企業会計審議会第18回内部統制部会議事録

1.日時:平成22年6月10日(木曜日)9時30分~11時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○八田部会長

定刻になりましたので、これより第18回内部統制部会を開催いたします。

皆様には、お忙しいところご参集いただきましてありがとうございます。

なお、本日の部会も企業会計審議会の議事規則に則り、公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

ご了解いただきましたので、そのように取扱わせていただきます。

事務局から、クールビズについての連絡があるとのことですのでお願いします。

○三井企業開示課長

毎年恒例によりまして、6月から9月まで環境に優しい対応をするということでノーネクタイ、それから上着なしということで、そのかわりに部屋の温度を高めに設定するというふうな対応をさせていただいております。ということで、事務方もネクタイを外したり、上着をとって対応させていただきます。皆様方におかれましても、軽装でご審議に参加していただければありがたいと存じます。

以上でございます。

○八田部会長

それでは、議事に入ります。

前回5月21日開催の部会では、内部統制報告制度の導入状況についてご審議いただいた後、企業等からの要望・意見等に基づき、企業会計審議会で策定した内部統制の基準・実施基準について制度の有効性を維持しつつも、さらなる簡素化・明確化等の検討を行い、制度の運用の見直しを図ってはどうかということで意見交換をさせていただきました。

本日は、前回でのご議論も踏まえ、内部統制報告制度の運用の見直しに向けての論点についてご審議いただきたいと考えております。

まず最初に事務局の方で、論点や検討の方向性などを整理してもらいましたので説明してください。

○野村企業会計調整官

それでは、事務局の方から、運用の見直しに向けての論点等についてご説明をさせていただきたいと思います。

前回の部会では、資料の5-1から5-3に基づきまして、寄せられましたご要望やご意見を紹介いたしまして、5-3で見直し検討の主な対応案をご説明させていただいたところでございます。

資料1でございますが、前回の部会におきましてご意見をいただいた論点を事務局と当部会の何人かの委員の方々とで整理させていただいたものでございます。資料の5-3とあわせてご覧いただければと思います。

まず「1.内部統制監査の「レビュー」化の是非」という論点でございます。こちらについては5-3の方ではご提示をしていない項目ですが、ボックスの右端でございますけれども、前回の部会におきまして、「ヨーロッパと比較した場合に加重になっているおそれがあり、簡素化が必要である。内部統制監査を採用している限り、制度の大幅な簡素化・効率化は望めない」ということで、レビュー化をしてはどうかというご意見、それから、2つ目のポツですけれども、「アメリカとは違った効率的な制度設計がなされており、内部統制監査に基づく効果及びコストを考えた場合、あえてレビューに移行する必要はないのではないか」といったご意見をいただいたところでございます。

それで、論点としましては、内部統制監査を「レビュー化」するかどうかということでございますが、そちらに書いてございますとおり、まずレビュー化を検討するに当たって我が国の内部統制報告制度において、そもそもそのレビューとは何かという点をはっきりさせる必要があるのではないか、それから欧州におけるレビューの状況はどうか、それから内部統制監査をレビュー化した場合の実務への影響、それらを踏まえて内部統制監査を「レビュー化」することによるメリット・デメリットを検討してはどうかということでございまして、まずレビューとは何かということにつきましてですが、実はレビューの定義につきましては、我が国におきましてはレビューに相当するものとしましては四半期レビューという制度がございます。

資料の2をご覧いただきたいと思いますが、現在日本において、繰り返しになりますが、公認会計士の検証という意味におけるレビューという使い方は、この四半期レビューにしか使ってございません。この資料2は、19年3月に四半期レビュー基準というのが当審議会で最終決定されたわけですけれども、そのときの資料から抜粋したものでございまして、「財務諸表監査における年度監査と四半期レビューの相違」ということで、監査と四半期レビューとの違いということでございます。

財務諸表監査における年度監査の方は、簡単にご紹介させていただきますと実証手続ということで、財務数値の適正性を帳簿等の突合とか現物確認等を通じて検証するという手続でございます。

それに対しまして四半期レビューは質問を中心に行うと、それから分析的手続ということで、出された財務数値の間ですとか、財務数値と非財務数値等の間の関係を検証して、異常数値があるかどうかとか、そういった点を見ていくということでございまして、その過程において問題点等があれば、矢印にございますとおり、必要な追加的な手続を行うというのが手続としての大きな違いでございます。

証明文言でございますが、監査の方は、そちらに書いてございますとおり「適正に表示しているものと認められる」という、積極的に監査人が証明をするという形でございますけれども、四半期レビューは「適正に表示していないと信じさせる事項は認められなかった」という消極的な文言になってございます。

1枚おめくりをいただきまして、「四半期レビュー基準のポイント」ということで、これもそのときの総会資料でございますが、只今申し上げましたとおり、手続としましては2つ目にあります質問とか分析的手続を行いまして、必要に応じて追加的な手続を行うという流れになってございます。

資料1に戻っていただきまして、真ん中の「検討の方向性」でございますけれども、今申し上げましたような制度化における検討経緯ですとか欧州のレビューの状況、それから監査人の立場からレビュー化した場合の実務への影響などについて検証の上、内部統制監査のレビュー化の是非について議論していただいてはどうかということでございます。

それから、2つ目の「論点」でございますが、「重要な欠陥」という用語を見直すかどうかということでございまして、「重要な欠陥」が欠陥企業であるというような誤解を生むのではないかということが前回の部会におきましても意見として出されました。ただ、2つ目の意見にもございますが、一般投資家に対しては、ある程度インパクトのある用語が必要ではないかといったご意見もいただいているところでございます。

それで、この「重要な欠陥」の用語を見直すかどうかということについての論点を議論するに当たって、左端にございますが、「重要な欠陥」という用語が誤解を生んでいるというのは以下のいずれのケースなのかということでございますが、マル1にございますとおり内部統制報告書及び内部統制監査報告書に「重要な欠陥」と記載されていることから、投資家等の企業の外部者が誤解をするという問題なのか、それとも、1ページおめくりいただきまして、そもそもの定義や判断基準に問題があるからなのかということでございます。

この点につきましては、「検討の方向性」でございますけれども、「重要な欠陥」の用語を見直すこととしてはどうか、その場合、誤解の内容がマル1のケースである場合には、内部統制報告書及び内部統制監査報告書において「重要な欠陥」という用語を使用しないようにして、「有効でない旨」のみを記載することとしてはどうかということでございまして、ちょっと分かりづらいですので、先ほど見ていただきました資料2の3枚目をお開きいただきたいと思います。

資料2の3枚目でございますが、「重要な欠陥」の用語の見直しのイメージということでして、現在の内部統制報告書の記載例ということで真ん中あたりに書いてございますとおり、現行ですと「重要な欠陥」があることと内部統制が有効でないということが同義として使われていますので、そちらに書かれていますとおり、「下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、重要な欠陥に該当すると判断した。したがって、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した」ということで、内部統制の評価結果を書くという形に現行はなってございます。

今のマル1の形で見直すとした場合にどうなるかということですが、左側ですけれども、「下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いため」、ここで「重要な欠陥に該当する」というのを省きまして、「当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した」ということに直してはどうかという案でございます。

参考に書いてございますとおり、「財務報告に係る内部統制が有効である」ということは、当該内部統制に重要な欠陥がないことをいうと定義されていますので、この内部統制報告書上は、有効でないということだけを書いて、重要な欠陥があるということは書かないというやり方でございます。

資料1の2ページ目の方に戻っていただきまして、もう1案としましてマル2の場合ということで、定義や判断基準そのものを見直すとした場合ですが、その場合、用語の変更を含めて定義や判断基準について検討することでどうかということで、その際、「例えば」ということですが、「「重要な欠陥」に代わる用語として」ということで、前回の部会でいただいたご意見も含めまして、例えばaとして「重要な(or著しい)不備」、ないしはbとしまして「重要な(or著しい)弱点」「重要な(or著しい)弱み」ないしは「重要な(or著しい)要改善事項」といったような用語が考えられるのではないかということでございます。

それから、3番目の「論点」でございますが、「「事業規模が小規模」な会社の定義」ということでございまして、前回の部会におきまして、「事業規模が小規模」な会社の定義をしてはどうかというご意見をいただいたところでございます。

この点につきまして、「検討の方向性」でございますけれども、前回の部会でもご意見がございましたとおり、定義を設けることは困難であり、定義は設けないこととしてはどうか。「ただし」ということで、「事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している」、そのあと、現在、「企業等」ということになっているんですが、これを「組織等」ということに修正をして、企業単位で判断するのではなくて、よりきめ細かい対応をすることが可能であるということを明確化してはどうかという方向性でございます。

それから、4番目の「論点」でございますが、「評価手続等に係る記録及び保存の簡素化・明確化」ということで、前回は小規模企業等において使用できる記録等として「メモ」というものが入っていたのですが、右の部会の意見にございますとおり、利用できる証憑として、走り書きのようなものが含まれてしまうのではないかという懸念が指摘されたところでして、本来はメモランダムということでございますので、「メモ」を「覚書」という用語に変えてはどうかという方向性です。

それから、1枚おめくりをいただきまして、5番目の「論点」ですが、「持分法適用会社に係る評価・監査方法の明確化」ということでございます。前回、持分法適用会社については、別に支配会社がある等々で、なかなか本来の内部統制の評価ができないということがあるわけで、それで確認書等の何らかの確認書面の提示を求めるということではどうかという案をお示ししたところですが、右側の上から4行目でございますが、「陳述書のような確認書面のみでは、評価方法として不十分であり、重要な関連会社については、最低限、全社統制、全社的な観点で見る決算プロセスを質問書などで評価すべきではないか」という意見でございます。

「検討の方向性」としましては、前回部会での提案でどうかということでございまして、こちらについては、本来、その親会社が上場会社ということでございますので、その上場会社はそもそも内部統制報告制度が適用されているわけでございますので、全社的な統制を中心として何らかの形で当該会社の内部統制の評価をしているということが考えられるわけでございまして、そちらからの確認書面、その確認書面については、ご意見にありましたような陳述書みたいなものでいいのかどうかという問題点はありますが、そういった何らかの確認書面を入手するということで足りるということです。この考え方は、現在の実施基準の中にも明記されているところでございますので、前回の部会でのご提案ではどうかという方向性にさせていただいております。

それから、6番目の「論点」でございますけれども、「評価対象範囲の絞り込み」ということでございまして、1つ目の項目としまして数値基準を削除するかどうかということがございました。こちらにつきましては、右側ですけれども、大多数のご意見といいましょうか、ほとんどの方のご意見は、数値基準は削除しない方がいいのではないかというご意見だったと思いますので、数値基準は削除しないことではどうかということでございます。

それから、2つ目と3つ目でございますけれども、評価範囲の絞り込みをするということによって事業拠点の評価範囲からの除外は何年間ブランクとして認められるのかと、それから売上高等の一定割合は、結果として概ね3分の2を大幅に下回ることになる可能性もあるけれども、それでもよいのかといったご意見、ご質問がございました。

