平成13年6月28日
金融庁

企業会計審議会第19回第二部会議事録について

企業会計審議会第19回第二部会(平成13年6月8日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第19回第二部会議事録

日時:平成13年6月8日(金)午後1時30分~午後3時30分

場所:中央合同庁舎第4号館10階共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これから第19回第二部会を開催させていただきます。

本日は、前回の部会でのご意見を踏まえまして、前文と監査基準の案を公開草案の形といたしまして、修正したものをご検討いただきたいと思います。

なお、本日資料としてお配りいたしましたものは検討途中のものでございますので、委員限りとさせていただきたいと思います。

それでは、まず事務局から、前回お示ししました前文と監査基準の案の修正につきまして説明をしていただきたいと思います。

それでは、事務局からお願いいたします。

○多賀谷課長補佐

それでは、ご説明させていただきます。

まず、本日の資料1でございますが、これが前文と基準と両方同じ形で綴ったでき上がりの形になっております。資料2の方が基準の部分だけ、従来からの検討ペーパーをそのままの形で直しております。基準の方は資料2の方でご説明申し上げまして、それから前文の方は資料1の方でご説明申し上げることにさせていただきます。

まず、資料2の1ページでございます。

第一 監査の目的ということで、「監査の」というのを入れた方がいいのではないかというご意見がございましたので、修正をしております。

それから、本文の第二段落でございますが、右にございますように、第18回(前回)まででは「絶対的ではないが」という表現が入っておりましたが、これは前文の方で言うべきではないかというご意見がございましたので、削除をして、「合理的な保証を得た」ということだけの文章になっております。ほかは修正がございません。

第二 一般基準で、1の専門能力のところですが、「監査に係わる職業的専門家」としていたんですが、監査人は当然でございますので、これは除きまして「職業的専門家として」という文章になっております。

それから4、前回は「財務諸表の利用者に対して不正な報告をするためあるいは資産の流用を隠蔽するため……」となっていたんですが、ここで切れますと、「隠蔽するため」というのが最後の「考慮しなければならない」にかかってしまうという文章構造上、読まれるおそれがあるというご指摘がございました。そこで、今回は、今ご覧のように「財務諸表の利用者に対する不正な報告あるいは資産の流用の隠蔽を目的とした重要な虚偽の表示が、財務諸表に含まれる可能性を考慮しなければならない」ということで、このような「虚偽の表示」というのは財務諸表に含まれる可能性ということで、「ため」というあいまいな表現はやめて、このような表現に変えております。

2ページ目の7、「漏洩」というか、正式には「ロウセツ」と読む、ということですが、この文章をこの前議論をいただいた後に、会長からも「正当な理由なく」というのと「漏洩」という部分が、従来はこうなっていたんですが、日本語的にちょっとおかしいんではないか。「正当な理由」を取るか、もう少し文章を口語的にするかということで検討いたしまして、「正当な理由」をなくしてしまうと特別な理由でなくしたのかという誤解が生じても仕方がないので、それを残しまして、そのかわり「他に漏らし」ということで、普通の口語的表現にしまして、「業務上知り得た事項を正当な理由なく他に漏らし」としております。

3ページ、第三 実施基準のところでございますが、ここはまだ言葉が文章的にこなれていないかもしれないんですが、「監査リスク」について定義を置いておりましたところが、この「監査リスク」についても前文の方で定義を明確に入れております。「固有リスク」と「統制リスク」、「発見リスク」の定義とあわせまして前文の方で「リスクの諸概念及び用語法」というところでこの4つを定義しておりますので、そして前文の方で、監査基準における用語はこうですというふうに書いてありますので、ここではダブりますので定義の括弧書きを取っております。

2、ここは監査要点のところで、「権利と義務の帰属性」となっていたんですが、「帰属性」というのもちょっとおかしいんではないかと。帰属を見るということでございますので「権利と義務の帰属」、帰属するものであるかどうかということで「性」を取っております。

そのほかの変更点はございません。

二 監査計画の策定のところにつきましては、特に変更点はございませんので、4ページをご覧いただきたいと思います。

三 監査の実施の3、ここは文章表現的なワーディングの問題でございますが、「見積り方法の評価、監査人の行った見積り」という表現をしていたんですが、ちょっと読みにくいということで、「経営者が行った見積りの方法の評価、その見積りと監査人の行った見積りや実績との比較」ということで、文章を読んでわかりやすくしてございます。

それから6、ここは「その他監査人が必要と判断した事項」ということで例示みたいになっていたんですが、「及び監査人が必要と判断した事項」ということで、基本的にはここにあります「財務諸表を適正に作成・表示する責任は経営者にあること、経営者が採用した会計方針及び財務諸表の作成に関する基本的事項、経営者は監査の実施に必要な資料を全て提示したこと」、この3つが必ず必要で、そのほかにこれと、監査人が必要と判断した事項について、書面をもって確認するということが明確になるような文章になっております。

5ページ目、四 他の監査人等の利用、2、ここは専門家を利用する場合のところですが、従前の案では、「専門家としての能力とその業務の客観性及び専門家の業務の結果が」とつながっておりまして、監査証拠として十分かつ、適切であるかというのはどこまでかかるかというのはよくわからなかったので、きちっとそこを分けまして、「専門家としての能力及びその業務の客観性を評価し、その業務の結果が監査証拠として十分かつ適切であるかどうか」ということで文章を区切ってかりやすく趣旨が表現されるようにしております。

6ページ、第四 報告基準でございます。

一 基本原則は修正がございません。

二 監査報告書の記載区分、1の「また」ということで2つ目の文章をつなげていたんですが、「意見を表明しない場合」というのはand的なものではなくて、反対に「但し」ということで、まず、意見を表明する場合には「監査報告書において、監査の対象となった財務諸表等、実施した監査の概要及び財務諸表に対する意見」を書く。「但し」というのは、意見を表明しない場合ですので、「但し」という形に修正をしております。

7ページ、三 無限定適正意見の記載事項、(2)実施した監査の概要でございます。従来は、下線の部分が「財務諸表全体の表示を検討する」となっていたんですが、「監査は全体としての財務諸表の表示を検討する」ということで、少し言葉を変えております。これは監査の目的のところも「全体として重要な虚偽の表示がない」という表現をしておりますので、それと合せたところでございます。

四 意見に関する除外事項でございますが、ここは従来は「無限定適正意見の記載を修正し」という文章が挿入をされていたんですが、内藤委員からのご指摘で、こういう文章であれば、「無限定適正意見の場合のこれこれの記載を修正し」と書くのが最も正確な書き方であるとご指摘がありました。ただ、そこまで書きますと非常に複雑な構造になりますので、むしろ「修正し」というのは当然なので、それを落としまして、「この場合には、財務諸表に対する意見において、当該除外した事項及びその影響額を記載しなければならない」ということで十分に読み取れるのではないか。特定のところを修正するというのは正確なんですが、それを全部書こうとすると非常に冗長になるおそれがありますので、このように修正をしております。

2の下線のところの書き方も同じでございます。「無限定適正意見の記載を修正し」というのを取りまして、このような表現に合せてあります。

8ページ、五 監査範囲の制約でございます。3行目の下線の部分は、「意見表明ができないほどには重要ではない」となっていたんですが、「には」「では」と続いていますので、ワーディングで「重要でない」と変えさせていただいております。

最後の行で、「財務諸表に対する意見において」と、意見に除外した事項というのもおかしいので、「意見において」除外した事項を記載するということにしております。

2、これは最後に「及びその理由を記載しなければならない」ということで、意見を表明しない場合には、「意見を表明しません」と言うだけではなくて、当然その理由も書くということで追加しております。

4は、いろいろとご意見もあったところだと思うんですが、従来は「当該事象又は状況の財務諸表に与える影響」となっておりまして、ここを「財務諸表に与える当該事象又は状況の影響が複合的」、財務諸表に影響が複合的だと、財務諸表に与える事象の影響が複合的であると。「かつ」とつながるようにしております。

それから、「重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて」というのは、結局その上の重要な監査手続を実施できなかったときの取り扱いと同じように考えるということでございますので、その程度によっては意見の範囲を限定するなり、意見を差し控えるということになろうかと思います。したがいまして、このように将来の帰結が予測し得ない事象は非常に重要で複合的なものだというときに、意見差し控えができる。よくあるケースとしては、ゴーイング・コンサーン問題のときに起こり得ることだと思いますが、一応は意見差控をできる余地を残しているということでございます。ただし、その判断に当たっては慎重に判断しなければならないということで、将来の事象がわからないので意見差控で、言葉は悪いかもしれませんが、少し監査上にげてしまうということが本来の姿ではございませんので、どうしても意見の差し控えになるというところは慎重に判断をしてくださいという意味でございます。

