企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成24年2月17日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成24年2月17日

○安藤会長

それでは、これより、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様には、ご多忙のところご参集いただき、まことにありがとうございます。

まず、会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様、本日の総会も企業会計審議会の議事規則にのっとり、会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

異議なしということで、そのように取り扱います。

本日の合同会議には、自見金融担当大臣にご出席をいただいておりますので、最初に自見大臣よりごあいさつをいただきたいと思います。

○自見大臣

ご紹介をいただきました金融担当大臣の自見庄三郎でございます。今日は、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を安藤会長のもと、開催していただきまして、心からお礼を申し上げると同時に、一言ごあいさつを申し上げます。委員の皆様方には、格段のご協力をいただきまして、改めて厚くお礼を申し上げます。

初めに、国際会計基準審議会(IASB)のフーガーホースト議長との意見交換について一言申し上げます。今月上旬にフーガーホースト議長が来日され、私も2月8日の日に金融庁で面会をいたしまして、意見交換をさせていただきました。また、昨年の10月でございますが、私がロンドンに行ったとき、IFRS財団でもフーガーホースト議長には一度お会いをいたしております。

私のほうからは、国際会計基準審議会(IASB)に対する我が国の人的・資金面での貢献について説明し、我が国の関係者の意見もよく聞いて、今後のIASBにおける検討に反映していただきたいと依頼をいたしました。また、IFRSに関する当審議会の検討状況を説明し、会計基準の国際的な調和は重要であるが、会計基準の国際的調和のみを追求することで、経済活動が停滞することがあってはならず、会計基準が企業の経済活動や各国の法規制などに与える影響について十分論議する必要があることを伝えさせていただきました。

フーガーホースト議長は、オランダの財務大臣を務められ、国政選挙を経験された方であり、たしか4回ほど国政選挙を経験されたというふうに言っておられましたが、非常に広い視野をお持ちであるという印象を受けました。私といたしましては、引き続き、IASBと良好な関係を築きつつも、我が国関係者のIFRSに関する考え方や懸念をしっかりと伝えていただきたいと考えております。

次に、本日の論議についてでございますが、本日は、私からお願いして、11月末から12月中旬にかけて委員の方々で行っていただいた海外調査についてでございますが、海外調査の調査結果のご報告をいただけるということでございます。欧州、北米及びアジアの3地域について、短期間のうちにほんとうに多数の調査先を精力的にご訪問いただきまして、委員の皆様方におかれましては、大変ご労力いただきまして、大変ありがとうございました。心からお礼を申し上げると同時に、改めまして、厚くお礼を申します。

また、本日の合同会議におきましては、国際会計基準設定主体(IASB)のガバナンス及び国内の会計基準設定主体(ASBJ)のあり方についても論議をお願いすることといたしております。委員の皆様方におかれましては、引き続き、活発なご論議をいただくことを重ねてお願いいたしまして、私の皆様方の日ごろからのご指導のお礼とあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、議事に入ります。議事次第にありますように、最初に、国際会計基準設定主体(IASB)のガバナンス及び国内会計基準設定主体(ASBJ)のあり方について、ご審議をいただきたいと思います。

IASBの母体でありますIFRS財団の評議員会が検討を行っておりましたIFRS財団の戦略見直しについて、先日、最終報告書が公表されたと聞いております。この財団の戦略見直しに関する最終報告書について、事務局より紹介してください。

○長岡国際会計調整室長

企業開示課の国際会計調整室長をやっております長岡と申します。よろしくお願いいたします。恐縮ながら座らせていただきます。

ただいま安藤会長からご紹介いただきましたように、IFRS財団の評議員会が先週の9日に戦略見直しの報告書というものを公表されておりますので、そちらについて簡単にお話をさせていただきたいと存じます。

この場に評議員をやっていらっしゃいます島崎委員がいらっしゃる前でご説明させていただくのは恐縮ではございますが、事務局で用意させていただきました簡単な概要ペーパーをもとにご説明をさせていただきたいと思います。

お手元の資料ですけれども、右肩に1-1と書かれた概要ペーパーと1-2と書かれた本体と、英文でございますけれども、お配りしておりますので、詳細につきましては、その本文のほうをご参照いただくことにいたしまして、本日は1-1のほうでご説明をさせていただければと思います。

国際会計基準設定主体でございますIASBの母体となっておりますIFRS財団、こちらの評議員会がIFRS財団としての将来戦略の方向性につきまして見直しを行うということで、ここ1年ちょっと作業をされまして、最終報告書を先週の9日木曜日に公表されております。このとき、同日なんですけれども、財団のモニタリングボードのほうで行っておりましたガバナンスに特化したガバナンスレビューという作業につきましても、最終報告書が同時に公表されてございます。本日は、よりカバレッジが広くこちらの審議会での議論に直結し得るこちらの評議員会の戦略見直しのほうについて簡単に紹介をさせていただきたいと思います。

この戦略見直しの目的なんですけれども、国際的に認められる単一で高品質な会計基準の設定という財団の目標を達成する際の指針とするために、今後の戦略の方向性を見直すというものでございました。それで、当初2010年の秋から始まりました作業が、途中2回のパブコメ、それから、多数にわたりますラウンドテーブル等を経て、一般の関係者の方々から多くの意見を集めた上で、今回最終回に至ったということでございます。

それで、この最終報告書の概要なんですけれども、こちらの概要紙に書かれておりますとおり、まず、問題設定といたしまして、2000年にこちらの財団が設立されてからの10年間で、IFRSという会計基準が世界中の多くの国で受け入れられる国際的な基準になってきたという成長の過程を経てきた。それで、では、次の10年でこれをどのように進めていくかということで、IFRSが高品質な基準であり続け、かつ適切に適用されること。そして、会計基準の設定主体としての説明責任とガバナンスを確保すること。こういったことがこの先の10年の課題であるということで設定されております。

それで、この課題に対応するためにどういった戦略を描くかということで、大きく4つの柱がございます。使命ということでミッション、ガバナンス、プロセス、これは基準設定のプロセスでございますけれども、それと、財政問題、いかに資金調達を行っていくか、この4つの視点から見直しを提言されております。提言につきましては、それぞれについて幾つかずつございまして、全部で17の提言がございますけれども、その概要、以下マル1マル2マル3マル4でご説明させていただきます。

まず、ミッションについてでございますけれども、これ、IFRS財団が達成すべき公益というものはどういうものなのだろうかということを、根本から検討したということでございまして、結論といたしましては、会計基準の目的として、そもそもの目的は何だということで、財務状況であるとか、業績であるとか、こういったものを忠実に描写すること、これが基準の果たすべき役割であると。そして、IFRS財団としては、最終目標としてのIFRSの適用の追求をしていくんだということ。それから、IFRS適用と言っても、その実際のエンフォースメントの面で、インプリメンテーションの面で整合性がなければいけないので、そこのところ、整合性のある適用の確保をしていくといったようなことが財団全体として追求していくべき公益ではないかという結論に至っております。

続きまして、ガバナンスのところでございますが、これは基準設定主体としての独立性、この独立性ということで、その基準が世界中に受け入れられるという基礎になっておりますので、この独立性というものが非常に重要であると。ただし、独立性だけ言っていても、それは市場の信頼というものはしっかりと得られないと。これは、説明責任というものはアカウンタビリティというものとセットになった独立性が必要であるということで、そのバランスの確保をするということがガバナンスのところで述べられております。

具体的には、その独立性と説明責任のセットというのが重要であるということを再確認した上で、現在の三層構造、これは、財団の中で基準設定を行っておりますIASB、それから、それをデュープロセスの面、それから、人事の面等でチェックしております評議員会、そして、それを外に公的な観点から監視を行うという意味でモニタリングボードが設置されておりますけれども、この3者の三層構造、こちらについて今後とも維持していくということをおっしゃっております。この三層構造というものを前提にしておりますモニタリングボードのガバナンスレビューというものの結果につきましても、この中で指示をするということが書かれております。

それから、ガバナンスのところですけれども、最後に、それぞれの主体につきまして、どういった役割を担っているのかということを明確化して、それぞれの活動につきまして、外から見られるように透明性を高めていこうというようなことが書かれております。

3つ目のプロセスのところでございますけれども、高品質で資本市場で十分に機能し、世界各国で整合的に使用されるような基準設定プロセスの構築が必要であるということでございまして、まず、デュープロセスの重要性、関係者の方々の声をいかに広く聞いて、それを基準設定のプロセスに反映させていくかということの重要性がうたわれておりまして、このデュープロセスにつきましては、1回形をつくったからいいということではなくて、常に改善を進めていくべきであるという話がされております。さらに、デュープロセスを今度は監視する枠組みをしっかりしていこうということが書かれております。

また、これは昨今いろいろと要請が高くなっておりますけれども、影響度調査、これについて手法をしっかりと検討していこうということをはじめといたしまして、現行のデュープロセスをどういうふうに改善していくのかというふうなことが幾つか書かれてございます。それから、各国基準設定主体との連携というものもしっかりと確保した上で基準設定を行っていこうということで、全体として外から見て信頼を、信認を得られるようなデュープロセスをつくっていくということでございます。

最後の論点、財政のところでございますが、これは、財団の効果的・効率的・独立した業務運営を可能とする資金調達手段の確保で重要であるということで、毎年、資金調達の額が変わってしまうというようなことでは安定した基準設定ができませんので、長期的に安定した形で、一定の公的関与があるような、柔軟性を持った、また、各国がそれぞれの負担力に応じて負担するような、分担するような、そういったシステムをつくっていく必要があると。それに向かって評議員会がしっかりと機能し、モニタリングボードとも連携をしていくといようなことが書かれてございます。