この点についての方向性でございますけれども、左側に●が4つ書いてありますが、順不同になりますが、一番下をご覧いただきたいと思います。そもそも内部統制の評価範囲の絞り込みができるということにつきましては、全社的な統制がしっかりできているということを前提として、業務プロセスについて絞り込みを認めるということでございますので、前回見ていただいた図では、そこが必ずしも明示されていなかったわけでございますけれども、評価範囲の絞り込みができるのはあくまでも業務プロセスでありまして、全社的な内部統制及び決算財務報告プロセスについては別途であるということを明示してはどうかということでございます。その上で2つ目の●でございますが、「「状況に変化がない」等の要件を満たしていれば、結果として、ブランク期間は2年以上となる場合もあり得るということではどうか」。それから、3つ目の●でございますが、「結果として、2/3を大幅に下回ることになる場合もあることでどうか」という方向性でございます。

それから、1ページおめくりをいただきまして、「7.対象とする統制やサンプリング方法等の緩和」でございます。こちらについては、資料5-3の方の13ページをお開きいただきたいと思います。

監査人が経営者の行った内部統制の評価結果を確認する場合に、一定の場合には、経営者が評価の際に選択したサンプルをそのまま利用することが可能であるということを明記してはどうかという対応案でございました。この点につきまして、前回の部会で、サンプルをそのまま使うということは監査人としてはなかなかできないのではないか、それよりは会社の評価結果を利用するということの方が監査実務のイメージに合うのではないかといったご意見をいただいたところでございます。

このご意見につきましては、今見ていただいています13ページ、それから資料1の4ページの真ん中のところにも同じ部分を抜粋していますけれども、13ページの方が分かりやすいと思いますが、今回追加してはどうかというのが網かけの部分でございます。網掛けの前の部分、「その際」から始まるパラグラフの3行目からを読ませていただきますが、「経営者が抽出したサンプルの妥当性の検討及び経営者による作業結果の一部についての検証を行った上で、経営者が評価において選択したサンプルを自ら選択したサンプルの一部として利用することができる」というのが元々の実施基準の中に明記されていたところでして、すなわち、結果も含めて適切にサンプルを選択しているかどうかということを確認するということは既に求められているわけでございます。

その上で、今回「この結果」ということでございますけれども、「経営者が適切にサンプルを抽出している場合には、経営者が抽出しているサンプル以外に、監査人が自らサンプルを選択する必要がない場合もある」。それから、「監査人は、前年度において、内部統制の評価が良好であった業務プロセスなどについては、業務プロセスの大きな状況の変化などの新たに確認すべき事項がない限り、経営者や内部監査人が抽出したサンプルを積極的に利用するなど効率的な手続の実施に留意する」ということでして、前回のご説明が悪かったのかもしれませんが、基本的な考え方としては、あくまでも経営者が抽出したサンプルをそのまま丸のみするということではなくて、サンプルの選択ですとか、選択した結果を検証した上で、監査人としても利用することができるということであれば利用すると。その結果として、監査人として経営者が選択したサンプルと一致すると。そうすると、監査人として新たに選ぶものがないというような結果もあり得るということを申し上げたかったものでございまして、検討の方向性としましては、基本的には前回部会でのご提案と同様ではどうかということで整理をさせていただいているものでございます。

以上でございます。

○八田部会長

ありがとうございました。

それでは、只今事務局から説明してもらいました資料に基づきまして、論点についてご議論をいただきたいと思いますが、論点の内容等から3つに分けてご意見を伺っていきたいと考えております。

1つ目は、1の「内部統制監査の「レビュー」化の是非」、2つ目は、2の「「重要な欠陥」の用語の見直し」、そして3つ目はその他の論点です。

まず1つ目の「内部統制監査の「レビュー」化の是非」についてですが、平成19年の内部統制の基準・実施基準を策定する当部会でも、監査人による検証のレベルを監査にするのかどうか大激論の末、監査になったという経緯があります。従いまして、当時の経緯や欧州の状況、実務への影響など、内部統制のレビューについての理解が重要であると考えます。

そこで、最初に、当時も委員として審議に参加されていた町田委員から、レビュー制度の前提とEUにおける内部統制報告問題への対応についてご報告をお願いします。よろしくお願いします。

○町田委員

町田でございます。

お手元の資料3をご覧ください。今回の当部会での議論、特に前回の部会でレビュー化の議論がありましたことから、レビュー制度の問題について学術的に、あるいは各国との比較の観点でどのようなことを考えなくてはいけないかということについて私なりにまとめさせていただきました。この資料3に沿ってお話しさせていただきます。

まず初めに、この資料の中身に入る前に私がお話しする前提として、現行の内部統制報告制度に関して私がどういう立場でお話しさせていただくかということを一言申し上げさせていただきたいと思います。

確かに内部統制報告制度に関して導入時期あるいは現在に至っても様々な問題点があるということは、私自身も研究上あるいは実務の方からお話を聞く中で承知しています。ただ一方で、日本では、この制度が入るまで内部統制という概念すら十分に浸透していない状況、あるいは企業の様々な財務報告上の問題が、内部統制が整備されていれば当然に防げたと考えられる問題も含めて多々起こっていたということ、そういったことを考えますと、日本に内部統制を定着させるに当たってこの制度を導入したこと自体は一定の評価ができるのではないかと考えております。そういう立場から、少しこれまでの経緯を振り返りながら、またヨーロッパの状況を踏まえながらお話しさせていただきます。

まず、1の「レビュー制度の前提」ですけれども、アメリカと日本の内部統制報告制度の構造を簡単に比較させていただきたいと思います。

導入当初は多少違いましたけれども、現在アメリカでは、財務諸表監査あるいは財務諸表の作成の範囲ということで、経営者は経営者で内部統制を評価し報告しており、監査人は経営者の評価範囲云々ということとは関係なく、いわゆるダイレクトレポーティングと呼ばれますけれども、直接投資家に対して監査人が報告する業務を行っています。いわば経営者にも監査人と同じ財務諸表監査の範囲で、内部統制の監査に近い作業を求めていると言っていいだろうと思います。

もちろんアメリカでもさまざまな評価手続の緩和策がとられてまいりましたので、適用初年度以降、大幅にコストダウンが図られ、昨年の9月にSECが公表したアンケート調査によりますと、現在では、概ね内部統制報告制度の適用を受けた企業にあっては、内部統制報告制度の実施についてプラスの面で受けとめているという回答であったかと思います。

さて、日本ですけれども、日本では、ご承知のとおり間もなく3月決算企業が有価証券報告書に添付する形で内部統制報告を出すタイミングになります。その段階で当部会で制度の見直しが行われているわけですけれども、日本では、ご承知のとおり、アメリカの初年度の状況を見た上で、アメリカの二の舞は避けるという観点から、内部統制の評価範囲のうち、全社的な内部統制と、連結決算を行う決算財務報告プロセスの中でも連結ベースのところに焦点を当てて、そこだけはしっかりやろうと。しかし、それ以外のその他業務プロセスの部分については大幅な絞込みを行って、例えば売上高で3分の2、あるいはその中でも主要な勘定科目3勘定に至るプロセスを原則として評価対象とするということで、全社的な内部統制が有効であるという前提で大幅な絞り込みを認めているということから、財務諸表監査の前提となる内部統制とは範囲が大分異なっているということが言えると思います。

従って、よく言われることですけれども、既に内部統制をしっかり企業の中で行っている会社、あるいは大規模企業でシステムが完全に構築されている会社にとっては、あまりにも日本の内部統制報告制度は形式的な作業に尽きるということで批判が多いわけです。逆に小さい規模の会社にとっては、まだ内部統制の整備が十分でない段階では、内部統制報告制度に対応するコストは、やはりかなり大きいという面があるということで、当部会でも前回から、中小規模企業における更なる対応策を検討していることかと思います。

ただし、あまり一般には聞こえてまいりませんけれども、監査実務の方から見ますと、内部統制報告制度での評価範囲について、「これでは内部統制の評価とはいえない」というような厳しいご指摘もあるくらいです。そのときに私が申し上げるのは、あくまでも日本の場合は内部統制の重要な部分に絞って、企業に、しかも上場企業に限って、上場企業であれば最低限整備すべき内部統制の定着を促進するためにこの内部統制報告制度は導入されたのだということです。また、そのときの内部統制監査というのは、内部統制報告制度への対応をしっかりやってもらうための裏打ちとして、ある程度強制力を持ってと言ってもいいのかもしれませんが、導入されたものだと、そういうふうに理解しているところです。

いわば日本で内部統制監査が導入されたというのは、経営者評価のところは大幅に絞り込むけれども、検証のレベルとしては、しっかりとした検証を行っていこうということで一定の合意が得られたということが、2005年の12月に公表された財務報告に関する内部統制の基準案の段階の当部会での合意だったのではないかというふうに考えております。

さらに、もう少し振り返りますが、資料3の2番のところですけれども、そもそも内部統制報告制度というのはなぜ導入されたのかということを最近企業の方も、それから監査人の方も今となってはすっかり忘れてしまっているところがあるような気がします。

内部統制報告制度の議論が起きたのは、2004年10月に鉄道会社の不実記載があって、その後、金融庁が有価証券報告書の自主点検を要請して一斉点検を行わせたところ、上場企業の15%に当たる企業が訂正報告を行ったことに端を発しています。その中には、大株主の状況の記載だけではなく、一部、深刻な問題点も報告されたという事実があったわけです。

そして、当時、金融審議会のディスクロージャー・ワーキングなどで議論されたところでは、半期報告にかえて四半期報告制度を導入していこう、あるいは経営者の確認書制度、いわゆる決算宣誓を導入していこうという中で、それまで半年に1回、3カ月かけて決算をやっていたところを、いきなり四半期ごとに45日以内に財務報告をするということは難しいのではないか、ある程度財務報告が企業において自分の力で作成できるような体制がなければならない、ということがあったわけです。また、経営者が決算の適正性を宣誓するに当たって、何も根拠なく、書類にサインだけするというようなことであってはいけないということから、内部統制報告制度が導入されたと記憶しております。

そして、そのときに監査人の検証の水準については、当初、企業会計審議会の総会から内部統制部会に諮問があった際には、まだ監査ともレビューとも限定されておらず、「検証の水準」の検討の諮問があったわけですが、内部統制部会で議論したときには、財務諸表監査と一体のものとして導入を図ることで、少なくとも監査人は効率的に業務を提供することができると。具体的には、共通の手続の中でやっていくからこそ、実務上の混乱を生じることなく証拠の共有化が図れるんだといったことが言われ、検証の水準を監査とすることで合意を得たわけです。当時アメリカでも、財務諸表監査と内部統制監査で別々の証拠を集めるというような問題が起きていましたので、そのことにも鑑みての結論であったのではないかと思います。

