企業会計審議会第44回監査部会議事録

 

1.日時:令和元年5月21日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室
 

○伊豫田部会長
 定刻前ではございますが、委員の皆様おそろいになりましたので、これより企業会計審議会第44回監査部会を開催いたします。皆様におかれましてはお足元のお悪い中ご参集いただきまして、ありがとうございます。
 
 それでは、審議に先立ちまして、まず会議の公開についてお諮りいたしたいと思います。企業会計審議会議事規則にのっとり、監査部会の審議につきまして公開することとしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)

 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。ご了解をいただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。
 
 それでは、討議に入ります。
 
 初めに、前回の監査部会でご議論いただきました「その他の記載内容」に対する監査人の対応につきまして、引き続きご議論いただきたいと思います。
 
 そこで本日は、事務局より前回の議論の状況及び監査人の法的責任につきまして、また、住田委員より国際監査基準第720号の主な改訂点の概要につきましてご説明をいただいた後、皆様にご議論いただきたいというふうに存じます。
 
 それでは、まずは事務局からご説明よろしくお願いします。
 
○野崎開示業務室長
 ありがとうございます。
 
 それでは、お手元の資料1-1に沿いまして、前回3月28日の部会のご議論のポイントを簡単にご紹介させていただきたいと思います。
 
 まず、非財務情報の重要性が高まる中、監査人が「その他の記載内容」について財務諸表の表示及び監査の過程で得た知識に照らして検討を行うことは、財務諸表の信頼性だけでなく、非財務情報に対する信頼性を高める反射的な効果も期待されるといったご意見、国際的な整合性を図ることが必要というようなご意見が出されました一方で、有価証券報告書の記述情報の充実に向けた取組みが進められている中で、監査人によるチェックを強化すると、企業の創意工夫や独自性が損なわれるおそれがあるのではないか、あるいは、監査人が「その他の記載内容」についての対応の結果を監査報告書に記載することで、あたかも監査人が保証を与えているなどといった期待ギャップを生むのではないか、それから、監査人の責任、特に「その他の記載内容」に虚偽表示が含まれている場合の監査人の法的責任について、十分検討する必要があるのではないかといったご意見も出されたところでございます。
 
 また、仮に「その他の記載内容」についての監査人の役割を強化する場合でも、監査人に対して「その他の記載内容」への保証の提供を求めるというのは時期尚早であり、国際監査基準、改訂後のISA720でございますけれども、それと同様、財務諸表監査の枠組みの中で対応すべきというご意見を複数いただいたところでございます。
 
 以上を踏まえますと、今後の大きな論点としましては、監査人が採るべき手続の目的及び具体的な内容、それから期待ギャップへの対応、そして監査人の法的責任といった点が挙げられるかと思います。
 
 このうち、事務局からは、3点目の法的責任につきましてご説明させていただきたいと思います。監査人の法的責任につきまして、資料1-2に沿いまして、日本と英国の制度についてご説明いたします。
 
 まず、日本の制度につきまして、金融商品取引法、それから公認会計士法、そして会社法の順にご説明いたします。
 
 まず、金商法百九十三条の二第一項でございますけれども、上場会社等は有価証券届出書、有価証券報告書等に含まれる財務計算に関する書類について、公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならないことが規定されております。
 
 続きまして2ページ目でございますけれども、公認会計士等の第三者に対する責任につきましては、第二十一条第一項第三号及び第二十二条第一項におきまして、有価証券届出書に含まれる財務書類に虚偽の記載があるにもかかわらず虚偽の記載がないものとして監査証明を行った場合に、有価証券を取得した者に対して損害賠償を負う旨が記載されております。第二十四条の四におきまして、有価証券報告書に含まれる財務書類の虚偽証明についても、公認会計士等は同様の責任を負う旨が規定されているところでございます。
 
 3ページ目、公認会計士法におきましても、公認会計士等に対する懲戒処分、それから課徴金納付命令の対象は、信用失墜行為その他の法令違反に該当するケースを除けば、財務書類にかかる虚偽証明というところが規定されているところでございます。
 
 続きまして、5ページ目。会社法でございます。
 
 会社法では、会計監査人の会社に対する損害賠償責任が、この5ページの下の第四百二十三条、それから第三者に対する損害賠償責任が第四百二十九条に規定されております。第四百二十九条第一項では、会計監査人はその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うということとされておりまして、第二項では、会計監査人は、会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録がある場合には、会計監査人が注意を怠ったということが推定されて、当該会計監査人の側から注意を怠らなかったことを根拠づける事実を主張・立証できなければ、責任を免れないということが規定されているところでございます。
 
 続きまして、イギリスの制度をご紹介します。前回、監査部会でご紹介しましたとおり、アメリカでは2013年に「その他の記載内容」についての監査人の責任を強化する基準改訂案が公表されておりますが、最終化されないまま現在に至っているという状況である一方で、欧州では、2013年に会計指令が改訂されていまして、さらに英国では2016年に会社法が改正されております。その中で「その他の記載内容」について監査人の責任の規定が追加される等、一部先進的な取組みが見られますので、今後のご議論の参考として英国をご紹介させていただきたいと思います。
 
 8ページ目でございます。まず、英国2006年会社法の規定でございますけれども、495条において年次の計算書類に対する監査報告の作成義務が定められております。その下、続く496条では戦略報告書、それから取締役報告書について、(a)の(1)では、これらの報告書に記載されている情報が計算書類と整合しているかどうか、(2)では、これらの報告書が適用法令に準拠して作成されているか否か、また、(b)では、監査人が監査の過程で得た知識や理解に照らして重要な虚偽を識別したか否かについて、年次の監査報告書の中で監査人の意見において説明するということが求められているところでございます。
 
 それから、9ページ目でございますけれども、497条では、取締役報酬報告書についての監査人の対応と、その下の497A条では、コーポレートガバナンス報告書において(a)の(1)ですけれども、計算書類との整合性、それから(2)ですけれども、法令準拠性、それから(b)において監査の過程で得た知識や理解に照らして重要な虚偽を識別したか否かについて、年次の監査報告書の中で記載が求められているという枠組みでございます。
 
 監査人の責任としましては、10ページの507条でございますけれども、495条に基づく計算書類に対する監査報告書に、故意または過失によって重要な事項について虚偽又は詐欺的な記載が含まれる結果を招いたものは罰金の対象になるということが定められているところでございます。この507条の責任を定める規定は、2006年の会社法制定時に定められたものでございます。2016年の最近の改正において、先ほどご紹介しました496条、497条というような条文が新設されているところでございますけれども、その際、507条の監査人の責任の範囲を見直すというような改正は行われていないというふうに承知しております。
 
 最後、11ページ目でございますけれども、金融サービス市場法でございます。これは、規制市場に上場している会社が対象になっているものですけれども、90A及びその下部規定であるスケジュール10Aでは、発行者は開示書類の虚偽記載について、当該書類に依拠して有価証券を取得、保有あるいは処分した者に対して責任を負うというふうに規定されていますけれども、その次の12ページの7(2)に記載されておりますように、発行者以外のものについては、虚偽記載によって生じる損失について、発行者に対する者を除いて責任を負うことはないということが記載されているところでございます。
 
 事務局からの説明は以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 続きまして、住田委員よりご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
○住田委員
 それでは、資料1-3に移りまして、国際監査基準(ISA)720の改訂版の主な改訂点の概要をご説明させていただきたいと思います。
 
 当初は金融庁様より、実務にこの改訂がどういう影響を及ぼすのかということをプレゼンしてくださいというご依頼をいただいたのですけれども、IAASBにおいても、まだこの改訂版のISA720の適用後モニタリングを実施していない段階でございますので、改訂版のISA720の改訂点の概要をご説明することでかえさせていただきたいと考えております。
 
 まず、ISA720の改訂の経緯ですけれども、これは前回の金融庁がおつくりになった資料の中にもありましたが、背景といたしましては、企業の開示書類の中に含まれている財務諸表以外の部分が非常に多様化して複雑化してきているということが大きな背景としてあります。改訂前のISA720は、IAASBの行ったクラリティ・プロジェクトのときは、単純クラリティと申しまして、内容の改訂を伴わない改訂でございましたので、内容的にはかなり古い内容にとどまっていたということが1つ背景としてあります。ですから、その当時から比べますと、企業が公表している開示書類が非常に拡大してきている。特に、非財務情報の重要性が増してきているということがあります。
 
 それから、開示手段とか、開示文書が多様化してきているということも1つありまして、統合報告ですとか、サステナビリティ報告とか、企業の社会的責任報告とか、いろいろなものを企業が出すようになりまして、果たしてISA720の対象範囲がどこまでなのだということを1つクラリファイする必要があったということがあります。
 
 2つ目は、その多様化する財務諸表以外の「その他の記載内容」について、果たしてどういう責任を監査人に負ってもらえばいいのかということも明確にする必要があると。それから、監査人が「その他の記載内容」について通読するということは従来も行われてきていたわけなのですけれども、そういう通読しているということ自体を利用者の方に知ってもらえているのかどうか、あるいはどのようなことをやっているかということについても、必ずしも理解してもらっていない状況というのがありまして、監査報告書にその他の記載内容について監査人がどういうことをやっているかというのを書いてはどうかということが、3つ目の検討課題として挙げられていました。
 
 このプロジェクト自体は、KAMとほぼ同じタイミングで始まりましたけれども、違うプロジェクトとしてIAASBでは進行したということになります。改訂の目的としましては3つ書いておりますけれども、1つ目に書いてありますように、「その他の記載内容」が多様化したということを背景に、監査人の実務上の対応がばらついていたということが1つあります。ですから、目的の1つ目には実務の一貫性をもたらすということが掲げられています。それから、拡大している内容に対応するために、監査人の責任の強化、つまり、手続きをどの程度強化していくかということ、そこをきちんと議論をして、監査意見の対象となる範囲を拡大することなく監査の価値を高める、これを2つ目の目標として掲げております。それから3つ目は、監査報告書で「その他の記載内容」について何か述べることで監査の透明性を向上するということになります。
 
 IAASBでは、2回ほど公開草案を出しまして、この改訂の目的を果たすためによりよい基準になるようにかなりいろいろな議論を経て改訂版が策定されているということになります。
 
