企業会計審議会第55回監査部会議事録

1.日時:令和5年12月14日(木曜)15時00分~17時00分

2.場所:オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室


【堀江部会長】

これより企業会計審議会第55回監査部会を開催いたします。皆様には御多忙の中、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

本日の会議でございますが、企業会計審議会議事規則第1条第2項に則り、オンライン開催とさせていただきます。

それでは、まず、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則第4条第1項に則り、監査部会の審議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 御了解いただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継させていただきます。なお、会議の議事録を作成し、金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

それでは、事務局より、オンライン会議の開催に当たっての留意事項をお知らせいたします。

【齊藤開示業務室長】

事務局の企業開示課開示業務室長の齊藤でございます。

オンライン開催に関して、2点注意事項がございます。

1点目として、御発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。御発言されるときはマイクをオンにして、ミュート解除で御発言していただき、御発言が終わられましたら、またミュートにしていただくということでお願いいたします。また、支障のない範囲で構いませんけれども、会議中はお顔が見られるように、カメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。

2点目として、発言を希望される際ですが、チャット機能を使って全員宛てに発言希望である旨とお名前をともに入れてお送りください。お名前については、協会名などの組織名でも結構ですので御入力ください。それをこちらで確認させていただいた上で、部会長から指名させていただきたいと思います。なお、御発言に際しては、念のため御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言いただければ幸いでございます。

【堀江部会長】

次に、事務局から、本日の会議の参考人の御紹介をお願いいたします。

【齊藤開示業務室長】

本日は、参考人として、東京証券取引所の菊池教之上場部長、企業会計基準委員会の川西安喜委員長に御出席いただいております。

【堀江部会長】

ありがとうございます。

それでは、早速審議に入りたいと思います。本日は、事務局において、前回の当部会での議論を踏まえた対応案に加えて、四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂等に係る公開草案を準備いたしましたので、まず、事務局からその内容について説明いたします。その後、皆様から御質問、御意見をいただきたいと思います。

それでは、事務局から説明をお願いいたします。
 

【齊藤開示業務室長】

それでは、四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂等に係る公開草案ついて、まずは、前回の当部会における御議論を踏まえた対応に関して、資料1の事務局資料に沿って御説明させていただきます。

1ページ目の基準の名称・対象範囲については、左側に前回の主な議論、右側に対応案をお示ししております。前回の御議論において、レビューの基準については、四半期レビュー基準を改訂し、法定の中間財務諸表に対するレビューに加えて、四半期決算短信におけるレビューもカバーする期中レビュー基準を策定する方向性となりました。これを踏まえて、年度の財務諸表の監査を実施する監査人が行う期中レビューに関する基準を策定するため、四半期レビュー基準の用語を改訂し、基準名は「期中レビュー基準」に名称を変更いたします。

また、期中レビュー基準については、年度の財務諸表の監査を実施する監査人が行う期中レビュー業務全てに共通するものとして、監査基準と同様に、一般目的又は特別目的の期中財務諸表を対象とした適正性又は準拠性に関する結論の表明が可能であることを明確化いたします。

さらに、品質管理基準が期中レビューに準用されるよう、品質管理基準における用語の置き換えも行います。

2ページ目には、御参考として、期中レビュー基準において想定されている結論の表明をお示ししております。一般目的又は特別目的の期中財務諸表を対象として、適正性又は準拠性に関する結論の表明があり、資料の下部において現行実務の例を紹介しております。

続きまして、3ページ目、適正性に関する結論と準拠性に関する結論について、前回の当部会において、創意工夫して周知すべきという御意見をいただきました。この点については、東京証券取引所や日本公認会計士協会等と連携して周知徹底して参りたいと考えております。加えて、適正性又は準拠性に関する結論の異同については、今般の意見書においても、監査基準の意見書の内容を踏まえて明記することを考えております。

こちらの内容については、次の4ページ目にまとめさせていただきました。ポイントとしては、適正性に関する結論と準拠性に関する結論のいずれの場合も、監査人は会計基準の準拠や取引の実態を適切に反映しているか等も見るということ、限定的保証として保証水準は同じであるということでございます。

また、違いという観点では、適正性に関する結論の場合は、財務諸表などの利用者が適切に理解できるように、監査人は財務諸表が全体として適切に表示されているか否かについての一歩離れて行う評価を行い、追加の開示が必要であればレビューで指摘し、企業は追加的な開示要請の規定があるため、当該規定に応じることがあるということでございます。これらの点を4ページ目の下半分において図で示させていただきました。

続きまして、5ページ目になります。前回の当部会では四半期決算短信におけるレビューについても、御意見を頂戴しました。四半期決算短信におけるレビューについては一律には義務づけされず、レビューの実施は企業において、例えば、資金調達の場面等も勘案して判断されることになるということだと考えております。

四半期決算短信におけるレビューについては、東京証券取引所の四半期開示の見直しに関する実務検討会で議論が進められておりますところ、その点を御紹介させていただきます。前回の当部会において、四半期決算短信におけるレビューは、準拠性又は適正性に関する結論について、それぞれの結論を支持する御意見がございました。東京証券取引所における実務検討会の方針としては、四半期決算短信の財務報告の枠組みについては、適正表示を達成するための追加開示の明示的な規定を想定していないということから、準拠性の枠組みに対するレビューを想定しております。一方で、企業が財務諸表等規則等に基づいて開示を行う場合には、適正表示の枠組みになることも考えられるとされており、準拠性に関する結論と適正性に関する結論の両方が取り扱われております。

続きまして、6ページ目でございます。こちら期中レビュー基準の概要を1枚にまとめさせていただいております。左側に表、右側に図がございまして、右側の図では、期中レビューの基準が対象とするレビューが青で塗り潰されております。現行の四半期レビュー基準から期中レビュー基準になると、一本化後の図においては、対象のレビューが多様になることをお示ししております。また、左側の表では、参考に監査基準も併記させていただいており、既に監査基準は対象が多様であるということもお示しさせていただいております。

7ページ目と8ページ目は、個別の論点になります。7ページ目では後発事象と継続企業の前提について、8ページ目は不正への対応について記載しております。前回の当部会において、準拠性に関する結論表明の場合は、レビューの手続がどうなのかという御議論がございました。期中レビュー基準においては、適正性に関する結論と準拠性に関する結論のいずれの場合も、レビューの手続に相違はないとしております。

この中で、四半期決算短信におけるレビューに関連して、継続企業の前提に関する御質問を前回の当部会でいただきました。この点については、7ページ目の右下に記載のとおり、取引所の規則で定められる方向で検討中と承知しております。

8ページ目の不正への対応について、不正リスク対応基準が期中レビュー基準に適用されないことは現行の四半期レビュー基準と同様になりますが、レビューの過程で不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合等には、監査人は、必要に応じて、期中レビュー基準に従って、追加的手続を実施することにしております。

9ページ目以降は、改正金融商品取引法に伴う関係府令の整備案について、御説明申し上げます。先週、パブリックコメントのため公表させていただいております。内容としては、四半期報告書制度を廃止して、半期報告書を資料の表にあるとおり規定し、さらに、2種類の中間財務諸表を規定して、レビューと監査を受けるものに区分しております。また、監査証明府令では、一般に公正妥当と認められる監査の基準に該当するものとして、企業会計審議会が公表した基準のうち四半期レビュー基準を期中レビュー基準に改めることといたします。

10ページ目以降は、適用時期の御説明です。施行時期については、改正金融商品取引法の附則第1条において、令和6年4月1日と規定しております。経過措置が設けられており、具体的には11ページ目と12ページ目にございます。

11ページ目について、上から4月決算会社の開示書類から並んでおりますけれども、真ん中付近の8月決算を御覧いただきますと、四半期報告書(3Q)が3月から開始いたします。このように施行日の4月1日より前に始まる四半期については、四半期報告書は従前の例によることとなります。

また、半期報告書に関しては、11ページ目の下から4つ目の12月決算を御覧いただきますと、半期が1月から6月になりまして、4月より前に半期が始まりますけれども、2Qが4月以降から開始します。このようなケースについては、半期報告書は新しい枠組みになるというところでございます。

以上が事務局資料になり、続きまして、資料4のレビュー基準に係る新旧対照表について御説明申し上げます。資料4には、一番右側の列に監査基準の抜粋を併記しており、特別目的の期中財務諸表や準拠性に関する結論の表明に関する記述が参考になると考えております。

1ページ目に記載のとおり、基準の名称を「四半期レビュー基準」から「期中レビュー基準」に変更しております。それから、基準の冒頭にありますとおり、「四半期レビュー」を「期中レビュー」に変える、このような用語の置き換えが多くなっております。これ以外の改訂部分のポイントを御説明申し上げたいと思います。

2ページ目、第一レビューの目的第2項では文章が加わっております。これは期中レビューの目的を改訂することで、一般目的の期中財務諸表又は特別目的の期中財務諸表を対象とした準拠性に関する結論の表明が可能であることを明確にしております。監査基準にも同様の規定があるところでございます。

2ページ目の第二実施基準第2項においても文章が付け加わっております。こちらは、監査人は特別目的の期中財務諸表の期中レビューを行うに当たり、当該期中財務諸表の作成の基準が受入れ可能かどうかについて十分な検討を行わなければならないことを明確にしており、ここについても監査基準に同様の規定がございます。

ここから9ページ目まで飛びまして、第三報告基準第1項の部分に文章を付け加えております。こちらは適正性に関する結論の表明について、特別の利用目的に適合した会計の基準により作成される期中財務諸表、つまり特別目的の期中財務諸表について付け加えております。また、準拠性に関する結論の表明についても新たに規定しております。さらに、準拠性に関する結論の表明については、適正性に関する結論の表明を前提としている報告基準に準ずることとしております。こちらについても、監査基準に同様の規定がございます。

