企業会計審議会 第41回監査部会議事録

1.日時:平成30年1月26日(金)15時30分~17時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○伊豫田部会長  
 それでは定刻になりましたので、これより企業会計審議会第41回監査部会を開催いたします。皆様にはご多忙の中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の議事についてでございますが、本日は、まず初めに、前回の監査部会の続きとしまして、「KAMの記載以外の監査報告書の記載等の見直し」につきまして改めて事務局のほうから説明していただき、その後、皆様からご意見を伺っていきたいと思います。

 その後、残りの時間で会社法上の監査報告書におけるKAMの適用について法務省の見解を伺った上で、ご議論いただきたいと思っております。

 それでは、議事に入らせていただきます。まずは、前回も説明しておりますが、事務局より「KAMの記載以外の監査報告書の記載等の見直し」について、改めて説明をお願いしたいと思います。田原課長、よろしくお願いいたします。

○田原企業開示課長  
 それでは、お手元の資料に従いましてご説明させていただきます。お手元の資料1の3ページからとなります。前回の説明の繰り返しとなりますが、お許しいただければと存じます。

 国際監査基準におきましては、監査報告書の記載内容の明瞭化、充実を図ること等を目的として、KAMの記載以外にも、この下に書いておりますような監査報告書の記載等の改訂が行われているところでございます。

 別紙として、横紙の資料もお配りしておりますので、そちらも適宜ご参照いただければと存じます。

 まず1つ目といたしまして、監査報告書の記載順序の変更等があります。国際監査基準では700号になりますが、こちらにおきましては監査意見を監査報告書の冒頭に記載する。従来は後半部分に記載をしておったわけですが、そういう変更をしているということでございます。また、経営者の責任に関する記載に、統治責任者の責任に関する記載を追加する。監査人の責任に関する記載に、独立性その他の職業倫理に関する事項の遵守についての記載を追加するような変更がされているということでございます。

 2点目は継続企業の前提に関する事項でございまして、別紙ですと2ページ目になります。こちらは国際監査基準の570号と700号に記載があるということでございます。

 1点目は、継続企業の前提に重要な不確実性がある場合に、これを独立した区分を設けて記載をするということにされたそうで、従来は追記情報における強調事項の1つとして記載されていたものでございます。

 2点目が、監査報告書に継続企業の前提の評価・開示についての経営者の責任に関する記載、監査人の対応に関する記載を追加するとされております。

 また、継続企業の前提についての重要な疑義がある場合の企業の開示の適切性について、監査人の方に検討をお願いするような形になっているということでございます。

 1ページおめくりいただきまして3点目、別紙も1ページおめくりいただく形になります。その他の記載内容ということで、国際監査基準の720号でございますが、企業の財務諸表、それからそれに対する監査報告書以外の財務情報・非財務情報に関しまして、経営者・統治責任者の責任、重要な虚偽記載があるか否かについて、独立した区分を設けて常に記載を行うことにされたということで、従来は重要な相違がある場合のみ追記情報として記載をされていたものでございます。

 以上が国際監査基準についてのその他の事項ということでございますが、その下の参考のところに記載させていただいていますように、米国監査基準におきましてもCAMの記載以外の改訂ということで、「監査意見」を監査報告書の冒頭において記載するよう変更されているということでございます。これは国際監査基準と同じだと思います。

 それから監査報告書の宛先を「株主及び取締役会」等とする旨を明確化されているということでございますし、監査人が企業から独立した立場である旨の記載を追加すべきであるとされているということでございます。

 また、監査人の在任期間に関する記載につきましても、米国のほうでは監査報告書に記載するようになっているということでございます。

 このような国際的な動向も踏まえまして、KAMの記載以外の監査報告書の記載等の見直しについてのお考えを聞かせていただければと存じます。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。
 
 それでは、前回の続きになりますが、「KAMの記載以外の監査報告書の記載等の見直し」につきまして、皆様方のご意見を頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。今給黎委員、お願いします。

○今給黎委員  
 日立製作所の今給黎でございます。ご説明ありがとうございます。

 全体として、記載順序の変更といったようなことにつきましては国際的整合性を配慮する必要はあるのではないかと思います。

 ISA720の「その他の記載内容」のところですけれども、考え方としては、監査意見の保証の表明はないとしながらも、その他記載内容に重要な虚偽記載等がある場合については報告する、となっておりまして、例えばこれを日本の実務に当てはめますと、有価証券報告書などでMD&Aとか、リスクの定性情報とか、そういったところに監査手続が新たに要求されることが想定されるかを確認させていただきたい。ご説明ありましたように、現在も追記情報の枠組みがあるわけで、実際には記載される例は非常に少ないと認識しておりますけれども、今回の「その他の記載内容」につきましても、今の追記情報と、概ね同様に考えてよろしいのか、改めて、想定される事象や手続がどのようなものかを踏まえた上で、慎重に判断する必要があるのではないかと考えております。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。それでは小畑委員、お願いします。

○小畑委員  
 ありがとうございます。今給黎委員のお考えにも近いのですが、本日お配りいただきご説明いただいた、資料1別紙の、3ページ目のISA720についてでございます。本事項は、※印のところに、「監査対象には含まれないという点は維持されている」としっかり書いていただいておりますので、監査対象に含まれていないことについて、監査報告書に書き込むのは不要ではないかと考えております。

 仮に書くということになった場合には、逆に、監査に近い手続をどういう手続でやるのか、非財務情報についても手続をとらなければいけないのかという疑義が生じてくると考えております。また、翻って、非財務情報について、もう少し経営者の考え方を前面に出し、前向きにこれから書いていきましょうとしている中で、これを逆に阻害することになりはしないか、ますますもってボイラープレート化するのではないかというおそれもございますので、特にISA720への対応は不要であると考えております。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。松本委員、お願いします。

○松本委員  
 関西大学の松本でございます。ありがとうございます。

 今のお話なんですが、ここのスライドの3枚目のその他の※印の、「その他の記載内容」が監査対象には含まれないという点は維持されているというところですけれども、これは厳密に言うと、監査意見の対象には含まれていないととらえるべきで、監査の対象には含まれないという理解は監査基準上なされていないと思います。現に追記情報でも、財務諸表とその他の有価証券報告書の記載内容に齟齬がある場合には、追記情報に記載することが規定されております。平成14年改訂以降ですが。ですから、その改訂以降、有価証券報告書の中の財務諸表以外の情報も監査の対象に含まれているわけで、監査対象に含まれないという字面だけをつかまえた理解は間違っています。

 この点については、ドイツやフランスといったヨーロッパ系の監査報告書とアメリカ系の監査報告書で、その監査の対象となっている範囲が異なっているという点からして、ヨーロッパを中心にしたIAASBが国際監査基準を開発しているということを考えると、非財務情報が監査意見の対象には含まれていないですけれども、監査の対象には含まれているという理解が正しいと思います。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。岡田委員、どうぞ。

○岡田委員  
 ありがとうございます。今松本委員のお話にありましたがISA720が監査対象に含まれるとなった場合、監査役等の位置付けについても検討が必要だと思います。監査役は業務監査を行いますので、広い意味で監査対象にその他の記載内容も含まれると思います。一方で、会社法と金商法の違いもあり、ISA720を監査対象とするためには、その旨をはっきりと定義することが必要だと思います。

 もう1点、ISA700の統治責任者の責任に関して申し上げます。ISA700の文例を見ますと、統治責任者は会社の財務報告プロセスの監視を行う責任があり、この部分については日本では監査役等の仕事だと思います。

 一方で、統治責任者という言葉について日本では定義がなく、何らかの形で統治責任者の定義をするか、あるいは逆にこのKAMの中で述べる監査役等の責任は何かを明確化する必要があると思います。併せて検討をお願いしたいと思います。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。紙谷委員、お願いします。

○紙谷委員  
 ありがとうございます。今お話いただいた統治責任者に関連して、ISA700に基づく監査報告書では、監査人と統治責任者とのコミュニケーション等について記載されることになっています。これは若干、実務にインパクトあるかなと思っておりまして、と申しますのは、会社法監査においては監査人と監査役とは密なコミュニケーションをとらせていただいているのですが、会社法監査において数字が固まった後、有価証券報告書の提出までの間、監査人が監査役等とどの程度コミュニケーションをとるかは、実務上、濃淡があると思っています。

 このような状況において、監査役等とのコミュニケーション等について金商法の監査報告書に記載するとなりますと、会社法の監査報告書提出から金商法の監査報告書提出までの間、監査人は、これまで以上の深度をもって監査役等の皆様とコミュニケーションをとる必要があると感じているところです。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。林委員、どうぞ。