こういった4本柱に基づきまして、今後の10年運営を進めていくということで、個々の局面におきましては、モニタリングボードとその財団との間の連携というものが重要になってくる局面、多々ございますので、そちらは財団と当局の集まりとしてのモニタリングボードとしっかりと連携をして、実施に移していきたいと考えております。

駆け足でございましたが、以上でございます。ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。

ただいまのご説明についてのご質問等につきましては、国内会計基準設定主体(ASBJ)のあり方についてのご説明とあわせて一括してお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

次に、国内会計基準設定主体(ASBJ)のあり方についてですが、我が国の会計基準設定主体であるASBJ及びその設立母体である財務会計基準機構においては、今後の会計基準の策定や国際的な意見発信などに適切に対応すべく、ガバナンス体制の改善等に向けた取り組みが進められていると伺っております。本日は、財務会計基準機構及びASBJのガバナンス面での取り組みについて、財務会計基準機構理事長である萩原委員とASBJ委員長である西川委員から説明していただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○萩原委員

財務会計基準機構の萩原です。ただいま安藤会長からお話がありましたとおり、財務会計基準機構と企業会計基準委員会(ASBJ)のガバナンスについて、ご報告をさせていただきます。

資料1-3をごらんいただけますでしょうか。まず、ガバナンスの話をする前に、当財団の内容について簡単にお話をさせていただきます。資料にありますとおり、当財団は、日本経団連、会計士協会、東証等の関連主要団体の支援のもと、約10年前に民間機関として設立されております。事業内容としては、我が国の会計基準の開発と国際的な会計基準の開発への貢献を柱としており、これは財団内にある企業会計基準委員会(ASBJ)が担っております。また、当財団では、我が国の会計基準や国際的な会計基準の周知のためのセミナーや会計人材の育成等も行っております。当財団の運営経費は、大半が会員からの会費収入で賄われておりますが、会員には上場会社、監査法人とはじめとした市場関係者になっていただいており、それらの関係者に支えられて運営を行っているわけであります。

財団の組織は、お手元の資料にあるとおりですが、ASBJのガバナンスとしては、理事会がASBJの委員の選任を通じてガバナンス全体を見るとともに、基準諮問会議がもう少し細かい基準レベルのガバナンスのモニタリングを行う構造となっております。なお、基準開発の内容自体は、ASBJが独立して決める構造になっておりますが、ガバナンスには、主に手続面で問題がないかの確認であり、理事会等が行うことになっております。

最近のガバナンス改革としては、理事会の機能強化のために、2つの委員会を新設しております。1つは、委員推薦・評価委員会で、これは、理事会が行うASBJの委員の選考に当たり候補者の推薦を行う委員会であります。ASBJの活動においては、日本基準の開発に当たり意見集約を適切に行うこと、それと、表裏の関係にある国際的な意見発信を行うことが重要と考えられますが、その機能を強化することとASBJの委員の選任手続の透明性を高めるために、この委員会を設置したものであります。

いま一つは、適正手続監督委員会の新設で、この委員会はASBJのデュー・プロセスが適切に行われているかどうかの監督を行うために設置いたしました。手続の適切性を確保することにより、適切な意見集約を行えるようになることを意図しております。なお、委員推薦・評価委員会については、昨年12月から活動を開始しており、まず最初に、ASBJの委員の追加の選任を行いました。この委員会でも産業界の意見集約機能の改善がご指摘されておりましたけれども、それらの声に対応するために当面、産業界の中でも製造業の方を委員として1名追加してお迎えをしているわけであります。

その他の当財団による企業会計基準委員会の活動のサポートとしては、資料にありますとおり、2つの会議体を設置しております。1つは、単体財務諸表に関する検討会議で、これは連結と単体との関係について、産業界を含むステークホルダーの意見を集約することを目的としており、昨年4月に開発費やのれんなど4つの基準の単体の取り扱いについて意見を集約し、ASBJに報告をしております。

もう一つは、アジェンダ・コンサルテーションに関する協議会で、これはIASBが実施したアジェンダ・コンサルテーションについて、日本の関係者が可能な限り整合性のとれた意見発信を行うことにより、IFRSに対する我が国の発信力を高めることを目的して設置したものであります。参加団体は、資料に記載のとおりであります。事務局は金融庁と当財団が担いました。ここでの協議の結果、我が国の基準とIFRSの間の差異のうち主要な6項目について、ASBJがアジェンダとすべき内容を取りまとめ、各団体からコメントをIASBに送ることになりました。

私の説明は以上ですが、ASBJの西川委員長から補足の説明をお願いいたします。

○西川委員

企業会計基準委員会の西川でございます。私のほうから、ASBJの立場で簡単に補足させていただきます。

今、ASBJの委員の選任の手続の説明のところで、国内基準開発における意見集約と国際的な意見発信が表裏の関係にあるというご説明がありましたけれども、その点についてもう少し具体的にお話しさせていただきます。

例えば単体財務諸表に関する検討会議が資料に記載がございますけれども、ここで議論になりました開発費やのれんの問題は、現状では国内で十分なコンセンサスが得られていないため、最近のASBJの委員会では、当面現状維持とする、この部分については動かさないこととするという提案を事務局として行っております。このように国際基準の処理に必ずしも納得がいかないものについては、国内問題にとどめずに、もちろん国内の議論も完結しているわけではないわけですから、まず、IASBと国際的な議論をする必要があると考えております。アジェンダ・コンサルテーションへの対応を図る上でも、これは前回の審議会でご説明しましたが、開発費とのれんを重要項目として含めた次第でございます。当期純利益のあり方やその他の包括利益、OCIの議論も同様で、国内の議論にとどめず、国際的な意見発信をしっかりして行っていきたいと思っております。

なお、今後は、国内と国際の両方に目配りができる人材の育成が重要になりますけれども、現状ではそのような人材は限られているということもございまして、最近、財務会計基準機構の新たな事業として、人材開発プログラムを立ち上げたところですけれども、ASBJとしては、そのプログラムのコンテンツに関して全面的なサポートをしているところでございます。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、先ほどのIFRS財団の戦略見直し及びただいまの財務会計基準機構とASBJの取り組みに関するご説明につきまして、ご質問、ご意見等がございましたらお伺いしたいと思います。どうぞ、いかがでしょうか。挙手で結構です。島崎委員、どうぞ。

○島崎委員

IFRS財団の評議員をしております島崎でございます。先ほど金融庁からご説明ありました戦略レビューにつきまして、2点ほど補足させていただきたいと思います。

先ほど事務局からお話がありましたように、この1年強かけまして、財団の10年の実績をレビューして、これから10年どういうことをやっていったらいいのかということを財団内で議論するとともに、世界各国のステークホルダーに対して意見を伺うということで、ラウンドテーブルを各都市で行ってきました。東京におきましても、2回にわたってラウンドテーブルを開催いたしまして、産業界、会計士協会、アカデミアなどの皆様から今後10年のありようについて、ご意見を伺ったところであります。各国からのご意見を踏まえて、今回、先ほどお話あったような成案を公表したということでございます。

ミッションとガバナンスにつきまして、若干追加的な説明させていただきます。財団のミッションのゴールとしては、先ほどお話がありましたように、世界各国におけるIFRSのアダプションを最終的なゴールと掲げております。これまではコンバージェンスとアダプションとが同等に近い位置づけでありましたけれども、今後は最終的にはアダプションを目指すということを明らかにいたしました。ただ、コンバージェンスにつきましては、アダプションというゴールに向かうまでの途中経過の道筋として尊重していくということであります。これは私の個人的な見解ですけれども、この考え方は、この基準採用の際のカーブアウトなどにも当てはまるのではないかと思います。

次に、ガバナンスですが、ガバナンスにはIASBやトラスティーのメンバーシップが含まれますけれども、今後はIFRSを実際に使っている国を中心にこの運営をしていくべきではないかという意見が強く出てきております。先ほどお配りいただいた資料1-2の2枚めくっていただきますと、下にページ4がございますが、このページ4の下から2つ目のパラグラフ、「The Trustees acknowledge」云々と書いてあるところですが、ここの文言でございます。今回の戦略レビューは、日本、米国をはじめとする主要経済国がIFRSにコミットすることが前提になっているとした上で、もしこれらの国々がIFRSにコミットしなければ、戦略レビューは部分的に再考しなければならないであろうと書かれております。トラスティーや、IASBのメンバーシップに関するこの地域的配分方法も変更しなければならなくなるかもしれないという文言が入っております。当初の文言はもっとストレートな内容だったんですが、日本、アメリカからの反論もあって結果としてこのような文言になったということであります。IFRSを使わない者はあまり口を出すな。平たく言うとそういうことであります。

先日のシンガポールでのトラスティー会議では、IASBのボードメンバー、今は15人いますけれども、このうちアメリカのボードメンバー2人が今年の6月にデューがくるのでこの後任をどうするかということが議論になったわけであります。結論としては、SECの方向性の見きわめをした上で検討しようということで、決定が先延ばしになっているということであります。先ほど申し上げた文言につきましては、これからのアメリカ、日本の動きいかんでは、メンバーシップの見直しについて議論が起こってくる可能性があるということでございます。

それから、最後に、もう一つ、3点目でプロセスについて触れたいと思います。過去10年間のレビューの中で各ステークホルダーから基準設定のプロセスについて問題があるのではないかというご意見が随分寄せられております。それらを踏まえまして、これまで以上に透明性を高めて説明責任を果していくことが必要だということが盛り込まれております。トラスティー内にありますデュープロセス・オーバーサイト・コミッティがIASBのそういった活動について監視をしていくということでございます。アウトリーチ等の場でIASBにインプットされた各ステークホルダーからの意見がどう取り上げられたのか、あるいはどういう理由でそれらが却下されたのか、この辺の説明責任をよりスピーディーに確実に果たしていくということでございます。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょう。今日はいろいろやることがありますので、それでは、先へ進ませていただきます。