10ページ目、4.結論の表明との区別については、現行の四半期レビュー基準の該当部分が、これまでの改訂において、今の文章上、継続企業の前提に関する事項を追記するものとされていますけれども、これは必ずしも適当ではなかったものですから、今回修正させていただくものでございます。

 17ページ目、13.追記情報の⑴会計方針の変更について、現行の基準では「正当な理由による」という部分がございますけれども、監査基準では過去の改訂時に削除されておりまして、こちらレビューの基準でも反映して、ここの部分は今回削除させていただいております。

同じく17ページ目の下に、14.特別目的の期中財務諸表に対する期中レビューの場合の追記情報を設けておりまして、ここについても監査基準に同様の規定があるというところでございます。

続きまして、資料5の監査に関する品質管理基準の新旧対照表でございます。こちらについては、期中レビューについて品質管理基準が準用されるように、「四半期レビュー」を「期中レビュー」へ変更し、用語の置き換えをするというところでございます。

さらに、資料3の意見書の公開草案について、御説明を申し上げます。資料3には、監査基準の意見書の抜粋について、御参考として併記をさせていただいているというところでございます。

まず、経緯を記しており、四半期報告書制度の見直しについては、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループで報告書が取りまとめられ、改正金融商品取引法が本年11月に成立し所要の規定が整備されるという旨を記載した上で、四半期開示の見直しに伴う監査人のレビューに係る必要な対応については、本年9月から当部会において審議を開始したことを記載しております。

そして、期中レビューについては様々なものが想定されるので、この2ページ目の「例えば」という段落のところで、一般目的の期中財務諸表に対する適正性に関する結論や準拠性に関する結論があること、それから、特別目的の期中財務諸表に対する結論の表明があることを記載させていただいております。

3ページ目、こうしたことから、四半期レビューの基準については、年度の財務諸表の監査人が行う期中レビュー全てに共通するものとする方向で改訂の検討を進め、当部会において公開草案を取りまとめたこと。また、改訂の概要として、「四半期レビュー基準」を「期中レビュー基準」に名称変更して、準拠性に関する結論の表明の形式を期中レビュー基準に導入したこと。さらに、特別目的の期中財務諸表に対する結論の表明、この位置づけを明確にしたということも記載しております。

4ページ目では、先程御説明した基準案のとおり、一般目的の期中財務諸表に対する適正性に関する結論の表明を基本として、準拠性に関する結論や特別目的の期中財務諸表について付け加えていることを記載しております。加えて、今回の改訂については、公認会計士はもちろんのこと、作成者や利用者に対しても、適切な理解を促すため十分に周知を図られることが望ましいと考えております。

4ページ目の二主な改訂点とその考え方では、事務局資料や基準の新旧対照表で御説明した点がほとんどでございます。(1)では「期中レビュー基準への名称変更」を行うこと、(2)では期中レビューの目的を改訂して特別目的や準拠性の部分を付け加えているということを記載しております。

5ページ目では、(3)実施基準について、準拠性に関する結論の表明であってもこの実施基準が適用されるということを記載するとともに、前回の当部会において委員の方々から御指摘がありました継続企業の前提に関する手続にも言及しております。さらに、期中財務諸表を構成する個別の項目などに対する期中レビューについても、期中レビュー基準が適用されるという旨を記載しております。

6ページ目は、報告基準も含めて、レビュー基準の新旧対照表で概要は御説明申し上げたことを記載しております。

7ページ目では、2.監査に関する品質管理基準の改訂において、品質管理基準を改訂し、期中レビューについて品質管理基準が準用されるようにした点を記載しております。

8ページ目は、事務局資料で説明しました不正リスク対応基準との関係と実施時期について記載しております。最後のところでは、日本公認会計士協会による実務の指針の今後の作成についても記載させていただいております。

私からの御説明は以上でございます。ありがとうございます。

【堀江部会長】

ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明に関する、御質問や御意見を委員の皆様方から頂戴したいと思います。多くの委員の皆様に御発言いただき、その御発言を踏まえた議論の時間を確保する観点から、誠に恐縮ではございますが、御発言の時間としては、お一人4~5分を目安としていただければありがたく存じます。それでは、チャット機能を使いいただき、発言希望である旨を送信していただければと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、今給黎委員からお願いいたします。どうぞ御発言ください。

【今給黎委員】

日立製作所の今給黎でございます。丁寧な御説明ありがとうございます。

作成者の観点からですが、1Q・3Qの四半期決算短信のレビューにつきましては、原則任意の枠組みを前提にして、四半期決算短信の速報性の趣旨を踏まえて、決算発表の日程、レビューの費用対効果、継続監査の効率化・平準化、ガバナンスの質の維持等について、各企業において判断することになると考えております。

また、別途、四半期会計基準の見直しについても、ASBJさんで議論が進んでいるということで、ぜひシンプルな置き換えになるようお願いしたいと思いますが、本日御説明いただきました期中レビュー基準への改訂の御提案内容につきましては、特に異論はございません。

今回の議論では、実務の準備を進めていく上でのキーワードとして、一般目的と特別目的、適正性と準拠性、1Q・3Qと半期が整理されております。まず、一般目的の1Q・3Qの四半期決算短信におけるレビューについては、事務局資料5ページに記載頂いたとおり、基本的に準拠性の結論のレビューが想定されるものと理解しております。一方で、基準改訂の公開草案の文案では、期中レビュー全般についてということで、一般目的の適正性に関する結論に軸足を置いた記載ぶりもございます。この辺り、適正性・準拠性の議論も非常に難しいのですが、ぜひ、1Q・3Qの四半期決算短信と法定の中間財務諸表の期中レビューにつきましては、それぞれ実務の現場で誤解や混乱が生じないよう、引き続き、関係者のコンセンサスづくり等進めていただければと思います。

以上でございます。ありがとうございます。

【堀江部会長】
 貴重な御意見ありがとうございます。ただいまの今給黎委員の御意見を踏まえまして、十分誤解等ないように関係各位と進めさせていただきたいと存じます。
 それでは、引き続きまして、引頭委員、お願いいたします。
 
【引頭委員】
 今回の「期中レビュー基準」に統一するというこの取りまとめにつきまして、前回の当部会と比べて表現等大変分かりやすくなっていると感じており、事務局の方々の御尽力には大変感謝申し上げます。その上で、運用に関して、本日は東京証券取引所の方がいらしているということで、2点質問させてください。
 1点目は、事務局資料5ページ目でございます。右側の対応案の2つ目の矢羽根において、財務諸表等規則等に基づいて開示を行う場合には適正性に関する結論になることも考えられると記載がございますが、これはどんな場合を想定されているのかということについて教えてください。
 2点目は、事務局資料6ページについて、先程事務局から御説明いただいたように、様々なレビューが混在することになることは理解いたしますが、また、決算短信は速報性を重視しており、記載内容にミスが多いため、修正されるケースが多いと思います。そうした中で、一部漏れ聞いたところですと、できる限り決算短信と一緒にレビューも付して頂きたい、というふうにおっしゃられていると思いますが、実際、提出した決算短信に記載誤りがあった場合、どのような取扱いになるのか、もし今何か御方針等ございましたら教えてください。
 以上でございます。
 
【堀江部会長】
 ありがとうございました。それでは、東京証券取引所の菊池様、ただいま2点御質問いただきましたので、これについてお答えいただけますと幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 
【菊池参考人】
 ありがとうございます。東京証券取引所上場部の菊池でございます。御質問いただきましてありがとうございます。
 まず前提として、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、新制度では、四半期決算短信に投資家が特に必要と認める事項を追加するという方向性が示されました。
 決算短信におきましては、セグメント情報とキャッシュフロー情報の注記について追加いたしますが、その他の注記については省略することができるということが前提としてございますので、注記を大幅に省略した場合には、この適正表示の枠組みは難しいと理解しております。一方で、現行の四半期報告書と同レベル、つまり財務諸表等規則等に基づいて注記も全てそろった四半期決算短信を作成する会社におかれましては、適正性の結論を表明することができると考えられます。そういったフル開示をするような場合も想定した規則の建付けにしようということを今考えております。
 したがって、1点目の質問については、現行の四半期報告書に添付されます四半期財務諸表と同水準の内容を開示される場合には、適正表示の枠組みになることも想定されるということでございます。
 2点目は、決算短信とレビューを同時に出すというお話と、決算短信を訂正する場合の対応方針についてお話をいただきました。前提といたしまして、基本的には、レビューをするかどうかというのは、原則は任意となっております。一方で、会計不正等があった場合など、一部の条件を満たす場合には、取引所の規則により義務づけを行います。
 この義務づけにした場合におきましては、基本的に、決算短信の信頼性に疑念があるためレビューを求めるということになりますので、その場合には、決算短信とレビューを同時に出すことが適切であろうということが実務検討会での結論となっておりました。
 一方で、任意でレビューをする場合につきましては、現行のように、先に決算短信だけ開示して、レビューが終わった後にレビュー報告書を添付するという方法や、レビューが終わったところをもって決算の内容が定まったと会社自身が判断をして、決算短信とレビュー報告書を併せて開示するという方法がございます。
 いずれにしましても、任意のレビューである以上は、最初に決算短信のみを開示していたとして、その後、レビューした結果修正が必要になったという場合は、現行も決算短信を出した後に四半期報告書を出す際にミスが見つかるケースがありますので、同じように修正の開示をしていただくことを想定しております。
 
【引頭委員】
 部会長、よろしいですか。
 
【堀江部会長】
 どうぞ。
 
【引頭委員】
 1点目につきましては、あくまでも企業がフル開示をするか任意で選ぶケースであり、その結果、適正性レビューという可能性はあるという理解でよろしいでしょうか。
 
