企業会計審議会総会議事録

1.日時:平成30年7月5日(木)15時30分~16時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

 
○平松会長
 定刻より1分ほど早いのですが、皆様ご参集いただいておりますので、これより企業会計審議会総会を開催いたします。皆様にはご多忙の中ご参集いただきまして、ありがとうございます。
 
 それでは、これより審議会を開催いたします。まず、企業会計審議会議事規則に則りまして、本日の会議の公開についてお諮りいたします。本日の会議を公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 (「異議なし」の声あり)

 ありがとうございます。ご了解いただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。議事に入ります前に、委員の異動についてご報告いたします。辻山委員が本年5月に任期満了のため退任されました。ご紹介させていただきます。ありがとうございました。

 また、本日は参考人といたしまして、企業会計基準委員会(ASBJ)の小野行雄委員長に出席いただいております。

 なお、本日、後ほど『監査基準の改訂に関する意見書』をお渡しする際には、カメラ撮影を行う予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、議事に入ります。まずは、「監査報告書の透明化」に係る監査部会での審議の状況について、伊豫田部会長から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

○伊豫田委員
 監査部会長の伊豫田でございます。

 私のほうから、監査基準の改訂に関する意見書(案)につきましてご説明させていただきます。お手元の資料1をご覧ください。

 まず、審議の経過ですが、昨年9月の総会で、「監査報告書の透明化」について監査部会で審議するとされたことを受けまして、昨年10月より5回に渡って監査部会を開催し、審議を行いました。

 監査部会では、監査プロセスの透明性を向上させる観点から、国際的な動向も踏まえつつ、我が国の監査報告書において、「監査上の主要な検討事項」の記載を求める監査基準の改訂を行うべきであるとの結論に至りました。本年5月に公開草案を公表し、意見募集に寄せられたコメントを踏まえまして、所要の修正を行い、現状の案とした次第でございます。

 意見書の内容でございますが、「監査上の主要な検討事項」の意義につきましては、前文に記載されておりますとおり、監査の品質を評価する新たな検討材料となり、監査の信頼性向上に資する、財務諸表利用者と経営者の対話が促進される、監査人と監査役等の間のコミュニケーションや、監査人と経営者の間の議論を充実させることで、コーポレート・ガバナンスの強化や、効果的な監査の実施につながるといった意見が出され、こうした内容を意義として整理いたしました。

 「監査上の主要な検討事項」の監査報告書における位置付けにつきましては、監査意見とは明確に区別された監査の内容に関する情報提供であり、監査意見の位置付けを変更するものではないと整理いたしました。

 企業による開示との関係につきましては、企業情報の開示の責任は経営者にあり、監査人による「監査上の主要な検討事項」の記載は、経営者による開示を代替するものではないこと、監査人が「監査上の主要な検討事項」を記載するに当たり、未公表の情報を含める必要があると判断した場合には、経営者に追加の情報開示を促すとともに、監査役等と協議を行うことが適切であることなどについて、考え方を整理いたしました。

 適用範囲につきましては、金商法上の監査報告書のみならず、会社法上も記載を求めるべきかについて議論が行われ、株主総会前に「監査上の主要な検討事項」が提供されることが望ましいということや、金商法監査と会社法監査が実務上一体として実施されていることを踏まえれば、双方の監査報告書に記載されるべきという指摘があった一方で、適用当初においては、監査人と企業の調整に一定の時間を要すると想定されますため、現行実務のスケジュールを前提とすれば、会社法上の監査報告書に記載するには課題があるなどの指摘もあったことから、結論としては、当面、金商法監査を対象とし、関係法令において定めるものとしております。ただし、会社法上の監査報告書においても、任意の記載は認められるものと考えております。

 適用時期につきましては、平成33年3月決算に係る監査から適用することとしておりますが、それ以前の適用を妨げないこととしております。

 その他、「監査上の主要な検討事項」の導入に伴う監査報告書の記載内容の変更等を行うこととしております。

 以上でございます。

○平松会長
 ありがとうございます。
    
 続きまして、監査基準の改訂に関する意見書(案)について、5月8日から6月6日までパブリックコメントを実施しておりましたが、その状況について、事務局から説明をお願いいたします。

○田原企業開示課長
 それでは、ご説明申し上げます。資料2をご覧いただけますでしょうか。

 伊豫田部会長からご説明いただきましたとおり、監査部会におきまして、本年5月に公開草案を取りまとめていただきました。その後、パブリックコメントを実施させていただき、16の団体、個人の方々から約100件のコメントを頂戴いたしました。

 内容でございますが、大宗、監査基準の改訂案にご賛同する意見が多かったと考えております。また、字句修正など明確化を図るべきというご指摘も頂戴いたしました。その一部については反映させていただいて、資料3でご覧いただけるようになってございます。

 コメントの内容について若干ご紹介させていただきます。資料2でございますが、1ページ目にございますように、1から7のご意見ですけれども、今回の企業会計審議会監査部会におけます監査基準の改訂案につきまして、諸外国における動向を踏まえれば、こういったものが導入されてきているということでございますので、適当である。あるいは、先ほど伊豫田部会長から、意見書における今回の「監査上の主要な検討事項」の意義についてご説明がありましたが、そういった監査報告書の情報提供機能を向上させ監査の透明性を高める、財務諸表と企業の将来価値に関するより高い信頼性につながる、それから、経営者、統治責任者、監査人、財務諸表利用者が監査と財務諸表の品質向上に向けて連携するに当たっての鍵になるといったご賛同をいただくような意見を頂戴しました。