○林委員  
 関西学院大学の林です。ありがとうございます。

 記載順序の変更と継続企業の前提への対応については、皆さんご異論ないかと思いますが、私も、あえて国際動向と異なるルールを採用する必然性はなく、国際監査基準に合わせればよいと考えています。

 それからISA720についても対応が必要だと考えていまして、先ほど松本委員が確認されましたけれども、ISA720と同じ対応をすることになった場合、その他の記載内容は明らかに監査の対象に含まれると私も理解をしています。

 その他のポイントとしては、現行でも、追記情報という形で実務上類似の対応が行われていますが、国際監査基準の規定ではread and considerとなっていますので、国際基準に合わせると実質的な変化が生じるだろうということ、それから、今日配付していただいた資料では虚偽記載という言葉が使われていますので、監査人がread and considerするのは不一致なのか虚偽記載なのか、要するに何を検討するかということに気をつけて議論すべきじゃないかなと考えております。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。大瀧委員、お願いします。

○大瀧委員  
 ありがとうございます。私からは監査報告書の構成について2点ほど申し上げます。

 監査意見を冒頭に記載することに関しては、読み手もわかりやすくなりますし、グローバルとの比較の観点でも整合性がとれると思います。

 それともう1点、KAMの記載ですけれども、こちらは監査プロセスを示すということで、現行の強調事項とは若干性質の異なる内容かと思われます。現行の強調事項の1つとしてKAMを扱うのではなく、新たな記載区分を設けるような形で記載していただくと、読み手は理解しやすいのではないかと思います。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。町田委員、お願いします。

○町田委員  
 ISA720の件ですけれども、これは、監査報告に関する局面の話だけではないと思うんですね。グローバルで見たときに、従来の財務数値の情報の説明力が劣ってきているということで、定性的な情報、文書情報の利用が拡充しているわけです。そして、これはもしも本日、時間があれば、後ほど事務局からご説明いただきたいんですが、今、金融庁の金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループでも定性的情報の拡充の議論されているようです。諸外国では、年次報告書における定性的な情報の部分について、監査とは別に保証をつけていくという考え方をとっている国もあります。例えばフランスなどでは、監査人が見て、定性的情報に何か問題点があった場合、監査の過程で得た理解と何か齟齬がある場合には観察事項(オブザベーション)を書くというようなことはありますし、あるいは、アメリカでは、幾つかの違ったレベルの保証業務を提供するということがかなり以前から検討され、すでに実施されている部分もあります。

 そういった意味で、非財務情報、定性的な情報について、何の保証もなく生身のままで公表されていくことを、今グローバルな文脈では良しとはしない。それどころか、定性的な情報の重要性が高まっているので、何とか保証の対象にしたいと考えている状況にあるわけですから、ISA720のように、監査をやっていく中で、監査対象となる財務諸表が含まれる開示書類について、最低限read and considerをするという程度のことができないと、日本の有価証券報告書におけるMD&Aや定性的情報というのは、信用されなくなってしまうと思います。

 これは国際的なディスクロージャーの常識の話だと思います。よく日本の企業の方は、「自分たちのつくった情報は正確で、問題なんてない」とおっしゃることが多いのですが、それはグローバルな常識とは違うと私は理解していますし、監査を受けていても訂正報告がかなりあるくらいなのですから、単なる過信に過ぎないでしょう。つまり、監査の一環として、最低限の非財務情報、定性的情報に対して、監査人に関与してもらうことは、このISA720の対応程度のことは、何の問題もなく受け入れられて当然だろうと私は考えています。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。井口委員、お願いします。

○井口委員  
 ありがとうございます。最初の監査報告書の記載順序の変更と、あと継続企業の前提に関する事項というのは、これは皆様からも特に異論なくということでしたが、私も、グローバルとの比較可能性の観点から、ここは共通した枠組みのほうがいいと思っており、皆様と一緒の意見でございます。

 今、議論のありました、その他の記載内容についてですが、私は日経のアニュアルリポートアウォードの最終審査委員をやっておりまして、かなり多くの任意のアニュアルレポートを読んでいます。企業の努力にはすごく感謝しておりますが、ただ一方で、リスクの表記が明らかに少ないなど、ネガティブ情報がかなり少ないという事象があります。

 これから、ディスクロージャーワーキング・グループの議論を受け、非財務情報の開示が進んでいくと思いますが、バランスよく開示するという点では、投資家の役割でもありますが、外部監査人にもある程度見ていただくということも必要と思います。

 制度の詳細までは承知していないところはありますが、英国のアニュアルレポートを読むと、同じようにこのような監査のルールがあるのにもかかわらず、すごくストーリー性があって、バランスのとれた、いいレポートがいっぱいあるという現状を考えると、このルールがすぐに全ての非財務情報をボイラープレート化するということにはならないのではないかと思っております。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。住田委員、お願いします。

○住田委員  
 監査報告書の記載順序と継続企業の前提に関しては特段のコメントはなく、国際監査基準で議論された過程を通しても、日本でもそのまま取り入れられるのではないかと考えております。

 それから、その他の記載内容のISA720ですけれども、先ほど町田委員もおっしゃっていましたように、グローバルでは定性的な情報の重要性が非常に高まっているということが背景になっておりまして、日本でも現在、ディスクロージャーワーキング・グループでそのような議論をされていると認識しております。

 ISA720の対象となるその他の記載内容に関する対応については、日本の監査基準にも従来からあったわけですけれども、改正されたISA720では、監査人が財務諸表監査の一環で、非財務情報を含むその他の記載内容を通読するだけではなくて、considerすることが加わりました。 considerの中身は、監査済み財務諸表との整合性に加えて、今回、監査人が財務諸表監査の過程で得た知識に照らして整合しない部分がないかという観点で通読するということが加わっておりまして、より監査人が、その他の記載内容を注意深く読んで、重要な虚偽記載がないかというようなことを指摘するということになります。ただし、これは、その他の記載内容について保証を与えているわけではなくて、あくまでも財務諸表監査の枠内で読んで考えるということです。

 もう一つ強調されていたのが、グローバルに展開している企業の場合です。ISA600、日本でいいますと監査基準委員会報告書600に従ってグループ監査が実施されますが、その他の記載内容には、親会社だけの情報ではなく、子会社の情報も、企業集団によっては入ってきます。その場合に、子会社の監査チームに聞かないとわからないようなその他の記載内容があれば、グループ監査の過程で、子会社監査チームにも何らかの指示をして照会をするなど、そういうことも強化の一環だと認識しておりますので、日本においても、これは取り入れていくべきだと考えております。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。それでは熊谷委員、お願いします。

○熊谷委員  
 私も皆様と同様、順序、それから継続企業のところに関しては特にコメントはございません。対応していただければと思います。

 また今住田委員から、ご指摘がありましたディスクロージャーワーキング・グループでは、私を含め何名か、監査部会と委員を兼ねておりますが、まさに非財務情報の充実の議論をしております。さて住田委員のISA720についてのご説明を伺っていて、やはり、ボイラープレート化を避けるためにも監査人の方々にしっかり読んでいただいて、まさに監査の過程を通じて得た知見をもとに、その会社固有のリスク等で書かれていないようなことがあった場合に、ご指摘をいただいて、企業に記載内容の充実を図っていただくということは必要じゃないかと思います。

 そういった意味からもボイラープレート化を避けるという意味で、このISA720をとらえていくほうが、やはり健全な見方ではないかなと思います。以上です。ありがとうございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。水口委員、お願いします。

○水口委員  
 ありがとうございます。私もISA720について、やはり監査人がread and considerということで、財務諸表を作成する過程で、監査人の気付き事項をよく踏まえた上で非財務情報についても対応していただくということは非常に意味があることであると思っております。昨今、グローバル化が進み、ビジネスも複雑化して、さまざまなリスクがあって、チャレンジがあると思いますけれども、そうしたチャレンジも踏まえて、非財務情報を監査人の目で確認していただくことが、ボイラープレート化を回避する方向に働くことが想定されると思います。

 非財務情報については、さまざまなリスクも含めてバランスがよい開示がなされていないと、投資家としては、都合のいい情報ばかり得ているのではないかという、やや疑心暗鬼になりがちで、割り引いて考えなければならないところもあります。こうしたことも踏まえた対応を期待します。よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。八田委員、お願いします。

