査期間内に入手することができなかったため必要と考えられる監査手続が実施できなかったという趣旨のことを述べております。ただ、その影響は財務諸表全体から見ると僅少であり、それ以外については十分な監査手続が実施できたので、その事項を除いては全体として適正であるという旨の意見を表明する場合の例を示しております。意見部分につきましても、該当部分につきまして判断することができなかった影響を除きということで限定しております。

続きまして3ページ目になりますが、3ページ目の監査報告書は不適正の場合の文例を示しております。不適正という意見が出る場合はなかなかないとは思うのですけれども、文例として一応お示ししております。

まず、導入部分の第1パラグラフ及び概要部分の第2パラグラフにつきましては無限定適正意見の場合と同様な文言となっております。意見部分の第4パラグラフの前に監査の結果、判明した内容が無限定適正意見の場合と異なるものとして挿入されております。ここでは本来費用処理すべきものが資産に計上されており、結果として損益計算書の利益が過大に計上されているという趣旨のことを述べている例であります。そして、結果として財務諸表に与える影響が非常に大きいという判断が下されたため、財務諸表は全体として不適正であるという旨の意見が表明されるということであります。今申し上げましたとおり監査の実務におきましてこのようなケースは非常に稀であろうかと思われるわけですけれども、不適正意見の場合としては一応このような表現になるだろうということで文例としてお示ししました。

最後に4ページ目ですけれども、ゴーイング・コンサーンに疑義がある場合で、無限定適正意見を表明する場合の文例を示したものであります。

導入部分の第1パラグラフ及び概要部分の第2パラグラフ並びに意見部分の第3パラグラフにつきましては、無限定適正意見の場合と異なるところはございません。一番下に追記情報という見出しをつけまして、その下にゴーイング・コンサーンに関する情報の提供が示されております。ここでは注記されている内容について言及するほか、財務諸表がその影響についての修正が行われていないことについて監査人から利用者に対して注意するように述べられているものであります。利用者に誤解を与えることがないように、できるだけ具体的に記述することが求められる事項ではないかと思われます。現行の監査報告書における特記事項の記載においては以前の部会においても御紹介がありましたとおり監査意見にかなり近い内容を特記事項において述べている事例もございまして、本来予定されていた特記事項の意味がかなり異なってきているという御指摘もあったものですから、監査意見に含めるべき内容とあくまで情報として提供すべきものを区別することが今回の改訂案において整理されているのではないかと理解しております。

以上のように監査報告書の表現も現行のものに比較しますとかなりの部分が変わるものと予想されるわけですけれども、監査基準の改訂案によりまして監査報告書を作成してみますと、表現としては国際的な監査報告書の表現にほぼ一致してくるのではないかと理解しております。

一応お断りですけれども、冒頭でお話ししたとおりこれはあくまでも私の私案でありますので、細かな点で異議等があるとは思いますし、英文の監査報告書を和訳して、それを文章としてつないでいる関係上「てにをは」のところがつながりにくいような表現になっている部分も若干あろうかと思いますので、この辺は御了承いただきたいと思います。

私からは以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。髙山委員が作成してくださいました監査報告書の文例はこの後御議論いただくための参考資料として報告書のイメージが描かれますと御議論がしやすくなるのではないかということで御紹介しております。

それでは御議論いただくことになりますが、その前に前回から議論となっております監査の目的につきましてもう一度御検討いただくことになります。監査の目的につきましては資料2がございまして、その3ページに監査基準の改訂についての前文がございまして、そこに監査の目的という部分がございます。この点につきましては起草メンバーとして御助力いただいております山浦委員から若干の御説明をいただければありがたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。それでは山浦委員、お願いいたします。

○山浦委員

前回のこの部会でもお話ししたのですけれども、目的につきましてはいわば後段に続く監査基準全体の1つの枠組みでありますので、非常に重要なところと理解しております。したがいまして、慎重の上にも慎重な審議を重ねてこの文言を確定したいという意味で我々としてもこの練り直しについては御意見があればやぶさかではないという姿勢で当たっております。

今回変えたところにつきましては、前回、渡辺委員あるいは加藤委員からこの間の表現について幾つか疑義が出されました。その後また我々の起草メンバーの会議でも幾つか議論いたしまして、その上で今回の改訂された形での目的に関する表現を皆様の前に提示することになりました。前回出しておりました目的に関する表現は前半、第1パラグラフは同じですけれども、第2パラグラフは以下のようなものであります。財務諸表が適正である旨の監査人の意見は財務諸表には全体として重要な虚偽の表示がないことについての合理的な保証を与えることができるとの監査人の判断を表明したものである。これは我々が基準をつくるときに監査人による監査人のための基準ということで、特に第2パラグラフの趣旨は重要な虚偽の表示がないことについて書き込みたい。それについて監査人は一定の範囲で保証を与えていることを表現したいという趣旨であえて第2パラグラフを書きました。

これについては論点整理のときにもお話ししたのですけれども、特に不正とか粉飾等の目的でもって虚偽の記載をすることについてこれまで監査基準そのものが監査人の具体的な責任について明示していなかったという批判がありまして、それを受けて一歩踏み込んだ形で責任を明示しようという趣旨でありました。ただ、これは何度も言っているところですけれども、監査人は一定の制約条件下でもって監査を実施するわけでありますので、絶対的な意味での保証はできない。あくまでも監査人の判断に基づく合理的な範囲での保証しかできない。そのことを言わんとする。その趣旨を今回改めたところでは「絶対的ではないが」ということを一言加えることで今の趣旨を表現する。

特に渡辺委員から強く御指摘があったのは、これまでの「合理的な保証を与えることができるとの監査人の判断を表明したもの」という表現が周りくどくてダイレクトではない。要は合理的な保証を与えているのかどうか、与えているのであれば与えていると書くことはできないのかという御趣旨であったかと存じます。その点も踏まえまして、もう少し利用者サイドから理解できるような表現にした。これまでは監査のプロセスの中での意見表明の意味をこうした表現に変えたのですけれども、それをもう少し利用者サイドから理解できるような趣旨の表現に変えました。