 それから、5ページ目をご覧いただきますと、例えば、「監査上の主要な検討事項」の記載の意義、効果につきまして、監査及び財務諸表に対する財務諸表利用者の理解が深まるといったことが指摘されておるわけですが、こうしたことによって、財務諸表利用者と経営者との建設的対話が促進されることが期待されるということで、そうした記載の明確化を求める意見ですとか、7ページの33、34でございますけれども、「監査上の主要な検討事項」の決定プロセスに関しまして、監査の過程で監査人の方が監査役の方と協議した事項の中から、監査人が特に注意を払った事項を決定し、さらに、その中から特に重要であると判断した事項につきまして、今回の「監査上の主要な検討事項」という形で決定されるということでございますので、その協議が適切に行われることが重要であり、こうした点についての記載の追加を求める、より明確にすべきという意見も頂戴したわけでございます。

 それから、例えば10ページの48から50でございますが、先ほどこの点について、伊豫田部会長から、監査部会での議論についてご説明がありましたが、「監査上の主要な検討事項」と企業による開示との関係に関連いたしまして、「監査上の主要な検討事項」を記載するに当たりましては、企業の未公表の情報を含める必要がある場合に、監査人、経営者、監査役の方の役割分担、守秘義務の取扱いというものがあるわけですが、この整理についてご評価いただく意見をいただく一方、こうした際に、監査人が経営者に追加の情報開示を促す、必要に応じて監査役と協議を行うに際しまして、経営者には未公表の情報を開示する責務があるということをより明確に示すべきではないかというご意見も頂戴したわけでございます。

 こういった点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、監査部会で議論されている内容でありましたり、意見書の趣旨に含まれている内容が大宗でございますので、そういった内容について再度、コメントに対する考え方ということでご説明させていただいている形としたり、あるいは表現につきましては、一部いただいたコメントを踏まえ、明確化の観点から修正しているということでございます。

 そのほかに、例えば19ページの78から81でございますが、先ほど部会長からご説明いただきましたように、「監査上の主要な検討事項」の適用範囲につきまして、監査部会で整理いただきまして、当面、金商法監査を対象とするということにしたわけでございますけれども、株主に対する情報提供の充実の観点から、会社法監査にも適用すべきではないか。あるいは、21ページの86、87になりますけれども、今回、監査部会のご議論では、単体の監査報告書にも「監査上の主要な検討事項」を記載すべきであるとされたわけですけれども、こうしたことに慎重であるべきではないかというご意見。それから、89から93になりますが、これは「監査上の主要な検討事項」とはやや異なりますけれども、監査部会でご議論いただいて、今回の監査基準の改訂には含まれませんでしたISA720、その他の記載内容について、今後検討を求める意見なども頂戴いたしました。

 こういった意見につきましても、基本的には監査部会でご議論いただいておりますので、そういった議論につきまして、コメントに対する考え方の中でご紹介させていただくという形で対応させていただければと考えているところでございます。

○平松会長
 ありがとうございます。ただいまご説明いただきました監査基準の改訂に関する意見書(案)につきまして、説明の内容のとおり取りまとめるということにしてよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 皆様のご了承、ご了解をいただきました。それでは、お手元の意見書(案)の「(案)」という文字を取っていただければと思います。
 
 それでは、ただいま企業会計審議会として取りまとめました意見書を村井政務官にお渡しいたします。カメラ撮影の方、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、このたび企業会計審議会として『監査基準の改訂に関する意見書』を取りまとめました。よろしくお取扱いください。

(意見書手交)

○村井大臣政務官
 ありがとうございます。

○平松会長
 それでは、引き続きまして、村井政務官より、一言ご挨拶をお願いいたします。

○村井大臣政務官
 内閣府の大臣政務官で金融庁を担当しております村井英樹です。

 ただいま、平松会長から『監査基準の改訂に関する意見書』を頂戴いたしました。企業会計審議会及び監査部会の委員の皆様方におかれましては、精力的にご審議をいただき、また、今日はご参集いただきまして、心より御礼を申し上げたいと思います。

 公認会計士による財務諸表監査は、企業の財務諸表の信頼性を担保するための制度であり、その規範となる監査基準は、財務諸表の作成規範である会計基準とともに、適正なディスクロージャーを確保するための資本市場の重要なインフラでございます。近時の不正会計事案などを契機として、会計監査の品質確保や透明性の向上が強く求められている状況にあり、金融庁としても「監査法人のガバナンス・コード」の策定などの取組みを進めてきたところでございます。今回の監査基準改訂での「監査上の主要な検討事項」の導入により、監査プロセスの透明性が向上し、会計監査の信頼性確保につながることを期待しております。

 本日の企業会計審議会総会では、この後、会計をめぐる動向についてご議論いただく予定と伺っております。我が国上場企業等において使用される会計基準の品質向上を図る観点から、先般、閣議決定されました「未来投資戦略2018」では、関係機関と連携して、国際会計基準(IFRS)への移行を容易にするためのさらなる取組みを進めることにより、IFRSの任意適用企業の拡大を促進するということを明記させていただきました。本日のご議論も踏まえながら、引き続き会計基準の品質向上に向けて取組みを進めてまいりたいと考えております。

 最後になりましたが、委員の皆様方におかれましては、今後とも会計や監査をめぐる諸課題につきまして、我が国として適切な対応を図るべくご審議を賜りますようお願い申し上げて、私からのご挨拶とさせていただきます。皆様、本当にありがとうございました。

○平松会長
 ありがとうございました。
  
 村井政務官におかれましては、公務のご都合により、ここでご退席になります。カメラ撮影もこれまでとさせていただきます。

○村井大臣政務官
 会長、ありがとうございました。

○平松会長
 ありがとうございました。

(村井大臣政務官退室)

