企業会計審議会 第39回監査部会議事録

1.日時:平成29年11月17日(金)10時00分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

〇伊豫田部会長
 定刻前ではございますけれども、委員の皆様おそろいのようでございますので、これより企業会計審議会第39回監査部会を開催いたします。皆様にはご多忙の中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 前回の監査部会におきまして、日本公認会計士協会から、KAMの作成に係る試行の実施状況についてご報告いただきましたが、本日は、試行結果の取りまとめについてご報告をしていただきます。その後、前回の審議を踏まえまして、事務局から、「監査報告書の透明化」についての主な論点を説明いただいた後、皆様からご意見を頂戴することにいたしたいと思います。

 それでは、議事に入りたいと思います。まずは、KAM試行の取りまとめにつきまして、住田委員からご報告を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

〇住田委員
 皆様、おはようございます。それでは、お手元の資料1に基づきまして、KAMの試行の結果についてご報告させていただきます。

 スライドの構成は、ページ1のところに書いてあるとおりでございます。今日は限られた時間でございますので、このスライドの全てを説明するということではなく、要点を絞ってご報告させていただきたいと思います。

 では、最初にローマ数字のⅠのKAM試行の概要を説明します。スライド3に試行の概要を説明しております。今回は、大手4法人を含む7監査法人の26社の監査チーム、被監査会社に試行にご参加いただきました。26社の業種、連結売上高の規模、それから、会計基準の内訳は、このスライドに記載のとおりでございます。

 ご参考までに売上高の規模と会計基準の分布については、全上場会社の社数を右に記載しております。お気づきのとおり、全上場会社の分布から比べますと、今回の試行に参加いただいた26社は、かなり大きな会社に分布が偏っておりまして、また、会計基準の内訳も米国基準またはIFRS採用会社が多いという特徴がございます。

 続いて、スライド4ですが、今回、試行においては、会社と監査チームそれぞれから収集した情報を提出いただいており、その概要を示しています。監査チームからは終了した事業年度、2016年の12月期、または2017年3月期の終了した事業年度の監査を対象に、KAMをトライアルで選定してもらい、それを提出していただきました。また、そのトライアルの作業を通じて、監査チーム及び対応いただいた会社の皆様から作業の状況がどうであったかという感触を聞くために質問書をそれぞれ用意して記入して、日本公認会計士協会に提出いただきました。したがって、今日のご報告内容は、トライアルで選定したKAMの概要の部分とアンケートを通じて試行に参加された皆様方からいただいた回答結果のご報告ということになります。

 スライド5は、今回の試行に当たって監査チームが会社のどういう方とコミュニケーションを行ったかということを、KAMの選定時とドラフト作成時に分けて表示しております。

 それでは、ローマ数字Ⅱの選定されたKAMの概要に移りたいと思います。

 スライド7は、具体的なKAMの内容に入る前に、国際監査基準でどういう内容を監査報告書に記載することが求められているかということを、簡単にサマリーしたものでございます。今回の試行は、国際監査基準701をベースに行ってくださいということをお願いしておりました。

 前回の復習にもなりますが、監査においては、監査上の論点というのはたくさんあるわけですけれども、その中で重要な事項については、統治責任者、英語でいうとThose charged with governance、日本では監査役等にコミュニケーションを行うということが既に求められております。その中から特に監査人が注意を払った事項、さらに、その中でも最も重要な事項に絞り込んで監査上の主要な事項を決定することになっております。

 そういう選定プロセスを経て決めた監査上の主要な事項については、監査報告書においては、監査意見は従来どおり述べるわけですが、監査意見の下に監査上の主要な事項というセクションを設けて、まず、KAMの一般的な性質の説明を、ここは定型文になりますけれども、記載します。その上で個々のKAMについては、適切な見出しを付して一つ一つのKAMについて当該事項をKAMであると判断した理由と、それに対して監査人がどういう対応を行ったかということの記述を行っていきます。

 KAMの個数は、監査人の職業的専門家としての判断に委ねられておりまして、個々の監査業務における相対的概念ですので、個々の監査の状況によって個数は変動することになります。

 続いて、スライド8ですが、今回試行の結果、どのぐらいの個数がKAMとして選定されたかということについて分布を示した表になっています。1社当たり1個選定した会社が5社、2個選定した会社が11社というような内容になっております。1個から6個分布があり、26社合計68個のKAMが選定されておりました。68個のKAMを26社で割ると1社当たりの平均は2.61個という結果になっております。会計基準別の内訳を右に示しておりますが、米国基準、あるいはIFRSが若干多目になっているという結果になっております。

 それから、UK導入2年目のKAMの個数と、シンガポール導入1年目、終わったばかりですけれども、2016年12月期のKAMの個数について、それぞれ3.9個、2.3個というレポートが出ておりましたので、ご参考までに記載させていただいています。

 続いて、スライド9ですが、今回選定された68個のKAMがどういう領域に分布しているかということをお示ししたものです。

 これは、前回の部会の資料の中にUKの1年目、2年目の領域別分布の折れ線グラフが入っていたかと思いますが、そちらとも非常に似通っていまして、ほとんどが会計上の見積りに関連している領域ということになります。資産の減損、のれんの計上及び評価、引当金関係、収益認識も工事進行基準や変動対価の見積り、それから、金融資産の評価、公正価値評価を含む資産評価、また、繰延税金資産の回収可能性、それから、複雑な計算を伴う準備金等、ほとんどが会計上の見積りが関係しています。見積りが関係してないものを申し上げますと、連結範囲や、財務報告に関連するIT情報システム、企業結合に関する買収初年度の会計処理、あるいは収益認識の期間帰属などです。この分布を見ていただきましても、最近の監査においては、会計上の見積りの監査に監査人が工数をかけているということをおわかりいただけるのではないかと思います。

 続いて、スライド10ですが、選定された68個のKAMの記載の詳細さは様々で、いろいろ工夫をした跡が見られました。以下の表は、それらを総括して類型化したものでございます。

 KAMとして選定した理由としては、財務諸表に与える金額的重要性が高いということを理由として挙げているケースが非常に多うございました。先ほど見ていただいたIT関係等は直接的には金額的重要性は関係しませんが、その他のほとんどの項目において金額的重要性が高いということを理由の1つに挙げておりました。続いて、理由として挙げられていたものとしては、財務数値の算定プロセスが複雑であるということ。それから、これは見積りに関係しますけれども、財務数値の算定に将来事象に係る経営者の意思や主観的判断の影響を大きく受ける要素が含まれている点。それから、会計基準の当てはめとか、会計処理に誤りが発生しやすい要因が含まれている点。例えば、企業買収のときは、ワンショットのトランザクションになるわけですけれども、非常に難しい会計処理にもなり得ますので、これは別に意図的かどうかということにかかわらず、何らかのエラーが発生しやすいという要因を理由に挙げているということになります。

 表の右側のほうは、監査上の対応ということで、こちらのほうが、KAMの選定理由よりも各KAMごとに書きぶりがかなり違っていたかなという印象を持っています。記載内容を総括しますと、関連する内部統制の整備、運用状況の評価、これについては、関連する内部統制を具体的に書いている場合と、そうでもない場合という違いはあったかと思います。

 それから、実施した分析的手続の内容を記載している例。あるいは実証手続の内容ですが、ここが一番ばらついていたと思いますが、選定した理由に特に対応した手続を中心に書いている例と、比較的網羅的に手続を書いている例がありました。選定した理由に対応する手続の代表例としては、どの局面にどういう専門家を利用しているということを書いている例が多かったと思います。

 それから、今回試行に参加していただいた会社は大きな会社が多かったものですから、海外の子会社等の構成単位の監査人に対して重点的に依頼し、協議した内容、構成単位の監査人がどういう手続を実施したかということについて記載している例がかなりあったかと思います。

 続いて、スライド11ですが、国際監査基準では、KAMに対する監査人の対応や結果、あるいは見解について記載することは義務付けられてはいませんが、状況によっては記載してもよいというふうに適用指針で記載されています。今回の試行の結果、監査上の対応の結果を何らか記載したものは、68のKAMのうち16件、記載がなかったものが52件ということで、これは監査チーム別にいうと、26チームのうち7チームが記載していたという結果になっておりました。

 右側の表は、監査人の結果や見解を記載したほうがいいと思いますかという質問への回答状況ですが、3分の1が「はい」、3分の2が「いいえ」という結果でございました。「はい」の理由は、監査上の対応を記載しただけでとめてしまうと、やや不完全な印象を与えてしまうのではないか、読み手はこういう情報を欲しているのではないかというような意見でございました。「いいえ」のほうは、KAMについては、一つ一つについて監査意見を述べることを意図しているわけではありませんので、個別意見にとられないような書き方をしなければいけないということが別途注意喚起されているわけですが、個別意見に見えないように記載するというのは結構難しいところがあって、結局は個別意見に見えてしまうので、記載しないほうがいいというような理由が多かったかと思います。

 スライド12、13は、KAMの記載と会社の開示状況との関係を要約したものでございます。KAM一つ一つについて、財務諸表の情報に基づいてKAMを記述できた場合が選択肢「a」、財務諸表に開示はないけれども、会社が既に公表している情報を利用してKAMが書けたというのが「b」、会社の未公表の情報まで含めて記載せざるを得なかったというのが「c」という選択肢になっておりました。表を見ていただきますと一目瞭然ですが、会計基準に米国基準あるいはIFRSを採用している場合は、「a」の選択肢が86.7%と多かったのに対して、日本基準の場合ですと、会社の未公表の情報を記載せざるを得なかったという「c」が43.9%とかなりの割合を示しており、会計基準による差が明確にあらわれていると思います。

 続いて、スライド13ですが、今の質問で「b」または「c」と回答した場合に、会社のKAMの記述に対してはどういう反応でしたかという質問を設けております。スライド13の左側の円グラフの、内側の円が「b」の財務諸表外の情報まで含めて記述した場合、外側の円が選択肢「c」の未公表の情報まで含めてKAMを記述した場合と、ケース別にドーナツ円で回答状況を示しています。結果は、どちらも7~8割がKAMは監査人の判断によるものであるため、KAMの記述自体にはすぐに理解を得られたという回答になっておりました。

 スライド13の右上ですが、同じく「b」または「c」と回答した場合に、財務諸表の開示の拡充に対しては、会社はどういう反応でしたかという質問に対する回答状況です。こちらは内側の財務諸表外の情報の場合は、半分が慎重な姿勢であったのに対して、未公表の情報の場合は、外側の円になりますけれども、75%、15件が慎重な姿勢を示したということで、やはり未公表の情報が含まれる場合のほうが財務諸表における開示については慎重な姿勢を示されたという結果になっております。

