企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成25年6月19日(水曜日)16時30分~18時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成25年6月19日

○安藤会長

定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様にはご多忙のところご参集いただき、まことにありがとうございます。

まず、会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様、本日の合同会議も企業会計審議会の議事規則にのっとり、会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ご了解いただきましたので、そのように取り扱うことにいたします。

それでは議事に入ります。前回の会合におきまして、事務局において用意していただいたこれまでの議論の整理をもとに委員の皆様からご意見をいただきました。本日は、前回会合でいただきましたご意見等を加味した、当合同会議において当面検討すべき課題を中心とした取りまとめ案をご審議いただきたいと考えております。本日の会合で取りまとめ案につきましてご承認をいただきたいと考えておりますので、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。なお、この取りまとめの文案の作成に当たりましては、当会長も十分関与していることを申し添えます。

それでは、事務局より取りまとめ案について説明をお願いします。

○栗田企業開示課長

お手元に「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針(案)」という資料をお配りさせていただいております。それほど長いものではありませんので、読ませていただきます。

表紙をめくっていただきまして1ページ目でございます。「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針(案)

一 はじめに 企業会計審議会においては、これまで国際会計基準(IFRS)を巡る諸問題について議論を行ってきた。2009年6月30日には「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」を公表し、IFRSの任意適用や将来的な強制適用の検討などについての考え方を示した。この中間報告に基づいて、2010年3月期から一定の要件を充たす我が国企業についてIFRSの任意適用が開始されるなど、所要の対応が図られてきている。さらに、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議では、2011年6月から約1年間にわたり審議を重ね、2012年7月、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」を公表した。この中間的論点整理では、連単分離を前提に、IFRSの任意適用の積上げを図りつつ、IFRSの適用のあり方について、その目的や我が国の経済や制度などにもたらす影響を十分に勘案し、最もふさわしい対応を検討すべきである、とされたところである。企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議は、引き続き、この中間的論点整理に基づいて議論を行った。この間、米国においては、2012年7月に証券取引委員会(SEC)の最終スタッフ報告が公表されたが、IFRS適用の具体的な方向性やスケジュールに関する言及はなされていない。また、2013年3月に、IFRS財団モニタリング・ボードから、モニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの使用」の定義を明確化したプレスリリースが公表された。同年4月には、国際会計基準審議会(IASB)と各国の会計基準設定主体との新しい連携の枠組みとして、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)を含む12か国の会計基準設定主体等からなる会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)が設置された。我が国におけるIFRS任意適用企業数は、2013年5月末時点では、適用公表企業を含め、20社となっている。企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議では、関係者における今後の対応に資する観点から、これまでの議論や国内外の動向等を踏まえ、IFRSへの対応のあり方について、当面の方針を取りまとめることとした。

二 IFRSへの対応のあり方に関する基本的な考え方 2008年のワシントンサミットの首脳宣言で示された、「単一で高品質な国際基準を策定する」という目標がグローバルに実現されていくことは、世界経済の効率化・活性化を図る観点から有効であり、また、我が国としてもこの目標を実現していくために主体的に取組むことは、日本の企業活動・資金調達に有益であるとともに、日本市場の国際的競争力を確保する観点からも重要と考えられる。また、日本の会計基準は、これまでのコンバージェンスの結果、高品質かつ国際的に遜色のないものとなっており、欧州よりIFRSと同等との評価も受けているが、引き続き、会計基準の国際的な調和に向けた努力は継続する必要があり、日本基準を高品質化するような会計基準の変更については前向きに対応し、高品質な日本基準を維持していくことが重要である。IFRSは今後とも世界の関係者が参加して改善されていくべきものであることから、IFRS策定への日本の発言権を確保していくことがとりわけ重要となる。そのためにも、IFRS財団モニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの使用(強制または任意の適用を通じたIFRSの顕著な使用)」を勘案しながら、日本のIFRSへの態度をより明確にすることを検討していく必要がある。このことは、国内企業においてIFRSの適用を検討する前提を明確にするためにも望ましいと考えられる。その際、現在のIFRSの内容については、基本的考え方として受け入れ難い項目や、日本の企業経営や事業活動の実態にそぐわず、導入コストが過大であると考えられる項目が一部存在し、また、IASBにおいて開発中の項目も存在することを念頭に置く必要がある。併せて、米国の動向など国際情勢に不確実性が存在することを十分に勘案する必要がある。

以上のことから、単一で高品質な会計基準の策定というグローバルな目標に向けて、国際的に様々な動きが見られる中で、我が国がこれにどのように関わっていくのかという観点から、今後数年間が我が国にとって重要な期間となる。企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議としては、このような認識に基づき、まずは、IFRSの任意適用の積上げを図ることが重要であると考えられることから、IFRSへの対応の当面の方針として、「任意適用要件の緩和」、「IFRSの適用の方法」及び「単体開示の簡素化」について、以下の通り、考え方を整理することとした。これらの課題についての詳細な規定の整備などは、行政当局等において適切に対応すべきである。こうした課題への対応に関連して、金融商品取引所においても、新たに開発することとされている新指数の対象企業の選定にあたって、IFRSの適用を考慮することが期待される。これに加え、その他の関係者においても、任意適用の積上げを図るために他に採りうる措置がないか検討がなされることを期待する。他方、我が国におけるIFRSの強制適用の是非等については、上記のような諸情勢を勘案すると、未だその判断をすべき状況にないものと考えられる。この点については、今後、任意適用企業数の推移も含め今回の措置の達成状況を検証・確認する一方で、米国の動向及びIFRSの基準開発の状況等の国際的な情勢を見極めながら、関係者による議論を行っていくことが適当である。なお、仮に強制適用を行うこととなった場合には、十分な準備期間を設ける必要がある。また、我が国のIFRSに関する意見発信の強化のための取組みやIFRSの適用に際しての実務的な不確実性を緩和するための取組みについては、引き続き、関係者が協力して適切に対応していく必要がある。なお、中間的論点整理で示した連単分離、中小企業等への対応の方針については、引き続きこれを維持すべきである。

三 IFRS任意適用要件の緩和 現行のIFRSの任意適用制度においては、(1)上場していること、(2)IFRSによる連結財務諸表の適正性確保への取組・体制整備をしていること、(3)国際的な財務活動又は事業活動を行っていること、という要件を全て充たした会社を「特定会社」と定義し、IFRSを適用して連結財務諸表を提出することができることとしている(連結財務諸表規則第1条の2)。近年、IFRSを適用することにより国際的な同業他社との比較可能性を高めることへのニーズが高まっており、そのような意義に鑑みれば、任意適用の対象となる企業を上記要件のすべてを充たす企業に限定する必要はないものと考えられる。また、上記要件を充たさない企業の中には海外からの投資を幅広く受けている企業が存在することも勘案する必要がある。このため、任意適用要件を緩和し、IFRSに基づく適正な財務諸表を作成する意欲と能力がある企業がIFRSを適用できるような制度上の改善を図るべきである。このことは、我が国として単一で高品質な会計基準を策定するという目標に向けて着実に歩みを進めていることを示す意味でも有意義なことであると考えられる。IFRSの任意適用要件を緩和することにより、IFRSを任意適用する企業数が増加することが見込まれ、国際的にも、IFRS策定への日本の発言力の確保等に資することになる。また、IFRSの任意適用要件を緩和することによって、上場準備段階からIFRSの適用を希望するIPO企業の負担が軽減されるなど、新興市場の育成という観点からも有用である。IFRSの任意適用要件のうち、上場していること、国際的な財務活動・事業活動を行っていることという要件を撤廃したとしても、IFRSによる連結財務諸表の適正性確保への取組・体制整備という要件が充たされているのであれば、財務諸表の質が低下することはないと考えられる。また、会計基準が収斂していく過程で、一時的に異なる基準を適用する企業が存在することは許容せざるを得ないとの指摘もある。以上を踏まえ、IFRSの任意適用要件のうち、IFRSに基づいて作成する連結財務諸表の適正性を確保する取組・体制整備の要件は維持することとし、「上場企業」及び「国際的な財務活動・事業活動」の要件は撤廃することとすべきである。これにより、IFRSの任意適用が可能な企業数は大幅に増加することになる。

