企業会計審議会総会・第7回会計部会議事録

 

1.日時:令和2年11月6日(金曜日)14時30分~16時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 9階 金融庁共用会議室3

 

〇徳賀会長 
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより企業会計審議会総会・第7回会計部会を開催いたします。皆様には、御多忙の中、御参集いただき、誠にありがとうございます。会長の徳賀でございます。リモートの司会には不慣れでございまして、御迷惑をおかけすることがあるかもしれませんが、御容赦願います。
 
 まずは、本日の会議に関する連絡事項でございます。本日の会議は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議にて開催とさせていただいております。議事録は、これまでどおり作成し、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 
 また、本日は、後ほど、赤澤副大臣に御出席いただきます。監査基準等の改訂に関する意見書を副大臣にお渡しする際には、カメラ撮影を行う予定でございますので、よろしくお願いします。

 次に、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則第4条にのっとり、本日の会議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)


〇徳賀会長 
 ありがとうございます。御了承いただいたので、本日の会議の模様は、ウェブ上でライブ中継とさせていただきます。

 続きまして、オンライン開催に関して、2点、注意事項がございます。
 
 まず、御発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようお願いいたします。御発言されるときには、マイクをオンにしてミュート解除で御発言していただいて、御発言が終わられましたら、またミュートにしていただくということでお願いできればと思います。
 
 2点目として、発言を希望されるときには、チャット機能を使って、全員宛てに、「発言希望」である旨とお名前を共に入れてください。お名前については、協会名などの組織名でも結構ですので、よろしくお願いします。こちらでチャットの内容を確認させていただき、私のほうから指名させていただきます。
 
 また、御発言に際しては、念のために、御自身のお名前を名乗っていただいた上で、御発言いただければと思います。
 
 議事に入ります前に、皆様御存知と思いますが、悲しいお知らせがございます。伊豫田委員におかれましては、昨年12月16日に御逝去されました。伊豫田委員には、監査部会の部会長をお務めいただいておりました。任期途中でしたし、御逝去は本当に残念でございます。ここに生前の御功績をしのび、改めて御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。

 次に、幹事の異動がございますので、島崎課長より御紹介いただきます。

〇島崎企業開示課長
 企業開示課の島崎でございます。よろしくお願いいたします。
 
 本日付で、竹林俊憲幹事が御退任され、新たに、渡辺諭幹事が御就任されております。渡辺幹事は、公務のため、本日、御欠席されております。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。

 続いて、企業会計審議会議事規則の改訂案についてお諮りさせていただきます。詳しくは事務局から御説明いただきます。これも島崎課長、よろしくお願いします。

〇島崎企業開示課長
 よろしくお願いいたします。それでは、右肩に資料1-1と記載されました企業会計審議会令、そして資料1-2と記載されました企業会計審議会議事規則改正(案)を御覧ください。
 
 企業会計審議会の運営は、企業会計審議会令と企業会計審議会議事規則に規定されておりますが、委員の皆様の出席の方法については、明示的には記載されておりません。こうした状況下、今般、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、徳賀会長と御相談の上、企業会計審議会議事規則に定めるもののほか、議事手続、その他会議の運営に必要な事項は会長が定めるとの規定を活用し、オンラインで御出席いただいております。今後、新型コロナウイルス感染症がさらに拡大した場合や、あるいは全く別の有事が発生した場合に、この議事規則第8条を適用し続けることも可能と考えられるところですが、明確化の観点から、議事規則を改訂し、こうしたオンラインでの御出席も明示的に可能となるように改訂してはいかがかと考えております。
 
 具体的な改訂箇所は2点ございます。

 まず1点目は、議事規則の第1条におきまして、第2項を追加し、「会長は、必要があると認めるときは、情報通信機器を利用して会議を開催することができる」と改訂してはいかがかと考えております。この情報通信機器とは、まさに本日、皆様がお使いのオンライン会議の出席を可能とする通信機器を想定しております。
 
 続いて2点目でございますが、第5条といたしまして、「会長は、特に緊急の必要があると認めるときは、委員に対し文書その他の方法により、議決を求めることができる。なお、この議決を行った場合は、会長が招集する次の会議に報告しなければならない」と規定してはいかがかと考えています。
 
 こうした規定を追加することにより、例えば、オンライン会議の開催ができないようなときでも、会長が緊急に議決を求める場合は、文書による議決を求めることができるよう措置したいと考えております。具体的な改訂のポイントは、以上2点でございます。
 
 議事規則を改訂する場合には、資料1-1の企業会計審議会令第11条において、「この政令に定めるもののほか、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮つて定める」と規定されておりますので、本日、会長より委員の皆様にお諮りいただきたく存じます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明のとおりの改訂をするということで、御了承いただけますでしょうか。
 

(「異議なし」の声あり)


〇徳賀会長
 ありがとうございました。御了承いただいたということで進めさせていただきます。それでは、議事に入らせていただきます。

 まずは監査基準、中間監査基準の改訂に係る監査部会での審議の状況について、八田部会長から御説明をお願いいたします。

〇八田委員
 監査部会長の八田でございます。私から「監査基準の改訂に関する意見書(案)」及び「中間監査基準の改訂に関する意見書(案)」の主な内容につきまして御説明させていただきます。資料は2-1から2-5を御参照ください。

 まず、審議の経過について御説明いたします。

 「その他の記載内容」については、2017年9月の総会で、監査報告書の透明化について、監査部会で審議することとされたことを踏まえ、2018年1月より7回にわたり監査部会で審議を行いました。
 
 また、リスク・アプローチの強化については、昨年12月の総会で、監査部会において審議することとされたことを受け、同月より2回にわたり監査部会で審議を行いました。

 これらの審議を踏まえ、監査部会では、「その他の記載内容」とリスク・アプローチの強化について、監査基準の改訂(案)を取りまとめました。本年3月に公開草案を公表し、意見募集に寄せられたコメントを踏まえまして、本年9月に監査部会にて審議し、所要の修正を踏まえまして、現状の案としております。
 
 続いて、意見書の具体的な内容について御説明させていただきます。

 まず、「その他の記載内容」につきましては、今回の改訂案において、監査人が「その他の記載内容」を通読し、「その他の記載内容」と財務諸表または監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかについて検討することを明確にしております。
 
 その上で、監査人が重要な相違に気づいた場合や、財務諸表や監査の過程で得た知識に関連しない「その他の記載内容」についての重要な誤りに気づいた場合には、経営者や監査役等と協議を行うなど、追加の手続を実施することを求めております。

 「その他の記載内容」に重要な誤りがある場合において、上記の追加の手続を実施しても当該重要な誤りが解消されない場合には、監査報告書にその旨及びその内容を記載するなどの対応を求めております。

 また、リスク・アプローチの強化については、今回の改訂案において、財務諸表項目レベルにおいては、固有リスクの性質に着目し、重要な虚偽の表示がもたらされる要因などを勘案することが重要な虚偽表示リスクのより適切な評価に結びつくことから、固有リスクと統制リスクを分け評価することとしております。
 
 さらに、特別な検討を必要とするリスクについては、虚偽の表示が生じる可能性と、当該虚偽の表示が生じた場合の金額的及び質的影響の双方を考慮して、固有リスクが最も高い領域に存在すると評価した場合には、そのリスクを特別な検討を必要とするリスクとして取り扱わなければならないと定義しております。

 このほか会計上の見積りについては、リスク評価に対応する監査手続として、原則として、経営者が採用した手法と、それに用いられた過程及びデータを評価する手続が必要であることを明確にしております。

 適用時期ですが、「その他の記載内容」については、2022年3月決算に係る監査から適用することとしておりますが、2021年3月決算に係る監査から実施することができることとしております。 また、リスク・アプローチの強化については、2023年3月決算に係る監査から適用することとしておりますが、それ以前の決算に係る監査から実施することを妨げないこととしております。

 なお、リスク・アプローチの強化については、中間監査基準についても必要な改訂を行うことといたしました。以上でございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。 ただいま御説明がありました「監査基準の改訂に関する意見書(案)」及び「中間監査基準の改訂に関する意見書(案)」につきまして、御説明の内容のとおり取りまとめることとしてよろしいでしょうか。

 

(「異議なし」の声あり)


〇徳賀会長
 ありがとうございます。
 
 それでは、ただいま企業会計審議会として取りまとめました意見書を赤澤副大臣にお渡しいたします。カメラ撮影の方はよろしくお願いいたします。
 
 このたび、監査基準及び中間監査基準の改訂に関する意見書を我々のほうで取りまとめましたので、お取扱いをよろしくお願いします。

〇赤澤副大臣 
 ありがとうございます。
 

(意見書手交・写真撮影)
 

〇徳賀会長
 それでは、赤澤副大臣より、一言御挨拶をいただきたいと存じます。

〇赤澤副大臣
 金融担当の内閣府副大臣を務めております赤澤亮正でございます。前の公務の関係で遅参をいたしまして、誠に申し訳ございませんでした。
 
 ただいま徳賀会長から、「監査基準の改訂に関する意見書」を頂戴いたしました。委員の皆様方におかれましては、本当にお忙しい中、これまで熱心な御審議を賜りまして、誠にありがとうございます。
 
 財務諸表監査は、企業の財務諸表の信頼性を確保する上で欠かすことのできない重要な制度でございます。監査の規範となる「監査基準」は、財務諸表作成の規範である「会計基準」とともに、適正なディスクロージャーを確保するための資本市場の大変重要なインフラであると考えております。
 
 今回の監査基準の改訂では、開示書類の監査に関する説明・情報提供を充実させるため、「その他の記載内容」についての監査人の手続きの明確化、監査報告書の記載内容の充実等を図るものと伺っております。
 
