企業会計審議会第48回監査部会議事録

 

1.日時:令和2年9月29日(火曜日)10時00分~11時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 9階 金融庁共用会議室3
 
 
○西山開示業務室長
 これより、企業会計審議会第48回監査部会を開催いたします。皆様には御多忙の中御参加いただき、誠にありがとうございます。本日の会議でございますが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、企業会計審議会議事規則第8条の規定にのっとり、会議の議事運営に関して徳賀会長に御相談した上で、オンライン開催とさせていただいております。議事録はこれまでどおり作成し、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 オンライン開催に関して、2点注意事項がございます。まず1点目、御発言されない間は、恐縮ですがマイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。御発言されるときには、マイクをオンにしてミュート解除で御発言いただいて、御発言が終わられたらまたミュートにしていただくということでお願いできればと思います。

 次に2点目として、発言を御希望されるときなのですが、チャット機能を使って全員宛てに、「発言希望」と名前とともにお入れいただく、あるいは協会名とかの組織名でも結構かと思いますが、入力していただければと思います。それをこちらで確認させていただきまして、部会長から指名していただきたいと思っています。なお、御発言に際しては、念のためですが、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言いただければと思います。それでは、八田部会長、よろしくお願いします。

○八田部会長
 西山室長、ありがとうございます。それでは、まず初めに、私から一言御挨拶を申し上げます。私は、企業会計審議会令第6条の規定に基づいて、昨年12月19日付けで企業会計審議会監査部会長に任命されました八田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 皆様、御承知のとおり、伊豫田前部会長におかれましては、昨年12月16日に御逝去されました。ここに生前の御功績をしのび、改めて御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。

 それではまず、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則にのっとり、監査部会の審議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。


(異議なし)

 
○八田部会長
 皆様の御了解をいただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継させていただきます。
 
 それでは討議に入ります。本年3月に、コロナウイルス感染症の影響により、持ち回り開催をさせていただきました監査部会において御審議いただきました監査基準・中間監査基準の改訂案で、公開草案を公表することを了承いただきました。その後、3月から4月まで意見募集を行いましたところ、9者、26件の御意見をいただきました。本日は、改めて公開草案の概要と、いただいたパブリックコメントを踏まえた修正事項について、まず事務局からその内容についての説明を行いまして、その後、委員の皆様から、これに対する御質問、御意見を伺い、当部会としての取りまとめをしていただきたいと考えております。それでは、事務局から説明をお願いいたします。
 
○島崎企業開示課長
 それでは、御説明させていただきます。部会長から御説明がありましたとおり、公開草案を3月に取りまとめていただきまして、その後、3月から4月まで意見募集を行っております。以下の資料に則して御説明させていただければと思います。
 
  資料の3のほうが、「パブリックコメントの概要及びコメントに対する考え方(案)」でございます。こうしたものから修正すべき点などを取り入れ、また、その他所要の修正を加えたものが、公開草案からの修正でございますが、それが記載されているのが資料4でございます。この両方を使いながら御説明させていただければと思っております。

 パブリックコメントについては、9の個人・団体から26件のコメントをいただいております。以下、パブリックコメントでいただきました御意見を基に修正を加えた主要な箇所等から御説明できればと思います。

 まず、資料3で、最初に番号だけ言いますと、2、7、8、13、18などについて、公開草案で意見募集を行いました監査基準の改訂案に修正を行っているところです。順に申し上げますと、パブリックコメントの2番、7番というのが、意味の明確化とも言える修正となっております。これは、対応しますのは、資料4のほうで言いますと、1ページ目の経緯のところの6行目、「財務諸表以外の」というところと「間に」というところの修正が加わっている、ないし2ページ目で申し上げますと、7番と対応するものでございますが、「その他の記載内容」についての(1)のところの修正箇所で、「そこで記載すべき事項」というようなことが、意味の明確化のために修正を加えているところでございます。