六 継続企業の前提でございますが、前文の方も少し変えておりますが、「継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切でない場合には」となっております。前は「適切でないと判断した場合」ということで、「判断」が非常に強調されていたんですが、当然それは監査ですから、何らかの判断は入るわけでございますが、それはどちらかというと、もう適切でないという、ある程度客観的な相当の状況に至った場合でないと、やはりもう継続企業ではないという判断自体もできないであろうということでございますので、積極的に判断するという意味ではないという意味で、「適切でない場合には」という文章にしております。

9ページ、七 追加情報の(5)でございます。ここも文章を少しなめらかにしておりまして、「監査した財務諸表を含む開示書類における当該財務諸表の表示とその他の記載内容との重要な相違」ということでございます。ここは、あくまでも財務諸表の方は適正であるという前提で、他のところの表示で違いがある、おかしな点があるということを監査人が発見したときには追記をする、監査人の判断で情報を提供することになるということでございます。財務諸表の方はあくまでも適正であるという前提でございます。

以上が監査基準の修正箇所でございます。

続きまして、前文の修正箇所についてご説明申し上げます。

まず、資料1の2ページ、2 審議の経緯の下から3行目、まだ「審議開始から通算○回」となっております。ここは審議がとりまとめられた段階までの数字を最終的に入れさせていただくことにいたします。

3ページからが本文でございます。

まず、二 改訂基準の性格、構成及び位置付けの1 改訂基準の性格でございます。ここは一般的なことを、これまでの監査基準の改訂の経緯等も踏まえて書いてございますが、最後のパラグラフの一番下、ここは「期待ギャップ」ということを書いてあったんですけれども、「期待ギャップ」というのは、必ずしも投資家の側から見たギャップだけではなくて、会計士側からも歩み寄る。当然、投資家の理解が不足しているから、投資家が理解すれば埋まるというだけのものではなくて、会計士の側からもその要請に応えられるところはなるべく応えていこうというような姿勢が出るべきではないかという渡辺委員からのご指摘等もございましたので、ここで下線のように「公認会計士監査に対する社会の種々の期待に可能な範囲で応えることも改訂基準の意図したところである」ということで、むしろ公認会計士監査の規範としての監査基準の立場からは、こちらから歩み寄るべきところは歩み寄るという姿勢で文章を修正しております。

2 改訂基準の構成は変更はございません。

4ページ目、3 監査基準の位置付けでございます。

上から3行目、下線が付してございますが、ここは前は「意見を異にする」ということで、「商法監査特例法に基づく監査」というのは明示しないで書いていたんですが、わかりにくいので明示をした方がいいのではないかというご意見がございましたので、「表明すべき事項を異にする商法監査特例法に基づく監査など」ということで明示をしております。

三 主な改訂点とその考え方、1 監査の目的でございます。

これは、前回お示ししたときのミスでございますが、(1)の「監査人の責任」という後に、「個人としての監査人のみならず、監査事務所として」というような意味が入っていたんですが、個人としてはではなくて、監査事務所も含めてという意味は、監査の質の管理のところという監査人の話でございまして、監査人の責任は監査法人としても個人としても当然監査人とすれば同じですので、括弧書きをつけるところがおかしかったので削除させていただいております。

5ページ目は、今のところから(5)まで監査の目的の説明ということでございます。

それから、(5)の一番最後に、「なお、監査報告書における適正意見の表明は、財務諸表及び監査報告書の利用者からは、結果的に財務諸表に全体として重要な虚偽の表示がないことについての合理的な範囲での保証を与えているものと理解されることになる」ということで、直接保証を与えるということを監査が意図しているわけではないんですが、広い意味での監査制度、監査報告書という意味からは、投資家の側に立てばこのような理解がされるということも踏まえて監査をしてくださいということになろうかと思います。

2 一般基準の改訂について。ここは、「現代化」となっていたのを、少し言葉を訂正した方がいいのではないかというご意見がございまして、「改訂」と直しております。

6ページは、特に修正はございません。

3 リスク・アプローチの明確化についてですが、これは7ページの(2)に修正がございます。

まず、なお書きのところで、監査のこれらの用語ということで、ワープロミスだと思いますので、「監査基準におけるこれらの用語の意味」ということで直しております。

マル2の下線は、固有リスクというのが説明が不十分ではないか、わかりにくいというご指摘がございましたので、「可能性をいい、経営環境に影響を受ける種々のリスクや特定の取引記録や財務諸表項目が本来有するリスクからなる」というのを入れております。

8ページ、(4)リスク評価の位置付けでございます。中ほどから「そのために」という文章がございますが、「そのために、景気の動向、企業が属する産業の状況」こういうものについて情報を入手することになっているんですが、その中で、従前、採用している「情報技術」というのが「情報処理システム」となっておりまして、これですと物理的なシステムだけになるので、やはりITという意味で「情報技術」と直しております。

その下の行で「内部統制の機能」というのは入っておりませんでしたが、当然、内部統制についても評価の対象となりますので、その情報も入手していただくということで追加をしてございます。

4 監査上の重要性について、ここは随分ご意見が出たところでございます。

(3)と(4)ですが、前回案の(4)を(3)にいたしまして、(3)を(4)に順番を入れ替えております。

(3)は、「監査人は、監査意見の形成に当たって、会計基準の選択やその適用方法、あるいは財務諸表上の表示について……」、ここは「経営者と意見を異にする」となっていたのを「不適切な事項がある場合に」と、基準と同じような表現を用いております。それから、「当該事項を除外した意見を表明するか」というのは、従来は「意見を除外するか」となっていたんですが、ここも基準の方と同じような表現に改めています。

9ページの(4)の最後のところ、ここは少し短くしまして、前回の案では、「財務諸表の利用者の判断を誤らせないようにするという点では、会計上の重要性と基礎を同じくするが」という文章が入っていたんですが、これはかえって誤解されるのではないかというご指摘がございましたので、削除しております。

5 内部統制の概念につきましては、最初の下線の「企業に内部統制が整備されていない場合には」というところですが、この後に、前回の案では「あるいは内部統制に係るリスク評価を行わず監査を実施する場合において、統制評価をしなくて……」という文章が入っていたんですが、これでは統制評価をしなくていいというふうに誤解をされるおそれがあるので、これを削っております。それから、語尾を変えております。

あとは語尾等のワーディングの問題なんですが、第三段落目の「内部統制は」というところですが、この具体的内容を5つのポイントに分けて記述することにいたしましたけれども、前回の案では、「経営リスクを管理する仕組み」という文章が入っていたんですが、ここを削除しまして、「経営リスク」あるいは「経営リスクの管理方針」というところまで言及するかどうかというのは現段階では国際的にも十分固まっていないのではないか。「基本的経営方針」の中で広く読めるのではないかということで、そこは「経営リスクの管理方針」というのは統制環境の中で直接明示をしておりません。

それから、(3)(4)は少し文章が長かったので、読み取れる範囲で短くしたということでございます。内容的に特に変わっているということではございません。

最後から2つ目の段落「このような内部統制の概念と」というところは、少し文章の順番等を並べ替えて整えております。

「経営者自らが」というのは、「企業自らが」となっていたのを、ここは「経営者」という言葉で統一をする。

一番最後の行のなお書きのところなんですが、ここは下線が漏れておりまして、10ページの上の3行にかけまして、ここも前回と文章の順番が入れ代わっております。そういう意味で、なお書き以下が一番下に来たということになっておりまして、そこで、10ページの一番最後ですが、「監査人が内部統制を評価するに当たっては上記5つの要素に留意しなければならない」ということで結んでいます。

内容的な意味を変えるということはございません。

6 継続企業の前提についてですが、ここは(1)の後半の文章を(2)の第二段落目に移動させております。

(2)改訂基準における考え方は、下線のところは、「監査人は、企業の存続の可否そのものを認定する責任はなく」となっていたんですが、これを「認定し、これを監査意見の対象とする責任はなく」としております。あくまでも意見を言うことが監査の目的でございますので、その意見にこの会社が継続しないとかということを言う記述にはないということでございます。

第二段落目、(1)から移った部分ですが、ここは少し言葉を修正しております。具体的に変わっておりますのは、上から3行目の「抱かせる事象や状況が存在するかどうか」で、判断ですので「どうか」を入れております。それから、その下の行の「当該疑義を解消あるいは緩和させるための対応」というのが、前は「その事象や状況を解消させるための対応」となっていたんですが、事象や状況というのは必ずも解消するものではないので、基準の方の表現にあわせて、ここは正確に「当該疑義を解消あるいは緩和させるための対応」と修正しております。

10ページの下から3行目、「一定の事実をもって」というのが入っております。これは先ほどご説明しましたように、継続企業でないという判断をする場合、このときに相当程度客観的な状況、何らかの事実がないと監査人はやはり継続しないという判断はできないであろうということで、「一定の事実をもって明らかなとき」ということで、監査人が主体的に判断するというよりは、当然何らかの継続しないという客観的な事実があるというほどの状況においてこういう継続しない、継続性に欠けるということが起こり得るということでございます。ただ、これもこれまでご議論いただきましたように、通常こういうような場合には、既に会社が本当に存在するのかどうか、あるいはディクロージャー義務が制度的に維持される状況になるかどうかというのはまた別の問題ということでございます。

