企業会計審議会第45回監査部会議事録

 

1.日時:令和元年11月12日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室
 
 
○伊豫田部会長
 10時まで幾分時間を残しておりますが、委員の先生方皆様おそろいのようでございますので、ただいまから企業会計審議会第45回監査部会を開催いたします。皆様にはご多忙の中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 まず、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則に則りまして、監査部会の審議につき公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)

 
○伊豫田部会長
 異議なしと認めます。ご了解いただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。ありがとうございました。
 
 本日は、参考人として、日本公認会計士協会の小倉加奈子副会長にご出席いただいております。
 
○小倉参考人
 よろしくお願いいたします。
 
○伊豫田部会長
 よろしくお願いします。
 
 議事に入ります前に、委員の異動がございましたので、事務局からご紹介させていただきます。よろしくお願いします。
 
○野崎開示業務室長
 事務局を務めております開示業務室長の野崎と申します。よろしくお願いします。
 
 8月28日付でご就任されました手塚正彦臨時委員でございます。
 
○手塚委員
 手塚でございます。よろしくお願いいたします。
 
○野崎開示業務室長
 なお、現時点の監査部会の委員は、お手元の名簿でご確認いただければと思います。
 
○伊豫田部会長
 それでは、討議に入ります。
 
 本日は、前回の監査部会でご議論いただきました「その他の記載内容」に関する監査人の対応につきまして、引き続きご議論いただきたいと思います。
 
 初め、事務局より「その他の記載内容」に関する主な論点につきまして、続いて、日本公認会計士協会より、国際監査基準(ISA720)の監査実務の変更点につきましてご説明いただいた後、皆様にご議論いただきたいと考えております。
 
 それでは、まず事務局からご説明よろしくお願いいたします。
 
○野崎開示業務室長
 それでは、事務局から資料1に沿ってご説明申し上げます。

 「その他の記載内容」に関する監査人の対応につきましては、前回5月21日の監査部会に至るまで複数回にわたりご議論いただいているところでございます。今回は、これまでのご議論を踏まえて、主な論点についてご審議いただければと思います。
 
 まず、「1.「その他の記載内容」に対する監査人の対応のあり方」でございますけれども、そこでは、意義や効果について記載しております。「その他の記載内容」というのは、いわゆる記述情報など財務諸表と監査報告書以外の記載内容を指すものでございますが、こうした「その他の記載内容」についての開示の充実が進む中、監査人はこれらについて、財務諸表の表示及び監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違がないか等について検討を行い、その結果を監査報告書に記載するということは、監査の対象とした財務諸表の信頼性を確保するという効果が期待されているのではないかということを掲げております。
 
 また、3月28日の監査部会においてお示ししたところでございますけれども、現行の監査基準上、財務諸表の表示と「その他の記載内容」との重要な相違は監査報告書の追記情報の一つと掲げられておりまして、実務においても、監査人は「その他の記載内容」を通読しているところでございます。こうした中、上記の監査人による検討結果を監査報告書に明確に記載するということは、「その他の記載内容」に対する監査人の手続やその結果などについての明確化が図られるのではないかということを掲げております。ここでは、意義、効果について、以上2点を掲げておりますが、これらの点、及び他に留意すべき点などについてご議論いただければと存じます。
 
 次に、「2.「その他の記載内容」の定義・監査報告書に記載を求める対象範囲」でございます。
 
 こちらでは、まず、先ほど触れた定義としまして、「その他の記載内容」とは、「監査した財務諸表を含む開示書類における財務諸表及び監査報告書以外の記載内容をいう」ことを記載しております。
 
 2つ目の丸では、金商法上の有価証券報告書及び有価証券届出書を対象とすることについて、3つ目の丸では、会社法上の事業報告書を対象とすることについて記載してございます。こちらについて、ご意見を賜れればと存じます。
 
 おめくりいただきまして、2ページ目下段でございます。「3.「その他の記載内容」に対する監査人の手続」につきましては、後ほど公認会計士協会より詳しくご説明いただければと考えておりますけれども、こちらの紙では、まず最初の2つの丸で、現行の監査基準の取扱い、具体的には、監査基準委員会報告書720のポイントを記載してございます。まず、監査人は「その他の記載内容」を通読し、3ページ目でございます、財務諸表との重要な相違を識別した場合は、財務諸表又は「その他の記載内容」の修正が必要かどうかを判断しなければならない。監査報告書日より前に入手した「その他の記載内容」における重要な相違を経営者が修正しない場合は、監査役等に当該事項を報告するとともに、監査報告書に重要な相違を追記情報として記載する等の対応が求められております。一方、監査報告書日以後に入手した場合は、監査報告書への記載はなされないとされているところでございます。
 
 今後の取扱いにつきまして、3ページ目の2つ目の丸で記載してございます。まず、監査人は、「その他の記載内容」を通読し、「その他の記載内容」と財務諸表の表示及び「監査人が監査の過程で得た知識」との間に重要な相違があるか否かについて検討を行うことが考えられるが、どうでしょうかということでございます。
 
 ここでいう「監査の過程で得た知識」には、監査において入手した監査証拠と、それから、監査意見の形成に向けて考慮した事項というものが含まれるところでございますけれども、「その他の記載内容」の通読・検討に当たって、改めて新たな証拠の入手が求められるということではないと整理できるかどうかということでございます。
 
 以上、国際監査基準(ISA)720をベースとした整理を記載しておりますけれども、こちらについてご確認をいただければと思います。
 
 なお、通読に際しましては、監査人が監査の過程で得た知識に関連しない内容につきましても、監査人は重要な誤りの兆候については注意を払うことが考えられるという点も記載しております。
 
 そして、通読・検討の結果、重要な相違等を識別した場合には、経営者及び監査役等と協議を行うなど追加的な手続を実施する場合があると考えられまして、このような手続を実施しても、「その他の記載内容」における重要な誤りの修正に経営者が同意しない場合には、監査報告書にその旨及びその内容を記載するなどの対応が考えられるがどうかと記載させていただいております。
 
 続きまして、「4.監査報告書における「その他の記載内容」に係る記載の位置付け」でございます。こちらについて、現行の監査基準では、追記情報での記載が求められており、このような監査意見とは明確に区別された情報の提供という位置付けは、従来と同様と考えておりまして、監査人は「その他の記載内容」に対して意見を表明するものではないと整理することができると考えられるがどうかと記載させていただいております。

 最後、4ページ目でございます。監査報告書の記載につきましては、監査意見とは別の独立した区分を設けて、対象となる「その他の記載内容」や新たな枠組みのもとで要求される「その他の記載内容」の通読・検討・報告に関する監査人の責任や手続、それから、監査人が報告すべき事項の有無、報告すべき事項がある場合にはその内容といったことを記載していただくことが考えられるとしております。
 
 また、監査人が財務諸表について監査意見を表明しない場合、すなわち、重要な監査手続が実施できず、かつその範囲が広範で、財務諸表全体に対する意見表明の基礎が得られなかった場合、このような場合においては、「その他の記載内容」に関する言及も含めて、実施した監査について、より詳細な情報を提供してしまうと意見不表明としての趣旨が損なわれて、利用者に誤ったメッセージが伝わるおそれがあるということも踏まえまして、「その他の記載内容」については、記載しないこととしてはどうかとしております。
 
 「6.経営者・監査役等の対応」につきましては、監査人が重要な相違を識別した場合には、経営者は監査人との協議に応じ、必要があれば適切に修正すること、監査役等においても経営者に対して修正するよう積極的に促していくことが期待される旨を記載させていただいております。
 
 最後に、適用時期ですけれども、一例としまして、例えば、監査上の主要な検討事項が全面適用される2021年3月期の翌年というのを一案として記載させていただいておりますが、こちらについてもご議論いただければと思います。
 
 事務局からは以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 次に、手塚委員、小倉参考人よりご説明をお願いいたします。
 
○手塚委員
 日本公認会計士協会の手塚でございます。私のほうから冒頭、少しお話をさせていただいて、具体的な説明は、お手元の資料に基づいて小倉から説明を差し上げます。
 
 今回の議論につきましては、企業の持続的な価値創造に関して評価するためには、伝統的な財務情報だけでは不十分であるという認識のもとに、昨今、投資家に対して、「その他の記載内容」の充実が進められてきたと理解をしています。「その他の記載内容」の中には、当然のことながら、財務諸表の数値と関連する部分もございますので、その観点から、監査人に対しても一定の役割が求められており、こうした議論が行われていると理解しております。私どもとしては、期待を受けて、その職責をしっかり果たしたいと考えておりますが、具体的な監査の実務について、非常に重要な論点であると思いますので、資料に基づいて小倉からご説明させていただきます。よろしくお願いします。
 
○小倉参考人
 小倉でございます。それでは、お手元の資料に基づきまして、720の改訂による監査実務の変更点についてご説明をさせていただきます。
 
 まず、1ページをご覧ください。国際監査基準が監査人に「その他の記載内容」を通読し、考慮することを要求する背景は、上段にありますとおり、財務諸表または監査人が監査の過程で得た知識と「その他の記載内容」が著しく相違する場合は、財務諸表に重要な虚偽表示があること、または、「その他の記載内容」に重要な虚偽記載があることを示唆している可能性があり、いずれも財務諸表及びその監査報告書の信頼性を損なう可能性があるためです。
 
 また、会計士が遵守しなければならない倫理規則の基本原則である誠実性の原則は、監査人が重要な虚偽、または誤解を招く陳述が含まれる情報を認識しながら、その作成や開示に関与してはならないと定めております。この報告は、当該原則の遵守に資するものであります。
 
 2ページをご覧ください。監査実務における主な変更点ですが、まずは、現行のISA720と変わらない点を2点挙げています。
 
 1点目は、監査人はその他の記載内容について、監査意見、またはいかなる保証の結論も表明するわけではないという点です。2点目は、財務諸表に対する監査意見を形成するために要求される以上の監査証拠の入手を監査人に要求するものではないという点です。ただし、通読の過程で虚偽記載の可能性がある場合には、追加で記載の裏づけを入手することはあり得るとされています。
 