 委員の皆様方におかれましては、長期にわたり精力的に御審議をいただいたことについて、重ね重ねお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
 
 本日の企業会計審議会では、この後、「最近の国際監査基準の策定動向」や「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応」等についても御審議いただく予定であると伺っております。
 
 本日の御議論もいただきながら、引き続き、会計基準の品質向上や監査の信頼性確保に向けて取組を進めてまいりたいと考えております。
 
 最後になりましたが、委員の皆様方におかれましては、今後とも、会計や監査をめぐる諸課題につきまして、我が国としての適切な対応を確保するとの観点から、御審議を賜りますようにお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

〇徳賀会長
 どうもありがとうございました。
 

(赤澤副大臣退出)
 

〇徳賀会長
 それでは、次に、最近の国際監査基準の策定動向につきまして、事務局から資料の説明をお願いいたします。

〇島崎企業開示課長
 資料3に基づきまして、最近の国際監査基準の策定動向について御説明させていただきます。
 
 まず、1ページ目でございます。こちらには、国際監査基準における主な改訂、これまでに改訂された基準と、改訂作業中の基準について、整理させていただいております。
 
 2015年、KAM(監査上の主要な検討事項)への対応を中心とする監査報告書関連の改訂から、先ほどお決めいただきました監査基準とも関係するISA(国際監査基準)についての改訂が随時行われてきているところでございます。720、540、315でございます。
 
 そうしまして、改訂作業中の基準、これは品質管理に関する基準でございますが、2020年9月に最終化されましたものとして、ISQM1、ISQM2、ISA220、こちらは9月に最終化されていまして、12月に確定版が公表予定になっております。それからISA600は、2021年に最終化される予定となっています。
 
 続きまして、2ページ目でございますが、もともとありました基準、ISQC1及びISA220の改訂の経緯について御説明させていただきたいと思います。
 
 これはいわゆるクラリティプロジェクトの適用後のレビュー等を踏まえまして、IAASB(国際監査・保証基準審議会)は、品質管理ですとか、グループ監査ですとか、職業的懐疑心ですとか、そういった課題につきまして、優先課題として提示をしてきたところです。
 
 そして、改訂についてプロジェクト化していっているところでございまして、真ん中のところに囲みがございますが、品質管理について識別された課題といたしましては、例えばリーダーによる積極的な品質管理の必要性ですとか、基準が中小規模事業所にも柔軟に適用できるものである必要性ですとか、審査の役割の明確化や重要性の強調に始まって、根本原因分析なども含めたモニタリング等を通じた品質改善。それから、グループ監査なども視野に置いて、パートナーの役割や責任、チームメンバーに対する指示・監督等の明確化や重要性などについて、こちらは識別された課題となっております。
 
 こうした問題意識を踏まえまして、IAASBは、先ほど申し上げましたように、この9月、ISQC1ですとか、ISA220というものを見直しまして、ISQM1、ISQM2及びISA220の改訂を最終化したところでございます。
 
 続きまして、3ページ目でございます。囲みにございますが、IAASBは、監査事務所の品質管理システムを強化し、ISQC1の適用の柔軟性の問題に対処するため、積極的な品質マネジメントを奨励する新しいアプローチを提案しております。これに応じまして、品質マネジメントということを強調していますので、名前もコントロールからマネジメントというように、ISQMという形になっております。
 
 12月に確定版の公表予定で、基準の発効日は2022年12月を予定しております。
 
 現行基準と改訂後の基準案を載せさせていただいています。右側のa.というところにありますように、監査事務所のリスク評価プロセスというのが項目としては新設されておりまして、以下の項目について、具体的に規定された項目について品質目標を設定し、また、この②のところにございますが、その達成について、品質リスクを識別・評価して、それに対応する方針・手続を定め、運用し、不備があれば手続を根本原因分析に基づいて改善していくというマネジメントシステムを導入したということになろうかと思います。
 
 個別の項目もガバナンスですとかリーダーシップというように名前を、内容を反映してより強調したり、情報とコミュニケーションというような項目を設定したりしているところです。
 
 続きまして、4ページ目でございますが、ISQM2とISA220の主な改訂内容でございます。ISQM2のほうは、これは監査事務所の品質管理に関しまして、審査に関する規定をISQC1から切り出して別基準にしておりまして、例えば、業務執行責任者として関与していた業務の審査担当者になるための要件としてのクーリング・オフ期間を設定したり、文書化に関する要求事項について規定しております。
 
 ISA220のほうは監査チームについてでございまして、同一の監査事務所またはネットワーク・ファームに所属する者以外も含めてチームと認識しまして、所要の手続を進めていくことにするということになっております。
 
 続きまして、5ページ目でございます。以上、国際的な流れでございましたが、日本におきまして品質管理をめぐる状況もございます。公認会計士・監査審査会の検査の結果の事例集などから、課題、指摘事例について御紹介させていただきます。
 
 例えば、監査事務所トップが品質にコミットしていない、リーダーシップを発揮していないことが考えられます。少し囲みでつけていますのは、大手・準大手・中小規模とございますが、これに分けて事例集を記載しているわけですけれども、どのような特性に応じているものなのかということを示しています。これは中小規模の監査事務所についてです。
 
 あとは、人的資源を十分に確保していないですとか、現場の現状把握や連携体制が取られていないことについてで、これは大手の監査事務所についてです。
 
 中小規模の監査法人の指摘事項について、根本原因分析の必要性や分析方法を十分に理解しておらず、同一・同様の不備が発生していたり、指摘事項の一番下までいきますと、指摘事項の改善に関してモニタリングを実施する体制が構築されていないことがあげられます。それから、リスク評価内容や、その結果など、監査役等に適切に伝達していないなどの問題も指摘されているところです。
 
 日本における品質管理基準はどうなっているかといいますと、6ページ目にございますが、これは背景としては、監査法人の審査体制ですとか、内部管理体制の品質管理に関する非違事例というものがございます。これは、2005年に策定されたものでございまして、企業会計審議会で御議論いただいております。
 
 真ん中の位置づけでございますが、我が国における監査の品質管理に関する状況を考慮するとともに、国際的な基準の動向も踏まえて検討を行い、独立の基準として設定したものでございます。
 
 内容としては、監査業務の各段階、契約の締結ですとか、適格性の判断、業務の実施、審査等における品質管理について、システムを整備・運用して監視を求めること、それから責任者についても規定しているところです。
 
 7ページ目にまいりますが、今ほど御説明申し上げましたプロセスポイントについて記載させていただいています。監査契約の締結、監査計画の策定、業務の実施、業務に係る審査、報告書の発行、引継といった点について記載されているところでございます。
 
 先ほど御説明させていただいた元のISQC1との比較につきましては、8ページ目に記載させていただいています。先ほど、国際的な動向も踏まえてと申し上げましたが、御覧になって整合性が保たれていまして、日本の品質管理に関する基準としては、例えば監査事務所の引継ですとか、共同監査という項目、その後、設定されました不正リスク対応基準という日本の基準に関しまして、品質管理の部分が特出してあるといった状況になっております。
 
 次の9ページ目は、オーバーオールな日本の監査に係る基準と国際監査基準について並べて、俯瞰したものとなっております。
 
 本日は、この国際的な品質管理の基準の改訂の状況に加えまして、参考資料を用意させていただきました。参考1のほうですけれども、これは監査に係る国際的な基準設定主体のガバナンス改革について記載させていただいております。
 
 1ページ目は図になっておりまして、この真ん中、改革の主な論点のやや下段のほうから始めますと、この左側は現状、IFAC(国際会計士連盟)の下に国際監査・保証基準審議会と、国際会計士倫理基準審議会がある形になっていますが、この基準設定主体の独立性の確保、組織とか資金調達等についてというプロジェクトでございます。
 
 上のほうのこれをモニタリング監視する役割のPIOB(公益監視委員会)についての資金調達とか人選等の役割を追加しているところです。
 
 2ページ目により叙述的に書かせていただいておりますが、基準設定主体について、IFACから独立した組織へ移行ですとか、メンバー構成、監査人の位置づけについて書かれています。PIOBにつきましても、基準設定主体の人選というものにもコミットし、基準設定主体の有効性の評価も行っていく。それから、上にMG(モニタリング・グループ)という当局組織から構成される仕組みがございますが、資金調達につきましては、資金調達の方針は引き続き検討するとされております。この文書の公表は2020年7月に行われていますが、2年以内に達成ということになっております。
 
 今後の見通しでございますが、このMGは、PIOB・IFACのサポート、基準設定主体の意見を得ながら、9か月以内に移行プランを開発する。プランは3年以内に適用するということになっております。
 
 参考2を御説明させていただきますと、「会計・監査を巡る諸外国における動向」ということで、イギリスとドイツの状況を御紹介させていただいています。
 
 イギリスについては、カリリオン社という、当時、英国第2位の大手建設会社について、過去最高額の配当ですとか、多額の役員報酬を支給した直後に工事損失引当金などを計上して、結果として、その後、破産に至ってしまったということで、議会や政府の関与の下に、様々なレポートないし提言などが行われております。
 
 例えば、イギリスのビジネス・エネルギー・産業戦略省からの委任で、例えばKingman Reviewというものが行われていたり、CMA(競争市場庁)によるレビュー、それから、同様の委任に基づくBrydon Reviewのようなものも行われておりまして、それぞれ提言などがなされていまして、2ページ目になります。例えばKingmanレポート提言によってみますと、例えばイギリスのFRC(規制当局)について改組し、権限を強化するですとか、米SOX法類似の内部統制制度を導入するといったことが提言されています。
 