さらに、先ほど申し上げました有価証券報告書の不実記載の問題に見られるように、財務報告が必ずしも適正なものとして行われていなかったということ。よく日本では上場企業であっても、監査法人に新しい会計基準のことを聞いたり、あるいは財務報告の間違いを指摘してもらうことに、監査時間のかなりの部分を費しているという状況があり、それを「監査の指導的機能」などといって監査法人におんぶにだっこの状況を肯定するところがあったものですから、上場企業に財務報告の面で一人立ちしてほしい、適正な財務報告を自らの力で作成する体制を整えてほしいということもあって、一定の強制力を持った形の監査という保証の水準が選択されたのだと思います。

さて、レビューの問題ですけれども、現行の監査をやめてレビュー化を図るという場合に、1ページ目に示しましたように、いくつかの前提が必要になります。

第1には、今の内部統制報告の意見書は、監査を行うことをベースとして構築されていますから、レビューにする場合には、まずそれを全面的に改めるとともに、レビューの実施のためのレビュー基準を作っていかなくてはいけません。日本にはすでに「四半期レビュー基準」があるじゃないかとおっしゃる方がいるかもしれませんけれども、四半期レビュー基準というのは、財務諸表監査に依拠する形で巧妙につくられた基準で、日本独特のシステムです。従って、基本的には現行の内部統制報告の枠組みを一度全面的に見直すことになるだろうと考えます。

次に2頁目をご覧ください。では、レビューに変更するとした場合でも、まずレビューについて適切な理解から始めることが必要です。レビューというと何かざっと見る、経営者が作成した内部統制報告書の文字面をざっと見て、それだけでレビュー終了というようにイメージされている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。レビューであっても、一定の評価手続は行われますし、問題点があれば、レビュー報告書に記載されることもあります。監査と異なる主な点としては、レビューの場合は、限定的な手続で、保証の水準も監査ほどには高くないということと、最終的に報告される報告書が、消極的保証といいまして、監査人が見た範囲において何も不適切なものはなかったと、そういう形の報告を行うという点にあるわけです。

現行の内部統制監査も、評価範囲については経営者が提示したものを元に、ある程度の協議を行いますけれども、それを前提に、それ以外のところから何か見つけ出すというシステムにはなっていないわけです。この評価範囲の問題についてよく企業の方から伺うのは、監査人が評価範囲についてあれこれと要求してくるということです。不満に思っておられると。ただ、レビューであってもその評価範囲の問題というのは変わりません。一定の手続が行われるわけです。

この後で持永先生からお話があるかと思いますけれども、レビューになって大きく変わるのは、最終的な意見表明の部分と、運用状況の検討におけるサンプリングの部分ぐらいだろうと思います。逆に、監査人の方々にとってみれば、責任が限定されて嬉しいのではないかとさえ思いますけれども、いずれにせよ、日本では、当初からコスト面でかなりの軽減措置がとられ、またこの2年度目に入ってさらに効率化が図られている中で、その中でレビュー化を図ったとしてもどの程度コストを削減することになるのかは、ちょっと疑問に思えるわけです。

また、よくEUではレビューをやっているじゃないかとおっしゃる方がいるんですが、それは2つの誤解に基づいています。1つは、EUでは財務報告に係る内部統制のレビューをやっているわけではありません。EUではガバナンスに関する報告を行って、それに対するレビューが行われている。内部統制に引きつけて言えば、財務報告という一つの目的ではなくて、内部統制の全部の目的について経営者が報告書を提出し、その全体に対して監査人がレビューをしているわけです。従って、監査人のレビュー範囲は相当に広いわけです。

また、もう1つの誤解は、背景となるガバナンス規制の問題です。日本では、会社法において求めているのは、少なくとも会社法の規定上で明文化されているのは、取締役会において業務の適正を確保する体制について決定しなさい、内部統制の基本方針を決定しなさいということであって、経営者の善管注意義務については明文化されていないものの、当然に経営者の責任に含まれているということで、それ以上の規定は置いていないわけです。ところが、EU諸国においては、内部統制について、例えばアメリカのFCPAと同様に、きちんとした内部統制を整備しなさいという厳格なルールがあったり、あるいはその内部統制によって何か問題事項が起きたときには、大きなペナルティーが規制当局や市場から科せられるといった、内部統制の、あるいはガバナンスのと言ってもいいんでしょうか、厳格な規制がある。EUにおけるガバナンス開示とそのレビューという構造は、少なくとも、そういうガバナンス規制を前提にしているわけです。日本でもしもレビュー化を図るのであれば、私自身は仮にその方向性がとられるとしてもそれならそれでまた議論をすればいいことだとは思いますけれども、EUと同様の方向性をとるというのであれば、内部統制を財務報告に限る必要は全くなく、評価範囲の絞り込みをする必要もなく、企業の評価範囲を広げていただいて、コンプライアンスや資産保全あるいは業務の効率性・有効性を図るための内部統制全般について幅広く整備・運用を図ることを法規によって求めていく。その上でガバナンス報告書を開示していただいて、会社法制と一体的な議論の中でこの問題を解決していくということが順当なあり方ではないかなと思います。

ただし、そういった場合に議論は、いわゆる公開会社法と言われるような議論に結びついていくのかなとも思いますし、また現行の会社法の下でいうならば、それは監査役の役割なのではないかと考えます。監査役は取締役の業務監査を行っており、また内部統制システムの整備状況については、財務報告に限らないものについても意見表明を行っていますので、そうした状況も踏まえて、ここではそのように申し上げたいと考えております。

間もなく2年度目の内部統制報告が3月決算企業から公表されようとする中で、証券取引所は今年度から重要な欠陥等に関する適時開示を行うとのことですけれども、まだ適時開示の例というのはほとんどないようです。さらに言えば、企業の現場では、少なくとも中堅規模以上の企業においては、内部統制の問題というのはもはや終息ぎみで、今やIFRSの問題に関心の焦点は移っていっているのかなと感じられます。そうした段階で、制度の全面的な方向転換をするだけの意義があるのかどうかについては、慎重に議論する必要があるのではないかと思います。

ただし、当部会において、先ほど事務局説明にもありましたが、いまだに形式主義的な手続がある部分については、もう少し弾力的な取扱いができるのではないかと思います。特に中小企業にも利用できるような対応策、もちろんそれは大きな会社においても利用できるということにはなるのだろうと思いますけれども、あくまでも制度の趣旨に則った上でのものであれば、そうした対応策を検討していくことについては、十分にありうるのではないかと思っております。

もちろん制度というのは、導入後、一定の時点で見直すことがあり得るのだろうと思います。そして、内部統制報告制度については、それを中長期的に見直す場合には、現在、有価証券報告書の「コーポレート・ガバナンスの状況」の欄で開示されている一連の事項と合わせて開示することを考えることになるかと思います。それは、今、IASB、国際会計基準審議会などでも議論が始まっているようですが、定性的な情報、いわゆる文章情報による財務報告の議論と重なるものですし、内部統制報告書のレビュー化の議論は、そうした定性的な情報の保証の議論と一体の問題として検討してはどうかとも思います。だとすれば、この問題は、日本におけるIFRSの議論がもう少し落ちついてから考えても十分なのではないかとも思われます。

最後に資料3の2頁目以降のところですが、前回この部会でも高田委員からご質問があり、事務局からご回答があったところですけれども、現在、EUの状況はどうなっているのかということがありましたので、その点も含めてまとめておきました。

そこに示しておりますように、EUについては、2006年の段階でアメリカの内部統制報告制度を受けて、内部統制報告制度をやるかやらないかということを専門家グループに諮問して検討した上で、EU全体の規制としては、内部統制報告制度は導入しないということになりました。しかし内部統制の法規制については各国で進めていき、将来的にはEUの指令などを通じて一定の範囲内で統一化も考えていきましょうということになりました。内部統制については、リスクマネジメントの問題と合わせて、今後検討していくという方向性が出されたわけです。

その中で、ここでは英国とドイツとフランスを挙げていますが、英国については、先ほど申し上げたように、下線の部分ですが、財務報告に限らない全ての内部統制の報告が行われ、そしてそれに対するレビューが行われているということになります。

また、ドイツについては、経営者は内部統制の有効性の評価を求められていないわけですが、ドイツの場合には逆に、監査人の関与について、財務諸表の監査との間で相当程度の統合が図られていて、監査報告書の中で監査人が内部統制についてのコメントをすることが求められています。こうした財務諸表監査に統合していくという方向性も、将来の一つの方向性としてはあり得るかなと私は考えています。

また、フランスについては、経営者による内部統制の有効性の評価は行われていないわけですけれども、かなり詳細な形で内部統制のフレームワークが作られてきており、それに基づいて一定の統一的な視点での内部統制に関する経営者の報告は行われています。また会計監査人も、その報告に関して何か発見事項があった場合には、それを財務諸表監査の報告書の中で記載することが求められています。

まとめますと、第1に、基本的にはEU諸国ではアメリカとは方向性が違って、アメリカは財務諸表特化型ですけれども、EU諸国では財務報告に限らないガバナンス、内部統制全般を対象にした枠組みで報告を行っているということ。

第2に、もしもEU諸国でやっている制度を取り入れていくということであれば、レビューというのは、あくまでもその一部に過ぎないのであって、EUでは、内部統制全般の問題がガバナンスの問題として取扱われていて、厳格な会社法制や、市場への開示とそれによるペナルティーという中で規律づけが行われて、内部統制やガバナンスの遵守状況が担保されているわけです。日本は、制度の導入段階で、財務諸表に特化した形の内部統制を上場企業に浸透させようということで始めた制度であり、その支えとしての監査という水準の保証業務であったと思いますので、ここでもし、そういった監査人の支えを少し軽くするというのであれば、ガバナンス法規の強化などの別な形での支えを考えていく必要があるのではないか、というふうに考えるところです。何でも海外の制度のお楽な部分を見つけて、それだけを集めるような制度というのは、一貫性という点でも、制度を実施する意味という点でも問題があるように思います。

長くなりました。宜しくお願いいたします。

○八田部会長

ありがとうございました。

只今の町田委員のご報告へのご質問は後ほどお伺いさせていただきます。

続きまして、仮に内部統制監査をレビューにした場合に、レビューを行う監査人の立場から実務へどのような影響があるのかという点について、日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会委員長でもいらっしゃる持永委員からご報告をお願いします。

○持永委員

持永でございます。

お手元の資料4に基づきましてご説明をいたします。右下にページが打ってございますけれども、2ページでございます。現状分析としまして、今、町田委員からご説明がございましたけれども、この部会での議論を踏まえた基準の設定、それ以降の金融庁、我々日本公認会計士協会、さらには経団連さん等含めて相談窓口の設置、さらには金融庁からQ&Aが出される等の工夫によりまして、全般的に非常に効果的・効率的な制度の導入が図られたということでございます。