ただ、ここで「絶対的ではないが合理的な範囲で保証している」という極めてダイレクトな表現になるのですけれども、そうなりますと例えば監査意見が重要な虚偽の表示がないことについての保証書あるいは鑑定書的な位置づけになりまして、これは行き過ぎだろうと。もしかしたら周りくどいと言われるかもわかりませんけれども、やはり判断を意見という形で表明したということだけは残しておきたいということでこのような文章になりました。

前文の原案ですけれども、3ページを見ていただきますと、この目的について幾つかポイントがあります。1つは第1パラグラフですけれども、二重責任の原則と呼ばれるものを明示しているということ。

それから、この点についても幾つか議論があったのですけれども、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適正に表示しているかどうかの意見を表明する。そうなりますと、例えば商法監査の場合にはキャッシュ・フロー計算書はないのではないかといった議論が出てきます。しかし、これは現在の商法のような違う計算書類の体系のもとではそれなりの読み替えをすればよろしいといった趣旨を込めております。問題は監査人がこの基準に従った監査を行って、専門家としての一定の意見を表明する。そのプロセス、あるいは得られる意見が与える保証の程度については証券取引法に基づく監査であろうと商法監査であろうと、あるいはそのほかの任意監査であろうと、少なくとも監査人が職業専門家として監査する限りは同じであるということがその趣旨であります。

問題の後段の部分ですけれども、「絶対的ではないが、合理的な範囲で保証する」は先ほど御説明したとおりであります。この合理的な範囲とは一体何なのかということでありますけれども、先ほど申しましたように一定の制約条件のもとで監査が行われる。しかし、その中で監査人は一般に公正妥当と認められる監査基準に従って監査を実施した。そこで得た心証を意見という形で表明するというセンテンスであります。これについては多賀谷課長補佐から先ほど御説明がありましたけれども、適正であるということについてだけ目的を書いておりますが、不適正あるいはそのほかの限定付き、それなりの合理的な保証は与えるものであるという趣旨はもちろん込めております。ただ、短い文章でありますので、そこまでは書き込めないということだけであります。

大体このようなことであります。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま前文の監査の目的を含めてこの基準の第一、目的について補っていただきました。

それでは皆様から御意見を承りたいと思いますので、どうぞ御自由に御発言をお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。

○内藤委員

意見は今の監査の目的に関する部分ということでしょうか。

○脇田部会長

いいえ。報告基準を含め、今御説明した部分全部を含めてお願いいたします。

○内藤委員

それでは、少し違った監査の目的以外のところで若干伺いたいところがあるのですが、非常に整合化が高くなってきまして内容的にもある意味では斬新な、非常に高度な監査を要求する基準になってきておりまして、これらの報告基準の草案からこの改訂は非常に重要な改訂になるのではないかと考えるわけですが、今日の中心となるのは恐らく報告基準のところだと思うんです。6ページ以下にその報告基準についてありまして、意見差控の部分に関することで合理的な基礎が得られているか得られていないかに影響を与える事項が幾つかあるわけです。それがすべてこの改訂基準をもって整合的に処理できるのかという観点から御質問させていただきたいんです。

まず、6ページ目の基本原則の意見差控、4で「監査人は、重要な監査手続が実施できなかったことにより、自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得られないときは、意見を表明してはならない」。これは「できなかったこと等により」の「等」が取られたわけです。そうしますと、取られた部分というのは基本原則のところでは読みこなすことができなくて、8ページの五の「監査範囲の制約」の4、「監査人は、将来の帰結が予測し得ない事象又は重要について・・」までいかないとわからない。何がわからないかといいますと、6ページで「重要な監査手続が実施できなかったこと」だけが意見を表明してはならない場合になっている。

そうすると、先ほど多賀谷課長補佐からも御説明がありましたけれども、私が考えたのは重要な監査手続はできた、証拠も集まってきました、しかし、その証拠に基づいて適正に表示しているかどうかの判断を行うことができないケース。すなわち、これは合理的な基礎が得られていないケースだと思うんです。それも重要な監査手続が実施できなかったことに含めるという解釈まではしんどいのではないか。ですから、証拠はいろいろ集まってきたけれどもそのほかに判断の根拠となるような証拠が集まることがなくて、その部分に関して合理的な基礎が得られていないようなケースについては意見を表明できないケースがあるのではないかと思うんです。そうすると、それは基本原則の中にそういうケースもあり得ることを表現せざる得ないのではないか。「等」を取られたのですけれども、そうすると「等」は合った方がよかったのではないでしょうかということがまず1つ目です。

2つ目ですけれども、7ページから8ページにかけて意見に関する除外事項の規定がございます。その2の規定は不適正意見を表明するケースですけれども、その下3行目に不適正である旨の意見を表明しなければならない。この場合には無限定適正意見の記載事項を修正し、財務諸表に対する意見において財務諸表が不適正である旨及びその理由を記載しなければならない。これはよくわかるのですが、そのときに財務諸表に対する意見の部分だけでこれを扱うのでしょうかという質問です。

というのは、実施した監査の概要は7ページの(2)に規定があるわけですが、下から2行は「重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証を含め意見表明のための合理的な基礎を得たこと」という表現になっていますので、不適正である旨の意見を表明する場合には実施した監査の概要において重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証は得られていないわけです。逆に言うと重要な虚偽の表示があることの合理的な保証に至っているのではないかとすると、実施した監査の概要について「合理的な保証を含め」という表現を何らか変える必要が出てくるのではないか。あるいは、ここでは重要な虚偽の表示がないことについての合理的な基礎は得られなかったという旨に変えるなり、そういう言及が必要ではないでしょうか。これが2つ目です。

3つ目に8ページの五、監査範囲の制約の3番目に他の監査人の監査の結果を利用できないと判断したケースについての基準が出ております。これは連結財務諸表の監査が始まりまして重要な子会社、特に海外での重要な子会社に対する監査において日本の監査法人の方々が出かけていって往査していろいろ調べるのでしょうが、その場合であっても現地の事情に精通した監査人の監査を利用するケースが非常に多いわけです。

そうしますと、この基準は当然あった方がいいというか、なければ連結財務諸表の監査になると実務上非常に困ってくる基準だと思うので、これは非常にいいかと思うんです。そのときに他の監査人が実施した監査を利用できないケースはいいのですけれども、他の監査人に非常に依拠しているということについて、もし海外の重要な子会社に対して非常に依拠して、それを大丈夫だと思って依拠したから意見を表明しましたということは追記情報として1つの重要な情報ではないかと思うのですが、それは9ページの追記情報の中の1つには挙がってこないのでしょうか。それが3つ目の質問です。

