企業会計審議会 第5回会計部会議事録

1.日時:平成29年2月14日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○安藤部会長 
 おはようございます。ほぼ定刻になりましたので、これより企業会計審議会第5回会計部会を開催いたします。皆様には、ご多忙の中ご参集いただき、誠にありがとうございます。

 今回から新たに会計部会に所属していただく方がいらっしゃいますので、事務局よりご紹介をお願いいたします。

○田原企業開示課長  
 企業開示課長の田原でございます。
 
 新たに2名の委員が任命されておりますので、ご紹介いたします。

 平野委員でございます。

○平野委員
 日本取引所の平野でございます。よろしくお願いいたします。

○田原企業開示課長
 湯川委員です。

○湯川委員 
 日本公認会計士協会の湯川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。また、本日は参考人として会計教育研修機構の新井武広事務局長、それから企業会計基準委員会の小賀坂敦副委員長にご出席をお願いしております。

 企業会計審議会議事規則に則り、本日の会議の公開についてお諮りいたします。本日の会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

○安藤部会長 
 それでは、ご異議ないということで、そのように取り扱います。

 それでは、議事に入ります。

 会計部会におきましては、IFRSの任意適用企業の拡大促進、IFRSに関する国際的な意見発信の強化、日本基準の高品質化、国際会計人材の育成の4つの課題について審議を行ってまいりました。

 本日は、会計部会でこれまで審議してきた4つの課題のうち、まずIFRSの任意適用企業の拡大促進と、国際会計人材の育成の取組みについて、事務局、会計教育研修機構、東京証券取引所、及び財務会計基準機構からご説明をいただいた後、質疑、意見交換を行いたいと思います。

 続いて、IFRSに関する国際的な意見発信の強化と、日本基準の高品質化の取組みについてASBJ及び経団連からご説明いただいた後、質疑、意見交換を行いたいと思います。

 まず、事務局よりIFRSの任意適用企業の拡大促進と国際会計人材の育成に向けた最近の取組み状況につきましてご説明をお願いいたします。

○田原企業開示課長 
 それでは、お手元の資料1に従いましてご説明させていただきます。1ページおめくりいただきまして、毎回ご説明をさせていただいておりますIFRSの適用企業数ですが、前回、2016年7月15日時点の数字をご紹介させていただいて、その時点では121社でしたが、2017年2月3日時点で135社ということで、前回より14社増加している状況にございます。時価総額ですが、上場企業に占めますIFRS適用企業の割合につきましては、1月31日現在で133兆円、22.5%ということで、前回、111兆円、21.5%でしたので、ほぼ横ばい、微増ということでございます。

 3ページ目以降の業種別の動向をご覧いただきますと、増えた14社のうち、サービス業、小売業がそれぞれ3社、精密機器で2社増加ということでして、やはり比較的業態ごとにばらつきがあるような状況で、増える業態では増えているという状況かというふうに存じます。

 世界的な状況につきまして、5ページ目の図でご説明を差し上げますと、前回ご紹介したとき、世界113カ国で適用されているということでしたが、強制適用国については6カ国増加をいたしまして、サウジアラビア、イラン、カザフスタン、リベリア、マラウイ、ナミビアが新たに強制適用国になったということでございます。一方で、インドにつきましては、これまで国内上場企業に対して任意適用を認めていましたが、IFRS適用企業が増えなかったということで、2017年の4月以降に全上場企業にIFRS任意適用を認めず、自国基準のみにするという予定だと聞いているところでございます。

 1ページおめくりいただきまして、IFRS財団の組織についてですが、2017年3月まで当庁の氷見野が議長を務めておりましたが、3月からIOSCOの代表理事会の副議長であるベルギーの金融サービス市場機構委員長のジャン・ポール・セルベー氏に交代をする予定になると伺っているところでございます。

 7ページ目以降、国内での取組みにつきまして、本日ご議論を頂戴いたしますが、『日本再興戦略2016』におきましては、関係機関等と連携いたしまして、IFRSに移行した企業の経験を共有する機会を設けることになっており、これにつきましては現在、会計教育研修機構が中心となりまして、IFRSの移行経験を共有するセミナーを企画されているということで、これにつきまして本日ご説明いただくということでございます。

 それから、同じく一番下の国際会計人材の育成に関連しましては、国際会計人材プールについて、この部会でもずっとご議論をいただいておりましたが、一番下にありますように、人材のプールを構築するということでして、こちらにつきまして8ページ目以降の現在の取組みを、財務会計基準機構を中心に関係者の間でご検討いただいているということでございます。国際会計人材ネットワークにつきましては、この目的のところにありますように、企業、会計士、アナリストなどの国際的な会計実務に精通した方々が、分野、立場の垣根を越えて交流、意見交換を行うための場を設けるということが我が国全体の会計監査に関する議論の質の向上の上で非常に有用ではないか、また、そういう国際会計人材として活躍したいというふうに考えられる個人のキャリア形成をサポートしていく。そういった国際会計人材の方々の見える化というものを図っていて、こうした人材の活躍の場を広げることで、各分野の業務の円滑化、品質向上に貢献をするということ、そして、こういったことを通じまして、関係者の協力によって我が国の会計基準に関する国際的な発信力の強化ですとか、我が国の会計・監査の信頼性確保にもつなげていくと、こういった目的を持って取り組んでいただいているということでございます。

 また、この図におきましては、運営の仕方ですとか、それから登録人材の例、また、こうしたネットワークをどういうふうに活用していくかということについての例などについてもお示しをしておりますが、詳細につきましては後ほどご議論を頂戴できればということを考えております。

 以上、事務局からのご説明とさせていただきます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 次に、会計教育研修機構より、IFRS移行企業の経験を共有するためのセミナーについてご説明をお願いしたいと思います。

 続いて、東京証券取引所よりIFRSへの移行を検討している企業に対して行った調査結果について補足説明をお願いします。

 まず、新井参考人よりご説明をお願いいたします。

○新井参考人 
 会計教育研修機構の事務局長を務めております新井です。私ども会計教育研修機構が開催しますワンストップ特別セミナー「IFRS移行経験の共有~IFRSへの移行を円滑に進めるために~」についてご説明をさせていただきます。

 まず、お手元の資料2の3ページ目に、私ども財団の概要を掲載しておりますので、ご覧いただければと思います。私どもの財団は、平成21年7月に日本公認会計士協会の外郭団体として設立された会計教育財団でありまして、公認会計士制度にかかわる事業として、公認会計士試験合格者に対する我が国唯一の実務補習機関として実務補習所の運営を行うとともに、公認会計士を対象とした継続的専門研修を日本公認会計士協会と共同で運営しております。

 もう一つの事業は、私どもの組織の設立目的にも深く関係しますが、会計実務に携わる方を対象とした会計実務家研修を行っております。私どもは、これら3つの事業を通じて、我が国の会計人材の育成、会計リテラシーの向上に取り組んでおります。また、平成25年11月には、IFRS対応会議のもとに設置されていました教育研修委員会を引き継ぐ形で関係諸団体の協力を得て、IFRS教育研修委員会を設置しました。そして、IFRS教育研修のあり方を検討し、自らプログラムを提供するとともに、関係する方々への働きかけも行っております。

 では、今回のワンストップ特別セミナーの概要をご説明させていただきたいと思います。資料2の1ページ目をご覧いただければと思います。今回のセミナーは、昨年6月に公表されました『日本再興戦略2016』で、IFRSに移行した企業の経験を共有する機会を設け、IFRS適用企業やIFRSへの移行を検討している企業等の実務の円滑化を図ることが盛り込まれていることを踏まえまして、金融庁をはじめ日本公認会計士協会、東京証券取引所、日本経済団体連合会、財務会計基準機構などの関係諸団体のご協力を得て開催するものでございます。

 IFRSの任意適用会社数の推移につきましては、先ほど田原課長からご説明がありましたが、着実に増加しておりまして、現時点では決定済みの会社を含めて135社と伺っております。また、東京証券取引所調べでは、IFRS適用を予定している会社とIFRSへの移行を検討している会社を合わせますと、昨年11月時点で252社あると聞いております。今回のセミナーのメーンの対象者はIFRSへの移行を検討している会社とその関係者でございますが、これらの会社の検討フェーズはさまざまであると聞いておりますし、企業規模や業種も広範囲にわたるようです。そこで、IFRSへの移行を検討している会社の幅広いニーズに応えるため、ワンストップ特別セミナーと銘打ちまして、3月10日、28日の2日間にわたり開催することといたしました。当日は東京会場のものを大阪、名古屋、福岡、札幌にライブ配信をする予定でございます。

 具体的なプログラムにつきましては、資料2の1ページ目と2ページ目に記載をしておりますが、IFRSの任意適用企業の拡大推進に関する我が国の取組みを古澤審議官に、IASBでの最近の審議動向を鶯地IASB理事にそれぞれご説明をいただくことにしております。また、東京証券取引所で実施されたアンケート調査の結果を東京証券取引所の青さんにご紹介いただくことにしております。さらに、IFRSの任意適用の検討状況のフェーズはさまざまであると聞いておりますので、日本基準とIFRSとの差異分析やIFRS選択時の監査上のポイントについてのセッションを設けまして、中央大学専門職大学院の長谷川特任教授とPwCあらた有限責任監査法人の鈴木さんにご説明をお願いしております。その上で、IFRSの移行経験を共有すべく、IFRS適用の経験談をお話しいただく企業につきましては、時価総額の小さい企業から1兆円を超える企業まで、業種も電気機器や精密機器や精密機器などの製造業から流通業、情報・通信業まで、幅広い業種の方7名にご登壇していただくことにいたしました。

