企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成25年3月26日(火曜日)13時00分~15時00分

2.中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成25年3月26日

○安藤会長

定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様には、ご多忙のところご参集いただき、誠にありがとうございます。

まず、会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様、本日の総会も企業会計審議会の議事規則にのっとり、会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ご異議なしということで、ご了解いただきました。そのように取り扱います。

議事に入ります前に、前回の本合同会議、これは昨年の10月2日でございました。それ以降、委員の異動がございましたので、まず新委員全員のお名前を紹介させていただきます。

岡田譲治氏、川村雄介氏、本田桂子氏、水口啓子氏、釡和明氏、川島千裕氏、神作裕之氏、徳賀芳弘氏、柳川範之氏、万代勝信氏、秋葉賢一氏、以上が新たに委員に就任されております。

次に、本日ご出席の新委員をお一人ずつ紹介いたします。本田委員でございます。

○本田委員

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

水口委員でございます。

○水口委員

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

釡委員でございます。

○釡委員

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

神作委員でございます。

○神作委員

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

柳川委員でございます。

○柳川委員

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

万代委員でございます。

○万代委員

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

秋葉委員でございます。

○秋葉委員

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

なお、川村委員は少し遅れて来られるとのことです。後ほど紹介させていただきます。

また、岡田委員、川島委員、徳賀委員は本日ご欠席でございます。

委員名簿はお配りしております。ご参照ください。

それでは議事に入ります。

最初の議題であります「不正リスク対応基準(案)」等についてでございます。当審議会の監査部会におきまして、昨年5月より、会計不正に対応した監査手続のあり方などについて審議を行い、「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書(案)」として取りまとめていただきました。

本日は、この不正リスク対応基準等につきまして、総会としてご承認いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書(案)」の内容などにつきまして、監査部会の脇田部会長から説明をお願いします。

○脇田監査部会長

監査部会長の脇田でございます。私から、「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書(案)」につきまして、簡単にご説明をさせていただきます。

お手元に配付されております資料1「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書(案)」をご参照いただきたいと思います。

ただいま安藤会長からお話がございましたとおり、監査部会におきまして、昨年5月より、会計不正に対応した監査手続のあり方などについて、9回にわたりご審議をいただきました。

現行の監査基準では、近時の会計不正事案にどのように監査人が対応しているのかが必ずしも明確ではない、会計不正事案に対応する監査業務の執行も一様ではなく、監査人間にばらつきが生じている、監査人は監査の実施過程における不正リスクに対応するために監査手続をより一層注意深く慎重に実施すべきである等のご指摘がございました。

これらのご指摘を重く受けとめまして、監査部会では、監査をめぐる内外の動向も踏まえまして、不正による重要な虚偽表示のリスクに対応して実施すべき監査手続を明瞭に規定するとともに、不正による重要な虚偽の表示が識別された場合は、特段の注意を払うとともに、より一層慎重に監査手続を実施することを明確に求めるために、監査における不正リスク基準を設けることといたしました。

昨年12月に公開草案を公表いたしまして意見を募集し、寄せられましたコメントを踏まえまして改訂案を作成し、今月13日に開催されました監査部会における審議の結果、監査部会として、「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書(案)」を取りまとめさせていただきました。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご意見等がございますでしょうか。特にないということでございますので、よろしいですね。

それでは、ご審議いただきました「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書(案)」につきまして、総会としてご承認をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ご承認をいただいたということで、それではお手元の意見書(案)の「(案)」案をとっていただければと存じます。

それでは、ただいまご承認いただきました意見書を島尻政務官にお渡しし、ごあいさつをいただきたいと思います。

(政務官へ意見書交付)

○島尻政務官

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。

委員の皆様方には、格段のご協力をいただいており、改めまして衷心より厚く御礼を申し上げます。

まずは、監査基準の見直しについて申し上げます。

本日、「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」を取りまとめていただきました。委員の皆様方におかれましては、精力的なご審議をいただきまして、感謝を申し上げます。今後、この基準を踏まえた監査が行われることなどにより、会計不正事案の抑止につながることを期待しております。

次に、国際会計基準について申し上げます。

日本における国際会計基準の適用のあり方については、さまざまな考え方があると承知をしております。したがいまして、国際会計基準適用に関する今後の方向性については、国内関係者の間で幅広い共通理解が得られるよう、引き続き議論を行っていく必要があると考えております。産業界、市場関係者、会計監査人、研究者等の幅広い関係者で構成される当企業会計審議会において、引き続き検討をよろしくお願い申し上げます。

日本といたしましては、国際情勢を踏まえ、国際的に日本が孤立することがないように留意しつつ、日本にとって最も最適な対応を総合的に検討していきたいと考えております。

委員の皆様方には、引き続き、格段のご協力をいただきますようにお願いを申し上げ、私のごあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

島尻政務官には、この後、ご公務がおありになるとのことで、ここで退席されます。どうもありがとうございました。

○島尻政務官

よろしくお願いいたします。

○安藤会長

次に、国際会計基準について議論いただきたいと存じます。

前回の合同会議におきまして、2011年からIFRSを強制適用しているカナダと韓国の導入後の実態や課題等につきまして、当審議会において説明してほしいとの意見がございました。

最初に、カナダ・韓国の状況について、事務局より説明してください。

○栗田企業開示課長

お手元に資料2-1、資料2-2を配付させていただいております。資料2-1がカナダの状況、資料2-2が韓国の状況に関する資料でございます。順にご説明をさせていただきたいと存じます。

まず、資料2-1のカナダの状況でございます。表紙をめくっていただきまして1ページ目でございます。これは、これまでの状況を取りまとめたものでございますけれども、カナダでは、2011年1月より、上場企業や金融機関に対しまして国際会計基準が適用されております。

また、米国SECに登録されている企業につきましては、米国基準の使用が引き続き認められているという状況でございます。

なお、カナダでは、適用されるIFRSはカーブアウトのないIFRSが原則でございますけれども、2点例外がございます。1点目は、投資会社について2年間IFRSの適用を延期するということが決まっておりました。この点につきましては、注1のところに書いてございますけれども、投資会社につきましては、その後1年間適用が延期されておりまして、昨年の12月に、2014年1月から国際会計基準の中の投資企業の規定を適用することが現在のところ決まっているという状況でございます。

それからもう1点、電気、ガス等の料金規制業種につきましては、当初1年間適用を延期する、あるいはSECに登録していない企業であっても、2015年1月1日に始まる事業年度より前までは米国基準の適用が可能であるという例外が設けられておりました。この点につきましては、その後3回にわたって適用延期が行われておりまして、現在のところは2015年1月から適用開始をするということになってございます。これが前提でございます。

1枚おめくりいただきまして、2ページ目からがカナダの実施状況のレビューでございます。2012年8月29日に、カナダの会計基準審議会が2011年から2012年の年次報告書を公表しておりまして、その中でIFRS適用初年度の評価について記述をしております。

まず、一番初めのところですが、AcSBの行った調査では、IFRSの強制適用に明確に反対する意見は少数であったが、IFRSの強制適用を疑問視したり不満に思う意見もあったということが述べられておりまして、そこの小さいポツの2番目でございますけれども、主に中小企業において、IFRS適用のために生じる労力・費用に比べて導入の便益が限られているという懸念があったということ、それから、その下、米国に先立ちIFRSを導入したカナダの決定を疑問視する意見があったということが記載されております。

しかしながら、AcSBは結論といたしましては以下のとおり述べております。その下の丸のところでございますけれども、IFRSの改善は必要だが、国際的に受け入れられる質の高い単一の会計基準という目標実現のためには、IFRSが唯一の現実的な道である。米国における状況に応じてカナダの中核的な戦略が決定されるべきではない、ということです。

さらに、2011年度末までにIFRSをカナダで導入・実施するという目標を達成しており、長期的な目標に向かって前進していることについて、AcSBは満足しているということでございまして、カナダの会計基準審議会の公式なレポートによりますと、カナダでは今のところ目標を達成しているというふうにまとめられているところでございます。

1ページめくっていただきまして、ただそうはいっても、なお完全に解決するにはさらなる時間を要する主な課題があるということで、以下4点ほど述べられております。

1点目は、先ほどの話にも関連いたしますけれども、料金規制の影響に関するIFRSにおける具体的なガイダンスの欠如ということでございます。この点については、既存のIFRSの解釈を用いると、投資家、債権者及びその他の財務諸表利用者にとって一般的に有益ではないと思われるような情報を提供することとなるため、AcSBは料金規制業種企業に対してIFRSの強制適用日を遅らせることを決定した。その結果、カナダの料金規制業種に属する企業は、財務報告につきさまざまな異なる方法で報告することとなったということを述べております。さらに、料金規制に係るガイダンスの欠如による問題はあるが、AcSBは、基準のカーブアウトや解釈の追加を行わないほうが望ましいと結論づけたということでございまして、新たな解釈の追加等は行わないで、IFRSにおける料金規制業種に関する基準の設定を待つというスタンスがとられているということでございます。