○平松会長
 それでは、次の議事に入ります。会計をめぐる動向について、事務局からご説明をお願いいたします。

○田原企業開示課長
 それでは、お手元の資料4をご覧いただけますでしょうか。1ページおめくりいただければと存じます。

 IFRSの任意適用企業の拡大促進についてご説明させていただきます。先ほど政務官よりご発言がありましたとおり、「未来投資戦略2018」におきましても、関係機関等と連携して、IFRSへの移行を容易にするためのさらなる取組みを進めることにつきまして、閣議決定がなされているということでございます。

 2ページをご覧いただけますでしょうか。IFRSの適用状況でございますが、順調に適用企業、適用予定企業が増えておりまして、右側の四角の囲みをご覧いただきますと、2018年6月末時点で、時価総額が218.7兆円ということで、全上場企業の時価総額に占める割合が3割を超えてきたという状況になっております。前回の総会は昨年の9月8日でございますが、昨年8月末の数字ですと、24.76%で156.6兆円ということでございましたので、この間もかなり増加しているという状況にございます。

 1ページおめくりいただきまして、3ページから4ページにかけまして、IFRS任意適用企業、それから適用予定企業のリストがございます。赤文字で記載させていただいているものが前回総会からの増加ということでございまして、41社増えております。

 1ページおめくりいただきますと、それぞれの業種別に、どれぐらいの比率の企業、あるいは時価総額でどれぐらいの額の企業がIFRSを適用されているかという表を載せております。33業種あるわけでございますが、左から2番目をご覧いただきますと、情報・通信業が、昨年9月の段階では6位だったわけですが、NTTグループがIFRSを適用されるということで、時価総額ですと24兆円から47兆円に増えまして、比率でいうと、前回37%だったものが68%ということで、大きく比率の順位が上がっているということでございます。

 このほか、大きな変化があった業種といたしましては、6位の食料品が、前回は大体4割ぐらいの企業だったものが6割近い企業が適用されるということで、キリンですとかコカ・コーラなどが入られてきたことが大きいということではないかと思います。

 また、7位の鉄鋼につきましても、新日鐵住金が予定されるということでございますので、比率が9%から40%に上がっておりますし、電気機器でも赤文字の企業が採用予定ということを公表されたことから、比率で申しますと31%から37%、輸送用機器も26%から30%ということで、着実に各業種でIFRSの採用が進んでいるということかと存じます。

 一方、7ページの右のほうをご覧いただきますと、適用企業が存在しない業種も約10業種あるということでございまして、引き続き任意適用の促進に向けて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 最後に、8ページのIFRSの国際的な適用の進捗状況でございます。この間、IFRSが強制適用されている国につきまして、IFRS財団で評価を進められたということがございまして、従前、119法域で強制適用ということであったわけですけれども、財団で調査しましたところ、従前未確認だった17法域で実際はIFRSが強制適用されていることがわかったということ、あるいは自国基準から移られたところが2法域あるということで、現状138法域で強制適用されているということでございます。

 それから、金融機関を除く全ての上場会社に対してIFRSを強制適用されている法域が6法域、日本を含めまして任意適用を認める法域が12法域ということになっておりまして、そういう形で166法域につきまして整理がされております。

 以上、IFRSの適用状況につきましてご説明を申し上げました。ありがとうございました。

○平松会長
 ありがとうございます。

 次に、釡委員より、財務会計基準機構(FASF)の活動状況につきまして、ご説明、ご報告をお願いいたします。

○釡委員
 公益財団法人財務会計基準機構の理事長を務めております釡でございます。当財団が取り組んでおります国際会計人材の育成についてご説明させていただきます。

 スライドの2ページをご覧いただきたいと思います。国際会計人材の育成について、当財団では2つの取組みを行っております。まず、国際会計人材ネットワークでございますが、このネットワークはIFRSに関して、国際的な場で意見発信できる人材、及びIFRSに基づく会計監査の実務を担える人材等の育成を目的としており、昨年4月に組成したところでございます。スライドにありますように、5月1日現在では、796名の方にご登録いただいております。1年前に比べまして、43名増加しておりますけれども、企業の役員・従業員が55名から89名と、34名増加しているのが特徴でございます。

 それでは、スライド3をご覧ください。前回の審議会でご報告して以降のネットワークの活動でございますが、まず、本年3月にIASBより、ニック・アンダーソン理事をお招きして、第2回のシンポジウムを開催しております。シンポジウムでは、アンダーソン理事にご講演いただくとともに、現在、IASBが議論している開示プロジェクトに関連して、「損益計算書の新しい姿」と題するパネルディスカッションを実施しております。

 また、アンダーソン理事ご来日時に鶯地理事もお招きして、持分法投資損益の表示について、企業の登録者の方を中心として、少人数でディスカッションを行っております。

 さらに、本年2月より、登録者間での交流をより深めるために、50人程度の定例会を開始しております。第1回は、鶯地理事を講師にお招きし、「企業活動と国際ルールづくりへの関与」と題した講演を行っていただいております。第2回は、池田金融庁総務企画局長をお招きして、「今後の企業会計の課題」についてお話しいただきました。第1回、第2回ともに活発な質疑応答がなされ、有意義な意見交換がなされました。

 今後、これらのネットワークに登録されている方々のニーズを踏まえ、定期的に各分野の垣根を越えた交流が可能となるような機会を提供していきたいと考えております。

 続いて、スライド4をご覧ください。もう一つの取組みは、会計人材開発支援プログラムで2012年より実施しております。昨年までに第3期を終え、このプログラムの受講を修了された方々は、その後、スライドにありますように、多くの方が会計基準の設定に関連する活動の場で活躍されており、成果を上げています。本プログラムについては、受講された方々及び所属する企業等からも高い評価をいただいております。