 具体的には、日本たばこ産業の宮崎副社長、ノーリツ鋼機の山元CFOをはじめ、三井物産の塩谷さん、日立製作所の今給黎さん、KDDIの最勝寺さん、住友理工の有賀さん、富士通の坂口さんに、経営者の視点や実務の視点からそれぞれご説明をしていただく予定です。それぞれの講演者からは、後ほどご説明があると思いますが、東京証券取引所で実施されたアンケートの調査結果を踏まえまして、IFRS導入を決定するに至った最大の要因は何か、IFRS導入に当たり特に苦労した点や工夫した点、留意した点はどのような点か、IFRSを経営管理に用いることのメリット、デメリットや経営管理にIFRSを用いる場合にはどのように利用しているのか、IFRS導入後に特に苦労した点や工夫した点はどのような点か、そして、IFRSを導入してよかったと評価している点などを可能な範囲で具体的にご説明をしていただく予定です。ぜひIFRSへの移行を検討している企業やその関係者をはじめ、今後検討しようと考えておられる企業の方々など、幅広い関係者が本セミナーに参加され、IFRSの適用に関する理解を深めていただき、IFRS任意適用企業の拡大推進の一助になることを期待しております。

 以上でございます。

○安藤部会長 

 ありがとうございました。

 次に、平野委員よりお願いいたします。

○平野委員 
 日本取引所の平野でございます。

 それでは、資料3に沿いまして、IFRS移行経験の共有に係るアンケート調査結果についてご報告申し上げます。資料3をおめくりいただきまして2ページ目でございます。こちらは東証上場企業全社を時価総額で割ったパイチャートでございますけれども、資料にございますとおり、今回のアンケートの対象会社につきましては赤い点々で囲まれておりますIFRS適用予定会社と適用に関する検討を実施している会社ということでございまして、会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示を集計いたしました結果、こちらを対象会社とするということにしたものでございます。なお、これらの会社につきましては、IFRS適用済み会社、適用決定会社、及び先ほどの適用予定、適用を検討している会社、全てを合わせますと、社数的には全体は占める割合は大きいとは言えませんけれども、時価総額ベースでご覧いただきますと、適用済み会社と合わせておよそ全体の半分まで来ているという状況となってございます。

 続きまして、スライドの3ページでございますけれども、このスライドの3ページから4ページはアンケートの内容についてということでございます。アンケートではIFRSの検討状況、それから2番としてIFRSの適用時期、それから次のページになりますが、IFRSに関するセミナーのニーズ、この3つにつきまして調査を実施しております。IFRSの検討状況及び適用時期につきましては、会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示の分析結果を参考といたしまして、選択肢を作成してございます。また、セミナーのニーズの選択肢につきましては、金融庁をはじめとしまして会計教育研修機構などの関係者の皆様が意見を出し合って選択肢をご作成いただいたものでございます。

 続きまして、スライドの5ページでございます。こちらは業種別の対象会社数とそれぞれの回答状況をお示ししているものでございます。右上に赤字で記載をしてございますとおり、全体では252社、このうち185社からご回答を頂戴いたしまして、回答率は73%となってございます。

 スライドの6ページでございます。こちらは現在、実施をしております具体的な検討事項についての集計結果ということでございまして、155社がIFRSに関する情報収集、111社が知識の習得段階にあるということになろうかと思います。

 次に、スライドの7ページでございます。こちらは目標の時期に関するアンケートの集計結果でございます。検討を実施している会社の中にも目標時期を明確にしている会社というものがあるということがこちらのアンケートによって明確になってございます。

 次に、スライドの8ページでございます。こちらはセミナーにおいてどのような内容の説明を聞きたいかということに関するセミナーのニーズに関する集計結果ということでございますが、現時点で一番多いニーズといたしましては、経営管理にどのような影響があったかといったことや、IFRS適用の決定の際に考慮した点は何かといったことの、この2点ということになろうかと思います。こちらの表がそういう意味では上場会社が求めるセミナーのニーズということになろうかと思います。

 続きまして、スライドの9ページ、それから10ページでございます。こちらは、セミナーのニーズにつきまして、こちらで用意をいたしました項目以外に自由記載欄にご記載をいただいた項目を記載したものでございます。ご覧いただきますと、社内体制の整備でありますとか、コンサルを導入するかどうか、また、検討のプロセスといった記載がございまして、こちらはセミナーで聞きたい内容といったことにつきまして、より実務的、現実的な観点から記載をいただいたご質問というものが多いというふうに考えてございます。

 次に、スライドの11ページ以降でございます。こちらは11ページから13ページにかけましてセミナーのニーズを時価総額別で集計をした結果となってございます。分類といたしましては、スライドの11ページが時価総額1兆円以上の会社、12ページが1,000億円以上1兆円未満の会社、13ページは1,000億円未満の会社という分け方としてございます。総論で申し上げますと、今回のアンケートでは時価総額の大きな会社はグローバルに事業展開を行っていらっしゃったり、海外大手企業との競合に直面をしているといった事情から、経営管理に関するニーズが強いということに対しまして、相対的に時価総額の小さな会社では、IFRSの適用のメリット、デメリットに関するニーズといったものが強いということが言えるかと思います。

 もう少し細かく申し上げますと、時価総額で申し上げて1,000億円以上の会社と、1,000億円未満の会社で傾向が変わってきている点がございます。12ページのところで時価総額1,000億円以上の、相対的に規模が大きい会社といったところをご紹介申し上げますが、こちらではニーズの大きい強い順番として、経営管理、投資家への説明、また、IFRS適用のメリット、デメリットといったところになってございますが、13ページにございますように、時価総額が1,000億円未満の相対的に規模が小さい会社の場合には、IFRS適用のメリット、デメリットに関するニーズが一番強くなっているというところでございます。また、経営管理というポイントよりも、社内体制でありますとか、難易度が高い会計処理の対応といった、より実務的なところにご興味、ご関心を持たれているということが言えるかと思います。

 アンケートにご回答をいただきました1,000億円未満の会社の中には時価総額が100億円未満という小規模な会社も含まれておりまして、こういった会社もIFRS適用に向けたご検討を行っているという状況でございます。IFRS任意適用のさらなる拡大のためには、小規模な会社がスムーズに移行できるようにするといったことも肝要かというふうに考えてございます。

 私からのご報告は以上でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 続きまして、釡委員より国際会計人材の育成に関する取組みについてご説明をお願いします。

○釡委員 
 公益財団法人財務会計基準機構の理事長を務めております釡でございます。

 当財団の国際的な会計人材の育成に関する取組みにつきましては、昨年7月の当会計部会においてご説明をさせていただきましたけれども、本日はその進捗状況についてご説明をさせていただきます。お手元資料4「国際的な会計人材の育成に関する取組み」をご覧いただきたいと思います。

 まず、国際会計人材プールの構築についてでございますが、スライドの2ページをご覧ください。『日本再興戦略2016』の中の国際会計人材の育成の項に、関係機関等と連携してIFRSに関して国際的な場で意見発信できる人材のプールを構築するとされており、昨年7月の会計部会では会議体を設けて検討する旨をご説明させていただきました。先ほど田原課長から、目的等についてお話がありましたが、それを踏まえ、この2月3日に第1回の国際会計人材プールに関する検討会を開催いたしました。検討会の委員は、日本公認会計士協会、大手監査法人、日本経済団体連合会、日本証券アナリスト協会、企業会計基準委員会、財務会計基準機構の代表者により構成され、私が議長を務めさせていただいております。検討会では、国際会計人材プール、国際会計人材ネットワークといいますが、その登録、公表リストの作成の手順の検討、目的に沿った活用を行うための利用の方法、運用状況のフォローアップについて議論することとしておりますけれども、第1回の検討会では目的や趣旨の確認を行うとともに国際会計人材ネットワークの登録、公表リストの作成の手順の検討を行いました。

 スライドの3ページをご覧ください。第1回の検討会における議論の結果、資料に記載されている手順で国際会計人材ネットワークのリストを作成することとなりました。現在、各団体のご協力を得て構築の作業を開始しており、2017年3月から4月を目途に当財団のウエブサイトで登録者のリストを公表する予定であります。

 スライドの4ページをご覧ください。続きまして、当財団で実施しております会計人材開発支援プログラムについてご説明をいたします。昨年7月の当会計部会では、第3期のプログラムの準備を行っている旨、ご説明いたしましたけれども、昨年10月に第3期のプログラムがスタートしております。国際的な会計人材開発の目的は、IASB等の組織の活動に直接参加し、議論、意見発信できる人材を育成することが考えられますが、第3期の人材開発支援プログラムはこれらの人材に将来的になり得る層の拡大を図ることを目的としております。

 スライドの5ページをご覧ください。第3期のプログラムについては昨年10月にスタートしておりますが、受講者は、作成者8名、利用者3名、監査人4名、合計15名であり、また、プログラムの期間は1年としております。受講者は公募の上、当財団において選考し、決定しており、いずれのセクターにおいても優秀な方にご参加いただいております。第3期プログラムの特徴としては、従来のプログラムよりも人数を絞るとともに、期間を短くしており、層の厚みを短期間で増やしていくことを考えております。

 以上、本日は国際会計人材ネットワークの構築と会計人材開発支援プログラムの活動についてご報告させていただきましたけれども、いずれの取組みも関係者の皆様のご協力が不可欠なものとなりますので、よろしくお願いいたしたいと存じます。