 それでは、「その他の記載内容」に対する監査人の責任ですが、これはあくまでも財務諸表監査の一環ということで、これは旧ISA720も改訂後のISA720も変更はありません。監査意見は財務諸表に対するものに限られておりますし、その他の記載内容に対しては監査人は保証は提供しないという建てつけにも変更はありません。
 
 また、財務諸表の監査意見を形成するために要求される以上に、「その他の記載内容」について監査証拠を入手するということも求められていないということになります。あくまでも財務諸表監査の一環として、監査人がその他の記載内容を読むということを出発点としているということになります。
 
 次に、なぜ「その他の記載内容」に財務諸表監査の一環として監査人が関与するのかという理由なのですけれども、この点も特に変更があるわけではありません。財務諸表と「その他の記載内容」の間に重要な相違があるということは、財務諸表側に重要な虚偽表示がある可能性があるか、あるいは「その他の記載内容」に重要な虚偽記載がされている可能性があるか、どちらかということになります。もちろん、重要な相違の説明がつけば、どちらにも重要な虚偽記載、虚偽表示がないという結論に達することもあるわけですけれども、少なくとも重要な相違に気が付いた場合は、どちらかが間違っているのではないかということを疑うにふさわしいと言いますか、そういう契機になるということでございます。
 
 財務諸表側の重要な虚偽表示の可能性があるかもしれないということであれば、監査意見にかかわることでございますので、入手した監査証拠の適切性と十分性の検討をもう1回、監査人としては改めて考えなければいけないというルートに入ります。
 
 「その他の記載内容」のほうに虚偽記載の可能性があるということになった場合、では、なぜそこで監査人が関与しなければいけないのかということなのですけれども、この論拠といたしましては、職業倫理上に誠実性の原則に求められています。これは、国際会計士連盟(IFAC)のIESBAコード、それからそれをもとに日本公認会計士協会が策定しております倫理規則の中にも同じ原則が規定されています。この原則は監査人に限らず公認会計士はということではございますが、重要な虚偽又は誤解を招く陳述が含まれている情報に、それと知りながらその作成や開示に公認会計士は関与してはならないというのが職業専門家として誠実に対応するために必要という内容になっております。ですから、監査対象としていない「その他の記載内容」に、重要な虚偽記載があるかもしれないと気がついたときに、それと知りながら見逃す、見て見ぬふりをするということは、専門家としてはあってはならないことということになります。こういう理由から、「その他の記載内容」についても監査人は通読するということが、従来からも行われておりまして、今回改正されたISA720では、もう少しそれを踏み込んだ記述にしているということになります。重要な相違をそのままにしてしまいますと、結果として財務諸表の監査意見、監査報告書の信頼性を損ねる原因になるので、きちんと対応しましょうというのが「その他の記載内容」に監査人が関与する理由ということになります。
 
 続いて、主な改訂点ということで3つほど挙げております。
 
 1つ目は、「その他の記載内容」が多様化しているということで、ISA720の適用対象を明確化するということで、定義を少し変えております。年次報告書というものを定義して、その中に含まれる財務諸表あるいはその監査報告書以外の情報というふうに定義の仕方を変えております。従来ですと、監査済財務諸表及び監査報告書が含まれる開示書類という言い方をしていたのですけれども、企業が出している報告書の種類が増えたので、年次報告書というものの定義をまずしてから、財務諸表と監査報告書以外というような定義の仕方に変更されています。
 
 ISA720の対象外のものとして、左側の旧ISA720では企業が出すプレスリリースですとか、アナリスト向けの資料とかが例示されています。改訂後もこういうものが対象外になるということは変わりないのですけれども、それプラス、サステナビリティ報告ですとか、統合報告、社会的責任に関する報告書等は、年次報告とは別ものですので、ISA720の対象にはなりませんということを新しいISA720では明確にしております。
 
 続きまして、監査人が「その他の記載内容」に対して行う作業の内容ですが、スライドの4は、旧ISA720で監査人がとるべき対応をフローチャートで示したもので、これは現行の監基報720と同じです。旧ISA720というのは、「その他の記載内容」に対して監査人がどう対応すべきかという考え方の道筋を示しているにとどまっておりまして、どのような手続きを具体的に行うべきかというような適用指針はほとんどなかったという状態にありました。したがって、冒頭で申し上げたように、監査人のその他記載内容に対する対応が実務上ばらついていたということの1つ原因だったかなというふうに思います。
 
 それに対して、改訂版のISA720のでは、旧ISA720に比べるとかなり詳細に手続きが書き込まれています。ボリュームを単純に申し上げますと、旧ISA720では要求事項が11個、適用指針が10個ほどで、全体のページ数としては4ページぐらいだったのですけれども、新しいISA720では要求事項はそれほど変わらず13個ですが、適用指針が60弱に一気に増えておりまして、ページ数も30ページぐらいの量になっております。そのぐらい細かな適用指針を増やして、監査人の対応のばらつきをなるべく抑制しようというのが大きな背景であったかなというふうに思います。
 
 では、ISA720の改訂版のアプローチなのですが、「その他の記載内容」に含まれる情報にはいろいろな種類があるので、それを分類して、それぞれに対して監査人がどういう関与をしていくかというのを明確化するというアプローチをとっております。説明の便宜上、A、B、Cとグループ分けして書いておりますけれども、その他の記載内容Aというのは財務諸表の金額または他の項目と同一の情報、要約した情報、あるいはより詳細な情報、こういうものが「その他の記載内容」には含まれています。他の項目というのは、財務諸表に含まれている勘定科目や注記の説明など、金額以外の情報です。これが「その他の記載内容」の情報の1つ目の種類になります。
 
 2つ目が、Bの財務諸表には直接的には記載されていないのですけれども、監査の過程で監査人が知り得るであろう金額とか、その他の項目というものがあります。
 
 それから、3つ目のCは、財務諸表監査の過程で監査人が特に触れないであろう、A又はB以外の情報です。その他の記載内容の情報をこの3つに分類しております。
 
 この各分類に対する手続きの種類や範囲についてですが、基本的には監査人がどういう手続きをどの程度やるかということを判断するものとされています。監査人の判断に委ねられてはいるのですけれども、なるべくばらつきが起こらないように、あるいは保証を提供しているという誤解を招かないように、適用指針である程度の詳細さをもって説明をしたり、例示されたりしています。
 
 今回のISA720の1つの大きな改訂点として、財務諸表との単純な比較ではなくて、監査の過程で得られた監査人の知識と照らして通読するということが言われていますが、監査人の知識に照らして読まなければいけない対象は、Bに属する監査の過程で監査人が知り得るであろう情報ということになります。
 
 次のスライド6が、改訂版ISA720の要求事項の大きな流れを示しています。通読するという出発点は変わらないのですけれども、「consider」の内容が、このA、B、Cのそれぞれの情報の分類にわけて記述されています。その内容が次のスライドに記載されていますが、財務諸表の金額あるいは他の項目と同じ情報、要約した情報、またはより詳細な情報については、財務諸表と比較して一致していればいいということになりますので、ここは比較的単純な作業になるということになります。これらの項目については、全てを比較するということが監査人に求められているわけではなくて、選択して監査人は照合をかければいいということになっております。どうやって選択するかということですが、「その他の記載内容」の記載方法や文脈を考慮した重要度が挙げられています。通常、「その他の記載内容」について重要性の基準値というようなはっきりした基準値は設けることはできないと思いますし、「その他の記載内容」の作成基準においても重要度の考え方は通常示されていないという前提を置いています。そのほか、金額が大きいもの、あるいは慎重な取扱いが一般的に必要だと考えられているような項目を選んで、財務諸表と「その他の記載内容」に入っている金額情報等を比較するという手続きが求められているということになります。
 
 続いてBについては、監査の過程で監査人が得た知識と比較するということなのですけれども、これはあくまでも財務諸表に対する監査意見を表明するために入手した監査証拠とその結論の範囲内で、監査人の得た知識と比較するということが求められています。
 
 では、どういう内容がこの監査人が得た知識に該当するかということですが、監査人がリスク評価において入手した企業及び企業環境に関する情報、あるいは資産の減損テストのときに将来キャッシュフローの見積りを検討しますが、そのときに入手した将来の事業計画とか、セグメントごとのビジネスモデルなども関係するかもしれません。それから、継続企業の前提の評価のときに入手した情報、取締役会等の重要な会議の議事録も通常監査人は読みますので、その過程で得た知識、そういうものと整合しているかどうかということを監査人は見るということが記載されております。あくまでもここはintelligent readというふうに呼ばれており、一定の知識がある者が通読するということを前提にしておりまして、例えば「その他の記載内容」に書いてあることを、監査調書と逐一照合しながら読むとか、あるいは監査手続を担当した監査チームメンバーにその他の記載内容について質問する、あるいは海外、国内でもあるかもしれませんけれども、構成単位の監査人に質問するというようなことは、必要があれば行うということを前提にしておりまして、常にやるということまでは求めていないということになります。また、通読する人は、スタッフではなくて、ある程度そのエンゲージメントを統括する立場にある例えばマネージャーですとかパートナーがやるということが前提になっています。監査意見を形成する過程で、調書レビューをして、頭の中にたまった知識で通読するわけですが、そのときに自分の記憶があやふやであったり、監査上は詳細に理解する必要がないので、資料を詳細に読んでいなかったというような場合は、チームの担当メンバーに聞いたり、調書と照合することを想定しているということになります。
 
 ここまでは財務諸表監査の延長線上ということですけれども、Cの分類に入りますと、それ以外の情報ということになりますので、監査人の専門外の情報も多く含まれます。ですので、ここの部分については、重要な虚偽記載の兆候があるかどうかということに常に留意して読んでくださいという、remain alertという英語になっておりますけれども、注意して読んでくれというのが、まず一段目の要求事項ということになります。このときに、どうやってということなのですけれども、監査人が持っている一般的な知識、ほかのエンゲージメントなどで蓄積された知識、新聞などでいろいろな経済情報などが頭の中には入っていると思いますので、そういう一般的な知識に照らして、ああ、ちょっとおかしいなと思ったり、あるいは、「その他の記載内容」の中での不整合があるのではないかと思ったとき、アディショナルな手続きをやるきっかけになるという、この程度のことをCの分類の情報の通読に対しては要求されているということになります。
 
