平成14年4月30日
金融庁

企業会計審議会第22回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第22回固定資産部会(平成14年4月12日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第22回固定資産部会議事録

日時:平成14年4月12日(金)午後2時00分~午後3時08分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○辻山部会長

定刻になりましたので、ただいまから第22回固定資産部会を開催させていただきます。

本日は、皆様方にはお忙しいところご参集いただき、ありがとうございました。

前回は、公開草案のたたき台をもとに、基準全体にわたり、さまざまな論点についてご議論いただきました。おおむね議論も集約されてきましたので、前回申し上げましたように、本部会としては、本日の部会で公開草案の内容を固めることとしたいと思います。

そこで、本日は、前回の議論を踏まえまして、前文と基準本文、注解について公開草案の案を用意いたしましたので、ご検討いただきたいと考えております。

なお、公開草案の案とはいいましても、内容はかなり固まってきていると思われます。その内容が公表までの間に外部に漏れることは適当ではありませんので、申しわけありませんが、お配りした資料は、本日の審議終了後、回収いたしたいと存じます。この点、ご協力のほどお願いいたします。

また、審議時間は一応2時間を予定しておりますが、議論も大分煮詰まってまいりましたので、時間が余れば早目に終了させていただきたいと思います。

それでは、公開草案について審議に入りたいと思います。

まず、事務局から資料の内容を簡単にご紹介いただきます。お願いいたします。

○平松課長補佐

それでは、私の方からご説明をさせていただきたいと思います。

まず、資料1は公開草案のうち前文の部分でございます。資料2が基準及び注解でございます。基本的に、読み上げながら必要な事項をご説明していきたいと思います。

まず、資料1「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書(公開草案)(案)」でございます。

「一 経緯

1.ディスクロージャー制度の中核となる会計基準は、近年の市場環境や企業行動の激変に伴って、急速な変化を余儀なくされてきた。また、市場の国際化の進展により、会計基準の国際的調和が喫緊の課題として求められてきた。

そうした状況にあって、当審議会は、我が国会計基準の整備を精力的に進めてきたが、連結財務諸表、キャッシュ・フロー計算書、研究開発費会計、退職給付会計、税効果会計、金融商品会計などの基準の整備が一段落した平成11年10月の総会で、「固定資産の会計処理について」が審議事項に取り上げられ、固定資産の会計処理について幅広い観点から検討することとされた。

2.固定資産の会計処理に関する検討は、平成11年12月以降、先ず、第一部会において行われた。第一部会では、固定資産に係る我が国の会計実務や海外の会計基準及びその動向等について審議が行なわれた。その結果、固定資産の会計処理に関し、最優先の課題は減損の処理であり、先ずその基準を整備することが必要であるという結論に達した。また、国際会計基準において投資不動産の会計処理が定められ、時価基準と原価基準の選択適用を認めることとなったため、それに対してどのように対処するかについて検討することとされた。第一部会では、このような審議を踏まえ、固定資産の会計処理について検討すべき論点をまとめ、平成12年6月に「固定資産の会計処理に関する論点の整理」を公表した。

3.平成12年7月に開催された総会において、第一部会で審議されてきた固定資産の会計処理の問題を同部会から引き継いで検討するために、固定資産部会が設置された。固定資産部会では、平成12年9月以降、固定資産の減損及び投資不動産の取扱いについて審議を重ね、平成13年7月に、それまでの議論の概要や考え方等をまとめた「固定資産の会計処理に関する審議の経過報告」を公表した。その後、この経過報告に対して寄せられた意見を参考にしつつ、さらに審議を進め、このたび「固定資産の減損に係る会計基準」(公開草案)を取りまとめたので、これを公表し、広く各界の意見を求めることとした。

二 会計基準の整備の必要性

我が国においては、従来、固定資産の減損に関する処理基準が明確ではなかったが、不動産をはじめ固定資産の価格や収益性が著しく低下している昨今の状況において、それらの帳簿価額が価値を過大に表示したまま将来に損失を繰り延べているのではないかという疑念が示されている。また、このような状況が財務諸表への社会的な信頼を損ねているという指摘や、減損処理に関するルールが整備されていないために、裁量的な固定資産の評価減が行われるおそれがあるという見方もある。国際的にも、近年、固定資産の減損に係る会計基準の整備が進められており、会計基準の国際的調和を図るうえでも、減損処理に関する会計基準を整備すべきとの意見がある。

このような状況を踏まえ、固定資産の減損について適正な会計処理を行うことにより、投資者に的確な情報を提供するとともに、会計基準の国際的調和を図るなどの観点から、固定資産の減損に係る会計基準を設定することが必要である。」

最後の3行の部分ですが、この部分については文章を整理させていただいております。文意は変わっておりません。

「三 基本的考え方

1.本基準が対象とする固定資産については、通常、市場平均を超える成果を期待して事業に使われているため、市場の平均的な期待で決まる時価が変動しても、企業にとっての投資の価値がそれに応じて変動するわけではなく、また、投資の価値自体も、投資の成果であるキャッシュ・フローが得られるまでは実現したものではない。そのため、固定資産は取得原価から減価償却等を控除した金額で評価され、損益計算においては、そのような資産評価に基づく実現利益が計上されている。

しかし、固定資産であっても、その収益性が当初の予想よりも低下し、資産の回収可能性を帳簿価額に反映させなければならない場合がある。このような場合における固定資産の減損処理は、棚卸資産の評価減、固定資産の物理的な滅失による臨時損失や耐用年数の短縮に伴う臨時償却などと同様に、事業用資産の過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理と考えることが適当である。これは、金融商品に適用されている時価評価とは異なり、資産価値の変動によって利益を測定することや、決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とするものではなく、取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。

