平成13年6月18日
金融庁

企業会計審議会第10回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第10回固定資産部会(平成13年5月25日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第10回固定資産部会議事録

日時:平成13年5月25日(金)午後4時00分~午後6時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○辻山部会長

定刻になりましたので、ただいまから第10回固定資産部会を開催させていただきます。本日は皆様方にはお忙しい中ご参集いただき、ありがとうございました。

それでは早速ですが、議事に入りたいと思います。

前回は、清水委員から、流通業界から見た固定資産の減損会計等についてご報告いただき、意見交換を行いました。

次に、髙野委員から、建設業界から見た固定資産の減損会計等についてご報告いただき、最後に自由討議を行いました。

本日は、まず神田委員から、商法と固定資産の減損会計等の関連についてご報告いただき、意見交換をしたいと思います。

残りの時間ですが、前回に引き続き、固定資産の減損会計及び投資不動産の会計問題につきまして、主要な論点を中心に意見集約に向けて意見交換をしたいと思います。

それでは、まず神田委員から、商法と固定資産の減損会計との関連につきましてご報告をいただきたいと思います。神田委員、よろしくお願いいたします。

○神田委員

神田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

なぜか、この部会に、なかなかちょっと日が合いませんで過去欠席を重ねまして、部会長の先生を初め、大変申しわけございませんでした。本日は商法における固定資産の減損会計などについてということでご報告させていただきます。そのほかに、土地再評価法と土地の減損会計の関係と、それから、現在法制審議会会社法部会で審議が進められております商法改正中間試案についても多少触れてほしいというリクエストを事務局の方からいただきましたので、3本立てでご報告させていただきますけれども、主たる部分は商法と固定資産の減損会計の関係につきまして、私の考え方を中心にお話をさせていただきます。

お手元の資料でございますが、1-1というのが報告用資料でして、大体これを読むような形で、恐らく15分程度でご報告させていただけると思います。資料1-2は、その報告の中に出てきます条文を、事務局にお願いしてご苦労をおかけしましたが、張りつけていただいたものであります。そのほかに参考資料1、2、3とありますけれども、これは報告の中で若干出てきますので、それを読んだりはしませんけれども、皆様方、お暇なというか、ご関心のある方は後でお読みいただければと思います。

なお、特に商法と固定資産の減損会計の部分につきましては、実は昨年、まだ固定資産部会の前の部会だったころに、この議論をしておりましたときに、いろいろご質問を受けたりしておりまして、そのときに考えたことがベースになっておりまして、余りこの1年間進歩はございません。実はその時点で、当時の部会長の先生には私なりの考え方をお伝えしたんですけれども、それから余り進歩はしておりませんで、法律も変わっているわけではありませんけれども、そういうことでございます。固定資産の減損会計の部分につきましては、資料1-1の報告資料に一般論と各論に分けさせていただきまして、その各論の方はQ&A方式で、質問を書いて答えるという書き方をしておりますけれども、これはちょっとその方がわかりやすいのではないかという趣旨でそうさせていただきました。

以上が前置きであります。

そこで、早速1番の商法と固定資産の減損会計というところを、いわば読み上げながらご報告をさせていただきます。

まず一般論ですけれども、これまで商法上、固定資産の減損会計についてどういう議論があったかにつきましては、関連文献を含めまして、宮島先生と島原先生の本に詳しく書いてあります。これは参考資料の1として該当部分をお配りしております。また、時期的にその後の文献といたしまして、筑波大学の弥永先生のものがございます。これは参考資料の2としてつけさせていただいております。

内容ですけれども、商法34条2号という規定がありまして、これは資料1-2に条文をつけさせていただいておりますけれども、これは株式会社にも適用のある条文であります。この条文は、固定資産、ただし特別の規定があるものは別ですけれども、それにつきまして「予測すること能わざる減損が生じたときは相当の減額をなすことを要す」というふうに規定しているわけであります。これは文字どおり「予測すること能わざる減損」が生じた場合に、「相当の減額」をするということを商法は要求しているわけであります。

問題は、この場合に、第一に何が一体「予測すること能わざる減損」か、そして第二に「相当の減額」とは何かなどといったことが問題になるわけですけれども、こういった条文の解釈に当たりましては、大変有名な32条2項、昭和49年の商法改正で入りました規定ですけれども、これもお手元の資料1-2に条文がつけてありますけれども、「公正な会計慣行」を斟酌するということになります。

なお、ちょっと余計なことですが、「固定資産」とは何ぞやという、そういう範囲、あるいはここの34条2号に「固定資産」の範囲についても、これは条文の解釈問題になりますので、法律論としては公正な会計慣行を斟酌するというふうに考える見解もあるようであります。ただ、この固定資産と流動資産の区別については公正な会計慣行によって判定される余地がありますけれども、ただ、一般に計算書類規則でそこは定めております。固定資産に属するもののうちで、ある資産についてはおよそ減損会計の対象にならないというような解釈は、34条2号の文言からして、特別な規定がある場合は別ですけれども、現行商法上はなり立ち得ないというふうに考えられます。

ところで、34条2号による「減損」とは何かということですが、これは商法にはどこにも書いてありませんで、従来物理的な減損だけではなくて、機能的な減損も含むと。すなわち永久的な減損はすべて含むと解するのが通説であります。通説というのは法律家しか使いませんで、ドイツ語のヘルシャンド・マイヌングというのを古くから訳しているんですけれども、昭和37年の商法改正で基本的にこういった計算の規定が整備されましたが、当時の法務省の立法担当官の解説、これは上田さんという方ですけれども、それから学会では、当時商法学会でこの分野に詳しかった矢澤先生という先生の「企業会計法の理論」という本がありますけれども、そういったものすべてこのように解しております。

これに対して永久的でないもの、なかなか言いにくいんですけれども、物理的または機能的減損に起因しない、例えば時価の下落等でありますけれども、こういったものが含まれるかどうかですが、これは本来は商法は減損とは考えてこなかったように思われます。といいますのは、はっきりした証拠はないんですけれども、昭和37年改正当時の解説等を読みましても、それを余り前提にしておりません。それから、そこに書きましたように条文の書き方が、文言が金銭債権とか流動資産の場合と異なって書かれております。ただ、昭和49年改正後では、この32条2項が入りましたので、現在の商法の解釈としては、企業会計の方でこういったものも減損であると取り扱われるのであれば、商法32条2項によって、公正な会計慣行として商法上も減損であるというふうに解釈することができると考えられます。

ところで、減額した後で回復したような場合に、増額というか戻し入れができるかという点についてですけれども、これは例えば金銭債権、これは34条2号とは書き方が違いますけれども、この金銭債権については商法 285条の4の第2項で「取立つること能わざる見込額」を控除せよと書いてあるわけですが、後に事情が変わって、この見込み額が減少した場合に増額していいか、あるいは増額すべきかという問題と同じに考えるべきものであるように思います。商法の資産評価規定というのは、考え方としては、その時点における個々の資産についての評価規定というふうにつくられておりますので、そのような増額をすべきか否かは、金銭債権の場合で申しますと「取立つること能わざる見込額」の解釈によるものと思われるわけであります。そしてそれを解釈する場合には公正な会計慣行が斟酌されるわけであります。したがいまして、万が一といいますか、事後的にこの「取立つること能わざる見込額」が減少したという場合には、その分の増額をするのが商法上も妥当と考えられます。

同じように、固定資産の減損につきましても、一たんこの「予測すること能わざる減損」が生じたけれども、その後の年度で万が一といいますか、この減損が減少したような場合、すなわち永久的減損でない時価の下落等を、先ほど申しましたように公正な会計慣行を斟酌して商法上も減損であると解して減損をした場合、そしてその後、その減損が減少したような場合には、その分の増額をするのが妥当であると思われます。

2ページ目に行かせていただきます。

なお、日本と同じように、会社法といいますか、商法に会計規定を結構詳しく置いてある国というのは、先進諸外国でいいますとドイツが有名であります。先ほどちょっと触れました参考資料1の文献では、ドイツ商法典 253条5項というものを引用して、増額しない選択肢を明文で認めている条文でありますけれども、株式会社や有限会社、これはドイツの話ですが、商法典 280条1項によって増額しなければならないこととされております。これらの関係するドイツの条文、それからドイツの文献等は、ご関心がある方はおられるかもしれないと思いまして、ご迷惑かとは思いますが、参考資料の3としてつけさせていただきましたので、後でもしご関心がなければ捨てていただければと思うんですが、ありましたらごらんいただければと思います。

一般論として、商法が重視する会社債権者法、特に配当規制との関係で配当可能利益の計算の基礎となる資産評価額規制と、こういった見地に立ちますと、この上記のような減額、つまり減らす方は柔軟に認め、他方でふやす方は厳格に認めるべきではないかということになりそうではあるんですけれども、昭和37年改正以来、いわゆるこれは法律家が秘密準備金、これもドイツ語の翻訳なんですが、つまり低過ぎる評価というのは株主の利益を逆に害する、すなわち配当可能利益を減らすことになりますので、株主の利益を害するため認めないという立場が明らかになっておりますので、一般に保守主義といいましても、法が定める限度でのみ当てはまるべき事柄であります。したがいまして、減額や増額の要件というのは、会社債権者法の見地というよりは、むしろ公正な会計慣行を斟酌し、企業会計の見地から決定され、商法の解釈はそれに従うべきであるという立場に、特に昭和49年改正で32条2項が入った後は至っているというふうに解すべきであります。

余計なことですが、ドイツ商法典の 280条1項を先ほどちょっと申しましたが、その2項という条文がありまして、税法が増額しないことを認める場合には増額しなくてもよいという、こういう逆基準性などとして知られている話はドイツには結構たくさんあるんですけれども、1999年以降、税法はそのような取り扱いを認めておりませんので、現在2項の適用はありません。したがって1項に戻って増額しなければならないということになっております。この点につきましても参考資料3をお読みいただければ出てくると思います。

以上で大体総論というか、終わるんですけれども、一応各論としてQ&Aでやってみましたので、ちょっとそれを簡単にお話しさせていただきます。

まず、Q1としまして、(1)「取得価額」について。投資不動産について時価評価をするという考え方があるが、時価評価をすることは商法違反となるか。

(2)通常の減価償却は「相当の償却」に該当すると思われますが――これは34条2号の文言ですが――臨時の償却は「相当の償却」なのか、あるいは「減損」なのか。

(3)、ちょっと飛びますけれども、「予測すること能わざる減損」という概念ですが、(ア)として商法上の「減損」に含まれるのはどのような範囲か。(イ)として、例えばとして5つ例を挙げて、これらは減損の例に商法上含まれるか。マル1が、土地に地盤沈下が生じた、あるいは建物の一部が火災によって損傷した。マル2が、生産設備が遊休状態にあり、今後使用する可能性が低く、かつ、売却しても売却損が生じる状況である。マル3固定資産の時価が下落して、資産の帳簿価格を下回っている。マル4賃貸不動産で賃料が下落傾向にあるため、資産の帳簿価格を回収できない見込みである。マル5生産設備で、現在稼働中であるが、製品の価格が予測より大幅に下落したため、資産の帳簿価格を回収できない見込みである。こういったものはどうかであります。