 A、B、C、の情報について通読をして、情報の種類に応じて「consider」が要求されているわけなのですが、その結果、暫定的に重要な相違の可能性がある、何かちょっとおかしいかもしれないと思ったときに、次に何をするのか。その他の記載内容に重要な虚偽記載があるのか、財務諸表に重要な虚偽表示があるのか、あるいは、監査人のリスク評価が適切であったかどうかということに立ち戻って検討する必要があり、この3つの点について結論を出すために必要に応じて手続きを実施するということが求められています。結論を出すための手続きの例ですが、まずは経営者と協議する。経営者と協議して、「その他の記載内容」のほうに重要な虚偽記載がありそうだと思うのであれば、追加で資料の提供を求めることもあり得るということになります。
 
 それから、Cの分類の情報、つまり、財務諸表や監査の過程で得た知識と関連しない情報というのは、監査人の専門外の情報ということになりますので、なかなか監査人は判断できない、経営者から一通りの説明を聞いただけでは判断できない状況というのも想定されます。そういう場合は、自分では十分な判断ができないので、経営者に適切な第三者の見解を得ることをお願いすることがあります。これは、改訂前のISA720でも記載されていましたが、より局面を明確にしたということと思います。この適切な第三者の見解を経営者に入手してもらって、その説明を受けてもなお監査人としては重要な虚偽記載がないという結論に達することができず、判断がつかないと思ったとき、監査人の責任がISA720に照らして十分果たせているかどうかということを、監査人の顧問弁護士に相談したり、あるいは監査報告書の中で、経営者に追加の資料の提供を求めたのだけれども十分な協力を得られなかったというようなことを記載したりすることが例として示されています。スライド7の最後の「監査報告書での言及」というのは、結論が十分に得られるほどの情報を経営者から入手できなかったというようなことを書く可能性もあるということを示しており、改訂ISA720で追加されています。
 
 さらに虚偽記載がその他の記載内容の方にあると監査人が判断した場合、修正を要請したにもかかわらず、経営者側に修正を受け入れてもらえない、監査委員会等のthose charged with governanceの方にも報告して修正を要請したのだけれども、最終的に同意が得られなかったような場合は、監査報告書に虚偽記載があると書くか、あるいは契約解除などの適切な措置を講ずるということになります。以上が、監査人の作業についての主な改訂点です。
 
 最後は監査報告書における報告です。その他の記載内容について、監査報告書においても監査人が作業している内容について、標準的な文章で記載します。KAMと違って、その会社の監査固有の情報を入れるということにはなっていないのですけれども、スライド9に記載している「その他の記載内容」のパラグラフを監査報告書に設けて、「その他の記載内容」の作成責任を負っているのは経営者であること、監査人は「その他の記載内容」を通読して、気がついたことを報告するという手続きの概要を記載し、その結果、「その他の記載内容」に対して報告すべき事項がないのであればないと記載します。重要な虚偽記載が「その他の記載内容」にあるという判断をした場合は、その旨と内容を書くことになります。
 
 以上が、主な改訂点です。先ほどIAASBとしては適用後モニタリングは、まだ未実施ということを申し上げたのですけれども、英国のFRCは2018年12月に、2017年12月期の「その他の記載内容」についてのテーマ別レビューというのを行っておりまして、その報告の中では、基準は改訂されたのだけれども、やはりまだ実務上のばらつきが見られるというような当局の報告が記載されております。監査人は、財務諸表との整合性に依然として注力していて、このスライドで言いますとBの部分、監査人が監査の過程で得た知識に照らして、イギリスの例で言いますと戦略報告書ですとか、Directors’ Reportとか、そういうものに含まれているビジネスモデル、あるいはビジネスリスクについての監査人の踏み込みが基準で要求されているより、弱いのではないかというような指摘も上がっております。そういう指摘を読みますと、やはり基準を表面的に見ると大きな変更ではないと見える部分もありますが、監査人が監査の過程で得た知識に照らし通読して、監査人が疑問に思ったことついて経営者とディスカッションするということは、なかなか難しい面があると言いますか、単純な話ではない部分もあるのかなというふうに感じているところです。
 
 ですから、改訂による実務上の影響としましては、これは結構深みがあると言いますか、そういうところもあるように思います。現在しっかりやっている会社の監査にはあまり影響がないというふうに言えるかもしれませんが、しっかりやっているつもりでも、今後ますます財務諸表以外の非財務情報の重要性、記述情報の重要性というものが日本でも増してくると思いますので、より深いディスカッションが必要になってくるのかなと考えるところでございます。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 それでは、今のご説明につきまして、ご質問・ご意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
 小畑委員、お願いします。
 
○小畑委員
 ありがとうございます。
 
 まず、住田委員からご説明いただいた資料1-3の4ページと6ページで、ISA720の改訂前と改訂後の監査人の作業が示されておりますが、4ページの改訂前では、「その他の記載内容」について修正が必要で経営者がその修正に同意しない場合、「監査報告書を発行しない」という最終的な手続きの記載があります。改訂前では、「その他の記載内容」について監査報告書を発行しないという対応のため、事実上監査を行っているような手続きになっております。一方、6ページの改訂後では、「監査報告書を発行しない」という手続きが抜けていますが、そのような理解でよいか、あるいは、この部分を削除した理由があるのか、お伺いしたく存じます。
 
 また、監査人の法的責任について住田委員からご説明がありましたが、日本の会社法を見ますと、資料1-2の6ページ、第四百二十九条第二項第四号で、会計監査人については「会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録」について損害賠償責任を負うとあります。今回、改訂ISA720を日本の監査報告書に導入し「その他の記載内容」について報告すべき事項のある・なしについても記載することになりますと、まさに会計監査報告に関する虚偽記載の損害賠償責任の対象になり得るのではないかと思うわけでございます。
 
 一方、先ほど事務局からご説明いただいた英国の会社法において、2016年に追加された496条、497条、397条の(a)は罰金の対象とはなっておりません。この点、日本と英国との間で法的な責任について建てつけが大きく異なります。日本の場合、その法的責任を負うということになりますと、英国で行われている改訂ISA720の実務よりも相当慎重な対応が求められるのではないか、つまり、かつて内部統制報告で言われたチェックリスト方式のように、項目数を1つずつチェックする形になるのではないかと懸念しております。今回、そうした手続きを意図したものではないと思いますが、、このような慎重な対応を求めないよう、よくご検討いただきたく存じます。特に、どの項目について検討すればいいのかという対象の明解化等、しっかりと絞り込んだ建てつけが必要となってくるのではないかと思います。そうすることで、改訂ISA720の手続きの対象が何であるかが世の中に示されれば、従来から言われている期待ギャップの問題も解消されていくのではないかと思います。ぜひ詳細にご検討いただければと存じます。以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 1点、監査報告書を発行しないという対応が削除されたという件についてですけれども、この件につきまして住田委員、意見ございますか。
 
○住田委員
 表面的には消えているように確かに見えるのですけれども、監査報告書を発行しないということと、監査契約の解除ということとは、ほぼ同じような効果を持っているということが1つあるのかなというふうに思います。
 
 それから、改訂ISA720を検討する過程で、監査人の関与のバーを上げるということが議論されたわけですが、あくまでも「その他の記載内容」に対して保証を提供するわけではないので、監査人の専門外の情報もたくさん含まれる「その他の記載内容」について、どうしても判断がつかない領域というのが残ることがあるはずだということが、結構大きな論点として挙げられました。したがいまして、先ほど申し上げたように、結論が出せなかった状況について監査報告に何らか書くこともあり得るというような意味合いで、スライド7の最後に「監査報告書での言及」を例示していますが、「その他の記載内容」に重要な虚偽記載があると判断した場合の対応として、監査報告にどういう影響があるかを考えるという中に含まれたかなと考えております。
 
 なお、新しいISA720では、監査契約の解除のほか、監査報告書における対応として、財務諸表に対して意見不表明という選択を監査人がすることがあるということが適用指針で示されております。なぜ、そういう対応になるかということなのですけれども、結局、監査人が「その他の記載内容」について、何かおかしいのではないかと強く思わなければ、そこまでの疑いを持たないわけなので、those charged with governanceの方を含めて、会社側に監査人の疑問点をお伝えしても、なお修正がかからないということは、会社側の経営者ですとか、監査委員会、those charged with governanceの方々の誠実性に監査人が疑問を持つのではないかと。したがって、そのような場合は財務諸表監査に対して意見を不表明にすることもあり得るということです。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。水口委員、どうぞ。
 
○水口委員
 ありがとうございます。事務局からのご説明、それから住田委員、どうもありがとうございました。
 
 「その他の記載内容」を考察する際に、財務諸表利用者の期待するものとのギャップなどについて検討することは妥当だと考えます。先回の議論の場でも申し上げましたように、財務諸表利用者にとって、経営者が認識するところの事業環境、志向するビジネスモデル、競争力、企業がさらされる主要なリスクなどに関した非財務情報が有用であることは言うまでもありません。財務諸表利用者としては、こうした非財務情報と財務諸表との整合性について非常に関心が高いところです。企業を取り巻く事業環境が将来にどのように展開していくのか不確実であり、将来の事業環境の変化を完全に予言することなど不可能です。不確実性を認識しつつ、事業環境などについて、企業がさまざまな将来シナリオを考察した上で事業戦略を立てていることについて、財務諸表利用者がプラスに評価する余地が大いにあります。
 
 以上のような諸認識を踏まえまして、財務諸表利用者としては、監査人の知見を生かして、企業が開示する財務諸表と、財務諸表の整合性を監査人に確認していただけることは意義があると考えます。
 
 ここで、経営者が、企業の経営成績などの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク、つまり将来にわたる不確実性について、一般的に合理的と考えられる範囲で開示情報の提出後に事情が変化したとしても、財務諸表利用者としては、そのことを企業による虚偽記載とは認識しませんし、監査人に期待を裏切られたとも考えません。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。林田委員、どうぞ。
 
