企業会計審議会総会・第43回監査部会議事録

 

1.日時:平成31年3月28日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○徳賀会長
 定刻となりましたので、ただいまより企業会計審議会総会・第43回監査部会合同会合を開催いたします。皆様にはご多忙の中、ご参集いただきましてありがとうございます。
 
 一言ご挨拶申し上げます。本年2月19日に、任期満了により退任されました平松一夫会長の後任として、2月20日付で企業会計審議会会長に任命されました徳賀でございます。
 
 長い歴史と伝統のある本審議会の会長を務めますこと、まことに光栄に存じます。また同時に、責任の重さも感じております。不慣れで至らない点、多々あると思いますが、委員の皆様におかれましては、何とぞご協力のほどお願い申し上げます。
 
 それでは、まず企業会計審議会議事規則に則りまして、本日の会議の公開についてお諮りいたします。本日の会議を公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)
 
○徳賀会長
 ありがとうございます。ご了解いただきましたので、そのように取り扱いさせていただきます。
 
 議事に入ります前に、委員の異動がございますので、事務局からご紹介いただきたいと思います。
 
○井上企業開示課長
 事務局の企業開示課長を拝命しております井上でございます。よろしくお願いいたします。
 
 昨年5月に辻山栄子委員、本年2月19日付で釡和明委員がそれぞれご退任されております。その後、本年2月20日付で新たに2名の委員がご就任されておりますので、ご紹介させていただきます。
 
 橋本尚委員でございます。
 
○橋本委員
 橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○井上企業開示課長
 林田英治委員でございます。
 
○林田(英)委員
 林田でございます。よろしくお願いいたします。
 
○井上企業開示課長
 なお、委員名簿をお手元にお配りしておりますので、ご参照いただければと思います。また、事務局につきましては、お手元の配席図をもってご紹介にかえさせていただきます。
 
 以上でございます。
 
○徳賀会長
 ありがとうございました。
 
 本日の討議事項は3点ございまして、1点目が、会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会。2つ目が、監査をめぐる国際的な動向。3つ目が、監査報告書の記載事項の見直しでございます。いずれも監査に関するテーマでございますので、総会と監査部会の合同会合とさせていただいております。
 
 本日、委員改選後初めての総会でございますので、本審議会の今後の運営につきまして、確認させていただきます。
 
 まず、お手元の資料1に、現在の組織と審議事項をお配りしております。これまで、本審議会では会計部会、監査部会及び内部統制部会の3つの部会を設置して審議を行ってきておりまして、引き続き現在の3部会の組織及び審議事項のもとで審議を進めさせていただきます。
 
 続きまして、会計部会長の指名を行います。
 
 会計部会につきましては、部会長を務められていた平松前会長が退任されており、現在空席となっております。企業会計審議会令では、会長が部会長を指名することとなっておりまして、従来から会長が会計部会長を兼務しておりますので、特にご異論がございませんでしたら、私自身が務めさせていただきますが、いかがでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
○徳賀会長
 ありがとうございます。
 
 それでは、討議に入りたいと思います。
 
 最初に、会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会について、八田委員からご報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○八田委員
 会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会の座長を務めました八田でございます。
 
 本年1月22日、同懇談会におきまして、報告書「会計監査に関する情報提供の充実について」を取りまとめ、公表いたしましたので、その概要をご報告させていただきます。
 
 まず、本懇談会の目的について申し上げます。平成28年3月の「会計監査の在り方に関する懇談会」提言においては、会計監査の信頼性確保に向けた方策の1つとして、会計監査に関する情報の、株主等への提供の充実の必要性が指摘されておりました。
 
 これを受けて、「監査法人の組織的な運営に関する原則」、通称「監査法人のガバナンス・コード」の策定や、企業会計審議会における監査報告書の透明化に係る監査基準の改訂といった取組みが進められてまいりました。
 
 本懇談会は、これらに加え、監査人が資本市場に対してより詳細に説明・情報提供を行うことが求められるケースがあるのではないかとの問題提起を受け、議論を行ったものです。
 
 具体的には、1つ目に、通常とは異なる監査意見等、すなわち限定付適正意見、不適正意見、そして意見不表明といった場合についての、監査人による説明・情報提供のあり方。2つ目として、監査人の交代に際しての説明・情報提供のあり方。これらについて、昨年11月から3回にわたり議論を行いました。なお、企業会計審議会からは、岡田委員と、監査部会の町田臨時委員にメンバーとして参加いただきました。
 
 続いて、報告書のポイントについてご説明申し上げます。お手元の配付資料の2-1をご覧いただければと存じます。
 
 まず、報告書においては、総論として、「監査人が自ら行った監査に係る説明を行うことは監査人の職責に含まれる」とし、監査人が財務諸表利用者に対して説明責任を負うことを明確に記述いたしました。
 
 また、監査人が説明責任を十分に果たすことで、会計監査の品質向上、信頼性確保につながるとの考え方を示しました。
 
 続いて、報告書では、通常とは異なる監査意見等が表明される場合について、監査人の判断の背景や根拠が、財務諸表利用者の意思決定に重要な影響を与える状況であるため、監査人が十分かつ適切な説明を行うことが求められるということを改めて確認いたしました。
 
 監査人による説明は監査報告書によることが基本であるため、まずは監査報告書の「意見の根拠」の区分をわかりやすく具体的に記載すべきであるといたしました。特に、限定付適正意見の場合、なぜ不適正ではなく限定付適正意見としたのかについての理由を明確に記載すべきであるといたしました。
 
 この点に関しましては、本懇談会の議論の中で、監査報告書において、限定付適正意見の「理由」の記載を明示的に求める必要があるのではないかとの指摘がございましたので、監査基準としての考え方を整理する必要があるのではないかと考えます。
 
 さらに、企業側と監査人との間に見解の対立がある状況などにおいては、監査報告書の説明のみでは十分ではないことも想定されることから、監査人は、必要に応じ、監査報告書以外でも追加的な説明を行うべきであるといたしました。
 
 追加的な説明の具体的な手段としては、株主総会での意見陳述の機会を挙げましたが、四半期決算など、株主総会の機会を活用できない場合であっても、適切な説明の手段を検討することといたしました。なお、監査報告書以外での説明が必要となる場面においては、監査役等が監査人による追加的な説明を促すことが求められるという点についても記述いたしました。
 
 本懇談会における議論の最も重要なポイントの1つが、監査人の守秘義務に関する部分です。報告書では、我が国では、監査人の守秘義務が過度に強調されており、監査人が財務諸表利用者に対して説明を行う上で障害となっている可能性があると述べた上で、公認会計士法上の守秘義務、同法第27条の考え方について、「公認会計士法においては、守秘義務の対象となるのは企業の『秘密』に当たるものとされており、未公開の情報全てが含まれるわけではない。また、仮に『秘密』に該当する情報についても、財務諸表利用者に対して監査人が必要な説明・情報提供を行うこと、特に無限定適正意見以外の場合に、監査人の職業的専門家としての判断の根幹部分である当該意見に至った根拠を説明する上で、必要な事項を述べることは、『正当な理由』に該当する」と明確に記述いたしました。
 
 すなわち、監査人が監査意見の根拠を説明する上で必要な事項を述べる場合には、守秘義務違反を問われないということを、報告書上、明確化いたしました。
 
 なお、本懇談会の議論の中では、監査人の守秘義務に関する監査基準の文言――ここでは「事項」という言葉を使っております――が、別途、公認会計士法第27条の文言――ここでは「秘密」という言葉を使っております――と整合しないとの指摘がございましたので、この点に関しましても、監査基準としての考え方を整理する必要があろうかと考えます。
 
 監査人の守秘義務については、日本公認会計士協会の倫理規則において具体的な定めが置かれており、過度に保守的な運用を改めるには、倫理規則の解釈の明確化が不可欠です。このため、報告書においては、「今後、『監査上の主要な検討事項』――通称「KAM」ですが――の記載の状況も踏まえつつ、関係者において適切な方策を検討すべきである」としており、日本公認会計士協会等における今後の検討に期待したいと考えております。
 
 本懇談会においては、以上の論点のほか、監査人の交代に際しての説明・情報提供についても議論が行われ、現状では、交代理由の説明が不十分であるとの意見が数多く出されました。
 
 このため、報告書では、まず、監査人の任期が通常1年で終了することからすれば、監査人の異動に係る臨時報告書において「任期満了」との交代理由を記載することは不適切であるとの考え方を明確に示しました。
 
 また、「監査報酬や会計処理に関する見解の相違」といった事情がある場合に関しては、企業側と監査人側の具体的な対立点を含め、実質的な内容を開示すべきである、といたしました。
 
 この、交代理由の開示に関しては、報告書の記述を踏まえ、既に東証から「監査人交代時の適時開示では、実質的な交代理由及び経緯を記載することと」旨の通知が発出されたとのことであり、今後、金融庁においても必要な対応を行う予定であると承知しております。
 
 最後に、本懇談会の報告書の意義について、私の考えるところを一言申し上げたいと存じます。
 
 近時、あらゆる分野において、透明性や説明責任の重要性が指摘されており、会計監査の分野においても、監査報告書の透明化の取組みをはじめ、財務諸表利用者に対する適切な説明・情報提供がこれまで以上に求められるようになっていると考えます。
 
 通常と異なる監査意見等が示される状況というのは、財務諸表利用者にとって、監査人からの説明・情報提供は極めて重要になる場面ですが、これまで、こうした状況に焦点を当てた検討というのは、諸外国の例や国際的な議論を見ても、行われてこなかったように思われます。このため、本懇談会の議論は、ぜひ世界に向けて発信していくべき内容だと考えております。
 
 この報告書をきっかけとして、国内外でさらに議論が深められること、また、実務がよりよいものになっていくことを心から期待しています。
 
 私からのご報告は以上です。
 
○徳賀会長
 ありがとうございました。
 
 本件に関する質疑等は、次の事務局の説明の後にまとめて行いたいと思います。
 
 監査をめぐる国際的な動向について、事務局からご説明をお願いいたします。
 
○井上企業開示課長
 改めまして、企業開示課長の井上でございます。
 
 日本における監査基準についての議論の参考としていただくべく、監査をめぐる国際的な動向について、資料3-1に沿ってご説明いたします。なお、資料3-2の参考資料は、時間の関係で説明を省略させていただきますので、適宜ご参照いただければと思います。
 
 早速ではございますが、目次をご覧いただければと思います。
 
 まず、各国の監査の基準と題しまして、監査をめぐる主な出来事、日本、EU、米国における基準設定主体及びその特徴、並びに国際監査基準(ISA)についてご説明いたします。
 