○八田委員  
 現行の会計監査の場合に忘れてならないのは、適正か否かについての監査判断を行うことのできる前提として、情報作成者側が採用している、よって立つべき基準、つまり会計基準が確立しているということが大前提にあって、その作成者側の基準をもって監査人は適否の判断基準としているわけです。そういう視点で考えたときに、このISA720のその他の記載内容、どういう問題が非財務情報とか、定性的な情報の対象として取り上げてもいいと思うし、それは世の中の情報化という流れの中で、より多くのものを期待する社会的なニーズもあると思いますから、それらを発することに対しては何も異論はありません。しかし、それらの情報を財務諸表監査と同じレベルの信頼性を持って監査対象にしていかなければならないと考えた場合には、その非財務情報であれ、環境情報であれ、ガバナンス情報であれ、それらの情報に対する明確な作成基準、あるいは表示基準がなければ、監査人は何をもって判断基準にするかわからないということになります。

 では監査の枠組みから外れていいかというと、実は、既に会計監査とか、業務監査とか、あるいはそういったカテゴリー別の監査ではなくて、これからは企業の実態を将来に向けて読み取れるような情報開示が求められていることから、監査人はその全体像を監査するという点で、私は「企業監査」の時代に入ってくるのではないかと思っています。統合監査という表現でもいいですけれど。そのときに、こういった周辺を支えている情報が結果的には財務情報にも大きな影響を及ぼすし、それが今の段階でも齟齬を生じているといったような問題がある場合には、やはりこれは対象にしてしかるべき対応をする必要があるだろう思います。

 ただ、それに対して意見を言うことは必要ないと思いますので、先ほど林委員や松本委員がおっしゃったように、監査対象になるというのは、少々誤解を招くのであって、現行の意見には直接かかわっているものではないけれども、当然それを包含する形で、私は対応しなくてはならないと思います。

 なお、これは言うのは簡単ですけれど、監査人側から見ると結構荷が重いし、責任という問題を考えたときに、よほど慎重に対応しなければならないかなと。

 でも、また二重否定しますけれども、世の中にはそういうニーズが強くありますから、できればそういう方向で検討していただきたいと思います。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。関根委員、お願いします。

○関根委員  
 ありがとうございます。私も皆様とほぼ同様で、記載順序及び継続企業の前提に関する事項につきましては、ISAどおりのものを日本において確認しながら入れていくような形でよいと思います。特に、これだけいろいろなことが記載されるようになると、意見を監査報告書の最初に記載するというのは、これが意見であることが明確になるので、よいのではないかと思います。

 それからISA720については、いろいろご意見がございますけれども、そもそも財務情報というのは、企業の活動の結果を示す数字です。非財務情報というのは、財務情報だけでは表しきれない企業の活動を非財務という形で表していくものですから、両者は連携していなければいけないと思っております。先ほど委員の中で、非財務情報は監査の枠内で見るのであって、保証するものではないというお話がありました。もちろん将来的に保証することにもなり得るのかもしれませんが、今、八田委員からもお話がありましたように、保証ということになると、基準をどうするかという問題も出てきます。今はそこまではいっていないと思いますが、監査の枠内で監査人が企業を見ていく、その結果としての財務情報に対して意見を述べるとともに、関連する非財務情報についても、これを読んで、しっかり考えるということを求められていると思いますし、そういう趣旨であるということで入れるのがよいと思っています。

 ただ、今日の議論にもありましたように、少しわかりづらいところがあると思いますので、その点は、しっかりご理解いただくような形にしていく必要があるかと思います。

○伊豫田部会長  
 初川委員、お願いします。

○初川委員  
 ありがとうございます。基本的には、私も国際監査基準と同じ方向でよいのではないかと思っていますが、2点触れさせていただきます。

 1点は、統治責任者という言葉です。日本でこの言葉をこのまま使ってしまいますと、その定義がどうかという議論から若干混乱を招くおそれもあるかと思います。日本の制度に従って、監査役、監査委員会等、明確に表現した方がよろしいと思います。

 それからもう1点は、いろいろ意見が出ていますISA720についてです。私の理解では、現状における日本の監査においても、監査基準委員会報告書720号という形で、その他の記載内容に関連する監査人の責任について基準が出ております。

 何度も話に出ていますように、財務諸表監査の過程で知り得た情報、証拠、それから監査済みの財務諸表、そういったものに基づいてその他の情報を読んでいく、それからconsiderする、そういう事を要求しているわけで、その他の情報について何か追加監査手続をすることが求められているわけではないと思います。

 もしそういうことを議論するのであれば、また少し違った議論になりますので、今回は、現状の日本の基準の範囲で議論を進めていくしかないと思います。つまり、監査の過程で知り得た情報をもとに、その他の情報を読んだ限りにおいて、何か特に大きな不整合があったのか否かということだと思います。

 したがって、今日いただいた資料の4ページにあります、その他の記載内容の一番上のパラグラフですが、重要な虚偽記載があるかについて監査報告書に記載するということが可能なのかどうかですね。監査に関連する部分だけでなく、その他のこともいろいろ記載されているその他の記載内容について保証を与えているというイメージを読者に与えてしまうと、ミスリーディングではないかと思います。そこのところが気になりますけれども、基本的には国際監査基準と同様の方向で議論を進めていけばよいのではないかなと思います。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。

 前回の積み残しという議論でございましたけれども、ほぼほぼ意見を拝聴いたしましたので、先に進ませていただきたいと思います。ありがとうございました。

 それでは次の議論に移りまして、前々回の監査部会でご議論いただきました適用範囲と対象の論点につきまして、会社法を所管いたします法務省からお考えをお聞かせいただけるということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○竹林幹事  
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。「監査報告書の透明化」の適用範囲・対象、会社法監査との関係の論点について、委員からご意見をいただいておりますので、発言をさせていただきたいと考えております。

 会社法に基づく会計監査、金融商品取引法に基づく監査は、並行的ないし一体的に行われているものと認識しておりますけれども、そのような監査の実務のあり方を踏まえますと、会社法に基づく会計監査も影響を受け、あるいは対象となるということになるのではないかと考えております。

 他方で、委員の皆様に改めて申し上げる必要はないのかもしれませんけれども、会社法及び法務省令は、会計監査や業務監査のあり方について、あまり具体的な規定を設けておりません。基本的には監査の実務のあり方が、会社法において規定する善管注意義務の内容に適宜反映されるという関係にあるものと考えております。

 したがいまして、KAMの記載との関係で、会計監査や業務監査のあり方について具体的な規定を設けるということは考えにくいと存じます。仮に何らかの規定を設けるような場合でも、会社計算規則において、会計監査報告の内容としてKAMに関する事項を加えるというようなことにとどまるのではないかと考えております。

 もっとも、ご議論を伺っておりますと、KAMの記載は現行の会社計算規則におきましても、「会計監査人の監査の方法及びその内容」に含まれると整理することができるのではないかと思われます。そういたしますと、仮に会計監査報告の内容としてKAMを記載するものとする場合でございましても、会社計算規則においてKAMに関する事項を加えなくてもKAMの記載を会計監査報告の内容とする、あるいは含めるということはできるのではないかと考えております。

 ご議論を伺っておりますと、会社計算規則において会計監査報告の内容としてKAMに関する事項を加える場合には、対象となる会社が必ずしも上場会社に限られないこととなり、かえって広がり過ぎるというご懸念を有している委員がいらっしゃるものと考えております。

 会社の計算ないし会計の分野におきましては、むしろ実務のあり方、ニーズに合わせて法務省令を整備してきているという部分もございます。ご議論を伺っておりますと、例えば株主及び投資家におかれましてはKAMの記載が参考になる旨のご意見等を、会社におかれましては会社による開示内容との調整等の点でご懸念を、会計監査人におかれましては監査スケジュール等との関係でご懸念を、それぞれ有していらっしゃるものと認識しておりますけれども、それらを踏まえまして、まず実務として会社法に基づく会計監査報告の内容としてKAMを記載するものとするかどうかについて、監査部会においてご議論をいただくのがよいのではないかと考えている次第でございます。

 例えばご議論の結果、取りまとめに当たりまして、部会の委員の皆様の間で、会計監査報告の内容としてもKAMに関する事項を加えるべきではないかということにご異論がないようであれば、会社計算規則においても、会計監査報告の内容としてKAMに関する記載を加えるというようなことも検討させていただきたいと考えております。

 私からは以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。

 それでは、ただいまのご発言に関連しまして、ご意見ございますでしょうか。今給黎委員、お願いします。

○今給黎委員  
 日立製作所の今給黎でございます。ご説明ありがとうございます。

 現在、会社法・金商法の一体的開示でありますとか、開示の関係で議論を進めていただいておりましてありがとうございます。ただ今のご説明で少しわかりにくいところもあったんですけれども、基本的には、この部会で実務的に議論すればよいと認識いたしました。

