企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成23年10月17日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成23年10月17日

○安藤会長

ただいまより企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様にはご多忙のところご参集いただき、まことにありがとうございます。

まず、会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様、本日の総会も企業会計審議会の議事規則にのっとり、会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

それでは、そのように取り扱わせていただきます。

本日の合同会議には、自見金融担当大臣にご出席いただいております。最初に自見大臣よりごあいさつをいただきたいと存じます。

○自見大臣

おはようございます。週の初めの月曜日ですね。大変、ある意味でお忙しいときでございますが、ほんとうに各界を代表するそれぞれの方々がこれほどたくさん審議会に金融庁にお集まりいただきまして、所掌大臣として心からお礼を申し上げる次第でございます。

それでは、一言ごあいさつをさせていただきます。

金融担当大臣の自見庄三郎でございます。企業会計審議会総会及び企画調整部会合同会議の開催に当たり、ごあいさつを申し上げます。委員の皆様には格段なご協力をいただきまして、改めて厚くお礼を申し上げます。前回、前々回の本合同会議では、私自身、各委員の皆様方から多様なご意見をお伺いすることができました。大変ありがとうございます。

本合同会議では引き続き国際会計基準についての議論を行ってまいりますが、今回からは前回の会合でお示しした検討項目に沿って順次議論、討論をお願いしたいと考えております。その検討に当たりましては、前回も申し上げましたが、内外の諸情勢が大きく変化する中で、我が国の国益を踏まえ、戦略的思考、グランドデザインを形成することが重要であると考えております。私も今月の3日から4泊プラス2泊機中泊という大変強行軍でございましたが、今、金融情勢、経済情勢が大変不安定な欧州、ヨーロッパに出張させていただきました。キング・イングランド銀行の総裁、あるいはロード・ターナー英国FSA会長と、またドイツ連銀の副総裁等にもお会いをいたしましたが、同時にIASBのフーガーホースト議長や、フランスのハース国家会計基準庁長官とも面談してまいりました。この出張を通じて、IFRSを既に導入している各国においても、国内においてはさまざまな意見があり、各国においてさまざまな工夫をしていることなどを再認識いたしました。今後はさらに諸外国の状況を把握するために、海外視察を実施するなど、国際的な実態、現実に即した検討を慎重に進めていく必要があると考えています。

委員の皆様におかれましては、さまざまな立場から自由かつ活発なご意見をいただくことを重ねてお願いをいたしまして、簡単ではございますが、私のあいさつとさせていただきます。

それから、大変恐縮でございますが、私は政治家の末席に座る者として、やはり国のかじ取りをさせていただく人間として、やはり大きな鳥の目と虫の目が必要だというふうに思っております。私も大臣をさせていただく前から、大体1年に一遍はワシントン、ニューヨーク、北京は大体、与野党の時代問わず訪問をさせていただいた人間でございます。今回、まさに今、一番大事な東日本大震災からの復旧復興でございます。これ、大変大きい数字かと思いますけれども、50年後に東日本大震災のどういうことを金融庁はしたんだと。例えば関東大震災でも日本はどういう金融政策をしたんだということが、今は皆さん方よく御存じでございますが、金融機能強化法を初め、いろいろな考え得る最大限の政策をさせていただいたつもりでございますけれども、まだまだおしかりもいただいておりますし、また、後世の方々からおしかりもいただくかもしれん。私はもともと本職、研究者でございますから、こういったことをきちっとして、できるだけの記録として、これはもう国会図書館にも残りますから、50年後にも100年後にも残るわけでございますから、そういった意味できょうは先生方のような識者の方に僣越でございますけれども、これをお配りさせていただいた次第でございます。

また、鳥の目、これは日本の経済のグローバル化の中で、日本だけでは、一国では生きていかれないわけでございます。しかし、グローバル化といいましても、それぞれの国、あるいは地域が抱えている、やはり歴史、伝統、文化というものがあるわけでございますから、その上に乗った人間の営みでございますから、そういった鳥の目も決して忘れることがないということで、今度もヨーロッパの経済情勢、金融情勢に直接影響を与える多くの方々の目を見、声を聞き、いろいろなお話を聞かせていただいたところでございます。

大変余談になりますけれども、皆様方もそういったご努力はしておられると思うわけでございますが、その集められたご努力、ご経験、ご見識をしっかりこの審議会に集めていただければ、担当大臣としてありがたいなと、こう思うわけでございます。

日ごろのご指導に心から感謝を申しまして、あいさつにかえさせていただきます。ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、審議に入ります。

前回の合同会議、これは8月25日に開催いたしました。そこでは当審議会における「今後の議論・検討の進め方(案)」につきまして、委員の方々からご意見を伺いました。その結果、検討が必要であると考えられる主要な項目を順次、検討していくことでおおむねご了解をいただいたものと考えております。

つきましては、本日はそのうち、「我が国の会計基準・開示制度全体のあり方」、それと「諸外国の情勢・外交方針と国際要請の分析」につきましてご審議をお願いできればと思います。この2つの検討事項につきましては、討議資料1、それから討議資料2に基づいてご審議をいただければと存じます。

それでは、まず、討議資料1に関しまして事務局から説明をしていただきます。

○栗田企業開示課長

企業開示課長の栗田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

お手元に2点、資料を用意させていただいております。ご確認いただければと存じます。1点は、縦の紙で、「国際会計基準(IFRS)に係る討議資料(1)」という表題のものでございます。もう1点は横の紙で「参考資料」と大きく書いてあるものでございます。以上の2つの資料に基づいてご説明をさせていただきたいと存じます。

まず、縦のほうの紙をごらんいただきたいと存じます。これは、今回の討議に当たって、事実関係の整理のためにまとめたものでございます。1ページ目はこれまでの国際的な動きを時系列で追った資料でございます。2001年以降、IASBとFASBのノーウォーク合意、それからASBJとIASBの東京合意など、コンバージェンスの流れがあった後に、米国SECがコンセプトリリースを発表するなど、一時、アドプションという動きが出てきたというようなところでございました。それが2008年11月の米国SECのロードマップ案、それから2009年6月の企業会計審議会の中間報告というふうな流れになってきたと認識しております。

2ページ目に行っていただきまして、その後、2008年9月にリーマンブラザーズの破綻がございまして、世界的な金融危機が発生いたしました。この結果、世界的に経済が非常に悪化し、金融規制の見直しということが大きなテーマになってきたということでございます。こうした中で、見方はいろいろあるかと存じますけれども、各国のIFRSに対する状況にも幾分変化が出てきたというふうに考えております。特に、米国におきましては、2ページ目の下のほうに書かせていただいておりますけれども、2010年2月、2011年5月と、相次いで発表がございました。2011年5月のSECのワークプラン、これはまだスタッフペーパーという段階ではございますけれども、そこでは米国はIFRSの導入、この場合、incorporationという言い方をしておりますけれども、その手法として米国基準を維持して一定期間、例えば5年から7年の間で、IFRSの規定を順次盛り込んでいく。それから、その過程において、まれな状況において、IFRSからの修正を行うことがある。最終的には米国会計基準に準拠していればIFRSに準拠しているというように言えるようにするというようなプランを公表しておるところでございます。

それから、もう1ページめくっていただきまして3ページ目でございますが、ヨーロッパでは2005年からヘッジ会計をカーブアウトしたIFRSを規制市場に上場する企業の連結財務諸表に義務づけておるところでございます。連結と単体の関係につきましては、各国に任せられておるわけでございますけれども、例えば、仏・独では単体はそれぞれ自国基準での作成が義務づけられているということでございます。

ヨーロッパの場合、ちょっと事情が複雑なのは、規制市場と非規制市場という2つの枠組みが欧州の市場統合との関係で存在しております。この点について参考資料のほうを見ていただきますと、参考資料の1ページには、定義みたいなものを書かせていただいております。規制市場というのは、欧州共通の投資者保護とか情報開示とか業者・市場規制というルールが適用される市場でございまして、会計基準の適用に関しましては、IFRSを適用するということになっております。それから、非規制市場というのは、各国が独自に設定していいというふうに定められている市場でございまして、各国がそれぞれの規則を作成するということが基本になっております。

2ページ、3ページ、4ページはそれぞれイギリス、フランス、ドイツの規制市場と非規制市場がどうなっておるかということを簡単にまとめたものでございますけれども、規制市場は概して言えば大企業、中堅企業が上場している市場で、非規制市場はどちらかというと比較的規模の小さい企業、あるいは新興企業が上場している市場になっております。その数はこの横表にも、縦の紙の注にも入れさせていただいておりますけれども、大体、イギリスで1,000余り、フランスで500余り、ドイツで600余りの企業が規制市場に上場しているということでございます。

それから、5ページには、我が国と欧州との市場構造の比較をつけさせていただいております。もともと成り立ちが違う市場なので、比べることにやや無理もあるのですけれども、あえて比較すると、こういうイメージになります。これはあくまでも概念図でありまして、絵の大きさが上場企業の数とか時価総額とかというものをあらわしているものではありません。欧州で言うところの規制市場にほぼ該当するというのが、日本で言えば金商法に基づいた規制がなされております取引所金融商品市場、それから現在は存在しておりませんけれども、店頭売買有価証券市場がこれに当たるのではないか。それから、自主規制ルールによって運営されております、日本で言えばグリーンシート市場、それからTOKIOAIMというようなものが欧州で言うところの非規制市場に相当するものではないか。あくまでこれは違う市場をあえて比べてみればこういう形になるというものでございます。

縦のほうの紙に戻っていただきまして、3ページ目のカナダ以降、各国の現在の国際会計基準に関する状況をまとめさせていただいております。

カナダでは2011年から上場企業に国際会計基準での開示が義務づけられております。ただし、SECに登録している企業については米国基準が適用できるというということになっております。

それから、オーストラリアでは既に2005年から上場企業には国際会計基準での開示が義務づけられておりますけれども、一部の上場企業がIFRSには定められていないような財務数値、例えば修正利益というようなものをあわせて開示しているという状況があるようでございます。この点につきまして証券規制当局が2011年3月に、会計基準に定めのない財務情報の提供を制限するというような規制案を公表しておりまして、今それのパブリックコメントが終わって、最終的にどうするかという段階に来ているというふうに承知しております。

それから、韓国では2011年、今年から上場企業にIFRSでの開示が義務づけられております。韓国でIFRSの適用に伴ってどのような影響が生じているかというところは、まだ始まったばかりで十分な情報が得られておりませんけれども、このような点につきましては、でき得れば海外視察などできちんと調査をしてまいりたいと考えております。