 続きまして、英国でカリリオン社の破綻の後、監査業界への批判の高まりを受けて、さまざまな見直しが行われております。これらの英国の状況についてご紹介させていただきます。
 
 最後に、もう1つ大きな注目を集めている動きとして、国際的な監査基準設定主体等の独立性を高めるため、ガバナンス構造の改革が議論されておりますので、こちらの議論についてもご紹介させていただきます。
 
 それでは、3ページをお願いします。監査をめぐる主な出来事といたしまして、2001年のエンロン事件以降について、年表形式でまとめております。
 
 2000年代初頭、アメリカの総合エネルギー会社エンロン等の大規模な不正会計事件が明らかとなりました。これを契機に、会計情報の信頼性確保のため、各国では監査監督当局の設置等が進められたところでございます。
 
 アメリカでは、企業改革法、いわゆるサーベンス・オクスリー法に基づきまして、米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)が設立されました。2002年でございます。なお、日本でも2004年に公認会計士・監査審査会が創設されております。
 
 国際監査基準に目を向けますと、エンロン後の2002年に、国際監査基準の設定主体でございました国際監査実務委員会(IAPC)を独立性・透明性を高める形で改組いたしまして、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が設立されております。
 
 エンロン等の事案への対応として、IAASBでは監査品質の向上や統一的な監査を担保する観点から、監査上の要求事項を基準内で明確化するプロジェクトであります明瞭性プロジェクトに2004年から着手し、2009年に完了しております。
 
 この流れの中で、EUでは2006年のEU法定監査指令によりまして、EU各国の法定監査は国際的な監査基準に基づくということが規定されております。証券監督者国際機構(IOSCO)でも、2009年にクロスボーダーにおける公募等に国際監査基準に基づく監査の受け入れ等を促す声明が出されたところでございます。
 
 その後、2008年の金融危機を受けたフェーズへと移ってまいります。2016年にEUで監査上の主要な検討事項、いわゆるKAMに相当する記載の要求事項の導入が行われております。また、2012年にオランダで、2016年にEUで、監査法人のローテーション制度が導入されているところでございます。
 
 このように、各国で監査の信頼性確保に向けた取組みが進められてきたにもかかわらず、後ほどご紹介いたします英国のカリリオン社の事案を含め、不正会計事件が続いているところでございます。
 
 4ページをお願いいたします。ここでは各国の監査の基準についてご説明させていただきます。
 
 日本においては、当審議会が監査基準を策定していただきまして、監査基準のその枠組みの中で監査の実務指針として日本公認会計士協会が監査基準委員会報告書を作成いただいているところです。内容的には、国際監査基準と大きく乖離するものではございませんが、整理としては国際監査基準とは独立した基準という整理になろうかと思います。
 
 EUにおいては、EU法定監査指令におきまして、EU域内各国の法定監査は、欧州委員会において採択されました国際監査基準に基づいて実施されなければならないという枠組みがございます。実際には、EU域内各国は、国際監査基準を踏まえた形で、各国の法定監査における監査基準を設定しております。なお、各国の法令等に基づき、追加の要求事項を設定している場合等もあると理解しております。
 
 右側のアメリカでございますが、こちらも先ほどご紹介しましたとおり、企業改革法の制定後、PCAOBが公開会社向けの監査基準を設定しております。
 
 それでは、5ページをお願いいたします。こちらでは、国際監査基準と我が国の監査の基準の関係について補足させていただければと思います。
 
 先ほど、我が国の監査の基準は国際監査基準から独立という整理になると申し上げましたが、日本としてあるべき監査の基準を模索する中で、国際的な動向も踏まえた検討がなされており、結果として、我が国の監査の基準は、その内容において国際監査基準と大きく異なるものではございません。
 
 こちらにまとめられておりますとおり、例えば国際的に明瞭性プロジェクトが進められた後、我が国においても公認会計士協会の監査基準委員会報告書が段階的に適用されているところでございます。
 
 また、2009年から2015年にかけて、IAASBにおきまして監査報告制度の見直しが実施されましたが、日本におきましても昨年の監査部会でご議論いただき、早期適用では2020年3月期より、監査報告書への監査上の主要な検討事項、いわゆるKAMの記載を導入することとなったところでございます。
 
 それでは6ページに移っていただければと思います。こちらでは、ご参考までに、今後改定が予定されております主な国際監査基準等を挙げさせていただきました。
 
 重要な虚偽表示リスクの識別と評価に関する基準でございますISA315につきましては、主にリスク評価手続の強化を図る改訂が検討されておりまして、2019年に最終化される予定と伺っております。
 
 その後、2020年には、監査事務所における適切な品質管理体制の構築を求める基準であります国際品質管理基準ISQM1と、国際監査業務の審査に関する基準でありますISQM2、及び個別監査業務における品質管理の基準でありますISA220の3つの基準改訂について、最終化される予定と伺っております。
 
 また、足元のIAASBでは、グループ監査に関する基準でありますISA600の改訂に向けた議論が行われることになっておりまして、監査人の監査アプローチの強化を図る改訂が2021年に最終化される予定と伺っております。
 
 続きまして、イギリスにおける議論のご紹介に移らせていただきたいと思います。8ページにお進みください。こちらでは、まず英国での議論の契機とされますカリリオン社の事案についてでございます。
 
 カリリオン社は、右上の囲みにございますように、英国第2の大手建設会社でございますが、2018年、昨年1月に破綻しております。破綻に至る経緯は2017年のところに書かせていただいておりますが、外部監査人が無限定適正意見を付してから1年とたたずに破綻したということになります。これをきっかけに、イギリスの国内では監査品質に関する批判の声が高まりまして、議会を巻き込んだ議論に発展しております。
 
 足元の議論のポイントは2点ございます。1点目は、監査市場では監査品質の向上に向けた競争原理が十分に機能していないのではないかという指摘でございます。これにつきましては、英国の競争当局であります競争・市場庁(CMA)が、昨年10月に市場環境調査に着手しまして、競争環境の課題の洗い出しと、その改善策を検討しております。
 
 もう1点は、規制当局であります財務報告評議会(FRC)が十分に役割を果たせていないのではないかという批判でございます。こちらについては、ビジネス・エネルギー・産業戦略省からの委託を受けまして、イギリスのリーガル・アンド・ジェネラル社のチェアマンのジョン・キングマン氏が、FRCの組織体制や権限等に関する見直しを行って、改革提案をまとめております。
 
 次のページから、その内容についてご説明させていただければと思います。
 
 まず9ページは、競争・市場庁(CMA)による監査市場の調査結果及び改善提案についてでございます。
 
 CMAは昨年10月に調査を開始した後、12月に中間報告をまとめております。その中では、左のほうにございます、大きく4つの課題を特定して、その改善策を右側のほうに提案してございます。
 
 まず、企業が監査品質よりも監査報酬や自社との相性に基づいて監査人の選任・解任を行っているのではないかという指摘がございます。これに対しては、監査委員会の活動が監査品質に基づいて行われたか、規制当局が調査できる制度の導入というのを提案しています。
 
 次に、課題2のところでございますが、大手企業の監査は、大手監査法人による寡占状態にあり、監査品質の向上に向けた競争原理が不十分ではないかという問題意識でございます。
 
 複数の理由が挙げられておりますが、1つには、準大手監査法人が大手企業の監査に参入するに当たっては、能力・経験等による障壁が存在しておりまして、結果として準大手が育たないため、大手監査法人による寡占状態が継続しているというものでございます。
 
 これに対しては、準大手監査法人を含む複数の監査法人による共同監査の義務づけというものを提案しております。また、その代替策といたしまして、大手監査法人の市場シェアに制限を設けるという提案もございます。いずれも、準大手の参入機会の確保を企図した策と考えられます。
 
 3点目は、監査法人が非監査業務を提供する業態に関してでございます。一般にマルチディシプリナリモデルとも言われますが、監査法人の収入の大部分が非監査業務から得られているがゆえに、本業である監査業務の品質がおろそかになっているのではないかという指摘でございます。改善提案としましては、非監査業務の提供を経営レベルまたは組織レベルで分離するということになります。
 
 4点目、一番下のところでございますが、競争・市場庁は監査業界の規制上の課題についても触れておりますが、具体的な中身については、次のページでご紹介するキングマン・レポートに譲っておりますので、10ページに移っていただければと思います。
 
 こちらでは、イギリスの財務報告評議会(FRC)に対する独立レビュー報告書、通称「キングマン・レポート」についてご紹介いたします。
 
 この報告書も昨年12月に公表されたものでございまして、財務報告評議会(FRC)を廃止いたしまして、新たな独立の規制当局(ARGA)、監査財務報告企業統治監督機構とでも訳すのでしょうか、それを設置することをメインステートメントとした上で、FRCの構造と目的、FRCの核となる役割、企業破綻への対応、監視と説明責任、スタッフ・リソースなどの課題について、幅広い提言を行っているところでございます。
 
 これを受けまして、右下のところでございますが、イギリスの政府の対応としまして、本年3月にFRCの新当局への刷新を公表するとともに、キングマン・レビューに挙げられた提言を踏まえた今後の改革の進め方について、パブリックコンサルテーションを開始しているところでございます。
 
 なお、イギリスの政府は、別途ロンドン証券取引所グループのチェアマンでありますドナルド・ブライドン氏にもレビューを依頼しておりまして、このレビューでは、先ほどのCMAレビューと、このキングマン・レポートを踏まえまして、将来における監査のあり方についても検討されるということでございます。
 
 英国における議論のご紹介は以上とさせていただきまして、もう1つの国際的な動向でございます、国際監査基準等の設定主体に関するガバナンス改革のご紹介に移ります。12ページをお願いいたします。
 
 まず、現状の国際的な基準設定主体のガバナンス構造についてご説明いたします。このページは上から大きく3層に分かれておりますが、まず一番下のオレンジ色の枠内をご覧いただければと思います。
 
 中央の白色のボックスに3つの基準設定主体を示しております。すなわち、監査・保証基準を設定いたします国際監査・保証基準審議会(IAASB)、会計士の倫理規則を設定する国際会計士倫理基準審議会(IESBA)、そして教育基準を議論する国際会計教育基準審議会(IAESB)でございます。
 
 ポイントといたしましては、基準設定主体がオレンジ色の枠内、すなわち国際会計士連盟(IFAC)の中の組織として設置されている点でございます。IFAC内の組織であることから、現在、基準設定主体の人選、資金的な手当というのはIFACが担っているという状況でございます。なお、IAASBには金融庁枠のオブザーバーとして、当審議会から松本委員にもご参加いただいているところでございます。
 