 スライド5をご覧ください。本年1月より、第4期を開始しており、16名の方々に受講いただいております。概念フレームワークに関する講義により、会計基準の設定の基本的な考えを学んでいただくとともに、企業会計基準委員会(ASBJ)常勤委員の方々やIASB関係者と意見交換を行っていただくことにより、会計基準を設定する業務が、いかに財務諸表の作成者、利用者、監査人の日常業務と異なる側面を有しているかを学んでいただいております。

 このプログラムは、IASB等の組織の活動に直接参加し、意見発信を行い、議論できる人材を育成することなどを目的としており、その目的を達成できるよう、今後も取組みを継続していきたいと思います。私からの報告は以上でございます。

○平松会長
 ありがとうございます。次に、本日、参考人としてご出席いただいておりますASBJの小野委員長より、ご報告をお願いいたします。よろしくお願いします。

○小野参考人
 企業会計基準委員会の委員長の小野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私からは、ASBJの活動について、ご報告をいたします。資料6をご覧いただけますでしょうか。本日は、ASBJの活動の中で、日本基準の開発と国際的な意見発信につきまして、ご報告をさせていただきたいと思います。

 4ページをご覧いただけますでしょうか。まず、日本基準の開発についてご説明いたします。ASBJは、2016年8月に策定いたしました中期運営方針におきまして、活動の方針といたしまして、我が国の上場企業等で用いられる会計基準の質の向上を図るためには、日本基準を高品質で国際的に整合性のとれたものとして維持・向上を図るとともに、国際的な会計基準の質を高めることに貢献すべく意見発信を行っていく必要があると考えられるとしております。

 この中期運営方針に従いまして、現在、日本基準を国際的に整合性のとれたものとするための取組みを行っております。具体的には、まず、収益認識に関する会計基準を3月に公表いたしました。前回の企業会計審議会では、収益認識の会計基準の公開草案につきましてご説明させていただきましたが、最終基準は公開草案の内容と大きく変えておりませんで、IFRS15号の定めを基本的に全て取り入れるとした上で、適用上の課題に対応するために、代替的な取扱いを追加的に定める形式をとっております。

 次に、公正価値に関するガイダンス及び開示でございますが、これにつきましては、会計基準の開発に着手して、現在、公開草案の公表に向けて検討中ですが、不動産等は対象にせず、主に金融商品を対象とする方向で議論を進めているところでございます。

 また、金融商品につきましては、仮に現行の金融商品会計基準を変更する場合には、約20年ぶりの抜本的な改正となることもございまして、会計基準の開発に着手するか否かを決定する前の段階で、適用上の課題とプロジェクトの進め方に関する意見募集を行うことを予定しておりまして、8月に意見募集文書を公表することを目標としております。

 さらに、リースにつきましては、国際的な会計基準では、オペレーティングリースを含んだ全てのリースにつきましてオンバランスするというように基準の改正がされておりまして、ASBJでは、会計基準の開発に着手するか否かの検討を6月から開始しているところでございます。

 5ページをご覧いただけますでしょうか。収益認識以外で最近開発しました主な会計基準等、及び現在、公開草案を公表中の会計基準等は、この5ページに記載のとおりでございまして、税効果会計に係る開示の拡充とか、あるいは仮想通貨の会計基準の開発などを行っているところでございます。

 次に、国際的な意見についてご説明させていただきます。7ページをご覧いただけますでしょうか。

 まず、のれんの償却でございますが、IASBの審議状況からご説明いたします。IASBは2015年2月から、のれん及び減損について審議を行っておりまして、ご案内のとおり、その間、ASBJは継続的にのれんの償却に関する意見発信を行ってきております。2018年4月までのIASB会議では、いわゆる「too little, too late」の問題への対処としまして、ヘッドルーム・アプローチの導入による減損テストの改善を検討すること、のれんに関する開示の拡充の検討を行うこととともに、のれんの償却は支持しないということが暫定決定されました。

 ただ、4月に行われました、ASBJも参加しますASAF会議では、ヘッドルーム・アプローチに賛同する意見は全く聞かれず、それを受けまして、5月のIASB会議においては、ヘッドルーム・アプローチのみを扱うディスカッション・ペーパー等を公表する案は棄却されました。また、同じ会議におきまして、仮にディスカッション・ペーパーを公表する場合には、のれんの償却や即時償却についても記載すべきとの意見が聞かれているところでございます。今後につきましては、ディスカッション・ペーパーの作成に向けてIASBで審議が行われていくものと想定しております。

 8ページをご覧いただきたいと思います。FASBののれんに関する審議の状況でございます。これまでFASBでは、のれんの減損テストのアプローチの簡素化と、非公開企業に限定して、10年またはそれより短い期間で、のれんの償却をすることの選択を可能にするための改訂が行われてきていますが、非公開企業に認められているのれんの会計処理の選択肢を公開企業に広げるか否かに関する議論を、今年の第3四半期から始める予定とされております。

 これまでASBJの意見発信はスライドに記載したとおりですが、今ご説明いたしましたような状況の中で、ASBJとしましては、のれんの償却の再導入について、今後も引き続き意見発信を続けていくことを予定しております。

 9ページをご覧いただけますでしょうか。IASBは、2013年より概念フレームワークの見直しを開始いたしまして、5年にわたり審議をしてきましたけれども、この3月に見直しが終了し、改訂版が公表されました。その中で、我が国として最も関心の高い当期純利益に関するIASBの決定は、この9ページに記載したとおりでございます。