それでは、次は、海外調査報告についてでございます。昨年の11月末から12月中旬にかけまして、当審議会委員による海外調査を実施していただきました。その調査結果がまとまりましたので、ご報告をお願いしたいと思います。進め方としましては、まず、欧州・北米・アジアの順番に事務局より概要の説明を一括して行っていただきます。その次に、海外調査にご参加いただいた委員より補足説明を行っていただき、その後に委員の皆様からご質問等を伺ってまいりたいと思います。

それでは、事務局より概要の説明をお願いいたします。

○栗田企業開示課長

それでは、私のほうから、海外調査結果についてご報告をさせていただきます。資料2から資料4までを使って説明させていただきたいと思いますが、資料2は、訪問先等を記載させていただきました、調査の概略でございます。それから、資料3-1から3-5が調査報告書の概要でございます。それから、資料4-1から4-5、これが調査報告書の本体ということになってございます。この調査報告書は、訪問先でのヒアリングを中心にいたしまして、その後、先方とメールでやりとりしたこと、それから、訪問先から提出いただきました文書なども踏まえて作成したものでございます。

本日、時間の関係もございますので、資料3-1から3-5の概要の中のさらにポイントに絞ってご説明をさせていただきたいと存じます。

それでは、順次ご説明をさせていただきます。

まず、資料3-1でございますが、欧州のほうでございます。これにつきましては、フランス、ドイツ、それから、EUのEFRAGに行ってまいりました。まず、フランス・ドイツでございますが、これはもう既にご承知のように、規制市場に上場するすべての企業に連結・単体の財務諸表の作成・開示が求められておりまして、そのうち、連結につきましては、国際会計基準が適用されます。単体につきましては、欧州域内でも議論があったようでございますが、こちらは任意ということになっておりまして、国際会計基準でもいいし、自国基準でもいいということになっておりますが、フランス、ドイツは、ともに会社法・税法などの関係がありますので、単体は自国基準でやるという結論を出しております。

次に、国際会計基準への対応でございます。ヨーロッパでは、ヘッジ会計の一部をカーブアウトしました国際会計基準を2005年から適用しておるわけでございますけれども、この国際会計基準を導入いたしました理由につきましては、3つ目の○でございますけれども、欧州委員会の文書によりますと、多くの国の投資家が欧州企業に投資するようになったことを背景に、上場企業間で異なる基準を適用することは比較可能性の低下を招き、クロスボーダー取引を妨げ、市場を断片化させるという懸念があったというようなことが記されているわけでございます。

それから、この国際会計基準を導入いたしましたコスト・ベネフィットでございますけれども、これにつきましては、市場全体で見た場合に、トータルのベネフィットはコストを上回ったというような意見が聞かれております。ヨーロッパの全体の感じといたしましては、導入時にはいろいろ不安もあったし、懸念もあったし、混乱もあったけれども、今から振り返ってみますと、国際会計基準を導入したこと自体が失敗であって、昔の自国基準の時代に戻ろうという感じは見受けられなかったというふうに受けとめております。

それでは、具体的にどういうところがベネフィットであったかということでございますが、そのところに3つほど書かせていただきましたが、ヨーロッパ資本市場の競争力の向上、あるいは資本コストの低下、それから、他国企業との比較可能性の向上、それから、3つ目といたしまして、海外子会社の管理等、企業の内部管理が容易になったということでございます。この点につきましては、EUの場合、EU域内でしか活動していない企業でも、27カ国ありますので、その中の会計がばらばらだと、子会社の会計がばらばらになって管理が大変であったというようなお話がございました。

それから、国際会計基準導入のコストでございますけれども、これは、作成者において、会計基準対応だけではなくて、業務の見直しも含めたシステム投資などのコストが発生したというようなことが言われております。このようなベネフィットとコストは、大体ほかの国でも同じような意見が示されたというふうに認識をしておりますけれども、EUの場合、これはちょっと直接のコストではないんですが、その下にありますように、米国基準とのコンバージェンスに伴い、基準が複雑化するとともに、注記開示が増加したというようなことが言われておりまして、これは後のほうでももう一度ご説明をさせていただきたいと思います。

それから、少し飛ばしていただきまして、一番下のところの経済、雇用、企業等への影響のところでございますけれども、EUにおきましては、国際会計基準の導入により、経済とか、雇用に大きな影響があったという意見は特になかったわけでございますけれども、印象に残りましたのは、国際会計基準導入時、2005年でございますが、そのときの経済環境が比較的よかった、リーマンショックとか、サブプライムローン問題が起こる前でございまして、そういうことが非常に幸いしたというような指摘がございました。それから、国際会計基準の導入によって影響を受ける業種といたしましては、圧倒的に銀行・保険というものが挙げられていたというふうに考えております。

それから、日米の今後の対応についてでございますけれども、国際会計基準を採用していない米国がIASBの基準設定に対して影響力を及ぼしていることに対する不満の声が特にフランスの作成者から聞かれております。また、日本の対応に関しましては、国際会計基準を適用して初めて国際会計基準に真の影響を及ぼせるんだという意見、あるいはIASBに対してもっと意見発信をすべきだという意見などが聞かれました。

それから、経済活動と会計のあり方に関してでございますけれども、IFRSのどういうところが問題になるかというようなことで、先ほど総論的には国際会計基準の導入について、ベネフィットが上回ったという意見があったわけでございますけれども、各論ではかなり批判的な意見が聞かれました。例えばそこの2つ目にありますような段階的利益の定義を望む意見とか、国際会計基準がB/Sを重視し、業績測定を軽視しているのではないかという指摘が聞かれました。この点、業績指標として当期利益とか、営業利益を重視するという考え方は、ほかの国でも多く聞かれたというふうに考えております。

それから、公正価値会計に関しましては、金融資産に適用する限りにおいてはいいんだけれども、その場合でも、モデルに基づく計算とか、非上場株式の時価評価には懸念があるというような指摘がありました。

それから、このページの上から2行目のところに書かせていただいておりますけれども、固定資産の再評価モデルにつきましては、これは国際会計基準では選択制になっておるんですけれども、独・仏ではほぼすべての企業は取得原価でやっているんだということでございまして、この点につきましても、ほかの国でも、固定資産につきましてはほとんど取得原価でやっているという意見でございまして、再評価モデルを使っているのは、イギリスぐらいのものではないかという意見がございました。

そのほか、個別の基準についていろいろご意見があったのですけれども、特に、現在、国際会計基準の中で開発が行われておりますリース基準とか、収益認識基準について批判的な意見があったように思いますと。あと、総じていいますと、このIFRSを導入したときはよかったんだけれども、その後、アメリカナイズされた基準がどんどん開発されてきて、それが不満でたまらないというような意見が、特にフランスあたりでは聞かれたというようなことでございます。

EUについては以上でございます。

次に、資料3-2の米国でございますけれども、米国は、まだ国際会計基準の導入について判断をしていないということで、かなり多くの国際会計基準に対する懸念というようなものが聞かれたということでございます。アメリカの制度自体は、上場企業の連結に米国基準が適用されておりまして、外国企業は国際会計基準の任意適用可能になっておりまして、昔は調整表が必要だったんですけれども、ピュアIFRSであれば、調整開示は不要という扱いになっております。

それから、国際会計基準への対応ということに関しましては、時計文字の II の3つの目の○の2011年の5月のSECスタッフペーパーが今のところ基本線になっておりまして、米国基準を維持しつつ、5年から7年かけて、米国基準に国際会計基準を取り込んでいくというアプローチ、いわゆるコンドースメント・アプローチというものが公表されているわけでございますけれども、この点につきまして、SECのスタッフからは、このアプローチは、従来のコンバージェンスとは違うものであって、短期的にはいろいろ解決できない問題があるんだけれども、それはとりあえず除外・修正するとして、あとは、時間をかけてIASBが公表する新しい基準は順次エンドースして、既存の差異のある基準についても、米国基準に国際会計基準を取り込んでいくんだということで、エンドースメントに近いアプローチだというような説明がありました。このスタッフペーパーの考え方につきましては、米国基準が維持されるということとか、十分な移行期間があるというようなことについて支持する意見が聞かれたところでございます。

それから、1ページめくっていただきまして、コスト・ベネフィットにつきましては、米国ではまだ具体的なところは決まっていないので、具体的な分析が進んでいないという意見がありましたけれども、国際的に展開する企業にとっては、他国会社との比較可能性が高まるというようなメリットが主張される一方で、国際的に競合していない企業とか、国際的な資金調達ニーズのない企業にはコストだけではないかという意見もございました。

それから、次の原則主義のところでございますけれども、ある意味では、ここに国際会計基準に対する米国の不安がかなり集中しているような感じでございました。そこに3つほど書かせていただいておりますけれども、国際会計基準の適用に当たって、解釈の幅が広過ぎたり、選択できる処理が多数である場合には、一貫した執行がないと実質的な比較可能性が損なわれるというような話。それから、監査法人の解釈が経営者の合理的と考える会計処理と同じ結論に到達しない可能性があるというようなこと。さらに、訴訟の多い米国では、訴訟の可能性があるという意見がありました。ただ、この点につきましては、ルールベースであっても、訴訟のリスクはあるんだというような指摘もございました。

それから、アメリカでは、圧倒的にほとんど関係者が国際会計基準を導入するなら、ガイダンスがもっと必要だというような意見を言っておりました。

それから、先ほどの訴訟リスクに関して、セーフハーバールールをというような意見もあるわけでございますけれども、SECは、この分野にだけセーフ・ハーバールールをつくることについては否定的なことを言っておりました。

それから、先ほど国際会計基準を導入するのが難しい問題というようなことがありましたけれども、特に税法との関係において、後入先出法が現在、米国では例外的に財務会計と課税所得計算がリンクしているところなんですけれども、その影響額として500億ドルぐらいの影響があるんではないかという意見が出ておりまして、相当な規模の影響が出るというような話が出ておりました。

