企業会計審議会 第3回会計部会議事録

1.日時:平成27年11月19日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○安藤部会長

定刻になりましたので、企業会計審議会第3回会計部会を開催いたします。

皆様には、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

新たに委員が任命されておられますので、事務局より紹介をお願いいたします。

○田原企業開示課長

企業開示課長の田原でございます。

新たに2名の委員が任命されておりますので、ご紹介させていただきます。神津委員でございます。

○神津委員

初めまして。おはようございます。神津でございます。

○田原企業開示課長

野崎委員でございます。

○野崎委員

野崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○安藤部会長

ありがとうございました。

それでは、議事に入ります。

本日は、国際会計人材の育成の取り組みにつきまして、大学・大学院、企業、監査法人、日本公認会計士協会、財務会計基準機構の取り組みにつきまして、委員及び参考人からご説明していただくことになっております。

なお、質疑及び意見交換につきましては、全てのご説明が終わってからにしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

それでは、事務局から説明をお願いいたします。

○田原企業開示課長

それでは、お手元の資料1に沿いまして、簡単に最近の国際会計基準をめぐる状況についてご説明した上で、当方の問題意識につきましてご説明させていただければと思います。

1ページおめくりいただきますと、日本におけるIFRSの適用状況でございます。前回、部会、審議会のほうでご説明をさせていただいた際は、3月末時点で75社ということでございましたが、今年の11月17日時点で97社ということで、22社増加しているということでございます。時価総額につきましても、108兆円から115兆円ということで、着々と増えているということでございます。

1ページおめくりいただきますと、新たに適用いただきました企業ということで、22社、赤字で記載をさせていただいているところでございます。

もう1ページ、おめくりいただきますと、業種別になります。3ページでございます。主な業種でございますけれども、電気機器につきまして、前回の11社から15社、輸送用機器が5社から8社、食料品が1社から3社、情報・通信業が7社から9社、化学が5社から7社、小売業が2社から4社と、こういったところが主に増加した業種でございます。

1ページおめくりいただきまして、IFRS強制適用国の状況でございますけれども、前回ご紹介いたしましたときは108カ国、法域も含めましてということでございますけれども、この間、シリアとパレスチナが新たに適用対象になったということでございまして、現在、110カ国、110法域ということになってございます。

1ページおめくりいただきます。IFRS財団の組織でございますけれども、やはりこの間ということでございますが、本年6月に、右下の会計基準アドバイザリー・フォーラムにつきまして、12のメンバーの改選が実施されたということでございまして、日本は再任をされたということでございます。任期は3年でございます。

その他について申し上げますと、スペインと英国が外れまして、イタリアとフランスが選任されたということでございます。

その後、6ページからでございますが、こちらから日本再興戦略のご説明になります。

『日本再興戦略』改訂2015においてIFRS関連の記載でございますが、ここにございますように、引き続きIFRS任意適用企業の拡大促進に努めるということが再確認されているということでございまして、トピックとしては2つ記載がされております。1つは、適用企業や移行を検討されている企業の方々の実務を円滑化して、任意適用企業の拡大促進に資するという観点から、IFRS適用企業の実際の開示例や最近のIFRSの改訂も踏まえて、IFRSに基づく財務諸表等を作成する上での参考となる様式の充実・改訂を行うということで、こちらの作業につきましては、現在、金融庁がASBJと協力しながら作業を進めているというところでございます。

それから、本年3月末の年度決算に係る決算短信から、上場企業から「会計基準の選択に関する基本的な考え方」という中で、IFRSの適用に関する検討状況を開示していただいているところでございまして、こちらにつきましては、東京証券取引所と連携をして、最初の結果というのを、先般、公表させていただいたわけですけれども、引き続きこれに取り組んでいきたいということでございます。

1ページおめくりいただきますと、こちらは今年の金融行政方針でございます。本日のテーマでございます人材の育成ということについて記載させていただいているところでございます。

金融行政方針の中では、具体的重点施策として会計監査の質の向上ということで、国際的な分野も含めた経済社会の幅広い領域で活躍できる会計人材の確保ということを掲げさせていただいているわけでございます。この中では、会計人材には経済社会のさまざまな分野での活躍が求められておりまして、また、金融・資本市場のグローバル化、企業活動の海外展開等の進展にも適切に対応していく必要があるということでございまして、公認会計士協会や財務会計基準機構と連携いたしまして、グローバル化に対応する国際的な会計人材の育成等に係る取り組みを促進するということを書かせていただいております。

本日のテーマでございますけれども、国際会計人材の育成に関する課題ということでございまして、大きく2つの課題があるというふうに考えているところでございます。

1つ目は、我が国が考えます「あるべき国際会計基準(IFRS)」の内容につきまして、意見発信というものをますます強化していくことが課題とされているというふうに認識をしていまして、こういった観点からは、国際会計基準審議会や国際的な場で効果的に意見を発信できる人材の育成が必要であるということ。これが、1つ目の大きな課題であるというふうに考えております。

2つ目の大きな課題でございますけれども、やはりIFRSへの移行に当たりまして、特定の会計基準に対応できる企業内、監査法人内の人材が不足しているのではないかという問題意識が、よく指摘されているところでございまして、そういった観点から、IFRSに関する知識・経験が豊富な人材の裾野の拡大が必要ではないかということでございまして、この2つの問題意識を踏まえていただきまして、本日、ご議論をいただければ幸いでございます。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。

次のご意見を伺う前に、私、議事進行で1つ抜かしておりましたので、ここで改めてお諮りいたします。

本日の会議の公開について、企業会計審議会議事規則に則り、本日の会議につきまして、公開することにしたいと思います。よろしいでしょうか。というのを忘れておりましたので、ここで事後承認事後了承を。そうしないと、皆様方、後ろにいらっしゃる方が出席する理由がなくなっちゃいますので。失礼いたしました。よろしいですよね。

(「異議なし」の声あり)

○安藤部会長

はい、ありがとうございました。

それでは、次にいきます。次は、大学・大学院における取り組みにつきまして、橋本委員からお願いいたします。

○橋本委員

橋本でございます。

それでは、お手元の資料2に基づいてご説明いたします。本来は、大学・大学院といった高等教育機関が、将来の国際会計人材育成において中心的な役割を果たすべきでありますが、我が国では、近年、若者世代を中心に会計離れが進んでおり、大学・大学院で会計学を専攻する学生が減少傾向にあることが、将来の国際会計人材育成上の大きな課題となっております。

大学・大学院の会計教育も、日本基準による個別財務諸表に主眼が置かれ、会計関連科目としては、簿記論、財務会計論、管理会計論などの科目が一般的であり、国際会計論や国際財務報告基準特論といった科目を設置している大学等は決して多くはありません。

このように、若いうちからIFRSを学ぶ機会は限られているとはいえ、一方で、卒業論文で国際会計基準をめぐる論点を取り上げる学生も増えつつあります。

また、大学における語学教育や一般教養科目などを通じて培われる国際感覚やジェネラリストとしての素養は、将来の国際会計人材に必須のものと言えるかと思います。

従いまして、我が国の高等教育機関におけるIFRS教育は、主として会計専門職大学院が担っているのが現状であります。会計専門職大学院においては、国際会計教育基準審議会の国際教育基準に準拠したカリキュラム編成がなされており、その中で、IFRSを主要な柱をなす授業科目であるコア・カリキュラムの基幹4科目の1つと位置づけてシラバスを作成するとともに、必修に近い位置づけとしております。

また、会計大学院協会や各会計専門職大学院などでは、IFRSの啓蒙・普及に関する活動も行ってきておりまして、これまでに幾つかのIFRS関連のシンポジウムなどを開催し、また内外の関係者を招いて、IFRSやIFRS教育をめぐる問題を検討してまいりました。

さらには、大学・大学院の科目履修生の制度やオープンカレッジ、課外講座等を活用して、IFRSに関するリカレント教育にも取り組んできております。

最後に、新たな取り組みといたしまして、国内外の大学・パートナー機関が連合・連携して、修士学位課程を共同運営し、発展途上国やその地域経済社会が直面する会計・財務・政策に係る諸問題の解決をリードする、会計政策プロフェッショナルを養成することを目的とする国際会計政策大学院が、本年10月に開校いたしました。

私のほうから、大学・大学院における国際会計人材の育成に関する取り組みの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○安藤部会長

ありがとうございました。

それでは、次に、企業における取り組みにつきまして、谷口委員と逆瀬委員にお願いしております。まず、谷口委員からお願いいたします。

○谷口委員

よろしくお願いします。

それでは、お手元の資料に基づきまして、弊社が実際に行いましたIFRS対応の教育と育成について、何をどのように実施したか、どのような課題が確認されたかという部分についてご説明をさせて頂きたいと思います。

まず、最初のページでございますが、何を実施したかというところでございます。これは、時間軸的に、その導入までの部分と導入後の部分、2つに分かれると考えております。まず導入迄の部分というのは、非常に時間的にも限られる中で、集中的に様々なことをやるという、非常にタイトな話な訳でございますが、その中で、私どもが非常に重視したのは、まず、コアとなって会社の会計組織全体を引っ張るImplementation Leadersと言われる、ある一定のグループを選定して、そこに対して集中教育をしていったというところでございます。これは、社内だけでは全てを対応が出来ませんので、外部のアドバイザーとのコラボレーションによって集中教育をしました。その中で、特にIFRSの場合、基本思想なりコンセプトですね。これを、徹底的に最初の段階で押さえておく。マクロの視点ですね。これが非常に大切だということで、そこから始めたというところが重要なポイントだと思います。

あと、やはりIFRS特有の話ですが、実質ベースということもありまして、実際の事業に対してどのようなインプリケーション、影響が有るのかということを常に意識させる。このCore Implementation Leadersに対して、それを常々意識させる、つまりビジネスマインドを持ってもらうというところは、後々、大変役に立った部分であります。

次は、実際、導入をした後の過程でございますが、導入した後に色々なことに気づいた点、問題点についての認識した点がございました。実務を通じた問題点・気づきの共有という中で、全社の会計組織、チーム内でこれを徹底的に議論して昇華してゆくことは大切なプロセスでした。また、社内で得たこのような気づきを、外部の監査人との間に頻繁な意見交換を行うことによって、実際、監査プロセスにおける改善点なんかを指摘してもらうというところもありまして、こういった頻繁な外部監査人とのコミュニケーションというのが大事であったと理解しております。