 それから、CMAの中間報告書については、監査品質に基づかない監査人の選任ですとか、寡占状況、非監査業務の監査法人による提供などの課題が指摘されていて、これへの対応策が共同監査ですとか、非監査業務の提供主体の分離について示されています。こちらのBig4の監査業務部分の分離につきましては、3ページ目で御説明します。
 
 その前に、Brydon Reviewについては、監査対象の拡大ですとか、内部統制報告制度の導入等が挙げられています。
 
 3ページ目は、監査業務部門の分離の話でございまして、2024年6月末までに監査業務部門を他部門から分離することを要求し、分離のための原則などが公表されているところです。
 
 これは監査業務部門の人員に監査業務への専念ですとか、資金を監査業務部門と他部門で融通させないですとか、監査業務部門のガバナンスの強化のためのものでございます。
 
 4ページ目、ドイツのワイヤーカードの破産でございますが、こちらはフィンテック企業のワイヤーカードにおいて、フィリピンの銀行の預金19億ユーロが所在不明になり、最終的に破産に至ってしまっており、こちらは、例えば当局の監督責任、BaFin(ドイツ金融監督庁)についての監督対応がつながったとの批判ですとか、こうしたものを受けまして、会計監査等の改革に係るアクションプランが2020年7月に出ております。
 
 その内容については、6ページ目、アクションプランの概要ということで、監督機能の強化、上場企業への調査や処分に係る権限の強化ですとか、ローテーション、監査業務とコンサルティング業務の分離ですとか、そういった点について提言がなされております。私からは以上でございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、御質問、御意見がございますでしょうか。なお、御質問への回答につきましては、同様の趣旨や関連する質問もあると思われますので、その都度ではなく、数名の委員から御質問を頂戴した後に、事務局から返答させていただきます。まず、水口委員から御発言をお願いします。

〇水口委員
 監査事務所による業務品質の合理的な確保について意見です。 監査品質の確保に向けて、非常に重要となるのはガバナンス及びリーダーシップの在り方だと考えております。監査リスクに見合った組織的な監査を実施する体制の構築、監査の現場の現状把握や連携体制の整備に向けて、監査事務所のトップが監査品質を重視する価値観を組織全般に浸透させることが肝要であると考えています。
 
 一方で、時の経過とともに監査基準が求める品質管理や監査手続の水準が上がってきている実態について、監査事務所のトップが精通していない場合には、そのことが現行の監査基準が求める監査品質の実現を難しくする可能性は否めないと思っておりまして、監査事務所によってはこういったことが大きな課題となり得ると考えております。
 
 グローバルに求められている監査品質に関する期待水準が上がっているということを肌感覚で理解できるような環境に置かれている監査事務所と、そうでない監査事務所が存在しているのではないかと認識しております。
 
 こうした観点などからも、監査事務所の規模に応じる形で業務品質管理体制を構築することが必要であると考えております。以上です。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。続きまして、小倉委員、お願いいたします。

〇小倉臨時委員
 日本公認会計士協会(JICPA)、小倉です。
 
 品質管理基準の改訂につきまして、ISQM1・2、ISA220の改訂を踏まえて、我が国の監査に関する品質管理基準の改正に着手されると理解しております。このうちISQM1については、監査法人版のUS-SOXとも言え、監査を行う監査法人の事務所レベルの品質管理体制の整備及び運用に関する基準であり、企業における内部統制評価との類似性があると理解しています。
 
 この品質管理基準について、先行して準備を進めている大手監査法人においては、統制の整備にかなりの準備作業を要していると聞いております。さらに、どの程度の文書化のレベルを期待するか、統制のテストをどの程度実施するかによって、相当の負荷がかかることが想定されています。会計士協会としては、基準の趣旨をよく理解して準備を進めますが、相当時間がかかるものと考えております。
 
 なお、日本においては、上場会社の監査を担う監査事務所が2020年3月末時点で136、上場会社以外も含むPublic Interest Entityの監査を行う事務所に至っては206ありまして、また、その規模も大小様々ございます。規模の差異による同基準の実効性も勘案しながら検討を進めていきたいとに考えております。
 
 もう1点、海外の規制強化についてでございます。海外の監査法人の規制強化の流れについては承知しておりますが、我が国では適正な財務報告における監査人の指導的機能の発揮が期待されていると理解しております。拙速な監査業務と非監査業務の分離には、メリットよりもデメリットのほうが多いのではないかとも考えており、その導入については、影響、効果や海外における先行事例等をよく検討した上で進めていただきたいと考えております。以上です。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。ただいまの御発言は、御意見ということでよろしいですか。それとも質問と御意見と両方でございましょうか。

〇小倉臨時委員
 意見でございます。

〇徳賀会長
 はい、御意見承りました。ありがとうございます。続きまして、窪田委員、お願いします。

〇窪田臨時委員
 楽天証券の窪田です。私はアナリスト協会の企業会計研究会の委員をしていまして、アナリスト、投資家の立場で意見を言わせていただきます。
 
 日本の監査法人の品質の見える化につきましては、国際比較でまだ足りないところも多いと思いますが、望ましい方向へ着実に進んでいると評価しています。四大監査法人が出している「監査品質に関する報告書」を毎年見ていますが、年々改善してきていて、具体的な中身が少しずつ投資家から分かるようになってきていると思っております。
 
 今後期待されることとして、KAMの開示があります。KAMを見ることによって、さらに監査法人の品質が見えるようになると期待しています。
 
 既に早期適用で開示されたKAMをすべて読みましたが、想定以上に内容が充実していると高く評価しています。これまでブラックボックスだった監査のプロセスが分かるようになりました。また、監査法人が職業的懐疑心に基づいて、どういう点を重点的に監査しているかもよく分かりました。
 
 KAM開示に2つの意義があると思います。1つは、監査の信頼性が増すということです。もう1つは、監査法人の品質が見えるようになるということです。今出ているKAMは、早期開示なので、総じてみんな質が高く、これが標準になれば良いと希望しています。ただし、今後、強制開示が始まれば、ひょっとして品質の低いKAMも出てくると思います。もし品質の低いKAMが出てくれば、監査法人の監査の質の違いが投資家から見えるようになると思います。もちろん被監査企業の開示姿勢にも影響されますが、監査法人の質も見えてくるのではないかと思います。
 
 今回、初回の開示なので時系列比較はありませんが、2、3年、KAMの開示が続けば、時系列比較もできるようになります。今後、様々な事態が起こってくる中で、どのように書き方を変えていくのか、どのように監査の重点を変えていくのかも投資家は見ていきます。そういった時系列比較でも監査法人の質が見えると思います。
 
 さらに言えば、本来、起こってほしくないのですが、不適切会計とか不正会計が起こったときには、その時点から過去に遡ってKAMが読まれることになると思います。不適切会計を起こした企業の担当監査法人が、即品質が低いということにはならないと思います。過去のKAMをじっくり読み込むことによって、適切に監査していたと分かる場合もあるし、場合によっては、不適切会計を見逃してしまうような品質の監査だったということが分かるかもしれません。
 
 以上まとめると、監査法人の品質について、これからも改革が進むことを希望するとともに、KAMの開示が始まったことが、また重要な役割を果たすと考えています。以上です。

〇徳賀会長
 窪田委員、御意見、承りました。ありがとうございました。続きまして、橋本委員、お願いいたします。

〇橋本委員
 橋本でございます。2点ほど質問があるのですけれども、1つは、IAASBの今回の組織構造に関連して、監査人の割合が5名以内ということで、監査の基準を設定する際の、監査人以外の利害関係者の意見をよく聞くような体制になると思いますけれども、この企業会計審議会や監査部会の姿勢は、こういった国際的な動向、あるいはガバナンスの強化などという方向もありますけれども、そういったことを意識して何か今後変わる可能性があるのかということが1点と、それから、いろいろ公認会計士・監査審査会のほうで検査をした結果、いろいろな非違事例、指摘事項が出ていましたけれども、同じような指摘事項が何年も続くようなことが最近多くなっていると見受けられますけれども、それについて何か対策といいますか、考えていらっしゃるかどうかということ。2点、お伺いいたします。よろしくお願いします。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。こちらは、すぐお答えいただきます。

〇島崎企業開示課長
 こちらの監査人の5名が上限という動きは、いわゆる設定主体の話、国際的な基準設定主体の話でございまして、我が国の企業会計審議会とは、また別の話だと考えておりますので、しかるべきプロセス、しかるべき考え方に基づいて、ルールに従って進められていくといいますか、選任などについて行われていくものだと承知しています。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。橋本委員、いかがでしょうか。

〇橋本委員
 結構でございます。ありがとうございました。

〇徳賀会長
 質問はここまでですね。ほかに、先ほどまでの御意見等につきまして、返答はございますか。

〇野村審査検査室長
 公認会計士・監査審査会の野村と申します。
 
 ただいま橋本委員からいただきました2点目の件でございますが、御指摘のとおり、指摘と同じ問題点が何年も続くというケースは確かにございます。公認会計士・監査審査会としましては、一定の一旦不備を指摘した場合には、改めて、モニタリングということでフォローアップをさせていただいております。ただ、フォローアップをさせていただきましても、同様の問題点がまだ出てくるというケースもございまして、そうした監査事務所に対しては、精力的に検査を含むモニタリングをさせていただいているところでございます。以上でございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。ほかに質問や御意見等はございませんでしょうか。
 
 ただいま御審議いただきました最近の国際監査基準の策定動向にあります監査に関する品質管理につきましては、さらなる議論が必要と思いますので、今後、監査部会で御審議いただくこととしてはどうかと考えておりますが、いかがでしょうか。 (「異議なし」の声あり)