2.固定資産の帳簿価額を臨時的に減額する会計処理の一つとして、臨時償却がある。臨時償却とは、減価償却計算に適用している耐用年数又は残存価額が、予見することのできなかった原因等により著しく不合理となった場合に、耐用年数の短縮や残存価額の修正に基づいて一時に行われる減価償却累計額の修正であるが、資産の収益性の低下を帳簿価額に反映すること自体を目的とする会計処理ではないため、別途、減損に関する会計基準を設ける必要がある。

3.固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である。

減損処理は、本来、投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を評価し、投資額の回収が見込めなくなった時点で、将来に損失を繰り延べないために帳簿価額を減額する会計処理と考えられるから、期末の帳簿価額を将来の回収可能性に照らして見直すだけでは、収益性の低下による減損損失を正しく認識することはできない。帳簿価額の回収が見込めない場合であっても、過年度の回収額を考慮すれば投資期間全体を通じて投資額の回収が見込める場合もあり、また、過年度の減価償却などを修正したときには、修正後の帳簿価額の回収が見込める場合もあり得るからである。

なお、減価償却などを修正して帳簿価額を回収可能な水準まで減額させる過年度修正は、現在、修正年度の損益とされている。遡及修正が行われなければ、過年度修正による損失も、減損による損失も、認識された年度の損失とされる点では同じである。したがって、当面この部分を減損損失と区分しなくても、現行の実務に大きな支障は生じない。そのため、本基準では、他の基準を適用しなければならないものを除いて、回収を見込めない帳簿価額を一纏めにして、減損の会計処理を適用することとした。

将来、過年度修正に対して遡及修正が行われるようになった場合には、本基準において減損損失に含められているもののうち、減価償却の過年度修正に該当する部分については、減価償却の修正として処理される必要があると考えられる。また、この場合には、減価償却の修正前に減損損失を認識することについて、再検討される必要がある。

四 会計基準の要点と考え方

1.対象資産

本基準は、固定資産に分類される資産を対象資産とするが、そのうち、他の基準に減損処理に関する定めがある資産、例えば、「金融商品に係る会計基準」における金融資産、「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産については、対象資産から除くこととした。また、前払年金費用についても、「退職給付に係る会計基準」において評価に関する定めがあるため、対象資産から除くこととする。

2.減損損失の認識と測定

(1)減損の兆候

本基準では、資産又は資産グループ((6)マル1における最小の単位をいう。)に、減損が生じている可能性を示す事象(以下「減損の兆候」という。)がある場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定を行うこととした。これは、対象資産すべてについてこのような判定を行うことが、実務上、過大な負担となるおそれがあることを考慮したためである。」

この部分の修正でございますが、前回の部会でご提示した案では、この部分が、減損損失を認識するかどうかの判定を行うのは、減損が生じている可能性を示す事象がある場合に限る、「限る」という表現になっていたわけですが、そのような場合に限る必要はないというご指摘があったわけです。そのご指摘を踏まえまして、このように修文いたしました。この修文後の文章によりまして、後でご紹介します基準の本文の表現に合うことになります。

資料1に戻ります。

「企業は、内部管理目的の損益報告や事業の再編等に関する経営計画などの企業内部の情報及び経営環境や資産の市場価格などの企業外部の要因に関する情報に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループを識別することとなる。」

この部分、前回ご提示の案では「識別しなければならない」となっていたわけでございますが、何というんでしょうか、より妥当な表現にするために、「識別することとなる」と改めております。

「(2)減損損失の認識

減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積もりに大きく依存する。将来キャッシュ・フローが約定されている場合の金融資産と異なり、成果の不確定な事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるを得ない。その点を考慮すると、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識することが適当である。

本基準では、減損の兆候がある資産又は資産グループについて、これらが生み出す割引前の将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回るときには、減損の存在が相当程度に確実であるとし、そのような場合には減損損失を認識することを求めている。この減損損失を認識するかどうかの判定は、減価償却の見直しに先立って行う。

減損処理に関する本来的な意義を踏まえれば、上記にかかわらず、過去のキャッシュ・フローを考慮すれば当初投資額の回収可能性が明らかである場合、減損損失は認識されないこととなるが、現段階では、そのような適用は行わないこととした。

(3)減損損失の測定

減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とすることとした。

この場合、企業は、資産又は資産グループに対する投資を売却と使用のいずれかの手段によって回収するため、売却による回収額である正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額)と、使用による回収額である使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い方の金額が固定資産の回収可能価額になる。

また、正味売却価額を算定する場合の時価とは、公正な評価額であり、通常、それは観察可能な市場価格をいうが、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額がそれに該当することになる。

なお、減損損失は、固定資産売却損などと同様に、固定資産に関する臨時的な損失であるため、原則として、特別損失とすることとした。

(4)将来キャッシュ・フロー

マル1減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定に際して、将来キャッシュ・フローを見積もる必要がある。このようなキャッシュ・フローは、資産又は資産グループの時価を算定するためではなく、企業にとって資産又は資産グループの帳簿価額が回収可能かどうかを判定するため、あるいは、企業にとって資産又は資産グループがどれだけの経済的な価値を有しているかを算定するために見積もられることから、企業に固有の事情に照らして、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積もることとした。