【菊池参考人】
 はい。
 
【引頭委員】
 2点目について、任意であるレビューを付した四半期決算短信について、仮に誤りが見つかった場合は、どのように対応なされるのでしょうか。
 
【菊池参考人】
 基本的には、レビューを任意でやったということなのであれば、訂正した後にもう一度レビューするか否かも任意、ということが原則になるかと思います。
 
【引頭委員】
 レビューは任意であるため、あくまでも企業側において判断されるということでしょうか。
 
【菊池参考人】
 はい。
 
【引頭委員】
 分かりました。ありがとうございました。
 
【堀江部会長】
 菊池様も詳しい御説明どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、井口委員、御発言ください。
 
【井口委員】
 よろしくお願いします。まず、事務局には資料作成と御説明ありがとうございました。事務局案については賛同いたしますが、2点コメントさせていただきます。
 1つ目は、事務局資料5ページの準拠性と適正性の取扱いです。私は、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおける四半期報告の効率化の議論、それを受けての東京証券取引所での四半期開示の実務検討会の議論にも参加させていただきましたが、どちらの会議体においても、投資家、企業、有識者の間で多くの議論が行われ、その結果、四半期開示の具体的な開示方針について事務局で取りまとめいただいたと認識しております。今回のレビューにおけます準拠性と適正性の課題というのも、この全体的な流れを前提といたしますと、菊池様からも御説明があったように、原則、レビューが任意化される中、事務局資料の5ページにあります準拠性の枠組みに対するレビューを基本としつつ、財務諸表等規則等に基づく開示を行う場合には適正性の枠組みになり得るという方向性は妥当と思っております。
 2つ目は、前回の当部会で、レビュー報告書で適正性と準拠性で利用者が混乱しないようにという利用者のことを思っていただいた御指摘がある中、今回、意見書で丁寧に違いをご記載いただき、ありがとうございました。投資家といっても、様々なレベルとか、あるいは投資手法の違う投資家もおりますので、投資家全員が理解できるかというところまでは分かりませんが、企業報告をしっかり読み込んでファンダメンタルズを分析しようとする投資家ですと、この意見書の御記載で理解できるのではないかと思っております。
 短いですが、以上でございます。ありがとうございました。
 
【堀江部会長】
 大変貴重な御意見ありがとうございました。
 それでは、引き続き進めさせていただきます。小畑委員、御発言いただけますでしょうか。お願いいたします。
 
【小畑委員】
 御指名いただきましてありがとうございます。
 基本的に、本日お示しいただきました取りまとめにつきましては賛同するところでございまして、蛇足ながら、3点ほど意見を述べさせていただければと思います。
 まず、本日の事務局資料の4ページにございますように、適正性と準拠性、こちらの結論については、いずれの場合であっても保証水準は同じであるということです。こちらについては各関係者がよく理解していただく必要があるというふうに思っておりまして、この理解を進めていただけるよう、周知活動をぜひ今後とも進めていただければというのが1つ目の意見でございます。
 次に、事務局資料の7ページ目の後発事象のところでございます。特に、この新しく始まる東証の四半期決算短信のところ、1Q・3Qのところでございますけれども、後発事象の開示は必須ではないというふうに理解をしておりまして、ただ、監査人が保証をする場合には、後発事象に関する質問をするということがここに書かれているわけでございますが、仮に修正後発事象あるいは開示後発事象が出てきた場合、保証側、一方では企業側、それぞれにおいて何をしなければいけなくなるのかという要対応事項について実務上明らかにしていただけると、安心した実務が行われるのではないかと思っておりまして、これは基準自体の話ではないかと思いますけれども、御考慮いただければと思います。
 それから、3点目でございますけれども、これも本日の資料では直接何も書いていないわけですが、IFRS適用企業が任意のレビューを受ける場合、こちらについて何に準拠してやるのかということも含めて、その考え方はどう整理されているのかというところ、これは質問でございますけれども、その整理についてお伺いできればと思います。お願いします。
 以上です。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。
 前半に御指摘いただきました2点、周知活動等を含めて混乱のないようにという、こういう御指摘でございましたので、引き続き、こちらのほうでも適切に対応できるように考えていきたいと思います。
 3点目、IFRS適用企業についての御質問ですが、これは菊池様でよろしいでしょうか。もしお答えできるようでしたらお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
 
【菊池参考人】
 IFRS適用会社が任意でレビューを受ける場合について、もちろん、IFRSに沿って全ての注記をしていれば適正性の結論が出されるということでありますが、それを省略した場合にどうするかというところは、我々取引所で今何か想定しているものがあるというわけではございません。
 
【堀江部会長】
 ありがとうございます。川西様、もしフォローできれば、この点についてコメント等いただけると幸いでございますが、いかがでございましょうか。
 
【川西参考人】
 御指名ですけれども、私のほうからフォローはできないです。申し訳ございません。
 
【堀江部会長】
 それでは、この問題につきまして、今、東証の菊池様から基本的な考え方についての御回答はいただきましたけれども、また改めて、詳しい情報が入りました段階でお伝えいたします。御指摘いただきました周知活動等含めて、この辺り、混乱のないように進めさせていただきたいというふうに考えております。
 小畑委員、よろしいでしょうか。
 
【小畑委員】
 何とぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 
【堀江部会長】
 かしこまりました。
 それでは、引き続きまして、林田委員、御発言いただけますでしょうか。
 
【林田委員】
 林田です。よろしくお願いします。御説明色々ありがとうございました。
 それで、今回のこの四半期開示をめぐる制度改正で、監査部会として注意しておきたいのは、制度改正の前後で情報開示の質的な面が低下するのか否かという点を注意深く見ていくべきだと思いました。
 そこで、前回来議論になりました部分が、四半期報告書のときには、いずれも適正性の結論のレビューがあった。それに対して、今回の1Q・3Qの四半期決算短信については、レビューは任意となり、それは準拠性の結論になったということです。
 この点について、冒頭の事務局説明であまり詳しく御説明いただかなかったような気がいたしますが、事務局資料の3ページで詳しく説明を書いていただきました。3ページの左側において、レビュー報告書の利用者が適正性と準拠性の相違を理解した上で利用できるかどうかが重要と記載がございますが、まさにそのとおりだと思います。そして、右側の対応案において、適正性と準拠性の相違点について詳しく書かれていますが、私のような会計の研究者でもなく、会計監査の実務家でもない者からすると、この記載を読んですっきりと理解することがなかなかできませんでした。
 適正性も準拠性も保証水準は同じであるため、利用者の立場から見て信頼性の程度は同じだということが強調されておりますが、その後には適正性は結果的に準拠性よりも開示の水準が高いという説明もある。これは同じレベルの開示なのか、あるいはやや優劣があるのか、判断に迷ってしまいました。
 利用者がこれをちゃんと理解することが重要だと言っている以上は、制度改正がもたらす影響に関して、違いを並べるだけではなく、明快にこれは全体としてどういう意味があるのかということを説明することが、先程来出ている周知徹底、理解の促進ということにも役に立つ、欠かせないことなのではないかと感じました。ここで手を抜きますと、将来に禍根を残しかねないというふうに受け止めています。
 では、ここで言う相違、左側で言っている相違というのは、単に違うという意味なのか、それとも差異、つまり、開示の水準として差があるということなのか、どちらなのか。四半期開示のレビュー、今回変えたことによって、開示の水準として変わらないのか低くなるのか。ひょっとしたら、むしろ高くなるのか。どうなのでしょうか。事務局の方で結構ですので、明快に見解を示していただきたいと思います。
 仮に開示の水準が下がってしまうというのも、やむを得ない事情はあるのかと思いますけれども、私個人としてはあまり望ましくないと考えています。速報性の問題や企業の負担等課題はあろうかと思いますが、今回の制度改正において、開示の水準が低下するのだとすれば、それを許容できる理由や事情について、補足的に御説明いただけると助かります。
 質問になってしまいましたが、以上です。
 
【堀江部会長】
 ありがとうございました。前回の当部会でも、この適正性と準拠性の違いについて、とても分かりにくいという御指摘を受けていたところでございますので、まず、事務局のほうから簡単にコメントいただいた後、実務に携わっておられる方から御発言いただいたほうが林田委員も納得感が少しは得られるかもしれませんので、その後、日本公認会計士協会の藤本委員から補足的に御説明いただくという順番で対応させていただければと思います。
 
【齊藤開示業務室長】
 林田委員、どうもありがとうございます。私のほうから端的にお話しさせていただければと思います。
 委員がお話しになったことは、開示の後退とならないようにという問題意識に対して、どのように答えるのかという、重要な御質問だったと思っております。この点、やはり重要だということで、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループや東京証券取引所の実務検討会でも開示の在り方について議論されたと思っております。
 開示の具体的な内容を見ていくと、おそらく企業によって違いは出てくるのかもしれませんが、やはり重要な点は、開示の後退にならないように、投資家のニーズを適切に酌み取って、企業は重要な情報は開示していくという点をきちんと行っていく必要があると思っております。
 先程菊池部長からもお話がありましたとおり、投資家にとってはセグメント情報やキャッシュフロー情報の注記は重要であるため、そこはしっかりと開示されることを確保する。開示の後退とならないように、東京証券取引所の実務検討会において、その枠組みができていると理解しております。
 このような点で開示の後退にならないというところは、確保されているというところだと考えております。
 
【林田委員】
 今のお答えですと、少し理解できません。制度を改めたことによってどうなるのかというお話を聞いているのであって、企業のそれぞれの個々の対応として開示をすることが後退につながらないというお答えは、ちょっとかみ合っていない感じがいたします。もう少し明快にお答えをお願いできませんでしょうか。
 
【齊藤開示業務室長】
 端的に申し上げると、開示の後退にならないよう、投資家にとって重要な情報は開示されるように、今後の取引所規則の改正により、確保されることとなっております。制度の改訂前後において、そこの部分については変わらないようにしております。
 
【堀江部会長】
 それでは、この適正性と準拠性について一体どう違うのか、日本公認会計士協会の藤本委員、実務上の感触を含めて御説明いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
 
