企業会計審議会 第2回会計部会議事録

1.日時:平成27年4月15日(水曜日)15時00分~16時35分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○安藤部会長

定刻になりました。これより第2回企業会計審議会会計部会を開催いたします。皆様には、ご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

企業会計審議会議事規則にのっとり、本日の会議の公開についてお諮りいたします。本日の会議を公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤部会長

ご異議ないということで、そのように取り扱います。ありがとうございました。

それでは、本日の議題に入ります。国際会計基準をめぐる最近の状況についてということで、まずIFRS適用レポートの報告でございます。これは、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」においては、IFRS任意適用企業がIFRS移行時の課題をどのように乗り越えたのか、また、移行によるメリットにどのようなものがあったのか等について、実態調査・ヒアリングを行い、IFRSへの移行を検討している企業の参考とするため、IFRS適用レポートを公表するとの施策が盛り込まれていました。

本日、同レポートが公表されましたので、事務局より説明いただきたいと思います。

○油布企業開示課長

それでは、IFRS適用レポートについて、私から20分程度を目安にご説明申し上げたいと思います。お手元の資料1の冊子でございます。

表紙を1枚めくっていただきまして、目次がついております。この冊子は本編と資料編に分かれておりまして、本編は合計16ページになります。その他、各企業の方のご反応などを踏まえて添付しておりますのが資料編の方になります。本日は本編の方に沿ってご説明を申し上げたいと思います。

1ページをご覧いただきたいと思います。調査の経緯・目的というところでございます。これは、部会長からご説明がございましたが、成長戦略の一環としてこのレポートの策定の指示があったものでございまして、レポートは本日公表されております。それから、このレポートにも記載してございますが、このレポートの作成に当たりましては、公益財団法人財務会計基準機構のご協力を仰ぎまして作成させていただいております。誠にありがとうございました。

中身でございますが、まず1ページ目の下でございます。今回、現在までの任意適用の状況について1ページ目から2ページ目にかけまして記載がございます。2ページ目のグラフをご覧いただきますと、これはこれまでも提出させていただいたものと同種のグラフでございますけれども、3月末時点の数字でございますが、合計75社、うち上場企業が73社というふうに伸びてきているということでございます。これを業種別に分類いたしましたのが右側の表でございます。

これは、前回、横の表をお配りしたものを基本的に縦にしたものということでご理解いただきたいと思います。12月にこの横の表をお配りした時点では、任意適用企業が存在しない業種が18業種だったと記憶しておりますが、現在では12業種になっております。2ページのところにございますが、この33業種の内訳等については、医薬品、電気機器といった業種で適用企業が多い。それから、業種の中で時価総額の多い企業が任意適用すると、他にも任意適用する企業が増加する傾向が見られるということが、この表から読み取れるということでございます。

4ページをおめくりいただきたいと思います。このIFRS適用レポートの作成方法について、4ページ目のIII.で記載がございます。対象企業は2月末時点で締めさせていただきまして、その時点で任意適用済みであるか、あるいは任意適用を正式に公表なさっていた企業、合計69社になります。非上場会社が2社含まれますが、この69社に対してまず書面で調査票を送付させていただいております。その調査票を回収させていただいた上で、28社、これは業種のバランスを見ながら時価総額などで抽出いたしましたが、28社につきましては、直接足を運んでヒアリング調査をさせていただいたということでございます。

この対象企業の名前でございますが、22ページ、23ページに書面で調査票をご回答いただきました上場企業63社、非上場企業2社の社名が掲げてございます。この中には既に適用済みであった会社と、まだ適用を表明しただけの会社の双方が含まれます。

それから、書面の調査票でございますが、24ページ、25ページあたりをご覧いただきますと、1.から8.までありますけれども、任意適用を決定した理由、経緯などについてご質問する書面を送らせていただきました。それぞれの回答に当たって、実は回答欄に個社名の公表は構わないでしょうか、あるいは業種だけなら結構でしょうか、あるいは業種も、個社名も、どちらもやめた方がいいでしょうかということをそれぞれの質問ごとにつけておりまして、ご回答に当たっては、各問ごとに該当する希望に印をつけてお返しいただいております。

それでは、中身の方に移らせていただきたいと思います。4ページ目でございます。4ページは、下半分、IV.になりますが、任意適用を決定した理由または移行前に想定していたメリットについて記載がございます。65社から書面で回答をいただいたわけですが、全社からここについてはお答えをいただいております。表2にマル1からマル6までありまして、この中から複数回答をいただいて、かつ順位づけをして返していただくと、そういう回答書式にさせていただきました。表2にしていますのは、第1順位につけたものをピックアップしたものです。

その分析がそれぞれ5ページからでございます。まず5ページ目の(1)にございますように、経営管理に役立つ、経営管理への寄与という観点が回答の中で一番多かったということです。これを1位につけた会社が65社中29社ということになります。それぞれの事情につきましては、その5ページのところに、まずポツが2つ付けてございます。「海外子会社が多く、共通の「モノサシ」で業績の認識、測定がなされないと公正に評価できない」といったようなお答えであります。

さらに財務会計に関する管理から少し離れまして、例えば5ページの下にはポツが2つありますが、下の方のお答えをご紹介させていただきます。「IFRSの導入は、財務会計の対応だけに限らず経営管理の「モノサシ」を統一するというプロジェクトとしてスタートしたということで、目的は経営管理の強化だった」というお答えもございました。

6ページをおめくりいただきたいと思います。第1順位にマークしていただきましたのが、その次に多かったのは、比較可能性の向上というのが15社、それから海外投資家への説明の容易さというのが6社。65社中それぞれ15社と6社ございまして、ここは一緒に記載しております。これにつきましては、6ページのところにポツを2つ掲げてございますけれども、まず1点目のポツです。「当社の株主は約3割を外国人投資家が占めている」というところでございますが、「一番の競合相手は欧州メーカーになるということで、投資家が当社を同業他社と比較する上でも、比較可能性が高まる。」

このお答えに関しましては、もう一つここを見ていただきますと、「当社自身が自社と競合他社を比較する上でも有益だ」ということもつけ加えられております。

それから、7ページをご覧いただきたいと思います。その次に回答数の多かったものですが、業績の適切な反映ということで、これを1位に持ってきたものが65社中6社でございました。その中身としましては、のれんの非償却、有給休暇引当金の計上、こういったものが具体的な中身としてご回答があったわけであります。

7ページでありますが、移行プロセスについてお尋ねをしておりまして、その取りまとめを書いております。まず7ページの中ほどにありますのは、移行の決定でございますが、経営トップからのトップダウン方式と、経理部を中心に下から上げていくボトムアップ方式と、両方あったということで、これは資料編に記載しておりますが、ほぼ同数であったということです。

トップダウンの例としましては、7ページのちょうど真ん中にあるポツですが、「海外での資金調達を経営陣が決定したので、指示が下りた」というようなことであります。この点につきまして、IFRSの意向に消極的な部署への対応についてというのをお尋ねしておりまして、7ページから8ページにかけてであります。8ページの一番上のポツがついております回答を紹介させていただきます。

「連結経営の深化を経営課題として認識している」ということで、経理部門だけではなく、全社プロジェクトとして位置づけを行ったと。現場の反対意見には丁寧に説明を行い、それから、経営陣の一部を含む関係者にも、これは経営陣の一部から反対があったということだそうですが、その経営陣の一部を含む関係者にも納得をしてもらったというお答えがありました。

その下に書いてあります「以上からわかるとおり」という部分ですが、IFRS移行のプロジェクトについては、もともとのイニシアチブがトップダウンであれ、あるいは下からのボトムアップであれ、全社的な対応が求められるということでございます。