(ウ)として「のれん」について「予測すること能わざる減損」が生じている場合も、商法34条2号が適用されるのか、それとも別の規定が適用されるのか。

次は(4)ですが「相当の減額」。商法上の「相当の減額」とは、時価までの減額を意味するのか、あるいは会社の見積もりによる回収可能額まで減額するようなことも認められるのか。

そして(5)、減損の戻し入れですが、減損の処理を行った後の年度で事態が好転した場合には、一定の条件のもとで過去の減損の戻し入れを行うことは商法上認められるかであります。

質問の2として、時価の下落について、特に流動資産の評価規定との関係で、3ページ目に行かせていただきますが、ちょっと2行ほど飛ばさせていただきまして、流動資産については、商法 285条の2により、時価が著しく低くなったときは回復すると認められる場合を除いて時価まで評価減しなければならないとされております。固定資産について、これは34条の2号しか規定がありませんが、時価が著しく下落した場合、商法上、マル1流動資産と同様に評価減を行わなければならないのか、マル2評価減は強制ではないがしてもいいのか、そしてマル3、することは認められないのか。また、時価の下落が著しくない場合はどうかであります。

Q3として、商法の立場から、その他何か留意すべき点があるかということであります。

先にQばかり読み上げましたけれども、先ほど申しました中に大体含まれておりますが、一応順番に申しますと、1番につきましては、(1)現行商法は、不動産について時価評価は認めておりません。後で申します土地再評価法というのがその例外だということになります。投資不動産について時価評価を認めるためには、現在の商法を前提にしますと商法改正が必要になります。

(2)「償却」と「減損」の定義は、商法はしておりません。したがって、これは公正な会計慣行を斟酌して32条2項経由で判断することになります。企業会計が臨時であっても、これを償却と位置づけているものは、性格づけているものは商法上も償却になると思われます。

(3)の(ア)で、この減損の範囲内でありますけれども、特に範囲に限定はありません。「予測すること能わざる減損」に該当すれば、相当の減額をしなければならないということになります。先ほど申しましたように、減損には物理的な減損だけではなく、機能的な減損も含まれます。

(イ)ですが、「予測不能」の要件を満たしていれば、いずれも減損処理の対象になると考えられます。ただ、マル3のような時価が下落したような場合は、これは先ほどの繰り返しですけれども、本来商法はこういうものは減損と考えてこなかったように思われますけれども、昭和49年改正後は、企業会計の方でそれも減損だというふうに取り扱われるのであれば、32条2項を経由して、商法上も減損と解釈することができます。

(ウ)ののれんについてですが、のれんについては商法 285条の7という規定がございまして、これもお手元に条文をつけていただいておりますけれども、34条2号の特別規定ということになります。したがって、 285条の7の方の規定が適用されるということになります。ただ、この 285条の7は、法文を見ていただきますと、減損については何ら規定しておりません。しかし、そのことは単に規定をしていないだけであって、積極的に減損処理をしちゃいかんと禁止している趣旨ではないと考えられます。したがいまして、企業会計上のれんが減損会計の対象になるということであれば、公正な会計慣行として32条2項を経由して、商法上ものれんも減損会計の対象になると考えられます。以上の考え方に対しては、減損の部分についてだけ34条2号の最後の文章が適用になるという解釈論も可能かと思われますけれども、いずれにしても結論に変わりはありません。

(4)、公正な会計慣行によりますので、質問の方が忘れられたかもしれませんが、会社による見積もり基準も認め、それが公正な会計慣行であれば認められるということになります。

(5)、戻し入れにつきましては、先ほど申しましたように、それが公正な会計慣行であるということであれば、商法上も認められるべきと考えます。

Aの2なんですけれども、不動産ですが、固定資産について著しく、あるいは著しくなく時価が下落した場合の話ですが、これも先ほど申しましたように、時価が下落したような場合に、それだけで減損と言えるかというと、本来はそのように考えてこなかったというのが商法の立場だと思われます。ただ、繰り返しになりますけれども、昭和49年改正後は、企業会計でそれも減損と取り扱われるのであれば、32条2項経由で商法上も34条2号の減損と解釈することができます。これに対して単なる評価減とか評価益というのは、特別法でもない限り現在の商法は認めておりません。

A3ですけれども、商法が将来立法論として、例えばですが、固定資産の中でさらに減損会計の対象となる資産を分類してみたり、あるいは減損会計に関する規定をさらに詳細に規定し直すということは余り考えられません。特に公正な会計慣行を斟酌すべきとの規定が49年改正で入った後はそうであります。ただ、そうは申しましても、今申しましたように、例えば土地、不動産を時価評価するためには商法改正が必要でありますし、また、繰り返しになりますが、条文の文言から言いますと、不動産、特に土地の単なる時価の下落というのは、本来「予測すること能わざる減損」概念では、34条2号では考えていなかったものと思われます。したがいまして、解釈で何とかなると言ってしまえばそれまでですけれども、公正な会計慣行により、そのような場合を減損とする結果、商法上もこれを認めるというような場合には、本来は商法の規定の文言を改正して、つまりその趣旨を文言上も明確にする方が望ましいと思われます。これはのれんの減損会計についても、それが公正な会計慣行である結果、商法上も認めるという場合には、規定上もそれを明らかにした方が親切というものですし、その方が望ましいと思われます。ただ、現行法の解釈でも、これらは可能だということは先ほど述べたとおりであります。

以上、商法の問題について終わりまして、 II 番として、土地再評価法と土地の減損会計について一言だけ申し上げます。

土地の再評価に関する法律、これは平成10年に制定されました法律でして、これも資料1-2の2ページ目に、該当条文だけで恐縮ですけれどもつけさせていただきましたが、そこの8条の2項に言います商法34条2号の規定による減額という概念は、当然ながら34条2号に含まれる減損会計による減額も含まれると解すべきであります。したがいまして、土地について商法34条2号に基づいて減損処理をするような場合には、この8条2項の適用があるということでして、土地再評価法上の再評価差額金の取り崩しをしなければならないということになると考えます。

最後に3番目、商法改正中間試案について簡単に申し上げます。

これはやはり資料1-2の3枚目に関係箇所だけを張りつけていただきました。「商法等の一部を改正する法律案要項中間試案」というものが法制審議会会社法部会の審議を経て、この4月18日に法務省民事局参事官室から公表されまして、現在、広く各界の意見を求めているところであります。これは会社法のかなり広範な範囲にわたる改正を提案しておりまして、一部は、秋にもし臨時国会が招集されればそこへ、そして残りは来年の春の通常国会への改正法案提出を目指しております。今から申し上げる部分につきましては、来年春の通常国会への法案提出を目指す中に含まれている項目であります。その中の第20という項目は「資産評価等に関する規定の方法」と題しておりまして、そこの試案の方をごらんいただいてもわかるかと思いますけれども、商法中の資産の評価等に関する規定の方法に関するものであります。そして会計帳簿における財産、繰延資産、引当金の額及び記載方法、そして配当、中間配当において純資産額から控除すべき額等について、これを法律で書かずに法務省令に委任することを提案しております。

なぜこのようなことを提案しているかと申しますと、かねてから経済界等から、日本では商法と証取法という2つの法律が企業会計を規制しておりまして、そのために各会社が――というのは、証取法適用会社という意味ですが――商法に基づく計算書類と証券取引法に基づく財務諸表等の2種類の書類を作成しなければならず、会社の負担となっているという指摘がなされてきました。この指摘に対応するためには、商法会計と証券取引法会計の調整といった問題を解決しなければいけませんが、これまでも適宜商法の規定を改正する――32条2項もその例ですけれども――などして対応してまいりましたけれども、国際的に整合性のある会計基準の確立が求められている状況にかんがみますと、今後、会計の方で資産の評価基準が変更され、商法がそれに速やかに対応することが要請されるものと考えられます。

そこで、試案は、大会社を前提とした立法技術的な限界、つまり会計の方が変わったら、すぐ商法がそれに対応してといっても、法改正をしなければいけませんので、それが大変であるということ、それから、企業会計をめぐる国際的な動きの速さと、法改正に要する時間とのギャップとの問題を解決するために、この際商法では、法律としては一般的な規定のみを置くこととし、商法中の資産の評価規定等は省令に委任することにより、そういった要請に対応しようということを提案しております。そういうことになりますと、それに伴いまして、配当限度額の算定、中間配当額の算定に関する規定につきましても、その一部は省令によって規定するということになりますので、それをあわせて提案しております。

なお、これに関連しまして、証券取引法に基づいて有価証券報告書を提出する株式会社が2種類の計算書類というか、財務諸表を作成しなくてよいようにする観点から、財務諸表規則の定めに従って貸借対照表及び損益計算書を作成する、そういうものを商法上の計算書類というか、貸借対照表及び損益計算書とするというふうにすべきであるという意見が出されております。これが試案の注2で触れられている点であります。その他、営業報告書ですとか、また連結貸借対照表等の導入、これは試案の次の第21という項目でありますけれども、こういったものを導入することを考えていますために、附属明細書の簡素化、合理化といったことを求める意見も出されておりますので、こういった点につきましてもあわせて意見を求めているというところであります。

15分を超えてしまいましたけれども、以上で報告を終わらせていただきます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの神田委員のご報告に関しまして、ご意見、ご質問、ございましたらお出しください。

○品川委員

ちょっと隣から失礼いたしますが、最初の1ページのところで、減損を計上する場合に、商法上、株式や何かは時価の規定があって、時価の解釈論があるんですが、この場合の減損における時価に関する商法上の解釈論というのはどういうふうになっているのかということと、同じページの中で、戻し入れの場合に金銭債権と同じように考えられるというふうにまとめられておりますが、企業会計上、金銭債権については完全な時価主義会計が導入されてくると、商法は同じように固定資産について時価会計がそのまま――これは金銭債権について、企業会計が時価会計に入っても、恐らく固定資産についてはそこまで入ってこないというふうに考えた上での質問なんですが、商法はそこはもう突き抜けてしまうのかということ。

もう一点、3ページに、このQ&Aの中で、不動産について時価評価を認めていないというふうに断定されておりますが、不動産と固定資産の概念というのは、固定資産というのはそもそも不動産の一部ではないかというふうに考えられるんですが、その言葉の使い方について、特に商法の場合は非常に言葉が厳格だと思うんですけれども、その辺、なぜこういうふうになるのか。その3点についてちょっとお伺いしたい。

○神田委員

第1点でございますけれども、まず時価について、株式なんかの場合を含めて商法はどう考えているかということにつきましては、基本的には、商法が資産について評価規定を置いている資産につきましては、その評価規定に規定を置いているということであります。したがいまして、金銭債権もそうでございますけれども、ご指摘の株式会社については、流動資産について 285条の2、それから金銭債権について 285条の4、その次の 285条の5が社債等でありまして、株式は 285条の6、そしてのれんが 285条の7と、これだけですけれども、あと繰延資産等がありますけれども、これらについて、時価の取り扱いについては、これらの規定の解釈論ということになりますので、ご指摘のようにというか、固定資産は、金銭債権ですとか株式社債についてはこちらの規定が特別規定ということになりますので、これらの規定のない固定資産については34条2項ですべてカバーすると、こういうことになります。