 続きまして、パブリックコメントの8番でございます。これにつきましては、修正箇所、資料4で言いますと3ページ目に相当するところでございます。これはパブリックコメントの回答にも記載させていただいているんですけれども、「重要な誤り」というのは、「その他の記載内容」が不正確であり、利用者に適切に理解されず誤解を招くような重要な誤りのことをいいます。まず、監査人は、財務諸表等と関連する「その他の記載内容」に対しては、財務諸表等との間に重要な相違があるかどうかについて検討いたします。重要な相違には、財務諸表に重要な虚偽の表示がある場合と、「その他の記載内容」に重要な誤りがある場合が考えられます。「その他の記載内容」に重要な誤りがある場合において、監査人が経営者や監査役等との協議を行うなど、追加の手続きを行った結果、解消されない場合には、監査報告書に記載することを求めることとしております。これに対応する修正というのは、「相違」と書いておりましたが、「についての重要な誤りの有無を監査報告書に記載し」というふうに、8番の回答とも整合的でございますが、3ページ目の修正は加えているところでございます。

 続きまして、パブリックコメントのほうの13番でございます。こちらにつきましては、資料4のほうの、ページで言いますと8ページ目に対応するものでございます。こちらは本文のほうの、特別な検討を必要とするリスクの定義の位置に関係するものでございまして、パブリックコメント等でもいただいた御意見を踏まえまして、定義の位置に変更を加える、それから、「会計上の見積りや収益認識等の判断に関して財務諸表に重要な虚偽の表示をもたらす可能性のある事項」についての例示を追加しております。また、虚偽の表示が生じた場合の影響につきまして、金額的及び質的影響の双方を示す修正も同時に行っております。

 パブリックコメントの18番につきましては、こちらも意味の明確化というような趣旨でございますが、監査基準の改訂案のほうの修正の最後のページ、14ページ目の「その他の記載内容」にあるところ、「その他の記載」という赤字でございますが、そこのところを修正しております。

 以上が、変更を行った点と関係するパブリックコメントの結果でございますが、このほか、パブリックコメントにつきましては、例示させていただきますと9番に関しまして、「重要な誤り」の意味ですとか、虚偽記載が金融商品取引法において主に用いられるものである点の説明ですとか、15番で「監査役の責任」について、例示を加えながら明確な記載について示す。それから16番で、意見表明に関しまして、国際監査基準(ISA)720の趣旨と同義である点を示す等の回答を行っております。このほか、資料4にはその他の文言、明確化ですとか整理等の観点から所要の修正を行っております。御説明としては以上でございます。

○八田部会長
 どうもありがとうございます。それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問・御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 
 水口委員、よろしくお願いします。
  
○水口委員
 資料4に該当すると思うんですけれども、8ページのところで、「虚偽の表示が生じる可能性と当該虚偽の表示が生じた場合の金額的及び質的影響の双方を考慮して」というような記述を入れていただいたのも、非常にありがたいと思います。利用者の立場からしますと、やはり金額的な影響だけ中心的に考えていただくのではなくて、質的な影響のほうもしっかり考えていただくことが必要だったのではないかと思うような何らかのリステートメントというのが散見されると認識しておりまして、記述は非常にありがたいと思います。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 
 林田委員、よろしくお願いします。
 
○林田委員
 確認なんですが、資料4の5ページの実施時期についてなんですけれども、「その他の記載内容」については「実施できる」と。リスク・アプローチに関しては、「実施することを妨げない」と。ここは、どういう経緯で違っていたのかというのを確認したかったんです。忘れてしまったものですから。
 
 それから、会計の問題でなくて書きぶりの話なんですけれども、文章が長いところが散見されていて、特に「しつつ」とか「何々とともに」とかいった接続詞が多いと思います。無理に一文にしようとすると、どうしても文章は分かりにくくなる。それから、いわゆる「こそあど言葉」といいまして、「これ」とか「それ」とか「ここ」とか「そこ」とかと言うと、それはどこだと考えさせてしまうので、文章として理解しにくくなる傾向があります。

 それが端的に出ているのが、今回修正が入ってはいますけれども、2ページ、「その他の記載内容」についての(1)なんですけれども、「この点」で始まっている文章でして、これが5行ありまして、字数にすると160字、12字組みの新聞ですと13行以上と。多くなっている。長さだけなら同じぐらいのところも何か所かあるんですが、この文章は先ほど指摘した「しつつ」で延ばした上に「そこで」で受けているので、意味は読めば分かるんですけれども、一読しただけでは分かりにくいと。端的に分解すれば、「その他の記載内容」に対して意見を表明するものではないんだと書いてあって、従来と同様の扱いなんだと。「その他の記載内容」に係る記載は、監査意見とは明確に区別された情報であると。その位置づけは変わりませんねと。今回の改訂については、「その他の記載内容」に記載すべき事項を明確にすることによって、監査人の「その他記載内容」に関する役割をより一層明確にする狙いがあるということになろうかと思います。今の理解で正しければいいのですが、違っていたら教えてください。