○林田委員
 前回、後半の議論に加わらなくて、少し理解が進んでいないところがあるので恐縮なのですけれども、「その他の記載内容」についてなのですが、感想というか質問のような形になってしまうのですけれども、記載内容を充実させることに関しては私としても賛成です。けれども、財務諸表を読む、特に一般の方の目線で考えてみると、例えば監査人が報告すべき事項はないと記載した場合に、その財務諸表には問題がないのだと、監査人がお墨付きを与えたかのように受け止める方が多いのではないかと思います。
 
 前回の議論では期待ギャップという言葉が使われたようですけれども、何かただし書きのようなものをつけただけでは、専門家と一般の人の認識ギャップを埋めるのは容易ではないのかなという気がいたしておりまして、ただ、私自身に名案があるわけではなくて、大変心苦しいのですけれども、このギャップを埋める何か有効策はないのか、専門家の方にご意見を伺っていきたいと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 専門家のご意見ということでございましたので、住田先生、いかがでしょうか。
 
○住田委員
 スライドの9に、「その他の記載内容」に対していかなる保証の結論も表明しないというただし書きは入れてあるのですけれども、それでもお墨付きを与えたように感じるのではないかというご指摘だと思います。この保証を提供しないという一言で、全ての方にきちんと理解していただくというのは難しいというのは重々承知しているのですけれども、そういう誤解が生じないように、こういう審議会の場ですとか、あるいは新聞記事等で正確にお伝えいただきたいというのが希望でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。荻原委員、どうぞ。
 
○荻原委員
 企業側の立場としましては、まず言えることは、新しいことを始めるときに、まず責任の話はすべきではないというのが私の考え方でございまして、まず、新しいことであればやってみるということが非常に重要であると思っております。その中で、もし「その他の記載内容」において会計士が責任をとるということであれば、実は、その書いた内容がもし仮に事実が、企業側が思っていたとおりにいかなくて、結果的に虚偽のことになる結果になってしまった場合というのは大いにあり得ると。そういう場合に、その責任を会計士がとるのであれば、企業側にも責任が覆いかぶさってくるので、非常に、逆に企業側にとってもリスクになると思っております。なので、今回の件は、これは私の意見ですけれども、間違いなく、会計士の責任云々ということは外しておいて、とりあえず数年やってみて、不都合が生じたら、また皆さんで集まって考えればいいのではないかと思います。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。中西委員、どうぞ。
 
○中西委員
 中西でございます。
 
 今回のところ、いろいろ責任というお話も出ましたけれども、確かに企業不祥事だとか言われては、損害賠償の裁判など実際に起こっている部分もありますし、また、貯蓄から投資の流れということで、年金資金など、非常に資産規模の利害関係の大きな株主までが裁判を起こしてきているという現状から見ると、責任というところに注目が行くのは仕方ないのかなと思うのです。ただ、金商法自身も明らかに結果責任を問うというような条文というのはほとんどないわけですし(売り出したときに、虚偽だったからもとに戻す必要があるという話はともかく)1つ1つの行為に過失がなければそれで免責という方向になっておりますので、やはりそういうところはきちんと過失責任であって、何か問題があったら責任をとらせるということをもっと明確にするというのが、共通理解として持っておけばいいのかなというのが、まず1つかなと思います。
 
 実際、やることをやらなかったから負けたという会計士の先生方、裁判でいますけれども、これもやはり、非常勤と常勤の区別というわかりやすいところからチェックしていなかったというお話ではないかと言われております。では、実際にこれを監査報告、会社法ですと会計監査報告にどう落とすかということなのです。結果を書いてしまうと結果の証明になるのではないかと。ですから、そこに対して責任を問う人が出てくるのではないかと思うのですが、手続きとか、あるいはこういうことをしましたということを書くこと自身は、これは実際に会計士の先生などが「やりました」ということを書くということであれば、これは虚偽になることはないわけですね。自分でやったことを書くわけですから。会社がやったことを保証するわけではないので、と言うことができるということも1つあります。
 
 実際、会計士の先生方の仕事というのが、一般的な株主から見てもそうですし、弁護士から見てもなかなか不透明ですし、監査役や監査等委員をやっていてもやはりなかなかわからないところでもあります。そうすると、こういうことをしました、非財務情報についても有価証券報告書をきちんと、先生方がきちんと意味を考えて読んでいるということであれば、そこを読んだ上での結論ですというふうに書いてあるか、書いてないか、それだけでもやはり情報提供としても違って来ると思います。何より、やはりこういったコミュニケーションをすることで、期待ギャップがあるからしようがないではなくて、埋める努力というものが書面に残ってくることで、お互いの理解も進みます。あとは先ほどの責任に戻りますと、今までは、(会計士が)こういうことをしましたということはブラックボックスになっていて、裁判のときに初めて出てくると、つまり訴えてみて初めてわかるというお話なのですね。ところが、監査証明など、あるいはほかの文書などで、こういうことをしてこうした結果、それでこういう結論になりましたと言うと、会計士の先生がここまでやったのに、それでわからなかったのなら、会計士の先生を訴えるのをやめようかということにもなるのではないかという意味があります。そうした点では、責任を果たしたことを表明することも、重要ではないかなということでもあります。
 
 私の職業の話で申しますと、第三者委員会でよく調査報告書を書くのですが、第三者委員会という全く法的根拠も何もなくて、お願いですから信じてくださいという文書なわけですから、そうしますといきなり結論を書いて信じてもらえることはまずなくて、こういう調査をやって、こういう人たちにヒアリングをして、これだけの時間をかけて委員会で何度も議論して、委員のメンバーは全部第三者で中立的な立場でやりましたと書きます。これだけ書いたものを信じてもらえるかどうかなかなか難しいというわけですから、何も書かずに、何も説明せずに信じてくださいというのはやはり難しいかなと。であれば、丁寧な開示をすることで、ギャップを埋めていくと。丁寧な開示の結果は尊重するし、そこに嘘がなければやはり責任を問うのは違うでしょうという、こういう空気をつくっていくことができればと思います。(非財務情報の)結果の保証はしないが、こういう過程でちゃんとやりました(読みました)ということをきちんと表明する、こういうコミュニケーションのツールとして、1つこういったMD&Aのところで手順が進んで、何か改訂が進んで、よいコミュニケーションにつながればということで、会計とは専門外のところからお話をさせていただきました。
 
 ありがとうございました。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。熊谷委員、どうぞ。
 
○熊谷委員
 そもそもといいますか、ディスクロージャーワーキング・グループ等で、財務報告制度の見直しをやっているわけでありますけれども、我が国でも有価証券報告書における非財務情報、記述情報の充実を図る方向にあります。その中の監査の位置づけというのを、ISA720に従ってしっかり定義していくというのは非常にいいことではないかと思います。
 
 期待ギャップということに関して、そういう非財務情報、記述情報に関して、監査人に責任がないと、あるいは、それは保証するものではないということの一般的な理解を求めていくということは重要なことであると思います。これまでも監査人の方々は通読されているというふうには理解しておりますけれども、そこから先のところまでよくわからなかったわけでありますが、そこがしっかり書かれてくるということは非常にいいことではないかと考えております。
 
 一方で、先ほどの住田先生の資料で1点気になったことがございます。3ページ目の、旧ISA720と改訂後のISA720と、基本的に年次報告書、日本で言えば一般的な有価証券報告書とか、事業報告プラス会社法の書類というふうに理解致しました。、この年次報告書の定義次第ということになってこようかと思うのですが、この改訂ISA720で法令または慣行により、経営者が通常年次で作成する単一又は複数の文書というふうに書かれております。ちょっと気になりましたのは、実は決算短信なのですね。決算短信は法令ではありませんけれども、まさに東証の適時開示のルールによってつくられているわけであります。平成27年のディスクロージャーワーキング・グループでは、この決算短信に記載の柔軟化ということがなされたわけであります。その時は決算短信に財務諸表をつけるかつけないかということで、さんざん議論したわけでありますが、短信の柔軟化後も、利用者から見れば幸いなことに、財務諸表はついているわけでありますね。
 
 伺いたいのは、結局、決算短信は慣行によってつくっているものではないかと思います。平成27年のときには、結局、決算短信を監査人が事実上、まさに通読と言いますか、監査意見はつけていないのだけれども、読まなければいけない、整合性をチェックしなければいけないということが大変な負担になっているということが問題になったので、そこは求めないことにしましょうというふうな整理になりました。このISA720が入ってくることによって、決算短信の扱いといったものはどうなるかというのが、当時議論に参加した者として気になりました。
 
 この一連の開示制度改革というのは、少しでも作成者や監査人の負担を軽くしていく一方で、財務情報にかかわる作成に負担を軽くしていく一方で、やはり非財務情報、記述情報の充実を求めていくという流れの中で、ISA720の定義がこれまでのディスクロージャーワーキング・グループで議論してきたところとやや齟齬を来たす可能性はないか、気になりました。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。住田委員、どうぞ。
 
○住田委員
 決算短信は、海外でもアーニングリリースという形で公表されているわけですけれども、改訂前も改訂後もISA720の対象には入っていません。その点は変わりないと言えます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、ご意見いかがでしょうか。弥永委員、お願いします。
 
○弥永委員
 ありがとうございます。
 
 今日のご説明を聞いて、少しわかったような気がしたのですけれども、6ページのDを見ますと、監査人に対して要求されている事項が、以前に比べるとかなり増えているような印象を受けます。特に必要に応じてその他の手続きを実施するとされている以上、どこまでやらなければならないのかが重要な問題となると思われます。先ほどご指摘があったように、過失があるかどうかの判断との関係で言えば、要求されている手続きを踏んだかどうかが基本的な視点になると思われるところです。そうすると、このように必要に応じてと言う場合には、どこまでがこの必要に応じてという中に含まれるのかが明らかにされないと、監査人の責任との関連で若干考えてみなければいけない問題があるように思われます。
 
 9ページに示されているところからいたしますと、報告すべき事項はないという記載か、あるいは「その他の記載内容」に重要な虚偽記載があると判断しているという記載か、この2つしか記載の選択肢がないのかと思えたのです。けれども、それ以外の記載の余地もあるというのであれば、すなわち、監査人としては、どちらでもない記載、つまり、重要な虚偽記載の兆候はあるとは判断したけれども、重要な虚偽記載があるという結論には至らなかったという記載ができるのであれば、監査人の責任が過大にならないで済むかもしれません。しかし、もし、どちらかの結論を出さなければならないというのであれば、Dの手続きとしてはかなりのことを、いざというときには相当のことをしなければならないということになるのではないかなという印象を受けました。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ご意見ございますか、住田委員。
 