後は、IFRSにおいては、トピックとして頻繁にアップ・トゥ・デートな内容が出て来ますので、これも外部の専門家との勉強会、意見交換会を通じた最新のIFRSトピックの状況の把握・理解させていただいたというところも大事なポイントであったと理解をしております。

具体的に、どういうふうに人材育成をやったかというところですが、次のページになりますけれども、これは2つありました。1つは、やはり経験者に学ぶということ。実際、経験を持った方に学ばないと、中々ゼロから全部インプリメンテーションするというのは大変なことでした。では、どのような経験者が居るのかということですが、これは社外と社内、両方を、見ました。当然、社外に関しては、大手会計事務所等のコンサルティング部門等に、お願いする形で、そういった方の具体的な経験豊富な部分を生かした形で、それを私どものインプリメンテーション・プロセスに反映させていく。これが外部アドバイザーの起用ということでございます。

次に社内でございますが、幸いにして、以前、私もお話をしましたが、2011年に既にIFRSを導入している海外の会社を買収したこともございましたので、こういった海外の実際の会計プラクティスを積極的に日本に取り込んでいくことを行いました。具体的に何をやったかというと、買収先の会計組織の人間を日本の本社に逆出向させて、日本に物理的に来てもらって、会計の実務、IFRSのインプリメンテーションに入ってもらいました。

後は、それぞれ国ごとに分かれていました会計チーム、会計組織、会計部門というのを私の下に一極統合して、リポーティングラインを現地法人の会計組織が、現地法人の社長ではなく、直接、本社の財務統括部長なりCFOにリポーティングラインをつくるという形で一極統合を図った次第です。

加えて、実は会計組織のヘッドにIFRSの経験を持つ買収先の会計チームのヘッドを、敢えて本社のヘッドにした。これも、物理的に日本本社に勤務をしてもらった訳です。

同様にして、監査人にも同じような対応を実はお願いしまして、私どものオーディットチームにおいて、外国人の方に実際に日本ベースのチームに加わって頂いたということもございました。

2つ目が、会計インフラの全世界統一化ということですが、これは、経験者に学ぶにしてもにも、まずインフラを一緒にしないと、中々機能し難いので、連結会計システムとしてのHFMというのを入れて、全世界共通、これで全部コンソリデーションする形にしました。

あとは、マニュアルですね。IFRSマニュアルというのを徹底的に整備して、逆にこれを通じたノウハウの蓄積、知識の涵養を図りました。

また、会計の世界では英語、社内での会計業務の共通言語として、全部英語を使おうというところで、インフラ的な側面からグローバルに統一化をしたというところでございます。

3ページ目でございますが、どういった課題があったかというところでございます。幸いにして、実務的にはもう2年も経て、大分、落ち着いてきたところではありますが、やはり大事なのは、先ほどの資料にもありましたが、とにかく発信能力というのをどうやって向上していくか。IFRSでは、従来基準以上に、作成者サイドからの発信、フィードバックというものも非常に重要視されるということを私共としても理解しておりますので、その辺の発信能力というのが大事だろうというところでございます。

これは、発信能力といっても単純ではございません。単純な部分もありますが、単純でない部分というのは、まず最初に会計実務能力に裏打ちされた深い洞察力というのが、まずベースに絶対必要である。これは、コミュニケーション能力以上にそこが大事だと。

ただ、それだけにとどまらず、説得力・説明力ですね。これをしっかりとしていくというのが、発信していくという立場から非常に重要だろうというところで、この辺の意識改革を図る必要が有ります。ともすると、実務的な経験則に基づいて議論をするというところで、落ち着いてしまう傾向があるのですが、やはり説得力、説明力というところのコミュニケーション能力、これをどうつくっていくか。会計実務の中でどうつくっていくかというのが課題だと認識をしております。

一言で言うと、英語の問題、これはやはり重要でございまして、言葉の違いという以上に、日本語的な思考様式で会計実務を行うことによる世界の制約を超え、英語でロジカルに物事を説明していくというところ、この言葉のハードルというのが、たかが英語、されど英語と書きましたが、重要だと認識をしております。

○安藤部会長

ありがとうございました。

次に、逆瀬委員、お願いいたします。

○逆瀬委員

日立製作所の逆瀬でございます。お手元へ用意すべき資料を用意しておりませんので、口頭で申し上げます。

当社は、本年の3月期の有価証券報告書から、傘下の上場子会社も同時にIFRSへ切りかえました。年度の15年3月期決算短信は、従来、採用しておりました米国基準でやらせていただきまして、その後、6月25日の有価証券報告書提出、同時に短信、取引所開示においても、IFRSベースのものを公表したといったようなことでございまして、まだほやほやでございます。足元では、IFRSベースの四半期決算を2回ほど終えたというところでございます。親会社は米国基準、傘下の9社の上場子会社は日本基準からの切りかえということでございました。

当社の実態といいますか、概要ですけれども、この3月期ベースで、売り上げが9兆8,000億弱で、報告セグメントベースの数は10個ある。その下に何倍かの事業セグメントがあると、こういう構造でありまして、多様な事業を抱えています。

従業員数は、33万7,000名ほどで、そのうち4割は海外子会社の要員であります。それから連結対象子会社も1,008社ありまして、そのうちの7割、733社は在外子会社であり、海外売上比率も47%程度あり、海外事業のウエートが高くなりつつあるということであります。

IFRS導入の理由ですけれども、大きく3つございまして、1つは、申し上げたような事業運営がグローバル化していること。これへの対応ということで、グローバル基準であるIFRSへの上場子会社を含めたグループ内の業績評価基準の統一。それから、各海外地域で、それぞれ自立的な事業運営をさせますので、その業績評価基準の統一ということが、当然、あわせ持って行われるといったことを踏まえまして、グローバルな人材を獲得する、優秀な人材を獲得する、あるいは育成するといったようなことの加速であるとか、さらに申し上げれば、グローバルなコンペチターとの比較有用性といいますか、そういうことも端的にはかれると。そして何よりも、財務報告は資金調達の場面における投資家との重要な対話のツールでありますので、この投資家とのコミュニケーションの円滑化というのを、3つ掲げて進めたわけであります。

2つ目ですけれども、経営方針に沿った経営成果の反映ができること。

米国基準の場合は、例えば連結の範囲も、ベースは形式持株基準ということで、実質判断をいたしませんから、これは日本の連結範囲よりも少し形式的になっているといったこともあるということもあって、そういう実質判断が可能となること。あるいは、細かな話になりますけれども、持分法適用の関連会社の税効果会計においても、米国の場合は、売却前提での税効果会計を行いますけれども、IFRSの場合は、保有実態に応じたやり方が認められるというようなこと等、幾つかあり、そういう点も理由であること。それから3つ目は、このIFRS導入を契機に、決算プロセスであるとかシステム、これを統一し標準化し、経営効率を図ろうということでありました。

私どもの検討の経緯ですけれども、2009年の審議会の中間報告が出まして、これを受けた翌年3月に準備開始するということを決定しました。新年度が始まる10年4月からプロジェクトを専任組織として発足しておりまして、そこから約3年間、2013年3月ぐらいまでの間は、この会計とITの専任組織がリードしてプロジェクトを進めました。その中での主な対応は、会計方針をグループ統一して、これをIFRSベースにして細かく策定する作業が1つ、それから、グループの標準システムを開発すること、そして、初度適用のトライアルを行う。この3つがターゲットでありました。

このグループ統一の会計方針というのは、アカウンティング・ポリシー・マニュアルであるとか、それに対応するQ&Aとか、あるいは経理要員のトレーニング・マニュアルであるとか、IFRSに対応した実務レベルの教育も含めたルールを策定し、これを徹底すること。これらを日英中の3つの言語で作成しております。

13年4月より後は、この専任組織は解散しまして、現場の実務決算ラインと統合して、移行日を13年4月1日とする初度適用、それから四半期を含むIFRSベースの決算を実施したということであります。

従来の親会社は米国基準連結、上場子会社は日本基準連結というややこしいことをやっていたため、それとの並行作業ということで負荷がかかったわけでありますけれども、ほぼもくろみどおり進んで、今年の正月にIFRS任意適用について世間に公表することができる段階に至ったものであります。

人材育成に絡めて、今、申し上げたようなことを踏まえて申し上げますと、国内外の連結会社が多数で、また事業セグメントも30ほどあるということで、基準を切りかえるについては、目的意識をグループ内全てに行き渡るように統一する、その前提で人を育成するということが必要でありました。

事業セグメントごとに、あるいは海外においては地域統括会社が幾つかありますけれども、こういうものと連携して説明会等、あるいは打ち合わせ会等を頻繁に開催して意識の共有を図った。さらに具体的に申し上げますと、会計実務の話ですから、テクニカルな話がどうしてもベースにあるわけですが、そういうものへの対応としては、分科会であるとかワーキンググループでもって検討を行いまして、その成果をグループ展開するといったような形であります。IFRS特有の会計処理について、集団に対応する形で、どう実務を変えればいいか、変える必要がないのかあるのかといったようなことであります。国内上場子会社を含む説明会も行い、海外については実務レベルの説明会、あるいは初度適用に特化した説明会、あるいは開発したソフトウエアの初度適用における説明会など、それぞれ海外10カ国程度で、複数回開催して、実務が徹底されるように図ったということであります。さらに、申し上げましたように、グループの業績評価基準をIFRSベースに統一するということをやりまして、連結決算手続においても、IFRS準拠の連結帳票を子会社段階で作成すること。連結帳票は、従来のように親会社サイドでSEC基準にアジャストするやり方ではリスクもあるということもあって、今回のやり方は、子会社段階でBS、PLあるいはキャッシュフローの基本帳票を含めたIFRSベースの帳票を作成するものです。連結精算の邦貨換算の後の第1ステップである子会社、親会社の単純合算の表をつくりますけれども、そこはIFRSベースになっているということであります。