したがいまして、第2点もあわせて申し上げた方がいいと思いますので、金銭債権について、会計の方は時価になったらどうなるかということですけれども、これは商法上は平成11年の改正で 285条の4の第3項という規定を現在設けておりまして、ちょっと3項だけ読んでもわかりにくいと思うんですけれども、条文を私だけが持っているというもので恐縮ですが、何と言っているかというと、第1項の規定にかかわらず、市場価格ある金銭債権については時価を付するものとすることを得というふうに書いてあります。これは何を言っているかといいますと、市場価格のある金銭債権については時価を付してよろしいと、こう言っているわけですけれども、よろしいというふうに書いた趣旨は、企業会計の方で時価を付さなければならないということであれば、当然ながら32条2項経由で商法上も付さなければならないという趣旨だというふうに、少なくとも私は考えております。なぜ「得」という書き方をしたかというのは、これは商法は中小の会社を含めて、すべての株式会社に適用があるために、もしこれが「しなければならない」という規定にいたしますと、適用される会社の範囲を商法上決めなければいけないという、こういう難問に当たるためでありまして、これはいろいろ議論した結果、商法上の文言としては時価を付するものとすることを「得」というふうに書くことによって、あとは付さなければならないかどうかというのは公正な会計慣行を斟酌して決めましょうということになったわけであります。

したがいまして、時価会計の方はそういうふうに手当てをしておりまして、金銭債権だけではありませんで、社債株式についても同じ規定を、ラフに言いますと、平成11年で入れております。これに対して固定資産の一般規定であります34条2号ですとか、あるいはのれんなどについてはそういう規定は入っておりません。

それで、不動産と固定資産の関係は、先生ご指摘のとおりでありまして、不動産というのは固定資産の1つであります。ただ、ちょっと私の書き方が悪かったかもしれませんが、Q&Aで書いたものですから、Qの方で不動産と書きましたので答えを不動産と書いただけでありまして、それは一般論としては、34条2号に含まれている範囲においては固定資産は固定資産であるというふうに考えていただいてよろしいと思います。

○品川委員

ちょっと2問目のところで最後の、要するに減損が減少した場合には、その分の増額をするのが妥当という書き方につきましては、これはやはり、さっき金銭債権の場合は取得価額より上回っても時価評価をするのかなというイメージがあったものですから、この場合の増額をするというのは、あくまでも減損を限度に増額するという、こういうふうに……。減損をさらに上回って評価益が出るようなことは考えていない。

○神田委員

どうも失礼しました。それを申し上げなきゃいけなかった。時価の規定は 285条の4の第3項でして、私がここで論じているのは 285条の4の第2項、昔からあります取り立て不能の見込み額というものは控除しなければならないという方の規定についてです。したがって、これは3項の適用がない会社を含めて、あるいは3項の適用がある会社についてもそうですけれども、取り立て不能の見込み額を控除した場合に、その取り立て不能の見込み額が変わったというような場合には、それを戻し入れていいという趣旨でありまして、それとは別に、そもそも企業会計の方で時価評価せよということになりますと、それとは別の次元で3項で時価評価を商法もしなければならないという、こういう関係になります。

○辻山部会長

品川委員、よろしいでしょうか。

そのほか、神田委員のご報告につきましてご質問、ご意見がございましたら、どうぞご自由にお出しください。

○斎藤委員

念のための確認ですけれども、商法の34条2号にいう減損というのは、物理的な減損だけでなく機能的な減損を含む、つまり永久的な減損はすべて含むと、そういうのが一般的な理解であるというご説明でありますけれども、通常、今我々が問題にしている減損というのは、資本設備なり、いわゆる固定資産の収益性が低下することによって、その将来のキャッシュ・フローが投資ないし現在の簿価を回収できないと、そういう見込みがある状態を減損と呼んでいるわけですが、それはここでいう永久的な減損であって、商法にいう概念に該当すると理解して差し支えないんでしょうねということだけ確認させてください。

○神田委員

結論としては私はそう考えるのですが、ただ、当時の文献が、どうも余りそれを意識して書かれていないんですね。ですから、おっしゃるように収益性に変化があって、将来のキャッシュ・フローを見ると、おっしゃるように現在価格が回収できないとかいうようなことというのは、どうも当時会計の方でも余り議論されていなかったのではないか、当時というのは昭和37年改正のころなんですけれども、ですから、当時書かれてあることは、ここに私が書いたことのような表現を使っておりますので。ただ、今ご指摘のようなものも、ある意味では永久的な減損に入ると思いますので、そういう意味では、ここの分類で余り意味がないかもしれませんけれども、言えば永久的な減損に含むというふうに解釈してよろしいように思います。

ただ、永久的でないものであっても、先ほど申しましたように、これも言ってしまうと何か意味がないのかもしれませんけれども、公正な会計慣行で減損であるということになれば、商法もそれに従うというふうに考えますので、余り区別する実益はないんですけれども、概念としては当時の文献ではどうも余り意識されていないというか、少なくともあらわれていないんですけれども、頭の整理としては、単なる時価の下落と明らかに違う概念ですので、そこは区別して考えていって、概念の上でそちらの方は永久的な減損に含まれるというふうに考えた方が私はいいように思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかございますでしょうか。

○秋葉委員

今の永久的にというところの部分なんですが、1ページのところでいただいたところですと、今の減損の場合には永久的でないものは本来含んでいないんじゃないかというご説明が今もありましたけれども、その次の1ページ目の最後のパラグラフの戻し入れに関しては、これが状況が変化した場合には増額するのが妥当ということになると、これは結局永久ではなかったということではないのかと思うんですけれども、そこの部分というのはうまく整理されていると考えられるんでしょうか。

○神田委員

ここはいろいろな考え方があると思うんですけれども、ここで書きましたように、ちょっと書き方が悪かったかもしれませんが、永久的でない減損であっても、公正な会計慣行によって商法上も減損と取り扱った場合には、それは戻ることがあるわけなので、戻ったときには戻し入れというものも、それが公正な会計慣行であれば商法上もすべきであろうという、セットで考えているというんでしょうか、そういうことでございます。ちょっと表現がうまく出ていなかったら申しわけありません。

○辻山部会長

秋葉委員、よろしいでしょうか。

また後の議論とも関係すると思いますけれども、そうすると、一応確認でございますが、この下の方の戻し入れというのは、この段階では、上で永久的なというふうに呼んでいないものについて想定されているという、そういう意味なんでしょうか。

○神田委員

私はそこはセットで考えていたんですけれども。永久的なものが戻るということは、ちょっと言葉の定義上ないように思うものですから。ただ、先ほど斎藤先生がおっしゃったようなものをもし含めますと、また変わるということはあり得るんでしょうかね。その辺はちょっと詰めて考える必要があると思います。

○斎藤委員

永久的という判断をするときの基準ですけれども、これがいわば永久的な減損として見積もったということであれば、それは見積もりに基づく減損は、見積もりが間違ったという訂正はあり得るわけですよね、概念としてはね。

○辻山部会長

それでは、そのほかにございますでしょうか。

もしございませんようでしたら、議事を進めさせていただきたいと思います。

それでは、先ほど申しましたように、固定資産の減損会計並びに投資不動産の問題について、全体的な討論を前回に引き続き行いたいと思います。本日は、議論を効率的に進めるために、主要な論点と思われる事項につきまして、さまざまな意見がある事項でございますけれども、4人の委員の方に議論の整理をお願いしております。秋葉委員、川村委員、小宮山委員、荒木委員にこれまでの議論の整理をお願いしておりますので、順次ご報告をいただきまして、それに基づいて少し議論を進めたいと思います。

お手元の資料の2以下にまとめていただいたものが、「委員限」という判子を押しておりますけれども、あると思います。そちらをごらんいただきたいと思います。

それでは、秋葉委員から減損の認識、減損損失の測定などの問題につきましてご報告をお願いしたいと思います。秋葉委員、よろしくお願いいたします。

○秋葉委員

公認会計士の秋葉でございます。今、部会長の方からお話がありましたように、私の方は、これまでの議論のまとめと今後のたたき台という意味で、私の意見が入っている部分もあろうかと思いますけれども、減損会計の意義、それから認識と測定、それから戻し入れということについてご報告をさせていただきたいと思います。

お手元の資料の2というところに2枚ほどまとめてございますけれども、まず最初、減損会計の意義ということから確認させていただきたいと思います。

ここの部分は、かなり辻山部会長のご支援を得て作成したということを最初にお断りさせていただきたいと思うんですけれども、内容的には論点整理からの確認ということで、重要なところだと思いますので、これを一つ一つ読まさせていただきます。

固定資産の減損処理(減損会計)とは、資産もしくは資産グループの収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった帳簿価額を、将来に損失を繰り越さないために、一定の条件のもとで回収可能性を反映するように減額する会計処理である。

減損処理とは、本来、投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を評価し、当初投資額の回収が見込めなくなった時点で、将来に損失を繰り越さないために帳簿価額を減額する会計処理であるから、期末の帳簿価額を将来の回収可能性に照らして単純に見直すだけでは、本来の意味の減損を正しく認識することはできない。

ただし実務的には、本来の意味の減損を厳密に識別することは困難である。また減損の測定には見積もりの要素が大きいという点を考慮して、減損の存在の蓋然性を識別する基準を設け、減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識し、帳簿価格を減額してはどうか、というのがこれまでの考え方ではなかったかというふうに思います。

この点、特に下の参考というところに、何が問題かということを簡単に列挙しております。単純に簿価と回収可能価額、回収可能価額が何かというのは議論はございますけれども、これは後で触れることにしまして、回収可能価額と比べるというときに、帳簿価額の方が上回っているという状態は、幾つかの場合分けができまして、まずマル1にございますように、当初から予定されていた減価償却のおくれ、具体的には、投資してすぐにキャッシュ・フローが生じる、つまり売上等が上がって収益性等が高いんですけれども、後の年度についてはかなり急激にキャッシュ・フローが低下する。この場合、減価償却費は定率法をとったとしても、そのキャッシュ・フローの低減には追いつかないということになりますと、当初から、最初に早期回収して、後の年度には回収ができないということが予想されるわけで、ただ、投資期間の全体では当然その回収が行われている、ないしは見込まれると。この場合に、単年度で帳簿価額と回収可能価額を比べた場合に、特に後の年度では帳簿価額がその回収可能価額を上回るということも考えられますが、このような場合について減損と考えるかどうかということに関しては、冒頭に申し上げたような投資期間全体を通じた回収可能性ということに鑑みれば、当初から予定されていたものですので減損には当てはまらないんではないかと。特に減価償却の計上方法が定率法、定額法、それから生産高比例法と幾つか認められてはおりますけれども、キャッシュ・フローの回収が相当早いというものについては追いつかないということが考えられまして、かつその場合でも減価償却費の修正は要求されないという現状からすると、このようなケースを減損ととらえるのは適当じゃないんじゃないかということが考えられます。