 次に、上から2つ目の水色の枠の中をご覧ください。基準設定主体の活動が公益に沿ったものとなるよう、公益監視委員会(PIOB)が基準設定のデュープロセス等を監視する役割を担っています。
 
 最後に、一番上の水色の枠でございますが、基準設定主体活動とPIOBによる監視が全体として機能していることを確認するため、国際的な機関で構成されるモニタリング・グループが活動しているところでございます。
 
 それでは、13ページに移っていただけますでしょうか。先ほどご紹介しましたとおり、現状、基準設定主体は職業会計士の団体であるIFAC内の組織となっております。この点につきまして、基準設定主体の独立性を懸念するようなご指摘もございました。
 
 これらを踏まえまして、モニタリング・グループにおいて、国際監査基準等の設定主体、IAASBとIESBAにつきまして、国際会計士連盟(IFAC)から組織上・資金上の影響を受けている点について、独立性確保の観点から、ガバナンス構造の見直しが検討されているところでございます。
 
 このスライドでは、モニタリング・グループが2017年11月に実施しましたパブリックコンサルテーションのペーパーに基づきまして、ポイントを3点ご紹介させていただきたいと思います。
 
 まず、真ん中のところ、改革の主な論点のところでございますが、基準設定主体をIFACの外に設置して、組織的にも資金的にもIFACから独立させるということが検討されているところでございます。
 
 その上で、従来は監査基準と倫理規則を別々に議論してきたところ、少なくとも監査人に係る倫理につきましては、監査基準と一緒に議論することが望ましいか否かというのが検討されています。これが2点目です。
 
 仮に、監査人に係る倫理のみを監査基準と一緒にすることとした場合、他の会計士――この場合は企業内の会計士かと思いますが、そのような会計士向けの倫理を、監査人に係る倫理と別個に議論することが適切なのか。これが3つ目のポイントでございます。
 
 現在、これらのポイントを含む論点につきまして、モニタリング・グループにおいて議論がされていると承知しております。モニタリング・グループは、近々2回目のパブリックコンサルテーションを予定していると伺っておりまして、その中で、改革内容のさらなる具体化がなされるものと理解しております。
 
 我が国の監査基準をご議論いただくに当たりまして、この場でご紹介させていただきましたイギリスでの議論ですとか、あるいは基準設定主体のガバナンス改革といった国際的な動向についても、ご勘案の上ご議論いただくことが有益ではなかろうかと思います。
 
 以上で事務局からの説明を終わらせていただきます。
 
○徳賀会長
 ありがとうございました。
 
 それでは、八田委員のご報告と、ただいまの事務局の説明に関しまして、ご質問、ご意見をお願いします。なお、八田委員のご報告に関係のある内容につきましては、次の監査部会でもご議論いただくことになっております。
 
 どなたからでも、どうぞ。
 
○野崎委員
 住友化学の野崎でございます。ご説明ありがとうございました。最初の八田先生の報告書の件ですが、必ずしも質疑ということではなくて、やや感想に近いことを申し上げます。主に、通常とは異なる監査意見の表明についてですが、ある意味ではもう少し普遍的なもので、通常は、無限定適正の意見表明をするわけで、しかし結果として通常ではない意見表明をせざるを得ない状況になったときに、どうするかという話だと思います。
 
 その意味では、もう少し普遍的な、通常でない部分だけではなくて、通常の部分の普遍的な部分をかなり多く含んでいるのではないか。この点、非常に大きな意義のある報告書であると、私は思います。
 
 といいますのは、これは結果であって、その前段階として、多分、監査人と監査役、経営の執行部との間の信頼関係というのが本来まずあって、その上で監査が行われるというのが、本来あるべき姿だと思います。監査人というのは、会社と敵対関係ではなくて、いわばリスクと向き合う、ある意味ではパートナーであると考えるべきであると、私は思っておりまして、その意味では、監査人の側も、やや情緒的に言うと、会社に対する思いというか、愛情というか、そういうものが多分あって、だからこそ、その会社の行く末というか、よい会社になってほしいと。きちんと投資家に評価をされる会社になってほしいと。従業員も満足できるような会社になってほしいという思いがあって、それで信頼関係ができ上がるというのが、まず一番にあるべきだと思います。
 
 そうした気持ちがあれば、長期的な視点に立って、意見の相違があっても、それを真摯に議論できる、あるいは、場合によってはそれを表明するというようなことができるのではないでしょうか。そのような信頼関係があれば、監査の品質も高まっていくし、情報提供の質も高まっていくという意味で、この報告書が、こうした議論にも使われるといいのではないかと思います。
 
 以上でございます。
 
○徳賀会長
 野崎委員、ご意見ありがとうございました。
 
 八田委員、何かお答えになることはございますか。
 
○八田委員
 ご指摘のとおりだと思います。
 
○徳賀会長
 はい。ではほかに。どうぞ、水口委員。
 
○水口委員
 八田先生の貴重なご発表、ありがとうございました。事務局から説明いただいたことを受けて、各国の監査基準について、どうすべきであるかという意見ではく、感想を申し上げようと思います。
 
 私にとっては、監査法人がどのようなビジネスモデルを志向しているかは関心事項であります。監査人には、監査品質を重視して、資本市場のインフラの役割を果たすことを担保するためにたゆまぬ努力をしていただくことを期待しているところです。
 
 こうした観点から、日本の監査法人の努力だけでは対応しきれない事項もあるのではないかと思っております。例えば、日本の企業がグローバル化する中で、日本の監査法人が被監査会社の監査に従事する際に、グローバルネットワークの海外のメンバーファームがリファードワークに携わるケースも少なくないと想定しております。例えば日本の法人のみではなく、グローバルネットワーク及び他のメンバーファームが監査品質の維持・向上が可能となるような体制整備やリソース配分、教育などに加えて、技術革新の進む中で、新たな諸施策を含めた監査品質にコミットする戦略をとっているのか、報酬を増加させる観点から、非監査業務へのリソース配分に注力するという選択をしていないかなどが私の関心事項です。
 
 今後も、監査法人が、監査品質の維持・向上に向けて、実効的な施策を考察する際には、日本法人のみでなくグローバルネットワークも視野に入れた対応をすることに期待しています。
 
 以上です。
 
○徳賀会長
 水口委員、ご意見ありがとうございました。
 
 事務局から何か。
 
○井上企業開示課長
 大丈夫です。
 
○徳賀会長
 ほかにいかがでしょうか。岡田委員、どうぞ。
 
○岡田委員
 充実懇については私も委員として参加しておりまして、その中でも発言したのですが、情報提供の充実における監査役等の役割については、充実懇を通じて非常に重く受けとめております。
 
 例えば、監査証拠が確認できなかったことを理由に監査人から限定意見が表明された場合に、経営に対応を促すのは監査役等の重要な役割であり、また、監査役等にはそうした権限は当然にあると考えます。今後、監査役協会でも、具体的な話が出た場合には、問題意識を持って対応したいと感じた次第です。
 
 次に、各国の監査をめぐる国際的な動向については、このCMAの報告の中で、監査法人間の競争、あるいは寡占化ということが言及されています。イギリスの事情はさておき、日本では今後競争はますます激化すると思いますし、例えば、IT投資という面でも、とりわけ四大監査法人は相当な予算を計上して対応しています。そうすると、準大手、あるいは中小の監査法人とは、今後さらに差がつくおそれもあるのではないかと思います。
 
 また、国際的に活動する企業の監査をする場合、どうしてもネットワークファームを起用せざるを得ません。そうした監査に対応できるのはグローバルにネットワークを持っている監査法人に限られますので、二極化が進むおそれがあるということを危惧しております。
 
 ここで、イギリスでは複数の監査法人による共同監査という提案がされていますが、必ずしもそんなに簡単ではないのではないかと思います。
 
 最後に、基準設定主体のガバナンス構造についてです基準設定主体についてのガバナンス改革はこれからの議論に任せたいと思いますが、比較としてIFRS財団の例が引いてありますので、IFRSに5年半、トラスティ(評議委員)をしていた経験を申し上げますと、IFRSの中には例えばデュー・プロセス・オーバーサイト・コミッティ、ノミネーティング・コミッティなど5つのコミッティがあり、IASBの議長はそのほとんどにオブザーバーとして参加し、意見交換をしていました。つまり、IFRSのトラスティとIASBの連携は、形式的ではなく、非常に実質的なものがあったと感じております。
 
 PIOBがどの程度、基準設定主体とのコミュニケーションを密にとった活動をされるのかはわかりませんが、コミュニケーションが一番大事ではないかなと感じている次第です。
 
○徳賀会長
 岡田委員、ご意見ありがとうございました。
 
 続きまして、林田委員、どうぞ。
 
○林田(晃)委員
 ご説明大変ありがとうございました。情報提供の充実について、感想めいたことを申し上げます。
 
 KAMの記載が決まりましたこの時期に、会計監査に関する情報提供の充実が図られるというのは、時宜を得た、非常に適切な対応だろうと思います。
 
 監査法人の方々はぜひ、報告書の趣旨をよく酌み取っていただいて、具体的に、わかりやすい文章で、監査意見についての説明・情報提供を行っていただきたいということをお願いしたいと思います。
 
 KAMについて議論した際に指摘されたことではありますが、新たな情報提供が、いわゆる紋切り型の決まり文句にならないよう、ぜひ工夫していただきたいということを指摘したいと思います。
 
 また、そのためにも、各企業の方々も、監査法人に対する情報提供などについて、積極的に対応していただければというお願いをしたいと思います。
 
 以上です。
 
○徳賀会長
 林田委員、ご意見ありがとうございました。
 
 その他、ご意見、ご質問等ございませんでしょうか。
 
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 
 それでは、次の討論に移りたいと思います。先ほどの八田委員からの報告及び、ただ今の議論も踏まえまして、本日の監査部会におきましては、3点ほどご議論いただきたいと考えております。
 
 第1点は、昨年7月の監査基準の改訂を踏まえた、中間監査・四半期レビュー報告書の記載内容の見直しでございます。2点目は、先ほどの会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会報告書を踏まえた対応についてでございます。3つ目が、前回の監査部会において、引き続き検討を行うということにされておりました、その他の記載内容に関する監査人の対応でございます。
 
 ここからは、監査部会の伊豫田部会長に進行をお願いいたします。
 
○伊豫田部会長
 監査部会長の伊豫田でございます。
 
 それでは、議論に先立ちまして、監査報告書の記載事項の見直しにつきまして、事務局のほうから説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
○野崎開示業務室長
 開示業務室長の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。
 