【藤本委員】
 日本公認会計士協会の藤本でございます。
 現行の開示の内容に関しましては、齊藤室長から御説明いただいたとおりでございまして、基準として、規則として何を開示するのかということが明確になりますと、規則どおりに適切に開示をされているのかという観点で検討するのが準拠性。
 一方で、適正性の枠組みというのは、財務諸表全体として、企業の財政状態及び経営成績を全体として適切に表示されているのか、例えば、重要な情報が漏れていないかという観点で、もし漏れている情報があれば、追加の開示をするということまで求めていくというところでございます。
 したがって、保証の水準やレビューの手続そのものは、それ以外のところは何も変わらないということでございまして、先程林田委員からお話いただいておりました開示の水準ということが、法律で決まっている部分だけを見に行くのか、それとも、さらにそれを超えて必要な開示を求めていくのかという点にこの両者の違いがあるというふうに御認識いただければありがたいと思っております。
 以上でございます。
 
【堀江部会長】
 林田委員、いかがでございますか。これでも御納得いただけませんでしょうか。
 
【林田委員】
 プロの方々と、先程井口委員のような専門性の高い投資家と一般の投資家だと、私は一般の投資家のほうに感覚が近いと思うので、開示量が多いほど保証の水準は高いのではないかと直感的に感じてしまいます。今御説明いただいたようなことを、ぜひ念入りに東京証券取引所も含めて御説明していただければありがたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。
 
【堀江部会長】
 林田委員から御指摘いただいたとおり、周知徹底、理解促進という意味で、できるだけ誤解のないように、違いが正しく伝わるように、日本公認会計士協会でも、ぜひこの辺り十分な御対応をお願いできればと考えております。
 以上でよろしいでしょうか。
 
【林田委員】
 ありがとうございました。
 
【堀江部会長】
 それでは、引き続きまして、紙谷委員、御発言をお願いいたします。
 
【紙谷委員】
 御指名いただきまして、大変ありがとうございます。紙谷でございます。まず、事務局の皆様におかれましては、資料を取りまとめいただき、大変感謝しております。この段階で公開草案を公表することに賛同したいと思います。
 資料4について、コメントさせていただきたいと思います。今回の改正では、特別目的や準拠性の結論が加えられておりまして、期中レビューの対象には一般に公正妥当と認められる企業会計の基準以外の会計基準、財務報告の枠組みで作成される期中財務諸表が含まれると理解しております。
 しかしながら、第二実施基準を拝見しますと、例えば、3ページ目から4ページ目にかけての4.期中レビュー手続には「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して」という文言が使われておりまして、特別目的も含めたところでの一般に公正妥当と認められる企業会計の基準以外の会計基準、財務報告に準拠するケースを想定した実施手続になっていないのではないか。また、「適正に表示」という言葉も使われておりまして、準拠性を想定したような実施手続になっていないのではないかということを懸念しております。
 こうした観点から、第二の実施基準の書きぶりについては、何らかの読替えをする等で対処できるのかもしれませんが、見直しが必要ではないかどうか御検討いただければと思います。
 私からは以上でございます。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。ただいまの御意見は、基準の内容の追加・修正等に関わるところでもございますので、まず、事務局のほうから、この辺りについてどのように考えればいいか御意見をいただいた上で、各委員から御意見等があれば頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】
 どうもありがとうございます。この実施基準についてはレビューの手続について触れているところでございますが、意見書において、準拠性に関する結論を表明するに当たっては、適正性に関する結論を表明する場合と同様の対応が必要になると記載しております。
 ただ、特別目的について、やはり何か留意する必要があり、何らかの記載を入れたほうが良いのではないか、おそらくそのような御指摘と思いました。そこで、例えば、公開草案の(3)実施基準の最終段落において、特別目的についての期中レビューを行うに当たっては、期中財務諸表が特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成されることに留意して行う必要があります、等と付け加えることで、明確になるのではないかと考えたところでございます。
 
【堀江部会長】
 紙谷委員、いかがでございましょうか。基準本文の実施基準では、特別目的のところが第二実施基準第2項で会計基準が受入れ可能かどうかということで止まっており、これは監査基準と平仄を取っておりまして、第三報告基準のところまで行けば、これはおそらく自明のことになるかと思うので、事務局としては、前文で紙谷委員が御指摘になられた留意事項を追加させていただくことで対応できないかという提案かと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ御発言ください。
 
【紙谷委員】
 ありがとうございます。本文しか読まない人、前文を読まない人もいるのではと懸念しておりますが、修正方法は色々あると思いますので、どれでなければいけないと思っているわけではございません。第三報告基準のところにも準拠性について記載しており、特別目的の際に適用される実施基準というところが分かるようにしたほうが良いのではと思っています。
 
【堀江部会長】
 今回の改訂案につきましては、監査基準との平仄をかなり重視した書きぶりになっておりますが、確かに紙谷委員のおっしゃるとおり、実施基準の中で書くという、つまりここで一度、きちっと誤解のないように、特別目的に適合した会計基準が使われるということをはっきりと書くべきだということですが、最終的な結論のところに行くとその辺りは明記されていますので、できましたら、今、事務局が提案させていただいたように、前文の、具体的に申し上げますと資料2の3ページ目になりますが、ここの(3)実施基準の改訂、ここには留意事項がまとめて書かれておりますので、文末のなお書きの後になりますが、ここで何とか修文対応ができないかということでございます。
 
【紙谷委員】
 そのような形で公開草案にかけていただき、パブリックコメントを踏まえて御検討いただければと思います。
 
【堀江部会長】
 分かりました。それでは、ここにつきましては、今、事務局のほうから提案がありましたように、このなお書きの後に、特別目的の期中レビューに際しては、期中財務諸表が特別の利用目的に適合した基準に準拠して作成されていることを確認する、おおよそこのような文言修正でひとまず対応させていただければと思います。細かな文言等については、ひとまず私に預からせていただきますが、公開草案の段階では、事務局提案の形で対応させていただくということでいかがでしょうか。
 もしほかの委員の方でこの点について御意見があれば頂戴いたしますが、よろしいでしょうか。それでは、紙谷委員、そのような形で対応させていただきたいと思います。
 
【紙谷委員】
 ありがとうございます。承知しました。よろしくお願いいたします。
 
【堀江部会長】
 それから、先程IFRS適用会社についての御質問をいただきましたが、これにつきまして、東京証券取引所の菊池様から再回答をいただける旨のチャットいただいておりますので、先にこれを片づけてから進めさせていただきたいと思います。それでは、菊池様、よろしくお願いいたします。
 
【菊池参考人】
 ありがとうございます。先程いただきましたIFRS任意適用会社がレビューを受ける場合はどうなるのかという御質問に関しまして、まず、建付けといたしましては、日本基準の会社と同様に、キャッシュフロー関係の注記とセグメント情報関係の注記以外については大部分省略できるというような表示を想定しております。
 そのときに、レビューを任意で受ける場合にどうなるのかというお話でございますが、まず、IFRSに沿って省略しないでフル開示した場合には、現行と同じように適正表示の枠組みになると思います。一方で、日本基準の会社と同じように注記を省略した場合には、やはり準拠性の枠組みのレビューということになろうかと思います。
 いずれにしましても、今回作成していただきます期中レビュー基準と、日本公認会計士協会様の実務指針に基づくレビューの手続を行っていくことを想定しております。
 以上でございます。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、今、IFRS適用の問題につきまして追加で御回答いただきましたので、先へ進めさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 もし追加の御意見等が委員の皆様方からあれば今頂戴いたしますが、よろしいでしょうか。
 それでは引き続きまして、小倉委員、御発言をお願いいたします。
 
【小倉委員】
 小倉です。私からは、全般的なところとレビュー基準について、コメントをさせていただきます。
 まず、全般としては、金商法の開示制度の変更は施行まで3か月しかない状況です。実務への影響を非常に憂慮しております。当初、取引所の決算短信と金商法の四半期報告書の重複開示を廃止して実務上の負担を軽減する目的であったと理解しておりますが、単なる廃止ではなくて、本日事務局説明資料の9ページにもありましたとおり、財務諸表の名称自体が改正されてしまったということです。今日審議されている期中レビュー基準、御説明いただきましたけれども、これだけですと、例えば後発事象や継続企業の前提についての具体的な手続というのはイメージができません。取引所の決算短信に含まれる四半期財務諸表についても、開示の内容やレビュー手続の詳細が現時点においては明らかにされていませんので、色々なことが明らかになってないということです。
 特に内部統制が脆弱で虚偽表示リスクが高い会社については、取引所規則におけるレビューが求められると理解をしておりますので、そういった会社は3,900社の、1%から2%なのでしょうか、監査人への十分な周知期間がないままで、もう3か月後に適用に入るということは、構成員への研修等も考えますと非常に心配な状況です。これが全体に対しての意見です。
 今回のレビュー基準については、資料2の4ページ、不正リスク対応基準との関係というところについて        1点意見を申し上げたいと思います。不正リスク対応基準では、四半期レビュー基準は、年度と同様の合理的な保証を得ることを目的としていない、限定的保証なので、不正リスク対応基準は適用されないとされていますが、今回、三番のところのなお書きの2段落が追加されておりまして、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合には、必要に応じて、期中レビュー基準に従って、追加的手続を実施することになるという文言が追加されました。
 不正リスク対応基準では、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合には、重要な虚偽の表示が存在していないかどうかを判断するために経営者に質問して説明を求めるとともに追加的な手続を実施しなければならないとなっておりまして、いずれも追加的手続を実施するのですが、適用されないと言っている期中レビュー基準の追加的手続と不正リスク対応基準の追加的手続の相違が何なのか、これに関する具体的な説明がないと、今回足されていますけれども、非常に理解が難しいと思っております。
 最後に、先程の林田委員からのコメントに関してですけれども、私の理解では、開示の後退とかそういうこと以前に、今まで1Q・3Qでは独立監査人によるレビューが行われていたのが、先程申し上げたとおり、今後強制レビューは恐らく3,900社の1%か、2%程度になると思いますので、開示の後退や開示情報が減るということ以前に、開示情報に対する担保というのか、信頼性の担保がなくなるというのが非常に大きな制度変更であると理解しております。情報開示する以上それで良いのかというのは金融審議会でも十分議論されましたが、私の理解では、アナリスト協会ですら、アナリストの方達の5割程度しかレビューは必要ありませんと御発言されていたことが今回の廃止につながっていると理解をしております。私からは以上です。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。1点目の、周知期間等を含めて、非常に短い期間で日本公認会計士協会等にも御対応いただかないといけないという現状は承知しております。また、3点目で、情報の信頼性の担保ということについても御懸念がある旨の御発言をいただきました。今、小倉委員から御指摘いただきましたように確かに色々課題があるかと思うんですけれども、御意見の1点目と3点目のような全般的なところと、不正リスク対応基準のところとの関係で具体的な御質問を頂戴いたしましたので、事務局からまず簡単にコメントをいただいた上で、他の委員の方からも関連する御発言等があれば頂戴したいと考えております。
 