それから、この8ページの残りを使って記載がありますのが、グループ会社の場合のいわゆるグループ会計方針書の策定について記載がございます。ここはお時間の関係で、細かいご紹介は割愛させていただきます。やり方といたしましては、早期の段階からグループ会計方針書の策定に着手するやり方と、むしろ後の方に持ってくるようなやり方と、2通りあるということが、この8ページの下の方に記載がございます。いずれにせよ、グループ会社の場合には、こうしたグループ会計方針書という手法で各社の統一を図っていくというやり方が有効であるという結果になっております。

9ページからは移行コストについて記載がされております。移行コストは、主としてシステム対応がその大部分を占めるということでございますけれども、これについての回答を分析したものを掲げさせていただいております。まず9ページの図2ですけれども、これはIFRSへの移行に要したコストですが、直接要したコストだけについてお答えいただいたものです。その直接要した総コストを5,000万円未満、多いところでは10億円以上というふうに四角で区切って棒グラフにしております。

回答者数をそれぞれ売上高で区別をしておりまして、青いところは売上高1兆円以上の企業、赤の一番濃いところは売上高が1,000億円未満の企業ということでございます。なお、ここは回答者数が48社というふうに全般の65社より少ないわけですけれども、これは移行がまだ完了していないので答えられない会社があったということでございます。

それから、10ページをご覧いただきますと、移行期間についての同じく棒グラフがございます。図3にございますのは、トータルでの移行期間の企業数、これを同じように売上高別で分析しているということでございます。これは、資料編に記載がありますが、平均で3年8カ月という数字が出ております。ただ、この移行期間につきましては、実はIFRSの移行に着手したけれども、いろいろな事情で途中1回、プロジェクトを中断したという会社も少なくないということになっておりまして、その部分が含まれておりますので、実際よりもちょっと長目に出ている可能性はあるかと思います。

その下の10ページの図4にありますのは、システム対応に要した期間ということになります。

11ページをご説明する前に、もう一回9ページのグラフにお戻りいただきたいんですけれども、ここで直接要したトータルコストのグラフがございます。ここから1つ読み取れることは、山が2つあるということです。ちょうど「1億円以上、5億円未満」というところに1つの山がありますが、一番左の「5,000万円未満」というところにももう1つの山があるということでございます。

この5,000万円未満といいますのは、相対的にもちろん売上規模が小さい会社が多いということです。これにつきまして分析しましたのが、11ページの文章になります。11ページの一番上のパラグラフを斜め読みしながらお聞きいただければと思いますが、このトータルでの移行コストにつきましては、まずIFRS導入の目的やメリットとして何に重点を置くかということでも変わってくるということでございます。経営管理の高度化というものに重点を置いた移行のやり方をする場合には、システムの全面改修まで行われるということがございます。そういう場合には、期間やコストも比較的かかるということでございます。

他方で、IFRSの導入のメリットとして、同業他社との比較可能性、あるいは投資家への説明の容易さを挙げた企業が多くございましたけれども、こうした企業の場合には、場合によっては連結仕訳による調整だけで対処する、あるいは連結仕訳の調整中心に対応するということが考えられるということで、このパターンの場合には全体のコストは比較的小さなものになるということでございます。

そうした企業の実際のご回答を、11ページのちょうど真ん中あたりに2つ掲げております。ちょうど11ページ目の真ん中のところにございますが、やはり規模が相対的に小さく、かつ単一事業であるような場合には、こうした対応が可能になることが多いということでございます。

他方で、経営管理の高度化に重点を置いたやり方については、11ページの下のところもポツが2つあります。上の方をご紹介させていただきます。「連結グループ全体をあたかも1つの会社として決算を行うべく、統一されたシステムを導入する。子会社ごとに経理部門を設置せずに、各地域に経理業務を統括する子会社を設立して、上流から下流まで一括して経理をコントロールするシステムにした」という対応をご紹介させていただいております。

12ページをお開きいただきたいと思います。12ページにつきましては、やはりシステムの関係でITの部門の貢献について記載がされております。12ページの2番目のパラグラフに「なお、システム対応上は」というのがございますが、ここではシステム化そのものを自己目的化すべきではないという意見があったということを紹介させていだたいています。

12ページの下の方、会計項目への対応と監査対応・人材育成になります。これはIFRS移行時の主な課題としてどのようなものがありましたかということを、マル1からマル5まで複数回答でお尋ねをしております。お答えいただいたのはここの項目は60社でございましたが、60社中43社が特定の会計基準への対応というのを第1順位でお答えされています。人材の育成及び確保というのは9社ということでございました。

特定の会計基準が、具体的に何かということについては、13ページの上の3行のところに書かせていただいております。有形固定資産の減価償却方法の選択、耐用年数の見積もり、収益認識、社内開発費の資産化、資産の減損、金融商品の公正価値測定、こういったものが挙げられているわけでございます。

この中には、会計方針を決めるまでは大変なのですけれども、一旦決めてしまえば、後はスムーズに対応できるといったものもありますし、一方で、耐用年数とか、そういった見積もりに関するものについては、会計方針を決めた後も引き続き監査法人との議論、対応が必要になる、こういった意見が含まれております。

13ページのところの下半分に掲げておりますのは、今申し上げた点と関連いたしますが、監査法人との調整、対応でございます。例えば13ページのちょうど真ん中ですが、IFRSでは、のれんは減損の兆候がなくても毎年の減損テストが求められるため、減損テストのプロセスを定めるのに大変苦労したと。特に資金生成単位をどのように定めるか、それらについて監査法人との調整作業に時間を要したということでございます。

それから、13ページの下の方には3つほどポツがございますが、一番上をご紹介させていただきます。IFRSへの移行において、「日本で事例が少ないということを理由に、監査法人から形式的な解釈を示されることが多く、対応に苦慮」というふうな回答もございました。ただし、この点につきましては、13ページの下に2行書いておりますが、日本でも導入企業数がこれだけ増えてきておりますので、こうした課題については導入事例の増加に伴い改善しつつあるという意見も寄せられてございます。

それから、14ページにはこの監査法人対応について、作成者であります企業サイドでいろいろと工夫する、あるいは綿密に事前に時間をかけて早目に監査法人とコミュニケーションを図るということで対応できるというコメントも記載されております。

14ページから16ページにかけましては、まとめということで4点記載をさせていただいています。15ページをご覧いただきますと、まず1点目といたしましては、IFRS導入の最大のメリットとして経営管理の高度化を挙げた企業が多かったということを挙げております。

それから、2点目でございます。IFRS導入のコストにつきましては、各社さんの規模は当然ですけれども、導入の目的によっていろいろなアプローチがとれる、多様性があるということであります。

そして、3点目ですけれども、これは前回の会計部会でもご意見が出ていたことを記憶しておりますが、企業側、作成者側と監査法人側の双方において、やはりIFRSに非常に知見を持った会計人材の裾野の拡大が必要であるということを書かせていただいています。

最後になりますが、16ページの4点目ですが、これは「これからIFRSの導入を検討しておられる会社にアドバイスはありませんか」というお尋ねをしたところに対する答えでございます。お答えとして、「他社との連携や他社事例の分析を活用するということは非常に有効で、役に立った」というお答えが寄せられておりますので、16ページでは要約という形ですが、そのことについて記載をさせていただいております。

ちょっと駆け足になりましたけれども、私からのご説明は以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。質疑、意見交換に移りたいと存じます。IFRS適用レポートの公表等も踏まえまして、IFRS任意適用企業の拡大促進に向けた対応等についてご発言をお願いいたします。