 それから、スライド13の右下ですけれども、「c」の未公表の情報の場合、センシティブな情報が含まれましたかという質問を追加でしております。それに対しては、「はい」が6件、「いいえ」が8件ということで、未公表の情報がすべてセンシティブな情報とは限らないという結果を示しています。

 ここで、資料1のクリップ留めの後ろに、KAMの試行例を別のホチキス留めの資料として添付させていただいております。こちらは、試行の結果、提出いただいたKAMをベースに、欄外の注2のところに書いておりますけれども、個社、業種が特定されないように、ある程度表現を抽象化して修正したものです。それから、グレーでハイライトされた箇所は財務諸表に注記がない情報で、下線部は会社の未公表の情報ということを示しております。

 6個ほど例示していますが、スライド9のKAMの領域別分布の順に並んでいます。

 まず、例示1は子会社の固定資産の減損の例です。下線が引かれた最初の「子会社は2期連続営業赤字を計上しており」という部分が未公表の情報ということですが、これは会社によっては、センシティブな情報と捉えられる可能性がある内容かと思います。それに対して、その後ろの「減損損失の測定に用いられる固定資産の使用価値云々」の文章も未公表の情報となっていますが、これは会計基準の当てはめでもありますし、特段センシティブでもないというふうに考えられるのではないかと思います。

 右列の監査上の対応については、構成単位の監査人との協議内容や構成単位の監査人の実施した手続を比較的網羅的に記述した例というふうに言えるのではないかと思います。

 続いて、例示2は多店舗展開している業態において、固定資産の減損をKAMとして取り上げた例です。下線部分が店舗の減損の検討に際して店舗の将来キャッシュ・フローの見積りに影響を及ぼす要素が記載されており、この部分は、未公表の情報ということになっております。この例示は、日本の会計基準を採用しているケースですが、日本の会計基準を前提としますと、こういう将来キャッシュ・フローの予測にどういう要素が組み込まれるかということについては、財務諸表上は特に記載がないということになります。

 続いて、例示3はのれんの減損の要否ですが、かなり文章が長目ですが、グレーのハイライトの部分や下線部分がありません。こちらの例は、IFRSを採用しているケースでございまして、IFRSの場合は、こういうことも含めて財務諸表に注記されているというイメージを読み取っていただけると思います。

 それから、例示1と2は、減損を当該期において計上したケースですが、例示3は、減損は当期において計上していないけれども、監査人が重点的に検討し、KAMとして選定した例になります。

 例示4は、収益認識の例で、変動対価、つまり仮単価で収益を期中は認識しており、期末にその決定価格を見積るというものです。この例はグレーのハイライトと下線が多くなっていますが、この業種においては、主原料の価格が変動するということ、それを製品価格に転嫁するために仮単価で行われているということは、かなりよく知られている情報ということで、この情報自体は未公表ではありますけれども、必ずしもセンシティブな情報というふうに捉える必要はないのではないかと考えられます。

 それから、例示5も収益認識ですが、業種の特性から1年間のうち3月に完成予定の案件が最も多いということで、監査チームとしては、売上高の計上時期について潜在的なリスクがあるということでKAMと選定したという理由付けになっております。3月に完成する予定のものが多いということ自体は、四半期の財務諸表を読めばわかる客観的事実であろうと思います。ただ、景気の動向や業界のトレンドと合わせてこういう情報を読みますと、受け手にとってはウォーニング的な意味合いも入ってくるのかなと思われる記載ぶりになっているかと思います。

 それから、例示6は、海外子会社における過年度輸入関連税について当局から指摘を受けて、子会社で虚偽の資料を提出したという事実が判明し、それに基づいて発生した費用及び発生可能性が高く見積り可能な費用・損失を販管費に計上したという例です。虚偽の資料を子会社が提出したということから、監査チームは、おそらくこの子会社の経営者の財務報告に対する姿勢ですとか、誠実性についてもう一回検討すべきと考え、統制環境に与える影響を考慮したということではないかと思いますが、その結果、監査上かなり時間を使って検討したので、KAMとして選定したということと思います。このような情報は、当然ながら、非常にセンシティブな情報であろうと思います。

 以上が具体的なKAMの記載例をご紹介させていただきました。

 続いて、今回のKAMの試行に当たって、いろいろな観点から質問票に回答していただいておりますので、そちらのご紹介に移りたいと思います。

 スライド15は、困難と感じた状況がありましたかということを会社側に質問した結果です。こちらの回答を見ていただきますと、米国基準あるいはIFRSの場合は、8割が困難と感じる状況がなかったというのに対して、日本基準のほうは、55%が困難な状況を感じたということでございます。困難と感じた理由としては、KAMが監査人の判断により記載されるものなので、判断基準が明確ではないのではないかということが挙げられており、これらの理由から読み取りますと、やや戸惑いといいますか、KAMというものに対してまだあまりなじみがないところから、こういう反応が示されたのではないかと読み取っております。

 続いて、スライド16は、会社とのコミュニケーションにおいて監査人側が困難と感じた状況がありましたかという質問に対する回答状況です。監査役等と経営者とに分けて聞いておりますが、監査役等のほうがコミュニケーションの困難を感じる度合いが少なかったということで、これは日ごろから監査役等と、特別に検討を必要とするリスクをはじめ、監査計画の内容等をコミュニケーションしているということのあらわれかなというふうに感じております。

 続いて、スライド17、18、19は、監査人の各局面で困難な点がありましたか、苦労した点がありましたかということを聞いた質問になっております。これは質問票をつくったときの想定としては、KAMを選定するときよりもドラフトするときのほうがきっと苦労するだろう、ドラフトするときにおいても、KAMの内容とか、選定理由を書くときよりも、監査上の対応を書くほうがきっと監査人は苦労するだろうという想定のもとにこの質問を策定しました。

 KAM選定に当たっては、困難、疑問な点があったという回答のほうがやや多い、半々という結果になっております。それに対して、スライド18は、KAMの選定理由をドラフトする際の困難な状況の有無になりますが、困難を感じたのが26チーム中16件ということですので、6割方の監査チームが苦労・困難を感じたということになります。その次のスライド19が監査上の対応のドラフト作成時の困難な点の有無で、回答結果の数字自体はスライド18と同じ結果になっていますが、KAMの内容、選定理由をドラフトするときと監査上の対応をドラフトするときで、それぞれ違う回答をした監査チームもありまして、KAMとして選んだ内容が回答に影響するのかなと考えております。

 どういう点に苦労したかというと、財務諸表利用者が容易に理解できるように簡潔明瞭に書くということになっているわけですけれども、誤解を与えないように正確に書こうとすると、非常にバランスをとるのが難しかったという点が挙げられています。専門用語とか、業種特有の用語を使わずに説明しようとすると、かなり長くなる傾向になり、それはかえってわかりにくいことになるのではないかとか、監査チーム内でも相当議論をしてドラフトをしたけれども、非常に難しかったというようなコメントが、選定理由、監査上の対応の両方ともに書かれておりました。

 続いて、スライド20は、重要なリスクに関するコミュニケーションに及ぼす変化を聞いております。こちらは、会社、監査人ともに、経営者、あるいは監査役等と監査人との間のコミュニケーションの深度が増すという、ポジティブな回答が多かったという結果になっております。

 続いて、スライド21は、会社側に質問した内容になりますが、KAMが導入された場合、有価証券報告書やIR等における開示に影響があると思いますかという質問に対しては、圧倒的多数で影響があると思うという回答をいただいております。会社側の開示している内容を前提としてKAMは記載すべきだと考えているので、開示にも影響があるというようなコメントが多かったかと思います。

 続いて、スライド22ですが、KAMが導入された場合、KAMの記載は株主との対話に役立つと思いますかという質問に対して、「はい」と回答いただいた件数が多くありました。1つ、「はい」の理由をご紹介しますと、監査人がきちんと監査上の対応も書きますので、こういう点に着目してこういう手続や対応を行ったということは、ちゃんと検証してもらったという情報を一緒に届けることになるので、不正会計処理が行われていないことの理解の一助になるというような理由が挙げられております。

 それから、スライド23は、監査役の監査報告書に影響があると思いますかという質問に対して、「はい」と、影響があると回答いただいた件数が15件と、「いいえ」の件数10件よりも多くなっておりました。

 それから、スライド24、25、26、27は、この試行に要した時間、KAMが導入された場合の追加時間に関する質問シリーズです。まず、スライド24では、今回の試行に要した時間について、会社側、監査チーム側で回答いただきました。平均値は、会社側が32時間、監査チーム側か76時間ということになっております。監査チーム側は、パートナーとか、マネジャー、監査チームの中でも上位者の関与が中心的であるということが読み取れるかと思います。

 付されたコメントのところに書いておりますけれども、今回の試行が1カ月という非常に短い期間で行われたということで、明らかに重要な事項のみをKAMとして選ぶ傾向があったようで、その分コミュニケーションに割く時間が少なくて済んだので、この時間数そのものは低目に出ていると。それから、終わった期の監査を対象にしたので、会社側の財務諸表の開示については検討する必要がなかったということも、時間が少なく出ている傾向の理由の1つではないかと思います。

 スライド25は、KAMに要する時間に及ぼす要因としてどんなものがあると思いますかという同じ質問を会社側と監査人にしました。その結果は、「a」のKAMの候補となる事項の数及び内容、「e」の経営者と監査人との見解の相違の程度、それから、「h」の会社の開示状況というのが、どちら側からもKAMに要する時間に及ぼす影響として挙げられておりました。

 続いて、スライド26は、会社側にKAMが制度として導入された場合、どの程度追加時間が必要になると思いますかという質問をしたところ、「b」の若干増加するというのが最多でした。ただ、「その他」として、わからないとか、状況によるという回答もいただいております。

 スライド27は、監査人側の回答です。「b」は、エンゲージメントの規模に応じて比例的に増加する、「c」は、エンゲージメントの規模にかかわらず、一定時間増加するというような選択肢を設けましたが、かなり分布が分かれています。「b」のパーセントで表示されている回答を見ますと、大きなエンゲージメントが対象になっているということを考えますと、総監査時間が4万時間、5万時間に到達しているところも少なからずありますので、たとえ1%であったとしてもかなりの時間の増加を見込んでいることになります。その反面、「c」の50時間未満を予想しているチームもあるということで、この「b」と「c」の選択肢は、実はアンケートの選択肢としては失敗だったかなというふうに考えております。

 ですので、ここから読み取るべき監査人側の予想としては、「d」のその他の選択肢を選び、主なコメントとして書いてもらっている最初の箇条書き、「エンゲージメントの規模ではなく、会社や監査の複雑性、KAMの数、会社側の開示水準やKAMに対する理解度、協力姿勢、重要な論点の有無など、会社、あるいはエンゲージメントによって大きく変わるのではないか」というのが、今、予測できる最善の回答かなと思っております。