 本日ご議論いただきたい項目が3点ございます。目次にお示している3点でございますが、そのうち1点目と2点目につきましては、後ほど基準の改訂の方向性につきまして、事務局の案をお示しさせていただきたいと思いますので、そちらを踏まえたご審議をお願いできればと思います。
 
 それでは1点目の、中間監査報告書・四半期レビュー報告書の記載内容について、ご説明したいと思います。3ページ目でございます。
 
 昨年7月の「監査基準の改訂に関する意見書」におきまして、監査報告書の記載内容の明瞭化や充実を図ることを目的としまして、年度の監査報告書の記載区分の改訂などが行われたところでございます。
 
 その際、5行目でございますが、意見書におきましては「中間監査基準及び四半期レビュー基準についても、今後、同様の観点からの改訂を検討することが必要」とされたところでございます。今回は、これを踏まえた改訂案につきましてご議論をお願いできればと存じます。
 
 次の4ページ目でございます。既に実施済みの年度の監査報告書の記載内容に係る改訂内容をお示ししております。
 
 1点目としまして、監査意見を冒頭に記載しております。2点目に、新たに「意見の根拠」の区分が設けられております。それから3点目、「経営者の責任」が「経営者及び監査役等の責任」に変更されております。そして4点目は、先ほどご議論がありました「監査上の主要な検討事項」、KAMの記載欄が設けられているほか、記載順序の変更が行われているところが、年度の監査報告書の変更点でございます。
 
 今回ご議論いただきたいのが、中間監査報告書と四半期レビュー報告書でございます。まず中間監査報告書につきまして、5ページ目でございます。
 
 年度の監査報告書と同様に、冒頭に「中間監査意見」を記載する、新たに「意見の根拠」の区分を設ける、「経営者の責任」を「経営者及び監査役等の責任」に変更するほか、記載順序の変更をしております。
 
 続きまして、四半期レビュー報告書も同様でございまして、冒頭に「監査人の結論」を記載する、新たに「結論の根拠」の区分を設ける等の変更案をお示ししております。
 
 以上、5ページ目と6ページ目でお示ししました改訂案につきまして、ご審議をお願いできればと存じます。
 
 続きまして、充実懇につきまして、監査基準の文言に関する論点を2点、ご説明させていただきたいと思います。
 
 1点目としまして、無限定適正意見以外の場合における「意見の根拠」の記載に関する論点でございます。監査人としましては、新たに設けられた「意見の根拠」の区分において、意見の種類に応じて除外事項の内容、財務諸表に与える影響や監査人の判断の理由などをわかりやすく具体的に説明することが求められるところでございます。
 
 この点、充実懇の報告書では、特に限定付適正意見が表明される場合におきまして、虚偽表示や監査範囲の制約そのものの説明はもとより、一番下の段落でございますが、「なぜ不適正ではなく限定付適正と判断したのか」について、「十分かつ適切な説明を行うことが求められる」とされたところでございます。
 
 これを踏まえまして、真ん中の白枠のところでございますが、現行の監査基準では、「意見の根拠」区分に記載する事項としまして、意見に関する除外、いわゆる意見限定につきましては、「除外した不適切な事項」及び「財務諸表に与える影響」を記載することになっております。
 
 その下の監査範囲の制約、いわゆる範囲限定につきましては、「実施できなかった監査手続」及び「当該事実が影響する事項」を記載することとされており、理由の記載が明示的に求められていないというところでございます。
 
 しかしながら、充実懇の報告を踏まえ、なぜ適正ないしは不適正ではなくて、限定付適正意見と判断したのかについて、十分かつ適切な説明を求めるために、枠囲いの赤字の改訂案を作成しております。
 
 具体的には、意見限定につきましては、「除外した不適切な事項」、「財務諸表に与えている影響」に加えまして、「これらを踏まえて限定付適正意見と判断した理由」ということでございます。範囲限定につきましても、「実施できなかった監査手続」、「当該事実が影響する事項」に加えまして、「これらを踏まえて限定付適正意見とした理由」の記載を求めるものでございます。
 
 充実懇では、意見不表明の場合につきましても、「意見不表明が極めて例外的な状況であることを念頭に置き、監査報告書において特に丁寧な説明を行うことが求められる」とされたところでございますが、監査基準上は既に理由の記載が求められておりますので、こちらについての改訂は不要と考えております。
 
 続きまして、充実懇の論点の2点目、守秘義務の規定でございます。
 
 充実懇の報告書におきましては、先ほどご紹介がありましたように、「我が国では、一般的に、企業に関する未公表の情報について、あらゆるものが守秘義務の対象になり得ると考えられる傾向があるとの指摘」がなされている一方で、公認会計士法上は、守秘義務の対象になるのは「企業の「秘密」に当たるものとされており、未公表の情報全てが含まれるわけではない」という記載がございます。
 
 公認会計士法第27条でございますが、「業務上取り扱ったことについて知り得た秘密」が守秘義務の対象とされています。「秘密」というものが意味するところにつきましては、例えば法律用語辞典によりますと、「一般に知られていない事実であって、かつ、知られていないことにつき利益があると客観的に認められるものをいう」とされております。
 
 監査基準におきましては、公認会計士法の規定を踏まえて、秘密の保持に関する規定が設けられておりますところ、そこでは、「業務上知り得た事項」というような規定ぶりとなっております。
 
 本規定につきましては、充実懇報告の問題意識も踏まえまして、守秘義務の対象となるのはあくまで企業の秘密に当たるものであり、未公表の情報全てを含むものではないということを明確にし、企業に関する未公表の情報について、あらゆるものが守秘義務の対象になり得るとの誤解を少しでも解消するため、監査基準の守秘義務の対象を現行の「業務上知り得た事項」ではなくて、「業務上知り得た秘密」に改訂してはどうかというご提案でございます。
 
 以上、充実懇に関連しまして、9ページにお示しした枠囲いの部分と、今お示しした12ページの部分の改訂案につきまして、ご審議をお願いできればと思います。
 
 最後に、昨年の監査部会においてご議論いただきました、その他の記載内容について、ご説明させていただきたいと思います。
 
 昨年の4月24日の監査部会におきまして、右側の丸でございますが、それまでの監査部会におけるご議論の整理としまして、「財務諸表の信頼性だけでなく、非財務情報に対する信頼性を高める反射的効果も期待される」のではないか、ないし、「追加的な監査手続を要求するものではないため、実務への影響は軽微」であると。そういったご意見があった一方で、「非財務情報に関する監査人の責任について慎重に検討する必要がある」のではないかといったご意見も出された旨を記載させていただいた上で、引き続き検討を行うとされたところでございます。
 
 本日は、このような整理を踏まえた上で、約1年弱経過し、非財務情報の充実に向けた取組みが着実に進展しつつある現時点におきまして、監査人の役割、果たすべき責任について、改めてご審議をお願いできればと考えております。
 
 また、昨年の監査部会では十分にご紹介しきれなかった欧州の状況についても、後ほど簡単にご紹介させていただければと存じます。
 
 15ページ目でございます。まず、我が国の現行制度の枠組みのもとでは、監査の対象というのは、表の一番上の左側でございますが、財務計算に関する書類、会社法では計算書類及びその附属明細書とされておりまして、例えば有価証券報告書の財務計算に関する書類以外のパーツにつきましては、監査の対象とはされていないというのが、我が国の枠組みでございます。
 
 その上で、我が国の現行の監査基準におきましては、財務諸表の表示と「その他の記載内容」との重要な相違について、監査人の判断によって、追記情報として記載するということが求められております。これは平成14年の監査基準の改訂で導入されたものですが、その趣旨としまして、一番下の下線部分でございますが、「財務諸表とともに開示される情報において、財務諸表の表示やその根拠となっている数値等と重要な相違があるときには、監査人が適正と判断した財務諸表に誤りがあるのではないかとの誤解を招く虞があるため」とされております。
 
 監査人の手続としましては、「監査した財務諸表との重要な相違を識別するため、その他の記載内容を通読」する等々が、公認会計士協会が定める監査基準委員会報告書720に定められているところでございます。
 
 以上が、現状の日本の枠組みのご紹介でございます。
 
 続きまして16ページ目、2016年に改訂されました、改訂後の国際監査基準(ISA720)についてご紹介したいと思います。
 
 具体的な改訂内容は、資料末尾2ページをご覧いただければと思いますが、大きく分けまして、対象書類、監査人の対応、監査報告書への記載について、実質的な改訂が2016年には行われております。
 
 1点目の対象書類につきましては、従来は「監査済み財務諸表を含む書類」というものが広く対象にされていたのですが、改訂後は、右上の四角の欄でございますが、基本的に年次報告書ベースとされておりまして、目論見書を含む証券発行に関する書類は対象外とされております。
 
 2点目、監査人の対応につきましては、従来は「通読」、readして重要な相違の有無を「特定」、identifyするというような枠組みとなっていたのですが、改訂後は、通読だけではなくて「検討」、considerするというのが新たに求められているところでございます。
 
 considerの対象としまして2つございまして、1つ目としましては、「その他の記載内容」と財務諸表との間に重要な相違があるかどうかということでございます。2点目は、監査において入手した監査証拠と到達した結論の観点から、「その他の記載内容」と監査人が監査の過程で得た知識との間で重要な相違があるかどうかというものが規定されております。
 
 さらに、注でございますが、監査人は上記のような通読に際して、財務諸表や監査人が監査の過程で得た知識に直接関連しない情報、例として温室効果ガスの排出量などが挙げられておりますが、そういったものについても、重要な虚偽であるとの証拠がないかについて注意を払うということが求められているものでございます。
 
 3点目の監査報告書の記載内容につきましては、「その他の記載内容」等の見出しを付した区分を新たに設けて、仮に監査人が報告すべき事項がない場合でも、その旨を記載することとされております。
 
 続きまして、17ページ目でございます。ISA720の改訂の理由につきまして、IAASBの考え方を整理したものでございます。
 
 右下のところでございますが、「その他の記載内容に関する監査人の責任を強化することにより、監査の範囲を変えることなく、費用対効果が見合う方法で監査の価値を高める」、あるいは、「監査人の責任やその他の記載内容に関する作業の結果について、監査報告書で明確に記述することを求めることにより、透明性を向上させる」といった点を目指すとされております。
 
 最後に、欧州と米国の動きについて簡単にご紹介させていただきたいと思います。
 
 2013年のEU会計指令におきましては、上場会社には財務諸表のほかにコーポレートガバナンス報告書を含む経営者報告書の提出が義務づけられておりまして、これらは実務上は年次報告書に含めて、まとめて開示されているというものでございます。
 