それから、次のページにいかせていただきまして、契約とか、規制環境への関する影響で、米国では各種の契約や法律に米国基準という用語が非常にたくさん使われておりまして、米国基準というものを存続させておかないと、この膨大な契約、法律を全部見直さないといけなくなり、とても大変だというような意見がございました。

それから、次のところの経済活動と会計のあり方については、ヨーロッパと同じように、当期利益をやはり重視する意見、それから、世界で当期利益の概念が統一されることが重要と指摘する意見がありました。ただ、アメリカの投資家は包括利益が重要だというようなことも言っておりました。

それから、最後の基準設定主体のあり方のところでございまして、ここの2つ目の○で、FASB及びFAFからSECに出されているレターをちょっと詳しく紹介しておりますが、実は、SECスタッフとこのFASBとの考え方にかなり隔たりが見られるような印象を受けましたので、この点をちょっと書いております。このFASBの考え方では、近い将来の現実的な目標は、比較可能性の高い、必ずしも一つである必要はない、共通の国際会計基準に基づく会計基準を先進国で確立すること。それから、FASBはIASBのアジェンダ設定から、最終の基準化、エンドースに至るまですべてのプロセスに関与すべきである。それから、FASBは、独立した基準設定権限を維持するんだというようなことが言われておりまして、ちょっとSECの見方とは違うような見方を彼らは持っておるというところが印象に残っております。

米国は以上でございまして、次の資料3-3のカナダでございますが、カナダは、2011年に国際会計基準を導入しておりまして、まだ1年なんですけれども、会った方々の印象では、比較的順調に国際会計基準が入ってきているというような感じでございまして、その理由の一つは、後ろにもありますけれども、もともとのカナダ基準が原則主義的なものであって、国際会計基準について違和感が少なかったというようなことが指摘されております。

ただ、このカナダの場合に足元で問題になっておりますのが、この注2にあるところでございまして、カナダでは、国際会計基準を導入したカナダ基準というのを使っておるんですけれども、SEC登録企業には米国基準の使用が認められているという例外があり、それから、料金規制業種、電力とか、ガスでございますが、これについては、この新しい国際会計基準ベースの会計基準の適用を1年間延期するということ、もしくはそのSEC登録企業でなくても、2015年の1月1日に始まる事業年度より前までは米国基準の適用可能という例外が設けられています。

このような例外が設けられました理由は、現在、国際会計基準のほうで検討されておりますこの料金規制業種の基準が昔のカナダ基準とわりに似ておりますので、一度この国際会計基準に行って、また、新しい国際会計基準になると、短期間で2度会計が変わるということになって、結局もとに戻ってくるということになるということを配慮したというふうに言っておりますが、実は、この国際会計基準のほうでやっておりましたこの料金規制業種に関する基準の開発が現在事実上ストップしているような状況になっておりまして、この点もあって、この料金規制業種の取り扱いについては、検討を要する課題というふうになっておるようでございます。

ここは特にコメントすることはないですが、最後のところでございますが、カナダは、国際会計基準を導入する際に、わりにうまくレバレッジをきかせて自分たちの主張を国際会計基準に入れるのに成功しているということで、幾つかその成果のようなものがあったという紹介が向こうではございました。

カナダについては以上でございます。

それから、資料3-4の中国でございますけれども、中国の場合は、お国柄もございまして、上から下までほぼ言っていることが同じということでございます。この新企業会計準則というものが2006年に策定されまして、2007年から全上場企業へ適用されておりまして、さらに、その適用範囲が拡大しております。この新企業会計準則と申しますのは、基準のくくり方というような、構成面においては国際会計基準とほぼ同じとなっておりまして、この点につきまして、本体の資料4-4の参考資料の1を後でご参照いただければと思います。

ただ、内容面につきましては、国際会計基準をそのまま取り込んでおるものとか、削除、変更が入っているものがあって、全体としてはかなり国際会計基準より分量が少なくって、簡潔にざっくり書いてあるというような印象を受けるということでございます。次の II のところですが、中国当局は、この新企業会計準則によるIFRSへの対応をコンバージェンスだというふうに言っておりまして、具体的には、IFRSの規定を基礎に自国基準を策定していくというアプローチで、IFRSが改定されれば、中国の会計基準も適時更改していくんだという方針を言っております。

それから、中国当局は、現時点で国際会計基準とこの中国の新企業会計準則の差異は、減損の戻入のみというふうに言っておりまして、よって、実質的にこの2つの基準は同一であると言ってよいというふうに主張しております。ちょっと注のところに書かせていただきましたように、公正価値測定とか、共通支配下の企業結合などの項目は明らかに違いがあるんですけれども、その点につきまして、中国当局は、それらの差異は明確な差異とは認められず、法律及び言語体系の相違によって生じるものであるという認識でございまして、こんなものは差異のうちに入らないというような考え方を述べておるわけでございます。

それから、次のページにいっていただきまして、コスト・ベネフィットでございますけれども、そこの3つ目の○にありますように、当然中国当局は、ベネフィットに比べるとコストは小さいということを言っているんですが、実際に企業に行ってお話を伺った中では、これは当局の政策であって、企業にとってベネフィットは特段ないというようなことを言っていたところもあったというところでございます。

それから、次の原則主義の影響の2番目にありますように、中国ではやはりかなり厳格にコントロールがなされておりまして、証券監督管理委員会が証券取引所、監査法人とも連携して、企業の財務諸表の作成から開示まで網羅的に監督している。よって新しい基準が導入された際に、財務諸表の作成・開示において大きな混乱や不備は生じていないということになってございます。

中国については以上でございます。

次に、資料3-5の韓国でございますけれども、韓国もカナダと同様に2011年から導入して、まだ1年というところですが、一番いろんな意見があって、その評価が難しいという感じを持っております。

韓国では2011年からこの国際会計基準を逐語で翻訳したK-IFRSというものが上場会社に連単ともに導入されております。

それから、その次の○のところなんですが、このK-IFRSの導入と同時に、従来韓国の会計は単体中心であったものが連結中心に移行しておりまして、連結財務諸表の四半期・中間期での開示の義務づけですとか、期末の連結財務諸表の開示期間の短縮化などが実施されております。企業の混乱がこの国際会計基準の導入によるものなのか、この連結移行に伴うものなのかというところが両方入ってきておりますので、なかなか国際会計基準の影響というものだけを抽出するのが難しい面があるということでございます。

それから、韓国でこの国際会計基準を導入した理由は、次の大きな II 番の1番目の○でございますが、アジア通貨危機の後、会計の透明性を高めるという観点からコンバージェンスを進めていて、韓国基準はかなり国際会計基準に近いものになっていたんだけれども、それでも、いわゆるコリア・ディスカウントというものがあって、国際的な信認が足りなかったということで、それを打開するには、もう一気に国際会計基準を適用するという選択肢しかないというような感じでございました。

それから、韓国では、次のページのカーブアウト等のところですけれども、現在、カーブアウトは行われておりませんが、そこのなお書きにありますように、外貨換算会計についてIASBに検討を要望しております。これは、ウォンの対ドルレートが非常に大きく振れるので、やりにくくって仕方がないというようなことのようでございます。それから、現在開発中の減損ですとか、収益認識、リースについて懸念を示す意見が多くて、特にリースについては、猛反発みたいな意見もあったということでございまして、この辺はヨーロッパなどと同じような状況かと考えております。

それから、コスト・ベネフィットとしては、対外信認度とか、透明性の確保、あるいは作成負担の軽減、資本調達コストの低下、比較可能性の向上というようなことが挙がっているんですが、他方で、別に海外の投資家の信認度が特別高まったわけではないというような指摘とか、原則主義のもとでは、企業の会計方針にばらつきがあって、比較可能性が逆に低下するというような懸念もあったということでございます。

それから、コストのところでは、4つの目のポツでございますが、先ほども申し上げましたように、連結中心に移行したので、総合的に開示コストが非常に大きくなったというようなことを言うところもありました。

それから、その下のところですが、韓国の当局者は、先ほど言いましたような国際的な評価を得られない状況を画期的に変える必要があったから、負担も大きいけれども、それを上回るベネフィットがあると考えて、大きな決断をしたんだという説明でございまして、これに対して、一部からは、当局とか、基準設定主体にとってはベネフィットがあったかもしれないけど、作成者には負担が大きいというような指摘もあったようでございます。

それから、会社法・税法への影響についてですが、IFRSの導入と同時に、商法とか、税法の改正も行われておりまして、その面での手当てがなされたというのは、他国と違う特徴かと考えておりますけれども、この税務に関しましては、これから申告が行われるんですけれども、税務に関するガイドラインが足りないというようなことを言う企業もあって、これからちょっとどういうことになるかということでございます。

あとは、他国と同じような意見が多かったと思いますので、省略させていただきます。

私からは以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

海外調査にご参加いただきました委員より、補足のご説明をお願いしたいと思いますが、欧州、北米、アジアという順番でお願いします。資料2に参加されたメンバー表がございます。まず、欧州のほうからいかがでしょうか。では、逢見委員、どうぞ。

○逢見委員

欧州調査について、私の印象を何点か申し上げたいと思います。

まず、IFRSの適用対象企業ですが、フランス、ドイツとも、あくまで規制市場に上場する企業を対象として強制適用しているということであり、全企業に対して強制適用しているわけではない点に留意する必要があると感じました。この点、仮に我が国が今後、IFRSを何らかの形で取り入れるという場合には、その範囲をどうするかということを慎重に検討する必要があるのではないかと思います。

次に、フランス、ドイツ、両国とも、単体財務諸表の意義を明確に認識しているという点です。両国とも、単体につきましては、分配可能利益の算定基礎、課税所得算定基礎などの観点から自国基準によって作成しており、連結がIFRSであるから、単体もそのようにということにはなっていないということです。