その他、マル2にありますように、耐用年数の短縮による減価償却の修正の場合とか、それから臨時償却の場合ということも考えられますけれども、そのもとになるような物理的、機能的劣化ということも考えられますが、収益性の低下ということの場合でも、簿価と回収可能価額に差が生じる場合がありまして、この場合でも、内容的にはa、bと2つに分けられるのではないかというふうに思います。特にaのところが、先ほど申し上げたマル1のケースに当てはまる場合で、投資期間全体を通じると投資額の回収が可能なんですけれども、ある時点の簿価と回収可能価額を比べると、簿価の方が大きいというケースもあり得るんではないかと。そうすると、このようなケースは、いわゆる本来の減損ではなくて、次のbのような投資期間全体を通じても回収が不可能だというケースについては、これは投資が失敗したわけですので、損失がいわば確定したということになりますので、本来の減損ということで考えるべきではないかというのが論点整理のときから言われてきた理念的な考え方ではないかというふうに思います。

ただ、このような投資期間全体の回収が行われたかどうかというような比較等は、実務的にかなり大変だということになりますので、技術的にこれを代替する方法で、減損の存在が相当程度確実な場合に限って認識するという方法をとってはどうかというような話が出てきたかと思います。このような相当程度確実というのは、先ほど議論になりましたように、永久的な減損なのか、それともほとんど確実性が高いという意味、文字どおりに考えるのか、これはなかなか難しいとは思いますけれども、永久的にというような考え方をとっても、見積もりが間違っていたということも考え方としてはあり得るのかもしれません。いずれにしろ、本来的な考え方と実際の適用上の読みかえといいますか、代替的な手法ということで減損会計の意義をとらえようというのが、これまでのここでの議論ではなかったかというふうに思います。

このような考え方を踏まえますと、次の大きな2番目に行きまして、減損損失の認識と測定という具体的な手続に入るわけですけれども、この場合のまず認識の段階としまして、1ページ目から2ページ目にかけての話ですが、減損の兆候ということと、それから減損の認識というセクションにかかわりますけれども、結論から言えば、まず定性的なテストと申しますか、いろいろな状況をかんがみて減損の兆候をまずとらえて、その後に定量的なテストと申しますか、具体的な数値を使って、それのテストにひっかかったものだけ減損を認識するという2段構えでやってはどうかというのが、これまでの議論の中で述べられたことではないかというふうに思います。

これを踏まえて確認しますと、1ページ目の最後にございますように、まずは減損の兆候が認められる資産または資産グループについて、減損の調査を実施してはどうかと。この減損の兆候ということについては、資産価格の著しい下落、資産価値を低下させるような使用範囲及び使用方法の著しい変化等の例示を設けてはどうかということが言われたかと思います。この際、どの程度兆候について例示を掲げるかということについては、幾つか議論があったかと思いますけれども、ここではちょうどそのような議論を含めて、このような話がなされたというふうにとどめさせていただければと思います。

これを踏まえて具体的な減損の認識ということを考えるときに、減損の兆候が認められた資産または資産グループについては、定量的なテストとして割引前将来キャッシュ・フローを見積もり、見積もられた割引将来キャッシュ・フローを帳簿価額が上回っている場合に減損してはどうかということが言われたかと思います。これは形の上ではアメリカ基準と同じ手続になりますが、考え方としましては、冒頭に申し上げたような投資期間全体の回収でもって減損を考えるわけですが、なかなか実務的には難しいだろうということで、代替的な手法として、相当程度減損の存在が確実な場合の方法として、このような割引前将来キャッシュ・フローでもってテストするということが考えられたというふうに思います。

次に、2ページ目の3番目ですが、減損を認識する必要があると判断された資産または資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減額した金額を減損損失として当期の損失として処理することとしてはどうかということが話されてきたかと思います。このような減損損失の測定についての基礎は、回収可能価額という概念が述べられてきたかと思いますが、これは国際会計基準と同様な概念になりますけれども、正味売却価額と、それから将来キャッシュ・フローの割引現在価値のいずれが高い方まで減額するという考え方が話されてきたかと思います。これはなぜこのような考え方が適当かということになれば、実際に処分を予定していれば正味売却価額の方が高いわけですし、それから、今後も使用し続けるということになれば、理屈的にはその使用価値と申し上げますか、自分で使って将来キャッシュ・フローを得てという方の割引現在価値の方が高いということになりますので、どちらか回収可能価額、これも冒頭の減損会計の意義に照らして考えれば、そこまで下げるというのが妥当だろうというふうに考えられてきたかと思います。その際の減損損失については、当期の損失として処理するということについては、ほとんど異議はなかったかというふうに思います。

ここまでが減損会計の意義と認識、それから測定の話ですけれども、最後に2ページ目の大きな3番目で、戻し入れのところを整理させていただきますと、まず、この戻し入れの性格というのは、先ほど申し上げたような減損会計の意義を考えれば、かつ実務的な観点から手続として確率基準を採用しているとすれば、ここはちょっと確率基準なのか、先ほどからちょっとお話があったような永久的な減損が存在したと考えるのかということによっても若干違うと思いますけれども、いずれにしろ相当程度減損が確実だと、ないしは永久に減損しているというふうに考えて行ったわけですけれども、それを戻し入れるということは、それが間違っていたよと。過去の見込み違い、減損したときの見込み違いを修正する手続というふうに考えざるを得ないのではないかというふうに思われます。そうであれば、もし戻し入れをするとして、まず金額としては、減損損失を計上しなかったならば、計算されるであろう帳簿価額ということになるのではないかと思いますが、具体的には償却資産の場合には、当初の減価償却を続けていって計算された簿価ということになると思いますし、土地の場合には取得原価まで戻すということで、その間、途中まで戻すということは、多分この考え方からすればないのかなというふうに思います。

これが戻し入れに関するまず入り口の議論になるわけですけれども、ただ、これまでの議論の整理としましては、結論的には戻し入れを行わないという主張が結構多かったというふうに理解しております。これの理由といいますか、主張の根拠としましては幾つか考えられますけれども、まずは収益性が回復したということで、過去の見込み違いを直すわけですが、いつが収益性が回復して戻し入れが行われるのかという、これはいわばオペレーショナルな問題かと思いますけれども、そこの部分について減損の認識と同じような規定をまたつくらなければいけない。これは一義的になかなか決められるかどうかという点がまずあろうかと思います。

それから、以下の根拠としましては、その回収可能性が回復したということは、経営者の期待の変化になるわけですけれども、そのような期待の変化をもって、戻し入れ自体も収益になりますので、それを戻し入れるという必要があるのかどうか。収益性が回復したとすれば、その後の年度で実現利益を通じてその収益性の回復があらわれてきますので、そのようなことをする必要があるかという点が言われたかと思います。それで一番大きな理由としましては、戻し入れを行うことは、ないしは認めることは事務的負担を増大させるという点がありますので、この観点からの反対意見が多かったというふうに理解しております。

これに対して、全面的に反対というわけではなくて、審議会の議論の中でも、土地に限っては戻し入れを認めてもいいのではないかという意見もあったように理解しております。それが最後の3番目でございまして、特に土地の場合には以下のような特徴が考えられます。1つは長期的な保有が見込まれるということと、減価償却されないということ。したがって、その戻し入れの対象にしても事務的負担が余りふえないということがありますので、土地に限っては戻し入れを考えてもいいのではないかという意見があったように思われます。ただ、このような場合でも、上の2で述べたような、どのような場合に戻し入れが認められるかという点については議論をしなきゃいけませんし、どのような形になるのかという問題はあろうかと思います。

私の方からは、以上ご報告させていただきました。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ただいまの秋葉委員のご報告は、前回のこれまでの審議会の議論のまとめに引き続きまして、少し方向性も含めて、もう一度議論のたたき台としてまとめていただくという趣旨でお願いしたものでございます。ご自由に意見をお出しいただきまして、今後の全体の集約に向けていきたいと思いますので、ご意見、ご質問のある方はご自由にお願いいたします。

○伊藤委員

ちょっと確認させていただきたいんですが、今回の意義のところの文章に「減損の存在が相当程度確実な場合」という文章が出まして、私もぜひこういうのを入れていただきたいと思うんですが、これの解釈において、兆候が著しい、2枚目にありますような著しい下落、そういうのを恐らくイメージされているんだと思うんですが、兆候自体は著しくないけれども、金額が結果的に大きな場合、金融商品の有価証券の減損のときにも問題になっていると思うんですが、そういうのをお考えになる余地があるのかどうかということと、それから、著しい下落であっても、金額的に小さい場合は特に減損する必要はないよという、そういうふうな配慮というのが設ける余地があるのかどうかについてお伺いしたいんですが。

○辻山部会長

その点はどなたに……。秋葉委員、よろしいですか。どうぞお願いします。

○秋葉委員

私が答えるべきなのかどうかわかりませんけれども、私の理解としては、そこはまさにそもそもの考え方からすると、必然的に出てくるわけではなくて、実務上の面を考慮して代替的に行うということとして認識されるものだと思いますので、そこはある程度決めの問題といいますか、合意の問題ではないのかなというふうには思います。ただ、これまでの意見で、私が多かっただろうということの印象で思いますと、できるだけ実務的な方向からは、減損の兆候という定性的なテストでもって絞った方がいいんではないかという意見があったように思われます。

それから、もう一つの方は、重要性の問題というのは、まさにどのような場合をもって当然重要性になるかということになりますので、今後の議論に従うということになるのではないかと思います。

○辻山部会長

伊藤委員、よろしゅうございますか。

そのほか、どうぞ。ご意見をお出しいただきたいと思います。

○逆瀬委員

減損の意義のところで、これはもう概括的に書いてあるんですけれども、例えば一般の製造業のような場合でも、土地を自己保有して、そこに上物を建てて機械装置を入れて物をつくるというのが典型的なパターンですけれども、土地が入っている場合とそうでない場合というのもおかしいですけれども、自己保有の土地を持って事業をやっている場合と、例えば賃借でやっていますよという場合では、いささか違うんじゃないかという気もする。それは、土地は例えば今、目的ですね、何かをつくる、生産計画はこうなっている、マーケットからいって、もう3年ぐらいしか寿命がないんだというようなところで減損の手続をするときに、土地については、建物もそういう嫌いがあるんですけれども、転用が可能というか、ほかの目的に幾らでも使えるよというのがあるんですね。その辺のところについては、特に不動産のうち土地については、ほかの固定資産と違う配慮が当然現場では起きるんだろうなとは思うんですけれども、その辺は、この意義のところで配慮する必要はないのかというようなところがちょっと疑問だったんですけれどもね。機械装置は3年でだめになる。しかし土地とか建物はまだ大丈夫ですと、こういうことは必ず起きるわけですね。そのときの話なんですけれども。