四 IFRSの適用の方法 現行制度においては、我が国におけるIFRS任意適用企業が適用するIFRSは、金融庁長官が「指定国際会計基準」として定めることとされている(連結財務諸表規則第93条)。「指定国際会計基準」を定めるに当たっては、一部の基準を指定しないことも可能な枠組みとなっているが、一部の基準を修正する手続を念頭に置いた規定とはなっていない。なお、現時点では、IASBが策定した全ての基準がそのまま「指定国際会計基準」とされている。IFRSの取り込み方法は各国様々であるが、多くの国・地域でエンドースメント手続(自国基準へのIFRSの取込み手続)が導入されている。現行の指定国際会計基準については、一部の基準を指定しないことも可能な枠組みになっているという点では一種のエンドースメントであると言えるが、一部の基準を修正する手続を念頭に置いた規定とはなっておらず、実態的にはピュアなIFRSのアドプションとなっている。また、ピュアなIFRSを適用する意図で既に任意適用している企業が存在することなどを踏まえると、ピュアなIFRSは維持する必要がある。なお、この点に関しては、我が国におけるピュアなIFRSの指定方法について再検討すべきである。このような状況の下で、ピュアなIFRSのほかに、我が国においても、「あるべきIFRS」あるいは「我が国に適したIFRS」といった観点から、個別基準を一つ一つ検討し、必要があれば一部基準を削除又は修正して採択するエンドースメントの仕組みを設けることについては、IFRS任意適用企業数の増加を図る中、先般の世界金融危機のような非常時に我が国の事情に即した対応を採る道を残しておくことになるなど、我が国における柔軟な対応を確保する観点から有用であると考えられる。また、エンドースメントされたIFRSは、日本が考える「あるべきIFRS」を国際的に示すこととなることから、今後引き続きIASBに対して意見発信を行っていく上でも有用である。ただし、会計基準の国際的な調和を図る観点から、我が国が行うエンドースメントが前向きな取組みであるということについて、国際的な理解を得ながら進めていく必要がある。なお、日本基準、米国基準、ピュアIFRS、エンドースメントされたIFRSという四つの基準が並存することに関して、制度として分かりにくく、利用者利便に反するという懸念があるとの指摘がある。この点については、IASBに対する意見発信やコンバージェンスに向けた取組み等、単一で高品質な国際的な会計基準がグローバルに適用される状況に向けての努力は継続されるべきであり、4基準の並存状態は、大きな収斂の流れの中での一つのステップと位置付けることが適切である。我が国において具体的にエンドースメントされたIFRSを検討するに当たっては、一定の企業においてエンドースメントされたIFRSを採用する意欲があることを踏まえ、これらの企業にとってエンドースメントされたIFRSが有用であるよう、そのニーズも勘案した上で検討する必要がある。また、エンドースメントされたIFRSは、強制適用を前提としたものではなく、あくまでも任意適用企業を対象としたものとして位置づけるべきである。さらに、IFRSのエンドースメント手続が導入されたとしても、現行の日本基準について、引き続き、これを高品質化するよう、前向きに対応していくことが重要であることは言うまでもない。

具体的なエンドースメントの手続については、まず、会計基準の策定能力を有するASBJにおいて検討を行い、さらに現行の日本基準と同様に、ASBJが検討した個別基準について、当局が指定する方式を採用することが適当である。IFRSの個別基準をエンドースメントする際の判断基準としては、公益及び投資者保護の観点から、例えば、以下の点を勘案すべきである。会計基準に係る基本的な考え方、実務上の困難さ(作成コストが便益に見合わない等)、周辺制度との関連(各種業規制などに関連して適用が困難又は多大なコストを要することがないか)等。他方、削除又は修正する項目の数が多くなればなるほど、国際的にはIFRSとは認められにくくなり、IFRS策定に対する日本の発言力の確保等へ影響が生じる可能性がある。このため、我が国の国益も勘案しつつ、単一で高品質な会計基準の策定という目標を達成する観点から、削除又は修正する項目は国際的にも合理的に説明できる範囲に限定すべきである。なお、この方針を踏まえ、ASBJにおいて速やかにエンドースメントの検討が行われることを期待する。

五 単体開示の簡素化 我が国では、上場会社が作成する財務計算に関する書類は、「金融商品取引法(以下「金商法」という。)に基づいて作成する財務諸表」と「会社法に基づいて作成する計算書類」の2種類がある。これらの書類には、それぞれ、作成会社たる個社の状況を示す(単体)財務諸表・計算書類と、作成会社とその子会社から成る企業集団の状況を表す連結財務諸表・連結計算書類の2種類がある。金商法に基づいて作成する財務諸表に関しては、連結財務諸表が主たる財務諸表、単体財務諸表は従たる財務諸表と位置づけられているが、会社法に基づいて作成する計算書類については、(単体)計算書類は全ての会社が対象である一方、連結計算書類は大会社かつ金商法対象会社にのみ義務付けられている。金商法における開示制度では、連結財務諸表と単体財務諸表の両方の開示が義務づけられているが、連結財務諸表の開示が中心であることが定着した現在においては、制度の趣旨を踏まえ、単体開示の簡素化について検討することが適当である。また、金商法適用会社は、会社法においても連結計算書類と(単体)計算書類の両方の作成が義務づけられているが、金商法において会社法の要求内容と別の内容の単体財務諸表の作成を求めることは、作成者である企業にとって二重の負担になると考えられる。他方、金商法による単体財務諸表は、連単倍率の低い企業や親子間取引が多い企業などにおいて、連結財務諸表と同様に重要であり、簡素化を図るに当たっては、個別の項目ごとに慎重な検討が必要であるという指摘がある。

以上を踏まえて、以下のような考え方の下で、金商法における単体開示の簡素化を図ることが適当である。本表(貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書)に関しては、大多数の企業が経団連モデルを使用している状況を踏まえれば、会社法の計算書類と金商法の財務諸表とでは開示水準が大きく異ならないため、会社法の要求水準に統一することを基本とする。注記、附属明細表、主な資産及び負債の内容に関しては、会社法の計算書類と金商法の財務諸表とで開示水準が大きく異ならない項目については会社法の要求水準に統一することを基本とする。また、金商法の連結財務諸表において十分な情報が開示されている場合には、金商法の単体ベースの開示を免除することを基本とする。上記以外の項目については、その有用性、財務諸表等利用者のニーズ、作成コスト、国際的整合性、監査上の観点等を斟酌した上で、従来どおりの開示が必要か否かについて検討すべきである。単体開示の簡素化に当たっては、単体開示の情報が少なくなることへの懸念に対応しつつ、金商法の単体財務諸表と会社法の(単体)計算書類の統一を図る観点から、例えば、連結財務諸表におけるセグメント情報の充実や、注記等の記載内容を非財務情報として開示することなどについて検討すべきである。単体開示のみの会社については、連結財務諸表の作成負担がなく、単体の簡素化に伴い代替する連結財務諸表の情報もないため、仮にこういった会社に対してまで簡素化を行うとした場合には、連結財務諸表を作成している会社との間で情報量の格差が生じてしまうおそれがある。したがって、単体開示のみの会社については基本的に見直しを行うべきではない。規制業種については、所管省庁が政策目的を達成する観点から、法令において必要な財務情報の作成及び報告を義務付けている。一方、財務諸表等規則においては、各業法に基づく開示が当該業種の実態を理解する上で有用との観点から、規制業種を別記事業と位置付け、各業法で要求している内容を優先して適用することを定めている。また、規制業種については、特に単体開示の有用性が高いとの意見がある。このような点を踏まえ、所管省庁の意見も聴取しながら検討を行う必要がある。以上」でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ただいま説明のありました取りまとめ案につきましてご質問、ご意見を伺ってまいりたいと存じます。ご質問、ご意見のある方は挙手をお願いします。なお、ご発言に際しましては、取りまとめ案の該当箇所をお示しいただいた上でお願いしたいと思います。それでは、どうぞ。