【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。来年の4月に向けてという観点では、まさに実務はどうなるのか小倉委員から御指摘もありましたけれども、我々も一緒にということですけれども、日本公認会計士協会において実務の指針については早急に作成されることが要請されるというのを資料2の前文の一番下のところに記載させていただいています。こういうことや周知活動も含めて、我々としてスピード感を持ってやっていくというところをここにも示させていただいているところでございます。
 それから、不正への対応のところでございますが、端的に申し上げると、ここの部分は前回に御指摘などもありましたので、あえてこのように記載をさせていただいているところでございます。不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合という文言は、不正リスク対応基準に書いてあるので、文言上は恐らく不正リスク対応基準との関係という観点でも齟齬があるとかそういうことを言っているのではなくて、小倉委員がおっしゃっているところについては、実務への影響とかそういうところを御心配になられているということだと思いますけれども、我々としては、「必要に応じて」など実務に配慮した表現にしているというところでございます。
 また、現行の四半期レビュー基準でも、不正への対応の実務が定着しているものと承知しております。ここで改めて申し上げたいのは、今回の期中レビュー基準のこの記載によって何か現行の実務を変えるという意図はございませんので、この点も申し添えさせていただければと思っております。
 
【堀江部会長】
 小倉委員、今の事務局からの回答でいかがでございましょうか。
 
【小倉委員】
 不正リスク対応基準については、特段従来と変更するものではないということですね。不正リスクへの対応というのが、やはり一番の関心事だと思います。どこまでレビューでやってくれるのかということが投資家からの期待でもあると思いますので、そこははっきりしたということで理解をいたしました。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは引き続きまして、金子委員、御発言いただいて結構でございます。お願いいたします。
 
【金子委員】
 ありがとうございます。金子です。取りまとめをいただきまして、ありがとうございます。レビュー基準については、この内容で結構だと思います。
 なお、懸念事項と、今、小倉委員から御質問があった点について1点述べさせていただきます。まず、小倉委員の御指摘の不正リスク対応基準との関係の記載では、「期中レビュー基準に従って追加的手続を実施する」とあります。レビュー基準における追加的な手続は、資料4の5ページに記載されている通りレビュー基準では、あくまでも「追加的な手続は質問や文書の閲覧である」ということが書かれています。ですから、前文に書かれている「レビュー基準に従った追加的手続」というのは質問や閲覧であるということを、もう少し具体的に書くのも、違いを明確にする一つの方法ではないかと思いました。
 それから、もう1点、懸念点について意見を述べさせていただきます。資料4の6ページに戻っていただければと思います。この後発事象のところで、先程、小畑委員からも御発言がございましたが、レビュー基準の中でも、監査人は、開示すべき後発事象があるかを経営者に質問するということになっております。それから、同じ資料の17ページを見ていただきますと、監査報告書の追記情報として、重要な後発事象を追記することが求められます。
 この定めはレビュー基準としては適当なものと思いますけれども、今回、東証の決算短信においては、後発事象は任意の注記事項となると聞いております。そうしますと、監査人は、経営者に質問をして開示すべき後発事象があることを把握していたとしても、一方で、経営者が任意なので開示しないと判断した場合には後発事象の注記がされない可能性があります。レビュー報告書は準拠性に関する結論の表明、つまりルールに従っているかを判断しますので、この状況をレビューの結論に反映するのは難しいのではないかと考えられます。
 また、追記情報で監査報告書に後発事象が書かれるケースは、あくまでも財務諸表に注記されていることを前提に強調するという意味合いですので、財務諸表に記載されていない情報を単独で書くということは想定されておりません。ここに、「その他説明することが適当と判断した事項」とありますが、これは財務諸表に通常記載することがないもの、例えば前年の監査人が当年度の監査人と違う等の情報を開示する意味合いですので、後発事象について監査人が単独で記載するということは通常は考えられません。
 そうなりますと、レビュー手続は実施して情報を入手しているけれども、この情報をどう利用者に伝えればいいのかが問題になってきますし、レビュー基準に書いてあることが財務諸表に注記されていないことに対して期待ギャップが広がってしまうことも懸念されます。ここは実務指針等で対応されるのかもしれませんが、重要な点だと思いますので、御検討をお願いしたいと思っております。以上です。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。1点目の、先程の小倉委員からの御質問とも関連する不正リスク対応基準との関係について、前文のところで例えばこういったことをもう少し追加するといいのではないかという御提案があればいただきたいのですけれども、もしそうでなければ、預からせていただければと思います。
 
【金子委員】
 最終的にはお任せいたしますけれども、例えば「期中デビュー基準に従って、追加的質問や文書の閲覧などの追加的手続を実施することが」と書けば、不正リスク対応基準との違いはより明確になり、これまでの実務を変えないという先程の齊藤室長の御発言にも沿った形になると思います。
 
【堀江部会長】
 ありがとうございました。ここもまた、この場ではっきりとこういうふうに書きますと申し上げることができませんので、一度事務局と検討させていただいて、この辺りの処理の仕方について、追加するかどうかを含めて預からせていただくということでよろしいでしょうか。
 
【金子委員】
 結構です。お願いいたします。
 
【堀江部会長】
 それと、後発事象についても色々とこれまでも検討してきたところですけれども、まず、事務局から、今の金子委員の御意見に関連して、あるいは御懸念に関連して、お答えできる範囲でお願いできればと思います。
 
【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。金子委員の御懸念、御指摘のところ、ありがとうございます。まさに後発事象のレビュー手続は、おっしゃるとおり、質問は基本的なものとして、準拠性であっても実施するということで、注記の省略を認めるというような枠組みだった場合には、形式的には注記がなくても準拠性の結論は表明できるというところはあろうかと思いますけれども、まさに金子委員が御懸念になっておられるケース、決算日の後に生じる事象は色々なものがあって、色々な度合いのものがあった場合にどうするのかというところで、そこは対応が異なる可能性があるのではないかと思っております。
 金子委員が実務の指針という言葉をおっしゃいましたけれども、まさにこの点を踏まえてどういう対応があり得るのかということについては、日本公認会計士協会における実務の指針、こちらで検討されているものと承知しておりますので、我々も一緒に検討していきたいと思っております。
 
【堀江部会長】
 金子委員、よろしいでしょうか。
 
【金子委員】
 よろしくお願いいたします。
 
【堀江部会長】
 繰り返しになりますが、金子委員の1点目の御指摘につきましては、ちょっと預からせてください。今ここで文言を追加することによって文意が変わってしまったり、何か実務上の対応にはねるようなことがあったりするといけませんので、ちょっと慎重に検討させていただくということで預からせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【金子委員】
 お願いいたします。
 
【堀江部会長】
 それでは、後藤委員、御発言をお願いいたします。
 
【後藤委員】
 後藤でございます。御指名ありがとうございます。事務局、取りまとめどうもありがとうございました。基本的には取りまとめの内容に全て賛同いたします。
 まず、資料1の3ページ目、準拠性の結論と適正性の結論についてですが、対応案にもありますように、意見書の前文に色々と丁寧に細かく書いていただいており、適正性に関する結論と準拠性に関する結論の違いについて非常に分かりやすく書かれているのではないかと読んでいて思いました。とても丁寧な説明で、大変よいのではないかという感想を持ちました。
 それから、5ページ目のレビューのところで準拠性・適正性の話ですけれども、利用者の視点を重視するのであれば適正性の結論にすべきという御意見もあったかと思いますけれども、1Q・3Qの決算短信のレビューはそもそも任意ですので、あまり一律で画一的なあるいは厳格なものをということではなくて、準拠性の枠組みに対するレビューを想定しているけれども、財務諸表等規則等に基づいて開示を行う場合には適正表示の枠組みにもなることも考えられるというのは、妥当な考え方ではないかなという印象を持ちました。
 あと、資料の7、8ページの後発事象、継続企業の前提、不正リスク対応など、これらの考え方は資料に記載しているような考え方なのかと思います。ただ、先程から色々議論がありましたように、実務指針の中で具体的な実務を決めていけばよいのではないかと考えます。以上です。
 