それから、中国では今年中にIFRSとのコンバージェンスを行うということになっておりますけれども、今のところ、まだコンバージェンスされた新たな会計基準というものは公表されておりませんので、具体的にどのような形になるかというのは、注目に値するところだと考えております。

それから、インドでございますけれども、こちらのほうは、農業とか金融商品など、幾つかの項目についてカーブアウトしたInd-ASという基準を2011年から義務づけようとしておりましたけれども、現在のところ、これは延期されております。その理由は基本的には税法との調整がうまくいっていないということだと言われております。

それから、香港、シンガポールはちょっと飛ばしていただきまして、日本でございますけれども、日本ではこれまでIFRSとのコンバージェンスとIFRSの任意適用の組み合わせでやってきたということでございます。

このように、各国の国際会計基準に関する状況というのは様々でございまして、これもいろいろな区別の仕方、分類の仕方があろうかと思いますけれども、とりあえず参考資料の6ページにまとめた資料をつけさせていただいております。この資料は幾つかの基準に基づいて分けさせていただいておりまして、一つ目は、IFRSそのものを適用するのか、それとも一たん自国基準に取り込む形でやるのかという分け方でございます。

それから、2番目は、IFRSを適用するなり自国基準に取り込む際に、丸々のIFRSを適用するのか、それとも一部の基準について除外するとか修正するとか、そういう手続を行っているのかということでございます。

それから、3番目は、その基準を入れていく際に、一気に入れていくのか、それとも徐々に取り込んでいくのかというようなやり方の差があるかと思います。

分類の仕方はいろいろあろうかと思いますが、一応ここではこういう3つの視点に基づいて分類した資料を用意させていただいております。これを見ていただきますと、各国、やり方はかなりばらついておりまして、何か一つのオーソドックスなパターンがあるというものではないと考えられます。

それから、縦の紙に戻っていただきまして、4ページの一番下のところ、IASBの活動に対する各国・地域の取り組み等ということでございますが、この点はもう少し露骨な言い方をしますと、各国ともIASBに対して影響力を行使しようとしている。自国にできるだけ有利な基準になるように、それぞれ働きかけをしているというのが現実でございますけれども、その取り組みについて幾つか紹介させていただいています。

例えば、米国ではFASBがIASBとMOUを締結して、基準策定作業を行っているということでございます。

それから、欧州は飛ばしていただきまして日本でございますけれども、日本ではこれまで、例えばASBJとIASBの定期協議の開催、それからアジア・オセアニアという視点ではAOSSGという組織がありまして、これに基づいて地域として意見交換を行い、さらに来年には東京にサテライトオフィスを誘致して、ここから意見発信をしようという取り組みを行っております。それから、さらに、日中韓の3カ国会議ですとか、日印ダイアログというような、バイに近いような形の協議も行っていくという形で、国際的な基準策定への発信などを行っているということでございます。

それから、新興経済国でございますけれども、これは前回の会議でもご説明をさせていただきましたけれども、中国が主導して新興経済グループをIASBの中に設置したということでございます。

それから、これはちょっと違う視点でございますが、資本市場の規制当局としては、IASBをモニタリングするためのモニタリングボードというものをつくって、そのガバナンスを監視しているということでございます。ちなみに、このモニタリングボードの暫定議長は、今、日本の河野金融国際政策審議官が務めております。それからこのガバナンスを見直すためのワーキンググループの議長も同じく河野が務めているというような状況でございます。

以上が大まかな事実関係、事実認識でございますが、それに基づきまして本日議論していただきたい論点として、四角の中に6つ書かせていただいております。ちょっと読ませていただきますと、1つ目は、金融危機以降、世界の金融・経済情勢が大きく変化する中において、会計基準のあり方を議論するに際して留意すべきことは何か。

2、国際会計基準の適用等に係る各国の対応はその国情を踏まえ様々である。こうした中、我が国における会計基準のあり方については、各国の状況も見つつ、さまざまな選択肢を考慮し、戦略的に検討を進める必要があると考えられるがどうか。

3、各国・地域において、IASBの活動に対するさまざまな取り組みが行われている中で、我が国のこれまでの取り組みをどのように評価するか。今後どのような戦略をとるべきと考えるか。また、その際、アジア太平洋地域の各国との連携、日米欧の三極における我が国の地位を確保するための戦略等についてどう考えるか。

4、我が国の戦略を実行していくに当たって、基準設定主体、作成者、利用者、監査人、取引所、規制当局等の利害関係者に求められる役割は何か。

5、今後予定している海外視察において、追加調査が必要と考えられる事項はあるか。

6、その他、国際的な動向等について、論点とすべき事項は何か。

私からの説明は以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、委員の皆様からご意見を伺ってまいりたいと存じます。ただいまの事務局から説明のありました討議資料(1)の6ページ、「ご議論をいただきたい論点」を中心にご意見をお願いいたします。また、事務局の説明に対する御質問がございましたら、あわせてお願いいたします。

なお、本日ご欠席の永井委員から事前に意見をご提出いただいておりまして、席上に配付させていただいておりますので、ご参照ください。

それでは、ご意見のある方は挙手をいただければと存じます。廣瀬委員、どうぞ。

○廣瀬委員

ありがとうございます。

現在、経団連におきましては、5月に新設いたしました企業会計委員会のもとで企画部会を発足させ、9月から活動を開始いたしているところでございます。企画部会におきましては、幅広い業種から意見を集約するため、8月の審議会でご紹介のありました、現時点で検討が必要であると考えられる主な項目や、あるいはIFRSの各基準の中で特に問題となる項目についてのアンケート調査を実施しており、当該結果を取りまとめる11月ごろから審議を本格化させる予定でございます。先般ようやく締め切ったところでございますが、このアンケートの取りまとめについては、後日改めて経団連としてご紹介を申し上げたいと思っています。

本日は、先ほどお話がありましたように、我が国の会計基準の基本的なあり方を議論するに際して、せっかくの機会でございますので、作成者の立場から昨今、経済界で話題となっている課題等についてご参考に申し上げたいと思います。したがって、これから申し上げますことは経団連として、まだまとまった意見として提言するものではございませんので、その点、ご承知おきをいただきたいと思います。

まず最初に、金融のグローバル化が一段と進む中で、日本は先進経済大国として高品質かつ国際的に統一された会計基準の設定について、これまでも可能な限り努力いたしてまいりましたけれども、今後とも真摯に取り組み、世界に貢献していく日本の姿勢を明確にすることが重要であると考えております。一方で、我が国ではこれまでの経済発展の原動力でありましたゴーイングコンサーンを前提とする長期的な視点に立って事業経営を行うという優れた経営慣行があり、会計基準設定に当たっては可能な限りこれらの利点を生かし、国益に十分配慮していくことが重要であると考えます。

ご承知のとおり、日本の会計基準については1990年代後半以降、今日に至るまでIFRSの相当数の項目の中で、受け入れ可能な基準につきましては、コンバージェンスを進めてきた結果、現行の日本の会計基準は、EUからIFRSにほぼ同等と評価される水準にまで近づいているのが事実でございます。米国は、先ほどもご紹介がありましたように、本年5月にSECのスタッフペーパーにて自国基準の堅持の方針を明確に打ち出していることから、我が国経済界の中におきましても、既に相当レベルまでのコンバージェンスされた現行の日本会計基準を、自国基準として今後とも尊重していくべきだという考え方をお持ちの方もいらっしゃるのが事実でございます。

ところで、日本は米国に先駆けて、既に2010年3月期からIFRSの任意適用を実施いたしております。すなわち、連結財務諸表に任意適用が認められている指定国際会計基準がそれでございまして、日本としては、日本の会計基準として基本的に自国基準を堅持するとともに、IFRS国際対応については、連結財務諸表に適用される指定国際会計基準制度をうまく活用し、また、場合によっては、今後カーブアウトすることもあり得るという含みを持った形で、指定国際会計基準との二本立てで進めることが現実的ではないかと、こういう意見をお持ちの方もいらっしゃいます。

したがって、もしそういうことになれば、今後の日本におけるIFRS国際対応は、まず連結財務諸表に限って議論を進めることが妥当ではないかと思います。IFRS国際対応の適用範囲については、世界の金融経済情勢が大きく変化する中におきまして、当面、日本は任意適用会社の拡大に向け、普及活動を充実させ、その後の普及状況を注視しつつ、段階を踏みながら国内上場会社3,600社のすべてではなく、例えば数百社程度、これは先ほどのご説明がありましたドイツ600社、フランス500社、あるいはイギリス、ロンドンが1,000社、こういうところも頭に置きながら、数百社程度の上場会社に絞った形での強制摘要の是非を検討する選択肢もあるのではないかと、こういう意見もあるのが事実でございます。もちろん、今申し上げましたことは、あえて申しますが、経団連としてまとめたものではございません。

なお、企業側といたしましても、このグローバル化の時代に会計基準に関するトップマネジメントの理解を深め、経営のグローバル化の進展に対応した国際的な会計人材の一層の育成強化を図っていくべきだと考えております。

最後に、我が国へのIFRS適用についての是非の判断や、さらなるコンバージェンスを検討していく上で、IASBの国際会計基準の設定に対して、これまで以上に強く意見発信をしていくことが重要であると考えます。日本は既に、先ほどもご紹介がありましたように、IFRS財団に理事等のメンバーを派遣しておりますが、今後ともこの体制を強化していくべきであると思います。現在、IASBでは、今後3年間の作業計画を設定する上で、アジェンダ協議2011を公表いたしまして、その戦略的方向性や個々のプロジェクトまたはアジェンダ領域に関して広く意見募集を行っており、11月締め切りと伺っております。日本としては、このような機会を有効に活用し、我が国の優れた経営実務や慣行を生かした、すなわち、国益や国情を十分に踏まえた会計の考え方をIFRSに適切に反映されるよう、IASBに対して、我が国の会計基準関係者が個々にやるのではなく、一丸となって強く意見発信をしていくことが必要であると思います。

最初で恐縮でございますが、以上でございます。ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。

斉藤惇委員、どうぞ。

○斉藤(惇)委員

東京証券取引所、つまり、取引所という立場からもう一度、レビューをさせていただきたいと思うんですけれども、IFRSの特徴は、情報の伝達性に重点が置かれているものであるということは、皆さん、シェアしていただいていると思うんですね。その討議の過程で、いわゆる税や配当の問題とのコンフリクトみたいな状況が話題になりまして、連単の問題が出てきたと思っております。我々は東証としての立場として、あくまでも情報というところに焦点を置かせていただくということで、ドイツやフランス等に見られるように、配当や、あるいは税額の確定問題については個別の自国ルールを適用している国が多々でありますので、ここを会計と強制的に一致させることからスタートさせるというような考えは別に入れる必要はないのではないかと思っております。