水口委員、どうぞ。

○水口委員

ありがとうございます。3つの観点から意見を申し上げます。

まず、第1点目ですが、IFRSの適用の方法についてです。IFRSの比較可能性の確保を含む利用者の利便の観点からも、本報告書案においてIASBに対する意見発信など、単一で高品質な国際的な会計基準がグローバルに適用される状況に向けての努力を継続すべきであり、我が国において複数の会計基準が並存している状態は、大きな収れんの流れの中の一つのステップであると位置づけることが適切であるということが明記されたことに意義があると考えております。

2点目ですが、エンドースメントされたIFRSについてです。国際的にも合理的に説明できると考えられるような概念フレームワークや基準の考え方が整理されて、我が国が、国際的な基準策定などに貢献することができ、日本の発言力は確保されて、その結果として、カーブアウトや修正項目が限定的になるということが望ましいと考えております。このことを別の側面から見れば、国際的に受け入れられる合理的な説明に落とし込むことが困難な形で、削除または修正が加えられる項目の数が多くなると、国際的にはIFRSと認められにくくなって、IFRS策定に対する日本の発言力は損なわれる可能性があり、この旨が本報告書案に反映されていることは妥当であると考えます。今後、本報告書案の当該内容を踏まえて、実効性の高い施策がとられることを期待するところです。

もう一点、最後ですけれども、単体開示のところにかかわる記述で、規制業種の財務情報について言及されているところですが、本報告書案に反映されることを求めるものではありませんが、今後各規制業種の特性を踏まえて、監督会計とIFRSの位置づけについて十分に検討されることが妥当と考えます。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

斉藤惇委員、手を挙げておられました。

○斉藤(惇)委員

会長以下皆さんでいろいろな難しい問題をまとめていただいていると思いますし、我々がいろいろとお願いをしていた点についても、大部分が何らかの形で考慮されているということに深く感謝したいと思います。

2つの点について申し上げたいと思います。まず1つめは6ページの一番下で、一番コントラバーシャルな問題なのでしょうけれども、エンドースメントされたIFRSは、強制適用を前提としたものではないということがはっきりここに書かれておりますけれども、これを書く必要があるのかという疑問であります。考え方はいろいろあるのでしょうけれども、過去の審議会の資料によると、IFRSを適用している83カ国は、アドプションを行っており、そのうえで、エンドースメント手続きが導入されている。先日も申しましたように、IFRS任意適用国のうち、エンドースメント手続きを導入しているのはスイス、ニカラグアの2カ国だけでありまして、日本がそのような位置づけから世界に発信するといいますか、世界に向けて意見を出すことができるのだろうかと。その関係でモニタリング・ボードの議長ポストですとか、トラスティーに2人出ているとか、あるいは東京にサテライトオフィスがあるというような位置づけにありますが、いつまでも本当に世界に対して発信力や指導力を持つことになるのだろうかと。ヨーロッパのように、カーブアウトといっても1つか2つに限定して、そしてアダプションをしているのが39カ国あるわけでありまして、これを意識した調整になると思います。

野球の統一球に例えるなら、本当に世界のボールを日本のスタンダードに統一できるかということですが、現実はできないわけです。加藤さんがどんなに頑張っても、日本はこういうボールでやるからこれが統一球なのだと主張しても、もう世界が統一球というのはこのようなものだと決めている以上、日本の方がおかしいと結論を出されて、だんだん日本の意見はとられなくなる。これが現状なので、入り口としては、反対は全くしませんけれども、ここではっきり強制適用を前提としたものではないのだというところまで言わなければならないのではないかという疑問です。

もう一点は、私どもと関係があることで、新指数に関して、できればその新指数に組み入れられるところは全てIFRS適用会社だということになるのかもしれませんが、結果としてそのようになること自体に対しては、我々も異論ないところであります。しかし、この指数というのは、日本株が過去15年間下がっており、日本はだめだと言われているのですが、TOPIXの中にも、ROEが相当いい株は、7倍、10倍になっているようなものが多くありますが、たまたま重たい企業がTOPIXを下へ引っ張ってしまっているために、日本自体が悪く見える。したがって、我々は本当に経営でROEなどを真剣にお考えになっている企業、世界的に評価される企業の指数をつくろうとしているのが先でありまして、もちろんその中にコーポレート・ガバナンスやIFRSというのが入ってくるというのもあり得ることだと思っており、それを最終的な加点事由にすることは検討していますが、これがマストであると言われると、指数そのものがちょっと曲がってくる可能性もあるものですから、そこのところはご配慮を賜りたいと思っております。以上です。

○安藤会長

今日はですね、ちょっと待ってください。今まではご意見を承ってこちらでまとめるとか何とかやっていますけど、今日は一応最終的に文案を固めたいので、私がコメントできることは私も発言いたしたいと思います。

今の斉藤惇委員のご発言で、6ページの下2行目のエンドースメントIFRSと強制適用の関係ですけれども、強制適用を前提とするかどうか、これは実は次の7ページの日本基準の存続問題にかかわってくるということで、ぎりぎりの調整をしたというふうにご理解ください。

○斉藤(惇)委員

ご努力、ご配慮はわかっています。ただ、今後これが英文になって、世界に出ていくのだろうと思います。この言葉が英語になって世界に出たら、私はインターナショナルベースで、果たして本当に世界が日本は真剣にIFRSに乗ってきたというふうに判断してくれるのだろうかと。ここは非常に重要なことだと思いますので、ちょっと問題提起しようということです。

○安藤会長

要するに、国内問題と国際問題の兼ね合いの問題です。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

私は逆の立場で斉藤委員と同じところ(6ベージの文章)に違和感を持ちました。この文章を読むとJ-IFRSは強制適用の対象にしないというふうに明言されておりますので、3ページに記載された“仮に強制適用を行うことになった場合”には検討の対象となる基準は何かということになります。私は強制適用すべきではないという意見なので、この文章に基本的には賛成なのですけれども。ただ、若干この文章には矛盾があるなという感じはしております。この文章を入れるということは、強制適用はしないのだということと同義に聞こえます。

それとは別に、自分なりに整理したことで、間違えているかもしれませんけれども発言させていただきます。まず、ポイントの3つのうちの、前段の緩めるということと、それから単体開示についてはこの方針案に、全体的に賛成です。それから、J-IFRSについても基本的には賛成なのですけれども、その進め方についてコメントをさせていただきたいと思います。

今、現行は単一の日本基準が原則で、有力な外国の会計基準ということで米国基準、それからピュアIFRSも私はそうだと思うのですけれども、この基準での開示も認めているというのが現状だと思います。今後どうするかということですけれども、現行の日本基準があります。これは大半の日本企業が採用し、中小会社への影響を含めれば、大変重要な基準ですので、これをきちっと維持していくということは極めて重要だろうと思います。ここで、J-IFRSの検討が入るということは、これもやはり日本基準だと思います。私は会計基準は収れんしていくということに対してあまり楽観的ではなくて、しばらくパラ・ランで行くというのが私のイメージです。そうしますと現行の基準を日本基準のAとすると、J-IFRSというのは日本基準のBという形の2本立てになると思います。単体は日本基準のAを使っていくというのが原則だというふうに理解します。ただ、そういう状況でも有力な外国の会計基準である米国基準とピュアIFRSの任意開示は続くと考えます。かつ、ここの場ではピュアIFRSを推奨しているというのが現状だと思います。J-IFRSというのはあくまでJということで日本基準ですけれども、完全なIFRSベースということだけは曲げてはいけないと思います。現日本基準とピュアIFRSとの折衷案になるということはあり得ないと思います。多分、日本はIFRSはこうあるべきだということを意見発信するところにJ-IFRSの落としどころがなければいけないだろうと考えています。