 続いて、スライド29からは、自由記載の項目の集計結果です。まず、KAMの趣旨を達成するために課題があれば、制度上、監査人側、会社側、利用者に分けて記載してくださいという質問を監査チームと会社双方に対して設けておりました。

 スライド29では、制度上の課題としては、会社、監査人側から、制度としてのKAMの趣旨をきちっと浸透してもらうということが何より大事である、日本の文化的背景も考慮して検討をしてほしいというのが代表的なコメントであったかと思います。

 スライド30に移りまして、監査人側の課題としては、監査計画、監査プロセスのスケジュール感、監査の効率化ということをお互い挙げていますが、一番の課題としては、ボイラープレートにならないように、個社の情報をいかに簡潔明瞭に書くかというところが難しいということが、監査人と会社の両方から挙げられていたと思います。

 スライド31は、今度は会社側の課題ですが、監査人がいろいろKAMに記載しようとすると、会社の開示にも影響しますので、監査人とリスク情報を共有するという文化の醸成ですとか、KAMを前向きに捉える姿勢、それから、会社側のマンパワー、決算のスケジュールの見直しということも課題に上がってくるのではないかというところでございます。

 スライド32は、利用者側の課題です。これは実際に記載する監査人と、その対象になる会社、当事者2者からの切実な願いとしては、利用者に適切にKAMの情報を利用していただきたいというところでございます。記載例を見ていただきましてもおわかりのとおり、一定の会計上あるいは監査上の知識がないと、なかなか読みにくいというところはあるかと思います。簡潔に書こうとすると、最低限の専門用語は使わざるを得ないというところもありまして、利用者側の会計・監査のリテラシーの向上というところを望みたいというところでございます。

 スライド33は、KAMの適用対象に対するコメントですが、会社、監査人両方から、開示の状況やタイミングを考慮すると、金商法の連結財務諸表をまずは対象とすべきではないかという意見が多かったという結果になっています。

 それから、スライド34が準備期間等に関してですが、制度理解を深める必要があるので、一定の準備期間は必要というコメントが多く記載されていました。

 ちょっと駆け足になりましたけれども、最後に、スライド36に試行の結果を踏まえてということでまとめさせていただいております。今回の試行の結果、ある程度わかったことといたしましては、KAMによる効果として、監査の透明性の向上が図られる点です。先ほどKAMの試行例を見ていただきましたけれども、こういう情報は今まで外には一切出ておりませんでしたので、監査人が当期の監査でどういう点に注目して監査を実施したかということについて、外部にお知らせするということは、監査や会計の理解の促進につながるのではないかという点です。それから、途中で紹介しましたけれども、財務諸表に影響を及ぼす重要なリスクに関して、監査人と経営者または監査役等とのコミュニケーションの深化が図られるのではないかという点、それから、有価証券報告書やIR等の開示、株主との対話、監査役の監査を含め、企業の外部報告やコーポレート・ガバナンスへのポジティブな影響を見込めるのではないかという点が効果として想定されます。

 また、こういう効果に加えまして、KAMというのは、監査手法そのものの変更ではなくて、監査のプロセスについて監査報告書に書くということでございますけれども、それを通じて監査手法の深化をもたらすのではないかと考えております。会計上の見積りが増えてきておりますので、監査人は従来に増して、「より考える監査」にシフトにしていかなければならないわけですが、そういう「より考える監査」への後押しになるのではないかと考えております。

 こういう効果に対する費用ですが、財務報告に係る内部統制の評価制度のように、会社や監査人に膨大な作業を要するものではありませんので、必ずしもたくさんの追加時間が一律にかかるということではないということが言えるのではないかと思っております。

 最後になりますが、課題のところにもありましたように、KAMの趣旨をきちんと財務報告にかかわる各ステークホルダーが理解して、よりよい監査報告、財務報告にするために、各ステークホルダーがお互いの意識に影響し合いながら、KAMをよりよい意味のあるものにするという意識を持ってやっていくということが非常に大事なのではないかと感じております。財務報告に係るステークホルダーの皆さんが他者と違う内容を記載することを牽制し合うような形になりますと、一瞬のうちにボイラープレートになってしまうのではないかという懸念があります。そのような意味で、平均台の上を歩くような部分もありますので、これは皆さんがKAMをよりよい意味のあるものにしようという気持ちで導入していくということが成功要因の筆頭に上げられるのではないかと感じているところです。

 ちょっと時間を超過しましたけれども、以上でございます。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。

 次に、事務局より、本日ご議論いただきます「監査報告書の透明化」についての主な論点の説明をお願いします。

〇田原企業開示課長
 それでは、お手元の資料2に従いまして、本日ご議論いただきたい論点につきまして、ご説明を差し上げます。

 前回の監査部会におきまして、「監査報告書の透明化」の意義・効果につきましては、以下のような指摘があったところでございます。会計監査の透明性を向上させて、監査報告書の情報価値を高めるということによって、財務諸表利用者の方々の会計監査、企業の財務諸表に対する理解が深まるとともに、企業との対話が促進される。財務諸表利用者や監査役等の方々が会計監査の品質を評価するための情報となる。監査人・経営者・監査役の方々の間のコミュニケーションのさらなる充実によりまして、コーポレート・ガバナンスの強化、会計監査上のリスク認識の共有による適切な監査の実施につながるといったような意義・効果についてのご指摘があったわけでございます。

 先ほど住田委員からもご説明のありました試行結果も踏まえまして、以下の3点について、本日はご議論いただければと存じます。

 1つ目は、監査報告書におけるKAMの位置付けでございますが、国際監査基準では、監査上の主要な事項(Key Audit Matters)につきましては、監査人が会計監査の過程で特に着目した会計監査上のリスク等と監査人の対応について、意見とは明確に区別した上で、情報として記載するものとされているわけで、これは米国監査基準も同様と承知いたしております。

 我が国の現在の監査報告書におきましても、監査人は、監査人の意見を明瞭かつ簡潔に記載しなければならないとされておりまして、監査人は、その意見とは明確に区別した上で、追記情報として、財務諸表における記載に対する注意を促す観点から特に強調すべきと判断した事項、重要な後発事象ですとか、偶発事象等や、その他事項、監査人の方々が説明することが適当と判断した事項を記載することとされているわけでございます。

 KAMにつきましては、こうした追記情報と同じように、監査人の意見とは明確に区別された、財務諸表利用者に対する情報提供と位置付けられると考えられるわけですが、これについてどう考えられるかということ。

 それから、例えば国際監査基準におきましては、情報提供の中でもKAMは投資家の投資判断に対する有用性が大きいということで、監査意見の近くに記載することとされているわけでございます。こうしたKAMの情報提供機能、あるいは有用性というものについてどういうふうに考えていくのか、留意すべき点はあるかということについて、まずはご指摘をいただければと存じます。

 2点目でございますが、適用範囲と対象ということでございます。前回のご議論の中で、会社法監査との関係についてもかなりご意見を頂戴いたしました。まず、以下のような観点からいたしますと、金商法監査と会社法監査の双方を「透明化」の対象とすべきというような考えもあるかと思いますが、会社法監査も対象とした場合にどのような課題があるかということについてお伺いしたいと思います。

 ご意見といたしましては、会社法の監査報告書を作成する時点でもうKAMは確定しているわけでございまして、株主への情報提供の観点からは、総会前に株主にKAMが提供されることが望ましいということですが、「(参考)」のところに書いてございますように、会社法と金商法の監査報告書の作成時期というのは違っておりまして、金商法の監査報告書は6月中旬に作成されて、総会後に公表されるということが多いわけでございます。ただ、実務上は監査計画策定段階から、会計監査上のリスクなどにつきまして、監査人の方々と監査役の方々の間でコミュニケーションが行われておりまして、報告段階では、両方、監査人が着目したリスクと対応についてはもう説明が行われているということでございますので、そういった情報を総会前に株主の方に提供しないということがあるのかということかと存じます。

 2つ目は、その監査役の方々が会計監査の相当性を判断するに当たりまして、KAMの記載も考慮するようになれば、より的確な相当性判断が行われることが期待されるというご意見を頂戴しております。

 2つ目の丸でございますが、この課題の1つ、先ほど申し上げましたような会社法監査も対象とした場合の課題ということでございますが、会社法の監査報告書の提出時期が早いということでございますので、KAMの記載に係る企業との議論・調整の時間が十分にとれないということで、KAMの記載がボイラープレート化するのではないかというようなご指摘を頂戴したわけでございます。

 KAMの記載内容につきまして、先ほど申し上げましたように、監査人の方が監査役の方々に報告されている内容というのがベースになるので、そういう内容を的確に反映させるということがボイラープレート化させないために重要ということもございますし、先ほど住田委員からもご指摘いただいたような点も、ボイラープレート化を防ぐために非常に重要だというふうに考えられますが、ボイラープレート化を防ぐためにどういったことを考えていくかということも重要な課題かと存じますので、その点についてもお考えをお聞かせいただければと存じます。

 (2)でございますが、同じ議論は、単体との関係につきましてもあるかと存じまして、金商法、会社法ともに連結、単体両方に会計監査の実施と監査報告書の作成が求められているということでございます。したがいまして、その単体固有のKAMということにつきましては、単体の監査報告書に記載することも考えられるわけでございますが、この点についてもご指摘を頂戴できればと存じます。

 3点目でございますが、本日の住田委員からのご説明にもありましたが、企業による開示との関係についてもご意見を頂戴できればということで、(1)ですが、企業の開示とKAMの記載との関係ということで、監査人の方々が企業の開示していない事項についてKAMとして記載しようとする場合に、まずは、企業に追加の開示を促すべきというふうに考えるのか。それとも、開示に関係なく、監査人の職業的専門家としての判断においてKAMを記載するべきと考えるかということについて、まずご議論いただければと存じます。

 それから、守秘義務との関係につきましても、前回ご議論を頂戴いたしました。公認会計士法と監査基準におきましては、正当な理由がある場合には、公認会計士の方々の守秘義務は解除されるということになっておりますので、KAMの記載というものが監査基準に位置付けられれば、KAMの記載は守秘義務が解除される正当な理由に該当するというふうに考えられるわけでございますが、監査人の方々がKAMとして記載するに当たって留意するような事項というものがあるかどうかについて、ご指摘を頂戴できればと存じます。

 なお、本日ご議論いただいた上で、次回以降は、このKAMの記載に関します監査人・経営者・監査役の方々の役割、適用時期をどうしていくか。それから、KAMの記載以外の監査報告書の記載事項などについても、諸外国でも動きがありますし、日本でもいろいろな問題意識の指摘を頂戴しているところでございますので、次回以降、こういったことについてご議論いただく予定であるということにつきましても、申し添えさせていただきます。