会社法的な観点からは、会計基準が想定する利用者というのを幅広くとらえており、株主だけでなく、債権者、取引先、規制当局、課税当局、従業員、こういった幅広いものを利用者として想定しています。こうした多様な利用者に配慮した会計基準というものを志向しているという印象を受けました。

公正価値会計については、有形固定資産に公正価値会計を適用している例は極めて例外的であり、実態としてはほとんどの企業は取得原価主義を採用しています。したがって、将来的に取得原価主義の選択適用が認められないということになれば、おそらく大きな影響が出てくるのではないかと思いました。

利益概念についてはさまざまな意見がありましたが、少なくとも包括利益があればそれで十分だということではなく、営業利益、当期純利益など、過去の業績としての利益の重要性を指摘する意見も多々あったと思っております。

雑駁ですが、私の印象は以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

欧州の調査に行かれた方、ほかにいかがですか。はい、弥永委員、どうぞ。

○弥永委員

既に逢見委員がご指摘のとおりですけれども、2点ほど追加させていただきますと、規制市場・非規制市場というものがあるということですが、欧州、フランス、ドイツにおける非規制市場は、証券取引所が設けている、日本で言うとPTSと言われるものです。そして、非規制市場、規制市場は、会計だけの問題ではなくて、金融商品取引市場の問題です。そこで、IFRS導入の背景にある、このような経済的環境がやはり現在の日本と若干違うのではないかというのが一つの感想でございました。

それから、もう一つは、ご指摘がありましたように、フランス、ドイツの場合には、会社法上の開示規制においても多くの利害関係者を想定しております。て、したがって、連結財務諸表、連結計算書類をすべての会社がつくっているわけではないことを考えますと、単体の財務諸表、単体の計算書類の重要性が高いということが非常に大きなファクターとして考えられるのではないか。そして、資本市場との関係で申しますと、域内市場において活動する企業にとって、先ほど既に栗田課長からご紹介いただいたように、企業集団の中での会計基準の統一という観点からすると、IFRSの意味は大きかった、そのベネフィットは大きかったという指摘が広く見られたことが印象に残りました。

○安藤会長

ありがとうございました。

欧州について、山崎委員、お願いします。

○山崎委員

今のコメントで、私、特につけ加えることはないんですが、1つだけ、欧州は随分前に公認会計士協会も調査に行っておりますけれども、欧州については、イーフラグ(EFRAG)、エーフラグ、いろんな言い方ありますけれども、欧州全体の、これはエンドースメントのためのメカニズムとしてつくられたんですが、これはIASBに対する影響力行使ということについても、非常に大きな効果を果たしたんだろうと思っておりまして、技術的な導入、あるいはどういう会計基準がどういうところという議論のほかに、やはりこういうIFRSを導入する場合の構造というか、制度についても十分配慮すべきであるというふうに改めて認識した次第であります。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、次に、北米についていかがでしょうか。資料2の2枚目に行かれた方の委員のお名前がございますが、必ずしも全員発言されなくて結構でございますから、ぜひ補足したいというご発言をお伺いしたいと思います。廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員

まず最初に、今回の海外の調査につきまして、金融庁事務方には大変なお手数をかけましたので、この場をかりて御礼申し上げたいと思います。

今回の調査は、北米、欧州、アジアの3地域における規制当局、会計基準設定主体、監査法人、企業関係団体など、会計制度にかかわるそれぞれの関係先に対して、日本側は学識経験者の方も含めてそれに相対する関係者が一同に参加した。さまざまな利害関係者が同じ場で同じ話を聞き、主張し、共通の理解を深めたという意味では非常にいい調査であったのではないかと思います。

個々の基準については、先ほどご説明ありましたし、また、後からほかの方からご説明があるかもしれませんので、印象的なものを申し上げます。ご承知のとおり、昨年5月のSECのスタッフペーパーにおいて、米国基準を維持し、IFRSを米国基準に取り込んでいくというコンドースメントアプローチを発表したわけですが、一方、当初2011年中にIFRS導入の是非を決定するとしておりましたが、我々が調査に向かう1週間前に数カ月の延長を発表したと、こういうことであります。我々の報告書、今、事務局からご説明ありました資料3-2「IFRS に関する北米調査出張(米国)調査報告書概要」の1ページ下部の注釈のシャビロ発言もその関連でございます。

今回の北米調査に同行いたしましたが、米国は世界最大の資本市場を抱える国としての威信をかけてグローバルかつ高品質、さらには、IFRSと違うと感じましたのは、プラグマティックな会計基準というものの開発をリードしていく意欲と責任感を非常に強く持って取り組んでいるとの印象を受けました。アメリカ金融市場の利害関係者の保護を強く意識しており、また、アメリカが訴訟社会であることもございまして、IASBのガバナンスや基準の品質と監査法人との関係も含めた執行の可能性などについて深く研究されているとの印象も受けました。

それから、経済や金融市場の実態、あるいは会計基準の信頼性といった観点からいたしますと、我が国は、今なおIFRSへの本格導入を決定していないというところもございまして、同じく導入を決定してない米国とはいろんな点で意義ある協議ができるのではないかと思います。今後とも、アメリカの動向をきっちりと見きわめることが重要であると考えておりまして、来週2月の22日ですけれども、ファイナンシャル・エグゼクティブズ・インターナショナル(FEI)という企業側のメンバーが、アメリカから来日しまして、日米の最近の動向、主なIFRSに関する見解、あるいは日米の協働(cooperation)のあり方等についてディスカッションする予定であります。

それから、これからの日本の対応に関する、これは個人的な考えでございますけれども、数点申し上げたいと思います。

1つは、まず、日本は2010年3月期から、IFRSの任意適用を認めて以降、既に3年目となるわけですが、まだ数社しか適用例がございません。IFRS導入に関する先の見通しが現段階で明確でないためかどうかわかりませんが、結果として、任意適用制度が十分にまだ活用されていないということ。これをどう改善していけばいいのか。このような状況では、国際的にIFRSをきちっと導入しているとはなかなか言いにくい状況ではないかと思います。本審議会の検討項目の一つにも挙げられておりますので、追ってその議論したいと思います。

それから、2点目は、自国制度との関係では、日本の場合、会計基準そのものが配当計算や、あるいは財務申告と密接にかかわっており、これらをIFRSに合わせて改正することは基本的に容易ではないと考えますので、IFRSの導入の議論をさらに深めていくに当たりまして、連単分離の方向性を改めてきちっと確認していくべきではないかと思います。

3点目は、個々の基準については、これまでも必要に応じて各国との連携を実施してきておりますが、共通の課題については、それらを抱える国、地域との連携を図って、IASBに対して共同で意見発信をしていくこと。特にアメリカ等がその念頭にございますけれども、これまで以上に積極的に取り組んでいくべきであると思いました。

4点目は、現在の日本の動向は、おそらく世界に非常に注目されています。アジアにおいて、経済大国として世界をリードしていく立場にある日本がどういう決定をしていくのか。日本はこれからの対応の中で世界の理解を正しく得られるように、感情的なイデオロギーの議論ではなく、しっかりとした説得性、見識、論理構成のもとで意見発信を行い、日本が世界の会計基準づくりに大いに貢献していくべきであると思います。

そのために2つございまして、1つは、日本として、世界経済の持続的発展のために役立つ重要な経営思想は堂々と主張し、世界の理解を得る努力を継続していくべきだと考えます。同時に、アメリカの動向を注視していく中で、日本がアメリカほどの資本市場の大きさもないわけでございますので、国際会計基準づくりの世界のサークルの中で常に立ち位置を慎重に見計らいながら、過去のレジェンド問題にも思いをめぐらせつつ、適切に対処していくべきであろうと考えます。

最後に、今日もお話ありましたけど、FASBとIASBとの間には現在いろんな課題が立ちはだかっておりまして、IFRSの今後について非常に難しい情勢、まさに正念場にあるのではないかと思っております。それをFASBのサイドマン、あるいはIASBのフーガーホースト両議長の懸命の努力でプロジェクト全体を進めるべく尽力されているところであるということも、日本として十分に考え、高品質の世界単一の会計基準づくりにこれからも積極的に参加していくということが日本の立場だと考えております。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

北米について、はい、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員

佐藤でございます。

米国、カナダの印象を簡単に申し述べたいと思います。

まず、米国ですが、若干栗田課長と重複するところがありますが、私の最大の関心事は、SECとFASBの本音がどこまで聞けるかという点でありました。結果的には、昨年来、リリースされてきた情報以上の内容は聞けなかったとの印象でありました。ご承知のとおり、SECは2010年の12月にベスウィックさんというスタッフが「コンドースメント・アプローチ」という造語を紹介し、その後、昨年の5月、スタッフペーパーを公表するプロセスの中で、US-GAAPは引き続き存続し米国は会計基準設定の最終的な権限を保持する。また、コンバージェンスされた会計基準は、これまでどおり「US-GAAP」と呼称する。そういうことを昨年言っているわけですが、私自身は、コンバージェンスに近い概念だと思っており、その点を質問をしたのですが、SECはあくまでコンドースメントアプローチだということを固執しておりました。おそらくこの背景は、IASBに対して多額の寄附金を拠出しているという背景もあるのですが、影響力を積極的に行使するというしたたかな外交戦略があるのではないかと推測しております。

ただ、これまでの経緯を見ますと、今後、米国がおそらくIFRSをアドプションするという選択肢はないのではないかと、私自身は見ております。焦点は、任意適用するかどうかではないかと思っております。