【堀江部会長】
 コメントどうもありがとうございました。
 それでは引き続きまして、弥永委員、お願いいたします。
 
【弥永委員】
 ありがとうございます。先程、既に金子委員や小畑委員も指摘されていましたが、後発事象に関して1点だけ意見を申し上げたいと思います。まず、私は基本的には今回提示された、この公開草案に賛成です。ただ既に指摘されているとおり、後発事象については、修正後発事象があるにもかかわらず、それを反映させていなければ、準拠性の枠組みであっても、当然のことながら、無限定の結論は出せるはずはありません。また、あくまで、私の個人的な感覚ですが、いくら東京証券取引所が定める四半期決算短信作成のルールにおいて重要な後発事象の注記を省略してもよいとされていても、レビューを受ける以上は、そのような後発事象について必要な情報があれば、注記していただくようにやはり監査人としては要請しなければいけないのではないかと考えております。
 ですから、金子委員がおっしゃることは監査論において広く受け入れられている考え方に照らすと正しいと思いますが、監査人がそのような要請はしないという選択をされるのであれば、追記情報において第一次的な情報提供者になるということはその監査人御自身がまた御選択なさった結果だと評価すべきだと考えます。重要な後発事象の注記がなされていない以上、強調事項とは言えませんけれども、追記情報にできないと整理するのはいかがかなと思います。監査基準報告書706に表れている発想からすると財務諸表に表示又は開示されていない事項について説明することは禁止されていないし、求められることはあると考えざるを得ません。実質的に考えてみましても、レビュー報告書を前提として四半期決算短信を読まれる情報利用者のことを考えると、情報利用者に誤解を生じさせないという要請の下で、究極的に注記を求めていただくかどうかは別問題として、今回の期中レビュー基準案で示されているように、追記情報の中に重要な後発事象は含めておくということは大切なことだと思っております。この1点だけは申し上げたいと思い発言させていただきました。よろしくお願いします。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。
 
【金子委員】
 その点について発言させてください。
 
【堀江部会長】
 金子委員、どうぞ。
 
【金子委員】
 弥永委員、開示すべき、注記すべき後発事象があるとするならば、監査人からは依頼することを前提としています。しかしながら、任意の注記事項だから開示しないと会社が判断された場合ということを申し上げました。監査人としては当然に依頼すると考えておりますが、その上で、開示されないときにどうするのかということを議論しております。
 
【堀江部会長】
 財務報告の枠組みとの関連もあってなかなか難しいところで、また後発事象といいましても色々な種類がございますので、この点について、日本公認会計士協会の藤本委員、この後発事象の問題についてコメントをいただくことはできますでしょうか。お願いいたします。
 
【藤本委員】
 日本公認会計士協会の藤本でございます。後発事象に関して色々と御議論をいただいているかと思いますが、私どもの理解としては、修正後発事象、これは当然に会計処理に反映させなければいけませんので、それはそのようにしなければいけないと考えています。
 開示後発事象に関しましても、先程、金子委員がおっしゃっていただいたように、開示を促すということは考えられると思いますが、一方で準拠性の枠組みの中で注記が求められていない場合に、それが開示されなかった場合に何か監査人に対して責任が問われるのかというと、そういうことではないと理解しております。したがって、期中レビュー基準の中では、修正後発事象または開示後発事象について質問をするということに留まっていますので、それを超える特段の手続を実施することではないと理解をしております。
 また、後発事象の注記が仮に求められていない場合であっても、例えばですけれども、レビューの結論に影響を及ぼすような内容、例えば企業の状況が、四半期決算日後に重要な事象が生じまして継続企業の前提に疑義が生じるような、非常に稀なケースだとは思いますけれども、このような場合には、やはり会社に注記をしていただかなければ、結論が不表明になるような、それぐらい結論に影響を及ぼすような場合もあり得ると考えています。このような場合においては、企業にもしっかり注記をしていただかないと結論が表明できない状況というのが、稀にあるということは、ぜひ御理解いただきたいと思っております。
 私からは以上でございます。
 
【堀江部会長】
 コメントありがとうございました。
 弥永委員、金子委員、今の具体的な御説明でいかがでございましょうか。
 
【弥永委員】
 再度発言の機会を与えていただきありがとうございます。金子委員のおっしゃっている趣旨は理解して発言していたつもりでした。表現に至らない点があったかもしれませんが、私が申し上げたかったのは、仮に無限定の結論を表明するということに障害がない場合であっても、重要性がある限りは追記情報になる可能性があるのではないかということだけでした。監査における二重責任の原則についての広く受け入れられている考え方からは外れるわけですが、そのような考え方は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準ないし開示の枠組みが必要な開示、注記を要求していることを前提としていると考えております。また、財務報告の枠組みが注記を要求していない以上、監査人すなわちレビュー業務実施者としては作成者に対して注記を要求できないということは、まさに藤本委員がおっしゃるとおりだと私も理解しています。しかし、監査人が無限定の結論を表明することによって、利用者に四半期決算短信中の財務情報について誤解を生じさせることにつながるようなことがあれば、やはり問題なのではないかと考えたということです。そのような観点から、無限定の結論を表明するような場合であっても追記情報の記載が求められることがあるのではないか、仮に、利用者に誤解を生じさせないようにする方法がないのであれば、そもそも、会計の基準が受入可能ではないとして四半期決算短信中の財務情報は準拠性レビューの対象とはできないということになりかねないのではないかと懸念した次第です。発言の機会を与えていただきありがとうございます。
 
【堀江部会長】
 ありがとうございました。これ以上続けますとまたすごい議論になりますので、ひとまず先へ進めさせていただければと思います。
 
【松元委員】
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 2点コメントを申し上げます。まず期中レビュー基準については、特に前文のところで、今まですごく混乱して分かりにくかったところを、適正性の結論と準拠性の結論のところを丁寧に御説明いただいて、この点大変ありがたかったと思います。これがあることで、すごく理解が深まると思いました。レビュー基準自体については、特段その他のコメントはございません。
 それからもう1点は、先程来、林田委員、小倉委員からも御発言があったところですが、私としては小倉委員の御説明が腑に落ちました。今回、私が若干懸念しているのは、説明に当たって、開示の後退ではないということをすごく強調されるので、それでかえって分かりにくくなっているのではないかなというところです。と申しますのは、今回は、小倉委員が先程おっしゃっていたように、そもそもレビュー自体が、1Qと3Qでは任意になっているので、レビュー自体しなくてもよいことになっています。レビューをする場合であっても、今まで四半期報告書にされていた適正性の結論ではなくて準拠性の結論でやるということで、2段階の意味で負担が軽くなっているということだと思います。
 適正性と準拠性の違いについても、幹の部分は変わらないというのはきっとおっしゃるとおりだと思うのですが、両者の違いを説明しないままで幹の部分は変わらないというところだけ強調されている。ただ、よく読むと、準拠性の結論の場合には適正性の結論の場合と異なって「一歩離れて行う評価」は行われないということなので、やはり違いはあるのだと思います。
 そうしますと、やはり、情報が正確かどうかを担保している部分がなくなったり、あるいはどこまでチェックするか、追加の情報をどこまで要求するかというところで、そこをやることが今までより減っているということは間違いないわけで、そこを説明せずに、開示の後退ではないとだけ言ってしまうとすごく分かりにくいのではないかと思います。少なくとも私には分かりにくかったというところでございます。
 ただ、結論に必ずしも反対しているというわけではないです。今回そもそも四半期の開示を一本化しましょうということになったのは、効率的な開示とか負担軽減とか迅速性とかといったものを重視した結果だと理解しています。開示制度全体を見たときに、開示させる情報とか、レビューさせる情報とか、チェックさせる情報が多ければ多いほど素晴らしい開示制度かというと、出させれば出させるほどよいというものでもなく、効率性とか、負担が重過ぎないかとか、そういった点のバランスを取ってよりよい開示制度をつくっていくということだと思います。なので、今回は効率性とか、先程、御指摘もありましたが、情報利用者である投資家の皆様でさえ1Q・3Qのレビューは必ずしもそこまで重視していないかもしれないという状況を踏まえて、効率性あるいは企業様の負担軽減ということを考えて制度が変わっているのだということを、もう少し正面から説明してくださると、制度の変更についてより誤解がないのではないかと思います。
 1Qと3Qのレビューを任意にすること、そして、準拠性の結論にするということを説明するときには、やはりそこの部分をきちんと説明した方が、より誠実なのではないかなという気がいたします。ただし、先程も申し上げたように、結論自体に反対しているというものではございません。よろしくお願いいたします。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。松元委員御指摘のように、この辺り、本当に誤解のないように、そして、腹落できるように、広く丁寧な説明を重ねていくしかないのではないかと思います。貴重な御意見として承りました。事務局でも持ち帰らせていただいて、できる限りのことは対応させていただくということでお許しいただければと思います。
 今の点に関連して、おそらくまた林田委員から、2回目の御発言になりますが、この分かりにくさ云々ということでしょうか。御発言をお願いいたします。
 
【林田委員】
 ありがとうございます。何度も申し訳ありません、今、松元委員が大分おっしゃっていただいたのかもしれませんが、先程の齊藤室長の御説明と小倉委員の御説明に随分落差があるように感じまして、それで追加の発言を希望しました。要するに、開示の水準というかそういったものについては、齊藤室長は変わらないと明言されましたが、小倉委員は、信頼の担保がなくなるほど、低くなるというよりも担保がなくなるほどであると御説明をされた。この2つに相当な落差があるように私に受け取りました。
 それを補足する形で松元委員が御説明いただいたとおりで、一般の人間がこの文書、説明資料を見れば、どうも違いがある、あるいは差がある。全体として、おっしゃられたように、出せば出すほどよいというわけではないけれども、色々な事情がある、速報性の問題もある、企業の負担の問題もある、もっと効率的にしなければいけないという様々な問題があるのでこういう結論になったという辺りを真正直に説明しなければ、3ページに重要だと言っているような、利用者が様々な理解をするということは望めないのではないかと思います。
 何となくモゴモゴと同じですよと言われても、何か専門家に素人が担がれているような印象をどうしても受けてしまう。そこはやはりもっと真摯に、利用者側にも、第1四半期、第3四半期についてはレビューをそれほど必要としていないという統計もあるということなども参照してきちんと説明していくということが大切なのではないかと思いました。以上です。
 
【堀江部会長】
 貴重な御意見ありがとうございました。本当に林田委員のおっしゃるとおりでして、基本は利用者目線で考えるというのがスタートポイントになるかと思いますので、制度の混乱がないように、そして、利用者目線で考えたときに誤解なく腹落ちするように進めていくことが重要ではないかと思いました。
 それでは、今の点ともまた関連するかもしれませんけれども、藤本委員、御発言いただいて結構でございます。どうぞよろしくお願いします。
 