マル2将来キャッシュ・フローは、現時点における資産又は資産グループの回収可能性を反映すべきであることから、資産又は資産グループの現在の使用状況及び合理的な使用計画等を考慮して見積もられる必要がある。したがって、計画されていない将来の設備の増強や事業の再編の結果として生ずるキャッシュ・フローを見積もりに含めないこととした。また、将来の用途が定まっていない遊休資産については、現在の状況に基づきキャッシュ・フローを見積もることになる。

一方、資産又は資産グループの現在の価値を維持するための、当初から合理的に予定されているような設備投資については、それに関連するキャッシュ・フローを将来キャッシュ・フローの見積もりに含めることになると考えられる。

マル3将来キャッシュ・フローの見積もりの方法には、最も生起する可能性の高い単一の金額を見積もる方法と、生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で過重平均した金額(期待値)を見積もる方法がある。これらのうち、企業の計画等に基づいて単一の金額を見積もる前者の方法が一般的であると考えられるが、企業が固定資産の使用や処分に関して、いくつかの選択肢を検討している場合や、生じ得る将来キャッシュ・フローの幅を考慮する必要がある場合には、期待値を用いる後者の方法も有用であると考えられるため、いずれの方法も適用できることとした。」

「期待値を用いる」というところの下線でございますが、これは前回「生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で加重平均した」というところを繰り返して書いておりましたものを、「期待値」という言葉で簡略化いたしました。

マル4使用価値の算定においては、将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクについて、将来キャッシュ・フローの見積もりに反映させる方法と割引率に反映させる方法のいずれの方法も認めることとした。他方、減損損失を認識するかどうかを判定する際に用いる割引前将来キャッシュ・フローの算定においては、将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクを将来キャッシュ・フローに反映させるか否かで異なる結果が導かれることになるため、リスクを反映させない方法で統一した。」

この下線の部分でございますが、「使用価値の算定においては、…いずれの方法も認めることとした」ということで、前回は「リスクについて、将来キャッシュ・フローの見積もりに反映させる方法と割引率に反映させる方法のいずれによっても使用価値の算定に際しては基本的に同じ結果が得られる」ということが書いてあったわけでございますが、ご意見がございましたので、それを踏まえましてこのように改めておりまして、要するに、同じ結果が得られるという趣旨の文言を削除しております。

マル5資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローを見積もるためには、当該資産又は資産グループがキャッシュ・フローを生み出すために必要な本社費等の間接的な支出も考慮する必要がある。したがって、資産又は資産グループに関連して間接的に生ずる支出は、関連する資産又は資産グループに合理的な方法により配分し、当該資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの見積もりに際し控除することとした。」

この部分ですが、「間接的な支出」というふうに言い方を変えております。これは、他の部分ではプラスのキャッシュ・フローを想定して書いておりますが、この部分についてはマイナスのキャッシュ・フロー・キャッシュ・アウト・フローを意味しているということで、前回わかりづらいという指摘がありましたので、これを「間接的な支出」あるいは「間接的に生じる支出」という言い方で、キャッシュ・アウト・フローを意味していることをより明確にしてはどうかということでございます。

マル6利息の支払額並びに法人税等の支払額及び還付額については、通常、固定資産の使用又は処分から直接的に生じる項目ではないことから、将来キャッシュ・フローの見積もりには含めないこととした。

マル7減損損失を認識するかどうかを判定するために見積もられるキャッシュ・フローは、割引前の数値であるが、少なくとも土地については見積期間が無限になることから、その見積期間を制限する必要がある。また、一般に、長期間にわたる将来キャッシュ・フローの見積もりは不確実性が高くなる。このため、減損損失を認識するかどうかを判定するために見積もられる割引前将来キャッシュ・フローの見積期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産(資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって最も重要な構成資産をいう)の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方とすることとした。

マル8資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに基づいて、20年経過時点の回収可能価額を算定し、20年目までの割引前将来キャッシュ・フローに加算することになる。

また、資産グループ中の主要な資産以外の構成資産の経済的残存使用年数が、主要な資産の経済的残存使用年数を超える場合は、主要な資産の経済的残存使用年数経過以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに基づいて、当該経済的残存使用年数経過時点の主要な資産以外の構成資産の回収可能価額を算定し、主要な資産の経済的残存使用年数経過時点までの割引前将来キャッシュ・フローに加算することになる。」

この部分は、前回のご指摘を踏まえてつけ加えておりますが、まず、マル8を新たに独立させたということです。「資産又は資産グループの主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合について」というところで項目を独立させるとともに、修文を行っているということでございます。

もう一つ、また書きのところで、主要な資産以外の構成資産の経済的残存使用年数が主要な資産の経済的残存使用年数を超える場合についての取り扱いについて、この部分も前回のご指摘を受けて修文しておりますが、その内容につきましては、今、読み上げたとおりでございます。

「(5)使用価値の算定に際して用いられる割引率

資産又は資産グループの使用価値の算定に際しては、将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクを反映させる必要がある。その方法としては、将来キャッシュ・フローの見積もりに反映させる方法と、割引率に反映させる方法がある。前者を採用した場合には、割引率は貨幣の時間価値だけを反映した無リスクの割引率となり、後者を採用した場合には、割引率は貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクの両方を反映したものとなる。

また、将来キャッシュ・フローが税引前の数値であることと対応して、割引率も税引前の数値を用いる必要がある。

(6)資産のグルーピング

マル1資産のグルーピングの方法

複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出す場合には、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に際して、合理的な範囲で資産のグルーピングを行う必要がある。

そこで、資産のグルーピングに際しては、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行うこととした。実務的には、管理会計上の区分や投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位等を考慮してグルーピングの方法を定めることになると考えられる。