○住田委員
 Dの「必要に応じて」というのは、おっしゃるようにどこまでやれば必要な範囲なのかというのは課題として残っているというふうには認識しております。先ほど紹介しましたイギリスのFRCのテーマ別レビューにおいても、依然として実務のばらつきがあると言っているのは、監査基準において情報の種類に分けて手続きを、従来に比べたら詳細に指針を出してはいるのだけれども、やはり「その他の記載内容」というのはバラエティーに富んでいるというところもありまして、手続きを具体的に規定しにくく、必要な手続については監査人の判断に委ねざるを得ないということが根底にあるのかなと。結局は保証を提供していないということが全てを物語っているのかなというふうに感じております。つまり、「その他の記載内容」について、全体に対して何か監査人が必ず結論を出さなければいけないということまでは求めていないということが重要なポイントなのではないかと思います。ですから、法的責任の観点から言えば、どこまでが正当な注意を果たしたかというのが当然キーワードにはなってくるのですけれども、保証を提供しているわけではない、常に結論を出すことが求められているわけではないということで、その辺はご理解いただくということになっていくのではないかと考えております。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。紙谷委員、どうぞ。
 
○紙谷委員
 紙谷でございます。前回の審議会を欠席させていただきまして大変失礼いたしました。
 
 今回のテーマであります「その他の記載内容」につきましては、主に国際的な整合性を図る観点から、ISA720を導入する方向で議論を進めることについて支持しているところでございます。
 
 一方、期待ギャップにつきましては、やはり監査人としては懸念しているところでございまして、有価証券報告書全体が監査人によって保証されているというような誤解を受ける可能性はあるのではないかと思っております。ただし、そういう誤解を受ける可能性があるから反対するというよりも、むしろここは周知の問題だと思っておりまして、なかなか先ほどの住田委員のような正確な説明を聞く機会はなかなかないとは思いますが、日本公認会計士協会やその他の団体を通じた様々な機会で、保証するものではなく、あくまでもこの基準で求められている手続を実施した上での結果を記載しているものであるということをしっかり周知していくのが重要であると思っています。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。吉見委員、お願いします。
 
○吉見委員
 ありがとうございます。私も前回の会議を欠席いたしまして、大変失礼いたしました。
 
 今回のこの議論に関しましては、前回の議事録を拝見していましても、議論の中にありましたように、基本的にはこの国際監査基準720をベースにして、現在の日本の実務に合わせていこうと考えたものであると思いますし、それは現在の世界の流れ、あるいは非財務情報を含めた、今回で言いますとこの「その他の記載内容」に関連する監査にも対応ということに整合性を持たせるという点で、私は意義があるし、やらねばならないことだと考えております。
 
 その中で、期待ギャップの問題というのが前回も議論が出てきたようでございますけれども、ご案内のように期待ギャップというのは、基本的には現在やっていることがあって、それに対する期待、一般の期待とのギャップなわけですね。今回の議論はまだやっていないことですので、やっていないことに関してギャップを議論するというのは非常に違和感があります。つまり、これからやるであろうということ、それにギャップが出るかもしれない、どうしようと言っているという、そういうことになっているわけで、これを言い出しますと、新しいことは1つもできません。新しいことをやれば、そこで誤解をするとか、これは一体何だろうと考える人は必ず出てくるわけであります。新しいことであればあるほど、最初にそれがどういう意義を持つのか、どういうことなのかということをきちんと理解し周知してもらって、将来、その理解が誤解にならないようにつくっておくということが大事なのではないかと考えます。まずは、そういう意味ではギャップはまだないので、まずやってみなければいけないのではないかなと考えております。
 
 それから、通読をするという手続きそれ自体、これは現在でもあるわけでありまして、それを今度はいわゆる会計情報の部分の監査と齟齬がないかどうかということを見ていくわけでありますけれども、その際、作成者がつくった「その他の記載内容」の情報の表現等について、監査人がその修正を求めるということは、これはあり得るのかなと思っております。と言いますのも、日本語はやはりかなり曖昧な言語でもありますので、同じものを読んでも、肯定的な表現で書いたつもりが読んだほうが否定的に捉えてしまうということがままあります。明確にイエス、ノーで書くというよりは、どちらかと言うと曖昧な表現になっているということもかなり多いわけでありまして、読んだときに、これは一体どういう意味なのですかと、ポジティブに書いているのですかと言うと、実はネガティブに書いたつもりですといったようなことになれば、これは誤解を生んでしまうので、表現を変えてくださいと、そうしたらきちんと整合しますよねという、そういったコミュニケーションは、これは十分、日本語であればこそあり得るのかなと思うところであります。
 
 ここも含めて、その意味では、「その他の記載内容」がきちんと整備されていく、そして財務情報との不一致がない形で投資家等に開示されていくということは重要なことではないか。それに、間接的なのかもしれませんけれども、監査が有用な役割を果たしていくのであれば、これは1つの大きな進歩ではあるし、決して期待ギャップを拡大する方向にはならないのだろうと考えているところです。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。岡田委員、お願いします。
 
○岡田委員
 先ほどの住田委員のご説明で大分理解が進んでまいりましたし、ISA720を導入する今回のような検討は大変有意義なことと感じた次第です。
 
 感想になりますが、監査済のFinancial StatementとOther Informationの間に大きな違いがあるというケースはそうざらにはないのではないかと思います。むしろ、例えば減損の判定に使った将来見通しと、MD&Aなどで述べている将来見通しとがどのように係数上関係するのかといった点を、最終的に虚偽記載があるという結論にならないまでも、監査の過程でよく見ていただきたいと思いますし、そこで問題があれば、KAMでの議論に戻ってくるように考えます。しかしながら、こういう議論を通して、監査人の意識をもっと変えていっていただきたいと思います。
 
 また、ご説明にあった、TCWG、これは監査役になるケースが多いかと思いますが、監査役としては監査人から報告を受ける中で、議論を行いながら最終的に判断をしていく、あるいは執行側とも議論をしていくという立場にも当然なると思いますので、監査役の責任の重さは増えるのではないかと感想を持ちました。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 大瀧委員、続けてお願いできますか。
 
○大瀧委員
 ありがとうございます。
 
 利用者の立場としましては、有価証券報告書が法定開示文書であることに鑑みたとき、その前段部分について、ISA720の適用によって、会計監査人にチェックしていただくということについては非常に期待しているところでございます。
 
 本日、ご説明があったように、監査報告書に監査意見とは明確に異なる「その他の記載内容」の区分を設けて、そこに、いかなる形式の保証もしない旨の記載がなされることによって、利用者の誤解というのはある程度抑制できるのではないかと考えております。
 
 その一方で、国際監査基準を我が国に導入するに当たっては、金商法と会社法との調整が必要ではないかと考えております。2点ほど申し上げます。
 
 1つ目は金商法との関係です。ISA720では、「その他の記載内容」について、未修正の重要な虚偽記載がある場合にはその内容を記載することを求めています。ここで、「重要な虚偽記載」という点ですが、金商法第二十一条以下の役員等の賠償責任規定では、「重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているとき」という規定がございます。この金商法の規定にある重要な虚偽記載と同義であるのかという点、特に、重要な記載が欠けている場合の取り扱いについての確認が必要なように思います。利用者としましては、重要な記載が欠けている場合においても、ISA720の運用によってフォローしていただきたいと考えております。
 
 2つ目は会社法との関係です。会社法監査報告書におけるISA720の取扱いでして、非財務情報を記載する事業報告がISA720の対象になるかという点です。有価証券報告書と事業報告の一体的開示が進められている中で、利用者としましては前向きにご検討いただきたいと考えております。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。今給黎委員、どうぞ。
 
○今給黎委員
 ありがとうございます。日立製作所の今給黎でございます。
 
 企業の足元の実務の立場から少しコメントさせていただきます。企業の情報の開示の充実につきましては、投資家の皆様との建設的な対話に向けた企業の意識も、かなり進んでまいりまして、既に開示府令の対応準備もなされているところで、創意工夫を反映した多種多様な開示のあり方が企業に求められていると認識しております。ただ、日本企業として目指す開示の充実の方向性とレベル感につきましては、まだ悩ましいところも多くございまして、先般、金融庁から公表されたベストプラクティス事例にもございますけれども、新たに相当踏み込んだ法定開示を既に始められた企業がある一方で、慎重に考える向きもあるということで、有価証券報告書の厳格な法定制度の枠組みの中での虚偽表示リスクへの懸念でありますとか、そもそも我が国の会計実務の、簡素で型や規範を是とする文化も伝統的に根強いものがあるわけでございまして、多様な開示拡充に向けた企業の取組みとマインドの切りかえには、やはり少し時間が必要ではないかというふうに考えております。
 
 合わせて、任意開示の統合報告書など、投資家向けのそのほかの公表情報もございますので、全体の実務日程を踏まえた上で、特に法定開示と任意開示の境目の議論の整理といったものも必要ではないかなと思っております。そうした中で、今回のISA720の議論ですが、先程のご説明でかなり理解は進んだのですけれども、新たな実質的な手続きとスコーピングがどのようになるのかということは、やはり明確にする必要があると思います。また、企業の開示拡充の取組みとの関連で申しますと、あまり監査の議論が先行いたしますと、どうしてもコストとかリスクに議論がフォーカスされがちということで、企業の開示拡充促進の取組みの流れと相反するところも出てきてしまうのではないかなという懸念もございます。まずは、投資家との積極的な対話と、企業の開示の創意工夫が促進されるような環境づくりをぜひお願いしたいということで、本件につきましても、欧米の動向を踏まえた上で、実質的な効果を見極めて、十分な時間をかけて慎重な議論をぜひお願いしたいと思います。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。永田委員、お願いします。
 