○辻山部会長

その辺はもう少し細かい話になりますけれども、秋葉委員、何かご意見がもしありましたら、お出しいただきたいと思います。

○秋葉委員

多分実際上は大きな問題かとは思うんですが、それを具体的な話に落とそうとすとると、多分意義ということはここに書いてあるぐらい、もうちょっと深められるかもしれませんけれども、まさにコンセプトの問題になってきますので、その具体的な話の中に、今のようなケースであれば、後で多分ご報告があるかと思いますけれども、キャッシュ・フローの見積もりの中に、機械がだめになっても、土地をその後どう使うかによるキャッシュ・フローをどう折り込むのか、折り込まないのかということにもなろうかと思いますし、それから、最後に申し上げたような戻し入れのところで、土地については別な考え方をするのか、しないのかというところにもつながるのかなと思いますので、考え方としては、多分このようなぐらいの話ではないかなというふうに思います。

○辻山部会長

逆瀬委員、よろしいでしょうか。今の秋葉委員のお答えですけれども、土地について、特にコンセプト上分ける必要はないのではないか、後ほどキャッシュ・フローの見積もりのところで、例えば見積もり期間をどうするかとか、土地についてはターミナルバリューをどういうふうに評価するか、その辺のところの議論になるのではないかというお答えなんですけれども、よろしいでしょうか。またそこのところでも……

○逆瀬委員

コンセプトの議論だということで、概念としてはそうだということですが、それは結構です。わかりました。

○辻山部会長

ほかにどうぞ。お出しいただきたいと思いますが、特に産業界の岩田委員、何かございますでしょうか。

○岩田委員

いろいろ土地については、私も何回か述べさせていただいたんですが、やはり国際会計基準との関係もいろいろあるかとは思うんですが、やはり今まで日本のいろいろな文化的な問題とか、あと経済的な問題も含めまして、かなり重要な、もっと何か根源的な問題を含んでいるんではないかなというふうに考えます。ですから、考え方としては、土地とそれ以外の固定資産は分けて考えるべきではないかなと。そうしないと、土地と全部ほかのものと一緒にやってしまうと、なかなか整合性がとれないのではないかなというふうにちょっと考えますので、その辺は分けて考えるべきではないかなというふうに思うんですけれども。

○辻山部会長

ただいまの岩田委員のご発言の趣旨ですけれども、全体の減損会計の枠組みの中で、土地を他の資産と区別した減損会計のコンセプトを構成すべきだと、こういうご意見。さっきの逆瀬委員のご意見と共通することですか。それともそれは、そのコンセプトの中、同じ先ほどの秋葉委員のご報告のような、1つのフレームワークの中で、土地についてはそのキャッシュ・フローの見積もりであるとかのところで対応するというふうな扱いでよろしいのか。この意義のところから、フレームワーク自体を別枠でやるという、そういうご発言のご趣旨ですか。

○岩田委員

そうですね。フレームワーク、最初のところで分けた方がよろしいんではないかなという考え方です。

○辻山部会長

そうしますと、具体的にこれまでの議論とかなり大幅にずれるようなことになるわけですけれども、具体的なイメージとしてはどのようなことをお考えなんでしょうか。

○岩田委員

いろいろなキャッシュ・フローの見積もりとかいったときに、今、土地とかそういった問題が、いろいろな要件とかいろいろな場面が考えられるんではないかなということがありまして、日本の今の土地の価格とか、今は非常に下落しておりますけれども、非常に高かった時代もあったりして、そういった通常の経営とかも考えたときに、ぶれが出る可能性が非常に高いのではないかなと。ですから、やっぱり非常に土地自体が価格を持ってしまっている以上、なかなかそれをキャッシュ・フローという形での議論の中でさばいていくのは難しいのではないかなという考え方でございます。

○辻山部会長

1つだけ確認で、議論を先に進めさせていただきますけれども、今の場合ですと、土地の減損というのはどういうふうにお考えなんでしょうか。別のフレームワークといいますか……

○岩田委員

ですから、ある程度公正な時価を考えたときに、今の議論を聞いてきていて、土地がそれになかなかなじまないんではないかなという考え方を今ちょっと持ってそういう発言をしているわけで、具体的に減損について、今どうだということではないんですけれども。

○辻山部会長

わかりました。それではご意見ということで承っておきます。

ほかにご意見はございますでしょうか。どうぞご発言いただきたいと思いますが。

それでは、また後で戻ることもできますので、次に川村委員から、キャッシュ・フローの計算方法、割引率、資産のグルーピングについてご報告をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○川村委員

割り当てがございましたので、僣越ですが、私、川村から報告させていただきます。

まず1点目の将来キャッシュ・フロー、これを含めて、この1枚の紙に当たり前のことと、ちょっと多少議論のあるところと、両方ごちゃまぜになっていて、うまく整理し切れたかどうか不安な面もあるんですけれども、ご報告させていただきます。

まず、将来キャッシュ・フローにつきまして2カ所出てくる場面がございまして、減損損失の認識のときに割引前ではかるという点、あともう一点は、使用価値の計算に当たって将来キャッシュ・フローを用いて、それを割り引いて使用価値を求め、正味売却価格との比較において回収可能価額を求めるという測定の場面でまた出てくるという、2カ所ございます。その取り扱いについて次のような事を考えておりまして、これがどうかということでご意見をいただきたいと思います。

まず(1)、当該企業に固有の事情に照らして見積もるという点です。これはFASB流の公正価値を求めるということであれば、マーケットの平均ということになるわけですが、そうではなくて、固有の事情でよいと。

(2)合理的で説明可能な仮定及び予測に基づく。これは将来の見積もりでございますので、自由というわけにいきませんので、やはり合理的に説明できるような証拠というものが必要ですので、それを求める。

(3)が、将来の見積もりですので、やはり確率的に分布する。そうなりますと、原則として最も生起する可能性の高い単一の数値としますけれども、生起し得る金額をその確率で加重平均した期待値を用いることも妨げない。前者が現在国際会計基準やFASB基準で採用されている考え方ですが、後者の部分が現在FASBで提案している期待キャッシュ・フローという考え方であります。

(4)利息の支払い額並びに法人税等の支払い額及び還付額、これは含めない。

(5)資産または資産グループの現在の状況に基づいて行い、例えば、将来の資本的支出や将来のリストラ、事業再編等に伴うキャッシュ・フローは含めない。こうしてはどうかと思います。

この問題については議論がございますけれども、現在国際会計基準では、将来の資本的支出や将来のリストラに関するキャッシュ・フローの変動というものは見込まないということになっていますので、それに従っております。また、FASBの現在の提案においては、この点はやはり明確にされておりますので、この点を付言させていただいております。

2点目、割引率。割引率につきましては使用価値の算定で用いるわけですが、次のような取り扱いにしてはどうか。

まず(1)は当たり前なんですが、貨幣の時間価値を反映した税引き前の利率とする。

(2)将来キャッシュ・フローのリスクについては、本来将来キャッシュ・フローの金額に反映させるという話になるんだと思いますが、その場合には、当然割引率は無リスクの利子率。逆にキャッシュ・フローに反映させないという場合であれば、リスクを割引率に反映させる。両方を認めてはどうかという趣旨であります。

3点目、資産のグルーピングです。グルーピングは認識のときも必要となりますし、測定のときにも関係してくるわけですが、次のような取り扱いにしてはどうかということでございます。

(1)まずグルーピングは認める。

(2)グルーピングの単位は、最小のキャッシュ・フロー生成単位とする。減損の問題の出発点はここの資産だと思われますけれども、グルーピングを認めるとはいっても、どんどんどんどん広がっていったのでは実質的な意味がなくなってしまいますので、あくまで最小のレベルにとどめていただくというのではどうか。

(3)減損損失が認識される場合には、帳簿価格に基づいた比例配分等の合理的な方法により、各構成資産に配分する。グルーピングしたときに減損損失を把握しますと、全体で幾らという損は出てきますけれども、これも配分する必要が出てきます。将来個別の資産を売却したときの簿価を計算するなど、必要がございますので配分するというのはどうか。

4点目ですが、全社資産などを含めた共用資産については、より上位なキャッシュ・フロー生成単位を考え、これに共用資産を含めるというのではどうか。国際会計基準で言っているところのボトムアップになります。それと同時に、共用資産の帳簿価額を合理的に配分できるという場合には、当該共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分するということで、今度はいわゆるトップダウンを認めるということになります。ですので、両方を認めることにはなると思うんですけれども、どちらを原則に考え、あるいは、ある特定の条件が満たされた場合にはどちらか一方を必ず選ぶとか、そういうバリエーションは出てくるかとは思いますけれども、これについてはちょっとそこまで詰め切れてはございません。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまのこの項目につきまして、川村委員のご報告に基づきまして意見交換を行いたいと思います。どうぞご意見、ご質問。

○品川委員

将来のキャッシュ・フローの測定に関して、ちょっと確認というか、お伺いしたいんですが、(5)のところで、現在の状況に基づいて行うという問題に関して、要するに当該資産の将来の処分価格をどう測定するかということについて前にも議論したことがあったかと思います。前に議論したときには、たしか将来の処分価格というのはわからないから、現在の処分価格でいいんだということになると、将来のキャッシュ・フローで現在価値を測定すること自体について非常に正確性に問題があるということと、また、この(5)で、例として、将来の資本的支出や将来の事業再編に伴いキャッシュ・フローは含めない。この中には、例えば地価の下落がどうなるかという将来の問題についてはコメントがないわけですが、それについてどう考えるのか。あるいは、たしか前回、あるいは前々回に、減損会計を導入したら、土地の価格はさらにデフレスパイラルを起こすではないか。そういう場合の減損を果たして将来の処分価格の中で見込むのか、見込まないのかというような問題も絡んでくるかと思うんですが、そういう問題も含めて、この当該資産の将来の処分価格自体に関するキャッシュ・フローをどう測定するかということについて議論する必要があるのか、ないのか。あるいは当然この文章の中でよいのかどうか、その辺を確認したいと思いますが。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

川村委員、よろしくお願いいたします。

○川村委員

個人的な意見でございますけれども、この処分価格、先ほど土地の問題も出てきたわけですけれども、プロジェクトが終了した段階で残っている資産については、いわゆるターミナルバリューの計算になってきますが、現在の時価をもって、そのターミナルバリューとするというのが一応の理屈ではあると思います。それは当然理論的には現在の価格と、その将来との価格との間に一定のリンケージをたどるということが通常難しいという前提に立って、そういう話になっているんだと思います。ただ、そうは言っても、一定のトレンドがある程度予想されるような条件、一般に言われているのは、例えばインフレがもうトレンドとして確認できているというような状態であれば、インフレ率などを加味した価格を現在の価格からはじき出してターミナルバリューにするというようなことは当然考えられるわけですけれども、もちろん現行の日本の経済状況を考えたときには、現在の時価をもって将来のプロジェクト終了時の処分価格とするというのが一応の理屈かなと思います。