そして最後は少し細かな問題にもつながるのですけれども、8ページの六、継続企業の前提のところで疑義を解消するに足る合理的な経営計画等が提示されまして、それが財務諸表に適切に表示されていると判断した場合には無限定適正意見を表明し、それが適切に表示されていない場合には除外、限定意見か不適正意見であるという規定で、表示の有無がどうかということに関してよくわかるのですけれども、2にいきますと「経営者がその疑義を解消するに足る合理的な経営計画等を提示しない場合は、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断しなければならない。」ということですので、監査範囲の制約につながっていくのだろうと思います。

ただ、この2の規定について経営者がその疑義を解消するに足る合理的な経営計画を提示した場合であっても判断が分かれるときがあると思うんです。経営者は大丈夫だ、その計画は非常に合理的で、それが実現すれば疑義は解消すると考えている。しかし、監査人はそうではないと判断したケースが1つ。それも開示がダメだと言うのか、あるいは経営者はそんなふうに合理的であると言っているわけですけれども、その計画の実行可能性について重要な偶発事象のために判断できないときは8ページの五、監査範囲の制約の4に戻って考えることになるのでしょうか。

それと同じことが要するに追記情報で書かれる(2)と(3)との関係についてどうなるのだろうかということに関する御質問でもあるわけですけれども、重要な偶発事象があるケースで、かつゴーイング・コンサーンと関連している場合。そしてもう1つは、重要な後発事象があるケースでもゴーイング・コンサーンの疑義に関係している場合があるわけです。特にそれは去年5月に新しく出ています国際会計基準の第10号では重要な後発事象の1つの事例としてゴーイング・コンサーンの前提に疑義がある場合には重要な後発事象として開示するだけではダメで、今回我々が策定しているような継続企業の前提に関する監査結果を表明しなさいという規定が置かれているんです。

そうなってきますと、長くなってわかりづらくなっているかもしれませんけれども、要するに重要な偶発事象、後発事象があって、それが継続企業の前提に影響を与えている場合と与えていない場合がはっきりわかるような工夫が何か要るのではないかと思うのですが、それは今回の提案で全部解消されるのでしょうか。その辺を御説明していただければと思います。要するに、あらゆるところに合理的な基礎が得られているかどうかがキーポイントとなって非常に効いてきているわけですけれども、合理的な基礎を得たことに関して、その意味するところはかなり広範なものが入っているのではないか。だとすると、それは前文においてこういった点のことに関しては合理的な基礎を入手したかどうかの判断の含まれているという旨の説明が要るのではないでしょうかという御質問でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。今、内藤委員から非常に貴重な御指摘をいただいておりますけれども、この点について起草メンバーの中で考えた点について山浦委員、御意見をお聞かせいただけるとありがたいと思いますが、いかがでございましょうか。他の監査人のところにつきましては、もし御指名してよろしければ加藤委員から実務的な面で御意見を承れればありがたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

それでは山浦委員、お願いいたします。

○山浦委員

内藤委員の御指摘は4カ所ということですけれども、最後の合理的基礎の概念を明確化ということを含めて5点という形で理解して対応したいと思います。

1番目は確かに監査手続を実施したけれどもどうしても判断がつかないときがあるのではないかということで、この点については我々も随分と議論いたしました。もしそれがその字義どおりだとしますと結局、意見差控という方向にいかざるを得ない。この中身が通常の未確定事象の問題、場合によってはゴーイング・コンサーンに関わってくる場合があります。これについては内藤委員の4番目の御指摘とも重なってくるかと思います。

まず1つ単純なところから申しますと、重要な監査手続が実施できなかったこと等により、今までは「等」を入れていたのですけれども「等」を取った。その解釈ができなかったことには未確定事象の存在も含むという解釈でいこうということは先ほど多賀谷課長補佐から御説明があったとおりです。そういう解釈でいくということで我々の方は了解をとったのですけれども、内藤委員の今の御指摘について先ほど私の方で説明したような未確定事象も含むという解釈で基準全体の整合性がとれるかどうかについては重要なことですので、確認したいと思います。

2番目は重要な虚偽の表示がある、不適正意見を出す、そのこと自体も合理的な保証あるいは合理的な基礎の上に立った見解であるという趣旨のことを前文では説明しているのですけれども、監査基準の中で同じように表現できないかという御指示だと思います。御指摘のところはわかります。内藤委員がおっしゃるような趣旨を入れた方がいいのかどうか、そこまではこれまで検討していなかったので私の方で結論を出すことはできません。ただ、今ここで指示している特に8ページの四の2で内藤委員が御指摘のところは恐らく読み取れるのではないかというのが私の考え方ですけれども、これについても起草メンバーの方でもう一度考えたいと思います。御質問の件を確認するという程度しかできませんけれども、御質問の趣旨はわかりましたので、これは確認させていただきます。

3番目についてはもしかしたら友永委員の方が実務に沿った的確な御意見を出されるかもわかりませんけれども、確かに追記情報として重要な事実について記載する余地はある。私自身、一番最初はこういった議論もしていたのですけれども、改めて御指摘を受けますと確かにその必要はあるのかと思います。

ただ、他の監査人の利用につきましては、今の日本の法制度なり監査人の責任のとり方に関する日本の仕組みからすると単なる情報にしかすぎない。8ページにあります五の3のケースについては監査意見の問題として関わってくるけれども、それ以外の場合には特に他の監査人を利用したということについて意見表明の段階で出さないといいますか、今の監査基準がそうですので、今回は一応その趣旨を引き継いできております。

ただ、国際的な実務動向からするとそういった事実については開示すると言うと変ですけれども、監査報告書の中に記載するという実務が海外では比較的多いようですので、改めてそういった法制度というか日本の監査人の責任に関する仕組みとの兼ね合いでこれを入れる余地がないかどうかについてもう一度考えさせていただきます。