そうしますと、IFRSはもともと使い勝手の悪い、あまりいい会計と私は思っていないので、これを全ての上場企業が適用するということはかなり無理があると思いますし、逆にこの無理を通そうとすると、いろいろな意見、要望を入れざるを得なくなります。取り入れていけばいくほど、IFRSがどんどん曲がってしまいます。ここは思い切って、任意適用だから思い切った案(ピュアIFRSとあまり乖離しない)をつくるというふうに決めてしまったほうが明確だと思います。強制適用ということであればいろいろな業界とかいろいろな企業の個別のことに対して、その要望を聞くということは、結局折衷案になってしまうということで、私はJ-IFRSというのは折衷案ではなくて、あくまでIFRSから日本が主張すべきことをきちっと主張する案であり、場合によってはピュアIFRSがこちらに寄ってくるぐらいの案にしていただきたいと思います。であれば、やはりこの段階で任意ということを言っておくことのほうが正しいのではないかと思います。

もう一つは、日本基準のAとBができるということであれば、これは厳然たる日本基準になりますので、まさか日本基準のB、J-IFRSで情報を開示した会社には日本基準のAとの差異を見せろというようなことは多分ないと思います。もしそれを言うのだったら、日本基準のAでやっている会社にBとの差異を示せと逆に言いたいぐらいなので、多分これは日本基準のAとBに関して言えば、その差異表をつくるなんてことは必要ないと私は信じています。それが日本基準として分け隔てのない取扱いだと考えます。

私はある一定の整理をすれば、東証の上場会社のかなり部分がJ-IFRSのほうに行くだろうと思っています。かなり楽観的なのですけれども、数年かければ時価総額で200兆円程度の会社がJ-IFRSを適用すると思います。そのときに、もし同じ市場でAとBという基準の違うものを前提にして、いろいろな企業評価ができるのか考えます。多分、投資家からはその段階になれば、やはりAとBは市場を分けてくれと、そして別れた市場で夫々のインデックスをとりたいという要望が出るのはもう間違いないことだと思います。私は以前から市場を分けるべきではないかと言っているのが全く受けません。将来、J-IFRSを採用する会社が相当増えてくると、投資家からも市場を分けてくれっていう話が必ず出てくると思います。逆に、J-IFRS市場という、いわゆるIFRSを強制適用する市場をつくったということは、スイスと同じかどうかは別として、日本の資本市場の新しいプレゼンスになるだろうと思っています。

そう考えると、先ほどの話に戻るのですがJ-IFRSについて、任意適用を前提にしているのはどういう意味があるのかと考えます。前々回ですか、先生のほうの斎藤委員から任意適用を前提にJ-IFRSをつくって、後で強制適用にするようなだまし討ちするのじゃないでしょうねという話がありました。私はやはりだまし討ちするのは良くないので、任意適用だから強制適用にはしないということをはっきり言わないといけないと思います。私は6ページの文章に賛成なのですけれども、この文章に賛成ということは、逆に言うと強制適用がないと読まざるを得ないと個人的には思っております。今後J-IFRSの強制適用の是非を検討する場があるとすれば、ちょっと文意には賛成しながら、若干文章には矛盾があるのじゃないかなと思っております。以上です。

○安藤会長

ありがとうございます。強制適用に関しての、この文案の基本的スタンスは3ページの下から2つ目のパラグラフがベースです。もう一度繰り返しますが、「我が国におけるIFRSの強制適用の是非等については、上記のような諸情勢を勘案すると、未だその判断をすべき状況にないものと考える」というのがこの全ての文案、その後に出てくることのベースになっていますから、それはご確認いただきたいと思います。

では、ご意見承ります。

藤沼委員、どうぞ。

○藤沼委員

まず、この最終案をまとめるに当たって、会計基準に関係する利害関係者との事前の意見調整が行われたことだと思いますが、そのお骨折りをまず感謝を申し上げます。

IFRS財団でトラスティーをやっている立場で私のこの最終案に対する反応といいますか、感じていることを、また懸念していることを申し上げたいと思います。

一つは、IFRS採用についての姿勢の明確化がなされていない点です。つまり、最終目標がはっきりしないということです。任意適用の要件の大幅緩和は、今回の意見書の中で重要な提案でありますが、この任意適用の拡大の後に何があるのか不明であれば、今かなり楽観的なご意見もありましたけれども、企業にとってIFRS採用になかなか踏み切れないのが実情ではないのかと懸念をしています。海外から見れば、日本はどこに向かうのだろうかと、果たして将来のIFRS採用についてのビジョンがあるのかもう一つわからない、こういう反応があるのではないかと思います。従って、今回の任意適用条件の大幅緩和ということを生かして、着実にIFRS適用会社を積み上げるような施策をきちっとやっていくことが今後の大きな課題であると思っております。

それと、第2点目ですけれども、皆さんはそれほど大きな問題とは思ってないかもわかりませんけれども、2016年の問題というのが存在します。私はトラスティーの中でいろいろ議論しておりますけれども、なぜIFRSを本格的に採用してない日本がモニタリング・ボードの議長を務めるのかとか、またトラスティーになぜ日本が2つ席を取っているのかと、こういうような発言がしばしば聞かれます。MBのメンバーの見直しは2016年末に行われます。問題の先送りの結果、もしその時までに任意適用が積み上がっていかないということであるならば、今までキープしていた日本のポジションが危うくなるということを非常に懸念しています。

次に、近々公表されると思う米国FASBとIASBの共同プロジェクトである収益認識基準が2017年の初から適用開始になるという問題です。米国も含め全世界でほとんどの国が、企業会計上で重要な収益認識基準を一緒に適用するということになると、日本は我が道を行くというようなことを果たして言えるのでしょうか。そういう面で、2016年というのは大きな課題のある年になることを認識していただきたいと思います。

海外も含め日本の関係者の期待というのは、日本が新政権の成長戦略に沿って、IFRS採用に前向きに取り組むということだと思います。今回の最終案をベースに2016年までの早い時期に日本の姿勢がはっきりとわかるロードマップをつくるべきだと思います。以上でございます。

○安藤会長

藤沼委員の置かれた国際的なポジションにおけるご発言としてご意見を承ります。

次、どうぞ。久保田委員。

○久保田委員

ありがとうございます。さまざまな意見がある中で、また現在の状況の中で、非常にナローパスだったと思いますけれども、こういう形で取りまとめていただいた会長と事務局の方に敬意を表する次第でございます。

それから、内容ですが、経団連のほうでも提言した、現行の会計制度の枠組みを維持しつつ、まずはIFRSの任意適用を円滑に拡大するという方向、これが示されたということで、全体としても我々と軌を一にしているということで評価する次第でございます。

開示については、我々は金商法の単体開示については廃止を主張していましたが、その意味では、一歩踏み込みが足りなかったということではありますが、従来の開示の簡素化の長い歴史の中でここまで書き込んでいただいたということは、私は非常に進歩だと、画期的なことだと思っております。

ただ、開示の簡素化のところで、セグメント情報の充実という記述がございますが、企業とすれば十分にセグメント開示を行っておりますので、負担が増えることがないようにということで、これは今後の検討のところだと思いますけれども、ご留意いただきたいということでございます。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

辻山委員、手を挙げておられました。

○辻山委員

ありがとうございます。このペーパーに対する意見として1点、後ほど申し上げますけれども、まず海外の期待というときには、IASBの期待と海外の期待は分けて見なければいけないと思っています。例えば中国、米国、これは外交問題ですので、検討を続けるということですけれども、アドプションを言わないからIASBから外されるということはないということですので、海外が全部そう思っているかどうかというのは、これは分けて見なければいけないと思います。