〇徳賀会長
 それでは、そのように取り進めさせていただきます。 では、次の議事に入ります。最近の会計監査・会計基準を巡る主な動向に関して、まず、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応」及び「会計基準を巡る変遷と最近の状況」について、事務局から説明いただきたいと思います。
 
 続けて、小賀坂委員から「企業会計基準委員会の活動状況」について、林田委員から「国際会計人材の育成の取組み」について、御報告をいただいた後に、まとめて御質問、御意見をお伺いしたいというふうに考えております。それでは、まず事務局から説明をお願いいたします。

〇島崎企業開示課長
 まず、資料4-1に沿い、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会についてということで御説明させていただきます。
 
 こちらにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響が非常に懸念された本年4月、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの上場企業等において、大幅な売上の減少や、将来の業績見通しが立てられない状況なども生じるおそれがあること、決算や監査に当たって、適切に開示を行っていただく観点から設定されたものでございます。
 
 東京証券取引所、ASBJ(企業会計基準委員会)、日本経済団体連合会、日本公認会計士協会、日本証券アナリスト協会、オブザーバーと事務局が設定され、こちらにありますとおり、9回にわたって開催されてきたところでございます。
 
 2ページ目と3ページ目は、累次、表明されてきました各団体から、あるいは連絡協議会として提示されてきたものでございます。この3月18日の日本公認会計士協会の監査上の留意事項は累次にわたって公表されてきているところです。
 
 それから、企業会計基準委員会によって会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方の公表。会計上の見積りに関して一定の過程を置き最善の見積りを行った結果が事後的な結果と乖離しても、会計上の誤りに当たらないこと、用いた過程を具体的に開示する必要があることなどが明確化されたものです。金融庁としましても、提出期限を本年9月まで一律延長することの公表や、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会全体としても、株主総会の対応について、株主総会の運営に関し、日程の後ろ倒しや株主総会の継続の手続も含め、柔軟かつ適切な対応を求める旨を声明として公表するなどの対応をしております。 5ページ目では、最終的な7月2日のところで対応の総括がなされていまして、先ほど私のほうから御説明させていただいた、例えば一律延長ですとか、収束時期を予測することが困難な状況における留意点ですとか、会計士協会からの監査上の留意事項として、会計上の見積りですとか、会計処理、償却・引当などについて、それから株主総会をめぐる対応について記載しております。
 
 一番下の丸ですが、新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示としては、金融庁も含めて、新型コロナウイルス感染症の影響に関する具体的かつ充実した企業情報の開示が強く期待されること等を内容とする要請文を公表しております。同種のものは、金融庁、企業会計基準委員会、日本公認会計士協会、日本証券アナリスト協会ということだと思います。今後も、四半期報告書等も含めた適時適切な開示を期待しているところです。
 
 それから、6ページ目にまたがりますけれども、例えば決算発表日程の再検討ですとか、日本経済団体連合会による定時株主総会の臨時的な招集通知モデル、そういった取組もされております。
 
 こうした各団体の皆様の公表ですとか、そうしたものを通じまして、感染拡大のピーク時を含め、クラスターの発生等の大きな混乱はなく、企業決算・監査業務等を進めることができたことを評価していまして、今後につきましては、基準日変更を検討する企業があれば、後押しすることや、デジタル化の推進など、中長期的な課題への対応は、引き続き関係者と議論ということかと思います。
 
 こちらの会合は、7月2日の会合で一区切りとされております。万が一状況の変化があった場合は再開という位置づけになっております。
 
 資料4-2は、先ほど御説明いたしましたので、続きまして、資料5の御説明をさせていただきます。会計基準を巡る変遷でございます。
 
 2007年のASBJ及びIASB(国際会計基準審議会)の東京合意、このコンバージェンスの方針からの状況を書いておりますが、2009年に任意適用を開始、連結財務諸表のIFRS(国際会計基準)の提要等を経まして、2011年、IFRS適用に関する検討について、当面はIFRSの強制適用はないことや、米国会計基準の使用期限の撤廃を定めております。それから、2013年に当面の方針が出ていまして、任意適用企業の積上げ、強制適用の是非については、いまだ判断すべき状況にはないこと、JMISの導入、単体開示の簡素化ということが行われてきております。
 
 2014年以降は、政府の成長戦略ですとか、行政方針において、任意適用企業の拡大促進、日本基準の高品質化、IFRSに関する国際的な意見発信、国際的な会計人材の育成ということが重要な論点となっております。
 
 このうち私のほうからは、任意適用企業の拡大促進について御説明させていただきまして、高品質化や意見発信についてはASBJ、国際的な会計人材の育成についてはFASF(財務会計基準機構)のほうから御説明がございます。
 
 2ページ目でございます。IFRSの任意適用企業の推移でございますが、10月末時点で242社、全上場企業の時価総額に占める割合は42.4%ということになっております。
 
 3ページ目、4ページ目あたりは、適用の企業について掲載しております。
 
 9ページ目は、企業会計審議会においても御報告させていただいておりますが、IFRS財団による適用状況評価が基になっておりますので、これは昨年7月のもので、全体として状況に大きな変化はないということになっております。
 
 10ページ目、11ページ目に、成長戦略フォローアップ、それから金融庁の行政方針を載せさせていただいておりまして、IFRSの任意適用企業の拡大について等が記載されております。私からは以上でございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。続きまして、小賀坂委員より、企業会計基準委員会の活動状況について御報告をお願いいたします。

〇小賀坂臨時委員
 企業会計基準委員会の委員長の小賀坂です。よろしくお願いいたします。企業会計基準委員会の活動状況について、前回の会計部会からの動きについて御説明させていただきます。資料6を開けていただけますでしょうか。
 
 まず、4ページ目を御覧ください。少し古くなりますが、昨年10月に、このスライドに記載している内容で中期運営方針を公表しております。大きな方針は、2016年に公表した中期運営方針を踏襲しているわけなんですけれども、日本基準の開発においては、例えば単体財務指標における注記の在り方など、開示に関する方針の整理をしていくべきだというようなことも書き入れているところでございます。
 
 続いて、6ページを御覧ください。新型コロナウイルス感染症への対応でございます。先ほど、島崎課長より御説明がありました連絡協議会の初回の4月3日の会合で、このコロナウイルス禍における会計上の見積りに対する考え方を明らかにしてほしいという要請がありました。これを受けまして、連絡協議会の翌週に臨時で企業会計基準委員会を開催いたしました。先ほど、島崎課長より御紹介のあった内容で、こちらのスライドにあるような内容について議事概要を公表しております。
 
 結果として、3月決算の有価証券報告書においては、コロナウイルスの収束時期等の見積りを行う上での一定の仮定について、3月決算会社で7割程度の企業が追加情報を開示していただくことになりました。この問題自体、まだ現在進行形で、引き続きコロナウイルスが会計上の見積りにどのように影響を与えるか、十分な開示がなされる必要があるというふうに考えております。
 
 7ページを御覧ください。日本基準を国際的に整合性のあるものとするための取組の状況の説明でございまして、7ページにあります収益認識と時価算定の基準につきましては、既に基準の公表が終わっておりまして、現在、追加的な審議を行っているところです。
 
 8ページを御覧ください。現在、リース会計について審議を進めているところでございます。今後、金融商品についても取り組む予定というふうにしているところでございます。
 
 9ページを御覧ください。その他の日本基準ですが、今年の3月に「会計上の見積りの開示に関する会計基準」を公表しております。こちらは2021年3月期からの適用でございまして、新型コロナウイルス感染症に関連する開示も含めて、会計上の見積りに関する開示も含めて、この見積りに関する開示が今後充実していくことになることを期待している次第でございます。
 
 続いて、国際的な意見発信に移りまして、12ページを御覧ください。まず、IASBの基準開発の概況でございます。こちらにありますように、保険契約も終わったということで、いわゆる大物のプロジェクトというのは、ここ10年程で取り組んできたものについては完了している状況でございます。
 
 我が国からは、ここ10年、のれんの償却やOCIのリサイクリング、当期純利益の有用性などについて、IASBに問題提起をして、意見発信を強くしてきたところでございます。
 
 来年には、2022年以降5年間のIASBのアジェンダを決める意見募集(アジェンダ・コンサルテーション)が予定されておりまして、今後、我が国としてIASBが今後取り組むべき課題を識別して発信をしていく必要があるというふうに考えているところでございます。
 
 続いて、スライド13を御覧ください。国際的な意見発信の状況について2つ説明させていただきますと、まずは、のれんの償却なり、企業結合の開示の関連でございます。この3月にIASBよりディスカッション・ペーパーが出ております。
 
 スライド14を御覧ください。FASB(財務会計基準審議会)でものれんの償却の問題を継続的に取り組んでおりまして、FASBのほうでは、この7月から議長が交代になっているのですが、その交代直後の合同会議では、6対1でのれんの償却の議論を継続するというようなことも決定されていて、今まさにこのIASBとFASBでのれんの償却の問題なりが取り上げられているということでございます。ASBJでは、これまでのれんの償却について強い意見発信を行ったということは御案内のとおりかと思うのですが、まさに今後、山場にかかっているということですので、国内の関係者の御意見をよく集約して、引き続きしっかりと対応を図っていきたいというふうに考えている次第でございます。
 