このようなことで、子会社の担当者が、IFRSに正面から取り組む格好にしたということであります。こういった活動を通じて人材のトレーニングを図ったわけでございます。目下は、申し上げたように、このやり方の安定的な運用、その定着を図る段階であります。申し上げましたように、私どもの場合は、やや時間をかけてやらざるを得なかったわけですが、作成者サイドにおける人材というのは、企業がIFRSを採用すると意思決定をすれば、その必要に応じて、的確な人材を確保することは必須でありますので、教育もトレーニングも合わせて必然的にやらざるを得ないということになるわけであります。しかし、その目的はあくまでも当該グループの財務情報の作成に照らして教育もトレーニングも行うわけでありますから、CPAの先生のように、監査を担うようなレベルの知見とか、経験とかが必要なわけでは毛頭ないということであります。当社の場合は、そういうプロと言い得るようなIFRSに通暁したCPAを抱えているわけではありません。作成者サイドにおいては、私どもに照らしても、国際的な場に出張っていって、国際会計基準開発の任に直接当たるというようなレベルで教育するわけでもありませんから、なかなか難しい。

しかし、今、事務局からご説明がありましたように、日本でのIFRSの経験がどんどん増えていきますと、あるいは適用会社も増えていくということが相まっていきますと、素地になる環境が大きく変わりますから、そこから若い世代が育っていくということがあり得ましょうから、そういうことへ期待することはあるべきじゃないかとは思っております。それから、会計士サイドとの関係ですけれども、私ども、準備を始めた2010年初頭当初は、会計士とのやりとりに時間がかかった。当方から出す質問は単純明快ですけれども、答えがなかなか出ないということが、作成者サイドからすれば非常にストレスになったわけです。このために、アカウンティング・ポリシー・マニュアルの作成に時間を要したということは否めないところでありましたけれども、現時点で見れば、改善方向になっているとは思っております。

先ほど申し上げましたように、私どもの場合は子会社段階でIFRSベースの帳票を作成するやり方をとりますので、その監査も、当該子会社の会計士が担うということであります。この体制ができた背景として監査法人サイドの人材育成があったという事実であると思いますので、この点は申し上げておきたいと思います。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。

次に、監査法人における取り組みにつきまして、有限責任監査法人トーマツの古内参考人にお願いいたします。

○古内参考人

有限責任監査法人トーマツでIFRS全般業務を担当しております古内でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

お手元の資料4をご覧いただけますでしょうか。私ども監査法人、プロフェッショナル職は、皆、会計監査人材でございますので、私どもの人材育成というのがそのまま、本日いただいたアジェンダでございます国際会計人材の育成の取り組みということにほかならないかと思いますので、まずは1ページおめくりいただきまして、私どもの法人全体の教育研修プログラムから説明をさせていただきます。

一番左が職層でございます。上からパートナー、マネジャー、スタッフとありまして、その横に大きく3つに研修体系を整えております。一番左がベーススキル、組織文化ですとかコンプライアンス、職業倫理といった基本的な分野、これは職位にかかわらず継続的に研修を行っております。

真ん中がプロフェッショナルスキルでございます。私どもは監査法人ですので、まず監査が重要で、会計監査の基準、実務等につきまして、職位に応じてケーススタディや最近のトピックなどを取り入れました研修、これをディスカッション方式あるいはe-learningという形で組み合わせて行っております。この中には会計基準も含まれておりまして、その中にIFRSも含まれ、スライドタイトルにもございますとおり、プロフェッショナルスキルの一環としてIFRS研修を組み込んでおります。

さらに右に行きましてソフトスキルでございます。組織的監査を前提とすれば、単に頭でっかちなプロフェッショナルスキルだけでは駄目だと考えておりますので、チーム内リレーションですとか、あるいは対監査対象会社との関係ですとか、そういったソフトスキルについても私どもは重点を置いて研修を行っております。一番右にグローバル対応があり、ここに英語等の外国語のスキルも含まれるということになりますが、私どもが重視しておりますのは、単に語学だけできればいいということではなく、海外の事情やビジネス、文化、あるいはグローバルプロジェクトの仕事の進め方といったことを理解することであり、例えばネットワークファームで現場チームの一員として加わるようなトレーニー制度というのはかなり古くから導入しております。さらに、一定の能力のある人材につきましてはグローバル人材と位置づけ、優先してリーダーシップ研修や該当する監査対象会社等で経験を積ませています。

この中で、公認会計士の継続的研修制度、CPEに適格な研修は適宜指定している、こういった形になっております。

1ページおめくりいただけますでしょうか。IFRSについての研修は、私どもでは、大きく分けて5つのカテゴリに分けております。上の3つが、座学、いわゆる研修でございまして、一番上が、基準書の理解と知識。これは、e-learningを中心にして、IFRSの基準書ごとに、基準書の解説あるいはドラマ仕立てでケーススタディを行ったりテストをしたり、約40コース設けております。年次で内容をアップデートして、1コマ90分から120分を目安としておりまして、例えば金融商品のような複雑な基準につきましては数コマに分割して設定をしております。

その下が、基準書理解の深化と判断力強化のための参加型集合研修として、講師、ファシリテーターを指定して、その人間が研修をリードする。基準書ごとに約30コースほど設けておりまして、グループディスカッションやテスト等を、1回大体2時間半、それを2コマずつ、半年間かけて完了するというプログラムがございます。さらにその下で、知識の更新と動向理解として、本部の専門家による解説会ということで、新基準書や解釈指針が公表された都度の解説、毎月のIASBあるいはIFRS解釈指針委員会の審議状況につきまして定期的な解説を行ったり、法人の中で実務的に相談を受けた事項やトピックにつきましては、四半期に一度、該当する担当者を集めて説明会を行うといったことを行っております。

ただ、私ども、やはり経験として非常に重要と感じておりますのはこの4番目と5番目でございまして、実際の実践力でございます。これは、我が国におけるIFRSの任意適用企業の監査あるいは海外のIFRS適用企業の日本子会社の監査実務を通じたOJT(On the Job Training)が該当します。実際の現場経験として、監査実務を通じて、監査手続の一環として監査対象会社から受けるさまざまな相談、それから、次のページでご説明いたします、トーマツのIFRS本部テクニカル部門への相談、コンサルテーションと、こういったやりとりを通じた経験の蓄積というのは、単に座学にとどまらない、実際のIFRSの会計監査能力を高めるためには、非常に重要であると考えております。

さらにハイレベルなところで、5つ目として、より専門性の高い人材の育成ということで、国際的な基準開発の場でも活躍できるような人材に直結するのかと思いますけれども、これは、本部で実際に現場からIFRSの相談を受ける部門の人材育成ということで位置づけております。例えばIASBですとかASBJ等の内外の会計基準設定主体への派遣ですとか、私ども本部でのテクニカル部門での育成、それから海外ネットワークファームへの派遣、反対に受入、それから国際的にプロジェクトを進めていく、といったことがございます。

私どもからは、IASBには、過去にASBJ経由で2名、現在1名を派遣しておりまして、またデロイトのネットワークファームのIFRSテクニカル部門につきましては、香港、パリ、ロンドン等に過去に人材を派遣して、今、日本に戻ってきて、私どもの本部等で中心メンバーとして活躍しております。それから、ASBJやJICPAで主催いただいている育成プログラムにも、私どもの職員を参加させていただきました。

ページを1枚めくっていただきまして、実践力のところでございます。実際にIFRSの任意適用会社に対しまして、どのような監査体制をとっているかということも含めてご説明をさせていただきます。

私ども監査法人トーマツでは、現在、18社のIFRS任意適用会社を監査対象会社としておりまして、ほかに5社が決定したことを公表済みということで、潜在的には、まだもっと、非公式ということで準備を進めていらっしゃる会社は多数ございます。

こちらの図に示しておりますのが監査の仕組みでございます。この紙をはみ出た、もっと左のほうには監査対象会社があって、会社と直接対面するのは監査チームということになります。これは、日本基準でもIFRSでも同じでございます。監査対象会社ごとに監査チームを組成しまして、業務執行社員、これは監査報告書の署名者でございますけれども、通常2名から多いところで4名。それから、その下に管理職層として、シニアマネジャー、マネジャー。これは会社の規模によりますけれども、2~3名から多いところでは10数名。それから、その下の職員として、シニアスタッフやスタッフ。これも、5~6名から多いところでは30名、40名ということになりますけれども、日々の監査業務を通じてOn the Job Trainingを行っております。会計基準がIFRSということであればIFRS、日本基準であれば日本基準、その適用が監査上受け入れられるかどうかということについて、監査基準に従って業務を行っているということでございます。したがって、会計基準が違うというところはございますけれども、基本的な枠組みは一緒でございます。

さらに監査チームは、監査契約の締結から監査計画の立案、手続の実施、結果の取りまとめ、意見の公表につきまして、チームとして責任を持って遂行いたしまして、その結果は、この上にあります「審査」という矢印の右にございます、法人内の独立した立場の審査担当社員の、通常、これは1名ないし2名でございますが、審査を受けます。

その下の矢印でございますけれども、監査チームは監査手続の一環といたしまして、監査対象会社より会計処理に関する見解の提示あるいは相談を日常的に受けます。その見解や相談に対しまして、監査基準に従いまして批判的な検討、それから証憑の確認といったことを行って監査上の取扱いを決定していくわけですが、その案件というのは、会社の規模によりますけれども、年に数十件、あるいは多いところでは数百件ということになりまして、太宗は監査チームと監査対象会社の間でやりとりが行われる。そのうち、どうしても複雑な事象、あるいは会計基準の取扱いが明確でない事項、IFRSの場合はおそらく1割から2割ということになると思いますけれども、この下の矢印にあります専門的な見解の問い合わせを、本部IFRSテクニカル部門に行います。これは、トーマツの中の組織でございます。

本部のIFRSテクニカル部門では、実際に監査チームから問い合わせがあった場合、基準書の内容や結論の根拠、IFRS解釈指針委員会での議論を確認した上で、過去の相談事例を確認し、必要な分析につきまして、もっとここを詰めたほうがいいのではないかというような指示を監査チームにいたします。この分析を何回かやりとりした上で、最終的な回答を提示する。監査チームは、本部のIFRSテクニカル部門から受けた回答をもとに、案件の監査上の取扱いを決定するということで、この過程で、チーム全体のスキルというのは相当上がってきているというところでございます。

さらに、本部IFRSのテクニカル部門でグローバルな取扱いとの一貫性に問題が生じる可能性があると判断したものにつきましては、私どもトーマツで到達しようとしている見解に問題がないかどうかということを、デロイトのネットワークファームの主要国のIFRSセンター・オブ・エクセレンス、これはグローバルIFRSリーダーシップチームと言いまして、主要9カ国のネットワークファームの代表で組織されておりますけれども、こちらに照会をする。ここの組織自体は頻繁に連絡を取り合っておりまして、ほぼ毎月、実際に会って会議を開催しております。ここで検討してもさらに取扱いが明確ではない、ということになりますと、IASB、IFRS解釈指針委員会への照会等のエスカレーションがなされます。ただ、ここまで辿り着くというのは、現場の監査チームが日々こなしている案件のうち、相当稀ということでご理解いただければと思います。