あと、それに関連して、将来の事象であります将来の資本的支出とかリストラについて、とりあえず見ないというような立場と、将来の時価の下落との切り分けという問題だと思うんですけれども、マクロ的な要因と、その企業固有の要因というのはやっぱり分けていく必要があるんだろうなと思います。ですから、マクロ的に将来のキャッシュ・フローをはじき出すときの要因というのは、当然将来のキャッシュ・フローの見積もりに対して影響を及ぼすと思うんですけれども、その企業が独自に持っている要因、ここで言う将来の資本的支出などの問題については考慮に入れないという形で、切り分けは可能かなというふうに個人的には思っております。

○品川委員

もう一点そこを確認したいんですが、例えば対象が土地だけの場合、土地の現在の処分価格は仮に1億円、将来の賃料等によるキャッシュ・フローで現在価格に割り引いた場合、そこに地価の下落を含めるかどうかという議論があるんですが、そのキャッシュ・フローで現在価値に置きかえた場合に、仮に 8,000万円だとしますと、それはもう将来のキャッシュ・フローで割り引く必要なく、現在の処分価格1億円なら1億円で評価すれば事が足りるということですか。それともいずれか低い方をさらに測定するということを考えておられるんですか。

○川村委員

回収可能価額を計算するという観点からすれば、現在の正味売却可能価額の方が高いというのであれば、今の例ですと1億円ということになると思います。そういう質問でしょうか。違いますか。

○辻山部会長

ちょっと今の確認ですけれども、その土地のキャッシュ・フローというのは、どういうふうに生み出されるキャッシュ・フローでしょう。

○品川委員

一般的には、賃貸されているものであれば、毎年の賃料とn年後の処分価格でもって、それを現在価値に置きかえることが1つ考えられますね。それと、現在の市場価額で、今処分すれば幾らになるかという問題がありますが、当然2つの評価をやると異なってくる場合がありますので、それについてどういうふうに価値評価をするのかということがちょっと疑念がありましたので。

○辻山部会長

その土地ですけれども、更地の状態で賃貸している、そういう状況のご質問でしょうか。

○品川委員

ええ。一応単純に考えて。

○川村委員

マーケットの平均で考えたときには、理屈から言えば将来のキャッシュ・フローの現在価値と現在の時価というのはイコールだという、一応理屈は理屈だと思うんですけれども、ただ、企業に固有の使用価値ということを計算したときに、独自のノウハウなどがあって、ただそのマーケットよりもちょっと下手だという形になれば、今先生がご指摘のような状況になるんだと思います。

そのような状況のときには、じゃ、企業はどういう判断をするのかといえば、やはり売るという方が合理的なので、先ほどの議論だったと思うんですが、測定のときに回収可能価額を見積もる。それは現在の正味の売却価額と将来のキャッシュ・フローを割り引いた使用価値との比較において、どちらか高い方ということになってくるという理解なんですが。

○品川委員

これは今後議論していけばよろしいんですけれどもね。土地に関しては、前にも鑑定士の方からご説明がありましたけれども、取引価格と収益還元価格というのは、我が国の土地についてはかなり格差があるわけですよね。収益還元価格というのは、いわゆる将来のキャッシュ・フローを測定しての割引現在価値ということが大体パターンですけれども、その格差があるということが1つあることと、もう一つは、企業の経済行動として、仮に収益還元価格の方が低くても即処分するとは限らないですね。いろいろな思惑があって、あるいは将来減価し続けるかもしれない土地もいろいろな経営判断で持ち続けるということもあるわけですから、その場合に、減損会計を導入する場合にどういう角度で評価をしていくかということは非常に重要な問題になってくると思うんですね。それだけちょっとコメントさせていただいて……

○辻山部会長

ただいまの件、念のためご専門の奥田委員、今のやりとりの中で、更地で賃貸している土地の使用価値についてどのような……。企業固有の価値について、ご専門のお立場からご発言いただけますでしょうか。

○奥田委員

土地が更地の場合の収益価格という考え方なんですが、普通、不動産の鑑定評価において、更地の収益価格というふうに言った場合には、それは更地に建物を想定して、建物と土地一体で上がる収益から建物に帰属する収益を控除して、残りの収益を土地に帰属するという考え方をとって、土地の還元利回りで永久還元して土地の収益価格を出すという考え方が普通なんです。

今、品川先生がおっしゃった、例えば土地として賃貸するということであれば、それは借地ということなのか、あるいは例えば駐車場なり、あるいは資材置き場とか、そういうことを想定しておっしゃっているのか、ちょっとその辺がよくわからなかったんですけれども。

○品川委員

駐車場等の後者の問題ですね。一番単純に考えた場合。

○奥田委員

もし駐車場として賃貸しているということであれば、先ほどもお話がありましたように、例えば10年という期間を想定して、10年間の駐車場から上がる収入から固定資産税等の費用を引いて、10年後の土地の価格を見積もって、それぞれ現在価値に直して収益価格を出すと、そういうようなやり方は可能かとは思います。建物がある場合になってくると借地ということになってきますので、それはまたちょっと違った評価方法になってくるのかなと思いますけれども。

○品川委員

そうすると、10年後の土地の価格を見込むんですか。さっきの話でしたら現在の処分価格だという、そこがちょっといろいろと今までの議論の中で混乱してきているものですから、その辺を整理しないと、本来の正確な将来キャッシュ・フローというのは測定できないと思うんですけれどもね。

○奥田委員

例えば駐車場として賃貸している場合の土地の収益価格の出し方というのは、10年後の価格を見積もって一つ一つ直す、いわゆるDCF法というやり方もありますし、その将来の予測が困難であるために、将来の駐車場から上がる収益を将来一定の推移という前提を置いて永久還元して、一発で価格を出す方法もございます。いずれにしても収益価格を出すという点では同じですけれども、やり方についてはいろいろあるかとは思いますけれども。

○辻山部会長

品川委員、よろしゅうございますか。

今のコンセプトの問題としては、賃貸用の駐車場のようなケースを今想定されているということですから、例えば10年なら10年の駐車場から上がってくるキャッシュ・フローの最終処分価格のところを見積もればいいんですけれども、その見積もりが困難であるということで、その処分価格を現在の価格で代替することが可能なのではないかという議論は出ておりましたけれども、それ全部をひっくるめて、収益還元価値等を現在の売却価格で代替させるという議論は出ていなかったと思うんですけれども。

○品川委員

今のお2人の議論の中で、川村委員の方は現在の処分価格でいいのではないかというご発言でしたし、今のご発言は、n年後の、10年後の処分価格でいいではないかという議論が、これはお2人の議論はよく別な文献や何かでも見受けられるんですけれども、何かその辺を吟味されていないと、特に現在のように地価がずっと下落しているときにn年後というのは、そう軽々に、じゃ幾らになるということが言えないし、じゃ、こういう減損会計のところに、そういう地価動向とか物価動向とか、そういうのをどういうふうに入れるのかどうかということについて疑念があって、川村委員がまとめられたように、もうそういうものは一切捨象して、現在の状況だけで物価は一応不変だという前提でやるということになると、そもそも減損会計を導入することに対してクエスチョンがつきかねない問題もあります。そこは堂々めぐりの問題があるんですけれども、その辺の議論をどうされるのかなということですから、特にこだわっているわけではありません。

○辻山部会長

わかりました。ちょっと確認で、川村委員は先ほどそういう発言ではなかったように私は承ったんですけれども、今のことでよろしいんでしょうか。現在の処分価格が使用価値であるというご発言ではないですね。

○川村委員

理屈から言えば、当然n年後の処分価格を見積もるわけですが、ただ現実的に、見積もりに際して今の時価を代替させるという……

○辻山部会長

それはn年後の処分価格の見積もり値としての、ですから、それを全部割り引いた使用価値が、現在の処分価格というご発言ではないですね。

○川村委員

その結果計算される割引価値というのは、当然割り引いた後の金額ですから、現在の時価とは違ってくるわけです。だから、求めるべき使用価値には、年々のキャッシュ・フロー部分とターミナルの部分と両方入ってくるという理屈になると思います。

○辻山部会長

よろしいでしょうか。

○品川委員

いずれまたそういう基準ができるときに、また問題があれば意見を申し上げたいと思います。

○辻山部会長

そのほか、どうぞ。

○髙野委員

ちょっとこの問題に戻ってしまうかもしれませんけれども、例えば賃貸ビルを想定した場合で、でき上がった直後で、まだオキュパンシーが例えば50%、それで10年後で、例えば90%ぐらいスタビライズして入っていたと想定した場合に、今のお話でいきますと、処分価格というのは今の価値でいくと、オキュパンシーが低いと大分低目に出てくるかと思うんですが、その辺は、将来のそういうオキュパンシーの違いみたいなものは反映されるんでしょうか。

○川村委員

これは賃貸ビルに限らず、すべての資産について言えることだと思うんですけれども、将来の、いわば需要予測の問題だと思うんですが、本当に出だしのところで、建ててまだ1カ月もたたないというような状況だとまた別なのかもしれませんが、そうでもなければ、例えば国際会計基準にはその辺、ある程度のガイドラインがあるんですが、余り楽観的なガイドラインに従って、年率例えば10%でどんどんどんどん伸びていくなんていうのはやはりできませんので、やはり現状をベースに、やはりせいぜい過去のトレンドを引きずって伸びるという程度しか見積もれない。これはもちろん、どの程度合理的に説明可能な仮定及び予測に基づくのかという、その1点にかかってくる問題かなという気はします。具体的なところまでちょっと詰め切れていない面もございますが。

○逆瀬委員

今のお話で、将来のキャッシュ・フローを出すときには過去のトレンドも大事かもしれませんけれども、将来予測なんですから、過去の実績を覆すようなことがあったって、それは当然いいんだと。問題は説得性のある客観性だけなので、そこは見積もりだというふうに整理していただければと思うんですけれども。

もう一つよろしいですか。実務の問題で何回も言って恐縮ですけれども、不動産ですね、通常の一般メーカーが不動産を利用して、そこに動産の装置を入れて生産すると。今は、例えば当社の場合だったら半導体をつくっているけれどもというようなことですね。半導体のキャッシュ・フローを出す。ひとしきりが終わって、ここは撤退だと。別の製品をつくると。寿命が違うわけですね。耐用年数が違うといいますか、使用の同じグルーピングされたものでも、土地はもう未来永劫だ。機械装置は短いです。建物は30年ある。こういうふうなものを実際に実務では処理していくわけですけれども、そのときに、機械装置なんていうのは陳腐化が著しくなるのは、これはもういいんですが、土地とか建物というのはそうじゃないというケースがあって、そういうものは見積もりの中で実践のルールで対処していくというような理解でよろしいんですか。見積もりのときですね。

○辻山部会長

特に川村委員、ご発言はございますか。

○川村委員

1つ参考にできると思うんですが、FASBの現在の公開草案では、このグループを構成する主要な有形の資産の耐用年数ということに今一応なっていますので、それをベースにちょっと考えてはいきたいなと思っております。私の希望ですけれども、そうは思っています。それ以上のことはちょっとまだわかりません。