 それから、もう一部、「参考」ということでお手元に横表2枚紙を配らせていただいております。

 アメリカのSECによる新たな監査報告書に関する監査基準の承認というタイトルでございますが、前回の監査部会でもご紹介させていただきましたが、本年6月1日にアメリカの公開会社会計監督委員会(PCAOB)が監査上の重要な事項に関する記述を追加するというような改訂事項について、その案を発表されたということでございます。これにつきまして、アメリカの証券取引委員会(SEC)のほうで検討されていたわけですが、この監査基準というものについて承認するという発表が10月23日にございました。

 これにつきまして、議長声明というものが公表されておりまして、下に仮訳をつけさせていただいておりますが、SECとしては、こういったルール、CAMを記載するルールの目的というものとして、監査に対する有益な洞察を投資家に提供するということで、これを強く支持するというふうに言っているということでございます。その中身につきましては、監査委員会と議論した事項で重要な勘定、開示に関連しまして、特に困難、主観的あるいは複雑な監査人の判断を伴う項目についての監査人の視点というものを、投資家の方々に提供するようデザインされているということで、投資家の理解にも資するというような考え方が述べられております。そして、それについては非常に有益であるというような考え方が述べられているということでございます。

 2ページ目には、本日ご議論いただきます監査人の方々による一次情報の提供、あるいは顧客情報の守秘義務というものについても、アメリカでもいろいろ議論があるようでございまして、それについてのSECの発表文の中に書いてあります記載を参考に載せさせていただいておりますので、こちらについてもご参照いただければと存じます。

 以上、簡単ではございますが、論点とアメリカでの動きについてのご説明を差し上げました。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。

 それでは、日本公認会計士協会からの報告と事務局からの説明がございました、主な論点を踏まえまして、委員の皆様からのご意見をいただければと思います。ただいまご紹介のありましたどの論点からでも結構ですので、いかがでしょうか。水口委員、どうぞ。

〇水口委員
 ありがとうございます。3つの意見で、1点目は、監査報告におけるKAMの位置付け、2点目は、ボイラープレート化を回避した形でのKAMの有用性の確保について、3点目は、KAMの適用範囲についてです。

 まず1点目、KAMは、監査プロセスに係る情報の提供であって、監査人の意見と明確に区別された財務諸表利用者に対する情報提供と位置付けることがしっくりくるということです。ご説明にも既にいただいているところでありますけれども、KAMの記載内容のベースとなりますのは、監査計画策定時に監査人と監査役等とのコミュニケーションや監査結果の報告時の監査人から監査役等に対する着目したリスク、対応に係る説明といったプロセスであって、こうした整理が素直であると思います。

 2点目に関しましては、会計監査に際して非常に多くの会計上の見積りや複雑な判断が伴うというのは、先ほどからも住田委員からご指摘があったとおりであると考えます。そういった中で、企業等との対話に加えて、フォワードルッキングの視点から他のリスク情報等とも突き合わせると、KAMは財務諸表利用者にとって非常に有用だと考えております。

 例えば特定の会社の監査のリスクの特性がわかるような工夫とか、特定のKAMの項目であっても、時系列で見て監査人が着目したリスクの程度とか、状況が変わっているのであれば、その推移がわかるような記述や、行間でもありがたいので、見積り要素等に関するぎりぎりの判断などについても読み取れるような記述を工夫していただくなど、よいPDCAサイクルを継続的に視野に入れる形でKAMの有用性が高まることを期待しております。

 また、KAMのボイラープレート化を回避して、その有用性を確保、向上していくということを志向し、その我が国の特性を十分勘案した上で、他のマーケットにおけるよい事例を活用する余地があるか否かを検討することも考察に値するのではないかと思います。

 ちなみに、KAMの記載の導入後4年の実績を有する英国においては、規制当局は事後レビューのレポートで、監査報告書の情報価値の向上に向けた創意工夫、イノベーションを推進して、こうしたイノベーション等の積み重ねを通じたKAMの改善を評価するといった姿勢を示しています。また、投資家サイドのほうでは、英国投資信託協会がKAMに焦点を当て、評価に値する監査報告書の表彰を行っています。さらには、英国勅許公認会計士協会は、KAMに焦点を当てた品質の競争力強化をうたうレポートも出しています。こういう形で、さまざまな関係者がKAMのよいPDCAサイクルに係る諸施策をとってきているということをご紹介しました。

 3点目となりますが、金商法監査と会社法監査の双方をKAM記載の対象とすることが妥当であって、利用者としては、当然のことながら議決権行使なども視野に入れた株主への情報提供の観点から、株主総会前にKAMの記載を伴う報告書が提出されることを期待します。

 また、監査役等による会計監査の相当性の判断も含めて、KAMの導入による諸関係者による建設的な相互監視による資本市場の信頼性の維持、向上につながることを期待するところです。

 さらに、KAMの記載対象については、会社法監査の場合は、対象会社数が中小企業も含め、金商法監査よりも非常に多くなることも想定され、会社の特性がさまざまであるということに起因する課題もあるのではないかと思います。したがって、会社法監査については、そのKAMの記載の対象範囲について工夫をすることもあり得るのではないかと考えます。

 以上です。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。今給黎委員、どうぞ。

〇今給黎委員
 日立製作所の今給黎でございます。ご説明ありがとうございました。

 まず、日本公認会計士協会の試行結果でございますけれども、限られた時間で取りまとめいただきまして、ありがとうございます。

 前回の欧州事例と今回の試行結果のKAM記載内容についてですが、大半が一般的な記載内容中心でございまして、財務諸表にかかわる実務者であれば自明の内容や、企業の開示内容との重複も多くて、特に新しいベネフィットというのは見当たらないと考えておりまして、やはりKAMの有用性については、基本的には疑問に思っております。

 特に、10ページのKAMの記載内容の総括の「選定した理由」のところですけれども、金額的重要性が高い、財務数値の算定プロセスが複雑である、あるいは会計処理が誤りやすいものが含まれているといった記載がございましたけれども、このあたりの項目になりますと、結果として、事業体が安定していれば、毎年同じことを記載することになるのでないかと思います。これをボイラープレート化というのかということはあるかと思いますけれども、こうした場合、情報の有用性というものはあまりないのではないかと考えております。

 企業が公表されていない情報のKAM記載につきまして、試行結果の事例がございました。これは非常にセンシティブな問題と考えております。基本は財務諸表の作成者と監査人の二重責任でございますので、企業の開示がないことをKAMに記載するのは、基本的には回避すべきと思っております。このあたり、今回の試行事例で、なぜ企業の開示がないにもかかわらず、こういう判断になったのか、差し支えない範囲で結構なんですけれども教えていただきたいということでございます。

 また、ITのKAMの記載についても、9ページにございましたけれども、これもやや異質な気がいたしまして、直接の財務諸表への影響はあまりないのではないかと思いますけれども、なぜ記載がなされたのかご教示いただければと思います。

 記載内容についてのレベル感についての監査人のご回答につきましては、非常に共感あるところでして、先ほどもお話がございましたけれども、特に我が国は簡素を是とする実務文化ですので、ワーディングのレベル感、優先順位など、かなりばらつきが出てくる懸念がございます。日本的かもしれませんけれども、やはり最低限のひな形やガイド、事例は準備すべきなのではないかと思っております。

 24ページのKAMの工数につきましては、今回初回で相当規模の企業レベルでも平均75時間程度ということで、十分監査法人の効率化の中で吸収していただける範囲と申しますか、監査計画の段階からコミュニケーションをきちんととっていれば、監査報酬の増額に直結するものではないと認識したところでございます。

 次に、事務局のご説明のところですが、2の「適用範囲・対象」で、会社法監査との関係、単体との関係のご説明がございました。「(参考)」のところに実務実態を書いていただいておりますけれども、このあたりは違和感ございませんで、近年は三様監査の推進などもありますので、期中の監査人とのコミュニケーションの機会も非常に増えてきております。そうした中では監査の重要な項目も自ずと明らかになってくるのではないかと思っておりまして、クライアントの事業リスクに精通した監査人が、期中にコミュニケーションをきちんととっていれば、期末後にKAMの記載に時間が非常にかかるということはあまり想定できないのではないかと考えております。

 情報量としては、会社法と金商法では、金商法のほうが情報量が多いので、果たして会社法の情報だけでKAMを記載することができるのかという論点もあるかと思います。

 ただ、一方で、そもそも現在、投資家の皆様のご判断は、金商法・連結主体と認識しておりますので、日本だけ会社法や単体まで含めてこのKAMを乱立させるというのは、かえって無用な混乱を招くのではないかと思います。まずは、金商法・連結に絞った議論をお願いしたいと考えております。

 3の「企業による開示との関係」についてでございますけれども、基本的には、先ほど申しましたとおり、企業の開示を促すべきと考えておりますが、前回もご意見ございましたけれども、米国基準、IFRSの適用会社と日本基準の会社の開示の量に差異があるということについてのKAMの影響を我が国としてどう考るのかというのは、非常に重いテーマと認識しております。開示全体につきましては、現在も一体的開示でありますとか、あるいはIASBのディスクロージャーの議論、ASBJの適用後レビューなど、議論が進んでおりまして、欧米の開示の手法が妥当とは必ずしも思いませんけれども、欧米と日本の開示差異がもしKAMに影響を与えるということであれば、基本的な対応スタンスのコンセンサスが必要ではないかというふうに考えております。

 以上でございますけれども、追加の論点で数点お願いしたいことがございまして、1つは、四半期のレビュー報告書については、基本的に今回のKAMの議論の対象外と認識しておりますけれども、それでよろしいかということでございます。四半期につきましては、四半期報告書などイギリスにはないわけで、我が国固有の実務負荷とも認識しております。四半期のKAMの議論は対象外と思っておりますが、確認をお願いしたいということであります。

 2つ目ですけれども、国際監査基準の件で、そもそも国際監査基準をそのまま日本で適用するということが制度的に可能なのかどうかということを確認させていただきたいということでございます。

 それから、KAMを適用するに当たって、既に適用国があるわけですけれども、任意適用としている国があるのかどうかというのを教えていただきたいということであります。

 最後になりますけれども、監査法人へのお願いということで、今回、監査手続のブラックボックス化への批判の対応という観点もございますので、監査上の重要な事項のポイントにつきましては、一括して項目ごとに、例えば、監査法人が発行しておられる監査品質報告書などにまとめて記載していただけないかということで、こうした取組みも、少しでも投資家の皆様の理解に資することになるのではないかというふうにも思っておりますので、ぜひご検討いただきたいということでございます。

 以上でございます。

〇伊豫田部会長
 幾つか質問を含めてご意見を頂戴いたしました。また、後でまとめて、こちらで検討させていただくことにいたしまして、続けて、ご意見、よろしくお願いします。熊谷委員、どうぞ。