こういった日常の監査業務を通じまして、私どもの監査チーム自体の実力もアップしているというのが私どもの実感でございます。同じ監査チームのメンバーでも、初度適用のときには少し頼りないメンバーもいたのですけれども、監査経験を経て実際にレベルアップしているというのが実感でございまして、それは、おそらく監査対象会社側のレベルが向上していることの何よりの証かと考えております。私からは以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。

次に、日本公認会計士協会の取り組みにつきまして、関根委員、お願いいたします。

○関根委員

ありがとうございます。

それでは、私からは、資料5を使いまして、日本公認会計士協会についてお話しさせていただきます。私どもは、会計・監査の専門家の団体として、かねてより中期的・長期的視野に立って国際会計人材の育成に努めておりますが、本日は、裾野の拡大と国際的な場での効果的な意見発信ができる人材の育成に分けて、主な取り組みについてご説明させていただきます。

まず、国際会計人材の裾野の拡大については、特に公認会計士試験合格者及び上場企業を監査する中小規模の監査事務所に着目して、IFRSの理解を深める研修を実施しております。

公認会計士試験合格者は、公認会計士になるための条件として3年間の実務補習を受け、その修了考査に合格する必要がありますが、スライド3にありますように、実務補習においてIFRS研修を設けており、2015年期生からは、その研修科目を大幅に増加しております。これらの研修は、主に任意のe-learningですが、1年目のIFRS基準(概論)は必須科目とし、IFRSの基礎的な知識の定着を目指しています。年次が増すごとに難易度を上げ、3年目はIFRS財団が開発した「フレームワークに基づくIFRS研修」、後でお話ししますけれども、これを用いたグループディスカッション形式の研修も実施する予定です。

このような新人育成を中期的な観点から取り組む一方、IFRS任意適用企業の増加に備え、監査事務所につきましては、先ほど古内参考人から説明がありましたように、それぞれ取り組みを進めていますが、実務の経験がまだない中小規模の監査事務所での対応が、我々の直近の課題と認識しております。

協会では、従来より、中小監査事務所の監査実務の参考に資するために、「中小監査事務所連絡協議会」というネットワークを設け、喫緊の課題や最新の情報などの提供に主眼を置いた研修会を適時に開催しておりますが、その一環として、中小監査事務所が留意すべきIFRS上の取り扱いに着目した研修を、実務経験のある会員によって提供しています。スライド4にありますように、1つは、IFRS導入時に役立つ研修会であり、また、もう一つは、日本基準とIFRSとの差異やIFRS適用上の典型的な論点について、実務的、具体的に解説する研修です。

また、従来から実施している個別の基準を解説する研修に加え、原則主義であるIFRS基準に対応する会計上の判断の育成を目的とした研修も提供しております。スライド5にある「フレームワークに基づくIFRS研修」は、IFRS財団が開発した概念フレームワークに定める財務報告の目的に着目した教育方法であり、具体的な設例に基づき、IFRS適用上の必要な判断や見積もりの能力を養うものです。

協会は、IFRS財団の教育イニシアティブ・ディレクターらを講師に招き、先に説明した実務補習生や中小監査事務所などなどでの研修の講師となり得る方を対象に、講義形式に加え、グループディスカッション形式の研修を実施しました。そこでは、講師が受講生に適用上の判断に必要な技能や知見を示す一方、受験生には積極的な発言が求められますので、自ら判断し、また発言する能力を育成するための研修として展開するように進めております。

さらに、これはIFRSに限定しない、より広い視点での国際会計人材の育成にも取り組んでおります。具体的には、スライド6に記載のとおり、基金を設置し、留学支援や海外派遣を継続的に実施しております。川島国際奨学金は、我が国の公認会計士業界の発展・進歩に貢献できる国際会計人材の輩出を目的に2006年に設置されたものであり、岡本ファンドは、アジアを中心とした現地の会計・監査の調査・研究により、現地に進出する日系企業の経営活動がどのような環境下で行われているのかの理解を深めることを目的に、1993年に設置されたものであり、これらは今後も引き続き行っていく予定です。

次に、スライド7において、国際的な場で効果的な意見発信できる人材の育成についてご説明させていただきます。

1つ目は、IASBなど関係機関への人材派遣による実務的な経験の蓄積です。IASBへは、これまで10名以上の公認会計士が派遣され、基準設定活動に参画しております。また、加えてIFRS財団アジア・オセアニアオフィスに監査法人よりスタッフを数名派遣、またASBJに多数派遣された公認会計士の多くも国際的な業務をしております。

2つ目は、各自所属する監査法人を超えて交流し、ハイレベルで実践的な議論を交える場の提供です。1つには、2011年10月より設置されたIFRS勉強会があります。これは、IFRSに精通した公認会計士の育成を主な目的として、座長である山田辰己元IASB理事のもと、月1回の頻度でIASBの会議の討議内容を議論するものです。参加者は、英文のアジェンダペーパー、これは毎月大体500ページほどあるということですけれども、それを事前に読み終えた上で、アジェンダペーパーの質問に関する自らの意見を発表し意見交換を行っています。また、IASBの各プロジェクトに精通したASBJのスタッフにもご協力いただき、アジェンダペーパーの内容、議論の背景を事前にご説明いただいております。毎回、相当量の英文を読むための負荷は大きいですが、継続することで着実にIFRSの理解が深まることも実感すると参加者から聞いております。

もう一つ、海外・国内の有識者との意見交換会があります。これまでは、ハンス・フーガーホーストIASB議長の来日を捉え、またロバート・ハーツFASB元議長らを招聘し意見交換を行っています。参加者は、主に、協会のIFRS関連専門委員会のメンバーや、先ほどご説明しましたIFRS勉強会のメンバーとなり、海外有識者を招いてのハイレベルな意見交換会は、これらの有識者に日本の公認会計士の高い技能の層の厚さを示すよい機会でもあると考えております。

協会の主な取り組みは以上になりますが、今後もこれらの取り組みを継続して行うとともに、幅広い層の会員に対して、それぞれの習熟度に応じて国際的な対応力の向上に資する、効果的な人材の育成の取り組みを行っていきたいと考えております。

○安藤部会長

ありがとうございました。

次に、財務会計基準機構の取り組みにつきまして、都事務局長と小野委員からお願いいたします。

○釜委員(代理)

財団法人財務会計基準機構の都でございます。本日は、釜理事長が所用により出席できませんので、代理で出席させていただいております。よろしくお願いいたします。

財務会計基準機構と企業会計基準委員会は、共同して国際的な会計人材の育成に関する取り組みを行っており、私とASBJの小野委員長から、2人でご説明させていただくことにいたします。

それでは、資料6の、お手元のスライド2枚目をあけていただけますでしょうか。

当財団では、中長期的な視点に立った国際的な会計人材の発掘、そして育成を図るために、2011年に会計人材タスクフォースを設置しました。会計人材タスクフォースは、財務諸表の作成者、監査人、そして利用者に参加いただいております。そのタスクフォースの議論の結果として、2012年に会計人材開発支援プログラムをスタートしております。

スライドに記載のとおり、これまで1期、そして、今、2期目がほぼ終盤に来ておりますが、延べで、監査人で27名、作成者で17名、利用者で12名、あわせて56名の方々が、講師の方のご尽力も得まして、IFRSの会計のプログラムのほか、英語のライティング、それからディスカッションのトレーニングも行っております。

また、このほかIASBの鶯地理事などの方もお招きしまして、最新のIFRSの動向のアップデートなども行っております。

プログラムにご参加いただいた方々は、所属する企業・団体のご理解を得てご参加いただいており、通常の業務をこなしながら、非常に多くのカリキュラムの中、大変だったと思いますけれど、スライドに記載していますように、このプログラムに参加いただいた方の中からIASBの研究員の派遣が2名、ASBJの研究員として3名、それからASBJの専門委員への就任も7名いただくなど、その後の活動につながっております。

これ以外の方々も、多くの方がIASBのアウトリーチに参加されるなど、成果が上がり始めているところであります。

○小野委員

企業会計基準委員会の小野でございます。引き続きまして、私から、IASBへの研究員の派遣に関しましてご説明をいたします。

同じ資料6の3ページをご覧いただきたいと思います。

ASBJでは、国際的な会計基準の開発への貢献の一環といたしまして、2006年からIASBにスタッフを派遣しております。任期は、原則としまして2年間で、毎年1名派遣することとしております。

派遣者の選考に当たりましては、原則として公募を行って幅広く参加を求めております。

派遣が決まった方につきましては、半年程度、ASBJに出向をいただきまして、基準開発に関する研究を受けていただいておりまして、その後、IASBに派遣をしております。スライドにありますように、これまで8名の方を派遣しておりまして、皆さん、IASBから非常に高い評価を受けております。最近は、ASBJからの派遣者は即戦力として期待されるようになってきています。例えば、現在、派遣している方で下から3番目の日本銀行から派遣いただいている方は、動的リスク管理、いわゆるマクロヘッジ・プロジェクトのマネジャーでございまして、ディスカッションペーパーの起草を行っておられます。

また、その下の監査法人から派遣をいただいている方は、先ほどの人材開発プログラムに参加された方で、現在、退職給付プロジェクトのマネジャーを担当しておられます。

IFRSに関する人材を育成するためには、IASBのボードメンバーあるいはスタッフと一緒に基準開発を行うことが最も効果的と思われ、これらの方々は、将来的にIASBにおけるIFRSの開発や日本からの意見発信の中心的な役割を担っていただくことを期待しております。

4ページをご覧いただきたいと思います。IASBへの派遣とともに、米国の会計基準設定主体でございますFASBにも国際研究員を1名派遣しております。この方は、これまでFASBにおきまして概念フレームワークや非継続事業に関する会計基準等を担当して、現在は、出張ベースでIASBの概念フレームワーク担当のスタッフとしても活躍をしていただいております。