○永田委員
 責任について少々意見を申し上げます。
 
 資料の9ページにありますように、実際に監査報告書に書くときに「その他の記載内容」に関して報告すべき事項がなければその旨を、報告すべき事項がある場合は同頁末尾にあるようにその内容を書くことになるのですが、監査役等の立場で考えますと、仮に記載内容に関して報告すべき事項はないと書かれたときに、このことについてどの程度信頼していいのかが問題になると思われます。監査役等としては、会計監査だけでなく業務監査もある中で監査人の通読を自らの監査に活用していこうとすると、「報告すべき事項はない」ということをどこまで信頼してよいのかということです。保証ではないということは理解できるのですが、それでは、記載とは全く関係なく自分たちで業務監査をしなさいということなのか。そうではないとすると、通読というのは一体どういう意味を持ち、通読を信頼したところ、結果として重要な虚偽記載があったことが判明した場合はどうなるのでしょうか。やはり、先ほどの話からしますと、責任の問題も出てきかねません。
 
 それと、先ほど、中西委員からもお話がありましたが、「その他の記載内容」に書かれる通読の結果だけではなく、具体的に何をしたのかが記載されれば、通読としてしたことが明らかになりますので、どこまで信頼したらいいかもわかりやすくなります。しかし、資料にあるような記載では、報告すべき事項はないと言われているだけなので、どこまでそれを信頼していいかというのは、業務監査の観点からどこまで活用してよいのか気になるところです。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。八田委員、お願いします。
 
○八田委員
 申し上げたい点が2つあります。1つは、今回の取扱いが国際監査基準と言いますか、国際的な実務の流れとなっていますから、日本においてもこういった実務を導入するということは、大体、皆さん合意されていると思います。ただ先ほど、吉見先生がおっしゃったように、期待ギャップの話ですけれども、基本的に期待ギャップというのは2つの意味があって、1つは関係者間における監査に対する認識のずれが見られるということ。もう1つが、役割期待に対するずれなのですね。だから、そういうふうに考えると、実は現在の財務諸表監査、公認会計士監査に対しても、会計士の先生方が抱いているであろう監査の意味と、メディアの方、あるいは一般投資家の方、それ以外の方が持っている考えとの間に結構ずれがあると思いますよ。したがって、それは社会問題になってくると思う。
 
 ですから、当然ながら新しい制度が始まれば、それに対する理解をすり合わせておかないとまずいわけで、それは多分ここの場であると思います。同時に、新しいものについては、突然のように何か答えが出るわけではなくて、先ほど住田委員のご説明にもあったように、改訂になった一番の理由が一貫性を保つのだということ、これが一番重要な話だということです。我が国においては、例えば昔、特記事項という制度が導入されたときに、やはり奇をてらって勝手なことを書くような会計士もいたようです。したがって、監査基準の範囲の中で、ある程度足並みがそろうような指導や勧告をするのが自主規制機関の公認会計士協会の役割だということです。制度の大きな流れは審議会の場で対応したり、あるいは基準策定に際して、必要な穴埋めをしていくのであり、これは一朝一夕でできるわけではないと思っています。つまり、経験ないしは体験の積み重ねの中で、このトライ・アンド・エラーを繰り返していく必要があるのだろうということです。
 
 こういう新しい問題が起きると、経済界から2つの視点、つまり、コストと責任という言葉が、必ず出ます。これは、新しい制度対応が求められれば、それにはコストがかかるに決まっているわけです。ただ、ハイコストでは困るわけです。制度自体、市場に対する信頼性、財務情報に対する信頼性という非常に付加価値の高いものを提供するためにかかっているコストであって、これは社会が負担できる範囲だと私は思っています。
 
 もう1つは、責任という問題ですけれども、これはやはり法律家の視点と、我々会計監査の視点とは少し違っていると思います。我々会計を専門とする立場からは、責任があるなしにかかわらず、何が社会にとって最も適切な情報なのか、信頼に足るものなのか、それに対して果たせる役割は何なのかということを考えるわけですよ。それに対してどういう責任が伴うかというのは、これは法律上の規定によって問われるわけであって、最初から責任限定して、ここまでやればいいんだよと言うとなると、それはやはりプロの話ではないわけです。プロのプロたるゆえんは、必要とすべき手続きは何なのかということを、自分の責任に基づいてプロ意識をもって考えるべきだということです。先ほど弥永先生がおっしゃったように、この必要度云々が、責任がというのも、それはそれで大切だとは思いますが、最終的には、毅然たる態度をもって業務を遂行するのが、やはり会計プロフェッションだと私は思っていますから。ただ、言うのは簡単ですが、なかなか実態は難しいですから、その辺のことを考えて、実務指針的なもの、あるいは解釈指針的なものは、協会が適時適切につくっていくことになるだろうと思います。
 
 それから、当然ながらも、情報の開示の領域と言いますか、中身もどんどん拡大の一途をたどっていますから、これを今の段階で全部規定しろというほうが無理ですよね、したがって、それについても協会のほうでそういう対応をとっていくということが必要だと思います。これからの時代は、1回何かルールを決めたら、あるいは基準を決めたら事足れりというのではなくて、それをベースに適切な運用がなされること、そしてその前に、大前提として、やはり多くの方たちに監査教育をしておかなければいけないと思います。監査とは一体何なのか、そして、どういう役立ちを持っているのかということについて、正しい理解をしてもらうことが不可欠です。非常に失礼な言い方をしますけれども、企業の関係者の方であっても、正しく監査を理解できていない人がかなりいるのではないかという気がしますので、ぜひその点を強調したいと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。町田委員、どうぞ。
 
○町田委員
 今、社会コストの話が出ましたけれども、これは前回の監査部会のときからこの議論をずっとしているのですが、おそらく先進諸国の中でこのISA720をこれだけ議論している国はなくて、おそらくこれが一番大きな社会コストになっているのではないかなと思います。それと、本日、議論の焦点として、期待のギャップのことが言われていますが、期待のギャップというのも、どうやら社会的な認知を得てきたのだなと思いました。いまだにガバナンスコードが企業統治指針としか新聞紙上書かれない中で、先程の林田委員のご発言を踏まえると、今後、期待ギャップという言葉が読売新聞に載るのかなというふうに期待できそうです。
 
 私が、申し上げたいことは、期待ギャップとして一般に議論されるときは、必ず、社会の期待に対して監査実務が追いついていないという意味でのギャップが議論されるのが普通なのですけれども、先程からの議論されているのは、社会の過度な期待が起きてしまうとまずいという議論です。たしかに、期待ギャップの側面としては、そちらもあるのです。かつてアメリカで1960年代から1970年代に、監査人による不正への対応をめぐって、最初の期待ギャップの議論が顕在化した際には、両方の問題が認識されていました。つまり、監査人の側が、当時の監査実務では会計基準準拠性だけを見ていて、不正の発見は自分たちの責任ではないと主張していたのを、ギャップを埋めるために実務を改善することになったと。また、株主の側も、適正意見が表明されていれば監査人は不正がないことを100%保証してくれていると考えていたけれども、それは過度な期待だということで、期待を抑制しようという議論がありました。
 
 今、ここで議論されているのは、期待を抑制する議論の方にばかり焦点が置かれています。かつての期待ギャップを解消しようとする取組みにおいては、結論として、やはり監査報告書上で監査の限界などをきちんと説明していきましょう、ということであったわけです。
 
 今回の議論で不思議に思うのは、過度な期待、過度な期待とおっしゃっているのは企業側の方で、それに対して、このISA720の実務をやりたい、やりたいと言っているのは公認会計士の方だという、逆転現象が起きていることですね。
 
 いや、公認会計士の方がやりたいと言うのですから、まずはやっていただいて、仮に、どのような大きな責任であろうと被っていただいて、そして万が一にも、過度な期待に対応して訴訟が起きて、もう勘弁してほしい、ということになれば、そのときに責任の議論をして対応すればいいのではないでしょうか。やりたいと言っている会計士の方が、これは保証ではないので、あくまで財務諸表監査の一環で、多大な手続を必要としない中でやりたいのですよと言われるのですから、どうぞ、やっていただけばいいのではないかな、と思います。
 
 一方、企業の方に対しては、有価証券報告書も、これから先、いろいろな定性的な情報の開示が始まるわけですから、開示する前に、一度は、外部の監査人の目で見てもらった方がいいのではないでしょうか、自分たちにあまり過信されないほうがいいですよ、と申し上げたい。人の目を通して、そして、保証とまでは言わないのですけれども、その企業に深く関わっている専門家であり、かつ独立の立場にある監査人という人達を、どんどん活用して、より適切な情報開示をしていくという、そういった目線を持っていただきたいなと思います。
 
 今般の審議会の議論では、このISA720をカーブアウトするかのような議論ばかりをしている気がします。日本独自の議論も結構ですが、私は逆に、もし日本独自の議論をするのであれば、カーブアウトの議論ではなくて、日本は有価証券報告書の記述情報を世界に先駆けて保証をつけていきましょうと、その議論を始めませんか、ということを申し上げたいぐらいです。つまり、何か非常に後ろ向きの議論を積み重ねていくのではなくて、もう少し目線を上げて、将来日本の適正な財務報告というのはどういうものを目指していくのかということを考えていただきたいなというふうに思っています。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。関根先生、どうぞ。
 
○関根委員
 ありがとうございます。
 
 私も前回、出席できず、大変申しわけございませんでした。また、日本公認会計士協会、公認会計士に対するさまざまな期待をいただきまして、期待ギャップがあると言うとまた議論を起こしますが、期待をいただきましてありがとうございます。
 
 私自身は、ISA720について、先ほど住田委員から説明がありました、最初の経緯、背景のところをとても重く考えております。企業の開示書類は、財務諸表が中心と言われていますが、現在は、財務諸表、数値だけではあらわし切れないものが多くなってきているのではないか、財務諸表の監査を行っている公認会計士として、企業の財務報告、企業の開示等いろいろな報告が、利用者の方々にどう役立っているのかというのを常々考えているところがあります。私は、企業にかかわらず、私どもの活動というのは、最後は数字、お金に関係してくると考えており、非財務情報で表したことも、その後、その行動が最後には財務諸表に表されるとも考えております。そうなると、公認会計士として財務諸表の監査を行うこと重要な業務ではありますが、それとともに、それ以外の情報、何らかの企業の開示について、これらが利用者にとって役立ち、よりよいものになっていくために貢献していかなければいけないと思っております。
 