 一つ一つの概念があるわけで、それをいかに分かりやすく読む人に伝えるかということが、報告書などは国民にも分かりやすく伝えるというのは大切な観点であると思いますので、一文は長くても3行程度にとどめるように、事務局にはできるだけ努力してほしいと。何も全部書き換えてくれという意味ではありませんが、努力目標としてそうしていただきたいというお願いです。

○八田部会長
 ありがとうございました。別途検討させていただきたいと思います。
 
 それでは、大野委員、よろしくお願いします。
 
○大野委員
 監査役協会の大野でございます。ありがとうございます。今回、資料3の15番でございますが、監査役等の責任に関連しまして、金商法では必ずしも明確に監査役等の責任がうたわれていないところですが、コメントに対する考え方としまして、監査報告書において明確に監査役等が取締役の職務執行を監視する責任があるということを書いていただきましたのは、非常に明確に理解できるようになったと思います。ありがとうございました。以上です。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。ほかに、御質問・御意見はございますでしょうか。
  
 岡田委員、どうぞ。

○岡田委員
 これも監査役協会から出した意見だと思うんですが、コメントの20番のところですね。ここはほかの点でもいろいろ問題になるんですが、会社法と金商法、内容が違うと、あるいはタイミングが違うというのが常に問題になるわけですね。理想的には、まず株主総会に出される招集通知の中で、会社法上の監査で、「その他の記載内容」だとか、あるいは事業報告書そのものの内容が有報と合致していると。できるだけ投資家に対して、あるいは株主に対して情報を早く出すということが重要だと思いますので、この点を今後の課題ということで整理されていると思いますが、ぜひここを今後検討していただきたいと思います。
 
 実際には、KAMなんかでも同じような問題が起こっておりまして、タイミング的には、例えば会社法上の監査で、様々な監査を進めていくと間に合わないとか、あるいは不完全なものになってしまうおそれは確かにあるんですけれども、では、不完全だから出さずに最後にまとめて有報で出すのがいいのか、ある程度不完全でもその時点でベストナレッジで監査をして、あるいは企業側も開示をして、投資家・株主に情報を提供するのがいいのか、その後に丁寧な説明をして修正していくのがいいのか。この辺りはどちらかに決めて、視点としては株主を最重要視して考えていくということが大事だと思いますので、ぜひ今後の御検討をお願いしたいと思います。以上です。

○八田部会長
 貴重な御意見、ありがとうございます。我が国の場合、会社法と金商法上の2つの開示制度がなかなか一元化できていないという憾みがありますけれども、昔に比べるならば大分市場のほうをベースに会社法が近づいてきているというものもありますので、また制度的な部分で御検討いただきたいと思います。関係当局に御理解いただければと思います。

 紙谷委員、お願いいたします。
 
○紙谷委員
 紙谷でございます。ありがとうございます。事務局の皆様におかれましては、コメントレターの対応、大変ありがとうございました。全体的に適切に対応していただいているものと思います。特に、コメントレター対応の13番に関連しまして、特別な検討を必要とするリスクに関する部分ですけれども、公開草案の順番ですと若干読みにくいなと、「特に」という表現辺りが個人的に読みにくいなと思っておりましたので、定義を先に持ってきていただいて例示を記載していただく現在の形が非常に読みやすくなったと思っております。御対応ありがとうございました。以上です。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 では、井口委員、よろしくお願いします。

○井口委員
 よろしくお願いします。まず、事務局には、コメントレター等御対応いただき、どうもありがとうございました。今回の監査基準の改訂には、賛同しておりますので、基準の方には特に意見はありません。コメントレターのほうで2点ほど、コメント及び確認をさせていただければと思っています。
 