次に、人材開発という意味では、ASBJにご出向いただくことも、IASBの方々とコミュニケートすることになるため非常に有効だと思っております。

ASBJのスタッフのうち、IASBの基準開発に関連する業務を行っているスタッフは、ここにございますように、毎月のIASB会議の内容の分析、国際会議への参加、IASBスタッフとのコミュニケーション等の活動を行っております。

最後に、少し人材開発につきまして考えておりますことを2点ほど述べさせていただきたいと思います。

1点目は、人材のプールの拡大についてでございます。

今、ご説明いたしましたように、IASBへのスタッフの派遣などを通じまして、少しずつ、将来を担う人材のプールができ上がってきております。

ただ、欧州などの状況を見ますと、地理的な違いもありますけれども、IASBのスタッフ、各国の基準設定主体のスタッフ、それから会計事務所、または財務諸表作成者との人材の交流が非常に活発でございまして、大きな人材プールができ上がっているというふうに思われます。

今後、我が国におきましても、IFRSの開発で主導的な役割を担うようになるためには、人材のプールをもっと大きくしていく必要があると思っております。

2点目はお願いでございますが、先ほどの会計人材開発プログラムへのご参加、IASBのスタッフへの派遣、あるいはASBJへの出向、いずれも今現在、担当されております仕事を離れて活動をしていただくため、所属をしておられる企業あるいは会計事務所のご理解とご協力がないと成り立ち得ません。現在もご協力はいただいておりますが、今後、さらに我が国の人材プールに厚みを持たせるためには、企業や会計事務所のさらなるご協力が必要と思われますので、何とぞよろしくお願いしたいと思います。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。

これより質疑・意見交換に移りたいと存じます。どうぞ、ご自由にご発言いただきたいと思います。挙手をしていただくと、私が指名いたします。はい、石原委員。

○石原委員

新日鐵住金の石原でございます。

グローバル人材育成の観点から、思うところを申し上げたいと思います。最初にご説明いただきました国際会計基準をめぐる最近の状況という資料の最後、8ページに、課題ということで2つ書かれております。

それで、今、いろいろとお話をお伺いいたしましたけれども、今のお話の大半というのは、ここにあります下段のほうの、要するにIFRSへの移行の問題、こちらにかかわるものだったのではないかと思っております。

この下段の問題につきましては、基本的には実務の問題と認識しております。任意適用企業が増加をしてきて、経験が蓄積されてくるということによって、本来的には次第に解消されてくる問題ではないかと想定しております。

日本を代表する企業の多くが、先行してIFRSのほうに移行している一方で、強制適用を予定していない中にあっては、監査法人側、それから企業側も一定の対応能力を持っておりまして、おのずと人材の裾野も拡大してくる性格の問題ではないかと認識してございます。

一方で、私の問題意識は、上段の、我が国が考える「あるべき国際会計基準」の内容についての意見発信の強化が課題という方が、はるかに重要な問題ではないかと認識しております。

任意適用とは言いながら、日本の会計主権がある種及ばないIFRSの比重が高まってくる中にあっては、我が国が考えるあるべき国際会計基準、これをIFRSに着実に反映し、IFRSをより高品質なものにしていくことに貢献するという形で、日本がIFRSに対して影響力を持つことが、IFRSの適用拡大の必要条件ではないかと考えているところでございます。

その際、日本が意見発信していく際の1つの重要なポイントといたしましては、会計基準の目的に関する認識ではないかと感じております。

会計基準は、投資家向けの情報提供機能を担うと言いますけれども、それにとどまらず、企業行動自体に大きな影響を与えると考えております。

したがって、JMISにも明記されておりますとおり、会計基準は、企業経営に規律を与えることを通じて、企業の持続的な成長、長期的な企業価値の向上に資する役割を担っていると考えております。

例えば、のれんを償却する場合と償却しない場合とでは、M&Aといった企業行動に影響を与えかねないことは想像にかたくないところでございます。

こうした日本の基本的考え方を、説得力を持って意見発信できる人材、すなわち作成者という実務的な立場よりも、企業経営の観点から、あるべき会計基準を議論することのできる人材の育成が急がれているのではないかというのが最大の問題意識でございます。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。川島委員、どうぞ。

○川島委員

連合の川島でございます。

本日、皆様からのご説明を伺いまして、国際会計人材の育成にそれぞれのお立場で熱心に取り組みをされていることがわかりました。これらの取り組みを、より強化し、効果的に進めるには、関係する主体の協力、連携が重要であり、その中で旗振り役としての金融庁の役割は大きいというように考えます。

そこで事務局にお聞きしたいのですが、来年度、予算編成の取りまとめの時期でもありますので、金融庁における新規の取り組みなどがあればお聞かせいただきたいと思います。以上です。

○安藤部会長

こちら、事務局で何かお答えいただけますか。では、田原企業開示課長。

○田原企業開示課長

こちらにつきましては、先ほどご説明したとおりでございまして、現在、適用例についての作業を進めておりますとともに、東京証券取引所と、その適用についての考え方をまとめているということでございます。

新規施策につきましては、現時点で、特にそういうことをするということは考えていないわけですけれども、これにつきましても、今後よく考えていきたいというふうに思っているところでございます。

○川島委員

ありがとうございました。

○安藤部会長

はい、河野金融国際審議官。

○河野金融国際審議官

一言、人材という観点から補足をさせていただきますと、私どもが9月に公表いたしました金融行政方針の中で、会計の分野だけではありませんけれども、専門性の高い国際人材の育成ということについては力を入れなければならないという認識で、具体的な内容については、今、いろいろ議論しているところでもございますけれども、これからさらに注力していくという所存であります。

○安藤部会長

川島委員、よろしいでしょうか。

○川島委員

はい、ありがとうございました。

○安藤部会長

それでは、窪田委員、お願いします。

○窪田委員

先ほど石原委員のご意見がございました、私もそれに追加で意見を申し上げたいのですが、資料1の8ページのところの上段と下段の課題がある。上段の課題は非常に大きいということで賛同いたします。

私は、この下段の課題ですけれども、石原委員のご見解では、自然に解決していくというお話ではあったのですが、今のペースでIFRS任意適用企業が急増していくと、監査法人内で対応できる人材が不足するという問題が起こりかねないというふうに、私は、今、懸念しています。人材育成というのは、監査法人も作成者も利用者もそれぞれ努力していかなければいけない課題ですけれども、まず4大監査法人で率先してIFRSの実務の部分での専門家の拡充をお願いしたいと思います。先ほど古内参考人から、極めて先進的な取り組みをされていることをお聞きしまして敬意を表しますが、できましたら、企業がIFRSを任意適用しようとしているときに、人材不足に不安を感じないで済むように、どれぐらいIFRSの実務に対応できる人材のキャパシティーがあるかということを、外部に開示していただけるとありがたいと思います。

今、IFRSを採用していない業種がまだある。採用企業が出てきている業種はいいですけれども、IFRSを採用している企業が1社も出ていない金融業とか建設業とかこういった分野が残っていますので、同じIFRSの専門家といっても、特にそうした採用が進んでいない分野でも、研究した人材がいるということを外部に開示して、全業種で採用が進むように努力していただきたいと考えております。よろしくお願いします。

○安藤部会長

ありがとうございました。何か、監査法人のほうでございますか。

それでは、古内参考人、どうぞ。

○古内参考人

一監査法人として、大所高所の議論は会計士協会に委ねるといたしまして、今、ご質問がございました、できるかできないか、リソースは足りているのかというところでございます。結論から申し上げますと、基本的に監査の枠組みというのは変わりませんので、それはできる。ただし、作成能力があれば、監査対象会社側で財務諸表作成能力が十分にあれば、という前提付きになるかと思います。

これまでの任意適用会社を見ると、基本的には先ほどのご説明にもありましたとおり、IFRS適用に向けて全社のプロジェクトとして位置づけて、優秀な人材や十分なリソースを投入するということで、時間をかけて取り組んでいらっしゃるわけです。そうすると、私どももできる限り経験者を入れたり、優秀な人材を優先して加えるということで対応してきたところで、そこでの議論で切磋琢磨して、人材が育成されてきたということは事実でございます。

これが、前向きではない会社ではどうなるかと仮定させていただきますと、作成者側にやる気もない、リソースもない、結局、人も採れないということになると、現在の経理の方々は実務で手一杯ですので、日本基準と同じでいいじゃないか、みたいなところから話が始まってしまうわけです。そうすると、心を解きほどくところから始めなければいけない。場合によっては、あいつは頭が固いから替えてくれとか、うちのほうもあんな会社へは行きたくないとか、そんなことでリソースが3倍、4倍と必要になっていくわけでございます。

ですので、成長曲線と同じで、ある一定のところまでは順調に経験が積まれるのですけれども、そこを超えて、ある一定の目標に達成しようとすると非常に限界コストがかかるということで、足りるか足りないかというと、皆様が前向きであれば、作成能力があれば、できる、リソースは足りるということでございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。企業側で何かご発言がありそうな気もするので。逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

たたみかけるようで恐縮です。古内参考人が言われるお話はよくわかります。任意適用が始まって5年ですし、ここまで適用数が増えてきたという中で、端的に言って、私どもが知りたいのは、例えば各監査法人において人材教育、トレーニングをやる上においても、マネジメントとしての方針があって、何社対応可能であるといったことかいう話がベースにあると思います。それを大きく見て、協会におかれても、企業が手を挙げれば何社対応可能だといったような、非常にわかりやすいものがあると、これは作成者側にとって非常にありがたい。いつでも対応可能だというお話については、心はわからないわけじゃないですけれども、実務はそういうものではなかろうと思いますから、そういう指標があれば非常にいいのではないかと思います。

わかりやすく説明してほしいというのが素直なお願いです。

○安藤部会長

何かございますか。それでは、古内参考人。

○古内参考人

「明日3,000社いきますので、明日から監査をお願いします」と言われても、それは無理です。また逆に、今、申し上げました、やる気もないというと言い過ぎかもしれませんが、逆に日本基準をきっちりやっていて、しっかり考えているから、今、IFRSに行くモチベーションがなかなかない、というような会社もありますので、そういった会社が一旦やる気になって、リソースをきちんと集めるということであれば、それに対応できる能力はあるということでご理解いただければと思います。

○安藤部会長

これについて、公認会計士協会、森委員、どうぞ。

○森委員

ありがとうございます。

会計は、監査も含めて実務対応の中で深掘りをしていくということになると思います。企業側の説明でも、そういうご説明がありましたけれども、これだけIFRS任意適用会社数が増えてきていて、企業サイドで、一部、不満があるという声も聞かれないわけではないんですが、全体としてはきっちり監査のほうも対応してきているということが現実だと思います。