ある意味では3,600社に対して一度に適用したというのが日本でございまして、制度適用に先だって、協会研修の実施、各監査法人における会計士に対する研修は当然として、企業に対するセミナーに加え企業の担当者に対する研修、監査役に対する説明会ですとか、さらには一部では若干誤解もございましたけれども、ツールの提供もさせていただきました。

ただ、オートクチュールみたいなツールの提供はできませんで、プレタポルテとまでは言いませんけれども、ある意味ではアメリカ等の状況を見ながら、できるだけ皆様が噛み砕けるような形で一斉適用に向けて努力するためのツール提供でした。当然、企業の方もプロジェクトチーム等を組まれてやってこられたということでございます。

2つ目の黒ポツですけれども、内部統制報告制度が導入され、2会計期間がこれでもう経過いたしました。間もなくこの22年3月期決算につきましては重要な欠陥等の結果が報告されると思いますが、私が今現状で観察している限りでは、1年目の2%から著しくさらに低減している状況にある、内部統制向上の非常に効果があらわれてきていると思います。

また、表には出ないのですが、監査関与先では、やはりいくつかの企業で複数の不備が指摘されております。ただ、皆様が真摯に対応していただいて期末には大きな不備は残らないような状況でして、これはまた後ほど説明いたします監査にも非常に良好な影響を与えております。

4番目の黒ポツですけれども、この部会で議論されましたように、信頼性を向上するということを目的として議論されてきたわけですけれども、その結果を企業と監査人が力を合わせて運用することによって効果的かつ効率的な監査が行われておりまして、一体的な監査の実施により、全体として外部監査の有効性・効率性の担保につながっていると考えております。

2年目が終わりまして、我々も内部統制の監査がどういうものかというのも分かっておりますし、ただ日本公認会計士協会のレビューですとか、公認会計士・監査審査会等の検査においての評価というのは、まだ今後を待つところがあるわけですけれども、一般的に言いますとリスク分析の深化ですとかIT関連の手続、このあたりが個人的には今後課題になるかなと思っております。

続きまして、3ページでございます。これが一体的に実施される財務諸表監査と内部統制監査のイメージ図になります。

会計期間と監査期間、2、3カ月ずれますので、概念的とお考えください。町田委員の説明にございましたけれども、財務諸表監査を遂行する監査人が、年度末の監査のためにそれぞれの四半期を見て、その情報で年度末の監査の信頼性を向上させていくという理念に基づいて実施してきております。

これに対し内部統制監査は、第1四半期のところから矢印が重なって書いてございますけれども、企業の方と調整しながら監査計画に経営者の内部統制評価をうまく利用できるような形で多くの会社で監査手続が進められてきております。この結果については、我々監査人の一体型の監査報告書として提出しているところでございます。

これに対して4ページ目、では別途に内部統制のレビューをという話で、これはさらに概念的なところでございます。矢印を財務諸表レビューと監査とで離れておりますけれども、期末での内部統制の有効性を言うためには、どうしても監査人の内部統制レビュー手続というのは、期末近くに集中的に実施することになってしまうのかなと考えました。その場合には、当然、経営者が評価された多くの内部統制について、財務諸表監査とは異なる観点からレビューを行って、今、別途配付された韓国の事例等がございますけれども、財務諸表の監査報告書と内部統制のレビュー報告書、これを別途に添付することになろうかと思います。

次が5ページでございます。技術論に入ってまいります。まず、レビュー基準が日本にないという状況においてですが、現行の四半期レビュー基準、さらには国際監査基準等を念頭に置きながら考えられるところで分析をいたしました。

1番でございますけれども、財務数値に関するレビューと内部統制、特にプロセスレベルを考えますと、実施する手続の内容が異ならざるを得ません。何かといいますと、例えば第1クウォーターで前年同期比、例えばこの企業ですと4月から5月は例年、他のクウォーターに比べると売上が伸びない。さらには、前年に比べて今回は景気動向がどうだ、為替動向がどうだという形で、単一の数字で分析ができる財務諸表数値とは異なりまして、内部統制はそれぞれがプロセスということですので、分析的手続の実施がなかなか難しくなるということが考えられます。

2番目でございます。では、レビュー手続の内容ですけれども、当然、経営者が作成する内部統制に関する評価文書の閲覧、質問が予定されます。そして3番目、整備状況や運用状況をどのように確かめるかということですけれども、これは想定されること、さらには韓国における実務等を聞き及んでも、内部統制に関して経営者の評価結果の利用、文書の閲覧、再実施、質問に加え、先ほどお話ししましたプロセスレベルの検証のために、どうしても運用テスト等は一部、やはり実施せざるを得ないというようなところがございます。

また、下に2つ黒ポツがついておりますけれども、確かに運用テストは一部削減できるかなと考えます。レビューによって監査からは保証水準が下がる中、削減の可能性はございます。ただ、経営者が、我々がレビューを実施する前に評価文書等を適切に揃えておいていただきませんと、我々としてはその文書が使えませんので、監査人による追加的な手続が不可避になります。ですから、期中の時点から企業と監査人が一体的に進めている現状、要は非常に効率的に進めている手続が、ある意味でちょっと壊されてしまうというリスクが考えられます。

さらにブレークダウンしまして、専門的な用語で恐縮ですが、6ページでございます。この6ページの図は、実は日本公認会計士協会から協会の会員向けに、監査時間を見積もるときにどのように考えるべきかを示した研究報告をベースにしています。監査人が、監査時間や監査報酬等について交渉する中で監査役様等からも、監査時間の見積もりの詳細を知らせてほしいということがあり、このように項目立てをしてお知らせをしているところでございます。

この中で監査計画、これは状況変化によって変わりますので、監査の最初から最後まで関わってまいります。その企業の固有のリスク、そして次の統制リスク、これが企業の内部統制のリスクの評価ということになります。これに対しまして実証手続ですが、これは期末棚卸しや残高確認とお考えください。そこにレビュー手続や意見形成を別途記載しておりますけれども、これは研究報告と同じ項目立てにしております。

問題は2番目、統制リスクの評価でございますけれども、ここに企業の全社的内部統制の評価、これは監査と内部統制監査ではレベルが異なりますが、元々会社がどのような企業理念を持っておられるかについて、財務諸表監査では理解することが求められていました。そして、IT全般統制、決算・財務報告プロセス、その下に販売サイクル、購買サイクル、製造・在庫管理サイクル、固定資産、財務、給与とございますけれども、この販売サイクルの中に、内部統制でおおむね3分の2をカバーすることとされた、例えばメーカー等における売上、売掛金、さらには1つ飛んだ製造・在庫サイクルの中に棚卸資産が入っております。これが財務諸表監査と内部統制監査とを一体として実施する仕掛けであり、この手続を使って効率的に実施しているということになります。

横に丸を重ねておりますけれども、この統制リスクの評価に際しまして、会社の評価結果を利用することによってその後の実証手続の工数を削減すると同時に、経営者による内部統制の評価を監査人が検証しているところでございます。では、この余った時間をどのように使っているかといいますと、リスクが高い分野に重点配分することによって、結果として重要な虚偽表示リスクを低減しているということでございます。

財務諸表監査の概念の中に「二重責任の原則」があり、財務諸表を作成する責任は経営者にあり、この財務諸表に対して意見を表明するのが監査人の責任という考え方でございますけれども、実は内部統制についても経営者が自社の内部統制を評価して、監査人がそれに基づいて内部統制の評価結果に対する意見、ちょっと概念的な言い方ですけれども、これが実は財務諸表と内部統制とが相まって、結果として、全体として重要な虚偽表示リスクが低減できているということになります。

右側に「内部統制レビュー手続」と書いておりますけれども、先ほど来お話ししていますように、別途行うということですと、この財務諸表監査の統制リスクの評価のために我々は、例えば期中の段階から先ほど見ていただいた販売プロセスに関する内部統制、これを今まで以上に工数をかけて別途実施せざるを得ないということになります。このあたりはリスクとの関係もございますけれども、今ようやく実態的に監査のレベルが深化してきているという中で、それを壊されることが全体としてはどうなのかなと懸念するところであり、個人的には非常に疑問を感じております。

7ページになります。これも会社の状況によって、この棒グラフの形状というのはまちまちになるとは思います。ただ、私の周りの状況を見ましても、当然、監査1年目から監査2年目になって、業務プロセスの評価に際してより会社による評価を利用することになっておりますし、全社的な内部統制についてもすでに質問事項等は完成し、その変更点を中心に検証しておりますし、決算報告プロセスの評価や、さらにはその他として記載しています評価範囲の決定のいずれについても、監査業務としては効率化が進展してきております。

また、今見直しの必要性について議論されておるわけですけれども、制度3年目に向けて、企業による評価結果の利用等の促進により、当然業務プロセス等の評価手続をはじめ一定割合については効率化によって工数が減っていくのかなと考えています。

これに対して一番下のレビューをどうお見せするかというのは難しいんですけれども、今6ページでお話ししたようなことを考えますと、3年目の監査よりはかえって業務プロセス等で評価の対象等が増えてしまう恐れがあるというようなところも、会社の状況によっては考えられるかなと思います。

以上でございます。

○八田部会長

ありがとうございました。

ここで事務局より各国の内部統制報告制度について補足説明があるそうですのでお願いします。

○三井企業開示課長

それでは、前回お配りした資料を前回はあまり説明しておりませんでしたので、今回レビューとの関係に焦点を当てて若干説明をさせていただきたいと思います。なお、前回の配付資料に、若干の補足・修正をしてございます。お手元に番号の振っていない「韓国内部統制レビュー基準 手続に関する記述部分」という、こういう資料がありますので、まずこちらからご覧いただきたいと思います。

なぜかと申しますと、レビューという言葉が実際にこの資料6の中にも出てくるわけですが、後ほどこれはまた説明いたしますけれども、厳密に言いますと、レビューは固有名詞なり名詞で使っておりません。一般動詞、「レビューする」という言葉で使っておりまして、監査に対峙したレビューという意味で実際に使われているのは韓国だけでございます。韓国のこの数枚、4、5枚の紙をご覧いただきたいのですが、このレビュー基準のところ、9.5.2.3というのと9.6.1.3というところでございます。

ポイントでございますけれども、3行目で「このような手続き」ということで手続の中身が書いてございます。役職員に対する質問、それから内部会計管理制度の設計に関連する文書の確認、それから次が経営者との討議、それから追跡調査というのがあります。9.6.1.3も同じでございますけれども、「監査人は経営者が遂行した手続きに依拠するか、必要な場合はこれを確認するために経営者が遂行した手続きを再遂行するか、或いは監査人自身が選択した適切な手続きを遂行することができる。このような手続は」ということで役職員に対する質問とか、あるいはその回答に対する適正性の評価、あるいは観察、オブザーベーションですね。それから、文書の確認、運営過程の観察、応用統制の再遂行、それから経営者との討議ということが書かれております。