 1点目ですが、コメント15のほうに、監査役の責任というところがありますが、ここは、投資家にとっても非常に重要なところだと思っています。このコメントへの回答案等に関して意見はありませんし、今回の基準改訂そのものとは関係ありませんが、このコメントの質問者の意図にある監査役の責任について、監査報告書の利用者に資する情報を提供するということは非常に重要ではないかと考えております。そのためには、ここで書いていただいているようなことに加えて、内閣府令の改正に伴い設定された監査役会等の活動状況を通じて、監査役の方がしっかり責任を果たされているということを説明していただけるということも、有用な開示につながるのではないかと思います。現状、記述量というのは内閣府令改正以降増えていると思いますが、その説明内容は仕組みの説明にとどまっているケースが多く、多くの企業において、投資家が監査役会の実効性を判断できる状況にはないと考えております。基準改訂には直接関係ありませんが、非常に重要な事項だと思い、今後、開示の拡充をしていただきたいと思っていますので、この機会に発言させていただければと思いました。

 もう1つが、コメントの9の「重要な誤り」というところになります。「その他の記載内容」を利用する利用者あるいは投資家としては、非常に重要な箇所と思っております。例えば、役員報酬体系の開示の拡充を最近していただいておりますが、役員報酬が営業利益に連動するという記載があった場合で、減益にも関わらず報酬が増加しているというケースも、一部の企業ではあります。このような場合、投資家から見ると、開示していただいている報酬体系が全く機能していないのではないか、もう少し踏み込んでいいますと、ガバナンスの中でも最も重要な、報酬体系をモニタリングしている取締役会が機能していないのではないかというような考えに至るということになります。実態面でしっかり運営されているとなると、まさにこの御説明にある、利用者に適切に理解されず誤解を生む表現に相当すると考えております。

 営業利益と役員報酬の間に、他の要素があり、記載が省略されている、あるいは「等」という表現になっているということが原因と思っておりますが、このように、役員報酬の開示だけではなく、「その他の記載内容」において、投資家に誤解を生む記載のケースでは、往々にして開示が不足している場合が多いと考えております。ですので、「その他の記載内容」のチェックにおいては、「重要な誤り」を避けるため、開示の縮小や記述控えを行うことは逆効果で、むしろ開示を拡大することにより、「重要な誤り」の記載を避ける必要があるのではないかと考えております。この点、もし御解説などありましたら事務局のほうから御説明等いただければと思っております。長くなりましたが、以上でございます。

○八田部会長
 どうもありがとうございます。
 前後してしまいますが、先ほど林田委員より御質問いただいておりました実施時期の表現に関する問題ですが、この点について事務局から御説明させていただきます。
 
○島崎企業開示課長
 御審議いただいたりした監査基準全体、その他の監査基準も含めてですけれども、それぞれの定着ですとか準備状況ですとか、そういったものを総合的に勘案しまして、それぞれ「その他の記載内容」については2022年3月、KAMなどを意識している部分というのもあると思いますけれども、2021年3月決算に係る財務諸表の監査から実施することができる。リスク・アプローチの強化につきましても、総合的に勘案して、2023年の3月決算かなというような建付にしているところでございます。
 
○林田委員
 伺いたかったのはそういうことではなくて、「実施することができる」という表現と「実施することを妨げない」という表現で、表現ぶりが違うのですけれども、それはなぜ違うのですかということをお尋ねしたんです。
 
○八田部会長
 井上参事官、よろしくお願いします。
 
○井上参事官
 お答えいたします。「その他の記載内容」については、令和3年3月決算の財務諸表から「実施することができる」ということなんですけれども、リスク・アプローチで、「それ以前の決算に係る財務諸表の監査から実施することを妨げない」としておりますのは、例えばこの監査基準が、最終的に今年の11月までに御了解いただいて発効した場合に、令和2年の12月決算においても適用ができるという意味において、「その他の記載内容」のほうとは実質的に異なった効果が出てくるということでございます。
 
○林田委員
 分かりました。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。
 
 それでは、先ほどの井口委員の、最後、御質問があったように思いましたけれども。
 
○島崎企業開示課長
 開示控えみたいなものに対するお考えだと思いますけれども、金融商品取引法上必要とされる事項については、もちろん不正確をおそれて記載しないというわけにはいきませんし、こうしたものについて、私どももそういった方向に取り組んでいますが、開示内容の充実を図る、開示の質を向上させていくということが大事なんだと考えております。その領域に属さない情報について言いますと、もちろん企業の判断に属する事項とは考えられますが、投資家との対話などを意識して行われていくということは、もちろん情報が正確であったり、誤解を与えないようにすることは必要であった上で有意義であろうと考えております。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。
 