ただ、我々東証としては、海外の企業が東京でファイナンスをする、あるいは、日本の企業の皆様方が海外に名を成しに出ていかれる中で、大手はともかくとして、中堅以下の企業では、実は非常に現場でのファイナンスにお困りであります。現地市場におけるファイナンスとか、あるいは日本において急きょファイナンスをするということが非常に難しい状況になってきている。日本の企業の国際競争力のバックにあるリスク資本の調達という難しい問題に既にぶつかってきておられるということであります。数字的に見ても、15年ほど前、東京市場は21%ぐらい世界での時価総額のシェアを持っておりました。それが今、何とわずか6%に縮小しております。そして、これに対抗しまして、アメリカとかあたりはまだ大体同じ数字を保っているのですが、やはり中国や発展途上国、ブラジル等々を中心とする国の時価総額のシェアがじりじりと上がってきている。我々は今、ロンドンと並んで、だんだん落ちていっている状況であります。

FASBとIFRSの混乱の問題が出て、アメリカの対応が話題になっておりますけれども、先生方がたくさんいらっしゃるところで釈迦に説法ですけれども、まさしくこのIFRSはアメリカのP&L会計に対するチャレンジですから、アメリカがそうはやすやすとこういうものを入れて、自分たちのUSGAAPをギブアップするはずがないと。それにもかかわらず、彼らが5年から7年と言いながらも、結局は自分たちのUSGAAPは実はIFRSと同等である、あるいはそのものであると言うための準備に入っているということは、彼らはやはり自分たちのP&L会計だけでは、今回のバブルでも、もう何回も戦後、アメリカは同じようなバブル経済を繰り返しているわけですけれども、その背景にP&L会計が私はあると思います。

我々日本は大陸会計でスタートしたんだと思いますけれども、いつのまにかバランスシートというもののバリューというよりも、タームトゥータームの利益の最大化というような経営をやって、そして今、世界がこの問題にぶつかってきている。しかし、ヨーロッパはIFRSを入れながらもマークトゥーマーケットを金融機関においてカーブアウトしているというか、やっていないというところで、マークトゥーマーケットに一番厳しいアメリカのガイトナーが乗り込んでいって、パリで叫んだのが現在の事実だと思います。ヨーロッパの銀行はほとんど今、アセットのマークトゥーマーケットをやれない。やったら大変なことになるという、それに対してアメリカの学者たちは、やってみろと。徹底的にフランスの銀行のバリューを見せてみろと。それなくてどうしてこの危機に対応できるのかということを言っている。つまり、P&Lを中心とするマークトゥーマーケット対バランスシートをベースとする大陸会計との中で、今、世界的なコンフリクトが起きており、今日の金融危機の対処方法として、とうとうアメリカがいらだって乗り込んでいったというのが今の姿だと思います。

そういう意味では、我々はパリというか、G20のメンバー国と私も先週ずっと話してきましたけれども、彼らは徹底的にこういう透明性を求めて先進国が必ず隠しているであろうものを暴き出していきたいという姿勢を出しておりました。そういうことから見て、私は、日本は連結優先でやっていくというか、連結だけでまず入るということでいいのではないかというふうに思います。しかも、それを、今、廣瀬さんのほうから話がありましたように、ある程度の限定された企業、それもしかし相当比率的には高いものでなければいけない。例えば時価総額などで全体が80%、90%を占めるような比重のものをある程度認定して、連結に限って義務をつけていくと。もっとも時間につきましては、先般、大臣からもご指摘があったように、何もすぐに一気にということではなくて、様子を見ながらやっていくということでいいと思います。

今、お話があったように、我々が知りたいのはというか、自分で勉強しなければいけないのかもしれませんが、FASB、アメリカはIFRSのどういうところを問題として反対しているのかという情報を十分我々は持っていないと思うんです。アメリカは反対している、アメリカはなかなか乗らない、自分たちでやっているという言葉だけが出ますけれども、具体的にUSGAAPのどことIFRSのどことでぶつかっていて、それを彼らはどう調整しようとしているのかということが論議になっていないことが一つ。

それから、私も、日本のこのゴーイングコンサーン的な経営というのは非常に立派だと思います。世界に誇っていいと思います。むしろ私も世界ではそういうことを言って歩いております。しかし、ゴーイングコンサーンバリューをよしとする日本の会計と、IFRSのどこが矛盾を起こしていて、じゃあIFRSをどういうふうにしたら、IFRSもゴーイングコンサーンバリュー会計になるのかどうかというような、もう少ししっかりした論理を展開しなければいけないというふうに思います。IFRSの自国への取り込み方式でも決して悪いとは思いませんが、自国に取り込んでそれが独特で世界的に使われないというものであったら何の意味もないということでありまして、先ほどの資料の6ページに、自国基準にIFRSを取り込むという国がたくさんありますけれども、これはみんなその後、国際的に共有されるようになっております。自国に取り込んだ結果、孤立しているということではありません。そこのところをしっかり我々は具体論をもう少し詰めていく段階に来ているのではないかと思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

佐藤でございます。幾つかご意見を申し上げたいと思います。

まず、資料の確認でございます。参考資料ですが、5ページ目に概念図が取り上げられておりますが、先ほど栗田課長も多少無理があるというようなことを言われておりましたけれども、実は私もそう思っています。IFRSとの関係でこのような比較を行うことはそれほど意味のあることではないのではないかと思っております。本来、市場に対する規制のあり方というのは、各国の裁量にかかわる問題でありますので、欧州の規制市場でIFRSを導入しているから、日本の取引所、金融商品市場もすべてIFRSというような乱暴な議論にならないように、私はまず留意する必要があるのではないかと思います。

逆に欧州では、ご承知のとおり、日本でやっているような四半期開示とか、J‐SOXはやっておりません。本来、市場のあり方というのは、各国が主体的に、自由に決める問題であるというふうに思っていますので、その辺の共通認識が要るのではないかと思います。

それと関連して、前のページでしたか、ドイツのフランクフルト証券取引所とフランスのNYSE‐ユーロネクストパリに関する規制市場と非規制市場の資料が添付されています。その中で、それぞれ内国会社数というのが表示されていますが、私のほうで確認しましたところ、これは恐らくフランスは外国企業が除外されていると思います。逆にドイツは外国企業も含まれているというような資料になっているのではないかと思います。本来、外国企業も含めた表示のほうが私は良いのではないかと思いますが、ただ、ドイツの資料では、非規制市場はエントリースタンダードとファーストクオテーションに分けていますが、実はセカンドクオテーションというのがあります。これの会社数が非常に多くて、たしか1万社以上あったと思いますので、その辺を表示すると、ドイツ市場のイメージがかなり変わってくるのではないかとの印象を受けました。これは確認だけです。

次に論点のところですが、資料2にも関係するのですが、前回の企業会計審議会総会でも私、申し上げましたとおり、日本は現時点でほぼ同等性評価はクリアーしていますし、コンバージェンスもこれまで着実に進めてきております。また、任意適用の受け皿もありますので、連結先行という概念はもう既に時代的役割が終わったと考えて良いのではないかというふうに私は思っております。逆に、連結先行というような概念を残したままでは、制度全体の枠組みの議論があいまいになるのではないかというふうに思っております。

その上で、日本基準について、日本としてその堅持を明確にして、あわせてコンバージェンスについては国内のコンセンサスという点から、ある程度、私は限界に来ていると思いますので、一旦は徐々に終息させつつ、今後はIASBとFASBのMOU項目の経緯を見ながら、国益を一方で考えつつ、是々非々の対応といいますか、こういう方向性を早期に打ち出したほうが良いのではないかというふうに思っております。

現行、ご承知のとおり、連結は米国基準ないしは任意適用しているIFRS、単体は日本基準という、いわゆる連単分離の枠組みがこれまで何ら問題になったことはないというふうに私は思っています。単体の日本基準を堅持すること、前回も申し上げましたとおり、会社法、税法との関連性、それから、保守主義とか実現主義、発生主義、加えて確定決算主義等の思想を保持してきたことにより、戦後から、先ほどゴーイングコンサーンという意見がありましたけれども、まさにゴーイングコンサーンとしての日本企業の体質強化に大いに貢献してきたと私は考えております。連単分離、かつ日本基準の堅持、この2つのコンセプトを明確にかつ早く打ち出してほしいというふうに思います。

ただ、現在、包括利益等の項目で限定的に連・単に差が出ておりますが、日本基準の堅持のためには、ある程度限定的なところはやむを得ないと私は思います。ただ、基本的な考え方はやはり準拠性という観点から、連結と単体については原則的にほぼ一致させるということが必要だろうと思っております。

開示という点では、単体開示の件がございますが、国際的に見て、連結開示というのがマーケットでは主流になっているわけで、単体開示の有用性という点からは、私は連結に比べると相対的に低下してきていると思っていますので、日本としては単体開示を廃止する方向で検討すべきではないかと思っています。単体開示は、一方で、会社法上の決算公告で発信されますので、それを参照すれば事足りるのではないかというふうに思っています。

それからもう一つは、IFRSの特質にかかわる企業と監査人の責任関係、これはまだ日本でほとんど議論されていないと思うのですが、ご承知のとおり、IFRSの原則主義のもとで企業の裁量の余地がかなり拡大してきます。あわせて、ある意味で不確実な要素を含む公正価値会計の拡大とか、見積り予測機能の拡大とか、こういう要素によって、プロシクリカリティ的な要素もそこに含まれますので、企業と監査人の責任関係が今後どのように変化して、その法的対応策がどうなるんだろうかというのを私自身、心配しております。例えば、現在は財務諸表の虚偽記載に関しましては、企業は無過失責任というリスクを負っており、これが法の立付けになっています。IFRS導入後は、そういう問題に対してどのような責任関係になるんだろうかと。無過失責任を前提にすると、いろいろなところで企業の負担が大きくなりますので、ある程度のセーフティネットというのを考えておくべきではないかというふうに考えております。

更に他の論点としては、任意適用の受け皿がある中で、アドプションをほんとうにする必要があるのかとか、仮にアドプションするならば対象企業はどうなるんだろうかという問題があると思います。それから、日本としてはカーブアウトは本当に検討しないんだろうかというような論点もあると思いますが、これらはまず日本としての枠組みをきちんと決めた後で議論すべきではないかと思います。

最後に、海外調査の件がございましたが、大事なポイントは、建前ではなくて本音を聞いてくること。実態をいかに引き出すかということが大事だと思いますので、訪問先の選定と質問の仕方、この辺に工夫が要るのだろうと思います。よろしくお願い致します。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、逢見委員、どうぞ。