 3ページをご覧ください。こちらは、改訂版により変わる点として3点示しています。
 
 1点目は、監査報告書における記載です。監査報告書に別の区分を設けて、「その他の記載内容」を特定し、「その他の記載内容」に関する監査人の責任や作業の結果を記載します。2点目は、監査人に対する要求事項として、「その他の記載内容」と監査人が監査の過程で得た知識の間に重要な相違があるかどうかを考慮することが求められる点です。3点目も監査人に対する要求事項として、財務諸表、または監査人が監査の過程で得た知識に関連しない「その他の記載内容」について、重要な虚偽記載があると思われる兆候について注意を払うことが求められる点です。この重要な虚偽記載には、財務諸表の利用者が判断を誤るような必要な情報の除外、または曖昧にすることも含まれるとされています。
 
 4ページをご覧ください。ISA720改訂版による主な監査実務をご説明いたします。

 まず、「その他の記載内容」の入手前の監査実務です。経営者との協議により年次報告書を構成する文書、発行方法及び発行時期の予定を特定します。これはISA720が企業の年次報告書に含まれる「その他の記載内容」に関する監査人の責任を取り扱うものであるためです。年次報告書は、法令等により経営者が通常、年次で作成する単一又は複数の文書であり、企業の事業並びに財務諸表に記載されている経営成績及び財政状態に関する情報を企業の所有者または同様の利害関係者に提供することを目的としているものをいいます。この年次報告書を構成する文書の最終版を適時に、または、可能であれば監査報告書より前に入手するために適切な調整を行います。特定された文書の一部、または全部を監査報告書までに入手できない場合には、経営者に対し、最終版の提供が可能となった時点で監査人に提供する旨を経営者確認書に含めるように要請いたします。現行720では、「監査人はその他の記載内容の一部を監査報告書日の前に入手できない場合には、入手後速やかに通読しなければならない」とされていました。
 
 5ページをご覧ください。「その他の記載内容」を入手した後の監査実務を説明いたします。監査人は、「その他の記載内容」を通読し、次の事項を実施いたします。

 まず1点目は、「その他の記載内容」と財務諸表との間に重要な相違があるかどうかを考慮します。具体的な手続としては、財務諸表と「その他の記載内容」の整合性を評価するため、例えば、「その他の記載内容」の金額と財務諸表の金額を比較するという手続が挙げられます。ほかにも記載のとおり、財務諸表との調整を検討するといった手続が挙げられます。
 
 6ページにお進みください。2点目は、「その他の記載内容」と監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかを考慮します。監査人が監査の過程で得た知識と関連する金額又は項目の例は、表に記載のとおりです。生産量、受注量または販売量、企業の内部統制、減損テストや継続企業の前提の評価で監査人が考慮した事業の予測や将来キャッシュ・フロー等でございます。
 
 具体的な手続としては、「その他の記載内容」と監査人が監査において入手した監査証拠に対する記憶、すなわち、認識と照らし合わせるというものが挙げられます。経験豊富で精通している監査人ほど、このような監査人の認識との照らし合わせで考慮ができるとされています。このほか、構成単位の監査人への質問が挙げられています。
 
 最後は、財務諸表または監査の過程で得た知識に関連しない「その他の記載内容」について、重要な虚偽記載があると思われる兆候に注意を払うことです。具体的には、一般的な知識との相違や「その他の記載内容」内の不整合に注意を払って記載事項を通読することが挙げられます。その結果、重要な相違があると思われる場合には、経営者に「その他の記載内容」の裏づけの提供を要求する場合があるとされています。この3点目の手続の深度について、各監査人が難しいと考えるところではないかと思います。
 
 7ページをご覧ください。先ほど改訂の変更点の1つ目でご説明したとおり、監査報告書に記載を行うことになります。こちらは、「その他の記載内容」の最終版を監査報告書日までに入手し、「その他の記載内容」に重要な虚偽記載を識別していない場合の記載例です。最終段落に、「当監査法人は、その他の記載内容に関して報告すべき事項はない」旨を記載いたします。
 
 8ページをご覧ください。こちらは上場企業で「その他の記載内容」の最終版を監査報告日現在で入手していない場合の記載例です。先ほどの最終段落の記載はなくなり、3段落目に、「その他の記載内容はこの監査報告書の日付以後に提供されることが予定されている」ことが記載されます。また、監査人の責任の段落に、「通読し、重要な虚偽記載があると判断した場合に監査役等に報告することが求められている」旨の記載をします。なお、非上場会社の場合は、3段落目の記載は求められていません。
 
 9ページをご覧ください。こちらはISA720改訂版を会社法の事業報告に適用する場合の検討事項であり、これは「その他の記載内容」の最終版の入手に関するものです。会社法では、事業報告は監査役会等の監査対象になっています。
 
 こちらの日付は例示ですが、会計監査人の監査報告書日が5月20日、監査役会の監査報告書日が5月24日というケースを想定しています。平成27年3月期の会社法監査に関する公認会計士協会の実態調査では、この間の日にちが3.3日となっていました。ISA720改訂版には、認められた権限を持つ者が承認したものが「その他の記載内容」の最終版となるというガイダンスがあります。会社法の事業報告の記載内容について、監査役会の監査報告書日までに追加の記載が入るケースなどを想定すると、会計監査人の監査報告書日時点では最終版の事業報告は入手していないことになります。最終版を入手していない場合、監査報告書の記載文例が、先ほどご説明の8ページのものになり、株主にとって有用な報告かどうかという論点が生じるものと考えます。
 
 10ページをご覧ください。事業報告の最終版を会計監査人の監査報告書日までに入手するためには、会計監査人の監査報告書日を監査役会の監査報告書日に近づけるという実務上の解決策が考えられます。実務上は既に両者が近接している、または一致しているケースも見られております。ただし、個社の監査役会が会計監査人の監査報告書を入手した後に監査の方法及び結果の相当性の評価に関する期間を確保したいというようなニーズがある場合には、課題があるものと考えております。
 
 11ページをご覧ください。監査基準委員会報告720の改訂版適用に向けての課題です。特に、監査人側の課題として、2021年3月期から監査上の主要な検討事項の開示が始まることへの実務上の負荷が大変大きいこと、また、現行の監査基準委員会報告720からの改訂により実施すべき手続を周知する必要があることから、公認会計士協会としては、2022年3月期からの適用をお願いしたいと考えております。
 
 最後に、12ページは、以前の監査部会でも議論が出ていましたが、ISA720改訂版を既に適用したUKの適用状況に関するFRCの検査状況に関する報告書の抜粋です。ここでは、監査手続の内容、範囲、監査品質に監査法人、監査チーム間でばらつきがあったとされています。このようなばらつきが生じないようにするため、監査人への研修を通じた周知を十分に行うためにも、準備に十分な期間をいただきたいと考えております。
 
 ご説明は以上となります。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見をいただければと思います。よろしくお願いします。
 
 水口委員、どうぞ。
 
○水口委員
 ありがとうございます。ご説明をいただき、いろいろ参考になりました。ご説明も踏まえて、意見を述べさせていただきます。
 
 監査人が「その他の記載内容」について、財務諸表の表示及び監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違がないかについて通読・検討を行って、監査人の検討の結果を監査報告書に記載することは、監査の対象とした財務諸表の信頼性、ひいては、監査の質の観点からも有用な情報を提供することになると考えております。
 
 従来から監査人は、会計上の見積りに関する経営者の判断を反映した仮定の妥当性について検討しているわけです。こうした会計上の見積りのベースにある仮定は、経営者の認識する事業環境、経営戦略などと整合的であるべきだと思います。
 
 監査人は「その他の記載内容」に対して保証を提供するわけではなくても、既存の監査プロセスの中でも経営者が認識する事業環境や志向する経営戦略などと会計上の見積りに関する仮定との整合性を頭に入れて、財務諸表と「その他の記載内容」を含めて監査報告書を通読・検討していると認識しておりますし、そうしているということを期待しております。
 
 今は「その他の記載内容」の充実が図られている局面であることに加えて、被監査会社を取り巻く事業環境については、将来にわたる不確実性が高まっている中での会計上の見積りのあり方などを考察するに際しても、監査人が「その他の記述内容」を財務諸表と照らし合わせて通読・検討するプロセスを経ても解消されない相違を発見した場合、その結果を監査報告書に記載することは大いに意義があると思います。
 
 ちなみに、英国の会社法、また、EU指令の実態を踏まえても、グローバルな視点からの監査の質への期待に資する方向性を視野に入れることが妥当だと考えます。
 
 適用時期については、いろいろご意見もあろうかと思いますが、既に存在している監査人のプラクティスでもあると思うので、当該プロセスの結果の監査報告書における記載を求めても、適用前の準備に大いに時間がかかるという性格のものではないと思います。
 
 また、適用対象となる報告書は、有価証券報告書のみとするのではなくて、同質の対応が行われることを期待しておりますところの事業報告書も対象とすることが妥当であると考えております。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございます。
 
 ほかにいかがでしょうか。
 
 今給黎委員、どうぞ。
 
○今給黎委員
 説明ありがとうございます。日立製作所の今給黎でございます。企業の作成者として何点かコメントさせていただきます。
 
 「その他の記載内容」につきましては、有価証券報告書、事業報告ともに過去情報、将来情報、定量情報、定性情報など、記載は非常に多岐にわたっておりまして、今回の改訂論点につきましても、金商法と会社法の我が国の二元制度での新たな負担感、リスク懸念というのはございます。しかしながら、今でも現状の年度末の監査手続自体につきましては、監査人とのドラフト段階からの書類のやり取りも含めまして、並行して一体で実施されておりますし、現在の監基報720の手続自体も、実務に粛々と取り込まれて実施されていると思います。