○古澤企画市場局長
 今の補足をしてもよろしいですか。
 
○八田部会長
 では古澤局長、お願いします。
 
○古澤企画市場局長
 古澤です。井口委員、どうもありがとうございました。
開示の件は、御案内のとおり、前回のディスクロージャーワーキングからずっと議論しておりますけれども、この問題、そのときも議論させていただきましたら、ルールを見直しただけではなかなか開示というのは変わっていかないのではないかという問題意識を、当時も委員の方からも御指摘いただきましたし、我々もそういうふうに思っております。したがいまして、幾つかいろいろな試みをしておりますけれども、例えば開示課のほうでは、井口委員にも入っていただいて、開示の好事例を皆さんに紹介し、それを広げるという取組ですとか、先ほどちょっと話が出ました、監査役の活動状況ではないんですけれども、例えば役員報酬につきましても、御案内のとおり、最近の役員報酬の開示状況といったものについて、我々も情報を集めて発信していくというようなことを進めてございます。おっしゃるとおり、従来ですと、ルールが決まると、どちらかというと危ないから開示をしないようにしようというモメンタムが働きがちなんですけれども、そこを何とか変えていくべくいろいろな公示へのアプローチもありますし、今事務年度の場合、これからコーポレートガバナンス・コードの見直しの作業も進めてまいりますけれども、そういった企業と投資家の対話を通じて、よりよい開示を促していく。先ほどの林田委員にお言葉を借りれば、より分かりやすい、利用者にとって見やすい開示を促していくということも大事だなと思っております。

 若干付言させていただきました。ありがとうございます。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。

○井口委員
 ありがとうございました。
 
○八田部会長
 それでは引き続き、住田委員、よろしくお願いいたします。
 
○住田委員
 ありがとうございます。住田です。今回の監査基準及び中間監査基準の改訂は、時間がかかってしまいましたけれども、非常に有意義な改訂になると考えております。また、公開草案を出す前に、持ち回り審議の際にコメントとして提出させていただいた内容も含めて御検討いただいたようで、コメント対応表において、クリアではなかった部分を明確に説明していただいたということで、御礼を申し上げたいと思います。
 
 特に気になっていたのは、コメント表の16番です。国際監査基準720の改訂をベースにして、今回、日本の監査基準においても「その他の記載内容」に対する監査人の関与のバーを上げるということでございまして、「その他の記載内容」に対して、保証業務として監査人の手続きを拡大するわけではないということが監査報告書において明確に説明されているかどうかというのが一番気になっていたところでございます。それについては、コメントに対する考え方のところで、引用していただいている国際監査基準720の22(C)と監査基準の「監査人が意見を述べない」は同趣旨である、つまり、“or”以下の“any form of assurance conclusion thereon”の部分が含まれており、「その他の記載内容」に対して監査意見を述べないだけではなく、限定的保証を得て何らかの結論を表明するものでもないという趣旨であることをここに明確に書いていただけましたので、日本においても利用者の方に新たな期待ギャップが生じるということが、これで一応、防止できるのかなと考えております。

 それから、今の井口委員とのやり取りの中でも言及されていましたが、コメント9で「重要な誤り」はどんな内容を指すのかというコメントに対して、「不正確であり、利用者に適切に理解されず誤解を招くような重要な誤り」ということのほかに、そもそも記載すべきことが書かれていないという、欠けている場合も「重要な誤り」に含まれるということを明確にここで示していただけたのは非常によかったと考えております。
 
 以上でございます。ありがとうございました。
  
○八田部会長
 どうもありがとうございます。
 
 それでは、大瀧委員、よろしくお願いします。
 
○大瀧委員
 ありがとうございます。SMBC日興証券の大瀧です。利用者の立場からコメントいたします。

 本改訂につきましては、取りまとめていただきどうもありがとうございます。内容につきましては賛同しております。先ほどより話が出ていますが、開示府令の改正によって有価証券報告書の記載、特に非財務情報の記載が充実してきたと思っております。そうした中で、「その他の記載内容」に関して、このような形で監査が入ることは、投資家にとって非常に有用だと考えております。
 