2点目は、IFRS下での投資企業のガイダンス開発の促進ということでございます。この点も先ほどございましたけれども、投資会社の行う全ての投資について公正価値評価を継続できるようIFRSを改訂するプロジェクトを行うようIASBに要求したが、プロジェクトはいまだに完了していないということになっております。この報告の時点ではこういうことであったんですけれども、この後2012年10月にIASBが投資会社についての最終基準を公表しておりまして、それによりますと、ある企業が投資企業に該当する場合には原則として子会社株式は公正価値評価するという改訂がなされておりまして、この基準は2014年1月1日以降開始する事業年度から適用されるということに今のところはなってございます。

3点目は、ページをめくっていただきまして4ページ目でございますけれども、IASBと米国のFASBのコンバージェンス作業による影響への対応ということでございます。収益認識、リース、金融商品、保険契約の4つの基準、これについては非常に重要であるということで、両設定主体のコンバージェンス作業を見守るというスタンスがとられているようでございます。

4点目は、IFRSのうち、明瞭性や具体的なガイダンスが欠けていることにより、実務上、適用時に問題が生じる場合の問題解決ということでございます。IFRSについて解釈の不明確さや不統一な実務に対する懸念があるということを述べておりまして、この点について、カナダではIFRSディスカッション・グループにおいて問題点を共有するとともに、これらの問題に関する対応案を検討して、IASBまたはIFRSICに提案する等の対応を実施したということでございます。これは後で韓国のほうにも出てまいりますけれども、やはりIFRSの解釈が不明確な場合における対応について不満があるということが述べられております。

カナダは以上でございまして、幾つかの課題はまだあるものの、全体としては比較的うまくいっているという結論になっていると存じております。

次に韓国でございます。資料2-2の表紙を開けていただきまして1ページ目でございますけれども、韓国では、2011年から、IFRSを逐語で翻訳・制定されましたK-IFRSが全ての上場企業の連結・単体財務報告に適用されております。

それから少し飛んでいただきまして、金融機関につきましても、原則として、これは上場・非上場問わずK-IFRSが適用されるという扱いになっております。さらに、K-IFRSでは現時点においてカーブアウトは行われていないということでございます。

2ページ目にいっていただきまして、韓国では、このIFRSの適用に関しまして幾つかのレポートが公表されております。まず1つ目は、2012年6月18日に、韓国の金融監督院が公表しております「株式上場法人の2011年の事業報告書、K-IFRS財務情報開示事項の点検結果と今後の監督案」と題する報告書でございます。これによりますと、韓国金融監督院は、1,600社を対象に、2011年の事業報告書の財務情報開示事項121項目を選定して一斉点検を実施したということでございます。その結果はどうであったかといいますと、株式上場法人のK-IFRSによる事業報告書の作成水準は良好であるという結論がなされております。具体的な指摘といたしましては、重大な不備事項は発見されなかった。それから、指摘された不備事項も全121項目中、1社当たり平均4.5項目にすぎなかった。さらに、不備事項が全く発見されなかった企業も288社、全体の18%になっているということでございます。ただ他方で、10項目以上に不備があったという企業も9.9%あったということでございまして、これらの企業については今後も継続的な指導が必要であると指摘しております。

主な不備事項はどういうところに出てきているかといいますと、その下にありますように、金融商品、連結情報、営業部門別開示といったところでございまして、主なパターンといたしましては、会計処理方法を詳しく説明する財務諸表の注記または事業報告書の記載事項の一部記載漏れ、または不実記載が多かったということが述べられております。

1枚めくっていただきまして3ページ目でございますが、これは同じく韓国金融監督院が2012年の6月20日に公表いたしました「非上場法人の自発的な国際会計基準の適用状況の分析」でございます。その結果につきましては、マル1報告書のポイントのところでございますけれども、K-IFRSの強制適用対象ではない非上場法人1万7,169社中、2011年にK-IFRSを任意適用した法人は1,142社あったということでございます。このK-IFRSを任意適用した非上場法人を資産事業別に見ると、そこに書いてあるとおりでございまして、資産規模が大きいほどK-IFRSの任意適用比率が高いという結果が出ているという報告がなされております。

さらに、同じ年の7月12日に、韓国金融監督院は、「2011年の上場法人の監査報告書の分析」と題する報告書も公表しておりまして、その中身はその下でございます。2011事業年度において、上場法人1,738社――そのうちの1,639社がK-IFRSを適用しております――のうち、個別財務諸表に係る監査意見が意見不表明となったものが20社、不適正が2社、限定つき適正が4社ということでございます。この数が多いのか少ないのかというのはあるんですけれども、その下にありますように無限定適正意見は1,712社、98.5%ということで、2010年の98.1%よりは上昇しているということでございます。さらに、意見不表明等がついた主な理由としては、継続企業の不確実性によるものであるということでございまして、K-IFRSの導入によって会計処理に問題があったというようなことが主たる理由にはなっていないということが述べられているわけでございます。

めくっていただきまして4ページでございます。こちらは、今年の1月24日に開催されましたIFRS財団の評議員会におきまして、韓国の方が報告をなされたものでございまして、「韓国におけるIFRSの適用、実施とその教訓」ということでございます。その報告よりますと、まずIFRS適用による実務上の影響ということで、海外上場企業の財務諸表作成コストが低減したということが述べられております。そこに具体的な数字が示されておりますけれども、K-IFRS適用前の韓国におきましては、米国あるいはロンドンで上場している法人は米国基準あるいはIFRSで財務諸表を作成して上場しなければいけなかった一方、韓国国内においては韓国基準に基づいて財務諸表を作成しなければいけなかったということで、2つの財務諸表を作らないといけなかったわけでございます。そのためのコストがIFRSの適用によって削減されたということでございまして、その額は、多いところですと30億ウォンぐらいになるということが報告されているわけでございます。

さらに、海外上場企業だけではなく、国内企業についてもIFRSの導入によってIRの向上に貢献したということが述べられております。

それから、会計の透明性の確保ができた。さらに、韓国の対外的地位の向上につながったという報告がなされております。この点につきましては、もともと韓国でIFRS適用の議論が起こったきっかけといたしまして、アジア通貨危機がございまして、そのときに低下した韓国の対外的地位を向上させるということがIFRSを導入した目的の1つであったわけでございますので、そういう目的がある意味で達成できているという評価かと思います。それから、企業、監査法人等の関係者の議論の活性化が進んだということが述べられております。

次のページにいっていただきまして、間接的な影響といたしましては、先ほど申し上げましたようにIFRSを任意適用する非上場企業の数が増加しているということ、それから、公企業においてもIFRSを適用するところが増えているということが述べられております。さらに、会計の透明性を高めるためのさまざまな取り組みが始められた。それから、企業が雇用する公認会計士の数が増加した。そういうことが間接的な影響として述べられております。

次に、IFRS導入の教訓としてそこに4つ述べられておりまして、1つ目が、企業などの関係者に対する長期的な教育・広報が必要であるということ。2番目に、国内における関係者へのアウトリーチ、それからIFRS適用の初期段階におけるIASBとのコミュニケーションが重要であるという指摘がなされています。3つ目は、IFRS新規適用国に対するIFRS財団による支援の強化が必要である。それから4つ目、これはカナダとも共通する話でございますけれども、各国におけるIFRS解釈上の論点について十分に対応するために、IFRSICの役割の強化が必要であるということが述べられております。

次のページにいっていただきまして、IFRS適用検討国へのアドバイスということも述べられておりまして、まず初めに、IFRS適用は財務報告の透明性を確保するとともに、効率的な資源配分を通じて経済の向上に資することから、IFRS適用は必ず行うべきであると言っております。

さらに、IFRS適用については十分な準備期間を確保すること、それから、IFRSの教育及び促進活動、関連するインフラの整備、IFRSの整合的な適用が重要であるということが述べられております。

それから最後に、IFRS適用のプラスの効果は長期的に現れる傾向があるので、当局は強い信念に基づいて計画を着実に推進すべきであるということを指摘しております。

韓国の実施状況につきましては、まだ税の面とか、もう少し見ないといけないところがあるわけでございますけれども、今のところ大きな問題が生じているということはないようでございまして、こういう公式な発表文を見ましても、おおむね順調に適用がされているようでございます。