 純利益の有用性が確認されるとともに、リサイクリングが原則であることが明示されておりまして、我が国の意見発信が一定程度反映されたものとなっております。ただ、残念ながら、当期純利益の定義はされず、また例外的にリサイクリングしない処理もあり得る内容となっております。

 こういうことを踏まえまして、ASBJとしては、引き続き他の国の会計基準設定主体とも連携して、当期純利益の有用性に関する意見発信を継続していく予定でございます。

 10ページをご覧いただけますでしょうか。その他の国際的な意見発信ですが、現在、仮想通貨に関する意見発信を始めております。仮想通貨につきましては、IASBをはじめとして、世界の会計基準設定主体で会計基準の開発は行われておらず、ASBJとしてリードできる分野となっております。この4月のASAF会議では、3月に公表しました「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」に定めた会計処理を紹介するとともに、何が会計上の論点であるかという説明をした上で議論が行われたところでございます。

 私からのご説明は以上でございます。

○平松会長
 ありがとうございます。それでは、先ほどの会計をめぐる動向についての事務局の説明、それから財務会計基準機構、そして企業会計基準委員会からのご報告につきまして、委員の皆様のご質問、ご意見等をいただきたいと思います。ご意見ございます方は挙手をお願いします。
 
 それではまず、岡田委員から。

○岡田委員
 IFRS財団の評議員として、現状のご報告をしたいと思います。

 まず、国際会計人材の育成についてですが、ご案内のとおり、日本はIFRS財団に対して、トラスティー2名、IASBのボードメンバー1名、アドバイザリーカウンシル2名を送っており、ASAFも合わせれば、人材的にかなり貢献しています。今年は各メンバーの交代の時期にあり、まずIFRIC、解釈指針委員の募集が行われました。2年前に日本はこの議席を失っておりましたが、今回、めでたくアナリストの熊谷さんが委員に就任されることになりました。先ほどご紹介ありました会計人材開発支援プログラムの第1期生でもあり、同プログラムが実を結んだと考えております。

 次に、トラスティーでは私の任期が今年いっぱいで切れますので、後任の人選をしています。また、来年の6月でIASBのボードメンバーの鶯地さんの任期が切れますので、この応募もしている状況でございます。

 先ほど会計人材開発支援プログラムのご紹介がありましたが、若い方々が徐々に成長してきていて、例えばアジア・オセアニアオフィスに会計事務所から派遣いただいている2名の方々もIASBから、テクニカルな面での各プロジェクトに参加を積極的に求められるようになっています。これは若い方にとって経験の幅が増えているということで喜ばしいことだと思いますが、一方、もう少し上の年代は、なかなか層が厚くなっておりません。特に作成者ですと、会社の要職についている方は国際的な会議に継続的に出席するのが難しいということもありますので、国際会計人材の層をさらに厚くしていただくようにお願いしたいというのが第1点です。

 もう一つは、先ほどASBJからご報告がありました、のれんに関することです。6月のIFRS財団の評議員会においてもこれが話題になりました。IASB議長から、のれんの現在の検討状況について報告があり、5月時点の段階の報告がされましたが、評議員からは、現在のさまざまなM&Aが活発化している状況の中で、世界的にのれんが非常に巨額になっている一方、のれんの見合いで有利子負債が積み上がっている状況に対する懸念が相当数、表明されました。

 先ほどご紹介ありましたヘッドルーム・アプローチによって減損を早期化したいというのがIASBの考え方ですが、このヘッドルーム・アプローチについてもトラスティーの中では否定的な意見が多数出されました。

 これから会計処理自体はIASBで検討されますが、現状をこのまま放置していいのか、万が一、経済がリーマン・ショックのような事態になったときに、積み上がった減損が景気悪化をさらに加速するのではないかという懸念も多くありましたことをご紹介したいと思います。

○平松会長
 ありがとうございました。水口委員、お願いします。

○水口委員
 ありがとうございます。ASBJの活動状況の中で、のれん、当期純利益、仮想通貨などに関するご説明をいただきましたが、いろいろとグローバルに連携することによって、ASBJの基準の開発力が、さらに評価され、活かされる余地があるのではないかと考えますし、そうしたことが可能となるような連携が進めばよいと思っております。

 また、我が国の会計基準を高品質で国際的に整合的のあるものとすることに向けたASBJによる取組みを大いに評価させていただいておりまして、利用者としても感謝しているところです。

 先ほどASBJの小野委員長からご説明がありましたように、こうした取組みとしては、公正価値測定やリース会計などが挙げられるところです。公正価値測定につきましては、私が金融機関などの分析などをしてきた経験も踏まえて、財務諸表利用者の立場から、公正価値ヒエラルキーのレベル3の区分の情報、つまり一番流動性が限定的な区分に属する、例えば複雑な金融商品などにかかわる開示は、有事のみではなくて平時においてもテール・リスクを視野に入れることができるという観点から、非常に有用であると考えております。

 また、リースに関する会計基準の開発を視野に入れることも大いに意義があると思っております。現行の会計基準の下では、オペレーティングリースの借り手には、認識すべき資産及び負債が生じますけれども、財務諸表には認識されないような状況があります。こうした状況に対するために、多くの財務諸表利用者は日常的に調整を行っていますが、その際に利用可能な情報が限られております。こうしたことを背景に、リース会計基準の開発によって、より有用な情報が得られることに期待しております。