4番目は非常に悩ましい問題でありまして、この議論は汲めども汲めども結論がつかないのであります。ただ、基本的には経営者側が出した経営計画について監査人が納得できないというのは要するに合理的な経営計画が提出されていないという理解で我々はこの文章をつくっております。したがいまして、こうした文章になったのですけれども、海外の監査基準ではいざとなったら許容規定という形でゴーイング・コンサーンの問題でどうしても将来の事象について経営者側も、あるいは監査人としても経営者がわからないのは無理もないというケースもある。そういうときには仕方ないから意見差控も容認するという規定を設けております。ただ、この点についても意図としては先ほど言ったような合理的な経営計画等が提出されていないという解釈の中に入れたいということで我々は来ておりますので、いずれにしてもそれについてももう一度検討いたします。

最後の合理的基礎の要件というか、その概念はいろいろところで変わってきますので、これについて監査基準の中身でもう少し触れるか、あるいは前文の段階で説明するか。いずれにしても現時点の前文はまだドラフトのドラフトという状況ですので、これから幾らでも書き加えたり修正することはあり得ますので、これについては御指摘のところをよくかみしめながら検討したいと思っております。

○脇田部会長

今、山浦委員から御発言いただきましたけれども、先ほど加藤委員にもお願いしておりますので、もしよろしければ他の監査人についての記載等について御発言いただければありがたいと思います。

○加藤委員

内藤委員の御指摘は他の監査人の監査に依拠した場合に追記情報に書いたらどうかという御意見だと思うのですが、依拠していると当然、監査報告書を出している監査人がすべての責任をとるわけですので、あえてそこに他の監査人の監査に依拠したということを書くと、むしろその部分について責任はとらないのかという誤解を与えるような気がするんです。いわゆるエクスペクテーション・ギャップがここから生ずるような気がしますので、あくまでも誰が監査したということでなくて、その監査報告書を出す監査人としての全責任において意見表明をするということで私は十分だと思うんです。

一時は日本でも例えば売上の何%とか資産の何%については他の監査人の監査を使ったということを書いたことがあったのですが、数字だけで重要性を判断できないわけです。質の面とかリスクの面とかいろいろな要素を考慮しないといけませんので、ただ単に売上の何%を他の監査人に依拠したということ自体も一般の読者に大きな誤解を与える。他の監査人をそんなにたくさん使っているのかということで、その監査の信憑性に影響するようだと本来の趣旨と違うと思いますので、そういうこともまずいのではないかということ。

それから、今の時代は世界的に活動している会社が非常に多くて、他の監査人に依拠するのもほとんど通常のようになっておりまして、通常の監査手続の1つになっておりますので、あえてこれを取り出して他の監査人に依拠したということを書くこと自体もまた誤解を与える。特に今のようなグローバリゼーションの時代では世界中の他の監査人を使って、しかも幾つもの監査人を使ってやっているわけです。今言ったようなことを考慮しますと、私はあえて他の監査人の監査に依拠した場合であっても追記情報に書く必要性はないのではないかと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。先ほど冒頭で内藤委員がおっしゃいましたように今回の基準の改訂の中で以前は余り踏み込んでいなかった部分についてかなり踏み込んで議論してまいりました。起草メンバーの委員の方々にもその点で大変御議論いただいておりまして、今の内藤委員の御指摘あるいは加藤委員の御発言をこれからもさらに酌み取りまして検討したいと思います。特に未確定事象、そして継続企業の前提につきましては先ほど山浦委員もおっしゃいましたようにかなり長時間の議論を続けております。今日御発言いただいたところをさらに生かして検討させていただきたいと思っております。

それでは、どうぞ続けて御発言いただきたいと思います。

○加藤委員

目的ですが、例の合理的な保証のところです。どうもまだすっきりしないのは合理的な保証のとらえ方というか、考え方に違った考え方が存在するのではないかという気がするのですが、今の目的に書いてある合理的な保証というのは監査人が財務諸表の利用者あるいは監査報告書の利用者に与えるものとしての合理的な保証という位置づけになっているような気がするんです。それは先ほど山浦委員が保証を与える、どの程度与えるのかということで絶対的ではないけれど合理的なものを与える。監査人から監査報告書の利用者に与えるものとしての合理的な保証というとらえ方をされていると思うのですが、ほかのところを見ますとそういう位置づけになっていないような気がするんです。

その例として2カ所挙げたいと思うのですが、1つは前回も私が言ったことです。7ページの(2)実施した監査の概要の最後2行に「重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証を含め意見表明のための合理的な基礎を得たこと」ということで、ここで言う合理的な保証というのは監査人自身の合理的な保証であって、それをそのまま財務諸表の利用者に与えるという意味での合理的な保証でないという表現になっているということ。

それから、資料3で先ほど御説明いただいた監査報告書の文例の2番目のパラグラフを見ましても、2行目から「監査の基準は、連結財務諸表に重要な虚偽の表示がないかどうかについて合理的な保証を得るために、私たちが監査を計画し、実施することを要求している」。要するに監査人自身が合理的な保証を得るために監査計画をつくって実施するという、合理的な基礎の範囲の中の一部ということであくまでも監査人の保証なんです。ですから、この監査報告書の文例と先ほどの実施した監査の概要の書き方は整合性がとれていると思うんです。ところが、目的へいくとそれは監査人のものではなくて、それを第三者へ与えるものという位置づけになっているのですが、この辺ははっきりとみんなで解釈を同じにしないといつまで議論していてもかみ合わないような気がするんです。

○脇田部会長

ただいま御指摘いただきましたところは重要なことでございまして、この基準あるいは前文の作成の中でその整合性を保つようにこれからさらに整理を進めさせていただきますけれども、この点について山浦委員から御発言はございますでしょうか。

○山浦委員

難しいところですけれども、reasonable assurance を得る。これは確かに監査人が自分たちの基準として監査基準をつくる。そのときは要するに心証の問題でありますので、reasonable assurance は当然、監査人自身が監査証拠を通して行った判断について一定の assurance を得た。ただ、監査人自身が得るということで意見を表明する。そうすると当然、表明された意見はいわばひとり歩きというか、利用者サイドからすると一種のメッセージとして監査人が適正意見を出している。その適正意見は財務諸表の信頼性について監査人自身が保証しているという受け取られ方をするわけです。そこを目的のところで、いわば監査人自身の監査プロセスに関わる監査の目的観ということを1つ踏み越えた形で利用者サイドから見た目での目的観も入れている。もう少し言いますと、監査人自身が自分が出した適正である旨の意見に重要な虚偽の表示がないことについて一定の範囲で保証を与えていますということを出しているといったセンテンスで目的観を書いているんです。