〇熊谷委員
 みずほ証券の熊谷でございます。第1回目ロンドンに出張しておりまして、欠席させていただきまして、今日初めてでございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 実は、今日もこの後、関西のほうに行かなければならないので、途中退席させていただきます。誠に心苦しいのですが、よろしくお願いいたします。

 今日の論点3つにつきまして、コメントさせていただきたいと思います。

 まず、監査報告におけるKAMの位置付けということでありますが、もう既にご議論されているかと思いますが、現在の短文式の監査報告書、これは大変歴史もあってすばらしい制度じゃないかというふうに実は思っております。やはり二重責任の原則のもとで、無限定適正か不適正かという、ある種デジタルな情報によって、そこからは、監査人から一次情報が提供されない制度となっております。これ自体はすばらしいことだと思っています。ただ、結局監査報告書の品質ということに関しまして、このような仕組みですと利用者としてやはり判断のしようがない。判断できるのは、その無限定適正というような評価が一夜にして不適正に変わったりですとか、あるいは不正会計であったり、粉飾決算というのが出てきたときに、一体何をやっていたんだということで監査品質の問題を感じるわけであります。

 逆に、やはり無限定適正ということに対する幅が今の短文式の報告書では全く判断できないという中で、無限定適正意見というものに対する利用者からの非常に大きな期待ギャップというものがあると思います。仮に無限定適正意見のついた財務諸表に、残念なことに不正会計といったような事例が発生したときに、監査制度そのものに対する非常に大きな信頼を揺るがす、そういうリスクが非常に大きいのではないかと思っております。また現在、我が国が置かれた状況というのは、特に海外の投資家から見た場合に監査制度に対する信頼が揺るがされるリスクがあるというふうに認識しております。

 確かにこのKAMという仕組みはボイラープレート化するリスクがあると思いますし、私どもとしても、ここで一次情報が出てくるということを期待しているわけではございません。もちろんKAMを入れましたときに、一次情報に近いものが提供されることを期待してしまう人はいると思うんですけれども、やはりそういう趣旨でないということは、利用者のほうにも周知徹底の上に導入して行く必要があると思っております。

 ただ、ボイラープレート化、ボイラープレート化と言われるわけでありますけれども、先ほど今給黎委員からもご指摘ありましたけど、一般的なもので、かつ、実は監査上の手続をしてそれほど大きな問題がないというようなケースは、ボイラープレート化するのはある意味やむを得ないんじゃないかなと思っております。

 むしろ、会社の固有なリスク、もちろん会社の固有なリスクがあるということで、このKAMが選定されているというふうに理解しておりますけれども、そこでも際立って、監査上のリスクの高いような個別の、非常に企業に特殊的な事例がある場合には、そこは個性を持って書いていただきたい。それによって読むほうも、情報の整理が非常にしやすくなるわけでございます。ですから、全てがボイラープレート化していくかというのは、やはり避けるべきかもしれませんが、ただ、何の問題もない会社についてまでボイラープレート化するということを恐れるべきではないんじゃないかなというふうに考えてございます。で、あくまでも、これはやはり監査人の方々が独自の判断で行っていただきたいということでございます。

 適用範囲にまいります前に、企業による開示との関係ということでございますけれども、そういう観点に従って考えてまいりますと、まず、企業が開示していない事項についてKAMとして記載しようとする場合、まずは、企業に追加の開示を促すべきという記載が3ページにございますけれども、これがやはり本筋であろうかと思います。私どもも、企業が開示していない情報を監査人があえて書くということに関しては、非常に抑制的であるべきじゃないかなというふうに考えます。

 ただ、やはりKAMとして、論点として抽出されたものであって、かつ監査人が非常に重大であるということを、企業がどうしても書きたくないというようなケースも想定されるわけでありまして、そうしたときにこの守秘義務解除という論点が大変重要になってこようかと思います。守秘義務を解除してまでもKAMに書きたいというような事例が仮にある場合に、それは本来企業がまさに二重責任の原則のもと開示すべきことであって、それが開示されないと、そういうことが仕組み的に担保されていないという制度では問題があろうかと思います。ここはやはり法律も絡むことだと思いますので、今後真剣に議論していくことが必要じゃないかなというふうに考えております。

 最後に、範囲でございますけれども、金商法開示と単体、会社法開示、先ほど水口委員からもご指摘がございましたように、この手の開示を、上場会社、あるいは金商法対象会社外までに広げるということに関しては、作成者及び監査人の負担を考えましても、現実的ではないというふうに考えてございます。

 ただ、金商法の対象となるような会社に関しましては、有価証券を発行して、投資家に対する責任もあるわけでございます。そうしたことを考えますと、まず、金商法対象会社に関しては、KAMというのは必須になってくるんではないかと考えておりますし、で、理想論を申せば、こういった情報が株主総会前に開示されているということが大変重要であるというふうに認識しております。

 ただ、これ、ここの場で議論すべき話ではないと認識しておりますけれども、我が国の株主総会の実施、プロセスの実務において、決算及び監査報告と株主総会のインターバルが極めて短いということを考えますと、KAMというものが株主総会において必須の情報かといいますと、私自身は利用者ではありますけれども、そこまでの重要性は持っているのかなというふうにも思います。株主総会は、まず、財務諸表をベースに議論すべきことであって、その後、その監査の適正性に関しまして、あるいはより深い分析を行っていく上で、こういう情報が必要になってくるというふうに考えておりますので、会社法の監査に望ましいということは前提としつつも、そこに無理があるのであれば、まずは金商法、特に連結財務諸表を中心にやっていくということが適当ではないかと思います。

 及び単体財務諸表に関しましては、ご指摘もあったかと思いますけど、非常に簡素化されている中で、本当に重要なものが出てくるのかと。で、普通に考えますと、連結と単体でかなりの部分オーバーラップする部分があると思いますので、そこは仮に単体においてどうしても書くべきことがあれば、そこの点のみについて記載するということで十分ではないかなというふうに考えております。

 最後にもう一点、住田委員の資料の32ページ目に、利用者に関する記載がございますけれども、やはり利用者の一人として申し上げますけれども、財務諸表につきましては、利用者は大変よく見ているわけでございます。監査報告書についてももちろん見ているわけでありますけれども、監査報告書と財務諸表の関係にまで深い理解をしている利用者が少ないという現実もございます。そういった意味で、そういう教育的な効果、まさに建設的な、経営者と利用者の建設的な対話を促進していくという意味では、財務監査制度、開示制度、あるいは会計基準といったところに対する利用者の理解を深めていくということは、大変重要であろうと思いますし、そこは利用者の関係諸団体に委員の一人として、将来KAMというものができた場合、働きかけていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。ほかいかがでしょうか。荻原委員。

〇荻原委員
 豆蔵ホールディングスの荻原でございます。前回シリコンバレーに行っており、欠席しまして、申し訳ございませんでした。

 豆蔵ホールディングスといっても、食品業界ではございませんで、IT業界でございます。私は、実は、会計士、税理士で20年前まで監査法人におりまして、私の経験から申し上げますと、いわゆる監査というのは過去の結果なんですけれども、会社というのはあくまで予測不可能な未来の中にいるわけですね。私が監査法人にいるときにあるクライアントが、減損対象になる会社を、これを減損すると言われたことがあるんです。私はまだ早いと思いそれをとめたんです。そうしたら、今その会社はとんでもないことに、すごくすばらしい会社になっている。ということに、いわゆる予測不可能なわけですね。

 何を言いたいかというと、第4次産業革命と言われて、2020年以降、この国の産業構造も全部変わって、予測不可能な社会に絶対、突入するわけなんです。もちろん自動走行、フィンテック、AIってみんなそうなんですけどね。全く新しいものが入ることによって産業構造が変わると。このときに、過去の延長線上の知識で未来を予測しても何にもならないです。今日はこのKAMを導入することを前提とした場合の話なんですけれども、必ずお願いしたいことは、監査法人の先生方には、業種に特化してほしいです。本当にいろんな会社を見て、他の会社の動向はこうだということを踏まえた上で、同じ土俵に立って意見の交換ができれば、我々、経営者の立場としてうれしいと思います。

 それと、先ほどの、いわゆる監査報告の話なんですけれども、日本というのはゴールデンウィークがあるんですよね。今は働き方改革で、休むことを推奨しています。それから考えますと、まず実務的に間に合わないんじゃないかと思います。

 あと、これを金商法だけに限ってKAMを書くことによって、経営者に対して、議論の場になると。来年までにこれを是正しようという気持ちが絶対起きるはずなんです。金商法は、もしそこで議論の対象となることが書かれていれば、我々は、来年に向けてそれをどういう形で是正しようかということにやっぱりなるんではないかと思います。だから、そういう観点からして、金商法と、かつ連結に限ってであれば、私は、開示はいい、ある意味、どうしても導入するというのであれば、そうかなというように思います。

 あとは、企業に追加の開示を促すべきと考えるって、企業が開示してないことをKAMで書かれると、これ、もう正直申し上げて、立場がないということになりますので、同じレベルで書きたい、書いていただきたいと思います。

 以上でございます。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。小畑委員、どうぞ。

〇小畑委員
 ありがとうございます。本日お配りされている資料2の主要な論点の順番に沿って意見を申し述べさせていただければと思います。

 まず、1番目の論点の監査報告書におけるKAMの位置付けでございますけれども、この3行目で「監査人の対応について、意見とは明確に区別した上で」と明記していただいているところは、全くそのとおりだと考えておりまして、あくまでもこの点をよく踏まえて、今後の議論もしていただきたいと思います。その心は、あくまでもこのKAMというのは、監査プロセスをきちんと説明することによって、適正な監査が行われていることを投資家サイドが確認をするためのものでございまして、企業評価のために情報を提供するものではないということで、「情報」とここに書かれておりますけれども、それは監査プロセスを説明する情報であるということをしっかりと明記し、確認していただきたいということでございます。

 また、その次の次の段落で、追記情報云々の話がございます。その後の1ページ目の最後の段落で、「KAMは、追記情報と同様に」と書いておりますけれども、ここも監査人の意見とは明確に区別されたという点で同様にであるということであって、その追記情報と同様の内容を書くというものでは全くないということはしっかりと区別していただきたいと思います。

 次に、2ページ目の適用範囲・対象という2番目の論点でございます。会社法監査との関係でございますが、ここでは、会社法監査も対象とした場合と書かれておりますけれども、金商法監査へのKAM導入に関して、何も議論をされてないというか、決まっていない話であるのに、あたかも金商法監査については導入することが前提であるかのような書きぶりをしていることに、非常に違和感を覚えるところでございます。さらに、会社法の監査について、ここで議論されるということについて、全く理解できないということでございます。

 その上で、あえて会社法について申し上げさせていただければと思います。実務的には、日程的になかなか難しいという点もございますけれども、そもそも会社法における会計監査人と金商法における監査人の権限、あるいは責任が全く一致しているかというと、そうではないと理解しておりまして、それらをきっちり整理しないままに、こういう形で議論されるのはいかがなものかと考えております。