なお、連結財務諸表は、企業集団に属する親会社及び子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが、個別財務諸表における資産のグルーピングの単位は、連結財務諸表においては、連結グループの見地から見直される場合がある。」

この2つ目のパラグラフに「資産又は」をつけ加えておりますが、これは単独で概ね独立したキャッシュ・フローを生み出すケースも考えられるわけですので、「資産グループ」に限らず「資産」も一応想定できるということで、「資産又は」とつけ加えております。

マル2資産グループに認識された減損損失の配分

資産グループについて認識された減損損失は、当該資産グループの各構成資産に配分する。その方法としては、帳簿価額に基づいて各構成資産に比例配分する方法が考えられるが、各構成資産の時価を考慮した配分等他の方法が合理的であると認められる場合には、当該方法によることができることとした。

(7)共用資産の取扱い

マル1共用資産

本基準では、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産のうち、のれん以外のものを共用資産と呼んでいる。例えば、全社的な将来キャッシュ・フローの生成に寄与する本社の建物や試験研究施設が該当するが、全社的な資産でなくても、複数の資産又は資産グループを含む部門全体の将来キャッシュ・フローの生成に寄与している資産は、当該部門の共用資産となる。

マル2共用資産に係る資産のグルーピング

共用資産の取扱いについては、共用資産と、その共用資産が将来キャッシュ・フローの生成に寄与している資産グループを含む、より大きな単位でグルーピングを行う方法と、共用資産の帳簿価額を各資産グループに配分して、配分後の各資産グループについて減損損失の認識と測定を行う方法があるが、一般に共用資産の帳簿価額を合理的な基準で各資産グループに配分することは困難であると考えられるため、本基準は前者の方法を原則としている。すなわち、共用資産に減損の兆候がある場合の共用資産に係る減損の判定は、共用資産が関連する複数の資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位で行う。ただし、共用資産の帳簿価額を合理的な基準で配分することができる場合には、各資産グループに共用資産の帳簿価額を配分することもできることとした。この場合には、共用資産に減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産グループに配分することとなる。

マル3より大きな単位でグルーピングを行う方法を採用した場合の会計処理。

共用資産に関して、より大きな単位でグルーピングを行う場合には、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、先ず、共用資産を含まない資産グループごとに行い、その後、共用資産を含む、より大きな単位で行うことになる。

また、共用資産を含む、より大きな単位でグルーピングを行う場合には、共用資産を含まない個々の資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較することによって、減損損失を認識するかどうかを判定する。その結果、減損損失を認識することとなった場合には、共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、共用資産に配分する。ただし、共用資産に配分された減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過することが明らかな場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産グループに配分する。

マル4共用資産の帳簿価額を資産グループに配分する方法を採用した場合の会計処理

共用資産の帳簿価額を各資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定する場合には、各資産グループについて認識された減損損失は、共用資産の配分額を含む各資産グループの構成資産の帳簿価額に基づいて比例配分する等の合理的な方法により、当該資産グループの構成資産に配分する。

(8)のれんの取扱い

マル1のれんの帳簿価額の分割

のれんが認識される取引において、取得の対価が概ね独立して決定され、取得後も内部管理上独立した業績評価が行われるような複数の事業が取得される場合がある。このような複数の事業に係るのれんを一括して減損処理することは適当ではない。したがって、のれんの減損処理を検討するに当たり、その帳簿価額は、先ず、のれんが認識された取引において取得された事業の単位に応じて、合理的な基準に基づき分割することとした。

マル2のれんに係る資産のグルーピング

のれんは、それ自体では独立したキャッシュ・フローを生まないことから、分割されたそれぞれののれんに減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定は、共用資産と同様に、のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行うこととした。ただし、のれんの帳簿価額を関連する資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、のれんの帳簿価額を各資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定することができることとした。この場合には、のれんに減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産グループに配分することとなる。」

この部分では2点ございまして、まず、1点目は下線の部分でございますが、基準本文の表現に合わせるということで「減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定は」と修文しています。

それから、前回の案では、ただし書きのところに「のれんが帰属する事業に複数の資産グループが関連し」という表現が入っていたんですが、のれんと資産グループの関係について、のれんと資産グループが1対1で対応しているような場合には、その資産グループの中にのれんが入っていると考えられるために、複数の資産グループが関連していることは当然であるということから、その部分を削除しております。

マル3より大きな単位でグルーピングを行う方法を採用した場合の会計処理

のれんに関して、より大きな単位でグルーピングを行う場合には、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、先ず、のれんを含まない資産グループごとに行い、その後、のれんを含む、より大きな単位で行うことになる。

また、のれんを含む、より大きな単位でグルーピングを行う場合には、のれんを含まない個々の資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額にのれんの帳簿価額を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較することによって、減損損失を認識するかどうかを判定する。その結果、減損損失を認識することとなった場合には、当該判定単位の超過収益力がもはや失われていると考えられるため、のれんを加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、のれんに配分する。ただし、のれんに配分された減損損失が、その帳簿価額を超過する場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産グループに配分する。

マル4のれんの帳簿価額を資産グループに配分する方法を採用した場合の会計処理

のれんの帳簿価額を各資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定する場合には、各資産グループについて認識された減損損失は、同様の理由により、のれんに優先的に配分し、残額は各資産グループの構成資産の帳簿価額に基づいて比例配分する等の合理的な方法により、当該資産グループの構成資産に配分することとした。