 現実問題として、会社法では法定手続や日程面の実務の課題というのがございますので、拙速な形でのKAM導入によって、日本の実務負荷コストが国際的に比して必要以上に重い負荷になるということについては深く危惧しておりますし、また危機感もあるわけでございます。このあたり、やはり考え方としては、金商法・連結に絞っていただきたいというのがお願いでございます。また単体につきましても、事業のあり方によって、例えば、ホールディング形態の企業や、あるいは連単倍率が高い企業といったようなところにつきましては、KAMの書きぶりも変わるということが想定されまして、実務負荷の面で不公平感も出るのではないかと思いますので、ぜひとも、今の法務省のご発言に関連して、金商法・連結にKAMの議論のスコープを絞っていただきたいとお願い申し上げます。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。水口委員、お願いします。

○水口委員  
 ご説明どうもありがとうございました。今のご説明、それから今給黎委員からのご発言もありましたけれども、KAMの導入時期については、主要な海外資本市場と整合的なタイミングで適用を施行するということが妥当であろうと考えております。

 財務諸表利用者としては、海外事業展開などをする企業を取り巻くグローバルな競争環境なども注目しておりまして、こういった環境下での主要な資本市場においてKAMの導入が視野に入っている中で、我が国でもKAMの記載を伴う監査報告の情報価値の向上を図っていくということは大いに意義があると思っています。

 いろいろ負荷があるというお話もありましたけれども、KAM導入に際して、利用者といたしましては、早々と完璧な状況を整備することを望んでいるのではなくて、KAMを導入しつつ、段階的にKAMの記載内容の質の向上を図っていくようなプロセスを視野に入れることで、アップフロントの負荷がそれほどかからないKAM導入の仕方もあるのではないかと考えております。

 KAMの導入の対象につきましては、KAMの導入というのは国際監査基準を踏まえた議論であるとの認識に基づき、金商法監査と会社法監査の両方をKAMの記載対象とすることが妥当であろうと考えております。

 利用者といたしましては、議決権行使なども視野に入れた株主への情報提供の観点から、株主総会前のKAMの記載に伴う報告書の提供を期待するところです。

 また、KAMを考察する際には、監査役等による会計監査の相当性の判断も踏まえ、監査プロセスにおける監査役の役割、関与の在り方も十分勘案する形で、情報による規律が強化されて、資本関係者による建設的な相互監視が働いて、資本市場の信頼性の維持・向上につながることを非常に期待するところでございます。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。井口委員、どうぞ。

○井口委員  
 ありがとうございます。私の意見は既に第40回監査部会でも述べさせていただきましたが、このKAMというのが投資家にとって有用な情報とすると、それは投資の判断と議決権行使の判断において有用と考えます。そして、投資の判断とともに議決権行使の判断において企業の状況を適切に把握するために有用とすると、それは会社法の監査報告書にも入ってくると考えるのが普通ではないか、と思っています。

 これも既に申し上げましたが、グローバルの投資家の意見を聞きましても、会社法監査の方にも入れていただきたいという意見が圧倒的に、私の認識では、多いと感じております。そういう意味からいうと、日本の企業の方は、海外にもIRに行かれていると思いますが、いろいろな説明をされる中で、議決権行使の資料にないというのは説明が非常に難しくなるのではないかと思います。こういったことを考えますと、会社法監査のほうにもKAMが入るというのがよいのではないかと思っています。

 あと、これも申し上げましたが、今は、連結中心で投資家は企業の状況を適切に把握するということを行っております。ですから、KAMも連結中心でよいとは思いますが、単体で固有の状況があれば、それに応じて単体で固有のKAMも出すということも必要ではないかと思っております。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございます。多少議論が前後して申し訳ございません。11月17日配付のお手元資料2の四角括弧2の適用範囲と対象のところでございます。会社法との関係ということで、以下、次のページにわたって書いてある論点。この辺の論点を、あわせてご議論いただきたいということでございます。

 先ほど法務省から整理いただいたとおりなんですけれども、これに関しましてご意見頂戴したいということで、ほか、ご意見いかがでしょうか。永田委員、お願いします。

○永田委員  
 ご説明ありがとうございます。現行の会社法関連の法令でも、会計監査人の監査報告書、この中にKAMを書くということ自体は特に問題がないと了解していますが、金商法上の監査報告書の中にKAMを記載することを義務付けた場合、現行法下でも、会社法上の会計監査人の監査報告に記載するかどうか、という問題があるような気がします。記載が義務付けられていないから、記載しないとしてしまえば、それまでなのですが、会計監査人の監査報告に記載する会社が出てきた場合にどうなるのか。1つは会計監査人、監査法人の判断に任せるという考え方もあるかと思います。ある監査法人がクライアント全部の監査報告においてKAMを記載する、もしくは全く記載しないのであれば非常にわかりやすいのですが、会計監査人が同じ監査法人なのに監査報告に記載している会社と記載していない会社がでてくることも考えられます。その場合、例えば総会で、なぜ我々の会社は会計監査人の監査報告でKAMを書かないんだといった質問も当然考えられます。これに対し、どう答えるかで、クライアントの意向に従って使い分けるというのもどうかと思いますし、会計監査人、監査法人で判断するとなると、監査役は、会計監査人とのコミュニケーションの中で考え方を聞いて、例えば総会で答えるということになるのかどうか。

 そうなると当然、会計監査人、監査法人の中で、どのような基準で決めているのか明確にしないといけなくなってくるのでしょうか。一つの考え方として、例えば監査法人のガバナンス・コードにある透明性報告書で基準を記載せよ、といった議論も出るのかもしれません。

 仮に、監査法人の判断に委ねた結果、会計監査人の監査報告全てにKAMを記載するほうに収れんされるとすると、気になるのは監査報告の作成のタイミングの問題で、金商法上の監査報告よりも早いタイミングで、しかも当然、総会の前になりますから、書きぶりも注意すると。そういったことになります。結局、会社法上の監査報告でも義務付けるのと同じ効果となるわけで、実務上、会計監査人の負担ですね。これが本当にうまくいくのかなと。このあたりを少し考える必要があるのかなと思っております。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。紙谷委員、お願いします。

○紙谷委員  
 ありがとうございます。第39回目の会議を欠席したため、適用範囲に関する私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 私は、理屈の面とコストベネフィット面と実務上の困難さ、これらの3つの点から考える必要があると思っています。

 まず理屈の面からいきますと、今回のKAMを記載する目的が監査プロセスの透明化ということになりますと、金商法は透明化すべきだけど会社法は要らないということにはならず、おそらく理屈の面からは、監査プロセスを透明化するという目的から考えると金商法及び会社法の両方に適用すべきということになると思っています。

 ただし理屈がそうだとしても、コストベネフィットを考える必要があると思います。KAMを記載するとなりますと、会社と監査人の中で一定の議論を行った上で文書を仕上げていくということになるため、一定のコストがかかると思っています。それに対してベネフィットを考えた場合には、どれだけユーザーがいるのかが重要と考えていまして、この観点からは有報提出会社とそれ以外では違うと思っています。有報提出会社は、現在の株主や債権者だけでなく潜在的な投資者も含めた幅広いユーザーを想定しており、コストをかけても、ある程度のベネフィットはあるのかなと思います。

 一方、有報を提出していない会社で会社法の監査を受ける会社については、基本的には、株主総会に出席する現行の株主や債権者を対象としていますので、ユーザーの範囲が狭いということになり、コストベネフィットが相対的に落ちると思います。特に100%子会社になりますと、もともと親会社しか株主がいませんので、KAMを書かなくても、かなり意思疎通が取れた関係になるため、ベネフィットがかなり薄いと思います。そういった意味では、適用対象としては有報提出会社というのが1つの軸になるのではないかと思います。

 それを踏まえた上で、さらに実務上の困難さを考えた場合、有報提出会社においても金商法監査と会社法監査がありまして、会社法監査においては、3月決算ですと4月の終わりから5月中旬にかけて監査報告書を出していくという形になるのですが、実際問題、特に初年度ですと、そのような短い時間で中身のある有意義なKAMを書くように詰めていくというのは実務的にほぼ不可能とは言いませんけれども、かなり難しいのではないかと思っています。

 これが6月末の金商法の監査報告書提出までの間であれば、もう少し時間的余裕があるのかなと考えます。このように実務的な困難さを考えますと、まず当面は金商法の監査報告書から始めて、実務が落ちついてきた時期であれば、もう少しタイミングを早めても実務が回る可能性はあると思います。