 それから、(1)の2つ目のポチのところで、「監査役等が会計監査の相当性を判断するにあたり、KAMの記載も考慮するようになれば、より的確な相当性判断が行われることが期待される」とございます。この上の「(参考)」でも書かれておりますけれども、監査役は、監査人からKAMの内容に相当するような報告を従前から受け、それを検討して、しっかりと対応しておりますので、KAMの記載があろうが、なかろうが、的確な相当性判断が現状でも行われていると考えるところでございます。

 それから、3ページ目でございますけれども、単体との関係が出てまいります。これまでのご意見にも出ておりますし、あるいは日本公認会計士協会からの報告にもございましたけれども、昨今の連結主体の開示ということを考えますと、単体にまで本件を及ぼすことは適切ではないのではないか、不必要ではないかと考えております。

 それから、ここには記載がございませんけれども、あえて1つ問題提起をさせていただければと思います。先ほど今給黎委員から、四半期レビューは今回の対象ではないですねというお話がございました。それとあわせて、半期報告が別記事業については現行あるわけですけれども、半期報告については、レビューではなくて、監査報告書がつくものでございまして、半期報告についても、KAMが必要なのかという点をご議論いただきたいと思っております。そもそも半期報告についてもレビューで十分ではないか、監査報告が本当に必要なのかも含めて、ご検討いただければと思っております。

 それから、最後の論点の企業による開示との関係でございます。まずは、企業に追加の開示を促すべきと考えるかということでございますけれども、通常KAMとして記載される、特に重要な事項については、基本的には企業側が開示していると思うところでございます。しかし、なお、開示が足りない場合については、企業情報について、情報を出す責任は企業にあるわけでございますので、企業側に追加の開示を促すという対応になるのではないかと思っております。

 それから、守秘義務との関係でございますけれども、KAMであれば、何でも正当な理由として、何を書いてもいいということには必ずしもならないのではないかと考えております。やはり追加の開示を促すということで通常は対応されるべきであろうし、営業秘密等のセンシティブな情報については、それを出すことによって企業の価値が大きく変わるということにもなりかねませんので、そこは慎重にご検討いただきたいと思います。特に、営業秘密等については、そもそもKAM記載の除外事項とすることも必要ではないかと考えております。

 以上でございます。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。はい、吉見委員、お願いします。

〇吉見委員
 北海道大学の吉見でございます。前回、私も欠席をいたしましたので、この議論については、今回が最初の参加となります。よろしくお願いいたします。

 まず、KAMの位置付けでございますけれども、これは資料2の一番最後のあたりにも書いてございますように、意見とは明確に区別するということ、これは大変重要な点であり、そうされねばならないであろうと考えております。

 次に、適用範囲・対象についてでございますけれども、特に会社法監査との関係でありますが、まず、基本的には、ここまで会社法の監査と、金商法の監査をいかに接近させていくのかが、戦後の日本の会計専門職による監査のあり方の1つの方向性だったと思います。そういう中で、例えば監査報告書の記載内容につきましても、あるいは監査意見につきましても、その接近が図られてきて、会社法監査の報告書と金商法監査の報告書は、事実上同じような形が現在とられている、そこまでの努力がされてきたというふうに見るべきであります。

 また、実際に両方の監査を受けている企業については、同一の監査人がこれを監査しているというのが実態でありますし、そこで行われる監査手続も、金商法、会社法によって全く異なった監査手続が行われているということは、これはないわけであります。そういう観点からしますと、今般、こういうKAMが、監査報告書に記載された場合に、その監査報告書が金商法と会社法で異なるものになるというのは、私は、我が国の方向性、会計専門職が行う、公認会計士が行う監査の方向性としては、これまでとは異なったメッセージを出してしまうことにならないかということを非常に危惧しているわけであります。

 また、金商法監査におきましても、特にこのKAMの記載に関しては、日本においては監査役等とのコミュニケーション、つまりガバナンスに責任を持つ者とのコミュニケーションがかなり重要なポイントとして出てまいります。したがいまして、金商法監査においてKAMが記載される場合には、当然のことながら、監査役等とのコミュニケーションがしっかりとられ、その上でのKAMの選定を行い、記載が行われるということだと考えますので、そう考えますと、会社法監査においてはそのKAMの記載がなされないというのは、監査役等との関係の中でも違和感を持つところであります。

 もっとも、実施のタイミングの問題は、また別に考えるべきかなと思っておりまして、金商法と会社法の監査報告書にKAMを記載することを同時のタイミングで行わねばならないということは、これは私は必ずしもないのかなと。この点は前回のこの部会におきまして、弥永委員からもそういうような同様のご指摘があったというふうに、私、議事録を拝見して認識しているところでございます。何しろ会社法監査の対象企業のうち会社法単独で行われているものが、金商法の対象企業と同数ぐらい、ですから会社法監査対象企業数はトータルで言えば金商法対象企業数の倍。およそそういうような数に上るかなと思っておりますので、そう考えましたときには、会社法監査の対象企業が多いということもあり、例えば金商法においてKAMの記載についての実務というものを積み上げながら、会社法に順次拡大していくという、こういう考え方は当然あり得るだろうと思っております。ただ、そのためのベースとなる基準といいましょうか、ルールづくりというのは、これは統一したもので行われるべきと私は考えております。

 それから、企業による開示との関係につきましては、これは今日の資料2の3ページ目(1)にありますように、企業が開示していない事項があった場合に、まず、企業に追加の開示を促すべきである。これはもう当然であろうと思います。作成責任のある経営者側、企業側にまずは情報を開示してもらい、それに基づいて監査人が記載を行うというのが、これは当然の方向性であると思っております。

 一方で、ここでどういうものが開示されていないのかについては、今日、住田委員からのご報告にありましたように、企業がどういう会計基準を適用するか、採用しているかによって相当影響を受けているということを、私は、今日のご報告によって理解をしたところであります。端的に言えば、日本基準を採用している場合には、企業が開示していない情報、事項について、KAMとして記載する必要があると監査人が判断するケースが多いということでありますね。その点では、そもそも、日本基準と言われるその会計基準がこれでよいのかというものもありましょうし、あるいは全体の方向性としていえば、将来的には国際基準に移行していく企業が多い、あるいは日本基準がそういう国際基準に合わせられていくという方向性が見られるのかなと思いますので、これも本来は会計基準のところで解決される部分が多いと思います。しかし仮に企業が開示していないような事項を、KAMとしなければならないと考えたときには、今日の住田委員からのご報告の中で、資料1の13ページでしょうか、財務諸表外の情報や未公表の情報についても、そういったKAMについて、その記述自体にはすぐに企業側から理解が得られたということでございますので、だとすれば、企業にその記述等を促した場合に、多くのケースではそれが記述された上でKAMが記載されるということになるのかなと思っております。

 それでも、KAMとして記載しなければならないが、企業はあくまで開示しないという情報が仮にあったとしますと、ここが守秘義務との関係が出てくるところだと思いますが、本当にそういうケースがあるとすると、これは私は、まずまれなケースであろうというふうに考えるんですね。そこまでして監査人が記載をしなければならないと決断する情報というのは、相当重要な情報であって、そういう重要な情報の開示に、企業が反対しているという中でKAMに記載する場合には、KAMの記載というよりも、それは本来は監査意見に影響を及ぼすような事項になっていくのではないかと、まずはそういうふうにも思います。

 その上で守秘義務との関係で言えば、私は、フリーに、守秘義務を完全に解除してしまうということについては、慎重であるべきだと思いますし、あるいはこの点については、その他の基準等、例えば日本公認会計士協会がおつくりになっている倫理規則等との関係の中で、基準の改訂といいましょうか、規定も必要になってくるのだろうと思います。非常に広い大枠でいいますと、この問題は、公認会計士が誰のために監査をしているのかということとも関係するわけでありまして、これは公共の利益に資するように活動するのだというのが、本来のグローバルな会計専門職の位置付けであろうと思います。ですが、ここまで日本では、必ずしもそのような位置付けが明確ではなかった。特に法律上明確ではなかったという側面もありまして、どうしても守秘義務のほうが実務上は先に立たざるを得なかったところがあると思います。ですが、公共の利益が大きく侵されるような状況になった場合には、そこでの守秘義務は解除されるべきではないかという議論、それは別途あるのだろうと思います。そういう公共の利益を認識して、会計専門職の公認会計士の仕事が位置付けられることが日本においても重要であろうと思いますので、場合によっては、この話は、そういう点での思考の転換のポイント、パラダイムシフトのポイントにもなると考えたところでございました。

 私からは以上でございます。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。ほかいかがでしょうか。林委員、お願いします。

〇林委員
 関西学院大学の林です。前回欠席をいたしまして、失礼しました。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、KAMの位置付けについてなんですけれども、皆様十分にご承知かと思いますが、追記情報はそもそも、財務諸表に開示ないし表示されていることを前提に強調するという事項と、財務諸表に開示、表示されていないもので、監査、監査人の責任、あるいは監査報告書の理解に関連するということで書かれるその他の事項という整理がなされております。KAMは、そういう意味では後者の追記情報に似ているというか関連するところがあり、情報提供という意味では同じなんですけれども、再三指摘されていますとおり、KAMは監査プロセスや監査意見形成の理解に関連する事項です。配布資料の2ページ目の上のところに「監査意見の近くに」と書かれていますが、投資家の投資判断に対する有用性が大きいということももちろんありますけれども、とにかく情報の内容が監査意見と強く関連しているという意味で、追記情報としてではなく、監査意見とあわせて開示をするべきだろうというふうに考えております。

 それから、別の観点としましては、EUでもUKでもKAMは導入されており、アメリカは導入を決定したということですので、国際的な監査報告書の比較可能性ということも考える必要があるでしょうし、もちろん今回は国内制度の議論ではあるんですけれども、外国人による株式の保有比率は既に3割を超えているということを考えますと、やはり海外の状況というものを無視はできないだろうと思います。

 また、先ほどご意見があったかと思うんですが、例えば透明性報告書でまとめて大きな傾向としてKAMに相当することを書いてはどうかというご意見だったと私は理解したのですが、そもそもKAMというのは個別の監査について説明をする、情報を提供するということですので、やはり個々の監査報告書に記載すべきだろうと考えます。

 会社法監査との関係につきましては、結論からいいますと、株主への情報提供というのはもちろん重要ですので、会社法監査報告書にもKAMを記載すべきだろうと思うのですが、既に議論があったように、実施のタイミング等の政策的配慮は制度上必要ですので、議論の余地があろうかと思っております。