マル5企業結合会計に関する審議との関係

このようなのれんの取扱いは、現行の会計制度において、のれんが資産計上され、一定の期間で償却される場合を前提としている。当審議会の第一部会では、企業結合に係る会計基準の審議が行われており、これには、のれんに係る会計処理も検討の対象に含まれている。したがって、企業結合会計に係る会計基準の設定に際し、減損の兆候、資産のグルーピング、回収可能価額の算定等について、別途の検討を行う必要性が生ずる場合がある。

(9)減損処理後の会計処理

マル1減価償却

減損処理を行った資産についても、減損処理後の帳簿価額をその後の事業年度にわたって適正に原価配分するため、毎期計画的、規則的に減価償却を実施することとなる。」

この文末は、前回は「実施しなければならない」という表現になっていたんですけれども、これも当然のことでありますので、「実施することとなる」と言い方を改めております。

マル2減損損失の戻し入れ

減損処理は回収可能価額の見積もりに基づいて行われるため、その見積もりに変更があり、変更された見積もりによれば減損損失が減額されるような場合には、減損損失の戻し入れを行う必要があるという考え方がある。しかし本基準においては、減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識・測定することとしていること、また、戻し入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどから、減損損失の戻し入れは行わないこととした。

3.ファイナンス・リース取引の取扱い

ファイナンス・リース取引に係る借手側の会計処理方法としては、通常の売買取引に係る方法に準ずる会計処理(売買処理)のほか、リース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外の取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準ずる会計処理(賃貸借処理)が認められている。売買処理を採用している場合には、借手側が当該ファイナンス・リース取引により使用している資産(以下「リース資産」という。)は、本基準の対象資産となり減損会計が適用されるが、賃貸借処理を採用している場合であっても、売買処理を採用した場合との均衡上、減損会計と同様の効果をもつ会計処理を行う必要がある。

このため、賃貸借処理を採用している場合のファイナンス・リース取引に係るリース資産又は当該リース資産を含む資産グループの減損処理を検討するに当たっては、当該リース資産の未経過リース料の現在価値を当該リース資産の帳簿価額とみなして本基準を適用することとした。この場合、リース資産に配分された減損損失は負債として計上し、リース契約の残存期間にわたり規則的に取り崩すこととなる。

五 実施時期等」

1.につきましては、今回初めて入れたものですから、簡単にご説明したいと思います。

前回の部会におきまして、この点につきまして議論がございました。

まず、適用指針の作成につきましては、少なくとも1年はかかるのではないかという見方をもとにして、作成者側としては、その後、1年程度の準備期間をぜひ置いてほしいというご意見がございました。それらを踏まえまして、強制適用の時期は2005年度からが適当ではないかというご意見がございました。また、それに伴いまして、早期適用と申しますか、前倒し期間につきましても、1年くらいではどうかというご発言があったわけです。それから、適用指針を作成することになるであろうASBのお立場から、適用指針の作成については、1年程度の期間を十分に置かなければならないというご発言、さらに適用指針を周知する期間も必要とのご発言があったわけです。さらに前倒し期間につきまして、1年だけではなくて、その前年も認めてほしいという御発言もありました。

これら前回の部会におけるご意見と、それから、この問題につきまして起草委員会でも議論し、整理いたしましたものを、今回、この前文の中に入れさせていただいているわけです。

基準確定まで、まだ先のことですので何とも言えないところですが、順調に進むことを前提といたしまして、これも過去の実例等から考えますと、どんなに早くても基準の確定は、この夏で、それより早まることはちょっと考えられない。そういう状況であるわけですが、そういう前提から、前回の部会におきます議論を踏まえて検討したということでございます。

完全実施の時期でございますが、まず、読みます。

「1.固定資産の減損に係る会計基準については、今後、関係各方面の準備作業、企業側の受入準備が必要であり、これらを考慮して、平成17年4月1日以後開始する事業年度から実施されるよう措置することが適当である。」

これは2005年ということでございます。準備期間、関係各方面の準備作業とか企業側の受入準備ということですが、前回の発言にございましたように、実務指針の策定の問題とか、相当な準備が必要であるということを反映して文章を作っております。

完全実施ということになる場合には、2005年度ということを考えた場合に、当然、原則的な考え方に従って、中間決算から反映させることになりまして、このためには年度の当初といいますか、上半期からですね、減損の調査とかそういう手続を開始するような体制を組んでおく必要があるといったことで、やはり準備期間というのはかなりかかると思いますので、平成17年4月1日としてはどうかということでございます。

次に、早期適用と申しますか、任意適用の問題なんですが、企業の業態とか規模とか準備状況、いろいろ差があると思います。そういう状況によって、あるいは企業によって、2005年度以前の適用を希望する企業が存在することは当然考えられるわけです。そのような企業につきましては、2004年度、平成16年4月1日以後開始する事業年度、ここから早期適用を認めることが適当だと考えられるということでございます。

従来、幾つか過去の基準がございますけれども、大体、通常1年前から早期適用を認める場合が多いと思われます。平成16年度から早期適用をした場合には、これはまだ先のことでわかりませんが、基本的には実務指針が公表された後のことになるのではないかと思われます。したがいまして、この年度につきましては、原則的な考え方に従いまして、当然中間から導入していただくことになるのではないかと思われます。

それを表したのが、また書きの文章でございます。

「また、平成16年4月1日以後開始する事業年度から適用することを認めるよう措置することが適当である。」

それから、前回、その前の年でも認めてほしいというご意見もあったわけです。それについて検討していただいたわけですが、いわゆる2003年度については年度を通して、中間決算から適用するというのは、実務指針のタイミング等から、準備もありますので、恐らく現実的には困難ではないかというところでございます。来年、いつごろ実務指針等ができるかわかりませんけれども、その時期によりましては、中間では間に合わないにしても、年度から可能なケースもないわけではないのではないか。それぞれの企業の置かれている状況によっても違うと思いますけれども、企業によっては早くやりたいというご希望もあるでしょうし、割と準備が進みやすいような状況もあり得るということから、やや例外的になるのかもしれませんが、可能なところについては、2003年度の年度決算から早期適用を認めてもいいのではないかということで、その意図をなお書きで書いております。