 続いて、スライド15を御覧ください。続いては、基本財務諸表で、財務業績の計算書の表示について御説明させていただきます。こちらは昨年10月にIASBより公開草案が出ておりまして、つい先日の9月末がコメント募集期限でございました。こちらのスライド15にありますように、3つの新たな小計を導入すると、スライド16を開けていただいて、こちらの3つの小計を新たに要求するということを公開草案としても提案しているということで、スライド17を開けてください。何個か重要な提案があるのですけれども、もう1つの重要な提案は、経営者業績指標(Management Performance Measures)について注記を求めているということでございます。
 
 スライド18を御覧ください。ASBJからは、既にコメント・レターを出しているところなのですけれども、こちらのスライドにありますように、IASBの提案の内容に、大きな提案内容に結果として反対する内容となっております。こちらは国内の関係者の方々とかなり議論させていただいて、結果的にはやはり反対せざるを得ないというような状況になっているところでございます。
 
 特にこの営業利益の表示については、国内の関係者は非常に関心が高くて、IASBの提案というのは、営業利益を投資と財務を引いた残余として計算するという形の提案になっているのですけれども、我々はこれを直接的に定義すべきということで、こちらの次のポチにありますように、営業利益を表示する目的は、企業が識別した主要な営業活動からどれだけリターンを生み出したのかと示すことだということで、しないといけないということで、代替的な提案を行って、営業利益というものをしっかり定義していくべきだということを、今、主張しているところでございます。
 
 この基本財務諸表のプロジェクトについては、のれんの償却と同様に、国内の関係者が非常に高く、オールジャパンの取組をずっと続けているところでございまして、このコメント・レターを出す上では、各セクターでもコメント・レターをお出しされているのですけれども、各セクターの団体とよく連携を図って、可能な限り同じ方向のコメント・レターをIASBに提出するという形の取組をして、各団体と一緒に提出したというようなところでございます。私の説明は以上でございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。それでは、最後に、林田委員より「国際会計人材の育成の取組み」について御報告をお願いいたします。

〇林田委員 
 公益財団法人財務会計基準機構の林田でございます。当財団の国際会計人材の育成の取組について御説明をさせていただきます。資料7を御覧ください。
 
 2ページ目です。当財団では、2017年に国際会計人材ネットワークを組成しておりまして、今年の9月現在で1250名の方に登録をいただいております。
 
 3ページ目で、これまでこのネットワークでシンポジウムの開催や少人数の定例会を開催してきておりまして、この3月にもシンポジウムを開催する予定でしたが、残念ながら、新型コロナウイルスへの対応で延期となっております。コロナウイルス感染症の影響で交流が非常に難しい状況となっておりますけれども、今後、ウェブでの開催等々、いろいろ工夫を検討しております。
 
 4ページ目、当財団では、2012年より、毎期155名程度で組成する会計人材の開発支援プログラムを実施しております。これまで5期まで修了して、合計約100名の方々に受講していただいております。その結果、このスライドにありますように、多くの方々に国内外の会計基準設定の場で活躍をいただいているということでございます。
 
 5ページを御覧ください。第5期では、そこに記載のとおり、会計基準の設定の現場の第一線で活躍いただいている方々に講師になっていただきました。現在は、第6期の開講を準備しておりまして、引き続き、皆さんの御支援をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 
 以上が国際会計人材育成に関してですけれども、直接これとは関係ない、会計部会の活動とも直接の対象ではないと思うのですが、皆さん、最近、新聞等でも御覧になっているかと思いますけれども、現在、私ども財務会計基準機構で取り組んでいることを1つ御紹介いたしたい。
 
 これは資料はございませんけれども、去る9月30日に、IFRS財団が「サステナビリティ報告に関する協議ペーパー」、いわゆる非財務情報の開示を公表しております。この協議ペーパーは、IFRS財団の下に、IASBとは別のサステナビリティ報告のためのボードを設けることについて意見を求めている、こういう内容でございます。
 
 財務会計基準機構は、金融庁と共同で、ずっとIFRS対応方針協議会を設置して、市場関係者の方々とIFRSに関する意見発信を行ってきましたけれども、今回、このサステナビリティ報告に関するIFRS財団の取組に対応するために、IFRS対応方針協議会の下にワーキンググループをつくりまして、対応を議論しているところでございます。今後、この対応方針協議会名でIFRS財団にコメント・レターを提出する予定にしております。
 
 私からの報告は以上でございます。ありがとうございました。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。それでは、これまでの事務局の説明と、小賀坂委員、林田委員からの御報告につきまして、御質問、御意見等をいただければと思います。
 
 なお、先ほどと同様に、御質問に対する御回答につきましては、数名の委員から御質問を頂戴した後に、事務局等から御返答したいと思います。まず、神津委員、御発言をお願いいたします。

〇神津臨時委員
 日本税理士会連合会の神津でございます。資料4-1の新型コロナウイルス感染症の影響というところについて、質問をしたいと思います。
 
 本年度は、「感染拡大のピーク時を含め、クラスターの発生等の大きな混乱はなく、企業決算・監査業務等を進めることができたことを評価」ということで、大変評価されたということを感じました。
 
 それで質問でございますけれども、2021年の3月決算、ちょっと先のことではございますけれども、こういうことに対する対応等がどのようになっているか、今とコロナウイルスの感染状況等はそんなに状況が変わったような状況ではないと判断しておりますけれども、何か決まっていることがあったら教えていただきたいと思います。以上でございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。続きまして、水口委員、お願いします。

〇水口委員
 2つの意見です。まず1点目は、新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報による開示についてです。先ほど、小賀坂委員、事務局からも御説明いただいたところですが、ASBJが会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症に関する開示の考え方を公表したのに加えまして、それを踏まえて、金融庁によって有価証券報告書の財務及び非財務情報において、感染症の影響に関する具体的かつ充実した開示について周知徹底されたこと、様々な関係者にご連携いただいたことには、大きな意義があったと考えております。
 
 ASBJによって会計上の見積りの会計基準が策定されて、強制適用が2021年3月期である状態の中で、新型コロナウイルス感染症という事象が発現した際の会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルスに関する開示の考え方が適時に示されたことが、企業の開示を後押しした形で、企業による非常に有用な情報開示につながったと考えております。こうした実績がさらなる見積りに関する情報充実を視野に入れた、会計上の見積りの会計基準の強制適用に向けた布石として有効に機能し得ると考えております。
 
 2つ目の意見は、国際的な意見発信についてです。我が国の会計基準を国際的に整合性のあるものにするための取組や、国際的な意見発信や、日本基準の開発についても御説明をいただき、ありがとうございました。いろいろな施策を取っていただいて、私も関与させていただいているものもありますが、非常にありがたく受け止めて評価しております。
 
 先ほどちょっとお話がありましたことも踏まえて、気候変動をはじめとしたサステナビリティを切り口とした新たな金融の仕組みへの資金流入に影響を与えるサステナビリティ報告に関するグローバルな動きは加速していくのではないかと思っております。
 
 世界を見回しますと、複数の報告フレームワークが既に存在していることに加えまして、新たなイニシアチブの動きもあります。こうした中でサステナビリティ報告の分野についても意識を高めていくことが肝要だと捉えております。
 
 サステナビリティ報告をめぐり、グローバルな様々な展開がある中で、どのような選択肢が費用対効果の高い選択になり得るのか、また公正かつ適正な資金の流れを伴うサステナブルな世界への移行に資するものになるのかを含めて、諸観点から意見発信をもって我が国の特性も踏まえた上で、グローバルな貢献を視野に入れ得るのではないかと考えております。以上です。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。御意見を承りました。続きまして、小倉委員、お願いいたします。

〇小倉臨時委員
 日本公認会計士協会、小倉です。
 
 新型コロナウイルス感染症に関連したところとして、昨今のコロナウイルス感染症の流行を契機として、監査現場もリモート環境下を前提とした実務へ変化しておりまして、現在、会計士協会では、リモートワーク環境下における決算・監査上の対応を検討しており、その状況をウェブサイトで公表しております。近日中にリモート棚卸立会いの留意事項と、電子媒体または電子経路による残高確認に関する監査上の留意事項を公表したいと考えておりまして、これに引き続き、リモートワーク関係の必要な留意事項を随時公表していきたいと考えております。
 
 もう1点、国際会計基準の関係ですけれども、会計士協会では、本年12月16日に、会計教育研修機構との共催で、IFRS基準の理解の促進を目的に、IFRSセミナーを予定しております。コロナウイルス感染症への対応として、ウェブ配信にて実施する予定です。本セミナーでは、IASBからハンス議長、それから鈴木理事、トム・スコット理事等を迎えまして、議長による基調講演、経営者による説明など、IASB及びIFRS解釈指針委員会が取り組む活動プロジェクトの最新動向やプロジェクトについて御講演いただく予定でございます。こちらは御案内をさせていただきました。以上です。

〇徳賀会長
 情報提供ありがとうございました。続きまして、熊谷委員、お願いします。

〇熊谷臨時委員
 みずほ証券の熊谷です。アナリスト協会の企業会計部長も務めさせていただいています。
 
 2点ほど質問がございます。まず、新型コロナウイルス感染症に関する連絡協議会には、実は私も日本証券アナリスト協会を代表して参加させていただいておりまして、非常に困難な状況の中、クラスターも発生せずに、各組織が連携して対応できたと思っております。そういった意味で、この連絡協議会が司令塔になったというのは大きいと考えております。一方で、今回の経験を通じまして改めまして痛感しましたのは、我が国の場合、3月決算企業の基準日の関係で、6月に株主総会が集中している問題についてです。この結果、決算作業、監査スケジュール、株主総会プロセスが、非常に窮屈になるという中で、基準日変更を促すことが、株主総会の分散開催に関しては非常に重要であると思います。その点について、この連絡協議会資料6ページ目に「基準日変更を検討する企業があれば、後押しすることや」と書いてあります。これまでも制度上の手当ては、すでにできているのだけれども、実務上株主総会の6月集中開催は改まっていかないという中で、基準日変更を検討する企業があれば後押しするということに関して、具体的にどのようなことを検討されているかということがあれば、教えていただきたいというのがまず1つ目の質問でございます。
 