それから、米国で感じた2点目は、先ほどからも出てますが、SECとFASBとでは若干の温度差があるというような印象を持ちました。FASBのほうは、世界最大のマーケットを持っているのは米国だという自負心を背景に、IASBに対しては硬軟両用作戦で臨んでいるとの印象で、「IASBも米国の声を反映すべきだ」との強行な意見も聞かれました。これに対して、SECのほうは、やはり外交的な配慮もあって相対的にIASBを意識したコメントが多かったというような印象を持ちました。

それから、3点目としては、これはカナダも同様でしたが、IASBでカバーし得ない基準の取り扱いについては、特に、訴訟社会の米国はガイダンスが必須だとの見解でありまして、これは裏返せば、IFRS、SECがどこまでサポートできるかということになるわけで、IASBの今後の課題との印象を受けました。

カナダのほうは、もともと、先ほど説明ありましたように、原則主義という考え方がIFRS導入前から浸透していたということと、準備期間に5年をかけたということで、比較的円滑に進め得たという印象を受けました。ただ、SECに登録した企業はUS-GAAPの使用、またはIFRSの使用が認められており、運用上のフレキシビリティを維持しながらカナダはIFRSを導入しているという印象を持ちました。

SEC登録企業について、帰国後調査しましたところ、予想通り米国に登録した企業は規模が大きな会社が圧倒的に多いというデータが出ております。

それから、カナダも、先ほど米国と同じように、IASBの基準でカバーし切れない基準、例えば料金規制業種とか資源関係・探査関係の基準等については、ガイダンスがやはり必要だという強い希望があったのは印象的でした。IASBの機動的な対応力が課題になろうかと思います。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがですか、北米について。はい、関根委員。

○関根委員

ありがとうございます。今回の海外調査については、もちろん各国の事情に違いがあるため、各国で行われていることをそのまま日本に当てはめるということは適当ではないとは思っておりますが、各国での経験から得られたものを日本でうまく活用していく、もしくは考慮していくということは大切なことではないかと思っておりまして、調査に参加した一員として感じたことを述べさせていただきたいと思います。

先ほどの話にもありましたように、今回の調査の多くはウェブや報道などに出ていることを確認したということではあったかと思います。しかしながら、いろいろな媒体を通してではなくて実際に直に会って話を聞いたというのは、それぞれ人によって印象は異なるかもしれませんけれども、非常に有意義でありまして、このようなセッティングを行ってくださった金融庁、各事務局の方々に感謝しております。

まず、米国ですけれども、先ほどお話がありましたように、訪問した2011年12月は絶妙なタイミングだったと言えるかと思います。2011年中に意思決定をすると言われていたぎりぎりのタイミングと思っていたところ、その前の週にSECのスタッフである主任会計士が、あと二、三カ月かかると述べており、その本人と話をさせていただきました。こちらは、二、三カ月かかるということがネガティブな形に伝えられているような印象も持っていたのですけれども、スタッフの方たちは、きちんと対応していくためにはこれだけ時間がかかるのだと説明をしており、私自身はむしろポジティブな印象を受けました。SECでは、先ほど来も話が出ておりますけれども、グローバルで一つの基準に向かうということ、それがアメリカの基準と融合していくということについて非常に強い意思があるように感じられました。これはアメリカの市場の大きさとか、アメリカの威信とか、いろいろな政治的なものもあるのかもしれませんけれども、そういった意思が感じられました。

例えば米国の報告書の5ページのところにありますように、SECの委員の方は1名だけが対応されたのですけれども、その対応した方が、最終的にグローバルで一組の基準になることが投資家保護にかなうということを非常に強く信じているということをおっしゃっていました。であるからこそ、2組の会計基準が併存することになる任意的適用は、企業間の財務数値の比較可能性を損なう可能性があり、証券市場者参加者のベネフィットにならないため反対だと、その方はもともとそういう考えであるというふうに言っておりました。もちろんそれぞれいろいろな考え方がありますし、市場関係者、特に任意適用を望む企業からは、そうはいっても、やはりグローバルでの対応等を考えて認めてくれという声も強かったのですけれども、SECの委員の方がそのようなことを述べていたのが非常に印象的でございました。

そういう意味で、任意適用を認めて2つの基準を許容するのは、一つの基準を目指すこととは相入れないので、前向きだというふうに私は感じたのですけれども、もともと米国というのは、以前この審議会でも発言させていただきましたが、1つの基準ということを非常に大切にしている国です。そのために世界各国で米国基準というのを理解しなければいけないというようなところがございまして、外国会社についても自国基準では認められず、米国基準への調整表を必要としていました。そういったことからも一貫しているのかと考えています。

また、FASBについてもやはり印象的な点がありました。原則主義についての議論の中で、これはFASBに限らずですが、ガイダンスの必要性を訴える声が大きく聞かれていたのですけれども、FASBはあくまで、まずは他国の状況を確認して、その上で、これは報告書の16ページにもありますけれども、ガイダンスの必要性が各国で共通する項目については、建設的な方法でIASBに依頼して、ガイダンスが作成されるようにするとしていました。仮にそういったガイダンスが作成されないとしたら、米国内での会計基準の円滑な適用を図るために対応すると。これは非常に理想的な気もしますけれども、日本がもしIFRSを適用するというようなことがあった場合に、こういった考え方、そのために基準設定主体はいつも用意をしておくといったことは大いに参考になるのではないかと思っております。

それから、アメリカが自国基準にこだわるのは、法律上米国基準という名前が使われているということが挙げられていました。また、SECでは、コンドースメントはエンドースメントに近いという話もありましたが、エンドースメントといっても、100%無条件に受け入れるのではないとは言っている一方で、5年、7年かけ、最終的には米国基準イコールIFRSを適用しているというふうに言いたい、これは願望かもしれませんけど、そういうふうに言っていたというのが印象的でございました。あと、もう一つ、時々話が出ていましたのは、短期的に解決できないからといって、一つの基準を目指さないというのはもったいないのではないかということで、これもまた印象的な言葉でした。

ただし、今まで委員の方々からも話が出ていますように、最終的に米国がどのようにするかというのは、SECの5人の委員が決定することであり、SECのスタッフはあくまでもそのための資料を作っているのだとも言っていました。ですから、スタッフペーパーがそういうことを目指していることは確かですが、最終的にどうなるかというのはこれからだということも確かですので、そのあたりを混同せずに、米国というのは非常に市場が大きな中でこういう考え方を持っているということを見極め、ここから学ぶことはどういうことかというのを考えていく必要があるかと思います。

長くなり、恐縮ですけど、次にカナダについては、これまでもお話が出ていますけれども、やはり自国基準は維持するということは適切でないと判断したとのことです。これは報告書の中の8ページ、9ページあたりにありますけれども、市場規模が3%未満と少ないことから判断したということなのですが、実は、カナダの上場企業というのは、4,000社近くありまして、非常に数が多い。これは、私の不勉強で非常に驚いたことではありますが、もちろん大きな企業というのもあるものの、かなり小さな企業もあります。そういう企業がどのように適用していったのか、一時期に適用したわけですので、どのように対応したのかというのは、報告書にも詳しく書いてありますけれども、日本でもし適用する場合に参考になるのではないかと思っています。

例えば報告書の中で、もともとカナダは原則主義であったので、簡単だったという声も多かったのですけれども、片や、やはり特殊な企業、これは保険会社で概要書にもありますけれども、保険のようにかなり特殊な業種ですとなかなか難しいということもあったというふうにも聞いております。反面、実際に適用を容易にするための努力というのが、報告書の中の15ページ、16ページあたりにいろいろ書かれております。こういったこと、特に中小規模の会社が多いカナダがどうだったかということを参考にできればと思っております。

また、IFRS Discussion Groupというのもあり、これも12ページのところで若干触れていますけれども、公開の場でいろいろことを皆で議論して、それによって解決策を探るというか、そこで解釈指針を出すわけではないですけれども、実際に解釈指針が必要であれば、IFRSICに持ち込むとか、そういった手だてをして影響力を行使しているといったことも印象的でした。せっかく行った調査ですので、このようなことが参考にできればと思っております。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございます。

ほかに、いかがでしょうか。はい、五十嵐委員。

○五十嵐委員

調査に米国・カナダを訪問させていただきましたので、気が付きましたことを数項目述べさせていただきます。

まず、米国ですけれども、米国は、FASBとIASBとの間にMoUを締結しておりますが、その文書の中にはSECの名前はないと理解しております。しかし、実際にMoUを実行しコンバージェンスを進めていく中で、SECが最終的に承認するという方式をとっていると解しています。国際的に一組の会計基準、つまりIFRSの導入についてコンバージェンス、インコーポレーション、ミューチュアル・レコグニション、アドプション、エンドースメントなど、多様な用語が使用されており、多様に理解される可能性もあり、統一的な国際的基準の導入において支障があるのではないかということが、IFACのCAP、コンプライアンス・アドバイザリー・パネルで議論されていました。そして、最近、SECからコンドースメントという新用語が公表され文章のみ読んでもなかなかわかりにくいことでしたけれども、今回、SECへの訪問時に、担当官の方からコンドースメントの考え方をお聞きしまして、アメリカにおけるIFRSの取り組み方が理解できたことは非常に重要だったと思っております。

それにつきましては、資料の議事録に記述されておりますので、割愛させていただきます。

2点目は、会社法と税法への影響で、LIFO、後入先出法の適用ということがありますが、アメリカの会計基準ではLIFOは認められておりますけれども、財務諸表の開示でLIFOの帳簿価額を超える再調達価額またはカレントコストの額が要求され、また、LIFOリクイデーション(liquidation)に関する情報の開示が行われます。日本では要求されていません。調査時に、このLIFOにおける現行の会計上の処理が税務上の前提となっており、IFRSの導入に当たり影響が大きいということを確認させていただきました。棚卸資産評価のLIFOをそのまま導入するのかしないのかということは、会社法・税法上の検討に当たって重要な事項と理解しました。