その上で、このペーパーですけれども、先ほど来意見が出ている6ページから7ページにかけて。これは会長から冒頭でご発言ありましたけれども、会長を中心にしてこのペーパーをつくられたご努力を高く評価したいと思っております。いろいろな意見がある中で、このことを書き込んでいただいたということについて感謝を申し上げたいと思います。

まさにこのペーパーでは、今回のものが強制適用を前提としたものではなく、未来永劫というとわかりませんが、先ほど会長ご指摘のように、現在の状況ではこれを決める状況にない、それを明確にしているということですね。それから、その次のページにかけて、日本の会計基準は残るという、この2点を明確にしていただいたということは非常に重要なのかなと。それから、前回申し上げたように、これはあくまでも仮にの話ですが、万々一ある範囲に限定した強制適用が入る場合でも、それが決まってから準備を始めればいいように考えていただいている。これも高く評価したいと思います。この2点が確認されたという意味で、このペーパーというのは非常に意味があると思います。

あとは、ちょっと先ほど来の議論に対する私の反論ですけれども、会計の問題というのは、会計本体からリモートなところから見ているほど、高品質なとか単一なというのが、何かその中身が決まっているかのように考えられている。これが非常に危険なのかなと思います。このペーパーの3ページの冒頭にありますけれども、「日本的考え方として受け入れ難い項目」というのが何か日本独特だというふうに考える方もいらっしゃいますが、これは全く違っておりまして、なぜ受け入れられないのかという点は国際的に共通している。先ほどご指摘がありました収益認識につきましても、IASB、FASBが2002年から議論を開始して、今年中に基準ができるかどうかという段階ですけれども、最初のころに出ていた収益認識のモデルは完全に変更されています。結局、日本的なモデルに戻ってきている。収益認識に関する実現モデルというのは、世界的に滅びなかった。彼らの当初提案に、当時からもし我々がフォロワーとして追随していたら、改めてもう一度ひっくり返さなければいけない事態になっていた。ですから、なぜ受け入れがたいのかというところをよくよく考えないと、あたかもそこに高品質な単一の基準があるように理解していることがこの問題を非常に複雑にしてしまう。それが議論を長期化させるというもとになっていると私は考えております。

もう一つの例は、収益認識もそうですが、負債の時価評価ついてもリーマンの後にアメリカの3大金融機関は5,000億の利益を出した。負債を時価評価することで、自社の信用が下がったことによって利益が出るというモデルは日本からもこれはおかしい、これは受け入れがたいということを言ってきて、やっと見直しが始まった。アメリカの見直しはさらに遅れた。そういうことですから、何か日本がおくれているとか独特であるとか、あるいは乗りおくれるぞというようなことはやはり慎重に考えるべきだと思います。中身についてきちっとした見識がないまま言葉を連ねてしまうと議論は混乱するばかりだと思います。ちょっと言い方はきついかもしれませんけれども。

繰り返しになりますが、6ページから7ページにかけてのこの確認というのは非常に重要な意味があると思います。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

山崎委員、どうぞ。

○山崎委員

このペーパー、関係の方の大変なご苦労によって大変いいものができたと思っております。究極的な姿として、世界の全ての上場企業はどういう形であれIFRSを適用することが望ましくて、そういう大きな方向性の中で日本として現状を鑑みて任意適用の増加を促進するという取り組みは現実的なものだと考えます。この任意適用を拡大しようという今回の取り組みは小さな一歩かもしれませんけれども、一歩踏み出したということで実は大きな一歩であると思っております。ですから、この小さな一歩を海外に向けてポジティブに伝わるようにさまざまな配慮をお願いしたいと思います。

ASBJができて15年ぐらいたちますけれども、私もこの間ずっとIFRSの関係に携わってまいりまして、やっとここまで来たのかなという実感がございます。国益の考え方というのは今の皆様の議論でもいろいろあると思います。何が国益かというのは非常に難しい問題ですけれども、残念ながらはっきり言えることは、斉藤さんもおっしゃっていましたけれども、我が国の資本市場の国際競争力というのは非常に落ちているということを考えなければいけない。

もう一つ、四つの基準のうちの日本基準という言い方がありますけれども、じゃあ日本基準ってそもそも何なのか。これは私、最初のころに申し上げたつもりがあるのですけれども、今の日本基準というのはバブル経済をもたらした当時の日本基準。これはまさに日本基準です。それの反省のもとに、当時のIASを取り入れてコンバージェンスを進めてきたものである。日本基準、日本基準の議論はここでとまるのかと。IFRSがどんどん進むのにここでとまるのかという議論ですが、これはいろいろ考え方がありますので特に反対を申し上げるわけではありません。私の感想でございます。

一つ、ペーパーのコメントとして、3ページの下から5行目ですが、「確認する一方で、米国の動向及びIFRSの基準開発の状況等の国際的な状況を見極めながら」と書いてありますが、米国の状況を見極めるのは結構ですけれども、IFRSの基準開発の状況の国際的な情勢を見極めるというのは、あまりにも当事者意識のない表現だろうと思います。日本も参加してIFRSの基準開発をやっているわけですから、この表現は非常に変だと私は思います。これは変えるべきじゃないかと思います。我が国も参加した上で基準開発を行っているというふうなことが出てこないと、人がつくったものを我が国に入れるとか入れないとかという議論になったのでは、これは全くもって変な話になると思います。

いろいろありますけれども、基準の細かい議論で、負債の評価を誰が言い出したかというのは、これはIASの時代から実はある話でありまして、日本が言い出した話ではないわけでございます。そういう細かい話はいろいろありますけれども、ここまで大変まとめていただいて一歩を踏み出したということについては、僭越ですが評価したいと思いますし、これで大きく踏み出していただきたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

永井委員、手を挙げておられました。

○永井委員

ありがとうございます。2点ほど質問してもよろしいでしょうか。

まず3ページ目の下から4行目、「仮に強制適用を行うこととなった場合には、十分な準備期間を設ける必要がある」と、非常にありがたいご配慮でぜひそうしていただきたいと思いますが、具体的に十分な期間というのは何年ぐらいなのか。2011年の6月の大臣談話で、仮に強制適用する場合であっても、その決定から5年から7年程度の十分な準備期間の設定を行うというのがありましたが、そのくらいだと考えてもよろしいのかというのがまず1点目です。

次、2点目ですが、7ページ目。エンドースメントの具体的な手続はASBJが行うというところですが、先のことですのでお答えになりにくいかと思いますが、実際にどのようなメンバーがこのエンドースメントを行われるのか。と言いますのも、どの程度企業のニーズが反映される状況になるのかというのをお伺いしたいと思います。以上2点です。

○安藤会長

それでは、事務局から、できる範囲でお答えをお願いします。

○栗田企業開示課長

まず1点目の十分な準備期間ということでございますけれども、これは現時点で具体的にどれくらいと申し上げるのは難しいのですが、おそらく強制適用の仕方、あるいはそのときの環境によって変わってくるものだと考えております。と言いますのは、例えば強制適用の範囲を全上場企業とするのか、それともその一部にするのかということでも変わってくると思いますし、そのときに任意適用をしている企業がどれぐらいあるのか、そういうような状況によってもこれは変わってくるということだと思っております。具体的に何年ということは申し上げにくいのですけれども、いずれにしても、もし仮に強制適用となった場合には、その準備をする企業が困ってしまうということがないようにするという趣旨でご理解をいただきたいと思います。

それから、ASBJにおいてどのようなメンバーでエンドースメントがなされるかでございます。この当面の方針をご了解いただければ、その後ASBJで具体的な作業にかかっていただくということになると思いますけれども、それはまさにASBJの作業ということになりますので、基本的にはASBJでどう判断されるかということになると考えております。ただ、当然のことながらこれは重要な課題であるので、できるだけ幅広い方のご意見がうまく反映されるような形を考えていただければと考えております。