【藤本委員】
 御指名いただきありがとうございます。藤本です。一言発言させていただきたいと思います。
 まず、先程来お話がありますとおり、金商法の改正から非常に短い期間の間にこの期中レビュー基準案を作成いただきまして、また、これに関係する市場関係者は、開示、会計基準、それから、我々についてはレビューの実務指針ということになりますけれども、多くの市場関係者が非常に短期間の間に対応していくということでたいへん難しい局面ではございますが、会計士協会としてもできることをしっかりやっていくということ、また、先程来、話に出ております適正性・準拠性といった内容とか、今後、この制度そのものの周知を市場関係者に向けてしていく必要があると考えていますので、そのために我々としてもしっかりやっていきたいと考えているところでございます。
 まずコメントしたい点は、本文というよりも、事務局の資料のところで1点気になる点がございまして、その点、言及させていただきます。事務局資料の3ページ目と4ページ目に、例えば適正性に関する結論のところでは、追加的な開示要請の規定などのため、監査人の指摘に応じて期中財務諸表を作成することになるということとか、4ページ目のところは、開示が必要であればレビューで指摘をし、企業は追加的な開示要請の規定があるため、その指摘に応じるといった、そのような書きぶりがされております。
 我々監査人は、企業が作成した財務諸表に対して信頼性を担保するということだと理解しておりますので、まず企業が自ら判断して開示をするということ、それに対して監査人がレビューをするという、この建て付けを明確にしていただきたいと思っていまして、「監査人の指摘に応じる」といった表現が少しなじまないのではないかなと感じたところでございます。
 それから、基準案のところで3点ほどコメントしようと思ったのですが、先程来、御質問等もいただいたところで少し重なる面はありますが、後発事象、それから、継続企業の前提、それから、不正リスク対応基準でございます。
 後発事象に関しましては、先程申し上げたとおり、我々に求められているのはまず質問であると理解をしていますので、先程、稀なケースで開示がされていない場合にはそれがないと結論不表明になるという可能性はあるということは申し上げました。後発事象の注記について特段手続を実施することはないとまず理解をしていますけれども、そのような理解でよいかどうかというのを改めて確認をさせていただきたいと思います。
 それから、継続企業の前提に関する経営者評価、そして開示に関しては、先程事務資料にもございましたけれども、会計基準あるいは取引所の規則の中で規定する、先程東証の規則の中で規定するとコメントがあったかと思いますが、経営者評価・開示は、そちらで規定していただくことが望ましいと考えておりますので、ぜひお願いしたいと思います。
 それから、不正リスク対応基準は、先程、小倉委員からもコメントがありましたように、これまでの実務を変更しない、あくまで期中レビュー基準の範囲内で追加手続を実施するということを確認したいと思っていましたので、小倉委員、それから、金子委員に対する事務局からのコメントということで理解いたしました。私からは、以上でございます。
 
【堀江部会長】
 そうしますと、藤本委員、最後に御発言いただきました基準案に関する3点の御確認事項につきまして、3点目の不正リスク対応基準はひとまず片づきましたので、1点目の後発事象についての追加手続についてと、ゴーイングコンサーンのところだけ確認させていただければよろしいでしょうか。それでは、事務局から簡単に確認をお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。追加手続と、それから、ゴーイングコンサーンのところは、こちらも先程来、議論されていたとおりでございます。まさに、後発事象のところは、まず質問というのが基本的なレビュー手続でございますので、基準上のこの部分についてこれまでと何か取扱いを変えているというところは、文言上もありませんし、前文でもそこは特段何か触れているわけではございません。ただ、この点については先程来、非常に議論になっていますので、この部分については、また関係者で議論を深めていくことかと思っております。
 それから、追加的な手続のところについてもまた検討させていただければと思っております。
 
【堀江部会長】
 藤本委員、よろしいでしょうか。
 それでは、まだ若干時間的な余裕がございますので、御発言いただいていない委員の方でもし追加のコメント、御意見等があれば頂戴したいと思いますが、いかがでございましょうか。
 失礼いたしました。髙田委員、よろしくお願いいたします。
 
【髙田委員】
 ありがとうございます。ただ、上田委員からの御質問が先になるかと思います。
 
【堀江部会長】
 大変失礼いたしました。では、上田委員どうぞ。
 
【上田委員】
 髙田委員、どうぞ先にお話ししてください。私はその後で構いません。ありがとうございます。
 
【堀江部会長】
 それでは、髙田委員、どうぞ。
 
【髙田委員】
 そういうことでしたら、私からコメントさせていただきます。
 取りまとめと御説明ありがとうございました。今般のレビュー基準のみならず、改訂の全体が少々複雑な内容になっていますので、新制度に係る対応コストを直接的には企業や監査人で、間接的には財務諸表利用者が負担することになるのではないかと少々懸念するところではあります。つまり、どのような状況で何をしていれば、あるいはしていなければ、どのようなペナルティーがあり得るのか。これは法的なものであるかどうかに関係なくですが、そういったことに関して明確でないという部分が残されているのかなと思いますので、こういったことに係る不確実性に懸念は覚えます。とは言いながら、レビュー基準に関する提案内容には基本的には賛同しております。
 その上で、この懸念にも関連して1点だけ、お願いに近いですが、申し上げたいことがございますので、御説明させていただきます。これは前回にも述べたことですが、今般の基準に係る事後的なモニタリングの実施をしていただきたいと考えております。例えば、監査上の主要な検討事項、いわゆるKAMの開示については、実務の定着と浸透に向けた取組という形で2021年3月期から2年ほどでしょうか、フォローアップの調査の結果等が公表されてきたと思います。こういった形、年数がよいかどうかも含めまして、今般の基準改訂に限定せず、監査に係る基準が改訂される都度、計画的なモニタリングを実施できるような対応の整備をしていただければと考えております。
 なお、今般の改訂に係る具体的な論点としては、期中財務諸表に対する結論の表明として適正性と準拠性の結論に関する明瞭化が進められたことがあります。その異同に関しては周知徹底が予定されているところですが、やはりリソースを割いて説明していくことに加えまして、結果として適切に理解されたかどうかを検証することの重要性も高いと思われます。また、監査人の実施するレビュー手続についても、適用初年度におけるインパクトの検証、問題点のあぶり出し、対応の検討等が必要であるということも感じております。複数の委員から示された懸念点もありますことから、事後的なモニタリングの必要性の高さは半ば自明のことかと思います。
 今般の改訂に関しまして、取引所や関係各所と共同してモニタリングや評価をすることになると思いますが、過去数年で監査に係る基準の改訂も続いているところもありますので、適用の一定期間後にレビューを行うことについて通常のプロセスとして、言わばルーティンとして実践できるよう、これを機会にといいますか、御検討いただければと思います。私からは以上になります。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。事後的なモニタリングにつきましては、中立性という観点から学会等が絡むというふうなアイデアもあるかと思いますので、貴重な御意見として承りましたので、引き続き関係機関と調整させていただければと思います。
 それでは、上田委員、大変失礼いたしました。順番を間違えてしまいました。どうぞ御発言ください。
 
【上田委員】
 ありがとうございます。上田です。発言させていただきます。
 まず、おまとめありがとうございました。今までの色々な議論を取りまとめて、意見書にも入れていただいたかと思っております。私はディスクロージャーワーキング・グループから参加させていただいておりまして、当時の議論も踏まえての着地点ということで納得感のあるもので、結論としては賛同いたします。ただ、幾つか、他の先生方からもう出ておりますが、懸念する点もありますので、その辺り今後の御対応への期待を含めてコメントをさせてください。
 まず、これは、法案が通るのが遅くなったということはあるかと思いますが、実務的にこの3月期からということで、企業もそうですけれども、監査人の側も含めて本当に時間がないという中にあるかと思います。この辺りの御対応は、事務局におかれても時間のない中おまとめいただいて共有ということであろうかと思いますが、その辺りは引き続きよろしくお願いいたします。
 併せて、情報開示の質について御懸念があったかと思います。私ももともとマーケットサイドの立場におりましたので、投資家が必要とする情報でいうとレベルは下がらないというところについては、ディスクロージャーワーキング・グループで相当議論してそういった内容になっているかと思います。他方、信頼性の確保というところは、制度的には若干後退する。けれども、これまで投資家サイド、マーケットサイドから企業の取組を見ていて大丈夫であろうということで、1Qと3Qについては任意のレビュー、ただし、問題がある場合は強制レビューという着地であったかと思います。
 この会議の外の議論になるかと思いますが、今色々な記述情報の強化などが進んでいます。企業が、要はある程度信頼性は確保されている重複感がある開示を軽減して、その代わり新しく必要となった開示をしていこうという動きの中での議論であったかと思います。その辺りもどこを見るかで色々な議論があると思いますが、今回についてはそういうマーケットからの信頼性もあってのここの着地であるといったところは、ぜひ御理解していただけるように共有いただけるとよいのかなと思いました。
 ただ、今、最後に髙田委員が全く同じことをおっしゃっていただいてありがたかったのですが、そうはいっても、任意レビューで足りるのか、必要な情報がそもそもそれ以前に提供されているのかといったところについては、情報ユーザー側の意見をしっかり取り込んでいただいて、今後、取引所を含めてフォローをしていただけると大変ありがたく思います。実務が動く中でまたお仕事を増やしてしまいますけれども、そういったことで情報開示の信頼を確保されるとありがたいと思ったところです。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【堀江部会長】
 貴重なコメント、どうもありがとうございました。
 それでは、白川委員、御発言いただけますでしょうか。
 