加藤委員がおっしゃる趣旨は私としてももちろん十分にわかります。わかるのですけれども、目的は加藤委員のおっしゃるような形での表現の方がもしかしたらいいのかもわかりませんが、監査とは一体どういった性格のものかということを知りたい。特に財務諸表の利用者サイドからすると果たして監査人が得たということでとどめることでわかるかどうか、そのあたりが私自身としても判断に悩んだところです。これについては起草メンバーの会議でも随分と議論しまして、二転三転どころか四転五転もしたところで、特に実務サイドからの御意見でも加藤委員と同じような御指摘がありました。いずれにしても先ほど言ったように非常に大事なところですので、これについてもう一度検討はいたします。

○渡辺委員

加藤委員が今おっしゃった点は私も全くそういうふうに感じているところもありまして、AUですか――プロフェッショナル・スタンダードに reasonable assurance が出てくるときは常にObtain――常にと言うと全部を言うわけではないですけれども、監査人が reasonable assurance をObtainしたかどうかという使い方をされているんです。

ただ一方、私が読んだのはモントゴメリーの厚いものを買っただけですけれども、監査論では監査意見というのは保証だと。保証業務があって、保証の程度が低くなるとレビューがあったり調製があったりいろいろすると書いてあって、山浦委員が今おっしゃったように利用者から見ると適正意見というのがついていたら、これはどういう意味があるのだろうというのが一番知りたいところでありますので、絶対的ではないけれどもきちんとした監査人の方が全力を尽くして調べた結果、問題はありませんと。ただし、隠そうとする人もいるし、たまたま見つけられなかったということもあるので、絶対的な保証ではありません、相対的というか専門家にも間違いがあるという意味での保証をしたものですということをここに書いていただくのが非常にわかりやすい。公認会計士の方も何をするのかというのが非常に明確になっていいのではないかということで、できれば監査論の立場から心証とか判断の表明とか、深いものがあると思うのですが、ここは必ずしも論文ではないので、わかりやすく目的に書いていただきたいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。この点についてはただいまの御意見を踏まえて起草メンバーの会議でさらに草案に生かすという形で検討させていただきます。

○加藤委員

もう1つお聞きしたいことがあるのですが、9ページの追記情報の(1)に正当な理由による会計方針の変更というのがあるんです。先ほど監査報告書の新しいひな型と前のものとの比較も見せていただきましたので、これからは正当な理由によれば会計方針の変更は何も書かなくてもいいことになったということで、そのかわりここに追記情報として書くということだと思うのですが、従来の日本の基準では法令等の改正等に伴って会計処理の原則を変更した場合、例えば会計ビッグバンで税効果会計とか年金会計とか新しいものがどんどん出てきているわけですが、こういうものは今まで会計方針の変更には該当しないことになっていたわけです。

ところが、海外ではこういうものでも会計方針の変更になっているということで、その辺の手当ということで現在はリサーチセンターの方から特定の指針が出ておりまして、付記事項みたいにして書くという形になっているんです。そのリサーチセンターの中にも国際的な基準との整合性がとれていない部分については今後の監査基準の見直しを含めて検討されるべきだということを触れているのですけれども、それがこの中ではどのような取扱いになっているのか。法令等の改正による会計処理の原則の変更も正当な理由による会計方針の変更とみなすようにするのかどうか、その辺をお聞きしたいんです。

○脇田部会長

それでは、事務局の多賀谷課長補佐からお願いいたします。

○多賀谷課長補佐

その点につきましては加藤委員がおっしゃるとおりの問題が存在していると思います。今、対処の方法が会計基準の変更の都度かなり区々に行われているということで、結果として監査報告書の書き方にも国際的な書き方と違う、かつ、わかりにくいという点があることは承知しております。そこで、正当な理由による会計方針に会計基準や法令の変更が入れば非常にすっきりとすることになろうかと思います。

今、この正当な理由かどうかということについては日本公認会計士協会の実務指針で定められておりますので、もしこの審議会の場でそういう法令等の変更も正当な理由によるものに含まれるという解釈にした方が国際的にもすっきりするということであれば、その旨について前文等で御指摘いただき、さらに日本公認会計士協会の実務指針をそれに合わせて修正していただくということを御提言されるのであれば盛り込んでいかれればいいのではないかと考えております。

○脇田部会長

ありがとうございました。起草メンバーの会議の場では追記事項そのものをどのように規定するかということで時間を費やしておりまして、この会計方針の変更の今の加藤委員の御指摘をふみ込んだ検討はまだしておりませんので、今の御発言を受けましてこれから検討させていただきます。

○渡辺委員

今の会計方針の変更のところで3回目ぐらいになりますが、正当な会計方針の変更が行われた場合に日本の場合はプロフォーマーが出ない。それだけの理由ではないのですが、私から見ると、だから限定意見になっていた。私は別に会計方針の変更をしたときに限定意見にしなければいけないということを申し上げているのではなくて、会計方針が正当に変更された場合にプロフォーマーを出してください、そうすれば元々その会計方針でやっていれば3年前はこうだった、何年やるかは別にして去年はこうだったと。そうすると一種の発射台がきれいに揃って、来年は多分こうなるのではないかということを考えるのに非常に役に立つということで、それをやっていただきたい。

それは監査基準とは別の会計基準であるということかなとも思いますが、もし会計基準がそういうふうになっていなければ利用者から見るとそういうものが出ていない財務諸表は使い勝手が悪いものですから、それは監査上限定意見になっても仕方がないのかと思いますので、ほかの部会になるのかもしれませんが、できれば部会の方から申し送り事項か何かでプロフォーマーについての会計規定をつくってくださいということをつけて限定意見から外すことはできないのかなと思います。

○脇田部会長

継続性の問題、期間比較可能性で非常に重要な開示に関わる問題でございますので、多賀谷課長補佐から御説明させていただきます。

○多賀谷課長補佐

その点につきましては確かに監査基準の中でこうせよということは言えないと思うのですが、御説明を今日できるかこの次になるかわかりませんが、前文の方で12ページを御覧いただくとマル6で追記情報についての説明をしております。その中で渡辺委員から再三御指摘がございましたように会計方針の変更理由が明確でないという御指摘もある点を踏まえ、監査人には厳格な判断が求められるということ。その次に、会計方針の変更があった場合における財務諸表の期間比較の観点から変更後の会計方針による過年度の影響に関する情報提供についても財務諸表の表示方法の問題として検討することが必要であるという提言を入れさせていただいております。