釡委員。

○釡委員

ご指名ありがとうございます。財務会計基準機構の理事長の釡でございます。先ほどご紹介がありましたように、私ども、財務会計基準機構も本調査の取りまとめに協力をさせていただきました。また、内容につきましては、個社の立場から見ても大変有益な情報になっているものということで評価をしているところでございます。

また、本レポートの中には、最後にございましたように、人材育成など、何点か重要な課題が含まれておりまして、また、任意適用を行った企業の要望も含まれております。今後は、任意適用を積み上げていくためには、これらの課題や要望を着実に対処していくことが必要だろうと思っております。

その中で人材育成についてでございますけれども、IFRS適用レポートに記載されておりますように、企業における人材を的確に育成していくという課題の他に、IASBの理事会等において、我が国の意見を的確に発信していく人材をどのように育成するかという課題もあるというふうに考えております。これらの課題につきましては、各セクターが協力して対応に当たる必要があると思われ、財務会計基準機構といたしましても積極的に取り組んでいきたいと考えております。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。

他にいかがですか。逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

日立製作所の逆瀬でございます。お願いも含めて申し上げますが、この適用レポートは、IFRS適用企業の実情が的確に捉えられていると評価をいたします。中でも触れられていた監査対応、あるいは人材育成につきまして、作成者サイド、あるいは監査人、双方への言及がございました。それぞれの内容も納得のいく記述かと思います。

作成者の立場から申し上げますと、特に原則主義のIFRSの実務におきまして、迅速かつ円滑な監査プロセスを期待するというのは自然なことで、当然なことであろうと思いますが、例えば有給休暇引当金の取り扱いのように監査法人によってご判断が異なるといったケースもあるわけであります。こういったようなことが生じないということがIFRSの任意適用拡大においては必要不可欠なことなのだろうと考えておりますので、JICPAの先生方、特に有給休暇につきましてはもう何年来の議論ですけれども、負債に上げる額が全く違っているというのが実情であろうと思いますので、この点につきましても、あわせてよろしく対応をお願いしたいと考えております。

以上であります。

○安藤部会長

ありがとうございました。

他にいかがですか。森委員、どうぞ。

○森委員

会計士協会の森でございます。この適用レポート、65社から回答があり、中身も実態をよく表しております。メリット、課題、適用までの期間、そういったところまで実態としてつかめるということになりますので、これからのIFRS適用に当たって非常に参考になるものと考えている次第であります。

その中で、これは適用企業の方から、ある意味では状況聴取をしたということであります。もちろん監査サイドもいろいろな課題を克服しながら対応していると考えている次第でありまして、特にIFRSは原則主義でございますので、これはまず企業がその実態についてしっかり把握をして、それに対する基準の適用を行うということだと思います。課題のところにありましたように、会計基準の適用に当たって非常に苦労されたという企業が多いわけでありますけれども、それは原則主義でありますので、これはある意味ではやむを得ない点かなということであります。

ただ、その中で監査人と十分なコミュニケーションを図るということが、よりよい円滑なIFRSへの適用につながっていくのではないかと考えている次第です。

このレポートは非常に大きな財産になるのかなと思っていまして、今後もぜひ任意適用の積上げも必要ですが、適用レポートの積上げもやっていただければということと、監査人にも意見を聞いてみたらどうかと考えている次第であります。ぜひ今後の対応もよろしくお願いしたいと考えております。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。

他にいかがですか。窪田委員、お願いします。

○窪田委員

楽天証券経済研究所の窪田です。レポートの内容、とても意義が深いものだと思います。当初IFRSの意義というのは、実際に適用したときに、比較可能性が改善して投資家に役立つという面がやや強調され過ぎていたと思います。実際はそれだけではなくて、企業自身の経営管理にも役立つという声が大きかった。これはとても大きな発見であると思います。

1999年まで遡れば、日本は単体決算が中心でした。そこから日本基準の高度化を進める中で連結中心になっていきました。これは単に会計が変わっただけではなくて、経営そのものが変わってきたと言えます。経営の実態が連結重視に変わる中で、IFRSを採用していく意義が認められたことが大きいと思います。これが第1点。

もう一点、申し上げたいことは、IFRSそのものが実務にあわせて高度化してきたということです。そこで、相当な成果が既に上がったのだなということを考えました。日本の会計基準は1999年から国際会計基準に合わせて高度化してきました。同時に、1999年時点では国際的に採用する国が少なかったIFRSも、実際に採用する国が増えるに従って、各国の実務、現場の声にあわせて高度化してきているわけです。公正価値だけでなく、多くの部門で取得原価を認めるようになった結果、実務に合った基準になってきたと思います。

現時点でそうした成果によって、実際に適用した企業の中から、経営管理に役立つという声が出るようになったということはとても意義が深いことだと思います。今日の議題にはないかもしれませんけれども、追加としまして、引き続き日本の会計基準の国際会計基準を見据えた高度化を進めると同時に、JMISを通じて日本が考えるIFRSが変わるべきだと思う点に関しては主張し、そして国内ではIFRSの任意適用企業を増やしていくという方向性に努めるべきだと思います。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。

石原委員、お願いします。

○石原委員

新日鐵住金の石原でございます。このレポートは大変参考になる内容と思っております。私ども、今現在は日本基準ですけれども、IFRSの適用を検討しております。ここに書かれているような内容というのは、まさに実際にIFRSを適用しようとしたときに、きちんと議論をして解決をしていかなければいけないような項目が出ておりまして、例えば経営管理の改善を目的とするのか、あるいは比較可能性重視で行くのかといったところは、先行して適用されている皆様の実際の悩みが実に良く反映されていて、大変わかりやすいレポートだと考えております。

そういった意味で、私どもも含めまして、今後の任意適用の拡大に向けて非常に参考になるものだと思いますし、先ほど森先生からもご意見がありましたけれども、今後もある程度定期的にこのような適用レポートを整理していただきますと、より任意適用の拡大に資するのではないかと思っております。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。

山澤委員、どうぞ。

○山澤委員

日本取引所グループの山澤でございます。今回ご紹介いただきました適用レポートそのものにつきましては、評価は皆様と同じということでございまして、IFRSへの移行に際しての課題への対応ですとかメリットといったものが取りまとめられておりまして、上場企業がIFRSの適用を検討する際に極めて参考になる資料なのではないかなと思っております。

1点、前回、昨年の12月だったと思いますけれども、会計部会の際にIFRS任意適用会社の拡大に向けての取引所の取り組みとして、年度末の決算短信におきまして、会計基準に関する基本的な考え方の記載を要請しているということをご報告いたしました。実は4月に入りまして、本日15日ということで、まだ2週間しかたっていないということではあるのですけれども、ごく簡単にその後の状況をアップデートさせていただければと思います。

現時点では2週間の間に10社に開示していただいておりまして、その10社の内訳を見ますと、IFRS適用済みの上場会社が2社、それから適用予定が4社ということになっております。その4社の中で実は適時開示をしていない。要するにIFRSの採用を適時開示していない先が3社あるということでございます。金融庁さんに今回ご紹介いただきました適用レポートの中でも、例えば2ページなどで75社というベースの数字がございます。

これは適時開示で表明されている会社を拾ったものだと思いますけれども、それとはまたやや違う定義ということかもしれませんが、私どもでも4月末ないし5月の半ばにかけまして、決算短信が出そろった後に、6月にでもその結果を集計したものを公表することを予定しておりますので、きちんと適時開示ベースでの75社というベースの数字と、また適時開示はしていないけれども、決算短信において準備を進めているということを開示している会社というベースの数字を、違う種類の数字をご提示できるのではないかと思っておりますので、追加的なアップデートということでございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。今の点について何かありますか。よろしいですか。