○安藤会長

ほかにご意見ございますか。

はい、佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

2点ほどご意見を申し上げます。

総括的には、これまでの議論を踏まえたまとめになっていると思います。そういう意味では感謝を申し上げます。

まず、第1点目ですが、2ページの下から6行目になると思いますが、「IFRS策定への日本の発言権を確保するためにIFRSの使用を勘案しながら云々」という表現がございます。IFRSの使用という点に着目しているんですが、日本の発言権確保のためには、IFRSの使用だけではなくて、質的・人的・資金的な貢献も重要な要素となります。したがって、海外に発信するという点からも、下から5行目の「そのためにも」に続く表現としては、例えば、「そのためにも総合的な取り組みとして質的・人的・資金的な貢献を継続し」というような表現を入れた方が良いのではないかと思います。加えまして、IFRS財団のモニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの使用」だけではなくて、それに続いて、「及びIFRS財団への資金拠出も勘案しながら」という表現を入れたらどうかと感じます。また、このIFRSの使用の中で、括弧書きで「(強制または任意の適用を通じたIFRSの顕著な使用)」という表現がありますが、これはあえて記載する必要はないのではないかと思います。

次に2点目ですが、3ページの中段から少し下の段落で、新指標のくだりがございますが、「こうした課題への対応に関連して、金融商品取引所においても、新たに開発することとされている新指数の対象企業の選定にあたって云々」という表現がございます。これは自民党等でも提言されています東証のグローバル300社インデックスの創設ということにかかわる記述だと思います。この部分は、任意適用の積み上げを図る一つの措置として理解していますが、ただ、この300社がどこから出てきたのかよく分かりませんが、一つの目標値となって将来の強制適用の布石とならないような留意が必要だろうと感じております。あくまでも自然体で適用企業数が増える措置を講ずることが筋であり、企業会計審議会でも何度も申し上げていますとおり、ベネフィットを感じない企業まで強制してはならないと思っています。

そこで、これに関連して、3ページの下から6行目から7行目の部分で、「この点については、今後、任意適用企業数の推移を含め今回の措置の達成状況を検証・確認する一方で云々」という表現がありますが、この表現はどうしても適用企業の数だけを目的化したような印象を与えます。むしろ、費用対効果を含めた任意適用の状況を、質的な面も含めて総合的に検証・確認するということではなかろうかと思っております。そういう点から、この任意適用企業数の推移を含めるという表現の部分は必ずしもなくても良いのではないかと思います。更に、達成状況という表現も、適用状況という表現のほうが適切ではないかと思います。以上でございます。

○安藤会長

これはどうしましょうか。文案の修正をお求めですか。

○佐藤委員

申し上げた箇所の印象は、「数の論理」があまりにも表に出過ぎているのではないかと思います。もう少し質的な面も記述した方が海外発信の面からも良いのではないかという印象を受けました。

○安藤会長

これはこっちへ振れると反対側から食らいますし、わかると思うんですね。これ、ぎりぎりの調整でできあがっていますので、それぞれわかるんですが、下手にいじくると蜂の巣つついたみたいになってしまう可能性があります。ということで、ご意見はよくわかるんですけれども、苦労の作だということで。だけど私は何か賛同したくなったのは、2のところですね。IFRS財団へのあれはIFRS策定の貢献という点では、質的・人的支援、書き込んでもいいかなという気もいたしますけど、いかがでしょうか。これについて反対はございますか。

では、それは会長にご一任いただいて、加筆することにしたいと思います。

はい、山崎委員、どうぞ。

○山崎委員

それには私は反対でございます。人的・質的・金銭的な貢献をするのはそれぞれの国の力、経済力に応じてやっていることでございまして、現在でも行われている。それで済むというそういう甘い話ではないと思います。TPPの話も同じですけれども、一緒の仲間に入らなければ議論はできませんので、一緒の仲間に入ることが大事だと。それを一緒の仲間に入るためのメルクマールというのはやはり使っているということです。全部使うかどうかはいろいろ議論があると思いますけれども、あまり人的・資金的ということを言うと、この文章全体の品格を落とすと私は思います。

○安藤会長

ちょっと今の点について議論させていただきたいと思いますけれども、どうぞ賛否、ご発言いただきたいと思います。今のご議論、要するに佐藤委員、山崎委員の議論ですよね。どうでしょうか。私はちょっといっとき佐藤委員のご発言で加筆しようかなと思うんですけれど、山崎委員から反対意見が出ました。これについて、はい、辻山委員。どうぞ。

○辻山委員

私は会長の最初のご判断のように、そこの部分は入れてもいいのかなと思います。むしろそれによって品格が上がるといいますか。とにかく仲間に入れてほしい、だから数を増やす。じゃあ中国と米国を排除できるのか。ですから、世界基準を目指していろいろな貢献をする。そういった大きなグループの中で開発していく。とにかく数を増やさないと仲間はずれにされるというのは、むしろこれは強迫観念のようなことですので、いろいろな側面での協力といいますか貢献ができる。そういう意味で入れておいたほうがいい。会長の冒頭のご発言に賛成でございます。

○安藤会長

ほかにご意見いかがですか。

賛成いただいてありがとうございます。ほかに。いいですか。

そうしたら、今会長案を出したわけですけれども、山崎委員にはご承認いただきたいと。

どうぞ、山崎委員。

○山崎委員

2度で大変恐縮ですけれども、基準でございますから使っていないとどこがいいのか悪いのかっていうのはわからない。書いた文章だけ見ていい、悪いということを言っていたのではしようがないのですね、これは。だから、使うという、使った上で議論があるというふうなことを言っていかなければいけないというのが最も大事なことだと私は思っております。

○安藤会長

一応、ちょっと今意見を横で課長がこうやったらどうですかと。要するに、文案を詰めてくれって迫られているんですよ。それで、ちょっと会長案として提示させていただきます。

2ページの下から5行目の「そのためにも」という、その次に挿入したいと思って。「IFRS財団への人的・資金的貢献を存続するとともに」といってもとに戻ります。

○栗田企業開示課長

継続。

○安藤会長

継続ですね。ごめんなさい、もう一度言います。「そのためにも」に加える文章は、「IFRS財団への人的・資金的貢献を継続するとともに」。それでもとに戻って「IFRS財団モニタリング・ボードのメンバー要件である」云々というふうな文章にしたいというのが修正案でございます。ご賛同いただけますでしょうか。反対意見は当然あると思いますが、多数意見ということでこのようにさせていただきます。

次、どうぞ。失礼しました、川村委員、手を挙げておられましたが。

○川村委員

ただいまのやりとりを拝聴して発言する勇気を失ってしまったのですけれども。まずは会長、事務局の皆さんのご苦労、芸術的なまさに現段階におけるこれしかないんだろうなというのが印象でありまして、私としては賛成であります。

ただ、賛成の中で私流の読み方かもしれませんが、先ほど国益、国際基準、グローバルスタンダード、是非論、さまざまなそれぞれ切り口によってみんな違うんだと思うんですけれども、やはり一方で現実にあるべき論とか国益があっても、そうはいっても打って出ていく場合に合わせざるを得ないという日本企業があることもこれは相当数事実でありますし、他方で、日本が引っ込んでいたらみたいなところもあるのもこれまた事実。そういう中で、現実に現在増えつつあって、また現IFRSを、いわゆるピュアIFRSを適用している企業もある、相当数だと私は思うんですけれども、20というのは相当数だと思うんですけれども、ここが尊重されている書きぶりもしていただいたなという理解をしております。