カナダですが、カナダの会計プロフェッションは、経済的・地理的にアメリカと密接な結びつきがありし、文化および歴史的にはイギリスと密接なつながりがあると理解しています。その結果、一般的家に言えば、会計基準に関して双方の影響に基づく緊張感があり、ある意味でニュートラリティのある国として中立的な立場として意見が述べられることも多いと理解しています。こうした状況の中で、カナダは2011年の1月から、自国の会計基準の開発をやめて、IFRSの会計基準の採用をするという考え方に関心がありましたが、これにつきまして、約5年間、調査を行って、その結果、自国の戦略として、自国の会計基準の開発をやめてIFRSを導入するということを詳細にお伺いし、このような戦略について大変興味深くお聞きました。

次に、こうした自国の会計基準の開発をあきらめた場合のIASBの影響力の行使につきましては、2点参考になりました。1つには、基準設定主体の方のお話ですと、IASBの理事についてカナダとしては非常に会計に詳しい方を派遣されて、IASBの会計基準設定に貢献するということでした。

2番目は、IASBは、ごらんのように、一般的な内容を包含する会計財会計基準の開発を行われておりますがスペシャルインダストリーについての会計基準はないと理解しています。特定の業種に対して一つの統一的な会計基準で適用ことは無理な内容があると思っていましたが、カナダからも同じような説明を受けました。つまり、カナダ特有の資源の産業などについては、一般目的のIFRSでは適用がやはり難しいというか、適用困難なことがあると思います。カナダでは、こうした事項につきまして、IASBの議長又はIFRICの議長を招いたり、また、カナダからIASBに意見を発信することによって、自国特有の会計基準をIASBのIFRSに入れていくということを積極的に行われていらっしゃるとお伺いしました。したがいまして、文章、論文その他においても参考になりますけれども、やはり実際にお伺いすることは非常に貴重な経験であり、今回の調査は非常に有効だと思いました。これらの考え方は日本でのIFRS導入に向けて参考になると感じました。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

この調子でいきますと、今日は補足説明で終わる可能性がございます。そういうことをご承知の上でどうぞご発言をお願いします。はい、引頭委員、どうぞ。

○引頭委員

今、会長からご指摘がありましたので、短く2点コメントさせていただきます。

まず、1点目ですが、アメリカに訪問したところ、前からわかっていたことではありますが、FASB以外に、監督当局としてのSECがスタッフペーパーという形で膨大な研究、コメント意見などを公表しています。日本をみたばあい、そうした当局からの意見発信の部分が弱いのかもしれないということをかなり痛切に感じました。

2点目は、アメリカもカナダも同様でしたが、アーニングズ、当期利益というものが、最終的に何を意味すれば、投資家や、あるいは利用者、あるいは作成者にとって意味のあるものなのかという定義がまだ国際会計基準の中ではきっちりされてないとの意見が多くきかれました。私たち日本の利用者としてもずっと強く思っていたことでしたので、世界共通の懸念であるということが確認できました。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

北米はよろしいですか。

そうしますと、次は、アジア、資料2の3枚目、メンバー表がございます。はい、鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員

それでは、韓国、中国に行って学んだ私の印象を3つほど述べます。

1つは、中国、韓国ともその国の置かれた事情を反映している。その上で戦略を遂行している。中国は、会計の近代化、国有企業改革、国有企業の株式市場における流動性の向上に力点がありました。この辺はあまり日本とは関係ないものです。韓国においては、会計の信頼性の向上ということです。国内的にもグローバルにも投資家の信頼が得られないということで、連結の範囲とか、連結による業績パフォーマンスとかが話題でした。連結における市場での評価という点は、日本では20年近い前の話です。大分局面が違うという印象を持ちました。日本では、コンバージェンスは続けていく。しかし、異論のあるところは大いに主張していく。中国ではそれを双方向と言うんですね。自分たちはフルコンバージェンスだけれども、違うところは違うと、主張していく。先ほどASBJの西川委員長からもそういう話がありましたけれども、主張すべきことは主張していくというのが大事であると感じました。

2点目は、IFRSを導入して企業の経営判断に影響があったのかという点です。これが私の問題意識です。投資家にどういう影響があるのか、とりわけ比較可能性のところに関心があります。中国の大手の鉄鋼会社に行きましたところ、バランスシートが従来とは変化してきている。それをどうマネージしていくかという意味で、経営者はそれを注意深く見るようになった。ひいては、リスクの見える化をポジティブにとられているというような話がありました。やはり企業経営には影響を与えているわけです。

それから、韓国の重機械工業の会社においては、業績を連結で見るようになった。連結で見るのが当たり前の私には違和感がありますが、連結と単体の違いが出ているわけです。一方、比較可能性が低下してくるのではないかというようなことも言っています。つまり、選択肢が広がるということは差が出るということです。一方、韓国のアナリストからは、IFRSは今始まったばかりなので、二、三年を経てデータがそろってくればもう少しわかりやすくなるのではないか、というような話も出ていました。この比較可能性に関しては、狭義と広義とを分けて考える必要があります。選択肢が広がるという意味では差が出るわけですけれども、もう少し大局的に見て、我々は何を比較していくのかというような観点から大きな視点でとらえる必要がある。グローバルセクターとか、あるいはセクターを超えて自動車産業同士ではなくて、例えば自動車会社と家電企業をどうやって比較するかというようなことも踏まえて、見ていく必要があると感じます。

3点目は、グローバルな資本市場の整備に役立つということです。中国も、韓国も、新しいルールを適用して、国内だけで活動している企業にとってはメリットはほとんどないといっています。今まで通りで特に不都合はない。コストがかかるだけであって、そんなにメリットは大きくない。中国の大手の鉄鋼会社でも、手間の方から考えた場合に、国内活動だけだったらさほどメリットはないといっています。一方で、中国の企業も海外に進出していく。あるいは中国に海外の企業が入ってくる。資本市場の開放をこれからさらに進めていく。そういう観点では極めて役に立つんではないか。つまり、投資家がわかりやすくなるということで役に立つのではないか、というような意見を同じ鉄鋼会社で聞きました。

また、韓国ではオペレーティングインカム、営業利益というのを注記で使っていますけれども、先ほども話が出ていたネットインカム、オペレーティングインカムなど、もう少し投資家が使いやすく、わかりやすい利益の概念というのをさらに明確にしていく必要があると思います。そういう意味では、IFRSというのはまだ過渡期にあるという印象を持ちました。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

手を挙げておられる永井委員、お願いします。

○永井委員

ありがとうございます。2点ほど、今回の視察についての感想を述べさせていただきたいと思います。

1点目は、今の鈴木委員の発言とも重なるのですが、コンバージェンスにせよ、アドプションにせよ、企業の負担は非常に重いということと、企業によってメリットとデメリットが大きく異なるということです。先ほど鈴木委員からもご指摘がありましたが、中国の某大手鉄鋼メーカーに伺ったところ、中国の調査報告書の11ページにもございますように、コンバージェンスでどうなったかというと、結局国のメンツが立ったという話であって、企業レベルでは新準則やIFRSを導入するニーズは全くないと。コストと作業量の増加以外何もないという率直な感想が聞かれました。確かに海外展開をあまりしていない、あるいは海外で資金調達をする予定もないのに、上からやれと言われて、多額のコストをかけてメリットは何もないという企業はほかにもあるのではないかと思います。ただ、公平を期するためにつけ加えるとすれば、韓国のあるメーカーはフルアドプションのメリットを挙げるとすれば、海外子会社をたくさん抱えているので、単一の基準を使えるようになったことがメリットであるとおっしゃっていました。

2点目ですが、これも鈴木委員の指摘と重なるのですが、企業間の比較可能性というのが必ずしも高まらないということを、韓国の大手証券会社のアナリストから伺いました。このアナリストの方のお話では、会計方針のばらつきによって比較が困難になっているということで、これは韓国の調査報告書の14ページの注記にございますが、例えば造船業のレポーティングを見ますと、為替差損益処理だけで4つ出てきたということで、注記を読んでもわからないときは、電話やメールでどうしてこういう会計処理をしたのか理由を聞くということでした。個人投資家の方をおとしめるつもりは全くないのですが、大手証券会社のアナリストの方が理解に苦しむようなことが個人投資家に簡単に理解できるのかなと、私は率直にそういう感想を持ちました。また、大手金融機関のアナリストでしたら、担当者とパイプをもっていて、わからなければ問い合わせるということもできるでしょうが、個人レベルでは電話をかけても、注記をお読みくださいで終わるのではないかと、そう思います。

あと、よくIFRSをめぐる議論で投資家のためという言葉を聞きますが、投資家というのは一体だれのことを指しているのかなと、正直思いました。この韓国のアナリストの方は、中長期的には同じ業種で会計処理が収れんしていくかもしれないと、そういうふうに語っておられました。私もそうなればいいと思いますが、希望的観測にも思います。少なくとも今の韓国の状況では、個人投資家は分析という点でメリットを受けていないなという印象を受けました。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、河崎委員、お願いします。

○河崎委員

ありがとうございます。先ほどの鈴木委員、それから、永井委員のご発言とダブる面があろうかと思いますが、私が印象に残った部分だけにお話しさせていただきたいと思います。

第1点目でありますが、これはIFRSに対する両国の基本的な考え方であります。これは、ある意味で明確な国家意志といいますか、国家戦略といったものを主張しておられました。中国は、先ほど鈴木委員がおっしゃられたように、会計の近代化、そのためのIFRS導入でした。ただ、その導入の仕方はいろいろでありまして、ある担当者は、実質アドプションという言い方をしておりましたけれども、基本的にはコンバージェンスということでした。しかし、先ほどの例を見てもわかるように、これがコンバージェンスかと思われるような例もあったりしますが、世界に向けては、堂々とコンバージェンスと言っているわけです。そういう意味では、ちょっと表現悪いかもしれませんけれども、したたかな面がある。ある意味では、賢いというふうに言うことができるかもしれません。