 以上で私の説明は終了させていただきます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 それでは、これまでのご説明を踏まえて質疑、意見交換に移りたいと思います。ご発言ご希望の方は挙手をお願いいたします。石原委員、お願いします。

○石原委員 
 ご説明ありがとうございます。国際会計基準の任意適用が順次、順調に拡大をしていること、それからそれをサポートする活動が、ご紹介のあったセミナーも含めてきちんと展開されていることは大変すばらしいことだと思っております。

 それで1点、最後にご説明いただきました国際的な会計人材の育成に関する取組みに関してですが、このような国際会計人材のネットワークがきちんとつくられて、国際的に意見発信をしていくということは非常に重要な活動だと思っておりますので、このような取組みをしっかりと定着させていくことが必要であると考えております。とりわけ登録して終わりということではなく、ネットワークという呼称が示すように、登録された方々を含め、どのようにリソースといいますか、力といいますか、それをうまく結集していける活動というのはどういうものなのかということが非常に重要だと思いますので、その点について、引き続きこの取組みの検討を進める中で、よく議論していただきたいと思っております。

 以上です。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。関根委員。

○関根委員 
 ありがとうございます。私も、田原課長と釡委員からご説明いただきました国際会計人材について幾つか確認させていただきたいと思います。

 『日本再興戦略2016』でうたわれていますIFRSに関して国際的な場で意見発信をできる人材のプールの構築につきましては、私ども公認会計士協会でも趣旨に賛同しており、これまでの会議でもご協力していきたいと申し上げておりましたが、これをより有用なものにするために、少し趣旨など、幾つか確認させていただきたいと思います。

 まず、金融庁の資料の8ページの目的では、「日本再興戦略を受けて」と記載されておりますけれども、これまでの会計部会では、国際会計人材の育成に関する課題として、IASBなど、国際的な場で効果的に意見を発信できる人材の育成と、IFRSに関する知識や経験が豊富な人材の裾野の拡大の2つに分けて議論をしてまいりました。前回、7月の会議では、前者に関して人材のプールを構築し、管理するという方針が示され、私どもも賛同して協力していきたいと申し上げましたが、今回示されている目的には、それに加えて、IFRSに基づく会計監査の実務を担える人材等の育成も記載されています。後者については、私ども日本公認会計士協会などを中心に行わなければいけないということは十分理解しておりますが、この人材プールの構築というのは、監査人だけではなく色々な方も入っている中、この目的に関して、今の監査の実務を担える人材というと監査人のことを指しているようにも見えますが、もともと会計部会で議論しているのは監査だけではなくて、その他のものも含めて裾野の拡大という理解でしたので、そのような理解でよいのか、それによりここに入ってくる人材の範囲が変わってくるようにも思いましたので、念のため確認をさせていただきたいと思います。

 それから、この2つの目的では、適用する人材の特性や必要な人数の規模というのは異なってくるように思います。国際的な意見の発信をする場で意見を発信する方と、実務を担える人材の裾野拡大との違いについて、具体的にネットワークを構築したときにどのように運用していくのでしょうか。もちろん両方の目的に重なる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、例えば、目的ごとに分けて確認していくのか。その点についても確認したいと思います。

 また、この取組みの趣旨というのは、国際会計人材ネットワークを構築することにより、それを活用し、人材の育成を行っていくということですけれども、このリストは公表することになっておりますので、公表することの意味も含めて、公表することによってどういう活用のメリットがあって、人材育成につなげていく予定なのか。これは検討会でも色々と考えていくことと思いますけれども、現時点で考えられていることがあれば確認させていただきたいと思います。

 また、私どもも検討会に参加し、実際に人材登録を行っていきますが、その際に、登録ガイドラインを踏まえて選定基準を決定するとご説明がありました。この選定基準の作り方によっては、どのような方が登録されるかばらつきが生じる可能性があるのではないかと思われ、登録されている方の質の担保をどう保っていくのか、また、リストの登録の濫用がないようにするのかといったことも当然出てくると思いますので、これらの点について、検討会で十分に議論いただくことになると思いますけれども、もし現時点でお考えがあれば教えていただきたいと思います。

 以上であります。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。いろいろ、かなり細かいことにわたって出ましたけれども、事務局から。

○田原企業開示課長 
 私のほうから、まず。

 本件に関しましては、これまでも関根委員から今、ご指摘いただいた点について議論していただきまして、そもそも再興戦略におきましては確かに国際的な場で意見発信できる人材のプールと書いてあるわけでございますけれども、その人材のプールだけでは、この目的にかなわないというところから発している、この場でも、プールの検討会などでもいろいろなご意見の中で、そういうご意見があったように考えています。そうすると、1つ目のご質問にかかわりますけれども、少し幅をとったところからネットワークの構築を始めないと、この国際的な場で意見発信できる人材のプールというものがそもそも将来的にわたって構築できないということではなかったかというふうに考えております。

 したがいまして、石原委員からもご指摘ありましたように、こういうものをつくって、活用して、その中でそういう人材が育っていくような環境をつくっていくということから考えて、プールについては広く捉えるような形にすることが必要というのがこれまでの関係者の間、あるいはこの場での議論だったのではないかと受けとめているところでございます。ですから、目的につきましても、そういう観点からは意見発信のみということではありませんで、もう少し広く捉えていくことが必要ということで、8ページの右下にございますようないろいろな形での活用をする中でそういうネットワークというものを強化、人材を強化していくということになってくると思いますし、この場でもこの議論をしていただいているのは、こういうふうに活用したらいいのではないかというようなご示唆がもしあれば、この場でいただければと思いますし、さらなる議論につきましては、関係者の間で議論をしていくということではないかというふうに思っております。

 それから、見える化につきましては、この目的の4番目にも掲げてございますし、前回、前々回の会計部会での議論でもいただきましたけれども、そういう人材というのは本当に日本にとって必要なんだということを関係者の間で認識するということが非常に重要でありまして、各法人、各企業、あるいは学会などでそれぞれ人材を育成されていると思うわけですが、日本全体として、あるいは日本を越えてこういう人材が必要だということを再認識するという意味で見える化というのが必要だという議論だったのではないかと考えているわけです。また、こういうことが見えるようになることによって、インセンティブがついてくるのではないかというようなご指摘も頂戴をしているところでございます。

 そういうことでございますので、4つ目のご質問でございますが、登録基準について、どうしてもばらつきが出てきてしまうというのはあることだと思うのですが、目的はそういうことだと思いますので、目的を皆さんの間で共有していただいて、やはり日本にとって非常に重要なことなんだという認識のもとに取り組んでいただくということが何より大事なんじゃないかなと思います。もちろんリストについていろいろな副作用ということが想定されるのはおっしゃるとおりで、そういうものについては十分配慮していかないといけないと思いますが、やはり目的のほうを見失ってしまうと、意味がないものになってしまいますので、そこは本日その点についてもご議論いただきたいと思いますし、検討会の場でもご議論いただければというふうに考えているところでございます。

○安藤部会長 
 どうぞ、釡委員。

○釡委員 
 先ほど、登録のガイドラインのお話がございましたけれども、これにつきましては、先ほどの検討会でも、私どものほうから大きなガイドラインは示しておりまして、作成者側、監査人あるいは利用者側については実務でIFRSや米国会計基準等に携わっている方、あるいは知見を有する方という大きなガイドラインを示しておりますけれども、それに基づく各団体で選考した基準については各団体で決定していただくということで現在、選考をお願いしているという状況でございます。

 以上でございます。

○安藤部会長 
 よろしいですか、関根委員。

○関根委員 
 ありがとうございます。少し細かくなって恐縮ですけど、実際に実施するとなると公認会計士全体にも関係することなので確認させていただきました。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 西村委員、お願いします。

○西村委員 
 ありがとうございます。私ども、IFRSを任意適用して、大体2年ということでございます。この間、いわゆる経営管理の効率化等については、グローバル的な対応で進んできたというふうに思っておりまして、一方、適用自体に起因するような、以前、労使慣行がどうのこうのという話もありましたが、そういう問題は一切発生をしておりません。しかしながら実務的な面で相当な負荷が生じているのも事実でございます。IFRS営業利益というのは、いわゆる構造改革的な費用も含みますので、それを含めて開示をすると、なかなか事業実態が見えないということもあります。この為我々は事業損益という名前をつけまして、そういう、一種特別なものを除いて、比較検討ができるような資料もつくり、投資家をはじめとするステークホルダー皆さんに対して丁寧な開示という観点から、実際の業務を進めているというところでございます。

 また、IFRSの開示実務面ということで考えてみますと、具体的には短信の見直し等も進めていただいておりますし、また、今回は18号の適用ということも国内の会社であっても対応できるということとなり、そういう面で進んできておるのですが、やはり依然として負荷面では大変なところであります。特に第1四半期、第3四半期、レビューとはいえ相当の負荷がかかっている状況でもあります。この為、第1四半期、第3四半期の開示、これを軽減する、場合によっては廃止をするという点も検討して頂きたいと考えます。この結果、経理関係者の働き方改革にもつながると思うわけですが、そういう対応もお願いする中で、我々としてはより一層、先ほど来議論になっている人材育成に向けた強化、こういうことを図っていくということができると思っているところであります。