それから、11ページの下線のところはすべて表現を基準にあわせて直しているところでございます。言葉遣いが齟齬した部分を修正しております。

12ページは変更はございませんで、13ページ、実施基準に関わるその他の改訂事項の事柄なんですが、1つは、(4)を追加しております。(6)も追加をしております。

(4)は、やはり新たな会計基準への対応ということについては、一つの改訂の主眼であったので、基準の中で新しい考え方を入れていくということで説明を前文に入れた方がいいのではないかということで追加をしております。

追加をしましたので、一応読み上げさせていただきます。

(4)会計上の見積りの合理性。

新たな会計基準の導入等により、会計上の認識・測定において、従来にも増して経営者の見積りに基づく要素が重要となってきている。改訂基準では、経営者が行った財務諸表の項目の認識と見積り計上の合理性について、監査人自身も、十分かつ適切な監査証拠を入手して判断することを指示し、そのために、経営者の見積り方法の評価ばかりでなく、監査人自身が見積もった算定値や決算日後に判明した実績と比較したりする必要がある場合もあることを明記している。

つまり、場合によってはフォローアップもしてくださいと、フォローアップをした数字で比べるという方法も取り入れてもらいたいということでございます。

(5)は、従来の(4)が繰り下がっております。

(6)他の監査人の監査結果の利用も追加をしております。これも、基本的には今と枠組みは同じなわけでございますが、内藤委員を初めとしてご指摘がございましたのは、特に第二パラグラフのところですが、監査人が大半の監査をほかの監査人に実質的にやらせてしまうということがあった場合には弊害が生じるのではないか。そういう場合には、例えば、監査報告書で何らかを書くとか対応がいるかどうかという問題点がございました。そういう検討もこの審議会でしていただいたわけでございますので、その枠組みが変わらないということであっても、そのことについて説明を置くべきではないか。我が国では、監査人の責任というのは分散されません。これは加藤委員からもご意見があったかと思うんですが、そういう前提では、やはり主たる監査人というか、本来の監査人が全部負うという枠組みの中で他の監査人の監査結果を利用するという枠組みは変わらないということでございます。ただ、そういう大半の監査をほかの人にやらせてしまうというご指摘もありましたので、なお書きをつけ加えさせていただいておりまして、「なお、監査範囲の大半について他の監査人の監査結果を利用した場合には、実質的には他の監査人が監査を行うという結果となることから、主たる監査人は自らが主たる監査人として監査を実施することについて慎重に判断すべきである」ということで、本来的には多くの部分を他の監査人によるというのはいけないことであるというのを含意としております。

13ページの9 監査意見及び監査報告書でございますが、これは14ページに下線を付したところでございます。これは加藤委員からもご指摘があったかと思うんですが、品質管理も含めて審査について非常に監査基準で充実をさせたにもかかわらず、前文の方での言及が十分でないのではないかということでございましたので、ここに入れさせていただいております。

それから、いわゆる品質管理の意味での審査機能を持つということと、具体的に意見を出す前に意見審査をすると、この2つのことが今度の監査基準ではそれぞれ分けて入っておりますので、その関係もここで書いてございます。

読み上げますと、「また、改訂前の「監査実施準則」では「適当な審査機能を備えなければならない」との表現をしていた点について、監査の質の管理の一環として設けられる審査機能を踏まえ、報告基準では意見の表明に先立ち審査を受けなければならないことを明確にし」という文章を挿入しております。

この「質の管理の一環として設けられる審査機能」というのは、一般基準の6で言っております質の管理のための組織といいましょうか、その運用をしなければならないという部分としての審査機能ということでございます。それが当然あると、一般基準の上で指示によって整備されているという上で個々の監査における意見の審査をしてくださいと、このような関係で整理しております。

それから適正性の判断でございます。ここは特にマル2マル3、実質判断を入れたということでございまして、その説明の部分でございますが、従来はマル4があったんですが、これをマル3につなげております。それで、最後の「なお」というところが少し度合いが違うので改行をしたということでございます。基本的には内容は変わっておりません。

15ページの(2)監査報告書の記載でございます。ここは、先ほどご説明しました監査基準の方の意見差控の余地を残したことについて、これは極めて例外的であるということを、やはり監査基準の上だけでは読み取れないので前文の方できちっとその解釈を示した方がいいということで、ここに考え方を入れております。

「さらに、訴訟や裁定に代表されるような将来の帰結が予測し得ない事象や状況が生じ、しかも財務諸表に与える当該事象や状況の影響が複合的で多岐にわたる場合(それらが継続企業の前提にも関わるようなときもある)に、入手した監査証拠の範囲では意見の表明ができないとの判断を監査人が下すこともあり得ることを明記したが、基本的には、そのような判断は異例であることが理解されねばならない」ということで、簡単に意見表明を放棄することがあってはならないということは、ここではっきりさせております。

これを入れました関係で、継続企業の前提に関わる判断は、マル3に移しておりまして、以下マル4マル5と順次番号が繰り下がっております。

16ページの四 中間監査基準についてでございます。

ここは、事前送付したものでは、1の最初の段落のところだけを入れていたんですが、その後に文章をつなげております。これは起草委員会のメンバーの中でも、今後、中間監査基準をどのように改訂するのかということについて、どこまで現時点で記載すべきか。最初の4行だけですと、余りにも改訂しますというだけですので、全く方向性が示されないので、中間監査基準というものの位置付けといいましょうか、現在の枠組みについて少し説明を入れて、その枠組みの中で考えている。

この趣旨は、基本的には現在の中間監査基準、これは証券取引法独自の制度でございますが、この考え方を基本的には踏襲する。そういう中で、2の「なお」ということで、では、レビューはどうなんだというときに、レビューは今後、財務諸表の開示制度全体の見直しがある場合には、そういうものと併せて検討が必要になることもあるということで、現段階で中間監査を全くレビューということにすると、この監査基準の対象外にするという考え方は採らないということでございます。

一応読み上げさせていただきます。

現行の「中間監査基準」においては、事業年度の途中において当該事業年度に係る財務諸表の監査(以下「年度監査」という。)と同等の監査手続を求めることは、監査を受ける企業の負担を著しく重くすると考えられることから、中間監査では年度監査よりも監査手続を限定し、保証の水準を低くした意見を表明することを認めている。しかしながら、中間監査は年度監査の一環として年間の監査計画の中で策定され実施されることから、保証の水準を低くした意見を表明するとしても、単独の業務契約を前提としたレビュー業務よりは監査人が得る心証の程度は高いと考えられ、レビュー業務と同様のものではない。中間監査基準の改訂を行うに当たっては、基本的にこのような基本的な考え方に基づき検討することが適当である。

現行の基本的な枠組みを踏まえながら、今後この監査基準の改訂が固まるのを受けてご検討いただければと考えております。

最後の五 実施時期等でございますが、ここはまだ具体的な年は入っておりませんので、またご検討いただければと思います。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、本日は、お配りいたしました資料の全体にわたりまして、いずれの箇所からでも結構でございますので、全体にわたりましてご意見をいただきたいと思います。

どうぞ、忌憚なくご発言くださいますようお願いいたします。いかがでございましょうか。

○内藤委員

もう大詰めになってきまして、非常に文章もこなれてきて、大分わかりやすい基準になってきたと思うんです。

その中で、今日ご説明があった前回からの改訂等について若干確認したいという観点からご質問をさせていただきます。

前文の4ページの上から3行目に、準則を廃止した観点の説明がございまして、「監査基準とこれを具体化した日本公認会計士協会の実務指針により、我が国の監査の規範の体系とすることが適切と判断した。なお、改訂基準の解釈にあたっては、この前文に示された趣旨を含めて理解することが必要である」という基準の位置付け、性格付けがなされているわけですね。

さらに、今の前文の17ページの2で、「監査基準は、すでに述べたとおり、日本公認会計士協会の実務指針と一体となって一般の公正妥当と認められる監査の基準を形成するものである。したがって、改訂基準を実務に適用するに当たっては、監査人に対してより具体的な指示が明確にされることが必要であり」という、非常に大事な認識が示されていると思うんです。そうしますと、非常にわかりやすく、かつ重要な点の改訂も入って、従来にはなかったような、割と具体的なところまで縛るような規定も多々入ったと思います。

そうすると、この基準から読み取れる解釈にぶれがあってはいけないのではないかという観点から、大分修正されているんですが、この前文の14ページ、(1)適正性の判断のところで、マル2マル3の部分で実質的な判断を要請するという箇所のご説明がございました。これは前回、このことについて、いわゆる会計基準とか法律の規定から離脱する云々はここでは求めていないというご説明があって、それについて私なりの意見をまとめてきたいということで、勝手に宿題だと思っていたわけですが、いろいろ調べてみました。会計基準から離脱して、かつそれが財務諸表が全体として適正であるという意味合いは日本ではまだ非常に時期尚早であるということを言わざるを得ないようでございます。そうしますと、ここでマル3の方で規定している内容について、その旨のことを書いておかなくていいのかなということを一つ意見として言わせていただきたいんです。