私からは以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ただいま事務局から説明のありましたカナダ・韓国の状況につきまして、ご意見、ご質問を伺ってまいりたいと思います。ご意見等のある方は挙手をお願いいたします。

佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

韓国の状況に関して、ご意見を申し上げます。

韓国につきましては、ご説明のとおり、比較的円滑な導入が図られたとの報告でありましたが、たまたま先週、経済産業省の企業財務委員会で、韓国高麗大学のジョン・ソクウ教授と関西学院大学の杉本教授を招請しまして、「韓国でのIFRS導入状況」というテーマで講演をお願いいたしました。経済産業省では経団連とも情報共有し、企業会計審議会の議論にも資する趣旨から、国際的人材を招請し話を聞く機会を設けていますが、今回は韓国をテーマに開催いたしました。ジョン・ソクウ教授は、韓国会計学会の財務会計委員会の委員長をされております。また、杉本教授はご承知のとおり、日本では韓国情勢に詳しい学者の1人でございます。

講演を聞いて印象に残った点をご参考までにご報告いたします。

まず、韓国でのIFRSの導入は、早期適用期間を設けたこともあり、全般的にほぼ問題なく進捗したが、導入に当たっての経営的ベネフィットや会計の透明性ついては今後の分析・評価に委ねることになり、現状では何とも言えないという報告がありました。

2点目は、IFRSの導入により、予想どおり注記を含めた開示量が増大したという報告がありました。

3点目として、意外だったのは、企業間の比較可能性が低下したとの報告がございました。

4点目は、営業利益の問題ですが、IFRSでは営業利益のルールがないため、韓国ではIASBに伺い出て承認をもらい、営業利益を開示することにしておりましたが、幾つかの企業では営業利益の開示がなかったという報告がありました。

5点目は、IFRSの導入にあわせて、当初、法人税法の抜本的改正がなされるといううわさがありましたが、実際は2010年、2011年にかけ、特定の項目について税制が改正されているという印象を受けました。例えば、減価償却費の申告調整とか貸倒引当金関連、機能通貨会計関連、棚卸資産関係等々でございます。

6点目は、IFRS導入後、海外からの投資が減少したという報告がありましたが、これは主に金融危機に伴う欧州からの投資の減少のようでございます。米国、アジアからの投資は微増したとの報告でありました。

韓国は2011年導入初年度ということもあり、どうも細かい問題がまだまだ山積しているようであります。韓国は、まず導入してから考えるという国民性~ケンチャナ精神と言うようですが~その国民性に合ったような対応をしているとの印象を受けました。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

河﨑委員、どうぞ。

○河﨑委員

貴重なご報告をいただきまして、ありがとうございました。先ほどの佐藤委員のおっしゃったことに追加的に、1つはお願いと、それからもう1点は、ちょっとご参考までにということを申し上げたいと思います。

1つは、先ほど課長のほうからも、今後、税務への影響を少し詳しく調査してみたいというご意向がありましたので、これはぜひやっていただきたいと思います。我が国は確定決算主義を採用しておりますから、税務との関わり合いはIFRSの強制適用問題と非常に密接な関わり合いがあると思うんです。これが韓国にとってどうだったのかというのは、我々にとっても非常に大きな関心事であると思いますので、ぜひその辺の調査を継続的に行っていただきたいというのが1点であります。

それからもう1点は、中小企業に対する波及効果であります。先ほどの報告を見ておりますと、間接的な影響として、中小企業へのIFRSの適用が増大しているとされています。確かに統計的にはこういう結果であるかもしれませんが、しかし一方で、韓国では中小企業の会計基準というのが新たに作られまして、2月1日にそれが法務部のほうから公表されました。適用は来年の4月1日からだそうであります。IFRSを適用する韓国の中小企業というのは、多分会計監査人を設置しているけれども上場していない企業だと思うんです。たしか1万6,000社ぐらいそれがあると思います。それ以外に、40万社の中小企業が韓国にはあります。それに対しては、伝統的なK-GAAPをもっと簡略化した形で、先ほど申し上げましたように中小企業の会計基準というのが作られて、それが公表されました。このような動向は我が国とちょうど似たような状況にありまして、我が国でも中小指針、あるいは中小会計要領というのが、中小企業向けの会計基準として作られております。韓国でもこういったものをやはり中小企業は望んでいる。言いかえますと、IFRSからの影響はできるだけ遮断したい。多分この数値というのは、規模的には上場企業に非常に近いか、上場を目指している企業であると理解をしたほうが合理的に解釈ができるのではないかなと思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

加護野委員、どうぞ。

○加護野委員

教えていただきたいのですが、韓国の6ページの一番上のところに、「IFRS適用は財務報告の透明性を確保するとともに、効率的な資源配分を通じて経済の向上に資する」。韓国の場合、この「効率的な資源配分を通じて経済の向上に資する」ということを示すエビデンスはあるのですか。

○栗田企業開示課長

ここは全く先方のレポートを訳した部分なので、これはあくまで韓国のレポート作成者のご主張であって、それに関してそこに何かエビデンスがついていたわけではないということでございます。

○加護野委員

この一番下もそうですね。長期的に効果が現れるって。

○栗田企業開示課長

おっしゃるとおりでございます。

○加護野委員

まだその効果は出てない?

○栗田企業開示課長

レポート全体はそういう効果があったようなことをほのめかすような文章にはなっておりますけど、具体的にここのところでこういう長期的な効果があるという指摘があるわけではないということでございます。

○加護野委員

ありがとうございました。

○安藤会長

ほかにいかがでしょうか。勝尾委員、お願いします。

○勝尾委員

どうもありがとうございます。質問をさせていただきます。

韓国については、導入にあたって今のところ大きな問題はないということでございましたけれども、資料の2ページ目を拝見しますと、不備事項が10項目を超えている企業が9.9%に達しているということが報告されていまして、この不備事項が10項目を超えているような企業に対して、監査意見としてはどのようなものが付されていましたでしょうか。これはむしろ、監査の質について、一定の課題が残されていることが明らかになったということなのでしょうか。よろしくお願いいたします。

○安藤会長

わかりますか。

○栗田企業開示課長

このレポートと先ほどご紹介いたしました監査意見に関するレポートは別のものなので、直結して数字が出ているわけではないのですけれども、この不備事項10項目を超えた企業が9.9%あったというレポートには、先ほど少し申し上げましたように、重大な不備事項はなかったということが書いてあります。さらに、不備が多かった企業については、下半期に点検する、集中して管理するということが述べられておりますので、おそらくこれらの企業について不適正意見とか意見不表明ということではなかったのではないかと推測をしております。

○安藤会長

よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

それでは、次の議題もございますので、先に進ませていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

次に、議題の2でございます。「IFRS財団のガバナンス改革について」と、議題の3の「会計基準アドバイザリー・フォーラムについて」をあわせてご審議いただきます。

IFRS財団の監視機関であるモニタリング・ボードを中心としたIFRS財団のガバナンス改革と、IASBと各国会計基準設定主体との意見交換を行う場として新たに設立された会計基準アドバイザリー・フォーラムについて、事務局より説明してください。

○井上国際会計調整室長

それでは、私のほうから資料3-1、3-2、3-3及び資料4に沿って順次ご説明させていただきます。

まず、資料3-1「IFRS財団のガバナンス改革について」と書いてあります紙に沿ってご説明をさせていただきたいと思います。

資料の表紙をおめくりいただきまして、1枚目から3枚目の内容についてでございますけれども、これは前回10月の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議において事務局よりご説明を差し上げておりますが、前回の審議会から時間が少々たっていることもございますので、改めてご説明させていただきたいと思います。

まず1枚目でございますが、IFRS財団のガバナンス機構がどうなっているかを図示したものでございます。IFRSの開発を行っております国際会計基準審議会(IASB)を、その上部の評議員会(Trustees)が監視監督してございますけれども、さらにIFRS財団の外にあるモニタリング・ボードが評議員の選任の承認等を通じて監視を行うという建て付けになっております。

このモニタリング・ボードのメンバーは、現在5席ございまして、日本の金融庁、それから米国の証券取引委員会(SEC)、欧州委員会、それから証券監督者国際機構(IOSCO)枠が2席ございます。IOSCO枠の内訳は、代表理事会の代表といたしまして現在オーストラリアの証券投資委員会(ASIC)と新興市場委員会の代表としてトルコの資本市場委員会が出席しております。