 以上です。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 平松委員、どうぞ。

○平松委員 
 ありがとうございます。ここで国際会計人材という場合に、公認会計士の方々や企業の経理担当の方々がその予備軍だとすれば、大学は、そのまた予備軍を教育するところということになります。大学で国際会計人材を育成しようという場合に直面する問題は、教育を担う教員自身がIFRSについての知識を十分に持っているとは言えないという点です。これは日本に限ったことではなくて、世界中そうだと思います。そのため、例えば国際学会などに参りますと、IASBが、国際学会に参加した研究者向けのセミナーを実施するといったことがしばしば行われております。したがいまして、国際会計人材の育成という場合に、その育成を担う教員の育成ということが非常に重要な課題になってくると思います。国際会計人材の予備軍の教育、あるいは予備軍の予備軍を教育する教員の育成という視点が、こういう国際会計人材のネットワーク構築の議論の中にもう少し入り込む必要があるのではないかと思います。

 以上、意見です。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。辻山委員。

○辻山委員 
 ありがとうございます。さまざまなこれまでの準備を重ねられて、今日に至っているわけですから、いろいろな考慮がされているとは思いますけれども、先ほどの資料の1にあります目的の、先ほど関根会長からもご指摘がありました、1番目と2番目というのは、かなり人物像のイメージが違ってくると思います。1番目の国際的な意見発信できる人材と、2番目の実際に国際会計の実務を担える人材というのは、かなりイメージとしても違うと感じています。私は学界会側からこの間のいろいろな動きを見ていまして、この件について思い出すのは、今さらながらですけれども、2000年に出ましたJWGペーパーという有名なペーパーです。これは金融商品の全面時価。これは負債も含めた全面時価で、ヘッジ会計もなくすということをうたったペーパーが出まして、これは世界でどの国も受け入れなかったという経緯がございます。

 そのペーパーの後ろに、ドイツ、フランスはディセンティングオピニオンがついていたんですね。ドイツ、フランスがこれは反対だと。日本はディセンティングオピニオンがついていなかったということで、これはどういうことなのかということが問題になりました。やはり国際的な場でディセンティングオピニオンを書くには大変な論文を起草しなきゃいけないということで、そこに出ていた人材が面倒くさかったのかどうかわからないですけど、一応、賛成したような形になってしまった。これはなかなか国際的な場でそういった意見発信をするとなると、英語の問題ではない。ここは「国際会計」人材となっていますが、切り離しますと、英語がしゃべれるという人を集めてもしようがなくて、英語がしゃべれて、IFRSを学習したということでは、国際的な場で意見発信する、論陣を張るということはなかなか難しいわけなので、実際にこれを運用していく場合には、特に2つの目的のうち前者についてはよほど慎重に対応すべきだと思います。英語のほうは今、コミュニケーションツールで常識というか、リテラシーになっているので、そちらに重きを置いて運用するということの弊害が過去のレッスンになっているのだと思います。これは意見でございます。

 それから、質問でございますが、こういった人材をプールするということが国際的に日本独特なことなのか、もう既に東南アジアとかはコミュニケーションツールとしての英語というのは常識になっているので、この段階でこういうことをやっている国があるのかどうかということに対するリサーチというのはどうなっているのか。こちらは質問でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。質問がございましたので、事務局から情報ございますか。

○田原企業開示課長 
 私どもの知る限りでは、こういったものをつくっている国はありません。

○辻山委員 
 そうしますと、こういうニーズがないというか、もうこういうのは常識になって、その次のステージに行っているという理解なのか、日本固有の事情があってのことなのか、ちょっとその辺に関する分析はいかがでしょうか。

○安藤部会長 
 どうですか、事務局。

○田原企業開示課長 
 諸外国においてどうということではなくて、やはり日本においてこういうことが必要であるという判断で『日本再興戦略2016』に盛り込まれたということであると思いますし、そこから関係者の方々に議論をいただいてこういう形で進めさせていただいているということであると思います。

○辻山委員 
 ありがとうございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 弥永委員、どうぞ。

○弥永委員
 ありがとうございます。私も、この国際会計人材ネットワークは非常に重要なものだと思います。私どものように大学で教えさせていただいている人間からすると、学生、すなわち、学部学生あるいは大学院生両方にとって、こういったネットワークがあるということがわかっていれば、将来こういうことに自分も参加していきたいな、こういう人材になりたいなという意欲も湧くと思うのです。そこで、このようなネットワークに参加されている方々が目立っていただく、あるいはこのようなネットワークがあるのだということを、学生の段階から、卒業しても社会に出た後も、認知できるようにしていたければと思います。そうしていただければ、底辺が拡大して、その中から興味を持ってこのようなことに意欲を持つ学生が増加し、人材の厚みが我が国でも出てくるのではないかと思いますので、この点もぜひ考えていただければと思います。

 以上です。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。橋本委員、どうぞ。

○橋本委員 
 今回の国際会計人材の取組みの意義は非常に大きいと思います。これまではどちらかというと個人ベースで後継者育成といいますか、先人として国際会議等に出ていった人が、自分の後輩というか、その場で人脈の中で紹介していくというようなことが日本においては主だったと思います。これが一つのサポート体制ということで国を背負っていくような形でできることは、かなり日本からの人材のプールを充実させる上においても重要だと思います。

 また、それぞれの個人の適正がございますので、監査の現場よりはこういった国際会議の場で実力を発揮するような、そういう隠れた人材も多いと思いますので、今回こういった、今まで個人ベースに依存していたところを、ある程度見える形でシステムを構築していくのはいいことだと思います。

 また、あわせて、かなりこういった国際交流とかを進めていく上においては個人の持ち出しみたいなところがありまして、大体、国際会議だとかなりお金を使って帰ってくるわけで、そういった資金面でのサポートもあわせてお考えいただければと思っており
ます。

 以上でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 熊谷委員、お願いします。

○熊谷委員 
 ありがとうございます。本日の会議に出席するにあたり、国際人材ネットワークの構築の中で、利用者としてどういう貢献ができるのか、あるいは利用者としてどんな参加資格があるのかということを考えておりました。たまたまここの今日の資料に出ておりますJFAEL、先ほど新井事務局長から会計教育研修機構のプレゼンテーションがございましたけれども、このニュースレターの下から3つ目に、IFRS財団の最新活動情報ということで、日本の財務諸表利用者とのワークショップについてという記載がございます。この活動は国際人材ネットワークとは全く別次元のところで、ある種、草の根的に発生している活動で、日本の財務諸表利用者とか、あるいは情報ベンダーの方々を巻き込んで、いろいろなトピック、最近では基本財務諸表のプロジェクトに対して日本の利用者を中心として議論してまいりました。その中で、その会にもIASBの方々が参加されて、非常に闊達な議論が行われています。この国際会計人材ネットワークをつくられるに当たって、やはり一方的なセミナーというよりも、作成者であれば作成者でいろいろな実務上の問題があろうかと思いますし、利用者であればやはり開示された情報に関しましてどのような問題点あるかというような議論がなされると思います。もちろん、監査人の方々であれば監査上のポイントですとか。せっかくこのIFRSのアジア・オセアニア財団のアジア・オセアニアオフィスというものもあるわけでありますから、こういう国際会計人材ネットワークに登録されたような方々を集めまして、一方的なセミナーではなくて、その時々の課題を取り上げまして、議論して、場合によってはIFRS財団のスタッフの方々も巻き込んで意見発信の練習をしていくということも必要なんじゃないかと思います。

 この利用者のワークショップに関しましては、実は日本語で議論しておりまして、同時通訳をつけていただいております。先ほど辻山先生からもございましたけれども、英語はやはりツールの一つでありまして、それよりも以前にやはり作成者あるいは利用者、監査人の方々、あるいは研究者の方々として、どういう問題意識を持って、どういう課題を取り上げて議論すべきかということのトレーニングの場も必要だろうと思います。そういう議論に参加されている中で英語の堪能な方が、この国際会計人材ネットワークに参加されるような方々というのはある程度英語ができるという前提になっておられると思いますけれども、国際的に積極的に意見発信をしていくためのトレーニングの場を想定していく、あるいはつくっていくということが必要なんじゃないかなと思う次第であります。よろしくお願いします。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 それでは、次に進ませていただきます。続きまして、IFRSに関する国際的な意見発信の強化と日本基準の高品質化についてASBJと経団連よりご説明をいただきたいと思います。

 まず、小野委員から説明をお願いいたします。

○小野委員 
 企業会計基準委員会の委員長の小野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 お手元の資料5をご覧いただけますでしょうか。本日は2ページの目次に記載している項目につきまして、昨年の7月以後の企業会計基準委員会の活動につきましてご報告をさせていただきます。

 3ページをご覧いただけますでしょうか。まず、日本基準の開発についてご説明をいたします。ASBJは昨年の8月に中期運営方針を公表しておりますが、そこでは日本基準の開発につきまして、高品質で国際的に整合性のあるものとして維持向上を図るとしております。

 4ページをご覧ください。収益認識については、昨年の2月に、収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集を公表いたしまして、33通のコメントレターを受領したことを昨年の7月のこの会計部会でご報告いたしましたが、その後、昨年の9月の委員会におきまして、基準開発の全般的な進め方としまして資料に記載の方針を定めております。まず、現在、IFRSの任意適用をしている企業が増加しておりますが、それらの企業のニーズと、日本基準を適用している企業のニーズの両方を可能な限り満たすものとなる方向で基準開発を行うこととしております。また、比較可能性の観点からは、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点としつつ、これまで我が国で行われてきました実務等に配慮すべき項目がある場合には、財務諸表間の比較可能性を損なわせない範囲で代替的な会計処理を追加することとしております。その方針のもとで、代替的な会計処理を追加するに当たっての課題の抽出を終えておりまして、現在はその課題への対応の方針の議論を始めたところでございます。