 また、近年、三様監査の取組みなどでリアルなリスク共有と申しますか、監査人との期中のコミュニケーションの頻度も非常に増えております。したがいまして、今回のご議論で、マインドのリセットは必要になるかと思いますけれども、全体の想定される感触といたしましては、現行の日程面を含めて、現在の監基報720のプロセスの延長線上で、クライアントの現場に精通した高度な知見を持った監査人やサイナーの方々が、read and considerを行うということであれば、新たな監査証拠の入手も基本的には求められないであろうということでもございますので、監査の現場でのギラギラした監査工数の増加云々という話も含めまして、新たな混乱が生じるといったようなことにはならないのではないかというふうに認識しております。
 
 あわせて、作成者といたしましては、最近の非財務も含めた開示の充実の議論がございます。開示府令も改正されて、金融庁様からも「有価証券報告書はリラックスして作成されたし」といったようなガイドをいただいているところでございますので、企業の開示充実の拡大に向けた前向きなモチベーションが萎縮することのないように、ぜひとも私どもの不安を解消していただけるようなご議論をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。
 
 弥永委員。
 
○弥永委員
 ありがとうございます。

 3点ほど発言させていただきたいと思います。第1に、先ほど小倉参考人からご指摘があった日程の問題ですが、今給黎委員がおっしゃったように、既に監基報720がある以上は、この日程の問題はさほど深刻な問題ではないのではないかと一見思えるところです。平成17年会社法以前には、当時の営業報告書は、会計監査人に他の計算書類と同時に提供されていたはずです。そうすると、平成17年会社法のもとでの実務はどうなっているか私は存じ上げないのですけれども、この日程の問題は深刻なハードルになるということはないと考えたほうがよいのではないでしょうか。

 そして、監査人の方々が、財務諸表、計算書類についても、確定版を受け取ってから監査されているのかどうかを考えてみますと、途中で変わる可能性がある、修正が入るという可能性があれば確定版ではないというのであれば、それは計算書類であっても同じではないかという気がいたすところです。
 
 とはいえ、被監査会社における事業報告作成のタイミング、実際に、事業報告は計算書類よりも後に作成されているという実務があるというのであれば、監査を受ける会社の準備のために適用時期を1年延ばすという選択肢はあるのかもしれないという印象は受けました。
 
 第2に、これは先取りしてしまったのですけれども、事業報告が本当に現在の監基報720のもとで、あるいは、会社計算規則のもとで、監査人の追記情報の対象に入ってくる開示書類と言えるのかということについては、若干疑義はあるのではないかと思われるところです。改訂前の国際監査基準、そして、現在の監基報720のもとでは、その他の記載内容は監査した財務諸表及び監査報告書が含まれる開示書類に含まれる情報と定義されています。ところが、計算書類と事業報告とは別個の開示書類であると整理されているとみることもできそうです。また、会社計算規則のもとでは、計算書類の表示とその他の記載内容との重要な相違は会計監査人の会計監査報告に記載すべき事項として列挙されていないという実態があるわけです。このような状況のもとで、今回、明示的に監査基準または監基報の中でその他の記載内容の定義を若干変更し、事業報告に含まれる情報もその他の記載内容にあたることが明確化されれば、監査人が事業報告に含まれる情報に対応していただける可能性がより高まる、対応する必要があることを監査人に周知させることができるという点で、今回の提案は非常によいことなのではないか。これまでは事業報告が対象に入るかどうかにつき、わずかであっても疑義があったのに対して、今後は疑義が払拭されるという意味で、これまでの議論、今日最初に事務局からご紹介いただいたものには賛成したいと思います。
 
 3点目ですが、これは会計監査人の方にとって非常に重大な問題であり、かつ、それは反射的に、作成者にとっても影響があるというのが、重要な虚偽記載の兆候があると判断したときにどの程度のことを監査人はしなければならないのかという点です。ごくまれなケースであるにしても、その局面で監査人が責任を負うということになると、監査手続と呼ぶべきかはともかく、何らかの手続を行わなければならないということになる可能性があります。会社法の観点からは、意見を表明するものではないというだけでは会社法429条2項の責任の発生余地がなくなるわけではなく、会社法上は、あくまでも、監査報告書、すなわち、会計監査報告に記載すべき事項について虚偽記載があれば、会計監査人は責任を負う可能性があります。小倉参考人もおっしゃっていましたように、兆候がある場合に監査人は何をしなければならないのか、また、兆候がないときは追加的な手続は求められないのだということを、明確化することが会計監査人の責任を適切な範囲におさめ、かつ、被監査会社にとってもよいことになるのではないかと感じております。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ほか、いかがでしょうか。
 
 大瀧委員、どうぞ。
 
○大瀧委員
 ありがとうございます。利用者の立場から幾つかコメントをしたいと思います。
 
 まず、範囲についてですけれども、会社法の事業報告につきましても対象としていただきたいと考えております。理由は2つございます。1つは、本日のご説明のとおり、現在の監査基準においても、「その他の記載内容」に重要な差異がある場合には、監査報告書に追記することになっているということで、今回の議論はその延長線上にあるということです。
 
 そしてもう一点が、事業報告と有価証券報告書の一体的開示が模索されている中で、記載する内容は共通する部分が多いと思います。また、主な借り入れ先等の情報は、事業報告に記載があることをもって有価証券報告書の記載が簡素化されたという件もございます。こういったことを踏まえて、事業報告も対象としていただきたいと考えております。
 
 続いて、資料1の監査人の手続のところで、利用者としましては、特に財務諸表の表示や監査人が監査の過程で得た知識に関連しない内容についても、監査人は重要な誤りの兆候について注意を払うことが考えられるという点についても同意したいと思います。
 
 続きまして、適用時期についてですけれども、ご説明があったとおり、実務上の負荷が重いというご説明がありまして、そのことは十分考慮する必要があるかと思います。ただし、利用者の立場としましては、KAMに遅れて段階的な適用ということに関しては、利用者の利便性を損なう可能性があると思っておりますので、可能であれば、KAMの適用と合わせていただきたいと考えております。
 
 それから、最後に1点、確認させていただきたい事項がございます。これまでの説明でも、「その他の記載内容」と財務諸表との間に重要な差異があるということで、ともに記載されていることが前提になっているように思えるわけですけれども、「その他の記載内容」において、記載すべき重要な事項が省略され、記載されていない場合においても重要な差異があるということで、記載すべき事項の対象となるかという点を確認したく存じます。
 
 以上になります。
 
○野崎開示業務室長
 今のご指摘ですけれども、記載すべき事項が欠けていることについても対象になると理解しております。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございます。
 
 ほか、いかがでしょうか。
 
 初川委員、お願いします。
 
○初川委員
 ありがとうございます。私は、今回議論しております監査人の「その他の記載内容」への関与、それから、その結果の監査報告書への記載に関する要求は、企業情報の信頼性の確保に貢献するという観点から基本的に賛成の立場でございます。
 
 対象範囲につきましては、有価証券報告書及び有価証券届出書だけでなく、会社法上の事業報告も含めることが望ましいと考えております。この場合、本日いただきました資料の論点にもありますように、事業報告が最終化されるタイミングという問題もあり、記載内容の相違に関するコメントが監査報告書に含まれないということになると制度の実効性を失うことにもなりかねないと思います。この点につきましては、法的な手当をすることも一案だとは思いまが、仮にそれがなかったとしても、実務的な対応は可能なのではないかと思います。今回の改訂の趣旨を踏まえて、今後、監査人と経営者の間の協議がますます深化していくと思いますし、監査報告書日前に「その他の記載内容」を入手できるよう、いろいろな調整、努力が為されることを期待しているところでございます。経営者におきましても、監査人の監査報告書に「その他の記載内容は監査報告書の日付以後に提供されることが予定されている」と記載されること自体が企業情報開示の姿勢に関する評価にもつながってくると思いますので、このあたりの実務は今後、良い方向に変わってくると私は期待しております。
 
 それから、対象範囲以外の点についてですけれども、今日いただきました資料の中で、「その他の記載内容の通読・検討に当たって、新たな監査証拠の入手は求めない」とありますが、これはこれでよろしいと思います。
 
 「財務諸表や監査人が得た知識に関連しない内容についても、重要な誤りの兆候に注意を払うことを要求する」、これも私は賛成でございます。
 
 監査報告書への記載内容ですけれども、これも本日配付されました資料の中で提案をいただいている内容に私は賛成でございます。
 
 それから、「意見不表明の場合、その他の記載内容について記載しない」、これでよろしいのではないかと思います。
 
 最後に、適用時期ですけれども、私は率直なところ、2021年3月からの適用でよろしいのではないかと思いますが、企業、それから、監査人の双方に準備期間が必要ということであれば、2022年3月期ということでもよろしいのではないかと考えております。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、いかがでしょうか。
 
 岡田委員、お願いします。
 
○岡田委員
 今回議論されている「その他の記載内容」ですが、金商法上の有価証券報告書の監査報告書に記載することは、当然するべきと思いますが、やはり会社法上の事業報告書がネックになります。事業報告書が会計監査人の監査報告書に間に合うかどうかは、先ほどから議論になっているところと思います。事業報告書の最終版入手前に監査報告書を出す場合の取扱いとしては、先ほどの会計士協会からの資料では、8ページにあるように「予定されている」という記載をするということと理解しましたが、その記載を投資家あるいは株主が見た場合に、その結果が開示されないとおかしいのではないか。つまり、予定されているということだけではなく、重大な相違が発見された場合には開示する、あるいは、必要であれば監査報告書も訂正するという形でこれを担保しておく必要があるのではないかと感じます。
 
 それから、最終版ということが議論されていますが、実際に最終版にしたいと思って会計監査人に渡しても、「その他の記載内容」が最終版になり、今後一切訂正がないということはあり得ないのではないか。つまり、細かい表現や、数字も財務情報と関係ないところで変わる可能性は当然あります。その可能性があるために最終版ではないこととなり、それゆえに「最終版を入手していない」とするのが果たして妥当なのかという気もします。実務上は、財務諸表作成の段階だけでなく、事業報告書を提出した後に、注記も含めて様々な間違いが見つかりますが、その重要性に応じて監査法人は最終版に反映させるかどうか判断しています。ましてや文章表現に至っては、重要な相違ではないことがほとんどだと思いますので、ここはあまり厳密に捉える必要はないのではないかと思います。
 