これと、先ほどの資料2の監査とレビューの比較の紙をご覧いただきたいのですが、財務諸表は先ほどご説明があったとおりで、例えば売上金が1億円と書いてあると。そうすると、前期が例えば5,000万円で2倍に増えましたと。仮にそういう数値があったとすると、例えば化学工業であれば電気料金とか投入原材料も恐らく2倍に増えているだろうと思われるわけです。分析的手続ですから、投入原材料なり、あるいは電気料金が2倍になっていなくて全然増えていない、むしろマイナス2割だということになってくると合っていないわけでございまして、そこからその売上の2倍というのがおかしいと、非常に低俗なというか、非常にレベルの低い説明で申しわけないのですが、そういったことから、それでは本当に売上が正しいのか売掛金と照らし合わせると。そうすると、売掛金がどんどん増えていたりとか、あるいは売掛金の滞留期間が延びているということ、これも分析的手続の数値比較で出てまいりまして、恐らくその場合には、追加的な手続を実施すると、そういうふうな手順に入るかと思います。

内部統制の場合ですと、そういった売上の数字と何かを比較するという手続ではなくて、その売上自体が正しく記帳されているかどうかということの内部統制になりますので、実際に行っていますのは、例えば売掛金なり売上の伝票、それから出荷の伝票、あるいはそれが相手に運送されている運送の関係のやりとり、そういったいくつかの活動がマッチしているかどうかとか、実際に売上を入力した職員とは別の従業員がチェックしているかどうかとか、そういった事実関係になります。

従って、それについてどうかという場合に、ここにあるように韓国のレビュー基準ではどうなっているかというと、その売上というものをデータにインプットしたら、ちゃんとその数字が正しく財務諸表のアウトプットに出てくるかという手続の再遂行であるとか、あるいは売上を計上した従業員とは別の役職員がそれをチェックしているかという観察とか、こういった諸々の手続があるということで、それはそれで非常によく分かるわけでございますが、ここに書いてあるものというのは実は日本の内部統制の基準などでも言われていることでございます。

また、ご案内のとおり日本ではここのところをかなり簡素化しました。評価範囲を狭めたりとか、この手続については、例えば文書についてはアメリカのような文書化ではなく、新たに文書を作らなくても社内の既存のものでもいいと、こんなことをしているということでございます。従って、この点についてどう考えるかという論点が残っております。

資料6に戻っていただきまして、前回お配りした資料を基本的には踏襲してございますが、先ほども申し上げました若干の補足・修正をしてございます。イギリスにつきましては、3ページと4ページをご覧いただきたいと思います。

冒頭申しましたように、まずこのレビューでございますが、4ページの頭の英文「auditors review each of the following」ということなので、レビューというのが「レビューする」というふうに使われているということであります。

それからもう1つは、その1つ前のページでございますけれども、「board should maintain a sound system of internal control」ということで、ボード自体に、これは「Combined Code」ですから、会社のガバナンスに関する統合規定でございまして、FSAが求めているものでございますけれども、これは取締役会に内部統制システムの維持を義務づけている、そのこと自体を義務づけているということで、これは内部統制をあってもなくても報告するという制度ではなくて、それ自体を義務づけているという義務づけになっているという点が日本と違います。

それから、イギリスではバークレイズについての報告書を例として掲げておりますが、内部統制を含むコーポレート・ガバナンス全体についてかなり詳細な構築を義務づけて、コンバインド・コード自体に例えば独立取締役を初めとする様々な、あるいは内部統制についての規定がございまして、それらの規定の遵守状況をここに書かなければならないということになっています。

詳細に書いています、コーポレート・ガバナンス体制、取締役の独立性あるいはその報酬等々がありまして、ページ数で言いますと25ページのように、このページは、その直前の24ページの「取締役会コーポレート・ガバナンス・指名委員会」の活動ということで、そこが責任を負っているわけですけれども、責任を果たしましたということをここで書いています。日本では、これが有効に機能しているとかいう統制の評価というふうに言われていることに対応する言葉かと思います。

それから、独立監査人の監査報告書というのが32ページにございまして、コンバインド・コードというコーポレート・ガバナンスについての規則を会社が遵守しているかどうかをレビューして、会社の報告書が遵守状況を反映していない場合には報告するということでございます。

それから、フランスは34ページでございます。これも商法においてコーポレート・ガバナンスが義務づけられているものでございまして、その義務づけがあると同時に、それを報告するということになっている。その225-37というのはその報告ということでございます。

36ページでございますけれども、ビー・エヌ・ピー・パリバの報告書の抜粋ですけれども、その根拠規定、商法に加えてフランス通貨金融法典、これは日本の金融商品取引法に相当する法律でございます。初めの方、また例によりまして取締役の独立性から報酬等々がずっと並んでいまして、それから内部統制については65ページから詳細な記述がございます。この記述は、日本とは異なりまして詳細に書かれております。内部統制構築義務そのものがかかっているので、このような記述になっているわけでございます。

その記述をずっと見ていきますと、例えばでございますけれども、75ページでございまして、ここは連結決算プロセスのところでございますけれども、このページの上から7行目、会計データ、例えばということでこういう記述があちこち出てくるわけですけれども、「報告過程の各段階に伴う検証手続は、以下の確認を行おうとするものである」ということで、会計基準が適切に適用されているとか、社内取引とかのグループ内取引の消去とか、記帳が正しく行われているという、こういうことを確認していますということが具体的に書かれてしまっています。

今なぜこういうことを申し上げているかといいますと、具体的に書かれたことが信頼のおける記述であるかどうかを監査人は検証しなければいけないことになっていますので、ここに書かれるということは、この記述が正しいかどうかのチェックが監査人によって入っているという意味でございます。

81ページ、82ページが監査人のレポートでございまして、日本と大きく異なりますのは、非常に具体的に細かく記述された、要するに内部統制の仕組みとかその機能、目標、どうなっている、どうなるべきかということに対して監査人がこの特定情報の検証を行ったということで、書いてあることについておかしいということはありませんと、こういう意味であります。

それから、ドイツが84ページでございます。これは少しフランスとは切り口が変わりまして、財務諸表の一環としてということになっております。この会計報告に関する内部統制システム、それから内部リスクマネジメントシステムの本質的特性を記述しなければならないということで、それに対して次の85ページ、86ページでございますけれども、85ページで、監査人はそれが有効であるかどうかということを評価しなければならないということになっています。

2つ、バイエルという会社と、それからもう1つはメトロという会社の報告書を例として掲載しております。英語ですので割愛しますけれども、例えば89ページ、「Internal control and risk management system」ということで、ここも日本と異なりまして、実際に内部統制についての細かい記述があります。

91ページの冒頭、網かけのところですけれども、「Group Management Board has examined the effectiveness of the internal control system」ということで、内部統制の有効性について「examined」したと、この「examine」とか「examination」という言葉は、監査人が行う手続について一般的に言われている言葉でございます。日本語に訳すと検証ということかと思います。

それから、Management's Statementが次のページにありまして、Auditor's Report、監査報告書は英文が93ページ、和文で94ページにございます。真ん中辺のところに「会計関連の」ということで、これは財務報告関連のところに限定していまして、内部統制の有効性が監査の枠組みの範囲内で試査によって検証されるということが書いていますので、ここは監査のレベルになっています。

そして、1番最後のところ、網かけがなくて恐縮ですけれども、経営報告書、これはコーポレート・ガバナンスのことでございますけれども、「連結財務書類と首尾一貫しており」consistentであるということと「全体として」as a whole「グループの状態の適切な理解を与え、将来起こり得る機会とリスクを適切に表示している」という、こういう記述になっています。

先ほど冒頭にありましたように、監査かレビューかというのを固有名詞として財務諸表のように画然と区別できるかどうかという問題があって、ここでは巧妙に財務諸表においては「audit」と言いつつ、それ以外については「examination」とか「レビューをする」と一般名称にしてみたりとか、そのほかの様々な用語が使われております。

ちなみに、ここのマネジメント・レポートについては、欧州ではこのように監査人が何らかの検証をして、何らかの保証をしていますが、それに対して具体的な監査基準というのが必ずしも国際監査基準上明らかではないということで、財務諸表以外の部分のこの監査というか、証明手続について基準を作るべくIAASBが議論を始めています。IAASB、アイダブリューエーエスビーと呼ばれている国際監査・保証基準審議会の方で議論が行われていまして、仮にこれができますとここの保証手続、要するに監査に相当する検証手続の具体的な内容とそこで求められている水準というものがもう少し国際的に明らかになるということかと思います。

最後にアメリカの資料をつけてございますが、説明は省略させていただきます。

以上でございます。

○八田部会長

ありがとうございました。

それでは、お2人の委員等からのご報告へのご質問を含めまして、1つ目の「内部統制監査の「レビュー」化の是非」についてご意見をお伺いしたいと思います。どなたからでも結構です。どうぞ。

久保田委員、お願いします。

○久保田委員

最初に確認したいんですけれども、今回のこの見直しの視点というか、なぜ見直しするかという議論の中で、内部統制については導入してから数年がたったから見直すということだけなのか、あるいは今現政権が進めている成長戦略の一環として、いかに日本経済をもっと成長させていくかという観点から今、全省庁見直しをしていますよね。そういう流れも入っているのかどうか、そこを確認したいんですけれども。

○三井企業開示課長

両方ともあると思います。第1の視点、内部統制報告制度が導入されて、一定期間、実施状況を見ながら見直すところは見直すと、こういうことを導入当初からお約束していたものでありましたから、当然のことながら、それは見直す必要があると思っております。

2つ目の視点、政府全体として新成長戦略をつくる過程で日本経済全体が成長していくと、こういう視点を日本政府全体として共有しておりますし、当然のことながら金融資本市場も、1つのマネーという意味では成長のドライビングフォースといいますか、血液でございますので、そういう視点を持って取組む必要があると私どもは思っております。

従いまして、内部統制報告制度も、日本経済全体が回っていくということの視点は当然必要だと思います。また、金融商品取引法も、投資者保護と並んで国民経済の健全な発展というのが法の目的に入っておりますので、金商法の目的にも何らそれは齟齬するものではないと思っております。

従いまして、ご指摘のことでありますと、両者とももちろん視点に入れてご議論いただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。

○八田部会長

久保田委員、どうぞ。

○久保田委員

その上での議論なんですけれども、今、町田先生とか、あと持永さんから導入の経緯、それから諸外国との比較、それから仮にレビューとした場合どうなるかということでご説明がございまして、私もこの導入のときから参画していましたので共通認識しているところも多々あります。