○逢見委員

ありがとうございます。逢見です。

資料1の6ページに論点が提示されておりますので、それに基づいて申し上げます。まず、論点1についてですが、2008年のリーマンショックは市場原理主義が台頭して実態経済を超えるマネーが富を求めて暴走した結果、生じたものだと考えております。当時、投機マネーが株式市場を席巻し、企業の短期売買を繰り返す投資ファンドの跳梁跋扈を招いた結果、労働者などは、所得を失い、住宅を失い、職を失うというような大きな被害を受けました。

こうした金融危機を反省材料として、今後は企業を売買対象として考えるだけではなくて、先ほど来、ゴーイングコンサーンという議論がありましたがが、まさに企業において人が働き、付加価値を創造し、それを株主や従業員に分配し、さらに再投資していくという、ゴーイングコンサーンに沿った会計基準にしていかなければいけないと考えております。

論点2についてですが、先ほどの参考資料でも示されておりましたが、国際会計基準への対応は国によってさまざまです。我が国も自見大臣が日ごろおっしゃっている国益を守るための戦略的な取り組みが必要であると考えます。我が国の国益とは何か。これは端的に言えば、我が国の国民が今後どうやって食べていくのかということだと思いますが、我が国において今後も技術開発、あるいは研究開発投資などが促進されることによって、産業競争力の強化と雇用の創出につながるということだと思います。したがって、我が国の会計基準もこれに資するものでなければならないと思っております。

論点3についてですが、これは我が国の地勢学的な位置づけや経済環境を踏まえれば、アジア太平洋地域、そして日米欧というどちらか一方に偏るのではなくて、困難ではあっても双方との関係を維持しながら理解を深めていくということであると思います。

論点4ですが、我が国が戦略的な取り組みを考えるに当たって、何が我が国の国益かということについて、ここに書かれてあるさまざまな利害関係者についての共通認識が必要だと思います。当然、それぞれの利害関係者によって、国益というのは必ずしも1つの答えではないと思います。しかし、国際会計基準をどう取り込むか、あるいはどのように自国の会計基準と適合させていくかという場合に、国益認識がばらばらであってはいけないと思います。少なくともみずからが考える国益をそのまま主張するだけではなく、他の利害関係者との共通の理解のもとで国益を考えていくということだと思います。

論点の5、6については、特に私から申し上げることはございません。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。それでは、泉本委員、どうぞ。

○泉本委員

ありがとうございます。

監査人の立場、役割は何かということがまとめられていますので、若干違うかもしれませんが、この会議の流れが連単分離型に多分かなりシフトしているという印象がありますので、私の印象ですけれども、連結で米国基準を採用し単体は日本基準でという監査の現場で何が起きているかということを少しお話ししたいと思います。実際の監査では、多くの監査事務所では、連結と単体が違う会計基準の場合には、国内チームと国際チームとが混在型で監査を実施しています。そうでない法人もあるようでございますけれども。そういう意味で、日本基準でつくった単体を連結するときに、米国基準ではこれが認められるか認められないかという何か大きな問題が起きたときには、ニューヨークに問い合わせるとか、外人の専門家に聞かなくてはいけないというところで、かなり時間とコストがかかるということが現実問題が起きています。もし仮にIFRSで連結、単体は日本基準と2つの基準で財務諸表をつくるということになると、このような問題はずっと続くことになりかねません。少なくとも、海外に問い合わせないと解決しないという問題が出てきてしまうと大変困ると思います。

そういう意味で、なるべく日本基準がIFRSの中に入っていくということが望ましいのですけれども、手っとり早く日本で聞けるという、先ほどご説明がありましたように、東京の中にIASBのサテライトオフィスを設けていただけるということになっていますので、そのサテライトオフィスで問い合わせするということによって時間的な無駄はなくなると思います。ただ、サテライトオフィスで回答していただけるためには、このIFRSを採用する企業が増えなければいけないという課題があると思います。現状ではまだ任意適用は3社でございますし、これが増えないとサテライトオフィスが機能していただけないのではないかなという危惧が一つございます。

もう一つ、日本基準のあり方ですけれども、日本基準を現状のまま維持することでよいのかという問題がございます。先ほど来、申し上げましたように、監査の国内チームと国際チームではっきり色が違うというのは、これはまたおかしなことです。現状ではそのような米国基準と日本基準の二本立てになっていますので、こういう大きな問題が起きていると思います。現在、IFRSを任意適用する準備会社にも備えて多くの監査法人では、IFRS基準での監査対応ができるように専門家を育成していますけれども、何か、色の違うチームが2つあって、常に大量の部隊が監査現場に行くというよりは、日本基準がなるべくIFRSに近づいていくということのほうがやはり合理的だと思います。その中で、どうしても日本として相容れない部分、取り入れられない部分ということを明確にしていくべきだと思いますし、特に規制業種の場合にはかなり難しい問題もあると思います。日本のさまざまな業法問題で、業法特有の会計処理や特有の準備金等を積んでいるという、そういう企業もいくつもございますので、そういうところについて明確にしていかないと、その都度、IFRSではどうなんだと議論をすることになるのが現状問題でございます。そういうコストの面ですとか、時間の面ですとかもお考えの上、これからの日本基準をどういう形にすべきかというところをご検討いただきたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

柴田委員、手を挙げられておりました。

○柴田委員

先般、アジアへ出張して、いろいろな方と意見の交換を持つ機会がありました。そこで気付いたことですが、アジア諸国の立場から見ますと、「IFRSの世界で日本の発言力が強くなりすぎている」と見えていることです。「モニタリングボードに1名、トラスティに2名、IASBボードに1名もの人数を、一つの国から出させるのは、地域内バランス上いかがなものか」という不満です。現体制は日本優遇に偏りすぎているという苦情です。裏を返しますと、これは日本が非常に上手にやってきたということの反映です。そういった意味で、日本の立場を強めることに成功した関係者の方々のご努力に敬意を表したいと思います。

ガバナンス面で日本が強い立場を維持すること、これが日本の今後の発言力を担保します。発言力を担保した上で、影響力を行使していただきたい。まず発言力を確保した上で、その担保された発言力を活用して、何らかの良いことを達成する──この姿勢が大切です。

国益をむき出しにしてごり押しする姿勢ではなく、だれでも賛成できるような形で主張を作り、この主張を採用していただければ、あなた方にも得になりますよというやり方を取る、これが大切です。

お話を伺っておりますと、ゴーイングコンサーンでございますとか、コンサーバティズムでありますとか、いろいろあると思いますけれども、そういったものの重要性というのは、日本の企業だけに限定されるというものではないのではないかと考えます。ですから、対外的な情報の発信戦略の基本として、「日本はIFRSと正面から向き合っていく」という姿勢を崩さずに、その姿勢を背景に発言力を担保して、その上で何らかの前向きの貢献をしていただきたいと希望します。

○安藤会長

ありがとうございました。

根本委員、どうぞ。

○根本委員

企業を評価する立場のアナリストから申し上げたいのですが、私どもはやはり企業の国際的に比較可能な会計基準が早期に導入されるということを望んでおります。そういった立場から論点に沿って申し上げたいのですけれども、金融情勢が変化する中で留意すべきこと等があるかとは思いますが、やはり景気のサイクルというか、そういうものにあまり影響を受けず、会計や金融市場のインフラを作るという観点から長期的な視点で検討をお願いしたいということです。

それから、もう一つは、今、何名の方からもお話があったのですけれども、やはり欧米の経済成長率が低下する一方で、アジアの成長率が高まって、その発言力というのが当然増えております。かつ、日本とアジア地域との関係が非常に強化されていますので、アジアの中で日本のリーダーシップや存在感をどうやってキープしていけるのかという観点を考える必要があるのかと思います。

先ほど、ご説明の中で、各国の対応はまちまちということだったのですけれども、これは一方、私から見ますと、アジア地域においてはもうかなり明確な方針が出ているように見えます。そういう中で、日本の対応が海外から見るとやはりおくれているとみえているかと思います。方向性が不透明という中で、日本の存在感が低下しないのかが非常に心配されるところですし、後々になって、あのときに時間をかけ過ぎたことで地位の低下につながったということのないようなご対応をお願いしたいと思います。

それから、グローバルな投資家の立場から言えば、単体よりも、より重視しているのが連結情報であるため、少なくとも連結というところで先行した対応があるということが望ましいと思います。

それから、今後の海外視察において調査をされるという点ですが、恐らく当局の方とか会計のご専門家とか、非常にその道に詳しい方を当然訪ねられると思いますが、できれば普通の投資家、機関投資家も加えていただければいいのかと思います。というのは、日ごろから投資家の認識のギャップが大変大きいというのを私は感じています。日本のあり方が過小評価されていると。それがある意味、先ほどの市場全体の時価総額や、企業の評価の低下にもつながりかねないのではないかと思っています。日本の会計制度がこれだけすばらしい専門的な方々の考察のもとに進歩しているということが、どうもいまひとつ伝わっていないと思います。アナリストの説明が悪いのかもしれませんけれども、表面的なことで判断されてしまう傾向があります。

例えば、韓国は国際的な基準を取り入れているけれども、日本はそうじゃないとか、そういう評価が横行しているということがありまして、それは逆にどのように外に打ち出せば、日本をもっと正当に見てもらえるのかということにもつながると思いますし、その意味でぜひ投資家の声も聞いていただければと思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

ちょっと順番に。私の目は限られておりまして、後ろでちゃんと見てくれている人がおりまして、大体、挙手の順番にということで進めさせていただきます。ご了承ください。時間はございますから、今まで手を挙げた方は必ずご指名いたします。

それでは次に、島崎委員、どうぞ。

○島崎委員

ありがとうございます。島崎です。

前回の会議でも申し上げましたことですが、国際的な流れをきちんと見極めて、日本の方向性の議論をすべきであると思います。先ほど配られた資料の中にもありますが欧米各国、あるいは新興国において、IFRSとどう向き合っているかという点に関して自国の基準に取り込むという表現がありますけれども、その取り込み方がどういう取り込み方なのかということをきちんと見ていかなければいけないと思います。先ほど、斉藤委員からも話がありましたが、取り込んだ結果の基準が国際的にきちんと評価されるレベルのものであるという点が重要であると思います。

G20のサミットでは再三にわたって、シングルセットの高品質な会計基準を策定することを加速せよという要請が出ているわけで、それに沿って各国がその基準づくりに参加している訳であります。