「なお、平成16年3月31日から平成17年3月30日までに終了する事業年度に係る財務諸表及び連結財務諸表についても適用することを妨げないものとする。」

「財務諸表及び連結財務諸表」と言っておりますのは、年度決算からという含意でございますが、ぎりぎり間に合うところは、例外的に、これを認めてもいいのではないかという趣旨でございます。

以上のようなことを踏まえまして、この部分を書かせていただいております。

「2.本基準を実務に適用する場合の具体的な指針等については、今後、関係府令を整備するとともに、次の事項を含め、企業会計基準委員会において適切に措置していくことが適当である。

(1)将来キャッシュ・フローの見積方法、使用価値の算定に際して用いられる割引率、資産のグルーピングの方法、共用資産の取扱い、のれんの取扱い等の細目

(2)土地再評価法による再評価を行った土地に係る取扱い

(3)中間会計期間において減損処理を行った資産に係る取扱い

六 投資不動産

1.投資不動産の会計処理

国際会計基準は、企業が自ら使用するもの及び棚卸資産を除いた、賃貸収益又は資本増価を目的として保有する不動産を投資不動産としている。このような投資不動産については、他の有形固定資産と比べて、比較的容易に時価が把握可能であり、また、当該時価により売買・換金等を行うことが可能ではないかという観点から、投資不動産に関する経営成績を適正に開示するためには、時価評価が適当であるという考え方がある。

しかし、活発な市場を有する一部の金融資産に比べ、投資不動産の時価を客観的に把握することは困難ではないかという懸念がある。また、工場、本社建物のみならず外形的には賃貸収益を目的として保有されるような不動産であっても、直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上の制約がある場合等、事実上、事業投資と考えられるものがあり、このような事業投資では、一般に、時価の変動を企業活動の成果とは捉えないという考え方が妥当である。

さらに、外形的には投資不動産とみられるものでも、時価の変動により利益を得ることを目的として保有するものから、前述のように、事実上、事業投資と考えられるものまで存在するため、その保有目的等を全く考慮せずに時価評価を行うことは、必ずしも、企業の財政状態及び経営成績を適切に財務諸表に反映させることにはならないと考えられる。

むろん、有価証券のように個々の保有目的等に応じてそれぞれの会計処理を定める方法も考えられるが、棚卸資産との関係の整理、それに含まれる類似の不動産との区別など、細分化するに当たっての合理的な基準を設けることは困難であると考えられる。

したがって、投資不動産についても、時価の変動をそのまま損益に算入せず、他の有形固定資産と同様に取得原価基準による会計処理を行い、必要があれば減損処理を行うことが適当であると考えられる。

2.投資不動産の時価情報の注記

前述のように、投資不動産については、取得原価基準による会計処理を行うことが適当であるが、国際会計基準は、企業が取得原価基準による会計処理を選択した場合には、時価を注記するよう求めている。このような国際会計基準の規定との調和や、他の有形固定資産と比べ相対的に換金性が高いという性格に鑑み、投資情報として投資不動産の時価を注記することが適当であるという意見がある。

他方、投資不動産については、活発な市場を有する一部の金融資産に比べ、時価を把握することが比較的困難であり、また、直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上の制約がある投資不動産について時価を注記することは、投資者にとって有用な情報を提供することにならないのではないか、などの理由から、時価を注記することは適当でないという意見がある。

このように、投資不動産の時価情報注記に関しては、その要否や投資不動産の範囲も含め、理論及び実務の両面で、なお検討を要する問題が残されていることから、本意見書では、議論の要点を以上のように示すに止め、今後の課題とすることとした。」

資料2「固定資産の減額に係る会計基準(公開草案(案))」でございます。

「一 対象資産

本基準は、固定資産を対象に適用する。ただし、他の基準に減損処理に関する定めがある資産、例えば、「金融商品に係る会計基準」における金融資産、「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産については、対象資産から除くこととする。」

右側の注解、(注1)でございます。

「(注1)

本基準における用語の基準は、次のとおりである。

1.回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいう。

2.正味売却価額とは、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額をいう。

3.時価とは、公正な評価額をいう。通常、それは観察可能な市場価格をいい、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額をいう。

4.使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいう。

5.共用資産とは、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産をいい、のれんを除く。

二 減損損失の認識と測定

1.減損の兆候

資産又は資産グループ(6.(1)における最小の単位をいう。)に減損が生じている可能性を示す事象(以下「減損の兆候」という。)がある場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定を行う。減損の兆候としては、例えば、以下の事象が考えられる。

マル1資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続して赤字となっているか、あるいは、継続して赤字となる見込みであること

マル2資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること(注2)」

この注2でございますが、1ページにお戻り願います。

「(注2)

資産又は資産グループが使用される範囲又は方法について生じる当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させるような変化とは、資産又は資産グループが使用されている事業を廃止又は再編成すること、当初の予定よりも著しく早期に資産又は資産グループを処分すること、資産又は資産グループを当初の予定と異なる用途に転用すること、資産又は資産グループが遊休状態になったこと等をいう。

マル3資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること

マル4資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したこと

2.減損損失の認識

減損の兆候がある資産又は資産グループについての減損損失を認識するかどうかの判定は、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識する。