従いまして、IFRS任意適用会社はこれからどんどん増えていき、「検討している」も含めると300社があると聞いているところでありますけれども、それに対しても、監査上、対応できるように、各監査法人、そして中小事務所についても体制を組んでいくということです。

ただ、準備には一定の時間が必要であり、明日からIFRSを適用して公表するというわけではありません。企業も、やはり準備をするわけです。これは、2年であるだとか、3年であるだとか、そのぐらいの準備期間が必要でありますので、その準備期間の中でしっかりと、その企業とコミュニケーションをとりながら、IFRSの適用を促進していくことになるということであります。また、そういうやり方が実態であって、そういうやり方でやってきたからこそ、この92社に対応してきているということであります。今後も、それを促進していくということになります。

○安藤部会長

西村委員、お願いします。

○西村委員

会計士の先生方の肩を持つわけではありませんが、私どもは2010年ごろから強制適用を前提とした準備を進めてまいりまして、この4月から、IFRS任意適用を実施しておりますが、この間、会計士の先生方といろいろな議論をする中で、社内でIFRSの核人材を10名程度育成するという観点も持ちながら、会計士の先生方と協力をしながら進めてまいりました。その間、先生方も相当な勉強といいますか対応をされてきておられまして、我々と一緒になって成長されてきているなということを強く感じたところでございます。

もちろん、大きな監査法人ですけれども、我々の現場対応という面では、それほど多くの先生方が、おられるわけではありませんが、きちんと対応していただいているなというふうに思いますので、一挙に先ほどの3,000社になれば、それは無理でしょうけれども、300社というような話であれば、十分に、我々の経験から言えば対応していただけるんではないかなと思っています。

一方、このIFRSの基準そのものを適用していく中で、やはり私も先ほどの石原委員と同じ問題意識を持っておりまして、実際、適用してみますと、やはり幾つかの問題があります。のれんや、ノンリサイクルに加えて、さらに開示をしてみますと、IFRS営業利益の中に、経常的な費用も特殊な費用も全て入り込んでいますので、これをどういうふうにして分けて、いわゆる企業の力というものを説明するのかという結構難しい問題があります。

ということで、私どもと致しましては、IFRS営業利益の上に事業利益というのもつくりまして、その中で経常的な収益を表示し、さらにそれ以外のものをその下に置くことによって、IFRS営業利益とすることとしております。

これでIR等では専門家には事業実態を説明できるわけですが、一方、一般の投資家とか、あるいは個人株主にどうやってそういうところを説明していくのかというのが、我々にとって大きな課題であろうというふうに考えておりまして、今後、検討していきたいと思っております。IFRSの課題としては、このような点もあると思いますが、8ページにも挙がっていますように、国際的な場で、昨今のASBJのように、ほんとうに我々が考えるIFRSの基準、あるべき姿、これをきちんと意見発信をしていただける人材の育成、これが大きな課題だろうと思っているところでありまして、この点でも、ASBJに期待するところ大であります。

○安藤部会長

ありがとうございました。熊谷委員、お願いします。

○熊谷委員

みずほ証券の熊谷でございます。

私、さきほどご紹介のありましたASBJと財務会計基準機構の会計人材開発支援プログラムの第1期に参加させていただきまして、現在、IFRSアドバイザリーカウンシルの委員を石原委員とさせていただいております。実は、今年から副議長に任命されまして、副議長として活動させていただいております。

この財務会計機構、ASBJの人材開発支援プログラムというのに、実際、参加してみまして、ある種、スパルタ教育みたいなことで非常に大変でしたが、一方で、その経験がありまして、国内外の会計基準、会計制度に係わるいろいろな議論に参加させていただき、また発言できております。ここで、改めて財務会計機構とASBJに感謝申し上げる次第です。

次に、先ほどから問題になっております8ページ目の上段と下段の問題でありますけれども、まず下段のほうに関して言いますと、これはどちらも喫緊の課題であるとは思います。日本が対外的にIFRSの任意適用をコミットする中で、実際にオペレーションが回らない可能性があるというのは、やはり何とかしていく必要があろうかと思っております。

その意味で、金融庁と東証がやられている会計の基本方針に関する調査というのは、非常に大きな武器になるんじゃないかなと考えております。

現在、既に適用済みの90数社あるいは任意適用を発表しております20数社に加えまして、東証が9月に発表されました調査によりますと、IFRSの適用を考えている会社というのが190社ほどあります。ですから、今現在、もう既に適用済みあるいは適用を発表した会社、それから検討の段階の会社が合計で300社あるということですね。

今、もう既に適用を決めているという会社も含めまして、日本の企業のIFRS適用の時価総額というのは、実は、世界で第8位になっております。オーストラリアに次ぐほどの水準です。日本は強制適用をやっておりませんけれども、IFRS適用国として非常に大きな存在感を持つに至っております。ちなみに、先ほど申しました適用を考えている会社全てがIFRSに移行したと仮定しますと、その時価総額、6月ベースで計算した数字でありますけれども、香港、イギリスに次いで世界第3位になってまいります。まだ非常にソフトな形で検討されている会社もありますので、必ずしも全部というようなことではないにせよ、今、日本の任意適用の状況というのは、それぐらいの見込みが出てきているわけです。そういう中でそれらの企業のIFRS任意適用ニーズに対応できるのかどうか心許ないと思います。ですから、この下段のポイントも非常に重要だと思います。特に、今、適用を考えている会社に関しましては、その書きぶり等から、どの程度、真剣かというのは、ある程度、わかりますので、やはり業界、これは公認会計士協会あるいは経団連が中心になって、今後のIFRSの適用のある程度のペースというのがつかめると思いますので、それに従って監査人あるいは作成者サイド、もちろん個々の監査人あるいは作成者で既にそういう取り組みをされていると思いますけれども、どれだけのIFRS人材を開発していくのかという、ある種の全体的な計画、ないしはロードマップというのが取りまとめられて、公表されていくというのが、今、IFRSを採用されていない会社にとっても非常に大きな羅針盤になるのではないかというふうに考えております。

一方で、先ほど、問題になっております上段のほう、これは下段のほうが解消されていくと、どんどん人材のプールが広がって解消されていくというのは間違いないと思います。しかし、それには非常に時間がかかるというのも事実です。やはりこういう人材開発に当たっては短期・中期・長期といったような形である程度のマイルストンを決めまして、現状の課題と、それぞれのステージにおけます問題点、課題、解決すべき問題というものをよく分析した上で取り組んでいく必要があろうかと思います。

現状で言いますと、日本は、強制適用していないにもかかわらず、このIFRS財団あるいはIASBにおける存在感というのはかなり高いというふうに思っております。

実際IASBの理事として鶯地氏が参加されておりますし、これは、日本はずっとIASBに席を占めているわけであります。それからトラスティーに関して言えば、2名、岡田氏と佐藤氏が入っておられますし、その上のモニタリングボードは、そこにいらっしゃいます河野金融国際審議官が、今、議長をされておられます。アドバイザリーカウンシルでも2名の委員が出ております。

一方で、IFRS解釈委員会に関して申しますと、これもずっと席を占めておったのが、最近、残念なことながら韓国に取られるというようなことも生じております。やはり、任意適用ということでそういうことが起こるのかもしれない。強制適用国に奪われても仕方ない部分があると思うのですけれども、残念ながらわが国において海外にアピールするだけの人材が不足してきているという側面もあるのかもしれません。特に、近年では、アジア、韓国が強制適用しておりますし、中国は強制適用しておりませんけれども、香港に上場しております中国本土の会社は任意適用しております。そういう意味で、やはりアジアの中でのライバルというのは非常に増えてきているということに関して、危機感を持っていかなきゃいけないと思っております。

ですから、先ほども申しましたけど、やはり現状、どういう人材が、国際的に出せるような人材がいて、そういう方々をベースに集中的に、会計的なトレーニングを積んで頂くとか、そのような短期的な対応もあわせて考えていく必要もあるのではないかと思っております。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。辻山委員から手が挙がりました。

○辻山委員

ありがとうございます。

先ほど来、問題になっているIFRS対応の監査の件ですけれども、私は、これは2つの話が組み合わさってしまっていると思います。監査というのは、あくまでも監査基準に基づいてやるものですから、米国基準を採用している大半の企業、それからIFRSの一部ですけれども、米国で資金調達していればSOX法監査で、監査のレベルがそちらになっている。そのほかの企業は、IFRSでも日本基準でも、監査は日本基準に基づいてやることになっている。ですから、これは上場市場の監査の問題であるのに対して、先ほど来、問題になっているのは、基準のコンサルといいますかアドバイザリー、これは監査法人に求める場合もありますけれども、必ずしも監査法人が全て基準の適用の仕方について指導する立場にはない、密接な協力関係になければアドバイザリはできないわけですけれども、そういう立場にもないので、監査の問題と、基準を適用していくときの基準の適用の仕方に関するアドバイザリーの問題というのは、ちょっと分けて議論しておかないといけないのかなというのが、第一の感想でございます。

それから、本日いただきましたいろいろな資料のご説明が先ほど来ございましたけれども、まず大学、私は大学に所属しておりますので、大学における会計教育の現状ですけれども、これは2010年当時、日本が強制適用に行くのではないかという時期に、大学の一部は、会計教育そのものをIFRSでやろうという、財務会計論の中身をIFRSでやろうという時期も一瞬ございました。そうじゃない大学のほうが大半だったわけですけれども。今は特論扱いといいますか、米国でも公認会計士の試験に入ってきていますけれども、そのプレゼンスが低くなって、今、選択科目ということになっております。

ご承知のように、米国、中国は強制適用ではありません。中国の香港の一部に任意適用がありまして、米国、中国はコンバージェンス・アプローチの立場をとっておりますので、もちろん会計教育はしますけれども、この教育全体をIFRSで教育しようという風潮はないというふうに理解しております。今年の8月、アメリカの大学のほうに訪問しましたけれども、アメリカは自国基準を堅持していくと聞いています。

今でもアメリカのアンダーグラデュエイトの教育では、昔のテキストといいますか、ヘンドリクセンのテキストなんかが定番になっておりまして、旧来型のモデルに基づく教育、これは続いていくだろう。それにIFRSとの関係、あるいは最近のFASBの基準の中で入ってきた公正価値の問題をどう扱うのかというようなことで、かなり教育の現場でも、その中身について苦慮しているというのが現状だと思います。