 それから、先ほど最終版を検討する時間について少しでも余裕をとるために、会計監査人の監査報告を監査役等へ報告する日数を縮めればいいのではないかという提案をされたと理解していますが、これは受け入れがたいと考えます。監査役等として1日で会計監査人の監査の相当性についての監査をすることになります。実際問題としては、「その他の記載内容」が入ってきた場合、監査役等としてもこの点については相当程度検討が増えると思います。先ほど平均3.3日というご紹介があったように、現在でも非常に短い期間で監査をしている中で、さらに短くするということは論外ではないかと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ほか、いかがでしょうか。
 
 紙谷委員、お願いします。
 
○紙谷委員
 紙谷でございます。ありがとうございます。
 
 私のほうから3点申し上げたいと思います。
 
 まず、資料1の1に関したところでございますが、ここで記載されているとおり、「その他の記載内容」について、ISA720に従いまして、通読及び考慮したところで重要な虚偽表示の有無について検討するということによって、財務諸表の信頼性を確保するという効果が期待できるというのは、ここの記載のとおりかと思っております。
 
 加えまして、副次的かもしれませんが、このようなプロセスを通じたところで財務諸表の作成者と監査人の間で対話が深まるという効果もあるのではないかと思っております。さらに、その結果を監査報告書という形の中で、相違がない場合、利用者にその結果を明確に示すことによって財務報告サプライチェーン全体に有益になるのではないかと思っております。
 
 2点目の対象範囲についてですが、会社法については、これまでの議論のとおり、いろいろ論点があろうかと思っております。特に、最終版かどうかというあたり、難しいかと思いますが、1点目で申し上げたような効果を考えた場合には、会社法の事業報告につきましても対象と考えたところで議論を進めるのがよいのではないかと思っております。
 
 3点目の適用時期についてでございますが、2020年3月期につきまして、記述情報の拡充がなされますので、ここに時間を割いてしっかりご対応いただくのがいいかと思っておりますし、2021年3月期については、KAMが適用になります。これもかなり慎重な検討を必要とする部分ですので、この対応をしっかりするということに注力するのがよいかと思っております。これを全てこなした後に、今回の改訂を2022年3月期から適用するというのは適切なのではないかと考えております。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 八田委員、どうぞ。
 
○八田委員
 どうもありがとうございます。一般的な理解として、国内外を問わず、近年の監査制度を取巻く環境というのは劇的に変わってきているということがあります。私の理解ですが、1つはまず、会計監査人にとっての監査対象範囲が拡大してきているということがあります。これは旧来の過去情報一辺倒の財務情報を超えて、将来予測情報も射程に入っているし、非財務的な情報の問題、さらには、今回、導入されたKAMの問題のように定性的な情報の問題があるということです。このように監査の対象範囲が広がるとともに、当然、監査人にとっての開示に係る報告内容についても非常に広がりがみられるということが指摘できます。こうした傾向が将来どうなるかわからないですが、少なくとも国際的にもそういう流れが強く見られるわけですから、我が国だけが単独でそうした流れにあらがうことはできない。そうであれば、それに従っていくだろうということで、多分、この「その他の記載内容」の問題も起きてきているものといえます。
 
 留意しなければならないのは、今回の導入の趣旨にもありますが、市場の信頼性とか、あるいは利用者の期待、さらには監査の品質を向上させるといった点を守るためには、少なくともその国の現行の法律によって決められている法定文書であり、かつ、それがひとり歩きしていく情報に関しては、2つのことが必要であるということです。1つは、そうした情報の発信に関して明確な作成基準がある程度確立しているということ。それからもう一つは、その情報がひとり歩きしていくために、利用者にとって安心して利用できるためにも一定の保証がなされなければならないだろうということです。

 そうなってきたときに、監査人から見ると、いかなるレベルの保証を与えるのだろうかという議論が必ず起きます。それは、とりもなおさず、裏を返せば、それを十分に果たせなかったときの監査人の責任はどうなるのだろうかという問題が起きるからです。伝統的には、監査人の責任の根拠というのは1点しかないと思っています。それは監査報告書に書いた1行の文言、「一般に公正妥当と認める監査の基準に準拠して我々は監査を行った」、この1文だけで、監査人がとるべき責任のあり方を示していると私は理解しています。したがって、それを四の五の言って、この文脈には責任を負うとか負わないとか、あるいは、この文脈の品質については、保証の水準が高いから責任を負うとか、そういう議論はあまり必要ないと思っています。つまり、仮に専門家の立場で、責任を回避するような表現を取り入れたところで、利用者はそんなのわからないわけです。つまり、利用者は発信された情報に対して、少なくとも会計監査人が何らかのコミットをしてくれているのだ、こういうことがわかればいいわけです。したがって、おそらく監査人としては、今回も出ているように、監査報告書での記載場所を一応明確にすることで、ここまでは厳格な監査意見であり、監査人が責任を負うのはこの意見の部分しかないということ、それ以外のものは何かというと、これは監査人の通読した結果の見解なのか、あるいは、評論ないしはコメントということで、特に問題はなかったですよというレベルのメッセージを発しているにすぎない。したがって、そうした対応に対して、実務的に実態的に監査人の責任が問われる場面は、そんなにあると思っていません。確かに、監査人から見ると、非常に保守的に考えるかもしれませんけれども。
 
 そうすると、次なる問題は、責任を取る日付の問題だということです。監査人の行った活動について、いつまでの部分について監査人は責任を負うのかということです。今回、その他の情報が適切に得られるかどうか、あるいは、事業報告の内容が完成したものとして監査人に渡されるかどうか。今後、最終盤が出ますよというだけでは、これは続編を期待しているようなものですから、やはりどこかで打ち止めしなくてはならない。つまり、特に日本の場合、かつて議論された複数日付の監査報告書の発行のように、少なくとも現場作業が終わった部分での監査報告書の日付と、その後、最終的に、実際にでき上がった事業報告などが監査人に手渡されたというところで、手渡されましたよという一文を書く。昔あった実務での補足的説明事項のような形で、二重の日付が記載された監査報告書が後日、有価証券報告書の公表日に公表になることもあっていいのかなと思っています。
 
 いつも申し上げるように、日本の監査制度は金商法と会社法という2つの、どうしても最後に問題になる制度的前提があって、他国の議論と必ずしも一律的に議論できないという宿命があります。そうなってくると、やはり日本の制度に見合った形で利用者にとって信頼ができて、そして、誰もが納得する監査報告書を公表するためには、そういった報告書の最終版において、二重の日付のある監査報告書の作成という実務も想定してよいのではないかと思います。つまり、先ほど岡田委員がおっしゃったように、万が一、出しますよといっても出てきたものが全然違うとか、そういう誤解を招かないで済む。それが私は利用者にとっての信頼を確保するための手だてではないかなという気がします。
 
 それと、おそらく監査人にとってはこういう問題だけではないでしょうが、先ほど申し上げた監査環境の変化の中で、監査対象の拡大および監査人が公表ないしは作成しなければならない情報が増えるということは、明らかに監査人の負荷が高まるということが言えます。ということは、監査人にとっての対応可能性ないしはフィージビリティといいますか、実現可能性をどこまで考慮すべきなのかという点についても考えてあげないといけません。そうすると、なかなか難しい問題でしょうが、それはある程度余裕を持った時間的な配慮として、今日ご提案のような適用時期、これも仕方がないのかなと思います。私は早期適用がいいなといつも思っているのですが、これも現実の問題として、業界のほうでそのほうが円滑な対応ができるというのであれば、そういう方向で適用の日付をおくらせることがあっていいのかなと、そんな気がします。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、ご意見いかがでしょうか。
 
 熊谷委員、どうぞ。
 
○熊谷委員
 ありがとうございます。利用者の立場から意見と、一点ご質問したい点がございます。
 
 まず、ISA720の改訂版の国内監査基準化でございますけれども、これは国際的な流れと整合的であるというばかりでなく、我が国の近年におけますガバナンス改革ですとか、あるいは、その一環としまして会計制度の充実、特に、非財務情報の充実という流れとまさに整合的でありまして、そういった面からも利用者としても歓迎すべきことであると考えております。
 
 先程来、問題になっております対象については、金商法に加えまして、計算書類等に付随します会社法の事業報告が対象となるということもまた当然ではないかと思います。私の理解する限り、このISA720の改訂版の対象としております書類というのは法令に基づくものということで、まさに会社法も法令に基づく書類でございますので、そういった意味で対象となってまいります。
 
 そのときに、先ほど弥永先生からございましたように、計算書類は対象であっても事業報告というような、分かれたものというふうに認識すれば、そこが対象に入ってくるか疑義があるということがございましたけれども、やはり利用者とすれば、計算書類と事業報告というのは、年次のアニュアルレポートといいますか、年次の企業報告、あるいは財務報告のパッケージというふうに認識していると思いますし、計算書類と事業報告の間で不整合があるというのは、やはりあり得ないことではないかなというふうに思っております。そういった意味で、事業報告を含めていただくというのは、これもまた当然であろうと思います。
 
 また、皆様ご議論になっております、日程の問題でありますけれども、ほかの国の場合は、まさにパッケージとして財務諸表と記載内容が一緒に出てまいります。たまたま会社法に関しては事業報告と計算書類と、今、別々の書類という法的な位置付けなのでそういう問題が生じているのだろうと思いますけれども、これは、「その他の記載内容」のところに関して、ずれが生じているのは日本だけの問題なのかというのが、ちょっと気になった点でございます。ここについて確認していただけたらというふうに思っています。
 