 それから2つ目は、先ほど、林田理事長のほうからサステナビリティ報告に関する対応に関しましてお話がございました。現状、オールジャパンで意見を出すということに関しては、財務会計基準機構及び金融庁がリードして取りまとめを行っていただいているわけでありますけれども、今後サステナビリティ報告の重要性が国際的にも高まっていく中で、我が国の財務報告制度において、どのように国として取り組んでいかれるか。こちらの企業会計審議会会計部会や、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループが、具体的な議論の場として考えられようかと思うのですけれども、金融庁として、どういった場で、サステナビリティ報告の我が国の取組、方向性を議論していくのかというお考えがあれば、教えていただけたらと思います。以上です。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。続きまして、野崎委員、お願いいたします。

〇野崎委員
 御指名ありがとうございます。住友化学の野崎でございます。経団連の企業会計部会長を務めさせていただいております。
 
 ASBJから御説明がありました国際的な意見発信につきまして、一言、コメントと、それから、お願いをさせていただきたいと思います。
 
 IFRSの任意適用の拡大というのは、日本の国で進めているのですけれども、そのためには、当然、IFRSが文字通り、会計の国際標準になってほしいという思いがあるわけです。そうなるために我々もこういった場でありますとか、IFRS対応方針協議会等で努力もし、貢献をするべきと考えているわけですが、今回、先ほど、小賀坂委員から説明のありました基本財務諸表の公開草案ですけれども、御説明がありましたように、なかなか納得できない部分がかなり多いと。本来、IFRSというのは原則主義のはずなのが、ここのところ出てきていますいろいろなペーパーを見ますと、非常に画一的であり、細部の取決めが多いという印象を持っております。
 
 もう1つ言いますと、比較可能性ということにどうしても考え方が偏りがちで、当然、企業経営者としては、企業価値向上のために、言わば個性のある企業経営というものを行っているわけで、そこの視点が弱くなっているのではないかと感じています。
 
 もちろん一義的には利用者である投資家が一番のターゲットであるわけですが、もちろんその投資家の背後にマルチステークホルダーがいらっしゃるわけで、そういう方々は、当然のことながら、企業の持続的成長を望んでいるわけですから、それに資するような会計基準が望まれるというのは当然のことで、そうならなければ、日本のIFRSの適用企業が増えていくということにもなりませんし、日本基準をコンバージェンスしていく、国際基準に近づけていくという意味もなくなるということがありますので、特に今回、小賀坂委員から御説明がありました営業利益の定義の問題、これも残余というのはとても考えられないということがありますし、さらに言いますと、MPMにつきましては、これを財務諸表の本表の外で表示をして、しかも財務諸表との間で調整表を作るというような、非常に煩雑な作業を強要されるというのは、とても受け入れることができないと思いますので、そういう意味で、ASBJにリーダーシップを取っていただきまして、経団連としてもコメントを出しておりますけれども、リーダーシップを取っていただいて、オールジャパンとしてぜひ強い意見発信をお願いしたいと思います。以上でございます。

〇徳賀会長
 御意見承りました。ありがとうございました。
 
 一旦ここで、御質問に対する返答をしてもらおうと思います。まず、神津委員から、新型コロナに関連して、2021年3月決算において、何らかの新しい対応が必要かというような御質問がございましたが。

〇古澤企画市場局長
 私のほうから、神津委員からございました3月のお話をお答えさせていただくのと、もしお許しいただければ、熊谷委員からサステナビリティのお話も併せてお答えさせていただきます。また、基準日変更の話は、井上のほうからお答えさせていただきます。 まず最初に、神津委員から御質問いただきました協議会の話でございますが、先ほど課長からも説明ございましたように、状況の変化があれば再開ということを機動的に考えていきたいとに考えております。
 
 他方、この場でも先ほどJICPAの小倉委員からリモート環境についてのアップデートがございましたけれども、そういうものにつきましては、適宜、関係者とよく連絡しながら、我々も共有していきたいと思っています。
 
 その関係で、1点だけ補足させていただきますと、やはり来年の3月決算を考える上で、海外の12月決算についてどういう対応を行うかというのは、すごく大事な要素というか、我々が見ていかなければいけないことだと思っております。そういう意味では、3月決算を考える上では、海外も含めた12月決算の動向も非常に大事によく見ていきたいと思いますし、何よりも今年と来年の大きく違いますのは、今年の場合には、やはりコロナが3月から大きく対応を迫られたということですが、今年の場合には、ある程度フォワード・ルッキングに来年の3月を見据えながら、先取りしながら準備をできるところもあろうと思いますので、そういった点、我々も注意していきたいと思いますし、関係者とよく協議していきたいと思っております。それが神津委員からございましたところについてです。
 
 2つ目は、サステナビリティ報告でございます。林田委員から御紹介のありましたIFRS財団のパブリックコメントの件ですけれども、これはちょっとまだ早い段階でございます。まさにIFRS財団でそういうボードをつくるかどうかというところをパブリックコメントにかけているという段階だということかと認識しております。そういう意味で、我々のほうで、すぐディスクロージャーワーキングを立ち上げて、じゃあ、うちはどうするというところには、まだ議論の熟度は至っていないのかなと思います。
 
 他方、ESGの問題、SDGsの問題、それに対する企業の開示、それから、投資家がどういうふうにそれに対して理解し、関与していくか、エンゲージメントしていくかという点につきましては、そのハードローの前にソフトローの世界で、今年、改訂いたしましたスチュワードシップ・コードの議論ですとか、来年、改訂を予定しておりますコーポレートガバナンス・コードの改訂の議論の中で出てくるということかと思います。そういったソフトローの議論の中で、それなりに熟度が高まってくるというところを見たところで、必要があればハードローの議論に入っていく、そんな段取りかなというふうに考えております。私からは以上です。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。神津委員と熊谷委員、いかがでしょうか。

〇神津臨時委員
 コメントありがとうございました。理解できました。

〇熊谷臨時委員
 私も、今の古澤局長のお話で理解できました。どうもありがとうございました。

〇徳賀会長
 ありがとうございます。それでは、熊谷委員のもう1つの御質問のほうを、先ほどの基準日集中のお話については、井上参事官からよろしくお願いします。

〇井上参事官
 先ほど、熊谷委員から御紹介がございましたとおり、基準日変更に当たっての制度的な障害はない、会社法上の障害はないというふうに理解しています。ですので、この連絡協議会の7月2日の取りまとめ文書におきましても、「基準日変更を検討する企業があれば、後押しする」と、そういう表現にさせていただいたところでございます。
 
 実際に今回の対応では、7月以降に総会開催をずらした企業もございましたので、そういう企業等で引き続き来年についても基準日変更を検討するということであれば、それは後押しするということで、それについては関係省庁ないし関係団体とも連携して取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。熊谷委員、ただいまの返答でよろしいでしょうか。

〇熊谷臨時委員
 どうもありがとうございました。ちょっと気になるのですけれども、そういたしますと、基準日変更と言っても、恒常的な基準日変更というよりも、コロナ対応で特定の年に決算なり監査が間に合わなくて基準日を変更したいという、ある種、アドホックな対応としての基準日変更という理解でよろしいでしょうか。

〇井上参事官
 今年に関してはそういうことだと思いますけれども、将来的に恒久的に、もちろん基準日を4月30日等に設定していただくとかで、決算期末から3か月以上の期間を取るということは可能というふうに考えております。もうそういう対応をされている企業も少数ですがあるというふうに承知していますので、そういう企業がございましたら、それも後押ししたいと考えております。

〇熊谷臨時委員
 はい、どうもありがとうございます。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。それでは、続きまして、御質問、御意見を受けたいと思います。まず、岡田委員、よろしくお願いします。

〇岡田委員
 岡田でございます。
 
 連絡協議会で、様々な団体から時宜を得たメッセージを出していただきまして、企業にとって大変役に立ったと思います。これは今回で終わりになるかどうかは分かりませんが、今年の教訓を基にして、来年に向けてフォワード・ルッキングに準備をしていくということが重要ではないかと思います。
 
 私からは意見ですが、まず1つは、見積りの考え方についてです。連絡協議会でもASBJ、JICPAなどからメッセージを出していただきました。この結果70%程度の会社が開示されたということで、大いに効果があったと思うのですが、見積りに関する考え方というのは、コロナの影響をどう見積もるかに限りません。様々な事業の不確実性についての開示というのは常に必要なわけです。ですから、提案されたように不合理である場合を除いて、最善の見積りを行っていれば、結果として外れても、これは誤謬ではないというのは当然なことです。一方、見積りの前提条件をしっかりと開示し、現実が見積もりと異なった場合でも、その旨を開示すれば開示が不十分であったとか、決算の数字が誤謬であるということにはならないことが重要だと思います。今回、ASBJは基準をつくられるということなので、その中にもはっきりそういうことを書いていただくといいのではないかと思います。
 
 次にコロナの影響で、総会に関し、基準日を変える話が出ておりますが、これについて一言申し上げたいのですが、基準日を変えて総会開催が遅れると、有価証券報告書で開示される定性情報などもそこまでずれてしまうという可能性があるわけです。一方では、投資家に対する開示がそこまで遅れると、投資家とのコミュニケーションまでさらに遅れるという可能性があります。その意味では、決算の数字に大きく影響を与える、特に見積もりに関する定性情報はできれば決算発表と同時か、せめて事業報告書で前提条件などを開示していただくようにしたらよいのではないでしょうか。つまり、有報の開示を前倒しで開示するというようなことも検討していったほうがいいのではないかと思います。
 