 また、右側の2の部分でございますが、大規模な上場会社につきましては、2014年に定められたEUの非財務報告・多様性指令に基づきまして、非財務報告書も経営者報告書とあわせて開示するということが求められているところでございます。
 
 これらの財務諸表以外の報告書に係る監査人の対応でございますが、真ん中の段でございますが、EU会計指令の第8章「監査」という章立ての中に規定されている、第34条におきまして、法定記載情報を含む経営者報告書について、法定監査人は財務諸表と整合しているかという整合性のチェックと、それから適用される法令に従って作成されているかどうかという準拠性のチェックについて、それらの結果について意見の表明が求められているというところでございます。
 
 さらに、法定監査人は、監査の過程で入手した企業及びそれを取り巻く環境についての知識及び理解に照らして、経営者報告書において重要な虚偽記載を識別したか等について報告することが求められているというものでございます。
 
 右側、2でございますが、ただし、EU非財務報告・多様性指令では、非財務報告書の部分につきましては、この規定の適用の限りではないとされまして、記載すべき事項を満たして開示されているかのみの「確認」、checkのみを法定監査人に求めているというものでございます。
 
 このように、EU指令では、先ほどご紹介しましたISA720で要求されている整合性の判断に加えまして、法定記載情報を含む経営者報告書については、整合性意見及び準拠性意見の表明を求めているというところでございます。
 
 この欧州指令を踏まえました例としまして、例えば英国では、資料には記載しておりませんが、2016年の会社法改正において、戦略報告書及び取締役報告書に記載されている情報について、監査人は財務諸表との整合性、適用法令の準拠性について意見を述べるということが求められておりまして、具体的な手続が、監査基準のISA720(UK)というもので定められているところでございます。
 
 なお、前半のパーツでご紹介のありましたCMAやキングマン・レポートを踏まえた直近の対応としまして、本年3月4日に英国のFRCが公表したポジションペーパーによりますと、ISA720(UK)を今後強化していくというような方向性も打ち出されているというところでございます。
 
 最後に、アメリカの状況でございます。19ページ目でございますが、米国の監査基準におきましても、監査人はその他の記載内容を通読して、当該情報やその表示方法が財務諸表に表示されている情報やその表示方法との間で重要な不整合があるか否かを検討するということにされております。
 
 さらにPCAOBは、右側の欄でございますが、2013年に監査人の責任を強化する監査基準の改訂案を公表したところでございますが、こちらは結局最終化されないまま現在に至っております。
 
 直近の動きとしまして、20ページ目の右側でございますが、昨年10月にNon-GAAP指標を含むその他の記載内容、及び企業業績指標に関する監査人の責任について、引き続き検討中である旨、状況のアップデートがなされているところでございます。
 
 事務局からの説明は以上となります。ありがとうございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、いずれの論点についてでも結構ですので、ご意見あるいはご質問をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
○今給黎委員
 ご説明ありがとうございます。日立製作所の今給黎でございます。
 
 最後にご説明いただきました、その他の記載内容について、少しコメントさせていただきたいと思います。こうした記述情報や非財務情報につきまして、投資家の皆様の関心が高まっていることは十分認識しておりますし、企業としても任意情報の公表を含めて、さまざまな形で投資家との積極的な対話を意義あるものとして進めているところでございます。また先般、記述情報に関する開示の原則及び記述情報の開示の好事例集を公表いただきましたけれども、私ども、実務の目線で見ますと、有報のような厳格な法定書類にどこまで踏み込んで記述すべきなのか、あるいは記述してよいのか、新たに負う法的リスクはないのか、まだ戸惑いがあるところでございます。
 
 その他の記載内容は、将来情報や定性情報も多いですし、非常に判断の難しい領域と認識しております。現在でも、会計監査で監査法人が監基報720に基づく手続を実施しておられますが、今回の改訂では、さらに検討して、その結果を新たに監査報告書に記載するということになっております。そうした場合、どのような範囲で手続が行われて、また我が国の法制度のもとで、金商法、会社法を含め、監査人が新たに負う法的リスクは何かということを、改めてきちんと明確にする必要があるのではないかと考えております。
 
 特に昨今、国内では、前段部分を含めた有報の虚偽表示の議論が飛び交う中で、実務の現場では非常に重圧がございます。
 
 この改訂によって、結果として監査手続が非常に保守的になっていくことによるコスト増加が、企業としても懸念されるわけでございまして、そうした場合のコスト対効果が本当にあるのか、過度な期待があってはいけないと思います。先ほどご説明がございましたように、まだアメリカでも検討中ということですし、欧州事例なども十分に分析した上で、急ぐ必要はないと申しますか、慎重に我が国のあり方を判断していく必要があるのではないかと考えます。よろしくお願いいたします。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、意見いかがでしょうか。
 
○小畑委員
 ありがとうございます。ただいま、今給黎委員からご指摘がございましたが、私もその他の記載内容について、若干申し上げたいと思います。
 
 本日ご説明いただいた資料4の14ページにございますが、現行の日本の制度では、財務諸表とその他の記載内容との間に齟齬がある場合には、財務諸表に誤りがあるのではないかという観点から通読をするとして、あくまでも財務諸表の正確性を問題にしていると認識しているわけですが、改訂ISA720によりますと、これは従来の日本のやり方である財務諸表に力点を置いたものなのか、それとも、その他の記載内容そのものの正確性を確認するものなのか、まずは明らかにしていただきたいと思います。
 
 その上で、仮にその他の記載内容そのものの正確性を確認するものであれば、資料4の13ページにございますように、これまでの監査部会での議論では、右側の2ポツ目に、「追加的な監査手続を要求するものではない」と述べられておりますが、仮に正確性そのものを確認することになりますと、やはり実務的には相当、追加的な監査手続が発生するのではないかと考えられますので、この点を明らかにしていただければと思います。
 
 もう1つ申し上げたいのは、資料4の18ページにございますが、EU指令の場合には、経営者報告書に関しまして、opinionないしstatementという区分を記載するとなっておりますが、opinionあるいはstatementに誤りがあるという場合に、いかなる責任をEU指令において規定しているのかを教えていただきたいと思います。それが翻っては、仮に日本の720を見直した場合に、金商法上、どのような責任が監査人に対して課せられるのかというところにつながってくると思います。
 
 さらに、会社法上の会計監査人につきましては、会社法上の責任の規定が既にあるわけでございますが、今回、この監査基準を仮に改訂ISA720に基づいて見直すということになりますと、会社法上、いかなる責任を会計監査人は負うことになるのか、併せて明確にしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ただいま、EUの対応におきましてはopinionとstatementが表明された場合、それが誤っている場合の責任ということについてご質問がございましたので、これにつきましては事務局のほうからお答えいただきます。
 
○野崎開示業務室長
 EUの指令を踏まえまして、欧州各国では国内法制化されております。先ほど、英国の事例を若干頭出しさせていただいたのですが、例えば英国の会社法におきましては、会計監査人の責任としまして、財務諸表に係る意見については、虚偽があった場合には罰金の対象になるというふうにされております。
 
 一方で、それ以外の監査人の意見、例えば戦略報告書及び取締役報告書、あとは、先ほどご紹介しなかったのですが、取締役報酬報告書というものについても監査可能部分については意見を表明することが、英国会社法の497条で定められておりますが、こういったものについて、仮に虚偽の意見があった場合でも、それについて責任を負うというような規定は、私が探した限りではなかったということでございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございます。
 
 大瀧委員、どうぞ。
 
○大瀧委員
 ありがとうございます。私もISA720についてなのですが、利用者の立場としましては、有価証券報告書の前段部分について、会計監査人にチェックしていただくことについては、前向きな方向で議論をお願いしたいと考えております。
 
 本件につきまして、先ほどから出ていますが、懸念があることも承知しております。非財務情報において、重要な虚偽記載が後日発覚するような、通常とは異なるケースを想定したときに、ISA720が求めるような監査報告書への記載によって、期待ギャップや会計監査人の責任が問題になる可能性はあると考えております。
 
 また、金商法上の虚偽記載、特に重要な記載事項の欠如との関係性についても整理する必要があるのではないかと考えております。
 
 このような懸念はございますが、その一方で、先日公表されました記述情報の開示に関する原則や好事例集を踏まえますと、有価証券報告書の非財務情報の拡充が期待されているところであります。
 
 これら懸念に関して、我が国の関連法規との整合性を踏まえ、前向きに、適切に議論することで、有価証券報告書に高い信頼性が具備されると考えます。我々は、より有用な法定開示文書として、有価証券報告書を利用していきたいと考えております。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、ご意見、ご質問は。どうぞ。
 
○水口委員
 ありがとうございます。ISA720に関連した意見です。
 
 企業経営の観点から、グローバル化、技術革新の進展などによって、事業環境が大きく変容している中で、企業は、将来まで見据えて事業ポートフォリオを適宜適切に見直すといったチャレンジに取り組む必要があると認識しています。
 
 会計実務の観点からは、国際化、経済取引の複雑化・専門化の進展などを背景として、将来キャッシュフローを見込む会計上の見積りにかかわる不確実性が高まっていると考えております。
 
 こうした環境下で、財務諸表には経営者の判断を背景とした見積りが反映されていることから目をそらすことは難しいと思っております。
 
 そこで、経営者が認識するところの事業環境、志向する事業モデル、その競争力、企業がさらされるリスクなどについての非財務情報が有用であることはいうまでもありません。財務諸表利用者としては、こうした非財務情報と財務諸表との整合性については、非常に関心が高いところであり、国際監査基準を勘案した監査基準の改訂を行うことは妥当だと考えます。
 
 改訂に言及いたしましたが、ほかの委員に指摘いただいたように、監査基準の改訂に際しては、様々な留意すべき事項があると認識しており、議論した上で、改訂という形で一歩踏み出すことは妥当であると考えております。この場で、監査人が保証を提供するということを視野に入れると言う意図はないということは申し上げておきたいと思います。
 
 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの議論を踏まえて、非財務情報の充実に向けて、開示内閣府令の改正、記述情報の開示に関する原則の取りまとめ、記述情報の開示の好事例集の取りまとめなどが行われていることを大いに歓迎いたしますとともに、非財務情報と財務諸表のリンケージを視野に入れて、非財務情報の充実が図られているこの局面で、ISA720のコンセプトを監査基準に反映する改訂を検討することには、大いに意義があると考えております。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。どうぞ。
 
○林田(英)委員
 実際に監査に対応している企業の立場から申し上げますと、今でも、いわゆる非財務情報に関しては、会計士の方または監査役と定期的に議論をして、いろいろと彼らの疑問に対して、一つ一つ答えているつもりであります。有価証券報告書については会計監査人は、非財務情報も一応全部、目を通して、最終的な意見表明の材料にしていると思います。
 