 ボイラープレート化するという問題については海外でもよく言われていますが、まずはひな形をつくらないということがあるでしょうし、それから、監査役等との議論の内容に基づいて書くということをきちんと徹底すれば、ボイラープレート化は防げるのだろうと思います。ただ、一番のポイントは、財務諸表と監査報告書の読者、利用者がきちんとKAMを含めて評価をして、それをいろんな形でフィードバックするということです。これが機能するかどうかについては議論の余地があると思いますが、機能すると考えれば、一番重要なポイントと思います。

 これは、今回のKAMの議論の発端にもなった在り方懇の議論にも関係するんですけれども、監査法人のガバナンス・コードを導入して、きちんとガバナンスをしてもらうとともに、透明性報告書等でそれを情報開示する、それを見て関係者、例えば監査役等が監査人の選解任とか報酬とかで評価結果を伝える、というような好循環を想定していると思います。この監査報告書のKAMは、それとは少し違いますけれども、個別の監査についての品質を以前よりは測れるようになるという意味で同じ意味を持っていますので、そういう観点からとにかく利用者がどう評価するか、そこできちんと評価がなされるようになれば、まさに好循環でよりよい実務というのがつくられるんだろうと理解をしております。

 最後の守秘義務のところですけれども、当たり前のことながら、KAMを財務諸表に表示、開示されているものに限定するというのは望ましくありません。先ほどもどなたかおっしゃられておりましたが、KAMに関連する事項は、その性質からしてほぼ表示、開示されているのだろうと思います。また、開示されていない場合には開示を促して、それでも開示されない場合には、それはやはり事柄の性質上、KAMとして監査人の判断で記載することになるのだろうと思います。現実問題としては、できる限りの制度的な手当てが必要だろうと考えますが、最後は個別に会社との話し合いということに当然なろうかと思います。そこでも、先ほど申し上げたように利用者が評価、フィードバックという形でどこまで後押しをするか、できるか、というところにかかってくるんじゃないかと考えております。

 以上です。ありがとうございました。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。弥永委員。

〇弥永委員
 ありがとうございます。1点だけ、会社法監査に関してコメントさせていただきたいと思います。前回申しましたように、会社法監査にどういうタイミングで入れていくというのが望ましいのかにつきましては、さまざまな課題があり、慎重な検討が必要だと思います。また、この問題は法務省法制審議会の部会でご検討いただくということになるのでしょうけれども、会社法上、仮にKAMの記載を要求するということになれば、どのようなメリットがあるのかということを考えてみますと、少なくとも、2つのメリットがあり得ると思います。

 1つは、株主にKAMの内容について株主総会で説明を求めるチャンスを与えることができるということです。もう1つは、監査人の方々は、当然のことですが、監査報告の利用者、監査報告の受益者が、一般大衆あるいは投資家であると認識されていると思いますけれども、監査人の方が現実に利用者に具体的に接触するチャンスというのは、公式にはないのです。しかし、仮に、株主総会において、会計監査人として説明を求められるということになれば、会計監査人としては、直接、自分の監査報告の利用者を認識することができることになり、監査人の方にとっても、極めて限られた範囲であれ、利用者のニーズを把握できるというメリットがあると思われるのです。

 しかし、残念ながら、我が国の会社法の現在の枠組みでは、会計監査人は株主総会への出席義務を負っているわけではなく、株主総会の決議で要求されない限りは出席しなくてよい、したがって、説明しなくてよいという状況です。したがって、本当に、KAMを、会社法上、会計監査報告に記載させることのメリットを十分に発揮しようとさせようというのであれば、法務省法制審議会で会計監査人が株主総会に出席する仕組みを検討していただいた方がよいかもしれません。比較法的に、外国を見たときに、強制している国はさほど多くありませんけれども、例えば、オーストラリアやインドでは、会計監査人は株主総会への出席義務が課されております。また、それ以外の国でも、外部監査人が株主総会に出席していることはしばしば見られるといわれております。

 逆に、会社法上、このようなメリットを十分得られないのであれば、有価証券報告書が出てくるタイミングでKAMが開示されるだけで十分なのではないかというような議論につながりやすいかもしれません。このような点も合わせて、会社法上導入することを検討することをお願いすべきかどうかも本審議会としては、考えてみるとよいのではないかなどと思いました。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。ほか、中西委員、どうぞ。

〇中西委員
 中西でございます。

 今までの議論の繰り返しになるかもしれませんが、KAMにつきましては、やはり投資家ですとか、株主とか、マーケットとの対話という意味で非常に重要であると思います。確かにボイラープレート化ですとかあるかもしれませんが、問題がない会社と問題がある会社ということを分けて考えておいたらいいと思うのです。問題がない会社というのは定型化していきますし、毎年同じになるかもしれませんが、それはそれで事実上やむを得ないと。一方、問題のある会社、リスクのある会社など、やはり投資家として、あるいは個人の株主としても判断したいわけですから、こういったときに会社独自の記載をすることがきちんとできているかどうかで、ボイラープレートになるかどうかということを考えていくのが大事かなと思っております。

 また、個人については、リテラシーが低いことが前提で進んでいるかのような部分もあるかもしれませんが、かなり勉強されている方も増えておりますし、また、これから増えていくのがやはりこれからの社会の流れでもあると思います。ですので、今までの簡素化した内容がいい、専門家に任せて何も開示しないほうがいいではなくて、オープンにできるだけのことは開示して、それで開示されたものの結果、個々の判断に委ねるという方向のほうが、むしろ、個人にとってもプラスではないでしょうか。

 そういった意味で、いろんな表現の工夫、混乱しないようにという難しい点もあるかもしれませんが、これは実務を積み重ねて工夫をしていくことで次第に改善できていくことだと思います。表現が難しいから簡素化しようというのは本末転倒な気がしております。ですので、日本的には簡素化というご意見もあったかもしれませんが、日本市場は、今、海外にも開かれておりますし、海外を見据えた上で、あるいはこの開示の流れということを見据えた上で考えていくことが適切ではないかと思います。

 そうしたことからしますと、開示につきましては、無論会社が最終判断で責任を持つということは大切ですが、会計士と会社との間でのコミュニケーションが第一にあった上でどうするかということが前提かと思います。ですので、会計士がいきなり開示するというのは、これはやっぱり問題だろうと思います。ただ、会社が開示を拒否したときというのは非常に大きな問題があろうかと思います。先日も会社法監査のほうですけども、監査報告書を受けとらないまま、監査報告書を受け取ったという招集通知を発送してしまったというような問題のある会社というのもあります。

 ですので、そういった問題のある会社の対応という点は、やはり守秘義務との関係では監査報告書の最終利用者というのがマーケットなり、投資家、株主であることを考えると、厳格に常に100%守秘義務が優先するというものではないのではないでしょうかと思っております。開示のときの手続と守秘義務の解除の関係につきましても、例えば、ある程度はガイドラインをつくって、会計士が動きやすいようにすること、一定の場合や万が一のときに備えるということも考えていただきたいなと思います。

 最後に、こうした負担というものは、ある程度実務が積み重なれば、各会社ですとか、会計士の負担も軽くなろうかと思いますが、その一方で、どうしても小規模の会社、あるいは新規上場を考えている会社の負担は小さくないので、配慮を考えていただければと思います。

 会社法へ適用、あるいは単体への適用ということでもありますが、金商法の実務が積み重なっていくことで、会社法への影響は事実上で出てくるということもあろうかと思います。また、単体につきましては、連単はほぼ共通しておりますし、会社法の単体決算の本質が配当規制であることとか、純粋持株会社がたくさん増えているということも考えますと、まずは、最初に導入するメリットを考えれば、まず連結だけでも先行して導入するということを考えるのはありではないかと思っている次第でございます。

 ありがとうございました。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。岡田委員、どうぞ。

〇岡田委員
 ありがとうございます。

 まず今回日本公認会計士協会で実施いただいたKAMの試行の報告はよくできており、大変わかりやすいと思います。短期間でこの様な報告をまとめていただき誠にありがとうございます。

 私は前回会議で、日本基準適用会社の開示はIFRSや米国基準適用会社と比較してボイラープレート的なものがあることから、KAMによる開示に耐えられるものであるかどうかを一度整理する必要があると申し上げました。今回の報告書を拝見しますと、日本基準適用企業の方が、KAM対応に困難や影響があったという傾向が明確に出ているように思いますので、納得しているところです。

 KAMは企業が開示している情報を使用することが原則だと思います。一方で、KAM以前に企業の開示姿勢の問題があると思います。

 先ほど申し上げましたように、日本ではひな形に従い最小限の開示に止める傾向があるように思いますので、KAMの導入にあたっては今後日本基準の開示の充実という課題があると考えています。

 また、センシティブ情報について先ほどからお話が出ていますが、センシティブ情報として扱うべき対象は、かなり狭い範囲に限定できるのではないかと考えています。例えばビジネスパートナーとの関係で守秘義務がある場合や、あるいは訴訟、交渉中の問題であるなどの場合は、センシティブであり開示は難しいと思います。一方で、経営者が開示したくない場合、極端な場合では経営責任の追及を避ける為に開示したくない場合が万一あれば、これはもうセンシティブ情報とは言えませんので、開示しなければならないと思います。

 それでも経営者が開示しないと言い張る場合は、監査役が出て対応するべきです。日本の監査役は非常に強い権限を持っていますので、経営者を説得するという役割は、監査役に大いに期待されていると思います。申し上げたかったことは、開示の充実がまずあってこそ、KAMが充実するということです。

 次に監査役の位置付けについて申し上げます。金商法からKAMを導入するか、あるいは会社法についても対応するかは、今後のご議論次第だと思いますが、仮に金商法のみとなった場合、監査役等の役割は明文化されておりませんので、監査役等の位置付けを法的にどう整理するのかは、今後検討するべき課題の1つと考えています。

 さらに日本公認会計士協会による試行の結果報告に、KAM導入により監査役等の監査報告書の記載に影響を及ぼすと予想されるとありました。会社法にKAMを導入した場合は別として、金商法のみの導入となった場合には、会社法の監査報告でKAMが求められていないのに、監査役等が監査役の監査報告書で意見を述べることができるのかという点もご議論いただきたいと思います。

 最後に単体監査へのKAMの導入についてですが、私は単体は連結財務諸表に包含されているという理由で単体にKAMを入れる必要はないと思います。それよりも、KAMによる負担増に対応するため、現行制度のスクラップ&ビルド、例えば単体開示の廃止や四半期報告書の見直し等を加速していただく必要があるのではないでしょうか。

 以上です。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。松本委員、お願いします。

〇松本委員
 ありがとうございます。関西大学の松本です。

 2つあるんですけれども、1つ目は前回に引き続き同じことを申し上げますが、今回のKAMの議論というのは、監査人が初めて前向きに監査報告書で情報を開示する権限を行使する場なんですね。今までは常に後ろ向きで自分には責任がない点について、監査の限界や二重責任の原則に関する情報を監査報告書に書いて、利害関係者の啓蒙を促してきたという状況だった中で、初めて監査人の側から自分がこういう監査をやっているということを監査報告書に積極的に書く千載一遇のチャンスが国際的に与えられたというのを理解していただきたいと思います。