 5ページをご覧いただけますでしょうか。抽出しました課題につきましては、資料に記載のとおり4つに分類をいたしまして、個別に検討をしております。今後のスケジュールといたしましては、公開草案を今年の6月までに公表することを目標としております。難しい課題ですが、最優先事項として鋭意検討を行っているところでございます。

 6ページをあけていただけますでしょうか。収益認識基準以外の日本基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みですが、中期運営方針に従いまして、IFRS第9号「金融商品」、第10号「連結財務諸表」、第11号「共同支配への取り決め」、第12号「他の企業への関与の開示」、第13号「公正価値測定」、第16号「リース」について、まず専門委員会におきまして我が国の会計基準として取り入れた場合の実務上の懸念の把握等を行った上で、我が国における会計基準の開発、または改訂に向けた検討に着手するか否かの検討を行うこととしております。今後の会計部会でこの進捗をご報告させていただきたいと考えております。

 7ページをご覧いただけますでしょうか。その他の日本基準の開発ですが、現在、12月にリスク分担型企業年金の会計処理を公表いたしました。それ以外につきましては、現在、資料に記載した案件の開発を進めているところでございます。

 以上が日本基準の開発の現況でございます。

 次に、国際的な意見発信に移りたいと思います。9ページをご覧いただけますでしょうか。まず、国際的な意見発信として中心的に取り組んでおりますのれんの償却につきましてご説明をいたします。昨年の7月の会計部会でご報告させていただきましたとおり、ASBJは昨年の5月のIASBのボード会議と、7月のASAF会議で、「のれん及び減損に関する定量的調査」を報告しておりますけれども、その後、IASBは保険等の審議にリソースを費やしておりまして、のれんに関する審議は行っておりません。ただし、IASBの今月のボードのペーパーによりますと、のれんの検討を再開したとのことでございます。

 FASBにつきましては、昨年はのれんの減損の簡素化について議論を行っておりまして、のれんの償却についての審議は昨年の6月のIASBとの共同会議以降行われておりませんで、IASBの検討を注視している状況と思われます。

 一方、欧州ですが、欧州につきましてはのれんの償却につきましてはこれまでご報告させていただいているとおり、イタリアなどの賛成する国と、フランスなどの反対派に分かれている状況でございますけれども、議論そのものは継続をされておりまして、今年の1月のEFRAGボードにおきまして議論もされました。ただ、そこでは結論に至らず、検討を継続することのみが決定されている状況でございます。

 10ページをご覧ください。ASBJの対応でございます。昨年は先ほど触れましたように、日本、米国、欧州に上場されております企業ののれんの残高や減損金額の推移等に関する定量的調査を行っておりまして、昨年の10月にリサーチ・ペーパー第2号として公表をしております。また、昨年末に日本の主要なアナリストの方々にのれんに関するインタビューを実施をいたしました。これは国際的な議論の場ではしばしばアナリストの方はのれんの償却費は足し戻しをして利用されていないと言われておりますので、本当にそうなのかという疑問もございまして、償却をしている日本基準と、償却をしていないIFRS、あるいは米国基準の両方を分析しておられます日本のアナリストの方々にヒアリングを実施したものでございます。今後、この結果をリサーチレポートとして公表することを予定しております。

 のれんにつきましては、経団連からも本日、ご報告があると思いますが、作成者のアンケートを行っておられまして、引き続き連携をしてこの問題には取り組んでいきたいと考えております。

 11ページをご覧いただけますでしょうか。IASBの概念フレームワークの見直しは最終段階に来ておりまして、公開草案とあまり大きく変わらず最終化する見込みでございます。当期純利益とOCIに関連するIASBの暫定決定は11ページに要約したとおりで、結果としまして概念フレームワークでは、私どもが主張しております純利益の定義はなされない方向ですけれども、この純利益とOCIにつきましては今後、基本財務諸表プロジェクトで扱われる予定とされておりますので、引き続き主張を継続していきたいと考えております。

 また、ASBJの意見と似通った主張をしておりますフランスの会計基準設定主体と共同してリサーチ活動を開始しておりまして、今後、何らかの対応が図れないか、今、検討をしているところでございます。

 12ページをご覧いただけますでしょうか。概念フレームワークの見直しとか、保険プロジェクトが終了いたしますと、今後、IASBの基準開発の重点が開示関連のものに移っていきます。昨年11月に公表されましたアジェンダ・コンサルテーション2015に関するフィードバック文書では、IASBは今後の活動につきまして財務報告に関するベターコミュニケーションを図ることを強調しております。その主なものは基本財務諸表プロジェクトと開示原則プロジェクトからなります。基本財務諸表プロジェクトでは包括利益計算書に焦点が当てられまして、営業利益、EBIT等といった小計の追加とか、あるいはOCIのコミュニケーションの改善が検討される見込みでございます。開示原則プロジェクトでは、注記の役割や会計方針の開示などを記載したディスカッションペーパーがこの4月にも公表される見込みでございます。これらの開示に関するIASBの検討は、我が国にも重要な影響を与えることになりますので、今後、オールジャパンとしての取組みが必要なものと考えております。

 13ページをご覧いただけますでしょうか。昨年からIFRS適用課題対応専門委員会におきまして、我が国における適用上の課題、解釈の問題につきまして検討を開始しております。資料にありますように、専門委員会で取り上げるテーマの選定方法とか、IFRS解釈指針委員会に要望書を提出するか否かの判断基準などの内規をつくりまして、運用を開始しております。最初の案件といたしまして、リスク分担型企業年金に関する日本基準の指針を公表した際に、あわせましてIFRSにおける適用の検討を行ったところでございます。

 14ページをご覧いただけますでしょうか。最後に、修正国際基準の開発ですが、昨年7月に2013年中にIASBによって公表されました会計基準等に関する改正を公表いたしまして、その後、2014年以降、公表されたものにつきまして、2016年から17年に発行する会計基準について現在、公開草案を公表しているところでございます。現在は、IFRS15号に関するエンドースメント手続を実施しております。

 私からの報告は以上でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 次に、野崎委員からご説明をお願いいたします。

○野崎委員 
 ありがとうございます。住友化学の野崎でございます。経団連の企業会計部会長を務めさせていただいておりますので、私のほうからIASBへの意見発信の取組みの一環、先ほど小野委員長からもお話がございました意見発信の取組みの一環として、経団連として行いましたのれんの会計処理に関するアンケート結果の整理につきまして、かいつまんでご報告を申し上げたいと思います。

 資料6をご覧いただきたいと思います。資料6をおめくりいただきまして2ページ目、それから3ページ目というのは、これはまとめの表でございますので、まず4ページ目をご覧いただきたいと思います。企業会計部会に属しておられます58社の企業にアンケートを送付しまして、31社より回答をいただいております。アンケートの内容は、その次の5ページでございますけれども、のれんの性格、それからのれんの企業結合後の会計処理、のれんの償却年数の見積り、それから減損テストの改善という4つの項目につきましてアンケートを実施いたしております。

 アンケートを通して最も強調したいのは、ページを飛ばしていただきまして8ページをご覧いただきたいのですけれども、8ページにご回答をいただきました会社のそれぞれの適用する会計基準についても書いてございますけれども、IFRSの適用企業、それからIFRSの適用を予定する企業、それから、米国基準適用企業を含めまして、回答をいただきました企業の90%以上が国際基準への償却処理の再導入、償却処理といいましても償却プラス減損ということになるわけでございますけれども、これの再導入を望んでいたという結果が得られたということでございます。したがいまして、日本の産業界といたしまして、引き続き減損処理、償却プラス減損という処理を支持することに、その考えに変わりはないということが確認できたというふうに考えております。

 その他、このアンケートの結果のポイントにつきまして若干ご説明をさせていただきます。9ページでございますけれども、償却プラス減損を支持する理由につきまして、9~12ページに幾つかコメントをいただいておりますので書いております。例えば、9ページでございますと、支持する理由として、企業結合後の適切な業績の評価に資するというような考え方。それから、10ページになりますと、これが企業経営に規律をもたらすものであるというようなことが言われております。また、11ページになりますと、償却しないと自己創設のれんの計上につながるというような意見が、これはかなりございました。それから、12ページでございますけれども、のれんというのは経年で劣化することを踏まえますと、償却したほうが減損テスト自体も有効に機能するものではないかといった、そういう意見も聞かれております。それぞれのところにどういった基準を採用されている会社の方がおっしゃっているか、回答されているかということを括弧の中に記載をしております。

 それから、13ページは、これは2社だけだったのですが、減損のみを支持する理由というのもここには記載させていただいております。

 14ページは、IFRSを適用する場合の判断と、それから、今申し上げたような、本来、のれんは償却をすべきというところの中で、どのような考え方でIFRSを適用したかというところのご回答を記載いたしております。

 それから、15ページのところなのですけれども、非償却派といいますか、非償却のほうがよいとおっしゃっている中で、のれんの償却年数の見積もりが恣意的ではないかという反論が聞かれますので、その点につきましてもアンケートで聞いております。それが16ページでございますけれども、会計士と事前に十分に協議をする、あるいは将来キャッシュフローの予測期間を10年に下げるといった、そういう対応によりまして恣意性が介入する余地がかなり低減しているというふうに考えておりますので、償却年数の見積もりが恣意的であるという批判は当たらないというふうにお答えいただいた企業が多かったということでございます。