それとの関係で言いますと、資料1の上の問題、先ほど石原委員からご指摘のあった問題というのは、これからIFRSの問題に真剣に向き合おうと思えば思うほど重要な問題になってくるというふうに考えております。

今は、かなり体力の強いといいますか、そういう企業が適用していますが、それでも比較的インパクトが大きかった企業と少なかった企業がある。これが、もしどんどん広がっていくとすると、IFRSそのものがきちんと理解されていなければならない。監査法人の方々が企業に行って、どうしてこれが利益になるのか、どうしてこれが損なのかということについて、十分な説明ができないまま、基準がこうなっているから従いなさいということでは、これは長もちしないと思います。

ですから、その辺のところをきちんとしておかなければならない。教育というのは、昔から言われているように、これは釈迦に説法ですけれども、「すぐに役立つ教育というのはすぐに役に立たなくなる」ということですね。IFRSの考え方についての教育こそが重要なことで、なぜ、IFRSはこうなっているのかを教育しなければならない。あるいは、もしIFRSがおかしいところがあるとしたら、それは将来的に正されていってしかるべきだと思うので、会計士になった方々が、例えば10年後に、前に私が言ったことは間違いで、また基準はこう変わりましたということでは責任を果たせないわけなので、今、基準はこうなっているからと受け売りをするのではない、そういう厚みのある教育をすることこそ重要なのかなと思っております。

中身については、一々申し上げませんけれども、例えば1つの例として、IFRSには非上場企業の公正価値評価というものがありまして、非上場株を全部公正価値で評価しますと、ROE経営というのが、昨今、叫ばれておりますけれども、ROEの分母がいきなり膨らんでくるということで、優良な株を持っているほど分母が膨らんでROEが下がってくる。あるいは、将来見通しが悪くなってくると分母が縮まってROEが高まっていく。いろいろなことが起こってくる。

それから、ノンリサイクリングの問題につきましても、これは、その他有価証券については日本の働きかけ等もあって、今、当期純利益に入っておりませんけれども、そのかわりノンリサイクリングになりましたので、その結果、その他の包括利益に算入すると売却損益は当期純利益に入らないという、さまざまなところで問題が生じている。これをどう考えるのか。

国際的なアピールであるとか、政治的な外交関係の中で、きちんと日本のプレゼンスを維持していくということはもちろん重要ですけれども、それによって、日本の監査の質が下がったり、あるいは日本企業の開示の質が問われたりということがあっては絶対にいけないと思いますので、IFRSというものがどういう基準であって、今、どこの立ち位置にいるのかということを理解した上で、適用企業も適用すべきでしょうし、それから監査法人も、そういう立場で監査をしていかないと、市場のリスクが、例えばのれんの償却問題とか、今、アメリカでものれんの減損の遅れによって倒産リスクが高まっているという懸念をPCAOBが持っているというふうに今年の8月に訪問したときにアメリカの大学の先生がおっしゃっていましたけれども、そういうこともございます。

そういうふうに考えますと、日本というのは、米中は自国基準を堅持したコンバージェンス・アプローチ。日本は、コンバージェンス・アプローチ+任意適用という、しかもだんだん任意適用のプレゼンスが高まってきたという、世界でもまれな立ち位置に現在あると思います。つまり、さまざまな経緯を経て非常に例外的なポジションになってしまっているわけです。けれども、それは必ずしも悪いことではなく、日本国内に基準間競争というのがあるわけですから、日本の会計基準の質を高めるということが非常に重要で、かつ、今回できましたJMISの意義もそこにある。そこでは日本としてぎりぎり国際的に譲歩できるけれども、これ以上は譲歩できないということが示されたわけですから、これを大事にしていくということが重要なのかなと思います。かつ、IFRSについては、まあ、いいじゃないかということでやっていて、将来、何か起こったら、やはりこれは大変な問題になりますので、これに関する意見発信もきちんとしておかなければならない。

最後に、ちょっと長くなりましたけれども、そういう意味では、例えば東証のアンケートでは300社が準備しているということですが、私、これは驚いたんですけれども、わざわざ「IFRSに対する対処法はどうなっていますか」というようなアンケートというか、そのようなものを最近入れている。そうすると日本の企業は真面目ですから、これは入れなきゃならないというメッセージと受け取られかねない。そういう誘導というのは、むしろ日本の市場を混乱させるのではないか。やはりニーズのあるところで適用していって、きちんといいものは勝ち残って、淘汰されていくという環境を整えるべきなんじゃないかなというふうに思います。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。平松委員、お願いします。

○平松委員

ありがとうございます。先ほど来の上段、下段については、私は両方とも大事だという立場を取っています。また、私の場合は大学と学会という立場で、一個人としての意見を述べさせていただきたいと思います。

西日本にある大学の学生会計研究会に所属する大学生たちが集まりまして、毎年西日本大会という研究大会を開催しています。本年はたまたま、今月末に関西学院大学で開催することになってます。私は記念講演を頼まれました。講演テーマとして、たまたま「グローバル会計人材の育成は見果てぬ夢(Impossible Dream)か?」というテーマを出しておりました。それで話をすることになっているのです。今日はその意味でも非常に参考になる審議会だなと思ってここにいるのですけれども、そういうテーマで講演しようと考えたほど、私自身にとってこれは重要なテーマなのです。

グローバル会計人材の育成という場合、いろいろな意味合いがあると思いますが、例えばIFRSについては、やはり内容を理解すると同時に英語力が非常に大事になるなと思っております。

例えば、私どもの大学では、毎年のように、著名な会計学者をお招きしています。英語圏からだけに限らないのですが、どうしても英語で話をしていただくことになるわけです。そのときに、これは身内の恥をさらすことになりますが、私が所属しております商学部の学生は、英語での質問ということになると、もう口にチャックのような状態になることがよくあります。ところが、国際学部へ行きますと、英語でどんどん質問してくれます。私は商学部の人間ですが、同じ大学の人間としては誇りに感じるというようなことがあります。英語というのはものすごく重要な意味を持つなというふうに思っております。

それとの絡みで、今度は上段といいますか、意見発信できる国際会計人材育成の話ですが、我が国は今、そのためにかなりの努力をしていると思っております。とりわけ大事なのは、先ほど来あります、資金とともに、人を出すということです。人によって協力するという形。さらにはそれにとどまらず、既にしていることですが、例えば概念フレームワークとかJMISとかの英語版の作成です。これは非常に大きな意味を持つと思います。有能な人がいても、日本として発信するべき中身がなければ大変ですけれども、既にJMISがあり、これを日本の考え方として紹介できる立場にある。これをもって議論するということは、日本の考え方を知らしめるための非常にいい機会です。ちょっと極端な話をしますと、JMISは日本の考え方を発信するという意味で、たとえ適用されなくて非常に大きな意義を持っていると理解しております。

日常的には、私にとりましてはむしろ下段の、大学における、あるいは学会における国際会計人材ま育成に取り組んでいます。特に大学では、これは辻山委員もご指摘のように、今、いろいろな会計基準が日本には存在していますので、そういうことでは、基本的な考え方をきちんと整理して理解してもらわないといけないという、大事な側面があります。と同時に、ちょっと処方箋的になりますけれども、例えば簿記ならば簿記検定を通じて実力を上げていくような仕組みが大事です。

私どもの大学の商学部の例で申しますと、1年生の春は日商簿記3級程度を必修にしております。2年次になりますと、今度は次の3つの中からの選択です。日商簿記2級程度、大阪商工会議所のビジネス会計程度、それから、東京商工会議所のBATIC(国際会計検定)。この中からどれかを取らないといけない。学生数で見ると今年は3分の1ずつぐらいずつ取っているようですけれども、期待しておりますのは、例えばBATICを取る学生が、次にはグローバル会計人材を目指して進んでくれないかなという期待をもてるということです。

さらに、大学の中では、例えば来月早々にはデロイト・スカラーに選任されている、ブラジルとインドネシアの若手2人をお招きして、学生への講演と大学院生の論文指導をしていただこうと思っております。彼らにはポルトガル語、インドネシア語が母国語ですが、英語でないと話にならないので英語で実施することになります。これはお互いにとって非常に厳しいことですけれども、とにかく英語でこれを行うことが大切です。

それから学会レベルでありますが、これは、今、橋本委員が会長を務めておられます国際会計研究学会がIFRSを主に取り扱う学会であるとすれば、もう一つ、日本会計教育学会がありまして、ここでは会計教育、つまり、人材育成と扱う学会です。もちろんより大きい学会として日本会計研究学会がありますが。

アメリカで会計教育について非常に重要なレポートを出したPathways Commissionの委員長を務めたブルース・ベーンというアメリカ会計学会の会長が、来年9月に日本会計研究学会に来るだろうと思います。その1つの狙いは、会計教育による人材育成について、何かの示唆を得ようということにあります。

その場合も、やはり英語が我々にとって非常につらいものになると思います。ですから、会計学者も含めて、特に若手と言われる人たちが、たとえば留学するような機会が多くあればいいと思います。

最近、その局面で韓国が非常に強いということが認識されています。これは、ことの善し悪しではなく、事実として多くの韓国の会計学者がアメリカでPh.D.を取っているということがあります。ですから、国際会議をいとも簡単にやってしまいます。日本では、国際会議を開くにしても言葉が厳しい障壁となります。

最後に、ちょっと極端な話ですが、やはりこういうグローバル会計人材の下段の話として、わかりやすいという意味で言うと、例えば公認会計士試験に合格し、かつ東京商工会議所のBATIC(国際会計検定)である程度の点数を取った人を、グローバルCPAジャパンというような形で非公式に認めるような、そんな仕組みがあれば、モチベーションが上がって、もっと多くの人が、国際会計人材の資格にチャレンジしやすいのかなと思ったりしています。特定の試験の名前を出すことが適切かどうかわかりませんが、そんなことを思いました。国際会計人材の裾野を広げるためには何らかの仕掛けが必要だろうと思うのです。そういう仕掛けの例として、申し上げたまでで、特定の試験のPRをする意図ではございません。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。森委員、お願いします。