ただ、何期やるとか、アメリカでもどういう場合にプロフォーマーを出すというのがあると思うので、それを個々の基準ごとに考えるのか全体でやるのかというのはもう少し検討しないと、直ちに具体的にどういうものだということもないでしょうし、なるべくプロフォーマー的というのでしょうか、当期の財務諸表の中で前期のものを全部変えろということではないけれども、今の書き方の中でも新しいやり方で去年のものをやったらば去年はこれだけ影響が出ますというのを当期の財務諸表に書いておく。それで当期の監査を受けるということでも情報としては可能ではないかと考えておりますので、必ずしもアメリカのやり方すべてそのままになるかどうかは今の点ではわかりませんので、工夫も必要でしょうし、また実務の方の御意見も必要かと思いますので、具体的な方法につきましては言及を差し控えさせていただいております。いずれにしても新しい方法でやった方が楽だという――作成する側もプログラムが変わっているのに前のシステムでやり直すんですかという問題もあると思いますので、作成者側もより便利になるという点もあろうかと思いますので、その辺も含めて検討することが必要だという御提言を審議会からいただければと考えております。

○渡辺委員

よくわかりました。

ただ、手間ということですと私が聞いている範囲では新しい方式で過去のものをつくる方が古い方式で直近期をつくるよりもずっと楽だと。なぜならば古い方式で直近期をつくるというのは3月が終わってからドタバタと新方式と旧方式の2種類つくらないといけない。新しい方式というのは早い段階で決まっていれば忙しくなる前に必要な過去何年間分をつくっておけばそれでおしまいなので、手間としてはそちらの方が楽であると聞いております。

○那須委員

今の手間の話にお言葉を返すようですが、古いやり方で今年やるのは従来の方法どおりやっていけばいいということもありますので、必ずしもどちらがどちらという言い方ではないと思います。

今のところで言えば、今の日本の監査報告書の出し方が今年の年度というか今の年度についての監査報告を出すことになっていますので、例えば去年の数字を直してしまえば去年の直った数字についても監査報告を出し直さないといけない。アメリカの監査報告書はどうなっているかというと、財務諸表については例えば3期分、損益計算書については2期分について1枚の監査報告書で言及していると思います。それがあるのでプロフォーマーしても全部ワンセットでOK、あるいはいいとか悪いという意見表明をしているのですから、日本の監査報告書については今年度(平成12年度)の財務諸表についてどうという言い方をしていますので、先ほど多賀谷課長補佐が御説明になったように今年の財務諸表に去年の数字を今年のベースで直すとこういうふうになりますというのがあれば、それを含めて今年の財務諸表として監査しますので、監査意見が出せる。

もし前年度の数字を直した財務諸表だけしか載らないことになると、それについて改めて監査報告書をつける手続をとることにならざるを得ませんので、そのあたりも全部含めて制度整備が必要になるだろうということになります。監査基準には単年度の監査報告書をつけろという明確なコメントはありませんから、開示のルールが整ってくるに合わせてそのあたりも監査報告書自体がどこまでをフォローするのかについてもう一回そこで改めて整理し直さなければいけないのではないかと思います。

とにかく監査報告書で何を範囲にして我々が何か保証しなければいけないという言葉遣いがどうかわかりませんけれども、そこら辺が明確になっていって初めて心証を表明できるのであって、なし崩し的にどんどん広がっていくことは非常に厄介なことなので、余りそういうことではない。ですので、先ほどの前文のドラフトのドラフトで言われている内容がそういうことも含めて検討する必要があるということだと私は理解しております。

○脇田部会長

今、監査の立場からの那須委員の御意見を伺いました。ありがとうございました。どうぞ御自由に御発言いただければありがたいと思います。

○那須委員

先ほど他の監査人の利用についてというところで、実は日本公認会計士協会の方でもこの案件に関してだけですが、ある委員会で議論しました。その中で出た意見として結論としては加藤先生がおっしゃったことと同じですが、書いたからといって我々に何の足しになるのかという直接的な表現を使ってかなりの意見が出ていました。

つまり、目的の段階で合理的な範囲で保証できるとの判断なのか心証なのかわかりませんが、そういうものを出す以上、一義的にはその監査報告書を出した人のところにすべての責任が来るだろう。そこから先、依拠した人と監査報告書を出した人の間でどういうやりとりがあるかは利用者あるいは被監査会社の方々には関係ないことであろう。そういうことであれば、何も他の監査人の監査結果を利用したしないということを書いてもしようがないのではないか。それは監査手続の中の1つの話なのであって、改めてそれについて言及したところで何の足しにもならないというのが監査報告書を出す側の意見としてかなり出ていました。

これは内藤先生のコメントでありました6ページの報告基準の意見差控の重要な監査手続ができなかったことというところの「等」の削除の件ですが、じゃあ「等」とは何ですかと逆に言われると、どういう理由を明記したらいいのか。例示列挙も幾つかはできるのでしょうが、範囲が非常に怪しくなってしまう。そうすると、内藤先生はどちらかというと公認会計士に有利な表現をしていただいたかと思うのですが、やはり怪しいと思うと意見を言いたくない、危ない橋を渡りたくないというのが公認会計士の潜在的な意識だと思います。そういう安易な方向に流れないようにするには重要な監査手続が実施できなかったということを公認会計士自らが説明できなければ意見は表明しなければいけない、そちらに重点が置かれているということで考えていまして、適正な表示をしてあるかしていないかということも監査要点ですので、その監査要点をクリアすべき監査手続が実施できていれば何らかの意見表明をすべきではないかといった議論をしておりました。

あとはゴーイング・コンサーンのことについて合理的な経営計画云々というところですが、経営者の方々が示されたものについて我々が不合理だと言うことはよほどのことがない限りはあり得ないと思います。ただ、そのよほどのことというのは例えば誰が資金援助をしてくれるはずだということを書きました、その方に対して本当にそうですねという確認をとってもよろしいですかと言って「嫌だ」とか、確認をとったところ「そのつもりはない」というコメントが返ってくれば「この計画はおかしいですね」と言うのでしょうけれども、そういうことでもない限りは我々としても不合理だと言うことはなかなか難しいのかなと思っております。