マル3では、会計処理や財務諸表の表示に関する法令又は明文化された会計基準やその解釈に関わる指針等に基づいて判断するが、その中で、会計事象や取引について適用すべき会計基準等が明確でない場合には自己の判断で評価しなさい。また、会計基準等において詳細な定めのない場合も、会計基準等の趣旨を踏まえ、自己の判断で評価することになると、これは正しいと思うんですが、会計基準等が明確でない、詳細な定めのない場合、これに加えて、会計基準を適用すると、かえって利害関係者の判断を誤らせるような表示になっている場合であっても、会計基準の枠内から離脱することまでを求めているものではない旨をここに書いておいた方がいいんではないでしょうか。そうしないと、実務上、そういう場合に会計基準の規定に準拠する方がかえって判断、財務諸表から読み取れる情報内容に誤った実態が反映されていると、そんなふうに公認会計士が考えたときに困ってしまうんではないか。そこまではこの基準では求めていないですということを明文化した方がいいんではないでしょうか。それがまずこの実質的判断の内容の確認の1点目です。

それから2つ目、マル2の3行目に「それが継続的に適用されているかどうかのみならず、その会計方針の選択や適用の方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかを判断し」と書いてございますが、これはいわゆる会計方針の変更を安易には認めないということなんですけれども、でも、もともと実質的な判断の趣旨というのは、その企業が採用している会計方針がその状況状況に応じて適切になっているかどうかということを見た上で、状況が変わっていなければ継続的に適用しなければならないのは当然だと思うんです。ところが、状況が変わっていった場合には、より適切な方法に変えるのは当然の変更だと思いますので、ここに「継続的に適用されているかどうかのみならず」、そしてその後に「取引の実態を適切に反映するものであるかどうかを判断し」となったときに、まず何か最初に、従来とっていた会計方針を形式的に継続しているかどうか、それを見てしまったら終わりだというふうにとられないか。この文章だけでは、その辺の趣旨が表に出てきていないんではないか、それが2つ目の質問です。

それから、今の実質的な判断以外に追記情報の問題がございまして、次の15ページのマル4に「監査人による情報の追記について示したこと」と。これは、「監査人の責任は自らの意見を通しての保証の枠組みのなかで果たされるべきものであり、その枠組みから外れる事項は監査人の意見とは明確に区別することが必要である」と書いてありますので、この意味では明確だと思うんです。ただ、今回、二重責任の原則について監査報告書に述べるという改訂になりました。そうしますと、その二重責任の原則の意味合いと、ここの情報を追記するということの意味合いとの関連について、従来から二重責任の原則なんだから、監査人は何か新たな情報を書くべきではないという意見も多々あるわけですね。その辺のかかわりについて、どういうふうに理解をしたらいいのかなということについて、もう少し何か説明がいるかもしれないなということなんです。

それから、基準の方の一番最後、24ページの七 追記情報の(5)「監査した財務諸表を含む開示書類における当該財務諸表の表示とその他の記載内容との重要な相違」がある場合には追記しなさいということなんですが、前回、加藤委員の方から、これは財務諸表の単なる数字の相違がないかどうかだけを見るというふうに加藤委員は理解されているということに対して、山浦委員の方から、それだけにとどまらないで、その開示書類において、その財務諸表で表示されている内容を踏まえて経営者が何か異なったことを言っている。重要な異なる趣旨のことを言っている場合にもそれが当てはまりますというご返答があって、要検討だという事項になったと思うんです。そうしますと、そのあたりについて、この(5)が意味しているところについて、どこまでのことを言っているかという責任限定というか範囲限定、そういった説明がいるんではないでしょうか。

それからゴーイング・コンサーンのことに関して、これは前々回にも申し上げたんですが、ゴーイング・コンサーンの監査報告書への記載に関して、経営者が合理的な経営計画を出していて、それが開示されていれば無限定適正意見につながるということで、その合理的な経営計画を示して、それが実行可能かどうかの判断はどうなるんですかという質問のときに、この合理的な経営計画そのものにも含まれているということの説明があって、なるほど、そういう合理性の中に入るんだなと思ったんですが、しかし、改めて読み直したときに、合理的な経営計画というのは誰でも出せて、その計画が実行可能かどうかというところまで会計士は踏み込まないといけないという趣旨のことを前文で、その趣旨として書いていただく方がより明確になるのではないかと考えます。

それから、監査実施の観点について、19ページの第三 実施基準、一 基本原則の1「監査人は、監査リスクを合理的に低い水準に抑えるために、固有リスクと統制リスクを暫定的に評価して発見リスクの水準を決定し、監査上の重要性を勘案した上で監査計画を策定し、これに基づき監査を実施しなければならない」。

先ほど読み上げた中に、監査リスクというのは「重要な虚偽表示」というふうに重要性が入っているわけですね。これに関して、前文の方では、8ページの4 監査上の重要性についての(1)に説明がございまして、「監査人は、監査計画の策定に当たり、財務諸表に含まれる重要な虚偽の表示を看過しないようにするために、容認可能な重要性の基準値を決定し、これをもとに達成すべき監査リスクの水準も勘案しながら、特定の勘定や取引について実施すべき監査手続、実施の時期及び範囲を決定し、監査を実施する」という説明になっているわけです。

今の前文の(1)の方が監査論的にも素直で、非常にわかりやすい規定になっていると思うんです。といいますのは、まず、重要な虚偽表示を見逃してしまう可能性を先に考えて、そこで重要性を考えているわけですね。その上で、そういうような重要な虚偽表示を見逃してしまう可能性としてそのリスクを考えていくわけですから、まず、重要性の水準というのを考えた後に、監査リスクの水準を考えて計画を立てていくのが素直だと思うんです。そうすると、資料2、3ページの実施基準の基本原則の方では、先にリスクの水準を決定し、監査上の重要性を勘案した上でというふうに来ますと、何もこれは順番を変えたことではないということかもしれませんが、この前文の規定の方が基本原則としてよりわかりやすい、誤解が生じない規定になっているんではないでしょうかという、この点です。これはどのようにお考えかということを伺いたいと思います。

いろいろ申し上げましたが、今回、監査基準の改訂ということで議論に加わってきまして、ほぼ最後になりましたので、特に一つだけ申し上げたいんですが、先ほどの実質的な判断に関して、会計基準とか法律上の規定からの離脱規定がないことによって、監査人の実質的な判断の意味が非常に狭められているんではないか。では、そうするときに、会計基準とは一体何か、それが日本はどうも不明確で、どこまでが一般に認められた会計基準で、そうではないのかということがわからないと、監査を実施する上でも実質的な判断が本当の意味で社会的に意味のあるものとなるためには、その明確化が必要になってくるんではないか。あるいはゴーイング・コンサーンの問題についても、その開示内容について、この監査基準の方でもいろいろ合理的な計画が示されて、その内容があるかどうかということまで踏み込んでいるわけですが、それを踏まえてディスクロージャーの基準というものをより整備していかないと、この監査基準の改訂だけでもって我が国の公認会計士の監査がより意味のあるものにはなり難いのではないかという危惧を持ちましたので、是非そういう観点についても審議会等の場で至急にそういうフレームワークなり、足りない開示基準についての議論が深まることを期待したいと思います。

大変長くなって申しわけありません。以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいま貴重なご指摘をいただきまして、すぐここでご審議していただき、またお答えすることができるのもございますけれども、6カ所ぐらい主要なところがあったかと思いますが、最後におまとめいただいた、要するに離脱の問題でございますが、これは基本的な大きなご指摘だと思います。そのことは私ども起草委員会のところでも大変長時間にわたって議論をした結果として、今ご指摘いただいたような文案ということになったわけでございまして、十分認識しておりますし、またここに会長もいらっしゃいますので、そういった全体の大きな枠組みということでまた考えさせていただくということを先に申し上げまして、まず最初に、離脱の問題でございますが、内藤委員のご趣旨の、一番最後の誤った実態をというところをもう一回ご指摘いただけますか。

○内藤委員

最初の方で改訂基準が明確ではない場合にどうするか。そして、詳細な定めがない場合はどうするか、これは書いてあるわけです。

会計基準はあるわけですね。しかし、その会計基準に従って処理する方が、かえってその実態を表わさないようなケース。では、具体的に何だというふうに言われたら、例えば、デリバティブの会計について基準がなかった時代がありました。そういう基準がなかった時代に、デリバティブの取引内容に関して財務諸表に反映されてなかったわけですね。それは会計基準がなかったから何もしなかったということになるかもしれません。しかし、デリバティブ取引に代表されるような、例えば、有価証券の評価基準については、そこに明確な基準があって、貸借対照表能力のないものを挙げてはいけないという企業会計原則の規定もあるわけですから、それに従っていると実態があらわれてこない。しかし、そういうデリバティブ取引のような多数のリスクを背負った上で何か投資をしているようなケースについて、そういう企業会計原則の規定を離れて、このリスクについてはこういうふうにやりますと、開示しますというような取り扱い方につながるようなことまで今回の実質的判断は要請はしていないわけですよね。してないんだったら、そこまでは言っていませんという趣旨を明確にした方がいいんではないでしょうか。そうしないと、そういうときにはどうするんですかということが出てくるんではないでしょうかという質問だったんです。