○辻山部会長

逆瀬委員、よろしいでしょうか。

また今後、具体的な実務的なことへの細かいことにつきましては議論をする機会もあると思いますけれども、本日は特に基本的なコンセプトの問題としての整理でございますが。

そのほかございませんでしょうか。

○斎藤委員

これは私が申し上げる立場にないと思うんですけれども、先ほど来の逆瀬委員のご議論とか岩田委員のご発言というのは、今の1の(5)にかなり密接に関係している可能性が強いと思うんですね。この5を読みますと、資産または資産グループの現在の状況に基づいてキャッシュ・フローの見積もりを行う。事業再編等に伴うキャッシュ・フローは含めないと、そういう文章になっていますので、先ほどの逆瀬委員のご発言の趣旨は、例えば土地なんか典型的なんですけれども、リアルオプションがある。つまり、現在やっている事業はもう成り立たないけれども、用途を変えれば幾らでももうかるという見込みを持っている。そういうときに、その問題はどう考えるのかというご発言なんですね。ですから、この現在の1の(5)の文章そのままですと、多分逆瀬委員も岩田委員もご不満かもしれないという感じはするんです。つまり、用途を変えたときにそのキャッシュ・フローがどうなるかという観点で、現在の簿価なり過去の投資額なりを評価するか、そうでなければ、このような格好で現在の用途を変えずにキャッシュ・フローを見積もった場合は、そのキャッシュ・フローを単純に現在の簿価と比較していいのかという、そういうご議論だと思うんですね。ですから、そこを整理しないと、多分2人の委員の方は納得されないんじゃないかという危惧をしております。

○辻山部会長

その点は先ほど、これも私が申し上げることかどうかわからないんですけれども、一応川村委員のご発言の趣旨としては、現在の用途を変えないという前提で整理してはどうかという、そういう用途を変えるのであれば速やかに変えるという、変えたらどうかという仮定を設けないというのが、ここの(5)の文章の趣旨だったと思います。

○斎藤委員

それは、この文章を読めばそう書いてあるからわかりますけれども、多分逆瀬委員のご発言は、もしそういうふうに整理するのであれば、恐らくそうやって計算したキャッシュ・フローと、単に現在の簿価とを比べて、簿価が過大であるかどうかという、そういう判断では困るんじゃないかということをおっしゃっている感じがするんですね。

○川村委員

その問題、当然ある話でございまして、2段階投資といいますか、途中で、今現在のプロジェクトが終了したときに、また新規のプロジェクトをそこで始めたときに、また新しくキャッシュ・フローが出てくるわけですが、そこまで見えている段階で減損を把握しようとするならば、ターミナルバリューのところで2段階目の投資の使用価値をn年後の価値としてはじき出して、これは先ほどの品川先生の質問とも絡んでくると思うんですけれども、それで現在の使用価値を求めるということになってくるんだと思うんです。ただ、やはりどこかでここの線引きをしませんと、いつまでたっても、どこまでもどこまでもこう考えているからそのキャッシュ・フローを折り込んでいいというのはやはりちょっと困りますので、1つの切り方は、単純に将来の事象に起因するキャッシュ・フローの部分については、現在の価値の測定に当たっては折り込まないというのが1つの考え方ではあると思うんです。

○辻山部会長

この点については、川村委員、あるいはこれまでの議論で出ていたかどうかわかりませんけれども、1つ線引きが必要であって、それがこの(5)に書かれているような文章の趣旨という考え方と、それに対して、それではいけないという、そういうご発言の趣旨がございますが、この点について都委員、何かお立場上ございますでしょうか。

○都委員

今議論になっている1の(5)のところなんですが、先ほど用途を変えてという話がございましたが、例えば生産設備であれば、用途を同じくしておって、たまたま回収が不能であるようであるけれども、それは例えば現状の低生産によるものである。ところが、これが別な生産設備、あるいは場合によってはグループの別な会社で生産しているものを例えば傾斜生産すれば、これが十分収益が回復するというケースも十分考えられると思います。

ただ、そういった例えば低稼働率のような状況にあるときに、経営者はある程度期間を置きながら考えていきます。そのときに、将来の事業再編に伴う、全く決まっていないものを確かに折り込んで、幾らの回収可能額と見るというのはいかがかと思いますが、一方で、例えば期末で固定資産の評価をしなくてはいけないときに、そういったことが可能性としてあるという検討が進んでいるときに、そのまま評価の判断を留保する、あるいは考慮する一要素としては、こういったものを入れてもいいんではないかなという気が一つはしております。だから、そういう意味で、全く将来の事業再編に伴うものを折り込まないというのはいかがかなという気が今のような理由でしております。

とりあえず今の点はそういうことで、以上です。

○辻山部会長

その点は、きょうはフリーディスカッションですので、そういうご意見があったということで、ただ、今の都委員のご発言については、(2)で合理的な説明可能な将来の予定がある場合、これは(5)であっても必ずしも妨げないということになると思うんですけれども。

○都委員

そういう理解であれば結構です。つまり、将来の事業再編に伴う話がある程度合理的で説明可能な理由になるということで、(5)番もある程度カバーされるという理解でよろしゅうございますか。

○辻山部会長

そういうことであれば、場合によっては必ずしも反対するものではないというご発言なのかどうかということですか。ちょっと確認なんですけれども。

○都委員

そうですね。だから、すべて(5)で将来のことが否定されるんではなくて、(2)である程度合理的に説明可能ということでカバーできるということであれば結構です。

あと1点、よろしゅうございますか。資産のグルーピングのところで、共用資産について大きなグループ単位に配分するということなんですが、1つは、この共用資産というのは、例えば本社ビルとか研究所というようなものがあると思うんですが、例えば福利厚生とか、場合によっては社会貢献のための施設ですね、いろいろな野球場だとかホールとか、そういったものもすべてこの中に入っているかどうかということの共用資産の定義の確認と、それから、もう一つは、仮にそういうものが入っているとして、ここでこういうふうに配分するというようなルールが決まっておりますが、そうすると、そういったものも含めた共用資産も含めて、この減損の対象にするということがもう既に決まっているというふうにとれなくもないんですが、確認の意味でちょっとお伺いをしたいんですが。

○辻山部会長

この点はいかがでしょうか。

○川村委員

まず、ちょっと先ほどの将来事象の問題なんですけれども、私、やっぱり単純に将来の事象だから全部だめというばかりではなくて、将来起きる資本的支出、事業再編などについても、やはり現在の時点において起きることが免れないといいますか、コミットメントがあるといいますか、そういう状態であれば認めるといいますか、将来のキャッシュ・フローも折り込んで現在の価値を出すということも考え方としてはあるのではないかと、私個人的な意見ですが思っています。この点だけちょっとつけ加えさせていただきます。

3点目のグルーピングの問題ですが、共用資産につきましては、今おっしゃられたような資産について、それをイメージしてここの文書は書いてございます。ただ、それを配分するのか、上位の単位でグルーピングするのかという切り分け方については、まだオープンなんですが、国際会計基準では、例えば本社の建物などについては現在の簿価をベースに、単純に簿価をベースに配分するというような設例になっていまして、ただ、研究施設なんかについては特定の資産グルーピングとのキャッシュ・フローの関係がよくわからないので、それについてはより上位のグループで検討するというような分け方を国際会計基準で書いてあります。

○辻山部会長

ただいまの都委員のご質問ですけれども、配分の方法と、もう一つ、そもそもそういった厚生施設等については減損の対象から完全に除外してしまうという考えがありや、なしやと、そういうご質問ですね。それついては、ここではそういうものも一応減損のテストはする、より上位のグルーピングによってテストをするというのが川村委員のまとめていただいている、この文章の趣旨だと思います。

○都委員

ということは、すべてそういったものも一たんは減損の対象として考えるということというふうなことで考えてよろしいですか。そもそもそういったものを減損の対象とするかどうかも考える、ちょっと私の記憶違いかもしれませんけれども、対象にするかどうかも考えるというようなことで当初あったような気がするんですが。

○辻山部会長

この段階で都委員のご意見といいますか、減損の対象としては考えない方がいいんじゃないかと、そういうご意見と承ってよろしいですか。

○都委員

そういうことではないんですが、そこの議論はもう整理がついたのかどうかの確認ですね。

○川村委員

個人的な意見になるんですけれども、福利厚生施設などについては共用資産と考えまして、典型的には全社レベルでのキャッシュ・フローで見る。ですので、もうずっと赤字だという会社でなければ将来のキャッシュ・フローで回収できるから減損は出てこないという結論になると思います。つまりグルーピングの枠を広げるという考え方からすれば、減損の対象として考えるけれども、結果として減損しないという結論はあり得るかなと思っております。

○小宮山委員

先ほど来出ている工場の土地とか建物の話なんですけれども、これは、川村委員のペーパーですと、1の(5)の話と、それから3の(4)の共有資産の扱いとダブった分野なんだと思うんですね。現実に私は監査をやっていますけれども、最近監査もローテーションをやらなきゃいけないわけで、10年ぶりで担当替えになって、昔やっていた会社へ行きましたら、同じ工場のところに全く違う機械が入って、全く違うものをつくって、それなりに利益を出しているという現実はあるわけなので、この1の(5)で議論するのか、もっと共有資産を広くとらえて、もちろん専用の建物でほかに転用がきかないというものは固有にとらえざるを得ないんですけれども、ちょっとこの辺は、どっちって決めずに、両方から少し詰めたような整理の仕方もあるんじゃないかなというふうに思いますけれども。

○清水委員

小売業の立場から言いますと、ちょっと資本的支出のことなんですけれども、例えばお店で、今余り成績がよくないとしても、将来この状態がもうどうしようもなく逃れられない、どういう手を打ってもだめだともし経営者が判断したら、その店は多分閉店して売却するなりすると思うんですが、そこでまだ現に営業しているということは、やはり将来、小売業で言えば改築、増築、あるいは駐車場を広げるとか、いろいろな手がまだ幾つか打てるわけです。そういうことをやって、それでもどうしようもないときに、やはりそういう閉店とかということに至ると思うんですが、ですから、資本的支出をなしにするというのはやはり難しいんではないのかなというように思います。

それからあと、ちょっと最初の方の議論に戻ってしまって土地のことなんですが、米国基準では、やはり土地ということがほとんど意識されていないんではないかと思うような、土地という言葉がまずほとんど出てきていないような状況で、その米国基準の兆候、認識、測定という、そういう流れで、それと同じような考え方を踏襲するだけですと、やはり土地という概念が抜けてしまうような可能性があるので、やはり日本の場合には特殊性がありますので、土地ということを意識した評価にしても、キャッシュ・フローにしても、その他のことについても、土地を意識した形でつくり上げていかないと、やはり実務界、あるいは実業界から見ると、土地の評価がどうなるんだろうかということがいわば非常に心配していることではないかと思うので、その辺の取り扱いをやはり慎重にといいますか、意識した形で、先ほどから議論されているようにやっていかなければいけないのではないかなという感想を持っておりますけれども。

○辻山部会長

ご意見として承りましたけれども、今回の秋葉委員、川村委員にまとめていただいたこと、論点整理のところからもそうですけれども、特にアメリカ基準に基づいて基準をつくってきつつあるということではございません。それから、アメリカ基準でも、当然土地というものは固定資産に含まれているわけですから、土地も含めた回収可能性の問題というのが別途の枠組みで議論されているわけではございませんので、その点、一応ご意見として承るということでよろしいでしょうか。