3.減損損失の測定

減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とする。

4.将来キャッシュ・フロー

(1)減損損失を認識するかどうかの判定に際して見積もられる将来キャッシュ・フロー及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、企業の固有の事情に照らして、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積もる。

(2)将来キャッシュ・フローの見積もりに際しては、資産又は資産グループの現在の使用状況及び合理的な使用計画等を考慮する。(注3)

(注3)

計画されていない将来の設備の増強や事業の再編の結果として生じるキャッシュ・フローは、見積もりに含めない。また、将来の用途が定まっていない遊休資産については、現在の状況に基づきキャッシュ・フローを見積もる。

(3)将来キャッシュ・フローの見積金額は、最も生起する可能性の高い単一の金額又は生起しうる複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で加重平均した金額とする。(注4)

(注4)

将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクについては、将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させる。ただし、減損損失を認識するかどうかを判定する際に見積もられる割引前将来キャッシュ・フローの算定においては、このリスクを反映させない。

(4)資産又は資産グループに関連して間接的に生ずる支出は、関連する資産又は資産グループに合理的な方法により配分し、当該資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りに際し控除する。」

この「生ずる支出」というのは、先ほど前文でご説明したとおりでございます。

「(5)将来キャッシュ・フローには、利息の支払額並びに法人税等の支払額及び還付額を含めない。

(6)減損損失を認識するかどうかを判定するために見積もられる割引前将来キャッシュ・フローの見積期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方とする。(注5)

(注5)

主要な資産とは、資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって最も重要な構成資産をいう。

5.使用価値の算定に際して用いられる割引率

使用価値の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値を反映した税引前の利率とする。

資産又は資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクが、将来キャッシュ・フローの見積もりに反映されていない場合には、割引率に反映させる。

6.資産のグルーピング

(1)資産のグルーピングの方法

減損損失を認識するかどうかの判定と減損損失の測定において行われる資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行う。」

この「資産又は」を加えたのは、先ほど前文でご説明したとおりでございます。

「(2)資産グループについて認識された減損損失の配分

資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、当該資産グループの各構成資産に配分する。

7.共用資産の取扱い

共用資産に減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定は、共用資産が関連する複数の資産又は資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位で行う。(注6)

(注6)

共用資産又はのれんに係る資産のグルーピングを、共用資産又はのれんが関連する複数の資産又は資産グループに共用資産又はのれんを加えた、より大きな単位で行う場合、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、先ず、資産又は資産グループごとに行い、その後、より大きな単位で行う。」

基準の方に戻ります。

「共用資産を含む、より大きな単位について減損損失を認識するかどうかを判定するに際しては、共用資産を含まない個々の資産又は資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較する。この場合に、共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、共用資産に配分する。(注7)

(注7)

共用資産に配分される減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過することが明らかな場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産又は資産グループに配分する。」

基準に戻ります。

「共用資産の帳簿価額を当該共用資産に関連する資産又は資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定することができる。この場合に、資産グループについて認識された減損損失は、共用資産の配分額を含む各資産グループの構成資産の帳簿価額に基づいて比例配分する等の合理的な方法により、当該資産グループの構成資産に配分する。

8.のれんの取扱い

のれんを認識した取引において取得された事業の単位が複数である場合に、のれんの帳簿価額を合理的な基準に基づき分割する。(注8)(注9)

(注8)

のれんの帳簿価額を分割し帰属させる事業の単位は、取得の対価が概ね独立して決定され、かつ、取得後も内部管理上独立した業績報告が行われるような単位とする。

(注9)

のれんの帳簿価額の分割は、のれんが認識された取引において取得された事業の取得時における時価の比率に基づいて行う方法その他合理的な方法による。」

基準に戻ります。

「分割されたそれぞれののれんに減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定は、のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行う。(注6)

のれんを含む、より大きな単位について減損損失を認識するかどうかを判定するに際しては、のれんを含まない個々の資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額にのれんの帳簿価額を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較する。この場合に、のれんを加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、のれんに配分する。(注10)

(注10)

のれんに配分された減損損失が、のれんの帳簿価額を超過する場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産グループに配分する。」

基準に戻ります。

「のれんの帳簿価額を関連する資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、のれんの帳簿価額を各資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定することができる。この場合に、各資産グループについて認識された減損損失は、のれんに優先的に配分し、残額は各資産グループの構成資産の帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、当該資産グループの構成資産に配分する。

9.減損処理後の会計処理

(1)減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行う。

(2)減損損失の戻し入れは、行わない。

三 財務諸表における開示

1.貸借対照表における表示

減損処理を行った資産の貸借対照表における表示は、原則として、減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする形式で行う。ただし、当該資産に対する減損損失累計額を、取得原価から間接控除する形式で表示することもできる。この場合、減損損失累計額を減価償却累計額に合算して表示することができる。」

これは前回、「表示してもよい」という言い方になっていたんですけれども、他の箇所と表現を揃えるという意味で、「表示することができる」と改めております。

「2.損益計算書における表示

減損損失は、原則として、特別損失とする。

3.注記事項

重要な減損損失を認識した場合には、減損損失を認識した資産、減損損失の認識に至った経緯、減損損失の金額、資産のグルーピングの方法、回収可能価額の算定方法等の事項について注記する。

(注11)

1.ファイナンス・リース取引について、借手側が賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っている場合、借手側が当該ファイナンス・リース取引により使用している資産(以下「リース資産」という。)又は当該リース資産を含む資産グループの減損処理を検討するに当たっては、当該リース資産の未経過リース料の現在価値を、当該リース資産の帳簿価額とみなして、本基準を適用する。ただし、リース資産の重要性が低い場合においては、未経過リース料の現在価値に代えて、割引前の未経過リース料を、リース資産の帳簿価額とみなすことができる。