確かに導入のときには、町田先生のレポートにありますように、いろいろな企業の財務報告をめぐる不祥事がいろいろありまして、それで産業界としても一定のコストがかかるけれども、こういった内部統制を導入することには賛成ということで、いろいろな反対がある中でそういうことに舵を切って、その際の前提としては、非常にピンポイントで効果のあるように、アメリカの反省の上に立ってスタートして、それなりの設計ができたわけですけれども、そのプロセスの中で実務基準がなかなかできてこなかったとか、いろいろなことがあって、反省を途中で入れなきゃいけなくなって、それが先ほどお話しになったQ&A、それから窓口、これは本来であれば必要なく進めていたものを、途中でいろいろな状況の変化もあったし、それから経済界の中もいろいろ実務家の関与の仕方等、多々反省する部分があって急遽そういう形で修正をかけて、一部、これも八田先生なんか大分旗を振っていただきましたけれども、少し修正できたところもありますけれども、結果的には当初の意図よりは大分コストのかかる制度になったということは事実だと思います。

それから、1年目に入った後は、もう2年目以降なんだから、これは今さら見直しても遅きに失したという、これも私も事実だと思います。ただ、そうはいってもこれから、先ほど町田先生のご指摘のあった、まさにもう1つ我々が頭に置いているのは、IFRSの導入というプロセスを頭に置きつつ、それから全体の成長戦略という観点で、コストとベネフィットという観点からこの内部統制を見直すとすれば、1つはやはり監査人の責任を少し軽くしてあげるということが非常に重要なんじゃないかと。ですから、そのレビューという言葉自体に我々は固執しているわけではなくて、レビューというのは監査人の責任を少し軽くするということであれば、そういう方向で検討してもらったらどうかということでございます。

○八田部会長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

まず、前回欠席したことを、申しわけございません、お詫びいたします。

それから、私、議論の観点として、今まさに久保田委員のおっしゃったコストとベネフィットのバランスを考えるというのは全く賛成でございますが、ただ先ほどの持永先生のご説明を伺っていてちょっと気になりましたのが、レビューということにした場合に、もしかすると経営者の内部統制の評価のプロセスに監査人が実質的に関与することが少なくなってしまうんじゃないかなという印象を持ったんですね。これはぜひ持永先生にもご教示いただきたいと思うのですが、私は、名前はレビューになっても、そういうことになると実質的には、ダイレクトレポーティングを監査人がやるのと余り変わらないことになってしまって、かえって高くつくんじゃないかという感じがいたしました。

また、先ほど久保田委員からございました、監査人の責任をある意味軽減してあげることが重要だという、それはある程度、私、そうだなと賛同するところもあるんですが、監査でもレビューでも、金商法の方ではあくまでも監査人に証明の責任というのが残っているわけで、これは財務諸表の監査と四半期レビューの関係も同じことだと思うんですけれども、レビューになったから監査人が免責されるということにはならないわけですので、そうするとこれを見直すことが本当に企業にとってもいいことなのかなというのをやや疑問に感じた次第でございます。

○手塚委員

手塚でございます。

私も前回欠席をいたしまして大変申しわけございませんでしたけれども、その中でこのレビューの話が出てきたということで、ちょっと驚いたという印象がございます。私がこれからお話しするのは、私、実際に監査の現場も持っておりますので、実際に内部統制監査報告書に署名をしたという立場での感想をこれから披露させていただきたいと思います。

私の経験は、一部上場の会社からジャスダック上場会社まであります。それから、業態も金融機関から一般の事業会社まであります。それから、規模的にも十数兆円の資産を持っている会社から、売上が数十億円の会社まで経験させていただいたという監査経験がございます。

2年目が公表されるのは数週間後ということになりますが、そこでの私の1番大きな印象は、我々監査をやっていますと必ずと言っていいほど修正事項というのが発見されます。皆無ということがまれな場合が多くて、多いところですと十数件の修正事項、いわゆる監査指摘事項というのが出てくる場合もありますけれども、それが今回、内部統制監査がスタートしてからすごく減りました。こういう表現をすると語弊があるので、本当は激減という言葉を使いたいくらいですが、そこまでは言わないにしても、かなり減ったというのが印象なんです。

では、どうして減ったのか、内部統制が有効に機能したからなのか、理由としてはそういうことかと思うんですけれども、やはり僕は意識の問題がすごく強かったのではないかと思っています。

どういうことかというと、内部統制監査導入が始まる前から経営者の方と経営者ディスカッションを少なくとも年1回、多い会社ですと年数回実施し、社長さんから直接お話を聞きます。そこで内部統制監査も当然話題になるわけでございますけれども、結局何が変わったかというと、全社的な内部統制というものに対する対応というんでしょうか、意識というんでしょうか、これが全然変わったということなんですね。要するに、経理だけの問題ではなくて、経理部門もそうだし、総務部門もそうだし、生産現場もそうだし、販売部門もそうだし、全ての人たちがこの問題をとにかく正面玄関から取扱ったということです。

それから、この内部統制については事務負担の問題があります。これは必ずお会いすると負担の問題が口に出るんですけれども、でもやはり全社一丸となってやらないといけないというお言葉を何度も聞きましたし、それで従業員の方の、第一線で事務処理をする人たちまで全社一丸となってという表現が多分1番いいのかもしれませんけれども、この内部統制に対する取組みというものが現実に動いたんです。

結局、統制行為が、今までやっていなかったことを今度やることになったので、こういうミスが少なくなったのかとも思ったんですけれども、そういう効果も多分あるんでしょうけれども、やはり1番大きかったのは意識の問題、内部統制というものに対する意識が全然以前と変わってきたというのが今の状況ではないかと思います。

もう1つ実は懸念材料があります。ケアレスミスの話は今申し上げたとおりですけれども、残念ながら相変わらず不適切な会計処理の事例というのが頻発しております。今まさに新聞等で話題になっている会社が現実にあるわけですね。ちょっと言い方を変えると、これも精神論なんですけれども、確信犯の企業があるのも事実なんです。そういうところに対して内部統制がどこまで有効かというのは、これは非常に大きな課題です。

内部統制基準にも書いてありますように、内部統制の限界という問題がありますけれども、それで片づけられるのかどうか、でも問題が起きてしまうと社会的な信用に対する損失というのが、大変大きな問題として出てきているように思います。こういうものに対してどう対処するかというのはやはり試行錯誤で対応しなければならないかと思っておりますが、私がこのレビュー議論が出てきたというのを聞いたときに1つ懸念したのは、監査からレビューに緩和されたという印象を現場に与えるというのがすごくマイナス効果ではないかなということでした。

先ほど来からお話にありますように、やり方をどう工夫しようか、効率よくやるとか、あるいは負担を軽減するとかというやり方のところでの工夫を今後も継続していく、これはもう既に2年度目から実際に現場で行われていることでもありますし、これが3年目、4年目、続くことによって、その効率化はさらに進むのではないかなと思っております。従って、その負担の問題をもし議論するのであれば、その効率化というのでしょうか、今の制度の枠組みの中でどう効率化できるのかという議論をぜひしていただきたいと思っております。

それと、最後になりますけれども、レビューといったときに、先ほど来のご説明にありますように、日本の場合の内部統制報告・監査制度というのはダイレクトレポーティングではありません。要するに、経営者が評価をするという行為が1つあります。それに対して監査人が監査をするというもう1つのステップがあるわけですね。

では、ここで議論として出てきたことが経営者の評価もレビューになるのかということがあるのかどうかです。経営者の評価もレビュー、監査も監査ではなくてレビューということになると、先ほどの印象の観点からいくと、すごく信頼性水準が落ちてしまうのではないかという印象を与える可能性がある。

では、経営者の評価自体はレビューではなく、現行の制度をそのまま動かすということになると、監査だけレビューということになりますが、監査だけレビューということになると、やはりこれも印象の問題ですけれども、監査よりは信頼性水準が低下するレビューで監査人は対応してくるということになりますので、先ほど来から最初に申し上げました、全社一丸となって少し緊張感を持って内部統制を構築しようという気持ち的な部分に、多分マイナスの効果が出てしまう可能性はあるのではないかということです。私の意見というよりも感想を述べさせていただきました。

以上です。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

最後のこれまでの議論の中で出ているレビューの議論というのは、第三者評価の視点でのレビューということで、企業サイドの議論ではないというふうに理解しております。

ただ、これまで出ておりますように、ヨーロッパの例もそうですけれども、レビューにするかどうかというよりも、もっと会社側の規制が極めて厳格というか、強化されている視点で、第三者評価は少し効率的な方向があるのではないかという流れであると聞いていますので、レビューというレベル感にもよりますけれども、かえって何か企業サイドにおいては負担感が高まるのではないかなという見方もなくはないと思います。

それから、これはすでにご案内のように、アメリカの場合にこの制度が始まるときに404条規定では、会計士が行う第三者評価はレビューに近いアテステーションを行うという規定に条文上なっているんです。それが実際に出来上がったときに基準の中で内部統制監査基準になって、その辺の色分けは十分に行われていないということです。

それともう1つは、私自身、学会でも報告しているんですけれども、日本で用いられている監査という概念のいわゆる幅というか、定義がかなり幅広になっているということです。いわゆる年度監査としての意味と旧来行われていた中間監査としての意味と、それから四半期レビュー、これは先ほど大崎委員のお話しにもありましたけれども、恐らく実務上は全て公認会計士法第2条第1項の監査証明業務なんですね。従って、レビューという言葉に置換えただけで何か大きな流れが変わるのかということよりも、実際に我が国のこの内部統制監査は、かなり実務的に知恵を使って簡素化といいますか、効率化を図った対応をとっているわけで、それを財務諸表の監査と一体的に行うという流れがありますので、十分に経済界のご要請に応えているのではないかというような考えもなくはないと思われますので、一応私の個人的な考えも申し上げました。

では、柴田委員、どうぞ。

○柴田委員

内部統制プロセスを評価しなければいけない対象が日本では欧米に比べて大幅に狭い範囲に限定されており、また直接報告の導入を避けたというところから、「先進国の中では最も低負担な内部統制報告制度」を日本は導入することに成功したと考えています。

新しい制度を導入するには当初の導入コストが一番高く、導入コストとランニング・コストの両方がかかるために当初の負担はかなり大きくなりますが、定着後は導入コストが不要になりますので、ランニング・コストだけになって負担は低くなります。

ここで内部統制報告制度が導入から定着の段階に移り、せっかく負担が低くなりかけている時に、「監査」という言葉を「レビュー」という言葉へ転換することになりますと、また新たな導入コストがかかり、意図とは逆に企業への負担が増大するリスクが発生します。

また日本の財務諸表の対外的な信頼性を保つことは重要でして、そのためには日本の財務諸表の信頼性を支える社会システムの継続性、安定性および高い予測可能性を確保することが大切です。せっかく導入をして定着させつつあるものを、朝令暮改的な形で、根本から変えてしまうということは、日本の財務諸表の対外的な信頼感の確保を妨げることにもなります。

せっかく先進国の中でも最も低負担な内部統制報告制度を作ったわけですから、もちろん久保田委員のおっしゃるとおり、さらに細かい実務上の手当てを加えて効率性を向上させて、社会への負担を極小化するという努力は必要です。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