それから、3ページの、先ほども幾つかご議論があったところであります。これは私流の理解なのでありますけれども、下から第2パラグラフの最初に、まさに「未だその判断をすべき状況にない」という、そのとおりでありますけれども、その上を見たときに、その上のパラグラフで金融商品取引所の新指数の対象企業に当たって「IFRSの適用」という、このIFRSはピュアIFRSという意味でよろしいわけですね。そうすると、ここを参照的に読んでみますと、今はそういう状況じゃないしいろいろな議論もあるし4つのスタンダード並存なんだけれども、ただ、これからの金融商品取引所におけるある種理想的な指数対象企業はIFRSを適応するというふうに読める、私自身は。ですから、全体としては、現状は断定できないし4つ並存だしということを言いつつも今ある流れはピュアIFRSというのが一つの行く道なのかなと、私は読み方として理解している。これは意見とかいうことじゃなくて、私の読み方ということであります。

最後に、意見じゃありませんが確認的でありますけれども、単体財務諸表の簡素化は最後の7ページから9ページですね。それぞれの事情があり、単純、早急にただ簡素化すればいいんじゃないと思うというのは前回、前々回申し上げたとおりで、それもこの中に加えられて大変ありがたいと思います。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。特に文案修正ということはございませんね。

○川村委員

ございません。

○安藤会長

ありがとうございました。どうぞ、ご意見。

河﨑委員、どうぞ。

○河﨑委員

ありがとうございます。先ほどからご議論のありました日本基準とそれから新たにエンドースメント的なJ-IFRSでありますけれども、私も当初この2つを見させていただいて、ちょっとこれはなかなか大変だろうなという印象を受けました。

感想的な発言で申しわけないんですけれども、これまで日本基準というのは、IFRSとのコンバージェンスをやりながら、ある意味で高品質な会計基準を目指してきているわけですね。しかも、同等性評価まで受けている。それが一方でありながら、今度はエンドースメント的なIFRSをターゲットにしてJ-IFRSをつくろうとしている。J-IFRSをつくる考え方そのものには全く反対ではありませんし、私はこれまでもこの会議の場で企業の文化といいますか、あるいは我が国の文化性というものは大切にすべきであると発言してきました。ですから、受け入れられないものはやはり拒否すべきであって、そういった意味でもJ-IFRSという取り組みは非常に意味があると思うんですね。

ただ、じゃあこの2つを、先ほど八木委員もご指摘されましたように、ではどうやってすみ分けていくのかが問題だと思います。今後この問題をASBJのほうに委ねるということでもありますけれども、審議会としても一定の方向性というか、どういう考え方で日本基準は今後、単一で高品質なものを目指すのかを示してあげた方がよいように思います。一方でJ-IFRSも単一で高品質なものを目指しているわけですね。全てみんな単一で高品質といいながら、複数存在しているわけですね。これが一体どういうふうに将来収れんしていくのかというのは、確かに先ほどの議論の中でもありましたように一つの過程に過ぎないわけですから、複数のものが存在するということは、これは余儀ないと思います。しかし、今川村委員もおっしゃったように、一つのターゲットというのは多分ピュアIFRSというのが具体的なものとしてはあるかもしれない。

そういったときに、審議会としても、一つの大きな方向性みたいなものをASBJのほうに投げかけてあげたほうが私は作業がしやすいのではないかと思います。これは私の意見であります。

○安藤会長

ありがとうございました。承りました。

西川委員、手を挙げておられました。

○西川委員

先ほどの永井委員のご発言もありましたので、この段階ではまだASBJはエンドースメントについての負託を受けていないので、言えることというのは限られているかと思いますけれども、誰が最終的にエンドースを決めるのかということに関しては、この委員会は民間の常設の組織ですので、そこにいる委員の議決によって決まるという出口は明確なわけでございます。ただ、委員会としての議論の透明性であるとかデュープロセスというのは非常に重視されておりますので、母体である財務会計基準機構の理事会に適正手続監督委員会というのが置かれておりまして、デュープロセスについてはASBJは相当程度モニタリングを受けているという状態になっているわけでございます。一般的な基準開発に関しましては、専門委員会で素案を議論した上で委員会にかけるということをしているわけですけれども、今回の件に関しても、専門委員会に相当するような、どういう名前をつけるかわかりませんけれども、そういう場を置くことは考えられます。それから外部のコンサルテーションを受けるべきであるということからすれば、これはアジェンダコンサルテーションに関する協議会という枠組みが一つつくられておりますので、こちらも今後において名前が適切かどうかというのはありますけれども、そのような協議会からコンサルテーションを受けるというようなことが考えられるのではないかと思います。いずれにしましても、これについては透明性やデュープロセスを踏まえるということ、それから今回書き加えられております、速やかにということもございますので、速やかにのほうは基準開発のやり方と同じようなやり方だと全然間に合わないということになると思いますので、それも含めて進め方自体もきちんと公開の場で議論して、議論の結果が表に出ていく形にしたいということを考えているところでございます。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

はい、関根委員。

○関根委員

ありがとうございます。今回の当面の方針案につきましては、皆様からも既にご発言がありましたけれども、関係者の皆様のご尽力により、よくとりまとめていただいたということに感謝しております。この方針案は、非常に工夫されていまして、私自身は具体的にここを直してほしいといった点があるわけではございません。

ただ、本日の議論を聞いていましても、いろいろな読み方がされるものだと感じています。先ほどありました文案の加筆修正という話の中でも、質的な面等を考えるのは当然のことではあるけれども、一方で、今何故この議論をしているかというと、やはり任意適用の積み上げとか、数というのも必要であり、中に入って議論していくことが必要だが、中に入ってというのは実際使用して議論をしていくことが必要であり、そこを強調すべきではないかという議論もございます。そういったいろいろなことを懸念する方が出てくると思います。

そのように考えていきますと、この方針案は、読み方によっては、ともすると懸念とかネガティブな面が前面に出てしまうおそれがあります。せっかく長い間皆で議論してつくったものが、海外だけでなくて国内でもネガティブな形にとられてしまっては非常にもったいないと思っておりまして、いろいろな考え方があるため微妙なバランスになっているのは当然のことですので、ぜひポジティブな形で、私どもも含め、伝えていきたいと思いますし、関係者の皆様方のご努力をお願いしたいと思っております。

実務家の観点から申しますと、日本基準は、日本人として、日本のためにつくられています。国際的なものを入れる等いろいろな変遷はありましたが、日本人としてこれがいいと思ってつくっているものでございます。しかしながら、反面、やはり日本以外のところではなかなか理解されていないという面もあります。既にかなり近いものになっているということはありますけれども、厳密なところでは違っていたりします。そのため、例えば連結財務諸表を作成している企業では、海外子会社では日本基準でなくIFRSを使用しているといった事実もあります。そういったことを考えていくと、IFRSで作成された財務諸表というのを日本で前向きに捉えていかなければいけない、IFRSというのは外から輸入したものではなくて、自分たちで中に入って議論をして、よりよくしていかなければいけないということが必要と思っております。

今回の報告書は、いろいろな仕掛けがつくられていますので、これをぜひ生かしていただいて、自分たちもそれを生かすように努力をしていきたいと思っております。私からは以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

川島委員、どうぞ。

○川島委員

ありがとうございます。この本日の取りまとめ内容につきましては、これまでの会合での議論ですとか、また事務当局とのいろいろな質疑応答の積み重ねを踏まえて取りまとめたものと受けとめます。文言の修正などは求めないということをまず申し上げておきます。

私ども労働組合、労働者の立場から、単体開示の情報というものがなお重要であり、また有用であるということを申し上げておりました。今後、この方針に基づく具体的な検討に当たりまして、ここは非常に重要だと思いますので、現状の開示水準の確保、あるいはこの単体情報から得ることができるユーザーの便益が損なわれないことへの十分な配慮をした慎重かつ丁寧な対応が必要であるということを申し述べまして、本日取りまとめに当たっての意見といたします。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかに、いかがでしょうか。