谷口委員、お願いします。

○谷口委員

IFRS導入における制約条件としてコストという問題、これは個々の会社のレベルですと極めて重要な問題だと思うのです。ここに既にレポートに触れられている通り、コストの概念、範囲というのは非常に分かりにくいと思うのです。確かにIFRSの導入と同時に経営管理の高度化とか、もしくは内部統制の高度化とか、それらを混在させて進めていくと確かに非常に大きいコストになることは理解できるのですが、純粋なIFRS導入のためのコストというのはどれくらいかという点は、非常に議論が多いところだと思います。

ただ、今後その導入企業を増やす上で誤った印象をなるべく与えないように、純粋なコストというのは、かなり会社の状況によっても異なるということは強調されるとよろしいのではないかと思います。やはり昨今の厳しい競争環境の中で、1つの重要なアクションを起こす経営判断を行う上で、5億円とか1億円というレベルのコストは非常に大きいインパクトを持つと思いますので、その辺の発信の仕方も大事な部分かと思いました。

○寺田審議官

確かにおっしゃるとおりで、資料編の52ページをご覧いただきたいのですけれども、実際に私ども、私自身もヒアリングに足を運ばせていただきましたが、図12を見ていただきますと、システムの導入に、または更新に要した支出額の回答数というのは、実は右肩を見ていただきますと25社ということで、全回答社数65社の3分の1しかないんです。これは先ほど課長がご説明したように、まだ導入途中なので決まっていないという部分もあるのですけれども、今谷口委員がおっしゃられたとおりで、どの部分までが純粋にIFRSのコストであるかが切り出せないので回答ができないというご回答も多数ございました。

実際こういう回答でございますので、その点は十分留意してご説明をさせていただきたいと思います。

○安藤部会長

ただいまのは寺田審議官でございました。

他にいかがでしょうか。平松委員、どうぞ。

○平松委員

ありがとうございます。関西学院大学の平松です。このレポートについては、私も非常に意義があると思いました。とりわけいい意味で驚きだったのは、適用企業が経営管理に寄与するという答えを出している点です。まだ適用企業数はそんなに多くないわけですが、IFRSを前向きに受けとめて、積極的な意義を感じているのだと思いました。

それから、これまでこのようなレポートがない段階では、IFRS適用の影響はどうなのだろうと、あるいはコストにしてもどうなのだろうということを、強制適用している韓国の事例に学ぶということを学会レベルなどでもよくやってきました。今回こういうレポートが我が国で出たというのは、このまま日本語で置いておくだけではもったいないなと思います。一部は学者の責任で海外に向けて、これを活用して情報発信するということが可能だと思うのですが、これを作成した後、提示して終わりなのか、あるいは金融庁としては、何かこれを活用して働きかけることをお考えなのかなと、そんなことが今ふっと頭をよぎった点でございます。

○安藤部会長

どうですか、何か考えているのですか。どうぞ。

○油布企業開示課長

このレポート、財務会計基準機構のご協力も仰いで英訳版も作成をしておりまして、近々英訳も公表できると思っております。

それから、IFRS財団の方も、この日本のレポートには大変関心を寄せているようで、何度となく問い合わせとか、そういうのも受けております。英語の媒体も作りますし、IFRS財団側にも情報提供をしていきたいと思っております。

○平松委員

ありがとうございます。

○安藤部会長

熊谷委員、お願いします。

○熊谷委員

皆様と一緒なのですけれども、こういうレポートが出てきたことによって、我が国におけるIFRSの浸透度合いの進捗状況というのを正確に把握できるというのは、大変意義深いことだろうと思っています。

次に先ほど来、皆様からご指摘があります経営管理についてということでありますけれども、去る4月2日にIASBのハンス・フーガーホースト議長が来日されて、その朝食会の席上でも、やはり日本企業が経営管理の向上というのをIFRS採用のメリットとして挙げているということは大変心強いことであるというご発言がありました。特に強制適用でなくて任意適用をしている会社がそこに積極的な意義を見出していることは大変うれしく思うという発言があったことを、ご紹介しておきたいなと思います。

次にユーザーの立場から申し上げますと、75社、しかも業界の代表企業がIFRSを採用してきております一方で、日本基準やアメリカ基準を使っている会社が併存状態になっておりますけれども、そういうところとIFRS任意適用企業との比較分析というのが、特にこれから利用者サイドでは課題になってくるのではないかなと思っているところでございます。

それから、最後に、先ほどコストの問題が出ておりましたけれども、私自身は、正直に申しまして、この程度の移行コストなのかなと思った部分がございました。非常に大きなコストがかかっているところというのはやはり大企業が多いということでありますし、最初の論点ともかかわりますけれども、単に投資家への説明ではなくて、経営管理の高度化ということを考えたときに、例えば1兆円の売上高のある企業で10億円程度のシステム投資です。しかも、多分これは数年間に分けられての投資だと思いますので、こういうことを言うと作成企業の方々に怒られるかもしれませんけれども、ユーザーといいますか、投資家という立場に立ってみたときには、そういう経営の高度化に資する重要な投資が、その位のコストでできるというのであれば、やはり投資効率が良いといいますか、いろいろな意味で積極的にIFRSの任意適用というのを前向きに考えられる企業というのが今後出てくるんじゃないかなというふうに期待いたしました。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。

関根委員、どうぞ。

○関根委員

ありがとうございます。IFRS適用レポートにつきましては、私も皆様がおっしゃっているのと同じように、移行した際の課題やその対応、メリットなどが書かれていて非常にすばらしいものと思っています。特に私が驚きましたのは、適用したほとんどの会社から回答を得ていることと、ほとんど直近とも言えるところまでカバーしていただいているということです。作成には非常にご苦労されたと思われ、敬意を表したいと思います。

IFRS適用レポートの中では、先ほどからのご発言にもございましたけれども、監査対応に対する指摘をかなり頂いております。その中でも触れられていますように、特に導入初期というのは、作成者の方もそうかもしれませんが、監査人も不慣れということがあり、なかなか難しい点があったかと思います。けれども、これだけ任意適用の企業数が増加して適用事例が増え、監査人の経験も蓄積されてきていますので、指摘された課題を改善すべく、この蓄積を生かして関係者と協議しながら対応していきたいと思っています。

先ほど、監査人の意見も聞いてみたらという話などもありましたけれども、私もこのIFRS適用レポートについて、まだ公表されたばかりですが、監査人とも少し意見交換をしてみましたので、それらを踏まえ、今後の対応に役立てるため、ご指摘の点を中心に、いくつかの監査人の具体的な対応、考え方についてお話させていただきます。

ご指摘の多かった点の1つ、海外への問い合わせにつきましては、IFRSが日本で任意適用が増えたとしても、一定の非常に難しい問題というのはグローバルへ確認する必要が出てくるのではないかということです。

これは、グローバルに確認して単にその言うとおりにするということではありません。日本の企業だけではなく、いろいろな国がIFRSを適用していますので、他の国にも影響が出てくる可能性があります。IFRSは国際基準ですので、監査人のみならず他の関係者にとってもIFRS財務諸表との比較可能性を考慮する必要があり、そのため、今まであまりなかったような事例があり、重要な解釈が必要なときには、海外の専門家の意見を確認することが重要になってきます。これは日本に限らず全ての国でそういったことが行われています。もちろん、できるだけそういうことは効率的に行っていく必要があり、適用事例が増加することにより改善を図っていくことができるものと思っています。