 このように3つの観点から考えますと、理屈的には全ての法定監査が対象と考えられますが、まず有報提出会社の金商法監査から始め、実務が慣れたところで会社法監査にも段階的に導入するのか検討するというのが現実的ではないかと思っております。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。いかがでしょうか。大瀧委員、お願いします。

○大瀧委員  
 利用者の立場からコメント申し上げます。今、紙谷委員からもお話がありましたけれども、利用者としてもKAMに関しては記載して終わりということではなく、記載後の実効性の担保というか、いい意味での好循環をつくっていくべきではないかと思っています。そういった意味では、KAMの実効性担保にはコーポレートガバナンスのシステムの中にきっちり組み込んでいく必要があると思っています。

 具体的には株主総会でKAMに関して対話ができる仕組みということで、株主は、総会前にKAMを含む監査報告書を検討することができ、監査役会の監査報告書にはKAMに対する対応が記載され、さらに株主総会においてKAMに関する議論ができるというような仕組みが必要であると考えております。そういった意味で、制度設計において、会社法の監査報告書にKAMを記載する方向でご検討をお願いしたいと思っております。

 ただ、先ほど来出ていますけれども、実務負担の関係から、特に導入初年度が大変だというお話が出ていますので、金商法の監査報告書から導入する方法というのも検討の余地はあるかと思います。

 ただし、そのような段階的導入を検討する際にも、金商法と会社法を切り離して制度設計ということよりも、会社法監査報告書へのKAMの導入を前提として、段階的な制度設計をお願いしたいと考えております。

 それから対象会社ですけれども、先ほどコストベネフィットという話もございましたが、基本的には有報提出会社が前提でよいのではないかと考えております。不正リスク対応基準の適用範囲も同じようなことかと思いますので、同じような範囲でよいのではないかと考えております。

 最後に適用時期ですけれども、日本でもIFRS任意適用会社は増え、時価総額では予定会社を含めると4分の1を超え、さらに米国基準適用会社も含めると、3分の1を超えている状況になっています。欧州で既に制度が開始されていますし、米国でも大規模会社は20年3月期には適用になりますので、日本においても20年3月期からの導入ということでご検討いただきたいと思います。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。関根委員、お願いします。

○関根委員  
 ありがとうございます。今までの議論にもありましたけれども、日本においては会社法と金商法がある中で、監査役等とのコミュニケーションが重要であること、コーポレートガバナンスの観点、それから先ほどお話がありましたように、金商法監査と会社法監査は実質的に一体で行われていることを考えますと、KAMというのは、最終的には、やはり金商法と会社法、両方に入るべきものではないかとは思っております。

 そして、その中の範囲としましても、先ほど来出ていますように、上場会社と有価証券報告書提出会社と若干の違いがありますが、主にニーズがあるのは上場会社であり、これに適用すべきであると考えております。

 ただ、全上場会社に対して一斉に両方の監査に適用するということになりますと、先ほども話がありましたが、現在の決算や監査スケジュールを前提とした場合、すぐにも適用するというのは結構難しいと考えています。もちろん、難しくても、非常に重要なものとして、監査人が適用していかなければならないものであることは認識しております。しかしながら、例えば、日本では、上場会社の7割が3月決算に集中しており、会社法も含めて一斉に導入していきますと、KAMの趣旨が達成できなくなる可能性があるのではないかと危惧しております。このKAMを入れる意味というのは、監査プロセスの透明化ということであり、非常に意義のあるものと思いますけれども、1年目に、KAMを入れることに意義ありみたいな形で進めてしまうと、横並び的な形で終わってしまうことが想定され、趣旨が果たせないのではないかと思います。

 私ども日本公認会計士協会で行いました試行結果などでも、そういった議論、意見も出ておりますので、形式的な導入に陥らないように配慮して制度設計するというのが大切だと考えております。これまでの話にも出ていますように、全体設計をした上で、最初はある程度絞った形にする必要があるのではないかと考えております。

 したがいまして、金商法と会社法双方にというのが最終的な適用範囲とは思ってはいるものの、金商法のほうが、遅いタイミングで作成していますので、まず金商法から導入するのがよいのではないかと思います。そうした場合、株主総会の後にKAMが記載された監査報告書が公表されることを懸念する声もありますが、この点については、最終的な解決策ではないかもしれませんが、もともと有価証券報告書は株主総会前に提出することもできますので、そうした対応もできるのではないかと思っております。

 また、適用時期に関連して、海外で既に導入されていること、米国での導入時期等を考慮して、できるだけ遅れないようにという要請がある一方で、これだけ大きいことですので、この場ではかなり議論はしていますが、実務において、本当にどうやって行っていくのかというのを、これからじっくり考えようという会社もあると思います。

 そういうことを考えると、金商法からまず行って次に会社法ということが一つと、もう一つは、上場会社の中でも段階的に適用するという考えもあり得るのではないかということです。これは、適用時期の資料にありますように、米国基準でも段階適用が取られていますし、日本ではあまりこういう段階適用は行われたことがないので、慎重な議論は必要かと思いますけれども、そういったことを考えてもよいのではないかと思います。

 なお、この他の国々でも、上場会社が非常に多い国は段階適用を行っているということもあるようですので、そういったことも視野に入れて議論できればと思います。KAMをせっかく入れるのであれば、有意義なものになるような形で制度設計ができればと考えております。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。小畑委員、よろしくお願いします。

○小畑委員  
 KAMを導入しようという議論のそもそもの目的が、資本市場での取引のもととなっている上場株式の財務情報をどう監査しているのかという、今まではブラックボックスであったそのプロセスを明らかにしてほしいということで、この財務情報の確からしさを担保することにあったのではないのかと認識しております。その意味では、監査プロセスをよく説明する、外に向けて説明するということが、あくまでも第1の目的であって、KAMを導入することにより、企業のコーポレートガバナンス、規律をもっと高める、あるいは今まで出ていない情報が世の中に出るという類いの、KAMに対する過度な期待は慎んだほうがいいのではないかと思っております。その意味からすれば、やはり上場されている株がきちんとしたものであるということをしっかり外に説明するために、KAMの導入を検討しているわけですから、やはり金商法の枠組みで、まずは考えるべきではないかと考えております。先ほどの法務省からのご説明では、会社法あるいは会社計算規則等で特段の規定を設けることは考えておられないとおっしゃったかと思っておりますけれども、私も、そのお考えでよろしいのではないかと考えております。

 そういうことで、仮にKAMを金商法に入れるとしても、当然上場会社に限るべきであり、その中心となる情報はやはり連結財務諸表となりますので、対象は連結の年度決算に限るべきであると考えておるところでございます。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。八田委員、お願いします。

○八田委員  
 そもそもこの透明化の議論というのは2つの論点でスタートしたものと理解しています。1つは監査の信頼性を担保したい、あるいは高めたいということ。もう1つが、再三言われているように、国際対応を図ること。そうなってくると、やはりマーケットが別になっているわけですから、どうしても上場会社が基本だということです。実際に日本の、大本の基準になっている監査の基準は全ての監査に適用になると言っておきながら、実は1つの例として、個別にできた不正リスク対応基準は、前文に、これは上場会社のみに適用されると書いてあるんですね。でも、皆さんあまりそれ知らないので、上場会社じゃなくても大変だ大変だといって、監査人も大変ですよと言いながら、不正対応に対していい方向にむかっていっている実態が見られます。ただ、制度上は、やはり線引きをしたときには、私は上場会社でまず導入すべきだと思いますが、内部統制報告制度など、企業との関係で、任意適用は別に構わないと思っています。ただ、本当にそれが、現存する直接的な株主、つまり未上場の方から見ても、やはり、それは受けるのにふさわしいという声が高まれば、会社法のほうに全面的に入っていくということはあると思いますが。先ほど紙谷委員がおっしゃったように、まず上場会社をベースにやるということでよいと思います。

 米国の場合、アメリカの監査基準、アメリカの監査基準と皆さんおっしゃるけれども、これはPCAOBの監査基準であって、あれはまさに上場会社監査基準であって、未上場会社監査基準はいまだもって、アメリカ公認会計士協会はSASで議論しているわけですから。

 したがって、基本的にこの議論は、やはり上場会社、グローバルスタンダードの企業であるということで、皆さんがおっしゃるのと私も整合しますから、それを支持したいと思います。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。熊谷委員、お願いします。