そして、具体的にどのような改革が現在議論されているかということにつきまして、2ページ目以降に記載してございます。まず、2010年の7月にガバナンス改革に係るワーキング・グループがモニタリング・ボード内に設置されました。このワーキング・グループでは、IFRS財団の全体的なガバナンス構造に焦点を当てて検討を行ってきておりまして、その結果、2011年の2月に市中協議文書を公表いたしましてパブリックコメントに付した後、昨年の2月に報告書を公表しております。この際、同時にIFRS財団の評議員会もIFRS財団の戦略見直しの報告書を公表しております。

次のページにお移りいただきまして、昨年の2月に公表されました報告書の提言の内容でございますけれども、大きく分けてモニタリング・ボードに関する事項、評議員会に関する事項、IASBに関する事項について述べられております。その中で、この後ご説明させていただきますモニタリング・ボードの要件について、かなり踏み込んだ記載がございます。

記載の内容を申し上げますと、まず、モニタリング・ボードのメンバーにつきましては、引き続き会計基準の形式・内容について権限を有する資本市場当局に限定するということが述べられております。先ほど申し上げましたように、モニタリング・ボードのメンバーは今5席となっておりますけれども、メンバーを拡大するということが提言されております。まず、主要な新興市場からメンバーを最大4席追加するということとなっております。さらに、IOSCOと協議して交替制のメンバーを2席導入することとなっております。これらをあわせまして合計で最大6席増やす。現在5席でございますので、最大11席にするということが述べられております。

また、報告書におきましては、モニタリング・ボードのメンバーになるか、メンバーであり続けるための要件といたしまして、IFRSの使用及びIFRS財団への資金拠出という2つの要件が記載されてございます。このうち、IFRSの使用という要件の定義につきましては、モニタリング・ボードのメンバー間におきましてその後も議論が続いていた状況でございます。

このような状況でございましたところ、4枚目以降の資料につきましてご説明させていただきます。まず4枚目の資料の冒頭にございますように、モニタリング・ボードは本年2013年の3月1日にプレスリリースを公表いたしました。このプレスリリースの本文及び仮訳につきましては、お手元に資料3-2、3-3としてお配りしておりますので、後ほどごらんいただければと思います。

これらのプレスリリースにつきましては、今年の2月6日にブリュッセルにおきまして開催されたモニタリング・ボードの会合において合意した事項を記載しているものでございます。

このプレスリリースの内容について、4枚目以降の資料でご説明させていただきます。まず、従来から議論が続けられておりましたモニタリング・ボードのメンバー要件でございますIFRSの使用の定義について合意いたしました。また、既存メンバーの定期的な見直し、新規メンバーの選定プロセスに関するメンバーの評価プロセスと結果についても合意がなされました。さらに、一番下に記載してございますけれども、当庁の河野国際政策統括官をモニタリング・ボードの議長として選出しております。

次に、合意されましたIFRSの使用の定義のご説明に入らせていただきます。定義につきましては、次の5ページと6ページに記載してございます。IFRSの使用の定義は、総則、定量的要素、定性的要素の3種類から構成されておりますが、順を追ってご説明させていただきます。

まず、総則につきましては、5ページに書いております2つの項目がございます。1点目は、当該国は、IFRSの適用に向けて進むこと、及び、最終的な目標として単一で高品質の国際的な会計基準が国際的に受け入れられることを推進すること、について明確にコミットしている。このコミットは、当該市場で資金調達する企業の連結財務諸表についてIFRSの適用を強制または許容し、実際にIFRSが顕著に適用されている状態となっている、もしくは、妥当な期間でそのような状況へ移行することを既に決定していることに裏付けられるということでございます。

2点目は、その下にございますが、適用されるIFRSは国際会計基準審議会(IASB)が開発したIFRSと本質的に同列のもので、起こり得る例外は、一定の基準もしくはそこから生じる一部が経済もしくはその他の状況に関係していない、もしくは当該国の公益に反する可能性がある、という場合に限定される。一定の基準もしくはそこから生じる一部を開発する際のデュープロセス履行上何らかの欠陥があった場合には、例外や一時的な使用中止も許容し得るということでございます。

次に、ページをおめくりいただきまして6ページでございますけれども、定量的要素といたしましては、当該国は、時価総額の規模、上場企業数、クロス・ボーダーの資本活動に照らした上で、国際的な文脈における資金調達のための主要な市場であると考えられることでございます。

さらに、定性的な要素といたしまして、当該国は、IFRSの策定に対し、継続的に資金拠出を行っていること。当該国は、関連する会計基準の適切な実施を確保するための強固な執行の仕組みを整備し、実施していること。さらに、国・地域の関連する基準設定主体が存在する場合、IFRSの開発に積極的に貢献することにコミットしていること。以上でございます。これらの点を勘案いたしまして、メンバー要件を満たしているかどうかの判断がされることになります。

最後の7ページ目でございますけれども、モニタリング・ボードの今後の予定についてまとめてございます。まず、合意されたメンバー要件・評価プロセスに従いまして、既存メンバーの評価及び新規メンバーの選定を開始するということでございます。さらに、2013年までに既存メンバーの評価、メンバーの拡大を完了することを見込んでいるというふうにされております。

また、日本を含む既存メンバーの定期的な見直しにつきましては3年ごとに行うということとされております。したがって、2013年にメンバーの見直しを行うとした場合、次回の見直しは2016年に行われるということになります。

そして、2016年に開始されるメンバー要件に照らしたメンバーの定期的な見直し以後につきましては、国内発行体向けの財務報告制度にIFRSを組み込むために当該法域で利用されているメカニズム、及び、当該メカニズムがメンバー国の資本市場におけるIFRSの顕著な利用にどの程度貢献しているかという点をモニタリング・ボードは評価する予定であるとしております。

この文章の趣旨でございますけれども、2013年の段階ではIFRSの使用の対象に、国内だけではなく外国企業も含めた上で既存メンバーの見直しを行うこととしておりますが、次回2016年のメンバー見直しの際には、国内の財務報告制度にIFRSを組み込んでいるかが評価されるということと解釈しております。現在、米国につきましては、外国企業にはIFRSの使用を許容してございますけれども、国内の財務報告枠組みにはIFRSを取り込んでいないということでございますので、この文言は米国に対して今後のIFRS適用に向けた対応を促すという意味も持つものと考えております。

最後でございますけれども、その他、メンバー要件を反映するために、モニタリング・ボード憲章の改訂を行うこととされております。

モニタリング・ボードについての説明は以上でございます。

引き続きまして、資料4に沿いまして、会計基準アドバイザリー・フォーラムについてご説明申し上げます。

会計基準アドバイザリー・フォーラムにつきましては、この後ご説明差し上げますとおり、主に各国の会計基準設定主体がメンバーとなるものでございます。会計基準アドバイザリー・フォーラムのメンバーといたしましては、日本の企業会計基準委員会が今月の19日に既に選出されておりますので、本来であれば企業会計基準委員会の委員長でいらっしゃいます西川委員からご説明をいただくのが適当かと思いますけれども、本日はご欠席ということで、事務局のほうから代わりにご説明をさせていただきたいと思います。

では、お手元の資料をごらんいただければと思います。1ページ目でございますが、2012年の11月1日に、国際会計基準審議会(IASB)の母体でございますIFRS財団は、IASBと各国基準設定主体との意見交換を行う場として、多国間の会計基準設定主体による会計基準アドバイザリー・フォーラムを設立するとの提案を公表いたしまして、12月17日までパブリックコメントに付したところでございます。

2013年の2月1日に、IFRS財団は、パブリックコメントへのフィードバック文書を公表するとともに、このアドバイザリー・フォーラム、ASAFと呼んでおりますけれども、このメンバーの候補の募集を開始いたしまして、3月19日にメンバーを公表したところでございます。

さらに、ASAFのメンバーを公表するとともに、第1回の会議を本年4月8日、9日にロンドンで開催するということも公表してございます。

ページをおめくりいただきまして、2枚目にASAFの概要について記載してございます。まず、このASAFの役割といたしましては、基準設定活動に関連した主要な技術的論点に関する助言及び見解のIASBへの提供、各国・地域の論点に関するインプットの提供が挙げられてございます。2月1日に公表されましたパブリックコメントへのフィードバック文書におきましては、IFRS財団の見解として、例えばASAFからIASBへのインプットが重要な分野として概念フレームワークを挙げております。また、昨日、第1回のASAFの会議の議事次第が公表されてございますけれども、そこにおきましても概念フレームワークについて取り上げるというふうにされております。

次に、ASAFのメンバー構成でございますけれども、各国基準設定主体や会計基準に関する地域ネットワークから構成されております。メンバーは合計で12とされておりまして、内訳は、アジア・オセアニアが3、米州が3、欧州が3、アフリカが1、世界全体からworld at largeとして2枠が割り振られているところでございます。