2.賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っているファイナンス・リース取引に係るリース資産に本基準を適用した場合、リース資産に配分された減損損失は負債として計上し、リース契約の残存期間にわたり規則的に取り崩す。取り崩された金額は、各事業年度の支払リース料と相殺する。」

公開草案の前文と基準の案の内容は、以上でございます。

これを公表する際には、前文と会計基準を合体したバージョンをつくりまして、そういった形で公開することになると思います。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの事務局からの説明に関しまして、意見交換を行いたいと思います。

本日はどこからでも、全体としてご意見をいただきたいと思います。ご自由にご発言ください。

○太田委員

意見ではなくて、ちょっと確認をしたい箇所が1カ所ございます。

適用時期に関する部分なんですが、平成17年4月1日以降開始する事業年度は強制適用の年度で、その時期に適用する場合には中間財務諸表からやってくださいということで、その前の1事業年度は早期適用が可能ですが、早期適用する場合には中間財務諸表から適用する。それよりまた1期間前というのは、早期適用が可能であって、中間財務諸表から適用してもいいし、期末から適用してもいいという理解でよろしいでしょうか。

○辻山部会長

先ほど事務局からご説明いただきましたけれども、基本的に、早期適用については従来の考え方どおり、中間からでございます。ただ、これは2005年度からということになっているわけですけれども、それとの関係、それから実務指針が中間では間に合わないであろうということですので、最後のところについてはさらに例外的に、年度決算からということで、このような書きぶりになっているということでございます。

○太田委員

では、中間については多分できないだろう、間に合わないだろう、そういう趣旨ですか。

○辻山部会長

はい。

○太田委員

わかりました。ありがとうございます。

○辻山部会長

ですから、11ページの「また」のところが従来の早期適用の考え方、それに対して「なお」というのは、さらに例外的に、年度決算に間に合う企業があればそれを妨げないということでございます。

○太田委員

わかりました。どうもありがとうございます。

○品川委員

些細なことですけれども、11ページ、企業会計基準委員会において適切に措置していくことが適当であるということで、(1)(2)(3)とここに掲げられているんですが、本文4ページの使用価値を測定する場合のキャッシュ・フローの見積もりとか割引率はここに書かれておりますが、この正味売却価額を算定する場合で市場価格がない場合の合理的に算定された価額も、かなりこれは実務的には困難であって、それがここで明示されていないということ――これは「等」が入っているから、そこに入っていると言えば入っているんですけれども、割引率やキャッシュ・フローの見積もり方法以上に困難な問題を抱えていると思いますので、やはりこれは、並列して書かないと、その重要性がわかってもらえないように考えられるというのが1点。

それから、これは字句だけですが、10ページで、マル2減損損失の戻し入れの文章の真ん中辺に「しかし」という接続詞がありまして、2ページは「しかし、」となっているのに対してここでは「、」がありませんので、これは統一した方がいいかと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

2点目については、早速直させていただきます。

1点目でございますが、品川委員ご指摘のように、「等」ということで、それも当然入っているという理解でございますが、一応ご意見賜りましたので、検討させていただきます。

○大塚委員

ちょっと説明していただきたいんですけれども、基準の3ページの(3)が「将来キャッシュ・フローの見積金額は、」という文章になっていまして、(注4)では「将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクについては、」こう書いてあるんですね。私の解釈ですと、恐らくこの見積値というのは、左側の基準の方で見積もられた将来キャッシュ・フローの値のことを言っているんだろうと思うんですけれども、そういう解釈でよろしいんでしょうか。

○辻山部会長

一応そのような解釈で、この文章は書かれているということでございます。

何か含意がありましたら、どうぞおっしゃってください。

○大塚委員

いや、全然ないんですが、というのは「将来キャッシュ・フローの見積もり」と言っているときに、左側の基準の単純な見積もりと、その後で、今度はリスクを考慮するというもう一個ある、そういう意味では2つあるんですよね。そういうふうに考えてよろしいんですか。

○辻山部会長

左側は単純な見積もり、それから期待値、リスクは注の方で触れておりまして、左側は見積値、最頻値と期待値ということです。

○大塚委員

そうですよね。

○辻山部会長

左側、基準の方で言っておりますのは単純な最頻値と言われるもので、それとプラス期待値、どちらでもよろしいということでございまして、その両方について、リスクについて注4で触れているということなんですけれども。

○大塚委員

そうですね。すみません、ありがとうございました。

○辻山部会長

そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。おおむねご発言いただきましたでしょうか。

本日の審議で内容的にはほぼ固まったと思いますので、本日いただきましたご意見につきましては、私の責任で適宜修正させていただくということでご一任いただき、公開草案として取りまとめさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、文章を整えまして、その後に公表したいと思います。

皆様にも、内容が固まり次第お送りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

少し時間が早いんですけれども、冒頭ご説明しましたように、ほぼ内容も固まりましたので、本日の部会はこれで終了とさせていただきます。

なお、公開草案のコメント期間でございますが、1カ月程度を予定しておりまして、当部会は5月下旬から審議を再開したいと思います。今後の予定につきましては、事務局から改めてご連絡させていただきます。

本日で一応の区切りとなりますが、委員の皆様には毎回熱心にご審議をいただきまして、まことにありがとうございました。

それでは、本日はこれにて散会させていただきます。

どうもありがとうございました。

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