○熊谷委員  
 私も第39回で基本的な考え方はご説明させていただきましたとおり、ほぼ皆様と同じ認識であります。まず、このKAMの適用にあたっては上場会社、有報の提出会社が基本になるということでよろしいかと思っています。会社法についての考え方というのは、やはり、先ほども紙谷委員からもお話ありましたように、監査プロセスそのものの透明化ということですから、上場会社の会社法の計算書類等にも当然適用されていると考えております。ただ、前回も申し上げたと思うんですけれども、やはり、まずKAMを入れる、極力円滑に入れていくという視点も必要だろうと思っておりまして、そういった点からは、金商法、有価証券報告書に先行して入れていくという考え方が適当なのではないかなと思っております。

 もちろん有報は株主総会の後に出てくるわけであります。しかし総会後であっても、実際に有報で出てまいりましたKAMを利用して、エンゲージメント活動等において、投資家も企業も、実際に利用してみる体験が必要なんじゃないかなと思っております。

 会社法に関して申せば、株主総会の前に出てまいります会社法の開示書類にKAMが添付されて株主総会において利用できるというのは、やはりベネフィットも大きいと思います。ただ、現実問題としますと、こういう大きな制度改正を行うにあたって、より現実的な円滑な導入ということを考えますと、ある程度の猶予期間を持つというのは大いにあり得ることかなと考えています。

 それから、連単の議論がございましたけれども、これも前回お話させていただいたと思うんですけれども、やはり連結が基本になるというのは間違いないと思います。単体財務諸表につきましては、もちろん違いというのは出てこようかと思うんですけれども、やはり、特に単体財務諸表において大きな違いが連結と比べてある場合、監査人の方からご覧になって、まさにKey Audit Mattersとして単体に対して書き込む必要があるときに限って書いていくということであれば、十分そのニーズは達成できるんじゃないかなと、そんなふうに考えています。以上です。ありがとうございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。岡田委員、お願いします。

○岡田委員  
 ありがとうございます。過去にも申し上げましたが、私はKAM以前に、開示の充実が重要だと考えておりまして、企業が開示している内容からKAMが選ばれるという形が理想だと思います。

 そのためには、会社法の規定する事業報告書と、金商法による有報の内容が一体化されることが最終的に目指すべきゴールだと考えます。仮にそういった対応が今すぐには無理ならばその方向性は進めながら、まずは有報の監査報告書にKAMを導入することから始める事がよいのではないかと思っています。また私はKAMを導入した後の対応が大事だと考えています。KAMの導入後にその内容を見て、アナリストなり投資家がコーポレートガバナンス・コードでいうところの会社との対話を進めていくという手順が必要ではないかと考えます。会社執行側に加え、監査役や社外取締役も、今後はアナリストや投資家と対話を進める中で、彼らの要請を十分知って、それを取締役会で共有し、その後の開示について議論すること。その結果として開示内容の充実を図り、延いてはKAMの充実につながるというPDCAを回して行かないといけないと思います。KAMを出したらもうそれでいいんだということでは無いと思います。

 少し話題が変わりますが、今は各社とも有報を総会の後に提出するといった慣例があるように思います。制度的には総会前に提出することも可能なようですが、決算を行う実務部隊からしますと、なるべく間違いのないものを出そうとして締切ぎりぎりまでチェックを行う傾向があると思います。今後はその考え方を変えて、とにかく有報を早期に提出し、投資家やアナリストが有報を確認した上で株主総会に来て、それを元に質問できるような体制にすることがより重要だと思います。日本では訂正報告を出す事を非常に躊躇し、訂正報告は非常に悪いことである、あるいは実務部隊の恥だと思いがちです。少々の間違いは後で訂正することにして、有報の早期提出を積極的に行うことにより、関係者との対話を進め、PDCAの最初のサイクルを回し始める方向にいけばよいのでは、と考えます。

 そうは言っても有報提出の早期化を強制することも出来ませんので、例えば先駆けとなるような企業が出てくるとよいかもしれません。進んだ企業がそのように動き出せば、意外に他社も追随するのではないかと思います。

 最後に、今後金商法にKAMが導入された場合、例えばISA720に該当する有報のMD&Aパートのような非財務情報についても監査役は当然内容を確認しているので、監査人の金商法監査にあたっても監査役と監査人は従前以上によくコミュニケーションする必要があります。金商法上の監査でも、監査役がより多く関与する形にし、それをより明確にした制度設計にして行く必要があると感じました。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。住田委員、どうぞ。

○住田委員  
 ありがとうございます。今、岡田委員から開示の姿勢についてのお話もありましたが、まさに私もそういうふうに思っておりまして、訂正を恐れてということではなくて、より充実した開示情報を、よりタイムリーに金商法上の開示として出すということを、まずゴール設定として置いておくべきではないかと思います。資本市場における好循環の流れをつくるというのが今回のKAMの議論の出発点であったとも思いますので。

 そういうことを念頭に置いて、まず対象会社については、先ほど来から金商法の有報提出会社というご意見が多く出されておりますが、有報提出会社の中には上場会社以外の有報提出会社もありますので、まずは、いい好循環の基礎をきちっとつくるという意味では、上場会社に限定すべきではないかと考えます。

 また、金商法と会社法との関係で言えば、KAMは導入1年目の負荷が一番高いわけですから、上場会社の金商法監査でまず入れた後に、2年目から会社法の監査報告でもKAMを記載するというようなことができれば、よいのではないかと思います。監査役とのコミュニケーションがベースになるKAMですので、監査役も十分インボルブしていただく形で、KAMを会社法の世界でもお伝えできるようになるんじゃないかと思います。そうするには法制度的に、どういう手当てが可能なのかというのは、ちょっとご検討いただければと思います。

 それからもう一つ、上場会社の金商法監査にまず入れるということを前提といたしましても、先ほど関根委員から発言がありましたけれども、日本の上場会社、全部で3,700社ぐらいあって、そのうち3月決算が7割ということを考えますと、よいプラクティスを確立する、よいKAMを書くということの優先順位を高くすべきではないかと思っております。対外的、海外でも注目を浴びる可能性の高い大規模な上場会社から順次適用というほうが、現実的には、好循環の波をつくるという目標達成に、かえって近道になるのではないかと思います。

 ただ、最終的にどこまでKAMの適用を要求していくかという適用範囲については、最初に合意をして、適用時期についてはロードマップをきちっと立てて、段階的に計画どおりやっていくというのがいいのではないかと考えます。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか。初川委員、お願いします。

○初川委員  
 多くの方が意見を言われましたように、私も金商法からスタートするという方向がよろしいと思います。

 その上で、関根委員から意見がありました、金商法の中でも上場会社に何らか段階適用を考えるという点については少し否定的です。KAMの導入による実務の負担がどの程度になるかという点は、まだ私もよく読めません。導入時の負担軽減という実務的な観点から、段階適用ということもあり得るのかもしれませんが、あまり適用範囲を複雑にする必要もないかと思います。監査人側としては、負担が増えることは確かだと思いますし、プレッシャーも強くなると思いますが、監査は期末近辺だけで実施するわけでもありませんし、この上場会社への段階適用が適切なのかどうか、もう少し皆さんの意見も聞いて議論をする必要があると思います。

 また、仮に段階適用するとしましても、どういうふうに、そのグループ分けをしていくのかということも難しい問題です。時価総額、売上高、総資産、そういった企業規模だけで区分するのもいかがなものかと思いますので、この辺について、私は少し懸念を持っております。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。町田委員、お願いします。

○町田委員  
 最初に、法務省の方からご発言がありましたが、そのことについて一言、申し上げますけれども、会社法は監査基準を持っていないということなんですね。監査基準本体、具体的に言えば監査基準の「第四 報告基準」を改訂すれば、会社法の会計監査人監査は、放っておけば、よほど会社計算規則等で別規定を置くなどしなければ、KAMのプロセスを踏んでいくことになるわけです。

 ですから、適用範囲云々を会社計算規則でどうするかというのは、以前にも申し上げましたが、会社計算規則において、会計監査人の意見表明を適正意見ではなくて準拠性意見に変えるというのであれば、会社法の会計監査人監査は別の途を行く、ということになりますけれども、そうでなければ、同じプロセスに入っていくんだろうと考えます。

 それから2つ目ですが、委員の方のご議論を聞いていると、何かKAMを記載する対象を金商法の監査報告書に限定するとか、会社法の監査報告書にも記載するという議論になっていますけれども、監査報告書で対象を選ぶ問題ではないと思うんですね。例えば、先ほど八田委員からお話のあった不正リスク対応基準、あれは上場会社プラス金商法適用の大規模な金融機関という適用対象の範囲を特定しているわけですね。会社で特定するわけです。