○脇田部会長

ありがとうございました。

いわゆる先ほどの監査基準の位置付けのところからご判断いただいて、解釈にぶれが生じてはならないということで今ご指摘をいただきました。この点は議論の中でも出たかと思いますので、山浦委員、よろしゅうございましょうか。

○山浦委員

ご指摘のところは我々十分に問題点を理解しております。

今、部会長の方からご紹介があったように、起草委員会の会議の席でも随分とこの問題について議論いたしました。ただ、現在の日本の会計に関わる法的な枠組み、それから、それの解釈論的な意味も含めまして、例えば法律、それから明確に基準化された会計基準等から離脱した方が企業の取引の実態、経営の実態といったものをよく示すというケースもあるのではないかと、確かにそういう場合があり得ます。

ちなみに、アメリカの監査基準あるいは国際監査基準、それから、そのほかの国々の監査基準でも離脱容認規定というのを認めております。離脱するときには、これこれの会計基準に準拠しない方が財務諸表は適正な表示になるということをあえて説明をつけた上で容認するということなんです。これは本当に悩ましい問題ですが、このことはなかなか我が国の制度では容認しづらいという解釈を起草委員会の会議の方でも最終的にはそういう判断になりました。そうなんですが、できる限り実施的な判断に近づけるということで、こういった前文の条件づけをしていったわけです。ただ、内藤委員がご指摘のような形の明確な表現は制度的な枠もあって、この文章だけは入れることはできないという判断になりました。

この問題、本当は国際的な監査基準の調和化ということを考えますと、例外的かもわからないけれども、そういう事例が起こり得るという可能性はいつもあるわけで、そういった意味では、入れた方がいいという意味もわかるんです。ただ、現在の我が国の制度枠の中では、ご指摘のような表現を監査基準の本文あるいは前文の中では入れることはできないのではないか、それが結論です。

○脇田部会長

ありがとうございました。

今、山浦委員に代表してお話しいただきましたが、私どもとしては、時期尚早であり、そのことをここに入れることはできなかったということでございますが、この点は非常に大きな問題ですので、若杉会長からもご発言をいただきたいと思います。

○若杉会長

この離脱容認規定というのは、今までの日本の会計基準の中にそういう規定はなかったんですが、国際的な基準とか外国の基準には見られるところで、非常に重要なものだと思います。

ただいまもそういうことでいろいろ議論されているわけですが、個々の基準ごとに、あるいは監査基準にこの規定を入れるというのは必ずも妥当ではないような感じがいたしまして、むしろ、概念フレームワークをつくって、そういうところにこの規定を設けておくのが妥当ではないかと思います。ただ、現在の日本では、概念フレームワークがありませんので、例えば、仮に企業会計原則をそういうものにつくり直す場合にそういうところに入れたらいいんではないかと私は考えています。

以上です。

○林委員

この会議を何度か欠席しておりまして、若干間違ったことを言うかもしれませんが、今の離脱容認規定について、やはり非常にわかりやすいのは内藤委員がおっしゃることではないかと思います。一番心配しておりますのは、国際的な監査基準との調和において、どうも極めて例外的、ここの部分については、ある意味ではグレーゾーンで処理してしまうというような響きも山浦委員のお話でとれたんですが、そういたしますと、結局はレジェンド問題というのは解消できないということを示唆することになりはしないかということで私は非常に心配します。

以上です。

○内藤委員

私は、離脱容認の規定をここに入れてくださいというお願いをしたんではなくて、私も私なりに前回からいろいろ調べまして、単に離脱を認めるということになると、これは粉飾に使われる可能性は非常に大きいわけですね、粉飾決算につながりますので。では、その離脱をしていいケースについていろいろ事例を集めるなり、研究する機関、そういうお墨付きを与えるようなものが公認会計士協会の中にあるとか、あるいは行政側にあるとか、何かそういうシステムがなければ離脱容認の規定は簡単にはいじれないというのが我が国の現状だと思っているんです。ですから、入れてくださいというお願いをしたんではなくて、ここでは会計基準からの離脱までを求めているものではないという注意書きを入れていただけないでしょうかという、あるいは現状を勘案するということなんですが。

○脇田部会長

ご趣旨は伺ったとおりで、私も離脱は時期尚早だという先生のご発言を受けて、今この件を進めていますので。

今、林委員からは積極的な対応ということ、あるいは若杉会長からは、大きな概念フレームワークの観点から、どちらかというと、これに対応する現状では、やはりまだこの規定を公にできないということで、その離脱は現在まだ時期尚早であるということを表に出すことについても、今ご意見を伺った上で、この点については考えさせていただくことになると思いますが、まだご意見ございましたらどうぞ、伺いたいと思います。

○林委員

会長が概念フレームワークの中で知恵を出して表現してみたいとおっしゃったんですが、そうであるならば、やはりそこで知恵を出して、何らかの表現をする必要がある、あるいは説明責任的にする必要があると思います。大変難しい作業だと思いますが、そこを乗り越えないと、いつまでたっても日本の会計監査は問題を含んでいるという疑わしい部分を残してしまう、あるいはそういったものを排除できなくなってしまう。米国では、現行の会計基準の枠内では経済活動の実態を正しく反映しない場合には、会計基準から離脱することを認めていると聞きます。日本の会計原則で「離脱容認規定」を導入するのは難しいのでしょうが、国際的な調和を考えるならば、少なくとも今後の検討課題とするよう明記しておく必要があると思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それから、次にご指摘いただいた継続性の変更の問題ですが、これについては状況の変化というのは大きな継続性の変更の判断の上での一つの動きでございまして、会計基準をどう解釈していくかという中で既に議論されているのではないかと思いますが、この前文の中での表現の仕方として、この点まだ不十分とお考えでしょうか。

○内藤委員

不十分といいますか、この会計方針が継続的に適用されているかどうかということを先に言うと、実質的な判断というのは重要視されるべきで、その結果として継続的に適用するのは別に構わないでしょうし、だめだったらだめだということになると思うんですが、このマル2の部分で「経営者が採用した会計方針が会計基準のいずれかに準拠し」、これは従来あった会計基準の準拠性ですよね。そして「継続的に適用されているか」、これは継続性の判断。一番最後に「財務諸表における表示が適切であるかどうか」と、昔あった3つの個別意見がここに述べられていて、その中に「実態を適切に反映するものであるかどうか」という言葉が入ったわけですね。そうすると、何か継続的に適用されているというのは、やはり最初に守るべきというイメージが強く出過ぎているんではないでしょうか。そういう趣旨で、ここはそういった従来言われていたことも判断するんだけれども、その根底には会計事象や取引の実態を適切に反映するのであるかどうかについて判断するというのをもう少し強調した形で書いた方がいいんではないか。あるいはもし、私みたいな誤解をする人がいたらいけないので、もう少しかみ砕いていただいた方がいいんではないかということなんです。

○脇田部会長

わかりました。修文上の工夫ということをこの点では考えさせていただきます。

この点についてはそういうことでご了承いただくことにいたしまして、第3番目は、15ページのところだったと思いますが、追記と意見とは明確に区別して情報を追記するということを決めてまいりましたが、この点の二重責任の原則を監査報告書に記載するという方向をとっておりますが、この点については、私どもは非常に二重責任の原則を意識しつつ、意見との区別を強調することをしてまいりましたが、この点についても山浦委員から補足していただけるとありがたいと思います。

○山浦委員

今回、特に報告基準のところで苦慮したところについては、いかに二重責任の原則のもとで監査人が意見に対して責任を負うという、その仕組みをいかに純粋化させるということであったわけです。

本来でありますと、適正・不適正あるいは意見を表明しない。場合によっては、間に限定がありますが、そういう幾つかの意見表明の枠組みの中で報告に関する監査人の責任が仕分けできれば、それは一番いいわけです。ところが、やはりどうしてもその枠内で処理できないもの、あるいは処理すべきではないと考えられるものがありまして、海外の監査基準等でも強調区分とか説明区分という形で補足的に監査人が情報を提供するという仕組みをとっております。そういった意味では、非常に二重責任の原則と情報の追記というところが、いわばオーバーラップするところが部分的にあります。例えば、強調をしたい、あるいは説明をしたいということ自体が全く監査人の責任と意見に関する表明責任と関係がないかといいますと、決してそういうことはありませんで、強調するかどうかということも監査人の判断の一つ、説明を加えるかどうかというのも監査人の責任の判断の一つと言えば言えないこともないし、そういった意味では、二重責任の原則が明確に区分けされていないんではないかということにもなります。ただ、やはりそういうことがわかっていながらも、この監査人が適正意見あるいは不適正意見あるいは意見を表明しないという行動をとったときに、さらに、この点については利害関係者の注意を喚起する、あるいは自己の責任についてもう少し情報を追加して明確にするという余地が入れざるを得ない、あるいはむしろ入れた方がいいという判断です。