そういう中で、日本はどういう議論をしていくべきかということですが、これも先ほど廣瀬さんや佐藤さんからも話がありましたが、連結と単体を分けて議論をしていかないと、議論は深まらないのではないかと思います。ただ、連結のほうを国際対応したときに、単体はそのままにしておいて国際的な動きから完全に遮断しておいていいのかどうかという議論は残りますが、国際的資本市場において求められる企業情報が連結ベースであるということですから、そこに絞った議論を行なっていくべきなんだろうと思います。

その場合に、日本企業特有の経営思想というものがあって、例えば会社というのは継続しなければいけない、何百年続いている会社もありますが、日本企業の中長期的経営視点が日本の会計基準と強く関係しているというのであれば、今のIFRSの動き等についてそれらをどう反映させるのか具体的な意見発信が必要でしょうが、他国から見ても納得してもらえる意見でなければならないと思います。

先週、パリでIFRS財団のトラスティの会議がありまして、会議の後に、フランス財界人の方々とのディナーがありまして、フランスの大企業の経理部長と同席だったのですが、ゴーイングコンサーンは大事だと言っていまして、企業経営という視点ではあまり変わらないなと思いました。今のIFRSについては、自社では連結で使っているけれども個々の基準を見ると不都合なところがあるのでどんどん意見を言っていかなければいけないと言っておりました。何か一つ二つあるのと聞いてみたら、一つはのれんの償却だと。減損処理よりも規則償却のほうが好ましいとしきりに言っていましたが、このような意見を持ちながらも、IFRSもきちんと受けとめてそのうえで必要なところは変えていこうという姿勢したが、この点も重要なことで、きちっと認識しておく必要があると思います。

それでは、どうすれば日本の意見を国際的な場で反映できるのかということだろうと思いますが、ここの資料6ページマル3のところに、各国との連携が大事であり、特にアジア太平洋地域の各国との連携が必要だということですが、その通りだと思います。ここには日米欧と書いていますけれども、アメリカと欧州とのせめぎ合いが過去10年あった一方で、日本は金融資本市場の世界における立場が相対的に弱くなっているので、アジアの各国といかに連携をして、アジア・オセアニアとして米欧の勢力に対抗していくというような関係をつくっていかないといけないと思います。

この様な状況に日本が置かれているとの認識に立って、日本がIFRSに対してどうコミットしていくのかということです。インド、中国、アメリカ、日本の帰趨が非常に注目されていますが、その中で日本はどういうようなコミットメントをしていくのかということです。それ次第によっては、アジア、オセアニア連携の中でのリーダーシップにもかげりが出てくるでしょう。最近の中国の動きの中で、EEGは中国の思惑もこれあってこのような会議体を立ち上げたわけですが、様々な動きがある中で日本がこの地域において中心的な役割を保っていくことが非常に大事なのではないかと思っています。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、大武委員、どうぞ。

○大武委員

幾つか重なっているところはやめますけれども、先ほど来、お話のあるように、私も世界の基準をある程度つくっていくことについて、反対はありません。ただ、今、始まっているこのIFRS、もう手遅れかもしれませんが、これは明らかに金融資本市場だけが念頭にあるような気がしてなりません。特に、討議資料の中にありますように、過去の歴史を振り返ってみたときに、明らかにリーマンショック前と後は違うと僕は思います。今、欧米で資本主義が非常に苦境にいるのはなぜか。そもそも付加価値を生む製造業が軽視され、非常に金融に偏って、本来の付加価値を生み出すような研究開発なり長期的、ゴーイングコンサーンの視点が欠けているんじゃないか。これは何も日本だけの問題ではなくて、そもそもIFRSそのもののつくり方にやはり欠陥がないだろうか。これが実は私の一番の気がかりです。

ですから、日本だけ独特なことをやっていいよって言っているわけでは全くありません。しかし、今、進んできたIFRSというものが、アメリカ自体も少し見直さなければならないと思い出している。あるいは、ぜひ出張の際には行っていただきたいのですが、中国も質問の仕方が非常に大切ですが、彼らは表向きは賛成と言っていますが、彼らの利益を非常に重視して、このままやるということを思っているわけでは絶対にないと私は聞いています。これは質問の仕方が非常に難しい国が中国だと思います。

それから、同じように欧州も、ぜひ金融界の方だけではなくて、製造業の具体的な経営者にもぜひ聞いていただきたいと私は思います。ほんとうにこのまとまったIFRSでこれからの資本主義が発展できるのかどうか、ぜひ考えていただきたいというのが一番根底にある話です。

特に、やはり日本企業がゴーイングコンサーンという姿勢を大切にして、確かに派手な経済成長は少ないかもしれませんが、しかし、着実に研究開発を長期的視点でやっているという点では、アジアの国々でも非常に評価されていると私は思います。もちろん、一攫千金のような事業は必ずしもうまくいかない。短期的利益追求じゃありませんから。しかも、前回にもお話ししたとおり、BSで企業売買ということを前提にするよりは、PLをやはり重視しながら、いかにゴーイングコンサーンで利益を長期的に上げるかという視点は、やはり上場企業といえども死守すべきだと思います。もしこれを死守しないとすれば、上場しない企業がどんどん増えていく気がしてなりません。その点が私、一番気がかりだということで、このIFRSの見直しというのを言っているので、日本だけが独自の仕組みをやりなさいと言っているつもりではありません。むしろ世界に働きかけて、世界と一緒に、よりよき資本主義にもう一度考えていただきたいというのが、アメリカのリーマンショック、そして欧州金融通貨危機、金融危機、見ていてつくづく思うことなんですが、そういう視点で申し上げているのでございます。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、関根委員、手を挙げておられました。

○関根委員

ありがとうございます。

今までのお話にもありましたけれども、金融危機以降の変化の中で、会計基準のあり方の議論、今のIFRSでよいのかどうかも含めて、いろいろな検討が必要ということはあるかと思います。けれども、やはり会計基準というのは、投資者が投資判断を行うに当たって、企業の経営成績や財政状態などを測定するための、いわばものさしとして、資本市場における重要なインフラとなっていることは確かだと思っております。この点は中間報告にも書かれておりまして、これを再認識した上で、現在の市場の動き、国際的な動き、それから国際的な関係における日本の立場というのをよく考えていく必要があると思っております。

その点につきまして、長年、日本や海外の会計基準に基づいた財務諸表について監査を行ってきた者の立場から少しお話しさせていただきたいと思います。

先ほども何人かの方からお話がありましたように、残念ながら、現在の日本の市場の世界全体の市場に占める割合が落ちております。以前は2割ぐらいで現在は6%という話があったかと思います。また、アメリカと日本以外のほとんどの主要市場で、IFRSを適用、もしくはIFRSの適用を決定しているということも事実でございます。

こうした中で、日本の会計基準というのは、いろいろと優れたところはあるかと思いますけれども、現在同等と評価されているEU市場以外では、直接そのまま使用するということが殆どできません。また、日本の会計基準に基づいて連結財務諸表を作成する場合、日本の親会社や日本の子会社については日本の会計基準に基づいて作成しておりますけれども、海外の子会社につきましては、日本の会計基準の使用を原則としているものの、必ずしも日本の基準ではなくて、IFRSあるいは米国基準を使うことも認められております。

これはなぜかというと、今までもお話が出ていましたように、日本の会計基準というのは非常に優れたところはあるのですけれども、必ずしも世界に知られていないためです。したがって、日本基準に基づきどういったところを工夫して財務諸表が作成され、どういったよいところがあるかというのが必ずしも知られていない。これは日本が何かを怠っていたからかというと、必ずしもそうではなくて、自国の会計というのは他の国にはほとんど知られていないというのが普通だと思っております。

米国基準だけは特別な例外で、私がこの仕事を始めたころから、世界各国に米国基準の専門家というのがいましたが、これは非常に異例と考えていただいてもいいかと思います。当時も、IASBの前身であるIASCがIASというのをつくっておりましたけれども、ほとんどの国は自国の基準を使っていました。その中で、例えば、英国の会社の日本の子会社に、英国基準に基づいて財務諸表を作成しなさいという指示が出てくることもありましたけれども、米国基準ほどは知られていなかったと思います。

そういうふうに考えていきますと、やはり自国の基準をほかの国に知らしめるというのは非常に難しいことなのではないかと思います。制度も違いますし、考え方も違います。ですので、IFRSというのが出きてきたのだと思います。今までの議論にありますように、IFRSにはいろいろな問題点はあるのかと思います。日本にとって、いえ、日本にとってだけではなくて、他の国にとっても日本基準のほうがいい部分というのもあるのかと思いますけれども、これらについて、日本基準を知らしめるというのはなかなか難しいと思います。ということになりますと、やはりIFRSに向き合い、このどこが問題なのか、これは日本だけに問題だということだけでなく、国際的にも例えば同じようなところがあるのではないかと、IFRSを一つの物差しとして、国際的にもこれは声を大きくしていったほうがよいのではないかということを含めて言っていくというのがよいのではないかと思っております。

あと、先ほど、連結、単体の話が出ておりましたけれども、こちらについては、後の2番目の議論で出てくるのかと思いますけれども、若干つけ加えさせていただきます。この点は、やはりまずは国際的に考えますと、連結というのを先に考えていく必要があるかと思います。ただ、単体というのも、なかなかこれをすっきりと区切れるものではないかとは思っております。また、連結と単体ということとともに、日本においては金商法と、会社法の開示というのもあり、連結と単体の持つ意味と金商法と会社法の持つ意味、このあたりを含めて、これは多分、後の議論になるのかと思いますけれども、議論をしていく必要があるのではないかと思っております。

私のほうからは以上です。

○安藤会長

では、その次、辻山委員が手を挙げておられました。

○辻山委員

ありがとうございます。

今日いただいた資料は、非常に参考になりました。そこでまず、参考資料の6ページを見ながら、大きく2つお話ししたいことがあるのですけれども、一つは事実確認の問題です。これは主として制度にかかわる問題ですけれども、事実確認をきちっとしておきませんと、特にIFRSについては、いろいろなところでイメージ先行の議論が多いというふうに感じております。

6ページは、これまでの審議会での意見を反映していただいて、いろいろな国における、いわゆるIFRSのインコーポレートの実態は、よくよく調べてみるといろいろな対応があるということが分かります。実は今、世界で、一説によると120カ国、IFRSを導入した国があるというようなことも言われております。実は2001年から8年間、私、IASBのSAC(基準諮問会議)という会議に出ておりまして、その席で当時の議長のトゥイーディー議長から、今、世界で100カ国ぐらい使われるようになってきたというようなお話が最初にございました。そのときの会議で、そのデータソースはどこですか、出典はどこですかというようなことを伺いましたところ、IASBが調査した結果ではない。それは当時のデロイト・トシュの、今でも残っておりますけれども、IFRSプラスというホームページに出ている。そこにそういうふうな指摘があるということでございました。