 もう1点、先ほどの基準日を遅らせるということですが、今年は株主総会の基準日を変えることによって開催日を遅らせた会社はほとんどなかったと理解しております。皆さん、6月には間に合わせて開催されました。その結果、株主の皆さんには、総会になるべく出席しないでほしいというメッセージを出して、ある会社では10人ぐらいしか株主がいらっしゃらなかったそうです。その代わり、株主の皆さんは、質問状を書いた例が多かったと聞いております。ただ、これに十分に答えていない会社もあった、つまり、株主とのコミュニケーションが途絶えてしまったケースがあると聞いております。株主がそれに対して不満を持っても、発言する場がないというような例も聞きました。
 
 そういう意味では、基準日を遅らせた結果、開示が遅れるだけでなく、株主との対話が疎かになってしまう、ということは避けなければならないと思います。単に基準日をどうするかだけではなくて、総会の目的をちゃんと果たすために総会をいつにするかを検討すべきです。例えば、継続会では報告事項のみとしても、そのときに決算に対する質疑応答を十分に行い、株主との対話という目的を果たすこともできるわけです。コロナ対策でテクニカルに総会が開催できるだけでなく、本来の総会の目的の達成も意識してガイドラインを出すよう連絡協議会にはお願いします。以上でございます。

〇徳賀会長
 御意見承りました。ありがとうございました。続きまして、松井委員、よろしくお願いします。

〇松井臨時委員
 今回、連絡協議会が非常にタイムリーにワークしたということについて、関係各委員から非常に高い評価をされていたと拝見しております。この関係で感じましたのは、やはり日本では、数年に一度くらいのペースで非常に大きな災害が起きるという事象が散見されるようになってまいりまして、これが今回、2月くらいから明らかになってきたリスクであったために、かなり密なスケジュールで関係各省庁等が連絡協議会を開催できたのですけれども、非常に3月も押し迫ってきた時期に急に、例えば首都圏で地震が起きたとか、そういったことが起きると、こういったものをやはりタイムリーに開くということがさらに重要になってくる一方で、必要な方々との連絡を取ること自体いろいろ難しくなってくるということもあるかと思いまして、もし今回の連絡協議会のようなものの形成、意見形成の手順の大枠みたいなものが省庁のBCPみたいなものの一環として決まっていて、このように形成されたということであれば非常に心強いので、もしそういった事情があれば教えていただければと思いますし、今回、アドホックでうまく動いたけれどもということであれば、こういった手順について何か大枠を決めておくことが必要ではないかと感じたということです。よろしくお願いいたします。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。続きまして、小賀坂委員、よろしくお願いします。

〇小賀坂臨時委員
 神津委員と岡田委員の御発言に関連して、少しお話をさせていただきます。
 
 まず、来年の3月決算への対応ということで、現時点では、まだASBJとしても新たに何かコロナウイルスの対応として、会計基準に関して何かを公表していかなければいけないということについては把握をしていません。ただ、我々も注視していますのは、古澤局長のお話のとおり、12月決算を海外はこれから迎えるという形でありまして、そういう意味では、IASBなりFASBが対応を図っていくのかどうなのかということについて、先日もFASBと定期協議を行ったのですけれども、よくアンテナを高くして、その状況を把握していきたいと思うというのが1点です。
 
 もう1点は、岡田委員の御発言の中の会計上の見積りの開示について、必要だということについての関連ですけれども、我々のASBJのスライドの9ページのところで、会計上の見積りの開示に関する会計基準の公表について少しお話しさせていただきました。こちらは3月に公表して、今動いている期の来年3月期からもうすぐ適用になるという形でありまして、今回の4月の議事概要なりでは、まだこれの適用前だったので、議事概要という形でいろいろな考え方を出していったのですけれども、こちらの会計上の見積りの開示に関する会計基準が適用になっていきますと、こちらは国際会計基準(IAS)の1号をベースにしているわけなのですけれども、より原則主義的に、こちらに書いてありますが、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を、まず各企業でしっかり識別して選んでもらうと。じゃあ、その選んだ項目については、金額から始まって、算出方法なり、どういう仮定を置いたのか、どういう影響を仮に置けるのかということについて開示をしていただくという形になりますので、この3月決算からは、コロナウイルスに関する対応も含めて、こちらの会計基準を適用していただくということになるので、その開示が充実することは期待されるということを先ほど御説明した次第です。以上でございます。

〇徳賀会長
 御説明ありがとうございました。続きまして、関根委員、よろしくお願いします。

〇関根委員
 関根です。御説明いただきありがとうございます。私からは、コロナの関係のことと、サステナビリティ報告について、2点、お話をしたいと思います。
 
 コロナにつきましては、非常に大変な中、関係者の方々が非常によく対応していただいて、何とか無事に過ごした、乗り切ったというところかと思います。ただ、先ほど来の御発言にもありますように、今後もウィズコロナの時代が続いていくと思いますし、2021年3月期につきましては、1年間、企業活動も、また監査業務もコロナ禍の中で行われているということで、さらに考えることがいろいろ出てきているのではないかと思います。
 
 先ほど、リモート監査についても、今、検討を進めているということでございますが、それ以外にも、世の中全体としてもデジタル化を進めていくという中、そういった点についても、ぜひこれを機会に進めていただきたいと思っております。これがまず1点目でございます。こちらは意見でございます。
 
 それから2点目のサステナビリティ報告の議論なのですが、私は現在、IFRSのアドバイザリーカウンシルのメンバーとなっておりまして、ちょうど今週、11月3日と4日に、その会議がリモートで行われました。計8時間ぐらい議論をしましたが、ほとんどがサステナビリティ報告の議論でした。アナリストの井口さんと私で出席させていただきましたが、事前に日本での議論の状況などをいろいろ教えていただきまして発言させていただきました。
 
 その会議での議論の状況について少しお話ししますと、大人数の、40人、50人いる会議ですので、皆さんから様々な意見が出ておりましたが、その中でもIFRS財団がこういったサステナビリティ報告のためのボードをつくろうということには、基本的には、皆さん賛成されていました。ただ、いろいろな前提条件について様々な発言がございまして、特に範囲をどうするか、気候変動ということから始めるとしているが、本当にそれでいいのかとか、想定利用者について、IFRSの場合は投資家を基準としていますが、もう少し広げたほうがいいのか、やはり1つに絞ったほうがいいのではないかというような意見が出ておりました。
 
 この会議の模様はウェブで公開していますので、もし御興味ある方、IFRS財団のサイトに行っていただきますと、ちょっと長いですけれども、議論を聞くことができますし、もしその内容について御質問などございましたら、私のほうでも議論の内容はお答えできるかと思います。これは御参考でございます。以上です。

〇徳賀会長
 御説明ありがとうございました。一応ここで御質問にお答えしたいと思いますが、松井委員より、連絡協議会のような形の意見形成の枠組みについて、金融庁である程度取決めがあるのかという趣旨かと思います。井上参事官、よろしくお願いいたします。

〇井上参事官 
 松井委員、御質問ありがとうございます。先生から御指摘ございましたとおり、今回の連絡協議会の枠組みをつくるときにも、2011年3月の東日本大震災のときの関係者の対応を参考にしています。我々金融庁のほうでも、BCPマニュアルを新型インフルエンザ感染症について持っておりますけれども、そのマニュアル自体は実はあまり役に立ちませんで、むしろこういう新たな事象が起きたときに、関係者が連携して集まれる枠組みを、ある意味、柔軟につくっていくということが重要なのではないかと思っております。
 
 来年の対応については、先ほど来、様々な委員から御指摘ございましたとおり、課題があるということは認識しておりますので、必要であれば、この連絡協議会の枠組みを使って調整をさせていただくということかと思います。以上でございます。

〇松井臨時委員
 ありがとうございます。

〇徳賀会長 
 ほかに御発言がございましたら、よろしくお願いします。それでは、石原委員、よろしくお願いします。

〇石原臨時委員
 本日いろいろなお話を承りましたけれども、事業会社の財務部門として監査の現場に長年関わってきた立場から、今回の監査基準におけるリスク・アプローチに関連して意見を申し上げたいと思います。
 
 リスク・アプローチは、もう二、三十年でしょうか、導入されてから年月がたっておりますが、率直に申し上げて、依然として監査の現場における実践はまだまだ発展途上だと感じているところであります。
 
 今般、KAMが導入されましたけれども、対外的な情報発信というような観点もあるかもしれませんが、監査の現場からすれば、KAM導入の最大の意義は、KAMということを通じて監査リスクに関する議論、これが監査人と企業側との間で深まった、充実したということにあると思います。
 
 今後も監査の現場レベルでのリスク・アプローチの徹底ということを、やはりぜひとも図っていく必要があると考えていますけれども、そのためには、監査現場のPDCAの中に、このリスク・アプローチの考え方をしっかりとビルトインしていく必要があると考えています。
 
 具体的に申し上げますと、監査計画を策定する際に、前年度の監査を踏まえたリスクの評価結果を明確にし、評価結果を踏まえて翌年度の監査計画を策定するPDCAを徹底させる必要があります。残念ながら、現状は前年度の監査計画をベースに翌年度の監査計画が策定され、さらにリスクがあると思われるところに単純に監査工数が乗っていく、そういう監査計画の策定方法になっている傾向が非常に強いと思います。そうではなくて、リスクの評価結果を踏まえて、重点リスクのところに監査リソースを重点配分していくということが必要と考えています。その中で監査リスクに関する会社側と監査人の間の議論も深めていくということであります。
 