 以上です。

○平松会長
 ありがとうございました。いろいろ期待が寄せられております。またよろしくお願いいたします。ほかにございますでしょうか。

 後ほど、また各委員のご意見を賜りたいと思いますが、小野委員長、今のご発言でよろしいでしょうか。何かございましたらお願いします。

○小野参考人
 先ほどもご説明したとおりでございますが、公正価値測定につきましては基準の開発に着手しておりまして、できるだけ早く公開草案を出す段階に持っていきたいと考えております。一方、リースのほうは、まだ開発には取りかかっておりませんで、その前の段階で着手をするか否かにつきまして、専門委員会で深掘りをして検討しているところでございます。

○平松会長
 よろしいですか。ありがとうございました。

 それでは、委員の皆様、改めまして、ご意見を賜りたいと思います。弥永委員、何かございますでしょうか。

○弥永委員
 ありがとうございます。私は、たまたまASBJでの審議に参加させていただいておりますので、ASBJについてコメントするのはふさわしくないと思いますので、もう少し一般的なコメントをさせていただきます。今日、ご報告いただいたように、IFRSの任意適用が非常に拡大しているということは、日本にとっていいことだと考えております。
 
 他方、私、会社法などの研究もさせていただいている者なものですから、財務諸表のあり方が国際会計基準審議会で検討されていること、そして、それが及ぼしうる影響を非常に興味を持って眺めております。金融商品取引法における財務諸表と、会社法における計算書類との整合性と申しますか、一体化をどのように進めていくのか、これは今後の大きな課題だと思っております。すなわち、非常に小さい企業に新たな計算書類の様式を要求することは適切とはいえないわけですけれども、他方で、金融商品取引法が適用されている企業についてみれば、二重に作成する、実質的に二重に手間がかかる、あるいは、組み換えなければならないという状況になるのはふさわしくない。そこで、この点は、今後我が国として考えていかなければいけない一つの課題なのではないかと考えております。
 
 以上です。

○平松会長
 ありがとうございました。それでは、挽委員、何かございましたらお願いします。

○挽委員
 会計基準の品質向上に向けた取組みに関連して、2つほどお話を申し上げたいと思います。

 実名でも出ましたけれども、NTTグループのグループ会社の一部がIFRSを適用されます。例えばNTTデータではIFRSの一部、のれんに関してはすごく不満があるということをおっしゃっているけれども適用されるそうです。引き続き国際的な意見発信を、声を上げられる立場の方々には大きな声を上げていただいて、そこをクリアしていただけたらいいなと思うのが1点目でございます。

 それから2点目ですけれども、先ほど田原企業開示課長からお話がありましたように、強制適用の法域のほうが圧倒的に多い中で、日本は任意適用をして、しかも任意適用企業が増えている状況がございます。そこで、ぜひ任意適用だからこそのメリットというのを、おまとめいただきたいと考えております。具体的には、私は管理会計研究者ですので、金融庁が第1回目の調査をされた結果明らかとされた点、つまりIFRS任意適用の主目的として経営管理の高度化が挙げられたことに関心があります。任意適用にしたからこそ、経営管理の高度化とつながるようなことがあったのではないかと、そういう希望的な観測をしております。そのあたりを第2回目の調査として調べておまとめいただきたいと思っております。ありがとうございます。

○平松会長
 ありがとうございました。それでは、八田委員、お願いします。

○八田委員
 私は、個別のテーマではなくて、先ほど期せずして小野委員長のほうからASBJの取組みの中の一つとして、優位性を持って先行している領域に仮想通貨の問題があるとのご説明がありましたが、これはとても意味があると思っています。

 先般、新聞で見ただけですが、仮想通貨を扱っている企業の監査において、確立した会計基準がないということで、監査人が意見を不表明にしたとのことですが、こういうのを見るとがっかりするわけです。つまり、会計基準や法令規則等々は、目まぐるしく進んでいく経済活動、企業社会の動きに、どうしても後追いでつくらざるを得ません。そうした基準がないときに、それを前提に監査人は本当に答えを出すことができないのかと。そうではなくて、やはり会計の原点に立ち戻って、原則主義的な考えに則って、あるいは会計の理論的根拠に基づいて処理、認識するならどうなるかということを堂々と発信すればいいのであって、それを踏まえて、さらに会計基準づくりを主導することで、いわゆる日本の立ち位置といいますか、アイデンティティーを国際社会に広めるためにも、こういった一歩も二歩も先行するような業務にかかわってもらいたいと思っています。

 ASBJの活動全体を私は熟知しているわけではないですが、例えば今日の一番重要な収益認識の問題は、非常に時間をかけ、まさに手づくりで作業されていても、結果を伺ったら大体IFRS15号と変わっていないということです。それでもいいと思うのですが、やはり、ちょっと違うのではないのかなと。つまり、エネルギーのかけ方が違うんじゃないかなと。やはり限られた資源と限られた時間の中で活動するわけですから、優先順位をちゃんと決めた中で答えを出していく。実際にはされていると思いますが、もう少し国際社会にアピールできるような活動を続けていただきたいというのが個人的な希望です。

  勝手なお願いばかりしておりますが、せっかく人材と資源がそろっているASBJですから、ぜひ小野委員長のリーダーシップのもとに頑張っていただきたいと思います。

○平松会長
 今日はASBJに対して随分期待が寄せられているようです。小野参考人、また、この段階で何かございますか。

○小野参考人
 ありがとうございます。収益認識については、IFRS15号の定めをそのまま取り入れて、したがって、IFRS任意適用企業がそのまま単体財務諸表に使うこともできる一方、やはり実務上、適用がなかなか難しいという意見もたくさん寄せられたため、代替的な取扱いとして11項目まとめたわけでございまして、時間は3年要しましたけれども、そのあたりも含めて反省すべき点ではあろうかと思いますので、今後の基準開発活動に生かしていきたいと思います。