そして、先ほど申し上げましたとおり、3月19日にこのメンバーが既に公表されております。具体的なメンバーは、次の○のところでございますけれども、アジア・オセアニアからは、まず日本の企業会計基準委員会(ASBJ)、オーストラリアの会計基準審議会、中国の会計基準委員会、さらに、地域グループとしてアジア・オセアニア会計基準設定主体グループ(AOSSG)が選出されております。このAOSSGの代表といたしまして、香港の公認会計士協会が出席することとされております。次に、欧州からはドイツの会計基準委員会、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)、スペインの会計監査協会及びイギリスの財務報告評議会(FRC)が選出されております。さらに、米州からは、ラテンアメリカ会計基準設定主体グループ、GLASSと言われているそうでございますけれども、ここと、あとカナダの会計基準審議会、米国の財務会計基準審議会(FASB)が選出されております。なお、GLASSの代表としましては、ブラジルの会計基準委員会が出席すると伺っております。アフリカからは、南アフリカの財務報告基準評議会が選出されておりますが、これを全アフリカ会計士連盟(PAFA)が支援することとされております。

今後、メンバー要件については2年に1回見直しを行うこととされております。また、メンバーの選定に際しましては、専門的な能力、ASAFのメンバーとして活動するために利用可能なリソースの規模、程度、専門性等を考慮することとされております。なお、このASAFの議長はIASBの議長もしくは副議長、すなわちハンス・フーガーホースト議長か、あるいはイアン・マッキントッシュ副議長が務めることとされております。

次に、資料の3枚目に移っていただきたいと思います。ASAFに関して特徴的な点といたしまして、ASAFのメンバーとIFRS財団の間で覚書、MoUを締結することとされていることがございます。このMoUにおきまして、ASAFメンバーはIFRS財団に対し、IFRS財団はASAFメンバーに対して、それぞれ一定の事項へのコミットを表明しなければならないとされております。

ASAFメンバーのIFRS財団へのコミット事項といたしましては、3ページ目にございますとおり、IFRS財団の使命である「単一で高品質、理解が容易、執行可能性が保たれ、グローバルに通用している会計基準の開発」を支援し貢献すること。上記の活動に貢献するため、さまざまな国々・地域からの、IASBの技術的な活動に対するインプットを促進すること。専門的なリソース(基準設定経験や専門知識を有する代表の任命、ASAF会議の準備への専門的なリソースの割当てや実質的で専門的な議論への参加)を提供すること。時間・旅費も含めASAFメンバーとして活動するために必要なリソースを提供すること。ASAFによる公表物によってIASBの独立性、その品位及びIASBがIFRSの最終的な決定者であるという立場を阻害または疑義をもたせることがないということを保証することで、IASBの独立性を尊重することが挙げられてございます。

なお、(注)のところに書いてございますけれども、このASAFの文書をパブリックコメントに出したときにはほかに幾つか要件がございまして、「各国・地域におけるIFRSの整合的な適用を支援する」や「完全かつカーブアウトをしない形のIFRSのエンドースメントとアドプションを推進するために最善の努力を尽くす」という言葉が入っておりましたけれども、これらはパブリックコメントの結果を踏まえて削除されてございます。

最後に、IFRS財団のほうからASAFメンバーへのコミット事項でございますけれども、4ページ目のとおりでございます。ASAFに積極的に関与し、ASAFの意見がIASBに誠実かつ完全に伝わるようにすること。ASAFの活動に貢献するためテクニカルなリソースを提供すること。ASAFとIASB間に必要なリエゾン、連携、サポートを提供すること。アジェンダを準備し、アジェンダと関連資料を適時に回付することにより、ASAFメンバーが十分に準備し、積極的かつ建設的にASAFの議論や作業に従事できるようにすること。ASAFを開催するために必要なリソースと事務局機能を提供すること。全てのアジェンダや関連資料、会議の模様を公開し、ASAFの議論の完全な透明性を確保すること。最後に、ASAFメンバーの独立性を尊重することでございます。

私からの説明は以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ただいまの事務局からの説明に基づきまして、ご意見、ご質問を伺ってまいりたいと思います。ご意見等のある方は挙手をお願いします。いかがでしょうか。

佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員

2点ほどご意見申し上げます。

まず、モニタリング・ボードに関してですが、モニタリング・ボードのプレスリリースでは、「任意適用国」を認め、かつ基準のカーブアウトも条件つきながら許容するという、各国の経済実態や制度を考慮した内容になっていると見ていますが、一方で、先ほどご説明がありましたように、IFRSの使用の評価に当たっては、「IFRSの顕著な適用」という条件がついております。顕著な適用というのは、具体的にどの程度を指すのか不明ですが、日本の場合、相応の拠出金を供出していますので、外交戦術に依存する部分も大きいのではないかと思っています。

あわせて、我が国として、任意適用に関して、企業の経営実態を踏まえた制度上の改善を図りつつ、自然体で適用会社が増えていくということも肝要かと考えております。

2点目は、昨今のグローバルな動向をみると、本日ご説明のモニタリング・ボードやASAF等、枠組みが徐々に構成されていく一方でMoUの進捗状況はあまり芳しくありません。このような状況下でわが国としては、ぼつぼつ企業会計制度の枠組みの方向性を明確化するタイミングが来ているのではないかという気がしております。

2009年6月の中間報告では、米国の対応が1つの重要な判断要素になっていましたが、昨年7月の米国SECスタッフの最終報告書並びにそれ以前のスタッフペーパー等に見るように、米国の「コンドースメント・アプローチ」は、時間をかけてIFRSを組み入れていくが、あくまでもUS-GAAPは存続するという内容のものであったと思います。現時点では、米国がIFRSを強制適用する可能性は小さいし、任意適用も不透明な状況にあると判断するのが穏当であろうと考えます。

また、昨年7月の「中間的論点整理」の中でも、「国際情勢を踏まえつつ我が国の制度や経済状況などに最もふさわしい対応を検討する」としております。2009年の「中間報告」から既に約4年近くが経過しつつありますが、企業によっては依然として、いわゆる「強制適用論」へのおそれや懸念がくすぶり、中途半端な状況になっているところもございます。経営上、IFRSの適用にベネフィットを感じていない企業も多いことから、IFRSの方向づけに当たっては、企業に選択の自由を与えるということを基本に、「IFRSプラス米国基準の選択適用と日本基準の維持」という、裏返せば「IFRSの強制適用はない」という方針をここらで明確にするタイミングに来ているのではないかと思います。

以上でございます。

○安藤会長

ご意見ということでよろしいですか。

○佐藤委員

はい。

○安藤会長

ありがとうございました。ただいまの佐藤委員のご発言の一部は、この後の日本経団連からのご報告と重なる部分があるかと存じます。またそのときにご意見等承りたいと思います。

ほかにいかがでございましょうか。特にございませんか。事務局から追加的に、今のご発言とも関連して何かございますか。よろしいでしょうか。

次の議題に入ります前に、先ほど新しい委員をご紹介いたしましたけれども、遅れて来られました川村雄介委員でございます。

川村委員、どうぞ。

○川村委員

途中で大変恐縮でございます。大和総研の川村でございます。よろしくお願いいたします。

○安藤会長

それでは、次に進みたいと存じます。

国際会計基準への当面の対応について、経済界としても、日本経済団体連合会において検討を行っておられると伺っております。つきましては、「国際会計基準への当面の対応について」ということで、日本経済団体連合会企業会計委員会企画部会長であられる谷口委員より、ご報告をいただきたいと存じます。

○谷口委員

新日鐵住金の谷口でございます。私、今ご紹介ありましたように、経団連で企業会計委員会の企画部会長を務めさせていただいておりますので、お手元の資料5、これに基づきまして、経団連におけますIFRSに関連する検討状況、あるいは当面の対応につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。

表紙をめくっていただきまして、右下にページ数がございますが、1ページでございます。検討の背景・問題意識を掲げております。先ほどからもございますように、中間的論点整理が昨年の7月に行われました。ここでIFRSの適用の事例の積み上げ、あるいはIFRSのどの基準が日本にとって受け入れ可能かどうかの整理、あるいは任意適用企業において新たに把握された問題点の検討等を挙げられておられました。経団連におきましてもこれらの中間的論点整理に従いまして、任意適用企業等の実務家を集めて、後ほど紹介いたしますような検討を続けてまいりましたので、ご報告したいということでございます。

一方、先ほどからご説明がございましたけれども、IFRS財団、あるいはIASB、モニタリング・ボードのサイドでいろいろな動きがございました。1つは、アジェンダコンサルテーション2011に対するフィードバックステートメント、ASAFの設置、それからモニタリング・ボードメンバーの要件評価アプローチが決まった、この辺が新しい流れであろうと認識しておりまして、これらに則して日本としての対応が求められていると認識をしているところでございます。