 先ほどいろいろご説明あった中で、1、2に関しては、私どもとしても特に異論はありませんが、この3に関しては、もう一歩踏み込むことの狙いが何なのか。それからその目的、範囲はどうなのか。そして最終的に責任の問題を明確にして進めないと、皆さんでいろいろ議論しているけれども、同床異夢になると思います。
 
 これから検討に入るということですから、これらの点は非常によく議論した上で、慎重に進めていただきたいというのが私の意見であります。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。1、2については異論はないけれども、3について、狙い、目的ということを明確にすべきだというご意見でございましたけれども、これにつきましては今後、この場をおかりして議論を深めていければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 
 その他、ご意見、ご質問はいかがでしょうか。どうぞ。
 
○熊谷委員
 ありがとうございます。みずほ証券の熊谷です。
 
 既に作成者委員の方々、あるいは利用者委員の方々からも出ておりますけれども、この論点の3、ISA720でありますけれども、皆様おっしゃられているとおり、今回の監査制度の改革というのは、開示制度の改革と並行して行われているわけであります。開示制度のほうも、究極のところは、日本企業の稼ぐ力を回復させるために、企業と投資家の間の建設的な対話を促していこうという趣旨であると理解しております。ですので、そういう大目的に沿った場合に、今回の監査制度の改革というのはどういうふうに位置づけられていくのかということについて、委員が十分共通認識としてシェアしながら進めていく必要があろうかなと思っております。
 
 特に、今、林田委員からも、既に非財務に関しても監査人と作成者の間で十分討議がなされているというふうにご指摘ございました。利用者としましても、非財務情報の充実ということに対して大変期待しているところでございます。私自身も、ディスクロージャーワーキング・グループの委員としまして議論に参加してまいりました。しかし財務情報と比べましたときに、非財務情報というのは非定型の情報になります。したがいまして、監査あるいは保証といっても、そういうものを厳格に求めてしまいますと、ハードルが高くなるといいますか、やはり方法論が財務情報の監査、保証とは随分違うんじゃないかなと思っております。
 
 もちろん法定開示書類におきまして提供されます記述情報の信頼性確保という意味で、監査人がどういう形でチェックなさっているかというのは、大変重要なところではあります。一方で、非財務情報、あるいは記述情報の提供の充実というところ、緒についたばかりでございますので、記述情報における監査人の役割をあまりにもがちがちに縛りますと、監査人あるいは企業の非財務情報の提供におきます創意工夫が損なわれてしまうリスクが高まるのではないかと懸念致します。ディスクロージャーワーキング・グループでは、そういう企業の創意工夫あるいは柔軟性、独自性というのに期待しているところもございます。そういった意味でISA720の導入に当たりまして、慎重に議論していく必要があるんじゃないかなと思っております。
 
 もちろん、read and considerということに関しましては、そういうふうに監査人に見ていただくということによって、非財務情報の正確性ということがある程度は担保されるということで、その意味でISA720の導入には、大変期待しているところでございます。
 
 それから、議論がISA720のところに集中しておりますけれども、もう1点、懇談会のほうの守秘義務の明確化、というより、守秘義務の対象の明確化も重要であると思います。KAMが、昨年の監査基準の改訂の中で導入されましたが、これは監査基準の歴史の中でも大変大きな改訂であったと思います。KAMの実効性を高めるためには、監査人が重要であると判断しているんだけれども、企業のほうがそうでもないと判断して、開示に対して消極的であるようなケース、こういったところに監査人の守秘義務の解除というのが重要な意味を持ってくるのではないかと思います。そういった意味で今回この守秘義務の対象を明確化していただいた。秘密は除くけれども、それ以外の未公表の事実は違うんだということを明確にしていただいたということは、大変重要なことじゃないかな考えております。
 
 この場をかりまして、懇談会の皆様に謝意を表明したいと思います。ありがとうございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございます。ほか、ご意見いかがでしょうか。住田委員、どうぞ。
 
○住田委員
 ありがとうございます。720に話が集中していますが、順番を追って一通り意見を述べさせていただきたいと思います。
 
 まず、限定意見の場合の除外事項の書き方に対する監査基準の改訂のご提案ですが、私ども監査人あるいは会計士協会の立場といたしましては、今までの監査基準の文言で、その趣旨が不明瞭というふうに考えたこと、感じたことはなかったというのが正直なところでございます。なぜ限定意見にとどまって不適正意見又は意見不表明でなかったのかということの説明が足りないというのが、今回のご指摘の発端だったと認識しています。実際の書き方、説明の踏み込みが足りなかったという指摘であろうということで、非常に実務的なレベルの話であろうと感じているところです。
 
 ですから、今回ご提案いただいているこの赤字の、除外事項を付した限定付適正意見とした理由というのは、そもそもその前段の部分、意見限定の場合ですと、意見の根拠部分に、除外した不適切な事項とか財務諸表に与えている影響を書けというふうになっているわけですが、本来そこで説明されているべきはずのことであろうと思います。従って、内容が重なっている文言をつけ足しているような印象を持って捉えております。
 
 このような点は、監査基準の問題としてということではなくて、もう少し実務的なレベルで、監査人に、もっと利用者にわかりやすく除外事項をつけた原因、理由を書くようにという指針なりを協会で出すということでも、十分対応可能なのかなと感じているところでございます。それが1つ目の点でございます。
 
 それから、2つ目の守秘義務に関してですが、充実懇の中で、会計士が守秘義務を過度に保守的に捉え過ぎているのではないかというご指摘があったということは、会計士協会としても真正面から受けとめなければならないと感じているところです。その中で、未公表情報が全て守秘義務の対象になるわけではないというふうに書いていただいたのは、全くそのとおりだと感じているところです。
 
 ただ、この守秘義務解除の正当な理由の範囲を考えるときに、何が難しいかといいますと、充実懇の報告書の中でも書いていただいておりますけれども、監査基準に従って必要な範囲であれば書いていいという点で、未公表情報であろうが、秘密であろうが、必要な範囲であれば書かなければいけないということだと思っています。その必要な範囲の線引きというのが、実務的に非常に困難だということです。
 
 従って、今回ご提案いただいているような「事項」を「秘密」に言葉を修正するということ自体は、公認会計士法の用語と合うわけなので、反対する理由はありませんが、実務的には必要な範囲の線引きが、おそらく時代とともに、監査に対する期待水準とともに移ってきているんだろうと感じているところです。その辺が難しいところなので、協会としてもこの充実懇の提言を受けまして、守秘義務の考え方についてもう少し深掘りした検討をするためのPTを立ち上げて、今検討を開始しているところなんですが、直感的には、平成14年の監査基準の改正の前文に書いていただいている文言のトーンとかなり違った、踏み込んだ記載が充実懇ではされたと感じています。
 
 平成14年の監査基準改訂のときに、守秘義務を一般基準に残すか残さないかで議論されたというふうに伺っていまして、議事録ももう1回読み返して、当時の起草に当たられた先生にもお話を伺ってみました。守秘義務というのは監査が成立するための非常に重要な考えであるということで、お手元に資料がないので平成14年の前文を少し読ませていただきますが、「正当な理由なく他に漏らしたり、窃用することは、職業倫理の上から許されないことは当然であり、そのような行為は監査を受ける企業との信頼関係を損ない、監査業務の効率的な遂行を妨げる原因ともなりかねないことから、敢えて一般基準の一つとして維持することにした」と書かれています。守秘義務を置く理由を、監査の効率的な遂行というところに力点を置いて説明をされていると感じています。
 
 続いて、後段の部分で、監査人交代とか、子会社、親会社間の監査人のコミュニケーションは守秘義務に当たらないというようなことも書かれていますが、いずれにしても、監査業務における行為の中で、こういうことは守秘義務に当たらないんですよということを一つ一つ細かく例を出した上で、最後のところで、「そのような場合には、関係者間の合意を得るなどによって、守秘義務の解除を図る必要がある」ということです。関係者間の合意を得るということが何を意味しているかというと、被監査会社との間で、これは守秘義務には当たらないということを一つ一つ確認しながら進めてくださいという、ある意味でかなり慎重なトーンがここには写し出されていたのかなと考えています。
 
 冒頭、野崎委員のほうからお話ありましたが、円滑な監査業務の遂行というのは当然大事で、守秘義務をおろそかにしては監査は成り立たないという思いは変わりませんが、もっと監査の目的、監査意見を監査人がしっかり述べるということについて、もっとわかりやすく、世の中でちゃんと理解してもらえるように書いてくださいというのが、今の時代の要請だと思っています。したがって、守秘義務について、単に「事項」が「秘密」になるというワンワードの変更ということで取り扱うのではなくて、監査基準を改訂するのであれば、前文のところで平成14年の考え方から、少し時代の変化によって監査に対する期待が変わってきていて、もっと本来の監査の目的に引きつけて守秘義務を考えるべきであるというような、根本的な部分の説明や、監査が公共の利益に資するため役に立たなければいけないから、こういうことが強調されるようになったんだというような説明を前文で記載していただきたい。そうすると、公認会計士協会でのプロジェクトの指針にもなっていくと思いますし、何よりこういう監査部会の場で皆さんにご議論いただいて、そういうコンセンサスが醸成されているということを確認するというのが、非常に重要なポイントなのではないかと考えているところです。
 
 それから、長くなって申しわけないんですが、最後の点は720に関してです。先ほどの資料4の17ページの下で、国際監査基準720の改正の趣旨というのを室長さんのほうからご紹介いただきましたけれども、ここになぜISA720が改正されたのかの目的が集約されています。国際的にも、日本においても、その他の記載内容というものが拡充され、その内容も多岐にわたってきているということがあり、重要性が増しているというのは、1つの背景として共通しているところだと思います。
 
 1つ目に書いてあるのは、その他に記載内容がそういう変遷をたどっているにもかかわらず、720をそのままにしておきますと、実務的にかなりばらつきが出てしまう。その他の記載内容についてどこまで読めばいいのか、どこまで考えなければいけないのかということについての実務のばらつきがあるので、今の時点で整理できる範囲で整理しましょうというのが1つ目の改正の目的だったということになります。
 
 ですから、先ほどどなたかもおっしゃっていましたけれども、財務諸表監査をやっているという視点といいますか、軸足は変わってはいないということで、あくまでも財務諸表監査をやっている範囲で、その他の記載内容を読んで何かおかしなことがあれば見逃さない、そのままにしないということを強調しているというところが立ち位置だというふうに理解しております。
 