その後、適用国は120カ国になっているようですけれども、この中には、IFRSの適用と、あるいは容認まで含めますと、日本ももちろん入っております。このIFRSを既に適用した120カ国ということになると、日本も含められているんですね。ですから、120カ国使っているから日本も、というのはトートロジー、何をもって何を言おうとしているのかがちょっとわからないというところがございます。

それから、本日の6ページの図で見ましても、この中にはコンバージェンスという国も入っていて、中国も自国基準にIFRSを組み入れる場合に、コンバージェンスというものを出しております。それから今、IFRSのビッグユーザーと言われているEUもカーブアウトしているということですから、この100カ国とか120カ国論というもののひとり歩きというのは、きちっと検証した上でないと、それを理由にして日本も入れるべきだという議論は成り立たない。特に、アジアでは方向が決まったというのも、これは実態のない議論でございまして、インド、中国、韓国──韓国はもう入れましたけれども、それぞれが今、対応に苦慮しているということだと思います。

次に、時価総額が日本は下がってきたという点。これの原因をIFRSの導入のいかんに求めるというのも、これも事実を検証してみないとわかりません。わかっていることだけでも、時価総額が上がってきた中国、インドは今現在、IFRSをアドプションしているわけではございません。それから、横ばいだという米国もIFRSはアドプションしていない。この辺の事実も踏まえる必要があるというふうに思います。

それから、事実関係の3点目ですけれども、金融危機、あるいは危機対応のときにBSを時価で作ってみる、これは当然のことでして、企業が清算に直面したときには、BSは時価でつくらなければいけない。しかし、この問題とふだんの問題というのは違うということです。歴史を振り返りましても、世界恐慌以前の会計というのはBS中心、時価中心だったんですね。1929年のことですけれども、その29年の反省を踏まえて、いわゆるPL重視、あるいはフロー重視の会計に大きく会計の歴史が転換したという事実がございます。ですから、危機のときにBSを時価でつくるのが透明だという話と、日常の会計としてそちらが正しいというのはまた別の問題だと思います。この点も歴史の大きな流れの中で、今、我々は2011年にいるわけですけれども、もうちょっと大きな流れの中で会計の歴史がどうだったのかということも踏まえる必要がある。

次に基準そのものに関する問題ですけれども、先ほど来、日本の基準とIFRSと個別具体的にどこがどう違うんだ、日本がどういうところが特殊なのかというご指摘がございましたので、これは私、伺っておりまして非常に古い議論だと思いました。なぜならば、基準間の差異についてはもうASBJが精査し尽くして、個々の基準ごとに問題点が明らかになって、あるいは欧州もそうですけれども、詳しい議論が進んでおります。あまりこういうことを抽象的に申し上げますと抽象論になってしまいますので、先ほど来、個別基準というご指摘がございましたので個別基準についてお話をさせていただきますが、一番象徴的なのは収益認識基準だと思います。この収益認識についてFASBとIASBが長い間、公正価値モデルというのを模索しております。収益認識についても、ある会計モデルをつくってそこからいろいろな実務上の現場で直面している問題に解答を出していくという公正価値モデルを模索いたしました。2001年から始まっていて、実際にジョイントで作業を始めたのが2004年ごろだったと記憶しておりますけれども、少なくとも2008年までは、この公正価値モデルというのが収益認識基準についても最有力な案として検討されています。これはアジェンダペーパーにも出ていることでございます。しかし、公正価値モデルということについては、世界中から、日本ももちろんですけれども、欧州からもどの国からもサポートを得られなかったということで、そのモデルをだんだん転換いたしまして、一応、2008年12月に出ましたディスカッションペーパーでは、公正価値モデルの片りんだけが残っている。入れ物だけは残っているんですけれども、中身は履行義務モデル、あるいは顧客対価モデルというふうに変わっている。ただし、中身はもう既にその時点から、明らかにフローモデルに転換しているんですね。フローモデルではない収益認識モデルというのはあり得ないということです。その意見も踏まえまして、2008年のディスカッションペーパーではネットポジションという言葉は残っておりましたけれども、それは全然何のファンクションも果たしていなかった。そして2010年の初めに出ました公開草案では、このネットポジションという言葉も消えて、完全に収益認識がフローモデルに転換しております。それでもなおいろいろ矛盾が出てきてしまったということで、今、再公開草案の段階に至っておりますけれども、ここでは現行の実務をそのまま取り入れて、それをどう説明するのかということになっている。10年の議論の末に、今やっとそこに行き着こうとしているわけですね。

ですから、この収益認識モデル一つ、基準一つとっても十数年の混乱、あるいは金融商品会計基準は25年、四半世紀の混乱。その原因はどこにあるのか。ですから、日本だけが特殊なことを主張して、何か頑張っているという、これは個別基準を一つ一つ検証すれば、そういうことではないということがわかると思います。

ちょっと長くなりましたが以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

順番に失礼しますね。山崎委員、どうぞ。

○山崎委員

ありがとうございます。

今までのいろいろなお話、興味深く拝聴いたしました。会計基準と、会計基準の設定ということに関して、もう一度、考えていただきたいのは、会計基準が経済実態をつくるのではないということです。あくまでも、経済実態があって、そこでいろいろな経済上の困ったことが起こる。それに対して、あるいは再発を防ぐために会計基準というのがつくられてきたというのが、会計基準の歴史でございます。前の方もおっしゃいましたように、私は見方が違うのですけれども、大恐慌の時代に時価会計から損益重視に変わった、これも大恐慌の原因が何であって、その再発を防ぐために損益重視にならざるを得なかったという評価です。そのような経済上の問題を解決する、あるいはその再発を防ぐために会計基準というのはその都度その都度つくられてきているということであります。

そういう中で、このポイントを保持しつつ、日本が、ここの6ページに書いてある、発言力を国際的に維持するということのために何が必要かといいますと、これは日本の特殊事情を単に述べ立てることではございません。日本の考えを世界的に普遍的な、だれでもが理解できる論理にして世界に発信することができるかと、そういう論理展開ができるかということであります。そうでないと、これはまさにローカルな事情を述べ立てて、嫌だというふうに言っていることにほかならず、これでは発言力は持ち得ません。日本人にとって、国際的な、あるいは世界でだれでも、100%は必要ないですけれども、理解していただけるようなロジックを展開できるというのはなかなか難しい。なかなか容易なことではありません。しかし、もし発言力を維持するということが重要であれば、どうしてもそれが必要だということであれば、それを主張する必要がある。

ゴーイングコンサーン概念を取得原価主義と結びつける考えについては、前も申し上げましたけれども、これは既にどちらかというと主役を降りた考え方であります。それから、先ほど監査人の責任問題についてはお話が出まして、どういうポイントなのかちょっと理解できなかったのですけれども、米国会計基準について、疑問があれば米国に一々聞かなきゃいけないというのは、それはまさに米国の基準だからです。米国基準の適用は米国会計士、あるいはSECが決めるからなのです。日本の独自性というのはない。一方、IFRSの世界では、少なくとも日本の考え方というのは、今まで以上に主張できるということです。日本の事情がどうであれ、米国のルールではこうなんだということにはならない。これはまた押さえておかなければいけないことだと思います。

それから、IFRSが金融資本市場だけを注目しているということが言われましたが、これは全くそういうことではなくて、IFRSの中にはIAS、41本の国際会計基準がございまして、このうちの大部分は取得原価主義に基づく会計のベースに基づいてつくられているものであります。また、公正価値を使う金融商品の会計では最新のIFRS9号の前にIAS39号というのがありまして、これが全般的な金融商品会計基準です。実は、金融商品の総括的な会計基準を最初に取り入れましたのはアメリカです。それをIASCがIAS39号として直した。日本の金融商品会計基準というのはそれを取り入れた。何があったかというと、アメリカで金融商品の会計基準ができたからM&Aがどんどん行われるようになったのではなくて、M&Aが頻繁に行われる、あるいはデリバティブ等の金融商品が非常に発達したから、その状況ではもう取得原価主義で金融商品を評価するということはできない、どうすべきかということで工夫したという結果であります。前と後ろが逆の議論はしないほうが今後の建設的な議論のためには重要じゃないかと思います。

単体、連結の話はこれからされるということで、それについて今は触れません。

○安藤会長

ありがとうございます。

次、加護野委員、お願いします。

○加護野委員

加護野でございます。

最後の論点のマル2について少し意見を言わせていただきたいと思います、国際的に日本の立場が尊重されるように持っていくということは極めて重要なことなのですが、立場が尊重されても、そもそも言うことがなければ意味がないわけでありますから、発言の内容をきっちりつくり上げていくことが必要です。そのためには2つが要ると思います。

一つは、そもそも企業経営というのは国によって随分形が違うわけでありますから、その違うものを統一の会計基準でとらえようとしたときに、会計基準に対してどのような考え方方を導入すべきかについての基本的な哲学が必要です。それは日本は今までは欧米とかなり違う要素を維持し続けてきた国だと思いますから、その基本的な哲学をはっきりと言うということが大事です。

第2番目は、日本は徐々にコンバージェンスという方向で制度を採用してきて、もう既に一番論点になる包括利益に関しては、包括利益計算書という形で公表が義務づけられているわけでありますから、この公表が一体何をもたらしたのかということをきっちりと分析をして、自分たちの経験を語るということが必要です。

日本と欧米の国々との決定的な違いは、この40年間、一貫して自国の通貨の価値が上昇してきた国だという点です。そういう国で、海外資産の時価評価をすると、海外へ投資した企業が全部マイナスになってしまうということは決していいことではないのかなと思います。そのことを含めて、現在、公表されている包括利益計算書でマイナス項目として上がってきているものはどういうものが多いのか。プラス項目として上がってきているものはどういうものが多いのかということをきっちりと事務局でタスクフォースをつくって集計していただいて調査していただきたい、それを元にIFRSを導入するとこんなことになりますよということを明らかにしていただきたい。しかも、世界の国の中でこんなに長くデフレが続いている国もないわけでありますから、これほど長いデフレの国で時価会計を導入するとどういうことが起こるかということを、世界に対して、我々から発言していく必要があります。会計制度というのは企業の行動を反映するだけのものじゃなくて、会計制度が今度は逆に企業の行動に影響を及ぼしていくという可能性がございますので、ぜひその面についても、我々はこういうマイナスの影響が出てきているということを明らかにしていただきたい、現代の分析手法をもってすればかなりのことができてくるはずでございます。