また、さらに企業サイドといたしましては、リースとか収益認識の開示等について見られますように、なかなかこのままの対応では作成者側の意見が十分に反映されないのではないかという懸念も強く抱いているところでございまして、今後、戦略的な対応が必要であろうと考えてございます。

それから2ページ目でございますが、これは最近の経団連におきます企業会計委員会と企画部会の活動状況でございます。経団連といたしましても極めて多くの時間を費やして議論を重ねているということについてご承知おきいただたきいと思っております。

3ページでございますが、先ほど実務レベルの検討会と申し上げたものでございますが、IFRS実務対応検討会というものを昨年の8月、中間的論点整理を受けて立ち上げております。メンバーは、IFRSの任意適用企業とIFRSの任意適用に向けて具体的な検討を開始している企業約10社で構成をいたしております。各社のIFRSの適用の具体的事例を整理いたしまして、取りまとめを行っております。資料の最後のほうに参考としてまとめたリポートをつけております。項目といたしましては、IFRS適用の意義と課題、それから減価償却、開発費、連結の範囲、決算報告期間の統一などについて議論をしてまいりました。各社がどのように実務対応をしたかをまとめて経団連の会員企業で共有化をいたしてきております。IFRSは原則主義ということでございますので、IFRSを実務で適用する上でどういう議論をしていって、どういう評価、解釈をすればいいのかというところにやや幅があるというところもございますので、その事例を知ることが大事だと思いますし、これがひいては任意適用の円滑化を図る参考にもなるだろうと考えてございます。ただ、これは各社の事例でございますので、具体的な適用は個々の状況を踏まえて各社が判断するものであろうということは、これは言うまでもない話でございます。

4ページでございますが、これが今の検討会を通じて明らかとなった総論的な部分でございますが、それを挙げております。

まず、IFRSの適用に当たりまして、日本基準における実務をそのまま適用できるように各社でかなり工夫をしているという事実があるということでございます。その裏側には、IFRSを適用するとすると、ゼロベースで全部会計実務を変更しなきゃいけないという認識も逆にあったということでございますが、10社で議論いたしますと、かなりいろいろな工夫をした結果として、会計実務対応をしてきているということで、ここは少し誤解が解けるのではないかと考えてございます。

それから逆に、マネジメントの考え方として受け入れがたい基準、特に当期純利益とか、OCIのノンリサイクルの話とかあるわけでございますが、これもまた事実として存在するという、これもございます。

それから、先ほどから議論がございますような開示について、これは明らかにIFRSのほうが重いという事実もあるということも明らかになってきてございます。

5ページをごらんいただきますと、昨年10月の審議会で任意適用企業は増えるのかというご質問も出ましたけれども、上にございますけれども、既に財務諸表をIFRSで開示している企業が8社ございます。それから、その適用を公表している企業がその下の8社ございます。これがまず今オープンになっている話ということでございます。

じゃ、まだ16社かということですが、6ページをごらんいただきたいのですけれども、先ほど話しました5ページの公表している任意適用企業とか、任意適用を公表した企業に加えて、我々が先ほど検討会と言いました実務検討会に参加していただいている企業、それから最近、新聞報道等でIFRSの適用が伝えられている企業、こういうものを合計していきますと全体で約60社程度になるかなと経団連の事務局としては見ております。この60社の時価総額、そこにありますように約75兆円、2月末ベースでございまして、下に参考でございますけれども、韓国100兆円、ロシア70兆円、シンガポール65兆円となっておりますが、ロシア、シンガポールに同等或いはそれ以上の規模の時価総額になっているということになります。

それから、時価総額の上位50社に限定して見ますと、会社数、時価総額ともに約4割程度に匹敵してきているのかなと考えてございます。これは1つの推定でございますけれども、そういうデータがどうも整理できそうだということが見えてまいりました。

7ページに移りますが、ここは、任意適用の円滑化という、中間的論点整理でございましたものを、ちょっとイメージを書いてございます。IFRSの任意適用の円滑化に向けまして、ちょっと絵がわかりにくいかもしれませんが、真ん中の上の円が国際会計基準と日本基準、積集合部分がこれは全く一緒という部分でありますが、ここを3つの大きなゾーンに分けて見ております。

真ん中の部分が日本基準とIFRSの共通する部分でございますが、これまでのコンバージェンスの結果、EUの同等性評価も受けておりますけれども、基準がほとんど同レベルという部分でございます。ただ、これも先ほど申し上げましたとおり、実務上も多くの部分がそのまま日本基準を適用できるという部分もございますが、国際会計基準そのものがまた動いていくということもございますので、ここをやはりしっかりと対応していかなきゃいけないというところも一部残されておりますし、幾つかの課題もまだ残っております。後から出てまいりますがここが対応マル1です。

それから、図の右の部分が、IFRSが、ちょっと出っ張っているといいますか、突出している部分でございますが、引き続きこれにつきましてはIASBに対して意見発信をする必要があろうと思っている部分でございます。ここはアジェンダコンサルテーション等でも我々としてもいろいろな提案をさせていただいている部分であります。それでも最終的に残ってしまう差異をどうするかということについては今後検討する必要があるであろうと。それが対応マル2になりますし、先ほどから出ております開示の簡素化、これは非常に大きな目玉だろうと思っておりますが、これが対応マル3になるということであります。

それから、図の左側の部分につきましては、日本基準のコンバージェンスを行っていく話であるとか、任意適用の要件緩和をするとか、こういうことを検討していくのかなという概念図を書かせていただいております。具体的に8ページから、対応マル1マル2マル3マル4についてページを割いてお話をさせていただいております。

8ページが先ほどの対応マル1でございますが、実務上の対応の明確化とさせていただいておりますけれども、経団連の検討会でも、IFRSの適用に当たって運用や解釈にいろいろ悩みながらも日本基準における実務のそのものを適用できないのかという、この工夫を相当やってきているということであります。後の参考資料のほうでもごらんいただけますが、例えば減価償却費について定率法を適用している企業が当然ございます。それから法定耐用年数、これをそのままほとんど使えるということで結論を得ている企業もございます。それから開発費の例の6要件の話がございますけれども、これについても幾つかの事例がございますが、基本的には6要件をチェックしたとしても無形固定資産にとる必要はなかろうという判断を下している企業もあります。そういう意味では、日本基準のところをある程度実務上の工夫を入れながら実際にIFRSでも対応できそうであると、こういうことであります。

それから、今後の任意適用の円滑化のためには、運用や解釈が困難な事例が積み重なった場合、IASBに解釈を求めるのも、機能的な面、あるいは実務的な面で、やや障害があるかもしれないというところもございます。そういう意味では、日本国内においてタイムリーに問題が解決できるような仕組みが必要ではないかと考えておりまして、具体的にはASBJにおいて実務的な取り扱い要領とかガイダンスを作成するとかいったような機能強化が必要となってくるのではないかと考えております。

それから経団連の検討会は、先ほど申しましたように10社程度の実務の積み上げですけれども、これを、より多くの実務を共有することで、データベース化するなどの仕組みも構築する必要があると考えてございます。

9ページでございますが、先ほどの対応マル2のところでございます。やはりなかなかマネジメントとして受け入れがたい基準というのもIFRSにはありますので、これらについて引き続き改善を求めていくということが必要になってきます。その際、これまでの意見発信ではまだ不十分な点も多いと思われますので、日本の声がより確実に反映されるような戦略をオールジャパンとして確立していくべきではないか今後議論する必要があるだろうと思います。とりわけ、アジェンダ協議2011で発信しました指摘事項などについて、オールジャパンでの意見発信を継続していくことが必要でありますし、先ほどのASAFやアジア・オセアニアオフィスなども十分に活用していくべきであろうと考えてございます。

10ページでございますが、これは対応マル3ということで、開示の簡素化でございます。開示の簡素化そのものにつきましては、IFRSの議論が始まる前から、経団連としては長年、国際的な整合性を踏まえて証券市場における開示は連結ベースに一本化してほしいということを申し上げております。そういう意味からすれば、個別財務諸表の開示については、廃止か抜本的な簡素化を行うべきだろうと思っております。IFRSの任意適用拡大については、開示面での国際的な整合性が必要とされているということの現れでもあります。そういう面からしても、これを機に抜本的な制度改革をお願いしたいと思っております。