 先ほど住田委員からもお話がございましたけれども、コメント対応の中の9番、「重要な誤り」に関して、「利用者に適切に理解されず誤解を招くような」という表現や、さらに「情報が欠けている場合」と明記していただいた点は、非常によかったと考えております。
 
 それから、監査報告に関しましては、先ほど岡田委員からお話がございましたけれども、株主総会前にこういった情報が出てくることが、利用者・投資家にとってより有用になると思いますので、今後検討を進めていただきたいと考えております。
 
 最後に、利用者からのお願いですけれども、本基準が施行された後、企業及び監査法人の皆様には、ぜひとも今期からの早期適用を前向きに御検討いただきたいと考えております。前期決算では、コロナ禍の中、KAMを早期適用していただいた会社がございました。非常に感謝しております。今期末はKAMが原則適用になるということで、投資家も、監査報告書に関心が集まり、積極的に見るようになると思います。それに合わせて、今回の改訂に関して早期適用していただくことで、「その他の記載内容」につきましても、投資家の理解が一層早く進むのではないかと期待をしております。何とぞ御検討のほどよろしくお願い申し上げます。

 私からは以上です。
 
○八田部会長
 貴重な御意見、どうもありがとうございます。
 
 それでは、手塚委員、よろしくお願いします。
 
○手塚委員
 公認会計士協会会長の手塚です。皆様の御議論の結果として、この監査基準の改訂も、実務に落とし込めるようになってきたと思います。監査を実施する業界としては、これを実務に入れるときに、事業報告を企業側がお作りになる時期と、それが監査人側に引き渡される時期、これが非常に重要になると思いますので、実際に本監査基準が改訂されてから適用されるまでの間に企業サイド、作成者側の監査役の皆様と監査人側で十分協議をした上で、適切なタイミングで事業報告の受渡しができるように、我々としては会員にも周知をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 以上でございます。
 
○八田部会長
 ありがとうございました。期待ギャップという言葉も出ますので、会計士協会のほうでも御尽力いただけますようにお願いいたします。

 それでは、中西委員、よろしくお願いします。
 
○中西委員
 中西です。よろしくお願いいたします。
 
 今回、いろいろな改訂をされたということで、私としましては全体的に非常にいい改訂だと思っておりますので、このまま進めていただければと思います。ただ、適用時期につきまして、早期適用、大瀧委員などがおっしゃられましたけれども、こういったところ、私は早いほうがいいと思いまして賛成なんですけれども、具体的に言いますと、早期適用した場合はKAMの正式適用と一緒になると。また、次の年に、今度は今回の改訂がある。さらに、リスクの部分についてはその翌年ということで、結構スケジュールが忙しいと。会社の実務からしますと、一個一個やっていくだけで手いっぱいとなる可能性があるので、なかなか早期適用というのは期待しにくいんじゃないか。実際、KAMの早期適用に関しては、残念ながら四十数社しか早期適用はなかったということなので、残念なところもございまして、それであれば、早期適用がかなわないまでも、せめて早くからこれを経営者ですとか監査役・監査等委員などに意識していただくのが非常に大事かと思います。そうしますと、早期適用に関しては、どう考えるか、開示時期が2022年3月から始めるのか、2021年3月の早期適用をするかどうかに関しての各社の意見を開示してもらうなど、意識づけを向上させる施策というのを一ついただければなと。そうでもないと、目の前のKAMだけに一生懸命で、今回の改正部分については早期適用ですとか、早めに準備をして来期に備えるとか、そういうことが行われないんだという企業の現場が早期適用に消極的となる危惧もございますので、早期適用に向けて、あるいは早期適用ではなくても意識を早く企業が向けてくれるような対策、開示なども含めて一つ御検討いただければと思う次第です。
 
 以上でございます。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。

 何人かの委員から、適用時期の問題についての御発言がありましたが、既にこれまでの会議の中でも御議論いただいておりまして、一応早くできるところは早く適用していただくということ。しかしタイムリー・ディスクロージャーという要請の中で、実際に事例を見ていますと、早いだけで本当にいいのかなと首を傾げたくなるような事例も散見されます。やはり、開示情報の信頼性・正確性というのも十分に担保されていなければ駄目なのではないかということで、この辺はいろいろお立場がありますので、一応今回の適用の時期の御議論を御了解いただければと思います。
 