 それから、2つ目のところですが、「費用対効果が見合う方法で監査の価値を高める」と書いてあります。要するに監査の目的は財務諸表の適正性についての意見を表明するという目的が変わるものではないけれども、今考え得る最善の拡張をするとすればこういう形になりますというのが、改正ISA720と理解しております。
 
 熊谷委員からもご指摘ありましたけれども、その他の記載内容には、将来情報に関する話ですとか、記述情報が非常に多くなってきていますし、監査人の専門外の情報もたくさん入ってきていますので、ただ単に読んで監査上得た知識と照らしても、気がつかないということは大いにあり得ます。直接、財務諸表の監査とか、財務諸表と関連づけられるものについて重要な虚偽記載があるということであれば、それは比較的単純な話ですので、監査人と会社との間で協議すれば、間違っているのか、間違っていないのかというのは、比較的単純に結論が出ると思います。一方で、将来情報を中心とする記述情報については、確実にこれは明確な虚偽記載ですということを結論づけるのは、主観的な情報であるがゆえに、非常に難しいということになります。
 
 ですので、国際的にも、その他の記載内容全体についてのアシュアランスを提供できるかどうかということを真剣に考えなければいけない時期に来ているということで、先ほど室長さんからご紹介いただきましたけれども、その検討が今始まっています。その他の記載内容全体に対する保証を提供できるようになるには、まだ相当時間がかかる。その他の記載内容に入っている情報に対して、保証を提供するということが可能なのかどうか。オーディタブル、監査可能性とかいう言葉もありますけれども、本来、保証の対象になじむ情報なのかどうかということからきちっと議論していかないと、期待ギャップを生まない制度設計ができないということがあるので、その過渡期の手段として、改訂ISA720では財務諸表監査の枠内でできる範囲で最大限、拡張したということが改正の趣旨と理解しております。
 
 ですので、日本においても同様の環境にはあるわけですので、保証ではないということを十分に皆さんでご認識いただいた上でこの改正を進めるというのは、資本市場全体の記述情報と財務情報のパラレルでの拡充を図る今の開示制度の改革にマッチしているのではないかと考えているところでございます。
 
 それから、一方で、期待ギャップのマネジメントは非常に大事ですし、監査人の法的責任についても十分議論はいただきたいと思っているところです。
 
 すいません、長くなりました。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。ただいま委員のほうから、守秘義務につきましては単なるワンワードの変更ではなくて、平成14年改訂からの監査に対する期待が変化したことを含めて前書きに記載すべきだというご意見を頂戴いたしました。
 
 また、ISA720のその他の記載内容につきましても、そもそもとして保証内容の付与、この可否を含めて慎重に検討すべきだというご意見を頂戴したところでございます。これにつきましては、この場でまた皆様にご検討いただきたいと思っております。
 
 ほか、ご意見いかがでしょうか。
 
○挽委員
 ありがとうございます。2点ほど申し上げたいと思います。
 
 1点目は、守秘義務に関してです。ただいま住田先生からもご指摘がありましたけれども、やはり文言の修正ということにとどまらず、公認会計士が果たすべき使命として、国民経済の健全な発展に寄与することに照らして、守秘義務について検討していただきたいと思っております。監査報告書への記載云々にとどまらず、監査法人内における守秘義務の厳格な運用が監査品質にとってマイナスになる可能性があるかもしれません。また、ベストプラクティスの監査として、時には現行で考えている守秘義務を超えたレベルの監査、つまり守秘義務の水準を下げた監査が行われていると思うのです。こうした事例についての監査法人内における情報共有が、監査人の育成ひいては監査品質の向上にもつながるのではないかと考えております。厳密な実証研究に基づくわけではないのですけれども、大手監査法人内でもそういった観点からの検討が進んでいる法人と、依然として、すごく高いレベルの守秘義務を負っている法人があるように思います。
 
 2点目は、3番目の論点に関連するところでございます。財務諸表の利用者の観点からして、もちろん、伊藤邦雄先生が翻訳された本のように、財務情報の有用性が大幅に下がっている一方で、非財務情報の有用性が上がっているという考え方もあるかもしれません。しかしながら、実際にESG投資の方々とお話ししてみると、財務情報があった上での非財務情報ということであって、やはり公認会計士の財務諸表の適正性を証明するという役割は、依然として重要なままであり続けると思います。
 
 他方において、非財務情報の拡充も重要な問題です。ただ、情報利用者の観点からして、外部監査人が非財務情報を保証することを期待しているのかどうか。たとえ期待しているとしても、監査人が保証することによって、本当に非財務情報の信頼性の向上につながるのか。非財務情報の正確性の向上につながるのか。さらには、目的適合性につながるのかというと、私は必ずしもそうとは言えないと思います。むしろ、企業が自社内で重要視している定性情報と定量情報を自発的に開示していくことが重要です。たとえば、ある企業では自社が重視している財務情報を外部監査人に止められたから有価証券報告書には載せられなかったけれども、決算短信では自発的に開示しています。そうなってくると、企業側にとっての経営の質向上とか、あるいは経営の質が向上しているかどうかを見る財務諸表利用者の立場からしても、監査基準の見直しについては幅広い議論が必要なのではないかと考えております。新たな基準が意図せざる機能を果たしてしまうことのないように、慎重な議論をお願いいたします。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、いかがでしょうか。井口委員、どうぞ。
 
○井口委員
 ありがとうございます。利用者の観点で発言させていただきます。
 
 事務局が挙げられた3点のうち、最初の2点は事務局案どおりでよろしいのではないかと思います。議論が集中しております、最後のその他の記載内容について幾つか意見を言わせていただければと思っております。
 
 みなさんの議論にあったような幾つかの技術的な調整というのはあるのかもしれませんが、利用者の観点から言いますと、非財務情報の信頼性を高める取組みという方向性は強く支持したいと思っております。理由は、グローバルにおけるスチュワードシップ活動の高まりの中、国内、海外の投資家の目線もかなり長期化し、その中で、投資判断において財務情報に加えて非財務情報の重要度もかなり高まっているということが背景にありますので、この非財務情報の信頼性を高めるということは非常に重要なことと思います。
 
 実は、昨年10月に、グローバルの投資家団体から興味深いレポートが出ております。“Investor Agenda For Corporate Esg Reporting”というレポートです。日本の企業さんもよくおっしゃりますが、グローバルの企業も同じことを言っていて、投資家がESG情報や非財務情報が欲しいといっても、一体どんな情報を望んでいるのかよくわからないという企業さんのリクエストが作成のきっかけとなっています。これを受けて、グローバルの機関投資家団体のPRI、ICGN、あるいはCFA協会が集まってどんな情報が欲しいのかということについて投資家としての統一意見として出し、これをCRD、コーポレートディスクロージャープロジェクトに提出しています。
 
 非常に興味深い箇所がたくさんあるのですが、本日の議論と関係のあるところで申し上げますと、非財務情報の信頼性について述べているところです。そこでは、非財務情報及びESG情報の信頼度を上げる、あるいはもっと言うと、内容の正確性の確保のために第三者保証を求める、ということが書かれています。私自身、これには正直、意外なところがありました。というのも、5年前ぐらい、海外の投資家とこの件について議論しておりますと、企業さんからいろんな非財務情報を出していただくということの方が優先事項で、先ほどもご意見ありましたが、監査をやると、企業さんから情報を出していただけなくなるので、情報の正確性を求め過ぎるとよろしくないんじゃないかという意見が正確性を求める意見と拮抗している、あるいは、正確性の確保よりも企業さんから非財務情報を出していただく方が重要ではないかという意見がむしろ強かったと記憶しています。
 
 ただ、先ほど申し上げたように、今回のレポートで意外だった、というのは、明らかに海外投資家の舵が切られているということです。舵を切ったというのは、グローバル投資家の考えとして、非財務情報の正確性を優先する方向に向かっていっているということで、私にとっては非常に印象的でした。
 
 本日のISA720の議論は、保証までの議論ではないというふうには認識しておりますが、ただ、非財務情報の信頼性を高める方向に向かっていくということでは趣旨は一緒だと考えております。ですので、この方向性というのは非常に重要で、それは日本の投資家だけじゃなくて海外の投資家も含めてそう考えています。日本企業さんは、海外の投資家とも面談されることがあると思いますが、そういうところでも非常に重要なことになると思っています。
 
 また、先ほど、どなたかおっしゃっていましたが、有価証券報告書が改訂され、非財務情報の開示を増やしていただいている中、これを使って、投資家は投資判断、あるいは企業さんと議論することになりますが、この意味でも、その他の記載内容の信頼性向上というのは非常に重要な取組みになっていると思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほかご意見いかがでしょうか。
 
○中西委員
 弁護士の中西でございます。皆様がおっしゃられているとおり、1、2につきましては私も特段異議あるところではございません。
 
 3番の720のところにつきまして、若干申し上げます。今までというかこれから、やはり非財務情報というのは重要になってくるとは思うのですが、その中でも、やはり財務諸表とのかかわりが出てくる部分というのもやはり出てくると思います。その中では、最近注目を集めております役員報酬などがいい例かと思います。例えば退職慰労金ですと、長期間にわたってどういう引当処理をするかというお話になって、それが正しく記載されているのかどうかというのは、やはり財務諸表ともかかわってくるのではないかというものです。それがある一方、近時、注目されております顧問相談役報酬、これを在職中に、やめた後に顧問になってくださいという契約なのであれば、これは退職慰労金なのかどうなのか、とまた別の問題があって、更にそこは会計処理をするのか、しないのか、という問題になると思います。こういったところはやはり財務諸表の処理の関係とガバナンスの関係、これがつながってくるということになろうかと思います。
 
 また、業績連動報酬の開示府令改正でも対象となっておりますが、こちらにつきましても業績連動報酬の方針ですとか考え方、これが会計処理に適切に反映されているのかどうか、こういった点からも矛盾がないかどうかを確かめるといった意味では、やはりここは監査人の方にも見ていただいて、財務諸表との矛盾がないかどうかというところの大きな要点かなと思います。
 
 こういったところ、矛盾がないかどうかのご確認をいただいているということが、会社というよりは利用者の側からすると安心の点になるのではないかと思うんです。ただ、逆に作成者側の皆様、今日いらっしゃっておられる方も多いと思うんですが、あるいは会計士の方もそうなんですが、きちんとやっている方にとって、またこれ以上負担が増えるのかというところはあろうかと思います。しかし、上場会社や会計士の先生方も、全てが全てものすごくまじめに、手抜き一つせずにやっているわけではないことも残念ながらあるというところから申しますと、ある程度、きちんと定めるルールがあり、またもう少し明確化するということは、個人的には必要ではないかと思っております。
 