例えば、包括利益計算書が公表されてからの財務諸表の市場へのインパクトは高まったか低くなったのかということについてのきっちりとした分析などかもしていく必要があるんじゃないかと私は思います。

ぜひタスクフォースをつくって、我々が発言すべき内容を上手にまとめていっていただく必要がある。そまた、日本はかなり長い経験を会計制度に関しては持っているわけであります。たとえば1960年代には研究開発費を繰延資産に計上するという慣行を持っていた企業が多かった。それをすることによって企業の研究開発投資にどのような影響が及ぼされたのか。それがなぜ徐々に減ってきたのかということについての我々の経験を、これはインドとか中国とかにたいし手語れる可能性が随分あると思いますので、その辺もきっちりとまとめておくという必要があるのではないかと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

次に鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員

鈴木です。

私からは3つほどコメントさせていただきます。

一つは、比較可能性を高めていくという点は重要で、私もその通りだと思います。では、現実に日本ではどうであったか。米国会計基準というのがずっとありました。日本の中に米国基準があるというのは、本来であればいかがなものかと思うわけです。しかし、グローバルに見れば、アメリカの企業と比較するときには役に立ってきている。アナリストはどうであったか。これは慣れてきたのです。米国基準と日本基準の両方が使える。今、IFRSの任意適用が始まってきたということで、これも次第に慣れていくと思います。我々は慣れたとして、外人投資家はどうか。慣れるには、若干疑問があると思います。

それから、日本企業はグローバル経営を目指して、それに秀でていく必要がある。海外と著しく異なる会計というのはあり得ないと思います。現実には既にIFRSが任意適用になっており、コンバージェンスも進んできている。ここからグローバル経営をどういうふうにやっていくか、というのが問題だと思います。

そこで、2点目は今回、海外調査に行くということについての意見です。アジアでは韓国と中国が注目されると思います。先ほど、ファンドマネージャー、アナリストにもぜひ会ってほしいと、根本さんから話がありましたけれども、私はもう一つ、いくつかの業種の企業の社長に会って話を聞く必要があると思っています。なぜかというと、前から申し上げていますように、経営者の経営の意思決定が会計基準によってどう変わるかというのが大事な問題だと思っているからです。CFOではなくて、社長(CEO)が今回の会計基準について、自らの経営判断にどういう影響が出ると考えているのか、という点に注目しておくべきです。

それから、後の議論にもなるかもしれませんけれども、3点目として、連結と単体の問題をどうするかということに対して、佐藤さんからもお話がありましたので意見を申し上げておきたいと思います。連結先行という中では、単体はいずれ連結と同じようになるのか、あるいは単体は単体のままでいいのかという議論があるかと思います。最大のポイントは、単体の開示をするかしないかということが重要だろうと思います。

私もアナリストですけれども、投資家に聞けばどういうことを言うか。これは要ると言うのが当然であります。つまり、我々は材料は全部出してほしい、手間がかかっても出していただきたい、使うか使わないかは状況によりますが、あれば役に立つということは、ぜひ知りたい。そう意味では、単体というのは、あったほうが便利だと考えます。

ただし、今、連結ベースで、投資家向けの財務報告基準というのをどうするかを議論しているわけですから、その点から言えば、単体開示はいらないと思います。マストでなくて、必要に応じて出せばよいと思います。

ただし、単体というのはほんとうに手間でしょうか。現在もつくっているわけですから、アナリストたち、投資家たちが本当に必要だと思えば、いくらでも聞いてきます。今でも任意で個別の財務諸表の細かいところを出す会社はあります。そういった意味では、必要なときには開示していくということは当然起こり得るのではないか。我々は必要があればそれは求めていくと考える次第です。

以上です。

○安藤会長

それでは、次、河崎委員、どうぞ。

○河崎委員

ありがとうございます。

私は6ページの論点の1、2、3につきまして、ちょっとコメントさせていただきたいと思います。

第1の論点ですが、会計基準のあり方についての留意すべき点ということであります。ちょっと「そもそも論」になるかもしれませんが、もともと会計基準というのは、実際に企業で営まれている会計行為を正しく写像する、つまり写し出すための技法であると思います。初回の議論のときも、会計は本来的には測定の科学であるということを申し上げました。その意味では、果たして今の企業会計基準、あるいはIFRSの求めている会計基準が、我が国で行われている企業の実態を写し出す最善の技法であるかどうかを検証してみる必要があると思います。

先ほどからゴーイングコンサーンと公正価値会計を対比させる形で議論が行われております。IFRSはある種の清算価値を求めるような会計手続でもあるような気がいたします。それに対する概念がゴーイングコンサーンという考え方ではないのでしょうか。我が国の会計基準として、一体どういう基本的なスタンスをとるべきかという議論があって初めて、IFRSをどの程度受け入れることができるのかという議論になっていくように思います。

特に他国の受け入れ状況などの話を聞いておりますと、例えば、中国なんかはそうなんですけれども、IFRSを自国基準に取り込むという基本的な戦略はあるにしても、具体的にどのように取り込むのかというのはまだよくわからないという状況であるように思います。しかし、聞くところによると、IFRSと中国の伝統的な会計処理の間に、やっぱり相入れないものがあるといわれます。その相入れないものとは、自国の文化に合わないものといいます。つまり、各国の基準の中に、各国の文化を犠牲にしてまで基準を取り入れるということはいかがなものかということです。先ほど、加護野委員がご指摘になられましたように、会計基準、つまり制度が定まれば、企業経営のあり方そのものが変わる可能性があると思います。これは会計制度がまさに企業の文化を変えていくことを意味します。

それから、2点目であります。我が国の戦略的な会計基準のあり方をどうするかということであります。各委員のお話を伺っておりますと、国益が重要であるということは皆さん共通しておられます。その国益の守り方が恐らく問題だと思うんです。どのように、どの程度守っていくのか。その意味では、できればコスト負担とベネフィットのコスト・ベネフィット分析をやってみる必要があるのではないかと思います。新しい基準を導入すれば、従来とは違った会計基準、会計システムというのを導入しなければならないわけですから、その点、コスト負担がかかることは当然であります。それに見合ったベネフィットが一体どれだけあるのか。特に国全体としてIFRSに大きくコミットすることがほんとうにベネフィットがあるのかどうかということを、仔細に検討してみる必要があると思います。

先ほどからの議論は、国益の守り方には幾つかの方法があるということであったように思います。強制適用がいいのか、それとも任意適用がいいのか、あるいはある程度対象企業を絞って適用するのがいいのかと、いろいろな戦略があり得ると思います。その辺の組み合わせをどうするかというのは恐らく今後の検討課題ではないかと思います。

それから、3点目、今後の地域戦略の問題です。先ほどもご指摘があったように、我が国の地勢学上、多方面との友好関係を深めなければならないというのは、これは当然のことだと思います。米欧との関係も重要ですし、あるいはアジア太平洋地域との関係ももちろん重要です。しかし、最近、このアジア太平洋地域に対する関心を非常に中国が持っているという印象を受けております。先ほど、経緯の中にもありましたけれども、中国は日中韓の会計基準の議論よりも、むしろAOSSGのほうの取り組みにシフトしていくような発言も聞いたことがございます。その意味ではやはり中国は、アジア太平洋地域を極めて重視しているように思います。我が国もその一翼を担っているわけであります。先ほど、島崎委員のほうからもご指摘がありましたように、やはりこの地域でいかに主導権を持つかというのは、今後の我が国のあり方としては非常に重要な課題ではないかと思っております。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

あと4人の方と、私の手許にあるんですけど、これで本日のところはご発言を打ち切らせていただきたいと思います。今まで手を挙げた方は、後ろで記録してくれています。藤沼委員が最後になります。それでは、西川委員、どうぞ。

○西川委員

ASBJの西川でございます。

論点をいろいろ出していただいて、それぞれに言いたいことも相当あるのですけれども、4番目にあります利害関係者に求められる役割ということに関して、基準設定主体の役割というところを中心にお話をさせていただきたいと思います。

制度論の議論というのはこれから続いていくわけですが、そういう中で日本の意見をIFRSに取り込んでもらうように意見発信を強くしていくということについては、コンセンサスが得られているかと思っております。その主張をしていく先頭に立って直接交渉をする立場にあるのがASBJであると思っているところでございます。

それは一種外交的なことになるのですけれども、どういうことを今、行っているかということを申し上げておきたいと思います。まず、最初にIFRSに対して周辺的なところから申し上げますと、日米の関係がございまして、米国のFASBがあるわけですけれども、ここは現在でも非常に会計基準設定の上では重要な役割を担っておりまして、他と比べて論理的な考え方ができる設定主体であると思っています。また、SECのいろいろな方向性の影響があって、悩める設定主体になっているというところで、私どもと共通性があるわけですけれども、ここと意見交換をしていくということは引き続き非常に重要であろうというふうに思っているわけです。

それから、先ほど来、話の出ておりますAOSSGですけれども、これについては現在、私どもが議長国をしておりますけれども、議長を離れることになりましても引き続きここでのリーダーシップがとれるように、IASBのサテライトオフィス、アジアの主要諸国との関係を使いながらやっていきたいと思います。地域としては相当経済力をつけているのでこの組織の影響力は大きいものと思います。差し当たり農業の全面公正価値会計みたいなものを変えていくのにASSGが相当な影響力を発揮することは間違いないだろうと思っております。このAOSSGをつくるきっかけになったのが、日中韓の3カ国会議でありまして、これは、現在はAOSSG会議をサポートするということで当面位置づけましたが、今後の性格づけをどうしていこうかというのは毎年のように最近議論します。3カ国がそれぞれ適用に関するアプローチが違うために、なかなか難しい面もあるのですけれども、一方で考え方が似ているところもあるかもしれないとも思います。また、AOSSGので、この3カ国が非常に強い信頼関係を持っているということも重要であろうと思います。この会議については来週、中国のアモイで会議があるわけですけれども、引き続き、関係を強化することも含めて今後とも続けていきたいと思っております。

そのほかにヨーロッパでは、各国設定主体とバイの関係を持つと大変なので、EFRAGと随時意見交換をしているということがございます。

最後にIASBですけれども、IASBに対して直接意見を言っていくときには、先方がプロジェクトとして取り上げているという状況が必要になります。それが新体制になってアジェンダコンサルテーションという形で取り上げるべきプロジェクトについての意見募集をしているということがございます。ここに日本としての意見を言っていくということが重要になるわけですけれども、ASBJとしては、意見集約をして、各関係者の意見を十分聞きながら、日本として言うべき意見をまとめていきたいというふうに思っており、さらに各関係団体がどのような意見をお持ちかということも聴取していきたいと考えております。