 それでは、それ以外に御発言を御希望される方。

 では、熊谷委員、お願いいたします。
 
○熊谷委員
 ありがとうございます。事務局の方々にコメント対応していただきまして、先ほど林田委員から御指摘があったであろうかと思うんですけれども、もともとの公開草案よりは意味がクリアになって分かりやすくなったのではないかなと思います。ただ、長期的に、意味の明確化で文章を短くしてほしいという話は私も同意いたします。
 
 そもそも今回の改訂は、記述情報の開示の充実やKAMの導入、それから会計上の見積りに係る会計基準の適用が今年度から始まるわけでありますけれども、それに平仄が合った、監査制度とその周辺制度との整合性が取られる非常に重要な改訂ではないかなというふうに、利用者の立場から思っております。

 KAMの適用ですけれども、今、中西委員からございましたように、適用が実際あったのは四十数社にとどまっておりますけれども、利用者の立場からしますとこの四十数社というのはそもそも開示に積極的で、KAMの記載に協力的な会社だったというふうに理解しております。今回拝見しておりまして、もちろんいい例、悪い例といいますか、いい例とそれほどでもない例とたくさんあるわけですけれども、改めまして、監査人にとって、KAMというのは投資家とのコミュニケーション上の強力なツールになると思っております。そういう意味で、今回の監査基準そのものの改訂によりまして、リスク・アプローチの強化というのはKAMを記載していく上でも非常に重要な改訂ではないかと思います。実際、数えてみますと、今回記載されているKAMのうち、約8割強が会計上の見積りに関わるものでありまして、そういう意味でリスク・アプローチ、特にリスクの評価の部分、ここは監査上の手続きでも非常に重要になってくると思います。そこが明確化されていて、強化されたというのは、大変重要だろうと思っています。

 一方で、先ほどから議論が出ております、岡田委員、井口委員からも御指摘がありましたけれども、KAMというのが次の段階として、会社法にどう適用していくかというのは大きな課題だろうというふうに思います。私は以前、難しいのではないかという立場でお話をしておりますけれども、今回、改めてKAMを拝見しておりまして、やはりこういった情報が、株主総会の前に事業報告書、計算書類等の監査報告書にKAMが記載されるというのは重要ではないかと思いますし、これはコーポレートガバナンス、あるいは投資家のスチュワードシップ責任を果たしていく上で非常に重要になってくると思います。ただ、これは監査ですとか会計だけではなくて、株主総会の開催の分散化など、周辺制度との調整というのが必要になってくると思います。

 株主総会分散化に関しましては、法制度上はできることはもう決まっていると聞いておりますけれども、やはり金融庁、法務省、あるいは経産省等々の関係省庁に、株主総会開催分散化に向けて一層の旗振りをしていっていただきたいと。そうすることによって、今回の監査基準の改訂というのがますます活きて、周辺制度の改革と監査制度の改革というのが一丸となって、日本の資本市場をよりよくしていくという方向になっていくのではないかと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございました。

 ほかに御意見ございますでしょうか。

 水口委員、どうぞ。
 
○水口委員
 どうもありがとうございます。何人かの利用者からのコメントがあったところですが、当該監査基準の足元の字句修正に限定せずコメントさせていただきます。
 
 私も「その他の記載内容」が監査基準改訂のスコープに入ったことを大いに歓迎するところです。IAASBのラウンドテーブルなどにも参加したりして、世界の会計監査に関わる人々のいろいろな意見も聞いたところではありますが、多くの発言者が、非財務情報の充実と監査の質の向上に向けて監査人ができることについて付言しておりました。KAMの記載等については、企業側の努力もあって、非財務情報の記述が充実したということも非常に大事な要素であるという発言もありまして、私もそのように思います。また、こうしたグローバルの議論の場で、ガバナンスの観点から、監査プロセスの中で、監査役がどのようにオーバーサイトする力を発揮し得るかということにも、スポットライトが当っておりました。ご紹介まで。今回の監査基準の改訂というのは、こういった様々な流れを捉えた改訂であることを考えております。
 