なお、グローバルのマニュアルというのは、実はそういうことを効率的に行うために作っているものでもあります。それがともするとご指摘のようなことも生じているかというところもありますが、このあたりは、経験を積んで使いこなしていく必要があるのかと思います。

また、監査法人間で意見が違うという指摘がありましたが、やはり判断というのはどうしても違ってくるところがあります。実は、監査法人の間でも、これは日本基準でもそうなのですけれども、不要な差をあまり設ける必要はないということで、いろいろな形でディスカッションなどして検討しています。ただ、どうしても対応が難しいときというのは、例えばIFRICの解釈を確認するといったことも、これはグローバルでも行っていますし、日本でもそういったことを考えていってもいいのではないかというような意見も出ています。

また、原則主義のもと、企業固有の事情に基づく実態判断をしなければいけない、これが形式的ではないかという指摘もありました。実態判断というのは、私が申すまでもなく実は難しいもので、時間もかかるものです。こうした判断も実務を通して経験を深めて行う必要があります。また、IFRSに基づく処理が明確であった場合、企業の固有の事情と必ずしも合わなくても、基準に従わなければいけない場合もありえます。

そういうことも念頭においた対応をしていくのには、どうしても時間がかかり、すぐに全てスムーズにできるようになるということはできないのですけれども、既に改善されている部分もあり、お話が出ていますようにコミュニケーションをよくして、実際対応していきたいと思っております。

なお、本日は審議会で検討していますけれども、この適用レポートを材料に、どう行っていったら改善していくのか、もう既に改善しているところもあるのかということは、今後、関係者と検討していきながら、人材育成も含めて対応していきたいと思っております。

私の方からは以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。

はい、辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

ありがとうございます。今日は皆様から、このレポートに対して評価するというご意見が出ましたけれども、私も同感でございます。ただ、皆が自画自賛して審議会の委員の意見が一致しているということでは役目を果たせないので、敢えて申し上げますけれども、今日出てきました中で1つのサプライズとして、IFRSを導入したことによって経営管理に役立つということが結構大きな論点だったと思うのですけれども、これは慎重に考えてみる必要があると思うのです。

というのは、IFRSという同じ基準をグローバルに使うことによって、子会社とか、親会社の決算期をそろえるであるとか、会計処理をそろえる、そのことによるメリット、これが経営管理に役立つメリットは確かに大きいと思います。この問題と、IFRSという会計基準が経営管理にとって良い基準か、特に今日収益認識の問題が出てきますけれども、この問題は分けて考えなければいけない。

ご承知のようにIFRSというのは再測定といいますか、評価差額の計上がものすごく多く出てまいります。例えば経営の現場で当期、非常に業績がよかったと思ったところ、最後の評価のところでこれが悪くなる。逆に、あまり業績が良くなかったなと思っていたところ、ぼんと段階取得利益とか、負ののれんとか、そういうものが出てくる。負ののれんは日本基準にも入ってしまいましたけれども。その他、さまざまな評価差額というのが出てきて、現場で、例えば棚卸資産の在庫などを緻密に不正がないように積み上げても、そういったところで最後に現場の経営の実感と違う数字が出てくる可能性が高い基準である可能性があります。

ですから、今日委員の方々がご指摘のように、IFRSを導入することによって経営管理に役立つという面は、方法の統一とか、決算期の統一とか、そういった部分のメリットと、IFRSという会計基準が経営管理により役立つ基準かというのを分けて考えないと、非常にミスリーディングなのかなと、その点がちょっと気になりました。現に業績評価に良い基準というような回答をしている企業に対して、業績評価に対してあまりよくないという回答が来ている企業もこの中に含まれておりますので、そういう面は慎重に考えなければいけない。

それから、もう一つ、2001年からIASBが活動を開始しまして、今日まで進んできているわけなのですけれども、組織の面から見ますと、例えば日本のASBJとか、アメリカのFASBの基準設定の仕方と比べて、実務界の意見というのがストレートに入らない、そういった面も持っているというふうに私は思っております。この点についても、もしIFRSというものがもう少し適用範囲が広がっていく場合には、先ほど実務界の意見が入るようになったというご指摘もありましたけれども、実際に組織機構として、ストレートにそういうものがASBJやFASBほどには入らないようになっていますので、その辺についても今後対応していく必要があるのかなと、この2点についてお話しさせていただきました。

○安藤部会長

ありがとうございました。今の点について、何か事務局でございますか。

それでは、他にいかがでしょうか。あればどうぞ。いいですか。

○窪田委員

2度目でもよろしいですか。

○安藤部会長

構いません。

○窪田委員

窪田です。今の辻山委員のご意見に対して、私自身の意見を話させていただきたいのですが、世界中いろいろな会計基準があるわけですけれども、唯一絶対の完璧な会計基準というのはないと思います。日本の会計基準にも欠点があり、IFRSにも改善すべき点はあり、米国基準も含め、世界各国の基準はそれぞれ何らかの問題があると思います。そういう中で、まず1つ、方向性として世界で最もすぐれた国際基準を作ろうという努力を各国がしているわけです。何か1つ問題点が有るというだけですべて否定はできません。日本の会計基準も、例えば退職給付債務の大きな積み立て不足がバランスシートに出ていなかったなど問題もあったが、それでもそういったことも変わってきているわけです。

これからも、IFRSも高度化し、日本の会計基準も高度化していく中で、それぞれ意見を言い合うという体制ができていると思います。IFRSと日本基準を相対的に比較したときに、グローバルに展開している企業の経営管理において、IFRSの方が適用したときの経営管理のメリットが大きいという方向に今なってきていると思います。再評価とか、小さいことを考えて全体論を否定するという意見には、私はあまり賛成できません。以上です。

○安藤部会長

いろいろな意見があって大変いいと思います。

橋本委員、どうぞ。

○橋本委員

私も今回この適用レポート、非常に価値のあるものだと評価しております。特に私としましては、34ページのところにあるのですけれども、IFRSを適用する企業の多くが実際には損益計算書の項目の特に純利益を重視していると考えられると。こういうような調査結果というのは、まさにそうなのかなというふうに非常に感銘深いものがあります。

また、これは企業側の調査ですけれども、やはり先ほど森委員も言われていましたように、監査法人とか、あるいは利用者側のいろいろな立場の人がIFRSというものを適用してみて、あるいは利用してみてどうなのかという意見も吸い上げて、我々学会でも行うのですけれども、とにかく回収率が悪いのです。ですから、金融庁さんが音頭を取ってやっていただきますと、高い回収率が期待できるということで、継続的な意味で定期的に調査を行っていただくことと、もう少し企業以外の調査対象の範囲も広げていったらいいのではないかと思っております。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。

辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

今お話の中に出ましたように、例えば多くの企業が純利益の表示ということについて非常に評価しているということなのですけれども、これもIASBの元々の提案、2001年以来の業績報告の提案というのは、純利益をやめましょう、包括利益一本にするのだというものでした。これに対して日本などがかなり中心になって意見を言って純利益が残っているということがございます。

それから、収益認識、本日も取り上げられるようですけれども、こちらの方もIASB、FASBがジョイントでやってきて、最初にIASBとFASBから出てきた提案というのは公正価値モデルといって、今日の収益認識とは似ても似つかないようなモデルだった。これに対してもASBJをはじめ、各界が意見を述べてこのような去年の最終的な着地点になっております。ですから、そういう意味では、全体的にどのような方向に向かっているのかということについて、その方向性だけを見た場合には、かなり実務の実感とかけ離れた基準になる可能性を秘めた基準であるというふうに、私は認識しております。