本田委員、どうぞ。

○本田委員

非常にさまざまな意見が出る中、大変すばらしいまとめになっているかと思います。大勢全て賛成でございますが、一つだけ申し上げたいことがございます。

先ほど、斉藤惇委員が言われた、6ページでございますが、単一かつ高品質の水準にそろえることが会計においては大事であるということを再三おっしゃっている中で、どこかで一つにまとめて行く中で、「エンドースされたIFRSは、強制適用を前提としたものではなく、あくまでも任意適用企業を対象としたものとして位置づけるべきである」というのは、英語にすると、斉藤さんがおっしゃっているように、誤解を生むかもしれないと存じます。「強制適用を前提としたものではなく」という語句を除いたとしてもここの意図が伝わるのではないかと思います。「あくまでも任意適用企業を対象としたものとして位置づけるべきである」だけでは問題があるのでしょうか。質問でございます。

○安藤会長

今出されたのは、文案の修正案ですね。

○本田委員

はい、そうです。

○辻山委員

すみません。

○安藤会長

はい、どうぞ。辻山委員。

○辻山委員

先ほど申し上げたように、これを残さないと、過去にこの審議会からは2009年、2011年、2回ペーパーが出ております。それが後に様々な解釈でいろいろなバラエティに富んだ立場からのいろいろな解説がなされて、2015年から強制適用予定という、予定はあくまでも未定なので、予定というふうに書いてもいいんだとか、いろいろなことが起こりました。したがいまして、ここは慎重の上にも慎重に、きちっと意味が伝わるように「強制適用を前提としたものではなく」ということを入れていただきたい。私はこのペーパーでいろいろな意見がよく反映されているなと思いましたけれども、最も評価すべきところは6ページの後ろから7ページの頭にかけてだと思っています。きちっと誤解がないように明確にしていただいた点だと思っておりますので、この点に関する文案の修正には反対です。

○安藤会長

はい。修正案に対する反対意見が出されました。会長も反対意見に賛成でございますが、いかがでしょうか。

はい、八木委員、どうぞ。

○八木委員

私の意見は強制適用にしないということを前提で発言しますが、今日、即J-IFRSができればかなりすっきりして、その後しばらくJ-IFRSの任意適用の状況をみながら、将来強制適用するかしないかという議論だと思いますけれども、多分、先ほど西川委員が言われたように、J-IFRSをつくるだけでも相当時間がかかるのではないかなと思います。あまりこれに時間がかかるということは、国際情勢の中で個人的にはかなり懸念をしておりますけれども、それにしてもやはり一定の時間はかかるだろうと思います。J-IFRSができあがったころには、タイミング的に強制適用にするかしないかということの議論が出てくる頃ではないかと思います。前回、斎藤先生が言われたように、タイミングが合うとだまし討ちになるというのはあり得ないこともないと思います。両者に若干の期限の差があれば、J-IFRSの導入経過をみながら、適用の範囲の検討に入れます。J-IFRSができたころにはそろそろ適用の範囲をもう決めないと間に合わないのじゃないかなという気がします。現実のスケジュール・タイミングは悩ましいと思います。さはさりながら私は先ほど言いましたように、この文章のほうが好きなので、文章を変えることには反対で、このまま残していいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。会長案に賛成ですね。

斉藤惇委員、どうぞ。

○斉藤(惇)委員

会長の努力を決して否定するものではありません。要するに、何を言いたいかというと、取りまとめ案の全体、あるいは最初の方に、日本の立場は単一で高品質な国際基準を策定することに賛成しているのだと、何回も強調しているわけですよ。そして、今後エンドースメント手続きを入れて任意適用としていこうということになるのですけれども、エンドースメント手続きというのはなぜ入るかというと、任意適用には通常、エンドースメント手続きだとかカーブアウトというのは理論的にはそれほど入らないはずなのです。なぜオーストラリアやイタリアやイギリスやフランスやドイツ、トルコがエンドースメント手続き、カーブアウトを行ったかというと、それは彼らが強制適用をする、あるいは強制適用をしたためにそれではしんどいということで、エンドースメント手続きを導入し、カーブアウトを行っているのですよ。本来はそのような論理がきちんと成り立っているはずなのに、ここのところで論理が曲がるのです。だから、きちんと論理的に並べて考える人は、なぜここでこのような言葉が入ってくるのだろうと。せっかく会長が努力なさったものを、排除すべきだとかあまり言うつもりはありません。ご努力いただいたことはものすごく多としておりますし、この長い混乱をまとめていただいたことには感謝しますが、今本田さんもおっしゃったように、これは英文にされていくと、論理というのが成り立たなくなる。そして、必ずそこは突かれてくる。あえてそういう餌をつくっておかなくて良いのではないかと、こういう危惧でございます。

○安藤会長

先ほど私が申し上げましたので、再論いたしません。私は最初に斉藤委員のご発言に対して発言した内容そのものでございます。ということで、ここはそのままにさせていただきたいのですがよろしいでしょうか。時間がないんですよ、もう。

多数意見ということでそうさせていただきます。

泉本委員、どうぞ。

○泉本委員

ありがとうございます。いろいろな立場の方がいろいろな立場で読むとそれぞれの気持で読めるのだろうとは思いますけれども、今回の取りまとめで、任意適用をしようかと迷っている企業が、より一歩踏み出していただくことが期待できるのではないかと思います。前回か前々回に、日本公認会計士協会会長あるいは副会長のほうから会計士協会として申し上げていますように、会計士側は既にIFRS準備は整っております。いつでも走る覚悟ができておりますので、企業と一緒に走り出したいなと思います。この当面の方針を受けて、先ほどのお話ですと、エンドースメントIFRSには少し時間がかかるのではないかというご懸念もあるかとは思いますけれども、いずれにしてもそれが出てくるということが見えたことによって、走り出そうという気持の会社が増えのではないかと期待ができますので、会計士側はいつでも準備ができていますということを申し上げたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがですか。大体意見が出尽くしたような感じを私は持つんですが、よろしいですか。はい、ありがとうございます。

それでは、以上をもちまして皆様からのご質問、ご意見等の承りは一応ここまでということにさせていただきます。ということで、結局文案修正、もう一度事務局で読んでいただけますか。これでほぼ確定、あとは誤字脱字とか、てにをはの修正以外はいじらないということになります。

○栗田企業開示課長

2ページ目の下から7行目のところから読ませていただきます。パラグラフの初めのところですけれども「IFRSは今後とも世界の関係者が参加して改善されていくべきものであることから、IFRS策定への日本の発言権を確保していくことがとりわけ重要となる。そのためにも、IFRS財団への人的・資金的貢献を継続するとともに、IFRS財団モニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの使用(強制または任意の適用を通じたIFRSの顕著な使用)」を勘案しながら、日本のIFRSへの態度をより明確にすることを検討していく必要がある」というふうにさせていただきたいと存じます。

○安藤会長

ということでご了承いただきたいと思います。

そうしましたら、今の文案で実質的に決着したということにさせていただきます。ただ、一部、先ほど申しましたようにてにをはとか実質内容に影響のない修正は会長にご一任いただきたいと思います。

それでは、今の文案修正以外にももしも万一必要な修正があればそれは会長に任せていただいた上で、本報告書を公表させていただきたいと思います。ということで、今後のことについては、公表までのプロセスは会長にご一任いただきたいということでございます。

最終的な報告書につきましては、後日皆様に送付させていただくこととしますので、よろしくお願いいたします。なお、本日の合同会議の模様等につきましては、事務局より報道の方々へのレクをしていただくことにいたします。

それでは、本日の合同会議を終了したいと思います。国際会計基準への対応について、当面検討すべき課題を中心とした当合同会議での審議は本日で一区切りとなります。委員の皆様には、精力的にご審議賜り、また本日はかなり強権的な議長の議事運営にご協力いただきましてありがとうございます。改めてお礼申し上げます。

それでは、これにて閉会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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