ほかに。

○川村委員

すみません。今の点につきましては、恐らくその2つの問題とも、資本的支出と土地の問題ですが、戻し入れの問題とかなり密接に結びついてるんだろうなと思います。1つの考え方として、資本的支出をしていない状態では、確かに現在の古い店舗の状態でキャッシュ・フローを見て、減損を出してもらう。ただ、実際にその資本的支出をして、将来のキャッシュ・フローを改善したという事態が確認されれば、その段階で戻し入れを認めるというやり方もあるのかなと思っております。ですので、戻し入れの問題、実務的に面倒だから、もう最初からだめというのではなくて、ぜひその点、検討の俎上に乗せる価値はあるのではないかなとは思っております。

○辻山部会長

この点は、逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

せっかくですので、今の川村先生のところの一番下でグルーピングの話があります。前も本席で申し上げたことがあるんですけれども、要するに個別と連結の関係なんです。それで、商法もいよいよ連結計算書類という時代に入らんとしているわけでありまして、例えば連結子会社と、その親会社ないし共通の子会社が1つの事業を共通で行うというのはよくあることなんですけれども、それで、その子会社の個別の決算では、この減損会計のルールはやがて適用されて、事業をブレークして、資産もブレークして減損会計を適用する。個別で減損してしまう。実際には親会社ないし兄弟会社と事業を展開しているから、連結の次元ではもう少し話が大きくなるというようなことがあって、連結では完全に回収しているじゃないかと、こういう事態はもう当然予測されるんですけれども、その場合において、なお、個別での減損は行って、連結でそれを戻入するとか、そういうことになるのかどうかなんですけれども。私どもは連結全体で見て、ある特定の事業について親会社ないし兄弟会社、子会社、これで事業としてキャッシュ・フローが回っていれば、連結ベースでよろしいとなれば、個別で減損を計上することも連結でそれをあえて戻り入れるようなことも必要はないと、こういうふうにしないと、減損の事務処理だけでも大変なことになっちゃうんですね。それは共通でもいいんじゃないかというような観点は、川村先生の場合はお持ちにならないんでしょうか。

○川村委員

重々連結で考えたときと、その子会社、親会社、個別で考えたときのキャッシュ・フローの分け方というのは非常に難しい問題があるなと思っておりますが、まだこの席でお話しするようなことはちょっと考えておりません。いずれこの問題は取り上げることになるかと私の方は理解しておりますが、申しわけございません。

○逆瀬委員

ぜひ論点に挙げておいていただきたいということなんですが。

○辻山部会長

そのほかも、非常に重要なところですので、ご意見があれば。

ただいまの件ですけれども、逆瀬委員に参考までにお伺いします。そのときに、例えば連結グループ内の振り替え価格のようなものは、明らかにある会社に減損が生じるような、そういう振り替え価格の設定というのは通常行われているんでしょうか。その辺はどうなんでしょうか。グループ内で全体ではキャッシュ・フローが回収できている、しかし単独でやると減損というふうに判定されるような振り替え価格の設定といいますか、そういうことは実務ではどうなんですか。

○逆瀬委員

そういう細かな議論を私は今しているわけじゃないんですけれども、基本的には、子会社との取引価格というのは、一応合理的な値段というふうになっているわけですね。そうでないと困る場面が出てまいりますので、それは大眼目です。しかし、この一定の事業を見た場合に、設備投資の順序が違うとか、工程が違うとかによって、たまたま子会社の方の回収価値を見たときに、簿価を下回っているとかということが起きるわけですよ。だけれども事業全体としてはそうではない。投資判断、子会社の資本政策等も親会社が決めていると、こうなったときにどうするかという議論なんですね。それはままあることなんです。

あともう一つ、同じことですね。例えば今、連結の次元で見てはどうかというお願いですけれども、もう一つ、土地とか不動産の投資判断と、その上に乗せて使う機械装置の投資判断というのは、日本の場合はちょっと違うと。土地は早目に手当てしたいとか、先行手当てしたいということがある。建物も早く建てておきたいと。だけれども、そこで行う事業はいろいろフレキシブルにやっていくんだと、こういう判断になっていて、土地、建物と機械装置というのがずれる場合があるんですね。その辺なんかは日本独特じゃないかと思うんです。その辺の配慮もひとつお願いしたいと思います。

○辻山部会長

もう一つ、土地の戻し入れの問題について川村委員からご発言が先ほどございましたけれども、この点について逆瀬委員、特にご意見はございますでしょうか。

○逆瀬委員

戻し入れについてはしなくてもいいと考えていますけれども、当初は。

○辻山部会長

都委員、何かありますでしょうか。

○都委員

戻し入れについては私も必要ないと思っているんですが、1つだけここで理由が書かれてあるように、2番目の事務的負担を増大、これはもちろん事務の問題もありますけれども――これは意見だけですが、経営のレベルでもやはり大きな差が出てくると思うんです。つまり減損したところから、経営者はそこでまたいろいろな経営努力をして、それでさらに利益をふやしていこうと、当然次の経営者は考える。そうすると、それが利益が出るようになったので、その事業価値がふえた。ふえたところで戻し入れをするので、将来収益を一時認識して、減損する前のレベルのどこかまでは戻してしまう。そうすると期間損益が変わってしまう局面が出てくるのではないかと思う。もちろんその部分は一時認識するか、毎年認識するかということであるんでしょうけれども、やはり期間損益というのは、その経営とか評価する上での大きな尺度となりますので、そういう経営レベルでも、やはり気になる点はあります。単なる事務だけではないというふうに一言つけ加えさせていただきたいと思います。

○辻山部会長

わかりました。

川村委員の資料の3のペーパーのグルーピングのところで、例えばグルーピングの単位は最小のキャッシュ・フロー生成単位とするということになっておりますけれども、この点について、特に産業界等から委員の中からご発言はございますでしょうか。この点についてはいかがでしょうか。

○太田委員

すみません。今の最小のキャッシュ・フロー生成単位をどうするかということに関連いたしまして、先ほど逆瀬委員の方からご提起がありました、子会社というのを別で運営されているということかと思いますが、それが最小のキャッシュ・フロー単位になるのかどうなのかといった点を考えていく必要があるのかなという気がしております。

○辻山部会長

この最小のキャッシュ・フロー生成単位について、何か特にこの段階でご発言ございますか。

○品川委員

グルーピングの問題で、先ほど連結をした場合にどうかという問題に若干関連するんですが、グルーピングの単位の中で、含み益と含み損をどういうふうに調整するかということについてどう議論するのか。あるいは先ほどの秋葉委員の減損会計の意義とか、あるいは測定とも関連するんですが、たまたまきょうの日本経済新聞に、減損会計とは直接関係ないんですけれども、土地の評価について含み益と含み損は全部透明化すべきだという大原議員の意見があって、そういうことが今後政治問題化してくると、ここの部会で議論することと、そういう政治問題化した場合の会計処理との結びつきはどういうふうにしていくのかという、そういうことも懸念されたんですけれども、それは今後どう議論していくかということでご検討いただければと思うんです。その辺はいかがですか。

○辻山部会長

土地の含み損、含み益は、とりあえず減損会計の対象とは外れますけれども。

○品川委員

だけれども、そういうふうに政治問題化した場合に、ただ、それはもう政治の問題だから知らないというふうに頬かむりするのかどうかですね。

○辻山部会長

この点はどうなんでしょうかね。参事官からご発言いただいた方がよろしいんでしょうか。

○大藤参事官

きょうの新聞に出ていた件がどの程度の事実というのは、まだ詳細には私ども、入手しておりませんし、それから、考え方自体は大原先生ご自身としてはかねてからのご持論でございますので、どうお考えなのか。ただ一方で、イギリスなどでは土地再評価をしながら減損もやっておるわけなので、基本的には土地再評価、会計の中でのいわゆる強制的、任意を問わず土地再評価と、それから減損をどう関係を考えていくかという問題とも関係しているんではないかと思いますけれども。政治の問題かどうかということではなくて、むしろ土地再評価と、例えば減損というのはどう考えていくのかという面からもとらえられるのではないかなと思いますけれども。

○辻山部会長

その問題につきましては、また土地の再評価につきまして、この固定資産部会でどこまで取り扱うのかということについては、本日は特に結論は出せませんし、与えられた課題から少しずれておりますので、とりあえずご意見を承ったということにさせていただきます。

そのほか、ございますでしょうか。

○奥田委員

すみません、ちょっと確認というか教えていただきたいんですが、川村先生がご用意されたペーパーの中で、1番、2番については、これは使用価値の計算の場合ということで書かれているかと思うんですが、3の資産のグルーピングのところで「減損損失の認識及び回収可能価額の算定に当たって」というふうに書かれていらっしゃるのは、これは使用価値の算定のみではなくて、正味売却価格の算定においても、このようなキャッシュ・フロー生成単位等という考え方を加味して正味売却可能価格を出すべきだというふうな趣旨でございましょうか。

○川村委員

どきりとしてしまったんですが、もともとの意識はキャッシュ・フローを予測するということで考えていましたので、割引前キャッシュ・フローの計算及びその使用価値の計算というのは念頭に置いております。それでグルーピングの仕方を決めるんですが、そちらでグルーピングを決める以上、正味売却可能価格の方もグループとして売却するということを想定できる場合も当然あると思いますし、また逆に、個々の資産の単純合計と、個々の資産の売却可能価格の単純合計という計算の仕方をしてもよろしいのではないかと、両方考えられると思います。

○辻山部会長

そのほかございますでしょうか。

本日予定させていただきました資料は、このほか、あと資料4、5、6とございます。ただ、いろいろご議論がございますので、本日の議論はすべてというわけでございません。最後に、あと数分ございますが、ご意見を承りまして、残りは、小宮山委員以下、恐縮ですが次回ということになります。まだ一、二分ございますので、この機会に、特に秋葉委員、川村委員にご担当いただいた箇所につきまして何かご発言ございますでしょうか。

○髙野委員

先ほどのグルーピングの最初のキャッシュ・フローのところなんですけれども、先般、たしか金融機関さんの話にもあったとおり、特定の利害の中で店舗の評価をする。個々の店舗では見ないというのはありましたけれども、やはり経営上の判断というのは十分尊重していただければと思いますけれども。

○辻山部会長

そのほかご発言ございませんようでしたら、そろそろ定刻になりましたので、本日の部会はこれにて閉会とさせていただきます。

次回も、本日いただいたご意見を踏まえまして、引き続き固定資産の減損会計や投資不動産の問題について議論を深めたいと思っております。本日議論できませんでした資料4、資料5、資料6につきましては、次回使用させていただきますので、できれば次回ご持参いただければと思います。それから、委員限になっておりますので、取り扱いにはくれぐれもご注意をいただきたいと思います。

なお、次回の当部会の日程でございますけれども、6月8日金曜日の午後4時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。正式には改めて事務局から皆様方にご連絡を差し上げます。

本日は皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございました。

これにて散会とさせていただきます。

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