 さらに、のれんの最長償却年数についても聞いております。これはその次の17ページと、それから18ページですけれども、日本基準が償却年数20年以内ということでございますので、20年を押す声が比較的多かったわけですが、10年を押す声も結構ございました。アンケートの回答の中でも、IASBは20年では長いというふうに考えており、10年で主張すべきという意見もございました。この点につきましては、反証規定を入れるのかどうかといったことも含めまして、引き続き経団連でも検討してまいりたいと思っております。

 最後に、減損テストの改善についても聞いております。これは19ページでございますけれども、これは全く理論的にも実務的にも大きな問題があって、賛同する意見は皆無でございました。

 以上が、非常にかいつまんで走りましたが、アンケートの結果の概要でございますけれども、周知活動につきましても経団連として行っております。IASBに対しましては先週、2月8日ですが、IASBの鶯地理事と、それから企業会計部会の委員との会合におきまして、このアンケートの結果を直接お伝えいたしております。

 それから、昨年11月、経団連の事務局員をロンドンのIASBに派遣いたしまして、IASBののれんのプロジェクトの担当者の方にこの結果の、その時点では概要ですが、直接お伝えをいたしております。

 それから、先月になりますけれども、米国のFASBの議長が来日された際には、ゴールデン議長にのれんの償却につきまして要望いたしております。

 このアンケートにつきましては、今後、英訳も作成いたしまして、引き続き意見発信を行っていきたいと考えております。ASBJともよく連携をとりながら、粘り強くこの問題については取組みを進めてまいりたいと思いますので、ご支援のほどまたよろしくお願いいたします。

 私からの報告は以上でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 それでは、これまでのご説明を踏まえて質疑、意見交換に移りたいと思います。ご発言をお願いいたします。石原委員。

○石原委員 
 ありがとうございます。ただいま野崎委員のほうからご説明がありました通り、経団連としては、あるいは作成者としては、のれんの会計処理については従来どおり償却プラス減損を支持するということが基本的に明確になっておりますので、ここで一つASBJへのお願いです。ASBJのほうからご説明いただきました資料の10ページに、今度は利用者という観点から11名のアナリストの皆さんにインタビューを実施したとあります。本日まだご紹介はいただけないということですが、今後、公表される予定のリサーチレポートは非常に重要だと考えております。

 といいますのは、私も海外等に行く機会がありますが、やはり利用者のほうからしてみますと、のれんは海外の場合、減損のみですから、償却との比較は難しいのかもしれませんが、基本的には償却であっても減損であっても、足し戻してキャッシュフローがつくれればそれで良く、そしてできるだけ同じ尺度である減損のほうが実務的には足し戻しやすいということから、減損を支持する声が強いような感じがいたします。もちろん実証的にそれを確認したわけではありませんが、しかし、やはり今回のASBJのレポートで評価されるべきは、のれんの償却プラス減損、あるいは減損のみということの情報価値、これをどのように考えているのかという点と思います。そして、会計基準に対してどれほどの重きを置いて考えていらっしゃるのかということがまさに問われているということだと思いますので、既にインタビューは終わられているかと思いますが、そういった観点でしっかりと、ただ単に足し戻しやすいから減損のほうがいいということではなくて、会計基準としての評価、情報価値としての評価につながるような形で利用者の皆様がどう考えていらっしゃるのかということについて、わかるような取りまとめをぜひお願いしたいと考えております。

 その上で、作成者側、企業側のスタンス、それから利用者の皆さんのスタンスを踏まえて、そしてもし監査人サイドから特段のご意見があるのであれば、個人的には監査上も償却のほうがいいのではないかと邪推致しますが、ご提示いただいた上で、やはりIASBに対してのれんの償却をきっちりともう一度、日本として主張していくべきだと考えております。そのタイミング、その方法、これについてよく関係者で戦略的に議論し、対応していくことが必要だと考えております。

 以上です。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 小野委員、お願いします。

○小野委員 
 今、石原委員からいただきましたご意見についてですけれども、11名のアナリストにインタビューをいたしまして、いろいろ多様な意見が聞かれております。石原委員がおっしゃったような観点も踏まえて、今、分析をしておりますので、参考にしながら対応していきたいと思います。

○安藤部会長 
 徳賀委員、手を挙げておられました。

○徳賀委員 
 この経団連のアンケート調査ですが、のれんの会計処理に関して作成者の考え、かなり踏み込んだ調査を行われていて大変興味深い内容だと思います。ただ、心配事が2点ほどあります。1点目は、この1ページに示されているように、償却ということでは、オールジャパンで意見が一致しているというふうに示されているのですけれども、償却期間のところでは、意見の対立が鮮明なことです。IASBが償却を求めるというように方向転換した場合にばたばたするということにならないかという心配がございます。ちなみに、有力な複数の実証研究では5年~8年で超過収益力は平均回帰するという結果が出ているようですが、一部の大型合併に限れば、10年以上超過収益力が続く場合もあるということも出ています。それらの調査はいずれもその後の合併企業の被合併企業の超過収益力を維持する努力が含まれている(排除していない)にもかかわらずということです。換言すれば、「買入」のれんの超過収益力に自己創設のれんの部分が入っている可能性が高いということです。のれんを超過収益力を反映する資産と見る限り、架空資産の計上を回避するためには(会計フローのリアリティを持たせるためには、会計ストックの側のリアリティが必要となるから)、超過収益力の喪失がのれんの非計上の根拠となるはずであるので、10年以上ののれんの存続については例外規定を認めながら一般的なルールとしては10年以内とすべきと思います。

 もう1点は、この償却期間が「××年以内」というだけでいいのかということです。何年以上で何年以下というふうに、何年以上ということは議論されていませんが、超短期(例えば、2年)で償却してよいとすれば、それは合併時のミスプライシングではないか、それなら、減損ではないかということです。この場合、投資の失敗なのか、短期間で超過収益力が消滅する合併であったのかが不明確になります。減損が投資の失敗、ミスプライシングについてのシグナリングであると仮定すれば、償却期間があまりに短いというのは、減損なのか償却なのかわからなくなって、シグナリング効果が失われる可能性があるということです。そこで、何年以上という点についても議論いただけたらありがたいと思います。

 以上です。

○安藤部会長 
 それでは、湯川委員。

○湯川委員 
 ありがとうございます。私は日本基準の高品質化という観点から意見を1つ申し上げたいと思います。ASBJからご説明がありましたように、資料5にありますとおり、日本基準の高品質化の観点から、収益認識に関する包括的な会計基準の開発に着手されていて、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点として検討を進められるということでございました。収益認識は当然でございますけれども、金融機関等を除けば、どのような業種にも関連いたしますので、今後、収益認識に関して包括的な会計基準が開発、公表され、実務への適用が検討されることによって、我が国においてIFRS第15号に対する理解も促進されるのではないかと期待しております。

 また、今回ご説明がありましたように、議論の過程におきましては業種特有の会計処理など、現行実務への影響に対する対応がご検討されておりますので、これらを議論し、問題解決に活用することで、IFRS任意適用のハードルも一つ低くなるのではないかと思います。結果としまして、最初のほうのセッションでございましたように、順調にIFRS任意適用が135社と伸びてきておるところでございますけれども、まだ空白の産業領域があるというような話もありますし、ますます今後任意適用会社数を伸ばしていくということに関して結果としてつながるのではないかと思います。

 なお、包括的な収益認識に関する会計基準の開発は市場関係者にとりましても重要な検討課題であることでございますので、本日本公認会計士協会といたしましても、ガイダンスや説明のドラフトに関しまして監査人としての知見をこれまで提供し、基準開発に積極的に支援、協力してきたところでございます。6月目途とされておりますが、公開草案公表後は、私どもでも会員向けに機関誌での解説、それから研修会の開催を予定しておりまして、実務への円滑な導入を促進する所存でございます。

 以上でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。中川委員。

○中川委員 
 経団連ののれんに関するご意見は非常に興味深い内容だと思います。こちらは対外的に主張していくに当たり非常に力を持った、意義のあるデータになるだろうと思います。1点、意見申し上げますと、回答率が53.4%ということで、おそらく回答された企業は、ご経験のある、ないし償却を支持するご意見のある企業が多いのかと思われますが、このアンケートのパワーアップを図るという観点から、回答企業数がもう少し多い、また業種の分散、例えば製造業からのご回答数が増えたら、より説得力が増すデータとなるのかどうか、ご検討いただければと思いました。

 あと、もう一つ別の観点ですけれども、感謝申し上げたい点として、資料5にありました新しい基準開発に関して、非常にタイムリーに行っていただいている点です。7ページにある、例えばマイナス金利に関係する会計上の論点の対応は、企業会計をあずかっているメンバーからすると非常に重い対応でした。こういった、海外で起こった事象で、日本では少し時期が遅れて発生・導入されるような事象に対して、引き続きタイムリーな開発に取り組んでいただくことは非常に助かると思います。