 以上です。
   
○八田部会長
 どうもありがとうございます。
 
 それでは、今給黎委員、お願いします。
 
○今給黎委員
 日立製作所の今給黎でございます。御説明、コメント対応ありがとうございました。「その他の記載内容」、「リスク・アプローチの強化」につきまして、この度の改訂は、考え方や定義、文言の明確化といったような内容で、監査の現場への影響という点では基本的に枠組みに変更はなく、大きな混乱は想定されないと理解しておりまして、特に違和感はございません。ただ、監査の環境という点では、この半年で大きく変わった印象がございまして、特にコロナ禍の影響で、監査人との新しい距離感というものを経験しましたし、また、事業リスクの予測の難しさでありますとか、あるいは監査プロセスそのものの新しい課題も認識しているところでございます。
 
 今回の改訂の基本的な前提であります企業の記述情報の開示の充実につきましても、開示府令の対応はもとより、今年の行政方針などでもお示しいただいておりますように、サステナブル、気候変動・ESGといったような新しい分野も非常にフォーカスされてきたということで、こうした議論を監査の現場においてどのように行っていくかということにつきましては、試行錯誤の面がかなりあるかと思います。私ども企業としても、開示の工夫に努めてまいらなければいけないと思いますけれども、ぜひ今後に向けて前向きな議論になりますように、監査法人の皆様には、引き続き緊張感ある緊密な連携と効率的な対応をお願いしたいと思いますし、投資家の皆様におかれましても、ぜひ議論をフィードバックいただいて、積極的な対話につながりますようよろしくお願いいたします。
 
 以上でございます。
 
○八田部会長
 貴重な御意見、どうもありがとうございます。

 では、手塚委員、お願いいたします。
 
○手塚委員
 今の今給黎委員からのお話と関連しますが、このコロナ禍で、この間の2020年3月期の決算においては企業の情報開示の充実と、一部ではございますがKAMの早期適用が行われ、投資家と企業との対話という観点からは、情報開示に関して進んだと考えています。ただ、実は企業の業績の見積りに関しては、進行年度において企業業績の悪化が顕在化した中で、進行年度の企業決算と監査というのがより困難度を増すと考えております。これは今回の監査基準の改訂と直接関係する話ではありませんが、企業側と監査人側とがしっかりと対話をし、また、監査役等の皆さんともしっかり対話をしながら進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。間違っても、監査も企業側の開示も後退しないような協働体制を築いていきたいと考えております。
 
○八田部会長
 どうもありがとうございます。
 
 ほかにいかがでしょうか。特にございませんでしょうか。それでは、当初予定しておりましたよりも時間が早まっておりますけれども、大変多数の貴重な御意見をいただきました。事務局のほうから、何か御発言されることはありますでしょうか。いかがでしょうか。
 
それでは、本日の審議は、少し早いですがこの辺で終わらせていただきますけれども、今日、大変貴重な御意見をいろいろいただきました。今回の監査基準の改訂案は、ほぼほぼ合意が得られたと考えております。私といたしましては、先ほど林田委員の御発言にもありまして、文章上の字句修正、もう少し短くしろというような御発言もありましたので、全体をもう一回見させていただきまして、もし必要であれば所要の修正をさせていただきます。そして、それを総会のほうにお諮りいたしますけれども、微修正といいますか、調整に関しましては、部会長である私のほうに御一任いただくということでよろしいでしょうか。

(異議なし)

 
○八田部会長
 御賛同いただけましたので、そのようにさせていただきます。それでは、そのような形で調整をさせていただいて、最終的に案を完成させたいと思います。

 では、当部会の基準案として審議会の総会にお諮りをさせていただくということで、念のため確認をいたしますが、これでよろしいということで、委員の方々の御了解が得られました。

 それでは後日、この意見書案につきまして、再度事務局から皆様方に御送付をさせていただきたいと思います。

 最後に、今後の日程等につきまして、事務局からお願いいたします。
 
○西山開示業務室長
 事務局でございます。今後の日程につきましては、改めて事務局から御連絡させていただきます。委員の皆様には、本日を含めて計8回にわたり、充実した御議論をいただき、大変ありがとうございました。これにて本日の監査部会を終了いたします。

以上 
お問い合わせ先

企画市場局企業開示課

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)(内線3655、3844)

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