また、IFRSが求める開示が過大な負担となっているというお話が先ほどから出ておりますけれども、任意適用企業4社の有価証券報告書を見ますと、10ページの下に出ておりますけれども、連結財務諸表の開示のページ数でございますが、これはページ数だけでちょっとあれなんですけれども、62ページが93ページと5割増しになっているということも事実としてはございます。これらにつきましては、IASBに対して意見発信をするとともに、有価証券報告書全体の負担を低下させていく対応が必要ではないかと思っております。

11ページでございますが、これは先ほどでいう対応マル4になりますが、任意適用要件の緩和というのが可能なのかどうか、ここも検討の1つの材料であろうと思っております。大企業においては現状の要件でもクリアできるという企業がほとんどだと思いますけれども、新規上場とか規模の小さい企業などで任意適用を望まれる場合もあろうかと思いますので、何らかの要件緩和の余地はあるのではないかと考えてございます。

最後になりますけれども、今後の検討に当たってと書いてございますが、幾つかの留意点を述べさせていただきたいと思います。

まず第一に、上場企業三千数百社があるわけでございますけれども、この審議会の議論の行方を相当注視していると思っております。そういう意味では、予見可能性を高められるような明確な時間軸をそろそろ示していく必要があるのではないかと思っております。

まず任意適用を予定している企業にとりましては、何か追加的な検討が始まりまして、どのような方向性か明確でないということになってしまいますと、最終判断に踏み切れないということになってしまいます。この辺についてどう考えるのか。それから、最終的に任意適用を判断する企業、先ほど60社ぐらいと経団連事務局が推定しているわけでございますが、それが100社になるのか60社なのか、その辺もよくわからないところがあるわけでございますが、それ以外の数千社の企業に経営基盤である企業会計の行方を明確にしないまま置いておくということもできないということでありますので、我が国の企業会計制度を審議する企業会計審議会としてもそこを放置できる状況ではないと思います。一昨年の当時の金融担当大臣のご発言で、現状の枠組みが維持されているとは言うものの、審議会としての明確な線引きというか時間軸の提示が必要ではないかと感じております。

それから第二に、今後のIFRSの検討に当たりましては、IASBと日本側、双方の努力が必要不可欠だろうと思っております。双方努力したにもかかわらず、なかなか日本として受け入れ困難になる部分もあるかもしれません。そういう部分につきましては、それらの基準を日本国内でどのように扱うのか、誰がどのように検討するのか、そのプロセスを明確化する必要があろうと考えてございます。現在、IFRSは国際指定会計基準というふうになっておりまして、金融庁が承認をしていただいております。実態としては、基準の検討はその段階では行われないで受け入れが行われているということでありますが、今後日本としての立場を明らかにする観点からも、どのような扱いが適当なのか検討を深めていくべきだと考えてございます。

その場合でありましても、任意適用企業の多くは諸外国の証券市場での使用が可能となるという意味で、ピュアなIFRSの適用をしております。今後もそういう意味ではピュアなIFRSの適用も可能とすることが必須ではないのかなとも考えております。

最後に、資料の13ページ以降は、先ほど申しましたような参考資料でございますので、後でお目通しいただきたいと思います。

以上、最近経団連における議論の状況をご報告申し上げました。

日本経済につきましては、ようやく光がのぞきつつありますけれども、最初に述べましたようなIFRS財団、あるいはIASB、あるいはモニタリング・ボード等の新たな流れが出てきております。そういう意味では、当審議会の議論も、会計制度のあり方を通じて我が国の企業経営の基盤の強化、あるいは内外の資金調達の円滑化・効率化に資する制度を目指して皆様のご議論をお願いしたいと考えている次第でございます。

ちょっと長くなりましたが以上でございます。

○釡委員

続けて発言してよろしゅうございますでしょうか。

○安藤会長

それでは釡委員、お願いいたします。

○釡委員

私、昨年11月に経団連の企業会計委員長を拝命して務めておりますIHIの釡でございます。ただいま谷口委員からご報告があった点につきまして、若干補足をさせていただきます。

まず、IASBに対する我が国の発言力につきまして、これをさらに高めていく必要があると思います。1つの試算ではありますけれども、先ほどの経団連の説明のとおり、今後もグローバルな活動を行う企業を中心に、IFRSの任意適用を検討する企業数は増加していくものと思われます。任意適用を行った企業の利益が損なわれることにならないよう常に我が国の立場を明確に発信し続けていかなければなりません。この点、FASBとIASBで検討されてきましたリース会計や収益認識の開示に関する基準などは、残念ながら作成者の意見が十分に反映されてない懸念がございます。IASBや会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)の場などにおける発言力を強めていくための方策が必要と考えます。

また、任意適用企業に対してだけでなく、任意適用を予定してない企業に対する配慮も必要と考えます。今後も現状の枠組みが維持されることを明確化していただきたいと思います。

さらには、中間的論点整理で挙げられておりますように、どの基準が受け入れ可能かといった整理がなされた後には、最終的に我が国として受け入れ困難となる国際会計基準をどう扱うかという点も重要な論点でございます。現状では、我が国は指定国際会計基準としてIFRSをそのまま受け入れておりますが、我が国の立場を明らかにするという観点からは、ASBJにもご活躍いただきながら、我が国として受け入れられるもの、受け入れられないものの判断を行うプロセスが必要になってくるものと考えます。これはIASBに対する発言力の強化という観点からも必要であると考えております。

いずれにいたしましても、私、経団連の企業会計委員長に就任いたしましたので、産業界を中心とした作成者側の意見を取りまとめていきたいと考えております。

私からは以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。関連のご発言ということでございました。

それでは、たたいまの谷口委員、それから釡委員のご報告、ご発言につきまして、ご意見、ご質問を伺ってまいりたいと思います。ご意見等のある方は挙手をお願いいたします。

まず、水口委員。

○水口委員

ご説明どうもありがとうございました。意見を述べさせていただきます。

まず、財務諸表のユーザーの立場から申しますと、グローバル展開をする我が国の企業も少なくないことを勘案いたしますと、グローバルに活用される単一の会計基準に基づいて我が国を本拠地としない競合他社との比較も含めた諸観点から、こうした企業を理解した上で評価することが可能となることが望ましいと考えております。

また、財務諸表作成者の立場から考えますと、国際的な資本市場における資本調達手段の多様化を図るに際しても、グローバルに活用される会計基準を適用することが合理的であるという観点もあるのではないかと思います。

さらに、複数の企業が内部管理上、何らかの形でIFRSを活用していると認識しておりまして、グループ全体が統一的な会計基準を活用することでグループ経営の実効性、また効率性が高まる側面もあるのではないかと思います。

こうした諸観点から、グローバルな流れの中で国際的に受け入れられる質を伴った単一の会計基準を考える際に焦点を当てることが適切なのはIFRSであると思いますし、有効な連携を図りつつ、IFRSの任意適用を指向する企業がより機動的、効率的に当該基準を適用できるような制度などを含む手当を行うことが妥当ではないかと考えます。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。永井委員。

○永井委員

何点か感想と、質問を2点ほど申し上げたいと思います。今回、ご発表のありましたIFRS実務対応検討会の取り組みは非常に有意義であると考えます。その理由といたしましては、個人的には強制適用は必要ないと考えておりますが、IFRSの導入にメリットを感じられる企業もおありだと思いますし、IASBに対して一定の発言権を得るためにも、やはり任意の適用の積み上げというのは非常に重要と考えます。

順を追って感想と質問を申し上げたいのですが、まず8ページ目、日本国内において、任意適用に当たってタイムリーにガイダンスの作成を行うことが必要とあるのは、私もそのとおりだと考えます。原則主義の名のもとにいろんな解釈が出てきては作成者側の企業も判断に困りますし、見る側の投資家もアナリストも比較が非常に困難になりますので、ガイダンスがあればいいと思います。ただ、これは私の誤解ならいいのですが、IASBは個々の国のガイダンスの作成を嫌がるという印象があるのですが、まず第1点の質問としては、現実問題としてこれは可能なのかということ。

次に10ページ目ですが、開示量の増加という問題。IFRSを適用すると開示量が増加するというのは、IFRSを適用した海外企業からよく聞く話ですが、この下の表を拝見しまして、実際に適用すると日本企業もそうなるということを改めて確認した次第です。ただし、IFRSを適用する以前に、日本基準を適用している企業でも最近開示量が多くて非常に負担になっているという話をよく聞くわけで、先ほどお話のあったとおり、何を開示すべきかを見直す時期に来ているのではないかと思います。

次に11ページ目、任意適用の要件の緩和についてですが、任意適用を積み上げたいという意図がおありであれば、やはり緩和の余地があると思います。特に個人的には、この要件2というのは非常にハードルが高い印象を受けます。