内藤委員がおっしゃるところは非常によくわかるんですが、わかった上で、この点をある意味では国際的な監査基準の動向も踏まえた上であわせたところもありますが、いずれにしても、この点については、ご指摘のところはよくわかった上でこういった仕組みといたしました。

○脇田部会長

ありがとうございました。

今の情報の追記につきましては、この点も繰り返し議論がなされ、この前文の中でも慎重に配慮したつもりでございますが、確かに、かつての特記事項の記載の仕方、その前にさかのぼれば補足的説明事項までさかのぼりますが、二重責任の原則との関わりでの議論は尽きないところですが、監査人の意見というものをより有意義なものにするためにも、敢えてこういった記載が必要ではないかという観点から、今、山浦委員にも述べていただきましたが、こういう記載をいたしました。

そういう方向でございますが、この点について、二重責任の原則ということの関わりでご発言ございますでしょうか。

○内藤委員

説明はよくわかっているつもりなんですが、その中で、今の15ページのマル4の上から4行目、「監査人が財務諸表の利用者の判断を誤らせないようにするために強調することが適当と判断した事項」とあるんです。そうすると、いわゆる二重責任の原則というのは、財務諸表を通じて情報を発信するのは経営者であって、その発信された情報に対して監査人が意見を述べる。そういう責任を分担するというか、きっちり責任区分をしているから、監査人が独自の判断に基づいて、何か新たな情報を出したらいけないと解釈されているのが二重責任の原則だと思うんです。

今の山浦委員のご説明にもあったんですが、監査人の意見表明に関して表明した意見の内容について利用者の判断を誤らせないようにするために強調することが適当なものを書くんだと私は理解していたものですから、経営者にかわって何か情報を出しているんではなくて、自己が表明した、監査人が表明した意見を正しく理解してもらうためには、こういうことを強調しておかないといけない、だから書くんですよという趣旨をもうちょっと書いていただくと、二重責任の原則というのは問題にならないんではないかと考えるんですが、いかがでしょうか。

○脇田部会長

今、私もその趣旨を申し上げたところなんですが、これは監査論の上ですといろいろな議論が出てくると思いますけれども、今、内藤委員がおまとめいただいたような意味での情報の追記という性格を持っていると私も思っています。ただ、この点について山浦委員、ご発言がございましたら、どうぞ。

○山浦委員

おっしゃる意味はよくわかりますし、まさにそのつもりなんですけれども。

○脇田部会長

「監査人からの情報として追記するものとした」というところに、そういう思いも含めたつもりではおりますけれども。

○山浦委員

ただ、これはもちろん草案として公表する前に、ご指摘のところはすべてもう一度確認いたします。

○脇田部会長

ということで修文いたしますので、その上で再検討させていただきたいと思います。

同じく、これとの絡みで、追記情報として挙げられております「監査した財務諸表を含む開示書類における当該財務諸表の表示とその他の記載内容との重要な相違」につきましても、これは内藤委員ご指摘のように理解、そして、前に加藤委員からもご指摘いただいたところでございますので、この点については、この前文の中で記載をするかどうか検討させていただき、補正をさせていただきたいと思っております。

この点につきましては、ご発言ございますでしょうか。特に、この情報の追記の今の点につきましては。

それでは、次に進ませていただきまして、より重要な問題でございますが、内藤委員からご指摘いただいた前文の11ページ、経営者の提示した計画自体の合理性と実施上における合理性の判断まで踏み込むかどうかという問題についてのご質問だったと思いますが、内藤委員、そういうことでよろしゅうございますか。もし、補足していただければ。

○内藤委員

11ページではなくて、資料2の8ページの六 継続企業の前提に関しての監査報告書での記載の内容の判断基準が明確になっているわけですが、「継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在している場合において、経営者がその疑義を解消するに足る合理的な経営計画等を提示し、かつ、それらの事象や状況及び経営者の経営計画等が財務諸表に適切に表示されていると判断した場合は無限定適正意見を表明し」というこの部分ですが、合理的な経営計画等を提示して、それが財務諸表に適切に表示されていれば無限定適正意見であるというつながりになっているわけです。だから、経営計画が実際に実行可能なものでなければ意味がないわけですね。監査人は、実質的な判断は、やはりこの局面でもするわけですから、示された経営計画が本当に実行可能性が高いものかどうか、本当にそういう計画どおりいくかどうかも踏まえておかないと、無限定適正意見にはつながらないと私は考えているわけです。そうすると、それを「合理的な経営計画等を提示し」という中に、それはそういう判断も含まれているというお答えが前々回にあったかと思うんです。しかし、そこまで読み取れるんでしょうか。合理的な経営計画を経営者は出すことはできると思いますが、それが実行可能かどうかというところまで監査人はちゃんとチェックしているんですよという趣旨を出さないと意味がないんではないでしょうか。そこまでこれが基準上無理であれば、この合理的な経営計画等は、経営計画の合理性には実行可能性も含まれるという趣旨のことを明確にしていただいた方がいいんではないでしょうか。そういう趣旨だったんですが。

○脇田部会長

今のご趣旨は、以前お答えしたことと今も変わっておりません。ただ、修文の上で、今の点まで踏み込んで書くかどうかについては検討しなければなりませんが、山浦委員からもう一度ご発言いただければ。

○山浦委員

合理的な経営計画という表現の中には、実行可能性は当然に含まれる。また実行可能でなければ合理的でないという理解をしておりまして、あえてこの点が意味がとりにくいということでありますと、この監査基準の本文の方でこの問題をさらに細かく定義し直すというのも難しいかなという気もしますので、前文の方で実行可能性についても含むという意味の補足の説明を加えることができるかは検討しようと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

○林委員

今、山浦委員がおっしゃいました合理的な経営計画には当然実行可能性は含まれるということなんでしょうから、起草委員会の方が大変苦心された表現だと思うんです。それでも何をもって合理的というのか定義に曖昧さが残り、解釈次第では継続企業の規定自体が骨抜きになる恐れもあります。疑義を解消するに足ると合理的に判断できる経営計画、など表現を明確にしたほうが投資家にも分かりやすいと思います。この点を曖昧に扱ってしまうと市場は弱い部分を意識的に突いてくる心配があります。先端モノ作りで日本の企業の大半は健全なのですが、不健全な、悪い企業もある。的確に対応しないと悪貨が多くの良貨を駆逐しかねない状況も想定されます。このくだりを普通に読めば、会計監査人は、「すばらしい計画を出していただいたので、これは実行可能と思いました」というふうに、もし、当該企業に問題があった場合に言えるんでしょうし、経営者は経営者で、「そういう事態はとても予想できませんでした。私どもが計画を出した段階では、実行可能だと思いました」というふうに双方が責任を逃れて回避する。投資家特に、海外の投資家は、そういう責任回避に映る手段を決してプラスには評価しない。むしろマイナスに評価する。そのすきを突いてくる懸念が非常にあります。ここは十分に知恵を出していく必要があろうかと思います。

○脇田部会長

ただ今の林委員のご指摘の点につきましては、今回、正当な注意に加えて懐疑心を保持して監査を実施するということを指摘しておりますことと、先ほど内藤委員からもご質問あるいはご指摘をいただいたように、実質的な判断というのを以前に増して監査基準の全体として持っております。そういった枠組みも用意しておりますので、今、林委員のご指摘の点は、これは直接的ではないかもしれませんが、大きな枠組みの中ではとらえられていくであろうと思っておりますが、この点、山浦委員からまた補足をお願いいたします。

○山浦委員

大体において部会長がおっしゃるところと同じことなんです。ただ、もう一つだけつけ加えさせていただきますと、当然、ゴーイング・コンサーンに関わる監査人の関与の問題については、公認会計士協会の方で実務指針が出るはずであります。恐らくそういう、さらにここにある表現に踏み込んだ細かい実務上の判断については、その実務指針で取り上げると。我々は、監査基準はできるだけ抽象度を高くするという、どのレベルで抽象度を維持するかというのは非常に苦心をしたところでありますが、実務指針で取り入れることができるものについては、それを実務指針に取り入れるための手がかりを与えるキーワードの段階でとどめるといった方針もとっておりますので、できれば、合理的な経営計画等ということで、その実務指針の段階でこの趣旨を生かしていただければと思っております。

○脇田部会長

この点につきましては、先ほど内藤委員がご質問の一番先に申されましたように、監査の基準の枠組みが示されております。その中で、今、山浦委員が言われましたように、日本公認会計士協会の今後の実務指針というものが位置付けられております。こういったこの審議会でのいろいろなご意見をまた私ども吸収し、かつ今後の実務指針の中でも一つの方向性として考えていただくということにもなるかと思いますので、今のこのようなご議論は非常に大きな意味を持っていると思っております。そういう方向でここの点については内藤委員のご指摘の点を踏まえさせていただきたいと思います。