 ですから、例えば今回、KAMの記載を求める対象を上場会社に限定したとしても、上場会社の監査でKAMのプロセスを踏んでいった末に監査人が決定したKAMが、有価証券報告書に含まれる監査報告書には載るけれども、その直前に出る、同じ会社の、株主総会招集通知に所収される会計監査人の監査報告書には載らないということを良しとするのかどうか、という問題にもなっていくわけです。ですから単に、最後の最後、監査報告書にどう書くかという議論ではないのだと思います。

 私は以前から申し上げていますが、今回の資料1、2には載っていませんけれども、今回のKAMの記載に係る監査手続では、KAMが記載される事前段階の監査役等とのコミュニケーションのプロセスというのが、コアな、最も重要な部分だと思っています。この点は、金商法であろうと会社法であろうと変わりはないわけです。監査基準にKAMのプロセスを記載していくことによって、結局は、最初に申し上げたように、監査の通常の手続として、金商法の監査であろうと会社法の監査であろうと、そのコミュニケーション・プロセスを踏んでいくことになると考えています。

 まして日本では、実際の監査プロセスは、会社法と金商法の両法が適用される会社では、会社法のベースの監査から始めて、会社法の監査報告書を出した後に、金商法の表示の監査対応をするということになっているわけですから、ここを区分するというのは、なかなか難しい議論になるんだろうなと考えています。

 そして、一連の議論の中で、何より気になっているのは、今、初川委員がおっしゃった点です。これは内部統制報告制度のときも、アメリカでは段階適用を導入して、そして最終的にJOBS法によって、最小規模の企業には、内部統制報告制度は、経営者の報告の側だけしか実施されないということになりました。今回の資料にもありますように、アメリカでは、大規模会社については、先に適用すると言いますけれども、1年だけのことです。

 他方、日本には、企業規模で上場企業を分けるという慣行は、これまでなかったわけです。むしろ、日本では、内部統制報告制度の導入のときも、いろいろな混乱もあったかもしれませんけれども、それでも上場会社については、市場規制の均質性を確保するために、頑張って一律に適用してきたという経緯があります。

 さらに、この審議会の議論の中でも、中小企業のほうが無限定適正意見の背景を知りたいという傾向はあるのではないかとか、どちらかというと、そういった中小企業の方が、リスクの程度と、それに対する監査対応を知りたいというのがあるんじゃないかとか、そして、外国の投資家も、大企業だけに投資しているわけじゃないんじゃないか、という議論もあったと記憶しています。

 そういったときに、もしも公認会計士協会の方々がおっしゃるように「準備が大変だ」ということであれば、この際、適用をアメリカの5年後ぐらいにしても構わないですから、じっくりと時間をかけて、公認会計士協会のほうで、5年、10年とかけて研修をしていただいて、その上で、「もう日本の監査人も十分KAMが書けますよ」という段階になったら、実施に移せばいいだけのことだと思います。できないのであれば、できないうちはやらなければいいだけのことであって。

 中小企業であれ、大企業であれ、無限定適正意見を同じように出すのであれば、監査人が監査意見として表明するものは同じ監査意見なんだということが前提としてあるならば、KAMを無限定適正意見の説明情報として出していくという、今般の制度改訂では、やはり適用対象となるすべての監査について、同じように、同じタイミングで、KAMを記載していくべきだろうと思います。

 ですから、少なくとも上場企業の監査については、5年というのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、東京オリンピックを終えるころまでに研修を徹底していただいて、ゆっくりと適用して記載していけばいいんじゃないかなと思います。私は、単にKAMの記載といった問題だけで、同じ「上場企業」というカテゴリーの中を区分する規制を導入することには、極めて慎重になるべきだと考えております。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見ございませんでしょうか。井口委員、どうぞ。

○井口委員  
 ありがとうございます。先ほど発言させていただいたのですが、適用時期や対象について発言しておりませんでしたので、そのあたりを発言させていただければと思っています。

 先ほど申し上げましたように、私は、KAMは金商法とともに会社法のほうにも当然ながら入ってくるべきだと思っております。また、多くの投資家も、そう考えていると思っております。

 ただ、実務上の負担とか、あるいは慣れというのもあると思いますので、1年とか、そういう猶予期間を設けるということは、これも理解できます。

 ただ、金商法のほうでいつから導入するかを決めたときには、同時に、会社法のほうでもいつから入るか、ということも、ぜひ決めていただきたいと思います。改めて、会社法のほうへの導入の時期を議論するというのではなく、お願いしたく思っています。

 KAMをどう利用していくかのほうが、今後、重要であるというご意見も委員の方からありましたが、私も、投資家も一緒になって、どのようによくしていくかということは重要だと思っています。ただ、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードが入って以降、企業のご尽力、あるいは投資家の行動も変わって、すごい勢いで投資の業界も変わっているというのも事実だと思っています。日本IR協議会という企業のIRの方が集まっていらっしゃる団体のアンケートでは、企業の方が答えていらっしゃるんですが、投資家と企業のコミュニケーションは大きく変わったと答えています。今までガバナンスなんか聞かなかった投資家とか、ESGとか言わなかった投資家がかなり聞くようになっているということです。

 同じように、今まで日本では、投資家が監査報告書とか監査について企業と対話するというのがなかったのは事実だと思いますが、KAMが入ることによって海外と同じように変わっていくと考えていますので、金商法への導入時期を決めてから、また、会社法はいつからやるかを議論するのではなく、期限を決めてやっていくことが重要と考えています。それもあまり時間をあけないでやっていくというのが、グローバルの資本市場からも信頼される道ではないかと思っております。

 適用対象ですが、私は有価証券報告書提出会社、全て同時と思っております。アメリカがどうしてこういう大企業と分けているのかわかりません。パッシブ運用者というのは当然のことながら小さい企業も持っているため、その企業の安全性などを、監査報告書を通じて見るということは必要だと思いますが、実は、アクティブ運用者も、比較的小さい企業に投資するということがあります。アクティブ運用者というのは、企業の株を売買する投資家ですが、比較的中堅から小さい会社のほうが、我々の業界でいう超過収益がとりやすいので、中堅から小さい企業が重要になってくるのです。また、今、議論しているのは監査報告というリスクをどう見るかというところですので、大規模な会社より、むしろリスクが比較的高いと思われる中堅から小さい会社のほうが重要になってくるのではないかと思っています。

 そういう意味からすると、先ほど委員の方もおっしゃっていましたが、同時にやらないと、どういう基準で分けるのかというのも大きな議論になってまいりますし、実務的にも、投資家は中堅企業に投資することありますので、分けずに同時に入れるということのほうが望ましいのではないかと思っています。以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。松本委員、お願いします。

○松本委員  
 関西大学の松本です。先ほどから議論出ていますけれども、このKAMの議論というのは、投資家に対して監査がこれまでブラックボックスであったものを透明化するという議論に収れんし過ぎているような気がするんですけれども、先ほど町田委員もおっしゃいましたように、少なくとも監査役等の統治責任者との間でコミュニケーションをとった項目の中から選択してKAMが記載されるところを見ると、投資家に対して監査の内容を開示すると同時に、監査役との間のコミュニケーションをより一層充実するということが当然の前提になっています。

 まず金商法監査の議論をするときに忘れてはいけないのは、これは公法ですから、公共の利益となるように、一般投資者を保護するという観点から企業に情報を開示させて、その情報に対して信頼性を付与するというのが目的です。という観点からすると、公共財である資本市場を利用して広く資金調達をする会社に区別を設けるなんていうことは、発想として私には考えられないです。

 ですから、その規模の大小にかかわらず、売上の規模にかかわらず、資産の大小にかかわらず、資本市場を通じて資金を調達している以上は、公共の利益にのっとって開示をし、それに対して公平に監査がなされるというのは当たり前の話だと考えます。

 一方で会社法のほうは、会社法上、KAMを導入する、導入しないにかかわらず、監査基準に規定されれば、株主はKAMが金商法上の監査報告書に記載されることを知っているわけですから、監査役が株主総会で株主に対して説明される内容に含まれるはずです。少なくとも株主が入手していない情報を投資者が先に入手するというのは、あり得ない話で、前々回の監査部会でも同じことを申しておりますが、監査役に対して株主からKAMに関して質問があったときに、監査役は会計監査の相当性判断の中身の一つとして、こういうKAMがあり、それに対してどういうふうに判断しました、というように、株主総会で監査役が説明すれば、会社法監査としてKAMをどう扱うか、という問題を原因にしてKAMの導入に消極的になるということは生じないと思います。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。水口委員、お願いします。