 そういう意味で、今回のISA720の改訂というのは、確かにここに書かれているように、記載が多様化している中で、私たちは追いついていっているのだろうかということを真摯に考えていかなければいけないと考えております。これは国際基準での議論ですが、日本も含む世界的な議論と思っております。現在、通読は行っておりますが、ここで説明がありますように、少し曖昧ではないかとも考えています。もちろん、当初は曖昧につくろうと思っていたわけではないと思いますが、随分前のことでしたので、当時は、今の実務、今の情報とは違っていたかもしれません。そういう中で、実務でばらけている点、多分日本でもそのような現象が起きているのではないかと思っていますが、これを改善していくために、せっかく国際基準としてISA720が作られたのであれば、これをベースにきちんと議論をしていくべきだと思っております。
 
 先ほどいろいろ期待をいただきました。私たちが頑張ってやるから大丈夫だというふうに思われている方ももしかしたらいらっしゃるのかもしれませんし、そういう気持ちではやっていきたいとは思うものの、財務諸表についても、期待と違うのではないかと言われている中、同じようなことを繰り返してはいけないということも考えています。日本においても開示を充実していこうと企業の方々も今、取り組んでいるところという話がありましたが、だからこそ、それを後押しできるような形で、私共も何らかの形でISA720をベースに行っていく必要があるのではないか、そういう意味で、私はこれを、議論することを強く進めたいと思っています。
 
 具体的な課題については、皆さんがもう既に述べられていて、確かにいろいろ検討すべき課題はあると思いますが、時間も押していると思いますので、私からは言及しないこととさせていただきます。
 
 ありがとうございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 多数の貴重なご意見を頂戴し、ありがとうございました。本件につきましては、ご指摘の中にもございましたように、極めて重要な基準だと考えております。特に、監査人が採るべき手続きの目的及び具体的な内容につきましては、本日ご議論いただいた諸論点について、実務関係者の間で積極的に検討を進めることが重要だと考えております。監査部会といたしましても、引き続き本監査基準、「その他の記載内容」に対する監査人の対応について、スピード感を持って議論を進めていきたいというふうに考えております。
 
 それでは、次に、前回監査部会においてご議論いただきました中間監査報告書、四半期レビュー報告書の記載内容の見直し及び会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会報告書の内容を踏まえた対応に基づいた監査基準、中間監査基準及び四半期レビュー基準の公開草案原案につきまして、事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。
 
 よろしくお願いします。
 
○野崎開示業務室長
 ありがとうございます。
 
 前回、基準改訂の案文をご説明させていただきまして、ご審議いただきました結果を踏まえまして、本日、各基準につきまして公開草案原案をお手元にお配りしております。
 
 まず、監査基準の改訂でございますけれども、「一 経緯」の4段落目に、今回の改訂の背景となる指摘を記載しておりますのでご紹介いたします。
 
 「監査人による監査に関する説明や情報提供への要請が高まる中、特に、限定付適正意見、意見不表明又は不適正意見の場合(・・・)における監査報告書の意見の根拠の区分に関し、財務諸表利用者の視点に立ったわかりやすく具体的な説明がなされていない事例があるのではないかとの指摘がなされている。また、監査人の守秘義務に関し、本来、監査人が財務諸表利用者に対して自ら行った監査に関する説明を行うことは、監査人の職責に含まれるものであり、監査人の守秘義務が解除される正当な理由に該当するが、そうした理解が関係者間に浸透していないため、監査人が財務諸表利用者に対して説明を行う上で制約になっているのではないかとの指摘もなされている」ということでございます。
 
 続きまして、「二 主な改訂点とその考え方」でございます。「1 監査報告書の意見の根拠の記載について」でございます。2ページ目のところでございますけれども、「特に限定付適正意見の場合に関し、なぜ不適正ではなく限定付適正意見と判断したのかについての説明が不十分な事例が見られるとの指摘がある」ところでございます。
 
 2段落目でございますけれども、「現行の監査基準では、意見の除外により限定付適正意見を表明する場合には、監査報告書の意見の根拠の区分において、除外した不適切な事項、それから、財務諸表に与えている影響を記載する中で、不適正ではなく限定付適正意見と判断した理由についても説明がなされていることを想定している。しかしながら、前述のような指摘も踏まえ、財務諸表利用者の視点に立ったわかりやすく具体的な説明の記載が求められるということから、監査基準上、意見の根拠の区分の記載事項として、除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響とともに、これらを踏まえて除外事項を付した限定付適正意見とした理由というものも記載しなければならないことを明確にすることとした」というふうに記載させていただいております。
 
 続きまして、「2 守秘義務」でございます。なぜ今改訂が必要なのかという背景の説明が、1段落目の2つ目の文章、「とりわけ」というところでございますけれども、「とりわけ、近年、財務諸表において会計上の見積りを含む項目が増え、これらに対する監査の重要性が高まっている中、具体的な監査上の対応や監査人の重要な判断に関する説明・情報提供の充実が要請されている」ということで、足元の状況を記載させていただいております。
 
 その上で、改訂のポイントとしまして、3ページ目の2段落目をごらんいただければと思いますけれども、「本来、守秘義務の対象は、企業の秘密に限られるものであるが、我が国においては、一般的に、企業に関する未公表の情報について、あらゆるものが守秘義務の対象になり得ると考えられる傾向がある」とのご指摘があります。「このため、監査基準における守秘義務の規定については、公認会計士法との整合を図るため、秘密を対象にするものであることを明確にすることとした」というふうに記載しております。
 
 また、守秘義務に関する対応につきましては、今回の監査基準の改訂で完結するものではなく、次の段落でございますけれども、「監査の目的に照らして守秘義務が解除される「正当な理由」の範囲については、監査人が監査報告書において除外事項や監査上の主要な検討事項を記載することによりもたらされる公共の利益と、それから当該記載による企業又は社会の不利益との比較衡量の上で決定すべきであり、今後、具体的な事例の積み重ねとともに関係者の間で共通の理解が確率されていくことが必要である」というふうに記載させていただいております。
 
 実施時期でございますけれども、こちらは来年の3月期決算にかかる財務諸表の監査から実施するということで、案をつくらせていただいております。
 
 実際の基準の改訂内容につきましては、4ページ目の一番下のところで、守秘義務のところの改訂案を見え消しでお示ししております。
 
 続きまして、10ページ目の報告基準、意見に関する除外のところにおきまして、意見の根拠の区分に記載すべき事項としまして、現行の「不適切な事項、及び財務諸表に与えている影響」に加えまして、「これらを踏まえて除外事項を付した限定付適正意見とした理由」というところを加えさせていただいております。
 
 下の五の監査範囲の制約も同様でございまして、意見の根拠の区分に記載すべき事項としまして、「実施できなかった監査手続、当該事実が影響する事項」に加えまして、「これらを踏まえて除外事項を付した限定付適正意見とした理由」というところを加えさせていただいております。
 
 なお、不適正意見や、意見不表明というような場合につきましては、現行の監査基準において既に理由の記載が明示的に求められておりますので、今回の改訂の対象にはなっておりませんが、こちらにつきましても、充実懇での議論を踏まえると、財務諸表利用者の視点に立ったわかりやすく具体的な説明が求められると考えているところでございます。
 
 続きまして、中間監査基準をごらんいただければと思います。こちらにつきましては、主な改訂点とその考え方において、3つお示ししておりまして、1点目が、監査人の意見を冒頭に記載する等の記載区分の変更でございます。2点目が、次のページでございますけれども、継続企業の前提に関する事項、3点目が意見の根拠の記載ということで、これは先ほどご説明した充実懇を踏まえた対応となっております。
 
 最後に、四半期レビュー基準でございますけれども、こちらも今お示しした中間監査基準と同様、同じく3つの事項について改訂案を作成しております。
 
 後ろの案文の8ページ目をごらんいただければと思いますけれども、「6 結論に関する除外」というところで、これも同様の修正としまして、結論の根拠の区分のところで、「修正すべき事項」と、「財務諸表に与えている影響」については、現行記載が求められているのですけれども、「財務諸表に与えている影響」については、「可能であれば」というような書きぶりになっております。今回追加しますのは、「これらの事項及び影響を踏まえて除外事項を付した限定付適正意見とした理由」の記載を新たに求める形で修文を作成しているところでございます。
 
 事務局からの説明は以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、ご質問・ご意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
 林先生、どうぞ。
 
○林委員
 2点あります。
 
 1つは、私も前回欠席しましたので、議論を踏まえていなくて的外れのところがあるかもしれないのですが、守秘義務のところでございまして、資料2-1の1ページ目と3ページ目に関係するのですけれども、まず1ページ目のところで、経緯の4段落目の中ほどですが、監査人の守秘義務に関し、本来、監査人が財務諸表利用者に対して自ら行った監査に関する説明を行うことは、監査人の職責に含まれ、注意義務が解除される正当な理由に該当すると書かれております。続きまして、3ページ目の実施時期等の直前の段落なのですけれども、1ページ目で確認した、監査に関する説明は正当な理由だという理解をスタートにしますと、この3ページ目に書かれている、守秘義務が解除される正当な理由の範囲について関係者の間で共通の理解が確立されていくことが必要という点がどうもしっくりきません。監査に関する説明は正当な理由であるという理解のもとで何が秘密に該当するのかを議論をして理解を確立していくことが必要である、という書きぶりにした方がよいのではないでしょうか。これをご検討いただければと思っております。
 
 もう1つは、今回の改正のポイントではないところを申し上げて恐縮なのですけれども、今回の改訂に合わせて資料を確認していて気になったところがありまして、継続企業の前提に関して、資料2-1の10ページの上から2行目になるのですけれども、継続企業の前提に関する経営者の評価を検討する、これは監査人の責任に関する記載事項なのですが、9ページの(3)経営者及び監査役等の責任の3行目では、経営者及び監査役等の責任として、継続企業の前提に関する評価を行い、必要な開示を行う責任があると書かれていますので、先ほど確認した監査人の責任も、経営者の評価を検討するだけでは足りなくて、評価及び開示を検討する、と書く必要があるのではないか考えます。この内容は実は前回の2018年7月の改訂で追加されましたので、そのときに申し上げるべきことだったと思うのですけれども、今回気がつきましたので申し上げます。
 