それでは、最後に内藤委員からご指摘いただいた監査リスクの規定が6番目だったと思いますが、この点につきましては、どちらかといいますと修文についてのご指摘でございますので、今のご趣旨を踏まえて私どもでより適切な表現があり得るのであるならば、その点を考慮して検討させていただくということでよろしゅうございますか。

それでは、時間がだんだん迫ってまいりましたが、大変貴重なご意見をいただいておりますが、どうぞ、その他の点につきましても順次ご発言いただきたいと思います。

○那須委員

今ちょうど議論をされていたところで、継続企業の前提のところで、委員の方からのご意見で実行可能性は当然含むとあるんですが、その実行可能性というのは何を指すのでしょうか。その実現可能性ではないというところを、まずはっきりさせていただきたい。それは、もし実現可能性があることが合理的だということになってしまえば、それは実現すれば当然ゴーイング・コンサーンの前提が崩れないというわけですから、実現可能性があることが合理的だというのであれば、それは我々会計士が継続企業の前提が保たれるという保証をすることに結果としてなってしまうのではないかということですので、そのあたりは多分実質的にというか、内容の審議としてはだんだん回が迫っていますので、ここでもう一度はっきりさせておきたいんですが、逃げ隠れするということではないんです。将来のことについて、何かを約束するということではないということはここでやはりはっきりさせておかなければいけない。

ですので、例えば前文でいいますと、10ページの一番下のパラグラフ「したがって」というところから始まっていますが、まず、ここで「継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象や状況が存在している場合において、経営者からその疑義を解消あるいは緩和させる合理的な経営計画」とありますが、その上のパラグラフの文章でいえば、「当該疑義を解消あるいは緩和させるための」という部分がある。緩和させる合理的な計画、これはその時点で緩和してしまうということなのか、その「ための」が入るのか入らないのかでニュアンスが違ってきますし、今の「合理的な」という表現が実行可能性という表現なんですが、実現可能性なのか、それとも投資家がそれを見て、何だ、こりゃと言わないものであるか、なるほど、努力をしてくださいねと、そのようにしてくださいねと評価できるものであるかといったようところは当然我々も見なければいけない。こんなものを人さまに出してみても笑われておしまいですよというようなものをそっくりそのまま出して、無限定適正ですというのはおかしいんでしょうが、では、この計画が出ました。それなら大丈夫ですね、あなたのところの問題は解決しますねということをここで言っているわけではないというところは、是非この場で皆さんにご確認いただきたいなと思っておりますが、いかがでしょうか。

○脇田部会長

この点について、山浦委員、ご発言いただけますか。

○山浦委員

なかなか難しいですね。実行可能であると、実際に実現する。実行可能であるだけで、監査人がOKと。あと結果は知らないよというわけにもいかないでしょう。かといって、実現可能であるということを保証できるかどうかということまではかなり将来のこと、それから、いろいろ予知できない事象等もありまして判断できないことも多いと思うんです。そういった意味では、どっちかと問い詰められますと、これはやはりケース・バイ・ケースで考えざるを得ない。そして、そのときの判断で監査人の責任の軽重が問われるという仕組みとしか言いようがないような気がします。

あえてここで合理的というのは、その段階で集めた情報、与えた条件のもとで最もリーズナブルな判断という意味でありますので、ここで実行可能性は当然入っているものとして、その上で、それが実現可能であるということを保証するという、そこまでいけますというふうには恐らく言えないんではないかという気がします。

○脇田部会長

大変厳しい点の那須委員からのご指摘なわけですが、この点については、継続企業の前提のところにありますように、やはり「疑義を解消するに足る」という表現、あるいは前文の方でも「疑義を解消あるいは緩和させるための」という表現になっておりますので、今、山浦委員がちょっと苦渋に満ちてご回答いただいたんですが、そういう枠内で考えられるものであって、保証するのではないかということは明確に言えるんだと思います。その辺は非常に問題が苦渋に満ちた歯切れの悪い私からの発言で恐縮ですが、山浦委員のご指摘あるいはご発言のところでお酌み取りいただいてはどうかと思っておりますが、ほかの委員の方でご発言ありませんか。

○葛馬委員

言葉じりみたいな話になりますが、前文の10ページのところの「当該疑義を解消あるいは緩和させるための対応及び経営計画等が合理性を有するか」と、疑義があっても、何か言えば絶対に緩和はされると思うんです。これが「あるいは緩和」でいいのかなというのがちょっと引っかかるんですが。必ず緩和はあり得ると。では、それだけでOKよというのかと。だから、解消だけだとちょっと強過ぎると思うんでするだから、「大幅に緩和する」か何かでないと、緩和だけだと緩過ぎるかなという感じがします。

○脇田部会長

ありがとうございました。

○那須委員

そこは葛馬委員、よく言っていただいたというか、我々からすると、10ページの「したがって」のパラグラフで言っている疑義を解消するのは、多分、会計士が持った疑義を解消すると、監査人が持つ疑義が解消されると。疑義が解消するということは、まずないんではないか。疑義が全くクリアになってしまうということは、実態としてはないんではないか。それは将来に不安を持っているのに、将来の計画が出てきて、そこで疑義が解消されてしまえば、それは大したことではないかったということになってしまうので、ここの緩和というところは非常に大事なところで、この緩和があるからこそいいのかなと思っているんですが、確かにおっしゃるとおりで、少々緩和したからといって、水面から浮上してくるかどうかという、まだ依然として潜行している状況ではクリアにならない。ただ、そこら辺の問題として、まず、原則としてここで水面からする浮上する、しないという前の段階として、その条件の開示が適切であるかというところなので、その緩和の程度についても投資家にご判断いただくために、どれだけきちっとしたものが出せるのか。そのきちっとしたというのは、大幅に緩和しなければ意味がないではないかということもあるとは思うんですが、全く不合理な計画でなければ、先ほどおっしゃられたとおりで、緩和するのは当然だと思いますので、その緩和の程度について判断するのは投資家になってくるのかなという気がしていました。

先ほど実務指針ができるはずだと。多分、実務指針をつくることになるだろうとは思われますが、そのあたりの線の引き方というのは非常に微妙な問題になってくると思いますので、今後も、こういう場で議論していただくときには、是非そのあたりもアドバイスをいただきたいなと思うことと、あとは、開示がまずあるんだということを前提にしてご議論いただければなと思いますので、緩和というところに表現が加わっていただけるんであれば、我々としては非常にありがたい話だなと思っております。

○脇田部会長

ありがとうございました。

この点も、今の前文における「緩和」という用語の非常に重要な点、葛馬委員からもご指摘いただきましたが、この点について、また修文上、ある程度の検討を加えさせていただきたいと思います。そして、今ここでの議論を踏まえて、今後の解釈ということをしていただきたいと思いますし、実務指針を作成していただく場合にも、その点を配慮していただくことになると思います。今のご意見は承っておきます。

では、そろそろ時間が迫っておりますが、もし、ご発言がございましたら、ほかにご指摘いただければと思います。

○加藤委員

それでは、手短に幾つかコメントをしたいんですが、前文の17ページの2、先ほど内藤委員から触れられたところですが、違う観点からのコンサーンがあるんですが、ここで、監査基準は、会計士協会の出す実務指針と一体となって一般に公正妥当と認められる監査の基準を形成するとはっきり書いてあるわけです。

実は、会計士協会の監査報告書のひな型も数年前に変えられまして、従来は、監査基準に従って監査したと言っていたものを、「監査の基準に従って」と直したわけです。ですから、協会の実務指針も監査の基準の重要な一部であるという位置づけになっているんですが、こういう表現が一番最後のところに出てきまして、「すでに述べたとおり」と書いてあるんですが、前の方を見ても、会計士協会の実務指針が監査の基準を形成するということは、私が読んだ限りでは、どこにもはっきり書いてないんです。該当するとすれば、やはり内藤委員が先ほど指摘された4ページの一番上のパラグラフの最後の3行の右の方から、「我が国の監査の規範の体系とすることが適切」と。要するに、非常に弱い表現ということになっておりますので、できたら、この前の方の監査基準というものの基本的なことを述べるこのあたりで先ほどの実務指針と監査基準をあわせて一般に公正妥当と認められる監査の基準であるというようなことをはっきりと書いていただけたらと思います。

○脇田部会長

ただいまご指摘いただいた点は、十分検討いたしますように、また、今ご指摘いただいた点も踏まえて修正をさせていただきたいと思います。

○加藤委員

それから、次の同じ4ページの監査基準の位置付けの最初のパラグラフなんですが、これは何回も議論されているところですが、この監査基準はいろいろな目的とか法規制とか監査の要求にすべて同じように使われるものだということもここに書いてあるわけですが、ただそれだけであって、例えば、内容の読み替えが必要だということがここに書いてないんです。例えば、適正性監査、監査意見が適正かどうかということを意見を述べると言っているだけですが、商法の場合は適法性であるとか、キャッシュフローは、場合によったら要るとか要らないとか、企業の概念が違うとか、その辺の内容については、適宜監査の種類等によって読み替えるべきであるということを一言入れた方がはっきりすると思います。