 こうした結果、相互によい緊張感があり、そして、よいコミュニケーションがさらに増加すると。いま一歩という会社も頑張らなきゃいけないなという気分になっていただくという意味では、この720の改訂について検討していくことは非常にプラスではないかと思います。
 
 ただ、具体的にどういう方向性かといいますと、監査人に保証を求めるというのは、やはり、例えば人事の経営者トップの育成計画についての保証、それはやはり会計や財務諸表分野とはちょっと違うであろうというところもあります。ただ、よい緊張感を持つ意味ということから考えますと、KAMとは違うのですが、どのような通読をして考慮をしたかといったこと、あるいは、矛盾がないかどうかの確認を経営者と行ったかどうかに関する手続を開示するという方向などを踏まえて、いろいろな方法を考えていくというのを、ひとつお願いできればと考えております。
 
 以上でございます。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。ほか、ご質問、ご意見等ございませんでしょうか。
 
 永田委員、どうぞ。
 
○永田委員
 私からは2点申し上げます。
 
 1点目は守秘義務の件です。先ほど住田委員からも、監査基準において「事項」を「秘密」に変えるだけではなく、その背景等についての説明を記載すべきとのご指摘がありました。開示を充実することによって企業価値も向上するという意味で、企業側も積極的に開示すべきであるというメッセージを発信することは非常に大事だと思います。監査基準に落としこまずとも、何らかの形でに、そうしいったメッセージを出すことが必要ではないかと考えます。
 
 また、監査役等の立場から申し上げますと、「正当な理由なく」という記載に対しては、何が正当かが非常に気になります。これも基準に落とし込まずとも、例えば、何らかの実務指針として実例や分かりやすい説明がなされると有難いと思います。
 
 もう1点は、その他の記載内容についてです。今ご議論されていることは非財務情報にどこまで踏み込むかといったことではないかと思いますが、その踏み込みぐあいによって監査役の対応にどう影響するのか気になっています。理論的には、金商法上の監査人の監査報告であり、会社法の会計監査人の監査報告ではないので、そのまま当てはまるわけではありませんが、監査役等は、会計監査人の監査の方法と結果について、その相当性を判断するわけで、非財務情報への踏み込み具合によってこの判断に影響があるのかどうか。また、監査役の立場からすれば、いわゆる業務監査の部分がありますので、記載されている事項について何らかの形で対応していくということも検討する必要があるのではないかと思います。
 
 そうすると、監査役等の対応の在り方が監査人の監査報告の書き方の違いによって何か変わってくるのかどうかについても検討すべきなのかと考えています。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。2点ご指摘いただきました。
 
 ほか、ご質問、ご意見、いかがでしょうか。町田委員、どうぞ。
 
○町田委員
 ありがとうございます。私のほうから2点、申し上げたいことがあります。
 
 1つ目は守秘義務のところですが、これは学者委員としての立場上、どうしても言っておかなくてはいけないということで申し上げます。先ほど住田先生から、平成14年、2002年の監査基準改訂の前文のご紹介がありましたが、もっと前からのことも踏まえて考える必要があります。おそらく監査論の研究者のほぼ総意に近い形で、この監査基準第二一般基準8は不要であると言うのが理論的な理解です。なぜならば、監査基準第二一般基準の3にある正当な注意の基準の範囲に守秘義務の規定は含まれるため、重複に過ぎない規定だという理解です。
 
 では、なぜこの守秘義務規定があるのかといえば、第二次世界大戦後、我が国で公認会計士監査が入るときに、企業側に対して「監査というのはそんなに怖くないんだよ」と――これは私のことばではなく、八田先生のフレーズなんですが――そういうことで置かれた規定が残ってしまっているのです。進化の過程で残されたしっぽのように、監査基準に残されている。ですから、私としてはこの規定を削除していただきたい、という意見を申し上げておきます。それこそ公認会計士法に合わせるのであれば、公認会計士法の施行規則なり施行令なりで詳細に、どういったものを守秘義務、あるいは守秘義務の対象となる業務上知り得た秘密に該当するのかを明記していただければ良いのであって、監査基準に置く必要は全くありません。
 
 なお、海外ではどうなっているのかというと、海外では、守秘義務の問題は、法規や倫理規則の中で取り扱われているだけです。監査基準という監査人の行為規範の中では扱われていません。繰り返しになりますが、監査基準の中では、正当な注意義務の中に守秘義務は含まれているということなので、今回、一般基準の8の守秘義務の規定に手をつけられるのであれば、この際、是非、「削除」していただきたい、ということを主張しておきたいと思います。
 
 それに対して、もう1点はその他情報の件です。これについてですが、端的に申し上げてこのその他情報の問題は、ここまで、経済界、利用者、あるいはリーガルの方々が挙って議論している国というのは珍しいんじゃないかなと思います。
 
 アメリカは、ISA720の導入を検討中でまだ入れていないということですが、ご存じのとおり、アメリカはすでにMD&Aに対する証明基準なども既に持っているわけで、今検討しているのは、ヨーロッパの状況を見ながら自分たちはさらにどうするかということを考えているだけだと考えられます。アメリカの対応を待っていて、アメリカの基準を確定したときには、もっと大変な、それこそMD&Aのところについて保証をつけるといった対応をアメリカがとったときに、では、日本もそれを待っていたんだから非財務情報に保証を付けることにするんですか、という話でもあります。
 
 このISA720というのは、ISAでは、監査上の主要な検討事項を導入する際にセットで改正が行われた基準の中の一つに過ぎません。監査報告書改革の一環として見直しておこうということで改正された基準に過ぎないので、ここまでこの問題が喧伝されたり、あるいは議論の対象になるとは、海外の方には驚かれると思います。うがった見方をすれば、この程度の基準改正に反対するというのであれば、企業の方は監査人に非財務情報のことをよっぽどあれこれ言われたくない、痛い腹を探られたくないのか、とさえ思われてしまうでしょう。
 
 先ほど、挽先生が仰っていましたが、確かに財務情報と非財務情報のウエート、情報価値のウエートというのは変わってきていると思います。特のヨーロッパでは、国によってはISA720を上回るような規定が置かれていますが、それは、ヨーロッパでESG情報とか、あるいは社会関連情報とか、そういったものの開示が義務づけられているからという背景があるんだろうと思います。日本も、昨年のディスクロージャーワーキング、あるいは最近の記述情報の原則等々で非財務情報の開示を充実させていく方向に大きくかじを切ったんだろうと思いますので、将来、10年後、20年後かもしれませんが、そのタイミングで非財務情報も含めた監査とか、非財務情報に対する別途の保証とか、そういったことの導入を議論する時代がやってくると思います。
 
 かつて、「貸借対照表に計上された飛行機に乗りたい」と言った方がおられますが、その方と同じように、私も、非財務情報の監査をした監査報告書を、研究者としての現役のうちに見てみたいと思います。
 
 ただ、今回のその他情報の問題はそんな話ではなくて、ごくごく限定的な問題であって、現状の非整合的な手続のところを整理したり、あるいは監査報告で国際監査基準と一致する形で導入したいというだけのことであって、このことをやらないで、日本だけグローバルに行われている監査報告書と異なる形式の監査報告書が出されて、英文監査報告書で公表されることになった際に生じる、グローバルのレピュテーションリスクということを考える必要があるだろうと考えています。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 残り時間も少なくなってまいりました。あとお一方。八田委員。
 
○八田委員
 本当はちゃんとしたエビデンスを用意してお話ししたほうがいいと思っておりますが、日本では、この守秘義務の原則について、かつては「秘密保持の原則」と称していたということです。まず、当時昭和23年に公認会計士法が制定され、25年の監査基準ができ、それまでに経験したことのない、新たに創設された公認会計士制度だということで、特に監査受け入れ側の経済界、今で言う経団連サイドの企業等からの抵抗がかなりあったということです。つまり、監査人として、会社外部の人間が、財務や経理といった、まさに会社の中核になる秘密情報に関して検証の対象とすると。
 
 当時は、当然ながら会社と監査人の間には信頼関係も協力関係も全くなかったわけですから、実際に監査業務に行くと労働組合がピケを張って監査人を入れないなんて事例もあったようです。そういうときに、いや、そうではないのだということで、監査に対する理解を得ようとしたのです。今ならば当然のことなのですが、監査人と会社の目指す方向は同じベクトルを向いていおり、それは真実かつ健全な情報を発信することだということで、監査制度の円滑な導入を目途として、世界に例を見ない形で、この「秘密保持の原則」を監査基準の一般基準に入れてしまったということです。
 
 したがって、今、町田委員が話されたように、学会でも、これは「正当な注意」の基準の中に包含されているわけですから、独立した形での守秘義務の規定は不要であるといった考えが大勢なのです。逆にそれを別書きするということは、海外から見たら、監査基準に書かれていなければ監査人は秘密を守れないのかと、そんな議論も実はあったんです。先ほど住田委員がご紹介あった2002年、平成14年の改訂のときにも、改訂当事者が後日、述懐されていますが、当時もいろいろ議論があって、これを廃止するという議論もあったものの、半世紀近く制度が進展してきた中で、特にこの守秘義務規定が書かれていたことによって違和感もなく、積極的に廃止すべきだとの理由もないという、経済界からの要請もあって、結局はそのまま残されたというのです。ですから、最後の結論は同じなのですが、私も公認会計士法に書くという問題と、職業倫理規則に書くという点に関して特に異存はありませんが、監査基準の一般基準に書いてあるのは削除するということが国際対応じゃないかなと思っていますので、また議論を深めていただきたいと思います。
 
 以上です。
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 ほか、ご発言、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 
 本日は数多くの有益なご意見を頂戴することができました。それでは、本日ご議論いただいた中で中間監査四半期レビュー報告書の記載内容の見直し及び会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会報告書を踏まえた対応については、特にご異論なかったようでございますので、これにつきましては事務局の説明のとおり対応を進めさせていただくことでご異議ございませんでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
○伊豫田部会長
 ありがとうございました。
 
 その他の記載内容に関する監査人の対応につきましては、いろいろなご意見を頂戴いたしました。さらに今後議論を深める必要があると考えますので、引き続き監査部会のほうを開催し、議論を進めていきたいと思っております。
 
 次回の日程につきましては、事務局から改めてご連絡させていただきます。
 
 ここで徳賀会長に引き継がせていただきます。よろしくお願いします。
 
○徳賀会長
 それでは、以上をもちまして本日の議事を終了させていただきます。
 
 本日はお忙しい中ご参集いただきましてまことにありがとうございました。
 
 これにて閉会いたします。
 
以上
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金融庁Tel 03-3506-6000(代表)(内線3845、3663)

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