 それから、そこにずれが生じるということを前提としまして、先ほど小倉参考人のほうからございましたように、会計監査人の監査報告から監査役会の監査報告までの間のリードタイムが平均的に3.3日ということなわけであります。普通に考えまして、先ほど岡田委員からもございましたように、軽微な修正ということは考えられるのだろうと思います。しかし、その間に重大な事業報告の記載内容に関して書き直しが生じるかということに関しては、すごく難しいのではないかと思います。それこそ、よほど会社に悪意があるという場合でもなければ、3日間程度の短いリードタイムの間に細かな修正以外に重大な修正が入ってくるということは、利用者としても想定しづらいし、そういうことがあってはならないことではないかなと思っております。そこで、こういうことが法的に可能なのか、あるいは、有効性が可能なのかどうかわかりませんけれども、監査人の「その他の記載内容」に対する記述において、会社法の書類、事業報告に関しまして、監査報告の時点で最終版は入手しておりません。その時点における最新版といいますか、それに基づきまして、ISA720の手続を行いましたというディスクレーマーをつけることによって、この問題は回避できるのではないかなと、皆様の議論を聞いていて思ったところであります。それが可能であれば、最終版でなくても限りなく最終版に近いものを見て、通読し、検討して、それと大きな相違がないということが、担保されるのであれば、この3.3日のある種ウィンドウの問題は回避できるのではないかなと感じております。また、監査人が通読を行った事業報告と最終版に大きな差異があれば、それは企業側の責任になってこようと思います。
 
 最後、適用時期でありますけれども、皆様と一緒で、早期に適用できるのであればそれにこしたことはないとは思うのですが、KAMという大きな変化があります。それから、それと同時に、会計基準のほうでも収益認識基準という非常に大きな会計基準が入ってまいります。これは、我が国の会計基準の国際的な整合性をとるという意味でも非常に大きな基準で、また、考え方も新しい基準なものですから、監査の場においても相当、あるいは、作成者及び監査双方にとって相当な負荷がかかるのではないかというふうに予想がされます。従いまして、監査人、あるいは、作成者の立場から見て2022年にしてほしいということであれば、これは利用者としても受け入れ可能ではないかと思っています。
 
 以上です。ありがとうございました。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 小畑委員、よろしくお願いします。
 
○小畑委員
 ありがとうございます。まず、今回の資料1で提示されております論点につきましては、基本的にこの方向で賛成でございます。その上で幾つか認識や疑問点について、申し上げたいと思います。
 
 1つ目は、これまでの実務において、現行の監基報720に基づく通読が会社法上の事業報告に対しても行われていたかどうかについては、弥永先生ご指摘のとおり、制度上の疑義は若干あったかと思いますけれども、実務上、多くの企業においてはしっかりと監基報720に基づく通読が行われていると認識しており、その意味では、改訂版ISA720に基づく実務が行われたとしても、今回の見直しは、基本的にこれまで行っている実務の手続を細分化して、それぞれの手続においてどのようなことを行い、積み重ねていくのかが明示されたものと理解しております。したがって、しっかりと現行実務をやっていただいている場面においては、それほど大きく実務が変わるものではないと認識しているところでございます。
 
 その上で、これまでの実務において、会社法上の事業報告に対しても通読していただいていると思うわけですが、今回の改訂版ISA720においては、先ほど小倉参考人からご提示いただきました資料の4ページに「最終版」というところが強調して書かれておりますけれども、会社法監査のプロセスからいいますと、「最終版」というのはあくまでも、厳密にいえば取締役会で決定されるまでは「最終案」でしかなく、その意味では、「最終版」といっても監査人に見ていただくのは「最終案」になるのではないか、「案文の最終版」ということだろうと思っております。
 
 また、これまでの実務においては、計算書類もそうですが、でき上がった順番から段階的に見ていただいています。事業報告も相当初期の段階から見ていただきながら、相互にやり取りを重ねながら最終版に近づけていきます。そうしたプロセスがとられているということからすれば、最終局面になるに従って、ほぼほぼ最終版の最終案になっているという状況にあると思いますので、最終版の位置付けについては、実務が回るような立てつけにしていただきたいと思っております。
 
 その意味で、最終的に、監査人の監査報告書が出た後、監査役の監査報告書が出るわけですが、その間の期間を極めて近接させるということは法の趣旨からいっても本意ではなくて、やはり一定の期間をとっていただくというのが重要ではないでしょうか。その上で、監査役会における監査の過程で、その財務諸表との整合性のみならず、事業報告の中身そのものの正しさについて監査役会でしっかりと監査していただくわけですので、最終的な責任は監査役会にあると思っておりますので、そこでのしっかりした吟味の期間というのは必要ではないかと考えているところでございます。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、いかがでしょうか。
 
 住田委員、よろしくお願いします。
 
○住田委員
 ありがとうございます。まず、全体的な改訂の方向について、ISA720の改正に沿った改訂を日本の監査基準にも入れるということ自体には、全面的に賛成したいと思っております。既に皆様方おっしゃっているように、会計上の見積りに将来情報がいろいろ入ってくるようになったということと、記述情報の拡充が我が国でも行われようとしている今の時期にこの改正をやるということは、非常に意義があることだと考えております。
 
 これは財務諸表の信頼性を確保するという効果ももちろんありますが、開示制度における記述情報の重要性の増加という局面を見ましても、財務諸表の監査そのものの信頼性ですとか価値の向上を図っていくためには、こういう対応を監査人はしていかなければいけない時代になってきていると認識しておりますので、これはなるべく早い時期に我が国においても入れるべきと考えております。
 
 こういう観点からISA720の改正を日本の監査基準に取り込むということを前提といたしますと、当然、会社法の事業報告も対象にすべきと考えます。現在の監基報の書き方が会社法上の事業報告を対象にしているのかどうかがいまひとつ明確ではないというご指摘もあったようで、今日の資料1の2ページ目に、注1、注2、注3とJICPAが出している実務指針の記述の変遷が書かれています。まず、「その他の記載内容」について、監査人が関与すべきという改訂が平成14年の監査基準において行われたわけですが、協会が出しておりました監査・保証実務委員会報告書第75号では、当時、証取法と商法でしたけれども、平成17年の会社法改正後も、証取法監査と差を設ける理由が特に見出せないので、当然、会社法監査にも適用されますということが明示されていました。
 
 注1の75号というのは、証取法と会社法の監査報告の文例等を扱っているということでしたので具体的に書いてありましたが、注3の監査基準委員会報告書、これは2012年3月期から適用になっていますが、この中では適用指針のA3項で、「経営者による事業報告」という書き方しかしておらず、会社法に適用になるということが前提になっていたかどうかというのが必ずしも明確でないというご指摘につながった面があるのだと思います。しかし、企業会計審議会で定めている監査基準というものの位置付けについては、そもそも平成14年の前文の「監査基準の位置付け」の項に記載されています。ちょっと読ませていただきますと、「改訂基準における監査の目的を示す枠組み及びこれから引き出されたそれぞれの基準は、証券取引法に基づく監査のみならず、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律に基づく監査など、財務諸表の種類や意見として表明すべき事項を異にする監査を含め、公認会計士監査のすべてに共通するものである」と、監査基準の位置付けが明示されております。協会としましても、それ以降ずっと、公認会計士が行う全ての財務諸表監査に監査基準が適用されるという立ち位置で実務指針をつくってきております。
 
 では、なぜ監基報720において明確に会社法という言葉を出していないかということですが、720の中では特に金商法という言葉も使っているわけではありません。A3項という適用指針は、「その他の記載内容」に含まれる情報の性質を例示しているということになります。固有名詞として経営者による事業報告と書いているわけではありません。A3項には、ほかにも財務概要ですとか財務ハイライト、従業員の状況、設備投資計画、財務比率というようなものが記載され、情報のネイチャーをリストアップするという立てつけになっています。ですので、従来も現行の720は会社法の事業報告にも適用されるという趣旨で書かれていたということを説明させていただきます。
 
 それから、先ほど小倉参考人のほうから、会計監査人の監査報告書日と監査役等の監査報告書日の差が平均3.3日ということが紹介されましたが、協会の公認会計士制度委員会が2015年9月に公表した研究報告に記載されています。この研究報告は2015年3月期の上場会社を対象に、2,300社強を対象に調べたものです。資料2では、監査人の監査報告書日が5月20日となっていて、かなり遅めになっていますけれども、実態としましては、期末日後平均44.3日で会計監査人の監査報告書が出ている。それから、監査役さんの監査報告書日は平均47.6日、その差が3.3日だったということになります。
 
 実感として皆さんお感じだと思いますけれども、会社法の監査報告というのは、3月決算でいえば大体連休明けに、5月の10日台に出るというのが大半でございまして、それから招集通知の発送というのは期末日後平均66.9日ということになっていまして、監査役等の監査報告書日から招集通知発送まで約19日間差があるということです。多分、2015年当時から、現在もあまり変わってないんじゃないかなと思いますが、この19日間がなぜ必要なのかといいますと、その間に取締役会の承認決議が行われ、それから、招集通知の印刷、封入作業というものがあります。印刷と封入作業に平均2週間かかるというデータもあります。今、臨時国会に会社法改正が提示されていますが、上場会社は株主総会の資料の電子提供措置というものが今後義務づけられることになりますと、監査役等の監査報告書日から招集通知の発送、ウェブに掲示するということになるのだと思いますが、掲示までの期間の短縮というのが十分可能ということで、監査役等の監査期間を削らなくても十分に720の改訂を取り込める日程は組めるのではないかと考えます。
 
 それから、監査役さんの監査期間の確保を疎かにすべきではないという点は、おっしゃるとおりだと思いますが、監査人と監査役さんとの連携、コミュニケーションというのは、監査計画の段階から緊密に行うべしということをここ何年かかけてずっと取り組んできております。会計監査人の監査の相当性について、会計監査人の監査報告が出た後に監査役さんが評価に着手されるということでもないと思います。期中の段階から監査人の計画が妥当であるかとか、いろいろコミュニケーションしているということと思いますので、その辺の時代の変化というものも考慮していいのではないかと考えているところでございます。
 