レビューに関しては皆さんの意見に大体同意しているんですけれども、ヨーロッパの制度の中でレビュー制度は確かにあるんですけれども、先ほど町田委員の方からご報告がありましたように、ヨーロッパの場合にコーポレート・ガバナンスまでカバーして非常に幅広にやっているわけですけれども、日本の場合にやっぱりコーポレート・ガバナンスのルールというのが、ヨーロッパの場合ドイツでもそうですけれども、フランスも非常に細かいルールがあって、独立性に対しての部分というのは、ガバナンスに対する規制が非常に強い部分があるんですけれども、日本の場合にはまだ、そう言ってはいけないんですけれども、いろいろと有価証券報告書とか事業報告書にコーポレート・ガバナンスの体制は出ていますけれども、ルールとしての部分というのはまだ未熟な部分があるのかなという部分もありまして、範囲として今我々が監査人としてやっているのは、財務報告に関係した部分の内部統制を見ているわけですけれども、ヨーロッパ的なところまで広くやった場合に、かなり混乱はまだあるかなという感じがしているところが1つ懸念としてございます。レビューの場合、やっぱりルールがしっかりしていないとレビューというのはできないわけですから、そのルールがなければいけないのかなと思っています。

それから実施基準では、今出ているような数値基準等も含めて、かなり軽減される形での負担軽減の手立てが行われていますので、今でもある意味で言えばレビューと、合意手続みたいなもので決まった手続をやればいいというような感じの数値基準等も入っているのかなというふうに思っていますので、あえてレビューに変えてどれだけ仕事が軽減できるかというところに対しては、やっぱり皆さんと同じようにちょっと疑問を持っているところでございます。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

よろしいですか、事務局は。

では、どうぞ。

○三井企業開示課長

若干事務方として忸怩たるところがあるのは、平成15、16年でしょうか、監査以外の保証についての概念フレームワークのような議論を企業会計審議会でされたことがあると思います。しかし、それは内部統制報告と四半期報告の導入以前に作られた非常に抽象的なものでございます。

実は、このレビューのご提案なりご議論があった際に改めて読み直してみたのですが、若干今となってみると、フレームワークというものを企業会計審議会で提示をしていただいたのですが、かえって議論が今日的には、例えば内部統制を例にとると、混乱させると言うと語弊があるんですが、必ずしもそのフレームワークをもって収束させていくような機能の仕方になっていないのではないかということを感じます。

公認会計士法上は監査証明ということでアシュアランス、何らかの証明をすると。そのアシュアランスをする手続がイグザミネーション、何らかの検証であって、その結果、何らかの保証される水準としていくつかのものがあり得ると、ここまでは恐らくあると思います。

財務諸表についてはオーディット、監査というものが確立しているということでありまして、その年度のオーディットとの関係で四半期についてはレビューという非常に簡素な手続で、年度のオーディットを使いながらできる限り現場に入り込まず、質問と分析で始めると、こういう手続があるというのに対して、内部統制は、先ほどちょっと説明の中で言及いたしましたけれども、チェックする対象が数字ではないものですから、その現場を見ないとどうしても検証にならないという、そういう差がありまして、それについてどの程度の手続を行い、どの程度の保証水準にするのかということが、この保証のフレームワークの中では何も出てきません。

従って、今後の課題としては、実はIAASBでも議論されていますけれども、財務諸表以外の部分についての検証業務というものをどういう手続でどの程度の保証レベルを要求していくのかという議論、すぐには答えが出ないかもしれませんが、いずれかの段階でお考えいただく、あるいは私どもも考えなければいけない時期が来るかもしれないという感じも持ってございます。

それからもう1つ、先ほどの中で、ドイツのように財務報告の一環として内部統制の有効性を判断するというと、監査の枠組みでということで、必ずしも内部統制についての保証水準にははっきりとした記述はないのですが、文章の中には「オーディットのフレームワークで」と書いてあるので、何となくその部分だけは監査の保証水準を言っており、ドイツでも財務諸表に関わらないところは監査ではない、レビューという言葉も使っていない検証を行って何らかの保証をしていると、こういうふうにも読める次第でございまして、そこも私が最初に申し上げました保証のフレームワークというところが国際的にもはっきりしていないというところのような気がいたしております。

○八田部会長

どうもありがとうございました。

では、岩原委員、どうぞ。

○岩原委員

私は会計監査については専門ではないので、誤解があるかと思いますけれども、今の三井課長からのお話を伺いましても、このレビューというのが一体具体的に何をやるのか、特に内部統制についてのレビューというのが何をやるのかというのが、どうもいまひとつイメージが掴めないところがございまして、四半期報告書の方のレビューを導入したときは、私もディスクロージャー・ワーキングと、それとこちらの企業会計審と両方で関与をしましたけれども、あれは有価証券報告書作成のための財務諸表をきちんと実査しているのがあって、それをベースに、その数字を元に、三井課長が実際の例を挙げられましたような形で、レビューという形で四半期ごとに見ていくということで、年1回のきちんとした実査を伴う財務諸表監査があることを前提に、レビュー手続というのがあったのかなという気がするんですけれども、それに対してこちらの方はそういう実査を全く伴わないことになると。つまり、きちんとした実査を伴うチェックなしに単にレビューだけやるということになりそうなので、これは誤解かもしれませんけれども、そういうときに、公認会計士、監査法人の方は一体具体的に何をするのかというのがいまひとつ掴めてこないというのが率直な印象でありまして、それこそ先程ご指摘ございましたように、コーポレート・ガバナンスの仕組みそのものに対する公認会計士、監査法人の方のご意見を言うようなことになる可能性があって、そうなるとこれはむしろ会社法の方のコーポレート・ガバナンスの制度とかわって公認会計士、監査法人の方が行うことになるのか、まさに会社法制の方のコーポレート・ガバナンスの問題と非常にかぶる可能性があり得るのかなと。誤解かもしれませんけれども、ちょっとそういう印象を持ちました。

以上です。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

恐らくヨーロッパの議論はそういった先生のご指摘のとおりだと思いますので、企業サイドからもしそういう声が聞かれるのは、企業で行われた内部統制の一連の整備と運用、そして評価の結果をほとんどそのままざっと確認してもらえれば事足りるのではないかという、多分こういうご要請があったのではないかと思います。しかし、今までのご議論を聞きますと、なかなかそれは説明が十分ではないのではないかというような理解をしていますけれども、他にいかがでしょうか。

久保田委員、何か補足的なご意見ございますでしょうか。

○久保田委員

いや、私の趣旨よりも八田先生が言われた趣旨でございまして、レビュー自体の定義にこだわっているというわけではなくて、これは基本的にはまずCEOが内部統制をきちっと整備して、責任を持って自分のところはそれはできていますということをやる、それが1番重要であって、あとそこについての監査人の監査というか、レビューというか、その辺の評価というのは、もう少し責任が軽くてもいいんではないかと。最終的には、財務報告、財務諸表のまさに虚偽記載のところにつながるかどうかというところが重要であって、その部分はきちっとまた監査もされているわけですし、それから先程手塚さんの方から非常に率直なご感想をいただいて、実態はそういうことかなと思っていますけれども、確信犯がいれば、これはいくら制度を作ってもできないと、もう1つの問題に突き当たっているかなと、そんなことでございます。

ただ他方、前回の企業会計審議会の総会で、産業界サイドからいろいろな意見が出ていましたけれども、やはりこの間のいろいろな四半期、内部統制、それから今度IFRSが入ってくるという中で、企業の経理部門に非常に過重な負担がかかってきているということで、その辺のコスト・ベネフィット、やはりこれは町田先生の中にもありましたけれども、全体の中でもう1回ディスクロージャー制度の見直しというものをぜひやってもらいたいというふうに思います。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

他によろしいでしょうか。

それでは、この1の「内部統制監査の「レビュー」化の是非」についてのご質問、ご意見はこの辺で一応終わらせていただきまして、次の2の「「重要な欠陥」の用語の見直し」についてご議論いただきたいと思います。

見直しの是非もあるのですが、見直すとした場合、資料にもありますように、そもそも「重要な欠陥」の用語が当該企業の外部の関係者から誤解を招くということで見直すべきということなのか、その点を明確にした方が検討の方向性が明確になると思いますので、その点も含めてご意見を伺えればと思います。

それでは、お願いいたします。

では、多賀谷委員、どうぞ。

○多賀谷委員

この「重要な欠陥」という用語につきましてですが、このご要望がどういうところから具体的に誤解があったのかということは個々には分かりませんが、投資家という立場で見ると、常識的に見れば資料にありますマル1の観点から、公表されている内部統制報告書あるいは内部統制監査報告書の表記として誤解があるという面が強いのではないかと思います。

その場合、資料1にありますように、「検討の方向性」として「重要な欠陥」という用語を使用しないようにするという案が出ております。この用語を仮に今の基準から省いたとしても、内部統制が有効でないということは当然表記されるわけですし、またそれがどのような原因によっているかという理由付記もされるというのが今の仕組みになっておりますので、仮にそういうことになったとしても、投資家に対する情報提供が低下するということには余りならないのではないかと思います。

また、もしマル2の方の定義や判断基準の問題だということであるとすると、内部統制制度を最初に導入するときの議論におきましても、この用語について議論があったかと思います。アメリカのような複雑な3区分という形ではなくした1つの理由としては、不備というのはどのような企業にも当然ある程度はある。その中で財務報告を誤らせる、重大な誤りをもたらす可能性があるものに絞り込むというのが趣旨だったかと思います。そこで、表現としても少し確かにきつい表現が使われたのかなというふうに記憶をしております。

としますと、逆に内容的に、あるいは表現としても、軽い表現になるとかえって内部統制の不備について有効でないという判断をする範囲が広がってしまうという議論もあったのではなかったかと思います。

そうなりますと、今、いろいろお話を伺った範囲では、各会社で努力をされて有効でないという判断をする会社がどんどん減っている。また、財務諸表監査にも良い影響を与えているという中で、努力をしても改善がちょっと足りない部分が、より広く有効でないという判断をされるほうに向かってしまうという逆なリアクションになってしまうという可能性もありますので、そういう点も踏まえて検討する必要があるのではないかというふうに考えます。

以上です。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

では、大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

私、「重要な欠陥」という言葉を除くとどういうことが起きるかということについては、今、多賀谷先生がおっしゃったのと似たような観測を抱いておるんですが、私はそれはむしろいいことではないかというふうに思っておりまして、つまり「重要な欠陥」という言葉が何か非常な重大性を感じさせるので、それを書く、あるいは指摘することを躊躇してしまって、結果的に、本来からいえば、内部統制が有効であるとは言えないような状態であっても、あえて「重要な欠陥」を指摘しそびれているようなところがあるんではないかと。別にアメリカと日本との比較だけで物を言うのは余り正しくないとは思うんですけれども、しかし現実にアメリカではかなりのパーセンテージの指摘がされていることが日本には全然ないというのが、本当にそうなのかというのは、投資家からするとむしろ疑問だと思うんですよね。