それに対して世界のいろいろな方面からの努力によって、結局は実務的なところに戻ってきていますけれども、そういう面では、これまでのASBJの貢献というのはものすごく大きくて、だからこそ受け入れられているという面を見逃してはいけない。

それから、再評価という小さいことではなくて、会計思考という大きな流れですね。収益認識を公正価値モデルでやるとか、純利益をなくして包括利益だけにするとか、そういう考え方が根っこにあるので、IFRSという会計基準が本当に経営管理に役立つ基準であるのか。今は皆の努力で踏みとどまっていますけれども、今後は注意しなければいけない。

そのような面におけるASBJの貢献というのは過去もものすごく大きかったし、これからも大きいのではないかと考えております。

○安藤部会長

ありがとうございました。今のご発言に反論ですか。では、これ限りでお願いします。

○窪田委員

わかりました。まず収益認識基準に関しましては、例えばある大手総合商社の開示内容から見ますと、日本の基準で計算した売上高が21兆円、IFRSで計算した収益が約7兆円、米国会計基準が約7兆円となっています。どちらが良いかということは、それは考え方によって違うわけです。けれども、このままでは、例えば売上高営業利益率とか、総資産回転率という重要な経営指標を世界で比較するときに問題が生じます。これだけIFRSや米国基準と日本基準が大きく違っているというのは放置すべきではないと思いますし、何か考える必要があるのではないかと。

あともう一つ、IFRSが根っこは時価会計至上主義だというようなことをおっしゃったのですけれども、それは1999年時点のことをおっしゃっているのだと思うのです。それ以降、IFRSが高度化して大きく変わってきたということをきちんと評価すべきです。日本の会計基準も高度化したし、IFRSも変わってきました。ジャパンアメンドメントと言われるような、日本の事情を考えてIFRSが変わったところもあります。そういったことを考えると、IFRS自身も変わってきているのであって、いつまでも1999年時点の考えが根っこにあると考える必要はないと思います。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。辻山委員が反論したいことはよくわかりますけれども、一言申しますと、辻山委員は学会でもIFRSをずっとフォローされた先生のお一人ですので、それだけは申し上げておきます。

川島委員、どうぞ。

○川島委員

連合の川島でございます。私もこのレポートについては多くの委員と同じように、非常に貴重なデータが集められたものとして評価をしております。特に私が注目したのは、この移行期間別の企業数です。過半数の企業は4年以上、期間がかかっていると。相当皆様もご苦労されたのだなと思いました。

1つ、ご検討いただきたいのですが、私もどなたかがおっしゃっていたように、こうした調査を今後も重ねていくということは重要だと思います。加えまして、例えばですが、このデータをもとにさらに踏み込んだ分析を行うということも有用ではないかと思います。66ページのこの移行によるメリットの表がありますけれども、60社の回答があります。これに対して、68ページの移行によるデメリットについては、39社がデメリットがあったと回答しております。ですので、例えばこれを縦横でクロスで見ると、メリット・デメリットが同じ会社においてどのような形であらわれているのか、そんなことも、ひょっとしたら今後の検討に当たって有益ではないかと思いました。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。

谷口委員。

○谷口委員

すみません、先程の経営管理のお話ですが、1点だけ付け加えさせていただければと思います。経営管理への寄与という設問・回答において、29社で寄与が有ったとなっていますが、これは経営管理の効率化に寄与するのか、経営管理の高度化に寄与するのかで若干違うニュアンスがあると思うのです。

といいますのも、ご承知のとおり事業会社では、経営管理というのは基本的に財管調整、つまり、財務会計から管理会計の調整作業という作業を大体どこの会社も行っておられて、ローカルギャップを管理手法ベースでの形に調整するプロセスが発生します。1つのIFRSのような基準によって、その調整作業が排除でき、1つの基準で全部財務会計のベースで評価がかなりできるという効率化のメリットの視点から、経営管理に寄与するという回答をされている会社さんもあるのかもしれません。

IFRSという基準が完璧で、それが非常にスタンダードとして一番圧倒的に優れているという視点も有るとは思いますが、辻山委員がご指摘されたように、必ずしもそうではないというご意見でも効率化の視点から寄与しているとの回答につながっている可能性もあるのかなと思ったりもしました。以上です。

○寺田審議官

今の谷口委員のご発言、まさにおっしゃるとおりで、実際にインタビューに赴かせていただきますと、売上時点を統一化するとか、子会社を含めて決算時点を統一化するとか、これによって要は集計が効率化されると。まさに谷口委員がおっしゃる経営管理、財務管理の効率化ということをおっしゃっている会社と、またそれとは別に、この回答の中にあえて挙げておきましたが、事業別、もしくは地域別でマトリックスの経営管理を行いたいということで、例えば地域別で管理したいということになると、各地域の会計基準が違っていると比較ができないという意味で、それは効率化とはまた別の観点から経営管理の、これは高度化という、谷口委員の言葉がそういう意味でお使いになっているのかどうかわかりませんけれども、ある種の高度化という意味で使っている方もいらっしゃいますので、確かに経営管理に役立つというふうに言っても、意味は多種ございました。それは事実でございます。

○安藤部会長

ということでございます。次の収益認識のご報告もございますけれども、もう一方ぐらいいかがですか、この今のIFRS適用レポートについて。よろしいですか。

それでは、ひとまずこのIFRS適用レポートに関しては以上といたします。

続けて、収益認識基準の開発についての報告でございます。第1回の会計部会、これは昨年の12月15日でございました。そこにおきまして、日本基準の高品質化等についてご意見がございました。本日はASBJから収益認識基準の開発について報告をいただきたいと存じます。

○小野委員

企業会計基準委員会の委員長の小野でございます。よろしくお願いいたします。ASBJにおける収益認識基準の開発につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。

お手元の資料2の1ページをご覧いただけますでしょうか。平成27年3月20日に開催されました第308回企業会計基準委員会におきまして、収益認識専門委員会を再開した上で、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえた、我が国における収益認識基準の開発に向けた検討に着手することを決定したため、ご報告いたします。

資料2の別紙に第308回企業会計基準委員会の審議資料を添付しておりますので、この資料で審議した内容について簡単にご説明をしたいと思います。2ページをご覧ください。第1項にありますように、これまでASBJでは我が国の金融資本市場への信認を確保するという観点から、日本基準を高品質で国際的に整合性のあるものとする取組みを行ってきております。

これは、国際的な会計基準とのコンバージェンスを図ることによって、会計基準間の比較可能性が高められ、投資家の意思決定により有用な財務情報を提供するものとなり、それは世界各国の資本市場に便益をもたらすとの考えに基づいております。それらの考えに基づいて、ご案内のとおり2007年にIASBとの間でいわゆる「東京合意」を公表いたしました。「東京合意」では、2008年末と2011年6月という目標期日を定めて、多くの項目のコンバージェンスを図ってまいりましたが、それらの項目の検討は一段落をしておりまして、現在ではコンバージェンスを進めるという観点からの審議は行っておりません。

一方、第3項にありますように、東京合意を踏まえました検討以後、IASBからは重要なものとして、IFRS第9号「金融商品」、第10号「連結財務諸表」、第13号「公正価値測定」、第15号「顧客との契約から生じる収益」が公表されております。これらの基準につきましては、ASBJは過去に論点整理等を公表するとともに、IASBの基準開発に対する意見発信を行ってきております。