 以上でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 窪田委員、どうぞ。

○窪田委員 
 まず、のれんについて意見を申し上げます。理論的には自己創設のれんの問題だとか、あと、のれんの償却が景気悪化局面に集中するなど、いろいろな問題があり、定期償却をやっていくべきだという意見を引き続き強く述べていくべきだと思います。それに加えてアナリストとしていろいろな企業のレポートを書いてきた経験から1つ意見を言わせていただきます。のれんの償却がないと、買収の判断が甘くなって、とかく過大な値段で買収をしてしまいます。企業が買収を発表したときにアナリストの間から、この値段は高過ぎるとか安過ぎるとか、いろいろなレポートが出るのですが、証拠はないのですけれども、のれんの償却のない会計基準を使っている企業にとかく買収の判断が甘くなる傾向があると考えています。それに加えて、償却をする場合に何年で償却をするかというのはやはり非常に重要な議論だと思います。
のれんの償却を全くしないと、明らかに企業の買収後の利益が過大に評価されることによって株価が高くなってしまいます。のれんの減損を発表したときには株価が急落します。私が実際にファンドの運用をしてきた経験からしますと、のれん償却の有無は株価にとって大きな問題です。よく同じアナリストの中でもキャッシュフローから見たら、償却してもしなくても関係がないので定期償却でも減損でも同じですよというような言い方をされる方がいらっしゃいますが、現実の株価の動きを見ていると、償却がないことによって買収後、株価が過剰に上がり、減損を発表した瞬間に急落するというようなことがあります。現実の株価が大きく乱高下する実態を考えると、定期償却をきちんとやって、買収の実態価値をより近くあらわしていく方法を導入することを引き続き主張していくべきだと思います。

 あと、ASBJで検討している基準に関して一言ずつ言わせていただきます。税効果会計の開示について今、検討されていると思います。税効果会計を高度化させる目的には、まず柔軟な税効果会計の活用を促進するということと、あとは不適切な税効果会計の利用に歯どめをかけるという両方の目的があると思います。この両方の目的を適切に実行するためには、適切な開示が不可欠だと思います。今、行っている検討は非常に重要だと思いますので、ぜひ引き続ききちんと検討をお願いしたいと思います。

 あと、収益認識基準に関して、日本基準と海外の基準で一番大きな違いは、在庫リスクを負わない収益に関して純額で計上するという部分です。海外基準を使うか日本基準を使うかによって、同じ会社で売上の金額が2倍以上違うところがあります。ここは日本の会計基準と海外の非常に大きな違いとなっています。この部分について米国基準とIFRSでは元よりほとんど差がなかったので、日本基準だけの大きな違いとなっており、ここは早く解決しなければいけない問題だと思います。
一方で、工事進行基準のところに関しましては、日本で既にいろいろ積み上げた実績がありますので、一気にIFRSのもので置きかえてしまうと、過去に積み上げた事例とかの財産がなくなってしまう懸念もあります。日本の工事進行基準の会計基準で積み上げた実例とか実績とか経験とか、そういうものを生かしながら、IFRSの優れた部分も取り入れて、日本の会計基準の高度化を検討していっていただきたいと思います。

 以上です。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 野崎委員、お願いします。

○野崎委員 
 先ほど、経団連としてのアンケートのご報告を申し上げた中で、あと、いろいろご意見をいただいた中で、私も同じ問題意識を持っておりますのは、償却そのものはオールジャパンとしてぜひ償却に持っていきたいというのは各セクターともにほぼご賛同いただけているんじゃないかなと思うんですけれども、一方で、それでもって理論的にはそのほうがいいんじゃないかということで各国の会計基準の設定主体にもかなりご理解をいただけているという中で、しかし、そうはいっても、今やっているものをやめるといいますか、今やっていないことを導入するということになるわけで、そのときにその次の問題として、じゃあ年数が幾らになるんだというところについてしっかりしたものを提示していかないと、なかなかそれが取り上げてもらえないというのは確かに事実、そうだと思います。それについては今、日本の中でもやや意見が分かれているというような状態になっているというのも事実だと思いますので、これをASBJとも協力しながら何とかまとめていって、それでもって国際的な意見発信といいますか、説得といいますか、そういうのはやっていかなければいけないなと思います。

 以上でございます。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 万代委員、お願いします。

○万代委員 
 ASBJの小野委員長のご報告の4ページに収益認識に関する包括的な改訂基準の開発の基本的な方針が示されていると思います。重要なことは2つ目の矢印のところで、連結財務諸表と個別財務諸表を特に分けずに、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点とすると。この原則は非常に重要だと思っています。万が一、連結と個別で企業の収益認識のルールが変わるなんていうことになりますと、もうこれは理屈では全く説明のつかない、非常に不可思議な、世界で類を見ないような会計制度に我が国のものがなってくるだろうと思います。会計基準ですから科学的ではないのはしようがないとしても、少なくとも整合的な説明が与えられるようなものであるということは最低限必要だろうと感じております。

 このことは実は1つ前のセッションで教育という話がありましたが、不整合なルールでも何の問題意識も持たずに、ちょっと口の悪い言い方をすると、自分の頭で考えないような学生だけ会計に興味を持って来るということでは、会計の先ほどの裾野を広げるなんていう話はとてもおぼつかない話なわけですね。むしろ国際会計人材ネットワークの構築の目的の最初で、先ほど辻山先生が国際的な場で意見発信をできる人間と会計監査の実務を担える人材というのは別ですよということをおっしゃられたと思います。自分の頭でものを考えない方が国際的な場で意見発信できるなんて、とても私なんかは思えない。となると、教育の面から見ましても、収益認識について連単が分離するということはないようにぜひお願いしたいと思います。

 以上です。

○安藤部会長 
 ほかにいかがでしょうか。辻山委員。

○辻山委員 
 先ほどご発表いただいた経団連のアンケート、非常に重要なデータだと思うのですけれども、先ほど出ましたのれんの償却、これを支持する意見が圧倒的に多かったということなのですけれども、償却期間に関しまして、これはアメリカのファイナンスのテキストなんかでも超過収益力というのは大体10年で集約するということになっていますけれども、必ずしもその期間で会計的に償却すべきかというのとは表裏の関係ではないというふうに考えていまして、例えばアメリカは従来、のれんの償却は40年でした。それが2000年に、それは長過ぎるということで20年にしようとしていたところ、一気に償却をやめて減損に行っちゃったのですけれども、アメリカでも40年から20年に変えようとしていたということがありました。ヨーロッパも20年でした。それで日本はヨーロッパの当時の償却期間を勘案して20年ということになりましたので、そのベースは超過収益力が落ちてきたということと同時に、それだけではなくて、経営者がM&Aを行っていくときに長期的な視点でM&Aを推進した場合、回収期間というのは経営者の頭の中にあると思うんですね。回収期間というのが有力なファクターで、ですから、ファイナンスの議論なんかで10年で超過収益力が収束するということと、必ずしもリンクさせる必要がないのかなと思います。経営者の方々が考える回収期間というのが重要な判断基準になるのかなと思いまし。

○安藤部会長 
 ありがとうございました。

 平松委員、お願いします。

○平松委員 
 今、償却期間20年という話が出ましたので、私が記憶しているところを少しお話ししたいと思います。

 2000年ごろにアメリカやヨーロッパが償却期間を20年ということで決めました。その前の90年代の議論を振り返りますと、アメリカでは40年の償却期間となっており、ヨーロッパの多くはのれんを償却して費用に入れるのではなく、自己資本から直接控除していたわけですね。そうすると、ヨーロッパの企業ではのれんの償却が損益計算書つまり利益に影響しないわけです。アメリカでは40分の1とはいえ損益計算書に反映し、利益に影響していました。こういう不都合がありましたので、足して2で割ったわけではないのでしょうが、そういう議論の中から20年という償却期間が決まっていったというふうに私は理解しております。当時、日本の償却期間は5年内ですから、日本が最も強く影響を受けていたわけです。いずれにしても、20年ということに理論的根拠、あるいは実務的な根拠があると私は思わなくて、ある程度政治的な妥協の産物なのかなというふうに理解しております。

○安藤部会長 
 情報提供ありがとうございました。

 よろしいですか。それでは、ここでちょっとまとめさせていただきます。

 本日はIFRSを巡って幅広くご審議いただきました。IFRSの任意適用を促進するとともに、国際的な意見発信をさらに強化していくため、国際会計人材の育成は非常に重要な課題でありまして、当該会計部会においても議論を重ねてまいりました。本日ご説明がありました国際会計人材ネットワークにより、国際会計人材が見える化することは画期的と考えます。関係者がその趣旨、目的を十分ご理解の上、積極的に協力していただくとともに、その有効な活用に向けて取り組んでいただきたいと思います。

 また、日本基準の高品質化については、本日、収益認識に関する包括的な会計基準の開発についてご説明がありました。日本基準が国際的な会計基準の高品質化に遅れをとることのないよう、関係者の皆様には不断のお取組みをお願いしたいと思います。

○田原企業開示課長 
 ここで事務局よりご報告がございます。安藤会長におかれましては、企業会計審議会会長を10年間、またあわせて企画調整部会長と会計部会長の職務を務めていただきましたが、今回の会計部会をもちまして会長・部会長の職をご退任いただくこととなりました。安藤会長よりこれまでの企業会計審議会におきますご経験などを踏まえましてご所見を披露いただいてはどうかと存じます。会長、いかがでございますしょう。

○安藤部会長 
 事務局のご指名ですので、それから、これ、議事録に載る可能性もありますので、一応、下書きはして。棒読みはしません。しかし、メモは用意してございますので、座って話させていただきます。