ばらばらになりましたが、以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいまの経営者の判断につきまして前回も御意見が出ておりましたけれども、御発言はございますでしょうか。

○内藤委員

先ほどの他の監査人を利用したときのお話は2人の先生からお意見を頂戴しましたので、私が考えていたのは監査人の立場からおっしゃる場合にはそうだろうと思うんです。書いて何の足しになるか、それはそのとおりだと思います。

ただ、これは追記情報として書くか書かないかということを検討すべきだと申し上げましたのは、追記情報は必ず書かれるということではありませんね。財務諸表の利用者の判断を誤らせないようにするために強調することが適当ということですね。今後こういう非常に精度の高い監査基準が出てまいりますと、監査をされる立場の中でいろいろ競争があるとか、そこは質がいい監査をする、そうではないという監査契約をめぐる競争が激しくなってくるだろうと思うんです。そのときに私は先ほど加藤先生が頻繁に他の監査人を利用しているからそれは通常の問題であって関係ないとおっしゃったわけですが、逆に通常を越えて非常に他の監査人に多く依拠してしまっているような監査報告書であるとすれば、それこそ監査報告書自体が保証している内容が専らそこに署名した監査人がされた場合と他の監査人に非常に多く依拠してやった場合とは監査報告書を利用する立場としては区別したい1つの情報源になるのではないでしょうかという趣旨で発言させていただきました。

今、那須先生からありました重要な監査手続が実施できた場合には必ず意見、どちらかシロクロはっきりさせなさいという厳しい御意見だろうと思うんです。それはそういうふうにできればいいのですけれども、重要な監査が実施できたかどうかは誰が判断できるんですか。監査報告書の利用者はそれを判断できないわけですね。だから、厳しい基準をつくって何が何でもどちらかはっきりさせなさいというのも1つの方法だと思うのですが、それは実効性が上がらなかったら意味がないと思うんです。むしろ監査で手続を十分やったけれども、どちらか判断がつかないというときは監査報告書であっても正直に開示されるべきではないかと思ったものですから、先ほどのような発言をしたわけです。

以上です。

○多賀谷課長補佐

今の点について御質問ですが、監査手続を行ったけれども合理的な基礎が得られないというときの認識といいましょうか、理解として、例えば企業なり経営者の側が当然あるべき資料を出さないというのは別として、出せる限りのものは出しました、監査人もこれがあるだろうというものは全ていただきましたという上で判断できないということで意見差控とになるとまずいのではないか。そうすると、企業の側は求められたものはみんな出したのに判断してもらえないのでしょうかと。ましてや判断できないから意見差控だということになると、意見差控と不適正意見というのは実質的に同じような感じですから。そこは監査人の契約上の問題なのかもしれませんが、余り積極的にとらえるといかがなものかという気がしますので、表現の上のことかもしれませんが、通常はない。極めて例外的なものだという意味であれば問題ないかと思うのですが、ある程度あり得るということになると企業が幾ら資料を出しても証拠を出しても監査人が足りないと言い続けると意見差控になってしまうということになっても困るかなというので、そこら辺の表現なり共通の理解ができるように前文でも考える必要があるのでお願いしたいと思います。

他の監査人につきましては法律的には当然、我が国ではサインされた監査人が全部請け負うということですが、内藤委員がおっしゃったのは、恐らく非常に重要な部分についてサインをした方は名目であって、実質は他の方がやっていることがあり得た場合にどうかということだと思うんです。これについては例えば監査基準の問題なのか、それとも公認会計士の方が監査を請け負うに当たっての倫理規則なり、そういうレベルの問題であるのかということも整理が必要ではないかと思うのですが、倫理規則上の問題というのは何かあり得るのでしょうか。

○脇田部会長

どなたかわかりませんか。

○友永委員

はっきり覚えておりませんけれども、自分の能力を超えた仕事を引き受けるのはダメとか、多分そんな条項があったと思います。ISAもそうですけれども、主たる監査人として自分がふさわしいかどうかを監査を受嘱する際に検討しなければいけないというのがあるわけですが、日本の場合はずっと今まで個別が基本財務諸表で、当然にして親会社監査人が連結上も監査人になるということで来ております。ですから、親会社の部分が相対的に小さい場合、特に海外展開をよくしている会社では提携ファームも他の監査人であるわけですから、ほとんどが自分は見ていないという状況も現実に相当出てきているのではないかと思います。

ただ、やはり監査人としては他の監査人がやった仕事の内容を自らやったものと同等のように自分の監査証拠として取り入れていくという作業をするわけで、そこで例えば提携ファームであれば質的なコントロールが同じようになされている事務所としての信頼感もありましょうし、現地に赴いて調書をレビューすることも実際には可能であるわけです。そういった意味で監査人が自分が意見を表明するに足るだけの手続をしていくといったところにスタンスを置かないと、先ほど内藤委員もおっしゃったように監査証明が出ていてもそのうちの一部はちゃんと見ていないのではないかといった心配をされるようになる。

また、ここについては他の監査人がやっているという範囲限定のような記載をいたしますと、その報告書を見た読者がこの監査報告書は信用できるのだろうかということになりますので、今のような状況であるならば他の監査人の監査結果の利用という実際面をきちんとした手続を踏んでやっていく。どうしても内容についても信用できない、自分自身が手続をすることも不可能といった場合には8ページ目の五の3にいきまして、その部分についての意見の表明を拒否するという形で責任分担することになるのではないかと思っております。

○脇田部会長

ありがとうございました。

○伊藤委員

難しかったものですから私が聞き逃したのかもわかりませんので教えていただきたいのですが、監査基準の改訂案の3ページ企業の存続能力、継続企業の前提という5で「企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提」、それからゴーイング・コンサーンがたしか出ていたと思いますが、9ページの3で「監査人は、継続企業を前提として財務諸表を作成することが適正でないと判断した場合には、継続企業を前提とした財務諸表については不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない」。この継続企業というのは、この場合の監査はどの程度の継続を考えているんですか。つまり、経営者としては当然ゴーイング・コンサーンが未来永劫と言うと変な話ですけれども、1年とか何かは考えていなくて、我々はいつまでも継続企業であると。これはいつもいろいろ問題になるところですけれども、ここはどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。