【白川委員】
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。もう皆様からたくさん出尽くしているので、私はまず、取りまとめていただいた点に関しては結論に異存ございません。ありがとうございます。
 ちょっとマーケット、上田委員もマーケット御出身ということでしたけれども、私はどちらかというと、前回お話しさせていただいたとおり、証券会社の方々と資金調達、オファリング系でお仕事をさせていただく機会が多いことから、今般のこちらの改正は非常に皆が注目しているところでもあり、そういったところも踏まえてコメントさせていただきたいと思っております。
 といいましても、今の結論についてこれをどうこうということでは決してございませんで、やはり四半期情報に関して、これまでは少なくとも1Qと3Qに関してもレビューという形でレビューの適正性の結論が出ていたところが、1Qと3Qについては基本的に任意でとなるので、レビューがない可能性があります。前回のときに私、プライムの上場企業はみんなやるのではないかと言いましたが、その辺がどうなるのかというのはまだ見えていないと思います。
 そういった中で、じゃあ、オファリングやりましょうというときに、本当に任意のレビューをやるのかやらないのかというような、おそらく次なる問題がきっと出てくると思います。じゃあ、任意でということでやらなかった企業が、1Qの発表の後、2Qの発表の前にオファリングをやろうとしたら、もしかしたらそこで改めてレビューをやるかもしれない。でも、そのレビューをやるときに、まだオファリングの発表もしていないのに、いきなり1Qの決算発表のときにレビュー報告書を突然つけたら、この人たち何かやるのかしらというシグナリング効果を発揮してしまうので、多分それはできないだろうと思います。
 そうなるとおそらく、ここはもう完全にもうシミュレーションの世界ですけれども、1Qで決算発表したときにはレビューはなく、その後になってから、例えばオファリングのローンチのときになってレビュー報告をつけるみたいなそういうことになるのか、こういうすごく実務的な議論がこの先続いていくのではないかというか、もうまさに待ったなしで進んでいるというような多分そういう状況になります。
 申し上げましたのは、これらの状況について、もちろん東証の皆様とか金融庁の皆様とかも当然実務への影響は加味して考えてくださっていると思いますし、そこについて関心を引き続き持っていただきたいというのと同じく、ぜひ会計士の先生方におかれましては、そういったところの実務的な問題を一緒に解決すべく、ぜひ議論を続けさせていただきたいと思っております。それは当然この監査部会の中でということではないかもしれませんが、外でもこれから先続いていくことになると思いますので、御協力をよろしくお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
 
【堀江部会長】
 コメントありがとうございました。
 只今、白川委員から御発言のありました会計士協会との協力体制については、藤本委員もしっかりと御対応されるということでございますので、ぜひその辺りうまくやっていただけるものだと期待しております。
 では、町田委員、御発言ください。
 
【町田委員】
 ありがとうございます。時間も押しておりますので、手短に申し上げたいと思います。
 本日、公開草案取りまとめということで、また、決算短信は、証券取引所において公表されるものなので、準拠性レビューを設けるという、この枠組み全体に関して反対するものではありませんけれども、幾つか懸念材料があると思っています。
 まず第1に、今回、準拠性レビューが入ることにより、レビューが2つになるわけです。あるいは財務諸表監査の監査人が行う以外のものも含めるともっとあるかもしれません。例えば会社法の大会社のガバナンス形態が3つあり、本日川西先生がいらっしゃる中で恐縮ですが、日本の会計基準が4つ認められているとか、ともかくなぜか日本は企業側に選択肢を提供することはいことだというような、そういう悪い慣行があるのではないかと思います。適正な財務報告をするに当たって、信頼し得る財務報告を行うに当たって、こういう方法が原則であるということを決めて、そこから何らかの省略を認めていくというのであれば分かりますが、この基準案でも選択肢を提供して、財規に則るなら適正性レビューだとか、2Qは適正性レビューで、1Q・3Qは、レビューをしないかもしれないし、準拠性かもしれないし、適正性かもしれないというのは、やはり複雑なだけでなく、方針がないように思います。
 そして、もう一つ懸念することは、先程、小倉委員がおっしゃったことに私も賛成です。今後、1Qと3Qの法定開示がなくなる中で、資本市場の総体としては、レビューをつけないという選択をする会社も出てくることから、ディスクロージャーの信頼性の程度は総量として下がるのではないかと思います。ただ、これまでの決算短信の付録の財務諸表でさえレビューはついていなかったし、あるいは年度の監査未了の段階で決算短信に財務諸表がつくことを我々は許容してきたわけです。その意味では、我々がそうした保証の付かない財務諸表を決算短信に添付することの問題を、この法定四半期の開示の1Q・3Qの廃止という事態に陥る前にもっと深刻に考えておくべきだったと思います。
 もっと直接的に言えば、財務諸表なり、あるいはある程度固まった財務情報が公表されるときに、保証がつかない情報が開示されることに対して許容し過ぎたのではないかなと私は考えています。ですから、小倉委員が御指摘のように、ディスクロージャーワーキング・グループの結論が、レビューは任意ということで取りまとめられたということは承知していますが、そこに原因があるというよりも、もともと財務諸表が出ていくときには第三者のチェックがどうしても必要であるということを、もっとしっかりと企業社会に浸透させる必要あるのではないかと思うわけです。
 その中で私が今懸念しているのは、改正金商法の適用までもうあと3か月ですから、あるいは1Q決算までとしてもあと半年なので、現場の監査人の方が、上場企業に対して、準拠性レビューであれば手続が少なくて済みますよと、そのような営業活動というのでしょうか、説明をしているという話も寡聞にして聞くことがあります。準拠性レビューでもこれまでの適正性レビューと保証水準には変わりはない、というのが会計士協会や金融庁事務局の説明ですが、実際にレビューの手続・工数は減るわけですよね。手続が減りますから、準拠性のレビューは受けてはいかがですかというような、安売りをするような説明をするべきではないでしょう。そうしたことが準拠性レビューの導入後のアウトリーチなのだとしたら、それは非常に望ましくないことだと思っています。
 今回の準拠性レビューに関して理論的に懸念するのは、準拠性の問題は、事務局説明もずっと追加的開示の議論ばかりに焦点が当てられていることです。追加的開示の問題だけを言うのであれば、これまでの四半期の1Q・3Qのキャッシュフロー計算書の省略の問題とか、ましてや、以前の部会でも申し上げましたが、会社法の計算書類における注記の量の少なさを考えたときに、あれは何で準拠性の監査ではないのかという議論が当然出てくると思います。適正性か準拠性かの問題は、やはり利用者の範囲、つまり、四半期の決算短信、今回問題となっている1Q・3Qの決算短信であったとしても、広く一般の不特定多数の利用者が見るという一般目的の財務諸表だということ、さらに、日本はアメリカと違って実績主義の四半期の財務諸表を作っているということ、そういったことを考えたときに、追加的開示があるかないかということに準拠性の問題を矮小化すべきではないと考えています。
 そして、最後に、本日の議論の中でどなたも言及されなかったのであえて申し上げます。今回、改正法の施行まであと3か月余りという中で、急ぎの対応だったということもあると思いますが、四半期レビュー基準が期中レビュー基準となった後に、次にこの基準を改訂するタイミングがあったときには、ぜひ中間監査の問題を考えていただきたいと思います。中間監査に加えて、準拠性レビュー、適正性レビューというのは、期中財務諸表に対する保証の枠組みとして多過ぎます。
 もしも金融機関の2Qの単体財務諸表については中間監査レベルの手続を実施したいということであれば、それは金融庁が定める業法でやっていただければよいことです。中間監査の役割はもう終わっています。中間監査を期中レビュー基準に統合する形で無くしていくということをどこかのタイミングで考えなければいけない。基準ばかり増やして、あるいはレビューの形態、あるいは監査の形態ばかり増やしていくのではなくて、効率化を図ってシンプルなものとすること。一体、日本の財務報告にとって何が適切なのか、我々はどのような財務報告の枠組みを全体として求めていくのかということを議論しておく必要があるのではないかと思います。以上です。
 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございました。最後に非常に根本的な課題等を含めて貴重な御指摘をいただきました。
 それでは、定刻になりましたので、この辺りで議論を取りまとめさせていただきたいと思います。委員の方々から多数の貴重な御意見をいただき、誠にありがとうございました。
 なお、紙谷委員から特別目的の件につきまして、事務局からメモが来まして、前文の二の1の(3)実施基準の改訂のところに特別目的の記載がございますので、この後に、おおむね次のような記載でいかがかということで、御紹介させていただきます。
 「このほか、特別目的の期中財務諸表の期中レビューを行うに当たっては、当該期中財務諸表が特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成されていることに留意する必要がある。」
 再度確認をさせていただきたいと思いますが、おおむねこのような記載とさせていただければと思います。
 また、金子委員からも、不正リスク対応基準との関係につきまして、これも前文になりますが、追加の文言があったほうがよいのではないかという御指摘がございました。この不正リスク対応基準との関係につきましては、後発事象に対する手続と併せまして、本日様々御意見いただきましたので、一旦持ち帰らせていただいて慎重に検討させていただきました上で、パブリックコメントにかけさせていただくと、こういった手順で進めさせていただきたいと思います。
 私といたしましては、本日お示しさせていただきました改訂草案について、おおむね御賛同いただいたものと思います。ですので、文言修正等の御提案を踏まえまして、事務局を通じて必要な調整を行いながら、本日の案文に所要の修正を加えさせていただいた上で、本部会としての公開草案とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 

(「異議なし」の声あり)


【堀江部会長】
 どうもありがとうございます。
 先程申し上げましたとおり、事務局を通じて必要な調整をさせていただきますが、最終的な修正、公開草案の公表時期・方法等につきましては、私に御一任いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)

 
【堀江部会長】
 どうもありがとうございます。
 それでは最後に、今後の日程等につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。今後の日程等につきましても、改めて事務局から御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
 
【堀江部会長】
 若干時間をオーバーしてしまいましたが、これにて本日の監査部会を終了させていただきたいと思います。誠にありがとうございました。
 

以上
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