○水口委員  
 ありがとうございます。私はクレジットサイドの人間ですが、信用力評価をするときに、グローバル展開をする大企業だけではなくて、もっと小ぶりの企業も分析の対象とすることもあります。こうしたことを踏まえると、企業群の中でKAM記載の対象企業を考察する際にどこで線引きをするか決めることはクレジットの投資家にとっても非常に難しいことであると思います。

 グローバル展開をしている大企業でない場合でも、事業基盤の安定性等の諸観点から、監査リスクが高い分析対象、投資対象の企業がある場合も大いに想定されます。事業リスクが高く、監査上のリスクが高い企業に係るKAMの記載は有用です。繰り返しになりますが、KAM記載の対象企業について、線引きをするということの妥当性については、なかなか腑に落ちないといったところがあります。

 それからもう1点、岡田委員とか井口委員からもお話がありましたところですけれども、KAMの導入に際して、適用開始からいろいろ固定的に考えるのではなく、KAMの記載内容の質の向上に向けて、さまざまな関係者が協力し合ってよいPDCAサイクルを回していくことは非常に重要だと思っております。利用者として、できるだけいろいろな形でコミュニケーションを図っていく所存です。以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。弥永委員、お願いします。

○弥永委員  
 有価証券報告書、すなわち、金商法上の開示と会社法上の開示という2つの開示制度間でKAMを書くか書かないかという点で異ならせることは適切ではないというご意見は、理論的には正しいと考えております。ただ、現実問題として考えたときには、やはり考えておかなければならない問題がありまして、それは、既にご指摘がありましたように、PDCAサイクルがきちんと働く必要があるのですが、そのためには、やはり投資家、株主、そして、かつアナリストの方がそれなりに働きかけるということが前提となると思うのです。PDCAサイクルが働かないような企業について監査人にKAMを書かせると、やはり形式的にだけ記載がなされるという問題が現実には生ずるのではないかと懸念しております。それなりの人的リソースがあって初めて、内容のあるKAMを記載できる。他方、十分なリソースを割けないところは単に形式的に書いてそれでお茶を濁す、これでよいかという問題は、やはり考えておかなければならないのではないかという気がいたします。

 たしかに、すべての有価証券報告書提出会社の監査について、KAMの記載を同時に強制するというのは、これまでの歴史では一般的だったとは思います。けれども、有価証券報告書提出会社であっても上場会社でないような会社については、やはり、それをウォッチしていらっしゃる投資家もほとんどいないということは十分にあります。株主数がかなり少なくて、その株式自体は売買が実際にあまり行われていない会社というのもございます。そのような会社の監査報告書にKAMに書かせたときに、このPDCAサイクルが十分に働くかと言われたら、それは極めてこころもとないと私は個人的には思っております。このように考えますと、コストベネフィットを考えて、まずは上場会社から入れていく、段階的に導入していくというのが金商法上も、よいのではないかと思います。

 会社法上の会計監査人監査に導入することに関して申しますと、これは杞憂だと言われるかもしれませんけれども、通り一遍なことを記載してお茶を濁すというような前例がつくられますと、我が国の場合には先例踏襲とか、横並びとか、そういう発想があるので、無視できない弊害をもたらすのではないかと心配しております。最初に内容のあるKAMを書いてもらうことを確保しようと考えますと、まずは金商法上導入し、その後、会社法にも導入するというのが現実問題としてはよいのではないか。もちろん、会社法にいつ入れるかは金商法に導入する時点で考えておいたほうがいよいとは思います。会社法と金商法とに同時に入れることが理論的に首尾一貫し、理念的に望ましいことは十分理解できますけれども、現実問題としては、同時に入れることの弊害があり得る、すなわち十分に準備しないで記載されると、よくない先例をつくってしまうという結果になってしまうのではないかという懸念は、やはり拭えないような気がいたします。

 現行会社法上の監査において、連結計算書類の会計監査報告については単体の計算書類に係る会計監査報告とは異なり、定時株主総会の招集に際して、株主に提供することが求められておらず、監査の結果を定時株主総会に報告することで足りるとされています。このような異なる扱いを現在の会社法もしていることを前提とすれば、KAMは監査意見そのものではないことを踏まえると、例えば、会社法の下ではKAMについては株主総会で報告すれば足りるというアプローチもあり得るわけです。会社法と金商法との間で、監査意見が異なっては困りますが、監査意見以外に監査報告に記載される事項の範囲に何らかのずれが一時期生じたからといって、株主の判断に重大な悪影響を与えることにはならないと考えることができるのではないでしょうか。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。

 本日は前回の議論の積み残しということで、「KAMの記載以外の監査報告書の記載等の見直し」ということで、ISA720の取扱いについて、それから会社法上の監査報告書におけるKAMの適用についてということでご意見を頂戴してまいりましたが、ほぼほぼご意見は出終わったようでございます。

 本日の議論に関しまして、事務局のほうから補足、あるいは説明ございますでしょうか。

○田原企業開示課長  
 町田委員から金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」についての議論のご説明をというご指摘もございまして、必ずしも全委員がディスクロージャーワーキング・グループと兼任されているということではないので、5分から10分程度ご説明をさせていただければと存じます。資料はございませんので、口頭で恐縮でございますが、資料につきましては後ほど送付をさせていただければと存じます。

 ディスクロージャーワーキング・グループでございますが、昨年の12月から議論をスタートさせていただいております。日本の資本市場の機能強化、そして、それにより企業価値の向上を実現しまして、これを日本経済の成長につなげていくという目的で議論をさせていただいております。

 資本市場の機能強化と国民の安定的な資産形成の実現という目的のもとに、企業開示により投資家の投資判断により有用な情報を提供する、また対話のために役に立つ情報を提供していく、という観点から見直しをしていくということで、町田委員からもご指摘がありましたように、その4つの柱のうち1つの柱といたしましては、財務情報と記述情報、いわゆる非財務情報の充実を図っていくということについてご議論を頂戴しているわけでございます。

 財務情報をより適切に理解するために非財務情報が必要であるというご指摘は本日も頂戴したところでございますが、そういった観点から企業理念といった企業の中長期的なビジョン、経営戦略や経営計画といった見通し、業績に対する評価などを説明する記述情報を充実させるべきであるというご意見を、投資家の方を中心に頂戴しておりまして、こういったことについて、関係される方々にご参加いただいて、ご議論をいただいております。その中では、例えば経営戦略ですとか、本日もご指摘を頂戴しましたMD&A、それからリスク情報といったような情報について、どういった記述が望ましいのかということについて、国内外の投資家の方からのご指摘ですとか、あるいは海外のプラクティスなどを踏まえたご議論を頂戴をしているということでございます。

 また、このほかにも建設的な対話の促進という観点から言いますと、本日もガバナンスについていろいろご指摘を頂戴いたしましたが、ガバナンス情報の充実ということも重要ではないかというご指摘を頂戴しております。そういった観点から、政策保有株式ですとか、役員報酬の決定方針なども含めたガバナンス情報の提供のあり方、それから、これも本日もご指摘を頂戴しましたが、3つ目の柱として、提供される情報が本当に信頼されるものとなっているのか、また適時に提供されているのかと、こういったことについてもご議論を頂戴をしているということでございます。

 このほか、4つ目の柱といたしましては、情報通信技術の進展などございますので、今、投資家の方がどういった媒体で、情報を必要としているのか、そういった媒体にどういうふうに情報を提供していくのかといったような議論、また英文の話がございまして、例えば、日本企業は、アニュアルレポートはかなり翻訳されているのですが、有価証券報告書はあまり翻訳されていないというようなことについて、海外投資家の方からもいろいろ指摘をいただいておりまして、海外の投資家の方の保有割合が3割超えているという現状の中で、どういう形で国際的に情報を発信していくかについても議論を頂戴しているということでございます。

 第1の柱については、先日、ご議論を頂戴しまして、その他の柱につきましても、順次、今後検討をいただいて、今、どこまで議論し、いつまでに結論を出すかということは決まっておりませんけれども、しかるべき段階で、先に述べました目的に照らした開示のあり方についてご報告を頂戴したいと考えているところでございます。

 以上、簡単でございますが、ご指摘がございまして、本日の議論とも関係いたしますので、ご説明をさせていただきました。ありがとうございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。

 それでは、かなり時間は残しておりますけれども、本日の審議はこれで終了させていただきたいと思います。

 次回の日程につきましては、事務局から改めてご連絡させていただきます。

 委員の皆様には、充実したご議論をいただきまして、大変ありがとうございました。これにて本日の監査部会を閉会いたします。
以上
お問い合わせ先

金融庁総務企画局企業開示課

03-3506-6000(代表)(内線3657、3663)

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