 4点お話ししたいと思います。1点目は、企業会計審議会のこの10年ということについてです。私が会長に就任したのは平成19年1月16日でございます。前任者の加古宜士先生が会長在任中にご他界されたということで、急遽、私に回ってきたものでございます。そしてこの10年間、私が調べた限りですが、当審議会が公表した意見書等、基準の改訂も含めて、何本あるかと数えましたら、合計12件でございます。多いのが監査でして、四半期レビューも含めて監査関係が7件、それからIFRS対応関係が3件、内部統制関係が2件、合計12件でございます。一番最初は、長いのですけれども、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について」というのが平成19年2月です。これは実質的には前任者の加古会長のもと内部統制部会で審議した結果が出てきたということでございます。最後は平成26年2月の「監査基準の改訂に関する意見書」ということでございます。これらの、あるいはこれだけの意見書を出すために、当審議会は部会を合計51回。数えてみたのですが、これは金融庁のホームページに出ていますね。51回の内訳は、会計部会と前身の企画調整部会が24回、監査部会が21回、内部統制部会が、私が会長になってからでも6回、それ以前も含めますと21回。それから、総会が28回ございました。部会と総会を合計しますと79回ということになります。ただし、そのうち総会と部会の合同会議というのが17回ありますので、実質的な会議数は62回ということになります。我ながらよくやったなと。委員の先生方も大変だったなと思いました。これが第1点です。

 次、2点目が、その中で特に印象に残ったことをお話ししたい。これは、やはりIFRS対応問題ですね。これはもう言う必要ないと思います。この最初が平成21年6月の「我が国における国際会計基準取扱いに関する意見書(中間報告)」ですね。ここから出発したわけでございます。ここで日本のロードマップとして任意適用が示され、さらに強制適用の含みもある内容でした。それから、その次が平成24年7月で、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」がございました。それから、最後といいますか、今まで出ている最後が「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」、これは平成25年6月でした。

 そういうことですけれども、特に2番目の中間的論点整理、これは、民主党政権への政権交代がありまして、当時の金融担当大臣が政治主導を発揮されまして、それを受けて企画調整部会で議論を重ねて出たものですね。このときの会議では私の隣に大臣が座って、ずっと居られるんですね。横でこうやって見ていましたら、熱心にメモをとっている。これはすごいなと思いました。大変印象深い出来事でございました。

 それから、もう一つ、IFRS対応では、これはこの審議会には直接関係ないのですけれども、中小企業会計の問題が改めて浮き彫りになりました。IFRSの問題が出る前に既に「中小企業の会計に関する指針」、いわゆる中小会計指針が出されております。これは旧商法の段階で出されている。その後、IFRSの問題が出てきた。日本基準もコンバージェンスということで、IFRSの影響を受けるということになり、その影響は中小会計指針にも及ぶことがある。そうすると中小企業までIFRSの影響を受けた基準を適用する必要があるのか、そういう声が中小企業関係者、あるいは日本商工会議所あたりから出まして、問題になった。その結果、関係者が知恵を絞って出されたのがご存じの「中小企業の会計に関する基本要領」、いわゆる中小会計要領でございます。中小会計要領は、その中で、国際会計基準の影響を受けないものとすると断言をしております。これは非常に特徴的です。中小会計指針のほうはどうしても日本基準を経てIFRSの影響を受ける。この影響を遮断したのが中小会計要領、そういうことになっております。

 これら一連の対応問題において私がどういう方針で臨んだのか。考えてみますと、まあ、当たり前かもしれない。私を見ればお気づきだと思います。漸進主義ですね。急進ではなく漸進で行きましょう。言葉を変えれば、激変は回避しましょうと。それから、中小会計問題で、私は特に弱者への配慮ということを重視しました。関係者でお気づきの方もおられるかもしれません。これが第2点でございます。

 次、3点目は、企業会計審議会とは何かということについてです。意外とこれ、皆さんご存じないようなのでお話ししたいと思います。まず、この審議会というのは法令上どういう位置づけになっているかというと、これは金融庁組織令、これは政令ですが、この中に位置づけられております。金融庁組織令の上に金融庁設置法というのがあるのですが、そこには残念ながら企業会計審議会は載っていない。金融庁の金融審議会と証券取引等監視委員会、これは金融庁設置法に書かれている。ところが、この当審議会は金融庁設置法ではなくて金融庁組織令に書かれている。これはどうしてなのか、考えたことがあります。これは私の理解ですが、金融庁設置法は第3条に金融庁の任務、つまり目的が書いてあります。おそらくそれとの関係ではないかと思います。というのは、当審議会は「企業会計原則」をつくった経済安定本部の企業会計制度対策調査会の流れをずっとくんでいます。ですから、はっきり言えば、証券取引法会計、今の金融商品取引法会計に縛られないような大きな枠組を持っているんですね。商法会計、今の会社法会計とか、あるいは税法会計にも影響をするそういう非常に広い目的を持ってつくられています。どうもそういうことではないかというのが私の認識でございます。

 金融庁組織令の第24条に金融庁に企業会計審議会を置くとありまして、その第2項に任務が書いてあります。企業会計の基準及び監査基準の設定、原価計算の統一、その他企業会計制度の整備改善について調査審議し、その結果を内閣総理大臣、金融庁長官、または関係各行政機関に対して報告し、または建議する。この「建議する」っていうのがすごいんですよ、実は。見ましたけど、金融審議会令にも「建議する」という言葉はありません。これも、企業会計審議会の前身の経済安定本部企業会計対策調査会以来の遺伝子ではないかと思います。最近は実施したことがありませんけど、法令上はそうなっているということです。

 ということで、我が国の法令上唯一の、企業会計に関する基準・制度についての審議機関はこの企業会計審議会なんですね。現実はご存じのように、会計基準の設定については企業会計基準委員会にお願いしているわけですけれども、私の知る限り、ドイツやフランスでは日本の企業会計基準委員会に該当する民間団体には法的地位が与えられています。日本はその手当がないんです。これは、いかに急いでASBJをつくったか、財務会計基準機構をつくったかということです。民間団体でなくちゃいかんというので、真正直過ぎたのではないかという気がいたします。以上が第3点です。

 最後の4点目。私が企業会計審議会にお願いしたいことは何か、1つ言えといわれたらと仮定して、常々考えることをここで言わせていただきます。現下のIFRS対応問題からちょっと離れて、教育現場の立場、あるいは教育者の立場としてお話しするということでご理解いただきたい。

 それは、「企業会計原則」のことです。固有名詞の企業会計原則。ご存じのように、これは先ほど言いました、企業会計制度対策調査会が昭和24年に設定しまして、その後、4回の改正があり、最後の改正は昭和57年でして、それから35年たちました。凍結したままです。なお、「討議資料、財務会計の概念フレームワーク」がございますが、これは企業会計原則とは次元が違うということを申し上げなければなりません。なぜなら、この討議資料は将来の基準開発に指針を与える役割がありまして、既存の会計基準の一部を説明できないものがあると自ら言っております。また、個別具体的な会計基準の新設、改廃をただちに提案するものではなく、その役割はあくまで基本的な指針を提示することにあると言っております。したがって、「財務会計の概念フレームワーク」は企業会計原則に代わるものではありません。

 35年もたったままにしておいていいのか、という危機感が私にはあるんです。教育現場で使われ続けている会計法規集の冒頭に、「企業会計原則」は載っております。ところが、公認会計士協会から出されている会計監査六法を見ますと、基本基準関係の最後のほうにしか企業会計原則は載っていないんです。そういう状態であります。企業会計原則の内容はその後の個別基準によって穴だらけになってしまって、そのままではとても使えません。これは皆さんご存じです。ということは、教育現場で、はっきり言えば、会計教育のいわば根本教典、基本教典がないということなんです。よく仏教界では般若心経とかいいますが、それに相当するものがない。最近、簿記会計を学習する人口が減っているという現象は、このことと無関係ではないような気がしてならない。私が学生時代は企業会計原則があったので、先生も学生も院生もそれを学んで盛り上がったんですよ。共通の土俵となる根本教典があった。それを失ってしまっているのが今の状態ということで、私の提案したいことは、いわば「新企業会計原則」を何とか作れないか。今すぐは無理かもしれないけれども、不可能ではないと思っております。

 会計基準の改訂・新設、これは日本基準レベルで考えていただいていいのですけれども、今はちょっと一服状態にあるのではないか。いわば落ち着いた状態にある今であればこれは不可能ではないと思います。ただし、IFRSの任意適用も進んでいますし、JMISもありますし、あるいは米国基準の適用企業もあるというのが日本の現状です。ここから、もう少し様子を見て、もっと落ち着いてからでもいいような気もしますが、会計教育の立場からすれば少しでも早いほうがよい。簿記会計の学習者、教育者のために、企業会計原則に代わるものが必要です。新企業会計原則をつくってほしいということです。

 それをどうやってつくるのかということまで言わせてもらえれば、夢物語だと思われても構いませんがこれはやはり企業会計基準委員会で検討、策定していただいて、最後はぜひ古式に則って企業会計審議会会計部会及び総会で了承するのが望ましいと思います。これは個別基準ではありませんから、根本教典だということであれば、この場を使って、審議会でそういう儀式はやったほうがいいのではないかと思います。こうして新企業会計原則ができれば、教育現場は大助かりです。会計はこの新企業会計原則を学べば大体わかる、大枠がわかる。やっぱりそういうものがないと困る。これは、私ばかりでなく、学会関係者がおられるので、おわかりいただけると思います。

 ということで、最後、ちょっと無理なお願いかもしれませんが、私の希望を述べさせていただいて、私のご挨拶といたします。長い間、委員の皆様に、それから事務局には大変お世話になりました。お礼申し上げます。ありがとうございました。

○田原企業開示課長 
 安藤会長、ありがとうございました。

 それでは、ほぼ定刻になっておりますので、本日の議事は終了させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 次回の会計部会の開催につきましては、事務局より改めてご連絡させていただきます。本日はお忙しいところご参集いただきありがとうございました。これにて閉会いたします。
 
以上
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金融庁総務企画局企業開示課

03-35606-6000(代表)(内線3810)

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