最後に12ページ目についてですが、先ほど佐藤委員からもご意見がありましたが、私も審議会を今後どのように運営されるかロードマップを示すべきだと考えております。任意適用をするにせよしないにせよ、今、先が見えない状況で判断に困っている企業が多いと思います。アメリカが事実上態度を保留しておりますし、方針を明確化しにくいというのは非常に理解できますが、言葉は悪いですが、企業としては生殺しのような状況にあるのも事実です。審議会として今後どのような議事運営をされるのか、最終的には強制適用するのかしないのかという話になると思いますが、その辺をお伺いしたいと思います。

以上です。

○安藤会長

ご意見とご質問がございました。これについて、まず事務局からお答えできることはありますか。

○栗田企業開示課長

幾つかお話がありました中で、最後のところのロードマップのお話でございます。この点は事務局から回答させていただきたいと存じます。

そういう時間軸を早く示すべきであるというご意見が多々あることは承知しておりますけれども、国際情勢も変化しつつありまして、そういう時間軸を示すこと自体がなかなか容易でないということはご理解いただきたいと存じます。とりあえずということではありませんけれども、まずは昨年の7月に公表いたしました中間的論点整理において検討課題になっていることを順番にやっていくことが肝要かと考えております。

それから、もし強制適用になった場合にはロードマップのようなものがないと企業の方が困るのではないかというご意見があったかと思いますけれども、その点については、もし強制適用になった場合には、そこからその先、どういう工程でやっていくのかというロードマップを作るということに多分なると思いますので、その点についてはご懸念は要らないのかなと考えております。

○安藤会長

8ページのガイダンスの作成については、井上調整室長から。

○井上国際会計調整室長

今ご質問のございましたIASBの各国のガイダンスに対する立場ですが、我々として基本的には、ご指摘のようにIFRSについては単一のグローバルな会計基準を適用するという観点からは、IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)で検討したものを公式な解釈指針とされているというふうには理解しております。

ただ、各国で適用事例を積み上げた上で、その照会をIASBのほうにしていただいて回答を受けているという例は承知しております。

○安藤会長

ありがとうございました。永井委員のご発言の中で、何か日本経団連さん、釡委員もしくは谷口委員のほうから、お答えすることはございますか。

○谷口委員

今お答えいただいたんですけど、タイムリーにガイダンスの作成というのは、これはいろいろな解釈の部分があると思うので、本家本元みたいなところは当然解釈委員会がやるのでしょうけれども、例えば公認会計士さんと企業が議論していって、どう決めていくかみたいなところもあるわけですね。ですから、ものにもよるのかなと思っております。我々としては、企業サイドとしてはできるだけ早く、答えが出ないと、質問はしたけど答えが来ないというんじゃ決算を締められませんので、そういうところにある意味ではできるかできないかということも含めてトライしていくアイテムかなということで書かせていただいております。

それから、開示量の話もちょっとご質問あったんですけれども、日本基準でも増えてきているのも事実な部分はございます。ですから、先ほども申しましたようにIFRSの検討以前から経団連としては開示を減らしていだたきたいということを言っておりますので、一緒にこの辺は解いていっていただければと思います。

それから、任意適用の要件にはちょっとハードルが高いかもしれないとおっしゃったんですが、ここについては高いかもしれませんし、金融庁のほうでご検討いただければありがたいなと考えているところでございます。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。永井委員、よろしいでしょうか。

それでは、ほかの委員の方いかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員

今、経団連の説明の中で、受け入れが非常に困難なものをどうするかという話がありました。その中で例えば利益の概念とか、税引き利益とかリサイクルをどうするかという問題がありました。今回の検討会の議論の中では、ほとんど全員がそういうものはおかしいなということなのか、受け入れる人もいるし受け入れない人もいるという、意見が結構違うのかという点はいかがなのでしょうか。投資家サイドとして、私の意見としては、これらはやはりなかなか受け入れるのが難しいという立場です。

もう一つは、受け入れ困難なものをどういう仕組みで対応するのかという点です。現状でも任意適用でIFRSはピュアに適用できる。あとは日本基準をどんどんコンバージェンスしていく。しかし、それだけではどうも不十分だと思います。IFRSへの移行を促進するために、そこに何かプロモーター的役割を持つ仕組みが必要です。ただ、それが本当に意味のある仕組みになるのかというところに多少疑問を持っていますが、もしプロモーションの役割を果たすのであれば大いに取り上げたらよいと考えます。

つまり、幾つかだけが非常に受け入れがたい、あとは受け入れられるという考え方と、現状の日本の仕組みをいろいろ改善していけばよいという考え方があります。その中で受け入れられるもの、受け入れられないのがある。IFRSはこれからも、改良されていきますから、それにあわせていくには、どのようなプロモーションの仕組みがよいのかというところは検討課題であると思っています。

○安藤会長

質問もございましたが、谷口委員、できればお願いします。

○谷口委員

基本的に我々が受け入れ困難であろうと言っておりますのは、アジェンダ協議2011で、日本として、これについてはご検討いただきたいと出しておる項目、あれが大宗だと思っております。

○安藤会長

よろしいでしょうか。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。なお、利益については、最近、大日方委員が実証研究で本を公刊されておられますが、よろしければ、全く打ち合わせなしですが。実証研究で得られた知見、非常に貴重な知見があると私は拝読いたしました。できれば簡単にお願いします。

○大日方委員

もう既にアメリカとヨーロッパについては、企業の利益率が平均に回帰すること、つまり、のれんの価値は持続するものではなくて、ごく短期間のうちに消滅すると報告されています。わかりやすく言えば、のれんは規則的に償却したほうがいいという結果がアメリカでもヨーロッパでも出ていたわけです。

今回私が分析しましたのは日本企業について(非上場も含みますけれども)、約20万社を対象に23年間について研究したところ、それと同じ結果が得られ、やっぱり、のれんを規則的に償却するのが合理的であるという結果が出ました。

主要な分析結果が、あと2つあります。2番目は、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、当期純利益の5つについて、利益の持続性が違っていることです。持続的であるというのは、今期得られた利益が翌年も同じように得られることをいいます。持続的でないというのは、今期黒字でも来年はよくわからないというあやふやなものだということを意味します。経常利益というのは非常に持続性は高い一方、税引前利益及び当期純利益の持続性は非常に低いことがわかりました。つまり、日本の区分計算において、異常臨時なものを経常的なものから分けている方式はきわめて重要で、これは投資家にとって非常に役に立つはずだといえます。持続的であれば将来を予測しやすいからです。どうなるかわからないものは予測しにくいので、両者を分ける区分計算は非常に重要だということが2点目です。

3点目は、海外では時系列で会計の利益の安定性が低下しているのではないかといわれています。その原因としては、会計基準が陳腐化したのではないかと、推測されています。つまり、ハードな物をつくる側からソフトなサービス提供へと経済が移ったために、今の会計モデルは陳腐化し、利益の持続性は時系列で低下しているのではないかという話があります。当然それに対して反論もかなり多くて、決着がついていなかったわけです。今回の私の研究では、利益率が産業平均に収束していくという部分を除いて考えて、きちんと検証すると、必ずしも利益の持続性は低下しているとは言えないことがわかりました。現在の会計モデルは日本のようなものづくり型会計モデルと言われることもありますが、現行の会計基準が時系列で役に立たなくなってきているとか陳腐化しているという証拠は得られなかったということが3点目です。

つまり、わらわれは日本の会計制度にたいして、そんなに自信を失う必要はなくて、日本の会計制度の合理性を信じていていいというのが私のメッセージです。

○安藤会長

ありがとうございました。突然の指名に適切にお答えいただきまして、感謝します。

それでは、今度は突然の指名はいたしませんので、委員の皆様からご意見、ご質問を伺っていきたいと存じます。

もしもないようでしたら、まだ時間ございますので、これまでの議題について全体的なご発言でも結構でございます。戻っても結構でございますから、ご発言がおありでしたらお願いしたいと存じます。もちろん今の日本経団連さんからのご報告に関係しても当然、含めてご質問等お願いいたします。

よろしいですか。別に3時までやらなくちゃいけないということでもないようでございます。よろしいですか。

それでは、本日の審議はこのあたりにさせていただきたいと思います。当審議会では、引き続き、国際的な情勢等を踏まえつつ、国際会計基準の適用のあり方について審議してまいりたいと思いますので、ご協力くださいますようお願い申し上げます。

次回以降の日程につきまして、事務局より説明をお願いします。

○栗田企業開示課長

次回以降の日程につきましては、改めて事務局よりご連絡をさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

○安藤会長

それでは、本日の合同会議をこれにて終了したいと思います。委員の皆様には審議にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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