それでは、なぜアドプションをしないのかというと、中国が言っていたのは、中国の会計基準は法律であるということです。要するに、新企業会計準則は法律なので、その中に西洋的な考え方を入れ込むことはできないというわけです。そのため、アドプションとはいわず、実質的アドプションという言葉によって表現をしている。

それから、韓国は、先ほどもご説明がありましたように、コリア・ディスカウントをいかに解消するかということで、世界をあっと言わせる必要があったということでした。そのためにはフルアドプションだということで、そちらのほうへ移行したということでした。

両国は、これを見ても分かるように、我が国とは非常に国家的な事情というか、政治的、経済的な背景が大きく異なるということが第1点であります。

それから、第2点目は、先ほど永井委員がおっしゃられました比較可能性の問題であります。この比較可能性は、IFRS導入によって高まるということであるわけですけれども、企業の話を聞いてみると、逆に選択肢が多くあり過ぎて、比較可能性は低くなってしまったという意見が非常に印象的でした。

それから、3点目は、会計処理の問題であります。業績指標につきましては、まだ包括利益というのはよくわからない。それは投資家にとってもそうだし、また企業の経営者にとってもそうであるということでした。先ほどお話もありましたように、韓国では営業利益を注記で求めているといったような形で、伝統的な会計の指標にまだ頼っているという面があります。

それから、公正価値評価の問題ですが、固定資産については、先ほどもお話がありましたように、原価モデルが採用されています。再評価モデルもあるし、選択適用できるはずなのにほとんどが原価モデルを採用しているということであります。

それから、4点目になりますが、税務の問題であります。これは専ら韓国に関心がありまして、そのことをお聞きしました。まだ申告の時期に至ってないのでわからないけれども、おそらく申告調整の作業はかなり複雑になるであろうというのが実務家の皆さんの意見でした。韓国の場合には、大統領命令によって税制改正までやっているわけですけれども、それでも、やはり調整がかなり複雑になるというようなことを、実務家の印象としておっしゃっておられました。

それから、5点目でありますが、中小企業の会計について少しお話を伺いました。中国の場合には、小企業会計準則というのをつくって、別のものをつくっております。それから、韓国も今後、小規模企業のための会計は別のものをつくるという方向を目指しているということでありました。したがって、IFRS問題は、大企業、あるいは公開企業に限った議論に絞っているようであります。

それから、最後でありますが、IASBへの対応の問題であります。先ほどASBJのほうも積極的な意見発信をやっていくということでした。これは非常に結構なことだと思うんですけれども、先ほど鈴木委員がご指摘になられましたように、中国並びに韓国は自国の利益を守るために積極的な意見発信をしているように思われました。妥協のための発信ではなくて、あくまでも自国のためにいかに有利な基準づくりをするかという立場からの意見発信であるというような印象を受けました。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。アジアについて、ほかに。はい、荒谷委員、よろしくお願いします。

○荒谷委員

私もほとんど皆様がおっしゃったことと同じですので、同じことを繰り返すのも何ですが、1点、私の感想を申し添えさせていただきますと、先ほどどなたかがおっしゃっておられましたが、IFRSの導入を韓国の場合も国家プロジェクトとして進めているわけですね。具体的には、コリア・ディスカウントを克服して、世界から認めてもらうようにしようという目的のために、この制度を導入するに当たって、まず、商法関係の規制の整備ですとか、税法改正といった周辺環境の整備を行い、IFRSを導入しやすい形を整えた上で一斉に導入をしたという点が非常に印象に残っております。ですから、我が国で導入を考える場合にも、税制や、会社法についても関係者と調整をして一丸となってやっていかないと、したたかな国際社会の中で生き残っていくことはできないのではないかというのが非常に強い印象として残りました。

それから、もう一つ、韓国で私が印象に残りましたのは、報告書の4ページ、5ページにも書いてありますが、韓国の場合は、上場企業は規模の如何にかかわらず、連単ともにこれを導入したのですが、金融機関については非上場についても導入しているんですね。これは金融機関という特殊性を考慮してのことだということでしたが、我が国で検討をする際にも、業種等によって導入の是非を考える余地があるのではないかという印象を受けました。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかによろしいですか。はい、泉本委員、お願いします。

○泉本委員

最後に、私も韓国に行かせていただきまして、前回も少しお話ししたのであまり追加はありませんが、今、荒谷委員のほうから国家プロジェクトでやったと言う説明がありましたが、これは、導入に向けて3年ぐらいの期間、17団体ぐらいがKASBを中心にいろいろ準備や教育研修をやったというものです。またこの間、大手の監査法人が無料で中小の上場企業等にコンサルをしたということでした。無料のコンサルはその後の期間で回収するとは思いますけれども、そのような準備や協力を国家を挙げてやったというところがありますので、日本でこれからIFRSを導入するに当たっては、もっと盛り上がっていかなければならないのではないかというのが1点です。

それから、韓国では会計基準の導入が連単同時だということですが、少し日本と状況が違うと前回申し上げたと思いますが、上場企業のうち連結があるところが40社程度にすぎないということで、単体にも導入しないと意味がないということだったのだと思います。また、いろんなところで「比較可能性」という言葉が出てきますが、これから、もし日本で連単を分離して導入するとか、あるいは一部の企業に任意適用だけにするとか、そういう議論のときに、日本の市場にいろんな基準で作成した財務諸表が出てくることになり、果たして日本の市場の中で何を比較するのかとなります。比較というのは何かと何かを比べるものですので、そこのところをしっかり議論していただかないと、却って比較不能な市場をつくってしまうのではないかというのが私の印象でございます。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

これで一通り補足説明をお願いしました。ほとんど時間がなくなりましたが、結果的には、調査に参加された出席者で発言されなかったのは久保田委員だけなんですが、久保田委員よろしいでしょうか。ありがとうございます。

ちゃんと定刻に閉じたいと思っており、国、地域別にはもうやっている時間もございません。あと数分ですが、特に、それぞれの調査団、調査メンバーに対して、あるいは事務局の報告に対して、確認あるいは質問したいという点がございましたら、ご発言をお願いしたいと思います。はい、辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

非常に興味深いお話をありがとうございました。

最後のアジアですけれども、行かれたメンバーが全く異なる2つ見方で、違うことをおっしゃっていたのが非常に印象深かったというのが一つあります。

それから、ちょっと注意しておくべき点というか、おやっと思いましたのは、「いわゆる包括利益というものに対してアナリストがあまり使わなくなった。で、営業利益、純利益の意味をもう少し詰めるべきだという議論が出ていた」というご報告があった中で、アメリカの資料3-2では、「投資家からは包括利益の重要性に関する指摘も聞かれた」ということでしたので、実はこの投資家というのはどこなのなと思って今日の資料で拝見しましたら、CFAインスティチュートなんですね。世界的に包括利益にフォーカスを当てるべきだという議論が始まったのは、まさにここの団体の主張を受けてIASBが包括利益にフォーカスし始めたと経緯がありますので、投資家一般というよりは、このCFAインスティチュートに固有の考え方の再確認というふうに承りましたので、ちょっとコメントさせていただきます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。よろしいですかね、もうひと方ぐらい大丈夫なんですけど。よろしいでしょうか、事務局から何かありますか。

地域別の質問というふうになればあるのかもしれませんが、時間がないから質問を差しかえたという方があれば、ちょっと挙手をしていただきたいんですが、よろしいですか。はい、山崎委員、どうぞ。

○山崎委員

山崎です。技術的な話かもしれませんけれども、韓国は税法を変えて云々というのがあるんですが、その結果、申告調整が大変になるんだというお話なんですが、そうすると、税法を変えた内容、これは非常に技術的な話なんですけれども、私は、概要しか読んでおりませんので、詳細版には書いてあるのかどうかわかりませんけれども、その辺は、別に今日でなくても結構ですからご説明いただければと思います。

○安藤会長

では、事務局から。

○栗田企業開示課長

今の山崎委員のご質問も含めて、ほかにもしご質問があれば、メール等でいただければ個別にご回答させていただきたいと存じますので、もしある方は、よろしくお願いします。

○大武委員

すみません。1点だけ。

○安藤会長

はい、大武委員、どうぞ。

○大武委員

ありがとうございます。大変皆さん、わざわざ調査、ありがとうございました。できましたら、アメリカはまだ数カ月後という話ですが、ぜひともこの調査を事務方の方では継続していただきたいなというのを強く思います。私もしょっちゅう中国は行くんですが、実は、中国はかなり発言を強制されていたように私は思います、はっきり言いますと。ですから、その意味で生で聞いた意見とかなり違っているような気も私はしますので、その点でも、今度調査団という形で行くと、非常に対応が変わる国もあるものですから、むしろ事務方が事務ベースで財務省とやってほしいという気もいたします。そういう点で、むしろ今後もフォローして、各国がこれを時々刻々適用していく中でどのように受けとめているかということのフォローアップを続けていただくことをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、終了の時間となりました。海外調査にご参加いただいた委員の皆様には大変ありがとうございました。本日、ご報告いただきましたこの海外調査報告は、当審議会の今後の審議に当たりまして、大いに活用させていただきたいと考えております。

当審議会では、次回以降も引き続き、今後の論点・検討の進め方として提示させていただいた主要項目について、順次ご議論いただきたいと考えております。

それでは、最後に、次回以降の日程等につきまして、事務局より説明してください。

○栗田企業開示課長

次回は、今月29日水曜日の14時から16時で開催を予定してございますので、ご出席のほうよろしくお願いしたいと存じます。

○安藤会長

それでは、本日の合同会議はこれにて終了いたしたいと思います。委員の皆様には、審議にご協力いただきましてありがとうございました。

これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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