このような状況のもと、我が国において収益認識に関する包括的な会計基準が存在していない中、昨年の5月に国際会計基準審議会(IASB)と米国の財務会計基準審議会(FASB)は、同一の内容の収益認識基準を公表いたしました。IFRS第15号の公表以後、日本ではこれに対してどのように対応するのかというご質問を多くの方からいただきました。また、昨年の12月のこの会計部会でも意見が聞かれたところでございます。

これらの状況を踏まえまして、ASBJでは、IFRS第15号を踏まえた我が国における収益認識基準の開発に向けた検討を進めることの必要性につきまして検討を行いました。

3ページの第5項をご覧ください。コンバージェンスに向けた検討を進めるべきか否かについてはさまざまな考え方があると思いますが、コンバージェンスを検討する際に、これまで一般的に言われてきたものとして、次の4つの観点から検討を行いました。

すなわち1点目が、コンバージェンスを進めることによって大きな便益が期待されるか、2点目として、我が国における会計基準に係る基本的な考え方と大きく異ならないか、3点目として、IFRSと米国会計基準との間でコンバージェンスが達成されているか、4点目として、コンバージェンスを進めることによる便益がそれに伴うコストを上回るか。このような点から検討をいたしまして、これらの検討の詳細な内容は3ページの6項から5ページの12項に記載されたとおりでございまして、詳細な説明は割愛させていただきたいと思います。

その中で、特にコンバージェンスを進めることによって期待される大きな便益としまして、6項に記載のとおり、企業による財務諸表の比較可能性の向上、企業により開示される情報の充実、我が国の会計基準の体系の整備といったところに便益があると考えられます。

ASBJにおきましては、3月6日と3月20日の委員会で、それに加えまして3月18日に開催されました基準諮問会議でも収益認識に関しましてご議論をいただいておりまして、そこで聞かれましたご意見を簡単にご紹介させていただきます。

基本的に多くの方々から事務局の提案に賛成する意見をいただきました。賛成する意見といたしましては、損益計算書のトップラインを決める基準をIFRSと米国会計基準が統一する中で日本基準が整合的でないことは問題ではないかと。

あるいは、包括的な収益認識基準がない状態を放置することはできないというようなご意見、また、幅広い業種に影響を与え検討に時間を要するため、早期に着手すべきであるというご意見。さらに、比較可能性の向上ではなく、むしろコンバージェンスをしない場合の比較可能性の低下を防ぐべきであるなどのご意見が聞かれたところでございます。

一方で、検討すること自体は賛成だが、上場企業全社に影響を与える点とか、IASB及びFASBにおいてまだガイダンスの議論をしている点などの理由で、着手するタイミングについてはもう少し時間を置いて決めればよいのではないかというご意見も聞かれたところでございます。

これらの審議を踏まえまして、最終的には13項に記載されているとおりでございますが、収益認識専門委員会を再開した上で、IFRS第15号を踏まえた我が国における収益認識基準の開発に向けた検討に着手するということが承認されました。従いまして、今後、収益認識専門委員会を再開いたしまして検討に着手をいたします。

なお、お手元の資料の6ページ、7ページに有りますとおり、ASBJの委員会では収益認識以外でのコンバージェンスの進め方も議論がされております。詳細な説明は割愛させていただきますが、今後、この資料、別紙の15項から17項に記載されているような内容で進めていくことも承認されております。私からの説明は以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。それでは、ただいまのご報告についての質疑、意見交換に移りたいと存じます。ご発言をお願いいたします。

逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

日立製作所の逆瀬でございます。ご説明ありがとうございました。ASBJにおかれて収益認識の検討を再開してテーマアップすることについて、大いに賛同いたします。ASBJにお願いですけれども、言うまでもないことでもありますが、各業種、業界の実態を十分に踏まえてご検討をしていただきたいと思います。

若干気にかかっておりますことが有りまして、IASBがIFRS第15号を明確化する目的で修正を行うと。一方、米国FASBが、IASBが考えている内容といささか広い範囲のガイダンスを設ける動きを取ろうとしているということで、ほとんど米欧のルールがコンバージしたものが、範囲は限られているとはいえ異なるガイダンスが出ることになりつつあるということがあるという点。

それと、さらに米国FASBはIFRS第15号の強制適用時期を1年延期するということを決めたようでございまして、IASBも近々再検討するということのようです。特にこの両ボードの動きに関して、適用時期は今両ボードで議論が行われているわけですけれども、その基準の中身に照らして、日本基準を採用する企業であれ、米国基準であれ、IFRSであれ、どの基準を採用する企業でありましても、この3つの基準の適用時期がずれてしまうといったようなてん末は、実務上全く受け入れられないと思っております。

ASBJにおかれては、既にASAF等で本件に絡んだ意見発信もされているとは思いますけれども、重ねて細心の目配りとご対応をお願いしたいと思います。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。今の点についていかがでしょうか。

○小野委員

この2点目の適用時期の統一に関しましては、ASAF等の場、あるいはFASBとコミュニケーションを取る中においても、両基準の適用時期の統一についてお願いをしていきたいと考えております。

○安藤部会長

ありがとうございました。

石原委員が手を挙げておられました。

○石原委員

私も、コンバージェンスを進めるというのは日本としての基本方針であると認識しておりますので、特に重要な基準であります収益認識につきまして、少なくとも検討を早急に開始するということについては大いに賛成をいたします。時間もかかると思いますし、早く検討を進めていただければと考えます。

また、加えまして、個別基準といたしましては、私は連結範囲の問題というのも基本的な会計基準として非常に重要ではないかと考えておりますので、リソースの問題はあろうかと思いますけれども、ASBJの方で連結範囲についてもコンバージェンスの検討を進めて、早急に基準化していただけないかと思う次第でございます。

それから、個別基準のコンバージェンスの検討ということに加えまして、前回の審議会でも申し上げたことの繰り返しに近くはなりますけれども、コンバージェンスの検討を進めていく上での基本的な考え方について、個別基準のコンバージェンスを進めると同時に、並行してASBJの方でぜひ検討・整理いただきたいと思っております。

具体的には、ピュアIFRSとJMISとの差ということにつきましては、エンドースメント手続の中でその差異とその根拠については明確になったと認識しておりますけれども、では、次にJMISと日本基準との間に差異を残す必要があるのかどうか。残す必要があるとすれば、その合理性と判断基準。次に、日本基準の中で連単に差を残す必要があるとすれば、その合理性と判断基準。こうした点についての考え方を整理して、それに基づいて今後の個々の基準のコンバージェンスにつきまして優先順位も含めて検討を進めていくことが必要ではないかと考えておりますので、そのあたりにつきましても、ASBJの方でぜひ検討をしていただきたいと思っております。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。

小野委員、いかがですか。

○小野委員

IFRS第10号の連結財務諸表のコンバージェンスにつきましては、資料2の6ページの15項の(2)の最後のところに書いてございます。必要性があるということは認識をしておりますが、ヨーロッパ等での実務の適用状況等を把握をしながら対応をしていきたいというふうに考えております。

それから、コンバージェンスの基本的な考え方につきましては、この資料2の別紙のところの2ページの1項のところで記載をしているのが、これが大きな考え方だと理解しております。ただ、石原委員からもご指摘がございましたように、優先順位を付けながら対応してまいりたいと考えております。