 それから、適用時期の問題ですけれども、本来的には、KAMの導入時期と合わせるほうが効果は高いのではないかとは考えております。といいますのも、現行の720でも通読義務は監査人に課されています。また、改正720でも、別にものすごく細かい手続を規定しているわけではなく、「その他の記載内容」に含まれる情報の性質に沿って監査人がどんな対応をすべきかというような筋道を説明しているにすぎず、どんな手続をやるかというのは監査人の判断に委ねられています。それが先ほどちょっと紹介がありました、UK FRCの報告では、監査基準であまり具体的な手続を書いていないから実務のバラツキがいまだにあるという指摘につながっており、この点はしっかり監査人が考えて対応していかないといけないところであると思います。
 
 つまり、720の改訂自体が監査人の作業負荷を大きく増すかというと、必ずしもそうではないと考えています。その理由は、720改訂の背景にもありますように、記述情報、720の対象になっている記述情報自体が拡充されてきている影響があるということです。日本において、今、記述情報の中に経営者の視点に基づく会社固有の情報を入れるべしという方向が掲げられていて、そういう記述内容を監査人が考えながら通読するということは、現行の720に基づいたとしても一定の時間の増加といいますか、もっと監査チームの中で、マネジャーですとかパートナーですとか、全体を見回せる立場の人間がきちんと読んでいく必要があるという帰結になるんだろうと思います。ですので、ISA720の改訂を入れるか入れないかということだけで、「その他の記載内容」に対する監査人の負荷が増える、増えないという議論をするのは一面的なのかなと思います。
 
 KAMの導入という局面から考えましても、KAMは別に財務諸表に書いている情報だけでKAMの記述をするわけではなく、経営者の視点がどういうところにあるかということもKAMを記述する上では大変参考になる情報と思います。どちらにせよ、現行720に基づき「その他の記載内容」を監査人は読まなければいけないわけです。KAMは見積りに関連するものが多いと思いますけれども、将来の事業計画ですとかキャッシュ・フローについて、経営者がどういう前提で、どんなことを考えて減損などの評価をしたのかに関連する情報が「その他の記載内容」に記載されていれば、当然見なければならないわけです。したがって、ISA720に沿って監査基準が改正されてもされなくても、これまでよりは、もっと深く「その他の記載内容」を監査人は読んでいかなければいけないということになろうかと思います。そういう観点からすると、KAMと同時期に入れるほうが、作成者側と監査人、それから、監査役さんと「その他の記載内容」の開示状況も含めて協議し、よりよい開示について考える機運をつくり出せると考えられ、KAMの時期に合わせるのがベターと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 荻原委員、よろしくお願いします。
 
○荻原委員
 それでは、作成して提出する側の意見としてお話をさせていただきますと、5月の上旬に決算発表をいたしますので、当然、決算短信をつくるわけでございますが、その中身を見れば、ほぼほぼ有価証券報告書に移記できる内容でございます。なので、特にそこで実務的に多忙になるということはないと思っております。
 
 また、5月20日前後の監査報告でございますけれども、事業報告に関しましては、決算短信をもとに記載を決めていくということになりますので、経営者からすると、株主総会というのが最大の行事でございますので、そこさえ通り抜けられればという問題がありますので、やはり事業報告に関しては真剣に見るわけでございますけれども、最近の兆候を見てみますと、本当に株主の皆様は事業報告は丹念に見てこられます。決算短信を見ていただければわかることでも、ほとんど見ておらず、事業報告のみを見ていらっしゃる方が多いということになりますと、経営者にとりましては、事業報告において過度なアピールとか、記載しなければいけないことを記載しない等の誘因が働くことがあると想像されますが、いや、うちがそういうわけではございませんが、想像されますので、監査人の先生方には、事業報告のそういう観点を見ていただければ事業報告と有価証券報告書の一体的な取扱いについては、実務的にも可能ではないかと思っております。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、ご意見はございませんか。
 
 町田先生、お願いします。
 
○町田委員
 本日、この「その他の記載内容」、つまり国際監査基準720(ISA720)への対応の議論をしているわけですけれども、以前の監査部会でも申し上げましたように、ISA720だけを取り上げて、継続審議にしたり、お忙しい委員の皆さんを集めて、これだけの時間や社会的コストをかけて議論している国は、おそらく日本だけだろうと思います。はっきり言って、これはもうさっさとやるべきだろうと私は思っておりまして、せめて、先日の四半期レビュー基準の改訂のときに、一緒に解決しておくべきだったんじゃないかなと思っておりますが、今回は、実施する方向ということですので、その点はウェルカムです。
 
 ただし、本日の議論に関して、どうしても2つの点について、申し上げておきたいと思います。
 
 1つ目は、このISA720の改訂の議論がなぜ起きたのかという本旨をついつい見失いがちなのではないかなという点です。あくまでもISA720の改訂は、監査報告書改革の一環なんですね。先ほど住田委員もおっしゃっておられましたけれども、監査上の主要な検討事項を記載するに当たって、その対象となる事項は、経営者によって記述情報として書かれている可能性もあるわけです。ですので、そことの整合も見なきゃいけないということで720の部分を改訂することになった背景があるわけです。

 本来であれば、国際監査基準としても、記述情報については、ヨーロッパにおいてすでに実施されているように、監査人による監査とかレビューを実施したかったのだと思います。ところが、国際監査基準はヨーロッパだけのものではありませんから、会計や監査の制度の後進国の事情も踏まえて、まずは最低限のことを監査の枠組みでやっておこうというのがISA720の改訂なのだと理解しています。つまり、ISA720の導入の議論は、会計や監査の制度の後進国のレベルに合わせた基準を導入する程度の問題で、日本がこれだけの議論を費やしているのはとても恥ずかしい、さっさとやるべきだと思っています。
 
 ですから私は、KAMの強制適用の2021年にセットで導入しないことが理解できません。何で1年遅らせるのか、その意味がわからないのです。つまり、申し上げたいことの第1の点は、日程は遅くとも2021年3月、先行適用するんだったらこれも先行適用して欲しいぐらいだということです。
 
 理由としては、今、申し上げたように、そもそもこのISA720の問題はKAMとセットで導入すべきだということと、従来の監査手続であっても、先ほど住田先生もおっしゃっていたように、read and considerのうちのreadはしているんだということですので、当然、事業報告も読んでいるんだということですので、実務上のハードルは高くないはずなんですね。そのことも理由の1つです。

 それともう一つの理由として申し上げておきたいのは、実は、グローバルには、もう次の段階の議論が起きているんですね。イギリスで昨年1月に起きたカリリオン事件を踏まえて、イギリスでは監査改革が始まっていて、その中で、議会では、ブライドン・レビューと呼ばれる報告書が公表されています。その中では、「その他の記載内容」のところについて、監査人の監査手続が明確かつ詳細に決められていなかったことが問題なんじゃないかという問題提起がされています。先ほどのご説明でいえば、例えば、虚偽表示の兆候の部分ですね。それを見つけたときに、どういう手続をするんだという話、これは小倉参考人も問題だとおっしゃっていましたが、そこに着手し始めて、意見募集もして、おそらく今後、制度対応が図られるはずです。
 
 さらに、今後のターゲットとしては、記述情報の保証とか、あるいは、コーポレートガバナンス報告書への保証、そういう段階が次に待っているわけです。そうした中で、この問題の適用を2年待っていたら、その間にグローバルな制度はまた変わっちゃいますよと。日本が実施する前に、ISA720が再改訂されてしまいますよということです。ISA720は、グローバルには、KAMと同様に、2016年12月からの適用です。日本はすでに、2周3周遅れをとっている。そんな中で、さらに、2年も待ってほしいと日本公認会計士協会が言われるのは、国際会計士連盟の加盟団体として、恥ずかしいのではないかと思います。
 
 国際的に見ると、ISA720の議論よりも、実はISA570、ゴーイング・コンサーンのほうが大きなテーマとして捉えられています。ところが、こちらは、去年の7月5日に、「監査上の主要な検討事項」の導入と一緒に、早々に導入し、2020年3月期から全面的に適用することにしちゃっているんですね。ゴーイング・コンサーンの問題も、「その他の記載内容」と同様に、監査人が「事業等のリスク」などの記載内容をチェックして、問題があれば監査報告書に記載区分を設けて記載するとなっているんです。ゴーイング・コンサーンは構わないけれども、その他の部分には問題があるというのはオカシイのではないでしょうか。
 
 それともう一点、公認会計士協会の資料の8枚目のスライドにあった、監査報告書日以後に「その他の記載内容」を入手予定の場合の議論です。
 
 この話を聞いていて思い出したのは、かつて八田部会長のもと、内部統制部会で議論した内部統制報告制度のときの「期ズレ」の議論です。つまり、監査役の方々が、監査役の監査報告書と内部統制の監査報告書の日にちにズレが生じることから、監査役の監査報告日後に重要な欠陥が判明した場合にどうするんだ、という問題を心配されて、結局は、なますを吹くような議論だったということが後で明らかになったところです。
 
 今回も同様だと思います。決して監査人は、会社側から、完成版の報告書を受け取って、それから検討を始めて、その間、全く会社側とコミュニケーションをとらないで結論を得るわけではないわけで、会社側から逐次情報をもらいながら、一緒になってチェックをして、指摘すべきは指摘すべきで、譲れないところは譲れない、そういう議論をしていくのだと理解しています。そうしたことを前提としたときに、この8枚目のスライドのような記載内容の監査報告書が出てきて意味あるんですかと。今日いらっしゃる利用者の委員の方々は、こんな記載内容の報告書が出てきて、意味があると思われるのでしょうか。万が一にも、モラルハザードのある監査人だったら、「その他の記載内容」をチェックすることを回避して、あるいは、その責任を逃れるために、全部このタイプの監査報告書を作成するほうに逃げるでしょう。事業報告を読んだことがないという監査人がもしもいたとすれば、その人たちはみんなこっちに逃げますよ。こういうのを認めるのであれば、事業報告の議論は再整理し直すべきではないかとさえ思います。
 
 ですから、あまり杓子定規な机上の議論で、この問題にかかる実務を矮小化させないでいただきたい。それは、十分に現場で対応できる問題でしょう。いわゆる職業的専門家としての判断で対応できる問題なんじゃないかと思います。
 