それから前文の6ページ、(2)不正に起因する虚偽の表示への対応というところです。どうもここを読んでいると、現在の監査基準あるいはそれに対応する会計士協会から出している実務指針との関係がどうもはっきりしないんです。というのは、現在の規定の仕方というのは、重要な虚偽記載の原因として不正があり、誤謬があり、違法行為があるというような位置付けになっているんですが、どうもこれを読むと、まず、タイトルが不正だけしか書いていないということ。それから、この中で不正というのは粉飾だけに限定しているということ。だけど、現在の実務指針ですと、資産の流用等は不正の一部に入っているということです。それから、後ろの方を読みますと、不正等については特段の注意を払うというだけで、どうもこの文章を読むと、違法行為については財務諸表への影響を評価しなさいということで、でも、不正等については財務諸表への影響を評価しなくていいというような表現にも読めるので、この辺が現在の監査基準あるいはそれに対応する実務指針が出している概念と変わるのか変わらないのか。もし変えるということであれば、また実務指針をつくり直せばいいと思うんですが、この辺が私にははっきりしないです。

もう一つ、やはり前文の15ページ、監査報告書の記載の中のマル2監査範囲の制約の最後のところに、「基本的には、そのような判断は異例であることが理解されねばならない」と書いてあるんですが、どうも判断が異例なものが監査基準に出てくるということ自体が何となくどうかなという気がしますし、なぜ、これがこういう判断をするのが異例なのかということなんです。というのは、これは訴訟とか裁定、将来の不確定事項とかによって意見表明をしない、要は、意見の差し控えをするのは異例ですよということも言っているんだと思うんですが、この中には継続企業の前提のことも触れているわけです。これだけのものが判断を下すのが異例だとここで何か制約をつけるということは、監査人に対して一種のブレーキを与えるわけです。

ただ、実際には、現在の日本企業はグローバルな活動をしておりまして、海外で莫大な訴訟を受けるとか、今までだと考えられないようなことがいろいろ起きているわけですから、こういうことは今後は果たして異例かどうかはわからないと思うんです。この辺が私の感じたところです。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。

繰り返しになりますが、最初の監査の基準という言葉につきましては、この前文をつくりますときから監査基準あるいは監査の基準といったように、一応整理して書いたつもりではおりますが、今のご指摘のところはこれからもう一度十分見直しをさせていただきます。

2番目の読み替えの表現が必要ではないかということでございますが、5ページの(3)に監査意見について、異なるものとなるというような表現は一応入っておりますが、全体としての読み替えが必要ではないかというふうに記載すべきかどうか、もう一度検討はさせていただきます。

今の不正のことでございますが、基本的に、特にここで概念規定を変えたことではございません。今のご指摘を受けまして、この点も検討したいと思いますが、この点、恐縮ですが、この不正に起因する虚偽の表示の対応について、友永委員からお願いいたします。

○友永委員

この不正に関する今の不正な財務報告あるいは資産の流用といった概念につきましては、現在ISAの不正及び誤謬の改訂というのがなされまして、これもアメリカのSASと同じような、そういった経営者による不正と従業員による不正、特に、不正な財務報告といったことに力点を置いた基準に変換されておりまして、日本公認会計士協会が作成しております不正及び誤謬第10号の記載内容は、ややそういった面では修正を要するといったことで、ここの文章の記載につきましては、新しい概念を入れていただいて、実務指針の方を整理し直そうといったスタンスでこの改訂を行ってございます。

以上です。

○脇田部会長

山浦委員、いかがですか。

○山浦委員

今、友永委員がおっしゃったように、このFraudについて、それだけ取り上げた基準書が国際監査基準、SASにありまして、我々はそれをかなり読み込んだ上で取り入れたつもりであります。ただ、加藤委員がご指摘の点、理解できないわけではないので、その点についてはもちろんもう一度我々の方で検討いたします。

○脇田部会長

ありがとうございました。

最後に、加藤委員からご指摘がありました15ページの「判断は異例である」というのは異例な表現なのかもしれませんが、基準の方では「慎重に判断しなければならない」という表現になっておりますので、この点は検討させていただきたいと思います。

以上でございます。

ほかにご議論はいかがでございましょうか。

○葛馬委員

本質には関係のない、言葉だけの問題ですが、前文の13ページの(4)の上から4行目、「経営者の見積り方法」と「監査人自身が見積もった算定値」ということで、見積もりについて「方法」と「算定値」という概念を区別されているので、これも完成度を高めるというだけの話ですが、基準の方の4ページの三の3のところも「経営者が行った見積りの方法の評価、その見積りと監査人の行った見積り」というのは、後の見積りは見積もった算定値の意味で使われていると思いますので、合せた方が完成度が高くなるかなと思います。

○脇田部会長

ご指摘ありがとうございました。この点について、見直させていただきます。

それでは、そろそろ時間が迫ってまいりましたので、ご議論いただきました上でひとつご提案させていただきたいんですが、前文の最後に実施時期が空欄となっております。17ページのところで、「改訂基準は、平成○年3月決算に係る財務諸表の監査から実施する」となっておりますが、一応私どもとして、実施時期を入れてみてはいかがかと検討いたしてまいりました。この点につきまして、皆様方から特にご意見を伺うことができますか。いかがでございますか。

もし、ご意見がございませんでしたら、僣越でございますけれども、部会長から提案させていただきますと、「平成15年3月決算に係る財務諸表の監査から実施する」ということで、「平成15年」ということを提案させていただきますがよろしゅうございますか。

(異議なしとの発言あり)

ありがとうございました。

それから、先ほども既に事務局からご説明いただきましたが、前文の四に中間監査基準につきまして若干の追記をいたしております。この順序といたしましては、先ほども紹介させいただきましたが、まず、この監査基準を固めましてから検討に入るということになろうかと思います。具体的には、公開草案に対しましていろいろご意見をいただくことになっておりますが、その状況によりますけれども、秋以降、その審議に入れたらと考えております。現段階では余り議論をしておりませんので、この機会にご意見があれば伺っておきたいと思いますが、いかがでございますか。

山浦委員、ご発言いただけますか。

○山浦委員

現在の中間監査基準については、この部会で当時のメンバーとしては脇田部会長並びに私がいたときに審議して、現在の中間監査基準ができております。そのときの議論も踏まえ、さらに、この中間監査基準について実務的に指摘されているいろいろな問題があります。これらの問題について、例えば、今の中間監査基準が要求している保証水準が非常にわかりづらいとか、あるいは海外の子会社についてはレビューを認めている。それに対して、日本の国内の親会社等については、基本的には通常実施すべき監査手続という、現行の監査基準で使っている概念をもとにして、監査手続から差引計算するような省略規定を設けている。そういう若干の齟齬があります。さらに、レビューというのが、例えば四半期報告書、東証のマザーズとかあるいはナスダック・ジャパンとかで四半期報告書を要求しておりますが、その第一四半期、第三四半期についてレビューを要求している、そういったレビュー業務との関係、いろいろな中間監査基準が新しい時代の中間監査基準として適合するためにはクリアをしなければならない問題があります。そういう難題をクリアした上で、さらに国際的な業務水準とも整合性を持ったものとするというかなり難しい作業になるかと思います。我々としては、順次起草に向けて努力したいと思っております。

以上です。

○脇田部会長

ただいま山浦委員からご発言いただきましたように、起草委員会でも、現行の証取法監査における中間監査という枠の中で今考えておりますが、監査基準の改訂の結果を見まして、さらにそれとの整合性も保ちつつ検討を進めさせていただきたいということでございます。この点についても皆様方のお助けをいただくことになると思います。

それでは、本日のご審議で大体内容が固まったかと思いますので、本日いただきましたご意見につきましては、部会長であります私の責任で修正を適宜させていただきたいと思います。そういう点を踏まえましてご一任をいただきたく、公開草案としてとりまとめさせていただきたいと思います。

ご了承いただけますでしょうか。

(異議なしとの発言あり)

ありがとうございます。

それでは、ただいまご一任いただきましたので、本日の前文及び監査基準につきまして、修文上の適宜考慮を加えまして、なるべく早く公表いたしたいと思っております。それまでに、皆様にもご送付をさせていただきたいと思います。

本日はそろそろ予定された時間となりましたので、この辺で審議を終了いたしたいと思います。

なお、公開草案は8月末までご意見を求めることといたしまして、9月から審議を再開させていただきたいと思います。

今後の予定につきましては、事務局から改めて連絡をさせていただきます。

それでは、本日で一応のご審議の区切りとなります。委員の皆様には毎回ご多忙の中をご出席をいただきご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。お礼を申し上げます。

これにて閉会いたします。

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