○安藤部会長

ありがとうございました。他の委員の方、いかがですか。

窪田委員、どうぞ。

○窪田委員

収益認識基準の高度化の検討をすることは賛成です。1つ、気を付けていただきたいと私が思っているのは、工事進行基準に当たる部分を日本の実情に合った形で高品質化していくことに特に気を配る必要があると思いました。IFRSの収益認識を今回改訂するに当たって、原則、業界別の基準は作らないという方針がとられました。例外になっているのは今保険とリースだけです。けれども、収益認識、工事進行基準のところは非常に業界別の事情が大きいので、建設業界は業界別の基準が必要ではないかといった声もありました。

ただし、工事進行基準を使うのがそもそも建設業界だけではなく、耐久材をつくる会社とかいろいろな業界に分かれるので、業界別基準は作れないということになり、工事進行基準まで含めて1つの基準にまとめました。けれども、業界ごとの事情、現場の事情というのにうまく合ったガイドラインを作るなど何らかの対応をしないと、現場で混乱する。または、比較可能性が逆に担保されないというような事態も起こりかねない。特に工事進行基準の部分について慎重に検討をお願いしたいと思います。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

収益認識基準について検討を開始するということについては、反対という方はおられませんか。いないようですね。

○関根委員

反対ということではなく、私も賛成ですが、関連して意見を述べさせていただきます。IFRS第15号を踏まえた我が国における収益認識基準の開発に向けた検討を進めることは非常に重要なことであり、ASBJにおいて検討に着手することを支持していますが、同時に、そう簡単なものでもないと思っています。

IFRS第15号の基準自体、ボリュームがあり、難しい部分があるというのもありますが、日本における実務を踏まえての収益認識基準というのをしっかりと検討していくことが重要なことだと思っています。しかしながら、実務についてきちんと考えながら検討していかなければならないとなると、いろいろな論点が出てきます。収益認識基準では、日本基準においてもいろいろな論点があり、そのような点を、IFRSの15号で検討したらどのようになるのかという事を検討していく必要があると思っております。

私どもは会計や監査の実務経験からいろいろな論点に遭遇していますが、基準の検討にあたって実際にそういう論点を挙げていくだけでも実は大変な作業になると思っています。私どもは、以前そういったことを検討したこともありますので、ASBJの委員会で検討するに当たって、そういった論点を提供できたらどうかと思っています。もちろん、私どもだけで結論を出すということではなく、基準をつくるのはASBJですが、その中でASBJの検討に役立つような論点挙げというのを行えないかと思っています。

実際のところはまだ、具体的にどういったことができそうかというのを検討している最中です。また、これは、IFRS第15号が公表されたときから、こういったことを検討していかなければいけないのではないかという声が上がっていましたが、ASBJが検討を開始するということであれば、先程ASBJのリソースの問題も出ていましたので、私どものリソースも活用していただいて、幅広い論点の洗い出しや調査などを行って、皆さんのご意見を聞きながら進めていくという形がよいのではないかと思っております。その点、意見ではないですけれども、つけ加えさせていただきたいと思います。

○安藤部会長

ありがとうございました。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

ありがとうございます。日本公認会計士協会のご協力をいただくということに関しましては、基本的に感謝を申し上げたいと思います。具体的にどのような形でご協力いただくかということは、今後専門委員会が再組成されて、親委員会も審議を行いますので、その中の過程で協議をさせていただきたいと考えております。

○安藤部会長

ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

熊谷委員、どうぞ。

○熊谷委員

こういうことは、ユーザーが言う話でもないのかもしれないのですけれども、今、先ほど窪田委員の方から、業界への影響が大きいので、特に進行基準について丁寧な検討が必要ではないかというご意見がありました。やはり、この収益認識基準によって、例えば国の発注などで影響を受ける業界が出るであろうことが、かなり特定の業界ですけれども、予想されると思います。そういう中で、会計基準と現行の国の、多分省庁横断的な話になってしまうと思うのですけれども、そういう影響もあわせて調整しながら、この会計基準のコンバージェンス作業を進めていく必要があるのではないかと思っております。

そういった意味で、これは非常に難易度の高い作業になるのではないかと思います。そうしたことを踏まえて、ASBJと金融庁さんの間で十分、他の省庁も巻き込みながらご検討を進めていただけるとよいと思っております。

○安藤部会長

ありがとうございました。他にいかがですか。

辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

この収益認識については、コンバージェンスに向けた検討を開始するということについては全く異論はありません。ただ、これまでの基準と違って収益認識というのは、日本基準を変えた場合にその広がりというのは想像を超えるといいますか、日本の会社二百数十万社に及んできますし、あるいは税法との関係にも緊密に絡んできますので、検討をすると同時に、どのようなところに影響が出るのかということについても十分な調査が必要なのかなと思います。

先ほどの議論を蒸し返すわけではないのですけれども、収益認識というテーマでこの問題について若干お話をさせていただきます。まず、先程1999年の問題を出されましたけれども、実は2000年代に入ってFASBとIASBが収益認識について共同プロジェクトを開始しました。そして、2008年の12月にディスカッションペーパーが出たわけですけれども、その直前まで、いわゆる公正価値モデルという、我々に全くなじみのないモデルによって、収益認識モデルを書きかえようとしていたわけです。

そこで言われていたことは、先ほど例に出ました検収基準か、出荷基準かとか、あるいは純額表示か、総額表示かという、そういう問題ではなくて、収益認識の考え方を根本的に変えるようなモデルだったわけです。それが、かなり最終段階でFASBのボードの反対なんかがありまして、2008年の段階では大きく方向転換して、いわゆる公正価値モデルではなくて、履行義務の充足モデルという考え方が取り入れられました。

そして、履行義務の充足をどのように観察するのかということについて、支配の移転という概念を出したわけです。したがって、そのディスカッションペーパーでは工事進行基準というのは禁止と明確に書かれていたわけです。つまりこれから世界の会計基準においては、工事については完成基準にしなければいけないと。これが2008年の12月のことですけれども、そこから世界中から、完成基準だけだったら回らないという声が出て、進行基準を同じモデルの中にどのように入れるのかという大論争が始まりました。工事進行基準を認めることについては、履行義務の充足を支配の移転ではない考え方でみるか、あるいは支配の移転の解釈の幅を広げることで対処できないかという、そのように変遷してきているわけです。

そして、2010年、11年と、ED、改正公開草案が出て最終基準化を行ったわけです。ですから、現在の収益認識のIFRS15号というのはそのような変遷を経ていますので、幾つかの弱点を抱えているということ。それから、最終的に残った履行義務の充足モデルというのは、公正価値モデルが棄却されて、従来型の実現に近いものになっている。一方、日本基準というのは企業会計原則で実現主義というのが入っています。これと、履行義務の充足モデルというのが具体的にどのように違うのか。これはかなり精査しないと、かなり広がりを持った影響が出る。日本の個別基準に入るということはかなり大きな広がりを持つ可能性がある。

検討に当たっては、ASBJでくれぐれもその辺については慎重に検討していただきたいと思います。実現という考え方を残していくのか、いかないのか、あるいは実現と履行義務、充足モデルがどう違うのかということについてもきちっと整理しておきませんと、後でいろいろな企業に与える影響が大きいと思っています。

ですから、先ほど申し上げたかったことは、純額表示とか、総額表示とか、そういうレベルの話ではないことが、いま会計基準をめぐる議論の中で起こっているということです。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。いいですか。それでは、一通りご発言希望の委員の方にはご発言いただいたということで、質疑、意見交換はここまでにしたいと思います。

本日は、IFRSの任意適用企業の拡大促進に向けた対応や、収益認識基準の開発等についての多くの貴重なご意見をいただきました。

次回の会計部会の開催については、事務局より改めてご連絡させていただきます。

本日は、お忙しいところご参集いただきまして、ありがとうございました。これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課
(内線3887、3810)

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