○多賀谷課長補佐

具体的には実務指針のレベルになるかと思うのですが、経営者の方から長いスパンの経営計画なり存続、そういう説明なり計画があるというのは当然だと思います。ただ、その中で監査人が同じレベルで判断するというのも難しいと思いますので、経営者ほどの情報量といいますか、また立場も違いますので、監査人としては諸外国を見ても1年、その時点から次の監査までの範囲で経営者が立てている経営計画なり会社の状況のあたりまでは判断していただく。ただ、それから先についての全体の計画――もちろん全体の計画も見るのでしょうけれども、そこまでいきなり5年、10年もあるという前提で経営者と同じレベルで判断してくださいというのは難しいのではないか。ですから、監査人としては1年ぐらい、次の期までは継続しているという前提がないとダメですと。経営者のお立場からすればもちろんもっと長いスパンで継続性を立証していただければ、それに越したことはないと考えております。

○宮島部会長代理

私も最初から疑問になっているところですけれども、そうすると例えば9ページの継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象か否かの判断は、先ほど山浦先生は監査人がするとおっしゃいましたけれども、そこに齟齬があったときにどうなるかという問題は常に出てくると思うんです。でも、世界的な流れだからしようがないと言えばしようがないで私もあきらめるのですけれども、そのときにまさに2は「経営者がその疑義を解消するに足る合理的な経営計画を提示しない場合」なので、先ほど内藤先生が暗に含められたのは提示していても監査人と齟齬がある場合にどうするかということまでおっしゃったんだと思うのですが、入るとしたら提示がある。意見は違うけれども、提示があったらという意味で2の範囲でとどめざるを得ないのかなという感じがするんです。その辺はどんな感じで内藤先生や山浦先生がおっしゃったか、それは最初からずっと疑問に持っているところですから。

○脇田部会長

山浦先生、御説明いただけますか。ただ、合理的であるかという判断で先ほど申し上げたのですけれども。

○山浦委員

宮島委員の御質問の趣旨ですけれども、要するに内藤委員が御指摘の点を宮島委員から改めて確めたいという御趣旨でしょうか。

○宮島部会長代理

そうですね。

○山浦委員

答えについては先ほど申しましたように内藤委員なり宮島委員のそういう趣旨での御質問であれば、現時点でこれを起草した段階では監査人として合理性について納得できなければ、いわば合理的な経営計画が提示されていないといった解釈で済むと考えているんです。ただ、もちろんこれはある程度の実務的な指針でもって大体の判断のポイントというのでしょうか、例えば大幅な債務超過の状態になっているとか、極端な話ですけれども、そのほか営業キャッシュ・フローで赤の状態がずっと続いて資金ショートが目に見えているとか、具体的な指針が幾つかあるんです。そういった指針についてはできる限り実務指針で明示して、そういう具体的なリスク要因に対して経営者の方で出される、それを解消あるいは緩和する計画があると思うんです。それを出された段階で監査人は監査人として判断するといった立場になると思うんです。その段階で内藤委員が御指摘の監査人としても経営者としてもどうしても判断のつかないことが起こるのではないか。それはかなり稀なケースだと思うのですけれども、そういうときをどうするか。これについては先ほど言いましたようにもう一回検討しますとお答えしたところです。

○脇田部会長

ありがとうございました。

○伊藤委員

前に申し上げたのですけれども、3ページの二、監査計画の策定の2は「監査人は、監査計画の策定に当たり、固有リスクと統制リスクを暫定的に評価するため、景気の動向、企業が属する産業の状況、企業の事業内容、経営者の経営理念、経営方針、採用している情報技術その他企業の経営活動に関わる情報を入手し、その影響を考慮しなければならない」。基本的に私は実際に経営し、公認会計士の方々とお話しするチャンスがあるのでそういうことはよくわかるのですが、つまり一連のキャッシュ・フローを見て企業が存続するかどうかということは通常の企業の場合あり得ないんです。したがって、恐らくよほど体質的に悪い会社に限定意見がつくだろうと思うのですが、一番問題なのはブランドに影響するような類の場合です。こういう類のものがどこかにひそんでいるんです。品質の問題とか、例えば消費者を相手にするようなものを扱っている会社の本質的な品質問題で人命に影響を与えるとか、これはいわば景気動向がどうであろうと何であろうと明らかに企業のゴーイング・コンサーンに影響を与えてしまうわけです。したがって、我々経営者がリスク管理上最も怖いというか、本当を言えば隠したがるとか、あるいはそこにメスを入れていただきたい。逆に言えば、我々の中に上がってこなくて誰かにチェックしてもらいたいわけです。全然上がってこないというのは何が一番かといえばブランドに影響を与えるものです。だから、伊藤邦雄氏がブランド経営で最近よく言っているけれども、あれは本当によく当たっていると思います。そういうことはここに入っているんですか、確認したいんです。

○脇田部会長

今御指摘の点も反映できるようにこの文章について少し考えさせていただきます。この前も御指摘いただいておりますので。

○伊藤委員

同じことばかり言って申し訳ないのですが。

○脇田部会長

ただいま御指摘いただいた点もさらに文章の上で表現させていただくように工夫させていただきます。

本日はそろそろ時間もまいりましたけれども、起草メンバーに御参加いただいている委員の方々にも御苦労いただいて検討しております。また、今日はその点についてまだまだ思い至らぬ点もたくさんあるということを改めて感じておりまして、その点も踏まえて見方を変えて、あるいは思い至らなかった点等を補いまして、さらに草案をつくることに努めさせていただきたいと思いますし、起草メンバーの委員の方々にも御助力をお願いしたいと思います。

そこで、本日用意しております資料2の前文につきましては次回に改めて御審議いただきたいと思います。今申し上げましたように本日いろいろと御意見をいただきましたので、次回は草案をさらに修正いたしまして御検討いただきたいと思いますし、今申し上げましたように前文についても改めて御説明し、御検討いただくことにしたいと思います。

なお、次回は5月18日(金)午後1時30分から開催することを予定しております。詳しいことにつきましては事務局から連絡させていただきます。

また、次回の次の部会は6月1日を予定しておりましたけれども、草案の準備のためにもう少し時間をいただきたいと思いまして、6月8日を予定させていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

それでは、本日の部会はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。

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