○平松会長
 ありがとうございました。では、引き続きまして、中川委員、よろしくお願いします。

○中川委員
 私のほうからは、個別のお話となりますが、のれんの償却に関しましては企業経営の一端を担う立場からも非常に大きな議題ですが、ASBJが、意見発信を継続しておられることを伺いまして、非常に頼もしく思っております。大変大きなインパクトがある議題と考えますので、会計基準の開発についてはよい影響を与えていっていただきたいというお願いと引き続きの希望でございます。

 IFRSにつきましては、任意適用企業がここまで増えてきますと、非常に大きな流れ、うねりかと思われます。そこで、先ほどもお話に出ましたが、連結と単体との基準の違い、また連結においては日本基準とIFRSと作業負担が二重になっていることも、議論になってくるのではないかと思います。後者については、銀行は府令改正で一歩進んだと理解していますが、金融機関と捉えますと例えば保険会社などは、他の法律等や基準の関係で移行しづらいというご意見もあろうかと思います。重い話ではありますが、会計基準というものは、他社との比較を容易にするというのも大きな目的の一つだと思いますので、比較可能性のメリットも十分に踏まえながら、こちらの議論も深めていただければと思います。

 最後に、資料の中では、このほかの会計基準の開発というところに書いていただいている仮想通貨と、マイナス金利下における退職給付債務の割引率についてです。これらには、非常に早く取り組んでいただいた印象をもっております。作成者の立場から、特にマイナス金利については非常にスムースに出していただいたと感じております。この場をかりまして、改めてお礼を申し上げたいと思います。ただ、1点、仮想通貨に関しては、今や資金決済法の領域にとどまらず、また暗号通貨との呼称が広がっていますので、会計基準は後追いになるものというご意見はありましたが、現実を踏まえまして、引き続きこの領域にも取り組んでいただければと思っております。

 私のほうからは以上です。

○平松会長
 ありがとうございます。では、徳賀委員、お願いします。

○徳賀委員
 私も弥永委員と同様に、ASBJの議論にずっと参加しておりますので、ASBJに質問するというのは、ちょっと不自然だと理解しております。

 ただ、先ほどから話題になっております仮想通貨とのれんについて、一言ずつコメントだけさせてください。仮想通貨の場合に、期末に保有されている仮想通貨の評価というのは、当然金融機関や一般事業会社が保有する場合もありますし、交換業者も通常株式会社ですので、株主・債権者及び投資者への情報開示という視点から保有仮想通貨の評価・開示を、今までの会計の議論の枠内でできそうに思いますが、交換業者の預かり資産とそれに対応する負債等の評価・開示の問題は、(現在及び将来の)顧客と交換業者との関係の中で論ぜられるべきで、むしろ顧客保護の視点からなされるものですので、これまでの議論を拡張して論ずる必要があると思っております。

 それからもう一点、のれんの方は、先ほどご指摘ありましたように、欧米でのれんが過大に計上されているんではないかということなんですけれども、この比較は難しくて、単純にその違いは、日本企業の多くはきちんと規則的償却をしているのに欧米企業はしていないからだということにはなりません。米国企業と日本企業の超過収益力に差があるかもしれないということと、欧米の企業の方がM&Aを頻繁に行っているので、自己創設のれん部分がより表に出ているということを考慮する必要があります。

 だから、欧米で平均が30%以上(40%以上というデータもある)ののれん(/総資産)が計上されている(日本は6%程度)ことは、上記の調整を検証可能な方法で数値を示さないと難しいかなと思います。例えば、超過収益力は、ある程度その後のフロー等で説明できますので、調整した上でその差の大きさについて、検証可能な方法で示した上で、やはり欧米ではのれんが過大に計上されている、つまり資産性のないものまで計上されてしまっているということを示すようなことができれば、日本の主張が裏づけられると思います。

 以上です。

○平松会長
 ありがとうございます。関根委員、お願いします。

○関根委員
 ありがとうございます。先ほどご説明いただきました会計に関する3点につきまして、それぞれ簡単にコメントをさせていただきます。

 1点目、「会計基準の品質向上に向けた取組み」については、2ページ目の日本におけるIFRS適用状況に関してです。現在は197社とかなり増えてきましたが、このグラフは、任意適用が開始された2010年12月末から記載されており、これまでの歴史を示しているものと感慨深く感じています。

 当初は、任意適用企業の数も少なく、「IFRSへの対応のあり方に関する当面の方針」は、2013年6月に公表されていますが、そのころは20社程度しかない状況を踏まえて「当面の方針」が定められ、それをもとに、種々の対応を行い、その結果このように伸びてきたと理解しています。あれから5年経ち、今後どのような方針でいくか、もちろん、順調に伸びている結果を踏まえ、この「当面の方針」を続けていくということもあると思いますが、現在の方針は当面のものですので、また違う検討をすることもあるかと思います。こうした点は、今後、この審議会でも議論していく話かと思っております。

 それから、2点目、「国際会計人材の育成」について触れたいと思います。2ページ目の「現在のネットワーク登録者」をご覧いただきますと、公認会計士・監査法人勤務者は、600名を超える人数がいるものの、2017年と2018年で1名しか変わっておらず、全く伸びていないと思われるかもしれないので、少し補足のご説明をさせていただきます。