○森委員

ありがとうございます。

私も、資料1の8ページについてお話しさせていただきたいと思います。上段、下段、それぞれ非常に重要であるということで認識しております。下段のほうのIFRSの人材ということで言いますと、いろいろ取り組みをご説明いただきまして、かなり先進的な取り組みもあるということでありますので、これはしっかりと促進していくということが必要だと思います。

適用企業も、それに対応できるのかというご質問がありましたけれども、92社というふうに増えてきています。やはり会計は、その実務を通じて理解が深まり、そして専門性も高まるということになりますので、この拡大によって着実に増えていくのだろうと思います。

ただ、1つ懸念があるのは、会計の専門家としての公認会計士の合格者数、これは受験者数もそうですけれども、若干、減ってきているというところで、下げどまり、下げどまりと言いながら下げどまりになっていない状況があります。11月13日に発表がありましたけれども、そういう状況であります。

大学においても、会計を専攻する、あるいは会計の中でも、監査を専攻するという学生が減っているのではないかという話を大学の先生からお伺いするんですが、学部専攻に当たって、その前の高校生のころから、会計に対する興味といいますか、そういったものがないと、なかなか学部専攻のところでも会計を専攻してくる人が出てこないということになるのではないかということであり、高等教育だけではなくて幅広く、もしかしたら義務教育からかもしれませんし、あるいはまた大学を卒業した後の生涯教育のところかもしれませんので、その幅広いところでの会計教育というものを行い、その会計のベースをしっかりして、先ほどご発言がありましたけれども、その中でIFRSをしっかり理解するという体制が必要であると思います。拡大ということもそうですが、深掘りも必要であるということだと思います。

上段のほうの意見発信、これが非常に重要でありまして、特に我が国の考え方をしっかりとIFRSに反映させるということにつながるわけでありますので、非常に大事なところだと思います。

下段のほうをしっかり支えて促進していけば、上段のほうにもつながるということではあるのですが、やはり意見を発信するに当たって、非常に効果があるのは、IASB等の会議体の委員を確保する、シートを確保するということがやはり必要なのではないかということです。これまで、ご意見もありましたけれども、任意適用であっても、そういうポジションをしっかりとキープしてきていて、また活躍をしていただいて、意見発信をしていただいているということではあるのですが、今後も継続をしていかなければならないということだと思います。

その継続をするに当たって、こういった会議体は、私、ほかのところをあまり知っているわけではありませんが、目的が、パブリック・インタレストであります。基準開発でありますので、その目的に合った委員構成が常に求められているということです。

確かに個人一人一人の委員の専門性、そしてコミュニケーション能力等の資質が必要である、重要であるということは確かではあるのですが、パブリック・インタレストでの委員構成ということになると、地域のバランスであるだとか、あるいは所属のバランスであるだとか、そういったところが求められてきます。

地域のバランスは、もちろんアジアであるだとか、北米であるだとか、EUであるだとか、そういったところのバランスになるわけですが、属性のバランスということになりますと、監査人だけが委員になるということは、これは非常にバランスに欠けるということになります。属性として企業、監査事務所、それと教育機関、すなわち学者の先生方、そして利用者、投信会社等ですね。そして、パブリック。これは、ASBJであるだとかJICPAだとか、そういったところになるのですが。そういったバランスが求められてくるということになります。

従いまして、このバランスをどうやって我が国として調整していくのかという視点も、意見発信のためには重要なことではないかと考えています。

どうしたらいいのかというのはなかなか難しいのですが、やはり関係者が連携をして、人材を育成・確保するとともに発掘もしなければならないということだと思います。

公認会計士協会では、監査事務所だけではなくて、企業や、そのほかの組織体、これは官公庁等もそうですけれども、そういったところの中に入って活躍している公認会計士のネットワークをつくっているところであります。ただし、これは参加ベースになります。ですから、企業の中では管理職あるいはCFO、トップの方もいらっしゃいますけれども、そういった役員も含めたネットワークがあり、そういった方たちに対する継続的な研修を図るとともに、人材の発掘、この人ならばという、そういう人材の発掘も必要だと考えて対応しているところであります。いずれにしても、それぞれの属性の関係者の強い連携、これが必要なのではないかと考えている次第であります。以上です。

○安藤部会長

ありがとうございました。時間の関係で、もうおひと方かおふた方、お願いできますか。山澤委員、お願いします。

○山澤委員

先ほど来、何人かの委員の方から触れていただいておりますけれども、ちょうど2カ月ほど前、東京証券取引所が、2015年3月決算会社の会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示内容につきまして分析を行いまして、その取りまとめ結果を公表したということでございます。

取りまとめ結果の主要なポイントにつきましては、先ほど熊谷委員がかなり詳細にご紹介していただいているので、そこを繰り返しはしませんけれども、若干、補足させていただければと思います。

先ほど来、議論になっております8ページの上下段の話の主として下段の関係で言いますと、先ほど森委員もおっしゃっていた300社ということでございますが、そのうちの194社というのが、公表結果の記載の中で言うと、IFRS適用に関する検討を実施している会社ということになっております。この辺の約200社弱の会社が、どういうスピード感で現実にIFRS適用に移行していくかどうかというところが、おそらく全体感、マクロで考えたときには重要なポイントになるのではないかというふうに考えているところでございます。

これに関して言いますと、実際の開示の中で、具体的な検討状況を記載している会社がございます。その中身を見てまいりますと幾つかの検討段階がございますが、最も多くの企業が記載していただいたのが、マニュアル・指針の整備ということで、かなり具体的な検討まで入ってきていると思います。

もちろん、194社の中を見てまいりますと、さまざまな準備段階というのはあると思いますけれども、その中でかなり進んだ検討をしている先が多いということでございます。おそらくかなりの数の会社が、実際にその検討をした結果、やめてしまうということではなくて、IFRSの採用に向かっていくのではないかと予想しているということでございます。

それから、もう1点でございますけれども、今回は、3月決算会社についての分析結果の公表ということで、これ、1回きりで終わりということではございません。今後とも継続して、その分析結果を公表していくつもりでございます。

現時点では、具体的には、9月決算までというよりは12月決算会社が結構数もございますので、ある程度、まとまったところでということになりますと、12月決算会社の開示が出そろった後になると思います。決算短信ベースで言うと、1月末から2月中旬ぐらいに開示されますので、その後、分析結果のアップデートというのを実施いたしまして、4月に入ってからぐらいのタイミングで公表できるといいかなというふうに思っているところでございます。以上でございます。

○安藤部会長

ありがとうございました。逆瀬委員。これが最後になりますので、手短にお願いします。

○逆瀬委員

今日の人材育成の議題のベースになる話ということで、これは、小野委員へのお願いです。今日のような議論をする上でも、基準設定主体におかれて、ただいまの状況は、海外対応に非常に注力されているところはよくわかるんですけれども、国内基準の開発について、どういうスタンスで臨むとか、そのプロジェクトの計画はどういうものかを示す、いわゆる中期運営方針やプロジェクト計画表が、長らく中止されたままに、もう3年、4年経過しています。

我々作成者が実務を行う上で、あるいはIFRSに切りかえた企業もそうでない企業も、IFRS切りかえを検討している企業も含めて、ジャパンギャップがどうなるかは基本の話ですね。これについて、今は、なかなか設定主体のほうからメッセージが出てこないという状況があるわけです。私どももIASBの基準設定の状況をながめておりますが、リース会計基準がこの来月あたりに改訂版が出るなど、いろいろと対応すべき課題はあります。ジャパンギャップがどうなるかということを抜きには実務は考えられないわけです。作成者サイドに、特にそういうニーズがあると思うのですけれども、この情報ニーズに、ぜひ、設定主体では応えていただきたいという素朴な要望を持っておりますので、一言申し述べさせていただきました。

○安藤部会長

何か一言ございますか。簡単にお願いします。

○小野委員

ありがとうございました。ご指摘のように、中期運営方針とか、あるいはプロジェクト計画表は、現在、公表しておりませんが、収益認識基準の開発の着手など、個々のテーマごとに市場関係者と協議の上、対応を図っているところでございます。ご発言のように、市場関係者の予見可能性を高めることは非常に重要なことだと思いますので、今後、何らかの対応を検討していきたいと思っております。

○安藤部会長

ありがとうございました。残り時間3分を切りましたので、ここで会計部会長としてまとめをさせていただきたいと思います。今までのご議論をこういう形でまとめていいかなということでございます。各委員、参考人から、「国際会計人材の育成の取り組み」についていろいろお話を聞きました。第1点がIFRSに関する知識・経験が豊富な人材の裾野の拡大と、2点目、国際会計基準審議会等、国際的な場で効果的に意見発信ができる人材の育成。この2つの面から審議、意見交換を行い、貴重なご意見をいただきました。会計人材の確保につきましては、IFRSの任意適用企業の拡大という課題を考えた際、最大の障害の1つとなりかねない要素であると考えられ、その裾野の拡大に向けて、企業と監査人・公認会計士協会双方においてさらなる取り組みの必要があると存じます。

企業におかれましては、IFRSに基づく財務諸表を適切に作成するための取り組み、体制を一層強化していただくということ。それから監査人・公認会計士協会におかれましては、IFRS適用企業の増加に対応して、監査がさらに円滑に実施されますよう、IFRS適用企業の増加傾向を見通しながら、IFRSに習熟した公認会計士の育成・確保の取り組みを一層強化していただくということが重要かと存じます。

一方、我が国が考える「あるべき国際会計基準」の内容についての意見発信の強化のためには、国際的な場で効果的に意見発信ができる人材を、途切れることなく輩出していくことが必要です。こうした人材の育成には時間がかかるとともに、所属する組織にとっても貴重であり、外部に出しにくい人材となることから、企業・監査人・利用者等の関係者が中長期的な観点に立って、より多くの人材の育成に取り組み、人材の厚みを増していくことが重要だと思います。

こうした取り組みは、金融庁、経済界、財務会計基準機構、日本公認会計士協会など関係者が連携して進めていくことが重要であり、会計部会において、必要に応じてフォローアップさせていただきたいと考えております。

最後ですが、配付した資料7がございますが、これはASBJの最近の取り組み状況についてでございます。時間の都合上、説明は省略させていただきました。後ほどご参照いただければと存じます。

次回の会計部会の開催については、事務局より改めてご連絡させていただきます。

それでは、定刻になりましたので、本日の議事はこれにて終了させていただきます。

本日は、お忙しいところご参集いただきましてありがとうございました。これにて散会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課

(内線3887、3810)

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