 繰り返しますが、私が申し上げたいのは、日程に関しては、遅くとも2021年3月期、KAMと一緒に適用すべきだと考えます。もし万が一にもKAMと一緒に適用できないのであれば、日本が適用できない理由をきちんと説明することが必要だと考えます。そのときに、実務対応が間に合わない云々というのは、他の国々を見たときに、俄かに受け入れられない理由です。もう一点は、この8枚目のスライドのような報告では、この制度を実施する意味がないという点を申し上げておきたいと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 松本委員、どうぞ。
 
○松本委員
 ありがとうございます。私のほうからも2点ほど申し上げたいと思います。
 
 会社法上の事業報告をまずこの720の対象にするかどうかという議論について、住田先生のほうからは、平成14年監査基準改訂のお話が出たんですが、昭和31年設定監査基準で黒澤先生が、監査基準については公認会計士が行う監査業務にすべからく適用すべきであるということを述べられています。したがいまして、監基報レベルでどう書いてあるか云々以前の問題として、原理・原則である監査基準が、公認会計士が行う監査においては、学校法人監査であろうが何であろうが、全ての公認会計士監査の中心になると解されます。このためもし監査基準に720を盛り込むのであれば、会計士が関与する事業報告の監査でも当然、この監査基準に準拠して行われるべきであるという話になります。また会社法436条において、今現在でも事業報告の会計に関する部分は会計監査人による監査を義務付けていますので、720が監査基準に導入されれば、事業報告全体が当然、監査の対象になるというのは自明の理だと思います。
 
 もう一点、事業報告に関してですが、日づけのずれのお話をされていましたが、会社法上の議論の最終決着点は株主総会ですので、町田先生がおっしゃっていた会計士協会さんがご用意された8ページ目のスライドで、最終版ないしは最終案、どちらでもいいんですけれども、最終案が会計監査人に提供された段階、ないしは、まだ提供されていないのであれば、提供が予定されているというふうに監査報告書に書いたとしても、その結果について株主総会の時点で、どうなったかを会計監査人がみずから報告すれば、株主はそれで納得するはずです。したがいまして、会社法上の処理というのは、全て株主総会の時点で最終決着が図られるべきであって、監査役に提出する段階では事業報告はもらっていないので、何も言いません。しかし、それなら株主総会の時点で結果を報告してくださいねということで、会社法上の解決は図られると思います。
 
 金商法はそもそも投資家向けの情報開示ですから、株主と違って投資家は手に入れる情報に関して何ら対応する権限が与えられておらず、情報として受け入れるしかないので、こういう事業報告の提供が予定されているという情報をもらったところで、投資家にとっては何の意味もありません。このため、会社法と金融商品取引法の議論は分けて検討すべきであって、会社法上、監査役さんと会計監査人さんとの監査報告の間が3.3日しかないという実務的な問題は、会社法上では何ら支障はないと思います。株主総会の時点で、監査役さんと会計監査人さんが事業報告の監査の結果についてそれぞれで説明し、これはKAMのときも同じことをお話ししたんですが、その場で株主さんが納得すれば、720が会社法に適用されたとしても問題はないと思います。
 
 適用日の日付の問題ですが、これは会計士協会さんのほうでどうしてもできないので嫌だと言われているものを、我々のほうで、いやいや、もっと早期に適用できるでしょうというふうに決めるというのはおかしな話ですので、私もKAMと同時に適用すべきだとは思いますが、実務的に可能かどうかというのは十分、協会さんのほうでご検討いただくべき内容だと思います。そこで早期適用できるでしょう、だからもっと早く入れてくださいという議論をしたとしても、実効性が伴わないものを決める意味はないと思いますので、それはご担当いただく会計士さんの立場を考慮に入れた上で決定すべきだと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 吉見先生。
 
○吉見委員
 ありがとうございます。まず、今回、本日出されております主な論点については、おおむねいずれも提案されているような整理でいいのかなと考えているところです。
 
 その中で、ここまで議論がなされている点について2点お話をしたいのですけれども、1つは、会社法と金商法の関係での対象範囲の問題ですが、これは今までのご議論を聞いていましても、ほぼ会社法の事業報告も含めて対象として考えるべきであると、私もそのように思っております。もとより、この間といいますか、戦後ずっと商法と証券取引法、そして、会社法と金商法に基づいて、公認会計士、監査法人による監査の課題は、これをどのように一致させていくか、一貫性のあるものにするかでした。特に、金商法と会社法の監査が同時適用される会社の場合に、これは事実上、同じ監査人が一つの監査手続をもって、2枚の監査報告書を書くことになってきているわけですので、そこで出てきた監査報告書がまるで違うものだ、あるいは、違う内容だという印象を与えるのは、逆に誤解を与えるものになると考えているところであります。
 
 そういう努力を、私は戦後ずっと続けてきたと思っておりまして、KAMの議論をしたときにもそのような話をしたかと思うんですが、「その他の記載内容」について制度変更をしたときに、金商法と会社法で違う監査報告書が出てくることがあると、これは問題が出るだろうと思います。むしろ、「その他の記載内容」についての監査上の手続を入れていく中で、最終的に、事業報告と有価証券報告書の内容が一体開示されるとか、内容的に整合性があるものがつくられていくとかということに、現在でもそういう大きな不整合があるようなものであると思っていませんけれども、これらの一体開示でありますとか、整合性を持たせるとかという方向に、逆に開示の実務が進んでいくということを期待したいと考えているところです。
 
 もう一点、適用時期については、これも議論が出ているようでありますけれども、ちょっと視点を変えますと、毎年毎年制度が変わって違った監査報告書が出てくるというのは、利用する側からしますと、これまた大変わかりにくい。町田委員のお話のように、KAMとの一体性ということもございますので、できれば同じ時期に適用されることが望ましいし、そうあるべきだと思いますし、利用者にとってもそのほうがわかりやすい。毎年毎年違った様式の監査報告書が出てくるということは、逆に変な誤解を与えていくのではないかと思ってございます。
 
 住田委員からお話もありましたように、今回、手続としては監査人にとってそう大きく変わるものではないと思いますが、ただ、監査報告書は新しい区分が設けられるのであれば見た目が違いますので、大きく変わって見えるのであれば、それはできるだけ同じ年に、大きく変わりましたということにすることが重要で、特に今回は監査報告書の様式にかかわる部分がございますので、それはできるだけ同じ時期に適用すべきだと思います。
 
 確かに、実務上、その適用時期を1年遅らせねばならない事情が特段あるのであれば、それは私のわかるところではないので、検討いただかねばならないと思いますけれども、既に手続的にそう大きく変わらないのではないかというご議論も出ていますので、私自身はそういうお話を聞いた限りでは、KAMの記載と同時の適用というのは可能なのではないかという印象を持って、今日お話をお聞きしたところでございます。
 
 最後に、これは2点とは別の点なんですけれども、これも一つ議論になっておりました、監査役の監査報告書と会計監査人が監査報告書を提出するタイミングを、できるだけその間隔を短くして実務対応したいという話がありまして、少し議論になっておりましたが、これについては、基本的には、まさに実務的にどう対応するかの問題であって、ここでその議論をするのにはなじまないのかなと思いながら聞いていたところでありました。ここで決めたり調整したりする事項ではなくて、会計監査人と監査役がコミュニケーションをとられる中で、提出の時期が調整されることがあっていいものであろうし、つまりは、もっと時間をとりたいということであれば、では時間をとりましょうかという話をお互いにすればいいわけであって、少し間隔を短くしましょうと基準上どこかに書き込むのかというと、そういう性格のものではないと私は理解しております。あくまで、この資料にもありますけれども、実務上の解決策ということで、実務の中で、あるいは、それぞれの会社の中で検討していただく。ほとんどの場合は、短くしても私は問題がないと思いますが、何か問題が起こったときには監査役が検討しなければいけない事項も出てくる可能性もあるわけで、それはそのとき、あるいは、その年ごとにそれぞれ考えられればいいことかなと考えるところでございます。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 永田委員、どうぞ。
 
○永田委員
 大きな方向性につきましては、特に異論はございませんが、やはり会社法上の会計監査人の監査報告書の要件の取扱いについては幾つか申し上げたいことがございます。
 
 1つは、事業報告書の最終版が入手できない場合の取扱いで、公認会計士協会からの資料8ページでは、「この監査報告書の日付以後に当監査法人に提供されることが予定されている。」となっています。これを見ると、それまでの議論は何をしているか全くわからない。ひょっとすると、何も見ていないかもしれませんし、見た上で、その時点まででは問題ないと思っているかもしれません。あるいは、その時点で重要な相違があるということで議論しているかもしれません。そういった事情が全くわからない形で記載をすることが本当に監査報告書の信頼性に資するかどうかは非常に気になるところです。結局、最終版が違ったらどうするのかという問題はありますが、先ほど松本委員からお話があったように、最終的には株主総会という場がまだあるわけです。しかも、最終版ではないという説明をされているなら、株主総会の場で、最終的にどうなったのかを当然聞くことができます。そう考えると、結局、監査報告書で「予定されている」との記載を見た株主が、総会の場で、最終的にどうなっているのかという質問をすれば、一から説明をしなくてはいけないことになります。果たして一から説明するのがいいのか、監査報告書の時点である程度情報提供をするのがいいのか、このあたりは考えなくてはいけないと思います。
 
 もう一つは、スケジュールの調整です。監査役等の監査の期間をどうするか、短縮するか。短縮は絶対だめだというわけではありませんが、この目的のために短縮するとすれば、それは本末転倒ではないでしょうか。監査役等の職務としては、会計監査人の監査の方法と結果の相当性を判断します。ところが、「その他記載内容」というのは、実はそこに直接関係するものではないとすれば、そのために監査期間を短縮するのは本末転倒ではないかと感じます。では、短縮してはいけないかどうかということについては、実務的にそれで間に合うかどうか検証しなくてはいけないでしょうし、住田委員からお話がありましたように、全体のスケジュールの中で無駄なものがないかということも検討すべきであり、この点だけをハイライトするのはいかがなものかという気はします。