 それと合わせて、開示という用語のことが気になったので、全体について確認をしてみたのですが、11ページの一番上の、六、継続企業の前提という区分の中で、記載という用語が6回使われています。そのうち、六の1の3行目、真ん中、財務諸表に適切に記載、それから、六の2の3行目、財務諸表に適切に記載、次の4行目、当該不適切な記載、これらはおそらく開示という用語を用いるべきところだろうと理解しています。監査基準の中では、経営者が財務諸表に書くという場合は開示という用語を使っていて、監査人が監査報告書に書くという場合には記載という用語を使っているというふうに読めますので、これも合わせてこの機会にご検討いただければと思っております。
 
 私からは以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 非常に貴重なご指摘だと思います。こちらで引き取りさせていただいて、検討させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
 ほか、いかがでしょうか。
 
 松本先生、どうぞ。
 
○松本委員
 ありがとうございます。関西大学の松本です。
 
 2点ほど、確認のために申し上げたいのですけれども、四半期レビュー基準、資料2-3の8ページの6、結論に関する除外に関する部分です。これは、法令上の読み方はこうなのですということの確認なのですが、除外事項を書く場合、結論の根拠の区分に、修正すべき事項、可能であれば当該事項が四半期財務諸表に与える影響、及びこれらを踏まえて除外事項を付した限定付結論とした理由となっていますので、これらを踏まえての「これら」に影響額が必ず含まれると理解されますと、影響額を踏まえなければ除外事項を書かなくていいことになってしまうという解釈がなされないかどうかです。要するに、踏襲すべき事項として影響額が書かれたときだけ、可能であれば除外事項を付した限定付結論とした理由を書くというふうに理解すると、影響額を書くことが可能でなければ理由も書かなくていい、というふうに、誤った形で期待ギャップとして顕在化することを避けたいと思いますので、その解釈を議事録に残すための確認です。
 
 もう1点は、資料2-1の監査基準のほうの10ページです。不適正意見に関する部分なのですが、四、意見に関する除外、2のところで不適正意見に関する記載があるのですが、これも確認なのです。今回の改訂部分ではないのですけれども、財務諸表が不適正であるとした理由を監査報告書の意見の根拠の区分に書くことになっています。この場合、この理由の中には、当然、不適正であるというふうに判断したということは監査人の側に十分かつ適切な監査証拠が得られているということになりますので、その十分かつ適切な監査証拠に基づいた重要性と広範性を反映させた影響額を書くことも含んでいるというふうに、多分、監査基準委員会報告書の705号でも触れられていると思うのですけれども、それも期待ギャップが顕在化しないように、この理由の中にはできる限り影響額も含めて監査人が書くということを共通理解としていただければと思っています。
 
 伊豫田先生が部会長になられた後の、この企業会計審議会監査部会のキーワードは、監査人の利用者に対する監査に関する説明の質と量の向上と、その過程での監査役等のガバナンスを担う者との連携が、共通目的だと思っておりますので、ぜひ監査人の側からの説明はできるだけ質量ともに充実するような形にお願いできればと思っております。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 今ご質問いただいた点を含めまして、事務局のほうから少し返答をお願いします。
 
○野崎開示業務室長
 ご指摘ありがとうございます。
 
 まず、四半期のところの結論に関する除外の文章でございますけれども、根拠のところに、まず「修正すべき事項」というのがございます。その後に、「可能であれば当該事項が四半期財務諸表に与えている影響」という記載があるので、場合によっては、可能でなければその与える影響の記載がない場合もあり得るということなのですけれども、今回の趣旨というのは、最終的に限定付結論に至ったということのロジックを明確にしていただくという趣旨でございますので、仮にその与えている影響というものの記載が難しい場合でも、最終的に限定付結論に至った理由の記載が求められるものと考えております。
 
 あと、監査基準のほうの意見に関する除外について、不適正の理由の記載については、今、先生がおっしゃったような趣旨が包含されているものと我々は理解しております。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、ご意見いかがでしょうか。
 
 町田先生、どうぞ。
 
○町田委員
 ありがとうございます。
 
 今、松本先生からのご発言を受けて、事務局から回答がありました。議事録に残すというのは重要なことではあるのですけれども、正直、金融庁のホームページから審議会の議事録を毎回見に行っているというのは学者ぐらいしかいないようにも思いますので、議事録に残すだけでは足りないのではないかなと思います。
 
 そのことも含めて1点申し上げておくと、今回の限定付適正意見のところで、限定付適正意見とした理由を記載するように基準を改訂するということでした。これは、「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」の報告書、八田座長のもとでの報告書の議論を反映されたものだと思うのですが、そこでの議論というのは、ただ単に、従来は理由が十分に記載されていない事例があったというだけではなくて、限定付適正意見となる除外事項はあったものの、不適正意見や意見不表明にはならなかったというときの、その理由、つまり、除外事項としたものには重要性はあったものの、その事項には財務諸表全体にわたる広範性がなかったという点についても、何らかの説明が必要でしょうということであったはずです。
 
 別に、監査基準本文を修正するということまでは求めませんけれども、先ほどの松本先生の質問の点も含めて、前文のところできちんと残しておいていただかないと、一般の人や、後日、この問題を考える人たちは、議事録まで追いかけて確認することはまずありませんので。ですから、繰り返しになりますが、不適正意見のときに影響額は当然記載されるものだという話が松本先生のお話でしたし、私からは、限定付適正意見の場合には重要性はあるものの広範性がないということを説明すべきだ、ということなのですが、いずれについても、その除外した事項の中で記載されるということですから、その前提で、そうした影響額とか広範性がないということについては、監査基準条文本文自体の改訂はしていないけれども、当然に除外事項の中で記載されると考えられる、ということを前文のところに書いていただきたい、ということを申し上げておきたいと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。こちらで検討させていただきたいと思います。関根先生、どうぞ。
 
○関根委員
 ありがとうございます。こちらも前回出席できませんでしたので、皆様の議論と議事録は読ませていただきましたが、私が考えているところを少しお話しさせていただきたいと思います。
 
 2ページ目、まず監査基準ですが、前文のところの経緯と2ページ目にありますように、私どもは、現行の監査基準は、意見の除外により限定付意見を表明する場合には、監査報告書の意見の根拠の区分において「除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響」を記載する中で、不適正意見ではなく、限定付適正意見と判断した理由についても説明がなされる、ここで、理由ということは広範ということも含めてであると理解しており、私ども、私だけではなくて、周りの監査人の方々も、それは、当然だとは考えていると理解しております。
 
 しかしながら、他方で、私ども自身がそう考えていて、そのつもりで書いていても、必ずしも読み手にはそう伝わっていないということは、この会議の中でももしかしたらあるかもしれませんし、常にあることなので、これは真摯に受け止めて、しっかり書くようにしなければならないと思っております。先ほども話が出ました、この議論のもとになりました「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」においても、私どものメンバーが参加し、その後、会員に向けて副会長通知という形でもしっかりと説明責任を果たしていく必要があると伝えています。ですので、監査基準の本文まで直す必要があるのかとは思ってもいたのですが、前文などでもこうした経緯を書いていただき、今まで以上に気を使ってきちんと書くようにしましょうという趣旨と受け止めております。
 
 また、この懇談会では、説明責任という点も議論されました。説明責任の議論においては、守秘義務との関係の問題を考えていなければならず、守秘義務を守っているからこそ監査をしっかりできるという点も考えておく必要があります。今回の改訂案では、秘密と事項で言葉に違いがあるため整合を図るということですが、私自身はあまり思ってはいなかったものの、確かにここに書かれているように言葉の違いから少し広くとられ過ぎているのではないかという指摘があるとなると、それを秘密に変えることが全てを解決するわけではないと思いますし、あらゆるものが守秘義務の対象になり得ると考えられる傾向があると全ての人がそう思っているとは思いませんが、そういう指摘があるのは真摯に受け止めて考えていきたいと思っております。
 
 また、なお書きの最後のところに書いていただいている点、具体的な事例の積み重ねとともに関係者の間で共通の理解が確立されていくこと、これが一番重要なことかと思っております。実は、私どもは、この懇談会の後に、自らのこととしてまず論点を整理しようということで、日本公認会計士協会の内部でプロジェクトチームを立ち上げております。ただ、私どもだけがつくって、皆さんのコンセンサスや理解を得ないとまた同様の話になりますので、例えばこういう場のように、いろいろなステークホルダーの方がいらっしゃる中でしっかりと具体的に議論して、よりよい実務を進めていきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 公認会計士協会の今後の取組みにはぜひ期待したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 さまざまなご意見を頂戴してまいりました。今回の公開草案につきましては、ほぼほぼ皆様の合意が得られたのではないかなと考えております。私どもとしましては、今回のこの公開草案の原案にご意見をいただいた所要の修正を行った上で、早急にパブリックコメントに付すことにしたいというふうに思っております。具体的な文言の修正等につきましては、当方にご一任いただくということにいたしまして、ご異議ございませんでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)

 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。それでは、監査基準等の改訂に関する今後のスケジュールにつきまして、事務局のほうから説明をお願いいたします。
 
○野崎開示業務室長
 本日ご審議いただきました公開草案原案につきましては、部会長ともご相談の上、所要の修正を行い、委員の皆様に送付させていただくとともに、速やかにパブリックコメントに付させていただき、約1カ月間のコメントを募集したいと思います。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 なお、先ほど申し上げましたとおり、本日ご議論いただきました「その他の記載内容」に対する監査人の対応につきましては、さらに議論を深めていく必要があると考えております。私ども監査部会といたしましては、先ほどご承認いただいた監査基準等の改訂を行った上で、引き続きスピード感を持って議論を進めていきたい、議論を始めていきたいというふうに思っております。今後ともご協力どうぞよろしくお願いいたします。
 
 最後に、次回の日程等につきまして、事務局のほうから説明をお願いいたします。
 
○野崎開示業務室長
 次回の日程につきましては、後ほど事務局から改めてご連絡させていただきたいと思います。
 
○伊豫田部会長
 それでは、以上をもちまして本日の議事を終了させていただきます。本日は、お足元の悪い中、またお忙しいところご参集いただきましてありがとうございました。これにて散会させていただきます。ありがとうございました。

 
以上
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金融庁Tel 03-3506-6000(代表)(内線3845、3663)

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