再来週、ロンドンでIASBとの定期協議が、先方が新体制になって初めてあります。ここでは日本がどういうことを、どういう理屈のもとに主張していきたいか、全部ではないですけれども、この段階で言えるものについては言っていきたいということを考えているところでございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

次に五十嵐委員、どうぞ。

○五十嵐委員

どうもありがとうございます。

それでは、3点述べさせていただきます。

6ページに記述されております議論していただきたい論点の1と2と3に関連する内容です。その内容の説明が1、2番、3が若干混在してお話しさせていただくかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

まず1番目ですけれども、金融危機以降、会計基準のあり方を議論するに際して留意すべきことは、財務報告制度に含められる内容が重要と思います。その制度の中で、会計基準は一つの非常に重要な要素であると考えます。企業価値の評価につきまして、経営者とかアナリスト及び投資家への調査が実施されており、KPI(重要な業績評価指標)を上位10項目取り上げますと、その中に、財務情報は3つしかありません。したがいまして、会計基準のあり方を考える際に、投資家、経営者及びアナリストが考えている企業の全体の重要な業績指標を考慮し、その中における会計基準の役割を考える必要があると思います。企業価値は、これらの資料によれば、会計基準のみで判断していることはないというふうに考えます。したがいまして、この会計基準のあり方を議論するに際しましては、こうした内容もとも留意しながら進めるべきであるというふうに考えます。

2番目には、3行目に、さまざまな選択肢を考慮し、戦略的に検討を進める必要があると考えるがどうかとの記述がありますが。私はそのとおりだと思います。さまざまな選択肢を考慮して戦略的に検討を進める方向性は具体的な方針の議論が必要と思います。私の基本的な考え方は、IFRSに日本の考え方の議論を含めることは非常に重要だと思っています。また、IASBで議論する際に、日本での適用があいまいな状況でIASBに意見を発信しても、それがどの程度とらえられるのかについては出席していませんのでよくわかりませんが、私はまず連結財務諸表へのIFRSの導入を明示する方向で進められたほうがよろしいと考えています。

財務報告制度の変革の中には、会計基準に加えて、例えばドイツでは、CMS(コンプライアンスマネジメントシステム)が導入されており、また、オランダでも改革が行われております。したがいまして、IASBで議論をするには、やはり日本が明確にIFRSを時間軸や導入方法の課題はありますけれども、導入するということを明示しながら日本の考え方を入れてもらうという方法の採用が大事だと思っております。

3番目の内容は、今までの議論の中で、財務情報の目的が議論されていると理解いたしました。IFRSは投資家に対する有用な情報の提供を目的として作成されている事を前提としますと、投資家の意思決定を行う財務情報に将来情報を含むことになります。したがいまして財務情報の中に、例えば、減損会計や金融商品などにおいて将来の情報を含んで作成されことになります。こうした状況下における財務報告制度の中で重要な課題は、財務情報の信頼性と、それの検証可能性というものが明確に分析されていないことが重要な問題の一つとなっております。IASBは信頼性という言葉を削除しましたけれども、信頼性と検証可能性の関係を明確な視点を持って議論する必要があり、例えば、IASBにその明確な議論をする事を提案したほうがよいように思います。

以上3点です。

○安藤会長

定刻になりましたけれども、あと久保田委員と藤沼委員のご発言をお願いしようと思います。

○久保田委員

間の関係もあり、総括的な話は先ほど廣瀬委員をはじめ皆さんがおっしゃられましたので、具体的な提案について1つだけお願いしたいと思います。

IASBに対する国際的プレゼンスを高めるべきという話があり、西川委員からASBJの活動の紹介がございましたけれども、企業会計審議会で大きな方針を決めた後は、できるだけASBJ中心に具体的な会計外交というのでしょうか、そういうのを進めていくべきだと思います。その際、なるべく日本の声はワンボイスに、我々からすれば作成者の意見もきちんと踏まえてというふうにお願いすることになりますけれども、することが重要だと思います。

西川委員からもご説明がありましたが、現在、IASBがアジェンダコンサルテーション2011を出し、パブリックコメントを求めていますので、これについて日本として一枚岩となって意見を発信していくことが重要ではないかと思いますので、この点をお願いいたします。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、最後に藤沼委員、お願いいたします。

○藤沼委員

八田先生が手を挙げていらっしゃいましたけれども。

○安藤会長

すいません、こちらのリストに上がっていませんでした。今日は恐らく言い残している方がおられると思いますが、次回に継続いたします。よろしくお願いします。

○藤沼委員

すみません、ほかにご意見を言いたい方がいらっしゃるのに私が最後の発言者になって申しわけありません。

島崎委員と一緒に、先週はパリのトラスティ会議に出席してきました。その前日に、諮問会、アドバイザリーボードが月曜日にロンドンでありまして、その会議にも出席してきました。本日の会議の中でアメリカの話がよく出ていましたが、アドバイザリーボードにはアメリカSECのチーフアカウンタントが参加しておりまして、私は、IFRS導入について引き続ききちっと対応しようというSECの姿勢が見られたのではないかと思っております。

時間もありませんので本日の論点についてお話しさせていただきます。まず、参考資料3の6ページの各国のIFRS適用状況ですけれども、これは全世界カバーしているように見えますけれども、カバーされていない地域が1つありまして、それは南米です。南米についてはブラジルが確か12年からIFRS適用するということを決めておりまして、多分、南米の各国はそれに追随するのではないかと思います。

あと、先ほど辻山委員から、EUはヘッジ会計でカーブアウトしているからということをおっしゃっていましたけれども、それは事実でございます。ただ、ヘッジ会計のカーブアウトを適用した企業というのはほんの10社程度ということでございまして、基本的にはあまり重要性がないカーブアウトではないかと思っております。

全体的な今後の会計基準のあり方をどのように考えるのかという論点ですが、論点の、1、2ということなのでございますけれども、まず、今みたいな経済情勢のときに会計基準のあり方を議論するに際し留意すべきことは何なのかとう論点です。これは御承知のように、先ほどの討議資料(1)の1ページに記載されている、レジェンド問題という、日本の会計基準が国際基準と大きな差異があるということが英文のアニュアルレポート上に記載されたという問題が1999年から2003年の期間に発生しました。以前の日本の会計基準は、取得原価会計をベースとする会計で、結果的に90年代からのバブル崩壊で不良債権の山をつくったという苦い経験があって、それが2000年からの会計ビックバンによる新会計基準の導入に繋がります。この金融機関の不良債権問題は、バブル崩壊後10年以上経過して2002年、あるいは2003年にやっと収束したとうのが実情です。

結局、会計基準について見るならば、やはり財務情報の透明性ということが一番重要なのではないかと思います。確かに問題はいろいろあるとは思いますけれども、金融の安定性か財務情報の透明性かという話になると、やっぱり結果的には財務情報の透明性が重要で、透明な財務情報に基づかないで金融の安定性を維持することはできないと思っています。したがって経営者は金融商品などの時価等の変動については、これらリスク情報に対して真正面から向き合わざるを得ないのではないかと思っております。

次に論点3の国際会計基準についての戦略的な検討ということですけれども、私は今、トラスティ会議で副議長をさせていただいております。各国のトラスティとの付き合いの中で感じるのは、やはり大局についてどういうふうに考えるかということだと思います。大局というのはどうなのかというと、世界はある共通の目標やビジョンを達成するためにどういう方向に進んでいくのかということを常に意識して、日本の次の手を打たなくてはならないのではないかということです。例えば、米国は自国の基準をIFRS化するとは言っていても、米国で言うインコーポレーションという意味は、今後新しい基準についてはIASBの議論に参加し米国FASBではつくらないという条件が1つ入っているわけです。そして今までコンバージェンスした会計基準も含めて最終的に一本化していこうというのが趣旨だと思います。そういう面で、米国は自分の国の基準が世界基準になるとは思っていません。だから、IFRSを取り入れて今後も自分の国の基準が世界でも使えるようにしたいという思惑を込めて、ああいう提案をしているのではないかと私は考えております。

次に、今後、日本の取り組みをどのようにしていくのかということですけれども、正直言って、今、アジア・オセアニア地域に割り当てられた席の中では、日本はトラスティ2名、ボード1名、その他、IFRICとかいろいろな委員会がありますが、日本は重要なものには全部参加しております。そして、5名のモニタリングボードの中でも非常に重要な世界3極、つまり日・米・欧の1極を占めておりまして、しかも河野審議官がモニタリングボードの議長をしており国際的には最高のポジションにいると思います。ただこれは今の段階での話で。これから何年間続くかわかりません。日本のIFRS対するコミットメントがはっきりしない場合には、多分、まずトラスティ2名の者を1名にしろという圧力がかかってくると思います。といいますのは、トラスティの中でIFRSを採用しない国からはトラスティやボードメンバー等を選ぶべきでないとういう意見が強くなっていることと、これらのポジションを希望する国は多いということです。島崎委員や私が任期交代というときには、当然、それをねらってくる国がいるということを考えておくべきです。現在のトラスティのメンバーは各国の一流の人がそろってきています。ということは、各国はこの国際会計基準について、できるだけ主要なポジションを取り会計の国際基準作りに深く関与したいということだと思います。

最後に論点4についてですが、基準設定主体、作成者、利用者、監査人、取引所、規制当局の利害関係者に求められる役割は何かということですけれども、基準設定者については、先ほど久保田委員がおっしゃるように企業会計審議会から大局だけを示していただいて、あとは基準設定主体の独立性でもって個々の基準をつくっていただきたいと思います。会計基準設定主体の独立性を維持すること、これが世界の標準でございますので、ここの基本を忘れていただいてはいけないと思います。

ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。

予定の終了時間を10分過ぎまして、私の議事進行、時間管理に誤りがあったことをおわび申し上げます。

討議資料1に関する審議は今日で終わるというよりも、先ほどお約束したように、例えば八田委員とか、手を挙げながらこっちで目認し損なった方もいると思いますし、ご発言をしきれなかった人、ぜひ次回、最初にご発言いただくように努力いたします。

ということで、次回は討議資料の2に関する審議に一応入りますけれども、本日ご発言漏れの方はぜひご発言ください。

そして最後に、自見大臣のご発言の中にございました調査ミッションの派遣をただいま検討しております。現在、各委員の意向を確認させていただいているところですが、次回の会合におきまして調査ミッションの概要についてお話ができればと考えております。

次回以降の日程等につきまして事務局より一言どうぞ。

○栗田企業開示課長

次回以降の日程につきましては、改めて事務局のほうからご連絡を差し上げたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○安藤会長

本日の合同会議はこれにて終了いたします。皆様にはご協力どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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