 リスク・アプローチ重視については、監査基準レベルではもう十分導入されているわけですけれども、実際の現場のプラクティスに定着させていくこと、これによって監査人に最も必要とされるリスク評価能力の向上、それから、期中監査の充実化と期末監査の負担軽減が図れると思います。結果として、監査の質の向上、それから公認会計士という職業の魅力の向上にもつながると考えています。
 
 今回、コロナの影響によって、期末監査の負担が全体の監査工期、それから6月総会に向けたプロセスのかなりネックになったということだと思います。もちろんリモート監査を導入していくことも有効ですけれども、期末監査を重点化し、重点リスクの監査は期中監査でかなりできますので、そういう形でリソースの配分を変えていく、監査業務の負担を平準化していくということによって、コロナのような局面にも対応できるようになると思っております。
 
 いずれにしましても、形式ではなくて、実質で監査の現場に徹底されてこその監査基準だと考えております。リスク・アプローチに関するプラクティスの進化に向けた関係者の皆様の議論、それから御尽力をぜひともお願いしたいと考えております。以上です。

〇徳賀会長 
 御意見ありがとうございました。承りました。それでは、中川委員、よろしくお願いします。

〇中川委員 
 発言しようと思っていたことの前に、先ほど岡田委員がおっしゃったことは、まさしく非常に同感でございます。かつては内部監査を統括する立場だった身としても、一番緊張するのはこのリスク評価でして、これを間違うと監査計画自体があまり効果的なものではないということを改めて思い出しましたので、本当におっしゃるとおりだと思います。
 
 私が申し上げたかったのは、皆さんも繰り返していらっしゃいますが、連絡協議会の動きというのは非常にありがたくて、今、私が扱っている組織は、どちらかというと、運用会社ですので、投資家サイドになるわけですが、やはり連絡協議会で指針を出していただいたおかげで、企業が取られる行動が非常にスムーズに、しかも非常に速やかに予測できましたので、こちらはそれに対して議決権行使基準の速やかな公表につなげることができたと、具体的には議決権行使の基準を一部緩める適用を延ばすということだったのですが、こういったものにつながって、私どもの会社だけではなくて、運用会社全体、投資家の立場としてはそれができましたし、アセットオーナーの御理解も非常に得やすかったですし、その後、企業との対話も非常にスムーズに進めることができて、どれだけ企業のほうは大変な思いをされていたのかということも当然理解はした上でしたけれども、おかげさまで非常にいいアクションを取っていただいたかなと思いますので、まず、そのお礼といいますか、評価でございます。
 
 先ほどリモート監査というのがありましたけれども、確かにリモート監査のみによって立つというのは非常に難しい反面、こちらも私自身も会社を預かる身としては、内部統制等々も責務があるわけですが、こちらは内部監査を活用したり、例えばそれを監査委員の方々、社外の取締役も入られている監査委員の方々にも報告するような立場だったり、監査を受ける立場にももちろんございます。現場は今、100%の出社ではない企業も多分多くある中では、リモート監査の留意点とか、こういったものを公表していただいて、それを参考にしながら、各企業で具体的な、先ほどの現場のプラクティスではありましたけれども、こういったものをこの何か月間か、そういうものも参考にしながら、来期の期末ないしは期中の活動に向けて、参考ないしはプラクティスをきちんとつくり上げていきたいなと思いますので、またそういった形の参考となるような議論ですとか検討ですとか、こういったものを共有していただいて、またいろいろ御教示いただければなと思いました。私からは意見だけです。以上です。

〇徳賀会長
 御意見ありがとうございました。承りました。それでは、小倉委員、ただいまの御質問に対してお答えいただけないでしょうか。

〇小倉臨時委員
 まず、石原委員からの御意見について、監査基準はリスク・アプローチの徹底ということでできたと。あとは現場がきちんとやりなさいというお言葉をいただきましたので、現場で実践できるように、基準について、いま一度よく会員の方たちにも周知をした上で徹底できるように取り組んでまいりたいと思います。
 
 それから、中川委員から御質問いただいたリモート監査について、企業も、テレワークを推進していると理解しております。このリモート監査のところでは、企業側の取組と監査人側の取組と、おのおの研究をしながら、感染リスクを防止して、かつ、監査を含めて業務を効率的に進めていこうということで検討しております。順次、御参考となるようなものについて公表してまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
 
 その中では、内部監査、監査役監査との三様監査ということで、いろいろそういったコミュニケーションを活用しながら、外部監査人としても対応していきたいということもありますので、引き続き、皆様の御協力で対応してまいりたいと思います。以上です。

〇徳賀会長
 ありがとうございました。石原委員、中川委員、よろしいでしょうか。

〇中川委員 
 ありがとうございます。

〇石原臨時委員
 ありがとうございます。

〇八田委員
 ちょっと発言してもよろしいでしょうか。

〇徳賀会長 
 はい、どうぞ。

〇八田委員
 委員の八田ですが、先ほど、石原委員とか中川委員がおっしゃって、小倉委員が協会の立場でリスク・アプローチに対しての監査の考え方をお話しになりました。全て私はそのとおりだと思うのですが、実はそこのところに一番の問題といいますか、課題があるのだということです。世界を見渡しても、例えばイギリスでも、先ほど御紹介あったようにカリリオンの問題が出る。ドイツでもワイヤーカードが出る。日本でも、複数年次おくと、いろいろな不祥事が起きる。これは絶対とは言えないですが、やはりリスク・アプローチという考え方に対しての基本的理解は監査基準の中に示されているのですが、それをどうやって現場に生かしていくのか、そして本当の虚偽表示リスクをいかに軽減するのか、なくすのか、これこそが監査人の主たる任務だということです。そうした監査対応にやはり魂が入っていないという評価だと思うのです。ただ、これは、一朝一夕にできるものではなくて、ちゃんとした現場の経験値、あるいはその事業体、企業環境、ビジネスに対する造詣を深めることが必要です。そういった様々な要請を踏まえて必要な知見が得られるわけであって、ただ会計とか監査の基本的知識を得ていれば、そして職業的懐疑心を忘れなければ、不正は見抜けるかというと、なかなか難しい問題だと言わざるを得ません。もともとリスク・アプローチという考えは、これはそもそも和製英語ですから、要するに、Risk-based Theoryとか、Risk-Based Approachという、リスクに特化した監査技法を導入しなさいということで、そもそもは限られた監査人側のリソース、これを重点投入する場所を見極めなさいということです。そして、重大な虚偽表示リスクを見逃してはなりませんよという考えで入ってきたと思うのです。私が知っている限り、この考え方が一番先駆的に議論されているのは、私は日本だと思うのです。でも、やはり現場のほうから御覧になると、まだまだ浸透していないというわけですけれども、私は、その行き着くところは、先ほどASBJの話もありましたけれども、人材育成といいますか、監査人育成、もっと言うと、熟練監査人をいかに養成していくかという課題を克服することだと思っています。
 
 先ほど、財務会計基準機構のほうで、会計人育成があり、相通ずるところがあるのですが、テクニカルな能力だけを養成しても駄目だと。例えば、会計の知識とか、そうではなくて、例えばビジネスの問題、あるいはプレゼン能力、コミュニケーション能力、場合によっては相手を説得する、そういった能力をちゃんと持った人が会計監査現場で丁々発止の議論をしながら本当のリスクを見極めていくということが必要なのではないかということで、私が申し上げたいのは、つまるところ、やはり我が国における会計監査人教育といいますか、啓発・啓蒙のための充実した体制づくりが必要なのではないかということです。会計士協会は、やはりそういうところにもう少し議論を深めるべきときが来ているのではないかという気がします。
 
 こうしたリスクの話を口で言うのは簡単ですけれども、現場の先生方はとっても苦労しているし、人海戦術でやればリスクは見抜けるわけではなくて、やはりどこに虚偽表示リスクがあるかということを見極めることが必要なのだと、そういう視点を見逃さないでいただきたいと思います。意見ですけれども、よろしくお願いします。

〇徳賀会長
 御意見ありがとうございました。石原委員から御発言があるようです。

〇石原臨時委員
 すみません。もう残り時間が少ないでしょうから、少しだけサステナビリティ報告に関する基準の議論に関して発言させていただきます。
 
 これは会計基準と違って、いまだ混沌としている中で、どういう基準が望ましいのかという議論になりますので、大変に難しい道のりになってくると認識しております。
 
 一方で、日本として一定のプレゼンスを発揮していくべきであるということは、そのとおりだと思いますが、そこに向けたアプローチが非常に重要だと考えております。
 
 私見ですけれども、ESGの投資に関わってくるということから言いますと、投資家サイドがどのようなESG情報を望み、その中で投資家と言っても幅広い投資家層がいるわけですが、それらの情報を用いて、どのように自分たちの投資判断なり、ポートフォリオの形成に生かしていくのか、そういう観点から汎用的な形のものはどういうものなのかということについて、投資家サイドがどう考えるのかということが非常に重要だと思いますので、日本においての意見の取りまとめにおいても、そういう認識でぜひ議論を進めていただきたいと考えております。以上です。

〇徳賀会長
 御意見ありがとうございました。今回、皆様からいただいた御意見を踏まえまして、次回以降の議論の参考にさせていただきます。
 
 それでは、本日の議事を終了させていただきます。本日は、お忙しいところ、御参集いただきましてありがとうございました。これにて閉会します。

以上

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