 この多くは監査法人勤務者であり、監査法人では6月から7月にかけて人事異動が行われるということもあり、年に1度の見直しとさせていただいており、現在日本公認会計士協会が中心になりまして、見直しを行っているところだからです。引き続き登録するという方も多くいらっしゃると思いますが、その点も含め、現在見直しをかけています。監査法人勤務者のみではなく、公認会計士として個人で働いている方、もしくは企業で働いている方も含めて行っているところであり、8月末ごろまでにはまとまると思いますので、まとまりましたら、ご報告させていただきたいと思います。

 最後に、「企業会計基準委員会の活動」について申し上げます。私も以前、ASBJの委員をつとめていましたが、その経験も踏まえ、収益認識の会計基準等の策定などには大変なご苦労があったことと思っており、まとまったとのこと、ご尽力に感謝いたします。

 これら活動の中で、皆さんもおっしゃっていましたが、1点コメントさせていただきたいと思います。のれんについては、日本の主張を発信し続けてきたことからかなり浸透されているのではないかと思っていますが、同時に、さまざまな意見が出てきている状況と考えています。その結果、議論がなかなか動かない状況になる一方で、のれんが積み上がっているというリスクを感じている方がかなり増えていて、これは十分注意しなければいけないと思います。私が申すまでもなく、のれんについては、日本は償却を主張していますが、世界ではさまざまな意見があることを踏まえ、会計基準として健全かつ適正な形で処理できるよう、しっかりと議論をしていただきたいと考えており、その支援もしていきたいと思っております。

 私からは以上です。

○平松会長
 ありがとうございました。では、住田委員、お願いします。

 ○住田委員
 ありがとうございます。個別の話ではないんですけれども、会計基準設定という監査にとっても非常に重要な部分について、日々思うところを感想として述べさせていただきます。
 
 企業の活動、あるいは経済事象自体が今までにないようなタイプ、先ほど仮想通貨の話が出ましたけれども、そういうものがどんどん出てくる、そのスピードも今までにないぐらいのスピードで出てくるというのが現状だと思います。
 
 一方、会計基準は、やはり原則主義でつくるということが重要なのだろうと思いまして、また会計基準は経済事象を後追いの形でつくらざるを得ないというのが宿命なのだろうと思います。その基準設定までのタイムラグをどうやって埋めるかということについて、ASBJの日々の活動においても苦心されていると理解していますが、そのタイムラグを埋めるのが、おそらく注記による補足的な開示ということなのだろうと思っております。したがって、今後ますます注記の重要性というものが増えていくのではないかと、監査人の立場からは日々感じているところでございます。
 
 以上です。

○平松会長
 ありがとうございました。釡委員と伊豫田委員は先ほどご報告をいただいたわけですが、何かこの時点で特にご発言いただくことはございますでしょうか。

○釡委員
 よろしゅうございますでしょうか。

○平松会長
 では、釡委員。

○釡委員
 先ほど国際会計人材ネットワークのご報告をいたしましたけれども、ちょうど1年が経ちまして1年間のご報告をしたわけでございますが、先ほど関根委員からお話があったとおり、定期的に登録者をメンテナンスしていくことになっておりますので、そこはしっかりやっていきたいと思います。
 
 また、岡田委員からも作成者側の上層部の層が薄いというお話がありましたけれども、現在、89名ということでご報告いたしましたが、この登録者の内訳を見ますと、執行役員も含めた役員クラスは2名で、あとは皆さんマネジャークラスという状況で、企業数としては、グループの会社をどう数えるかは別にしても、やっぱり30社ぐらいの会社から出ているという状況でございますので、私どもとしても、岡田委員が言われていたようなことは、大変問題意識を持っているということでございます。
 
 また、シンポジウム、あるいは交流会をやっておりますけれども、その都度、全部かどうかは別としまして、終了した後にアンケートをとっておりまして、その評価については概ね好意的な評価をいただいている。その中で、ネットワークに求めるニーズ等も把握しておりますので、その中からこの交流会が生まれたわけですけれども、もっと少人数でやりたいとか、同じ業種で意見交換したいということもありますので、第3回の交流会としてはそういう形も企画しているところでございます。

 以上でございます。

○平松会長
 ありがとうございました。伊豫田委員、何かございますか。

○伊豫田委員
 私は監査が専門でございますので、意見というよりは感想めいたことになるんですけれども、ただ今ご報告いただいたように、IFRS適用対象の会社が増えつつあるということは、グローバル化が展開する中で、基本的には望ましいことなのかと思います。

 ただ、一方で、制度の相互補完性とか整合性という点から考えますと、我が国の会計基準というのは、他のシステム、例えば、課税システムであるとか、あるいは会社法の開示システムと関連しながら精緻化されてきたところがありますので、会計基準が国際化していくことによって、他のシステムとのバランスというものが問題になってくると思います。

 したがって、ややもすると四角い箱の中に丸いものを詰めるような、おさまりの悪いことにならないように、日本の基準の良さをぜひ国際レベルで主張していただきたいと思っています。ですから、国際レベルでのルールメーキングにおける意見発信、そのための国際会計人材の育成といったことについて今後期待していきたいと思っています。たまたま、私は今、監査部会の運営をお預かりしている立場なので、そういった国際会計人材の育成といったところにつきまして、できる限りのことをまたご協力できればと思っております。

 以上です。

○平松会長
 ありがとうございました。さまざまなご意見をいただきました。このご意見を参考に、またこれからの企業会計審議会の運営にも生かさせていただければと思っております。
 
 定刻を少しオーバーいたしましたので、本日の議事はこれまでとさせていただきます。
 
 本日は、お忙しいところをご参集いただきましてありがとうございました。これにて閉会といたします。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3845、3657)

サイトマップ

ページの先頭に戻る