 さらに申し上げれば、会社法と金商法という二元的な開示制度が残っていると、どうしても根本的な問題の解決はなかなかできないのではないかと感じるところであります。
 
 私のほうからは以上です。
 
○伊豫田部会長
 ほかにご意見いかがでしょうか。
 
 住田委員、どうぞ。
 
○住田委員
 済みません、ちょっと補足させていただこうと思うんですけれども、会計士協会がつくっているスライド8の「その他の記載内容を入手予定である」というのは、監査人の監査報告書日付までに「その他の記載内容」を一切入手していないという前提で書いてあるということなんですね。この趣旨は、監査人の監査報告書時点で「その他の記載内容」のうち、部分的に入手しているものがあるのであれば、「その他の記載内容」の特定のところで、「その他の記載内容」のうち、どこそこの部分は入手して監査人は整合性を見ましたということを書くという意味でございます。
 
 ISAで、監査報告書日までに入手したものがあるのかどうかはっきりすべきという議論に、なぜ、なっているかというと、国際基準ですので、いろいろな国で開示制度が違うということがあります。財務諸表を先に、世の中に、株主に出した後、「その他の記載内容」を追いかけで出すという制度を持っている国もあるということなんですね。ですので、我が国のように、先ほどから何人かの委員がおっしゃっているように、株主に対しては一時点で計算書類と事業報告をセットでパッケージとして出すわけですから、こういう適用を考えるということ自体は望ましくない方向に実務も持っていくということだと思います。株主総会できちんと株主さんに判断してもらえるように、やはり日程の調整という意味でいえばいろいろな余地があるので、監査報告書日までに「その他の記載内容」を監査人に、最終ドラフトでしかないと思いますけれども、それを提示していただく。細かい修正があったら、当然、それは株主総会までに直すというのは、どんな基準を置いたところで実務的には常にある話ですので、それはそれで、720が改正されようがされまいが、実務としては起きていくということだと思っています。
 
 それから、最終版という言い方をしているんですけれども、監査人は、会社からこれが最終案ですともらったものをチェックする、通読する義務を負っているだけで、監査人が見たものを会社が外に対して公表しているかどうかということまでのチェックは求められていないということがISA720の改訂版の中では明示されているということを補足させていただきます。
 
○伊豫田部会長
 中西委員、どうぞ。
 
○中西委員
 中西でございます。
 
 おおむね今まで皆様のおっしゃられるとおり、改訂の方向性につきましては、基本的には賛成でございます。ただ、こうした実務が行われるための前提としては、会社と監査人の双方が日々のコミュニケーションを充実させて、期末になったからいきなり慌てることがないということが前提になっておりますが、実務的にどの上場会社も全てかというと、なかなかそうはいかないのではないか。意識が低い監査人、あるいは、意識が低い会社であれば、もちろん問題ではありますが、意識は高くても忙しい、人手が足りない、例えば、何か一つ問題が起こってそちらにばかり手が取られていると、他の仕事がどうしても疎かになってしまう、こういうことも起こり得ます。ただ、会計士さんの方は、監査基準などを非常に意識されるので、かなり実効性は高いと思うのですが、会社については、どうしても会計基準、あるいは、監査基準が変わったからといって、すぐに意識がパッと上がるとか気をつけるようになるということは、なかなか起こりにくいのではないか、特に問題になるような会社ほどそういう傾向があるのではないかと思います。

 できれば法務省さんと協議して、会社法改正が今、国会にのぼっている中ですので、今後、会社法施行規則、あるいは、会社計算規則の改正も予定されているところでもありますので、そういった議論のところで同時に法務省さんにお願いするというということも考えていただきたいところであります。
 
 2つ目としまして、ここにも関連するところではありますが、後から事業報告の最終版が出てきたときに、じゃあ、それを見て監査人さんが監査報告をどう出すか、あるいは予定となったときにどうするかという対応もございます。こうしますと、後で修正をする、最近ですと、軽微なミスであれば見つかったときにはウェブ修正というものが可能なのですが、監査報告に関してウェブ修正という条文はありません。そういったウェブ修正に関する柔軟な対応というのを会社法施行規則、あるいは会社計算規則などでできるように、ウェブ修正をこういったところで活用するということも、このIT化の流れ、電子化の流れの一つとして、会計の面からも法務省にお願いするということもご検討いただきたいところです。
 
 特に、株主総会で監査報告に関して予定と書いた部分が結果としてどうだったかと説明すればいいという見方もあるのですが、議決権行使書面を出すところ、機関投資家さんはほとんどそれで対応されていると思うので、そういった会社さんにとっては、総会当日の結果報告では間に合わないという部分もございます。こういった議決権行使書面提出前の対応についても、柔軟な対応ということで、いろんな手段をお願いしたいところです。
 
 最後に、細かいところですけれども、意見不表明のところでは、「誤解を招くので記載しない」という表現になっておりますが、こちらにつきましては、禁止をしなくても、つまり監査人のほうの判断で意見不表明ではあるけれども、意見とは別の部分ですので、ここについて有益な情報だと判断した場合には、書くことを禁止しないということで、意見不表明の場合には、「記載しないことができる」程度の記載でよいのではと思う次第です。
 
 以上、短いことではございますが、私のほうから以上でございます。ありがとうございました。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 その他、ご意見ございませんでしょうか。
 
○手塚委員
 大体ご意見が出尽くしたようなので、これからいろいろと実務指針をつくるに当たって、議論を踏まえて思うところを述べさせていただきます。
 
 記述情報、いわゆる「その他の記載事項」の開示が充実しているということに関して言いますと、あるいは、その書き方についても指針が出たということを考えますと、会社法監査対象会社や金商法対象監査会社においては、財務諸表以外に必要な情報がこれだけあるのだと示されたんだと考えています。そして、本来であれば、町田先生がおっしゃったように、何らかの保証がそこに与えられてしかるべきなんだろうと思うわけですけれども、今給黎さんがおっしゃったとおり、さまざまな情報がある中で、総括的・包括的に保証するのは難しいですし、また、部分的に保証を付すということに関しても、仮に定量的であったとしても、それは基準が整備されているのかどうか、手続がきちんと整備されているのかどうかという観点から難しいと思っています。したがって、先ほど後進国に配慮するという話がありましたが、逆に、私はいたずらに保証するということは避けるべきだというのが持論です。決して保証に消極的なわけではないですが、かえって混乱をさせるような保証の制度は入れるべきではないということを考えていますので、そういう意味では、まずは、720に書かれているような一定の関与を監査人がするということに対して前向きに捉えて取り組んでいきたいと思っています。
 
 その中で、具体的な論点ですけれども、事業報告を対象とするか否かということについては、日付の問題を含めて実務的に解決が難しいところもありますけれども、今のご議論では一定の解決、方向性が見出せるのではないかと思っておりますので、皆様のご意見をきちんと聞いて、協会としてやるべきことをやりたいと思っています。
 
 もう一つ、適用時期の問題ですけれども、旧720とあまり変わらないのではないかという考え方もあるかと思いますが、実は、この間、企業側の記述情報の開示は多分大幅に変わると思っています。これは開示すべき事項も増えるわけでありますし、開示する書きぶり、例えば、経営者の意思決定の場である取締役会とか経営会議の議論を反映させるとか、経営戦略と結びつけてMD&Aをきちんと開示するといったようなことが行われたときに、それをしっかりと見ていくということはそんなに簡単なことではないわけであります。企業側の記述についてもそうだと考えていますので、KAMと並行して入れていくのが私としてはベストだというご意見には賛同する部分もあるものの、やはり実務的にはご提案したような期日で入れていただきたいというところであります。
 
 あとは、時間ですけれども、旧720と新720を比較して増すか否かというところはまだよくわかりませんが、手続的には変わる部分もあるので、相応に増す可能性があると思っています。また一方で、じゃあ、旧720のままで今後KAMを導入する、あるいは、記述情報が充実したときに監査時間が増えるのか増えないのかといえば、それは増えるわけでありまして、KAMの検討時間なのか、記述情報を読む、あるいは考慮する時間なのかわかりませんけれども、そこに関しては、あまり変わらないのだという前提で議論を進めるというのは危険だと思っていますから、ここであえて申し上げたいと思います。
 
 もう一つ、私は統合報告書のアドバイザーもやっていたわけですが、こういうふうに記述情報が充実してきたときに、財務諸表の作成や開示のようなきちんとした基準がない中で一番問題なのは、多分、情報のバランスだと思っています。ポジティブな情報は書くけれども、ネガティブな情報はあまり書きたくないというのは企業側の、当然、私が経営者でもそう思うわけでありまして、そのときに本当に書くべきネガティブな情報が書かれているのか、それが重要なのかどうかも含めて、そういったバランスを判断するのは、実は極めて難しい問題です。任意の統合報告書であれば、そこはあえてあまりギチギチやる必要はないのかもしれませんが、制度開示の中において、そのあたりをきちんと考えていくということも踏まえていくと、手続に対してきちんと周知する準備を企業側も監査人側もする、あるいは、英国でも期待ギャップというものがユーザー側にも世間にもあるということですから、そこに周知するという考え方から、最後は適用時期の話に戻りますけれども、適用時期についてはご考慮いただきたいと思います。
 
 いずれにしても、皆さんのご意見を踏まえて、監査基準委員会報告書の改訂作業に着手したいと考えています。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、よろしいでしょうか。
 
 多数の貴重なご意見、ありがとうございました。
 
 それでは、本日の審議はこれで終了させていただきたいと思います。
 
 最後に、次回の日程について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○野崎開示業務室長
 次回の日程につきましては、後ほど事務局から改めてご連絡させていただきたいと存じます。
 
○伊豫田部会長
 それでは、以上をもちまして本日の議事を終了させていただきます。本日は、お忙しいところご参集賜りまして、ありがとうございました。これにて散会いたします。

以上 
お問い合わせ先

企画市場局企業開示課

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)(内線3887、3663)

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