 そういう観点からすると、1990年代末にレジェンド問題が起きたときに、どういうふうに経済界が動いたかというのを思い出していただきたいんですが、林委員からもご指摘がありましたけれども、外国人持株比率が30%を超えているような資本市場に垣根がないような時代で、KAMを書いている国の監査報告書と書いてない国の監査報告書があった場合、海外の提携先事務所から我が国の監査法人に対して、あなたのところでKAMを監査報告書に書いてない理由をレジェンドとして書けって言われたら、どうするのかをお考えいただきたいと思います。そしてさらに、監査報告書にそのレジェンドを書かれる側の企業は、それに関して今度は国際的にどう対応すべきなんでしょう、という話がきっと出てくると思います。ですから、90年代に問題になったことが、この21世紀に入ってまた問題になることを避けたいのであれば、KAMは入れたほうが国際的な観点から得策だというように考えるべきだと私は思います。

 2点目は、会社法の問題なんですが、会社法に入れる、入れないにかかわらず、金商法の側で、また連結であろうが、単体であろうが、有価証券報告書に含まれる監査報告書にKAMを書くということが制度として決定し、それが公表されるということになった場合、利害関係者、株主はその制度を十分に認識していますから、当然に株主総会で有価証券報告書に掲載される監査報告書で書かれたKAMについて質問すると思います。そうなりますと、先ほどの話でもありましたけれども、監査役と会計監査人が計画段階から期中に十分にコミュニケーションを図っていて、その会計監査人の監査の相当性についてKAMに相当するような項目を含めて監査役は既に判断しているということでしたし、またもしそういう前提が実際に成り立つのであれば、株主から、総会後に公表される有価証券報告書の監査報告書のKAMについて、株主総会で監査役に対して質問が出たときにも適切にその内容を説明されれば良いと思います。ですから、監査役が監査報告書にKAMを書く、書かないの議論以前に、株主総会で会計監査人による監査の相当性判断の内容の一つとしてKAMに関する質問が出る場合に備えて、監査役が適切に答えられるように準備していれば、会社法に導入する、導入しないという議論は必ずしも出てこないと思います。

 以上です。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。初川委員、どうぞ。

〇初川委員
 今までの意見と重複するところはできるだけ避けたいと思います。まず、監査報告書におけるKAMの記載について、前回のこの会議での議論や米国での議論を見ましても、やはり監査報告書の利用者サイドにはKAMに対するニーズが明らかにあるというふうに理解しました。したがって、KAMに関する議論は、これを監査に関する追加情報として開示していくという方向で検討が進められることを期待しています。KAMの開示方法については、KAM開示の目的、諸外国で導入しようとしている方法等を考えると、監査報告書の中で、監査意見に近いところにこれを記載していくという方法がよろしいのではないかと思います。

 それから、KAMと企業開示との関連についてですが、基本的にはKAMは企業の開示を代替するものではなく、あくまでも監査に関する追加情報の提供であるという考え方は基本的に正しいと思います。財務諸表の重要な勘定または開示に関して、監査人として留意すべき事項、または複雑な監査領域等について、監査人の視点からこれらを開示するということだと思います。オリジナルインフォメーション、企業側が開示してない情報がKAMによって外部に開示されるという懸念も確かにあると思いますが、監査の重要な領域について、監査人の視点から情報提供するという立場をしっかりと守っていけば、企業が開示してない情報をいたずらに開示する必要もない。KAMの記載にあたって、開示されていない情報を極力限定していく工夫は、監査人としてしっかりと意識する必要があると思います。

 そうは言いましても、なぜKAMとして記載したのかという説明をする場合など、どうしても開示されてない情報に触れる必要があるというケースも出てくると思います。そのような場合は、先ほど来お話が出ていますように、経営者、監査役、監査人等、関係者の協議に基づいて対応することになると思いますし、場合によっては企業側に追加の開示が必要になってくるケースもあろうかと思います。いずれにしても、監査人側は、「監査」に関する重要な追加情報を記載するという基本的な考え方をしっかりと理解をしておくことが大切ではないかと思います。

 それから、KAMの制度を適用する範囲ですけれども、私は、金商法監査も会社法監査も、監査人としては、一体としてこれらを実施していると思いますし、KAMに対するニーズや導入の目的から考えても、金商法、会社法というふうに区別して考えないほうがよいのではないかと思っております。

 ただし、実務的な導入の困難性を考えますと、いきなり会社法監査にも適用するとなると、相応の準備期間が必要になってくるのではないかということを懸念しております。あくまでも実務的な側面を考慮してのことですけれども、まずは、金商法の連結、ここからスタートしていく。そのときに、この制度は将来的には会社法監査にも導入していくという方向性を示しておくのも1つの方法かと思います。

 それから、金商法の連結からスタートするにしましても、現状のプラクティスからしますと、株主総会前にKAMの情報が株主に伝わらないという状況がありますので、これについては、制度導入の趣旨からしましても、株主総会の前にKAMの情報が株主に伝わるような、何らかの方法を議論していく必要があるのではないかと思います。

 最後にもう1点、守秘義務の解除の関係ですけれども、SECのリリースを読んでいますと、監査基準によってKAMの開示が要求された場合、守秘義務は解除されるという考え方のように読み取れます。日本でも同じように考えてよいのかどうか、この辺は米国との制度の違い、法律の違いもあろうかと思いますので、KAMの導入にあたって、その考え方を明確にしておく必要があろうかと思います。

 以上です。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。時間が押してまいりました。では、八田委員、お願いします。

〇八田委員
 ありがとうございます。じゃあ、手短に。

 まず、今日配っていただいた資料2の1番目のKAMの位置付けということに関して、既に皆さん方もおっしゃっており、また、そうした前提で議論が進んでいるようですが、このKAMというのは監査意見とは別ものだということです。当然ながら、監査論的にも、監査人は、監査意見に対して全面的責任を負うのであり、それ以外のものに責任を負うものではないということです。したがって、その中にもしも意見ではないものを混在させた場合に、それは結果的にどういう責任を負うことになるのか。つまり、現在でも、なぜ除外事項を付して限定意見にしているのかというと、それは監査人の責任を明確にしようという、こういう歴史的な背景があるということです。その辺がどうなるのかということについても考えておく必要があります。したがって、そういうふうに考えると、先ほど林委員がおっしゃったように、国際監査基準では意見のそばに書けということですが、これはかえって読者に混乱をもたらすものではないかという気がします。

 それから、先ほど日本公認会計士協会の方で行った試行の結果で、このKAMに対する監査人の対応の結果、または見解を書くか書かないか、個別意見として書くのか、書かないのかなど、見解が分かれているようです。でも、実際にその前に監査対象となっている開示情報はどうであるかということが前提であって、この開示情報がちゃんとなされていて、それに対して監査人がどう対応したのかというならば、当然それは書くべきだと思います。ただ、監査人が書かないのであるならば、それは第一次情報提供者である企業側に全部任せればいいのではないでしょうか。

 問題は、何度も出ているように、現在、KAMに該当するような、例えば重要な会計判断にかかわるような事柄、これが第一次情報提供者である企業側に対して開示が求められていないということです。したがって、このKAMの議論をしていくためのまず大前提は、企業サイドにおける開示規制の部分で明確な対応をとるべきではないかということです。それができ上がっているのであれば、必要な開示がなされていないということですから、別にこれはKAMとしての情報じゃなくて、明らかに除外事項ないしは限定事項ということから、開示が不適正だということで対応すれば済む話であって、別に監査上の課題ということで議論する必要なんか全くないと思います。

 したがって、先ほどこの制度が始まると、なにか「考える監査」が求められるというふうに総括されていました。しかし、それよりも、最低限決められているガイダンスや規制の中で開示が求められているわけですが、企業側がより積極的に投資家のため、株主のためにも、説明責任を果たしたいということであれば、より適切な開示を行うことを求めるべきであり、その意味からすれば、まず「考える監査」よりも、「考える開示」をすべきではないかと思います。

 それから、今回のKAMの議論については、2つの論点があると思っています。つまり、情報の充実化という観点で、開示情報をさらに拡大充実するということ。これは先ほど申し上げたように、第一次情報の議論ですから、その場合には、会計基準の改訂をしなくても、内閣府令とか、ガイドライン等の改正で手当てできるのではないでしょうか。

 もう1つがいわゆる監査プロセスのこの透明化、まさにブラックボックスと言われているような監査業務の内容について、それを明らかにするということ。それについては先ほど松本委員は、どんどん開示すればいいとおっしゃいましたが、これについては大反対であります。というのも、監査人の本来のミッションは何かというと、奇をてらった情報開示をすることではなくて、厳格な一次情報に対する信頼性を付与することであって、医者で言うならば臨床医なんですね。したがって、「私は、こんな手術が成功しました、うちはこんなすごい医療をやっていますよ」と、声高らかに外部に言う話ではないということです。

 ただ、どうしても書きたいのであれば、KAMもそうですけども、運用面での対応ということで、監査報告書の本文以外のところでちゃんとそれがわかるように開示すべきだと思います。つまり、本体とは別の部分、それでやるならば、私自身、全く反対いたしません。ただ、実際にこれが機能していくためには、何度も申し上げているように、適用範囲と対象のところで監査役等との連携、これを度外視しては、大会社の場合には、仮に公開会社でなくても議論することはできないと思っています。

 少なくとも厳然たる事実として、会社法監査の場合には、会計監査人の監査の方法と結果の相当性について、監査役が判断するわけですから、このKAMに対する対応をどのように評価したかということも、当然含んだ上での判断が求められるはずです。それは会社法に反映されるかどうか別として、監査役としては当然それをやっていると私は思っていますから、これを度外視して議論することは、言うならば、中途半端な議論に終わってしまうのではないかと。ただ、やはり範囲が広いし、議論のための時間が必要でしょうから、あんまり拙速に結論を求めるのは難しいかなと思っていますが、ぜひこの辺を織り込んでちゃんとやるべきではないかというのが私の考えであります。

 以上です。

〇伊豫田部会長
 ありがとうございました。

 それでは、時間になりましたので、本日の審議はこれで終了させていただきたいと思います。時間の都合で、全ての委員の皆様のご意見を頂戴することができませんでした。司会の不手際をお詫びしたいと思います。

 次回の日程につきましては、事務局から改めてご連絡させていただきます。

 委員の皆様には、充実したご議論いただきまして、大変ありがとうございました。これにて、本日の監査部会を閉会いたします。
 
以上
お問い合わせ先

金融庁総務企画局企業開示課

03-3506-6000(代表)(内線3657、3663)

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