その意味では、私は、多賀谷先生がおっしゃった、もうちょっと幅広く指摘されてしまうんではないかというのは、それはそれでいいという前提で、そういう方向へ物事を変えていってもいいのではないかなという気がいたします。

○八田部会長

ありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

久保田委員、ご指名させていただきますけれども、そんなふうに開示内容が増えてしまっても企業側はいいんでしょうかね。

○久保田委員

これはちょっと印象としてどうなのかよく分かりませんが、マル1の方だと思いますけれども、なかなかうちもいい訳がなかった。

○八田部会長

町田委員、どうぞ。

○町田委員

今、大崎委員からお話があった点に私も賛成する部分があります。これは昨年、内部統制研究学会という学会と日本公認会計士協会が共同で開催した、内部統制報告制度に関するラウンドテーブルでもお話しさせていただいたことなのですが、内部統制の「重要な欠陥」については、これは別に「重要な欠陥」を報告したからといって何らペナルティーがあるわけではないんですね。

しかしながら、いまだに「重要な欠陥」を報告したら欠陥企業だとか、あるいは社内の内部統制担当者に対して、重要な欠陥を公表することになったらお前の仕事はやったことにならないなどと言って社内的に厳しい見方が強いというような状況もある。最近発売になった本でも、「重要な欠陥」を出さないためのツールとか、そういう宣伝文句のものさえあるようです。

「重要な欠陥」というのは開示していく中で問題点を明らかにして、この問題はもううちの会社としては十分に把握していると、把握しているから大丈夫なんだということを明らかにしていくことで市場の信頼を得ていくというものだったはずなのですが、制度が実施されてからでももう2年間経ちますが、ここまで来てもまだ、そうはいっても「欠陥」は嫌だなということであれば、概念を変えるのも仕方がないんじゃないかと思うようになりました。

逆に、概念を変更することで「重要な欠陥」と呼ばれるものが今後はどんどん開示されていくようになって、ともかく現状はこうなんだということの開示が進むのであれば、そちらの方が良いのではないかと思うのです。先ほど久保田委員からのご意見にもありましたが、企業は要らぬところにコストをかけ過ぎることなく、企業の日常活動の中できちんと内部統制の改善を果たしていくということが重要なわけですから、例えば期末までに人員を大量投下して重要な欠陥を必死になって潰していくとか、そういうことが無駄なコスト負担を強いてしまっているということであれば、概念を変えることによって、内部統制の問題事項が自然な形で開示されるのであれば、そちらの方がより制度の趣旨に沿った適切な内部統制報告実務なのではないかと考えます。

重要な欠陥という用語については、かつて当部会でも議論がありましたけれども、当初、日本でCOSOの内部統制フレームワークが翻訳されたときに当てられた用語を、内部統制の意見書においても踏襲したわけですけれども、現状に鑑みて、それを修正するなり、あるいは報告書ベースで言葉を改めるということも、より一層のディスクロージャーの進展を図るという意味であれば、考えていいのではないかと考えております。

○八田部会長

ありがとうございます。

では、荒谷委員、どうぞ。

○荒谷委員

私も皆様の御意見と同じでありまして、「重要な欠陥」の用語を見直すという意味は、定義ですとか判断基準に問題があるのではなくて、一般投資家にとって無用の誤解を招くことを是正するということにあると思います。

従いまして、1の視点からの見直し案が、資料の2の3ページにイメージとして書かれておりますけれども、評価に関する見直しのイメージで内部統制は有効ではないと判断した、影響を及ぼす可能性が高いため有効ではないと判断したという、この程度であれば一般の投資家にも誤解を招きませんし、それから企業の側から見ても、「重要な欠陥」という用語に過重な反応をせずにディスクロージャーもできるのではないかという気がいたしております。

○八田部会長

ありがとうございます。

では、手塚委員、どうぞ。

○手塚委員

監査人という立場ということで意見を述べさせていただきますが、「重要な欠陥」で今までの議論を聞いていると、「欠陥」という言葉がおもしろくないということのように思えるんですけれども、我々監査現場では「重要」の方が重要なんです。「欠陥」であっても「不備」であっても「弱点」であっても、どうでもいいと言うと語弊があるんですけれども、経営者も監査人も悩むのは、重要なのかどうかというところが1番の悩みなんです。だから、もし議論するのであれば、重要とは何ぞやという議論をしないと、言葉だけで済んでしまうような気がしました。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

では、事務局からお願いします。

○三井企業開示課長

辞書のコピーをお配りしてございます。この趣旨だけ説明させていただきます。

1つ目は、この「重要な欠陥」はアメリカの「material weakness」という言葉の訳語と思っていますので、アメリカ系の辞書から2つとっています。1つがアメリカン・ヘリテージというアメリカで比較的使われている辞書で、「weak」という言葉、5番目で「Lacking the ability to function normally or fully」とあり、こっちに多分近い意味合いかなと思います。

2枚めくっていただきまして、これはコービルドというアメリカ英語の用語例をたくさん入れているものでございまして、1つ興味深いのは、1番とか2番というのはいわゆる普通の「weak」という、「弱い」んですということなんですけれども、8番とか9番とか10番というところに少し興味深い記述がありまして、きちんとガバナンスができていない、コントロールできていないとか、あるいは「industry」とか「government」とか、こういうのがうまく機能していないだけでなく弱々しいという、「firm」というんですか、「fail or collapse」する可能性があるみたいなちょっと脆弱なというふうなニュアンスがあります。

それからもう1つ、これは別の話なのですが、「欠陥」という言葉を日本語で出すと、多くの方は「defect」という英語に訳されてしまいます。金融庁のホームページで、この「重要な欠陥」を「material weakness」と翻訳しているんですが、恐らくそれをご覧いただいて訳していただけている方はほとんどいないと思いまして、「defect」というふうに言うと通常アメリカの訴訟などでは、欠陥があったので賠償金を払えということになります。

「weak」というのは、この裁判で勝ちそうか負けそうかというときに、自分は正しいと思っているけれども、負けそうだというときに使うというのがこの10番のところです。もしかしたら裁判で負けるかもしれないと、こういうふうな意味合いでして、ここから先は勘ぐり過ぎかもしれませんけれども、アメリカでは、そういったことも加味して「defect」ではなく「weak」という言葉を巧妙に使われたのかもしれません。

ちなみに「不備」は「deficiency」でございまして、税金の支払いが足りないとか、そういうときにも使われる言葉でして、日本語に訳すとどれもこれもやや欠陥っぽい訳語が当たっていますけれども、これは追加料金を払えばいいというふうな意味合いの「deficiency」でございます。従って、かなりアメリカでもそこのところは巧妙に考えられた可能性はあります。

保証水準を変えないとしても、この欠陥とか不備とか、あるいは弱点とか弱みとかによってもしかすると心理的な影響はあるかもしれないというふうに、今のような用語例から見ると考えられるかもしれないと思います。

以上です。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

では、大崎委員。

○大崎委員

今の言葉の使い方で思ったのですが、システムの世界では「脆弱性」という言葉が使われていますよね。これはそんなに悪い印象はない言葉かなと思ったんですけれども。

○八田部会長

ありがとうございます。

残り時間も少なくなってまいりましたので、もう1つ用意しておりますその他の論点ということで、残りの論点につきまして一括してご質問、ご意見をお伺いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

すみません、前回私が指摘した事項もいくつかあったんで、資料1の3ページのところの5番目の持分法の適用会社に関する部分ですけれども、一応これは私の意図としては、持分法適用会社の重要な持分法損益がある会社というのは、私どもの法人でも非常に限られておりまして、数はものすごく少ないんですね。

ただ、今、実施基準の中に持分法適用会社が範囲に含まれることがはっきり明示されておりますので、親会社が上場会社である場合といっても、結構海外で資源関係や何かですと親会社が別の国にあって、そこが内部統制に対して監査をやっているかどうかというのは非常に難しい面もありまして、恐らく数としては引っかかっているケースはそんなに多くないんだと思うんです。

ただ、にもかかわらずアメリカでは持分法適用会社は除外されていますので、日本はこれを範囲に含めているけれども、逆に我々からいうと監査手続というのが何をやっていいか非常に悩ましいところがございまして、むしろ技術的な問題でありますから、日本公認会計士協会とか監査人の方で検討した形の方が、ここでこういった形で親会社から何らかの確認書というような形で決めない方がいいんじゃないかというふうに個人的には思うんですけれども。

それと、もう1点、2ページの4のところでございますけれども、これも前回私が、メモというと非常に軽い感じで走り書きも入るんじゃないかという話をしましたけれども、意図としましては、いわゆる正式の帳簿だとか記録ではないものというのも含まれるということだと思っておりますので、その点については全く異論はございません。受注をとったときに電話で受けてメモを書いたとか、それでも十分だと思っているんですけれども、連番にして帳票で綴らなければいけないということはないと思うんですけれども、ただ表現として、メモという表現だけだとちょっと弱いかなということでございますので補足させていただきます。

○八田部会長

どうもありがとうございます。

他にいかがでしょうか。

では、どうぞ、荒谷委員。

○荒谷委員

前回少し意見を述べさせていただいたのですが、3のところの事業規模が小規模な会社の定義について見直しが困難だということはある程度理解しました。そこで、「組織等」と修正をして、きめ細かい対応をすることが可能であることを明確化してはどうかということでございますけれども、この「組織等」とは、具体的にどういう組織等をイメージされているのか、教えていただければと思います。

○八田部会長

では、事務局からご説明します。

○野村企業会計調整官

元々、「組織構造を有している企業等」という形になっていまして、「等」がついていたのですが、その「等」が意味しているところというのが、前回ご意見、ご質問にもございました、事業規模が小規模で、組織構造が簡素な「企業」でなければ、対象企業自体がそういう状況になっていないと駄目なのではないかという誤解を招くおそれがありまして、例えばブランチだとか、場合によっては事業部とか、そういった単位でもこの要件に当てはまっていれば、全体としては非常に大きな企業であっても適用ができるのではないかという趣旨でございまして、「組織等」という形にさせていただいてはどうかということでございます。

○八田部会長

他によろしいでしょうか。

それでは、終了の時間が近づいてまいりましたので、この辺で本日いただきましたご意見を踏まえ、事務局も交えて論点と検討の方向性を今後整理させていただきたいと考えております。

なお、本日ご発言できなかった点やお気づきの点がございましたら、事務局にご連絡いただきますようお願いいたします。

今後のスケジュール等につきまして、事務局から説明してください。

○三井企業開示課長

恐縮ですが、改めて調整の上ご連絡させていただきたいと存じます。

○八田部会長

ありがとうございます。

それでは、これにて閉会とさせていただきます。お忙しいところご参集いただきまして大変ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

サイトマップ

ページの先頭に戻る